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配布資料 - 国土交通省

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配布資料 - 国土交通省
中国経済動向と『一帯一路』構想
∼その背景と意図、現状及び今後∼
於 国土交通研究政策所
平成27年10月7日
津上工作室代表
津上俊哉
1
プロローグ:登場したての2年半前の
習近平は、そして中国は、
日本でどう語られていたか
2年半前
江沢民のおかげでトップになれた
凡庸な太子党
習近平評
江沢民に頭が上がらないので、
1期目は何もできない
いま
鄧小平を上回る権力集中ぶり
反腐敗で指導者層を震え上がらせる
江沢民に遠慮 しているとはとうてい
思えない
遅くとも2020年代,早ければ2020年
「バブル崩壊間近」と見 る者 多し
中国経済評 以前に米国をGDPで追い越して世界
(それも極端な見方なことは後述)
一の経済大国に
2年半前の予想は完全に外れている、中国はこの間大きく変化しつつある
日本は尖閣騒動後遺症で、この変化を読み取れていない。
2
習近平寸評:「無死満塁でマウンドを託された
リリーフエース」
習近平登場後の四つの政治的変化
① 習近平への「権力集中」
② 空前絶後の「反腐敗」闘争
③ 三中全会が大幅な改革を打ち出し
④ 厳しい言論弾圧(「西側敵対勢力」を警戒)
←全ての変化は体制の危機感に起因
「崖っぷちに立った共産党を救うことが使命」
党内改革派、保守派を糾合した「救国連立政権」?
3
なぜそんなに「ピンチ」なのか
短期の経済問題
過去6年間:投資と借金で成長率を「嵩上げ」
いま:投資ブームの反動・後遺症で成長低下
今後:投資と借金を抑制しないと、経済破綻
抑制すると、反動で景気下ブレ圧力が働く4
中国は「まだら景気」で成長率は5%以下?
比較的「正直」な経済統計が示す中国経済成長の低下
サービス業種が
反映される指標は
比較的好調
伸び率は1年前の
半分以下に低下
対前年同月比
16%
15%
国有企業売上高
公式GDP成長率
14%
13%
12%
11%
10%
間接税収
9%
8%
7%
6%
5%
4%
3%
電力消費
2%
1%
0%
-1%
-2%
-3%
-4%
-5%
-6%
-7% 鉄道貨物(㌧・㌔)
-8%
-9%
-10%
-11% 出所:統計局、人民銀行、鉄道総公司、電力企業連合会
-12% 間接税収は「営改増」税制の影響を補正済み
-13% 各経済統計の対前年同月比の数字を3区間移動平均線で表示
-14%
重厚長大業種は
土砂降り景気
5
09年以来の高成長:
投資・負債頼みの「嵩上げ」成長
「4兆元投資」以降の金融緩和と投資ブーム
160
250
1.9
: 兆元
100
出所:国家統計局、中国人民銀行
固定資産投資
50
0
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
120
100
総債務/GDP比
(右軸)
国債及び地方債
債務実額(左軸)
80
60
40
20
0
非金融企業債務実額(左軸)
(地方政府の資金調達会社等の債務を含み
金融機関の債務を含まない)
家計債務実額(左軸)
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
出所:中央国債登記結算公司(地方債の残高は筆者推計)、
BIS(国際決算銀行)
• リーマンショック後の投資頼み、成長嵩上げ路線が限界に
• 製造業の過剰投資、住宅バブル、公共投資のやり過ぎ
• 不効率な投資と償還困難な負債をバランスシートに積み上げ
• これ以上投資・負債を膨張させると、ハードランディングが不可避に
6
対GDP比
単位
150
1.8
220%
210%
200%
190%
180%
170%
160%
150%
140%
130%
120%
110%
100%
140
債務実額︵兆元︶
M2/GDP比率
(右軸)
固定資産投資額累計︵2009年∼︶
200
2.0
中国の総債務とGDP比率の推移
習近平の「新常態(ニューノーマル)」
「危機意識」派と現状維持・抵抗勢力とのせめぎ合い
• 「投資・債務の過剰を早く方向転換しないと危ない」との指摘相次ぐ
(IMF, Goldman中国 哈継銘, 北京大学マイケル・ペティス教授, 全米 Conference Board)
• 投資頼みからの脱却・成長モデルの転換は、2年前に李克強も提唱したが
(リコノミクス)、各省庁・地方政府の現状維持派に跳ね返されて失敗
• 昨年、習近平が「新常態(ニューノーマル)」の音頭を取って一応の成果
‒ 潜在成長率の低下を認める、成長モデル転換を表明、改革を再確認
‒ 地方財政改革は、地方債務膨張を統制する色彩が濃厚
‒ 2015年の成長率目標は7.0% ← 2016年はさらに下げる可能性
• 成長低下の痛みに負けて、また「投資頼み」に逆戻りしないか?
‒ 最近の成長低下をみて、またぞろ投資アクセルに脚をかける仕草も
‒ 13次五計では高速鉄道大幅増設、シルクロード高速鉄道計画まで登場
‒ いまの中国経済政策は90年代末の日本「小渕ノミクス」に似ている
7
動き出した地方財政改革
地方財政危機を未然防止、しかし副作用も
• 昨年6月深改小組、政治局が決定、わずか半年で仕上げた
• 地方の重債務について、最後は国が責任を持つ代わり、
今後は中央が厳しく統制、債務圧縮方針に従ってもらう
• 既往債務借換分と新規事業資金用の2種類の地方債制度を用意、
地方資金調達はこれに集約、発行枠は中央が各省毎に割当て
借換枠:今年は3兆元、新規事業枠:6千億元
5月初度発行、金利は国債並み(←暗黙の中央政府保証)
• 金融界に泣いてもらう(従来は7%で融資、今後は3.5%、半減)
地方債務18兆元を地方債に置換えると=>年間6千億元減収
金利自由化も進む中、地方中小銀行は淘汰される?
• 地方財政危機を未然に防止したリフレ効果は大きいが、
代わりに中央財政は重い負担を負うことになった
8
「中国不動産バブルは崩壊する」か?
100
中国100大都市の住宅価格推移
80
-80
10,900
10,700
10,500
10,300
10,100
9,900
前月比で価格が上昇した都市数
前月比で価格が下落した都市数
百都市の新築住宅平均価格(右目盛)
-100
出所:中国房地産指数系統「百城価格指数」
【バブル大崩壊の可能性は低い】
• 上物値下がりは続くが、土地価格崩落の可能性はまずない
• 地方政府は5月から独自の市場救済策、業者に値引き抑制指導
9,700
9,500
【「二次災害」は避けられない】
• 上物建設が落ち込み、下流(建設業、鉄、セメント、家電)に影響
• 中小開発業者の破綻増加、不良債権増加(とくに民間金融で)
9
• 借入を土地収入に頼って償還してきた地方政府の債務危機
平均住宅価格︵ /㎡ ︶
【市場の調整が全国に拡がる】
60
• 13年に地方政府が大量の土地供給 40
20
→住宅新規建設が急増
0
• 13年から地方中小都市不況入り
-20
• 14年春以降大都市でも成約が減少、-40
業者の在庫が増加
-60
11,100
株バブルは崩壊
なぜ急騰?
•
•
•
•
不動産の不況入り
昨秋からの金融緩和
「官製上げ相場」を過信
信用取引急増
なぜ急落?
• あまりにも無茶な高値に
• ロスカットの連鎖反応
政府のなりふり構わぬ対応
• ①国有金融企業にPKO総動員令、②自由化したばかりのIPOをまた凍結、
そして ③「中央銀行が青天井で流動性を供給」と啖呵
• 「このまま奈落の底」シナリオは考えにくい、やがて止まる
• しかし、失ったものは大きい
• 国民の信任、海外の信任(市場の透明性)→人民元国際化にも影響?
10
中国株バブルの崩壊
いちばん大損したのは「国有経済」
中国の株式取引口座
資産残高規模別の口座数及び資産額(累積)
100%
92.0%
68.6%
80%
96.4%
99.5%
99.8%
出所:中国証券登記結算公司 (CSDC)
2015年6月統計月報
100.0%
60%
40%
100.0%
100.0%
20.5%
20%
0%
0.1%
2.7%
9.6%
12.8%
22.1%
24.2%
33.2%
① 個人の取引は零細、信用取引も元手はすったが、借金を負う人は少数
② 株保有は圧倒的に国有セクターに集中、しかもPKO対策でさらに負債
11
「株高を利用して国有企業の債務を圧縮」の皮算用も夢と消えた
元「切り下げ」は元の国際化が狙い
「輸出促進」はメディアの勝手読み
• 3%の下げ幅では、輸出促進や経済浮揚の効果は殆どない
• 習近平9月訪米を控えて、いま「為替操作」はオウンゴール
• 中国が念願していたIMFの
SDRバスケットへの元採用
についてIMFが7月に宿題
※「いまの中間値は市場に基づいた
レートとは言えず、もっと市場
に基づいた代表レートが必要」
• 今回措置はこの宿題をこなしたもので、IMFは歓迎コメント。
米財務省も「様子を見る」とコメント(事前通報あり?)
• 一方、レート自由化の措置を講じた以上、今後は変動が拡大
(仮にまた株暴落すれば、今度は株と為替が同時に暴落?)
12
「資本流出危機」説?
→「資本流出、キャ
ピタルフライトで
はないのか!?」
資金の流出入(昔言われた「ホットマネー」の推移)
1,000
500
単位:億ドル
• 景気減速につれ
「元先安」観台頭
→外為市場では
元買いドル売り
介入、外貨準備
も減少
1,500
0
-500
-1,000
資金の流出入(=A−B)
外為占款増減(A)
貿易黒字+浄外国投資受入(B)
• 元先安観につれて、国民・企業の外貨選好が高まっている
(輸出代金の両替見合わせ、外貨預金増、外債は繰上弁済)
• 中国から金が逃げ出す「キャピタルフライト」とは別物だが、
13
人民元資金市場には金利上昇等の圧力
人民元問題はグローバル問題
• 元「切下げ」で元安投機を誘発、現行レート維持は荷が重い?
• 元安容認→途上国のドミノ式通貨安、世界経済の中期的成長には○?
• 容認せず→中国が元安防止介入で米国債売却≒米利上げと同じ効果
• 世界経済の長期安定には (プラザ合意的な)為替の多国間調整が必要?
• 中国内にも、今資本勘定開放、元国際化を進めることに異論
• 余永定氏(元人民銀行政策委員):早すぎると「転覆性錯誤」を招く
• 「これで中国経済も崩壊か?」とか考えるべからず
• 2010年代前半、世界経済に吹いた順風(米の量的緩和、中国高成長)
は逆風に。中国の成長減速は織り込み始めたが、人民元問題は未だ
• 人民銀行もFED(連銀)同様にドル金利を左右できる「シャドー連銀」?
世界の金融為替政策を「G2(米中)」が仕切るのか?
• リスクの震源地は中国でも、痛打されるのは東南アジアや東アジア
日本も道連れになるかもしれない?
14
短期のまとめ:いまはポストバブル期
早期の「底打ち」「景気反転」はありえない
習近平の「新常態」≒日本で言えば「小渕ノミクス」の頃
• 民間セクターは債務圧縮へ→放置すると「バランスシート不況」に
• 雇用不安のない限り景気下支えは控えめにしたいが、7%成長の呪縛も
• 最大の課題は、過剰債務・バランスシート毀損の是正
現状:成長低下のあおりで、一進一退
‒
‒
‒
‒
4月30日政治局「景気下振れを高度に重視
雇用統計悪化→揺れ戻しが強まる?
地方財政改革に揺れ戻しの気配
13次五ヶ年計画策定でも投資積増し?
不安材料その1:景気下支えの「節度」を守れるか
不安材料その1:景気下支えの「節度」を守れるか
• If 大型景気対策, then 遠からずハードランディングに <= 悪い報せ
• 中国の不況はまだまだ続く、「織り込み」が足りないから動揺する
15
バブル後遺症脱出は進んでいるか?
金利が再反騰したら赤信号
中国長期金利の推移(2013/5∼)
2014 2Q∼3Q
2014 1Qまで
資金循環悪化で供給に翳り 不動産不況→
資金需要に陰り
資金需要は以前旺盛
20143Q∼
海外資金流入減少
金融緩和始まる
20151Q∼
海外資金流出拡大
長期金利高止まりの背景
資金循環の総体的な悪化
(カネ詰まりになり易い)
借り入れ需要が過大
(政府の投資積み増し)
年収益率
8.0
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
6.8
6.6
6.4
6.2
6.0
5.8
5.6
5.4
5.2
5.0
4.8
4.6
4.4
4.2
4.0
3.8
3.6
3.4
3.2
3.0
2.8
2.6
2.4
2.2
2.0
「暗黙の元本保証」のコスト
銀行のリスク回避意識
(借入意欲が旺盛なのは
「官」のゾンビ企業が中心)
利下げ
3月1日
国債
中短期票据(手形 AA+)
利下げ 準備金比率
11月21日 下げ2月5日
元買い為替介入に
よる流動性縮小
準備金比率
下げ4月20日
日米のポストバブル期は
長期金利が一挙に3∼4%
低下した。これに比べて
中国の金利低下は不十分
出所:中証指数公司
16
不安材料2:市場に逆らう失敗を重ねる共産党
• 株価対策(PKO)
• 放っておけば反転するのに、指数3500前後を目標に無理筋のPKO
→3500~4000のボックストレードを繰り返す投機筋の食い物に
• 為替レート
• 「市場実勢に従う」筈が習近平訪米前は3%以内に「安定」させる方針
→元先安を予想する投機筋の食い物に(8月末は300億$/日超の取引)
• 「反市場」型対応が浮上
• 投機抑圧型規制(株先物、為替フォワード取引の鞘を奪う→ヘッジ手段消滅)
• 金融当局を脇に押しやり、公安主導で「悪意の空売り」摘発
• 共産党内の不協和音が高まっている?
• 「敵対勢力」を警戒する声:習政権が連立を組む保守派の力の強さ?
• 大型景気対策を要求する声も根強い
• 政権の本流「新常態」が覆される動きにはならないと見るが・・・ 17
なぜそんなに「ピンチ」なのか
中期の問題
生産性の向上が今後の成長エンジン
それなしでは、今後実質成長の維持は困難
「国家資本主義」の過誤からの脱却が必要
「習近平改革」: 方向は正しいが、実行が伴うか?
18
「国家資本主義」では中期課題を達成できない
国有セクターの肥大
進
特権(コネ)企業家の跋扈
民
成長果実を「官」が取りすぎ
地方政府の不効率投資
﹁国
抑圧的、恣意的な許認可
競争不足
民営企業の疲弊
(人件費、環境、土地コスト等)
(利潤の低下、
資本蓄積が困難に)
退﹂
加えて
急激なコスト上昇
政策で激変するマクロ環境
• 共産党は「内なる既得権益」を縮小できるのか
19 19
これでは生産性も付加価値も上がらない
基幹産業の国有企業独占
共産党三中全会決定(2013年11月)
大胆な改革が打ち出されたが…
三中全会改革のポイント
規制緩和
国有企業改革
金融改革
開放型経済
○ 資源配分は市場に決定的な作用を働かせる
○ 価格規制、事業参入規制の規制緩和
○ 「混合所有制」を積極的に発展、国有企業は経営から投資・資産管理へ
○ 国有企業資産を財政、社会保障に活用
○ 民営、外資にも開放、民間資本による中小型銀行設立を認める
○ 金利自由化、資本取引の漸進的自由化
○ 上海自由貿易試験区から対外開放を加速
○ FTAを積極推進(「高水準のFTA」にも対応)
○ 農民財産権を強化、農村土地をマンション売却する途を拓く
農村土地改革 ○ 都市・農村の社会保障サービスの均等化
戸籍改革
行財政改革
その他
○ 農民工を都市戸籍に組み込み:中小都市は開放、大都市は制限
○ 「ニュータウン建設」より「ヒトの都市化」重点、国土の均衡発展重視
○ 一部地方権限の上級吸い上げ(中央からの丸投げを改める)
○ 不動産税施行、地方債認容
○ 司法改革(地方政府の影響を弱める)
○ 一人っ子政策の緩和(「二人っ子政策」)
○ 党中央国家安全委員会の設置
○ 党に「改革深化指導タスクフォース」を設置
•
•
改革派の意見を大幅取り入れ、全方位、大胆な改革案
しかし「体制変革」に近い難事業 =習近平主席の「背水の陣」
•
景気減速に伴い、改革後退の例も (例:国有企業改革)
20
なぜそんなに「ピンチ」なのか
長期の問題
もはや避けがたい少子高齢化の進行
2020年後半以降、成長低下の影響が深刻化
21
2020年代後半には少子高齢化で成長低下
出所:国家統計局2010人口普通調査
日本労働人口減少1995∼総人口減少2008∼
中国労働人口減少2012∼総人口減少2023∼?
だいたい約15年の時差で日本の後を追う
22
結論:中国がGDPで米国を抜く日は来ない
1. 短期:過剰投資の反動で下ブレ圧力、投資の減速にも
(∼2017) 時間がかかる → 向こう数年間、低迷が続く
2. 中期:共産党の既得権益の克服は極めて困難→最後の
(∼2025) 成長エンジンである生産性・付加価値の向上も
不十分 → 2010年代後半の成長低下
3. 長期:少子高齢化の影響深刻化は2020年代以降だが、
(2025∼) 進行防止はもはや手遅れ
→ 2020年後半以降は実質成長維持が困難に
米国は? アク抜けの早い市場原理主義、バブル崩壊後の
調整は終局に、過剰消費体質も緩和、シェール
ガス革命で経済活性化、少子高齢化と無縁な国
23
他方で、急激な「中国経済崩壊」もない
• 強み:中央財政が健全、「官」の経済グリップが強い
• 当面のポストバブル期を何とか乗り切る力はある
• 財政移転(社会保障政策)が進めば社会の不安定も一定の蓋
• ただし、究極の中国経済リスクは財政の持続可能性
「中央財政は余力十分」とはいえ、
① 地方債務を連結すると、負担は
大幅加重 (20%→60%)
85%
IMFレポートを元にした中国の国家債務比率予測
[注]
IMFの原予測(地方債務分を追加)に対する修正
-#1 G DP 成長率を次のとおり修正
80%
#1 GDP成長率を修正
75%
② 隠れ債務も多い(不良債権処
理、年金債務、農民差別撤廃…) 70%
#2 新予測
- 地方政府投資を次のとおり削減
#2 新予測
地方政府投資を削減
③ 成長が低下すると、財政負担は 65%
急激に重くなる
60%
④ 2030年以降は年金財政が急速に 55%
悪化
- GDP 成長率は次のとおり低下
IMFの原予測
出所 : IMF 対中協議レポート (2014年7月) に筆者が
追加計算
24
習近平政権の政治・外交
日中関係のこれから
2009年の明暗(中国急回復 西側低迷)を見て
中国国民の心理にも「バブル」が発生
• 経済面:「米国をGDPで抜くのは時間の問題」
• 外交面:強硬な国権拡張姿勢、傲り高ぶり
ポストバブル期に登場した習近平の使命は、
この逸脱を修正して体制を存続させること
25
強力で危機意識も強い習近平の外交・安保
• 難局突破・体制存続が最優先→対外関係は安定が基本
• 中米「新型大国関係」≒「中国は敵ではない。折り合いをつけよう」
• 「周辺外交」の目標:「二つの百周年」(≒内政)に服従、奉仕せよ
• 「親・誠・恵・容」、「成長果実を周辺にシェア」を宣伝→関係安定化
• 「国民の目をそらすために対外挑発」仮説は ほんとうか?
• 中国は「脆い」社会、「火を付ける」と、「消火」するのもたいへん
• 挑発の効果はいっとき。国民の目は早晩困難な内政に戻ってくる
• 習近平の任期は2022年まで保障→長期的な得失の衡量が必要
• 対外関係は安定させたいが、国民の「大国意識」は膨張
• 経済で大きく右舵→安保ではバランス上左舵も必要に(南シナ海等)
• 「経済大国外交」で「中国の地位向上」をアピールして自尊心を満足、
ナショナリズムの穏当な発散先を与える(AIIB、一帯一路)
26
「一帯一路」とアジアインフラ投資銀行(AIIB)
1. 経済大国外交は「ごった煮」
• 周辺外交、国内経済政策(過剰設備対策)
米主導国際秩序への異議・人民元国際化
2. 当初のAIIBプランはヘンだったが、
他方で、世界には米国と現有国際金融
機関への不満・中国主張への共感も
3. 日本メディアは「ヘンな」一面しか報じなかった
→50ヶ国以上が参加する「想定外」に慌てふためく結果に
4. 多数国参加は中国にとっても「想定外」で嬉しい誤算
同時に、手前勝手な運営はできなくなった
• AIIB設立で世銀、アジア開銀は「反省」←途上国はこれだけでも称賛
• 運営が脱線するリスクは減るが、同時に多難さが予想される
5. 日本の論調(AIIB:目の敵、「シ」基金:ノーマーク)はヘン
27
中国の中で見たAIIB -- シルクロード基金との「確執」
アジアインフラ投資銀行(AIIB)
シルクロード基金(SRF)
60ヶ国以上? (ADB 67ヶ国)
中国単独(外準65%、CIC15%、輸銀15%、開銀系5%)
資本金:授権1000億ドル(域内75%、域外25%)
中国:出資シェア30.34%、投票権シェア26.06%
当初:400億ドル
アジア各国を跨いで結びつけるインフラ整備事業 (とくに「高速鉄道」)
「互連互通」(アジア各国を繋ぐ
インフラ整備で域内経済を振興、統
合)
「一帯一路」(ユーラシア横断経済ベルトと東南アジア・インド洋・紅
海・アフリカ東岸を結ぶ海上シルクロード)を実現
中国の過剰設備業種の救済(輸出市場開拓)、インフラ沿線の地域開発、
中国企業の海外進出促進、人民元国際化
無差別、公平であるべき
中国産品・サービス・技術の輸出促進が狙いなら、「紐
付き」援助機関に
2015年6月29日設立協定署名式(50ヶ国)
現在各国内の批准手続、年内に設立(予定)
2014年11月北京APECで習近平が構想発表、12月末設立
初号案件:パキスタン水力発電所BOT
(世銀グループIFCと共同投資)
2号案件:中国化工集団のピレリ(タイヤ)買収に参加
3号案件:ロシアのヤマルLNGプロジェクトに資本参加
• AIIBと「シ」基金はライバル同士だが、パトロンの厚み、意思決定の
簡便・迅速さ等の点で、「シ」基金が優勢
• 「シ」基金は金融投資家か? 過剰設備対策や高速鉄道はどうした?
• AIIBはEU勢参加で顔は立ったが、今のままだと「国際貢献」機関化? 28
日本は今後AIIBにどう対応すべきか (私見)
• 当分「若葉マーク」のAIIBを観察、その間ADB,JBIC,JICAがコラボ
事業を実施、その結果を踏まえて2∼3年後に再判断すべき
①コラボ作業を通じてAIIBを「国際慣行」に誘導、味方につける
② 〃 〃
AIIBの「組織・スタッフとなり」を観察
③ 〃 〃
AIIB側にも信用格付けup等のメリットあり
• 「外から半分参加」して、日本企業のビジネス・ハンディ緩和、
同時に参加要請され続ける立場をキープ(フリーハンド温存)
• 日本企業は「一帯一路」や「シ」基金にどう対応すべきか
① 企業は悪びれずに中国元請け企業に「営業」せよ
② 紐付き「一帯一路」事業へのベンダー参加はかえって実現し易い?
③ 中国とのプライム競争(新幹線、原発…)はビジネスマインドで
④ 経 済 合 理 性 が あ り 、 地 域ニ ー ズ に 合 致 し た 「 一 帯一 路 」 事 業 だけ が
29
百年残って国際公共財になる→そういう事業をフォローする
今後の日中関係の行方
中国国防予算の伸び
出所:ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)
国家統計局
公式国防予算額
SIPRI推計国防予算額
SIPRI推計国防予算対名目GDP比(右軸)
公式国防予算対名目GDP比(右軸)
5.0%
4.8%
4.6%
4.4%
4.2%
4.0%
3.8%
3.6%
3.4%
3.2%
3.0%
2.8%
2.6%
2.4%
2.2%
2.0%
1.8%
1.6%
1.4%
1.2%
1.0%
0.8%
0.6%
0.4%
0.2%
0.0%
国防予算対GDP比
• この不安定期を如何にくぐ
り抜けるか・抜けられる
か」で、日本と地域の命運
が左右される
国防予算実額︵億元︶
• 「中国成長持続」幻想
が東アジア安全保障を
攪乱。不安定期はあと
10年は続く
13,000
12,000
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
• 中国の国勢・国権伸張が今しばらく続くとしても、
「慌てず騒がず」姿勢が大切 (今は過剰反応気味)
• 「月満つればすなわち欠く」…膨張は続くが、加速度は既にマイナス
• 領土領海にせよ他の権益にせよ、強引に得たものは「手離れ」も早い
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