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PCAインドウィークリー

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PCAインドウィークリー
PCA インド ウィークリー
2006年3月8日号
今週のインド動向
今週のインド経済
インド政府、新年度予算案を発表
日印租税条約改定
今週のインド産業・企業
【産業:自動車】自動車各社値下げへ、印政府予算案が物品税を減税
【企業:航空】印ビール王、世界の空に羽ばたく
【企業:航空】インド政府、ジェット・エアウェイズのサハラ買収を承認
インド株式ウイークリー・レビュー(2006/2/27∼3/3)
続伸で史上最高値を更新
今週のインド政治
印米、原子力協力で合意
今週のインド社会---こんなことが起きている
米国は信用できない?
インド鉄道、鶏肉・鶏卵を解禁
チキンはダメ、マトンで我慢、訪印のブッシュ大統領
今週のコラム-----現代インド事情 “インド NOW !”
第 58 回
デリーメトロのマイナス面
隔週インド講座-----インドをもっとよく知ろう
第 29 回
インドの都市部の問題-----(3)ムンバイの場合
製作・著作 ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社 www.pcaasset.co.jp
掲載記事の無断転載を禁じます。
〔当資料に関しご留意いただきたい事項〕
当資料は、ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社が、インドの政治、経済、文化等にかかる 一般的な情報を ご紹介する ために株式会社インド・ビジネス・セン ターの協力によ り任意に作成した資料です。
当資料は、特定のファ ンドへの投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は信頼できる と判断される材料を使い、十分な注意を払って作成しておりますが、弊社及び株式会社インド・ビ ジネス・セン ターは、その
正確性、完全性をお約束するものではありません。また、【産業・企業】等の項目において掲載された企業につきましては、あくまで直近のトピ ックとしてご紹介させていただいたものであり、個別銘柄の売買の推奨を意
図したものではなく、当グループ 外国法人による組入れを示唆するものでもありません。
PCA インド ウィークリー
2006年3月8日号
今週のインド経済
インド政府、新年度予算案を発表
インド政府は 2 月 28 日、来年度予算案を国会に提出した。2005 年度の国内総生産(GDP)成長率は 8.1%を予測、来年度は 10%
を目指すとした。主な政策は、農業部門の生産性向上、インフラ(社会基盤)の整備と雇用造成。歳出総額は前年度予算比約 10%
増の 5 兆 6,399 億ルピー(約 14.7 兆円)。05 年度の GDP に対する財政赤字予想比率は 4.1%で、目標としていた 4.3%より改善した。
06 年度は 3.8%の目標。軍事費は同 7.2%増の 8,900 億ルピー(約 2.3 兆円)で昨年の伸び率を下回り、歳出総額比では 15.9%となっ
ている。個人および法人の税率は不変で、小売業などの自由化などに関しても踏み込んだ表現はせず、閣外協力をするインド共
産党にも配慮した形となっている。
日印租税条約改定
外務省の 2 月 24 日付プレスリリースによれば、この日東京で、麻生太郎外務大臣とマニラル・トリパティ駐日インド大使が、「所
得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定
書」に署名した。これにより現行 15∼20%で課されていた配当や利子、そして使用料・技術上の役務に対する料金への課税が一律
10%となる。特に問題となっているのがソフト開発に関する課税で、インド側が日本企業の発注で 1 億円の仕事をしても、手取り受
取額は 8,000 万円(2,000 万円は源泉徴収)になってしまっている。外務省は、今回の改正により、投資交流の促進を通じて、日印
両国経済関係の一層の強化に資することが期待されるとしている。なお、この議定書は、両国国内法上の手続きの承認をへて、
外交上の公文書を交換した翌日から 30 日後に発効する。
今週のインド産業・企業
【産業:自動車】自動車各社値下げへ、印政府予算案が物品税を減税
2 月 28 日、インド政府は 2006 年度国家予算案を国会に提出したが、小型車に対する物品税の減税(15%⇒12.5%)に踏み切った。
それを受けて、各主要メーカーが一斉に該当モデルの値下げを発表、翌日の 3 月 1 日より実施した。最大手のマルチ・ウドヨグ社
が「マルチ 800」などを 1 万 3,000-2 万 2,000 ルピー(約 3 万 4,000∼5 万 7,000 円)の範囲で、第 2 位の現代モーター・インディアが
主力車種「サントロ」を 2 万 3,000 ルピー(約 6 万円)を上限とし値下げをした。一方、相殺関税(CVD)4%が一律に導入されたことから、
輸入車には逆風となり、ホンダ・シエル・カーズ・インディアは、輸入モデル「CR-V」を 3 万 3,000 ルピー(約 8 万 6,000 円)値上げす
ると発表、トヨタの「カムリ」や現代「テラカン」、「ツーソン」などの輸入モデルについても 3 万∼10 万ルピー(約 7 万 8,000∼26 万円)
が、またベントレーやポルシェに至っては 10 万∼40 万ルピー(約 26 万∼104 万円)の値上げが予想されている。
【企業:航空】印ビール王、世界の空に羽ばたく
インド・ビール業界最王手の「UB グループ」を率いるビジャイ・マリア氏が設立した民間航空「キングフィッシャー航空」が世界に
目を向けている。ビジネス・スタンダード紙によれば、インドの国際航空便の 6 割を占める大手国際航空会社と業務提携交渉を行
っており、同社幹部は「我々は世界のトップ 50 の航空会社と交渉中で、数ヶ月中には契約を締結したい」としている。インド航空行
政自由化の波に乗り、民間航空会社が力をつけてきている。2 月 26 日の産経新聞によると、インドの航空機利用客数は年間
2,500 万人で、経済成長に伴う中間層の拡大などにより年 30%近くの高い率で増え続けているという。
【企業:航空】インド政府、ジェット・エアウェイズのサハラ買収を承認
今年 1 月、インド航空最大手のジェット・エアウェイズは下位の格安航空会社サハラ・エアラインズの買収で合意したと発表し、そ
の後買収を公式なものとすべくインド企業省に承認を求めていたが、同省が承認を与えた模様。ビジネス・ライン紙が 3 日付で報
道した。買収総額は 5 億ドルで、契約によれば、サハラ・エアラインズの持つ機体、設備や発着陸枠を引き継ぐことになる。今回の
承認は、会社法 1956 の 108 項 A に基づき与えられたもので、当局関係者は他に残された手続きはないとしていることから、後は
本件の登記が残るのみとなり、インドの航空業界の M&A(企業の合併・買収)では過去最大の案件が成立することになる。
製作・著作 ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社 www.pcaasset.co.jp
掲載記事の無断転載を禁じます。
〔当資料に関しご留意いただきたい事項〕
当資料は、ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社が、インドの政治、経済、文化等にかかる 一般的な情報を ご紹介する ために株式会社インド・ビジネス・セン ターの協力によ り任意に作成した資料です。
当資料は、特定のファ ンドへの投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は信頼できる と判断される材料を使い、十分な注意を払って作成しておりますが、弊社及び株式会社インド・ビ ジネス・セン ターは、その
正確性、完全性をお約束するものではありません。また、【産業・企業】等の項目において掲載された企業につきましては、あくまで直近のトピ ックとしてご紹介させていただいたものであり、個別銘柄の売買の推奨を意
図したものではなく、当グループ 外国法人による組入れを示唆するものでもありません。
PCA インド ウィークリー
2006年3月8日号
株式会社インド・ビジネス・センター
代表取締役社長 島田 卓
インド株式ウイークリー・レビュー(2006/2/27∼3/3)
続伸で史上最高値を更新
先週の株価は好条件続出で高騰、3 月 2 日(木)には日中取引で最高値となる 10,706.22 まで買われた。
これは前週末終値(10,200.8)と比べると 500 ポイント以上の上昇となる。27 日(月)の経済白書発表で今年度
経済成長を 8.1%と予想、好調な経済を裏付けた。翌 28 日の予算発表では、国内総生産(GDP)に対する財
政赤字の改善も進み(目標としていた 4.3%を上回る 4.1%の見込み)、拡大する経済活動による税収増効果も
示せた。また、インドを小型車生産のハブとしたいインド政府は、小型車に対する物品税の引き下げを行い、
自動車業界の支援を明確にした。
99 年のクリントン前大統領以来となるブッシュ米大統領の訪印(3/1-3)では、米印関係強化が打ち出さ
れ、米国は国際世論から反発を招きかねない程の妥協(核兵器不拡散条約( NPT)非加盟のインドへの核
技術供与で合意)をし、インド側にはこれで核保有国としての孤立から脱却できるとの安心感が広がった。
ブッシュ大統領に同行した多くの米企業トップによる積極的なインド進出発言もあり、印米ビジネス拡大へ
の期待も大きく膨らんだ。先週は特に FII(外国機関投資家)による資金流入が顕著で、先週 1 週間だけで
6.3 億ドルもの純投資があった。さすがに月曜から 4 日間続伸すると、先週末の 3 日には国内企業や個人
投資家からの利益確定売りが出て 31 ポイントの下げを記録、小休止している。それでも終値は 10,595.4 と
前週末比 395 ポイントも上げており、一寸上げ過ぎの感もある。
(注)
断り無き限り、株価はムンバイ証券取引所 SENSEX 指数を指す。
2006/2/27∼3/3
SENSEX 指数推移
高値
10,706.2
↓
10,800
10,700
10,600
10,500
10,400
10,300
10,200
10,100
10,000
9,900
9,800
9,700
9,600
9,500
9,400
9,300
↑
安値
10,109.3
2/1
2/3
2/7
2/10
【業種別動向】
6%
4%
2%
0%
ア
・ガ
ス
油
石
ス
ケ
ヘ
ル
費
財
IT
耐
久
消
銀
行
金
属
車
動
自
財
- 2%
本
2/16
2/20
2/22
2/24
【主要銘柄動向】
8%
資
2/14
銘柄
オイル&ナチュラル ガス
リライアンス インダストリーズ
タタ コンサルタンシー
インフォシス テクノロジーズ
ウィプロ リミテッド
ブハルティ テレベンチャーズ
ITC リミテッド
ICICI バンク
ステート バンク オブ インディア
バーラト ヘビー エレクトリカルズ
2/28
3/2
2/27 始値
3/3 終値
10,214.6
10,595.4
産業
騰落率
石油開発
-2.9%
石油化学
1.8%
情報技術
2.1%
情報技術
2.4%
通信
2.6%
情報技術
12.1%
たばこ
6.6%
銀行
3.0%
銀行
2.2%
電子部品
11.3%
先週のインド株式市場は、2006年度の予算案にてインフラ整備や、小型車における物品税の引き下げが示されたことを
きっかけに資本財セクター(+7.49%)および自動車セクター(7.21%)が大幅に上昇。主要銘柄では、州政府が通信
会社の提供サービスに対して売上税を課すことが出来ないとの裁判所判定が好感されたブハルティ・テレベンチャーズ
(+12.1%)や、来年度発電所への予算配分を増額する計画が発表されたことで、発電機メーカー最大手のバーラト・
ヘビー・エレクトリカルズが+11.3%と、ともに10%を超える大幅な上昇となりました。
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当資料は、ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社が、インドの政治、経済、文化等にかかる 一般的な情報を ご紹介する ために株式会社インド・ビジネス・セン ターの協力によ り任意に作成した資料です。
当資料は、特定のファ ンドへの投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は信頼できる と判断される材料を使い、十分な注意を払って作成しておりますが、弊社及び株式会社インド・ビ ジネス・セン ターは、その
正確性、完全性をお約束するものではありません。また、【産業・企業】等の項目において掲載された企業につきましては、あくまで直近のトピ ックとしてご紹介させていただいたものであり、個別銘柄の売買の推奨を意
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PCA インド ウィークリー
2006年3月8日号
今週のインド政治
印米、原子力協力で合意
インドを公式訪問したブッシュ米大統領は 3 月 2 日、マンモハン・シン首相と会談し、印米間の原
子力協力推進の前提条件として、インドの核施設を民生用と軍事用に分離することで合意した。イ
ンドは民生用核施設に限り、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる。米政府はインドへの原
子力技術・核燃料の提供を可能にするため米議会に関連法の改正を働きかけるとともに、「原子力
供給国グループ(NSG)」(注)から対印協力への了解を取り付ける。
米国はこの合意により、インドの核兵器保有を事実上認め、インドが核兵器不拡散条約(NPT)に
未加盟でありながら民生用原子力の分野で協力を行うという「特例」を作ることになった。共同記者
会見でブッシュ大統領は、インドの特別扱いについて「時代も情勢も変わりつつある。合意は米国の
利益になる」と強調した。
(注)
核関連物質・技術の輸出を規制するための多国間組織(45 ヵ国)。NPT 未締結のインドに対す
る核燃料輸出や技術移転を規制している。
当情報は、インド国内外の情報を総合して掲載しております。
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PCA インド ウィークリー
2006年3月8日号
今週のインド動向 社会篇---こんなことが起きている
米国は信用できない?
現地調査会社 TNS インディアによると、ブッシュ米大統領の訪印直前に実施したインド 5 都市(デリー、ムンバイ、
チェンナイ、コルカタ、バンガロール)での世論調査では、 61%の人が「インドは米国を信用することができない」と
考えていることが明らかになった。
都市別ではコルカタ(旧カルカッタ)とバンガロール(インドのシリコンバレーと言われている)で特にその傾向が強
く、それぞれ 69%、68%が「信用できない」と回答。また全体の 60%が「インドは米国の対等なパートナーになれる」と
答え、特に首都デリー(75%)とバンガロール(73%)で高い比率を記録した。他方コルカタで「対等なパートナーにな
れる」と答えた人は 34%しかいなかった。左翼政党が政権をとる西ベンガル州の州都コルカタでは、印米関係強化
をさほど歓迎していないということか。
インド鉄道、鶏肉・鶏卵を解禁
2 月下旬に鳥インフルエンザ・ウイルスが検出されたため、インド国鉄は鶏肉と鶏卵を使用した食事をメニュー
から外していたが 27 日、感染地域の鶏の処分が完了したことから、メニューを元に戻した。今後インドの国鉄で
は、世界保健機構(WHO)の安全ガイドラインである 70 度以上での調理を遵守しつつ、危険性の高い半熟卵、卵
焼き、ローストチキンなどのメニューは今後も出さない方針。インドでは 2 月、西部のマハラシュトラ州とグジャラー
ト州で毒性の強い高病原性鳥インフルエンザ・ウイルス(H5N1 型)が検出され、マハラシュトラで鶏 29 万羽と卵
130 万個、グジャラート州で鶏 11 万羽が処分される事態に至ったが、これまでのところヒトへの感染は確認されて
いない。
チキンはダメ、マトンで我慢、訪印のブッシュ大統領
ブッシュ米大統領は、「印米関係強化」のため 3 月 1 日から 3 日間インドを公式訪問した。99 年のクリントン前
大統領以来となる米大統領の訪印だが、クリントン氏の時は今回のような核技術供与のような切羽詰った問題は
なく、前大統領は大好きな本場のインド料理に舌鼓を打つと共に、世界遺産のタージマハルや村落の人たちとの
交流を楽しんだ。
一方のブッシュ大統領はというと、大規模な反米デモも行われた時節柄、宿泊ホテルは要塞と化したとまで言
われ、厳重な警戒が敷かれた。その上、タイミングが悪いことに、インド国内で発生が確認された鳥インフルエン
ザのため、インド料理には欠かせないチキン料理の公式晩餐会での登場はなし、と相成ってしまった。ブッシュ大
統領夫妻をカラム・インド大統領が迎える晩餐会は、大統領官邸内の 5 万平米を超える広大な敷地に今を盛りに
咲く花々が楽しめるムガール庭園で催されたが、特別ディナーのメニューはマトンや魚を使ったビリヤーニやコー
ルマー(肉団子入りカレー )が主で、それに来訪した元首の希望料理を付け加えるのが恒例となっているようで、
今回は大統領の好きなブロッコリーのスープが出されたようだ。
製作・著作 ピーシーエー・アセット・マネジメント株式会社 www.pcaasset.co.jp
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2006年3月8日号
今週のコラム
現代インド事情
インドN OW!
ネルー大学日本語学科教授
プレム・モトワニ博士
第 58 回 デリーメトロのマイナス面
以前この欄でデリーメトロの公共交通や公共文化へのプラス面について紹介した。しかし、デリーメトロは必ず
しもプラス面だけではなく、いろいろなマイナス面も生まれている。
デリーは広々とした道路と並木のため有名である。大都会で緑がこんなに豊富な都市は少ないと思う。今回の
メトロは地下を走らせると、コストが数倍も高いため、大部分が高架線になっている。今後 10 年で 205km にわた
るメトロ以外に 150km のモノレールの建設も予定されている。当然ながら高架線が景観を損なうことは否めず、
デリーがコンクリートジャングルに変身することは間違いない。今はコスト的に高いため、高架線に決めたのだが、
数年後に地下にすればよかったとソウルやボストンのように後悔することになるかもしれない。
デリーメトロのもう 1 つの悪影響は沿線の地価急騰である。デリーは地価がもともと異常なほど高いため、最近
人口が郊外へと移動しつつあったのが、メトロができることによってそれに歯止めがかかるようになっている。郊
外の交通の不便さ、治安の悪さ、電力供給不足等のため、沿線周辺に人々が戻るようになった。デリーの現在
の人口は約 1,500 万人。これが 2021 年に 2,200 万人に急上昇すると予想されることを考えると、まだ検討中のデ
リーメトロの郊外への延長を急ぐ必要があるように思う。
隔週インド講座
インドをもっとよく知ろう
ネルー大学日本語学科教授
プレム・モトワニ博士
第 29 回 インドの都市部の問題-----(3)ムンバイの場合
ムンバイの状態はデリーよりずっと深刻である。人口的に両都市は同じ規模(約 1,500 万人)だが、デリーは近くに
ベッドタウンを数多く持っているため、人口密度はそれほど高くない。一方、ムンバイは南北に細長く伸びる町で、
幅がほとんどないため、デリーでは 3 階建てが上限であるのに対し、ムンバイでは 10∼20 階建ての高層マンショ
ンが一般的である。その結果、ムンバイの地価はかなり前から目が飛び出るような値段である。たとえば、一人当
たり GDP と 1 平米当たりの地価の比率で見た場合、東京が 9 に対し、ムンバイは 115 である。
ムンバイの人口は地方からの出稼ぎ労働者の流入によってここ 20 年の間に急増した。人口増加率はデリーの
年間 50 万人よりもはるかに高いと言われる。なぜならば、デリーは冬も夏も厳しいのに対しムンバイは年間 30 度
近くの気温であるため、スラムや路上暮らしでも気候的には問題ない。だから、ムンバイの 55%の人がスラムに住
むと言われる。過剰な人口のインフラに対する圧迫に関してもムンバイがデリーよりずっと深刻状態である。交通
渋滞、パンク寸前の公共交通手段、狭い居住スペース、公共スペースの少なさ(75%の公共用地にスラムができて
いる)、飲み水不足、ゴミ等々。
それから、当然ながら違法建築もデリーと同じくらい盛んである。ムンバイ市役所もスラムや違法建築一掃キャ
ンペーンと闘っているが(本当はデリーと同様に高裁に押されて)、こちらも「一歩前進二歩後退」といった感じであ
る。
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