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タイの投資環境 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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タイの投資環境 - 信金中金 地域・中小企業研究所
SCB
SHINKIN
CENTRAL
BANK
アジア業務相談室情報
Vol.24−1(15−5−1)
総合研究所(アジア業務相談室)
(2003.12.26)
〒104-0031 東京都中央区京橋 3-8-1
TEL.03-3563-7547 FAX.03-3563-7551
タイの投資環境
−タイ経済の現状と投資環境−
(はじめに)
現在、大手自動車メーカー各社はタイをピックアップトラックの生産・輸出拠点とするために
大規模な設備投資を行っており、2006 年までにタイの自動車生産能力は現状の年間 60 万台から
100 万台に増強される見通しである。こうした状況は自動車関連産業に従事する信用金庫取引先
にも多くのビジネスチャンスをもたらしている。本中金香港支店では 2003 年7月にタイのバン
コク周辺地域を訪問し、自動車産業を中心とする投資環境を調査した。その結果を Vol.24−1「タ
イ経済の現状と投資環境」(本稿)、Vol.24−2「タイ自動車産業の現況」として報告する。
1.タイ経済の概況
(1)2003 年のタイ経済は前年に続き好調で、経済成長率は 6.4%に達する見通しであり、アジ
ア通貨危機による打撃を完全に克服したと言える。特に自動車産業は国内販売の回復と輸出
の拡大によりタイ経済復活の原動力となっている。
(2)02 年のタイへの直接投資額が 01 年の半分に落ち込む中、自動車を含む金属加工・機械へ
の投資は底堅く唯一前年比微増となった。03 年に入ると金属加工・機械向けの投資は更に活
発化し、9ヵ月間で 02 年実績を上回る伸びを示している。
2.タイの投資環境概況
(1)タイ投資委員会(BOI)の投資奨励業種は、BOIの認可を受けて進出すれば税制面等
の恩典を享受できる。BOIの投資奨励業種以外は、外国企業(外資比率 50%以上)または
タイ企業(外資比率 50%未満)として現地法人を設立する。なお、外国人事業法の規制業種
である小売・卸売業やサービス業に従事できるのはタイ企業に限られる。
(2)ジェトロでは日系企業のタイ進出をサポートするために、バンコクセンター内にビジネ
ス・サポート・センターを設置しタイ進出の準備用オフィスとして入居手続料(2万円+消
費税)および実費負担のみで貸与している。
3.工業団地の特色
(1)バンコクから 150km 圏内には約 60 ヵ所の工業団地が点在する。今回の調査では自動車産
業の一大集積地となっている東部臨海地域で日系企業が多く入居する3ヵ所の工業団地を
訪問し企業の入居状況等を聴取した
(2)工業団地の選定に際しては、BOIゾーン(バンコクから遠いゾーンの恩典が厚い)とタ
イ工業団地公社(IEAT)の管轄下にあるか否かの確認を要する。地価は全般に安定して
いるが、バンコク周辺の立地のよい工業団地は上昇傾向にある。工業団地には完成工場の賃
貸サービスを行うところもあるので、初期投資を抑制したい場合などに利用するとよい。入
居手続きや入居後のトラブル対応を考えると、日本人向け営業スタッフの有無も判断材料と
なろう。
タイ経済の概況
1.アジア通貨危機を克服したタイ経済
タイの経済は 1990 年代前半に年率平均8%超の高成長を維持していたが、97 年7月に発生し
たアジア通貨危機による大打撃により、同年8月にIMFや日本などから総額 172 億ドル超の金
融支援を受けた。97 年の経済成長率はマイナス 1.4%となり、翌 98 年にはマイナス 10.5%まで
落ち込んだ。
99 年に入ると、自動車産業を中心としたタイの日系企業が、通貨危機発生前に積極的に投資し
過剰になっていた設備を稼動・維持するために輸出向け生産を開始するなど、製造業全般の生産
は増加に向かったこともあり、経済成長率はプラスに転じ、立ち直りの兆しが現れた。
2001 年は米国の同時多発テロによる世界的な景気低迷の影響を受け、タイの経済成長率は
1.9%まで低下したが、02 年には、所得の増加や低金利政策により民間消費が拡大し、企業の設
備投資、民間住宅投資、さらに低迷していた輸出も増加に転じたことから、経済成長率は 5.2%
に回復した。
03 年にはIMFや日本から受けていた支援融資を2年前倒しで全額返済することで、経済の復
活ぶりを内外にアピールしている。タイ財務省では、好調な自動車産業を始めとする内需が引き
続き堅調で、ハイテク製品や電気製品を中心とした輸出もさらに拡大するとの見通しであること
から、03 年の経済成長率は 6.4%に達すると予想している。
このようにタイ経済は、すでにアジア通貨危機の後遺症を克服し、安定的な成長過程に入った
と言える。また、タクシン首相の指導力によりASEANの盟主としての地位を固めつつある。
図表1:タイのGDP成長率の推移
1994
95
実質GDP
9.0
9.2
民間消費
7.7
7.8
政府消費
8.2
5.2
固定資本形成
11.4
11.2
民間投資
8.8
11.0
政府投資
22.4
12.2
輸出
14.3
15.4
輸入
14.4
20.0
96
5.9
5.8
12.1
7.0
2.8
22.6
-5.5
-0.6
97
-1.4
-1.4
-2.8
-20.5
-30.4
10.2
7.2
-11.3
98
-10.5
-11.5
3.9
-44.3
-52.3
-28.7
8.2
-21.6
99
4.4
4.3
3.2
-3.2
-3.2
-3.1
9.0
10.5
2000
4.6
4.9
2.6
5.3
16.8
-9.7
17.5
27.3
(単位:%)
01
02
1.9
5.2
3.7
4.7
2.9
0.5
0.9
6.3
4.7
13.3
-5.5
-6.8
-4.1
10.9
-5.5
11.3
(備考)国家経済社会開発庁(NESDB)の資料にもとづき作成
2.産業構造の変化
タイは、肥沃な土地が食
物の栽培に適しており、歴
史的に農業を基盤とする
産業が中心であったが、
1960 年代以降タイ政府が
外資を積極的に誘致して、
工業化を押し進める政策
を採用してきた結果、産業
構造の高度化が進んだ。
タイの産業部門別のG
DP構成比の推移を見る
と、80 年には農林漁業部門
図表2:タイの産業部門別GDP構成比推移
(単位:%)
年
1980
85
90
95
2000
01
02
業種
8.9
9.0
農林漁業
23.2 15.8 12.5
9.5
9.0
製造業
21.5 21.9 27.2 29.9 33.6 33.4 33.8
商業
17.6 18.3 17.7 16.9 17.3 16.8 16.4
サービス
14.0 14.5 13.4 13.1 14.4 14.3 14.2
運輸・倉庫・通信
5.3
7.4
7.2
7.2
8.1
8.4
8.4
行政・国防
4.6
4.6
3.5
3.8
4.3
4.3
4.5
建設
4.4
5.1
6.2
7.2
3.1
3.0
3.0
金融
3.1
3.3
5.5
7.1
3.0
2.9
2.9
鉱業
1.8
2.5
1.6
1.2
2.4
2.5
2.5
電気・ガス・水道
1.0
2.4
2.2
2.4
3.0
3.3
3.2
その他
3.5
4.2
3.0
1.7
1.9
2.1
2.1
合計
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
(備考)国家経済社会開発庁(NESDB)の資料にもとづき作成
2
が 23.2%を占め、製造業部門(21.5%)を上回っていたが、90 年代半ばに 10%を下回るように
なった。一方、80 年代後半に海外からの直接投資が増加し、家電製品、コンピュータといった電
機・電子産業が飛躍的に成長しただけでなく、自動車産業についても近年国際的な輸出拠点とし
て産業集積が進んできたことから、製造業部門の占めるウェイトが次第に高まり、2002 年には
33.8%を占めるに至り、タイ経済において製造業はサービス業とともに産業の中核を担っている。
3.輸出状況
タイの輸出品目別で、上
図表3:タイの主要輸出品目および金額
(単位:百万ドル、%)
位を占めるコンピュー
タ・同部品、集積回路(I
C)は、2000 年までは順
調に増加してきたが、01
年以降は世界的なIT不
況の影響を受け、低迷し2
年連続で輸出額が前年実
績を下回った。
一方、自動車・同部品
は、00 年に前年比 27.2%
の高い伸びを示した後も、
2年続けて 10%近い増加
率を維持し、衣料品を抜き
第3位の輸出品目となっ
年
1999
2000
01
02
品目
伸び率 構成比
コンピュータ・同部品 8,122 8,740 7,948 7,464
-6.1
10.8
集積回路(IC)
2,945 4,484 3,512 3,453
-1.7
5.0
自動車・同部品
1,902 2,419 2,655 2,920
10.0
4.2
衣料品
2,916 3,133 2,914 2,724
-6.5
4.0
宝石類
1,766 1,742 1,873 2,170
15.8
3.1
テレビ・ラジオ・同部品
1,347 1,965 1,693 2,102
24.2
3.1
水産加工品
2,010 2,067 2,015 2,016
0.1
2.9
エチレンポリマー
1,215 1,866 1,615 1,798
11.3
2.6
ゴム
1,159 1,525 1,326 1,740
31.2
2.5
米
1,949 1,641 1,583 1,632
3.1
2.4
半導体・トランジスター
764 1,025
887 1,454
63.9
2.1
鉄・鉄鋼製品
954 1,399 1,091 1,282
17.4
1.9
輸出計
58,463 69,624 65,183 68,903
5.7 100.0
(備考)ジェトロ・バンコクセンターの資料にもとづき作成
ている。このことからタイは自動車産業の輸出拠点として着実に成果を挙げていることがわかる。
4.直接投資の動向
国外からの直接投資は、90 年代前半の自動車産業の投資ブームを経て、95 年に総投資件数 561
件、金額 3,972 億バーツ(タイ投資委員会(BOI)認可ベース)と第1次のピークを迎えた。
その後、通貨危機の影響から低迷したが、2000 年にはタイ経済の回復を受けて、直接投資も増加
に転じ、総投資の件数は 761 件、金額は 2,126 億バーツに回復した。
02 年は世界的な景気低迷にともなう輸出不振を受け、輸出指向型産業向けが中心となるタイへ
の直接投資は大きく減少したが、03 年に入るとトヨタ自動車による大型投資プロジェクト等によ
り回復し、1∼9月累計額ですでに 02 年の通年実績を大きく上回っている。国別・地域別の内
訳を見ると、日本からの案件が最も多く、全体の約4割強を占めており、2位以下を大きく引き
離している。
図表4:国別投資実績(BOI認可ベース)
(単位:件、百万バーツ)
02
03(1-9)
1998
99
2000
01
年
国
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
合 計
483 254,864 513 141,489 761 212,649 575 209,622 483
日本
157 53,914 185 26,920 282 107,382 257 83,369 215
欧州
135 137,625 83 34,007 144 31,175
87 26,042
78
台湾
77 10,608 86
7,910 120 17,632
50
6,824
41
シンガポール
60 12,247 52
7,003
84 19,910
51
8,985
40
米国
86 23,020 53 46,351
72 37,752
40 40,131
37
金額
99,617
38,398
20,437
2,706
13,103
11,113
(備考)投資額は外資出資比率 10%以上の認可案件のみ。タイBOIの資料にもとづき作成
3
件数
金額
394 135,686
175 73,626
58 22,846
41 10,975
26
6,072
28 16,812
業種別では、02 年に電子・
電気機器、化学・プラスチッ
ク・紙およびサービス・インフ
ラ関連が大きく落ち込んでい
るのに対し、金属加工・機械(自
動車を含む)は前年並みの水準
を維持している。また、03 年
の増加要因は金属加工・機械お
よび化学・プラスチック・紙で
あり、電気・電気機器への投資
は 02 年実績を上回るものの、
伸び率は小幅にとどまってい
る。
図表5:業種別投資実績(BOI認可ベース)
(単位:件、百万バーツ)
年
2001
02
03(1−9)
外資比率
10%以上
業種
農業・農水産物加工
鉱業・陶磁器
軽工業・繊維
金属加工・機械
電気・電子機器
化学・プラスチック・紙
サービス・インフラ関連
投資額合計
外資比率
10%以上
31,450 15,273 42,925
6,375
5,412
2,125
15,725 12,150 19,550
28,900 25,375 30,175
57,375 51,855 31,025
76,925 69,908 18,275
65,875 29,650 28,475
282,625 209,622 172,550
14,679 18,423
2,022
1,602
6,706
6,008
26,692 46,458
28,552 31,640
6,510 38,849
14,456 29,637
99,617 172,616
(備考)投資額はタイ資本 100%出資および外資出資比率 10%未満の案件を
含む。外資比率 10%以上の数値(内書き)は 01、02 年実績のみ。
タイBOIの資料にもとづき作成
5.日系企業の進出状況
タイに進出している日系企
業は、バンコク日本人商工会
議所への登録ベースで 1,190
社であり、登録していない企
業を含めると約 3,000 社と言
われている。
バンコク日本人商工会議所
は、タイにある外国商工会議
所の中で最大の組織であり、
世界各国の日本人商工会議所
の中でも最大規模を誇る。
業種別では、製造業が 619
社で 52%を占めている。製造
業の内訳は電気・機械が 166
図表6:バンコク日本人商工会議所会員の業種別内訳
(2003年9月現在)
その他
13%
ホテル・レストラン
4%
電気・ 機械
(166社 )
自動車関連
(111社)
金融保険証券
4%
航空・運 輸
6%
製造業
52%
土木・建設
6%
商業・貿易
15%
化学・窯業
(92社 )
金 属
(82社)
繊 維
(48社)
食 品
(36社)
その他
(84社)
(備考)バンコク日本人商工会議所の資料にもとづき作成
社で最も多く、以下自動車関
連、化学、金属が続いている。
タイの投資環境概況
1.タイへの進出方法
(1)タイ投資委員会(BOI)による投資奨励
イ.タイ投資委員会(BOI)について
タイ投資委員会(BOI)は、タイ国内の投資の奨励を目的として設立され、投資奨励法
に基づき輸出の増加、雇用の増大、工業化などに寄与する投資奨励業種と各種優遇措置を定
める首相直属の政府機関である。BOI事務局は投資奨励に加え、既存の投資家や有望投資
家に対しビジネス関連情報を提供するなど、タイでビジネスを行おうとする外国資本・国内
資本をあらゆる面からサポートしており、BOIの優遇措置を申請しない企業も情報提供等
のサービスを受けられる。
4
ロ.投資奨励業種
BOIによる投資優遇措置を享受できるのは、投資奨励業種リスト(List of Activities
Eligible for Investment Promotion)に記載された業種に限られる。現行リストは 2000 年
に布告されたものだが、その後若干変更されているので最新情報を確認する必要がある。
なお、投資奨励を受けるプロジェクトの最低投資案件は中小企業重視の観点から 100 万バ
ーツ(土地代・運転資金を含まず)と規定されている。
図表7:BOIの投資奨励業種
1類 農業および農産品からの製造業(26 業種)
2類 鉱山、セラミックス、基本金属(18 業種)
(備考)タイBOI資料にもとづき作成
投資奨励業種リストはBOIホームペ
3類 軽工業(16 業種)
4類 金属製品、機械、運輸機器(23 業種)
5類 電子、電機機械産業(10 業種)
6類 化学工業、紙およびプラスチック(15 業種)
ージ上で確認できる。
http://www.boi.go.th/japanese/boi/a
ctivity.html
7類 サービス、公共事業(22 業種)
ハ.優遇措置の概要
BOIでは、産業の
図表8:BOIの投資奨励地域
地方分散化を図ること
<ゾーン 1>
を目的に、国内を3つの
中央部の6県:
ゾーンに分割し、バンコ
バンコック、サムットプ
クから遠い地域に立地
ラカーン、サムットサー
する企業ほど手厚い恩
コン、パトムタニ、ノン
タブリ、ナコンパトム
典が受けられるよう優
<ゾーン2>
遇措置を定めている。優
12県:
遇措置は主に、①法人所
サムットソンクラーム、
得税の免除・減免、②法
ラーチャブリ、カンチャ
人所得税からの経費特
ナブリ、スパンブリ、ア
別控除、③機械、原材料
ーントン、アユタヤ、サ
ラブリ、ナーコンナーヨ
の輸入関税の免除・減免、
ック、チャーチャンサオ、
④51%以上の外国資本
チョンブリ、ラヨーン、
の出資比率の許容、⑤外
プーケット
国法人の土地所有、⑥派
<ゾーン3>
58県
遣外国人へのビザ、労働
(うち特別地区18県)
許可書の発給などであ
る。①∼③の優遇内容に
(出所)タイBOIホーム
ついては、図表9に示す
(特別地区)
ページ
とおり、ゾーン別に定め
られている。
1,000 万バーツ以上の投資プロジェクト(土地代・運転資金を含まず)の被奨励者は操業
開始後2年以内に ISO9000(あるいは同等の国際規準)の取得を義務づけられる。実施不可
能の場合は1年間法人税免除の権利恩典が取り消されるため、早い段階から取得の準備を進
めておく必要がある。
5
図表9:BOIの優遇措置
法人所得税の免除・経費の控除
輸入関税の免除
・輸入関税が 10%以上の機械・設
第1
工業団地内
・法人所得税の3年間の免除
ゾーン
工業団地外
・なし
第2
工業団地内
・法人所得税の5年間の免除
ゾーン
工業団地外
・法人所得税の3年間の免除
第3
工業団地内
・法人所得税の8年間の免除
備の輸入関税 50%の免除
・8年間の免除期間経過後もさらに
ゾーン
5年間 50%を免除
・輸出用生産に使用される原材料
の輸入関税1年間の免除
・機械・設備の輸入関税の全額免
除
・輸出用生産に使用される原材料
・輸送、電力、水道の経費の2倍の
の輸入関税5年間の免除
控除を 10 年間認める。
工業団地外
・法人所得税の8年間の免除
・設備などの据付および必要インフ
ラの建設経費の投下金額の 25%を
純利益から控除することを認める。
特別地区 18 県
・法人所得税の8年間の免除
(団地内外問
・8年間の免除期間経過後もさらに
わない)
5年間 50%を免除
・輸送、電力、水道の経費の2倍の
控除を 10 年間認める。
・設備などの据付および必要インフラ
の建設経費の投下金額の 25%を純
利益から控除することを認める。
(備考)BOI資料にもとづき作成
ニ.BOIの審査基準と申請手続き
(イ)BOIの優遇措置を受けるためには投資奨励業種に該当する企業が、プロジェクト毎に
認可を受ける必要がある。BOIは、プロジェクトの認可に際し、透明性および公平性を
期するために下表の認可原則に基づき審査を行う。
図表 10:BOIプロジェクトの認可原則
①プロジェクトの付加価値が 20%以上見込まれること(ただし電子産業、農産品産業並びにBOI
が特別に認めたプロジェクトは除く)。
②プロジェクト開始当初の資本金の中の自己資本に対する借入債務の比率は3倍を上回らないこと
(ただし、拡張プロジェクトについてはケースバイケースで認められる)。
③近代的な生産方法ならびに最新の機械を使用すること(ただし機械の場合、公的機関が能率を保
証し、BOIが認める場合はこの限りではない)。
④十分な環境防止システムが設置されること。
⑤投資額が5億バーツ以上のプロジェクト(土地代金及び運転資金を除く)については、フィージ
ビリティ・スタディ(採算性調査)の提出が求められる。
(ロ)BOIへの申請手続きは以下の手順で行う。
図表 11:BOIへの申請手続
①会社概要、進出予定地、資金調達の方法、3ヵ年の事業計画などビジネスプランを記載した申請
書(10 ページ程度)に製造工程表を添付してBOIに提出する。
②BOI担当官とのインタビューが行われる(コンサルタントの同席可)。
6
③インタビューが終了し、担当官の疑問点がなくなれば、60 営業日以内に承認が決定され、優遇措
置の内容・条件等が記載された通知書が申請者に送付される。
④申請者は通知書の内容を確認のうえ、通知書受領後1ヵ月以内に受諾通知をBOI宛に行う(通
知書はタイ語で書かれているので、翻訳したうえで内容を確認する必要がある)。
⑤申請者は通知書受領後 180 日以内にBOI宛に奨励証書の発給申請を行う。
⑥奨励証書の発給申請から 10 営業日以内に奨励証書が発給される。奨励証書発給後 30 ヵ月以内に
工場を操業しなければならない。
⑦工場操業の 15 日以上前に、BOI宛操業許可申請を行う。
(2)外国人事業法
BOIによる投資奨励認可を受けずにタイに進出する場合は、民商法典にもとづき外国企業
(ここでは、外資出資比率 50%以上の企業を指す)あるいはタイ企業(外資出資比率 50%未満
の企業)として現地法人を設立することになる。
外国企業として設立する場合は外国人事業法が適用される。同法は、タイ国内産業の保護・
育成等を目的としており、外国企業に対し、一定の事業活動を禁止または規制している。例え
ば、外国企業はタイ国内で農林水産業、不動産業、小売業および卸売業の一部に従事すること
ができない。このため、外国人事業法の規制業種に該当する事業に進出する場合は、タイ人パ
ートナーとの合弁により、タイ側の資本を過半とするタイ企業として会社を設立する必要があ
る。製造業の大部分は、外国人事業法の規制対象業種とされていないため、外国企業扱いで参
入が可能である。なお、最低投資金額は業種毎に商業省令で定められているが、外国人事業法
規制業種は 300 万バーツ以上、規制対象外業種は 200 万バーツ以上となっている。
図表 12:外国人事業法の規制業種
第1類
禁止:新聞・ラジオ・テレビ、農業・果樹園、畜産、林業・木材加工(天然)等(9
業種)
第2類
原則禁止(閣議で承認を得て商務大臣の許可があれば参入可能):武器製造、国内輸
送、骨董品・民芸品販売等(13 業種)
第3類
原則禁止(外国人事業委員会の承認を得て商業省商業登記局長の許可があれば参入可
能):法律・会計業務、エンジニアリングサービス、小規模小売・卸売業等外国人事
業との競合体制が国内企業により未整備の業種(21 業種)
(備考)ジェトロ資料にもとづき作成
2.現地での支援機関
(1)ジェトロ・ビジネスサポート・センター
ジェトロは 2000 年7月にバンコクセンター内にビジネス・サポート・センター(BSC)
を設置し、日系企業のタイ進出をサポートする体制を整備している。BSCでは2名の日本人
投資アドバイザーがタイへの投資に関する手続き、法務・税務・労務や政府による優遇措置等
の情報を収集・分析し、投資に関する相談やアドバイスを行うとともに、進出準備用オフィス
を入居手続料(2万円+消費税)および通信費・コピー代等の実費負担のみで貸与している。
オフィススペースは9室あり、電話・FAX等の基本的なビジネス設備が設置されている。
入居対象者はタイへの投資、進出を検討している企業で、タイでの法人登記完了後は入居でき
ない。入居申請に際しては紹介状の入手、またはジェトロメンバーであることが必要とされる
ため、あらかじめ詳細を確認しておくとよい。入居期間は最長2ヵ月とされているが、その間
に作業が完了しない場合、2ヵ月間を延長できるように配慮されている。これまで進出準備用
オフィスを利用した企業は 85 社に達し、そのうち約7割がタイへの進出を決定している。な
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お、85 社のうち 70 社が製造業で、そのうち約4割が自動車関連企業となっている。
(2)金融機関
イ.現地金融機関の状況
タイには地場商業銀行が 12 行ある。他にフルライセンスを取得する外国銀行 18 行が支店
を開設している。日系金融機関では、東京三菱銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀
行の3行がフルライセンスを取得し、主に日系企業を対象として預金・貸出業務を行ってい
る。タイに進出している日系企業からは、金融取引については、特に支障なく行えるとの声
が多く聞かれる。
タイでは、現在低金利政策が継続され、政策金利は 1.25%と低い水準に抑えられている。
日系企業の多くは業績が好調であり、アジア通貨危機時の為替差損による累積損失が解消に
向かい、企業の手許資金に余裕ができつつある。銀行からの借入れニーズ減少にともない銀
行間の貸出競争が激化、企業向け貸出金利が一段と低下していることから、低金利での資金
調達が可能な状況となっている。
日系金融機関が、タイの日系企業に融資を行う場合に、親会社の保証をとるなど、親会社
の信用力に依存した取引になることが一般的である。これを受けて、地場商業銀行の中には、
日本人専任スタッフを置き、日系企業との取引を積極的に行おうとする動きが出ている。
ロ.日系企業の銀行取引
今回の調査では邦銀A銀行バンコク支店と地場商業銀行大手B銀行を訪問し、現地での活
動状況について聴取した。以下その内容について報告する。
(イ)邦銀A銀行バンコク支店
・邦銀A銀行バンコク支店は、日系企業約 1,000 社と取引している。支店のスタッフは総
勢 220 人で、日本人派遣者は 17 人おり、うち8名が営業を担当している。
・日系企業が取引を行う場合は、日本の親会社が日本国内で取引しているA銀行グループ
の銀行の支店を経由して申し込まれるケースが多い。
・A銀行グループでは、タイにコンサルタント会社を有している。同社はBOIの認可を
取得せずに外国人事業法の規制業種に「タイ企業」のステータスで進出する日本企業に
対し、「タイ企業」として出資することで、現地資本を過半にしなければならないとい
う規制をクリアするための支援を行っている。
・また、同社は近年の日系企業の活発な進出を受けて、コンサルタント業務として、日系
企業がタイに会社を設立するまでのサポートも行っている。
(ロ)地場商業銀行大手B銀行
・最近の日系企業のタイ進出の増勢を受け、B銀行では日系企業との取引を推進、強化す
る戦略を採っている。同銀行では、タイに進出する日系企業との取引を推進するため、
ジャパンデスクを設置している。ジャパンデスクは総勢 20 名の体制で、うち日本人2名、
日本語が話せるタイ人2名が所属している。
・預金取引は企業だけでなく、日本人会や日本人学校といった団体、個人も対象としてい
る。また、日系金融機関が通常取り扱わない、日系企業の従業員への給与振込サービス
を提供している。
・日系企業との貸出取引は中小のサプライヤーが中心で、1次、2次下請けだけでなく、
3次、4次の下請けメーカーも対象としている。
・外資企業の土地所有が制限されていることから日系金融機関は不動産担保貸付を通常は
取り扱わない。大手企業の場合は親会社の信用力を背景に現地日系金融機関から資金調
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達が可能だが、中小企業の多くは、資金繰りを親企業からの送金に頼らざるを得ないの
が実情である。
・工場の土地・建物を担保とした融資が可能な地場金融機関をうまく利用すれば、中小企
業であっても自力で資金調達できる可能性がある。また、信用金庫取引先の場合、信用
金庫の依頼にもとづき信金中央金庫からB銀行に対しスタンドバイL/Cを差し入れる
ことでB銀行が現地で融資を実行する方式も考えられる。
3.インフラ状況
(1)交通事情
イ.道路
タイ全体の道路網は、比較的整備が進み、全土で約5万㎞以上の舗装された国道や県道が
走っている。バンコク市内と自動車産業の集積地である東部臨海地域の間には、片側3車線
の高速道路(バンナートラット道路)と片側2車線の自動車専用道路(モーターウェイ)が
通っており、短時間でのアクセスが可能となっている。また、バンコクの外周には環状線(ア
ウターリング・ロード)が整備され、渋滞の激しいバンコクを迂回して地方間を往来するル
ートが確保されている。
バンコク市内は交通渋滞が激しいことで有名であるため、政府は市内鉄道網の整備により、
慢性的な交通渋滞の緩和を図っている。1999 年末には市内を縦貫する高速鉄道「スカイトレ
イン」が開通し、現在はその延長計画が進行している。また、日本の円借款を利用した地下
鉄も建設されている。
ロ.空港
タイ国内には現在 28 の空港があり、そのうち7つが国際空港である。最大のバンコク国
際空港(ドンムアン国際空港)はバンコクの北方約 24 ㎞に位置し、市中心部まで車で約 30
分の距離にある。バンコク国際空港は、年間旅客数 25 百万人、年間取扱貨物量 71 万トン、
年間航空機の発着回数は 17 万回となっている。
年々増加する航空需要に対応して、現在新国際空港(スワナブーン国際空港)を建設中で、
2005 年9月に開港予定となっている。新空港は、バンコクの東方約 30 Km に位置し、アジア
のハブ空港を目指して、最終的には年間旅客数 45 百万人、取扱貨物量3百万トンの規模を
想定している。新空港稼動と同時に、ドンムアン国際空港は閉鎖される予定となっている。
ハ. 港湾
タイ国内の主要な港は、バンコク、レムチャバン、マプタプット、サッタヒップ、ソンク
ラ、プーケット、プラチュアップキリカンの7ヶ所にある。かつてはバンコク港が貨物取扱
高で国内第1位であったが、チャオプラヤ川の河港で水深が浅く大型船舶の入港が難しいだ
けでなく、バンコク市内の慢性的な渋滞により利便性に欠けるという問題があるため、取扱
高は伸び悩んでいる。一方、1991 年に大型船舶の入港が可能な港として開港されたレムチャ
バン港は、自動車産業の一大集積地である東部臨海地域の開発が進んだ関係で年々貨物の取
扱高が増加し、現在ではタイ最大の貿易港となっている。2002 年の貨物取扱高はバンコク港
の 13 百万トンに対し、レムチャバン港は 25 百万トンに達している。
(2)電気
タイでは政府の管轄下にあるタイ発電公社(EGAT)が 220 ボルト、50 ヘルツの電力を安
定的に供給している。発電事業に関しては自由化が進んでいるため、EGATが送電する電力
の中には、民間の発電事業者から購入したものも含まれる。EGATにより送電される電力は、
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バンコク市内は首都圏電力公社(MEA)により、それ以外の地域は地方電力公社(PEA)
により、全国一律の料金にて配電される仕組みになっている。
電力は供給体制の整備が進み、停電回数は以前に比べれば少なくなっているとの声が多い。
今後の経済成長に伴い電力需要は一層増加が見込まれることから、政府は電力を安定供給する
ために、より多くの電源開発を進めている。
(3)通信
電話サービスについては、国営のタイ電話公社(TOT)が国内電話を、タイ通信公社(C
AT)が国際電話を提供している。国内電話の普及率は 12.5%(2001 年9月時点)となって
いるが、バンコク首都圏の 53.4%に対し、地方は 6.2%と普及が遅れている。
一方、固定電話の普及が遅れているのに対して、携帯電話は急速に普及が進んでいる。2002
年には 100 人あたりの普及率は 26.04 件となり、ASEAN諸国の中ではシンガポール、マレ
ーシアに次いで普及率が高い。主要な携帯電話会社3社の競争により、料金は低下傾向にある。
インターネットについては、プロバイダーが十数社あり、ISDNやADSLなどブロード
バンドが利用できる環境が整っている。タイでもインターネット利用者は近年増加しているが、
普及率は 1 万人あたり 775.61 件と低く、利用者もバンコクに集中し、地方の普及率は低い。
4.現地での生活
(1)在留邦人数
タイの日本大使館に在留届けを出している日本人は、2002 年 10 月現在 25,329 人であり、届
出していない人を含めれば5万人いるとも言われている。外務省によると、国別在留邦人数で
タイは世界第9位、都市別でバンコクは世界第7位となっている。
邦人の居住地域はバンコクに集中している。タイには多数の日本人が在留し、日本人のコミ
ュニティーが形成されていることから、日本人にとって、ビジネスや生活に関する情報が入手
しやすい環境が整っている。
(2)生活環境
実際にバンコクに駐在しているビジネスマンに聞くと、バンコクは日本人が駐在する環境と
して適しているとの意見がほとんどであった。物価が安く、肥沃な土地柄から食物は豊富であ
る。日本料理店が多数あり、日本食には不自由はしない。駐在員の住居も低コストである。ゴ
ルフ場はバンコク周辺に数多くあり、プレー代も手頃なコースが多い。常夏の国で暑さが厳し
いことを除けば、生活環境はほぼ満足できるようである。
(3)治安状況
治安状況については、日本に比べると犯罪率が高く日本人がスリや置引き、睡眠薬強盗など
の被害に遭い、保護される件数が多いという声がある一方で、特に不安はないとの意見もある
など聴取結果にばらつきがあった。
工業団地の特色
1.バンコク周辺の工業地域
タイには、バンコクから 150 ㎞圏内に約 60 ヵ所の工業団地が点在し、自動車・電子を中心とす
る外資系企業が多数進出している。各工業地域は、歴史背景、立地条件等の要因で、以下の特徴
を持つ。
(1)バンコク周辺地域(サムットプラカーン県など)には古くからトヨタ、日産などの自動車メ
ーカーや家電分野の企業が多く進出している。
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(2)北部地域(アユタヤ県など)には電子・ハイテク企業が進出しており、自動車関連ではホン
ダが工場を設置している。
(3)80 年以降に開発が進められた東部臨海地域(チョンブリ、ラヨーン県など)は三菱自動車、
GM、フォード・マツダが拠点を構え、周辺に自動車部品メーカーが多く進出したため、自動
車産業の一大集積地となっている。
(4)レムチャバン港やマプタプット港に近い南東地域には、石油化学関連の企業が進出している。
図表 13:バンコク周辺の工業団地分布図
(出所)304工業団地資料より
2.工業団地の種類と恩典
タイの工業団地には、①タイ工業団地公社(IEAT)が独自に開発・運営する工業団地、②
民間企業がIEAT基準で開発しIEATと共同運営する工業団地、③民間企業が独自に開発・
運営する工業団地の3種類がある。
IEATが管轄する工業団地(前述①および②の工業団地)に入居すると、BOIによる認可
取得の有無に関係なく、IEATからの恩典を享受できる。
図表 14:IEAT管轄の工業団地の恩典
①外国人出資比率 51%以上の企業の土地の所有
②事業に必要な外国人への労働許可
③事業に必要な外国人とその家族に対する長期滞在許可
④事業にかかる資本金、配当金、借入金、利息、使用料等の外国送金など
(備考)ジェトロ資料にもとづき作成
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3.主要な工業団地の状況
タイでは工業団地に入居する企業に対して手厚い優遇措置を与えることにより、外資の投資を
促進する政策を行っており、工業団地は外資導入の中心的な役割を果たしている。今回の調査で
は、タイにある工業団地の中から東部臨海地域に焦点をあて、自動車関連メーカーが集積し、か
つ日系企業が数多く入居している3ヵ所の工業団地を訪問し状況を聴取した。
(1)アマタ・ナコーン工業団地<Amata Nakorn Industrial Estate>(チョンブリ県)
イ.設立
1989 年
ロ.開発面積
約 8,000 ライ(1 ライ=1,600 ㎡)
ハ.開発業者
Amata Corporation Public Company Limited
(日本人担当者が現地で対応可能)
ニ.交通アクセス
バンコクから 57Km(自動車で 1 時間)
ホ.入居企業数
約 230 社(7割以上が日系企業)
ヘ.入居企業
自動車関連を中心とした化学、電気、食品などの幅広い業種(ダイキン、
デンソー、ソニー、三菱電機、石川島播磨重工業、日本ペイント等)が入
居中
ト.BOIゾーン
第2ゾーン
チ.土地価格
360 万バーツ/ライ(販売希望価格)
リ.管理費用
700 バーツ/ライ/月
ヌ.インフラ
①電気:PEAの電力(80MW)に加え、自家発電施設(277MW)を保有
②工業用水:給水量 23,000m3/日
③通信:電話 3,648 回線、ISDN回線利用可
ル.コメント
①日本人駐在員やタイ人技術者・管理者の生活圏であるバンコクから通
勤圏内にある。
②当団地を中心とした 60 ㎞圏内にホンダ以外の自動車メーカーの工場が
立地し、当団地から1時間以内でのアクセスが可能であり、自動車部
品メーカーにとっては優れたロケーションと言える。
③IEATとの提携により開発しているので、IEATによる各種恩典
を享受できる。
④タイにある工業団地の中では、サービス面や地質・地盤の固さなどの
面から当団地を高く評価する声が聞かれる。
⑤タイ人の技能職や管理職がバンコクに集中しているという問題解決を
はかるために、当団地開発会社は小中学校、高校を誘致したほか、現
在大学も誘致している最中である。
⑥団地内にワーカー向けの技術学校を設置し、企業研修やワーカーのス
キルアップなどの人材教育ニーズにも対応している。
(2)イースタン・シーボード工業団地<Eastern Seaboard Industrial Estate>(ラヨーン県)
イ.設立
1995 年
ロ.開発面積
約 7,000 ライ(1 ライ=1,600 ㎡)
ハ.開発業者
Hemaraj Land and Development Public Company Limited
(日本語の話せるタイ人担当者が現地で対応)
ニ.交通アクセス
バンコクから 117Km(自動車で 1 時間 30 分)
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ホ.入居企業数
135 社(うち日系企業 68 社)
ヘ.入居企業
自動車加工、金属加工、素材加工、エレクトロニクス、食品加工(フォー
ド・マツダ、GM、関西ペイント、横浜ゴム、旭硝子、三菱化学、ケロ
ッグ、堀江金属工業等)が入居
ト.BOIゾーン
第3ゾーン(2004 年 12 月まで、05 年以降は第2ゾーンとなる予定)
チ.土地価格
250 万バーツ/ライ(販売希望価格)
リ.管理費用
900 バーツ/ライ/月
ヌ.インフラ
①電気:EGATの変電所(800MVA 規模)から送電された電力を団地内
の変電所(100MVA 規模)経由で供給
②工業用水:給水量 20,000m3/日
③通信:電話 1,500 回線(最大 3,000 回線まで拡張可能)、ISDN回
線利用可
ル.コメント
①自動車メーカーおよび自動車部品メーカーが集積しており、「東洋の
デトロイト」と呼ばれている。
②IEATとの提携により開発しているので、IEATによる各種恩典
を享受できる。
③2004 年 12 月まではBOI第3ゾーンとしての恩典が受けられる(05
年以降は第2ゾーンに編入される予定)。
④タイ最大の貿易港であるレムチャバン港から 27 ㎞とアクセスがよい。
⑤自動車部品メーカーが多数入居していることから確かに競争は厳しい
が、一方新たなビジネスチャンスも多く、困った時に助け合えるなど
のメリット面も評価されている。
⑥落雷等による停電に備え、バックアップ用の電力設備が設置されてい
る。
(3)304工業団地<304 Industrial Park>(プラチンブリ県)
イ.設立
1994 年
ロ.開発面積
約 7,500 ライ(1 ライ=1,600 ㎡)
ハ.開発業者
304 Industrial Park Co., Ltd.
(日本人担当者が現地で対応)
ニ.交通アクセス
バンコクから 140Km(自動車で 2 時間 30 分)
ホ.入居企業数
40 社(うち日系企業 25 社)
ヘ.入居企業
自動車部品、製紙関係、金属加工 (アイシン、アルファ、王子製紙等)が
入居
ト.BOIゾーン
第3ゾーン
チ.土地価格
135 万バーツ/ライ(販売希望価格)
リ.管理費用
600 バーツ/ライ/月
ヌ.インフラ
①電気:自家発電所(300MW)とPEAの電力を併用
②工業用水:給水量 80,000m3/日
③通信:電話 3,000 回線以上
ル.コメント
①自家発電所とPEA電力の併用により安定した電力供給を受けられる
ため、停電の可能性が低い。
②雨水を集めた巨大な貯水池があり、豊富で良質な工業用水を利用する
13
ことができる。
③BOIの第3ゾーンの恩典が受けられる。
④バンコクから離れているため、土地価格が比較的低い。
⑤内陸に立地し、港(レムチャバン、マプタプッタ)が遠いため、入居
企業の多くは物流コストの安い小型軽量の製品を取り扱っている。
4.工業団地選定時の留意点
タイは全般的に外資企業の誘致政策が充実しているが、製造業企業がタイに進出する場合は、
インフラが充実しかつ各種恩典を享受できる工業団地への入居を薦める。以下に工業団地を選定
する際の留意点を指摘する。
(1)BOIゾーンとIEATの管轄
前述のとおりBOIは産業の地方分散化を図るため、国内を3ゾーンに分割し、バンコクか
ら遠いゾーンへの恩典を厚くする政策をとっている。このため入居を検討する工業団地がどの
ゾーンに属するか確認しておく必要がある。バンコクから離れた第3ゾーンの工業団地を選択
すれば、多くの恩典を享受できることとなる。
IEATが独自に開発あるいは民間と共同運営する工業団地ではBOIによる恩典の他に
IEATによる恩典が用意されているため、まずはIEAT管轄下の工業団地への入居を検討
すべきであろう。IEAT管轄下の工業団地の英文名称には 「Industrial Estate」が使用さ
れるので、他の工業団地(「Industrial Park」等)と容易に区別できる。
(2)自然条件
タイは熱帯モンスーン気候で雨期と乾期があり、雨期には連日大雨が降り続くこともあるの
で、工業団地の選定に際しては洪水などの水害発生の可能性について確認を要する。また、タ
イ中央部には土壌が粘土質で地盤が柔らかい場所がある。特にプレス加工を行うような業種の
企業は団地敷地内の地質条件を確認しておく必要がある。また、メッキ加工を行う場合は、純
度の高い工業用水が調達可能で、汚水処理施設が完備したところを選ぶことになる。
(3)土地販売価格と管理費
タイの地価は全体として安定しているものの、ここ数年外資系企業の進出増加もあり、バン
コクおよびバンコク周辺の地価は上昇しつつある。工業団地においても、バンコクに近く立地
条件のよいところは土地販売価格が上昇傾向にあり、バンコクから遠い工業団地との格差が拡
大している。
工業団地の開発業者は、土地販売収入と入居した企業の管理費収入を収益源としている。大
規模工業団地の場合、隣接地の新規開発等により継続的に土地販売収入を得ることが可能であ
るが、これ以上拡張が困難な中小工業団地では管理費収入のみで経営を維持することになるた
め、管理費の値上げを求められるリスクがあることに注意を要する。
(4)完成工場の賃貸サービス
工業団地においては、開発業者は基本的には土地の造営と販売まで行い、上物の工場は各企
業が設計・建設手続きを進めることになるが、工業団地の中には完成工場の賃貸サービスを行
っているところもあるので、初期投資の抑制や工場の早期稼動を希望する場合に利用を検討す
るとよい。イースタン・シーボード工業団地では、中小企業向けの完成工場を用意しており、
あらゆる業種に対応可能なミニ・ファクトリー(面積 1,262∼4,320 ㎡、賃貸料:1ヵ月 180
∼210 バーツ/㎡、購入の場合:土地価格1ライ 250 万バーツ、建物 9,000∼14,000 バーツ/
㎡)と、すべての設備が整い利便性の高いマイクロファクトリー(面積 486∼1,404 ㎡、賃貸
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料:1ヵ月 170∼175 バーツ/㎡)がある。
(5)開発区の日本人担当者
工業団地を選定する際に大手企業であれば、社内に専担部署を設置するとともに、外部から
の十分なサポートを得られるが、中小企業は内部体制が万全ではなく、外部サポートも限られ
る。現地での交渉において言葉の問題で苦労することが多いようであるが、スポットで通訳を
雇うと一般的な大卒者賃金の2∼5倍の費用がかかる。このため、工業団地の運営会社側に日
本語対応が可能なスタッフがいるかどうかも判断のポイントとなろう。
今回訪問した304工業団地やアマタ・ナコーン工業団地には日本人担当者が常駐しており、
入居手続きや入居後のトラブル時に相談に乗ってもらえる。イースタン・シーボード工業団地
では、日本人スタッフは配置していないが、日本語の話せるタイ人を営業担当として配置して
いるため、コミュニケーションの問題はなかった。
(6)管理者およびエンジニアの確保
タイでは理工系大学の卒業者が限られ、かつバンコクに一極集中している。優秀な人材やエ
ンジニアはバンコク周辺での勤務を希望する傾向が強いため、バンコクから遠く離れた工業団
地では、管理者やエンジニアをいかに確保するかが課題となる。
(7)日本人の住環境
今回取材ではタイはバンコクを含め概ね治安が良いという声が多かったが、日本人の居住環
境に適している地域はバンコクなど一部の地域に限られる。道路網が整備されたことで、バン
コクからの通勤圏は拡大し、バンコクから自動車通勤が可能な工業団地もあるが、居住コスト
を考慮すれば団地内に外国人用の宿泊施設や住宅が完備していることも入居の条件となろう。
(香港支店
真下正博)
本レポートは、情報提供のみを目的とした上記時点における当研究所の意見です。施策実施等に関する最終決定は、ご自身の判断
でなさるようにお願いします。また、当研究所が信頼できると考える情報源から得た各種データ等に基づいてこの資料は作成され
ておりますが、その情報の正確性および完全性について当研究所が保証するものではありません。
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ご意見をお聞かせください。
信金中央金庫 総合研究所
アジア業務相談室 行
今回の「アジア業務相談室情報 Vol.24−1」について
今後、「アジア業務相談室情報」で取り上げてもらいたいテーマ
信金中央金庫総合研究所に対するご要望
差し支えなければご記入ください。
年
貴金庫(社)名
月
日
ご芳名
ご担当部署・役職名
ご住所
ありがとうございました。信金中央金庫担当者にお渡しいただくか、総合研究所宛ご送付ください。
(〒104-0031 東京都中央区京橋3−8−1)
(E-mail:[email protected])
(FAX:03-3563-7551)
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