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「JCOAL/CCT ロードマップ 第 3 版」 改訂版 (平成 28 年 3 月)

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「JCOAL/CCT ロードマップ 第 3 版」 改訂版 (平成 28 年 3 月)
「JCOAL/CCT ロードマップ 第 3 版」
改訂版
(平成 28 年 3 月)
平成 28 年(2016 年)3 月
一般財団法人石炭エネルギーセンター
技術開発委員会
目
次
は じ め に .................................................................... 1
第 1 章 背 景 ................................................................ 2
1-1. ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) ロ ー ド マ ッ プ の 目 的 ................... 2
1-1-1. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 ....................................... 2
1-1-2. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 ....................................... 3
1-1-3. NEDO/CCT ロ ー ド マ ッ プ .............................................. 4
1-1-4. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 ....................................... 6
1-1-5. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 改 訂 版 ................................. 6
1-2. CCT を 取 り 巻 く 世 界 の 動 向 ............................................... 6
1-2-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 世 界 動 向 ....................................... 6
1-2-1-1.IEA に よ る 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 見 方 .............................. 6
1-2-1-2. 米 国 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 ................................. 7
1-2-1-3. 欧 州 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向 ................................. 8
1-2-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 世 界 動 向 ....................................... 8
1-2-2-1. 世 界 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 ......................................... 8
1-3. CCT を 取 り 巻 く 国 内 の 動 向 ............................................... 9
1-3-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 国 内 の 動 向 ..................................... 9
1-3-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 国 内 の 動 向 .................................... 10
1-4. 石 炭 資 源 の 動 向 ....................................................... 10
第2章
CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 の 作 成 ........................................ 12
2-1. 前 提 と な る 考 え 方 ..................................................... 12
2-1-1. エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し 及 び 環 境 対 策 動 向 .............................. 12
2-1-1-1. 一 次 エ ネ ル ギ ー に お け る 石 炭 需 要 と 比 率 ............................ 12
2-1-1-2. エ ネ ル ギ ー 源 別 電 力 需 要 中 の 石 炭 の 構 成 比 .......................... 12
2-1-1-3. 環 境 負 荷 低 減 ................................................... 13
2-1-2. 政 策 目 標 ......................................................... 13
2-1-2-1. CO 2 削 減 目 標 .................................................... 13
2-1-2-2. エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 .............................................. 13
2-1-2-3. 革 新 的 エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 戦 略 ...................................... 13
2-1-2-4. 日 本 再 興 戦 略 ................................................... 14
2-1-3. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 施 策 の 位 置 付 け .................................. 14
2-1-4. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 .................................. 15
2-1-4-1. 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 ............................................ 16
2-1-4-2. バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 と CO 2 削 減 効 果 ............... 19
2-1-4-3. 低 品 位 炭 利 用 ................................................... 34
2-1-4-4. 環 境 対 策 ....................................................... 37
2-1-5. 今 後 の 検 討 ....................................................... 37
2-2. CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 に つ い て ........................................ 37
2-2-1. 石 炭 火 力 の 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 ...................................... 38
2-2-1-1. 石 炭 火 力 発 電 技 術 ................................................ 38
2-2-1-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 .............................................. 38
2-2-1-3. CO 2 回 収 技 術 .................................................... 38
2-2-2. 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用 .............................................. 38
2-2-2-1. 改 質 炭 利 用 技 術 ................................................. 39
2-2-2-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 .............................................. 39
2-2-2-3. 石 炭 火 力 発 電 技 術 ................................................ 39
2-2-3. 環 境 対 策 ......................................................... 39
2-3. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ................................................ 40
図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 中 長 期 開 発 ) ............................. 40
図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 コ ス ト 化 ) ............................. 41
図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 品 炭 チェーンの 確 立 ) ....................... 42
2-4. 個 別 技 術 ............................................................. 43
第3章
ま と め ............................................................ 100
技術開発委員会
委 員 名 簿 .................................................. 102
はじめに
石 炭 は 、そ の 供 給 安 定 性 、価 格 安 定 性 の 観 点 か ら 世 界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー に お い て 重 要 な
役割を担うものであり、今後もその位置付けは変わらないと考えられる。我が国において
は 、石 炭 火 力 発 電 の 燃 料( 一 般 炭 )と し て エ ネ ル ギ ー 供 給 の 約 4 分 の 1 を 占 め 、ま た 製 鉄
用原料(原料炭)としても不可欠であり、その重要性は高い。
2011年 の 東 日 本 大 震 災 に 起 因 し た 原 子 力 発 電 比 率 の 縮 減 等 を 受 け て 、2014年 4月 、政 府
に よ る エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 の 見 直 し が 行 わ れ た 。そ の 中 で 石 炭 は 、
「温暖化ガスの排出量が
大きいという問題はあるが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量当たりの単
価も化石燃料の中で最も安いことから、安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード
電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力の有効利用等に より環境負荷を低減
し つ つ 活 用 し て い く エ ネ ル ギ ー 源 で あ る 。」と さ れ て い る 。当 該 課 題 を 含 め て 我 が 国 が 有 し
て い る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) は 世 界 を リ ー ド す る も の で あ り 、 今 後 の 技 術
開発に関し常に進むべき方向を明確にしていく必要がある。
本 ロ ー ド マ ッ プ は 、 基 本 的 に 2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ シ ョ ン 化 を 念 頭 に 置 い て お り 、
今 後 の CCT 開 発 の 指 針 ・ 開 発 技 術 の 骨 格 を 示 し 、 CCUS を 含 む 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 技 術 、
低品位炭の多用途化技術、環境対策技術の総合的な開発促進を目的として作成するもので
ある。
今 回 、 石 炭 火 力 発 電 所 か ら の CO 2 排 出 に 関 わ る 議 論 を 定 量 的 に 行 う 必 要 が あ る と 考 え 、
第 3 版 改 訂 版 と し て 、バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT(A-USC、IGCC、IGFC)及 び CCUS 導 入 シ
ナ リ オ を 想 定 し た CO 2 排 出 削 減 量 に つ い て 検 討 し た 。 検 討 結 果 は 、「 2-1-4-2. バ イ オ マ ス
混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 と CO2 削 減 効 果 」 に 記 載 し た 。 ま た 、 改 訂 版 で は 、 第 1
章図表のアップデートを行った。
1
第1章
背景
1-1. ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) ロ ー ド マ ッ プ の 目 的
2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に 起 因 し た 原 子 力 発 電 比 率 の 低 下 及 び 地 球 温 暖 化 対 策 と し て の
CO 2 削 減 の 両 面 か ら 、 政 府 は 抜 本 的 な エ ネ ル ギ ー 基 本 戦 略 の 見 直 し を 行 っ た 。 石 炭 火 力 発
電をはじめとした石炭の一層の効率的利用は必要不可欠な課題であり、我が国が世界をリ
ー ド し て い る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー ( CCT) は 常 に 進 む べ き 方 向 を 明 確 に し て い な
け れ ば な ら な い 。 こ の 見 地 に 立 ち 、 一 般 財 団 法 人 石 炭 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー ( JCOAL) は 、
技 術 開 発 委 員 会 に お い て 、 CCT ロ ー ド マ ッ プ を 下 記 の 目 的 で 作 成 し て い る 。
1)官 民 学 共 同 で の CCT 開 発 の 推 進 に よ り 、我 が 国 へ の 資 源 安 定 供 給 に 資 す る 石 炭 利 用
産業の持続的発展という基本理念を目指す。
2) 環 境 対 策 、 石 炭 資 源 確 保 を ベ ー ス と し て 、 今 後 の 石 炭 技 術 開 発 を 取 り 巻 く 動 向 を 念
頭 に 置 い て 、 特 に 事 業 者 に と っ て の 2050 年 ま で の CCT 開 発 の 道 筋 を 一 葉 で 網 羅 的
に示す。
3) 個 表 に お い て 、 CCT 開 発 の 現 状 と 課 題 を 示 し 、 将 来 に 向 け た 技 術 開 発 の あ る べ き 方
向性を示す。
4) 国 の 主 導 で 推 進 す べ き プ ロ ジ ェ ク ト の 候 補 を 発 掘 ・ 抽 出 し 、 政 策 提 言 へ と 結 び つ け
る。
1-1-1. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版
JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版 は 、 2010 年 度 に 作 成 さ れ た 。 こ の 第 1 版 は 、 10 年 間
ご と に 4 世 代 に 区 切 り 、環 境 制 約 と し て グ ロ ー バ ル な CO 2 削 減 率 と 、資 源 制 約 と し て 瀝 青
炭や石油・天然ガスが供給タイトとなると予測される年代を示し、それぞれの世代を「高
効 率 ハ イ ブ リ ッ ド 世 代 」、「 低 炭 素 化 世 代 」、「 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 世 代 」、「 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ
世 代 」と し て い る 。技 術 カ テ ゴ リ は 、
「 燃 焼・ガ ス 化 」、
「 低 品 位 炭 」、
「 CCS」、
「石炭ガス・
炭 鉱 」、「 製 鉄 」 に 区 分 し て い る 。
「 低 炭 素 化 世 代 」で は 、酸 素 製 造 や CO 2 分 離 に コ ス ト が 大 幅 に 低 く な る と 期 待 さ れ て い
る 膜 分 離 技 術 が 実 用 化 さ れ る と 予 測 し 、こ れ ら を 導 入 し た 技 術 を「 Ad( Advanced)」と し
て示している。
「 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 世 代 」、
「 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ 世 代 」で は 、CCS の 実 用 化 ・
普 及 が 進 み 、 高 効 率 の プ ラ ン ト と の 組 み 合 わ せ が 主 流 に な っ て 行 く シ ナ リ オ で あ る 。「 低
品 位 炭 」開 発 は 、2030 年 以 降 に 目 玉 と な る 開 発 項 目 は 提 示 し て い な い 。「 製 鉄 」は 、2030
年 以 降 の 「 COURSE50」 プ ロ ジ ェ ク ト 以 降 の 技 術 課 題 ま で は 提 示 し て い な い 。
こ れ ら の 我 が 国 の 技 術 開 発 課 題 に つ い て 、海 外 普 及 を 図 っ て 行 く た め に 各 国 で 必 要 と さ
れる課題を示している。マップの上部に石炭技術開発を取り巻く国内環境を示している
( 図 1-1-1-1)。
2
出 典 : 平 成 22 年 度 3 回 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 (2011 年 3 月 )
図 1-1-1-1
JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 1 版
1-1-2. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版
JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版 は 、 2011 年 度 に 、 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 を 中 心 メ ン
バ ー と す る ワ ー キ ン グ グ ル ー プ に よ り 、第 1 版 を 見 直 し た も の で あ る 。見 直 し の 主 要 な 理
由と背景は、
① 2011 年 3 月 に 発 生 し た 大 震 災 後 の 大 規 模 な 環 境 変 化 を 踏 ま え た 見 直 し 。
② COP17(2011 年 12 月 )、 豪 州 褐 炭 ロ ー ド マ ッ プ 、 NEDO 石 炭 利 用 分 野 の ロ ー ド マ ッ プ の
ローリング、新たに作成されるエネルギー基本計画などを盛り込む。
③ CCS 技 術 開 発 と 今 後 CCS 実 施 に 向 け て 我 が 国 が ど う す べ き か を 記 載 す る 。
で あ り 、以 上 を 背 景 に 第 2 版 を 作 成 し た 。実 際 に は 、豪 州 褐 炭 ロ ー ド マ ッ プ 、 新 た な エ ネ
ルギー基本計画は、第 2 版作成までには完成せず、これらは盛り込まれていない。
第 2 版 は 、 第 1 版 と 同 様 に 、 10 年 間 単 位 で パ ラ ダ イ ム シ フ ト が 起 こ る と し て 、 各 時 代
に お い て 実 用 化 さ れ て い る べ き 技 術 と し て 各 々「 高 効 率・CCS・ク リ ー ン 燃 料 」、
「高効率・
CCS・安 価 CTL」、
「 CCS 付 IGFC の 高 効 率 化 」、
「 化 学 製 品 の 原 料 転 換 」を 明 確 に 示 し て い
る 。 技 術 カ テ ゴ リ は 、「 発 電 」、「 ク リ ー ン 燃 料 (化 学 原 料 )」、「 CCS(CCUS)」、「 製 鉄 」、「 再
生 可 能 エ ネ ル ギ ー 」 と し て い る ( 図 1-1-2-1)。
3
出 典 : 平 成 23 年 度 3 回 JCOAL 技 術 開 発 委 員 会 (2012 年 3 月 )
図 1-1-2-1
JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 2 版
1-1-3. NEDO/CCT ロ ー ド マ ッ プ
CCT 関 連 ロ ー ド マ ッ プ と し て 、 2011 年 度 に 独 立 行 政 法 人 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合
開 発 機 構 ( NEDO) に よ り 作 成 さ れ た 「 石 炭 利 用 技 術 分 野 の 技 術 ロ ー ド マ ッ プ 」 1 が あ る 。
こ の ロ ー ド マ ッ プ で は 、石 炭 利 用 技 術 を 、① 石 炭 火 力 発 電 技 術( 燃 焼 技 術 等 )、② 石 炭 火 力
発 電 技 術( ガ ス 化 技 術 等 )、③ 産 業 用 石 炭 利 用 技 術 、④ 環 境 負 荷 低 減 技 術 、⑤ 石 炭 開 発 技 術
の 5 つに分類している。
さ ら に 、個 々 の 技 術 開 発 ご と に 現 状 や 市 場 導 入 時 期 、実 際 の 技 術 動 向 を 詳 細 調 査 し 、2035
年頃までの導入や技術開発の動向についてロードマップ化している。実際の石炭利用技術
動 向 を 詳 細 に 調 査 し 、各 々 の 事 実 を ロ ー ド マ ッ プ に 落 と し 込 ん で 整 理 し て い る( 表 1-1-1-1)。
当 該 ロ ー ド マ ッ プ が 、石 炭 利 用 分 野 に 関 わ る 技 術 を お お よ そ 網 羅 的 に 掲 上 し 、フ ァ ク ト
に 基 づ い て 技 術 開 発 の ス タ ン ダ ー ド な 道 筋 を 示 し て い る の に 対 し 、 JCOAL/CCT ロ ー ド マ
ップでは、前述のとおり、より事業者にとって指針となるように所要のテーマに 絞って具
体的な目標値、試験名称などをプロットするものとしており、そのようなデマケーション
をとっている。
1平 成
23 年 度 ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー 推 進 事 業
「 エ ネ ル ギ ー を 取 り 巻 く 環 境 変 化 と 今 後 の CCT 技 術 開 発 の あ り 方 に 関 す る 検 討 」
4
表 1-1-1-1
分類
NEDO ロ ー ド マ ッ プ の 個 別 技 術
個別技術
超 々 臨 界 圧 発 電 技 術 (A-USC)
石炭火力 発電技 術
次世代粉 砕技術
(燃 焼 技 術 等 )
低品位炭 燃焼技 術
バイオマ ス・石 炭ハイ ブリッド発電技術
石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 技 術 (IGCC)
石炭火力 発電技 術
石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電 技 術 (IGFC)
(ガ ス 化 技 術 等 )
次世代高 効率石 炭ガス 化発電技術
(A-IGCC、 A-IGFC 等 )
CO 2 循 環 型 IGCC
高効率酸 素製造 技術
石 炭 部 分 水 素 化 熱 分 解 技 術 (ECOPRO)
産業用石 炭利用 技術
二 塔 式 ガ ス 化 炉 に よ る 褐 炭 利 用 技 術 (TIGAR)
高効率褐 炭乾燥 技術
褐炭高度 利用技 術
石炭・重 質油等 からの 代替天然ガス製造技術
石炭ガス 化コプ ロダク ション技術
自然エネ ルギー を付加 した石炭ガス化技術
低品位炭 からの 粘結材 ・代替強粘結炭製造技術
低品位炭 のコー クス原 料化技術
低 品 位 炭 改 質 技 術 ( UBC)
褐炭改質 技術
低 品 位 炭 流 体 化 技 術 (HWT)
石炭付加 バイオ マス燃 料製造技術
石炭液化 技術
無 触 媒 石 炭 乾 留 ガ ス 改 質 技 術 ( COG 改 質 技 術 )
コ
ス の有用 利用技術
石ー
炭ク
利ス
用炉
COガ
2 回 収 型 水 素 製 造 技 術 (HYPR-RING)
環境負荷 低減技 術
CO 2 炭 層 固 定 化 技 術 (ECBM)
微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 (OXY-FUEL)
CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 (ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ )
微 粉 炭 火 力 ( 排 ガ ス ) か ら の CO 2 回 収 技 術 ( Post-Combustion)
石 炭 ガ ス 化 か ら の CO 2 回 収 技 術 ( Pre-Combustion)
環 境 負 荷 物 質 の 低 減 ・ 活 用 技 術 ( StepCCT)
製 鉄 プ ロ セ ス 等 か ら の CO 2 回 収 ・ 固 定 技 術 (COURSE50)
革新的ゼ ロエミ ッショ ン石炭ガス化発電技術
水素製造 ・輸送 技術
水素タービン
石炭開発 技術
石炭高度 選炭技 術
石炭資源 総合評 価高度 化技術
石炭高度 生産技 術
5
1-1-4. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版
前 述 の 既 存 の 3 つ の CCT ロ ー ド マ ッ プ を 踏 ま え 、 第 3 版 を 作 成 し た 。 見 直 し の 主 要 な
背景は以下の通りである。
① シ ェ ー ル 革 命 に よ り 、米 国 は 2020 年 ま で に は 、天 然 ガ ス の 純 輸 出 国 と な る 見 通 し 。
米 国 炭( PRB 炭 )の 太 平 洋 市 場 へ の 輸 出 の 始 動 。化 石 燃 料 市 場 、石 炭 市 場 の 軟 化 の
見通し。
② 中 国 、イ ン ド 並 び に 東 南 ア ジ ア の 急 速 な 経 済 成 長 を 背 景 と し た 石 炭 火 力 発 電 所 開 発
計画の推進。
③ PM2.5 は じ め と す る NOx、 SOx 等 の 環 境 規 制 強 化 の 動 き 。
JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 の 内 容 は 、 事 業 実 施 者 ( 企 業 、 研 究 機 関 等 ) の 今 後 の
技術開発の指針となるもの、あるいは事業実施者のシーズが見えるものとした。また、技
術 分 類 と し て は 、高 効 率 化 、使 用 炭 種・性 状 拡 大 、多 様 化 へ の 対 応 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 、
環 境 負 荷 低 減 と の 共 生 等 を 目 指 し た 技 術 開 発 の 道 筋 を 示 す も の で あ る 。さ ら に 、第 3 版 で
はこれら技術の土台となる背景を出来るだけ明示することとした。
1-1-5. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 改 訂 版
第 3 版公開以降、
「 長 期 エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し 」が 取 り ま と め ら れ 、2030 年 の 温 室 効 果
ガ ス 削 減 量 見 込 み や 電 源 構 成 が 公 開 さ れ た 。そ の よ う な な か 、石 炭 火 力 に 関 わ る CO 2 排 出
に 関 わ る 定 量 的 議 論 が 重 要 と 考 え 、第 3 版 改 訂 版 と し て 、バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT( A-USC、
IGCC、IGFC)及 び CCUS 導 入 シ ナ リ オ を 想 定 し た CO 2 排 出 削 減 量 に つ い て 検 討 し た 。検
討 結 果 は 、「 2-1-4-2. バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 と CO 2 削 減 効 果 」 に 記 載
した。
1-2. CCT を 取 り 巻 く 世 界 の 動 向
1-2-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 世 界 動 向
1-2-1-1. IEA に よ る 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 見 方
IEA は 、中 国 、イ ン ド 及 び ア ジ ア の 経 済 成 長 国 の エ ネ ル ギ ー 需 要 の 伸 び を 支 え る エ ネ ル
ギー源として、福島問題を契機とした原子力の不確実性、再生可能エネルギー開発に更に
時 間 が か か る こ と 等 も 踏 ま え 、石 炭 が 一 次 エ ネ ル ギ ー の 主 役 で あ る と し て い る 。2000 年 か
ら の こ の 10 年 間 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 供 給 の 伸 び で は 、 石 炭 の 1,300Mtoe に 対 し 、 原 子 力 、
石 油 、ガ ス 、再 生 可 能 の 合 計 で 1,400Mtoe で あ り 、石 炭 が こ の 伸 び の 約 半 分 を 占 め て い る
が、その主な用途は石炭火力発電である。
今 後 も 石 炭 の 使 用 増 に 伴 い 、 特 に 中 国 及 び イ ン ド の CO 2 排 出 量 が 増 加 す る が 、 2035 年
に は 、中 国 の 人 口 当 た り の 排 出 量 が OECD 諸 国 並 み に な る と 考 え ら れ て お り 、CO 2 排 出 の
最 も 高 い 石 炭 を こ の ま ま 使 い 続 け る と 、 1990 年 比 で CO 2 排 出 総 量 は 約 75%の 増 加 にな る
と予測している。
従 っ て IEA で は 、図 1-2-1-1 に 示 す よ う に 、主 要 CO 2 排 出 源 で あ る 石 炭 火 力 発 電 に 関 し 、
現 状 世 界 平 均 値 の 1,400g-CO 2 /kWh か ら 、最 先 端 実 用 技 術 で あ る USC,IGCC を 適 用 し た 場
合 に 45%削 減 の 743g-CO 2 /kWh、さ ら に 開 発 が 進 み 2030 年 で は 50%削 減 の 669g-CO 2 /kWh
という目標を掲げている。ここまでは石炭火力発電技術の進化による高効率化であるが、
更 な る 削 減 は 、排 出 さ れ た CO 2 自 体 を 削 減 す る 技 術 が 必 要 で 、CCUS が そ れ ま で に 実 用 化
6
に 至 っ て い る 事 が 求 め ら れ る 。 た だ し 、 IEA 2 に よ る と 、 地 球 温 暖 化 ガ ス の 増 加 防 止 策 と し
て 、こ れ ら 石 炭 火 力 発 電 技 術 の 効 率 化 の 寄 与 は 約 5 割 で 、そ の 他 に も 老 朽 火 力 の 廃 止 、メ
タンの採掘過程での放出削減等の対策も併せて必要であると 見ている。
出 典 :「 Global Coal Developments and Climate Change Policy in 2012」
IEA Clean Coal Centre、 2012
図 1-2-1-1
石 炭 火 力 発 電 に お け る CO 2 削 減 目 標
1-2-1-2. 米 国 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向
現 在 、米 国 で は 、石 炭 火 力 に 対 し て 、州 大 気 汚 染 規 定 、水 銀・大 気 有 害 物 質 基 準 が 課せ
られている。さらに、発電所の新規発生源業績基準の規制が検討されている。
既 存 発 電 所 に は 、大 気 汚 染 に 係 わ る 環 境 規 制 を ク リ ア す る た め の 高 額 な 投 資 が 必 要 に な
り 、 新 規 発 電 所 に は CCS が 必 要 と な る 厳 し い CO 2 排 出 基 準 が 定 め ら れ て お り
( 633g-CO 2 /kWh)、 2013 年 6 月 に は オ バ マ 大 統 領 が 、 地 球 温 暖 化 防 止 に 向 け た 以 下 の 新
しい行動計画を発表した。
・ オ バ マ 大 統 領 の 新 し い 行 動 計 画 は 、 2020 年 に ’05 年 対 比 で 温 暖 化 ガ ス 排 出 量 を 17%
削 減 す る 従 来 の 路 線 を 改 め て 約 束 す る も の で 、国 内 発 電 所 の 排 出 基 準 の 導 入 が ひ と つ
の焦点となっている。
・「 新 設 発 電 所 へ の 排 出 規 制 」: 2013 年 9 月 ま で に 新 規 制 案 を 公 表 し 、 パ ブ リ ッ ク コ メ
ント手続きを経て、速やかに規制を実行する。
・
「既設発電所への排出規制」
:2014 年 6 月 ま で に 新 規 制 ガ イ ド ラ イ ン の 提 案 を 公 表 し 、
2015 年 6 月 ま で に 最 終 版 を 確 定 さ せ る 。
2
World Energy Outlook, ”Redrawing the Energy-Climate Map”, (2013)
7
・ 上 記 以 外 に も 、 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に よ る 発 電 を 2020 年 ま で に 倍 増 さ せ る 、 輸 送 部
門 で の 重 量 車 両 へ の 2018 年 以 降 の 新 た な 燃 費 規 準 の 制 定 等 20 項 目 以 上 に 及 び 政 策
を打ち出した。
1-2-1-3. 欧 州 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 規 制 の 動 向
欧 州 で は 、大 気 汚 染 防 止 に 関 し て 、大 型 燃 焼 施 設 指 令( Large Combustion Plant Directive
(LCPD)に よ り 、 老 朽 火 力 発 電 所 に 対 し て 、 使 用 制 限 を 設 け 、 2016 年 以 降 の 廃 止 を 求 め て
い る 。 温 暖 化 効 果 ガ ス 排 出 に 関 し て 、 EU 全 体 で 目 標 を 揚 げ て い る と と も に 、 国 別 に 対 策
を 行 っ て お り 、英 国 で は 、CCS を 設 置 し な い と 最 新 鋭 の 石 炭 火 力 で も 達 成 で き な い 新 基 準
( 450g-CO 2 /kWh)を 設 け て い る 。2013 年 内 に 法 案 可 決 の 見 通 し で あ る 。そ の た め 、2015
年 か ら 2020 年 に か け て 、 欧 州 で も 石 炭 火 力 の 電 力 使 用 量 の 減 少 が 予 想 さ れ る 。
1-2-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 世 界 動 向
1-2-2-1. 世 界 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率
諸 外 国 の Hard Coal 使 用 時 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、日 本 に 比 べ 低 い( 図 1-2-2-1)。低
い 国 々 は 、高 効 率 プ ラ ン ト へ の 切 換 え が 停 滞 し て い る こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。ま た 、
石炭火力キャパシティが圧倒的に大きい米国、中国、インドの 3 ヵ国の平均発電効率が、
日 本 に 比 べ 4~ 8%下 廻 っ て い る こ と は 、CO 2 排 出 量 削 減 を 図 っ て い く 上 で 大 き な ネ ッ ク で
ある。
45
日本
40
発電効率(%)
(発電端高発熱量基準)
発電効率(%)
(発電端 高発熱量基準)
45
韓国
中国
35
米国
豪州
30
独
25
英国
40
米国
35
豪州
独
30
印
25
印
20
20
1980 1990 2000 2010 2011 2012 2013
1980 1990 2000 2010 2011 2012 2013
Hard Coal
Lignite
出 典 : IEA Electric Information 2015 を も と に JCOAL で 作 成
図 1-2-2-1
各国石炭火力平均効率の推移
次 に 、世 界 の 化 石 燃 料( 石 炭・天 然 ガ ス・石 油 )の 総 CO 2 排 出 量 に 占 め る 石 炭 火 力 CO 2
排 出 量 が 、今 後 い か に 推 移 す る か を IEA ア ウ ト ル ッ ク で 見 る 。2012 年 316 億 ト ン の 総 CO 2
排 出 量 が 2040 年 460 億 ト ン に 増 大 す る 中 で 、石 炭 火 力 CO 2 排 出 量 は 、95 億 ト ン か ら 160
億 ト ン へ 、そ の ウ ェ イ ト は 30%か ら 35%へ と い ず れ も 増 大 す る( 図 1-2-2-2)。こ の 数 値 か
ら し て も 、石 炭 火 力 に よ る CO 2 エ ミ ッ シ ョ ン を 如 何 に 削 減 し て い く か が 、温 暖 化 解 決 へ の
極 め て 重 要 な ク リ テ ィ カ ル ・パ ス の 一 つ で あ る こ と か 明 ら か で あ る 。
8
石炭火力が
世界の発電電力量に占める割合
石炭火力からのCO2排出量が
世界の総排出量に占める割合
2012年
2040年
2012年
2040年
41%
40%
30%
35%
石炭
石炭
図 1-2-2-2
世 界 の 発 電 と CO 2 排 出 の 見 通 し ( IEA WEO2014 現 行 政 策 シ ナ リ オ )
1-3. CCT を 取 り 巻 く 国 内 の 動 向
1-3-1. CCT を 取 り 巻 く 環 境 の 国 内 の 動 向
我 が 国 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 は 、 2013 年 度 約 13 億 1,100 万 ト ン で あ っ た ( 図 1-3-1-1)。
直 接 排 出 量 で は エ ネ ル ギ ー 転 換 部 門 、間 接 排 出 量 で は 産 業 部 門 が 最 も 多 く 、そ れ ぞ れ 41% 、
33% を 占 め て い る 。
一 方 、 燃 料 別 で は 、 石 油 等 が 55% 、 石 炭 が 24% を 占 め て い る 。 石 炭 か ら の 、 CO 2 排 出
量 約 4.3 億 ト ン の う ち 約 2.4 億 ト ン が 発 電 所 か ら の 排 出 と な っ て お り 、 発 電 効 率 の 向 上 等
によって如何にこの部分の排出量を低減するかが課題となっている。
工業プロセス 4%
家庭
15%
16%
廃棄物 2%
4%
5%
4%
エネルギー転換 8%
都市ガス
7%
0.1%
天然ガス
14%
2%
二酸化炭素総排出量 41%
産業
2013年度
33%
(平成25年度)
13億1,100万トン
石炭
24%
二酸化炭素総排出量
2013年度
(平成25年度)
石炭製品
13億1,100万トン
13%
業務その他
21%
27%
運輸
17%
外:間接排出量
内:直接排出量
石油製品
39%
原油
3%
出典:環境省
図 1-3-1-1
2013 年 度 部 門 別 二 酸 化 炭 素 排 出 量 及 び 燃 料 別 二 酸 化 炭 素 排 出 量
9
1-3-2. CCT を 取 り 巻 く 技 術 の 国 内 の 動 向
我 が 国 の ベ ー ス 電 源 と し て 石 炭 火 力 を 使 い 続 け る た め に も 継 続 的 な ク リ ー ン コ ー ル テク
ノ ロ ジ ー の 開 発 が 必 要 で あ る 。図 1-3-2-1 に 既 存 の USC と 開 発 が 進 め ら れ て い る よ り 高 効
率 の 発 電 シ ス テ ム と そ れ ら の CO 2 低 減 割 合 を 示 し た 。今 後 更 な る 高 効 率 化 を 目 指 し て 、鋭
意開発が進められているところである。
 微粉炭火力: 現在の主流; 蒸気タービン(ST)が原動機; 蒸気の温度・圧力を上げることで効率向上;
700℃級のA-USC(Advanced USC)開発進行中;
 石炭ガス化複合発電(IGCC): ガスタービン(GT)とSTの複合サイクル利用; 微粉炭火力より高効率発電可能;
ガスタービン入口ガス温度を上げることで効率向上;
 石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC): IGCCに燃料電池(FC)を組み合わせたトリプル複合サイクル; IGCCよ
り高効率発電可能
②石炭ガス化複合発電
(1500℃級IGCC)
①微粉炭火力
最新火力(USC)
③石炭ガス化燃料電池
複合発電(IGFC)
700℃級(A-USC)
燃料電池
ガスタービン
ガスタービン
ボイラ
蒸気タービン
発電端:43%(HHV)
送電端 : 41% (HHV)
(比較ベース)
ボイラ
蒸気タービン
発電端:48%
送電端: 46%
CO2低減:約▲11%
ガス化炉
蒸気タービン
発電端:51~53%
送電端:46~48%
CO2低減:約▲13%
ガス化炉
蒸気タービン
発電端:60%以上
送電端:55%以上
CO2低減:約▲25%以上
※ CO2低減割合は最新石炭火力をベースにしており、既設石炭火力をベースにすれば更に大きくなる。
出 典 :「 石 炭 火 力 か ら の CO 2 排 出 削 減 」 JCOAL/CCT-WS 2010 年 7 月 電 源 開 発 ( 株 )
図 1-3-2-1
高 効 率 石 炭 火 力 発 電 の 発 電 効 率 と CO 2 低 減 割 合
1-4. 石 炭 資 源 の 動 向
図 1-4-1-1 及 び 図 1-4-1-2 に 石 炭 を 含 む 化 石 燃 料 の 可 採 年 数 及 び 資 源 量 を 示 す 。石 炭 は 、
化石燃料の中で、供給安定性、経済性の面で最も信頼性が高い燃料資源である。石炭の可
採 埋 蔵 量 は 2013 年 末 時 点 で 、約 8,914 億 ト ン で あ り 、可 採 年 数 も 110 年 と 石 油 の 52.5 年 、
天 然 ガ ス の 54.1 年 に 比 べ 、 約 2 倍 で あ る 。 石 油 や 天 然 ガ ス も 近 年 は 採 掘 技 術 の 進 歩 か ら
シェールオイル・シェールガスといった非在来型も加わり採掘年数の大幅増が期待されて
いるが、石炭も同様に採炭技術の進歩や低品位炭活用技術の進歩により、可採埋蔵量は更
に増加していく。また、賦存地域も石油や天然ガスのように中東といった一部地域に偏る
ことなく分散しており、地政学的リスクが小さい。従って、特に日本のように国内資源が
乏しく、その殆どを海外からの輸入に依存せざるを得ない国にと っては、石炭はエネルギ
ーセキュリティ面での貢献度が高い。
10
150
110年
100
52.5年
54.1年
石油
天然ガス
1.70兆
バレル
187兆m3
50
0
石炭
8,915億トン
出典:BP統計2014
図 1-4-1-1
各一次エネルギーの可採年数
ま た 、全 石 炭 埋 蔵 量 の 約 半 分 の 4,000 億 ト ン が 我 が 国 で 使 用 さ れ て い な い 亜 瀝 青 炭 及 び
褐炭であり、現在は経済面、安全面等からすぐに輸入使用することにはならない。しかし
我が国が基盤技術として蓄積、保有している乾燥、改質、ガス化、液化等の展開及び実用
化先として低品位炭産炭国における事業展開が期待される。
全 石 炭 埋 蔵 量
瀝青炭と無煙炭
亜瀝青炭
褐炭
1兆5,470億トン
7,473億トン
1兆610億トン
可採埋蔵量
4,031億トン
2,873
億トン
2,010
億トン
合計8,915億トン
合計3兆3,600億トン
出 典 : コ ー ル ノ ー ト 2014 年 版
図 1-4-1-2
世界の石炭埋蔵量概念図
11
第2章
CCT ロー ドマップ第 3 版の作 成
2-1. 前 提 と な る 考 え 方
1-1-5.で 述 べ た と お り 、第 3 版 改 訂 版 は 、
「 2-1-4-2. バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS
の 導 入 と CO 2 削 減 効 果 」 の 加 筆 が 主 な 改 訂 内 容 で あ る 。 本 章 で は 、 2-1-4-2.以 外 の 記 述 の
前 提 と し て 、 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 の 作 成 に お い て 設 定 し た 「 各 個 別 技 術 の 開
発目標のもととなる今後の見通しや政策目標 」を記載した。
2-1-1. エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し 及 び 環 境 対 策 動 向
2-1-1-1. 一 次 エ ネ ル ギ ー に お け る 石 炭 需 要 と 比 率
○世 界 の 石 炭 使 用 量 は 、 1990 年 京 都 議 定 書 基 準 年 の 約 22 億 toe( 石 油 換 算 ト ン ) は 、
2010 年 に お い て 約 35 億 toe と 約 13 億 toe の 伸 び を 示 し 、IEA ワ ー ル ド・エ ネ ル ギ ー・
ア ウ ト ル ッ ク 2013 で は 、 2035 年 の 予 測 使 用 量 は 約 44 億 toe に 達 し 、 2010 年 か ら 非
OECD 諸 国 を 中 心 に 約 7 億 toe 拡 大 す る と の 見 通 し 。
○こ れ を 一 次 エ ネ ル ギ ー の 構 成 比 で 見 る と 25~ 27%と な り 、石 炭 は 極 め て 安 定 し た 割 合
で消費され続けると予想される。
2-1-1-2. エ ネ ル ギ ー 源 別 電 力 需 要 中 の 石 炭 の 構 成 比
○世 界 石 炭 火 力 に よ る 発 電 量 は 1990 年 の 約 4 兆 4,000 億 kWh(4,400TWh) が 、 2010
年 に は 約 8 兆 8,000 億 kWh(8,800TWh)に 増 大 し 、 2035 年 に は 現 状 の 約 1.4 倍 で 、 約
12 兆 1,000 億 kWh(12,100TWh)に 達 す る と 見 込 ま れ る 。
○世 界 総 発 電 量 中 に 占 め る 石 炭 火 力 の 構 成 比 は 、 1990 年 37%、 2010 年 41%、 2035 年
33%と お よ そ 35~ 40%の 幅 の 中 で 推 移 し て い る ( IEA WEO 2012)。
○こ の 石 炭 火 力 発 電 量 の 安 定 的 な 増 大 傾 向 は 、 石 炭 の 有 す る 長 期 安 定 性 、 経 済 的 安 定 性
に加え、石炭火力のベース電源としての機能的信頼性に由来していると考える。
○今 後 、 日 本 で 原 子 力 は 新 設 さ れ ず に 、 既 設 の み 運 転 継 続 。 2040 年 に は ゼ ロ と な る 。
図 2-1-1-1
日本の発電所リプレース予測
これらのことから、石炭火力発電における技術開発課題として、更なる高効率化は優先
度が高いといえる。
12
2-1-1-3. 環 境 負 荷 低 減
欧 米 で は 、 火 力 発 電 電 力 量 あ た り の 硫 黄 酸 化 物( SOx)、窒 素 酸 化 物( NOx)の 排 出 量
が高く、また、中国やインドなど環境対策が不十分なまま発展している国々では大気汚染
が大きな問題となっている。
一 方 、我 が 国 の 石 炭 火 力 は SOx、NOx、燃 焼 灰 等 の 汚 染 物 質 除 去 技 術 に 関 す る 技 術 開 発
が進み、欧米との比較においても、高い技術水準を保有している。前述の問題解決の一助
となるべく、日本の最先端環境技術の積極的な海外展開を図る必要がある。
石炭・石油・ガス火力の合成
石炭火力
出典:電気事業連合会資料。日本は10電力とJ-POWERの合計。
図 2-1-1-2
火 力 発 電 電 力 量 あ た り SOx、 NOx 排 出 の 国 際 比 較
2-1-2. 政 策 目 標
2-1-2-1. CO 2 削 減 目 標
我 が 国 は 、2030 年 ま で に 温 室 効 果 ガ ス を 2013 年 度 比 26%削 減 、2050 年 度 ま で に 1990
年 度 比 80%削 減 を 目 標 と し て い る 。 ま た 、 電 力 由 来 の CO 2 量 は 、 2030 年 度 に 2013 年 度
ベ ー ス で 35%削 減 す る こ と を 公 表 し て い る 。
2-1-2-2. エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画
平 成 26 年 4 月 、政 府 に よ る エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 が 公 表 さ れ た 。そ の 中 で 石 炭 は 、「 温 暖
化 ガ ス の 排 出 量 が 大 き い と い う 問 題 は あ る が 、地 政 学 的 リ ス ク が 化 石 燃 料 の 中 で 最 も 低 く 、
熱量当たりの単価も化石燃料の中で最も安いことから、安定供給性や経済性に優れた重要
なベースロード電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力の有効利用等にうり
環 境 負 荷 を 提 言 し つ つ 活 用 し て い く エ ネ ル ギ ー 源 で あ る 。」 と さ れ て い る 。
2-1-2-3. 革 新 的 エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 戦 略
革 新 的 エ ネ ル ギ ー・環 境 戦 略( 平 成 24 年 9 月 、閣 議 決 定 )に お い て 、「 石 炭 火 力 発 電 に
ついては、原発への依存度低減を進める上で、ベース電源としてより一層重要な役割を果
たす。また、海外での導入が進む見通しでもあり、我が国の高い環境性能を有する石炭火
力を海外で展開する。これにより、地球温暖化対策の国際貢献を進める」等の提言あり。
13
2-1-2-4. 日 本 再 興 戦 略
日 本 再 興 戦 略 -JAPAN is BACK-( 平 成 25 年 6 月 、 閣 議 決 定 ) に お い て 、「 高 効 率 火 力 発
電 を 徹 底 活 用 し 、 エ ネ ル ギ ー コ ス ト を 低 減 さ せ る 。( 略 ) 先 進 技 術 開 発 を 加 速 し 、 世 界 最
高水準の効率を有する火力発電を我が国で率先して導入するとともに、世界へ積極的に展
開 す る 。」、
「 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電( IGFC)に つ い て 、2025 年 ま で に 技 術 を 確 立 し
2030 年 代 の 実 用 化 を 目 指 す( 発 電 効 率:現 状 39% 程 度 →改 善 後 55% 程 度 )。」等 の 提 言 あ
り。
2-1-2-5. 環 境 負 荷 低 減
水 銀 に 関 し て 、2013 年 10 月 に「 水 銀 に 関 す る 水 俣 条 約 」が 締 結 さ れ 、水 銀 排 出 、使 用 、
移動に関する包括的な制約が国際的な流れとなっている。我が国では、
・ 大 気 : 0.00004mg/m3 以 下
・ 水 質 : 0.0005mg/L 以 下
の環境基準が既にあるが、水俣条約では石炭火力発電所が大気環境への主要発生源として
規 制 対 象 と な っ て い る 。 こ れ に 先 立 ち 北 米 で は 2013 年 3 月 に MATS( Mercury and Air
Toxics Standards) が 施 行 さ れ 、
・ 2016 年 度 よ り 0.013 lb/GWh( 0.0059kg/GWh)
と発電量当たりの規制が始まることとなった。
2-1-3. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 施 策 の 位 置 付 け
一 方 、ク リ ー ン コ ー ル 技 術 施 策 の 企 画 立 案 の 観 点 か ら 、当 該 分 野 は「 エ ネ ル ギ ー・環 境
政策」及び「産業政策」の二つの政策の柱に基づいて、それぞれの背景・状況から課題を
分析し必要な対応を抽出し、技術に係るクリーンコール施策の目的を明確化している( 図
2-1-3-1)。
石 炭 利 用 に 伴 う 環 境 負 荷 の 低 減 、エ ネ ル ギ ー セ キ ュ リ テ ィ ー の 確 保 等 を 目 的 と し た 、
「石
炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化 」、
「 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用 」、
「 海 外 へ の 技 術 展 開・貢 献 」、
「環
境対策」等のクリーンコール技術の開発は、我が国の環境 及び政策上極めて重要な施策で
あり、これらを具体的なプロジェクトとして立案し有機的に進めて行く必要がある。
14
エネルギー・環境政策
産業政策
エネルギー需給構造
国内:石炭火力20~25%
海外:石炭火力70%
→今後も石炭の利用が見込まれる
石炭火力による
CO2の排出
発電量あたりのCO2発生量
は、石炭火力はLNG火力の
約2倍。
海外の石炭火力発電の
導入見通し
石炭火力発電市場の拡大。
瀝青炭+無煙炭 47%
低品位炭(亜瀝青炭+褐炭) 53%
新たな市場の可能性。
国際競争の激化
石炭の効率的な利用
可採年数:約112年
埋蔵量:8,609億トン
未利用な低品位炭
亜臨界:中国メーカーが席捲
SC、USC:日本、欧州メーカーが
先行。中国・韓国メーカーが猛追。
産業政策上の対応
エネルギー・環境政策上の対応
・石炭火力の低炭素化
・低品位炭の多目的利用
・環境対策
・海外展開による国際貢献
・絶え間ない先端的高効率化技術の開発・導入展開による石炭火力発
電市場の開拓と確保
・低品位炭利用技術といった石炭利用の高度化によるエネルギー産業、
化学産業(肥料など)の新たな市場の開拓
※技術以外の競争力確保、グローバルコンソーシアムの形成、ライフサ
イクルコストによるプラント入札評価の導入、公的資金の柔軟な利用等
の施策を同時並行で実施
技術に係るクリーンコール施策の目的
『石炭火力の高効率化・低炭素化技術』、『低品位炭の多用途利用技術』、『海外への技術展開・貢献』、
『環境対策技術』
図 2-1-3-1
クリーンコール技術施策の位置付け
2-1-4. ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系
上 述 の と お り 社 会 的 責 務 で あ る CO 2 削 減 、今 後 の エ ネ ル ギ ー 需 給 の 見 通 し 、我 が 国 発 電
構成における石炭火力のベース電源としての重要性等を考えると、経済性や供給安定性に
優れた石炭利用の拡大は必須の課題である。
し か し な が ら 、こ れ も 上 述 の と お り 、石 炭 は CO 2 排 出 が 多 い こ と 、更 な る 安 定 供 給 が 必
要 な こ と 、 CO 2 以 外 で も 環 境 へ の 影 響 が 大 き い こ と 等 か ら 、 そ れ ら 課 題 を 克 服 す る 形 で ク
リ ー ン コ ー ル 技 術 の 開 発 を 進 め て い か な け れ ば な ら な い 。 つ ま り 「 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化 」、
「 低 品 位 炭 利 用 」、「 環 境 対 策 」 と い う 大 き な ニ ー ズ に 沿 っ た 開 発 が 目 標 と な る 。
図 2-1-4-1 に 示 し た と お り 、地 球 温 暖 化 対 策 の CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等で
示された政策目標を達成するためにクリーンコール技術開発の分野において果たすべき課
題 が あ り 、 そ れ ら を 達 成 す る た め の 開 発 目 標 が 大 き く 「 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 」、「 低 品 位
炭 利 用 」、「 環 境 対 策 」 の 3 つ と な っ て い る 。
こ れ ら の 開 発 目 標 の 下 に 複 数 の 技 術 開 発 テ ー マ が 存 在 し 、随 時 並 行 的 に 進 め ら れ て い る 。
個々の技術開発は上位目標の達成を目指すものとして最小単位にブレークダウンしたもの
であり、一つ一つの成果が連携して最終的に上位目標を実現する道筋を示さなければなら
ない。それぞれのテーマによる成果が有機的に連携するように現実的なメルクマール(目
標に向けた中間的な指標)を設定する。
それぞれの開発目標における現時点でのメルクマールとその考え方について、以下に述
べる。
15
今後の見通し
政策目標
・CO2削減目標
・エネルギー基本計画
・日本再興戦略 等
・石炭需給動向
・環境負荷低減 等
経済性、安定供給性に
優れる石炭利用の拡大
は必要不可欠
各分野におけるメ
ルクマールを設定
課題
CO2多排出、さらなる安定供給、環境への影響
開発目標
高効率発電・低炭素化
図 2-1-4-1
低品位炭利用
環境対策
クリーンコール技術開発目標の体系
2-1-4-1. 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化
石炭火力発電の高効率化については、定量的な発電効率の目標値が示されスケジュール
に 沿 っ て 技 術 開 発 が 進 め ら れ て い る 。微 粉 炭 火 力 に 関 し て は 、SC か ら USC、更 に は A-USC
と い う 一 連 の 高 効 率 条 件 を 目 指 す 方 向 で あ り 、石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電( IGCC)に お い て も 高
効 率 化 と 派 生 技 術 と し て の IGFC の 開 発 が 期 待 さ れ る 。ま た 、発 生 し た CO 2 は CCUS に よ
る 削 減 が 期 待 さ れ る が 、そ の CO 2 分 離・回 収 技 術 は 燃 焼 方 式 も 考 慮 し て 技 術 の 最 適 化 を 図
る必要があり、これからの課題となっている。我が国における石 炭火力発電技術の高効率
化 の 目 標 及 び CO 2 排 出 量 削 減 に 向 け た 石 炭 火 力 の 排 出 原 単 位 の 状 況 に つ い て 図 2-1-4-2 及
び 図 2-1-4-3 に 示 す 。
16
図 2-1-4-2
ゼロエミッションを目指す我が国の石炭火力発電技術
出 典 :産 業 競 争 力 会 議 フ ォ ロ ー ア ッ プ 分 科 会( エ ネ ル ギ ー )資 料 5-4、平
成 25 年 11 月 エ ネ 庁
図 2-1-4-3 火 力 発 電 形 態 別 の CO 2 排 出 量
出 典 : 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 石 炭 課 講 演 資 料 、 CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2013
( 注 記 : 図 中 の CO 2 排 出 原 単 位 は 出 典 中 の 算 定 条 件 に 基 づ く 代 表 値 で あ り 、 個 別
技 術 の 性 能 は 運 転 条 件 、発 電 設 備 の 仕 様 、燃 料 の 質 等 に よ っ て 幅 が あ る と 考 え る
べ き 。)
ま た 、 低 炭 素 化 に つ い て は 、 2008 年 7 月 の 「 低 炭 素 社 会 づ く り 行 動 計 画 」 に お い て 、
革新的技術開発のロードマップの着実な実行が提言されており、高効率発電技術開発の推
進 と と も に 、 CO 2 の 分 離 ・ 回 収 技 術 に よ っ て 低 コ ス ト 化 を 促 進 し 、 最 終 的 に は ゼ ロ エ ミ ッ
17
ション石炭火力の実現を目指すこととしている。
わが国は、微粉炭火力向け回収技術として、燃焼後回収技術及び酸素燃焼 法を開発して
きた。燃焼後回収技術については、アミン吸収法が技術的にはほぼ実用化されているが、
コスト及び吸収液再生におけるエネルギー消費が大きいので、世界各国で更なる改善が検
討されていると共に、固体吸収法等の新たな方法も検討されている。
一 方 、酸 素 燃 焼 法 は 、日 豪 協 力 に よ る カ ラ イ ド プ ロ ジ ェ ク ト が 終 了 し 、技 術 的 に 微 粉 炭
火 力 へ の 適 用 可 能 性 が 実 証 さ れ た 。 現 状 、 回 収 コ ス ト は 3,000 円 台 / t-CO 2 と 試 算 さ れ て
いる。更なるコスト削減方策として、空気分離時に同時生成される窒素のシェールガス生
産等への利用等を含めた検討がなされ、酸素燃焼法の更なるコスト削減に向けた商業化検
討がなされている。
ま た 、IGCC 向 け の CO 2 回 収 技 術 と し て は 、若 松 イ ー グ ル プ ロ ジ ェ ク ト で 化 学 吸 収 法 及
び物理吸収法が検討された結果、高圧プロセスにおいては物理吸収法の方が有利であるこ
と か ら 、大 崎 ク ー ル ジ ェ ン で は 、物 理 吸 収 法 で の 実 証 が 計 画 さ れ て お り 、2020 年 頃 の 技 術
確 立 を 目 指 し 、 回 収 コ ス ト は 2,000 円 台 / t-CO 2 が 目 標 と さ れ て い る 。
さ ら に 、IGCC 向 け CO 2 回 収 技 術 と し て は 、圧 力 差 を 利 用 で き る 膜 分 離 法 の 開 発 も 進 め
ら れ て お り 、RITE で 実 証 プ ロ ジ ェ ク ト が 計 画 さ れ る 段 階 に 来 て い る 。ま た 、石 炭 ガ ス 化 で
生 成 し た CO 2 を リ サ イ ク ル し て 石 炭 の ガ ス 化 に 使 う 方 式 の ク ロ ー ズ ド IGCC に よ り 、CO 2
を 分 離 回 収 す る こ と な く 、排 ガ ス を 高 濃 度 CO 2 と し て 回 収 で き る プ ロ セ ス の 開 発 も 進 め ら
れている。
回 収 し た CO 2 は 地 中 貯 留 が 考 え ら れ て い る が 、単 に 貯 留 し て し ま う の で は な く 、藻 類 バ
イ オ 、 人 口 光 合 成 、 化 学 製 品 利 用 を 中 心 に 、 経 済 的 か つ 効 率 的 な CO 2 処 理 が 可 能 な CCU
技術の開発も進められており、段階的に実現可能性調査、要素技術開発を経て有望技術を
選定して、開発を進めることも検討されている。
CO2分離回収コスト削減目標
(円/t・CO2)
(GJ/t・CO2)
8000
CO2分離回収エネルギーの削減目標
3
7000
2.5
6000
5000
2
現行アミン吸収
4000
1.5
3000
2000
現行アミン吸収
1
高性能アミン吸収
固体吸着剤法
高性能アミン吸収
固体吸着剤法
0.5
1000
高性能アミン吸収
固体吸着剤法
膜分離法
0
2014
2020
図 2-1-4-4
2025
高性能アミン吸収
固体吸着剤法
膜分離法
0
2014
2030
2020
2025
我 が 国 の CO 2 分 離 ・ 回 収 技 術 に よ る 削 減 量 目 標
18
2030
2-1-4-2. バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 と CO 2 削 減 効 果
2-1-4-2-1. 目 的
政 府 あ る い は 電 力 業 界 か ら CO 2 排 出 量 の 削 減 目 標 が 示 さ れ る な か 、 高 効 率 発 電 技 術 、 バ
イ オ マ ス 混 焼 及 び CCUS(Carbon capture, Utilization and storage) の 導 入 に よ っ て 、 石
炭 火 力 発 電 所 か ら 排 出 さ れ る CO 2 量 が 2050 年 ま で ど の よ う に 変 化 す る か を 試 算 す る と と
も に 、 こ れ ら の 技 術 の 導 入 コ ス ト を 設 定 し CO 2 削 減 技 術 導 入 に 関 わ る コ ス ト を 検 討 し た 。
こ の 検 討 に よ り 、石 炭 火 力 発 電 所 か ら の CO 2 排 出 削 減 方 針 や 技 術 開 発 の 方 向 性 に 関 す る 議
論に資することを目的とする。
2-1-4-2-2. GHG 及 び CO 2 削 減 量 の 目 標 値
現 在 公 表 さ れ て い る GHG 等 削 減 量 の 目 標 値 は 次 の 通 り で あ る 。
(1) 政 府 目 標 値
・ 2013 年 ベ ー ス で 2030 年 26%削 減 ( GHG)
GHG排出量(億トン)
15
13.97
14
13.76
14.12
13.40 13.54
13.27
13 12.70
13.90 14.08
13.65
12.50
12
11
10
1990 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
速報値
図 2-1-4-5
GHG 排 出 量 の 推 移
2013 年 排 出 量 14.08 億 ト ン に 対 す る 26%は 、3.66 億 ト ン で あ り 、2030 年 に お い て 10.42
億 ト ン ま で CO 2 排 出 量 を 下 げ る こ と が 目 標 と な っ て い る 。
(2) 電 力 関 係
一 般 電 気 事 業 者 、卸 電 気 事 業 者 、特 定 規 模 電 気 事 業 者( 新 電 力 )有 志 23 社 に よ る 目 標 値
が以下のように示された。
・ 2013 年 ベ ー ス で 2030 年 35%程 度 削 減 ( CO 2 )
2013 年 ( 実 績 )
2030 年 ( 目 標 )
CO 2 排 出 量 ( 億 ト ン )
5.36
3.63
発 電 電 力 量 ( 億 kWh)
9,397
9,808
0.57
0.37
CO 2 排 出 係 数 ( kg-CO 2 /kWh)
19
2-1-4-2-3. バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 に よ る CO 2 削 減 効 果
本検討において、
「 CCT」と は 、A-USC、IGCC、IGFC の 各 高 効 率 発 電 技 術 を 指 す 。ま た 、
「 CCUS」 導 入 検 討 に お け る 導 入 コ ス ト は 、 CO 2 分 離 ・ 回 収 コ ス ト を 言 う 。
バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 に 関 し 、 3 つ の パ タ ー ン を 設 定 し 、 CO 2 削減 量
を 試 算 す る 。ま た 、CCT と CCUS の 導 入 に 伴 う 設 備 コ ス ト を 推 定 す る こ と に よ り 、投 資 対
効果にも言及する。これにより、経済的要素を加味した方向性を議論することができる。
CO 2 削 減 効 果 に 関 す る 手 順 は 以 下 の 通 り で あ る 。
 2050 年 ま で の 電 力 需 要 を 想 定 す る 。
 2050 年 ま で の 電 力 構 成 を 想 定 す る 。
以上により、石炭火力発電所の発電電力量が決まる。
 バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS の 導 入 シ ナ リ オ を 設 定 し 、CO 2 削 減 量 及 び 削 減 に 伴
う費用を算出する。
(1) 2050 年 ま で の 電 力 需 要 想 定
平 成 27 年 の 長 期 エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し を ベ ー ス に 、2050 年 ま で の 電 力 需 要 を 想 定 す る 。
同 需 要 見 通 し で は 、 2030 年 の 電 力 需 要 を 9,808 億 kWh と し て い る 。
経済成長率
1.7%/年
徹底した省エネ
1,961億kWh程度
(対策前比▲17%)
電力
9,666
億kWh
電力
9,808
億kWh
2013年度
(実績)
2030年度
図 2-1-4-6
電力需給見通し
( 長 期 エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し : 平 成 27 年 7 月 16 日 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 公 表 )
し か し 、2030 年 以 降 に つ い て は 政 府 に よ る 見 通 し は な い 。IEA と IEEJ( 日 本 エ ネ ル ギ ー
経 済 研 究 所 )は 、日 本 の 電 力 需 要 を 、2030 年 以 降 増 加 す る ケ ー ス と 減 少 す る ケ ー ス を 示 し
て い る ( 図 2-1-4-7)。
本 検 討 に お い て は 、 図 2-1-4-8 に 示 し た よ う に 、 2030 年 ま で は 政 府 見 通 し を タ ー ゲ ッ ト
に し た 値 、 2030 年 以 降 は 、 IEA 及 び IEEJ を 参 考 に 減 少 す る ケ ー ス ( ケ ー ス 1 ) と 増 加 す
るケース(ケース2)を考えた。
あ ら た め て 、 今 回 想 定 し た 電 力 需 要 を 図 2-1-4-9 に 示 す 。
20
13000
IEEJ レファレンスケース
12000
発電電力量(億kWh)
IEA Current Policies
11000
IEA New Policies Scenario
10000
IEEJ 技術進展ケース
9000
電事連報告値
IEA 450 Scenario
8000
7000
6000
2000
2010
2020
2030
2040
2050
図 2-1-4-7 電 気 事 業 連 合 会 の 報 告 値 、 IEA 及 び IEEJ の 電 力 需 要 予 想
IEEJ は 政 府 の 長 期 エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し を 踏 襲 し て い な い 。ま た 、電 事
連 の 実 績 値 と 一 致 し な い 。IEEJ の 2005 年 ~ 2013 年 は IEA の 報 告 書 の 値
を そ の ま ま 適 用 。 IEA の 2005 年 ~ 2013 年 の 値 に つ い て は 出 典 不 明 。
12000
IEA New Policies Scenario
IEEJ 技術進展ケース
発電電力量(億kWh)
11000
10000
9000
電事連報告値
8000
2030年 9,808億kWhを
ターゲットとした予測
IEA及びIEEJの予測(傾き)
などを参考に増加ケース
及び減少ケースを設定
7000
6000
2000
2010
2020
2030
2040
2050
図 2-1-4-8 IEA 及 び IEEJ の 予 測 と 本 検 討 に お け る 発 電 電 力 量 想 定
2030 年 以 降 は 、 増 加 す る ケ ー ス と 減 少 す る ケ ー ス を 設 定 し た 。
21
12,000
ケース 2
発電電力量(億kWh)
10,000
ケース 1
8,000
6,000
4,000
2,000
0
2013
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
図 2-1-4-9 本 検 討 における発 電 電 力 量 想 定
(2) 電 源 構 成
電 源 構 成 を 試 算 す る 前 提 条 件 を 表 2-1-4-1 に 示 す 。
表 2-1-4-1
発電種別
再生可能エネ
ルギー
(水力+地熱+
新エネ)
原子力
石油等
LNG
石炭
~2030年
2020年新エネ13.5%
2025年は線形補間
長期エネルギー需給見通
し(再計算) (2009.8)
電源構成試算における前提条件
2030年
電力量比率
22%
電力量の比率を
線形補間
電力量比率
電力量の比率を
線形補間
電力量比率
電力量の比率を
線形補間
電力量比率
(電力量を満たすよ
うに算出)
2030年~
長期エネルギー需
給見通し(2015.7)
22%
減少ケース
2030年の電力量維持(割合は増加する)
増加ケース
石炭の割合が減少した分、増加させる
減少ケース
2030年の電力量維持(割合は増加する)
増加ケース
3%で一定
3%
27%
電力量比率
26%
22%で一定
減少ケース
再生エネ及び原子力の割合が増加した分、LNG:石
炭=1:1の割合で電力量を減少させる
増加ケース
27%で一定
減少ケース
再生エネ及び原子力の割合が増加した分、LNG:石
炭=1:1の割合で電力量を減少させる
増加ケース
2030年の電力量維持(割合は減少する)
図 2-1-4-10 に 、表 2-1-4-1 を 基 に し た 発 電 力 量 減 少 ケ ー ス の 電 源 構 成( ケ ー ス 1 と す る )、
図 2-1-4-11 に 発 電 力 量 増 加 ケ ー ス ( ケ ー ス 2 と す る ) の 電 源 構 成 を 示 し た 。
ケ ー ス 1 で は 、 2030 年 以 降 全 体 の 発 電 電 力 量 が 減 少 す る 。 2030 年 以 降 の 発 電 量 割 合 を
2030 年 と 同 じ と し た 場 合 、各 電 源 の 発 電 電 力 量 は 減 少 す る が 、再 生 エ ネ ル ギ ー 及 び 原 子 力
の 設 備 容 量 も 減 少 さ せ る こ と は 、 CO 2 排 出 量 削 減 の 観 点 か ら あ ま り 現 実 的 で は な い 。 こ こ
で は 、2030 年 ま で に 建 設 し た 再 生 エ ネ ル ギ ー 発 電 用 の 設 備 を で き る 限 り 維 持 し 、少 な く と
22
も 2030 年 の 発 電 電 力 量 を 2030 年 以 降 も 維 持 す る シ ナ リ オ を 想 定 し た 。
そ れ に 伴 っ て 、 石 炭 及 び LNG の 発 電 電 力 量 は 減 少 さ せ る こ と と し た 。
12,000
10,000
773
88
発電電力量(億kWh)
714
56
8,000
2882
3048
731
178
93
1398
781
425
903
935
6,000
4057
4,000
3420
2945
2339
834
782
1157
834
834
22%1157
834
1157
1517
623
753
1072
808
3045
215822%
2158
294 3%
287
2158
264827% 2539
1157
834
1157
24.2%
再生エネ
電力量維持
2158
2158 原子力 24.2%
281
274
267
2430
2321
2211 LNG
2332
2223
2114 石炭
電力量維持
3.0%
24.9%
2,000
2529
2511
2845
2843
2702
255026% 2441
23.7%
0
2005
2010
石炭
LNG
図 2-1-4-10
2013
石油等
2020
原子力
2025
2030
新エネ
2035
一般水力
2040
揚水
2045
2050
地熱
発電力量減少ケースにおける電源構成(ケース1)
原子力、石油、
LNGが割合を維
持する。
一方、石炭の割
合が減少する分、
再生エネの割合
は増加。
12,000
10,000
773
88
発電電力量(億kWh)
714
56
8,000
2882
3048
731
178
93
1398
781
425
903
935
6,000
4057
3420
2945
2339
852
872
882
834
862
808
782
1236
1157 22%
1281
1326
1372
215822% 2204
2230
2257
2283 原子力
22%
294 3%
301
304
308
311 石油等
3%
3045
264827% 2705
2737
2770
2802 LNG
27%
電力量維持。
割合は減少。
1517
再生エネ
23.4%
623
753
1072
4,000
全体が減少し、
再生エネ、
原子力が維持
するため、
LNGと石炭は
は減少
2,000
2529
2511
2845
2843
2702
255026% 2550
2550
2550
2550 石炭
2005
2010
2013
2020
2025
2030
2040
2045
2050
24.6%
0
石炭
LNG
図 2-1-4-11
石油等
原子力
新エネ
2035
一般水力
揚水
地熱
発電力量増加ケースにおける電源構成(ケース2)
23
2030 年 以 降 、 全 体 の 発 電 電 力 量 が 増 加 す る ケ ー ス 2( 図 2-1-4-11) で は 、 ケ ー ス 1 と は
逆 に 、2030 年 の 電 源 構 成 比 率 を 2030 年 以 降 も 維 持 す れ ば 、各 電 源 の 発 電 電 力 量 は 増 加 す
る 。 し か し 、 石 炭 及 び LNG の 発 電 電 力 量 の 2030 年 以 降 の 増 加 は 考 え に く い 。 こ こ で は 、
石 炭 及 び LNG の 発 電 電 力 量 を 2030 年 以 降 、 2030 年 レ ベ ル に キ ー プ す る こ と を 考 え 、 再
生エネルギー及び原子力を増加させるシナリオを想定した。
(3) 石 炭 火 力 へ の バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 パ タ ー ン
石 炭 火 力 発 電 由 来 の CO 2 排 出 量 に つ い て 、バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS 導 入 に 関 す
る 3 つ の パ タ ー ン を 表 2-1-4-2 の よ う に 置 い た 。
表 2-1-4-2
発電設備
パターン
1
パターン
2
• 既存設備
• 2029年までに
運開を予定す
る計画中ユ
ニットを含める
• 既存設備
• 2029年までに
運開を予定す
る計画中ユ
ニットを含める
• 2030年以降
にCCTを導入
CO2削減法
パターン
3
2013
2020
20202024
20252029
20302034
20352039
20402044
20452049
バイオマス混焼、CCT(A-USC, IGCC, IGFC)及びCCUSの導入を行わない
バイオ混焼
(混焼率[%])
0.2%
1%
3%
2025年のバイオマス使用量維持
―
―
―
―
1基
1基
3基
5基
IGCC
1基
―
2基
―
1基
1基
3基
5基
IGFC
―
―
―
―
―
1基
3基
5基
―
―
―
―
―
―
―
―
0.2%
1%
3%
2025年のバイオマス使用量維持
―
―
―
―
1基
1基
3基
5基
IGCC
1基
―
2基
―
1基
1基
3基
5基
IGFC
―
―
―
―
―
1基
3基
5基
―
―
―
―
600
600
600
600
A-USC
CCT
基数
CCS
• 既存設備
• 2029年までに
運開を予定す
る計画中ユ
ニットを含める
• 2030年以降
にCCTと
CCUSを導入
設備導入に関する検討パターン
バイオ混焼
(混焼率[%])
A-USC
CCT
基数
CCUS(CO2量規
模)[万t/y]
パ タ ー ン 1 は 、 バ イ オ マ ス 混 焼 、 A-USC、 IGCC、 IGFC 及 び CCUS を 行 わ な い パ タ ー ン
で あ る 。 す な わ ち 、 CO 2 排 出 量 削 減 の 行 動 を ま っ た く 行 わ な い パ タ ー ン で あ る 。 こ れ を 本
検 討 に お け る ベ ー ス と な る シ ナ リ オ と し 、こ の パ タ ー ン に 比 べ 、CCT 等 を 導 入 し た と き の
CO 2 削 減 量 比 較 を 行 う 。
パ タ ー ン 2 は 、 バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT( A-USC、 IGCC、 IGFC) の 導 入 を 行 う パ タ ー
ン で あ り 、 表 2-1-4-2 に 示 し た よ う な バ イ オ マ ス 混 焼 率 及 び CCT の 導 入 基 数 を 想 定 す る 。
パ タ ー ン 3 は 、 パ タ ー ン 2 に 加 え 、 CCUS を 行 う こ と を 想 定 し た 。 CO 2 利 用 等 の た め に
こ れ を 回 収 す る 設 備 が 一 つ あ る い は 複 数 建 設 さ れ る と し 、 5 年 間 毎 に 600 万 ト ン を 回 収 す
る 設 備 が 立 ち 上 が る と い う 想 定 で あ る 。‘600 万 ト ン ’は 、100 万 kW 級 発 電 所 か ら 1 年 間 に
排 出 さ れ る CO 2 量 を 念 頭 に 置 い て い る 。
2030 年 ま で に 現 在 計 画 中 の 20 ユ ニ ッ ト 以 上 の 発 電 所 が 全 て 立 ち 上 が る と 想 定 し て い る 。
24
こ の 場 合 、 2030 年 で の 稼 働 率 は 50% 程 度 と な る た め 、 今 回 の 検 討 で は 、 各 パ タ ー ン に お
い て 、 発 電 所 稼 働 率 が 70%前 後 に な る よ う に 、 古 い 発 電 所 か ら 休 止 し て い く こ と と し た 。
現状の発電ユニットのタイプ(亜臨界、超臨界、超々臨界)と運開年の一覧表によれば、
亜 臨 界 の 発 電 所 が 多 く 休 止 さ れ て い く こ と に な る 。 低 い 効 率 の 発 電 所 が 休 止 し USC が 入
れ 替 わ る か た ち と な る た め 、 結 果 的 に CO 2 排 出 量 は 減 少 す る こ と と な る が 、 50 年 程 度 と
される発電所の稼動期間より短い期間で休止する発電所がでてくることとなる。
バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS の 導 入 年 、基 数 、量 及 び 導 入 コ ス ト は 表 2-1-4-3 の通
りとした。
表 2-1-4-3
バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS の 導 入 時 の シ ナ リ オ と 導 入 コ ス ト
バイオマス混焼
導入シナリオ
2013 年 : 0.2cal.%、 2020 年 : 1cal.%、 2025 年 ま で に 3cal.%に 達 す る 。 2025 年 以
降 、 2025 年 に 収 集 で き た 量 は 確 保 で き る と し 、 こ れ を 混 焼 に 使 用 す る 。
( 2013 年 度 バ イ オ マ ス 混 焼 量 は 294 千 ト ン 【 出 典 : 電 気 事 業 連 合 会 】、 電 力 事 業 石
炭 消 費 量 は 89,700 千 ト ン【 出 典:Coal Market Survey】か ら 混 焼 比 は 重 量 比 で 0.33%。
バ イ オ マ ス 発 熱 量 を 3,500kcal/kg、 石 炭 発 熱 量 を 6,000kcal/kg と し て 、 カ ロ リ ー ベ
ー ス で 混 焼 率 を 約 0.2cal%。)
導入コスト
CCT 及 び CCUS 導 入 コ ス ト と 比 較 し 極 め て 低 い の で 無 視 す る 。
A-USC( 1,000MW)
導入シナリオ
導入コスト
期間
2030-2034
2035-2039
2040-2044
2045-2049
導入基数
1
1
3
5
CO 2 原 単 位 [g/kW h]
710
710
710
710
効 率 [%]
46
46
46
46
導 入 費 用 [万 円 /kW ]
40
30
30
30
長期の材料試験、環境アセスメント、電力会社の経営判断、建設などが運開までに
必 要 と 判 断 さ れ る た め 、2035 年 時 点 で 初 め て 実 装 さ れ る と し た 。導 入 費 用 は 、初 期 、
USC( 25 万 円 /kW ) の 1.6 倍 、 習 熟 期 1.2 倍 。
IGCC
導入シナリオ
導入コスト
期間
2020-2024
2025-2029
2030-2034
2035-2039
2040-2044
2045-2049
導入基
数
CO 2 原
単位
[g/kW h]
2(540MW )
空気吹
710
0
1(500MW)
3(500MW)
5(500MW)
空 気 or 酸 素
空 気 or 酸 素
空 気 or 酸 素
-
1(500MW)
酸素吹
692
692
661
661
効 率 [%]
46
-
48
48
50
50
導入費
用 [万 円
/kW ]
30
-
40
(1500℃ )
30
30
(1700℃ )
30
導 入 費 用 は 、 初 期 、 USC( 25 万 円 /kW ) の 1.6 倍 、 習 熟 期 1.2 倍 。
IGFC(250MW)
導入シナリオ
導入コスト
期間
2035-2039
2040-2044
2045-2049
導入基数
1
3
5
CO 2 原 単 位 [g/kW h]
590
590
509
効 率 [%]
55
55
60
導 入 費 用 [万 円 /kW ]
40
30
30
導 入 費 用 は 、 初 期 、 USC( 25 万 円 /kW ) の 1.6 倍 、 習 熟 期 1.2 倍 。
25
CCUS
導入シナリオ
導入コスト
期間
2031-2035
2036-2040
2041-2045
2046-2050
導 入 す る CCUS 設 備 の
600
600
600
600
CO 2 回 収 量 [万 ト ン ]
100 万 kW 1 基 分 を 想 定
導 入 費 用 [万 円 /kW]
53
35
35
35
【バウンダリーダム石炭火力発電所のデータ】
150MW の プ ラ ン ト の 90%回 収 装 置 の 設 備 費 が CA$905M。 \88.5/CA$と し て 約 800 億
円 。 こ れ よ り 53 万 円 /kW。 習 熟 後 の コ ス ト を 2/3 と す る と 35 万 円 /kW。
(4) 計 算 結 果
(4-1) ケ ー ス 1( 2030 年 以 降 、 電 力 需 要 減 少 )
(4-1-1) パ タ ー ン 1 : 既 存 プ ラ ン ト 及 び 2030 年 ま で に 運 開 す る 計 画 中 24 ユ ニ ッ ト を 設 備
と し て 考 慮 す る 。バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT(A-USC、IGCC、IGFC)及 び CCUS
を導入しない。
(a) 設 備 容 量 の 推 移
2013 年 時 点 で 、微 粉 炭 火 力 の 発 電 設 備 容 量 は 43.6GW で あ る 。パ タ ー ン 1 の 場 合 の 各 プ ラ
ン ト の 設 備 容 量 の 推 移 を 図 2-1-4-12 に 示 す 。
40,000
設備容量(MW)
35,000
30,000
計画中石炭火力
25,000
Sub
20,000
SC
15,000
USC
10,000
IGCC
5,000
0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
図 2-1-4-12
パターン1の場合の設備容量
2030 年 ま で 、超 々 臨 界 発 電 所 の 新 設 火 力 が 建 設 さ れ る 一 方 、亜 臨 界 火 力 及 び 超 臨 界 火 力
発電所は減少する。
26
(b) 計 算 結 果
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-13 に 示 す 。
150
2.5
125
13.1%
28.1%
2.0
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
3.0
0
22
図 2-1-4-13
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 1 )
・ CO 2 排 出 量
2013 年 の 排 出 量 2.41 億 ト ン /年 を ベ ー ス に す る と 、2030 年 の CO 2 排 出 量 2.09 億 ト
ン /年 は 13.1% の 減 少 で あ り 、 2050 年 の 排 出 量 1.73 億 ト ン /年 は 28.1%の 減 少 で あ
る 。 石 炭 の 発 電 電 力 量 は 、 2013 年 2845 億 kW、2030 年 2550 億 kW と想 定 し て お
り 、 2030 年 の 発 電 電 力 量 は 、 2013 年 対 比 、 10.4%減 で あ る 。 亜 臨 界 や 超 臨 界 と い
っ た 超 々 臨 界 よ り 効 率 の 低 い 発 電 所 が 休 止 さ れ 、2020 年 代 に 運 開 し た 超 々 臨 界 が 置
き 換 わ っ て い く か た ち と な る た め 、発 電 電 力 量 の 減 少 率 よ り CO 2 排 出 削 減 量 が 上 回
った。
(4-1-2) パ タ ー ン 2 : パ タ ー ン 1 に 対 し 、 2030 年 以 降 、 表 2-1-4-2「 パ タ ー ン 2 」 に し た
が っ て CCT を 導 入 す る 。
(a) 設 備 容 量 の 推 移
パ タ ー ン 2 の 場 合 の 各 プ ラ ン ト の 設 備 容 量 の 推 移 を 図 2-1-4-14 に 示 す 。 亜 臨 界 火 力 及 び
超 臨 界 火 力 発 電 所 が 2030 年 ま で に 急 激 に 減 少 し て い る の は パ タ ー ン 1 と 同 じ で あ る が 、
2030 年 以 降 、 A-USC、 IGCC 及 び IGFC が 導 入 さ れ て い く 想 定 が 示 さ れ て い る 。
27
40,000
設備容量(MW)
35,000
30,000
Sub
計画中石炭火力
25,000
SC
20,000
USC
15,000
IGCC
10,000
A-USC
CCTの導入
IGFC
5,000
0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
図 2-1-4-14
パターン2の場合の設備容量
(b) 計 算 結 果
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-15 に 示 す 。
150
2.5
125
15.8%
41.1%
2.0
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
図 2-1-4-15
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
3.0
0
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 2 )
・ CO 2 排 出 量
2013 年 の 排 出 量 、 2.41 億 ト ン /年 を ベ ー ス に 考 え る と 、 2030 年 の CO 2 排 出 量 2.03
億 ト ン /年 は 15.8% の 減 少 で あ り 、 2050 年 の 排 出 量 1.42 億 ト ン /年 は 減 少 率 41.1%
で あ る 。 当 然 な が ら 、 バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT の 導 入 で そ れ ら を 導 入 し な い パ タ
ー ン よ り CO 2 排 出 量 は 減 少 す る 。
28
・バイオマス混焼に用いるバイオマス量
バ イ オ マ ス 混 焼 に よ る CO 2 削 減 量 は 以 下 の 通 り と し た 。
表 2-1-4-4
バ イ オ マ ス 混 焼 率 、 CO 2 削 減 量 及 び バ イ オ マ ス 使 用 量
混焼率(cal.%)
CO2削減量(万トン/年)
バイオマス使用量
(万トン/年)
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
5.2
0.2
1.0
3.0
3.2
3.4
3.6
4.1
47.9 239 662 662 662 662 662 382
30
145
405
405
405
405
405
405
2025 年 に 調 達 で き た バ イ オ マ ス 量 が 減 少 す る と い う シ ナ リ オ は 考 え に く い た め 、
2030 年 以 降 、 バ イ オ マ ス 量 は 一 定 と し た 。 2030 年 以 降 石 炭 火 力 に よ る 発 電 電 力 量
は 減 少 す る た め 、カ ロ リ ー ベ ー ス の 混 焼 率 は 増 加 す る こ と と な る 。2025 年 、3cal.%
程 度 の 混 焼 率 で も 、 約 400 万 ト ン /年 と い う 大 量 の バ イ オ マ ス が 必 要 と な る 。
・ CO 2 排 出 削 減 コ ス ト ( 設 備 導 入 コ ス ト )
本 検 討 で は 、表 2-1-4-2 に 示 し た よ う に CCT を 導 入 す る こ と を 想 定 し て い る が 、こ
れ ら が USC で あ っ た 場 合 の 導 入 コ ス ト を 計 算 し 、 そ の 差 を 求 め た 。 USC 導 入 に 対
し 、 CCT の 導 入 コ ス ト 増 分 を 検 討 す る た め で あ る 。
ま た 、 CCT の 導 入 に よ り CO 2 排 出 低 減 が 行 わ れ る が 、 導 入 コ ス ト の 差 を 削 減 さ れ
た CO 2 量 で 割 り 、 CO 2 ト ン 当 た り の CCT 導 入 コ ス ト を 計 算 し た 。
2013 年 か ら 2050 年 ま で の バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し な い 場 合 の ト ー タ ル
の CO 2 排 出 量 は 、 概 ね 図 2-1-4-13 の 各 年 の 排 出 量 を 足 し て 5 倍 し た も の で あ り 、
約 78.7 億 ト ン と な る 。一 方 、バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 全 く 導 入 し な い 場 合 の CO 2
排 出 量 は 約 83.0 億 ト ン と 計 算 さ れ 、両 者 の 差 は 、約 4.3 億 ト ン と な っ た 。ま た 、バ
イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し た 場 合 と し な い 場 合 の 導 入 コ ス ト の 差 は 約 1.1 兆 円
となった。
し た が っ て 、バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し て CO 2 排 出 削 減 を 行 っ た と き の CO 2
1 ト ン あ た り の 設 備 費 コ ス ト 増 分( USC 基 準 )は 、約 2,600 円 /ト ン -CO 2 で あ っ た 。
(4-1-3) パ タ ー ン 3 : パ タ ー ン 2 に お い て CCUS を 行 っ た 場 合
(a) 設 備 容 量 の 推 移
各発電技術の設備容量の推移はパターン2と同様である。
29
(b) 計 算 結 果
3.0
150
2.5
125
15.8%
2.0
51.1%
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
図 2-1-4-16
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-16 に 示 す 。
0
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 3 )
・ CO 2 排 出 量
2031 年 以 降 、 CCUS を 導 入 す る こ と に よ っ て 、 パ タ ー ン 2 よ り さ ら に CO 2 排 出 量
は 減 少 す る 。本 検 討 で は 、5 年 で 600 万 ト ン の CO 2 処 理 量 を 想 定 し た が 、CCUS を
行 わ な い 場 合 ( パ タ ー ン 2 ) に 比 べ 、 2050 年 断 面 で 、 2013 年 比 10 ポ イ ン ト の 排
出 量 減 少 が な さ れ る こ と が わ か っ た 。( 図 2-1-4-15 と 図 2-1-4-16 の 比 較 )
・ CO 2 排 出 削 減 コ ス ト ( 設 備 導 入 コ ス ト )
バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS を 行 わ な い 場 合 、上 述 の よ う に 2013 年 か ら 2050
年 ま で の ト ー タ ル の CO 2 排 出 量 は 約 83.0 億 ト ン で あ る 。 バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及
び CCUS を 行 う パ タ ー ン 3 の 場 合 、 CO 2 排 出 量 は 75.7 億 ト ン に 減 少 す る と い う 計
算 結 果 で あ り 、そ の 差 は 約 7.3 億 ト ン で あ っ た 。一 方 、バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び
CCUS を 行 う 場 合 と 行 わ な い 場 合 の 設 備 コ ス ト の 差 は 、 2.7 兆 円 と 計 算 さ れ た 。 こ
の こ と か ら 、 バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT 及 び CCUS を 導 入 し て CO 2 排 出 削 減 を 行 っ た
と き の CO 2 1 ト ン あ た り の 設 備 費 コ ス ト 増 分 は 、 約 3,700 円 /ト ン -CO 2 で あ っ た 。
今 回 の 検 討 で 、単 位 重 量 あ た り の CO 2 回 収 の 設 備 コ ス ト と い う 観 点 で み れ ば 、CCUS
設 備 コ ス ト が CCT 設 備 コ ス ト よ り 高 い こ と が わ か っ た 。
(4-2)
ケース2
( 2030 年 以 降 、 電 力 需 要 増 加 )
(4-2-1) パ タ ー ン 1 : 既 存 プ ラ ン ト 及 び 2030 年 ま で に 運 開 す る 計 画 中 24 ユ ニ ッ ト を 設 備
と し て 考 慮 す る 。バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT(A-USC、IGCC、IGFC)及 び
CCUS を 導 入 し な い 。
(a) 設 備 容 量
パ タ ー ン 1 の 場 合 の 各 プ ラ ン ト の 設 備 容 量 の 推 移 を 図 2-1-4-12 に 示 す 。
30
40,000
設備容量(MW)
35,000
30,000
計画中石炭火力
25,000
Sub
20,000
SC
15,000
USC
10,000
IGCC
5,000
0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
図 2-1-4-12
パターン1の場合の設備容量
既 存 及 び 新 設 が 計 画 さ れ て い る 発 電 所 の 運 開 年 か ら 判 断 す る と 、2030 年 以 降 発 電 電 力 量
が 減 少 す る ケ ー ス 1 の 場 合 、2030 年 以 降 稼 働 率 を 70%程 度 に 保 つ た め 、稼 動 50 年 未 満 で
あ っ て も 休 止 す る USC ユ ニ ッ ト を 想 定 す る 必 要 が あ っ た が 、 発 電 電 力 量 が 増 加 す る ケ ー
ス 2 の 場 合 、 2030 年 以 降 、 2050 年 ま で USC を 休 止 す る 必 要 は な い 。
(b) 計 算 結 果
3.0
150
2.5
125
2.0
13.1%
13.0%
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
図 2-1-4-13
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-13 に 示 す 。
0
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 1 )
2030 年 以 降 、石 炭 火 力 発 電 所 の 発 電 電 力 量 は 同 じ と し て い る た め 、 CO 2 排 出 削 減 量 は ほ
31
とんど変わらない。
(4-2-2) パ タ ー ン 2 : パ タ ー ン 1 に 対 し 、 2030 年 以 降 、 表 2-1-4-2 中 「 パ タ ー ン 2 」 に し
た が っ て CCT を 導 入 す る 。
(a) 設 備 容 量 の 推 移
各 発 電 技 術 の 設 備 容 量 の 推 移 を 図 2-1-4-14 に 示 す 。
40,000
設備容量(MW)
35,000
30,000
Sub
25,000
SC
20,000
USC
15,000
IGCC
10,000
A-USC
IGFC
5,000
0
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
図 2-1-4-14
パターン2の場合の設備容量
(b) 計 算 結 果
3.0
150
2.5
125
2.0
15.8%
26.2%
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
図 2-1-4-15
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-15 に 示 す 。
0
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 2 )
・ CO 2 排 出 量
2013 年 の 排 出 量 、2.41 億 ト ン /年 を ベ ー ス に す る と 、2030 年 の CO 2 排 出 量 2.03 億
ト ン /年 は 15.8% の 減 少 で あ り 、 2050 年 の CO 2 排 出 量 1.78 億 ト ン /年 排出 量は 減少
率 26.2%に 相 当 す る 。バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT の 導 入 で CO 2 排 出 量 は 減 少 す る が 、
全体の発電量が上がっているため、ケース1と比べ、減少率は小さい。
32
・ CO 2 排 出 削 減 コ ス ト ( 設 備 導 入 コ ス ト )
2013 年 か ら 2050 年 ま で の ト ー タ ル の CO 2 排 出 量 は 、 概 ね 図 2-1-4-15 の 各 年の 排
出 量 を 足 し て 5 倍 し た も の で あ り 、 約 83.4 億 ト ン と な る 。 一 方 、 バ イ オ マ ス 混 焼
及 び CCT を 全 く 導 入 し な い 場 合 の CO 2 排 出 量 は 約 87.6 億 ト ン( パ タ ー ン 1 の 計 算
結 果 か ら 算 出 ) と 計 算 さ れ 、 両 者 の 差 は 、 約 4.2 億 ト ン と な っ た 。 ま た 、 バ イ オ マ
ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し た 場 合 と し な い 場 合 の 導 入 コ ス ト の 差 は 約 1.1 兆 円 で あ っ
た。
し た が っ て 、バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し て CO 2 排 出 削 減 を 行 っ た と き の CO 2
1 ト ン あ た り の 設 備 費 コ ス ト は 、 約 2,600 円 /ト ン -CO 2 で あ っ た 。
(4-2-3) パ タ ー ン 3 : パ タ ー ン 2 に お い て CCUS を 行 っ た 場 合 。
(a) 設 備 容 量 の 推 移
設備容量の推移はパターン2と同様である。
(b) 計 算 結 果
3.0
150
2.5
125
2.0
15.8%
38.9%
100
1.5
75
1.0
50
0.5
25
0.0
図 2-1-4-16
2013 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
設備利用率(%)
CO2排出量(億トン)
CO 2 排 出 量 及 び 設 備 利 用 率 を 図 2-1-4-16 に 示 す 。
0
石 炭 火 力 の CO 2 排 出 量 と 設 備 利 用 率 の 推 移 ( パ タ ー ン 3 )
・ CO 2 排 出 量
2013 年 の 排 出 量 、2.41 億 ト ン /年 を ベ ー ス に す る と 、2050 年 の 排 出 量 減 少 率 は 38.9%
で あ る 。 CCUS の 導 入 で CO 2 排 出 量 は 減 少 し た 。
・ CO 2 排 出 削 減 コ ス ト ( 設 備 導 入 コ ス ト )
2013 年 か ら 2050 年 ま で の ト ー タ ル の CO 2 排 出 量 は 、 概 ね 図 2-1-4-16 の 各 年の 排
出 量 を 足 し て 5 倍 し た も の で あ り 、 約 79.7 億 ト ン と な る 。 一 方 、 バ イ オ マ ス 混 焼
及 び CCT を 全 く 導 入 し な い 場 合 の CO 2 排 出 量 は 約 87.6 億 ト ン と 計 算 さ れ 、両 者 の
差 は 、約 7.9 億 ト ン と な っ た 。ま た 、バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し た 場 合 と し
な い 場 合 の 導 入 コ ス ト の 差 は 約 2.7 兆 円 と な っ た 。
33
し た が っ て 、バ イ オ マ ス 混 焼 及 び CCT を 導 入 し て CO 2 排 出 削 減 を 行 っ た と き の CO 2
1 ト ン あ た り の 設 備 費 コ ス ト は 、 約 3,400 円 /ト ン -CO 2 で あ っ た 。
(5) ま と め
こ れ ま で 試 算 し て き た CO 2 削 減 量 に つ い て 、 表 2-1-4-5 に そ の 結 果 を ま と め た 。 2030
年 ま で は 、バ イ オ マ ス 混 焼 が 石 炭 火 力 発 電 所 の CO 2 削 減 に 対 す る 主 要 な 手 段 で あ る 。2030
年 CO 2 削 減 率 は 、バ イ オ マ ス 混 焼 を 行 わ な い 場 合 に 比 べ 、2013 年 対 比 、2.7 ポ イ ン ト 減 少
す る 。2.7 ポ イ ン ト 程 度 で あ っ て も 、バ イ オ マ ス 量 と し て は 、年 間 400 万 ト ン 必 要 で あ り 、
大量のバイオマス調達の検討・実現が重要な課題となる。
表 2-1-4-5 は 、CCT 等 導 入 ペ ー ス と CO 2 削 減 量 の 一 例 を 示 し て い る 。こ の 導 入 ペ ー ス が
早 ま れ ば CO 2 排 出 削 減 量 は 多 く な る が 、既 存 発 電 所 の 休 止 タ イ ミ ン グ を 考 慮 し な け れ ば な
ら な い 。バ イ オ マ ス 混 焼 、CCT 及 び CCUS の 導 入 加 速 化 は 、政 策 的 な 支 援 を 含 め て 議 論 す
る必要がある。
表 2-1-4-5
発電設備
パターン
2
パターン
3
バ イ オ マ ス 混 焼 、 CCT、 CCUS に よ る CO 2 排 出 削 減 効 果
2013
2020
20202024
0.2%
1%
3%
2025年のバイオマス使用量維持
―
―
―
―
1基
1基
3基
5基
IGCC
1基
―
2基
―
1基
1基
3基
5基
IGFC
―
―
―
―
―
1基
3基
5基
CO2削減法
20252029
• 既存設備
• 2029年までに
運開を予定す
る計画中ユ
ニットを含める
• 2030年以降に
CCTを導入
バイオ混焼
(混焼率[%])
2013年対比
CO2排出削
減率[%]
電力量減少ケース
15.8%
電力量増加ケース
15.8%
• 既存設備
• 2029年までに
運開を予定す
る計画中ユ
ニットを含める
• 2030年以降に
CCTとCCUS
を導入
2013年対比
CO2排出削
減率[%]
A-USC
CCT
基数
バイオ混焼
(混焼率[%])
20352039
20402044
( ) 内は、バイオ混焼、CCT,
CCUSを導入しないパターン
(パターン1)
20452049
41.1%
(28.1%)
26.2%
(13.0%)
(13.1%)
0.2%
1%
3%
2025年のバイオマス使用量維持
―
―
―
―
1基
1基
3基
5基
IGCC
1基
―
2基
―
1基
1基
3基
5基
IGFC
―
―
―
―
―
1基
3基
5基
―
―
―
―
600
600
600
600
A-USC
CCT
基数
(13.1%)
20302034
CCUS(CO2量)
[万t/y]
電力量減少ケース
15.8%
電力量増加ケース
15.8%
(13.1%)
(13.1%)
( ) 内は、バイオ混焼、CCT,
CCUSを導入しないパターン
(パターン1)
51.1%
(28.1%)
38.9%
33 (13.0%)
2-1-4-3. 低 品 位 炭 利 用
現在、我が国は石炭のほとんどを輸入に依存している。主な輸入国は、オーストラリア
と イ ン ド ネ シ ア で 、2012 年 は 、そ れ ぞ れ 1 億 1,500 万 ト ン (約 60% )、3,500 万 ト ン (約 20% )
を輸入している。しかし、近年は産炭国である中国やインドがこれらの国から多くの石炭
を輸入するようになり、今後その輸入量は増加することが予想されており、我が国が将来
34
にわたって安定的にオーストラリアやインドネシアから良質な石炭を輸入できるかどうか
が懸念されている。
また、世界の石炭埋蔵量のうちの約半分は、低品位炭と言われる亜瀝青炭及び褐炭であ
り、このような低品位炭の利用はこれまでは山元における発電利用に留まっていた。しか
し、例えば、我が国の低品位炭利用技術を導入することで、石炭を輸送してより広範な地
域で利用できることを可能にすることや、低品位炭をガス化することで、発電のみならず
化学原料、肥料等への利用拡大をすることにより、低品位炭の生産地域の経済発展を促進
することとなる。
ここで我が国の低品位炭利用技術の推進におけるメルクマールとして2つの試算を行
った。一つは、技術の導入により産炭国の需給緩和を図り、我が国への安定供給に資する
もの。もう一つは、技術の導入により安価な低品位炭の我が国への持込、利用を促進する
もの。
前者については、自国生産の瀝青炭を自国内消費しているインドネシアにおいて、我が
国 の 低 品 位 炭 利 用 技 術( JCF、UBC 等 )を 導 入 す る こ と に よ り 、我 が 国 を 含 む 石 炭 輸 入 国
向けに瀝青炭を振り向けるという想定であり、インドネシア石炭協会による、現行の国内
消費量、輸出量の予測に対して、以下の設定条件により試算を行った。
・我 が 国 の 低 品 位 炭 利 用 技 術 の 導 入 に よ り 、イ ン ド ネ シ ア 国 内 消 費 の 石 炭( 現 行 は 、ほ
ぼ全て瀝青炭)すべて低品位炭に入れ替わる。
・インドネシアで生産される瀝青炭はすべて輸出に回す。
・ 新 輸 出 量 と は : イ ン ド ネ シ ア の 国 内 消 費 を 全 量 褐 炭 (改 質 炭 )と し 、 そ れ に 相 当 す る 分
の瀝青炭を輸出に振り向けた場合の輸出量。
そ の 結 果 、 2015 年 に 1.2 億 ト ン 、 2020 年 に 1.8 億 ト ン 、 2025 年 に 3 億 ト ン 、 2030 年
に 4 億 ト ン の 輸 出 余 力 が 発 生 す る と の 試 算 が 得 ら れ た 。こ の 輸 出 余 力 は 、わ が 国 の 年 間 石
炭消費量をはるかに上回る量であり、我が国の安定供給に大きく貢献するものと考えられ
る。
12.0 億 トン
9.55 億 トン
8.0 億 トン
6.8 億 トン
6.55 億 トン
4.85 億 トン
5.0 億 トン
3.6 億 トン
3.0 億 トン
1.25 億 トン
1.8 億 トン
4.0 億 トン
出 典 : Indonesia Coal Handbook
図 2-1-4-17 イ ン ド ネ シ ア の 石 炭 需 給 予 測 (現 行 )
35
(百万トン)
1400
輸出余力:4億トン
1200
1200
輸出余力:3億トン
955
1000
800
600
400
輸出余力:1.8億トン
680
655
輸出余力:1.2億トン
496
485
361
800
200
0
2015
2020
2025
輸出量
2030
新輸出量
出 典 : Indonesia Coal Handbook 統 計 デ ー タ を 元 に JCOAL 作 成
図 2-1-4-18
イ ン ド ネ シ ア の 石 炭 需 給 予 測 (低 品 位 炭 利 用 技 術 適 用 )
また、後者については、技術導入により産炭国の低品位炭を我が国に持ち込む想定を、
豪州を例として、以下の設定条件により試算した。
・目 標 と な る 石 炭 価 格 設 定 は 2014 年 1 月 の Argus/McCloskey's Coal Price Index(API)、
及 び Argus/Coalindo Indonesian Coal Index( ICI)の 価 格 イ ン デ ッ ク ス を 参 考 と し た 。
・ 改 質 の 対 象 と な る 原 炭 ( ビ ク ト リ ア 褐 炭 ) の 性 状 値 3 は 、 2,600kcal/kg、 水 分 60% 、
価 格 10USD/ton と し た 。
・改 質 技 術 に よ る 品 質 向 上 値 は 、改 質 技 術 に よ り 水 分 減 量 分 だ け 石 炭 炭 素 分 の 重 量 が 増
加するため、相対的に発熱量が増加すると仮定した。
我 が 国 の あ る 技 術 は 、改 質 後 の 水 分 を そ れ ぞ れ 35% 、20% 、10% 、0% に 低 減 す る も の
で あ り 、こ れ ら の 技 術 を 適 用 す る と 上 記 原 炭 の 発 熱 量 は そ れ ぞ れ 、4,225、5,200、5,850、
6,500 kcal/kg に 増 加 す る 。こ れ ら と 同 程 度 の 発 熱 量 を 有 す る 瀝 青 炭 の 価 格 よ り 低 く な る こ
とを目標として、技術開発、導入を進める必要があり、 引き続き適当なメルクマールを設
定 し て い く 必 要 が あ る ( 図 2-1-4-19)。
例 え ば 、 低 品 位 炭 を 油 ス ラ リ ー 中 で 加 熱 し 水 分 を 除 去 す る UBC 技 術 は 、 褐 炭 が 瀝 青 炭
の 熱 量 等 価 以 下 と な る よ う に 改 質 す る 技 術 で あ り 、現 在 の と こ ろ 総 コ ス ト が 58~ 72US/ton
となっており、さらなる低コスト化及び安定化を目指して技術実証を 進めている。
3
CCT ワークショップ 2009
36
120
;石炭価格、API, Argus/McCloskey’s Coal
Price Index, 豪州、2014年1月
;石炭価格、ICI, Argus/Coalindo Indonesia
Coal Index, 尼国、 2014年1月
価格 (USD/ton FOB)
100
;Upgrading of Brown Coal (UBC)
80
72;褐炭原炭価格15U$/t時のUBC総コスト
72
58;褐炭原炭価格10U$/t時のUBC総コスト
60
58
改質炭
40
20
出典;低品位炭改質技術研究開発プロジェ クト
事後評価検討会 H22年12月
褐炭
0
2000
改質効果
3000
4000
5000
6000
7000
発熱量 (kcal/kg)
出 典 : JCOAL 作 成
図 2-1-4-19
豪州の石炭価格への波及効果
2-1-4-4. 環 境 対 策
我 が 国 の 厳 し い 環 境 規 制 の 下 で 開 発 が 進 め ら れ て き た 環 境 負 荷 物 質 低 減 技 術 は 、今 後 各
国において規制強化が進む際に、その対策技術のデファクトスタンダードとなる可能性が
高い。ただし、規制が施行され対象となり得る国、対象となる規制物質等は未だ限定的で
あり、明示的にメルクマールを設定し抜本的な問題解決を目指すには、ニーズや技術の発
掘、整理等、現状把握の段階も含めた検討が必要である。
2-1-5. 今 後 の 検 討
中 間 的 な メ ル ク マ ー ル の 設 定 は 、技 術 開 発 を 体 系 と し て 進 め て 行 く 上 で 不 断 の 精 査 が 必
要 で あ る 。そ の た め に は 、我 が 国 の 技 術 の シ ー ズ 、他 国 の 技 術 開 発 動 向 、世 界 的 な CO 2 対
策 ・ CCUS 等 の 方 針 、 産 炭 国 の 国 情 等 の 検 討 要 素 が 多 く 、 継 続 的 に フ ォ ロ ー し て い か な け
ればならない。
今 後 は 、上 記 の 状 況 も 踏 ま え 、さ ら に ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 の 内 容 を 精 査
し、中間的なメルクマールをより定量的に精緻化し、また上位目標の達成に向けて不足の
部分を補完する技術開発や実証事業を必要なタイミングで導入していかなければならない。
2-2. CCT ロ ー ド マ ッ プ 第 3 版 に つ い て
当 該 マ ッ プ に 取 り 上 げ た 26 の 個 別 技 術 は 、平 成 24 年 3 月 NEDO に よ り 作 成 さ れ た「 石
炭利用技術分野の技術ロードマップ」等をベースに、現時点で実際に企業や研究機関が取
り組んでいる個別の技術開発について、例えば、試験の名称、目標値、規模等をマップ上
に具体的に記載し、目標に向けて進んでいる状況が示されるように作成した。
ま た 、収 集 し た CCT 個 別 情 報 を 整 理 す る 過 程 で 、技 術 開 発 の 実 証 、商 用 化 を 目 指 し て 研
究開発を進める中でフェーズや目的の違いによってグルーピングされるものを、これらの
違いに基づき下記の 3 通りの整理により大分類した。
37
① 技術完成までにさらに開発課題が残されている個別技術
図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( 中 長 期 開 発 ) 参 照
② 技 術 開 発 自 体 は 完 了 し て い る が 、実 用 化 の た め に 更 な る 低 コ ス ト 化 が 必 要 な 個 別 技 術
図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( 低 コ ス ト 化 ) 参 照
③ ビジネスチェーンの構築に関する個別技術
図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ 個 別 技 術 ( ビ ジ ネ ス チ ェ ー ン の 確 立 ) 参 照
ま た 、こ れ ら 3 つ の 整 理 結 果 の そ れ ぞ れ に つ い て 石 炭 火 力 の 高 効 率 化・ 低 炭 素 化 、低 品
位炭の多用途利用、環境対策に中分類した。
これらの中分類のそれぞれの内容について以下に説明する。
2-2-1. 石 炭 火 力 の 高 効 率 化 ・ 低 炭 素 化
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化 は 、石 炭 火 力 発 電 技 術 、産 業 用 石 炭 利 用 技 術 、CO 2 回 収
技術の 3 つに小分類した。
これらの小分類のそれぞれの内容について以下に説明する。
2-2-1-1. 石 炭 火 力 発 電 技 術
日 本 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、USC で 蒸 気 温 度 600℃ 、発 電 端 効 率 43% HHV と 世 界 最
高 レ ベ ル を 達 成 し て い る 。 こ の USC の 蒸 気 温 度 700℃ を 実 現 し A-USC に 置 き 換 え れ ば 、
石 炭 の 消 費 量 及 び CO 2 の 発 生 量 と も に 10%以 上 抑 制 で き る と 考 え ら れ て お り 、耐 熱 材 料 や
機器の開発が進められている。
既 存 石 炭 火 力 発 電 技 術 に 比 べ 熱 効 率 が 高 く CO 2 排 出 量 の 大 幅 な 低 減 が 見 込 ま れ る IGCC
( 石 炭 ガ ス 化 複 合 サ イ ク ル 発 電 )技 術 開 発 や 、IGFC( 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 サ イ ク ル 発
電)技術開発も行われている。
2-2-1-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術
日 本 の 製 鉄 技 術 は 世 界 最 先 端 の 水 準 に あ り 、省 エ ネ ル ギ ー も 極 限 に 達 し て お り 、こ れ 以
上 の CO 2 削 減 を 狙 う べ く 、従 来 製 鉄 プ ロ セ ス を 抜 本 的 に 見 直 し 、水 素 に よ る 鉄 鉱 石 の 還 元
と 高 炉 ガ ス か ら の CO 2 分 離 回 収 に よ る 30%の CO 2 削 減 を 2030 年 頃 に 実 用 化 す る べ く 目 指
している。
2-2-1-3. CO 2 回 収 技 術
2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 化 を タ ー ゲ ッ ト と し た CO2 回 収 技 術 は 、 酸 素 燃 焼 、
ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ 、 CO 2 循 環 型 IGCC 技 術 等 、 多 岐 に わ た る 分 野 で の 技 術 開 発 が 世界中
で進められており、技術力立国日本の真価を試される好機であるとの視点から精力的な取
り組みが進んでいる。
2-2-2. 低 品 位 炭 の 多 用 途 利 用
低品位炭の他用途利用は、改質炭利用技術、産業用石炭利用技術、石炭火力発電技術の
3 つに小分類した。これらの小分類のそれぞれの内容について以下に説明する。
38
2-2-2-1. 改 質 炭 利 用 技 術
高 水 分・低 発 熱 量 で 自 然 発 火 性 か ら 従 来 対 象 外 と さ れ て き た 褐 炭 や 亜 瀝 青 炭 等 の 未 利 用
低品位炭を加熱抽出或いは水素化等の改質技術によってコース製造用粘結炭等のコークス
配合用等(ハイパーコール、褐炭高度利用等)に資源化する技術を開発している。
2-2-2-2. 産 業 用 石 炭 利 用 技 術
褐炭のように揮発分の割合が多く比較的ガス化が容易であるが限定的にしか使用され
て い な い 未 利 用 低 品 位 炭 を ガ ス 化 し ( TIGAR、 ECOPRO 等 )、 燃 料 、 化 学 原 料 な ど 、 天 然
ガス、石油の代替とする技術開発を行っている。
2-2-2-3. 石 炭 火 力 発 電 技 術
高 水 分・低 発 熱 量 で 自 然 発 火 性 が 高 い た め 、利 用 が 限 定 さ れ て い る 褐 炭 や 亜 瀝 青 炭 等 の
未 利 用 低 品 位 炭 を 低 コ ス ト で UBC、JCF 等 に 改 質 あ る い は 液 状 化 し て 、産 炭 国 内 或 い は 日
本国内市場に供給することを目的に技術開発を行っている。
2-2-3. 環 境 対 策
石 炭 利 用 に 伴 う 環 境 面 へ の 影 響 に つ い て は 、他 の 化 石 燃 料 に 比 べ CO 2 発 生 量 が 多 く 、ま
た 、燃 焼 に 伴 い SOx、NOx、石 炭 灰 等 の 地 域 環 境 へ の 影 響 物 質 を 発 生 す る た め 、今 後 の 石
炭利用に関しては、石炭灰、有害微量成分除去等の環境汚染対策技術の更なる開発と活用
を行っている。
39
2-3. JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ
国内展開技術
(大分類:中長期開発)
中分類
海外展開技術
2014
小分類
石炭火力
発電技術
② IGFC
実用化(700℃級)
実証試験
(大崎CG)
IGCC実証
(大崎CG)
産業用
石炭利用
技術
40
CO2回
収技術
⑥ COURSE50
産業用
石炭利用
技術
環境負荷
低減技術
商用化(<10%混合)
実証試験
実用化開発
O2-CO2
ガス化炉試験
CO2循環
クローズド試験
300MW実証試験
⑧ ケミカルルーピング
反応塔
構造検討
30MWPP試験
100MW
実証試験
⑨ 酸素燃焼
⑩ Post-Combustion
CO2回収
実証試験
ベンチ
試験
⑭ ハイパーコール
実証試験
⑮ 自然エネルギ-付加
したCCT
実証試験
⑯ TIGAR
実証試験
⑰ ECOPRO
実証試験
⑱環境負荷物質低減
(B、Se)
JIS/ISO化
商用化
商用化
商用化
CO2転換利用試験
⑬高効率褐炭乾燥
商用化
商用化
実証試験
実証試験
商用化(>10%混合)
商用化
パイロット規模
総合技術開発
⑦ CO2循環型
IGCC
⑫褐炭高度利用
低品位炭の
多用途利用
商用化
商用化(GT1700℃、700℃AUSC開発後)
⑤ フェロコークス
⑪ CO2転換利用
改質炭利
用技術・
実用化(800℃級)
③ A-IGCC
④ ABC
環境対策
2050
2040
技術分野と個別技術
① A-USC
石炭火力の
高効率化・
低炭素化
2030
2020
小規模CO2転換利用
商用化
商用化
PP試験
商用化
商用化
商用化
商用化
低減技術、利用技術
図 2-3-1 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 中 長 期 開 発 )
大規模CO2転換利用
国内展開技術
海外展開技術
(大分類:低コスト化)
中分類
2014
技術分野と個別技術
小分類
⑲ USC
石炭火力の
高効率化・
低炭素化
2020
2015
現地メーカー提携による市場橋頭堡確保
石炭火力
発電技術
21 バイオマス石炭ハイブリッド
(微粉炭混焼)
22 UBC
500-600MW
250MW
40.5%(HHV)
⑳ IGCC
46~48%(HHV)
5cal%混合
(混合粉砕)
20~50cal%混合
(専用粉砕)
産炭国で商用プラント建設、運転による技術普及
経済的低灰分・低硫黄分燃料を
日本に輸入
41
低品位炭の
多用途利用
石炭火
力発電
技術
23 JCF・HWT
24石炭ガス化スラグ
有効利用
環境対策
環境負
荷低減
技術
25 水銀対応型乾式脱硫
26 水銀除去触媒
実証試験
商用化
たいさく
JIS化試験
商用化
海外での技術信頼性の確立(実証)
米国、EUなど水銀規制対象地域への売込み
図 2-3-2 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 コ ス ト 化 )
国内展開技術
海外展開技術
2014
2020
2030
2050
2040
技術分野と個別技術
(大分類:低品位炭チェーンの確立)
27 水素チェーン確立
28 SNGチェーン確立
水素輸送
試験
低コスト
SNG製造
技術開発
褐炭ガス化
水素製造
試験
小規模
トータル実証
小規模
トータル実証
大規模実証試験
大規模実証試験
図 2-3-3 JCOAL/CCT ロ ー ド マ ッ プ ( 低 品 炭 チェーンの 確 立 )
商用化
商用化
42
2-4. 個 別 技 術
当 該 マ ッ プ に 取 り 上 げ た 28 の 個 別 技 術 に つ い て 、1.技 術 開 発 概 要 等 、2.技 術 開 発 状 況 等
及 び 3.技 術 開 発 、ま た は 、成 果 普 及 の た め に 何 が 必 要 か の 項 目 で 構 成 さ れ る 個 別 技 術 表 を
整理し、以下に示す。
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
① 超 々 臨 界 圧 発 電 技 術 ( A-USC)
開発者
小分類
石炭火力発電技術
株 式 会 社 IHI,ABB 日 本 ベ ー レ ー 株 式 会 社 ,新 日 鐵 住 友 金 属 工 業 株 式 会 社 ,
株式会社東芝,三菱日立パワーシステムズ株式会社,富士電機システム
ズ株式会社,三菱重工業株式会社
1.
概
技術開発概要等
要
・ A-USC と は 、 Advanced Ultra-Supercritical の 略 で 700℃ 超 臨 界 圧 発 電
シ ス テ ム を 意 味 す る 。 最 新 の 通 常 火 力 発 電 で は 、 蒸 気 温 度 は 約 600℃ の
と こ ろ 、A-USC で は 、蒸 気 条 件 を 700℃ 以 上 に す る こ と で 、大 幅 な 効 率
向 上 を 可 能 に す る 。主 蒸 気 圧 力 35MPa、主 蒸 気 温 度 700℃ 、再 熱 蒸 気 温
度 720℃ /720℃ の 二 段 再 熱 蒸 気 条 件 の A-USC プ ラ ン ト で は 、46%以 上 の
送 電 端 効 率 [ HHV 基 準 ] が 期 待 で き る 。
必要性
・CO 2 排 出 量 削 減 に よ る 地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に 貢 献 す る た め に 、既 存 の 石
炭火力発電技術に比べ、大幅な削減効果が期待できる高効率発電技術を
開発する必要がある。
目
標
・第 1 目 標:主 蒸 気 温 度 700℃ 超 / 再 熱 温 度 700℃ 超 級 の 実 証 プ ラ ン ト 開
発( 650~ 700℃ 級 の 材 料 の 高 強 度 化 、大 型 化 開 発 を 加 速 し 、基 礎 技 術 確
立する必要あり)。
・第 2 目 標:主 蒸 気 温 度 800℃ / 再 熱 温 度 800℃ 級 の 実 証 プ ラ ン ト 開 発 。
効
果
・高 灰 融 点 石 炭 の 高 効 率 発 電 、発 電 技 術 の 多 様 化 と リ ス ク 分 散 、既 設 石 炭
発電技術の有効活用
2.技術開発状況等
過
去
・ボイラ:材料開発、材料製造性検証
・タービン:材料開発
・高温弁:構造、要素、材料開発
現
状
・ボイラ:高温長期材料試験
・タービン:高温長期材料試験
今
後
・ボイラ:実缶試験
・高温弁:確認試験
・タービン:回転試験
・実証機検証
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・コ ス ト 低 減:従 来 の フ ェ ラ イ ト 系 材 料 に つ い て は 適 用 限 界 温 度 の 向 上 可 能 性 の 更 な る
見極め、素材そのものが極めて高価なオーステナイト系材料については、原材料、加
工・溶接などの製造コストの引下げや使用箇所の縮小化、更には耐久性、信頼性を確
認しつつ、安価な他材料の開発等コスト低減化に向けた技術開発が必要。
・負 荷 運 用 性 の 向 上:高 圧 化 に 対 し て は 、材 料 の 高 度 化 ま た は 厚 肉 構 造 と す る こ と で 対
43
処できるが、耐圧部肉厚増加に伴う熱容量の増大と温度差制約の拡大により、起動時
間の長期化や負荷変化率の低下が懸念される。このため全体システム制御手法の開発
に よ り 、 起 動 性 や 負 荷 応 答 性 に 優 れ た USC の 開 発 が 必 要 。
・長 期 信 頼 性:高 強 度 材 そ の も の の 開 発 と と も に 、そ の 高 強 度 材 の 溶 接 構 造 が 研 究 の 中
核となっていることから、その長期信頼性が最重要。
出 典 : 先 進 超 々 臨 界 圧 火 力 発 電 実 用 化 要 素 技 術 開 発 の 概 要 に つ い て ( 平 成 22年 11月 9日 )
株 式 会 社 IHI, ABB日 本 ベ ー レ ー 株 式 会 社 , 住 友 金 属 工 業 株 式 会 社 , 株 式 会 社 東 芝 ,
三菱日立パワーシステムズ株式会社,富士電機システムズ株式会社,三菱重工業株式会社
44
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
② 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電 技 術 ( IGFC)
開発者
小分類
石炭火力発電技術
大崎クールジェン株式会社、中国電力株式会社、電源開発株式会社、
三菱日立パワーシステムズ株式会社,
1.
概
技術開発概要等
要
・石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 発 電 シ ス テ ム は 、酸 素 吹 1 室 2 段 旋 回 流 ガ ス 化
炉を用いて石炭をガス化することにより、燃料電池、ガスタービンおよ
び蒸気タービンの 3 種の発電形態を組み合わせて、トリプル複合発電を
行 う も の で あ る 。実 現 す れ ば 55% 以 上 の 送 電 端 効 率 が 可 能 と な り 、CO 2
排 出 量 も 既 設 の 石 炭 火 力 発 電 と 比 較 し て 、最 大 30% 低 減 す る こ と が 見 込
まれる高効率発電技術である。
必要性
・CO 2 排 出 量 削 減 に よ る 地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に 貢 献 す る た め に 、既 存 の 石
炭火力発電技術に比べ、大幅な削減効果が期待できる高効率発電技術を
開発する。
目
標
・ 最 終 目 標 と し て 、 送 電 端 効 率 55%( LHV) / 53%( HHV: 参 考 値 ) を
実 現 し 、こ れ に よ り 従 来 の 石 炭 火 力 発 電 技 術 に 比 べ CO 2 排 出 量 を 約 30%
削減する。
効
果
・ 送 電 端 効 率 55%( LHV) / 53%( HHV: 参 考 値 ) を 実 現 す る こ と で 、
① CO 2 排 出 量 削 減
②発電コスト削減
2.技術開発状況等
過
去
・ 50t/d, 150t/d パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト に よ る 技 術 開 発 と 要 素 技 術 開 発 。
現
状
・ 大 崎 ク ー ル ジ ェ ン 第 1 段 階 166MW 酸 素 吹 IGCC 実 証 機 建 設 中 。
今
後
・ 大 崎 ク ー ル ジ ェ ン 第 2 段 階 CO2 分 離 ・ 回 収 型 IGCC 実 証 試 験 。
・
〃
第 3 段 階 CO2 分 離 ・ 回 収 型 IGCC 実 証 試 験 。
・商用機へのスケールアップ。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・IGFC に 適 し た CO 2 分 離・回 収 方 式 を 選 定 し 、実 証 試 験 を 確 実 に 実 施 す る 必 要 が あ る 。
・ IGFC に 適 し た ガ ス ク リ ー ニ ン グ 技 術 と 高 温 型 燃 料 電 池 を 開 発 す る 必 要 が あ る 。
45
IGCC プロセスフロー
出 典 : 独 立 行 政 法 人 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 http://www.nedo.go.jp、 (一
財 ) 石 炭 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー http//www.jcoal.or.jp パ ン フ レ ッ ト 「 日 本 の ク リ ー
ン・コール・テクノロジー」
出 典 : 大 崎 ク ー ル ジ ェ ン ( 株 ) WEB サ イ ト http://www.osaki-coolgen.jp/
46
(2013.12.08)
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
③ 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガ ス 化 発 電 技 術 ( A-IGCC)
開発者
概
石炭火力発電技術
東京大学、(一財)電力中央研究所、(一財)エネルギー総合工学研究
所、
1.
小分類
(一財)石炭エネルギーセンター他
技術開発概要等
要
・高 効 率 の 石 炭 発 電 技 術 と し て 、IGCC や IGFC の 開 発 が 行 わ れ て い る が 、
現 在 の ガ ス 化 技 術 で は 、石 炭 の 一 部 を 燃 焼 し て 形 成 し た 高 温 場 で 石 炭 を
ガ ス 化 す る た め 、発 電 効 率 の 低 下 を 招 い て い る 。そ こ で 、発 電 効 率 を 飛
躍 的 に 向 上 す る た め に 、石 炭 を 低 温 で ガ ス 化 し 、ガ ス 化 に 必 要 な 熱 は 高
温 ガ ス タ ー ビ ン や 燃 料 電 池 の 排 熱 を 蒸 気 と し て 再 生 利 用 す る 、「 エ ク セ
ル ギ ー 再 生 型 次 世 代 ガ ス 化 高 効 率 発 電 シ ス テ ム
( Advanced-IGCC/IGFC)」 が 提 唱 さ れ て い る 。
必要性
・ 地 球 温 暖 化 の 観 点 か ら 、 石 炭 利 用 に 際 し て 発 生 す る CO 2 を で き る だ け
少 な く す る こ と が 求 め ら れ て い る 。 排 出 す る CO 2 を 回 収 ・ 貯 留 す る 技
術 も 検 討 さ れ て い る が 、 最 も 生 産 性 に 寄 与 で き る 形 で CO 2 削 減 が で き
る 方 法 は 、で き る だ け 高 効 率 化 す る こ と で あ り 、そ の 方 策 を 追 求 す る こ
とは大いに意義がある。
目
標
・現 在 、高 効 率 石 炭 発 電 技 術 と し て 、石 炭 ガ ス 化 複 合 サ イ ク ル 発 電( IGCC)
や 石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 サ イ ク ル 発 電 ( IGFC) の 開 発 が 行 わ れ て い
る が 、さ ら に 高 効 率 を 目 指 し た 石 炭 ガ ス 化 に よ る 発 電 シ ス テ ム 、す な わ
ち 石 炭 を 可 能 な 限 り 低 温 で ガ ス 化 し 、そ の ガ ス 化 に 必 要 な 熱 は 、高 温 ガ
スタービン又は燃料電池の排熱を再生利用するエクセルギー再生シス
テ ム に よ り 、 エ ネ ル ギ ー 転 換 効 率 を 飛 躍 的 に 向 上 ( 送 電 端 効 率 65 %
(HHV)/約 68%(LHV、参 考 値 )以 上 )さ せ る シ ス テ ム と し て 、次 世 代 高 効
率 石 炭 ガ ス 化 発 電 技 術 (A-IGCC)が 位 置 づ け ら れ て い る 。
効
果
・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に 比 べ CO 2 発 生 量 を 約 30%削 減 す る 効 果 が あ る 。
2.技術開発状況等
過
去
・ NEDO「 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガ ス 化 技 術 開 発 」 に て 平 成 24 年 度 ま で 低 温
ガス化技術、プロセス最適化検討等を実施。
現
状
・システム検討
今
後
・実 用 化 に は IGCC や IGFC の 技 術 を 基 盤 と し て 、さ ら に 高 度 な 技 術 が 求
め ら れ る こ と か ら 、 本 格 的 な 市 場 導 入 時 期 は 2040 年 前 半 を 想 定 し て い
る。
・触媒利用によるより低温での高効率石炭ガス化技術
・高温ガスタービンや高温燃料電池から石炭ガス化に必要な排熱の回収
技 術 (エ ク セ ル ギ ー 再 生 シ ス テ ム 化 )の コ ン パ ク ト 化
・ガスタービンの高温化と蒸気サイクルの高温高圧化
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・A-IGCC の 実 現 に は 、幅 広 い 周 辺 技 術 の 進 展 が 不 可 欠 で あ る 。と り わ け 石 炭 ガ ス 化 技
47
術 は 全 体 の 発 電 効 率 を 左 右 す る 重 要 な 技 術 で あ る こ と か ら 、よ り 一 層 の 効 率 向 上 に 向
け た 研 究 開 発 が 望 ま れ る 。さ ら に 、基 礎 研 究 開 発 を 進 展 さ せ る に は 、機 械 工 学 、材 料
工 学 、計 算 機 科 学 、燃 焼 工 学 等 、幅 広 い 学 術 分 野 の 知 見 を 集 積 し た 検 討 が 必 要 で あ る 。
従来型IGCC
次世代IGCC(A-IGCC)
燃焼
石炭
ガス化炉
GT
石炭
ST
ガス化炉
GT
①
ST
②
①ガスタービン排熱の再生利用によるガス化効率(冷ガス効率)向上
②蒸気タービン比率の低減による復水器排熱ロスの低減
→総合効率で従来よりも最大9%の効率向上が可能
図1
エ ク セ ル ギ ー 再 生 次 世 代 ガ ス 化 に よ る 複 合 発 電 の 概 念 (A-IGCC)
(出 典 :07.2009 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガ ス 化 技 術 開 発 中 間 評 価 資 料 )
48
A-IGCC/IGFC
乾式ガスクリーニング
図2
A-IGCC, A-IGFC の送 電 端 効 率 (HHV ベース)見 通 し
(出 典 : 07.2009 次 世 代 高 効 率 石 炭 ガス化 技 術 開 発 中 間 評 価 資 料 )
49
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
④ 石 炭 ・ バ イ オ マ ス 共 利 用 発 電 技 術 ( ABC)
開発者
2.
概
小分類
石炭火力発電技術
㈱ IHI、 荏 原 製 作 所 ㈱ 、 JCOAL、 電 中 研 他
技術開発概要等
要
・ ABC と は 、 Advanced coal Biomass Co-utilization の 略 で 石 炭 を バ イ
オマスあるいはバイオマス由来の燃料と一緒に利用することでバイ
オマス単独で利用するよりも高効率な発電システムを狙う。具体的
には、実用化済みの微粉炭バイオマス直接混焼利用を除く、共ガス
化 に よ る IGCC や IGFC で の 利 用 や ボ イ ラ 等 の バ イ オ マ ス 変 換 シ ス テ
ムとの統合利用を目指す。
・従来は利用が難しかった高水分、高塩分、低粉砕性等の低質バイオ
マスの有効利用も石炭と共利用により可能とすることでバイオマス
調達先の裾野を拡大する。
必要性
・CO2 排 出 量 削 減 に よ る 地 球 温 暖 化 防 止 対 策 に 貢 献 す る た め に 、既 存
の石炭火力発電技術に比べ、相当の削減効果が期待できる低炭素な
発電技術を開発する必要がある。
目
標
・ 技 術 目 標 : ABCを バ イ オ マ ス エ ネ ル ギ ー 比 率 8-10% 以 上 で 実 用 化 す
る。
・ 第 1実 用 化 目 標 : ABC発 電 プ ラ ン ト を 2-3箇 所 で 実 現 し て 、 8-10% 相
当のエネルギーをバイオマスから得る仕様とする。さらに、高水分針
葉樹が多い北海道や東北地方の大規模森林資源と一体となったバイオ
マス安定調達システムの整備。
・ 第 2 実 用 化 目 標 : 、 10% 超 の エ ネ ル ギ ー を バ イ オ マ ス か ら 得 る 仕 様
の ABC プ ラ ン ト を 全 国 、 全 電 力 会 社 に 普 及 さ せ る 。
効
果
・バイオマス利用エネルギー相当分が低炭素に直結する。バイオマス
単独利用設備に対して高効率発電が可能。バイオマス利用拡大によ
り国内森林資源の保護、育成、地域活性化に貢献する。
2.技術開発状況等
過
去
・ ABC ガ ス 化 : 石 炭 バ イ オ マ ス 共 ガ ス 化 技 術 の 基 礎 開 発
・ ABC 用 ガ ス 化 : バ イ オ マ ス ガ ス 化 技 術 は 小 規 模 で 実 用 化 済 み
現
状
・ ABC ガ ス 化 : 3 塔 式 ABC ガ ス 化 技 術 要 素 開 発 中
・ ABC 用 ガ ス 化 : バ イ オ マ ス 主 体 の ABC ガ ス 化 小 規 模 実 証 試 験 実 施
中
今
後
・ ABC の 実 用 化 に 向 け た ス ケ ー ル ア ッ プ 開 発
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・ IGCCの 普 及 と そ れ に 続 く 、 高 効 率 化 以 外 の 低 炭 素 化 技 術 開 発 へ の 支 援
・バイオマス利用によって事業性が有利になる制度設計
・バイオマス資源の保護、育成、地域活性化に関する省庁間の連携
50
大 分 類 :中 長 期 開 発
中分類
石炭火力の高効率化・低炭素
化
個別技術名
⑤資源対応力強化のための革新的製銑プロセス(フェロコークス)
開発者
JFE ス チ ー ル 株 式 会 社 、 新 日 鐵 住 金 株 式 会 社 、 株 式 会 社 神 戸 製 鋼 所
1.
概
小分類
産業用石炭利用技術
技術開発の目標、必要性、効果
要
・高 炉 内 還 元 反 応 の 高 速 化・低 温 下 機 能 を 発 揮 す る 革 新 的 製 銑 プ ロ セ ス( 低
品 位 炭 と 低 品 位 鉄 鉱 石 の 混 合 成 型・乾 留 に よ り 生 成 さ れ る コ ー ク ス 代 替 還
元 剤 :フ ェ ロ コ ー ク ス ) 及 び そ の 操 業 プ ロ セ ス を 開 発 し 、 製 銑 プ ロ セ ス の
省エネルギーと低品位原料利用拡大の両立を目指す革新的技術の開発を
行う。
必要性
・我が国鉄鋼業界は、長期的かつ安定的な原料調達が重要課題で、中長期
的 に 大 幅 な CO 2 排 出 削 減 が 求 め ら れ て お り 、 こ の 課 題 解 決 の た め の 実 用
化技術となりうる。
目
標
・現行高炉最大操業に対して約10%の省エネルギーの実現。
・高 品 位 炭 の 使 用 割 合 を 現 在 の 約 6 割 か ら 約 4 割 ま で 低 減 し 、低 品 位 炭 の
利用拡大を実現。
・フ ォ ロ コ ー ク ス の 品 質 目 標:強 度 指 数 (DI)≧ 8 2 、反 応 性 (JISRI)≧ 5 0 % 。
効
果
・低品位石炭、鉄鉱石を活用でき、資源確保戦略に寄与。また、フェロコ
ー ク ス は 、成 形 、乾 留 に よ り コ ー ク ス 中 に 金 属 鉄 を 分 散 さ せ た 高 炉 原 料 。
・金属鉄が高炉での還元反応速度を速めるため、従来よりも少ないコーク
ス 量 で 酸 化 鉄 を 還 元 で き 、 CO 2 排 出 量 の 大 幅 削 減 と 省 エ ネ ル ギ ー を 実 現
できる。
2.技術開発状況、開発ステージ、ステータス
過
去
・2009~2011年
PP 規 模 ( 30t/d) で の フ ェ ロ コ ー ク ス 製 造 プ ロ
セ ス ( 30t /d ) 技 術 開 発 、 高 炉 評 価 技 術 開 発
・2012~2013年 フェロコークス長期安定製造技術開発、実高炉
での短期試験、数式モデルによる効果試算
現
状
・2013年11月
今
後
・2020年初
・2025年
中規模実証試験にむけた検討
実機高炉への実証的導入
導入普及
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・中規模実証機の開発には多額の設備投資が必要であり、一民間企業の負担で実施する
のは困難。劣質炭の利用、石炭資源戦略につながる公的な支援が必要。
51
フェロコークス製造プロセス概要
高炉では、通常のコークスの一部を「フェロ
コークス」に置き換えて使用する。操業中の
高 炉 内 で は 、 一 酸 化 炭 素 ( CO) に よ る 鉄 鉱 石
(焼結鉱)の還元反応の進行により、二酸化
炭 素 ( CO 2 ) が 発 生 し て い る 。「 フ ェ ロ コ ー ク
ス」内部に含まれている超微粒の金属鉄は、
こ の CO 2 が コ ー ク ス ( C) と 反 応 し 還 元 ガ ス
( CO) を 再 生 成 す る 反 応 ( C+ CO 2 = 2CO)
の触媒(*1)となり反応速度を大幅に向上
さ せ る 。 そ の 結 果 、 CO 濃 度 が 上 昇 し 、 鉄 鉱
石(焼結鉱)の還元反応は低温度でも進行する
ようになり、少ないコークスで酸化鉄の還元が
で き 、 還 元 材 比 の 大 幅 な 低 減 が 期 待 で き 、 CO 2
排出削減、省エネに寄与する
フェロコークス製造プロセスフロー
出 典 : JFE ス チ ー ル 株 式 会 社 の WEB サ イ ト か ら
52
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率・低 炭 素 化
小分類
産業用石炭利用技術
個別技術名
⑥ 環 境 調 和 型 製 鉄 プ ロ セ ス 技 術 開 発 (COURSE 50)
開発者
新 日 鐵 住 金 株 式 会 社 、 JFE ス チ ー ル 株 式 会 社 、 株 式 会 社 神 戸 製 鋼 所 、 日
新製鋼株式会社、新日鉄住金エンジニアリング株式会社
1.
概
技術開発概要等
要
・高 炉 で 使 用 す る コ ー ク ス 製 造 時 に 発 生 す る 高 温 の コ ー ク ス 炉 ガ ス に 含 ま
れる水素を増幅し、コークスの一部代替に当該水素を用いて鉄鉱石を還
元 す る 技 術 ( 高 炉 か ら の CO 2 排 出 削 減 技 術 ) を 開 発 す る 。
・ ま た 、 高 炉 ガ ス か ら CO 2 を 分 離 す る た め 、 製 鉄 所 内 の 未 利 用 排 熱 を 活
用 し た 革 新 的 な CO 2 分 離・回 収 技 術( 高 炉 か ら の CO 2 分 離 回 収 技 術 )を
開発する。
必要性
・日 本 の 製 鉄 技 術 は 世 界 最 先 端 の 水 準 に あ り 、省 エ ネ ル ギ ー も 極 限 に 達 し
て い る 。こ れ 以 上 の CO 2 削 減 を 狙 う に は 、本 技 術 開 発 の よ う な 製 鉄 プ ロ
セスの抜本的な見直しが必要である。
目
標
・ 水 素 に よ る 鉄 鉱 石 の 還 元 と 高 炉 ガ ス か ら の CO 2 分 離 回 収 に よ り 、 総 合
的 に 約 3 0 % の CO 2 削 減 を 図 る 。
・2030年頃までに実用化を目指す。
効
果
・ 鉄 鋼 業 は 、 我 が 国 の CO2 発 生 量 の 約 1 5 % を 占 め て い る が 、 鉄 鋼 業 か
ら の CO 2 の 約 7 割 が 高 炉 を 用 い た 製 鉄 プ ロ セ ス か ら 発 生 し て い る 。本 技
術 開 発 に よ り 、日 本 全 体 の CO2 排 出 量 の 大 幅 な 削 減( 現 状 の 3 % 分 )が
可能である。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2 0 0 8 ~ 2 0 1 2 年 (フ ェ ー ズ 1 STEP1)
水 素 による鉄 鉱 石 還 元 と高 炉 ガスからの CO 2 分 離 回 収 等 の要 素 技 術 開 発 。
現
状
・ 2 0 1 3 ~ 2 0 1 7 年 ( フ ェ ー ズ 1 STEP2)
ミ ニ 試 験 高 炉 を 主 体 と し て 「水 素 還 元 と CO 2 分 離 回 収 を 統 合 し た 総 合 技
術開発」
今
後
( 試 験 高 炉 建 設 (3 ヵ 年 )+ 試 験 高 炉 操 業 (2 ヵ 年 )
・2020~2030年
(実用化開発)
2030 年 ま で に 実 用 化 開 発 を 終 了 さ せ 、 経 済 的 な CO2 貯 留 に 関 す る イ ン
フラ整備が確保されれば、実機化できるようにする。
( 高 炉 関 連 設 備 の 更 新 タ イ ミ ン グ を 踏 ま え 、2050 年 頃 の 普 及 を 目 指 す )
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・水 素 還 元 高 炉 プ ロ セ ス で の 要 素 技 術( 水 素 な ど に よ り 鉄 鉱 石 還 元 、コ ー ク ス 炉 ガ ス 改
質、高強度コークス製造)の確立。
・ 経 済 的 な CO 2 分 離 回 収 プ ロ セ ス の 確 立 (2,000 円 / t - CO 2 )。
・試 験 高 炉 (10m 3 規 模 )を 用 い て 、水 素 に よ る 鉄 鉱 石 の 還 元 と 高 炉 ガ ス か ら の CO 2 分 離
回 収 の 技 術 を 用 い て 、 約 3 0 % の CO 2 削 減 な 基 本 プ ロ セ ス を 確 立 す る 。
・ 本 技 術 は 、 CO 2 貯 留 と 一 体 で 実 用 化 さ れ る も の で あ る の で 、 CO 2 回 収 ・ 貯 留 を 実 現
す る よ う 、 CO 2 貯 留 場 所 、 CO 2 貯 留 の イ ン セ ン テ ィ ブ 政 策 等 で の 国 の 施 策 が 必 要 。
53
COURSE5 0 の 概 要
( CO 2 Ultimate Reduction in Steelmaking process by Innovative technology for cool
Earth 50)
出 典 :「 環 境 調 和 型 製 鉄 プ ロ セ ス 技 術 開 発 」( COURSE 50) 事 業 評
54
大分類 :
中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑦ CO 2 循 環 型 IGCC
開発者
1.
概
小分類
CO 2 回 収 技 術
(一財)電力中央研究所、九州大学
技術開発概要等
要
・IGCC 発 電 シ ス テ ム か ら 排 出 さ れ る CO 2 の 一 部 を 再 循 環 さ せ 、酸 素 燃 焼
ガスタービンの作動媒体として用いるとともに、酸素を加えてガス化炉
の 酸 化 剤 と し て 用 い る こ と に よ り 、 CO 2 を 回 収 す る 石 炭 ガ ス 化 発 電 シ ス
テ ム の 効 率 を 大 幅 に 向 上 で き る CO 2 回 収 型 高 効 率 IGCC シ ス テ ム を 開 発
する。
・ 本 シ ス テ ム で は 、 排 ガ ス の 大 半 が CO 2 と な る の で 分 離 設 備 が 不 要 と な
る こ と 、再 生 熱 交 換 器 の 採 用 に よ り CO 2 を 主 成 分 と す る GT 排 ガ ス か ら
の 排 熱 回 収 が 効 果 的 に な る こ と 、 CO 2 そ の も の が ガ ス 化 剤 と し て ガ ス 化
炉 内 の 反 応 促 進 に 寄 与 す る こ と な ど か ら 、 CO 2 回 収 後 も 高 い 送 電 端 効 率
( 42%H H V ) が 達 成 で き る 。
必要性
・温 室 効 果 ガ ス の 発 生 を 抑 制 す る 技 術 が 求 め ら れ て お り 、IGCC に よ る 高
効 率 化 に よ る 抑 制 の み な ら ず 、 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン を 達 成 す べ く 、 IGCC
か ら CO 2 を 効 率 よ く 回 収 す る シ ス テ ム を 開 発 す る こ と が 求 め ら れ て い
る。
目
標
・ CO 2 回 収 後 も 42% HHV の 送 電 端 効 率 を 達 成 す る 。
効
果
・ 現 状 の 石 炭 火 力 発 電 シ ス テ ム に CO 2 回 収 装 置 を 設 置 し 、 CO 2 回 収 を 行
う 場 合 は 2~ 3 割 の 効 率 低 下 と 発 電 の 高 コ ス ト 化 が 必 至 で あ る が 、 本 シ
ステムの実現により、効率の低下は最小限に留められ、かつコストへの
影響も極めて少ないシステムが実現できる。
2.技術開発状況等
過
去
・基 礎 試 験 装 置 や PDTF に よ る 反 応 速 度 評 価 試 験 な ど に よ り 酸 素 - CO 2 ガ
ス化基本性能試験を実施。
・ 3t/d 小 型 ガ ス 化 炉 に よ り CO 2 富 化 が ガ ス 化 性 能 に 及 ぼ す 影 響 を 評 価 。
・数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 実 機 規 模 酸 素 - CO 2 ガ ス 化 炉 に お け る 運 転
条件、炉形状などの影響を検討。
・本システムの技術課題であった乾式ガス精製における炭素析出抑制策
を 検 討 し 、 効 率 低 下 を 0.2%未 満 に 抑 え る 対 策 案 を 示 し た 。
・実機をにらんだシステム全体の課題抽出と実現性向上に向けたシステ
ム 改 良 の 検 討 ( 実 機 FS)。
現
状
・ベンチ規模試験に向けた試験設備の設計検討。
・本システムのガスタービンを想定した基礎燃焼試験。
・ 実 機 FS を 受 け た シ ス テ ム 改 良 の 結 果 、 1,300℃ 級 GT+再 生 熱 交 換 器+
乾 式 ガ ス 精 製 で 構 成 さ れ る シ ス テ ム で 送 電 端 効 率 40%HHV が 達 成 さ れ
ることを確認した。
55
今
後
・ 1,500℃ 級 GT の 採 用 な ど に よ り ,さ ら な る 効 率 向 上 を 図 る 。
・ベ ン チ 規 模 、パ イ ロ ッ ト 規 模 、実 証 規 模 と ス テ ッ プ を 踏 み 2030 年 代 後
半商用化を目指す。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・ O 2 - CO 2 吹 き ガ ス 化 炉 技 術 の 確 立
・ CO 2 循 環 ク ロ ー ズ ド GT 技 術 の 確 立
・乾式ガス精製システムの大型化
・ 2,000t/d 級 の 大 規 模 実 証
CO 2 回 収 型 ( 循 環 型 ) 高 効 率 IGCC シ ス テ ム の 概 念
CO 2 回 収 型 ( 循 環 型 ) 高 効 率 IGCC シ ス テ ム の 概 略 フ ロ ー 図
出 典:JCOAL/CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2013 「 CO 2 回 収 型 高 効 率 IGCC」( 一 財 )電 力 中 央 研
究所
56
大分類
: 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑧
開発者
小分類
CO 2 回 収 技 術
CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 ( ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ )
三菱日立パワーシステムズ株式会社、(一財)エネルギー総合工学研究
所 、( 一 財 ) 石 炭 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー
1.
概
技術開発概要等
要
・ケ ミ カ ル ル ー プ を 利 用 し た 化 学 燃 焼 技 術 と は 、媒 体 の 化 学 変 化 を 介 し て 、
燃 料 を O 2 ガ ス( 空 気 )と 直 接 接 触 さ せ る こ と な く 、熱 や 燃 料 ガ ス に 転 換
し 、 CO 2 を 分 離 す る 方 法 で あ る 。 石 炭 を 燃 料 と し た ら 、 空 気 分 離 の 必 要
が な く 、 CO 2 を 回 収 し て も プ ラ ン ト 効 率 が 低 下 し な い 、 高 効 率 の 石 炭 火
力発電が期待される。
・ EU 、 米 国 で は 2020 年 以 降 の CO 2 削 減 に 貢 献 す る 燃 焼 技 術 と し て
1-3MWth 規 模 の パ イ ロ ッ ト を 建 設 し 、実 用 的 な 技 術 開 発 を 進 め る こ と を
検討している。
・ 化 石 エ ネ ル ギ ー の 少 な い 我 が 国 に と っ て 省 エ ネ ル ギ ー 型 の CCS は 将 来
の 重 要 技 術 と し て 位 置 付 け 、CCS の 実 施 動 向 に 合 わ せ た 開 発 が 必 要 で あ
る。
必要性
・ 化 石 燃 料 の 燃 焼 ガ ス か ら の CO 2 削 減 が 求 め ら れ て い る が 、 回 収 す る こ
と に よ る 効 率 低 下 が 著 し い 。石 炭 火 力 で は 、発 電 効 率 が 10% 程 度 低 下 す
る と 言 わ れ て い る 。 CO 2 を 本 質 的 に 回 収 す る こ と が 可 能 な 技 術 が 求 め ら
れている。
目
標
・CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 を 商 業 化 す る こ と に よ り 、CO 2 回 収 付
超 超 臨 界 (USC)発 電 と 比 較 し て そ れ 以 上 の 高 効 率 化 を 可 能 と す る も の で
ある。
効
果
・ CO 2 回 収 が あ っ て も 発 電 効 率 が 低 下 し な く 、 CCS あ る 従 来 型 石 炭 発 電
技 術 ( IGCC) よ り 、 発 電 コ ス ト を 2-3 円 /kwh 以 上 低 く す る 効 果 が あ る 。
2.技術開発状況等
過
去
・東京工業大学の石田愈先生が初めて提案し、ベンチスケール装置を用
いてキャリアと天然ガスとの反応試験を行い、原理を確認した。
現
状
・海 外 で CO 2 回 収 可 能 な 石 炭 利 用 技 術 と し て 研 究 開 発 が 進 め ら れ て き た 。
・ 既 に 、 欧 米 で は 、 数 MW の パ イ ロ ッ ト 試 験 研 究 を 展 開 し て い る 。
・CO 2 回 収 可 能 石 炭 利 用 技 術 と し て 、平 成 26 年 度 か ら 、要 素 研 究 、ベ ン
チ試験、パイロット試験を実施している。
今
後
・ 2030 年 頃 に 商 用 化 を 目 標 と し て 研 究 開 発 を 計 画 し て い る 。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・反応性、経済性を備えた酸素キャリアの開発。
・反応塔構造の確立。
・発電とその他の総合利用方法の開発。
・ 最 適 な 酸 素 キ ャ リ ア 、 反 応 装 置 の 開 発 に 加 え 幅 広 い CO 2 輸 送 、 貯 留 ( CCS) の 進 展
が不可欠である。
57
石炭等の燃焼反応と金属酸化物の酸化反応を起こす二つ反応器
を組み合わせ、発電等に必要な熱を発生するとともに、燃焼排ガス
を高濃度CO2とすることができる新たな石炭火力技術である。
蒸気
NN22
熱回収器
蒸気
集塵器
Fe2O3
煙突
サイクロン
従来技術(アミン吸収
法、酸素燃焼法)では
燃
CO2分離設備を付けると
空
料
気 石炭 反
発電効率が大幅に低下
反
応
して、送電量が20~25%
塔
応
も減少しますが、CLCでは、
塔
効率低下がほとんど発
蒸気
生しないため、送電量も 給水
Fe3O4
ほとんど減少しない。
空気
圧縮器
脱水器
CO2
灰
発電単価、 円/kWh
灰
蒸気
CO2 回収率, %
CLCの発電単価は、SCPCやIGCCのCO2回収率が低い場合は高くなるが、CO2回収
率が高くなると(60%以上)、SCPC、IGCC、Oxyfuelのいずれに対しても有利になる。
2012-2013 2014-2015
FS調査
開発予算(億円)
研究開発内容
主な技術課題
解決
0.3
2016-2018
要素研究 ベンチ試験
0.5
2012-2013
技術、市場調査
ロードマップ作成
1
1
3
3
2
2016-2018
熱自立条件反応、循環の
確認
各要素技術確定
キャリアの確定
2023-2026
パイロット試験
実証プラント試験
100
2014-2015
要素技術研究
技術選定
キャリア調査
2019-2022
ベンチ試験による
プロセス条件の確定
600MWCFBC
実証
2019-2022
試験によるプロセス効率、環
境、周辺設備性能の確認
パイロット試験による
プロセス条件の検証
A-USC実用
商業化
400
2023-2026
プラント試験による運転性、
信頼性、経済性評価
プラント性能、信頼性
経済性実証
CCS
IGFC
出 典 : NEDO「 CO 2 分 離 型 化 学 燃 焼 石 炭 利 用 技 術 に 関 す る 検 討 」 平 成 2 4 年 度 報 告 書
58
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑨ 微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 ( OXY-FUEL)
開発者
小分類
CO 2 回 収 技 術
電 源 開 発 株 式 会 社 、 株 式 会 社 IHI、 三 井 物 産 株 式 会 社
1.技術開発概要等
概
要
・酸 素 燃 焼 は 燃 焼 用 空 気 か ら 酸 素 を 分 離 し 、そ の 酸 素 で 直 接 石 炭 を 燃 焼 さ
せ 、排 ガ ス 中 の CO 2 濃 度 を 90%以 上 に 高 め 排 ガ ス を そ の ま ま 回 収 で き 有
効なシステムとして期待されている。
・ 豪 州 カ ラ イ ド に お い て 、 30MWe 規 模 の 実 証 運 転 が 実 施 さ れ た 。
必要性
・ 地 球 温 暖 化 の 観 点 か ら 、 石 炭 利 用 に 際 し て 発 生 す る CO 2 を で き る だ け
少なくすることが求められている。その最も大規模に実現できる技術と
し て 、 CO 2 を 回 収 ・ 貯 留 す る 技 術 が あ り 、 本 微 粉 炭 酸 素 燃 焼 技 術 は そ の
石 炭 を 利 用 し た CO 2 回 収 技 術 の 一 つ で あ る 。現 在 の と こ ろ 、経 済 性 的 に
有効であることや、実証プラントが稼動しており、より実現性の高いも
のである。
目
標
・酸 素 燃 焼 の 実 現 性 は 酸 素 製 造 コ ス ト に か か っ て お り 、極 力 安 価 な 酸 素 製
造 法 が 必 要 で あ る 。そ の た め に 、酸 素 燃 焼 を 採 用 し た 発 電 所 の CCS に よ
る 追 加 所 内 動 力 を 、 プ ラ ン ト 効 率 で 10 ポ イ ン ト 以 下 と す る 。
・ プ ロ セ ス 全 体 と し て 、 98%の CO 2 回 収 率 の 達 成 が 目 標 の 目 安 と な る 。
・ 酸 素 製 造 装 置 か ら 排 出 さ れ る N2 を 有 効 活 用 す る こ と に よ る 、 経 済 的 メ
リットの創出。
効
果
・ 従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に 比 べ て 、 CO 2 排 出 量 を 約 95%削 減 す る 効 果 が
ある。
2.技術開発状況等
過
去
・1973年 酸素燃焼の実用新案
・1989~2000年
基礎研究およびプラント試設計
・2004~2007年
・2008~2012年
日豪共同での豪州を対象とした検討
日豪共同でのカライドプラントにおける詳細
設計
機器製造、既設改修、試運転
現
状
・2008~2013年
・2012~2014年
貯留サイトおよび貯留層評価
カ ラ イ ド プ ラ ン ト 実 証 試 験 (図 2)
・2014年
・2014~2015年
酸 素 燃 焼 CO 2 の 貯 留 注 入 試 験 実 施
カライドプロジェクト成果まとめ
・2014~2017年
商 用 規 模 プ ラ ン ト 案 件 発 掘 、 FS/ FEED の 実
施
今
後
・2020年
酸素燃焼プラント商用化実現
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
59
・革 新 的 な 酸 素 製 造 技 術 の 開 発:コ ス ト お よ び 必 要 動 力 の 半 減 。ま た 、ケ ミ カ ル ル ー ピ
ングを用いた酸素製造装置不要な酸素燃焼プラントの開発。
・ 酸 素 燃 焼 プ ロ セ ス の 高 効 率 化 : A-USC 技 術 の 適 用 。
・全 体 プ ロ セ ス( ASU、ボ イ ラ 、CO 2 回 収 装 置 )の イ ン テ グ レ ー シ ョ ン に よ る 高 効 率 化 ・
低コスト化。
・ラ ボ ス ケ ー ル か ら 実 機 ま で の ス ケ ー ル ア ッ プ の た め の 各 プ ロ セ ス の 標 準 化 及 び シ ス テ
ムシミュレーション技術。
・CO 2 回 収 貯 留 に は 、社 会 の 受 容 、法 的 整 備 が 必 要 と な る 。そ し て 、CO 2 排 出 削 減 で は 、
地球規模の取組みが必要であり、政府主導での対応が望まれる。
・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に 比 し コ ス ト 増 は 避 け ら れ な い た め 、経 済 的 な 公 的 イ ン セ ン テ
ィブの創出が課題。
・ 酸 素 燃 焼 プ ロ セ ス で は 、 CO 2 を 回 収 で き る と 同 時 に 、 大 量 の N 2 が 排 出 さ れ て お り、
これを有効利用することは、経済的インセンティブを創出することになる。よって、
石 炭 利 用 、 CO 2 貯 留 ( も し く は 利 用 )、 N 2 の 利 用 と な る 市 場 発 掘 が 成 果 普 及 の 一 つ の
キーとなる。
酸 素 燃 焼 を 用 い た CO2 回 収 プ ロ セ ス の 概 念
出 典:JCOAL/CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2012 「 プ ロ ジ ェ ク ト 紹 介 カ ラ イ ド 酸 素 燃 焼 プ ロ ジ ェ
クト」電源開発株式会社
豪州カライド A 発電所全景
出 典 : J-POWER HP
60
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑩ Post-Combustion(石 炭 燃 焼 後 CO2 回 収 技 術 )
開発者
小分類
CO 2 回 収 技 術
重 工 メ ー カ ー 及 び エ ン ジ ニ ア リ ン グ 会 社 、 電 源 開 発 株 式 会 社 、 (一 財 )
石炭エネルギーセンター
1.
概
技術開発概要等
要
・石炭を大量に使用している石炭火力発電所や製鉄所から排出されて
い る CO 2 を 分 離 回 収 す る 技 術 を 開 発 す る 。 現 在 、 も っ と も 現 実 的 な
技術として、アミン吸収法、チルドアンモニア法等があるが、現状
では消費エネルギーが大きく、コスト高であるので、大幅な消費エ
ネルギーの削減とコストの低減が求められている。
・膜分離法や固体吸着剤による方法等も開発されており、よりエネル
ギー消費が少なく、コストも安い技術が必要である。
必要性
・ 地 球 温 暖 化 の 観 点 か ら 、 石 炭 利 用 に 際 し て 発 生 す る CO 2 を で き る だ
け少なくすることが求められている。その中で、発電システムから
排 出 す る CO 2 を 回 収・貯 留 す る 技 術 に つ い て IEA は 全 CO 2 排 出 量 の
う ち 2020 年 に 3.1% 削 減 、 2035 年 に は 17% 削 減 を 期 待 す る ほ ど 重
要 視 し て い る 。 商 用 プ ラ ン ト と し て 大 規 模 に CO 2 を 分 離 回 収 す る 方
法としてのアミン吸収や膜分離技術が世界各国で開発されている。
・開発ターゲットとして、大幅なコストダウンやシステムの最適化、
使用するアミンの最適化などを追求することにより発電所所内率を
大幅に削減することが求められている。
目
標
・ポストコンバッション技術の実現性は、消費エネルギーの削減にか
か っ て お り 、ポ ス ト コ ン バ ッ シ ョ ン の 所 内 負 荷 率 を 10% 以 下 と す る
ことを目標とする。
効
果
・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に 比 べ て CO 2 発 生 量 を 最 大 で 90%削 減 す る 効
果 が 期 待 さ れ る 。 ま た 、 CO 2 削 減 割 合 は 任 意 の 値 と す る こ と が 可 能 で
ある。
2.技術開発状況等
過
去
・ MHI、 東 芝 、 三 菱 日 立 パ ワ ー シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 、 新 日 鉄 住 金 エ ン
ジ ニ ア リ ン グ 等 が 、パ イ ロ ッ ト 規 模 (10~ 30t/d)ま で の 試 験 を 実 施 し 、
将来の実プラントへの適用の可能性を確認している。
現
状
・ MHI は 米 国 サ ザ ン カ ン パ ニ ー と 共 同 で 石 炭 火 力 発 電 所 か ら の ア ミ ン
吸 収 法 に よ る CO 2 分 離 回 収 試 験 ( 500t/d) を 実 施 し て い る 。
・ MHI は 、 米 国 Petra Nova 社 が 行 う CO 2 - EOR プ ロ ジ ェ ク ト ( 4776
㌧ /日 )の CO 2 回 収 装 置 を 受 注・建 設 中 で あ る 。(2016 年 第 4 四 半 期 運
開予定)
61
今
後
・大 型 実 証 試 験 (1000~ 3000t /d)を 2020 年 頃 に 開 始 し 、消 費 エ ネ ル ギ
ー と コ ス ト の 大 幅 な 削 減 を 実 証 し 、本 格 的 な 市 場 導 入 時 期 は 2030 年
頃を想定している。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・ 低 コ ス ト ・ 大 容 量 の ポ ス ト コ ン バ ッ シ ョ ン に よ る CCS の 実 現
・革新的なアミン吸収液、あるいはまく分離法の開発
・大気に放出されるアミン吸収液の挙動研究
・分 離 CO2 の 地 中 注 入 が 許 容 さ れ る 不 純 物 濃 度 の 決 定 と そ の 達 成 の た め の 低 コ ス ト
設備の実現。
なお、
・ CCS に 関 す る 世 界 で 標 準 的 な 各 種 法 整 備 、 基 準 整 備 が 必 要
・PA を と る こ と が CCS の 世 界 共 通 の 最 重 要 課 題 で あ り 、 そ の た め の 世 界 的 な 協 力
が必要
石 炭 燃 焼 排 ガ ス を 対 象 と し た CO2 回 収 プ ラ ン ト の イ メ ー ジ 図
(出 典 : 三 菱 重 工 HP)
62
大分類 : 中長期開発
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
小分類
CO 2 回 収 技 術
個別技術名
⑪ -1 CO 2 転 換 利 用 (CO 2 か ら の プ ラ ス チ ッ ク 製 造 技 術 開 発「 CO 2 化 学 的 固
定化技術」)
開発者
三井化学株式会社
1.技術開発概要等
概要
・ 工 場 か ら 排 出 さ れ る CO 2 と 自 然 エ ネ ル ギ ー に よ っ て 水 か ら 得 ら れ る 水
素を合成してメタノールを製造し、プラスチック等の化学製品に利用す
る。
・ CO 2 の 固 定 化 に 繋 が り 、 大 気 中 CO 2 の 削 減 に な る 。
必要性
・ 地 球 温 暖 化 の 一 因 と さ れ 、 削 減 が 求 め ら れ て い る CO 2 を 原 材 料 と し て
用い、高騰で代替品の開発が急務とされている原油の代替原料となりう
るメタノールを生成できる。
「 CO 2 削 減 」と「 原 油 代 替 品 生 成 」の 達 成 が
可能となる。
目
標
・ 工 場 等 か ら 排 出 さ れ る CO 2 と 水 の 光 分 解 な ど か ら 得 ら れ る 水 素 か ら メ
タ ノ ー ル を 合 成 し 、そ の 得 ら れ た メ タ ノ ー ル か ら 石 油 化 学 製 品 (ポ リ エ チ
レ ン や プ ラ ス チ ッ ク ス )を 製 造 す る こ と 。
効
果
・技 術 開 発 が 進 み 、採 算 の 取 れ る レ ベ ル で 大 規 模 に 展 開 で き る よ う に な れ
ば、環境問題と資源不足問題の両方を解決できるようになる。
2.技術開発状況、開発ステージ、ステータス
過
去
・1990~ 1999 年 に NEDO 委 託 事 業 (化 学 的 CO 2 固 定 化 プ ロ ジ ェ ク ト )に 参
画し、メタノール合成の高活性触媒の開発に取り組んだ。その後、触媒
の改良を進めてきた。
・ 2010 年 3 月 を め ど に 実 用 化 技 術 確 立 を 目 指 し て 、 2008 年 に 実 証 パ イ
ロ ッ ト 設 備 の 建 設 に 着 手 し た (三 井 化 学 大 阪 工 場 )。 2009 年 2 月 に 完 成 。
投 資 額 は 約 15 億 円 。
現
状
・三井化学は光触媒で水を水素と酸素に分解する技術も開発中。
今
後
・商用化を目指す。
3.技術開発、成果普及のために何が必要か
・ 低 コ ス ト 化 (従 来 の 天 然 ガ ス か ら メ タ ノ ー ル を 製 造 す る よ り 2~ 3 倍 か か る )。
・ CO 2 排 出 量 取 引 制 度 の 導 入 。
備 考:
CO 2 か ら 工 業 的 に 生 産 さ れ る 化 学 品 は 、世 界 で 、尿 素:約 1 億 ト ン /年 、メ タ ノ ー
ル : 100 万 ト ン /年 、 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト : 300-400 万 ト ン /年 ( ホ ス ゲ ン を 含 む ) で あ る 。
63
CO 2 化 学 的 固 定 化 の 概 念 図
出
典
:
三
井
化
学
(
株
)
http://jp.mitsuichem.com/release/2008/2008_0825.htm
64
WEB
サ
(2013.12.08)
イ
ト
よ
り
大分類 : 中長期開発
中分類
石炭火力の高効率化・低炭素化
個別技術名
⑪ -2 CO 2 転 換 利 用 (CO2 原 料 か ら の 芳 香 族 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト 合 成 技 術
開発者
旭化成ケミカルズ株式会社
1.
小分類
CO 2 回 収 技 術
技術開発概要等
概要
・ 芳 香 族 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト 製 造 に お い て 、 CO 2 を 原 料 と し て 合 成 す る
技 術 で あ り 、 従 来 法 に 比 べ て 安 全 な 上 、 CO 2 固 定 化 に 繋 が る 。
必要性
・ 大 規 模 に 実 用 化 さ れ れ ば CO 2 の 固 定 化 に 貢 献 す る 。
・ホスゲン法ポリカーボネートは、有毒なホスゲンを使用するため、
環 境 へ 与 え る 影 響 が 大 き い た め 、ホ ス ゲ ン を 用 い ず に 、効 率 良 く 、安
全 ・ 安 価 に カ ル ボ ニ ル 基 を 導 入 す る 技 術 開 発 が 必 要 。( ホ ス ゲ ン と は
炭 素 と 酸 素 の 化 学 物 COCl 2 。 毒 性 の 高 い 気 体 )
目
標
・ CO 2 は 化 学 原 料 と し て 反 応 性 が 乏 し い こ と を 除 け ば 、 安 価 で 、 大 量
に 排 出 さ れ 、安 定 で 、毒 性・悪 臭 が な い 。し た が っ て 、CO 2 を 原 料 と
する新規な非ホスゲン法ポリカーボネート製造プロセスを開発する
ことが目標。
効
果
・ CO 2 を 材 料 と し て 利 用 し 、 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト に 取 り 込 む た め 大 気 中
CO 2 の 削 減 に 貢 献 で き る 。
2.技術開発状況等
過
去
・安全なカルボニル基導入剤として、ジフェニルカーボネートからポ
リ カ ー ボ ネ ー ト を 製 造 す る 方 法( 溶 融 重 合 法 )が 普 及 。こ の 環 境 の 中 、
旭化成ケミカルズではジフェニルカーボネートの製造プロセスの革
新を進めてきた。
・ 旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ は 1980 年 代 よ り 、 CO2 ケ ミ ス ト リ ー に 取 組 ん で
きた。
・ CO 2 の 難 反 応 性 は 触 媒 や プ ロ セ ス の 革 新 で 克 服 で き る と い う 見 地 か
ら 、 CO 2 の 有 効 利 用 検 討 を 継 続 。
現
状
・ 世 界 で 初 め て CO 2 原 料 の ジ フ ェ ニ ル カ ー ボ ネ ー ト 工 業 化 に 成 功 。
2002 年 よ り 台 湾 で 初 の 商 用 機 稼 働 中 。
今
後
・独自の溶融重合法と組み合わせたポリカーボネート製造プロセス技
術( 別 紙 の プ ロ セ ス 図 参 照 )を 世 界 の 多 く の 企 業 へ ラ イ セ ン ス し 、安
全で環境に優しい溶融重合法ポリカーボネート製造プロセスの拡大
に貢献していく。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・高性能化、低コスト化、製造設備の小型化、現地適合技術開発。
・相手国の行政官や技術者に必要な技術や知識を伝える。
・国際的な資金協力による設備の普及促進。
・当該技術の普及を後押しするような導入国の環境基準の見直しへの働きかけ。
65
副 生 CO 2 を 原 料 と す る 新 規 な 非 ホ ス ゲ ン 法 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト 製 造 プ ロ セ ス
出 典 :「 二 酸 化 炭 素 の 直 接 利 用 最 新 技 術 」 出 版 社 : エ ヌ ・ テ ィ ー ・ エ ス ; 初 版
(2013/04)
66
大分類 : 中長期開発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑫ビクトリア褐炭高度利用技術(褐炭高度利用)
開発者
九州電力株式会社他石炭ユーザー、九州大学
1.
概
中分類
改質利用技術
技術開発概要等
要
・豪 州 ビ ク ト リ ア 州 に 豊 富 に 賦 存 す る (約 7 0 0 億 ト ン )高 水 分 、高 自 然 発 火
性、低灰分という特徴を有する褐炭を日本で活用できるように現地で改質
し、安全に日本に運び発電燃料として利用。
必要性
・日本における高品位炭調達の困難化、ベース電源用燃料として石炭の重
要性の高まりなどから、低品位炭の長期安定利用に資する技術の開発が必
要。
目
標
・日 本 の 電 力 会 社 等 の 既 存 の 火 力 発 電 所 に て 使 用 で き る 改 質 炭 を 豪 州 ビ ク ト
リア州にて製造。
効
果
・NOx、SOxなどの有害物質排出低減、石炭灰の大幅削減、低廉かつ
安定した発電燃料の供給。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2009 年 度 ~ 2012 年 度
現
状
・ 2013 年 度
基盤技術検討、経済性 1 次評価、事前技術検証。
国内において豪州ビクトリア褐炭を使用して改質プロセス技
術のパイロット試験を実施中。
今
後
・今後の計画は現在取組んでいるパイロット試験結果を踏まえた上で策定
される予定であり、現状は以下のとおり想定。
・ 2014 年 度 以 降
パイロット試験結果を踏まえた技術検討及びプレ
FS
・ 2015 年 度 以 降
・ 2016 年 度 以 降
・ 2018 年 以 降
大規模実証機設計
大規模実証試験
商用化
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・逼迫する石炭供給、価格上昇への適応。
・ 技 術 開 発 課 題 (乾 燥 乾 留 の 経 済 性 、 輸 送 ・ 貯 蔵 ・ 安 全 性 技 術 の 確 立 、 輸 送 可 能 な 改 質
炭 形 状 作 り こ み 他 、 パ イ ロ ッ ト 試 験 結 果 に 基 づ き 課 題 抽 出 )の 解 決 。
・日・豪両政府主導による関連インフラ(実証時及び商用時の改質炭の積出・貯蔵・
輸送設備、サイト、鉄道、道路、荷役港湾、船舶等)の整備。
・豪州政府における褐炭技術開発方針の明確化・安定化及び開発支援。
・ 現 地 エンジニアリングと 事 業 運 営 の F S 。
・現地調達リソース(技術員等の人件費、資材費など)の適正化。
・ 現 地 開 発 関 連 法 規 の 対 応 (騒 音 、 煤 塵 な ど 厳 格 化 す る 環 境 へ の 対 応 ・ 準 備 )。
67
技術スキーム概要
出典:九州電力株式会社提供資料
68
大 分 類 :中 長 期 開 発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑬高効率褐炭乾燥
開発者
小分類
改質炭利用技術
三菱重工業株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・現 在 、褐 炭 焚 き 石 炭 火 力 で は 、褐 炭 を ミ ル で 粉 砕 し 乾 燥 さ せ な が ら ボ イ
ラーに投入する。褐炭中の水分は炉内で水蒸気となり、そのまま系外に
放出され蒸発時の潜熱が損失となる。
・そ こ で 、水 蒸 気 を 流 動 化 ガ ス と し て 利 用 す る 蒸 気 流 動 層 乾 燥 シ ス テ ム に
より、褐炭を乾燥させるとともに、発生した蒸気は潜熱回収システムで
圧縮し、飽和蒸気温度を上げることにより乾燥システムに利用する高効
率褐炭乾燥システムを開発する。
必要性
・従 来 利 用 さ れ て い る ボ イ ラ 高 温 燃 焼 ガ ス を 利 用 す る 乾 燥 方 式 で は 潜 熱 ロ
ス に よ る 排 ガ ス 損 失 が 大 き く 、発 電 効 率 が 低 い 。ま た 同 乾 燥 方 式 は IGCC
シ ス テ ム に 適 用 が で き な い こ と か ら 、大 型 化 に 適 し た 高 効 率 の 褐 炭 乾 燥
システムの開発が必要。
目
標
・ 大 容 量 化 ( 乾 燥 容 量 ): 120t/h 以 上 の 商 用 規 模 を 想 定 。 500MW クラ ス
の ガ ス 化 炉 と 組 み 合 わ せ た 場 合 、 120h/h x 4 = 480t/h の 4 系 列 。
・ 高 効 率 化 -潜 熱 回 収 率 : 50%以 上
褐炭から発生した水蒸気の保有する
潜 熱 を 50%以 上 回 収 す る 。
効
果
・高 効 率 褐 炭 乾 燥 シ ス テ ム は 、従 来 の 褐 炭 焚 微 粉 炭 火 力 発 電 プ ラ ン ト に お
いて、ボイラ上流側に設置することにより、発電効率を大きく向上させ
ることが可能になる。
・IGCC の 場 合 、最 新 の ガ ス タ ー ビ ン と の 組 み 合 わ せ が 可 能 と な り 、発 電
効 率 を 50%(HHV ベ ー ス )程 度 ま で 向 上 す る こ と が 見 込 ま れ る 。こ れ に よ
り 、 褐 炭 の 消 費 量 及 び CO 2 発 生 量 を 大 き く 低 減 す る こ と が 可 能 に な る 。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2 0 0 9 ~ 2 0 1 0 年 、 基 礎 試 験 1 t/d、 ベ ン チ ス ケ ー ル 試 験 装 置 の 設
計。
・2010年、
ベ ン チ ス ケ ー ル 試 験 装 置 10 t/d の 作 成 。
・ 2 0 1 1 ~ 2 0 1 2 年 、 ベ ン チ ス ケ ー ル 試 験 、 実 証 試 験 200 t/d F/S。
・2013年、
豪州褐炭焚き発電所での実証試験の提案を行
うも豪州側等との調整が出来ず。
現
状
・褐 炭 焚 き IGCC 建 設 の 目 論 見 浮 上 を 待 ち 、高 効 率 褐 炭 乾 燥 実 証 試 験 を 当
該国で実施を計画する。
今
後
・実 証 規 模( 200t/d)で の 大 容 量 実 機 へ の ス ケ ー ル ア ッ プ 技 術 の 確 認 。お
よび運転制御方法の確立。
・設備全体における自然発火に対する安全性の確保。
69
・潜熱回収を含むシステム最適化による運転コストの低減。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・褐炭産炭国での実証試験の機会提供と実機へのスケールアップ技術の確立。
・産炭国での褐炭利用に対するインセンティブ付与。
( 発 電 利 用 の 場 合 、 FIT( 電 力 買 取 価 格 の 優 遇 )、 CO 2 排 出 量 低 減 に 対 す る ク レ ジ ッ ト
付与など)
・産炭国での周辺インフラ整備推進
(送電網の整備や、乾燥褐炭そのものを販売する場合の輸送ルート整備など)
高効率褐炭乾燥システムフロー
出 典 : 三 菱 重 工 技 報 Vol.48 No.3 (2011)
70
大分類 : 中長期開発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑭低品位炭からの製鉄コークス用粘結材製造技術(ハイパーコール)
開発者
小分類
産業用石炭利用技術
株式会社 神戸製鋼所
1.技術開発概要等
概
要
・鉄鋼用原料炭は資源量が限られており、特に強粘結炭の価格は高止
ま り の 状 態 に あ る 。コ ー ク ス 強 度 を 保 ち な が ら 、強 粘 結 炭 の 使 用 量 低
減 を 可 能 に す る コ ー ク ス 製 造 用 の 低 灰 分 粘 結 材( ハ イ パ ー コ ー ル )を 、
安 価 な 石 炭 火 力 用 一 般 炭 を 原 料 と し て 、加 熱 溶 剤 抽 出 に よ っ て 製 造 す
る技術を開発する。
必要性
・製鉄コークス製造用原料石炭確保の視点から、高品位の強粘結炭の
利 用 量 を 低 減 し 、一 般 炭 、非 微 粘 炭 利 用 量 を 増 加 す る こ と が 可 能 な 粘
結材が要求されていくと予想される。
目
標
・粘結材としての強粘結炭使用量低減効果が大きく、経済性に優れた
製品を製造する技術を確立する。
効
果
・製鉄用コークスに適応できる石炭種を拡大できるとともに、高強度
コ ー ク ス 製 造 を 実 現 す る こ と に よ り コ ー ク ス 使 用 量 を 削 減 し 、製 鉄 で
の CO 2 削 減 に 寄 与 す る 。市 場 規 模 と し て 、製 鉄 用 コ ー ク ス 原 料 炭 4,000
万 ト ン /年 の う ち 改 質 に よ る 粘 結 材 使 用 量 を 5%と し て 、 200 万 ト ン /
年に相当する。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2002 年 ~ 2007 年 ハ イ パ ー コ ー ル 小 型 連 続 製 造 装 置 ( 石 炭 処 理 量
0.1t/d) に よ り ハ イ パ ー コ ー ル を 連 続 的 に 製 造 可 能 で あ る こ と を 実 証
し た( 高 効 率 燃 焼 技 術 開 発 事 業 )。コ ー ク ス 配 合 炭 へ 5~ 10%添 加 す る
こ と に よ り 配 合 炭 の 特 性 が 改 良 さ れ 、非 微 粘 結 炭 を 50%配 合 し て も コ
ークス品質が保たれることを試験炉で検証した。
・2008 年 ~ 2012 年 改 質 COG 雰 囲 気 下 で の 鉄 鉱 石 還 元 に 使 用 で き る
高 強 度 コ ー ク ス を 製 造 す る 技 術 開 発 を 実 施 ( COURSE50 事 業 )。
現
状
・反応性を制御した高強度コークス製造技術開発を実施中
( COURSE50 事 業 )。
・パイロットプラントでのハイパーコース製造実証試験、ハイパーコ
ール添加コークスの大規模実証試験に向けた活動を実施中。
今
後
・パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト 規 模( 石 炭 処 理 量 10~ 30t/d)を 用 い た 、商 用 機
へのスケールアップ技術の確立およびハイパーコール添加コークス
の大規模実証試験。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・スケールアップ技術開発のためのパイロットプラント建設、実証試験(ハイパー
コール製造、コークス製造)への公的資金支援。
・産炭国との技術面・制度面を含む包括的な良好関係の構築。
71
ハイパーコール製造プロセス
出 典 : JCOAL 石 炭 技 術 会 議 2005 年 講 演 資 料
72
大分類 : 中長期開発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑮ 自 然 エ ネ ル ギ ー を 付 加 し た CCT
開発者
小分類
産業用石炭利用技術
三菱日立パワーシステムズ株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・石 炭 火 力 に 自 然 エ ネ ル ギ ー( 太 陽 熱 )を 付 加 す る こ と に よ り 、化 石 燃 料
の消費量を抑制しながら安定した電力を確保する技術を開発する。我が
国では太陽熱利用は家庭用の温水器への利用普及が中心であるが、直達
日射量の比較的小さい我が国でも利用可能な太陽熱集熱器の開発を行
い、化石燃料火力とハイブリットさせることにより、化石燃料火力の安
定した電源確保の元で、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることがで
きる。
必要性
・太 陽 熱( 再 生 可 能 )の 弱 点 は 不 安 定 エ ネ ル ギ ー で あ る こ と で あ り 、ま た
化 石 燃 料 火 力 の 弱 点 は CO 2 排 出 量 が 多 い こ と で あ る 。し か し 、化 石 燃 料
火力と自然エネルギーを融合することにより、両社の弱点をカバーしひ
いては再生可能エネルギーの利用拡大に繋がる。
・我 が 国 で 経 済 的 合 理 性 の あ る 技 術 開 発 が 出 来 れ ば 、直 達 日 射 量 の 高 い 海
外の立地では優位に立ちインフラ輸出の拡大に繋がる。
・火 力 の 利 用 と 併 せ て 、高 品 質 な 安 定 し た 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 利 用 拡 大
が出来る。また、将来この技術を転用し太陽エネルギーを化学エネルギ
ー に 転 換 し て 次 世 代 液 体 燃 料 を 製 造 す る と と も に 、 CO 2 の 利 用 ・ 回 収 を
図ることを目的とした技術開発に繋がり、更なる地球温暖化防止に貢献
できる。
目
標
・我が国でも利用可能な太陽熱集熱設備を開発中。
効
果
・石 炭 火 力 の 利 用 と 併 せ て 、高 品 質 な 安 定 し た 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 利 用
拡大が出来る。また、将来この技術を転用し太陽エネルギーを化学エネ
ル ギ ー に 転 換 し て 次 世 代 液 体 燃 料 を 製 造 す る と と も に 、 CO 2 の 利 用 ・ 回
収を図ることを目的とした技術開発に繋がり、更なる地球温暖化防止に
貢献できる。
2.技術開発状況等
過
去
・集光装置についての基礎試験装置を製作し、低コスト型の集光装置が
可能かどうかの確認人試験を実施した。
現
状
・ 1 MWt h 規 模 の 試 験 装 置 の 計 画 を 行 っ て い る 。
今
後
・ 2020 年 に は 商 用 機 を 出 せ る よ う 試 験 研 究 を 推 進 す る 予 定 。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・自 然 エ ネ ル ギ ー 、特 に 太 陽 エ ネ ル ギ ー を 利 用 す る に は 、豪 州 の よ う に 豊 富 な リ ソ ー ス
がある国との技術提携関係強化が有効である。
73
出典:バブコック日立(株)提供資料
HSTS 集 光 ・ 集 熱 検 証 設 備 の イ メ ー ジ
出 典 : MHPS ホ ー ム ペ ー ジ
74
大 分 類 :中 長 期 開 発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑯ 二 塔 式 石 炭 ガ ス 化 炉 に よ る 褐 炭 利 用 技 術 ( TIGAR)
開発者
1.
概
小分類
産業用石炭利用技術
株 式 会 社 IHI
技術開発概要等
要
・褐炭のように揮発分の割合が多く、比較的ガス化が容易な低品位炭は、
低温・大気圧条件でのガス化が可能である。
・本 技 術 は 循 環 流 動 層 技 術 を ベ ー ス に 、低 品 位 炭 だ け で な く バ イ オ マ ス 等
多種の低品位燃料に対応でき、導入も容易な低温・大気圧のガス化プロ
セスである。
必要性
・褐炭は水分が多く、自然発火性が高いため、利用方法は限定的である。
褐炭等の低品位な石炭は、インドネシア、ドイツ、オーストラリア等広
範囲に賦存しており、埋蔵量は全石炭の半分を占める。従って日本だけ
ではなく、世界的なエネルギーセキュリティの観点からも褐炭等の低品
位炭の効率的な利用技術の開発が必要。
目
標
・燃 料( 原 料 )の 適 用 範 囲 が 広 く 、褐 炭 だ け で は な く 、バ イ オ マ ス も 同 時
にガス化することが可能で、燃料、化学原料等の天然ガス、石油の代替
と し 、 加 え て 、 CO 2 排 出 量 の 低 減 に も 寄 与 す る 。
効
果
・褐 炭 を 有 す る 産 炭 国 に 本 技 術 を 導 入 す れ ば 、未 利 用 低 品 位 炭 を 国 内 で 使
用し、高品位炭は輸出するなど価値の最大化が可能で、資源の有効利用
にも貢献できる。
2.技術開発状況等
過
去
・2004~2005年
褐炭ガス化研究開発実施
・ 2 0 0 5 ~ 2 0 0 6 年 0.1 ト ン /day ベ ン チ 試 験 実 施
・2009~現在
6 ト ン /day パ イ ロ ッ ト 炉 で 700 時 間 超 の ガ ス 化 試
験実施
現
状
・2 0 1 2 ~
イ ン ド ネ シ ア 肥 料 工 場 の 管 轄 す る 工 業 団 地 内 に 実 証 機( 50
ト ン /day) を 設 置 。
今
後
・2 0 1 4 ~
5 0 t/day の 実 証 炉 か ら 、3 0 0 ~ 1 ,0 0 0 t/d 商 用 へ の
スケールアップの確認及び数種のインドネシア褐炭による性能確認。
・比較的低温のガス化であるため、ガス化に際しタールが発生するが、
これを処理・精製するプロセスの同規模実証機で性能、運用を確認。さ
らに、ガス化炉側での発生抑制技術および他の処理技術の研究開発を行
う。
・実証運転を通して、高い運用性、信頼性をアピール。
3.技術開発、開発済技術の普及のために何が必要か、何をして欲しいか
75
・低 廉 価 値 の 低 品 位 炭 に 付 加 価 値 を 付 け る 技 術 を 開 発 し て も 、低 品 位 炭 価 格 が 上 昇 し て
は 、事 業 と し て 成 立 し な く な る 。 し た が っ て 、低 価 格 で 安 定 し た 褐 炭 供 給 体 制 の 確 保
(輸送路確保,近隣住民対応などの褐炭供給のインフラ整備 )を希望する。
・資源保護等の理由により低品位炭利用事業の自由が制限されると事業の魅力が薄れ
る 。こ の よ う に 、低 品 位 炭 利 用 技 術 の 開 発 意 欲 が 薄 れ な い よ う な 制 度 支 援 が 必 要 で あ
る。
褐 炭 ガ ス 化 ( TIGAR) の 概 要
褐 炭 ガ ス 化 ( TIGAR) 製 品 の 適 用 先
出 典 : JCOAL/CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2012 「 二 塔 式 ガ ス 化 炉 ( TIGAR) イ ン ド ネ シ ア で の
実 証 プ ロ ジ ェ ク ト へ 向 け て 」( 株 ) IHI
76
大 分 類 :中 長 期 開 発
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
⑰ 石 炭 部 分 水 素 化 熱 分 解 技 術 ( ECOPRO)
開発者
小分類
産業用石炭利用技術
新日鉄住金エンジニアリング株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・本 技 術 は 、石 炭 ガ ス 化( 部 分 酸 化 )反 応 と 熱 分 解 反 応 を 組 合 わ せ た 高 効
率 な 石 炭 転 換 技 術 で あ り 、枯 渇 傾 向 に あ る 石 油 ・ 天 然 ガ ス か ら 誘 導 さ れ
て い る 化 学 原 料 や 燃 料 の 石 炭 に よ る 補 完 ・代 替 を 図 る と 同 時 に 、 CO 2 排
出削減を可能にすることを目的とした技術である。
・本 技 術 は 褐 炭 等 の 低 品 位 炭 の ガ ス 化 に よ る メ タ ン( 代 替 天 然 ガ ス )製 造
に 向 い た 技 術 で あ り 、 産 炭 国 で 本 技 術 に よ り メ タ ン を 製 造 し 、産 炭 国 や
近 隣 国 へ の エ ネ ル ギ ー 需 給 緩 和 を 図 る と と も に 、日 本 に 代 替 天 然 ガ ス と
して輸入することも可能である。
必要性
・我が国のエネルギー安定供給確保と地球環境問題に対応していくため
に 、石 炭 の 高 効 率 利 用 と 褐 炭 等 の 未 利 用 炭 利 用 が 図 れ る 技 術 開 発 が 必 須
で あ る 。本 技 術 は 石 炭 の 高 効 率 利 用 が 図 れ る 革 新 的 技 術 で あ り 、 枯 渇 傾
向 に あ る 石 油・ 天 然 ガ ス か ら 製 造 さ れ て い る 化 学 原 料 や 燃 料 の 石 炭 に よ
る 補 完 ・ 代 替 が 図 ら れ る と 同 時 に 、 CO 2 排 出 削 減 を 可 能 に す る 技 術 で あ
る。
目
標
・産 炭 国 で 本 技 術 の 実 証 試 験( 石 炭 処 理 規 模 200~ 500t/d)を 実 施 し 、世
界 最 高 の エ ネ ル ギ ー 効 率 ( 85%以 上 ) の 達 成 を 目 指 す と と も に 、 低 品 位
炭・低 品 質 炭 原 料 の 適 応 性 、ス ケ ー ル ア ッ プ 技 術 や SNG・化 学 原 料 製造
技 術 の 確 立 、 CO 2 分 離 回 収 技 術 を 確 立 す る 。
・実 証 段 階 を 経 て 、産 炭 国 へ の 商 用 設 備 の 普 及 を 図 り 、産 炭 国 の エ ネ ル ギ
ー需給緩和と環境対策を実現する。
効
果
・未 利 用 な 低 品 位 炭・低 品 質 炭 が 有 効 活 用 で き る こ と か ら 、省 資 源 化 や 製
造 コ ス ト の 低 減 が 図 れ る 。エ ネ ル ギ ー 効 率 が 高 い こ と か ら 、二 酸 化 炭 素
排出削減に効果がある。
・ 世 界 最 高 レ ベ ル の 冷 ガ ス 効 率 85%以 上 を 達 成 す る こ と に よ り 、 CO 2 排
出 削 減 効 果 が 得 ら れ る 。( 冷 ガ ス 効 率 80%レ ベ ル の 石 炭 ガ ス 化 技 術 に 比
べ て 、 全 体 と し て 約 10%程 度 の CO 2 排 出 削 減 が 可 能 )
2.技術開発状況等
過
去
・ 2003 年 ~ 2008 年 に パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト ( 石 炭 処 理 規 模 20t/d) に よ る
試験を実施し、開発目標である世界最高のエネルギー効率達成の目処と
長 時 間 連 続 運 転 ( 1,000 時 間 ) を 達 成 。
・2010 年 に 豪 州 ビ ク ト リ ア 州 に お い て 日 豪 協 力 に よ る 実 証 ス キ ー ム 構 築
に 向 け た プ レ FS を 実 施 。
現
状
・ 2012 年 よ り 、 中 国 の ユ ー ザ ー 候 補 企 業 と の 実 証 ス キ ー ム 構 築 に 向 け た
検 討 を 実 施 中 。2014 年 よ り 、中 国 の ユ ー ザ ー 候 補 企 業 と の 実 証 に 向 け た
FS や パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト に よ る 候 補 炭 の 試 験 を 実 施 し 2015 年 か ら 実 証
設備建設に着手。
77
今
後
・ 実 証 設 備 に よ っ て 、 2018 年 の 実 証 完 了 を 目 指 す 。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
(1) ・ 熱 分 解 ガ ス 化 炉 の ス ケ ー ル ア ッ プ 技 術 の 確 立
パ イ ロ ッ ト 炉( 給 炭 量 20t/d)の 結 果 か ら 、実 証 機( 200-500t/d)の 建 設 、試 験 に よ り 、
エネルギー効率等の各種運転性能や信頼性を検証する。
(2) 各 種 未 利 用 炭 の 適 用 技 術 の 検 証
産炭国において褐炭等の未利用炭を用いて実証運転を行い、適用性の確認を行う。
ECOPRO( 高 効 率 熱 分 解 石 炭 ガ ス 化 ) プ ロ セ ス の 概 要 、 原 理
出 典 : JCOAL/CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2011/6/30 「 高 効 率 石 炭 ガ ス 化 技 術 の 開 発 と 低 品 位 炭
活 用 へ の 適 用 」 新 日 鐵 エ ン ジ ( 株 ) ・ 千 代 田 化 工 建 設 (株 )
ECOPRO パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト ( 20t/d) の 全 景 写 真
出典:新日鐵住金エンジニアリング(株)
78
大分類 : 中長期開発
中分類
環境対策
個別技術名
⑱ 環 境 負 荷 低 減 技 術 ( B、Se)
開発者
小分類
環境負荷低減技術
(一財)電力中央研究所、出光興産株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・ 燃 焼 排 ガ ス 中 の ホ ウ 素 ( B)、 セ レ ン ( Se) の モ ニ タ ー 方 法 の 確 立 と 、
低 減 方 法 の 開 発 及 び そ の JIS/ ISO 化
必要性
・石 炭 火 力 排 ガ ス に 含 ま れ る ガ ス 状 金 属 の う ち 、ハ ロ ゲ ン 、水 銀 と 並 ん で
ホ ウ 素( B)、セ レ ン( Se)は 揮 発 し 易 く 、そ の 環 境 影 響 が 懸 念 さ れ て い
る 。 現 在 こ れ ら 元 素 の 測 定 方 法 の JIS 化 、 ISO 化 が 進 行 中 で あ る 。
・ま た 、石 炭 火 力 発 電 所 の 排 水 は 水 質 汚 濁 防 止 法 の 適 用 を 受 け 、複 数 の 微
量物質が規制対象とされている。
・湿 式 脱 硫 装 置 は 排 ガ ス 中 の ガ ス 状 の 微 量 物 質 も 捕 集 す る が 、そ れ ら が 脱
硫 排 水 に 移 行 し 、排 水 処 理 の 負 担 と な る 場 合 が 生 じ て お り 、処 理 の 困 難
なホウ素、セレンへの関心が高い。
・ま た 石 炭 灰 や 脱 硫 副 製 品 で あ る 石 膏 、汚 泥 等 に も 微 量 物 質 は 含 ま れ 、有
効 利 用 や 埋 め 立 て 等 の 際 の 懸 念 材 料 に な る 場 合 が あ り 、低 減 対 策 が 必 要
である。
目
標
・ 燃 焼 排 ガ ス 中 の ホ ウ 素 ( B)、 セ レ ン ( Se) の モ ニ タ ー 方 法 の 確 立 と 、
低減方法の開発。
効
果
・ 燃 焼 排 ガ ス 中 の ホ ウ 素 ( B)、 セ レ ン ( Se) の 低 減 。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2005-2013 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 石 炭 火 力 技 術 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト 「 石 炭 利
用プロセスにおける微量成分の環境への影響低減手法の開発 微量成
分の高精度分析手法の標準化に資するデータ蓄積と燃焼プロセスにお
けるプラント内挙動の解明」にてモニタリング手法開発を行ってきた。
・排ガス中の粒子状ホウ素、セレンは電気集じん装置で、電気集じん装
置 を 通 過 し た ガ ス 状 ホ ウ 素 、セ レ ン は 、ほ ぼ 全 量 湿 式 の 脱 硫 装 置 で 捕 集
さ れ る こ と が 判 明 し た 。ま た 、燃 焼 過 程 に お い て 石 炭 中 の セ レ ン は 全 量
揮 発 し 、ホ ウ 素 は 溶 融 灰 に 取 り 込 ま れ 、一 部 揮 発 し な い こ と が 明 ら か と
な っ た 。基 礎 試 験 の 結 果 、石 炭 か ら 揮 発 し た ガ ス 状 ホ ウ 素 は 燃 焼 排 ガ ス
中 で 、石 炭 灰 中 の 未 燃 分 と マ グ ネ シ ウ ム 分 に 取 り 込 ま れ 石 炭 灰 に 移 行 す
ると考えられた。
現
状
・ JIS/ISO 化 検 討 中 。
今
後
・ ホ ウ 素 ( B)、 セ レ ン ( Se) 測 定 法 の JIS/ISO の 確 立 と 、 低 減 方 法 の 開
発。
・ JIS: JISK0083-2006 へ の 追 加 ( セ レ ン 化 合 物 )
・ ISO:WD ISO17211( Selenium) を TC146 に て DIS 化
3.
技術開発、または、成果普及のために何が必要か
79
・モニタリング手法の確立までの技術開発支援。
・除去技術の開発。
・除去物質の利用技術の探索の為の支援。
80
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑲
開発者
小分類
石炭火力発電技術
超 々 臨 界 圧 発 電 技 術 ( USC)
株 式 会 社 IHI、株 式 会 社 東 芝 、三 菱 日 立 パ ワ ー シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 、三 菱
重工業株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・ USC と は 、 Ultra-Supercritical の 略 で 593℃ 以 上 の 超 々 超 臨 界 圧 発 電 シ
ス テ ム を 意 味 す る 。世 界 の 通 常 火 力 発 電 で は 、蒸 気 温 度 は 超 臨 界 圧( SC)
や 亜 臨 界 圧 ( Sub-SC) が 主 流 で あ り 約 500℃ 台 の と こ ろ 、 USC で は 、
蒸 気 条 件 を 600℃ 以 上 に す る こ と で 、 大 幅 な 効 率 向 上 を 可 能 に す る 。 主
蒸 気 圧 力 25MPa、主 蒸 気 温 度 600℃ 、再 熱 蒸 気 温 度 600℃ の 一 段 再 熱 蒸
気 条 件 の USC プ ラ ン ト で は 、 42%の 送 電 端 効 率 [ HHV 基 準 ] が 期 待 で
きる。
必要性
・USC は SC/Sub-SC に 比 べ て 燃 費 が 良 く 、CO 2 排 出 量 削 減 に よ る 地 球 温
暖化防止対策に貢献するために、今後は世界各国において建設される石
炭 火 力 の 主 流 に な る と 予 想 さ れ る 。我 が 国 メ ー カ ー の USC プ ラ ン ト 輸 出
を促進するためには、欧米や中国等のメーカーに打ち勝って受注を獲得
する必要があり、そのためには設備コストの低減が必要。
目
標
・ 海 外 USC 市 場 で の 競 争 力 確 保 。
効
果
・ USC プ ラ ン ト 輸 出 と そ の 後 の 保 守 メ ン テ に よ る メ ー カ ー の 売 上 高 へ の
貢献。
・ USC プ ラ ン ト 輸 出 先 の 新 興 国 や 産 炭 国 で の CO 2 削 減 へ の 貢 献 。
2.技術開発状況等
過
去
・ USC 技 術 の 実 用 化 、 国 内 電 力 会 社 へ の 普 及 。
現
状
・海 外 市 場 へ の 受 注 活 動 展 開 、現 地 メ ー カ ー と の 提 携 に よ る 市 場 橋 頭 堡 確
保、低コスト化開発・検討(設計標準化、モジュール化、海外生産、海
外 調 達 強 化 な ど )。
今
後
同上
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・案件発掘段階での公的支援。
・政府による受注活動支援。
・ 国 内 老 朽 事 業 用 火 力 の USC へ の 更 新 推 進 ( 一 定 規 模 の 建 設 機 会 の 維 持 ) 。
・国際金融機関による融資の内容の充実。
81
世 界 の石 炭 火 力 建 設 計 画
出 典 :World Resources Institute Webサ イ ト
http://www.wri.org/resources/data-visualizations/proposed-coal-fired-plants-installed-cap
acity-mw株 式 (2013.12.08)
世 界 の 石 炭 火 力 建 設 計 画 ( 単 位 MW)
出 典 :World Resources Institute
82
大 分 類 :低 コスト化
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
⑳ 石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 技 術 ( IGCC)
開発者
小分類
石炭火力発電技術
三菱重工業株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・石炭から生成した可燃性ガスを燃料としてガスタービンを回して発電
し、さらにその排熱を使って蒸気タービンを回して 2 度目の発電を行う
方 式 で 、 既 存 の 石 炭 焚 き 火 力 発 電 と 比 較 し て 約 20 パ ー セ ン ト も 発 電 効
率を高められるシステム。
必要性
・エ ネ ル ギ ー セ キ ュ リ テ ィ の 確 保 及 び 地 球 温 暖 化 対 策 の 観 点 か ら 石 炭 の 有
効利用と高い環境適合性を実現するため、既存の石炭火力発電技術に比
べ熱効率が高く二酸化炭素排出量の大幅な低減が見込まれる石炭ガス化
複 合 発 電 技 術 ( IGCC) の 開 発 が 必 要 で あ る 。
目
標
・ 商 用 機 目 標 と し て 、 送 電 端 効 率 46~ 48%( HHV) を 実 現 し 、 こ れ に よ
り 従 来 の 石 炭 火 力 発 電 シ ス テ ム よ り 単 位 発 電 量 あ た り CO 2 排 出 量 を 約 2
割程度削減(石油火力とほぼ同等)する。
・ 中 長 期 目 標 と し て 、 CO 2 回 収 と の 組 み 合 わ せ 、 IGFCへ の 展 開 。
効
果
・低 灰 融 点 炭 の 有 効 利 用( 適 用 炭 種 拡 大 に よ る 石 炭 価 格 交 渉 力 向 上 )、産
炭 国 で の 低 品 位 炭 利 用 (高 品 位 炭 輸 入 量 確 保 )な ど に よ る エ ネ ル ギ ー セ キ
ュリティの確保。
・効率化による石炭消費量の低減、二酸化炭素排出量の削減。
2.技術開発状況等
過
去
・ 2t/dPDU, 200t/d パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト , 24t/d 試 験 炉 に よ る 技 術 開 発 と 要
素技術開発。
現
状
・実 証 機 250MW 試 験 で は 、石 炭 使 用 量 が 500MW 級 商 用 機 の 1/2 規 模 の
実証機を建設し、信頼性、熱効率、環境性、炭種適合性、経済性を確認
した。
・ 同 時 に 、 500MW 級商 用 機 試 設 計 を 実 施 し 低 コ ス ト 化 の 見 通 し を 得 た 。
・250MW 実証 機 は 2013 年 3 月 に 常 磐 共 同 火 力 勿 来 発 電 所 10 号 機 と し て
商用運転開始。
今
後
・ 500MW 級 商 用 機 へ の ス ケ ー ル ア ッ プ に よ る 低 コ ス ト 化 の 実 現
・ CO 2 回 収 実 証 試 験 (適 用 プ ラ ン ト 未 定 )、
・ 別 途 開 発 中 の SOFC と の 組 み 合 わ せ に よ る IGFC シ ス テ ム 研 究
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・ 更 な る 発 電 効 率 の 向 上 ( ス ケ ー ル ア ッ プ 、 GT高 温 化 )
・ 利 用 可 能 炭 種 拡 大 (多 炭 種 設 計 、 亜 瀝 青 炭 /褐 炭 ほ か )
・ 運 用 柔 軟 性 /設 備 信 頼 性 の 更 な る 向 上 ( 高 出 力 変 化 率 ほ か /長 期 的 な 経 年 劣 化 評 価 )
・海外へのインフラ輸出の整備、
・二国間クレジットなどの適用による海外展開支援
83
IGCC フ ロ ー
IGCC 実 証 機
IGCC 開 発 の 歴 史
出 典:三 菱 重 工 業( 株 )WEB サ イ ト http://www.mhi.co.jp/discover/story/project02/index.html
よ り ( 2013.12.08)
84
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
石 炭 火 力 の 高 効 率 化・低 炭 素 化
個別技術名
21 バ イ オ マ ス ・ 石 炭 ハ イ ブ リ ッ ド 発 電 技 術 ( 微 粉 炭 混 焼 )
開発者
小分類
石炭火力発電技術
三 菱 重 工 業 株 式 会 社 、株 式 会 社 IHI、三 菱 日 立 パ ワ ー シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 、
他
1.技術開発概要等
概
要
・木 質 バ イ オ マ ス を 粉 砕 し て 高 比 率 で 微 粉 炭 と 炉 内 混 焼 す る こ と で 、石 炭
火力から排出される化石燃料起源の炭酸ガス量を削減する。
必要性
・石 炭 を 燃 料 と す る 発 電 所 に お い て 、カ ー ボ ン ニ ュ ー ト ラ ル な 燃 料 と し て
期待されている国内の未利用バイオマス資源(林地残材等)を利用する
木 質 バ イ オ マ ス 混 焼 発 電 を す る こ と に よ っ て CO 2 排 出 抑 制 に つ な が る 。
日本の発電事業では石炭火力発電の依存率が高まっており、温室効果ガ
ス ( CO 2 ) 発 生 量 の 削 減 が 課 題 と な っ て い る 。
目
標
・ バ イ オ マ ス 混 焼 率 5cal%以 上 ( 混 合 粉 砕 )、 20~ 50cal%( 専 用 粉 砕 。
効
果
・ 木 質 バ イ オ マ ス の 混 焼 量 は 、 140万 kW発 電 所 に お け る 石 炭 と の 重 量 比
で 1 % 程 度( 年 間 最 大 1.5万 ト ン )の 混 焼 率 で 年 間 1 万 ト ン 程 度 の CO 2 排
出抑制につながる。
2.技術開発状況等
過
去
・ 混 合 粉 砕 法 で 3cal%、 専 用 粉 砕 法 で 17cal%ま で 実 用 化 済 み 。
現
状
・混合粉砕法及び単独粉砕法開発による混焼率向上開発。
・高混合率における安定燃焼技術、運用技術の開発。
・効率的なバイオマス燃料形状および効率的な燃料収集システムの開発。
今
後
・混焼率のさらなる向上。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・バイオマス安定調達の確保への支援政策。
・バイオマス利用へのインセンティブ強化政策。
木質バイオマス混焼システム概略系統図(丸太状で受け入れる場合の例を示す)
85
出典「バイオマスエネルギーの高度利用技術」三菱重工技報
Vol.40 No.4( 2003_7)
出 典 : NEDO 「バ イ オ マ ス 専 用 粉 砕 方 式 に よ る 既 設 微 粉 炭 焚 き ボ イ ラ で の 混 焼 技 術 の 実 用
化開発(実施者:三菱日立パワーシステムズ株式会社)」
出 典:
「 微 粉 炭 火 力 の 木 質 バ イ オ マ ス 高 比 率 混 焼 技 術 の 開 発 」IHI技 報
86
Vol.52 No.4 ( 2012 )
大 分 類 :低 コスト化
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
22 低 品 位 炭 改 質 技 術 (UBC)
開発者
小分類
石炭火力発電技術
株式会社 神戸製鋼所
1.技術開発概要等
概
要
・高 水 分・低 発 熱 量 で 自 然 発 火 性 が 高 く 利 用 が 限 定 さ れ る 褐 炭 や 亜 瀝 青 炭
の有効利用を目的とした技術。
・低 品 位 炭 を 粉 砕 し 灯 油 等 の 軽 質 油 と 混 合 し 、油 ス ラ リ ー 中 で 加 熱 し 水 分
を除去。さらに少量添加されたアスファルト等の重質油を低品位炭内の
細孔や表面に付着させ、自然発熱を防ぎ、水分の再吸収を抑制し、瀝青
炭同等の発熱量と安定性に優れた改質炭とする技術。
必要性
・低 品 位 炭 は 石 炭 資 源 の 半 分 を 占 め る 。改 質 技 術 適 用 で 低 品 位 炭 利 用 の 促
進はエネルギー資源の有効化、我が国への石炭供給安定化。
目
標
・産 炭 国 に 本 技 術 を 導 入 、経 済 的 な 低 灰 分 、低 硫 黄 分 の 燃 料 を 製 造 し 日 本
に輸入する。加えて、褐炭産出国において山元褐炭生焚発電に代えて高
効 率 、 低 CO 2 排 出 の 山 元 UBC 発 電 を 導 入 す る こ と に よ り 、 当 該 国 の 褐
炭有効利用に寄与する。
効
果
・日 本 の 石 炭 供 給 国 と し て 重 要 な イ ン ド ネ シ ア 石 炭 の ほ と ん ど は 低 品 位 炭
で 、し か も 低 灰 分 、低 硫 黄 分 の 環 境 に 優 れ た 性 状 を 有 し て い る こ と か ら 、
本技術を導入することで石炭供給安定化、多炭種適応、灰処理減等に貢
献 す る 。 ま た 、 燃 焼 効 率 の 向 上 に よ り 、 CO 2 削 減 に も 効 果 が あ る 。 褐 炭
産 出 国 で の 山 元 UBC 発 電 の 導 入 に よ り 、そ の 一 般 炭 需 要 を 抑 制 し わ が 国
の石炭輸入の安定化に貢献する。
2.技術開発状況等
過
去
・2 0 0 9 ~ 2 0 1 0 年 、実 証 プ ラ ン ト で の 製 品 に よ り 実 機 ボ イ ラ 等 の 燃
焼性を確認し、概ね目標を達成。
・‘1 0 年 迄 に 大 型 実 証 プ ロ ジ ェ ク ト で 4,000 時 間 超 の 運 転 実 績 有 り 、約 5
万トンの褐炭改質。
・プ ロ セ ス の 安 定 運 転 性 、ス ケ ー ル ア ッ プ 技 術 の 確 立 、実 機 ボ イ ラ で の 改
質炭の燃焼試験で高い燃焼性及びハンドリング性の評価等を実施し、商
用化に向けた技術を確立。
・褐 炭 産 出 国 で の 山 元 UBC 発 電 に つ い て も UBC パ ウ ダ ー の 燃 焼 試 験 を 実
施 、 USC で の 使 用 が 可 能 な こ と を 確 認 。
現
状
・’1 1 年 以 降 、商 業 プ ラ ン ト 建 設 、運 転 に よ る 技 術 の 普 及 を 実 現 す べ く 展
開中。
・ 輸 出 用 の ブ リ ケ ッ ト 、山 元 発 電 用 の パ ウ ダ ー( ブ リ ケ ッ ト 化 な し )の 二
種類の商業化を目指している。プラントコストの低減について一定の目
処をつけつつある。
今
後
・更 な る 低 コ ス ト 化 の 実 現 と 産 炭 国 で 商 用 プ ラ ン ト 建 設 、運 転 に よ る 技 術
普及。
・インドネシアの試験プラント等においてプロセス改善活動を継続実施。
87
3.技術開発、または、成果普及ために何が必要か
・低コスト化の実現
・ エ ネ ル ギ ー 政 策 対 話 等 G-G ベ ー ス の ミ ー テ ィ ン グ で の UBC プ ラ ン ト 輸 出 プ ロ モ ー シ
ョン。
・改質技術の適用国であるインドネシア等における低品位炭へのロイヤルティ軽減、優
遇 税 制 等 の イ ン セ ン テ ィ ブ の 導 入 や 、 CDM 適 用 へ の 支 援 。
・商業化推進のための公的ファイナンスの供与。
低 品 位 炭 改 質 プ ロ セ ス ( UBC プ ロ セ ス ) の 概 要
<UBC プ ロ セ ス フ ロ ー >
UBC powder application
UBC briquette application
Briquetting
Machine
UBC
briquette
UBC Product Yard
●製 品 と 用 途 ・
・ UBC パ ウ ダ ー
- 改質直後の状態
- 水 分 0%
- 隣接発電所に直接供給す
る高効率発電燃料
- 既存褐炭生焚発電に比べ
20%程 度 の CO2 排 出 削 減
・ UBC ブ リ ケ ッ ト
- 長距離輸送用にブリケッ
ト化
- 水 分 8%
(屋 外 貯 蔵・輸 送 の た め 水 分
は平衡値となる)
- 一般炭代替燃料
低品位炭改質の原理
出典:第1回低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価検討会「低品位炭改質技術
研究開発の概要について」経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課
財 団 法 人 石 炭 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー 2010 年 12 月 15 日
88
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
低品位炭の多用途利用
個別技術名
23
開発者
小分類
産業用石炭利用技術
低 品 位 炭 流 体 化 技 術 ( JCF・ HWT)
日揮株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・褐 炭 等 の 低 品 位 炭 を 、そ れ 自 体 が 保 有 す る 水 分 を 利 用 し て 輸 送 や ハ ン ド
リングが容易な水スラリー状の流体とする技術。
・水 ス ラ リ ー は そ の ま ま 燃 焼 す る ば か り で な く 、石 炭 ガ ス 化 等 の 原 料 と し
ても使用できる。
必要性
・ JCF プ ロ セ ス は 、 亜 瀝 青 炭 、 褐 炭 な ど の 低 品 位 炭 ( LRC) を 、 高 温 高 圧
水 ( 熱 水 ) を 用 い た 改 質 法 ( HWT: Hot Water Treating) に よ り 転 換 す る
プロセス。少量の添加剤を加えて水スラリー化燃料にすることが可能。
・低 品 位 炭 は 埋 蔵 量 が 大 き く 、低 品 位 炭 の 欠 点 を 克 服 し 利 用 で き れ ば 、我
が国のエネルギー安定供給に大きく寄与する。
目
標
・ JCF は 、 LRC の 持 つ 固 体 ハ ン ド リ ン グ の 欠 点 ( 自 然 発 火 、 炭 塵 飛 散 等 )
を 克 服 し 、貯 蔵・輸 送・燃 焼 で 重 油 並 み の ハ ン ド リ ン グ 性 を 可 能 と す る 。
効
果
・安 価 な 低 灰 分 の 低 品 位 炭 か ら 製 造 し た 石 炭 ス ラ リ ー を 我 が 国 に 運 搬 す る
ことが可能となる。また、現地での石油または天然ガス代替、将来的に
は 湿 式 石 炭 ガ ス 化 炉 に 導 入 し て SNG、 メ タ ノ ー ル な ど の 製 品 の 製 造 、 ス
ラリーエンジンへの適用も視野に入れている。
2.技術開発状況等
過
去
・1995~1996年
3 , 5 0 0 t /年 パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト 試 験 完
了
・ 2 0 1 0 ~ 2 0 1 3 年 1 0 , 0 0 0 t /年 の デ モ プ ラ ン ト に て JCF の
製造実証を実施(カラワング、インドネシア)
・2010~2014年
商 業 化 F/S 実 施 ( 製 造 サ イ ド 、 ユ ー ザ ー サ イ
ド)
現
状
・2014~2015年 デモプラントに発電設備を増設して発電実証を
実 施 中 。( カ ラ ワ ン グ 、 イ ン ド ネ シ ア )
今
後
・2016~2017年
商業化(目標)
・商業化原料石炭の絞り込み、プラントのスケールアップ、燃料の安定
製造及び安定発電(燃料としての信頼性向上)
3.
技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・低コスト化により、コスト競争力ある石炭水スラリー製品生産の達成。
・インドネシアでは石炭スラリー燃料はまだ実用化されておらず、政府においてボイ
ラー燃料としての登録、標準化。
・石油、ガス代替につながるエネルギー政策自体に関わる大型案件は、民間レベルの
FS 結 果 の み で 具 現 化 す る こ と が 難 し く 、イ ン ド ネ シ ア 政 府 の 指 導 、ア ド バ イ ス が 必 要 。
・低品位炭産炭国の豪州やインドネシア炭が対象となるので、これらの国との技術協
力関係整備が望まれる。
・原料ソースである低品位炭の権益確保が望ましい。
89
JCF プ ロ セ ス の 概 要
出 典 ; 日 揮 ( 株 ) ホ ー ム ペ ー ジ 、 http://www.jgc.co.jp/jp/04tech/04coal/jcf.html
出 典 ; JCOAL/CCT ワ ー ク シ ョ ッ プ 2012「 低 品 位 炭 の 熱 水 改 質 技 術 」
90
日揮(株)
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
環境対策
個別技術名
24
開発者
小分類
環境負荷低減技術
石炭ガス化スラグ有効利用
ク リ ー ン コ ー ル パ ワ ー 研 究 所 (現 在 常 磐 共 同 火 力 株 式 会 社 に よ り 買 収 )
1.技術開発概要等
概
要
・高 効 率 発 電 技 術 で あ る IGCC の 実 用 化 の 推 進 が 見 込 ま れ る 中 、IGCC 石
炭ガス化炉から排出されるスラグの有効活用の方向付けが重要である。
必要性
・ 地 球 温 暖 化 の 観 点 か ら 、 石 炭 利 用 に 際 し て 発 生 す る CO 2 を で き る だ け
少 な く す る こ と が 求 め ら れ て お り 、 今 後 高 効 率 発 電 技 術 で あ る IGCC の
実 用 化 が 想 定 さ れ る 。 ま た 、 現 時 点 で 2 5 0 MW 級 IGCC が 商 業 運 転 し
ている他、平成28年度以降、新たなプロジェクトも計画されておりス
ラ グ 排 出 量 の 増 加 が 見 込 ま れ る 。 近 年 セメント製 造 量 の 低 下 に よ り セ メ ン ト
原料としての有効利用については、拡大は難しい状況であり、セメント
原料以外の有効利用方策を確立する必要がある。
目
標
・土 木 建 築 用 資 材 と し て 、大 量 に 需 要 の あ る 砂 、砕 石 等 の 代 替 資 材 と し て
広 く 活 用 で き る よ う に 、石 炭 ガ ス 化 ス ラ グ の 特 性 を 整 理 し 代 替 材 と し て
の 機 能 改 善 技 術 を 開 発 し 、各 種 法 令 へ 合 致 さ せ 石 炭 ガ ス 化 ス ラ グ の 規 格
化を行う。
効
果
・従 来 型 微 粉 炭 火 力 発 電 に 比 べ て CO 2 発 生 量 を 約 2 0%削 減 す る IGCC 技
術の導入障壁の解消効果がある。
2.技術開発状況等
過
去
・ 1 9 8 3 ~ 1 9 8 8 年 噴 流 床 IGCC 技 術 の FS
賀 )、 基 本 プ ロ セ ス 開 発
・1985~1996年
・1997~2012年
2 t/d BP 試 験 ( 横 須
2 0 0 t /d パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト ( 勿 来 )
2 5 0 MW 実 証 プ ラ ン ト
現
状
・2013年
常 磐 共 同 火 力 で 商 用 開 始 ( 2 5 0 MWW)
今
後
・2017年
大 崎 ク ー ル ジ ェ ン 実 証 試 験 開 始 ( 1 6 6 MW)
・2020年代初頭
福 島 IGCC 運 転 開 始 ( 5 0 0 MW×2 : 計 画 中 )
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・IGCC 技 術 は 、日 本 固 有 の 技 術 と し て 官 民 一 体 と な り 昭 和 5 0 年 代 か ら 開 発 が 進 め ら
れてきた技術であり、現在実証試験まで成功裏に進捗してきた。導入にあたっては、
排出されるスラグが有効活用されることが、前提となっており廃掃法等の改正を含
め、関連法規、規格基準の整備が必要となる。
・現在商用運転中の常磐共同火力から排出されているスラグは、主にセメント原料と
再生路盤材の一部材料として有効利用されている。
・従来からセメント2次製品、舗装材等へスラグを砂の一部代替材として、使用可能
な 見 通 し を 得 て い る が 、規 格 化 さ れ て い な い も の は 自 治 体 等 の 標 準 仕 様 書 に 記 載 で き
ないため実用化には至ってない。
91
<発電出力当たり体積は半減>
舗 装 材 へのスラグの適 用 例
コンクリート二 次 製 品 へのスラグの適 用 例
出 典 : 平 成 1 8 年 JCOAL ク リ ー ン コ ー ル セ ミ ナ ー 「 石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 ( IGCC) 実
証機プロジェクトの進捗状況」 クリーンコールパワー研究所
92
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
環境対策
個別技術名
25 水 銀 対 応 型 乾 式 脱 硫 技 術
開発者
小分類
環境負荷低減技術
ジェイパワー・エンテック株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・活 性 コ ー ク ス を 用 い た 乾 式 排 煙 処 理 で 、脱 硫 、脱 硝 、脱 塵 、脱 ダ イ オ キ
シ ン と と も に 水 銀 除 去 を 行 う 。 商 標 名 「 ReACT」。
必要性
・ 2013 年 10 月 に 「 水 銀 に 関 す る 水 俣 条 約 」 が 締 結 さ れ 、 石 炭 火 力 発 電 、
産業用ボイラも大気への水銀発生源としてリストアップされたため、排
出 量 低 減 が 必 須 の 課 題 と な っ て き た 。 ま た こ れ に 先 立 ち 北 米 で は 2013
年 3 月 に MATS( Mercury and Air Toxics Standards) 規 制 が 施 行 さ れ 、
石 炭 火 力 発 電 所 に は 2016 年 度 よ り 0.013 lb/GWh(1.2 lb/TBtu)と 発 電 量
当たりの規制が始まる事となった。
・我 が 国 で は 既 に 各 石 炭 火 力 で 脱 硝・脱 硫・煤 塵 プ ラ ン ト が 完 備 さ れ て お
り、現状は規制に対応出来ているとの認識であるが、特にスペースの限
られた都市型発電プラントにおける総合排煙処理プロセスとして期待が
大きい。
目
標
・我 が 国 で は 水 銀 に 対 す る 大 気 基 準 は 存 在 す る が 、発 電 所 や 産 業 用 等 個 別
の 規 制 で は 無 い が 、 海 外 で の 売 込 の 為 に は 、 MATS 規 制 を ク リ ア す る と
いう触れ込みが必要。
効
果
・都市型発電プラントにおける省スペース多目的排煙処理として有効。
2.技術開発状況等
過
去
・1995年竹原二号機へ導入。
・2 0 0 5 年 、三 井 鉱 山 /JPOWER で ジ ェ イ パ ワ ー・エ ン テ ッ ク( 株 )設
立。
現
状
・国内脱硫プラントに採用。
今
後
・海外での水銀廃棄基準に合わせた除去性能及び、回収技術の組合せで
の提案。海外での技術信頼性の確立。
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・ 更 な る 低 コ ス ト 化 の 実 現 ( 耐 用 年 数 、 活 性 コ ー ク ス 再 生 な ど )。
・ 水 銀 回 収 技 術 の 改 良 、 特 に 2016 年 以 降 需 要 本 格 化 。
・相手国の水銀規制に対応した技術提案。
93
乾 式 脱 硫 プ ロ セ ス ( ReACT) の 概 要
■吸 着 工 程
吸 着 塔 には、活 性 コークス(AC)が充 填 されており、硫 黄 酸 化 物 、窒 素 酸 化 物 、ダストを処 理 しま
す。 硫 黄 酸 化 物 は、硫 酸 、または吸 着 塔 の前 段 で注 入 されたアンモニアと反 応 してアンモニア塩
となり、吸 着 塔 内 の活 性 コークスに吸 着 されます。 窒 素 酸 化 物 はアンモニアと活 性 コークスの触
媒 作 用 で還 元 されて窒 素 になります。 排 ガス中 のダストは、吸 収 塔 で捕 集 ・分 離 されます。 活 性
コークスは次に再 生 工 程 へ送られます。
a)脱 硫 反 応 SO2+1/2O2+H2O → H2SO4
<アンモニア共 存 時 >
SO2+1/2O2+H2O+NH3 → NH4HSO4
SO2+1/2O2+H2O+2NH3 → (NH4)2SO4
b)脱 硝 反 応 NO+NH3+1/4O2 → N2 + 3/2H2O (触 媒 反 応 )
NO+NHx-AC → N2 + H2O + OH-AC (ACの表 面 官 能 基 による脱 硝 )
■再 生 工 程
吸 着 塔 で硫 黄 酸 化 物 を吸 着 した活 性 コークスは、再 生 塔 に送 られて 400〜500℃ で加 熱 再 生 さ
れた後 、再 び吸 着 塔 に送 られて循 環 利 用 されます。
H2SO4 → H2O+SO3
NH4HSO4 →
(NH4)2SO4 →
H2O+SO3+NH3
H2O+SO3+2NH3
SO3+ C(AC) → SO2+1/2CO2 (ACの賦 活 )
3SO3+ 2NH3 → N2+3SO2+3H2O (アンモニアの分 解 )
出 典 :ジェイパワー・エンテック(株 )HP より
94
大 分 類 : 低 コスト化
中分類
環境対策
個別技術名
26 水 銀 除 去 触 媒 技 術
開発者
小分類
環境負荷低減技術
三 菱 日 立 パワーシステムズ株 式 会 社
1.技 術 開 発 概 要 等
概 要
・脱 硝 装 置 における SCR 触 媒 は以 前 から水 銀 を酸 化 する能 力 があることが
知 られていた。同 触 媒 の脱 硝 性 能 を維 持 した上 で水 銀 酸 化 性 能 を高 める
事 により、水 銀 酸 化 を加 速 し、電 気 集 塵 機 、脱 硫 装 置 における除 去 効 率 を
向 上 させた。
必要性
・2013 年 10 月 に「水 銀 に関する水 俣 条 約 」が締 結 され、石 炭 火 力 発 電 、産
業 用 ボイラも大 気 への水 銀 発 生 源 としてリストアップされたため、排 出 量 低
減 が必 須 の課 題 となってきた。またこれに先 立 ち北 米 では 2013 年 3 月 に
MATS(Mercury and Air Toxics Standards)規 制 が施 行 され、石 炭 火 力
発 電 所 には 2016 年 度 より 0.013 lb/GWh(1.2 lb/TBtu)と発 電 量 当 たりの
規 制 が始 まる事 となった。
・我 が国 では既 に脱 硝 ・脱 硫 ・煤 塵 プラントが完 備 されており、現 状 は規 制 に
対 応 出 来 ているとの認 識 であるが、海 外 発 電 所 で対 応 の必 要 があるプラン
トへは積 極 的 に売 込 を図 っている。
目 標
・我 が国 では水 銀 に対 する大 気 基 準 は存 在 するが、発 電 所 や産 業 用 等 個 別
の規 制 では無 いが、海 外 での売 込 の為 には、MATS 規 制 をクリアするとい
う触 れ込 みが必 要 。
効 果
・発 電 プラントにおける総 合 環 境 技 術 として既 存 SCR 触 媒 の入 れ替 えだけで
水 銀 除 去 も対 応 可 能 となる。
2.技 術 開 発 状 況 概 要 等
過 去
・2004~2007年 、触 媒 開 発 。
現 状
・~実 証 プラントでの製 品 により実 機 プラントでの試 験 を重 ね、おおむね目 標
を達 成 。
・北 米 では複 数 の受 注 達 成 。
今 後
・産 炭 国 での水 銀 廃 棄 基 準 に合 わせた除 去 性 能 及 び、回 収 技 術 の組 合 せ
での提 案
3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何が必 要 か
・更 なる低 コスト化 の実 現 (耐 用 年 数 、触 媒 再 生 など)。
・水 銀 回 収 技 術 の改 良 。
・相 手 国 の水 銀 規 制 に対 応 した技 術 提 案 。
95
大 分 類 : 低 品 位 炭 チェーンの確 立
中分類
-
個別技術名
27
開発者
小分類
-
水素チエーン確立
川崎重工業株式会社
1.技術開発概要等
概
要
・低 廉 な 褐 炭 を 原 料 と し て 、水 素 製 造 プ ラ ン ト( 褐 炭 前 処 理 、褐 炭 ガ ス 化 及
び 水 素 精 製 技 術 )で 水 素 を 製 造 し 、長 距 離 輸 送 に 適 し た 液 体 水 素 の 形 態 で
日 本 へ 輸 送 す る 、 な お 、 分 離 さ れ た CO 2 は 圧 縮 し て 貯 留 す る 。 こ う し て 、
褐 炭 を CO 2 フ リ ー 燃 料 に 転 換 し て 日 本 に 持 ち 込 む 。
必要性
・CO 2 排 出 量 を 2050 年 に 80%削 減 す る に は 水 素 の 大 幅 な 輸 入 拡 大 が 必 要 で
ある。
目
標
・ 2030 年 時 点 で の 日 本 C I F コ ス ト を 30 円 /Nm3。
効
果
・ 自 主 エ ネ ル ギ ー ( 褐 炭 権 益 含 む ) 調 達 向 上 と CO2 排 出 量 削 減 の 両 目 標 を
達成できる。さらに、水素産業の競争力強化を図ることができる。
2.技術開発状況等
過
去
・2010~2013年 パイロット水素チェーン概念設計、商用化水素チ
ェ ー ン FS。
・褐 炭 か ら 水 素 製 造 、水 素 液 化 、水 素 輸 送・貯 蔵 、水 素 ガ ス タ ー ビ ン 等 の 利
用技術の研究開発。
現
状
・水素チェーン技術の確立、資金、事業者を構築中。
今
後
・2014~2019年
パイロットチェーンの設計、建設
・ 水 素 製 造 ( 10t/day)・ 水 素 液 化 ( 10t/day)、
・2017年
・ 水 素 輸 送 船 ( 200t )・ 水 素 発 電 所 (7MW)
国内で、水素輸送船の水素揚荷・積荷試験開始
・2019年
・2020~2024年
日本-豪州間でパイロットチェーン運転開始
実証チェーンの設計、建設
・ 水 素 製 造 ( 770t/day)・ 水 素 液 化 ( 770t/day)
・ 水 素 輸 送 ( 11,000t) ・ 水 素 発 電 所 ( 650MW)
・2025年
・2030年
実証チェーン運転開始
商用水素チェーン運転開始
3.技術開発、または、成果普及のために何が必要か
・褐炭から水素製造プラント開発:
・褐炭前処理技術(原料褐炭予乾燥・含有水分有効利用)
・褐炭ガス化技術(豪州褐炭への適応最適化)
・水素精製技術(CCS及び水素液化に対応したシステム最適化)
・水素液化技術:高効率、大型化
・液化水素輸送・貯蔵技術:ローディングシステム、低ボイルオフ、大型化の技術
・水素輸送船やローディングシステム等、各種液水機器の規格作り
96
CO 2 フリー水 素 チェーンの概 要
日本
豪州
燃料電池自動車
褐炭ガス化
水素製造
水素液化
770t/day
積荷基地
水素輸送船
揚荷基地
水素発電
CCPP
CIF
実証チェーン 2025運転開始
CO2 貯留
10t/day
コージェネレーション
水素液化
積荷基地
水素輸送船
燃料電池・ガスタービン
ガスエンジン
揚荷基地
製鉄所
水素還元製鉄
パイロットチェーン 2017-19運転開始
石油精製所
脱硫用水素
図 1 CO2フリー水素チェーンの概要(パイロットチェーンと実証チェーン)
図 2 豪州政府及びビクトリア州政府が推進するカーボンネット計画と接続
褐炭前処理技術
ガス化炉のタイプ
により①②に大別
褐炭
褐炭前処理
①スラリー
②乾燥
ガス化技術
水素精製技術
CO, CO2, H2, H2O
ガ
ス
化
炉
H2O
脱塵・脱硫
酸素 酸素
分離
H2
CO2 , H2
シフト
反応器
空気
CO2
分離装置
水素
液化設備
CO2回収
CO2 貯留
灰分
図 3 褐炭由来水素製造技術
出典:川崎重工業社(株)提供資料
97
大 分 類 : 低 品 位 炭 チェーンの確 立
中分類
小分類
個別技術名
28 石 炭 ガス化 合 成 天 然 ガス(SNG チェーン確 立 )
開発者
三菱重工業株式会社
1.技 術 開 発 概 要 等
概 要
・ 石 炭 をガ ス 化 した 石 炭 ガスを精 製 して 触 媒 合 成 に よ り 合 成 天 然 ガ ス( SNG:
Substituted Natural Gas)を製 造 するシステム。石 炭 として低 品 位 炭 、特 に褐
炭 を原 料 してガス化 することにより、これまで未 利 用 であった資 源 の活 用 がで
きる。また、製 造 工 程 において排 出 される CO 2 を回 収 ・EOR/貯 留 を行 うことに
より、SNG 利 用 時 の CO 2 排 出 低 減 が図 れる。
必要性
・産 炭 国 の未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 から、クリーンな燃 料 である SNG を製
造 し、産 炭 国 のエネルギー需 給 緩 和 や環 境 対 策 、及 び我 が国 へのエネルギー
の安 定 供 給 確 保 に繋 げるために本 技 術 が必 要 である。
目 標
・製 品 SNGのターゲット価 格 は10US$/mmBtuである。
・FS試 算 結 果 :CO 2 クレジット単 価 10ユーロ/t- CO 2 (= 15 $/t- CO 2 )程 度 を考 慮 し
た場 合 、SNG価 格 はターゲットを下 回 る。
効 果
・未 利 用 な低 品 位 炭 ・低 品 質 炭 が有 効 活 用 できることから、省 資 源 化 や我 が国
へのエネルギーの安 定 供 給 確 保 が図 れる。
・製 造 工 程 において排 出 されるCO 2 を回 収 ・貯 留 を行 うことにより、SNG利 用 時
のCO 2 排 出 低 減 が図 れる。
2.技 術 開 発 状 況 等
過 去
・インドネシアを対 象 とした FS を行 い、プラントの仕 様 検 討 を行 うと共 に、適 用 候
補 炭 であるインドネシア褐 炭 によるガス化 検 証 を完 了 した。
・また、プロジェクトスキームの検 討 を行 い、現 地 政 府 の協 力 のもと、ステークホ
ルダー 候 補 の 石 炭 供 給 会 社 は 低 品 位 炭 の 長 期 供 給 、 SNG オフテイカ ーは
SNG の長 期 引 取 り契 約 に興 味 を示 すものの、石 油 会 社 と CO 2 の引 取 りにつ
いて合 意 形 成 に至 らず、プロジェクト実 施 はホールド。
現 状
・CO 2 の引 取 りを前 提 としないプロジェクト実 施 について検 討 中 。
今 後
・プロジェクトコスト低 減 を進 め、産 炭 国 での商 用 プラント建 設 、運 転 による技 術
普 及 を行 う。
3.技 術 開 発 、または、成 果 普 及 のために何が必 要 か
・更 なるコストダウン
量 産 効 果 によるガス化 炉 コストダウン。適 用 炭 種 に応 じたシステムの最 適 化 。
・プロジェクトスキームの確 立
プロジェクト成 立 のためには、CO 2 、SNGのオフテイクの長 期 契 約 が必 要 であり、行 政 指 導 を
含 めたインドネシア政 府 の取り組 みが必 要 。
・海 外 へのインフラ輸 出 の整 備
SNGパイプライン、CO 2 パイプライン等 の整 備 を含 めた、プロジェクトの支 援 。
98
図 1 イ ン ド ネ シ ア 褐 炭 を 利 用 し た SNG 合 成 プ ラ ン ト の フ ロ ー 例
図 2 イ ン ド ネ シ ア 南 ス マ ト ラ 島 に お け る SNG 合 成 プ ラ ン ト 候 補 サ イ ト 例
出典:三菱重工(株)提供資料
99
第 3 章 まとめ
(1)石炭はその供給安定性、価格安定性から世界の一次エネルギーの主役であり、我が
国 に お い て も 一 次 エ ネ ル ギ ー の 約 2 割 を 担 っ て お り 、2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に 続 く
原 子 力 発 電 比 率 低 下 及 び 地 球 温 暖 化 対 策 と し て の CO 2 削 減 の 両 面 か ら 、政 府 は 抜 本
的 な エ ネ ル ギ ー 基 本 戦 略 の 見 直 し を 進 め て い る が 、石 炭 火 力 発 電 所 を は じ め と し た
石 炭 の 一 層 の 効 率 的 使 用 は 必 要 不 可 欠 な 課 題 で あ り 、我 が 国 が 世 界 を リ ー ド し て い
る ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ( CCT)は 常 に 進 む べ き 方 向 を 明 確 に し な け れ ば な ら
ない。
こ の 見 地 に 立 ち 、環 境 保 全 、 石 炭 資 源 確 保 を ベ ー ス と し て 、 今 後 の 石 炭 技 術 開 発 を
取 り 巻 く 背 景 を 念 頭 に 、 2050 年 ま で の CCT 開 発 の 指 針 ・ 開 発 技 術 を 一 葉 で 網 羅 的
に 示 し 、 我 が 国 CCT 開 発 の 道 筋 を 示 し 、 開 発 促 進 を 目 的 と し て 本 ロ ー ド マ ッ プ を
作成した。
( 2 ) IEA、 欧 州 、 米 国 等 で は 、 二 酸 化 炭 素 排 出 規 制 強 化 の 動 き が 、 具 体 的 排 出 基 準 を 挙
げ な が ら 進 ん で い る 。例 え ば 、米 国 で は 633 g-CO2/kWh、英 国 で は 450 g- CO 2 /kWh
の排出規制値である。
こ れ ら の 動 き に 対 し て 、石 炭 火 力 技 術 の 進 化 に よ る 高 効 率 化 で 対 応 す る が 、更 な る
削 減 は 、 排 出 さ れ た CO 2 自 体 を 削 減 す る 技 術 の 実 用 化 対 応 が 必 要 に な っ て く る 。
(3)石炭は上記の通り供給、価格安定性から、今後も極めて安定した割合(3割前後)
で消費され続けると予想される。
石 炭 は CO 2 排 出 量 が 多 い こ と 、更 な る 安 定 供 給 が 必 要 な こ と 、CO 2 以 外 で も 環 境 へ
の 影 響 が 大 き い こ と か ら 、 こ れ ら の 課 題 を 克 服 す る 形 で CCT の 開 発 を 進 め る 必 要
が あ る 。従 っ て 地 球 温 暖 化 対 策 の CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等 で 示 さ れ た
社 会 的 な 目 標 を 達 成 す る た め に CCT 開 発 の 分 野 に お い て 果 た す べ き 課 題 が あ り 、
そ れ ら を 達 成 す る た め の 開 発 目 標 は 大 き く 「 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 」、「 低 品 位 炭 利
用 」、「 環 境 対 策 」 の 3 つ と な っ て い る 。
( 4 ) ま ず 、「 高 効 率 発 電 ・ 低 炭 素 化 」 に つ い て 。 日 本 の 石 炭 火 力 の 発 電 効 率 は 、 USC で
蒸 気 温 度 600℃ 、発 電 炭 効 率 43%HHV と 世 界 最 高 レ ベ ル を 達 成 し て い る 。こ の USC
の 蒸 気 温 度 700℃ を 実 現 し A-USC に 置 き 換 え れ ば 、 石 炭 の 消 費 量 及 び CO 2 発 生 量
と も に 10%以 上 抑 制 で き る と 考 え ら れ て お り 、耐 熱 材 料 や 機 器 の 開 発 が 進 め ら れ て
いる。
既 存 石 炭 火 力 発 電 技 術 に 比 べ 熱 効 率 が 高 く 、CO 2 排 出 量 の 大 幅 な 低 減 が 見 込 ま れ る
IGCC(石 炭 ガ ス 化 複 合 サ イ ク ル 発 電 )技 術 開 発 や 、 IGFC(石 炭 ガ ス 化 燃 料 電 池 複 合 サ
イ ク ル 発 電 )技 術 開 発 も 期 待 さ れ て い る 。
一 方 、 2050 年 で の CO 2 ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 化 を タ ー ゲ ッ ト と し た CO 2 回収 技術 は、
酸 素 燃 焼 、ケ ミ カ ル ル ー ピ ン グ 、CO2 循 環 型 IGCC 等 、多 岐 に わ た る 分 野 で の 技 術
開発が世界中で進められており、我が国においても勢力的に技術開発が進んでいる。
( 5 )次 に 、
「 低 品 位 炭 利 用 」に つ い て 。高 水 分・低 発 熱 量 で 自 然 発 火 性 が 高 い た め 、利 用
100
が 限 定 さ れ て い る 褐 炭 や 亜 瀝 青 炭 等 の 未 利 用 低 品 位 炭 を 低 コ ス ト で UBC、JCF 等 に
改 質 あ る い は 液 状 化 し て 、産 炭 国 内 或 い は 日 本 国 内 市 場 に 供 給 す る こ と を 目 的 に 技
術開発を完了し、商用化へ向けた低コスト化の検討が進んでいる。
加 え て 、こ れ ら の 未 利 用 炭 を ガ ス 化 し( TIGAR、ECOPRO 等 )、燃 料 、化 学 原 料 等 、
天然ガス、石油の代替とする技術開発も進んでいる。
(6)3つ目の「環境対策」について。我が国の厳しい環境規制の下で開発が進められて
きた環境負荷物質低減技術は、今後各国において規制強化が進む際に、その対策技
術のデファクトスタンダードとなる可能性が高い。ただし、規制が施行され対象と
なり得る国、対象となる規制物質等は未だ限定的であり、明示的にメルクマールを
設定し抜本的な問題解決を目指すには、ニーズや技術の発掘、整理等、現状把握の
段階も含めた検討が必要である。
( 7 ) CO 2 削 減 目 標 や エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 等 で 示 さ れ た 社 会 的 な 目 標 を 達 成 す る た め に
CCT 開 発 の 分 野 に お い て 果 た す べ き 課 題 が あ り 、そ れ ら を 達 成 す る た め の 3 つ の 開
発 目 標 に つ い て 述 べ て き た が 、こ れ ら 3 つ の 開 発 目 標 の 下 に い く つ か の 開 発 テ ー マ
が 存 在 し 、 そ れ ぞ れ の テ ー マ が 成 果 を 上 げ る こ と で 上 位 目 標 を 目 指 し て い く た めに
は 、 漫 然 と 進 め て い く の で は な く 、 そ れ ぞ れ の 成 果 が 有 機 的 に 連 携 す る よ う に 技術
の シ ー ズ 、 時 間 軸 等 を 考 慮 し た 現 実 的 な 中 間 的 メ ル ク マ ー ル を 設 定 し 、 そ の 達 成を
目指していく必要がある。
(8)これらの中間的メルクマールの設定は、技術開発を体系として進めていく上で不断
の 精 査 が 必 要 で あ る 。そ の た め に は 、我 が 国 の 技 術 の シ ー ズ 、他 国 の 技 術 開 発 動 向 、
世 界 的 な CO 2 対 策 ・ CCS 等 の 方 針 、 産 炭 国 の 国 情 等 の 検 討 要 素 が 多 く 、 継 続 的 に
フォローしていかなければならない。
今 後 は 、上 記 の 状 況 も 踏 ま え 、さ ら に ク リ ー ン コ ー ル 技 術 開 発 目 標 の 体 系 の 内 容 を
精 査 し 、 中 間 的 な メ ル ク マ ー ル を よ り 定 量 的 に 精 緻 化 し 、 ま た 、上 位 目 標 の 達 成 に
向けて不足の部分を補完する技術開発や実証事業を必要なタイミングで導入して
いかなければならない。
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技術開発委員会
委員長
九州大学
委員名簿
名誉教授
持田
勲
技術開発部
石炭事業部
小林
山下
尚人
亨
幹事
電源開発㈱
出光興産㈱
石炭・環境研究所
新日鐵住金㈱
技 術 開 発 本 部 プロセス研 究 所 プロセス技 術 部
(一 財 )電 力 中 央 研 究 所 エネルギー技 術 研 究 所 燃 料 高 度 利 用 領 域
小水流 広行
白井 裕三
㈱ IHI
エネルギー・ プラントセクター
氣駕
尚志
川崎重工業㈱
技術開発本部
原田
英一
三 菱 日 立 パワーシステムズ㈱ エンジニアリング本 部 電 力 プロジェクト総 括 部
橋本
貴雄
三 菱 マテリアル㈱
資 源 ・ リサイクル事 業 本 部 資 源 事 業 部 資 源 技 術 部
重吉
八郎
石 炭 部 石 炭 プロジェクト
エネルギー・環 境 事 業 部 技 術 開 発 室
西片
本郷
教通
孝
JFEスチール㈱
コークス技 術 部
新 日 鉄 住 金 エンジニアリング㈱ 技 術 本 部 技 術 開 発 第 二 研 究 所
花岡
加藤
浩二
健次
㈱神戸製鋼所
技 術 開 発 本 部 石 炭 エネルギー技 術 開 発 部
出口
哲也
中国電力㈱
電源事業本部 火力機械技術担当
二井
崇志
千代田化工建設㈱
環 境 プロジェクト第 2 セクション
服部
圭輔
電気事業連合会
技術開発部
田中
泰敏
梶谷
史朗
委員
伊藤忠商事㈱
宇部興産㈱
(一 財 )電 力 中 央 研 究 所 エネルギー技 術 研 究 所
石炭開発部
高効率発電領域
東京電力㈱
フュエル&パワー・ カンパニー火 力 部 火 力 エンジニアリングセンター 山 形
憲
㈱ IHI
エネルギー・ プラントセクター
田村
雅人
日揮㈱
第 1 事 業 本 部 電 力 ・ 水 事 業 推 進 部 JCF グループ
須山
千秋
日揮㈱
第 1 事 業 本 部 電 力 ・ 水 事 業 推 進 部 JCF グループ
三 菱 商 事 RtM ジャパン㈱ 一 般 炭 本 部 一 般 炭 プ ロ ジ ェ ク ト 室
大谷
吉田
登蔵
潤一
三菱重工業㈱
釧 路 コールマイン㈱
藤村
市原
皓太郎
義久
佐川
杉山
篤男
好隆
技術総括本部
保安生産部
総合研究所
燃焼研究部
(一 財 )日 本 エネルギー経 済 研 究 所 化 石 エネルギー・ 電 力 ユニット 石 炭 ・ ガスサブユニット
双日㈱
東北支店
(一 財 )エネルギー総 合 工 学 研 究 所
㈱ ケーコール/K-Coal Co.,Ltd.
㈱ 東 京 エネシス
若築建設株式会社
理事
社長
小野崎 正樹
牧野 英一郎
火力・産業本部
東京支店
長井
星野
102
輝雄
幸弘
事務局
(一 財 )石 炭 エネルギーセンター 技 術 開 発 部
部長
橋本
敬一郎
技 術 業 務 グループ長
上席調査役
寺前
原田
剛
道昭
主任技師
河﨑
照文
以上
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