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酸化チタン光触媒の教材化と発泡リサイクルガラスによる 水処理と防藻効果

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酸化チタン光触媒の教材化と発泡リサイクルガラスによる 水処理と防藻効果
酸化チタン光触媒の教材化と発泡リサイクルガラスによる
水処理と防藻効果
市川学園市川高等学校
中島哲人
1.はじめに
作用、光触媒の作用を判別出来る生徒実験を
開発した。
環境問題の改善を意識し、日本発の技術で
ある酸化チタン光触媒の教材化と、水質浄化
の実用化に取り組んでいる。
2-1)光触媒で環境浄化:紫外線を当ててメチ
<光触媒の特徴>
レンブルーが消える
<ねらい> 酸化チタン光触媒作用がわかる
酸化チタン光触媒は、光励起されると、表
簡単な実験を紹介する。
面に非常に強い酸化力を持つ。この酸化力に
<準備> 保護メガネ、
100mLビーカー2個、
より、汚染物質である有機物を分解、除去す
ローダミンB水溶液、メチレンブルー水溶
ることができる(文献1)
。
酸化チタン粉末のST-01(石原産業)やP-25
液、酸化チタン光触媒担持プラスチック5
(日本エアロジェル)は光触媒として、環境
×5cm1枚、ピンセット、マスク(黒い
浄化に使われている。
紙)、ブラックライト、(紫外線計)
粉末のままでは、水処理は、非常に困難で
<前準備>酸化チタンを塗ったプラスチック
ある。その理由は、処理した水と粉末を分離
板の作成 透明な塩ビ板に、アンダーコート
しなければ、大量の粉末が必要になる。繰り
のビストレイターLNRC-350A(日本曹達)を
返し使える光触媒の特徴を生かすために、何
はけで塗り、60℃で1時間乾燥させる。酸化
かに担持させる。酸化チタンを担持させるこ
チタン溶液のビストレイターLNRC-300C
とにより、
処理した水と分離が容易になる
(文
(日本曹達)をはけで塗り60℃で1時間乾燥さ
献2)。
せる。
(文献3)
<操作>
①100mLビーカーにメチレンブルーの水溶
2.教材化の取り組み
塩ビ板に酸化チタンゾル液を塗ったあとに、
液 30mLを入れ、もう1個の 100mLビーカ
乾燥させて固定化し、青色のメチレンブルー
ーにローダミンBの水溶液を 30mL入れる。
や赤色のローダミン B を吸着させる。紫外線
② 酸化チタンを塗ったプラスチック板1枚
を照射することにより、短時間に色を消すこ
をピンセットでメチレンブルーの溶液に 10
とができ、簡単に光触媒作用の生徒実験がで
秒~30 秒間入れ、片面をうすい青に着色させ
きる教材を開発した。
る。反対側をピンセットでローダミンBの水
溶液に 10 秒~30 秒間入れ、うすい赤に着色
また、酸化チタン担持の目開き PTFE シー
トを使い、メチレンブルーの水溶液中で攪拌
させる。水滴は紙で拭き取る。
することにより、紫外線有無の実験で、吸着
③ 黒い紙に星形など自分の好みに応じて画
-1-
いて、カッターで切り取る。
④ ②の基板上に、③の黒い紙をおき、ガラ
ス板で押さえ、ブラックライトの下で、紫外
線光を約5分間当てる(ライトの下に一直線
上に並べる)。
黒い紙で全体を覆い、目を保護する
実施例2 切り抜いた部分以
ブラックライト(又は太陽光)
ガラス板
紫外線
黒い紙
外の色を消す
TiO2
プラスチック板 プラスチック板
2-2)酸化チタン光触媒を担持し
た PTFE シートを使った水の浄化の教材
[目的]酸化チタン光触媒による色素の分解
の速さを調べる
[準備]酸化チタン光触媒担持 PTFE シート、
ローダミンB、200 ml ビーカー 、駒込ピペ
ット(5 ml)
、ブラックライト、試験管、黒
いポリ袋、紫外線計、保護メガネ、
[操作](1)2つの 200 ml ビーカーに 3.
2×10-6 mol/l ローダミンBの水溶液を、50
ml ずつ入れる。
(2)開始:ローダミンBを入れた 2つの 2
⑤ 直接光が当たった部分だけが色が消える
00 ml ビーカーに、酸化チタン光触媒担持 PT
ことを確認する。
光照射時は保護面をかぶる。
FE シート(4 ×4 cm)を 3 枚ずつ入れる。A
のビーカーはブラックライトの真上に置き、
Bのビーカーは実験台の上に置く。スタート
の合図によりブラックライトを点灯する。
(保
護メガネ着用)
実施例1 切り抜いた部分の色を消す
(3)時間変化:ブラックライトの真上で、
2
ビーカーを絶えず同じ速さで振り混ぜ続ける。
(ただし、スタート時の濃度
3.2×10-6 mol/l を 1.0 とする)
光照射後 4 分、8 分、12 分後にAとBの溶液
を 5 ml ずつ試験管に取る。
実施例
1.0
Bの水溶液を 5、4、3、2、1、0 ml 入れ、水
0.8
相対濃度
(5)比色準備:6本の試験管にローダミン
をさらに 0、1、2、3、4、5 ml 追加して全量
を 5 ml にする。
0.6
0.4
0.2
0.0
0
4
8
照射時間 / 分
12
ローダミンBの光触媒による分解
(2)光を当てない場合の溶液中の色素の濃
度変化から何がわかるか。
(3)光照射時の溶液中の色素の濃度変化か
0 1
2
3
4
ら何がわかるか。
5 ml
実施後の生徒の感想
実験を行った日はその実験がどういう意味
なのかよくわからなかったが、藤嶋昭先生の
講演会を聴いて、よくわかった。酸化チタン
光触媒による環境浄化の効果はすごい。ビー
カー内という小規模な実験であったが、わず
か 12 分であれ程の効果とは驚きである。
講演
相対濃度
会でも教えていただいたが、これからますま
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
(6)比色:光を照射した試験管のローダミ
す光触媒の効果は改良されていくだろう。私
ンBの濃度を、比色用試験管と比べ、ローダ
も、
もっと環境問題に関心を持とうと思った。
ミンBの相対濃度を測定する。
[結果]照射後の色素濃度比(スタート時の
3. 遷移金属の共沈法による可視光応答光
濃度 3.2×10
触媒の合成と性能測定
-6
mol/l を1とする)
遷移金属の共沈法による可視光光触媒の新
実施例
場所
照射時間
分
A 光強度( 2.2 )mW/cm2
B 光強度(
0
4
8
12
規合成法を開発した。
1.0
0.4
0.2
0.1
<可視光応答型光触媒の従来の合成方法>
①窒素や硫黄などをドープした酸化チタン光
)mW/cm2
触媒 TiO2 ー XNx、 TiO2 ー XSx
[考察]
(1)色素が時間により分解される様
②遷移金属をドープした酸化チタン光触媒
子をグラフにせよ。
① スパッタ法による合成
3
② 酸化チタン粉末の表面に塩化白金酸を低
3―2)実験方法
温(約 90℃)でつける。
(1) 硫酸チタニルから光触媒の合成:
硫酸チタニル TiOSO4のアルカリ処理は
従来
TiO2粒子
→
+
H2PtCl6など
Pt又はH2PtCl6
TiO2
次のような反応になる。
TiOSO4+2NaOH →TiO(OH)2+Na2SO4
TiOSO4+Na2CO3 + H2O →TiO(OH)2+Na2SO4
<新規合成法>
+ CO2
遷移金属の水酸化物と水酸化チタンを共沈さ
300 mL のビーカーで、TiOSO 4 3.56 g
せ て、表面だけでなく、内部にも金属をドー
(0.020 mol)を水 200 mL に溶かし、3 L ビ
プした。
ーカーに入れ、2.5 L になるように水を加え
た。氷冷しながら、マグネチックスター
今回
TiOSO4
TiCl4
アルカリ
→
CuCl2 ,CrCl3,FeCl3
Ti(OH)4
Cu(OH)2
Cr(OH)3
Fe(OH)3
ラーで攪拌し、
→
焼結
TiO2
Cu,Cr , Fe化合物
pH を測定しながら、ビュレットを使
って 1.0 mol/L 水酸化ナトリウム NaOH
または 0.50 mol/L Na2CO3 を 1.0 mL/分の速
さで少しずつ 40 mL 加えた。
得られた白い沈
3-1)実験準備
殿物をブフナーロートを使って吸引ろ過し、
試薬類
水で 3 回洗浄・吸引ろ過を繰り返した。90℃
硫酸チタニル TiOSO4、塩化チタン(Ⅳ)
で 8 時間乾燥させた後、電気炉で 3 時間焼結
TiCl4、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、
し、メノウ乳鉢で粉砕し、白い粉末を得た。
メチレンブルーC16H18CIN3S、塩化銅(Ⅱ)
、塩
化鉄(Ⅲ)
、塩化コバルト(Ⅱ)
、塩化クロム
(Ⅲ)
、市販の酸化チタン粉末(ST-01、石原
産業 KK)
器具 ビュレット、マグネチックスターラ
ー(DM-10 大和精機KK)
、pH メーター(p
Hep ハンナ)
、電子天秤(HF-200 A&D)
、ブフ
ナーロート(外径 95mm)
、吸引瓶(容量 500 m
L)
、アスピレーター、定温乾燥器(SSR-150)、
磁製るつぼ B1(直径 45 mm 30 mL)
、電気炉
(2)塩化チタン(Ⅳ)から光触媒の合成
(GT2、城田電気炉 KK)
、メノウ乳鉢、10 W
塩化チタン(Ⅳ)TiCl4のアルカリ処理は次
ブラックライト、デジタル紫外線強度計
のような反応になる。
(UV-340)
、遠心分離器(FB-4000)、分光光
TiCl4+4NaOH →TiO(OH)2+4NaCl+
度計(日立 U-2000A)、150 W キセノンランプ
(ウシオ)
、紫外線カットフィルターL-42(旭
H2OTiCl4+2Na2CO3 + H2O →TiO(OH)2+2NaCl
テクノ)
+2CO2
4
(4)触媒作用の評価方法
300 mL のビーカーで、TiCl4 5.0 mL(密
3
度 1.73g/cm
0.046 mol)をドラフト中で
50 mL サンプル管に 10~20 mg/L のメチレ
水 200 mL に溶かした。白煙があがるので注
ンブルーの溶液 50 mL を入れ、
合成した酸化
TiCl 4 を水に溶かすと白煙
が上がるのでドラフト中で
行う。
意して少し
チタン粉末を 10~25 mg 入れた。マグネチッ
ずつ行った。
クスターラーで撹拌しながら、10 W のブラッ
3 L ビーカ
クライト2本をサンプル管の両側に置き、紫
ーに移し、
外線を照射した(紫外線強度 0.2 mW/cm2)
。
水を加えて
溶液の一部を遠心分離した後、664 nm の吸
2.5 L にし、
光度と 550~700 nm の吸収スペクトルを測定
氷冷しなが
した。対照実験として、マグネチックスター
ら、マグネ
ラーで撹拌しながら、光を照射しない条件で
チックスターラーで攪拌し、pH を測定しな
実験した結果と比較した。
がら、ビュレットを使って 2.0 mol/L 水酸化
ナトリウム NaOH または 1.0 mol/L
Na2CO3 を 1.0 mL/分の速さで少しずつ
92 mL 加えた。得られた白い沈殿物をブフナ
ーロートを使って吸引ろ過した。さらに、水
で洗浄、吸引ろ過の操作を6回繰り返した。
90℃で 8 時間乾燥させた後、電気炉で 3 時間
焼結し、メノウ乳鉢で粉砕し、白い粉末を得
紫外線照射
た。
(3)遷移金属の共沈法による可視光応答光触
(5)可視光応答型光触媒作用の評価方法
媒の合成
300 mL のビーカーに、塩化チタン(Ⅳ)
50 mL サンプル管に 10~20 mg/L のメチレ
TiCl4(Ⅳ)塩化銅(Ⅱ)
、塩化鉄(Ⅲ)
、塩
ンブルーの溶液 50 mL を入れ、
合成した有色
化コバルト(Ⅱ)
、塩化クロム(Ⅲ)を溶かし、
の遷移金属含有の酸化チタン粉末を 10~25
硫酸チタニル TiOSO4または塩化チタン(Ⅳ)
mg 入れた。マグネチックスターラーで撹拌し
TiCl4を溶かした。 (1)、(2)と同様に氷冷し
ながら、150 W のキセノンランプの光を紫外
ながら、
水酸化ナトリウム NaOH またはNa2CO3
線カットフィルターL-42(波長 420 nm 以下
を 1.0 mL/分の速さで少しずつ加え、得られ
の光カットする)を通し、可視光のみ照射し
た沈殿物をブフナーロートを使って吸引ろ過
た。溶液の一部を遠心分離した後、664 nm の
した。
吸光度と 550~700 nm の吸収スペクトルを測
さらに、水で洗浄、吸引ろ過の操作を6回繰
定した。
り返した。90℃で 8 時間乾燥させた後、電気
対照実験として、マグネチックスターラー
炉で 3 時間焼結し、メノウ乳鉢で粉砕し、有
で撹拌しながら、可視光を照射しない条件で
色の遷移金属含有粉末を得た。
実験した結果と比較した。
5
分が落ち込むことから確認できた。
② pHの影響 炭酸ナトリウムによる反応
の終点はpH が 6 であるが、 pH が 3,4,5
紫外線カットフィルターL-42
で反応を終了させた場合の粉末について調べ
た。pH が 3 では焼結後少し色があり、メチ
水
150 W
キセノン
ランプ
レンブルーを分解しなかった。反応の終点の
紫外線カット
フィルタ- L-42
pH が 5 の場合よりpH が 6 の場合が、
メチレ
ンブルーの分解の性能が良いことがわかった。
TiO2の等電点(アナターゼ 6.1、ルチル 5.6)に
マグネチックスターラー
関係がある。
暗箱
Cl-
H
3―3)実験結果と考察
H
+
o+
H
o
Na+
o
(1)硫酸チタニルからの酸化チタン光触媒
① 加える水溶液と洗いの影響
水酸化ナトリウム水溶液を使うと、終点の
pHは 11.4 であった。
炭酸ナトリウム水溶液
O-Ti-O
O-Ti-O
pH 3
pH 6
O-Ti-O
pH 12
③ 焼結温度の影響 炭酸ナトリウムを使
を使うと、終点のpHは 5.9 であった。焼結
って沈殿させたものを乾燥し、その後に焼く
前後の質量を測定した。水洗いをすると、
温度の影響について調べた。200 ℃と 300 ℃
TiO(OH)2(式量 97.9)から TiO2(式量 79.9)
では、メチレンブルーを吸着はするが、分解
が生成したことが分かるが、沈殿物を水洗い
はしない。400 ℃から 700 ℃までは、メチレ
しないと理論値と一致しない。硫酸ナトリウ
ンブルーを吸着し、分解するが、400 ℃の場
ムが残ったためと考えられる。
合が分解速度が速いことがわかった。メチレ
水酸化ナトリウム水溶液を使い、水洗いす
ンブルーが吸着されたか分解されたか、吸収
る方法で得られたものは焼結後堅くて粉砕し
スペクトルの 605 nm と 664 nm の形から判断
にくく、メチレンブルーを吸着するが、光触
できるが、分解されても、分解生成物の影響
媒作用は示さなかった。
で低濃度になると測定が困難であることがわ
炭酸ナトリウム水溶液を使って得られたも
かった。一次反応では濃度の対数と時間のグ
のは、
焼結後簡単に粉砕できた。
暗状態でも、
ラフが直線関係になり、傾きから反応速度係
濃度が減少するが、吸収スペクトルが最初と
数が得られる。400℃から 700℃まで、直線関
似た形になり、照射時間により濃度の減少が
係が得られた。ただし、反応して濃度が低く
少ないことから、吸着による影響であること
なると、分解生成物の影響で直線関係からは
がわかる。光照射すると、洗い無しの場合は
ずれた
わずかに分解するが、洗った場合には、メチ
レンブルーがよく分解されていることが、吸
(2) 塩化チタン(Ⅳ)からの酸化チタン光
収スペクトルの 605 nm と比べて 664 nm の部
触媒の合成
6
図4
塩化チタン(Ⅳ)を使うと、pH 3.6 付近
塩化鉄(Ⅲ)
、塩化コバルト(Ⅱ)
、塩化クロ
で沈殿が多量に生成する。そこで、反応の終
ム(Ⅲ)を溶かし、硫酸チタニル TiOSO4また
点の違いと冷却条件による違いを調べた。冷
は塩化チタン(Ⅳ)TiCl4を原子比 1:0.01
却温度が低い方がよく、さらに、pH が 6 付
になるように溶かした。1.0 mol/L 炭酸ナト
近の方が良いことがわかった。
リウムNa2CO3 を 1.0 mL/分の速さで少しずつ
反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液と水酸化
加え、反応液の終点をpH 6 とpH 10 になる
ナトリウム水溶液を使った場合を比較した。
ようにした。得られた沈殿物をブフナーロー
炭酸ナトリウム水溶液でpH 9 および水酸化
トを使って吸引ろ過し、洗浄した。90℃で 8
ナトリウムでpH 12 を反応の終点にした場合
図6
時間乾燥させた後、電気炉で 3 時間 400℃で
にメチレンブルーを強く吸着することがわか
焼結し、メノウ乳鉢で粉砕し、有色の遷移金
った。これは TiO2 の等電点がpH 6 付近にあ
属含有粉末を得た。
り、水酸化チタンを沈殿させるpH が高いと、
① 遷移金属の種類
生成した酸化チタンが負に帯電するため、正
TiCl4 の水溶液から、共沈法により4種類の
に帯電したメチレンブルーを吸着しやすいた
金属(Cu、Co、Cr、Fe)をドープして合成し
めだと考えられる。市販の ST-01(石原産業
た光触媒が、
可視光応答性を示すか実験した。
KK)より吸着が強いことがわかった。よく分
合成反応時の溶液の終点がpH 6 で合成し
解した場合には、写真のようにメチレンブル
たものは、5.0 mg/L のメチレンブルー50 mL
ーの青色から、青紫色に変化した。吸収スペ
を使い、粉末 30 mg を加えて、実験を行った。
クトルの変化と対応している。
図7
可視光照射しないものは、マグネチックスタ
ーラーで攪拌すると、10 分間でメチレ
紫外線照射
暗
メチレンブルーの濃度 mg・L
-1
ンブルーの濃度ほぼ同じになる。可視
10
光照射すると、
メチレンブルーの濃度が下がった。
1
それぞれ Ti: Cu=1:0.01、Ti: Co=
1:0.01、Ti: Cr=1:0.01、Ti:Fe=
0.1
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
1:0.01 のようになった。吸収スペクト
ルは、605nm のショールダーに比べ、
時間(分)
出発物質と加えた溶液と終点のpH (粉末10 mg)
TiCl4 NaOH pH12
TiCl4 Na2CO3 pH9
市販ST-01
50
TiOSO4 Na2CO3 pH6
TiCl4 NaOH pH6
664nm の吸光度のピーク部分がやや落
ち込み、最大吸収波長が短波長にシフ
トしたスペクトルが得られた。
(3) 可視光応答型光触媒
塩化チタン(Ⅳ)TiCl4(Ⅳ)塩化銅(Ⅱ)
、
7
暗
プを中心においた浄化装置「アクアソリュー
可視光照射
ション」を開発している。
メチレンブルーの濃度/ mg・L
-1
10.0
しかし、コストを考えて、自然の太陽光を
使いたい。そのためには、水に浮く材料が好
ましい。そのためには、水に浮く発泡リサイ
クルガラス(文献4)に担持させる方法を採
1.0
-30
0
30
60
90
用した。太陽光で、池やプールなどの濁った
時間/分
図8-5 1:0.01 pH6 30mg、 5.0 mg/Lメチレンブルー50mL
Co 0.01 pH6 照射
Fe 0.01 pH6 照射
Cu 0.01 pH6 照射
Cr 0.01 pH6 照射
水の浄化を、水に浮く特徴の酸化チタン光触
Co 0.01 pH6 暗実験 Fe 0.01 pH6 暗実験 Cu 0.01 pH6 暗実験 Cr 0.01 pH6 暗実験 媒担持発泡リサイクルガラスを使った(文献
5)
。
3-4)研究成果
<光触媒作用と藻の発生を抑制>
柏中央高校化学部で活動した、石井健治君
光触媒作用の確認には、紫外線で退色しに
が2008JESCで発表しJFEスチール賞を受賞し
くい、メチレンブルーの色素を使うことにし
た。
た。光が強い太陽光下では、汚れた水ほど藻
4.発泡リサイクルガラスによる水処理と防
が発生しやすい。藻が発生してしまうと、光
藻効果
触媒を担持した物資の表面が覆われて、光が
<担持させる物質>
届かなくなり、光触媒の作用を発揮できなく
なる。
担持させる物質としては、セラミッスボー
ル、多孔質の酸化アルミニウムのセラミック
水に溶けにくい無機系の防藻剤が必要であ
スシート(盛和工業)、PTFE(ポリテトラフル
る。よく知られているものに、銀、パラジウ
オロエチレン)の眼開きシート(日東電工)、
ム、ニッケルが考えられる。
アルミニウム繊維、ポリオレフィン系の不織
<光触媒と防藻を両立させることができるか
布シート(日本バイリーン)に酸化チタンを
>
防藻剤として金属成分を付与させすぎると、
担持させたものが開発されている。水処理に
ついては、セラミックスシートでトマトの栽
酸化チタン表面が金属成分で覆われて、光触
培液の処理試験が行われているが、藻が発生
媒効果が損なわれる。そこで、光触媒効果が
するなどの課題があって、実用化の道のりが
失われず、金属成分をどの程度つければ、防
遠い。
藻効果が持続できるか研究することにした。
<担持させる物質でなぜ発泡リサイクルガラ
ただし、金属イオンが一部溶け出す可能性が
スを選んだか>
あるので、金属イオンの濃度測定と、メダカ
に対する影響調査を行うことにした。
空気と違い、水は大変重いので、水のとの
接触が良くないと効果を発揮しない。水処理
<グリーンケミストリー
(環境に優しい化学)
で紫外線の光源として、UVC(254 nm)のUV
>
ライトや、365 nmが主なUVAのブラックライト
今回使った、発泡リサイクルガラスは、使
を使う方法がある。宇部興産では、水処理と
用済みのガラスを再利用して作られたもので
して、
高強度 酸化チタン不織布と紫外線ラン
ある。また発泡リサイクルガラスは水に自然
8
に浮く性質がある。光触媒作用を発揮させる
のに、自然界にある太陽光を使って、水を浄
化するという意味で、グリーンケミストリー
(環境に優しい化学)の一環である。
4-1)研究材料
試薬:酸化チタンゾル(石原産業 STS-01)、
メチレンブルーC16H18N3SCl、硝酸銀、塩化
スズ(Ⅱ)、濃塩酸、塩化パラジウム、次亜
電気炉で350℃で焼結
リン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、クエ
②太陽光下での遊水池の水の浄化実験
ン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、発泡リサイ
1Lビーカーに、大柏川第1調節池(北方遊
クルガラス(アイリスKK)、硫酸、過マン
水池)の水を入れ、酸化チタン担持発泡リサ
ガン酸カリウム、シュウ酸、パックテスト
イクルガラス20gを入れて、よく日の当たる
WAK-Ag、パックテストWAK-Ni、メダカ、ミジ
場所に置く。
ンコ、標準寒天培地「ダイゴ」
③ Ag、Pd、Niの添加方法
器具:電気炉(城田電気炉材、GT-2)、ブラ
ⅰ) Agの添加:硝酸銀水溶液に酸化チタン担
ックライト(10W)、マグネチックスターラ
持発泡リサイクルガラスを入れ、引き上げた
ー、
紫外可視分光光度計
(島津、
UV-mini1240)
、
後にブラックライトからの紫外線を照射して、
1Lビーカー、24L水槽、ペットボトル、2.6
酸化チタンの光触媒作用のうちの還元性を利
L水槽、乾熱滅菌器、減菌シャーレ、コラー
用して、表面に銀を析出させる。
ジ棒、オートクレーブ、インキュベーター
ⅱ) Pdの添加:水に塩化スズ(Ⅱ)0.1gと濃塩
4-2)研究方法
酸0.1mLを加えて溶かし、
全量を100mLにする。
① 酸化チタンの担持方法
水に塩化パラジウム0.01gと濃塩酸0.01mLを
500mLビーカーに発泡リサイクルガラスを
加え、マグネチックスターラーでよく攪拌し
入れ、酸化チタンゾル液(STS-01)を300mL
て溶かし、全量を100mLにする。酸化チタン担
加えて吸着させる。液から発泡リサイクルガ
持発泡リサイクルガラスを塩化スズ(Ⅱ)水溶
ラスを出し、
電気炉で350℃まで3時間かけて
液に1分程度浸した後に、塩化パラジウム水
除々に上げ、350℃で3時間保った後に、温度
溶液に1分程度浸し、パラジウムを析出させ
を徐々に下げた。
る(Sn2++Pd2+ → Sn4++Pd)。
発泡リサイクルガラスを浸す
SnCl2に浸す
9
ールピペットで 10.0 mL 正確に加える。1L
ビーカーに入れて加熱し、
沸騰して 30 分間加
熱を続ける。0.005 mol/L シュウ酸ナトリウ
ム溶液 10.0 mL を加えて脱色させ、ただちに
ビュレットから 0.002 mol/L 過マンガン酸カ
リウム溶液を微紅色が消えずに残るまで滴定
PbCl2に浸す
する(a mL)。ただし、加熱したとき、紫紅
ⅲ) Niの添加:次亜リン酸ナトリウム1.59g、
色が消失する場合は、別に検水を適量とり、
硫酸アンモニウム6.6g、クエン酸ナトリウム
蒸留水を加えて100 mLとしたものについて再
5.88g、硫酸ニッケル2.63gを水に溶かして
度はじめから操作する。蒸留水を 100 mL 入れ
全量を100mLにし、ニッケルメッキ浴とする。
たものについても同様に操作し、滴定した(b
90℃に加熱したニッケルメッキ浴に、パラジ
mL)。
ウムを析出させた酸化チタン担持発泡リサイ
COD は次式により計算した。
クルガラスを入れ、無電解のニッケルメッキ
COD の値(O2-ppm)=10(a-b)F×8/検
2
-
23
を行う(NiSO4+H2PO +3OH →Ni+HPO +
水 mL
SO42-+2H2O)。副反応として水素が発生する
ウム溶液の力価である。
(H2PO2-+H2O→H3PO3-+H2)
⑥ Ag、Niの添加した酸化チタン担持発泡リ
F は 0.002 mol/L 過マンガン酸カリ
サイクルガラスからの金属イオンの溶出の確
認方法
1Lビーカーに水を入れ、Ag、Niの添加した
酸化チタン担持発泡リサイクルガラス20gを
入れて、数日放置し、パックテストでAg、Ni
イオンの濃度を測定した。
⑦ メダカを使った影響調査
1Lのペットボトルの容器にメダカを4匹い
ニッケルメッキ液 90℃にして入れる。
れ、Ag、Pd、Niを添加した酸化チタン担持発
④ 防藻効果の確認方法
泡リサイクルガラス10gを入れ、メダカに対
1Lビーカーに、大柏川第1調節池(北方遊
する影響を調べた。
水池)の水を入れ、Ag、Pd、Niの添加した酸
化チタン担持発泡リサイクルガラス20gを入
れて、よく日の当たる場所に置く。藻の発生
状況を観察する。
⑤ CODの測定
CODを酸性過マンガン酸カリウム法で測
定する。200 mL三角フラスコに検水100 mLを
とり、これに硫酸(1+2)を5 mL入れ、
0.002 mol/L 過マンガン酸カリウム溶液をホ
0.001mol/L Ag処理
10
吸光度 /ABS
4-3)成果と考察
(1) 酸化チタンの担持
1:TiO2 2:TiO2
担持+光 担持
RG によ
る吸着
TiO2 によ
る吸着
光触媒作
用
3:RG の 4:RG
み+光 のみ
×
×
◎
◎
○
○
×
×
○
×
×
×
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
5
10
15
20
時間 / 分
25
30
酸化チタン担持リサイクルガラスによるメチレンブルーの分解
1:TiO2担持+光
<条件>350℃ 3時間熱処理
3:RGのみ+光
4:RGのみ
<考察1> メチレンブルーの664 nmの吸光
<結果>発泡リサイクルガラス61.4 g
度の変化から、
濃度が減少したことがわかる。
酸化チタンゾル液(STS-01)の吸着量 25 mL
焼結後の質量増加
2:TiO2担持
濃度の減少には、発泡リサイクルガラス自身
4.6 g
の色素の吸着、
酸化チタンによる色素の吸着、
<考察> 発泡リサイクルガラスの表面に酸
酸化チタンの触媒作用による分解の3つが考
化チタンが付着し、約7.5 %質量が増加した
えられる。
ことがわかる。ゾル液の密度1.2 g/cm3 から
グラフの3(RGのみ+光)と4(RGのみ)
4.6/(25×1.2)=0.15と、ゾル液中の酸化チ
で、減少傾向がほぼ同じことから、発泡リサ
タンとバインダーの量が15 %であることが
イクルガラス自身の色素の吸着がかなりある
わかる。
ことがわかる。
(2) 光触媒作用
グラフの2(TiO2担持)と4(RGのみ)を
①メチレンブルーによるモデル実験
比較すると、TiO2担持の方の減少傾向が少な
<条件1> 200 mLビーカーにメチレンブル
い。発泡体自身は凸凹が多く表面積が非常に
ー(9.4×10-6 mol/L)150 mL
20g酸化チタン担持発泡リサイクルガラス、
未処理発泡リサイクルガラス
大きいが、TiO2担持した場合に、凸凹が埋め
られ、表面積が小さくなったことと、ガラス
SiO2よりTiO2の方の吸着力が小さいことのど
ブラックライト10 W 2本照射 紫外線強度
ちらかが原因だと考えられる。
0.5 mW/cm2
グラフの1(TiO2担持+光)と2(TiO2担
マグネチックスターラーで攪拌
持)
を比較すると、
光触媒作用を確認できる。
吸光度は664 nm スペクトル測定は500 nm
さらに、スペクトルを比較すると、吸着の場
から800 nm
合の4(RGのみ)の5分後のスペクトルの形は、
<結果1>
実験開始前の0分のスペクトルと同じである。
光触媒作用による分解の場合は664 nmのピ
ークが減少し、600 nm付近のショールダーの
形の吸光度の減少があまりみられないスペク
トルになり、分解生成物が生じていることが
わかる。
11
吸光度 /ABS
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
5
10
15
20
25
30
時間 / 分
酸化チタン担持リサイクルガラスによるメチレンブルーの分解
1:TiO2担持+光
0分
2:TiO2担持
4:RGのみ
3:RGのみ+光
<考察2>
発泡リサイクルガラス自身の色素の吸着よ
り、酸化チタンの触媒作用による分解の方が
メチレンブルーの664 nmの吸光度の減少が大
きいことがわかる。濃度を大きくして点と、
2回目の実験で、1回目に吸着した部分が、
吸着しにくくなっているのがわかる。対数プ
ロットのグラフより、吸着の方は横ばいに近
いグラフになるが、光触媒による分解は直線
4(RGのみ)の5分後と1(TiO2担持+光)の15分後
に近いグラフになっている。
吸光度 /ABS
10.00
1.00
0.10
0.01
0
1:TiO2担持+光 2:TiO2担持 3:RGのみ+光 4:RGのみ
5
10
15
20
時間 / 分
25
30
酸化チタン担持リサイクルガラスによるメチレンブルーの分解(2回目)
実験後の様子を見ると、1(TiO2担持+光)
1:TiO2担持+光
2:TiO2担持
3:RGのみ+光
4:RGのみ
のみが表面が白く、光触媒作用で分解されて
実験後の様子を見ると、吸着の場合は、溶
いることが確認できる。吸着力には限界があ
液の色はメチレンブルーの青色のままである
り、
光触媒作用は持続することが考えられる。
が、光触媒による分解の場合は、分解生成物
そこで、さらに、メチレンブルーの濃度を増
の関係で色が紫に変化している。酸化チタン
やして実験を行った。
表面も、完全ではないが、分解されて色が薄
<条件2>200 mLビーカーにメチレンブルー
くなっているのが分かる。
-5
(2.6×10
mol/L)150 mL
20g酸化チタン担持発泡リサイクルガラス
(条件1で使ったもの)
未処理発泡リサイクルガラス(条件1で使っ
たもの)
1:TiO2担持+光 2:TiO2担持 3:RGのみ+光 4:RGのみ
(3)酸化チタン表面へのAg、Pd、Niの析出と
12
化した。
光触媒効果
Niの無電解メッキを同じ液で行ったので、
① Ag、Pd、Niの析出
<結果>
ⅰ) Agの析出:紫外線を照射してAgを析出させ
メッキの量が異なり、1回目は非常に黒くな
ったが、5回目は黒さがかなり薄くなった。
た結果
② Ag析出によって酸化チタン光触媒の効果
は減少しないか
<条件1>
200 mLビーカーにメチレンブルー(2.6×10-5
処理液 0.1mol/L
mol/L)150 mL
20g Ag(0.01, 0.003, 0.001 mol/Lで処理)
の添加の酸化チタン担持発泡リサイクルガラ
ス、
0.01mol/L
吸光度 /ABS
1.2
0.003mol/L
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
10
20
30
40
時間 / 分
50
60
酸化チタン+Ag担持リサイクルガラスによるメチレンブルーの分解
0.001mol/L AgNO3
1:TiO2+0.001Ag+光
2:TiO2+0.001Ag
3:TiO2+0.003Ag+光
4:TiO2+0.003Ag
5:TiO2+0.01Ag+光
6:TiO2+0.01Ag
<考察1> Agを0.01, 0.003, 0.001 mol/L
ⅱ) Pdの析出:
で処理することにより、付けたものは、最も
薄い0.001mol/Lで処理したものが、最も光触
媒による作用があることがわかる。
Agを処理しないものと比較すると、光照射
表面のPdが析出
しない場合に、吸着力が非常に弱くなってい
ⅲ) Niの析出:無電解メッキ
るのがわかる。
③ Pd、Niの析出によって酸化チタン光触媒
の効果は減少しないか
<条件2>200 mLビーカーにメチレンブルー
1回目
2回目 3回目 4回目
5回目
(2.6×10-5 mol/L)150 mL
表面が黒くなり、Niが析出
20g Pd、
Niの析出の酸化チタン担持発泡リサ
<考察>
イクルガラス、
Agは濃度が薄くなると、
黒色が少なくなり、
Agの析出量が小さくなったことがわかる。
Pdが析出し、表面の色が白から薄く色が変
13
<結果2>
して銀を析出させた酸化チタン担持発泡リサ
吸光度 /ABS
1.2
1.0
イクルガラスを入れた方は、藻の繁殖を押さ
0.8
0.6
えられることがわかった。そこで、Ag につい
0.4
ては水を入れ替え、Pd,Ni を析出させたもの
0.2
0.0
0
10
20
30
40
時間 / 分
50
も同時に実験を行った。
60
<結果2>実験開始
酸化チタン+Pd,Ni担持リサイクルガラスによるメチレンブルーの分解
1:TiO2+Pd+光
2:TiO2+Pd
3:TiO2+Ni+光
4:TiO2+Ni
<考察2>
Pdを付けたものは、光に有無により差が大き
Ag
く、
光触媒作用があるが、
Niを付けたものは、
0.003 mol/L 0.001 mol/L
光の有無による差が小さく、光触媒作用が非
対照
常に小さいことがわかる。金属を析出させな
いものと比較すると、光照射しない場合に、
吸着力が非常に弱くなっているのがわかる。
Pd
Ni
(4)防藻効果
10 日後
<条件>
1Lビーカーに大柏川第1調節池(北方遊水
池)の水
Ag、Pd、Ni析出させた酸化チタン担持発泡リ
Ag
サイクルガラス20g、対照実験
0.003 mol/L 0.001 mol/L 対照
よく日の当たる場所
<結果1>Ag
実験開始 Ag
Pd
Ni
<考察2>
Agの場合、約1週間後には、藻の繁殖が抑
0.003
0.001
えられ、水面には藻が少し存在するが、水中
対照
で接している部分には藻が付着していなかっ
4日目
た。水を入れ替えたにも関わらず、藻を押さ
える効果があることがわかった。
Pdでは、藻が表面に多量に存在し、水中で
接している部分も藻で覆われていた。Pdでは
藻を押さえる効果はなかった。ただし、Pdが
<考察1>
付着した量が少ないので効果が出なかったの
0.003 及び 0.001 mol/L の硝酸銀溶液で処理
かも知れない。
14
Ni では最初にメッキしたものが、約1週間
化チタン担持リサイクルガラスで防藻試験し
して効果が現れはじめ、10 日後には溶液の色
た溶液について、銀イオンが溶出しているか
が変化した。藻が完全にバラバラになったと
パックテストで調べたが、
検出できなかった。
考えられる。藻がなくなり、水中で接してい
500mL入れた0.01mol/LでAgを付けた酸化
る部分にも藻は存在しなくなった。ただし、
チタン担持リサイクルガラスを入れたもので
5回目にメッキしたものは、藻の抑制効果は
も検出できなかった。ただし、検出限界は0.5
なかった。Ni の析出量が少ないと効果が出な
mg/Lである。
いと考えられる。
(5) COD の測定
ⅱ)Ni
1L容器で最初にNiを付けた酸化チタン担
<条件>
酸性過マンガン酸カリウム法(沸騰水浴中で
持リサイクルガラスで防藻試験した溶液につ
30分加熱)
いて、ニッケルイオンが溶出しているかパッ
クテストで調べたると、10 mg/Lであった。
1Lビーカーに大柏川第1調節池(北方遊水
500mL入れた、
3回目にNiを付けた酸化チタ
池)の水
ン担持リサイクルガラスを入れたもので、1
Ag、Pd、Ni析出させた酸化チタン担持発泡リ
サイクルガラス20g、対照実験
mg/Lであった。
よく日の当たる場所 1週間後
<考察>
Agを付けた酸化チタン担持リサイクルガラ
<結果>
金属
Ag
対照
処理方
法
COD
33
mg/L
<考察>
Pd
Ni
スからAgイオンが溶け出しているかもしれな
メッキ
1回目
いが、パックテストの検出限界は0.5 mg/L以
54
0.003
mol/L
0.001
mol/L
処理2
回目
17
21
29
下であることがわかった。
Niを付けた酸化チタン担持リサイクルガラ
スからは、1回目に無電解メッキしたものか
Agの場合、光触媒作用により、対照と比べて
ら、10 mg/L検出された。
水が浄化されたことがわかる。Niの場合は逆
② メダカを使った影響調査
にCODが増加した。
理由は溶液が着色したため
ペットボトルの容器にメダカをいれ、Ag、
で、細胞壁や細胞膜が破壊され、細胞の内容
Niを添加した酸化チタン担持発泡リサイクル
物が多量に溶け出したためだと推測される。
ガラスを入れ、
メダカに対する影響を調べた。
(6) Ag、Niの金属イオンが溶出と、メダカ・
<条件>
ミジンコへの影響調査
Ag、Ni析出させた酸化チタン担持発泡リサイ
① 金属溶出
クルガラス 10g
ⅰ)Ag
ペットボトルに大柏川第1調節池(北方遊水
1L容器で
池)の水 1L
0.003、
0.001mol/Lで
Agを付けた酸
メダカ 4匹
<結果>
Ag の測定結果 検出限界以下
15日後、いずれの水槽のメダカも異常
15
<条件1>
がなかった。
24L水槽に大柏川第1調節池(北方遊水
<考察>
池)の水
ニッケルイオンは少し溶出することから、
魚への影響を心配したが、短期間であるが、
問題はなかった。ニッケルについては、さら
に長期間の試験が必要である。銀イオンはほ
とんど溶出していないので、メダカへの影響
がないと予想されたが、それが確認できた。
③ミジンコを使った影響調査
銀イオンはほとんど溶出していないが、非
常にわずかに溶出して、藻の発生を抑えられ
Agを析出させた酸化チタン担持発泡リサイ
ると考えられる。そこで、メダカよりさらに
クルガラス(Ag+TiO2) 1.2L、
体が小さいミジンコを使って、影響調査をし
対照実験として、酸化チタン担持発泡リサ
た。
イクルガラス(TiO2) 1.2L
<条件>
発泡リサイクルガラスのみ(RG) 1.2L
2.6L容器 水1.3LL、ミジンコ多数
エアレーション、餌(イースト菌粉末)
RG
、TiO2、
RG
Ag+TiO2 5個ずつ
TiO2
Ag+TiO2
よく日の当たる場所 1ヶ月間
<結果>
<結果>
15日後、いずれ
の水槽のミジン
①表面の様子
コも異常がなか
21日目後
った。
<考察>
15日間では、体が小さいミジンコに影響を
与えないことが分かった。さらに長期間実験
RG
TiO2
Ag+TiO2
を行い、
世代を通じて影響がないか調べたい。
(7) 中規模実験
1Lビーカーでの実験でほぼうまく出来るこ
とがわかったので、
24L水槽を使い実験を行っ
た。
RG
16
さらに、水を入れ替え、同じ発泡リサイク
ルガラス、酸化チタン担持発泡リサイクルガ
ラス、Agを析出させた酸化チタン担持発泡リ
サイクルガラスを使い、50日間観察した。水
が蒸発するので、途中で水を追加した。
TiO2 にも藻
<条件2>
が発生した。
24L水槽に大柏川第1調節池(北方遊水
池)の水
<結果>
50 日後
Ag+TiO2
②水質
CODを酸性過マンガン酸カリウム法(沸騰
水浴中で30分加熱)により測定した。
②水質
<結果>
CODを酸性過マンガン酸カリウム法(沸騰
採水した液 14 mg/L
水浴中で30分加熱)により測定した。
<結果>
20日後
採水した液
RG
9.0 mg/L
TiO2
50日後
4.0 mg/L
Ag+TiO2
4.4 mg/L
実験結果
COD
mg/L
21 mg/L
21 mg/L
TiO2
20 mg/L
Ag+TiO2
11 mg/L
<考察>
光触媒
16
14
12
10
8
6
4
2
0
RG
20L 規模の水槽を使った継続した1ヶ月半
作用
にわたる実験により、藻が発生した酸化チタ
ン担持発泡リサイクルガラスでは、水質浄化
の機能が失われ、Ag を析出させた酸化チタン
RG
TiO2+RG
最初
Ag+TiO2+RG
担持発泡リサイクルガラスには藻が発生せず、
28日後
水質を改善できることがわかった。
CODの変化
(8) 負荷をかけた中規模実験
<考察>
<条件2>
20L 規模の水槽を使った1ヶ月にわたる実
12L水槽に水道水10Lメダカ7匹で毎日餌
験により、Ag を析出させた酸化チタン担持発
を与える。
泡リサイクルガラスには藻が発生せず、水質
を改善できることがわかった。
17
RG
500mL
TiO2
500mL
Ag+TiO2 500mL
日の当たる場所 1ヶ月間
<結果>
開始
水を滅菌水で希釈
RG
TiO2
シャーレにまく
Ag+TiO2
30 日後
コラージ棒で拡げる
①水槽 50 日後
Ag+TiO2
RG
TiO2
Ag+TiO2
TiO2
水槽から引き上げた状態
RG
1000倍 100倍 10倍希釈
1000 倍希釈で Ag+TiO2 では菌数0で、抗
菌効果があることがわかった。
RG
藻が多い
TiO2
藻が発生
②メダカを入れた水槽 30 日後
Ag+TiO2
Ag+TiO2
藻なし
<考察>
TiO2
メダカを入れた水槽を使った実験により、
RG には藻が発生しやすく。TiO2 担持発泡リサ
RG
イクルガラスでは、藻が発生し水質浄化の機
100 倍 10 倍希釈
能が失われ、 Ag+TiO2 担持発泡リサイクル
黄色いコロニーが出現した。
ガラスには藻が発生しないことがわかった。
(9) 水の抗菌効果
黄色いコロニー数
RG
TiO2
Ag+TiO2
10 倍希釈
100 倍希釈
70
8
92
32
18
1
酸化チタン光触媒は抗菌効果が知られてい
る。水槽に入れた場合に抗菌作用を示すか、
TiO2 は藻が発生したことから、抗菌効果は
RG と比べてなかった。Ag+TiO2 は RG と比べて
水を採水し、滅菌水で希釈し、50μL をシャ
菌数が少ないことから、抗菌効果が水でもある
こがわかった。
ーレの寒天培地に撒いて、35℃で2日間培養
し菌数を数えた。
3-4)結論
①酸化チタン光触媒を発泡リサイクルガラス
18
に担持させることができ、
質量は約7.5%増加
査でも15日間では影響はなかった。
した。光触媒作用を確認できた。メチレンブ
(7)20Lの水を使った水槽による、1ヶ月に
ルーについては、担持させていない元の発泡
わたる実験により、Agを析出させた酸化チタ
リサイクルガラスの方がたくさん吸着する。
ン担持発泡リサイクルガラスには藻が発生せ
繰り返し実験すると、吸着能力が途中で飽和
ず、水質を改善できることがわかった。さら
になるので、光触媒作用を担持させた方がメ
に、Agを析出させた酸化チタン担持発泡リサ
チレンブルーの除去に効果的である。光触媒
イクルガラスには抗菌効果があることがわか
作用でメチレンブルーが分解されたことを、
った。
吸収スペクトルの波形から確認できた。
3-5)研究成果
②学校の近くの遊水池の水に酸化チタン担持
1)
市川高校化学部の生徒が2012年3月日化関
発泡リサイクルガラスを入れると、良く日の
東支部主催の化学クラブ研究発表会で発表し
当たる場所では、表面に藻が発生した。水質
GSCジュニア賞を受賞した。
が悪い場合は、藻の繁殖が速く、酸化チタン
2)2012年度、市川高校化学部で応募した論
表面が覆われて、酸化チタンの光触媒作用が
文が第7回高校環境化学最優秀賞「松居記念
十分に発揮できなくなることがわかった。
賞」を受賞した。
③光触媒作用の還元力を利用してAgの析出、
および無電解メッキによりPd、Niの析出を、
4.謝辞
酸化チタン光触媒担持発泡リサイクルガラス
東京理科大学の藤嶋昭学長に光触媒の実験
表面にさせることができた。
方法をご指導いただいたことに感謝申し上げ
酸化光触媒の作用は金属をつけたことによ
ます。
り、メチレンブルーの吸着力が弱くなり、全
体の分解作用が弱くなった。Niについては、
5.参考文献
吸着力だけでなく、光触媒作用も失われた。
(1)藤嶋昭、渡部俊也、橋本和任、「光触
(4)防藻効果はAgで0.003 mol/LのAgNO3で
媒のしくみ」
(入門ビジュアルサイエンス)
、
析出させたものが顕著だった。Niも1回目に
日本実業出版社 2000
(2)橋本和任、大谷文章、工藤昭彦編集「光
無電解メッキした、多量にNiを付けたものに
ついて、防藻効果が認められた。
触媒 基礎・材料開発・応用」エヌ・ティ
(5)遊水池の水を使った水質浄化の実験で
ー・エス 2005
は、CODがAgを析出させた酸化チタン担持発
(3)野本邦夫、光触媒を実験で学ぼう
泡リサイクルガラでは、
浄化の効果があった。
KK のもと 2004
(6)Niの添加した酸化チタン担持発泡リサ
「光触媒実験キット」KK のもとの説明書
イクルガラスから金属イオンが10 mg/L溶出
(4)発泡リサイクルガラス(アイリスオー
していることがわかった。Agについては検出
ヤマ)
できなかった(検出限界0.5 g/mL)。メダカ
http://www.irisplaza.co.jp/Index.asp?KB=
を使った溶出した金属イオンの影響調査につ
SHOSAI&SID=G515199F
いては、影響はなかった。ミジンコの影響調
(5)第12回日本水大賞受賞活動集、日本
19
河川協会、2010
「手賀沼 の水質調査とプランクトンの生態
と光触媒による浄化」千葉県立柏中央高等学
校化学部(代表:小幡一樹、石井健治、細貝
史弥、指導教諭:中島哲人)
(6)日本化学会編、教師と学生のための化
学実験、東京化学同人、pp.126~129、1987
電気のいらない“めっき”
(7)日本分析化学北海道支部、水の分析、
化学同人、2005
(8)中島哲人、科学技術教育,37-4,
22-23,1998
「酸化チタン光触媒による環境浄化の研究」
20
Fly UP