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平和への第一歩は 身近な場所から
内戦が残した傷跡 2006年 月 日。ネパールの ロールプレイを通じて、対立や暴力の構造・対処法を実践的に学ぶ。このほかにも、若者の役 割、 民主主義、 グローバリゼーションといった、幅広いテーマを扱ったディスカッションも行われる 人々にとって、この日は特別な1日 となった。政府と武装革命勢力のマ オ イ ス ト︵共 産 党 毛 沢 東 主 義 派︶と の間で続いていた 年間に及ぶ内戦 に終止符が打たれ、ついに和平合意 が締結されたのだ。内戦中には多く の 家 が 破 壊 さ れ、土 地 が 強 奪 さ れ、 中には強制的に戦闘に駆り出された 若者も少なくなかった。一般市民を 万 人 近 く が 故 郷 を 追 わ れ た。 含む約1 万3000 人が犠牲とな り、 だからこそ、人々はこの日の知らせ あんど NPO法人懐かしい未来 壊⋮。憎しみが憎しみを呼ぶ負の連 繰り返された襲撃、暴行、虐殺、破 え る こ と の な い 深 い 傷 跡 を 残 し た。 え、望ましい社会を自ら生み出して 望や怒り、不安、無気力感を乗り越 代 表 の 鎌 田 陽 司 さ ん。 ﹁将 来 へ の 絶 き 場 を 失 っ て い ま す﹂と 話 す の は、 ることに深く傷つき、仕事もなく行 が変わったことへの驚きの声が寄せ などからも、彼らの態度やふるまい に喜ぶ。また、保護者や学校の教師 の変化や気付きを参加者たちは大い プログラム終了後、こうした自ら る。 いった平和教育ツールも作成してい ショップのマニュアルやポスターと ムを提供している。さらに、ワーク シャルワーカーにも同様のプログラ 呼ばれ、学校や地域に戻り、 ﹁平和﹂ ロ モ ー タ ー︵平 和 の つ く り 手︶ 〟と す﹂と鎌田さん。 が社会を動かす可能性があるんで ていくもの。力を合わせれば、誰も った夢を口にするようになった若者 た い﹂ 。以 前 は な か な か 聞 か れ な か たち。その志の源となっているのは、 ﹁学んだことを伝えたい﹂ ﹁起業し され、平和のための啓発やそのため 何 に も 増 し て、 〝本 当 の 平 和 を つ く プを行う。また、彼らが中心となり、 をテーマとした授業やワークショッ から、身近な人とともにつくり出し ﹁平 和 は、自 分 た ち の 身 近 な 場 所 鎖が、容易には消えない〝暴力の文 ﹁カ ー ス ト が 低 く て も、寺 院 で の 研修に参加した若者は〝ピースプ られているという。 の差の拡大、混迷を深める政治など を背景とした、若者によるギャング 活動やまん延するドラッグ、犯罪な ど、さまざまな社会不安が次々と噴 の ニ ュ ー ス レ タ ー の 発 行 と い っ た、 り出す自らの力〟に気付いた喜びで 自主的な青年グループが各地で結成 身近にできるさまざまな活動を展 あるに違いない。 礼拝に参加する権利はある!﹂ 参加者が、被差別者の処遇をめぐ 開。これに賛同した仲間の数は、4 出している。 って言い争う住民に扮したロールプ 00人近くに上る。また懐かしい未 みなもと パール第二の都市、ポカラ。この街 レイが行われていた。これは、日常 ﹁昔からのしきたりを守らないと、 を拠点に、すさんだ社会の在り方に によくあるいさかいの事例を通して 混乱するだけだ!﹂ 一石を投じようと、奮闘する人々が みと、美しい湖が観光客に人気のネ いる。平和教育プログラムの実践を トレーニングを修了した教師やソーシャルワーカーたちと鎌 田さん (中列左端) 。現地のNGOと協力しながら作るカリキ ュラムは、回を重ねるごとに改良されている 対立や暴力の構造を認識し、仲介者 としていかに効果的な解決策を見い だしていくかを体験するもの。彼ら る、 NPO法人﹁懐かしい未来﹂ 。 年よりJ ICAの草の根技術協力事 は、2週間のワークショップで、自 けることの大切さを学んだ﹂ 共感すること、周りの言葉に耳を傾 った自分が、他人の痛みや悲しみに ﹁周 囲 へ の ね た み や 怒 り ば か り だ 直す作業を通して多くを学ぶ。 者への共感など、自らの心を見つめ 怒りやストレスのマネジメント、他 己 の 認 識 と 肯 定、人 生 目 標 の 設 定、 業 を 通 じ、ス ラ ム に 住 む 少 年 た ち、 ストリートチルドレン、地域の青少 年活動のリーダー、高校生や大学生 など、さまざまなバックグラウンド を持つ 代後半の若者たち約 人を 地のNGOと連携しながら平和教育 ポカラ周辺の3つの郡から集め、現 20 プログラムを定期的に実施してい る。 プログラムで学んだことをもとに、 「 開発と平和」 をテーマに 高校で出張授業を行う 市内から望むヒマラヤ山脈の山並 平和教育の輪を 広げる若者たち い く た め の 力 を つ け て ほ し い﹂と、 まりを後押しする、学校教師やソー 来では、そんな若者たちの活動の広 トレーニングの最後に、 自分の中にあった 負の部分を記した紙を集め、火をつけて 燃やす参加者。2週間にわたり寝食を共 にした若者たちの間には、平和の担い手 としてのかけがえのないきずなが生まれる 活動の目的を説明する。 め、謝れるようになった﹂ 若者たちが「平和」 をテーマに描いた 絵で作成したポスター 化〟として今も残り、社会全体を支 発展せず、むしろ暴力が広がってい ﹁人 前 で も 自 分 の 非 や 間 違 い を 認 平和への第一歩は 身近な場所から ﹁若 者 た ち は、社 会 が 思 う よ う に ポカラ カトマンズ 配している。厳しい経済状況、貧富 に安堵し、終戦を祝った。 ネパール 通して若者の健全な精神の育成を図 09 だが一方で、内戦は彼らの心に消 長年続いた内戦の影響で “暴力の文化” が広がったネパール。 自らの心を見つめ直す平和教育プログラムが、 若者たちの平和な明日を生み出す力を育てている。 毎 朝の日課とし て、 ヨガに取り組 む参加者 21 11 国 際 協 力 の 担 い 手 た ち インド 11 22 May 2010 May 2010 23 10 10