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分野 学級経営(小学校)
1 学級づくりへの支援 採用初年度から、学級経営を担う若手教員はこれからかなり多くなると思います。若手教員が安心 して教育活動に取り組むため、ミドルリーダーは、若手教員が学級経営を円滑に行えるようにいろい ろ指導や援助をする必要があります。 ここでは、若手教員に対して、子どもたちに規律を求める教員としての心構え、ルール作りの必要 性、その手順や指導のポイント、よく指導される授業ルールの例をまとめ、さらに若手教員の学級が 崩壊することを防ぐために、崩壊の前兆となるポイントを列記し、その援助の仕方についてもまとめ てみましたので参考にして、若手教員の学級経営が安定するように援助してください。 (1) 教員としての心構えと基本的な考え方 ① 信頼される教員をめざすように諭す。 →子どもたちから好かれる教員になろうと思っている若手教員は多いと思います。そのため子 どもに友達のような話し方や行動を許したり、反対に若手教員が友達に言うような話し方をし たりしてけじめがつけられないことがあります。そのような関係では、学級に規律が形成され にくく、ひいては子どもたちの学力保障はできません。子どもたちもいずれ、教員の指導力を 見抜き、心はいつしか離れていきます。教員と子どもたちの信頼関係は、笑顔で接する、ほめ る、真剣に子どものことを考えるなど地道な活動の積み重ねよって築かれるものです。「人気 のある先生」ではなく、「信頼される先生」になるための要点を伝えましょう。 ② チャイムで始まり、チャイムで終わる授業をするようにアドバイスする。 →3分(授業のロス時間)×29時間(週あたりの授業時数)×35週(年間)=3045分= 50時間45分(年間でロスする授業時間の総計) これだけの時間がロスされます。チャイムが鳴ったら職員室を出るのではなく、チャイムが 鳴ったら授業を始めるようにアドバイスしましょう。 ③ 授業が楽しくなければ、子どもたちはルールを意識しないことをアドバイスする。 →講義式の授業ほど子どもたちはつまらなさそうです。そんな時、おしゃべりしたり、落書きを したりして授業ルールを守らない子が多くなるのは当然です。それは、元を正せば子どもたち の活動を授業の中に計画していない教員側の責任です。そのためには授業を楽しくしていくよ うにアドバイスをしましょう。 ④ ルール作りの必要性とその先にあるものをアドバイスする。 →「子どもたちがただ集まるだけでは意味のある集団にはなりません。子どもたちが安心して 気持ちよく過ごしていくためにはルールが必要です。そしてルールがある状態では、子どもた ち一人一人の学ぶ空間が保障されるようになります。」という考えがあることをアドバイスし ましょう。そして安心して過ごせる学級という集団から、子どもたちがお互いに有益なものを 作る集団へとさらに成長させていくのは教員の仕事であることをアドバイスしましょう。 ⑤ ルールはなるべく早い段階で作るようにアドバイスする。 →「4月当初は子どもたちも教員もお互い緊張してます。そんなときこそ秩序は形成されやす いように思われます。また、ルールは早い段階でできあがれば、子どもたちの生活や学習のリ ズムも形成されやすくなります。」とアドバイスをしましょう。さらに4月当初、子どもたち の間で起こるトラブルの解決を図りながら、ルールを作っていけば、子どもたちはそのルール をより意識するようになることをアドバイスしましょう。 ⑥ 教員もルールを守る一員であることをアドバイスする。 →ルールは、教員も子どもたちもお互い納得するものをつくること、教員はルールを尊重する 態度を常にもち、その態度を示すことが、子どもたちから信頼を得るものであることをアドバ イスしましょう。 ⑦ 学校で共通理解しているルールは自分の都合で変えないようにアドバイスする。 →自分がやりやすいようにルールを変えたくなるものです。しかし、学校で共通理解している ルールを自己都合で変えると、学校全体の問題になります。十分に気をつけることをアドバイ スしましょう。 -1- ルール作りのマニュアル ① 援助の時期、ルール作りの必要性、そのポイント、その手順 ア 4月当初、学級でのルール形成の大切さをアドバイスする。(p.1の⑤を参照) イ ルール作りの必要性と子どもたちに指導する際の考え方をアドバイスする。 (p.1の④を参照) ウ ルール作りのポイントをアドバイスする。(下の例参照) 一例 エ ・ 教員の押しつけではない。 ・ 不都合なことや無理な場合は、話合いでやり方を変えることができるようにする。 ・ 分かりやすい言葉や図を入れてルールをつくる。 ・ 教員もルールを守る一員である。 ・ 子どもたちが細部にわたるまで守らなければならないルールではなく、柔軟性があ るようにしておく。 ルール作りの手順をアドバイスする。(下の例参照) 学級活動の時間で行う指導の一例 (ア) 担任が子どもたちにどのようなクラスにしたいかを話す。 (イ) 子どもたちにルールを作る必要性を説明する。 (ウ) 若手教員は、子どもたちに具体的なルールの例をいくつかあげる。 (エ) ルールの作り方を子どもたちに示す。 (オ) まず、毎日の学級の様子をみて、どのようなルールがあればよいかを子どもた ちに話し合いをさせる。 (カ) 次に、話合いで出てきたルールの中で、是非あればよいと思うルールを子どもた ちにシートへ書かせる。 (キ) さらに、グループになって子どもたちに話し合いをさせ、どうしてもはずせない ルールをいくつか決めさせる。 (ク) 最後に、クラス全体で話し合い、ルールをいくつか決めさせる。 (ケ) 教室内で子どもたちがよく見える壁面に、「○年○組の大事なルール」という形で 掲示する。(視覚化) -2- (2) 若手教員の学級のようすをみて、支援するためのチェックリスト 授業のようす □ チャイムと同時に授業を始めている。 □ 子どもたちは、あいさつをきちんとしている。 □ 子どもたちは姿勢正しく座っている。 □ 子どもたちは授業の準備ができている。 □ 子どもたちは授業中、真剣に先生の話を聞いている。 □ 指名されたら、ハイと言って大きな声で発表している。 □ 机はきちんと並んでいる。 □ 子どもたちは指名されてから発言をしている。 □ ノートに丁寧な字を書いている。 -3- (3) よく指導する授業ルール(内容項目) (4月当初に決める) ○ 宿題や提出物の提出の仕方 ○ 給食準備や後片付けの仕方 ○ ○ 朝の会の進め方 帰りの会の進め方 ○ ○ 日直の順番と仕事 係り作り ○ 日直の号令で始め、終わるようにする。(礼で始まり礼で終わる。) ○ 姿勢正しく座らせる。(いすに深く座り背筋を伸ばす。おなかと机は少し離す。) ○ 指名してから発言をさせる。 ○ ○ 合図があったら活動をやめ、素早く集中させる。 指示を出すまで、学習活動を始めさせない。終わらせない。 (集中させてから、説明、指示、発問をする。) ○ ・ ・ テストを受けるための環境を整える。そして受けるときのルールをつくる。 机の向き、机と机の間隔 ・ 質問があるときは黙って手を挙げる。 時間がくるまで見直しをする ・ テスト用紙に落書きをしない。 等 (話し方の指導) ○ 身体を聞き手の方へ向けて話させる。聞き手をしっかり意識させる。 ( 子どもたちが対話や議論をしているときは、教員の方を向かないで話したい相手に向かって話すよう指導す る。) ○ ○ TPOに応じた声の大きさを意識させる。(場所、学習形態などに応じて声の大きさを変えていく。) 文末まではっきり話させる。「・・・です。」「・・・と思います。」 (聞き方の指導) ○ 手を膝において、話し手の方に体を向けて聞かせる。 (必ず教員は子どもたちの学習活動を中断させて、話している相手の目を見て最後まで聞くように指示する。) (ノート指導) ○ 学習帳は兼用させない。 ○ 名前を必ず書かせる。○ ○ 線は必ず定規を用いて引かせる。 日付や単元名などを書かせる。 (その他) ○ 筆箱の中に入れる学習用具を子どもと話し合って決めておく。 例 えんぴつ○本(B か2 B) 赤鉛筆(ボールペン)定規セット 名前ペン 消しゴム ○ グループ活動を行う場合のルールを子どもと話し合って決めておく。 例 お互いを見ながら話す。 みんなができるまで助け合い、学び合う。 班長を中心にして活 動する。 (4) 授業ルールの定着を図っていくコツ (ア) 授業ルールは、授業を進めながら作っていくようにアドバイスする。 (ルールは特別に時間を作って話し合うものではありません。教科の内容や指導内容に関連づけて作ります。) (イ) 授業中、折りにふれルールを守った子どもたちをほめるようにアドバイスする。 (授業中にルールを守れた人をほめてあげると、子どもたちの遵守する気持ちが促進されます。) (ウ) 視覚にうったえるようなルールの掲示をアドバイスする。 (小黒板を使って今日のめあてを書いたり、黒板の上に目標等を貼ると、子どもたちはめあてを意識します。) -4- (5) 学級でのルールを崩さないためにチェックするポイントと話合いにおける支援ポ イント (気付いたことをチェックし、若手教員に(3)を参考にした援助や支援をしてください。) ① 若手教員の様子はどうか。 □ □ □ □ □ □ 顔色はよい。笑顔がある。 元気な様子である。 職員室へ入ってくるとき元気に挨拶をする。 子どもたちが納得するように叱っている。 笑顔で自教室へ行っている。 自信ありげな様子である。 ※ 提案と同時に、若手教員の学級の子どもたちの言動や下 校後の若手教員のクラスの様子をチェックしてください。 ② 子どもたちが下校した後の教室はどうか。 □ □ □ □ □ □ 学級の子どもたちの様子はどうか。 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ (少なければ、次のページのケ、コを提案 する) くつ箱のくつがそろっている。(くつかくしはない。) 教室にゴミがたくさん落ちていない。 黒板に落書きがない。 机と椅子は整頓されている。 ロッカーの中が整理されている。 お菓子の包みなどのごみがない。 ③ ④ ( 少なければ、次のページのオ、カを提案する) (少なければ、次のページのア、イ、ウ、エ、キ、 ク、ケを提案する) 子どもたちは、友達を傷つけるような言葉を使っていない。 いじめられているとうったえてくる子はいない。 子どもたちの目つきがきつくない。 ケンカが頻繁に起こっていない。 決まった服装をしている。 集団でかくれてこそこそしていない。 先生の悪口を言っていない。 ※ 少なければ提案と同時に管理職と相談して、数日間、 若手教員の授業に入って子どもたちの様子をチェックし てみてください。できなければ、若手教員から聞いて、 チェックをしてください。 教室の規律があるのかどうか。 (少なければ、次のページの、ア、イ、エ、ケを提案す る。) 学習に関係のないものを持ってきていない。 給食の準備や後片付けはスムーズで、食事中はなごやかでよい雰囲気である。 トイレに行ってすぐに帰ってくる。 食器の返却をきれいにしている。 当番を忘れずにしている。 若手教員の指示にすぐに従っている。 時間を厳守して、教育活動をしている。(チャイムが鳴ったら教室に入る。遅れたら、 その理由を言って入ってくる。清掃にすぐに取りかかる。) -5- (6) 振返りと提案( 場合によっては管理職に入っていただきながら、改善点を探るる。) ア ほめる・叱るの基準が一貫し、公平であるかどうかを振り返るようにアドバ イスする。 イ 子どもたちの心をつかんでいるかどうかを振り返るようにアドバイスする。 ウ しんどい子に、あきらめずに関われているかどうかを振り返るようにアドバ イスする。 エ 子どもたちへの指示がはっきり伝わっているかどうかを振り返るようにアド バイスする。 オ 教員の思いを子どもたちの前で話すようにアドバイスする。 カ 得意なことを披露して、子どもたちを引きつけていくようにアドバイスする。 キ 学級でお楽しみ会など楽しいイベントをして雰囲気を変えるきっかけをつく るようアドバイスする。 ク 子どもたちの遊びの中に入っていくようにアドバイスする。 ケ 子どもたちで話合いをさせるようにアドバイスする。 コ 子どもたちの気持ちを日記等で書かせるようにアドバイスする。 改善点は -6- 2 授業力向上への支援 毎年、子どもたちたちに教育の質的保証をしていくためには、これから職場で増えていく若手教員 の授業力向上を図っていかなければなりません。若手教員が行う研究授業を多くして、全教員で指導 していくことも大切ですが、年間で行う回数が限られるので、若手教員が行う日々の授業を大切にす る取組が求められます。そこでミドルリーダーは、空き時間等を利用して若手教員が行う授業を観察 し、その後の反省会等で指導や援助をしていくことを大切にする必要があります。 ここでは、若手教員の授業力向上を図るために授業における基本的な考え方、授業を観察する時の 視点さらに反省会等で話合いを行う際、指導するポイントについてまとめました。また、コーチング のGROWモデルを用いた方法で若手教員の振返りを促進させるマニュアルも紹介します。。 (1) 基本的な考え方 ① 教材研究の大切さをアドバイスする。 →指導目標や教材の内容から、児童に身に付けさせたい知識や技能を明らかにして、教材のも つ特性を分析することや教材をどのように解釈するかを予想しながら、子どもたちの立場にな って授業を組み立てていくことをアドバイスしましょう。また、しっかりと行った教材研究は、 授業において指導内容がぶれないこともアドバイスしましょう。 ② 板書の大切さをアドバイスする。 →重要な事柄や授業内容が一目見ただけで分かるような板書を心がけるようにとアドバイスし ましょう。そのためには、教材研究時に、本時の授業を想定して板書の計画を立てるようにと アドバイスしましょう。また、文字の大きさは子どもたちの実態に合わせて書き、色チョーク を使う時の約束を子どもたちに示すようアドバイスをしましょう。 ③ 子どもたちに本時の授業のめあてを確認させるようにアドバイスする。 →「めあての分からない授業は、子どもたちが何を解決してよいか分からず、学ぶ意欲を低下 させます。」とアドバイスしましょう。 ④ 子どもたちの興味・関心を起こしながら授業を進めるようにアドバイスする。 →導入段階で子どもたちが既習内容や子どもたちの経験を生かしたものや、やってみたい気持 ちを引き出すものなどをしかけて子どもたちの興味・関心を引き出しましょう。「導入段階で 授業の善し悪しが決まります。」とアドバイスしましょう。 ⑤ 子どもたちが興味・関心をもって本時の課題解決を促進するための条件作りをするようにア ドバイスする。 →子どもたちが課題解決を図る意欲を促進するためには、個に応じた目標の明確化、選択学習 の促進、課題解決が図れる場を保証していくようにとアドバイスしましょう。 ⑥ 授業が分からない子どもたちにやる気を起こさせる支援のあり方をアドバイスする。 →まず、支援する子どもたちが分からなければなりません。授業中は子どもたちの様子をしっ かりと観察したり、子どもたちと対話したりして支援が必要な子を感じる教員であるようにア ドバイスしましょう。その後、やる気を起こさせるスキル(例 方向性を示す 励ます 認め る ほめる 等)についてもアドバイスしましょう。 ⑦ 机間指導の大切さをアドバイスする。 →子どもたちが学習を進めているときは、教壇に立って観察するだけでなく机間指導をし、子 どもたちの考えを把握たり、授業を効果的に展開する上で必要な発表者を決めたり、子どもた ちが学習でつまずいているところを指導したりするようにアドバイスしましょう。 ⑧ 教員はよき話し手になることをアドバイスする。 →言葉の使い手として正しい言葉を使うことが教員の基本であるが、時には、話すテンポと声 の強弱を変えたり、沈黙やボディランゲージ等の方法を使ったりして話していくと、子どもた ちたちの興味・関心がさらに高まり、集中力が途切れないことをアドバイスしましょう。 ⑨ 評価規準に照らし合わせて子どもたちの学習を評価するようにアドバイスする。 →評価規準は、教材研究時に併せて作成しておくようアドバイスしましょう。また、評価規準 は知識理解だけではなく、各教科等のねらいに基づいて作成し、子どもたちのどの活動からも 評価するようにアドバイスしましょう。 -7- (2) 若手教員の授業を参観し、支援するためのチェックリスト (チェックしながら、これからの支援に役立ててください。) 授 業 の よ う す 入 □ 授業前の挨拶がしっかりできている。 □ 子どもたちの興味や関心を引いている。 □ 本時のねらいを明確に示している。 段 導 導入がうまくはかれていますか。 階 授業展開はどうですか。 ねらいにそった授業が展開されている。 □ 子どもたちの発言を生かしている。 □ 教材や教具は効果的である。 □ 子どもの思考を深める発問がある。 □ 的確な指示である。 □ 分かりやすい説明である。 □ 板書は授業の進み方が分かるようになっている。 授 □ 業 展 開 子 子どもたちの様子はどうですか。 ど めあてを意識しながら活動している。 □ 興味・関心をもって主体的に活動している。 □ 先生の話をしっかり聞いている。 □ お互いに学び合う意識がある。 □ 姿勢正しく、字を書いている。 も □ た ち の 様 子 -8- 気付いたこと (3) 授業観察後に行う話合いにおける支援ポイント ア 授業中の事実に基づいた支援をする。 ※教員の指示や発問とそれに対する子どもたちの反応と学習態度 抽象的な発言では若手教員にとって後に残るものがなく、次の授業につながりません。 子もたちの学習の様子や若手教員の発問や声かけ等を拾って、具体的な事実に基づいて 支援をします。(ビデオ、録音、写真、メモなどの活用も) ミドルリーダーが授業を観察する場合は、子どもたちの様子が観察しやすい教室の側面 か前方からします。また、グループで活動しているときは、一つのグループに入って子ど もの活動の様子を観察しましょう。 イ 指導するときはポイントをしぼる。 感じたことや自分の教育論を全て言わないことです。全てを話すと若手教員は消化不良に なり、指導内容が吸収できません。指導の際は、自分の失敗談を入れながら、若手教員のプ ライドを傷つけないように糸口を探りながら話していきましょう。 ○ ○ ウ 提案や指導するポイントをしぼる。 課題に沿った具体的な話が最も効果的である。 ほめることで人は育つ。 何歳になってもほめられたら嬉しいものです。ミドルリーダーは必ず若手教員の授業で よかった点は一つは述べ、そしてほめましょう。その一言が、やる気を起こします。 エ 話合いは黒板かホワイトボードのある教室で行う。 話合いを行っているときに、書いて説明する場面がきっとあるはずです。その後、若手教 員が黒板に考えを書くことで、指導内容が共有されると思います。また、若手教員が話合い の内容を振り返るのにも役立ちます。 オ ミドルリーダーが行う示範授業を観察する時、授業の見方をアドバイスする。 ミドルリーダーの示範授業を観察することで、若手教員が自分の授業を振り返ることができ ます。 この場で授業の見方を高めておくと、若手教員の実践的指導力がより高まります。 ・発問の仕方 ・ 子どもたちの活動の様子 ・授業のねらいが達成できたどうか。その根拠は何か ・板書の構成 等 ・できれば教室環境も 示範授業を行う際は、授業づくりのポイントなる補助資料を作成するとこれらがより分かり やすくなります。 -9- 参考資料① GROWモデル(※)を使った若手教員の振返りシート (授業後、若手教員がこのシートを使って振り返ると、自分が行った授業を客観的に見ることができ、 いろんな気付きが促進され、次へのステップとなります。) 授業振返りシート 2012 年 名 前 ( 月 日( ) ) ① 本時のねらいは・・・? (GOAL) ② 今日の授業でよかったところは・・・? (Reality) ③ 今日の授業でうまくいかなかったところ、または授業中の子どもたちを見て 「もっと~したい」と思うところは・・・? (Reality) ④ 理想の授業を10点満点とすると、今日の授業の点数は・・・? (Reality) 点 ⑤ 理想の授業やねらいを達成するために改善しなければならないところは・・・ (Reality) ⑥ 目標を実現するための方法や手立ては・・・? (Options) ⑦ 次の授業までに、あなたが取り組んでおかなければならないことは・・・? (Will) ※ ⑧ 今日の話合いの感想 ⑨ ミドルリーダーから GROW とは、頭文字です。G : Goal 目標 R : Reality 現実、現状 O : Options 選択肢、代替 戦略案、行動案 W : What, When, Who, Will 行動(何を、いつ、だれが、どんな意志で行うのか) 問題に対して、この順番に思考を重ねて行動案を策定し、実行します。 引用 「株式会社グローバル・シフト・コミュニケーション」のホームページより http://www.gshift.com/bgToolGROW.htm - 10 - 参考資料② 授業後の話合いマニュアルの一例(コーチングの手法を使って) 「コーチング」は、授業力向上を目指して、若手教員のやる気を引き出し、自発的な行動を促すコ ミュニケーションスキルです。 (※ ○で囲んでいるところはコーチングのスキルを述べています。) 確認 焦点化 今日、話し合う 内容を決定して いく。 ◎ 今日の話合いの内容をお互い確認する。 継続した授業参観ならば、その後の話合いにおいて次の授業課題や 目標を確認し合っているので、まずその課題や目標を確認し合う。 (例) 「今日の授業のねらいは○○ですね。」 ◎ 若手教員の気付きを促進する。 「今日の授業はどうでしたか」 若手教員の原因分析(自覚) 「それは何が原因だと思いますか」 原因分析について考察 ※ 授業中の子どもたちの様子をビデオに映して、原因分析やその他の 気付きを促してもよい。 ※よかったところは大いにほめる。 ◎ 授業の印象を語らず、事実を語る。 「今の授業は子どもたちががんばっていた。」といって満足している 若手教員がいる。印象で語る場合は気付きが促進されないのでミドル リーダーは自分が感じたことを語らずに、子どもたちが実際にしてい たことを話すようにする。その場合、ビデオで実際の子どもたちのよ うすを両者で確認できれば尚更よい。 ※◎ 発問はWHY(なぜ)ではなく、WHAT(何)で問う。 (例)「この実験はなぜこのようになったのですか?」と質問するより 「この実験がうまくいかなかった原因は、何だと考えられますか?」 と発問した方が実験の結果に関わる要素を並べやすくなる。 ※◎ 若手教員の考えを整理するときはオウム返しや言い換え をする。 (例)「子どもたちが自ら発見することです。」 「子どもたち自らが発見することですね。ということは子どもたち が主役となりますね?」 可能性 視点を変えて話 し合う。 ◎ 自分の思い描く授業像と実際の授業を比較して数値化してみる。 理想と現実を数値化させることで、若手教員が自分の授業を客観的に考 察することができる。 (例)「あなたは、自分が思い描いている授業を10点とすると今日の授業は何 点になると思いますか?」 ※ これは、理想と現実のギャップを埋め、近づくために行われる質問スキル です。数字は厳密である必要はありません。 - 11 - (例) ◎ 理想とのギャップを埋めるための方法を質問する。 「授業力を高めていくためには、何が必要だと思いますか?」 「理想の授業に近づくためには、どうすれば良かったと思いますか?」 と尋ねて、若手教員の中にある答えを引き出そうとする。 ◎ 自らの考えや体験を話す。 ミドルリーダーは今まで研修した内容や長年の教員経験から培った指導方 法について話をしましょう。話が自慢話になったり、指導法を押しつけたり してはいけません。提案や参考という気持ちで若手教員に聞かせる。 受け入れるかどうかはあくまでも若手教員が決めることです。 (例) 「私の考えや経験したことを言ってもいいですか?参考にできるならそう してください。」 ◎ ミドルリーダーが提案した利点を考えさせる。 ミドルリーダーの提案に対して若手教員が今後、授業改善にどのように役 立てたいかを尋ねることにより、問題解決の一助とする。 (例) 「私の考えや今、話した経験談の中で参考にできるとしたら、どんなこと でしょうか?」 (ない場合は次へと進める) 行動計画 ◎ 自分の理想の授業に向かって今すぐできることを考える。そして優先 順位をつける。 若手教員が考えたことを出す。ミドルリーダーはそれらを否定しない。時 間をとって紙に書かせてもよい。その後、若手教員から出た考えに優先順位 をつけさせる。 (例) 「あなたが思い描いた授業をするために今からどうしていきたいの?」 ◎ 承認をし、若手教員のモチベーションを上げる。 若手教員がギャップを埋めるためによい方法を考察できたならば、 ほめて認める。 「YOU の立場」・・・ あなたは子どもたちの様子を分析して、そのような 考えがよく浮かびましたね。 「I(WE)の立場」・・・あなたの考えたそのアイデアやその視点を私も 授業に取り入れたいと思います。 ※「YOU」メッセージは上下関係のニュアンスがあり、押しつけられた と感じることがあるので「I」メッセージで話すようにする。 ふ かん 俯瞰 ◎ 若手教員に話合いをフィードバックさせる。 若手教員が、自分を客観的にとらえ、言葉にすることによって、学びが深 全体で気づいた まったり、今後の実行につながっていく。 ことや、次まで にすることを確 (例) 「今日の話合いはどうだった?」 「次の授業まであなたが取り組んでおくことは○○ですね?」 認する。 ◎ 最後にミドルリーダーは若手教員のモチベーションアッ プに「わたし」メッセージで伝える。 (例) 「先生が今度こそ、いい授業をしたいという意気込みに、期待しています。」 と「I」メッセージで伝え、「今度の授業を楽しみにしています。」とフォロ ーする。 参考文献 神谷和宏(2007年度)『図解 会社 先生のためのコーチングハンドブック』明治図書出版株式 - 12 - 3 保護者との関係づくりへの支援 保護者と信頼関係を築くことは、若手教員の教育実践を豊かにしていくことにつながりますが、保 護者対応の経験年数が浅い若手教員にとっては困難と感じている割合が高いようです。ここでは、若 手教員が保護者とよりよい関係づくりをするための基本的な考え方、保護者と接する機会における指 導のポイントをチェックリスト形式で、さらに家庭訪問を要する保護者対応になった場合の支援マニ ュアルも紹介しています。 (1) 基本的な考え方 ① 保護者は互いに子どもたちの成長を図っていくパートナーであることを認識するようアド バイスする。 →保護者に対するマイナスイメージが、今の若手教員の中にあるのではないでしょうか。保護 者と教員との健全な関係は子どもたちの成長にとって欠かせないものであることをまず、アド バイスしましょう。 ② 保護者の気持ちを理解し、寄り添うような態度で対応するようアドバイスする。 →保護者が学校や教員に対して、質問をしたり、時には抗議をしたりするのは例外を除いて、 たいていは学校や教員を信用しているからこそです。そのために、「聞く(聴く)」姿勢を大事 にし、時には、保護者の心情に寄り添いながら話を展開するようにアドバイスしましょう。 さらに、そのような保護者ほど納得できれば、その後学級経営の最高の理解者になることを 経験談からアドバイスをしてあげましょう。 ③ 最初の学級懇談会で保護者に自分の考えを述べ、協力を求めるようにアドバイスする。 →「子どもの健やかな成長を教員も保護者も願っています。しかし、教員と保護者がよい関 係を結ぶことができなければ、子どもへの指導が実りにくくなることがあります。子どもを より深く多面的に理解するには保護者からの情報が必要です。」などと協力を求めていくよう に述べるアドバイスをしましょう。 ④ 小まめな「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」をするようにアドバイスする。 →ささいなことであっても、日頃から連絡や報告を心がけ、保護者との信頼関係を築けるよ うにアドバイスしましょう。普段から他愛もない会話を大切にするようにアドバイスをしま しょう。 反対に学校や学級で起こった事象に対しては組織で対応し、そして解決していくことが基 本の行動であることを知らせ、そのためには管理職やミドルリーダーに「ホウ・レン・ソウ」 をするようにアドバイスしましょう。 ホウ(報)・・・管理職やミドルリーダーに仕事の進捗状況を知らせること。 レン(連)・・・仕事の判断や自分の意見を伴わない事項について、関係者に知らせること。 ソウ(相)・・・仕事の進め方や今後の方針等について、関係者と相談し、指示、アドバイス、参考意 見などをもらうこと(対外的な問題、いじめに関わる問題、暴力問題 等) 大阪府教育委員会「次世代の教職員を育てる OJT のすすめ」より引用 http://www.pref.osaka.jp/attach/6350/00000000/ojt.pdf ⑤ 日頃から、連絡帳を使って子どものよい行いやがんばっていることを保護者に知らせるよ うにアドバイスする。 →小学校低学年と比べると高学年になれば、子どもの連絡帳に担任から保護者へ子どものが んばりを知らせることは少なくなります。担任の思いがけない文章に接し、喜ばない親はい ません。時間を見つけて、子ども良い行いをしたときや何かにがんばっている時に書くよう にアドバイスをしましょう。 ⑥ 保護者に指導の在り方や子どもたちの学校でのようすを尋ねられたら、資料を活用して説 明や話ができるようにアドバイスする。(説明責任) →例えば、教科のある単元を他の教材を使って授業したことで問い合わせがあったとしても、 その教材を選んだ理由や、その教材で授業を行って子どもたちの理解や興味・関心が高まった 実態などを記録に残し、それを基にして説明できるようにしておきましょう。また、「子ども たちの言動をよく観察し、メモに残しておきましょう。そのメモの積み重ねが、児童理解を 深めることにつながります。場合によっては、子どもたちが起こした問題行動の原因を探る ことができる場合もあります。さらに、保護者対応においても、子どもの日頃の様子を知ら せる材料にもなります。」とアドバイスしましょう。 - 13 - (2) 保護者とよりよい関係を築くためのチェックリスト。 (チェックしながら、これからの支援に役立ててください。) 項 保 目 護 理 最 懇 の 談 チェックポイント 者 □ 保護者は、子どもを成長させていくパートナーであるととらえている。 解 □ 保護者との話合いでは、節度をわきまえ、適切な言葉づかいをしている。 初 □ 若手教員が、保護者に子育てをともにしていきたい旨を伝えている。 会 □ 最 子どもたちの様子を話しながら、学級経営方針について保護者に理解を求め ている。 □ 家庭訪問の予定訪問時刻を家庭に確実に知らせている。 □ 家庭訪問の時間は厳守し、訪問時間も平等にしている。 初 の 家 訪 庭 問 □ 最 保護者からの要望等を傾聴している。また、分からないことは、独断や私見 で安易に返答せず、管理職や同僚教員に報告している。 初 □ 子どもたち全員が発表や活動ができるようにしている。 業 観 □ 子どもたちの日頃のがんばりが伝わるような教室環境づくりをしている。 □ 具体的な内容で、子どものよい面を話している。 □ 保護者の話を傾聴することができている。 □ 懇談時間は、重ならないようにしている。 □ 他の子どもと比べた話をしていない。 □ 改善点は具体的に分かりやすく話している。 □ 学級通信で子どもたちの様子やよい行いなどを伝えている。 □ 連絡帳等を活用して、子どものがんばりを伝えるなど、個々の保護者とコミュ の 授 参 個 懇 人 談 会 ニケーションをとっている。 そ の □ 子どもが学校を休んだとき、連絡を確実にしている。 □ PTAの会合や地域の行事に参加しようとしている。 他 □ □ 電話応対は(15ページ参照)適切に行うとともに、長い電話になる場合は、 直接会って、話を聞くようにしている。 個人情報の取扱いは適切である。 - 14 - (3) 家庭訪問をして問題解決を図るための援助の在り方 矢印に沿ってミドルリーダー自身が行った助言や自らの働きをチェックし ながら自身の支援の在り方を振り返ってみてください。(すべての項目はミド ルリーダーが主体の行動です。) 学校で起こった 出来事で問い合 わせがあった。 電話対応 若手教員に電話対応の際の留意点を指導しておく。 留意点 相手の話を受容して聞く。 メモをとり、話のポイントは復唱して相手に確認をとっておく。 わからない点をうやむやにせず、正確に内容を把握する。 わからないところは安易に返答しない。 場所や時間を正確に確認する。電話していただいたことに謝意を述べる。 若手教員には 5W1H を明確に記録しておく ようアドバイスしておく。 若手教員にミドルリーダーに報告・相 談をするように言う。 対応への準備 生徒指導主任や学年主任に報告・相談をする。 管理職に報告・相談し、生徒指導主任、ミドルリ ーダーとともに方針と対応方法を決定する。 対応へ (若手教員に家庭訪問の際の留意点を指導しておく。) ・ 訪問前に、保護者と連絡を確実にしてから家庭訪問するようにアド バイスする。 ・ ・ ・ 約束時間は厳守するようにアドバイスする。 原則として、家庭訪問は、学年主任やミドルリーダー等との複数で対 応する。 複数で対応する場合は、保護者に説明する内容を確認する。 - 15 - 保護者との話合いがうまくいくように下のようにアドバイスをする。 対応スタート (家庭訪問時の対応) ・ 本題に入る前、子どもの日頃の様子や学校での出来事を話すなどして、不安 になっている保護者と子どもの気持ちをほぐしながら話すようにアドバイスする。 ・ 問題事象の事実を保護者に伝える際、一つ一つの事象の説明に対して子ども から確認をとりながら行うようにアドバイスする。 ・ 保護者の話を傾聴、共感しながら、時には、正対することも必要であること をアドバイスする。 ・ 話を蒸し返したり、ひっくり返したりしないようにアドバイスする。 ・ 他の児童の個人情報をもらさないようにアドバイスする。 ・ 最後は笑顔で、保護者に敬意を払う態度で家を出るようにアドバイスする。 。 なるべく、その日のうちにミドルリーダー、生徒指導 主任、学年主任へ報告するようにアドバイスする。 対応後の処理 ・ ・ 若手教員から報告を受ける。 生徒指導主任、学年主任に報告・相談をする。 管理職に報告・相談。若手教員の対応状況報告で 問題解決が図れたかどうか判断する。 再 度 対 応 解決がはかれ なかったと判 断 解決したと 判断 どのような方針で再度、対応するように決定し ましたか。(対応例) 1 再度、家庭訪問を行う。 2 生徒指導主任が入って対応していく。 3 保護者に来校してもらって管理職に対応して いただく。 4 しばらく静観しておく。 4 □ 若手教員に時系列で記録するようにアドバイスする。 □ 若手教員に全教員で情報を共有するため報告するようにアドバイスする。 保護者対応後のポイント(チェックしてみてください。) ・ 対応後も、保護者と連絡を密にし、信頼関係が築けるようにアドバイスする。 ・ 学級経営上、保護者の願いを反映させることが必要な要望は、すぐに行うようアドバイスす る。 ・ 要望に対しては、教員の共通理解が必要なことを保護者に理解いただくようアドバイスする。 - 16 - みんなで支え合おう 職場の若手教員が課題や悩みを持ったとき、みんなで声をかけよう。そしてみんなで支え 合おうという雰囲気のある職場にしていきましょう。 1 学級づくりへの支援p.1~p.6 学習規律形成に向けてのマニュアルとその指導ポイント 2 授業力向上への支援p.7~p.12 授業力向上を図る支援内容とその指導ポイント 3 保護者との関係づくりのへの支援 p.13~p.16 保護者とよりよい関係づくりを築くための支援マニュア ルとその指導ポイント - 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