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行政学 秋第二回 10・15

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行政学 秋第二回 10・15
行政学
秋第二回 10・15
Copyright:Takumin
2007年10⽉15⽇
14:39
官僚制というのはウェーバーが議論を発展させたということでデモクラシー論とは官僚制論が
基礎にあると思われる。なので本来はすぐに三節の逆機能論を話するはずなのである。しか
し、アメリカの⾏政学の組織論が⼊っている。少し無理があるのだが、やってみよう。
第2節アメリカ⾏政学の組織論1
1. アメリカ組織論
①⺠主主義と資本主義の下、(⾏政と企業の)組織における構成員と管理者の関係について、⽅
法論的個⼈主義に⽴つダイナミックな組織論
⼤体20世紀になるときに、アメリカ組織理論が出てくる。1776年に独⽴して、アメリカ憲法
というもので、国の統治機構が確⽴するが、最初からに⺠主主義体制をスタートさせたわけで
ある。他⽅経済⾯では資本主義体制、⾃由主義経済があって、政治における⺠主主義と経済に
おける資本主義を通じて19世紀20世紀と発展していった。そういう意味では⾃由主義的な中
で⾃律的に発展してきた部分が⼤きい。
②バーナード(Chester Barnard)『経営者の役割(The Function of the Executive)』(ダイヤ
モンド、1967)、サイモン(Herbert Simon)『経営⾏動(Administrative Behavior)』(ダイヤ
モンド、1965)
そういうときに⾏政の組織と企業の組織をどう説明すればいいのかということについて、彼ら
が⼤きな功績を挙げた。その説明は読んでね。これから彼らの議論を⾒ていこうということで
す。
①の「⺠主主義と資本主義の下、(⾏政と企業の)組織における構成員と管理者の関係につい
て、⽅法論的個⼈主義に⽴つダイナミックな組織論」は、⼀⾔で⾔ってもわかりにくいと思う
ので先に図を⾒てほしい。
行政学 - 1 ページ
この三⾓形を組織だと思ってほしい。上の⽅は管理者、下の⽅は⼀般の構成員。構成員と管理
者の関係についてアメリカの組織論は特に注⽬している。もちろん組織全体からいうと、組織
は企業であればものをお客さんに売って対価を得て収益を上げるということだし、⾏政であれ
ば税⾦をお客さんから取ってサービスを提供するという関係にあるのだが、この組織というも
のを最も重要な構成要素に分けるとすると、管理者と構成員に分けられる。管理者は構成員に
対して誘因(インセンティブ)を、つまり飴(給料・ボーナス)と鞭(社内規定に違反したら
⾸とか、懲戒とか)を提供する。誘因が提供されることがわかった構成員は、じゃあその組織
に⼊ってみるかということで、誘因を⾒て決めてゆく。誘因の条件がわかったら、その対価と
して、構成員は管理者に貢献(労働)をするということになる。誘因と貢献という⼆つの要素
で組織を説明しようとした。つまり、誘因と貢献が均衡したところで組織は成り⽴っている。
こういう考え⽅である。これのバランスが崩れてしまうと構成員は組織から抜けてしまい、組
織は存続し得なくなる。そういうことがいえる。
⽅法論的個⼈主義というのは、構成員⼀⼈⼀⼈から⾒て結局組織というのはどのようなものな
のか、それは組織が誘因を与えてくれて、⾃分が貢献しなければいけない。+とーの⾯を⾒極
めてどちらが良いのかを考え、構成員は組織に加わるかを決めるという⾒⽅で組織を⾒ていこ
うとした。なのでこういう組織論はかなり定義的には幅広い組織を動かす。
ウェーバー流の官僚制組織形態という議論は、そういう組織論よりももう少し狭い議論であっ
た。官僚制組織が持っている組織の特質みたいなものとして挙げられるのが、組織の⽬指して
いる⽬的が形式的な合理性であった。ところがそれが官僚制組織というのは、実質的な合理性
にまで⼊り込んでしまうという議論をしてきたが、アメリカの組織論はもちろんそういう問題
も無視したわけではないんだが、組織というものが管理者と構成員のバランスで成り⽴ってい
るところから説明し始めた。⽅法論的個⼈主義というのはそういうことである。
③政治⾏政⼆分(分離)論の伝統
これ代わりと重要。アメリカ組織論の⼤きな特徴は、企業組織と⾏政組織を共通の枠組みで説
明しようとするということである。なので、組織が誘因を提供する条件によって構成員になる
かならないかを決めて、なるのであれば貢献をする、という⽅法論的個⼈主義の説明というの
は、企業組織であっても⾏政組織であっても共通の枠組みで説明できるという組織論である。
なので、私的な組織と公的な組織を区別しないという特徴がある。これはウェーバーのいって
いた官僚制組織というのも、官僚制の組織特性というのは私的な組織であっても公的な組織で
あっても同じことなのである。その点では官僚制組織論とも共通している。
そのような特徴を持っているということを理解した上で、アメリカの組織論というのは実は、
⾮常に政治・⺠主主義の問題を正⾯から扱っていないというのが⼤きい⼤きい特徴である。こ
の点は、アメリカの⾏政学が誕⽣した⼀つの⼤きな流れというのが、むしろ⾏政学というのは
政治学とは違うんだ、政治学とは切り離して⾏政学を成⽴させるんだという流れがあった。こ
れが政治⾏政⼆分論の伝統だったのだが、実はアメリカの組織論とは分離論の伝統に沿うもの
であるということ。この点から⾒るとウェーバーの官僚制論というのは、最初は私的・公的な
組織に共通する組織伝統・組織特性を問題にしていたのだが、実はその問題というのが政治の
領域に⾏政が進出する、⺠主主義の問題に官僚制が進出するというところに当たった訳なの
で、これは政治と⾏政を分離して考えるというよりは、政治と⾏政の関係をあるべき姿に持っ
行政学 - 2 ページ
ていくということ⾃体が官僚正論の⼤きな課題だった。そういうところが⼤きくアメリカの組
織論とは違うところであると思われる。
第2節アメリカ⾏政学の組織論2
この図は⾏政理論の系譜と組織理論の系譜がどのように対応してきたかを⽰したものである。
政治⾏政分離論…政治というものは腐敗している、つまり政党政治が汚職にまみれていたとい
うことから、公務員制度は有⼒者の⼝利きで就職するということがあってはならず、試験に基
づいて公正に⼈材を採⽤しなければならないというところからアメリカの⾏政は誕⽣した。政
治⾏政分離論とはそういう意味があった。
第2節アメリカ⾏政学の組織論3
2. 組織論の発展
第1段階ーー科学的管理法(scientific management)
政治⾏政⼆分論の時代。
・組織管理の科学的⽅法・唯⼀最善の道(one best way)の追求、時間動作研究(time-motion
study)
アメリカという国は⾮常に現実主義的なところもあるが、理想主義的なところもあり、⼆⾯性
がある。アメリカ⼈の発想の⼀つの理想主義的な部分というのは⼆⼈以上の⼈が協⼒して⼤き
な⽯をどかそうというときには、できるだけ省⼒化してどかしたいよね、ということで組織管
理を科学的に追求してみよう、最善の道を追求しようというような研究が⾏われ、それが科学
的管理法というものである。ちょうどこの時期は⼤量⽣産⽅式がとられ始めたときで、それは
この科学的管理法の研究成果から得られたやり⽅であった。現在でも基本的に⽣産ラインは同
じ⽅法をとっている。単位時間あたり動作をどのようにすればもっともコストが少なくて利潤
が⼤きい⽣産ができるか、ということが追求されていった。
・ギューリック(Luther Gulick)のPOSDCORB
⾏政学者のこの⼈は、POSDCORB(Planning企画・計画を⽴てる Organizing組織化
Stuffing⼈事(誰が何をするか) Directing指揮命令系統 COordinating企画・販売・⽣産な
どの担当部局の調整 Reporting上司に対して部下が報告をする Budgeting予算 )
行政学 - 3 ページ
重要な要素を七つの⾔葉で表した。要素を並べただけのことではあるが、科学的管理法の時代
における組織論と重要な要素というのを7つくらい⾔葉で表したというわけである。
これがアメリカ組織論の最初の研究だとすれば、第⼆段階になるともう少し違う組織論が出て
くる。
第2節アメリカ⾏政学の組織論4
第2段階ーー⼈間関係論(human relations)
第⼆段階になると、⼈間関係論という議論が出てくる。社会学や⼼理学でいわれてきた。これ
は、組織の構成要素があることは確かだが、⼤事なことは組織の構成員がどのように労働意欲
を⾼められるかということではないかということで、⾔われた。
・労働意欲←⼼理的要素、社会的関係
特徴としては、労働意欲というのは科学的管理法でいっているような、合理的な「唯⼀最善の
道」で決まるわけではない。例えば教室で、蛍光灯を明るくすればするほど作業能率が上昇す
るかというとそんなことは関係ない。そういう機械的な合理性で労働者の労働意欲は決まらな
い。影響があるのはもっと⼈間関係的な要素である。例えば⼼理的なものであるし、社会的な
ものであるので、そういう社会的な関係が労働者の労働意欲に影響を与える。そういう考えで
ある。
・ホーソン実験(1924-32, シカゴのウェスタン・エレクトリック社の⼯場、E・メイヨー
(Mayo))
この理論に関する重要なイベントがあってこれである。これは1924〜32年まで続けられた実
験。シカゴにウェスタン・エレクトリック社という電気会社があって、そのホーソン⼯場で⾏
われた。
・物理的作業条件と⽣産能率の関係をテスト
どんな実験やったかというと、物理的な作業条件が⽣産能率に関係するかどうかをテストし
た。1単位ずつ照明を明るくすれば1単位ずつ上昇するかとかのテスト。
①社会的規範→⽣産⽔準に影響(>能率)
結論から⾔うと、多少の関係があったが⼤きな関係ではないということがわかった。照明を明
るくしても作業効率・収益が上がるわけではないので、今度は照明を逆に暗くしていった。そ
れでも収益にたいした変化はなかった(落ちることはなかった)。なので物理的な作業条件と
⽣産能率は⽐例的な関係ではないということがわかった。では何が作業効率に影響するファク
ターなのかというと、⼥性の労働者間の⼈間関係が⽣産⽔準に影響を与えているようだという
ことがわかった。それはいったいどういうものなのだろうか。⼀つわかってきたことは、8年
間の⻑い期間の実験なので、初期の頃に⽐べて後半の⽅が⽣産能率が上がってきた。なぜ時間
とともに能率が上がったのかを調べると、結局⼥性の労働者の間に、「実験に参加しているこ
と⾃体が、なんか社会的な貢献しているという意識が労働意欲に繋がって⽣産⽔準を上げて
いったということがわかった。
②⾮経済的な報酬・制裁→⾏動に影響
さっきのインセンティブのように、給料を上げてゆけばそれに⾒合って⽣産⽔準が上がるのか
行政学 - 4 ページ
どうかということも⾮常に興味深い研究課題であるが、実はそういう経済的な要素よりは、も
う少し⼼理的な報酬の⽅が労働意欲に影響を与えているということがわかった。どういうこと
かというと、協⼒をすることによって能率が上げることができるのだが、⼿伝ってあげること
(貢献してくれたということ)を表彰すると、その⼈はグループの中で⾼い存在価値の⼈だと
認めてくれたということで嬉しいわけである。それは経済的な給料が他の⼈よりも多くなると
いうことではなく、むしろ賞賛や名誉とか、そういう⾃分の価値の⾼さを認めてくれる⾃我欲
求みたいなものが、実は⼤きく⽣産⽔準に⼤きく影響を与えていると⾔うことがわかった。
③ときに1次集団の構成員として⾏動
また、こういう⼯場の⼈たちというのは、いつも知らない⼈と働いているわけではなくて、何
年も⼀緒に働いている顔⾒知りが多いだろうから、顔⾒知りの集団の⼀⼈としての仲間意識が
ある場合とない場合では⽣産⽔準に影響があるということがわかった。
④インフォーマルなリーダーシップの存在
組織図上のフォーマルなリーダーというのがいる。⼯場⻑とかそれぞれの⽣産ラインの⻑とい
うフォーマルなリーダーがいるのだが、そうではなくてインフォーマルなリーダー、つまり⼈
望を集めている⼈が事実上のリーダーシップを持っているというのが⼈々に受け⼊れられてい
るグループほど、⽣産⽔準が⾼いということがわかった。
つまり考えてみると、⽣産能率を決める要素というのは、物理的な作業効率(照明の明るさや
室内温度)で決まるのではなくて、もう少し⼼理的な社会関係的な要素が⼤きく影響している
のではないかというところが⼈間関係論の⼤きく貢献したところである。
第2節アメリカ⾏政学の組織論5
第3段階ーーサイモンの現代組織論以降
サイモンの組織論の特徴というのは、⽅法論的個⼈主義な⾒⽅をするので、
・組織はすでに存在する物体(実態)ではない。
という⾒⽅をする。つまり、いるのは各個⼈である。⽅法論的個⼈主義なので。各個⼈と個⼈
の関係である。
・構成員と管理者=誘因(incentive)と貢献(contribution)を交換して組織形成
「⼤きく分けると構成員と管理者というものがいて、誘因と貢献を交換して組織というのは形
成されてゆく。
・顧客(client)を含めた組織の⼀般理論
それは常にそれぞれの条件次第で均衡が変わってゆく。ダイナミックなものである。」という
ような組織論だった。
・⾏為(doing)よりも決定(deciding)に焦点
なので組織がどういう⾏動するか、⾏為そのものよりは各個⼈の組織に対する意志決定に焦点
を当てていった、というところが⼤きく⾒⽅を変わっていったところである。
・個⼈の「限定された合理性」(bounded rationality)を克服する意思決定システム(=組織)論
このサイモンの意志決定システム論というのが⼤きな特徴なのだが、彼は組織というのは⼆⼈
以上の⼈が協⼒をする仕組みなのだといったのは、⼀⼈では路上の⼤きな⽯は動かせない。し
行政学 - 5 ページ
かし⼆⼈以上が協⼒をすれば(協⼒をするという形の何かが意志決定をすれば)⽯を動かすこ
とができる。そういう意味では合理性というものが、個⼈ではどこかで限界がある。「限定さ
れた合理性」。個⼈の合理性の限界を、組織によって克服しようという考えがサイモンには
あったと思われる。
・ただし政治(⺠主主義)がない!?
こうなってくると、⼈間関係論との⾒⽅とも違うし、科学的管理法のような考え⽅とも違うと
いうことで、アメリカ組織論といっても⼤きな枠組みの中での議論であるといえる。つまり、
政治とか⺠主主義という議論は希薄である。もちろんその中で意志決定をするというような、
意志決定システムとしてみたサイモンは、どのように意志決定をするのか・組織としての意志
決定をどうやって決めるのかというときには、⺠主主義的な⽅法を使うのか、あるいは独裁制
で⾏くのかが問題になるわけである。現在では企業においてもコーポレートガバナンス(企業
統治)がうるさくいわれるようになったわけだし、そういう意味では⺠主主義(政治)がない
ということにはならないが、組織論の系譜を⾒てゆくと政治⾏政分離論の枠組みの中で議論を
してきたという特徴がある。
第3節官僚制の逆機能1
・ウェーバーの問題提起「官僚制は、ひとたび完全に実現されると、もっとも打ち壊しがたい
社会組織の1つとなる」
社会が現代化してゆくにつれて、必然的に官僚制という組織形態は現れるが、それは壊しがた
い組織になるのだと⾔うこと。それは具体的には、
・形式的合理性を追求する官僚制が次第に政治的領域に進出してゆく危険性を指摘
したということ。
・官僚制の優位性は技術的優秀性と情報
現在の⾏政組織もそうであるが、官僚制が⼀般市⺠よりも優位だといわれるのはやはり情報⼒
である。これが決定的に違う。専⾨知識といわれるが知識については⼀般市⺠も勉強知ればい
いのだが、もっと⼤きい問題は情報なのである。起こっている問題に関する情報は⼀般市⺠と
してはマスメディアを通じて知るくらいしかなく、政策決定者に直接接触して得られる情報と
いうのはかなり限られている。そういう意味では官僚制というのは政策決定を担っている⽴場
でもあるので、情報という⾯では圧倒的優位に⽴っている。
・専⾨的で情報収集⼒をもつ官僚制は⺠主主義に対する脅威となる←議会による統制、⾏政⼿
続法、情報公開法等
官僚制は専⾨的な情報収集⼒で官僚が政党や議会よりも優位に⽴っているというのは問題なの
である。議会とか政党は我々の代表であるから、⺠主主義というのは代表を選ぶ仕組みである
から選挙で代表を選ぶのに、その代表も情報を得られる⽴場にあるかもしれないが、やはり官
僚制に⽐べると劣ってくる。むしろ⾃⺠党は官僚制から情報をもらって、その代わり⾏政改⾰
を遅らせるとか天下り先を温存するという形で折り合いをつけているのも事実である。そう
なってくると、議会による統制も難しいだろうし、⾏政⼿続法や情報公開法というような形で
行政学 - 6 ページ
情報をオープンにする、あるいは⾏政に対するアクセスをもう少し公正で透明なものにしてゆ
くという制度が作られても、⼀般市⺠と官僚制との距離は⼤きい。これはウェーバーは指摘し
た官僚制の問題そのものであると思われる。アメリカ組織論は、この問題意識はないわけでは
ないが、問題意識が希薄であるという問題点が残る。
第3節官僚制の逆機能2
官僚制が近代化につれてどのような社会でも現れてしまうということはしょうがないが、官僚
制が持っている逆機能(社会に対してマイナスの効果を与えてしまうこと)とはどういう形態
を取っているのだろうか。これがアメリカの社会学においてウェーバー以後の官僚制組織論と
して発達してきた。
1. 逆機能の諸形態(社会学の官僚制組織分析)
①ロバート・マートンの逆機能論規則に過剰反応して硬直化、⽬的の置換
これは官僚制というのは規則というのを守ろうとする。合法的⽀配をするというのが正統性獲
得の最も重要な根拠であるので、ルールを重視するというのは官僚制の重要な⾏動原理の⼀つ
である。問題なのは、ルールに過剰反応してしまうことなのではないか。⾮常に反応が硬直的
であり、柔軟に対応できないということである。ルールがあってその通りにやらないと先に進
めてくれない、少しだけ状況が違うのに昔と同じルールを当てはめてくるとか。そういうこと
から、官僚制は問題を解決するという合理的な仕組みであったはずなのに、規則を守ること⾃
体が⽬的になってしまっている。問題を解決することが⽬的であったはずなのに。規則を守る
こと⾃体が⽬的になってしまっている。これが⽬的の置換。
②フィリップ・セルズニックの包摂(cooptation)論、熟練による視野狭窄(→⽬的PRと適応的吸収)
これは、官僚制は熟練と⾔うことから、専⾨知識を磨いてゆくことができる。なので時間とと
もに熟練することで専⾨的な知識の上で優位に⽴てる。しかし、それは専⾨⾺⿅になってしま
うことでもある、つまり視野が狭くなってしまう。確かに掘り下げて⾒ることができるかもし
れないが、視野狭窄が起こってしまう。ではどうやって克服するかというときに、そもそも官
僚制の⽬的は何だったのか、このプロジェクトの⽬的は何だったのだろうかという⾵な「そも
そも論」を世ノンかにもう⼀度考えてもらう、つまり⽬的をPRすることで、視野狭窄から
救ってあげるということ。
もう⼀つは「適⽤的吸収」といって、これが包摂論になってくるのだが、状況に応じて社会の
⾊んな意⾒を聞いていこうということ。つまり具体的にいうと⾊んな審議会というものが⾏政
の中に作られることがある。審議会の役割の⼀つは、社会における様々な利害関係を持った⼈
に⼊ってもらい意⾒を出してもらって、⾏政の中の当該問題に対する⾒⽅を、視野狭窄からバ
ランスのとれたものに直してもらうということが期待できる。それが包摂である。
③アルビン・ゴールドナーの組織緊張論専⾨家と規則遵守者の⽭盾(ex. 組合指導者)
官僚制は⼀⽅では専⾨家だし、もう⼀⽅では規則遵守者である。この⼆⾯性がお互いに⽭盾す
ることがあるだろう。その⽭盾すること⾃体が常に官僚組織を緊張化させているんだというこ
と。そういう意味では、官僚制組織が緊張する、専⾨家としての⽴場と規則遵守者としての⽴
場が原理的に⽭盾するということなので、必ずしもそれが悪いというよりは、むしろそれがダ
イナミックな特徴を出しているという良い⾯もいっているような気がする。テキストでは悪い
⾯が載っている。⼭猫ストに出た組合員に対して組合紙同社が経営幹部と相談して取ったやり
行政学 - 7 ページ
⽅が、結局専⾨家というよりはむしろ規則遵守者として、上から押さえつけるやり⽅を取った
ということがある。それに関して、⼭猫ストに参加した⼈たちというのは、むしろ⾃分たちは
専⾨家であり、専⾨家として企業が取った技術⾰新のようなものはおかしいという反発をして
きたわけである。
④ミッシェル・クロジエの悪循環論
⽶=多元的参加、管轄や⼿続き、保守的 仏=孤⽴、ルール、爆発的問題解決
⽂化的な違いが官僚制の⾊んな逆機能と結びついているという議論。アメリカは⽅法論的個⼈
主義ということで、各⼈の平等な政治参加が尊重される傾向がある。なので各個⼈がそれなり
の⽴場から政治課程に参加する「多元的参加」が尊重される。ただ、ものすごい数の⼈たちが
政治課程に参加すると、政策決定はできなくなる。それだけ多様な⼈が多様な⽴場で多様な市
街を主張しても、それを社会的にどう⼀つの意志決定につなげてゆくかはものすごい難しい。
なのでアメリカの政治課程においては、それぞれの管轄(縄張り、権限・仕事の領域)をお互
いに尊重しないといけなくなる。しかし、そのことは結局政策決定が何も決まらない、現状と
かけ離れた政策決定ができないということに繋がりやすいわけで、保守的な結果に繋がりやす
い。これは⼀つのアメリカ社会の悪循環、官僚制的な逆機能の現れであるというわけです。
他⽅、フランス⼈は孤⽴を好むそうである。あまり集団として⾏動はしない。あまり社会的な
事柄に積極的に関わるのではなくて、しばらくの間⼈々は⾃分の⾃由を尊重しようとする。そ
れが孤⽴ということになるのかもしれない。しかし、それぞれが孤⽴という態度を取ってゆく
と、問題の解決に⼈々が積極的な政治参加がないので、官僚制的な解決の仕⽅しかできなくな
る。しかし、官僚制的な解決の仕⽅ではどうにもならなくなって、問題が⼤きくなってしま
う。そこまでくると、そのときに⼈々は⼤きく⽴ち上がり、デモが起こったり暴動が起こった
りして、⼤きな爆発的な問題解決がなされるということ。これもあまり社会の問題解決の仕⽅
としてはよくないのではないだろうか。アメリカも⾊々と問題もあるけど、フランスも問題が
あるじゃないか。両⽅とも官僚制的には逆機能であるといえる。それぞれの現れ⽅は、それぞ
れの政治⽂化・社会⽂化によって違いはあるけれども、同じように悪循環に陥っているという
のが悪循環理論である。
第3節官僚制の逆機能3
逆機能論のまとめ
①⼈間関係論の発⾒した⾮合理的・感情的要因を重視
規則に過剰に反応することによって、そこから出てくる⾮柔軟性、つまり官僚制と聞いたとき
に我々が思い浮かぶのは規則に堅いやつだという反感であるように、⾮合理的・感情的要因を
重視しているということ。
②経験的アプローチ
今までの議論を⾒てきてわかるように、⼭猫ストの例とか、⽇常の官僚の仕事の仕⽅に対する
反感とかの経験に基づいた議論をしているということ。
③マートンの「予期せざる結果」概念
組織というのは⽬的があって、その⽬的を達成するために⼈々が協⼒する、そのときに組織と
呼ばれる。つまり、⽬的を達成してしまえばもう組織はいらない。元々の概念はそうである。
ところが、⽬的を持っていた組織が予期しない結果を招いてしまったということ。組織の構成
行政学 - 8 ページ
員がけんかしてしまって⽬的どころではなくなった。⽬的とはqかんけいない、不都合な結果
を招いてしまったということが予期せざる結果である。
これが4つの逆機能論いずれにおいても出てきたものである。
④より広い概念としての組織概念(社会の協働システムーーコンフリクトや緊張)ーー組織論と
の接点
逆機能論はウェーバーの官僚制の概念と⽐べるともう少し広い組織概念を持っているように⾒
える。つまり組織の⼈たちが規則の遵守者であることにこだわりすぎて、硬直化してしまうと
いうことは、官僚制組織だけではなくて社会における組織の構成員全員に共通する特徴でもあ
るかもしれない。そういう意味では、組織全体における⾊んな官僚制的な問題を扱っているよ
うに⾒えるのである。逆機能論というのはそういう意味で官僚制組織だけではなくて、もう少
し広い組織も応⽤可能な議論を展開しているのではないか。さっき⾔ったような、組織の緊
張、規則遵守者としての側⾯と、専⾨家としての側⾯は、常に性質上ぶつかり合う。むしろぶ
つかり合うことが組織のダイナミックさを作り上げてゆくだろうという議論があったが、それ
というのは実は官僚制組織だけではなくて⼀般の組織でも⼗分院⾒られる特徴であるし、その
ことが⼀概に悪い訳ではないかもしれないということがある。そういう意味ではアメリカの組
織論と逆機能論は結びつく部分があると思う。
第3節官僚制の逆機能4
官僚制の逆機能論のその後の発展と⾔うことで、簡単に触れておく。⼀応ウェーバーの官僚制
論の後の批判論というのは、その後官僚制論というよりは組織論として発展していったと思
う。しかし教科書では次のように書いてある。組織の経済学の分野の議論である。
2. 組織論、その後の発展
・ローレンシュ・ローシュのコンティンジェンシー理論(条件適応理論)ーー外部環境の不確実
性
要するに組織を取り巻くが外部環境が不確実な場合に、どのように組織は不確実な状況に適応
してゆくかということを議論している。
・環境変数ーー組織規模、技術、環境変動
これらが取り上げられることが多い。
・ミルグロム・ロバーツ『組織の経済学』ーー近代経済学の制度論やゲーム論から⼈事や組織
デザインを説明
組織論はサイモンを超えるものは出ていない。
第7章組織の設計
次に考えるのは「官房」である。
行政学 - 9 ページ
内閣官房って648⼈もいるけど、こいつらはいったい何をやっているのか?これが次の問題。
行政学 - 10 ページ
財務省にも⼤⾂官房というのがいる。
地⽅⾃治の部分でも総務部という官房と対応する組織がある。これらは同じなのかどうか、考
える。
今⽇は終わり。
行政学 - 11 ページ
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