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知財情報局9月号

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知財情報局9月号
知的財産の『今』を伝える
知財情報局 9月号
発行日 2007年9月 Vol. 23
発行 株式会社ブライナ 知財情報局 http://braina.com
〒338-0013 埼玉県さいたま市中央区鈴谷2丁目794番
TEL 048-851-5324 FAX 048-851-5326
シャープ、液晶の特許侵害でサムソン電子を米国で提訴
シャープは8月7日、韓国のサムソン電子とその関連会社のサムソン電子アメ
リカ、サムソンテレコミュニケーションアメリカがシャープの特許を侵害したと
して、
8月6日
(米国東部時間)米国テキサス州東部地裁に提訴したと発表した。
(※)
(※)の続き
シャープは、サムソン電子が製造し米国で販売している液晶
モジュール、液晶モジュールを組み込んでサムソンアメリカが
米国で販売している液晶テレビ・液晶モニターや、サムソンテ
レコミュニケーションアメリカが米国で販売している携帯電話
などが、シャープの液晶関連特許を侵害していると主張、損害
賠償と製品の輸入・販売の差止要求と陪審員裁判を求めている。
対象の米国特許5件の番号と概要は以下の通り。
・USP4,649,383:コントラストの優れた画像表示を実現する LCDの駆動方法
・USP5,760,855:対向電極と接続する静電気対策用の配線を備
えた液晶表示装置
・USP6,052,162:画素内の光利用効率を向上させる電極配置構
造を有する液晶表示装置
・USP7,027,024:表示品質を向上させる液晶の駆動装置
・USP7,057,689:位相差補償により広視野角を実現する光学
フィルムを備えた液晶表示装置
シャープは、液晶関連特許のライセンスについてサムソン電
子と以前から話し合いをしてきたが、現状では話し合いでの解
決は困難と判断し、今回の提訴に至ったとしている。
ソニーと3M、
リチウムイオン電池の特許訴訟で和解
ソニーと米3Mは7月30日、3Mが複数の企業を相手に提
起していた、リチウムイオンバッテリーのカソード技術に関す
る特許侵害訴訟に関して、和解に至ったと発表した。
3Mは、今年3月、自社のリチウムイオンバッテリーのカソ
ード技術に関する特許が侵害されたとして、松下、ソニー、日
立、レノボなどを、ミネソタ州連邦地裁および米国際貿易委員
会(ITC)に訴えており、このうち松下電器とは、既に6月に
和解が成立していた。
3Mは、今回の和解により、ソニーに対して、リチウムイオ
ンバッテリーのカソード技術に関して、全世界でのライセンス
を供与するが、和解金を含め、その他の和解条件は非公開とな
っている。
インド高裁、改良薬に特許権認めず、
ノバルティス敗訴
インドのチェンナイ高裁は8月6日、スイス製薬大手ノバル
ティスの「従来の医薬品を改良した新薬に特許を与えないイン
ドの2005年改正特許法は不当」との訴えを棄却した。
インドの改正特許法には、既存の薬の成分を改良しただけで
は新しい発明として特許は与えないとの条項がある。ノバルテ
ィスは、慢性骨髄性白血病などの治療用抗がん剤「グリベック」
の特許申請がこの条項により却下されたことから、
この条項は、
世界貿易機関(WTO)の貿易関連知的所有権協定(TRIP
S)やインド憲法に反するとして、インド政府を相手どって、
2006年5月にチェンナイ高裁に提訴していた。
ノバルティスは8月7日、「この判決は、より優れた医薬品
を患者に供給するために必要な投資に水を差す」として、WTO
が最近の通商政策報告の中で、インドに対し知的財産システム
の改善を求めていることを指摘、判決は承服しがたいとのコメ
ントを発表した。しかし、最高裁への控訴は行わない意向も示
している。
一方、国境なき医師団(MSF)は8月7日、「もし、ノバ
ルティスの主張を支持する判決が下されていたら、途上国の病
気治療に不可欠なインドの安価な医薬品製造は大幅に制限され
た」として、「この重要な判決は、途上国の患者に安価な医薬
品を届ける取組みにとって大いなる勝利であると考える」との
コメントを発表した。
米政府、ITCのクアルコムチップ搭載
端末輸入禁止を是認
米政府は8月6日、ブロードコム特許の侵害を理由とした、
ITC(米国際貿易委員会)によるクアルコム製チップ搭載端
末の輸入禁止措置について、大統領による拒否権を発動せず、
これを認める決定を下した。
ITCは6月7日に、ブロードコムの提訴に基づく調査の結
果として、特許侵害を理由にクアルコム製チップおよびチップ
搭載端末(6月7日以前に契約済みのものを除く)の輸入・販
売の禁止を命じていたが、この措置に対しては60日以内に大
統領が拒否権を発動することが可能で、クアルコムや携帯事業
各社は拒否権の発動を要請していた。
この決定を受けて、ブロードコムは、「ITCの措置に介入
しないとの、米通商代表部のシュワブ代表の決定に感謝する」
として、「この決定は、ブロードコムだけでなく、すべての米
国企業の知的財産権の保護を強化し、その侵害責任を逃れよう
とする企業に明確なメッセージを送る」とのコメントを発表し
た。
一方、クアルコムは同日、改めて、ブロードコム特許の無効
と非侵害を主張した上で、連邦巡回控訴裁に申し立てる方針を
発表した。
なお、この禁止措置の影響を受けるとみられていた米ベライ
ゾン・ワイヤレスは7月19日、クアルコム製チップ搭載端末
の輸入禁止措置を避けるため、ブロードコムと特許ライセンス
契約を結んだと発表している。
米地裁、MP3訴訟でマイクロソフトに
対する陪審評決を覆す
仏通信大手のアルカテル・ルーセントがMP3技術に関する
特許を侵害されたとして、米マイクロソフト(MS)を訴えて
いた訴訟で、サンディエゴ連邦地裁は8月6日、MSに15億
2000万ドルという過去最高の支払いを命じた陪審評決を覆す判
決を下した。MSが同日、判決文を公開したことで、明らかに
なった。
同地裁の陪審は今年2月、マイクロソフトの動画・音声再生
ソフト「ウィンドウズ・メディアプレーヤー」がアルカテル・
ルーセントのMP3に関する特許権2件を侵害していると結論
づけていた。
しかし、連邦地裁のブリュースター判事は、マイクロソフト
知財情報局
は、1件の特許は侵害しておらず、もう1件は、アルカテル・ルー
セントとの特許の共同所有者である独フラウンホファー社からライ
センスを取得しているとの判断を示し、損害の裁定は有効ではない
との判決を下した。
上半期の偽ブランド品押収、
過去最多の33万件、中国から急増
米大リーグ球団「シカゴ・カブス」のロゴがスイス系銀行の商標
と類似しているとして、商標登録を認めなかった特許庁の審決を不
服とし、大リーグの知的財産を管理する「メジャーリーグプロパテ
ィーズインコーポレーテッド」が、審決の取り消しを求めた訴訟で、
知財高裁は8月8日、特許庁の審決を取り消し、大リーグ側勝訴の
判決を言い渡した。
問題となったロゴは、円の中に「カブス(CUBS)」の頭文字
「C」を大きく描き、その中に「UBS」と書いたデザインで、
2000年に出願されたが、2002年に拒絶査定となり、これを不服とし
た審判請求も2006年10月に棄却されたことから、大リーグ側が知
財高裁に控訴していた。
特許庁は、熱狂的なファン以外は「シカゴ・カブス」のロゴは知
らず、「ユービーエス」との呼称も生じ、「スイス・ユニオン銀行
(UBS)」の商標と類似しているとして、商標登録を認めなかっ
た。
この特許庁の判断に対し、知財高裁の飯村敏明裁判長は「近年、
国内のプロ野球から移った日本人選手の活躍で大リーグへの関心は
高まり、ロゴは相当知られている」として、「カブス」と認識する
のが自然で「ユービーエス」の呼称は生じないと判断、特許庁の審
決を取り消す判決を下した。
警察庁は8月24日、2007年上半期におけるヤミ金融、産廃不法
投棄、知的財産権侵害などの主な生活経済事犯の検挙状況を公表し
た。
このうち、知的財産権侵害事犯の検挙事件数は、昨年同期に比べ
わずかに減少し252件だったが、検挙人員は増加し、2000年の現
行統計開始以降、上半期としての最多の419人となった。また、
大量の偽ブランド品の販売目的所持や密輸入事件の検挙が相次ぎ、
偽ブランド品の押収点数は、上半期だけで、最近5年で最多の昨年
1年間を上回る約33.1万件となった。
偽ブランド品などの商標法違反事件では、依然として押収品の大
半がアジアからの密輸入で、特に昨年以降、中国からの密輸入が増
加し約14.2万件と韓国からの約11.5万件を上回った。偽ブラ
ンド品は約68%が海上貨物、約28%が航空貨物で持ち込まれ、
販売形態は、店舗販売が約38%、インターネット・オークション
利用販売が約26%、露店販売が約13%となっている。
著作権法違反事件では、
海賊版の押収点数は上半期最高の約13.5
万件となり、依然として会社員、学生等の一般PCユーザーによる
海賊版DVD等の複製、販売が跡を絶たず、販売形態では、インタ
ーネット・オークションが約46%を占めている。
ネットワーク利用事犯も年々増加し、検挙事件の約38%となり、
その大半がインターネット・オークションを利用した偽ブランド品・
海賊版の販売事犯となっている。被疑者の国籍別では、日本人が大
半だが(商標法違反約73%、著作権法違反約83%)、偽ブラン
ド品の街頭販売では、外国人によるものが約46%で、うち約67%
がイスラエル人によるものとなっている。
【参考】平成19年8月8日判決言渡 平成19年(行ケ)第10061号審決取
消請求事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070809104229.pdf
【参考】平成19年上半期における主な生活経済事犯の検挙状況に
ついて
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan6/20070824.pdf
UNIXの著作権者はノベル、
米地裁、SCOの主張退ける
その他
シカゴ・カブスのロゴ、
UBSとは類似せず、知財高裁
UNIXの著作権保有者をめぐる訴訟で、米ユタ州の連邦地裁は
8月10日、UNIXの正当な著作権保有者はSCOグループでは
なく、ノベルであるとの判断を示した。
UNIXは、もともとAT&Tによって開発されたOSであるが、
SCOは同OSをノベルから1995年に買収したと主張。それを根拠
にしてUNIXから派生した Linuxのユーザーには、同社からのラ
イセンスが必要として攻勢をかけていた。また、IBMが同社との
UNIXソフトウェアのライセンス契約に反して、UNIXコード
の一部を Linuxのコミュニティーに不正に提供したとしてIBM
に対する訴訟を提起していた。
連邦裁判判事は今回、SCOがノベルからUNIX著作権を購入
してはいないと判断するとともに、IBMに対するSCOの提訴を
ノベルが差し戻す権限を有することも認めている。
ノベルは、「連邦地裁の決定はSCOの主張の中核部分を無効と
し、UNIXの著作権侵害を理由とした、 Linuxコミュニティーに
対するSCOの脅迫を排除するものである」と述べた上で、「ノベ
ルはこの結果を非常に喜んでいる」と付け加えている。
(1)特許出願、
1位日本、
2位米国、
3位は韓国抜いて中国、WIPO
報告書
http://news.braina.com/2007/0810/move_20070810_001____.html
【参考】WIPO Patent Report: Statistics on
Worldwide Patent Activity (2007 Edition)
http://www.wipo.int/ipstats/en/statistics/patents/
(2)農水省、「農業の現場における知的財産取扱指針」公表
【参考】「農業の現場における知的財産取扱指針」の策定について
http://www.maff.go.jp/www/press/2007/20070815press_2.html
(3)ウォルマートもDRMなし楽曲配信開始、1曲94セントで
http://news.braina.com/2007/0823/enter_20070823_001____.html
(4)技術ノウハウ管理と知財戦略セミナー
9月12日(水) 13:30∼16:30 新都心ビジネス交流プラザ(北与野駅前)
講師:(株)ブライナ・彩都総合特許事務所 代表弁理士 佐原雅史
【参考】技術ノウハウ管理と知財戦略セミナー
http://www.jetro-saitama.jp/wn01/index.cgi
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