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身体機能リハビリ支援システム - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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身体機能リハビリ支援システム - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「身体機能リハビリ支援システム」
中間評価報告書
平成14年6月
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「身体機能リハビリ支援システム」
(中間評価)分科会
はじめに
「医療福祉機器技術研究開発」制度の下で実施された「身体機能リハビリ支援シス
テム」プロジェクトは、人口の高齢化に伴い増加しつつある高齢者の身体機能低下の
予防と機能維持および軽度の障害の回復訓練に広く応用可能な、四肢の運動機能に対
するリハビリテーションの支援システムを開発することを目的として、平成 11 年度
から 5 年間の計画で開始されたものである。
今回の評価は、平成 13 年度に中間評価として、新エネルギー・産業技術総合開発
機構 技術評価委員会「身体機能リハビリ支援システム」分科会(分科会長:大橋正
洋、神奈川リハビリテーション病院 部長)において行われたものである。
本分科会では、当該分野に係わる国内外の研究開発動向や社会情勢の変化も踏まえ
つつ、プロジェクトの目的・政策的位置付け、目標・計画内容、研究開発体制や運営
状況、成果の意義、実用化可能性や波及効果、今後の展開等について評価を実施した。
本書は、これらの評価結果をとりまとめたものである。
平成 14 年 6 月
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「身体機能リハビリ支援システム」(中間評価)分科会
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
「身体機能リハビリ支援システム」(中間評価)分科会
分科会委員名簿
氏名
分科会長
おおはし
まさひろ
大 橋 正 洋
いのうえ
たけのぶ
井 上 剛 伸
たけかわ
ともこ
分科会委員
竹 川 智子
たていし
まさこ
立 石 雅子
やすむら
みちあき
安 村 通 晃
ますだ
ただし
増田 正
所属、役職
神奈川リハビリテーション病院 部長
国立身体障害者リハビリテーションセンター 室長
ATC エイジレスセンター
事務局次長 兼 企画プロデューサー
慶應義塾大学病院 課長
慶應義塾大学 環境情報学部 教授
産業技術総合研究所 高齢者動作支援工学グループ
グループリーダー
敬称略、五十音順
事務局:新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評価部
新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価委員会
「身体機能リハビリ支援システム」(中間評価)分科会
審議経過
●第1回分科会(平成 14 年 1 月 15 日)10:00∼16:40
公開セッション
1. 開会(分科会長挨拶、資料の確認)
2. 分科会の公開について
3. 評価の手順等について
4. 評価の分担及び評価の論点等について
5. 評価報告書の構成について
6. プロジェクトの概要(質疑応答を含む)
7. 周辺動向調査(質疑応答を含む)
非公開セッション
8. プロジェクトの詳細(質疑応答を含む)
●第 2 回分科会(平成 14 年 4 月 2 日)10:00∼15:00
公開セッション
1. 評価の進め方について
2. 評価書(案)の審議及び確定
なお、本評価報告書は、第4回技術評価委員会(平成 14 年 6 月 14 日開催)にお
いて了承された。
目 次
はじめに
分科会委員名簿
分科会審議経過
評価概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第1章 評価の実施方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 評価目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 評価者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 評価対象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 評価方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5. 評価項目、評価基準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1−1
1−1
1−2
1−2
1−3
1−3
第2章 プロジェクトの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 国の関与の必要性・制度への適合性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 事業の背景・目的・位置付け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 事業の目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 事業の計画内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5. 実用化、事業化の見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6. 今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7. 中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期 ・・・・・・
8. 研究開発成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9. 情勢変化への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10. 今後の事業の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2−1
2−5
2−6
2−9
2−13
2−22
2−24
2−25
2−25
2−42
2−42
第3章 評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【Ⅰ.総論】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 総合評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 今後の研究開発の方向性等に関する提言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【Ⅱ.各論】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 事業の背景・目的・位置付け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 事業の目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 事業の計画内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5. 研究開発成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6. 情勢変化への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7. 実用化・事業化の見通し(実用化のイメージ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8. 今後の展開(実用化までのシナリオ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3−1
3−1
3−1
3−3
3−8
3−8
3−9
3−10
3−12
3−15
3−19
3−20
3−23
第4章 評点法による評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 評点法の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 評点の利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 評点方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5. 評点結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4−1
4−1
4−1
4−1
4−1
4−1
参考資料1 プロジェクト説明資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考 1−1
参考資料2 周辺動向調査(報告書) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考 2−1
参考資料3 周辺動向調査(説明資料) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考 3−1
評価概要
評価概要
【Ⅰ.総論】
1. 総合評価
機器を用いる運動療法には一定の価値があると期待される。サブテーマそれぞれ
の開発意図は理解できるが、現時点ではテーマによって目標達成度が一律でない。
今後の研究継続については、慎重な判断が必要である。
下肢機能回復支援システムは、歩行にターゲットをしぼり、基本機能の回復訓練
と歩行訓練の2段階に分けてそれぞれで要求されるレベルを実現するための訓練
システムを提案しており、歩行訓練に対して新しい可能性を示している。システム
開発もほぼ計画通り進んでおり、今後の臨床場面での評価をしっかり行えば、実用
的なシステム構築が可能と判断される。
歩行訓練装置は、新規性及び工学的意義が認められ、機器開発は技術的に可能で
あると判断する。しかしながら、動的荷重制御技術を用いることが、他の類似機器
に比べて治療効果が高いことを実証し、臨床的優位性を明らかにしないと実用化は
難しいと思われる。
上肢動作訓練支援システムは、世界的にも数少ない技術であり、これを開発する
ことに技術的意義がある。しかしながら、この機器で実現しようとする機能訓練方
法が具体的に整理されておらず、コンセプトの検討が不十分であると判断できる。
2. 今後の研究開発の方向性等に関する提言
下肢機能回復支援システムは、実用化へ向けて、臨床評価を十分行い、資金を追
加してでも開発を加速した方がよい。また臨床試験に時間が掛かるのであれば、期
間を延長することも考えられる。
歩行訓練装置は、動的支援機能のついた本装置が、他の歩行訓練装置よりも高い
治療効果や訓練の効率向上など臨床における導入メリットを示さなければならな
い。臨床効果の検証などを中心とした事業は継続する必要があると思われる。
上肢動作訓練支援システムは、この機器の適応(障害レベル等)や訓練方法が明
確でない。問題分析を十分行った後、リハビリテーション科医、整形外科医、神経
内科医、上肢機能訓練の専門家である作業療法士などと研究を分担し、焦点を絞っ
た技術開発を行うことが妥当と判断される。
【Ⅱ.各論】
1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性
人間のセラピストが行うべきことを、機器で行う場合には、工学的な工夫と、臨
床的工夫を機器開発に生かさなければならず、民間の最先端の技術といえどもその
努力だけで良い機器が開発されるとは期待しがたい。また、公共性の強いテーマで
1
あり、この課題に NEDO が開発援助を行ったことは妥当である。
メカトロニクスの技術を活用すれば、世界的にも競争力のある機器の開発が期待
でき、経済産業省の政策方針に適合している。
2. 事業の背景・目的・位置付け
高齢社会の到来に対して、高齢者が寝たきりとなることを防ぐことは重要である。
多くの方策の中で、運動療法の効果は広く認知されているが、理学療法士・作業療
法士の関与にも限界がある。そこで運動機能を維持あるいは高めるための機器に大
きな期待が寄せられる。したがって研究開発の背景・目的・位置付けについては妥
当であると判断する。しかしながら他の類似システムとの差異を明確にする方がよ
い。
3. 事業の目標
リハビリ機器開発は、臨床現場からのフィードバックによって方向を修正するこ
とが重要なので、最終的な成果の実用性(臨床現場での反応など)に重点をおいた
目標設定が望まれる。そのような観点から、下肢機能回復支援システムならびに歩
行訓練装置の目標設定は、脳血管障害などの急性期あるいは慢性期患者の歩行障害
を機器によって治療しようとするもので妥当と判断できる。
上肢動作訓練支援システムは、機器の対象が脳血管障害等による上肢麻痺とされ
ているが、どのレベルの障害を対象とするかが、明確でない。開発目標と開発しよ
うとするシステムのマッチングがされていないと判断される。どのような動作・作
業を念頭においた訓練支援か、目標をより明確に設定すべきである。
4. 事業の計画内容
事業内容が広がりすぎており 3 テーマが殆ど独立している。3 テーマを統率する
リーダーが曖昧であるために、本事業の計画が効率的・効果的に進行しているとは
言い難い。今後は 3 テーマの成果によって、予算の傾斜配分、内容整理も考慮すべ
きである。
下肢機能回復支援システムは、ロボット技術を応用した訓練装置の開発など妥当
な計画といえる。また、臨床現場、大学との連携もなされており、事業体制も妥当
である。
歩行訓練装置は、臨床現場や大学との連携がなされており、今後の臨床データ収
集には妥当な研究体制と言える。計画内容は動的荷重制御の臨床的意義について医
学との協働による確認が不十分である。まずは、動的荷重制御の有効性の確認が必
要であると考えられる。
上肢動作訓練支援システムは、大学との連携が図られており、技術移転の観点か
らは評価できる。しかしながら今後望まれることは、臨床現場の専門家が、より積
極的に開発に関与する体制を整えて、機器の適用やコンセプトを明確にすることで
ある。その上で、要素を絞った開発へ計画を変更すべきである。
2
5. 研究開発成果
下肢機能回復支援システムは、運動訓練機器へロボット技術を応用し、「身体を
損傷しない」という、リハビリ機器が備えるべき基本的な機能を確保している。ま
た歩行能力を再獲得するために必要な要素をシステムとして提供しており、このよ
うなコンセプトをハードウェア上に具現化することに努力している。国際的にも高
い水準にあると思われ、ロボット開発先進国の日本が取り組むのにふさわしい研究
開発内容及び成果である。現段階までは、ほぼ計画通りに進んでおり、目標を達成
していると判断できる。広報についても発表の質・量等から考えて十分評価できる。
歩行訓練装置は、床反力の計測と吊り下げ力の自動調整の機能が、きめ細かい歩
行支援を行うことの出来るシステムとして新規性及び工学的意義が認められる。し
かしながら、臨床的観点からすると、歩行訓練に動的荷重制御が必要であるかにつ
いて効果が実証されていない。現時点では目標達成度は低いと判断される。
上肢動作訓練支援システムは、世界的にも数少ない技術であり、これを開発する
ことに技術的意義がある。しかしながら、3 次元的な上肢運動訓練を、流体クラッ
チを用いて安全性を高めたというだけでは、成果として十分ではない。すなわちこ
の機器の特性を活かした治療対象を明確にし、現状行われている訓練等とのマッチ
ングが必要であった。現段階では、機器で達成しようとする内容が明確でないため
に、構築したシステムの目標達成度は低いと判断される。
6. 情勢変化への対応
開発委員会を設置し、必要に応じて対応が概ね出来ていると判断される。
しかしながら、やむを得ない事情における突然の研究担当企業の変更については、
途中交代が事業へ及ぼす影響を考慮して、計画の実現が可能かどうかについて慎重
に判断し、テーマの継続、中止について十分に検討する必要があったと思われる。
7. 実用化、事業化の見通し(実用化のイメージ)
下肢機能回復支援システムは、新たな訓練を提供できるシステムとして、ニーズ
もあると考えられ、それに応えるだけの要素技術も成果として開発されている。臨
床現場との連携も十分図られており、これらを上手くかみ合わせることで、実用化
の可能性は十分あると考えられる。また、関節を機器が他動的に動かすときに、身
体を傷つけない安全性は、他の福祉機器などにも応用できる可能性がある。
歩行訓練装置は、技術的には可能であると判断するが、小型化・コスト面の配慮
など現場への適用に課題がある。また、動的荷重制御技術を用いることが、他の類
似機器に比べて訓練効果が高いことを実証し、臨床的優位性を明らかにしないと実
用化は難しいと思われる。
上肢動作訓練システムは、利用者の身体を傷つけないような流体クラッチの利用
は、今後同種の機器が開発される場合に応用される可能性がある。しかしながら、
実際の訓練場面に即したシステムとして構築する必要があり、現状では本テーマの
目標設定が十分ではなく、実用化までの道のりは厳しいと思われる。
8. 今後の展開(実用化までのシナリオ)
3
下肢機能回復支援システムは、有用性が既に検証されつつあり、コストの試算も
行われており、実用化の見通しはあると評価できる。
歩行訓練装置は、技術的には実用化可能と考えられるので、開発した動的荷重制
御技術の有効性が既存の機器に対してどれだけ優位であるかについて、臨床の現場
で確認することが必要である。従って現段階では実用化の見通しは立てることは難
しいと判断する。
上肢動作訓練支援システムは、どの様に現状の訓練に導入するか等のシナリオが
不明確である。またそれらが現場のニーズと合致しているかについて検証が必要で
ある。従って、現段階では実用化の見通しは立てることは難しいと判断する。
4
第1章
評価の実施方法
第1章 評価の実施方法
NEDO は、「技術評価実施要領」(平成 13 年 5 月制定、同年 10 月改定)に
基づいて技術評価を実施する。「技術評価実施要領」は、以下の 2 つのガイド
ラインに定めるところによって評価を実施することになっている。
z 科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発全般に共通する評価
の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成 9 年 8 月内閣総理大
臣決定、平成 13 年 11 月改定)
z 経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」
(平成 13
年 5 月経済産業省告示)
1994
暦年
法律
1995
科学技術基本法
1996
1997
9511
施行
9403
1998
1999
平成13年12月現在
2000
2001
9806
行政施策
評価法
中央省庁等改革基本法 施行
9611
0106 国会成立
0101 0204 施行予定
施行
9907 公布
政府
各省庁設置法
9806
科学技術 0103
閣議決定
基本計画
(第2 期)
9607
科学技術 閣議決定
政府
基本計画
9511
9707
大綱的指針 総理大臣決定
大綱的指針
9610
政策評価広
報課
0111
総理大臣決定
9912
政策立案・ 告示
経済産業省
評価指針
9905
技術評価課
×
評価指針
9708
告示
0005
評価指針(改定) 告示
9903
評価指針
(改定)
0105
告示
0010
NEDO
技術評価課
設置
0110
技術評価部
設置
1. 評価目的
実施要領において、評価の目的は、
z
z
z
評価をする者(評価者)と評価を受ける者(被評価者)が意見交換を
通じ研究開発の意義、内容、達成状況、今後の方向性等について検討
し、より効率的・効果的な研究開発を実施していくこと、
高度かつ専門的な内容を含む研究開発の意義や内容について、一般国
民にわかりやすく開示していくこと、
限られた研究開発リソースの中で、国の政策や戦略に対応した重点分
1−1
野・課題へのリソース配分をより効率的に実施していくこと、とされ
ている。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥
当性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・
評価した。
2. 評価者
実施要領においては、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者からなる
委員会方式により評価を行うこととされているとともに、技術評価委員選定に当た
っては、以下の事項に配慮した選定を行うこととされている。
z 科学技術全般に知見のある専門家、有識者
z 当該研究開発の分野の知見を有する専門家
z
研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニー
ズ関連の専門家、有識者
z 産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除
外し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与し
ていない者を主体とすることとしている。
これらに基づき、技術評価委員会分科会(以下、「本分科会」という)委員名簿
にある 6 名が選任された。
なお、本分科会の事務局については、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術
評価部が担当した。
3. 評価対象
平成 11 年度から平成 15 年度までの計画で実施されている「身体機能リハビリ
支援システム」プロジェクトを評価対象とした。
なお、本分科会においては、当該事業の推進部室(新エネルギー・産業技術総合
開発機構 健康福祉技術開発室)及び以下の研究実施者等から提出された事業原簿、
プロジェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。
研究実施者等:大分大学
東京電機大学
大阪大学
ダイヘンテック株式会社
株式会社安川電機
旭エンジニアリング株式会社
旭化成株式会社
1−2
4. 評価方法
本分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、
それを踏まえた本分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施
者側等との議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認めら
れる場合等を除き、原則として、本分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換す
る形で審議を行うこととした。
5. 評価項目、評価基準
本分科会においては、次に掲げる「研究開発事業評価における標準的評価項目・
評価基準」(平成 12 年 8 月 25 日、産業技術審議会評価部会)に準じ、大きく事業
全体及び研究開発項目別に分けて評価を行った。事業全体に係わる評価においては、
主に事業の目的、計画、運営、達成度、成果の意義や実用化への見通し等について、
評価をおこなった。各研究開発項目に係る評価については、主にその技術的達成度
等について評価した。
1−3
評価項目・評価基準
1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性
(1) NEDO の事業としての妥当性
z 経済産業省の政策方針に適合しているか。
(現在及び事業開始時点の時
代認識から見て)
特定の研究開発制度に属する事業として実施されているものについては、
当該制度の趣旨、目的(選定基準)への適合性を問う。
z NEDO の関与が必要とされるテーマか。(民間のみでは改善できない
ものであって、以下のような「市場の失敗」に該当しうるテーマか。
(政
策立案・評価ガイドライン参照)
)
— 公共財的性格を持つ財・サービスの供給
— 環境問題等市場原理が働かない外部性
— 不確実性(リスクの高さ)や情報の偏在などに基づく市場の不完全
性等
z 上記以外で民間のみでは改善できない問題に対応するために、NEDO
の関与に公共性が認められるものか。
z 緊急性、重要性が高く優先して実施すべき事業か。
2. 事業の背景・目的・位置付け
(1)
事業目的・政策的位置付けの妥当性
z 評価時点の時代背景認識から見て、事業の目的は妥当で、政策的位置付
けは明確か。
z 事業開始時点の時代背景認識から見て、事業開始時の目的は妥当で、政
策的位置付けは明確か。
z 事前評価は、当時の時代背景認識から見て妥当なものであったか。
z 政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか。
3. 事業の目標
(1)
研究開発目標の妥当性
z 立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、目標達成のた
めに、具体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか。
z 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
z エネルギー特別会計を使用している場合には、費用対効果分析など定量
的なエネルギー政策上の目標が立てられているか。
1−4
4. 事業の計画内容
(1)
研究開発計画の妥当性
z 目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配
分を含む)となっているか。
z 目標達成に必要な要素技術を過不足なく、取り上げているか。
z 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
(2)
研究開発実施者の事業体制の妥当性
z 目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
z 各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
z 関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか。
5. 実用化、事業化の見通し(実用化のイメージ)
(1)
成果の実用化可能性
z 産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
z 公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。【注 3】
z 公共性は実際にあるか。見込みはあるか。【注 3】
(2)
波及効果
z 成果は関連分野へのインパクトを期待できるものか。
z 当初想定していなかった波及的な成果はあるのか。
z プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及
効果を生じているか。
6. 今後の展開(実用化までのシナリオ)
(1)
実用化の見通し
z コストダウン、導入普及、実用化までの期間、事業化とそれに伴う経済
効果等の見通しは立っているか。
z 研究開発を今後も現行の計画どおり継続することは妥当か。
7. 研究開発成果
(1)
計画と比較した目標の達成度
z 成果は目標値をクリアしているか。
z 全体としての目標達成はどの程度か。
z 立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、事業は研究開
発として成功したといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか。
(2)
要素技術から見た成果の意義
z 世界最高水準、世界で初めて、又は国際水準から見て優れた成果がある
か。
1−5
z
z
z
z
z
(3)
成果の普及、広報
z
z
z
z
(4)
新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか。
新たな市場創造につながるような新規性、先進性が認められるか。
汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか。
当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか。
将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのよ
うなものか。
論文の発表は、質・量ともに十分か。
特許は適切に取得されているか。
必要に応じ、成果の規格化に向けた対応が取られているか。
広報は一般向けを含め十分に行われているか。
成果の公共性【注 3】
成果の公共性を担保するための措置、あるいは普及方策を講じているの
か。(JIS 化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報
は積極的になされているか等)
8. 情勢変化への対応
(1)
情勢変化への対応の妥当性
z 技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直し
たか。
z 計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮していたか。
(2)
研究開発実施者の運営の妥当性
z 意思決定、進捗状況、計画見直し等の検討が適切に行われているか。
z プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能し
ているか。
z プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含
む)への対応は適切であったか。
【注 1】
:評価項目・評価基準にある各項目の「重み」は、被評価プロジェクトの性格等に応じ
て、異なるものである。
【注 2】
:評価においては、プロジェクトに対する提言を含めて検討を実施するものとする。
【注 3】
:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
1−6
(参考資料)
政策立案・評価ガイドライン(抜粋)
(平成 11 年 12 月経済産業省策定)
IV.評価事項
1.事前評価
(1) 施策・制度の必要性[どのような問題が存在するのか、なぜその問題を改善する上で行政の
関与が必要なのか]
民間活動のみでは改善できない問題であって、かつ、行政が関与することにより改善できる
ものが存在することを論証しなければならない。
行政の関与の必要性については、
「市場の失敗」と関連付けて説明すべきことを原則とする。
「市場の失敗」については以下に概念を示すが、より詳しくは、行政改革委員会「行政関与の
在り方に関する基準」(平成 8 年 12 月 16 日)の「行政関与の可否に関する基準」による。
行政関与の必要性の説明として、
「市場の失敗」に該当しないものも許容するが、その場合
には、上述した問題の存在することの説明や公共性が高いことの根拠はできる限り客観的に明
らかにしなければならない。
<市場の失敗>…行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」(平成 8 年 12 月)による
(a) 公共財的性格を持つ財・サービスの供給(経済安全保障、市場の整備、情報の生産、
文化的価値を含む)
複数の人が同時に消費できたり、対価の支払いなしに(まま)消費を制限することが
困難である財・サービスのことをいう。
例:市場ルールの形成
(b) 外部性
ある個人・企業の活動が、市場を経ずに他の個人・企業の経営環境に影響すること
をいう。好ましいものを正の外部性、好ましくないものを負の外部性という。
例:負の外部性の例として地球環境問題(正の外部性については、解釈に幅があると
される)
(c) 市場の不完全性
不確実性や情報の偏在(財や価格について取引の当事者間で情報量にばらつきがあ
ること)などがあるために市場取引が成立しないこと。
例:技術開発(不確実性)
、製品事故(情報の偏在)
(d) 独占力
独占力は、一般には、市場におけるマーケット・シェアやライバル企業と異なる品
質の製品を提供することによって生まれる価格設定力である。市場参加者が大きな独
占力を持っている場合には、行政の関与が許容される場合があるとされる。
(e) 自然独占
平均生産費が、市場で需要される産出量を超えても逓減するため、新規参入が利潤
をもたらさず、また 1 社だけ存在することが効率的になるため生ずる独占のことをい
う。
(f) 公平の確保
公平の確保を図るための施策については、機会の均等を図ることを第一とし、事後
的な公平については、所得・資産の多寡を基準とした再分配に原則として限定し、そ
れ以外の施策からは原則として撤退する、とされている。
1−7
第2章 プロジェクトの概要
当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿をもって、当該プロジェクトの
概要とする。
第2章
プロジェクトの概要
「身体機能リハビリ支援システム」
事業原簿
作成者
新エネルギー・産業技術総合開発機構
健康福祉技術開発室
作成時期
H13年11月22日
2-1
―目次―
0.
概要 ................................................................................................................................................
2-33
1.国の関与の必要性・制度への適合性 .............................................................................................
2-55
1.1
国が関与することの意義.......................................................................................................
2-55
1.2 費用対効果 ...........................................................................................................................
2-55
2.事業の背景・目的・位置付け ........................................................................................................
2-66
2.1
事業の背景・目的・意義.......................................................................................................
2-66
2.2
事業の位置付け .....................................................................................................................
2-88
3.事業の目標 ...................................................................................................................................
2-99
4.事業の計画内容 ............................................................................................................................
13
2-13
4.1
事業全体、個別研究開発項目の計画内容...........................................................................
13
2-13
4.2
研究開発項目毎の内容の詳細 .............................................................................................
16
2-15
4.3
研究開発体制.......................................................................................................................
18
2-18
5. 実用化、事業化の見通し .............................................................................................................
22
2-22
5.1
事業全体についての実用化の見通し ..................................................................................
22
2-22
5.2
要素研究開発項目毎の実用化の見通し...............................................................................
22
2-22
6.今後の展開 ...................................................................................................................................
24
2-24
7.中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期 ...............................................
25
2-25
8.研究開発成果................................................................................................................................
25
2-25
8.1
事業全体の成果 ...................................................................................................................
25
2-25
8.2
研究開発項目毎の成果 ........................................................................................................
27
2-27
9.情勢変化への対応 ........................................................................................................................
42
2-42
10.今後の事業の方向性 .................................................................................................................
42
2-42
2-2
0. 概要
制度名
医療福祉機器技術研究開 事業名
身体機能リハビリ支援システム
発制度
事業の概要
1.国の関与の必要性・
制度への適合性
2.事業の背景・目的・
位置付け
3.事業の目標
(全体目標)
4.事業の計画内容
(単位:百万円)
一般会計
特別会計(電特)
特別会計(石特)
特別会計(エネ高)
総予算額(計)
研究開発体制
高齢者・障害者介護支援センター等の施設において、健常もしくは四
肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者を対象として、四肢の運動機
能の計測・評価を行い、その結果を医師・療法士、高齢者・障害者等に
フィードバックすることによって、医師・療法士の負担を軽減するとと
もに、高齢者・障害者の訓練に対する自発的意欲を向上させるリハビリ
支援システムを開発する。
本研究開発は医療現場より緊急に開発が要望されている支援機器
であるにもかかわらず、一般の産業機器に比較して市場規模が小さい
ため企業にとってのリスクが高く、国が積極的に研究開発投資を行い
身体機能リハビリ支援機器・システムの市場形成、産業化を早急に
図る必要がある。
本研究開発の目的は、最先端の福祉機器技術を活用し、安全性・
利便性に優れ高性能な医療福祉機器の開発を行うものであり、医療
福祉機器研究開発制度に適合したものである。
我が国の急速な高齢化の進行の中で、大きな問題の一つとして高
齢者の身体機能低下があり、歩行中の転倒や脳機能低下につながる
など影響が大きい。これらの能力低下を適切な手段で早く察知し身
体機能の維持、回復につとめることが、寝たきりや要介護の高齢者
を減らすこと、また高齢者の積極的な社会参加のために必要である。
従って本事業では、身体機能のうち、四肢の運動機能に対するリ
ハビリ支援システムを開発し、高齢者・障害者等の自立と社会参加を促
進する一助となることを目的とする。
本研究開発で開発するリハビリ支援システムは、上肢および下肢
に関する身体機能の低下に対し、トータルにリハビリ支援をサポート
するものであり、他の研究開発では例を見ない。
高齢者の身体機能低下の予防と機能維持および軽度の障害の回復
訓練に広く応用可能なフィードバック機能を備えた身体機能計測・
訓練装置を開発し、高齢者の自立と社会参加を促進する一助となる
こと。これらの開発および高齢者の動作特性の解析を通して、運動
療法への工学的支援の可能性を探り、「上肢、下肢の動作」に関す
るあらゆる福祉機器、介護機器等の開発の設計手法、評価方法およ
び開発環境への応用を目標とする。
H11fy
H12fy
H13fy
H14fy
H15fy
総 額
(5年間)
106
106
省内担当
原課
運営機関
224
235
224
235
129
61
755
工業技術院医療福祉機器技術研究開発調整室室(開始時)
商務情報政策局サービス産業課医療福祉機器産業室(現在)
新エネルギー・産業技術総合開発機構
2-3
技術研究組合医療福祉機器研究所
分担企業:㈱安川電機、ダイヘンテック㈱、三洋電
機㈱(開始時~平成 12 年度で旭グループへ交代)
旭エンジニアリング㈱、旭化成㈱(H13 年度より)
再委託先
大分大学、東京電機大学、大阪大学(H13 年度より)
5.実用化、事業化の見 ・ 下肢機能回復支援システム(㈱安川電機)
片足用訓練システム装置はすでに商品化されている実績から、研究
通し
開発中の両足用訓練システム装置は早い事業化が期待されている。
・ 歩行訓練支援システム(ダイヘンテック㈱)
1次試作品は完成したが、仕様を満足するための部分改造スピード
を早め、臨床データから装置の有用性を確認することが急務。その
上で小型化、コスト、操作性など考慮したプロトタイプの2次試作
品へステップアップできる。よって本装置も事業化の見通しはまだ
言及できない。
・上肢機能訓練システム(旭化成グループ)
平成13年からの研究開発であり1次試作品が今期年度末にできる
予定、それから動作実験・評価・臨床試験など行う。よって事業化
の見通しはまだ言及できない。
本事業は、平成13年度までにほぼ試作機の試作を完了する予定
6.今後の展開
であり、今後の展開における課題としては、本事業終了年度の平成
15年度までにそれぞれの試作機の有効性を証明する臨床データを
取りながら改良を重ねることとなる。事業終了後は、現場における
さらなる臨床試験を経て、より完成されたリハビリ支援機器を、そ
の後に実用化を目指す。
3年目に中間評価、研究開発期間終了後に事後評価実施
7.中間・事後評価
特許(出願)数:4、査読論文数13、新聞発表数 0
8.研究開発成果
(実態に併せて記載)
委託先
9.情勢変化への対応
基本計画の変更
(該当なし)
1)当初目標の変更・修正
歩行訓練支援システムに関しては、13年度に
二次試作を行う予定を、一次試作機のリハビリ
効果の有用性を実証することとした。
2)機動性の変更
平成13年4月より上肢機能訓練システムの開
発分担先を旭化成グループに変更、再委託先と
して大阪大学工学部を加えた。
評価履歴
(該当なし)
中間評価結果に基づき事業の方向性検討を行う。
いずれのシステム・装置も十分な臨床データによる有用性の確認が
必要。
変更内容
10.今後の事業の方向性
作成日
平成13年11月22日
2-4
1.国の関与の必要性・制度への適合性
1.1 国が関与することの意義
本研究開発は、高齢者・障害者介護支援センター等の施設において、健常もしくは四
肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者を対象として、四肢の運動機能の計測・評価
を行い、その結果を医師・療法士、高齢者・障害者等にフィードバックすることによっ
て、医師・療法士の負担を軽減するとともに、高齢者・障害者の訓練に対する自発的意
欲を向上させるリハビリ支援システムを開発することを目標としている。従って、人間
と接触し、人間の計測を含んだフィードバックループによる力制御が重要な開発課題であ
り、かつ運動障害のある部分に直接働きかける力制御という従来の技術ではまだ未開発の
技術的ブレークスルーを持つ開発となる。従って、単独の企業でそのリスクを負うことは
非常に困難であり、国家プロジェクトとして研究開発を行うことが必要である。
また、本開発はリハビリテーション現場からのニーズや、療法士、医師の不足に伴う
作業の効率化などから、緊急に開発が要望されている支援機器にもかかわらず、一般の産
業機器に比較して市場規模が小さいため企業にとってのリスクが高く、国が積極的に研究
開発投資を行い市場形成、産業化を図る必要がある。さらに、本開発はリハビリテーショ
ン現場におけるニーズの的確な汲み上げと先端技術の開発を要し、被験者による十分なフ
ィールド試験が必要なことから、国によるリーダシップのもとに医療関係者と工学者によ
る密接な連携により開発を進めていく必要がある。
ちなみに、現状におけるデータとしては、福祉機器としてとらえれば、福祉機器産業全
体で 2300 億円の市場(HCR2001福祉機器業界の市場推計)であり、その他の機器(歩
行等訓練機器、義肢・装具、リハビリ用教材・機器・設備、福祉事業関係コンピュータシ
ステム、福祉関係図書・新聞・情報、防災用品)で、1999 年度実績 182 億円、リハビリ機
器としての内訳は不明であるが、この10~30%とした場合、20~60億円程度と推
定される。また、医療機器としてみた場合、全体の生産額1.5兆円(薬事工業生産動態
統計年報:厚生省11年度版)であり、理学療法機器の中の運動療法用機器は 51 億円の市
場規模(国内 19 億円、輸入 39 億円)となっている。
本研究開発の目的は、最先端の福祉機器技術を活用し、安全性・利便性に優れ高性能な
医療福祉機器の開発を行うものであり、医療福祉機器研究開発制度に適合したものである。
1.2 費用対効果
当該事業によって、上肢、下肢機能が衰えた高齢者、寝たきり患者等のリハビリ訓練を
より効果的に行うことができるようなシステムの開発がなされる。これにより、介護負担、
本人の負担ひいては医療保険制度に対する負担が大幅に軽減される。又高齢者や患者の予
後の生活の質が向上し、社会復帰の割合が高まることで、社会全体の生産力拡大へ寄与す
るという効果もある。以上を鑑みて、プロジェクト費用に対する社会的・経済的効果があ
る。ちなみに脳血管障害者は年間14万人発生おり、その内の10~30%が当該機器に
2-5
より社会復帰できたと仮定すると、1.4~5.2万人が社会復帰でき、介護負担として
はその2~3倍の労力が軽減されると推測される。
2.事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景・目的・意義
<社会的背景>
わが国は今後急速に高齢化が進行し、高齢者の数は急激に増大する。このような高齢化
社会の大きな問題の一つとして高齢者の身体機能低下があり、これが歩行中の転倒や脳機
能低下につがるなど影響も大きい。さらに、上肢機能の低下から日常動作に支障が生じ、
これらが脳の活性化を妨げることになる。そこで、この能力低下をできるだけ早く検知し、
身体機能の維持、回復につとめることは、寝たきりや要介護の高齢者を減らすのはもちろ
んのこと、高齢者の積極的な社会参加のために必要な措置である。高齢、または身体疾患
やその手術により筋力等が低下した人々は、運動する機会が少なくなるので、ますます体
力が低下するとともに、脳機能にも影響を与えるなど悪循環に陥りやすい。これを解決す
るには、適切な上肢および下肢訓練が必要となる。さらに、能力低下後の高齢者等でも、
適切な運動刺激を与えることで、自立した生活に近づくことは可能である。自立運動は、
本人の積極性を回復するためにも重要である。よって、上下肢機能を計測し、適切な訓練
による機能の維持および軽度の障害の回復に役立つ装置の開発は急務である。また,歩く
ことは種々の成人病対策の一環ともなり,健常者に対するこれらの予防という面からも本
プロジェクトで開発する訓練装置は有用である.
医療現場においては,訓練者にとって,①行動を制限しない,②恐怖感を与えない,③
痛みを感じない等の性質を備え,医師側にとって,①システムの維持・操作およびデータ
の保守が容易,②拡張性が高い,③分析結果を直感的に判断できる,④複数の患者に対応
できる等の特性を有する訓練装置が求められている。本プロジェクトでは、運動機能の維
持を必要とする高齢者および知的に正常で比較的軽度の障害を持つ高齢者等を対象者とし、
医師や介護者の負担を減らし訓練者が効果的な機能訓練に専念できる訓練システムを開発
する必要がある。
歩行のリハビリ訓練で訓練者にとって比較的身体的負担の少ないものは温水プールでの
水中歩行であるが、訓練を指導する療法士にとっての負担が大きくなるほか、施設の大規
模化や衛生面など管理面でも問題がある。歩行に限らず現在のリハビリ訓練のほとんどは
訓練者の指導および介助等に療法士が1対1で対応する必要があり、病院や施設等の対応
能力には自ずと限界がある。訓練装置を導入する事で、療法士に加わる負担が軽減され、
リハビリの必要なより多くの患者・訓練者に対応できると考えられる。また、訓練者に過
度の負担を与えないことで、訓練の時間や回数を増やすことができ、量的にも訓練の効果
を上げることが可能となる。
<技術的背景>
身体機能訓練装置等の医療福祉機器には、人間工学、機械工学、電気工学、制御工学等
2-6
さまざまな工学分野の各要素技術が必要であり、その開発にはこれら各要素技術をまとめ
た総合技術が必要となる。
下肢機能の筋力計測や訓練に使用される代表的な機械として Cybex、もしくはその類似製
品がある。主として、スポーツ疾患に対する計測・訓練や、運動選手等の筋力測定など基
礎研究用として使用されているが、各種の使い方ができるため他動・等尺/等張などの抵
抗運動によるリハビリにも用いられている。オプションで体幹、上肢など適用箇所変更可
能ではあるが、膝の運動を主体とした1軸回転のみである。また、スポーツ選手の筋力に
も対応するため大出力領域に焦点を当てた設計となっており、主として低出力を必要とす
る脳卒中患者には出力の設定が強すぎる傾向にある。また、車椅子からの移乗等は考慮さ
れていないことや、欧米人の体格を下に設計されているため日本人に対して使用するには
大きすぎると言った傾向がある。
スポーツクラブ等で盛んに使用されているものとしてエルゴメータ(自転車こぎ)型装
置がある。座面に座れ、体幹バランスが良好な脳卒中回復期等の患者に対しては限定に使
用されることがある。抵抗の調整が可能な自転車様のペダルを踏んで訓練するために、下
肢の1軸回転パターンのみに対応した装置といえる。基本的に左右の足の独立動作はでき
ない。スタンフォード大では体幹姿勢調整が可能なエルゴメータを開発しているが、体幹
保持に関してはまだ問題があるといえる。三菱製エルゴメータが独立動作に対応し、パワ
ーアシストが可能で画面により患者へ負荷等をフィードバックできるものを開発している。
整形外科術後や人工関節など関節手術後数週間、病棟で膝などの拘縮予防のために使用
されるものにCPM(連続他動運動装置)がある。これは1軸リニア運動での単純な動作
による、膝屈伸、他動運動が可能であり、ROMが不十分でも動かし続けることで拘縮を
予防することに限定して使用されている。安価で小型軽量であり、停止・反転等の簡単な
過負荷防止機能がついており、設定を看護婦が行うと言った使用が多い。
歩行訓練装置としては日立、セノー、Lokomat 等のものがあり、脳卒中、脊髄損傷患者に
対するリハビリに用いられている。日立のものは体幹保持ができ、左右独立動作のトレッ
ドミルにより片麻痺等への対応が可能であるが、下肢動作への直接介助はできない。セノ
ーのものは吊り下げ式の歩行訓練装置で1軸スライド型の左右レシプロ動作が可能である
が、立脚・遊脚の訓練はできない。主として脊損が主ターゲットとなっている。Lokomat,NASA,
独のものは吊り下げ式であり、ロボット的な下肢駆動部を装備している。機構複雑で車椅
子からの移乗に手間がかかり、また立位のみで体幹姿勢の調整や、股伸展、足底圧の制御
等の下肢の動きをきめ細かくアシストすることができない。バイオテックス、ゲートトレ
ーニングシステムはトレッドミル方式であり、吊上げ装置との併用可能だが動的体重支持
ではない。ジャパン EM の AID-1-M は脇の下で支える吊上げ式であるが、床反力による吊上
げ力フィードバックはない。
上肢機能のリハビリ支援は、理学療法士による拘縮予防や作業療法士による訓練が行わ
れているが、上肢の動作範囲は非常に大きいために開発に困難が伴うことや、一般的に片
麻痺の場合、健常である上肢によりカバーしてしまう傾向にあり、リハビリ支援機器の十
分な研究開発が行われてこなかった。しかし、近年、両手を使えることが見直されつつあ
り、上肢機能のリハビリ支援機器の研究開発が増えつつある。2次元上肢リハビリ装置、
2-7
すなわち平面上の動作に限定した支援装置としては、大阪大学、MIT や Delaware 大学にお
いて開発が行われており、米国においてはこれらの装置の臨床による有効性の報告がある。
3次元動作を可能とする上肢リハビリ装置としてはあまり開発された例がないが、わずか
に工業用ロボットを転用して Stanford 大学 VA センタが開発したものがある。ただし、専
用に開発されたものではないので、安全性に問題がないとは言えない。いずれにしても上
肢運動機能のリハビリ支援システム機器の開発はこれからの重要な問題といえる。
<目的・意義>
高齢化の進展にともない、要介護者が増加する一方で、少子化が進み介護力が減少して
いることから、高齢者・障害者等の自立に寄与するとともに、医師・療法士等の負担を軽
減し、結果的に医療費の低減にも貢献する福祉機器の開発実用化が期待されており、人間
工学分野の技術開発を活用した先端的なリハビリ支援システムの研究開発、実用化が喫緊
の課題となっている。
本研究開発では、高齢者・障害者介護支援センター等の施設において、健常もしくは四
肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者を対象として、四肢の運動機能の計測・評価を
行い、その結果を医師・療法士、高齢者・障害者等にフィードバックすることによって、
医師・療法士の負担を軽減するとともに、高齢者・障害者の訓練に対する自発的意欲を向
上させるリハビリ支援システムを開発し、高齢者・障害者等の自立と社会参加を促進する
一助となることを目的とする。
上記の社会的背景の下で本開発の目的を遂行することは、医療福祉機器産業の活性化、
少子高齢社会における介護者、被介護者の負担等の社会的負担が大幅に軽減される事が期
待され、安全性・利便性に富んだ医療福祉機器の普及政策に十分な意義があると言える。
2.2 事業の位置付け
本研究開発は、従来、医師や理学療法士などの人手に頼っていたリハビリの支援を、
支援機器へ置き換えることにより、リハビリテーションをトータルにサポートするシス
テムを開発し、実用化へ向けての評価・データの収集、訓練方法の提案などを行うこと
を目標とする。事業の類型としては研究開発の成果が実用化に直結する技術開発である。
支援機器は上肢、下肢の運動機能回復と訓練を行えるものとし、支援機器の導入によ
り、医師や療法士の身体的負担低減のほか、対象者に無理の無い範囲での一回の訓練時
間の増加、各種フィードバック機構や診断支援機構を備えることによる訓練効率の向上
などを目指す。これにより、手術後の早期回復訓練の開始が図れるほか、回復までの訓
練期間の減少、退院後の通所訓練の効果的な実現などが期待される。
歩行訓練支援システムでは、対象者が積極的に社会参加できるよう自立移動のための
歩行機能の回復と訓練を行う。下肢機能回復支援システムでは、自力による立位に十分
な筋力を有しない対象者等に対し、下肢機能の能力回復と訓練を行う。上肢動作訓練支
援システムにおいては上肢機能の低下のある対象者に対し ADL 向上を目指した訓練支
援を行う。
上記のような構成により対象者個々により異なる様々な状況、障害の程度・箇所に応
じた適切な訓練が可能になる。また、上記のほか装置開発で期待される効果とその後の
2-8
展開を図1に示す。
本研究開発で開発するリハビリ支援システムは、上肢および下肢に関する身体機能の
低下に対し、トータルにリハビリ支援をサポートするものであり、他の研究開発では例を
見ない。
• 医師・療法士の負担の軽減
– 訓練中の身体の支持など身体的負担
– 訓練中の各種データの収集、データ提示などの診断支援
• 訓練効率の向上
– 対象者に無理のない範囲での訓練時間の増加
– 最適な訓練メニューによる早期回復
– 術後早期の回復訓練の開始
• 対象者・障害の幅の拡大
– 訓練装置の機能向上、データ収集による、対象障害の拡大
• 在宅訓練への対応
– 装置の小型化、低価格化による在宅訓練への可能性
図1
訓練装置開発で期待される効果および装置の展開
3.事業の目標
(1)事業の全体目標
高齢者・障害者介護支援センター等の施設において、健常もしくは四肢機能に軽度の障害
をもつ高齢者・障害者を対象として、四肢の運動機能の計測・評価を行い、その結果を医
師・療法士、高齢者・障害者等にフィードバックすることによって、医師・療法士の負担
を軽減するとともに、高齢者・障害者の訓練に対する自発的意欲を向上させるリハビリ支
援システムを開発する。
運動量の不足による歩行機能低下の防止をも含めた、立位での歩行訓練を行うための(a)
歩行訓練支援システム、歩行訓練が可能となるまで歩行機能を快復させるための(b)下肢機
能回復支援システム、および上肢動作を対象とした(c)上肢動作訓練支援システムを開発す
る。加えて、それぞれのシステムに対する総合的臨床評価を行う。
(a) 歩行訓練支援システム
下記要素技術の開発を行うとともに、それらを統合した歩行訓練支援システムを開発する。
・ 歩行訓練装置では、指示荷重が100kg以上で訓練者を安全に支持すること。訓練者の意
志に追従可能な機能を持つこと。訓練者の回復度等に応じた時事力の調整範囲が、訓練者
の体重の約40%以上であること。
・ 立位姿勢の維持能力を評価すると共に、姿勢維持能力の訓練が可能となるポスチャー
2-9
コントロールシステムを開発する。
・ 訓練者が装着するジャケットは、重量 5kg 以下,張力 200kg に耐えられる設計とし、恐怖感を
与えない、90%荷重を軽減させた場合でも痛みを感じさせない、歩行を制限しない、着衣が
容易に行えるものを開発する。
・ 回復度の評価に必要なデータ(床反力、身体各部の位置・角度、筋力等)を計測可能とし、
計測結果と回復度評価の関係を明確にする計測・評価機能を開発する。
・ 計測・評価結果に基づいて、支持力等の訓練パラメータを調整可能とし、訓練に対する効果
を定量的に実証可能とするフィードバック機能を開発する。
(b) 下肢機能回復支援システム
下記、要素技術の開発を行うとともに、それらを統合し、高齢者・障害者および脳機能障害患者
に対する下肢の基本的な機能の回復を促進する下肢機能回復支援システムを開発する。
・ 下肢支持機構については、体幹、大腿、下腿、足部をそれぞれ無理なく支持もしくは保持し、
また股関節、膝関節の可動範囲が 110 度以上で、訓練を妨げない機構とする。
・ 計測・評価機能については、下記の訓練パターンに対応付けが可能な精度の下肢運動機
能データを計測可能とし、具体的には関節角度、関節角速度、関節トルク、筋電、接触分布
圧等を計測し、動作パターンとの対応付けを行うための評価を行うものとする。
・ 訓練パターン提示機能については、他動運動訓練、関節可動域訓練、自動介助訓練、自
動運動訓練、抵抗運動訓練等の訓練パターンを提示可能なものとする。
・ フィードバック機能については、計測・評価結果に基づいて、負荷、軌道、速度等の訓練パ
ラメータを調整可能とし、その効果を定量的に実証可能なものとする。
(c) 上肢動作訓練支援システム
下記要素技術の研究開発を行うとともに、それらを統合し、軽度の上肢機能障害を有する高
齢者や障害者に対する関節可動域訓練等を可能とする上肢動作訓練支援システムを開発す
る。
支持機構については、
・ 支持荷重が5Kg 以上で、一方の上肢を安全に支持可能な機構とする。
・ 肩、肘の訓練に十分な関節可動域を確保する。
・ 粘弾性アクチュエータ等の開発・利用により、誤用等によっても使用者に危害を加えないも
のとする。
・ 計測・評価機能については、上肢運動機能の評価を可能とする精度のデータ(関節角度、
関節角速度、関節トルク、筋電等)を計測可能なものとする。
・ 平成13年度に計測機能を再検討し、関節(角度、角速度、関節トルク)に関する計測は、セ
ンサ類を患者へ装着するのが実態的には不便であり、アーム把持部の位置、速度、トルクの
計測に置き換えることにした。0
・ フィードバック機能については、計測・評価結果に基づいて、負荷、軌道等の訓練パラメータ
を調節可能とし、その効果を定量的に実証可能なものとする。
2-10
(2)目標設定の理由
近年、超高齢社会に向けた高齢者・障害者の介護の問題への対応が緊急に求められてい
る。脳卒中や脳梗塞などの中枢神経疾患は依然として高い発症率を保っており、特に高齢者
の発症率が高く、寝たきり高齢者・障害者の原因の一つとなっている。一方、リハビリセンター
等においては、高齢者・障害者および脳機能障害患者を治療する療法士のマンパワーは依
然として不足している。高齢者介護施設においても、高齢者・障害者を介護する介護職員の
マンパワーが慢性的に不足しており、腰痛などの問題が発生している。こうした状況は寝たき
り高齢者・障害者を増加させる悪循環となっており、緊急な対策が求められる所以である。こ
のため、昨今ゴールドプラン等により介護施設の増加など社会資本を充実させる施策が準備
されつつあるところであるが、これと同時に、高齢者・障害者および脳機能障害患者が歩行機
能等の運動機能を回復するのを促進する、医療・介護の現場で何らかの支援・補助を可能と
する技術を開発することが社会的に期待されている。すなわち、医療・介護の現場における実
用性の高いリハビリ支援装置を開発し、運動機能の自立性を回復促進するとともに、療法士
や介護職員を医療・介護の現場で補助し治療・介護の負担を軽減するための技術開発が求
められている。なお、このことは、たとえ健常もしくは軽度の障害であっても、高齢者・障害者の
場合、介護力の不足から寝たきりの状態に急速に機能が衰える現状を鑑みるとき、障害の程
度をより軽い方向に回復させる技術開発の必要性を示しており、提案するシステムのねらいが、
より重度の治療・介護を必要とする脳機能障害患者等に適用することも視野に入れた上で、
健常もしくは軽度の高齢者・障害者に適用するシステムの開発をねらうことが重要であると考
える。
各システムの目標設定の理由を示す。
(a)
歩行訓練支援システム
・ 本装置は施設に設置し、そこでの訓練を前提としている。試作機については、設置面積の縮
小のため、歩行路は往復型とし、歩行路にはスロープ、段差などの多様な路面を再現できる
ようにすることを目標と設定した。
・ バランス評価および訓練のためには、揺動機構は床の左右傾斜、上下動、揺動などができ
ることを必要とし、訓練者の安全および訓練効果を考慮し、10°程度の揺動角度を目標と
設定した。
・ ジャケットは訓練者と直接接触するため、第一に安全に支持できることが重要である。また、
不自然な歩行の回避、訓練者に不快感を与えないこと、装着による一部分への圧力の集中
を避け、より水中での訓練に近い感覚が得られるよう開発することを目標とする。
・ 歩行の定量的な解析や回復度の指標を得るため、訓練者の身体各部の位置・角度、筋力
等、各種データを測定する必要がある。
・ 医師や介護者の負担を減らし訓練者が効果的な機能訓練に専念できるよう医師、療法士の
診断・評価を支援するシステムの構築を行うとともに、訓練を効率よく行い、継続するために、
訓練者のやる気や達成感を得るために機器を改良する事を目標とした。
(b)
下肢機能回復支援システム
・ 下肢機能回復支援システムでは、高齢者・障害者および脳機能障害患者の寝たきり防止、
2-11
自立と社会参加を促進することを目的とし、臥位から立位による歩行が可能になるまでの期
間の治療を促進することを目指す。また、高齢者・障害者および脳機能障害患者を訓練・介
護する療法士・介護職員の作業を支援・補助し負担を軽減することを目的とする。例えば、
臥位から立位による歩行訓練開始までの期間の治療を補佐・介助し、ルーチン的な訓練は
装置にある程度まかせることにより、徒手によらなければならない重度の疾患に療法士のマ
ンパワーを集中させ、全体として訓練の効果・効率の向上をはかることを目指す。また、提案
するシステムの計測・評価機能を用いて、従来療法士の徒手にて行われている訓練動作の
効果と歩行等の運動機能の回復度合いを定量的に評価できるシステムの構築をめざし、より
精密な治療を行う指針をつくる一助とすることを目的とする。下肢の運動機能を評価して、医
師・療法士等の治療ノウハウとの組み合わせに基づき訓練内容を提示し、また計測・評価等
の結果をフィードバックすることによって、高齢者・障害者の自発的意欲を向上させるシステ
ムをめざし開発を行う。
・ 下肢支持機構については、下肢の筋は関節周囲に複雑に走っていることから、下肢周辺の
筋や関節のストレッチを行い運動パターンの学習を促すには、体幹を含めた下肢全体の支
持を行い、かつ訓練を妨げたり過大な負荷を発生したりしないような機構構成をとる必要が
ある。そこで、体幹および大腿、下腿、足部をそれぞれ無理なく支持もしくは保持することを
目標とした。また、特に歩行機能を回復させるため十分な関節可動域を確保するため、股関
節、膝関節において 110 度以上の可動範囲を目標に設定した。
・ 計測・評価機能については、計測結果と下記の必要な訓練パターンの対応付けを可能とす
るため、下肢運動機能についての各種のデータ計測が必要である。具体的には、可動範囲
を評価するための関節角度、動的な運動機能を評価するための関節角速度、関節トルク、
筋電、接触分布圧等を計測することを目標とした。
・ 訓練パターン提示機能については、下肢機能の回復過程に応じ各種の訓練パターンを準
備する必要がある。きわめて下肢機能の低下した対象者に対しては、関節の可動範囲や筋
のストレッチを行うための他動運動訓練および関節可動域訓練を提示すること、また、ある程
度随意性を回復した対象者に対しては、随意的な運動を介助する自動介助訓練や介助な
しの随意運動を行う自動運動訓練を提示すること、また、かなりの程度下肢機能を回復した
対象者には、より筋力をつけるための抵抗運動訓練等の訓練パターンを提示することを目標
とした。
フィードバック機能については、心理状態などにより大きく変化しがちな筋の緊張度など肢体
の状態にすばやく対応するため、計測・評価結果に基づいて負荷、軌道、速度等の訓練パラ
メータを調整可能であることを目標とした。また、運動状態を訓練対象者が定量的に認識でき、
医師・療法士が明確な訓練指示が出せるようなバイオフィードバック機能を開発することを目
標とした。
(c)
上肢動作訓練支援システム
上肢動作訓練支援システムは、上肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者に対し、上肢
運動の機能を評価して、医師・療法士等の治療ノウハウに基づいた訓練内容を提示し、また
計測・評価等の結果を視覚・聴覚等のフィードバックを行うことによって、訓練の効果を随時使
2-12
用者に提示し、使用者の訓練を継続する動機付けを与えることが可能なシステムを開発する
ものである。
・ 支持機構については、上肢関節部の特徴として人体で最も大きい運動範囲を持つ肩関節
や複関節を構成している肘関節等を有しているので、複雑な上肢の運動機能に対応した支
持を行い、かつ訓練を妨げず、過度の負荷を生じさせない機構構成をとることが重要である。
そこて、肩、肘の訓練に十分な関節可動域を確保するシステムを開発することを目標とした。
さらに、軽度の障害を持つ高齢者・障害者に対して十分な補助力を確保するために、5kg 以
上の支持荷重を持つことを目標とした。
・ 人体に直接装着して使用する機器には、誤用等に対する配慮が不可欠であり、柔軟性を持
つアクチュエータ等の開発が必要であることから、これを目標とした。
・ 計測・評価機能については、上肢訓練動作の把握、機能評価および後述するフィードバック
機能を実現するために上肢運動機能についての関節角度、関節角速度、関節トルク等の各
種データ計測必要であるため、この目標を設定した。
・ 平成13年度に計測機能を再検討し、関節(角度、角速度、関節トルク)に関する測定につい
て、測定センサが訓練を妨げやすく実態的には不便であり、先行開発された二次元上肢訓
練機では把持部の位置、速度を測定することにより訓練効果の評価が可能である事も勘案
し、当システムではアーム把持部の位置、速度、さらにトルクの計測に置き換える事とした。
フィードバック機能については、上肢訓練に対して使用者の自発的意欲向上を目的として、リ
ハビリ動作状況や機能回復評価等の情報を使用者や医師・療法士にフィードバックすると同
時に、機能回復の進捗に応じて訓練動作の負荷、軌道等の訓練パラメータを適宜調整する
機能を有することが必要であるため、この目標を設定した。
4.事業の計画内容
4.1 事業全体、個別研究開発項目の計画内容
(1)計画内容の概要
本研究開発では、高齢者等を対象者とし、「上肢、下肢の動作」に関する身体機能低
下の予防と機能維持および軽度の障害の回復訓練を目的とした歩行訓練支援システム、
下肢機能回復支援システム、上肢動作訓練支援システムからなる訓練システムを開発す
る。歩行訓練支援システムは、上部からの吊り上げ機構により訓練者を支え、フットセ
ンサおよび各種位置センサからの情報をフィードバックさせ、吊り上げ力を調節し、水
中での歩行訓練と同様の効果を得ようとする方式である。下肢機能回復支援システムに
おいては、下肢の運動機能を評価し、訓練内容を提示するとともに、計測・評価結果等
をフィードバックすることにより、高齢者・障害者の自発的意欲を向上させる方式とす
る。上肢動作訓練システムは、訓練者の手首や肘に固定し、その運動軌跡の駆動補助、
あるいは力学的負荷を可変に制御するするとともに、視覚的にフィードバックするマン
マシンインターフェースによりリハビリ動作状態における各種パラメータをリアルタ
イムに表示する方式とする。図2に各システムの相互関係を示す。また、図3に各シス
2-13
テムの完成イメージを、開発スケジュールを表 1 に示す。研究開発体系図を図4に示す。
図2
各装置の相互関係
2-14
単位:百万円
( )内は人数
表 1 研究開発の年度別計画
サブテーマ名
平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成 14 年度 平成15年度
計
1.歩行訓練支援
システム
(1)装置要素技術開発
概念設計 一次試作・評価
36(5)
(2)システムの開発
二次試作
装置評価
装置改良
9(2)
57(4)
49(4)
19(2)
基本設計
試作
評価・改良
20(2)
30(2)
15(1)
170(17)
臨床的総合評価
10(1)
75(6)
2.下肢機能回復支援
システム
(1)装置要素技術開発
基本設計 一次試作・評価 二次試作・評価
33(5)
60(4)
40(3)
基本設計
(2)システムの開発
20(2)
評価・
10(2)
改良
9(2)
152(16)
評価・改良 臨床的総合評価
試作
44(3)
19(2)
10(2)
93(9)
3.上肢動作訓練支援
システム
(1)装置要素技術開発
概念設計
33(9)
基本設計 一次試作・評価
63(9)
35(8)
二次試作
30(6)
評価・改良
9(4)
170(36)
基本設計 試作・評価・改良 臨床的総合評価
(2)システムの開発
4.運営管理
経費(単位:百万円)
33(4)
4
4
106(19)
4
224(21)
235(24)
32(6)
4
129(19)
10(6)
4
61(17)
身体機能リハビリ支援システム
歩行訓練装置
ダイヘンテック
株式会社
下肢機能回復支援
システム
株式会社
図4
安川電機
研究開発体系図
2-15
上肢動作訓練支援
システム
三洋電機株式会社
(H13 より
旭化成 Grp 引継)
75(16)
20
755(100)
4.2 研究開発項目毎の内容の詳細
各システムの内容
(a)歩行訓練支援システム
吊り上げ機構はレールによって支持される。搭載したモータにより、脚に加わる力が
訓練者の体重に対して一定の割合になるよう、吊り上げ張力を制御するとともに、訓練
者の歩行速度に応じてレール上を移動する速度を制御する。訓練者の歩行機能のレベル
および状態に応じてレールの移動速度(訓練者への前方引っ張り力)を制御する。設置
面積の縮小のためには、実験機の歩行路は往復型とし、歩行路にはスロープ、段差など
の多様な路面を再現できるようにする。また、バランス評価および訓練のため、床の左
右傾斜、上下動、揺動など訓練者の安全を考慮した上で外乱を与えることができる機構
を備える。
ポスチャーコントロールシステムは、基本的にプレートを揺動運動させるシステムと
それにより人間に外乱を与え、その人がバランスをとろうとしたときの重心移動の変化
をモーメントの変化として定量的に得るためのシステムである。対象者は、寝たきりま
たは、歩行の困難な老人、障害者であり、感覚系の障害と筋力低下のみられる高齢者・
障害者である。足元から体幹にローリング、ピッチングの揺動運動を与えたときに生じ
るバランスの変化を床面に作用するモーメントの変化として計測する。また、そのとき
の姿勢の変化を傾斜角の変化や光学式姿勢検出器により体位のバラツキを定量的に計
測する。
装置の床面および吊り上げジャケットに各種センサ等を装着することで訓練者の身
体各部の位置・角度、筋力等、各種データを測定し、訓練を評価するためのデータとす
る。これらのデータは訓練機の無線通信機能により、制御用コンピュータおよび診断・
評価用コンピュータに送られる。これらのデータを機器の張力等の制御に用いる。また、
現場の医師、療法士と協力して回復度に関する定量的評価手法について検討を行い、健
常者および訓練対象となる高齢者の歩行のデータ(床反力、筋力等)を収集する。これ
らの結果を訓練の評価・診断に役立てる。さらに、訓練者のやる気を引き出し、効率的
な訓練を行うために、訓練中および訓練後に訓練者の身体各部の測定量を訓練者本人に
わかるようにモニタリングするなどの方策を検討する。
(b)下肢機能回復支援システム
提案する下肢機能回復支援システムは、下記の部分から構成される。
・ 下肢支持機構は、体幹・大腿・下腿・足部をそれぞれ無理なく支持・固定する肢体
支持機構を有し、少なくとも矢状面内の下肢(股・膝関節)における3自由度以上の動
作への追従・介助を補償する機構自由度と駆動部を有し、適切な負荷を下肢にかけなが
ら、関節可動域訓練と歩行パターン学習訓練に適した姿勢および動作をとることのでき
る機構動作範囲を有する。具体的には、股・膝関節の 110 度以上の可動範囲を可能とす
る。
・ 計測・評価機能はマルチ生体情報計測部と生体情報融合評価部から成る。マルチ生
体情報計測部は、下肢リハビリテーション装置の動作時に生体情報の計測を、関節角度、
2-16
速度、関節トルク、肢体の接触分布、筋電などの各種センサにて計測する。また、生体
情報融合評価部は、マルチ生体計測部から得た複数の生体情報から、さまざまなフィル
タ技術により生体情報の融合を行い、生体状態の推定・評価を行う。例えば、脳機能障
害患者の筋力発生レベルなどから、肢体の麻痺レベルや歩行機能の回復度合いなどを評
価する。さらに、麻痺レベルなどの治療評価基準との対応などの臨床現場の治療ノウハ
ウと、生体情報融合評価部で得た評価結果とから、最適な訓練の軌道やリハビリ装置の
肢体支持アームの柔軟性などを設定した訓練パターンを選定し、訓練内容を医師・療法
士等に示す。この場合の訓練パターンには、他動運動や種々の介助運動を含む。肢体の
状態に応じた介助内容と介助量を決定し、高齢者・障害者の自発的運動を無理なく誘導
するよう訓練内容を構成する。医師・療法士等の教示・選択結果にもとづきリハビリ装
置を駆動する。
・ 訓練パターン提示機能は、下肢機能の回復過程に応じ各種の訓練パターンを準備す
る。きわめて下肢機能の低下した対象者に対しては、関節の可動範囲や筋のストレッチ
を行うための他動運動訓練および関節可動域訓練を提示する。また、ある程度随意性を
回復した対象者に対しては、随意的な運動を介助する自動介助訓練や介助なしの随意運
動を行う自動運動訓練を提示する。また、かなりの程度下肢機能を回復した対象者には、
より筋力をつけるための抵抗運動訓練等の訓練パターンを提示する。
・ フィードバック機能は、アクティブアシスト運動制御部とバイオフィードバック部か
ら成る。アクティブアシスト運動制御部は、選択された訓練動作を実施する際、療法
士の教示した訓練動作をベースに、訓練中の反応状態に応じて、負荷・軌道・速度を
自在に調整し、高齢者・障害者の自発的運動を誘導するよう、細かい調整をリアルタ
イムに行う。バイオフィードバック部は、生体情報融合評価部で得た評価結果にもと
づき、アクティブアシスト運動制御部からの指令に連動して、画像・音などの刺激情
報により、生体状態・訓練状況を高齢者・障害者にフィードバックする。
(c)上肢動作訓練支援システム
提案する上肢動作訓練支援システムの具体的なメカニズムの基本動作は、以下の機能
を実現するものである。
・理学療法(Physical Therapy)補助動作
・関節可動域訓練 (ROM exercise)
拘縮による自動的関節可動域(active ROM)を拡張するために、重力補償や他動運動
を行う。リハビリの効果を示すために動作状態における各種パラメータを視覚等にフィ
ードバックする。
・筋力増強訓練 (muscle strengthening)
粘弾性を有するアクチュエータの特性を利用して水の力学的作用(流体抵抗や粘性抵
抗)を模擬することにより、水中運動療法における筋力負荷パターンを生じさせ、関節
に負担を掛けにくい訓練を実現する。
・作業療法 (Occupational Therapy)補助動作
片まひ患者等の運動機能回復を目的とした訓練の矯正具として用いる。例えば、「机
2-17
上輪入れ」等の訓練に使用し、動作軌道の柔らかな矯正(制限)を行い、作業療法士が
行うべき介助動作を実現する。
4.3 研究開発体制
(1)具体的な研究開発体制
経済産業省
出資
新エネルギー・産業技術総合開発機構
委託
技術研究組合 医療福祉機器研究
身体機能リハビリ支援システム
開発委員会
分担
ダイヘンテック株式会社
株式会社 安川電機
三洋電機 株式会社(H11,12年度)
旭化成グループ(H13年度より引継)
○技術研究組合
医療福祉機器研究所
昭和51年設立以来、医療福祉機器研究開発に係るプロジェクトの企画、推進、効率
的な運用等を行っている。また、学識経験者からなる開発委員会(必要に応じて実験評
価委員会等)を組織開催し、研究開発推進に関する事項の審議、指導および助言を戴き、
かつプロジェクトに携わる研究者相互の情報交換等を行って、プロジェクトの効率的推
進を行っている。
○ダイヘンテック(株)
ダイヘンテック(株)は知能化された次世代ロボットの研究をはじめ複数ロボットおよび周辺
機器の統合制御技術の開発を行っている。また、診療情報を表示できることで、患者病態の
時系列把握や診療指針の検討などの臨床診断を支援するシステム化を先行的に研究してお
り、本提案の訓練装置の製作はもとより、訓練中に計測されたデータから被験者の歩行機能
やバランス機能を評価し、その後の訓練や日常生活にアドバイスを行えるようなデータを提供
することができる。
○(株)安川電機
株式会社安川電機は、慶應大学月が瀬リハビリテーションセンター・同大学理工学部の指
導を得て、基礎的な臨床実験段階の装置である下肢用運動療法装置を試作し、脳卒中患者
の関節可動域訓練や痙性の軽減など最も有効な治療法の開発、運動機能障害の機序の解
2-18
明、機能障害度の評価などを行っており、本提案の基礎的な部分を先行的に研究してきた実
績がある。
○三洋電機株式会社(平成11~12 年度)
三洋電機株式会社では、通産省、厚生省が行っている医療福祉機器に関する研究開発、
実用化研究の中でも、人間-機械協調型のシステム開発において、パワーアシスト技術の応
用開発として、以下のような実績がある。
・身体障害者用介助移動装置(昭和 58~63 年度)
・移乗・移載介助装置(平成 2~7 年度)
通産省医療福祉機器研究開発制度
厚生省外郭団体(社)シルバーサービス振興会
また、多指ハンドを装着した多軸アームの移動物体自律把持システムの研究開発でも研究
実績がある。
○旭化成グループ(平成 13 年度~ )
旭化成グループでは機器開発を旭エンジニアリング株式会社、電気粘性流体クラッチに適
した流体とシール性の改良を旭化成株式会社が担当し、研究機関として大阪大学から開発
支援、医療現場として星ヶ丘厚生年金病院より助言指導を受けている。旭エンジニアリング株
式会社ではロボット等を応用した産業機器の開発に実績をもち、旭化成株式会社では総合化
学メーカとして各種の素材開発に実績をもつ。共同開発としては医療福祉機器分野において
電気粘性流体を応用したインテリジェントブレーキ付歩行器、二次元の上肢訓練機などを開
発した実績がある。
[当該体制をとる必要性]
身体の運動機能は大きく分けて上肢および下肢に分けられ、機能的にはまったく異なる。ま
た、歩行は下肢の筋力、バランス能力等を総動員して行う動作であり、上肢動作訓練、下肢機
能回復訓練、歩行訓練は現在のリハビリ訓練でも別々に行われている。また、患者・訓練者に
よってそれぞれの機能低下の程度が異なるため、これらを単一の装置でカバーすることは現
実的でない。したがって、上肢動作訓練、下肢機能回復訓練、歩行訓練の 3 つの訓練ごとに
別々の装置を開発し、各装置ごとに参加企業が分担して行うことが、開発を円滑に進める上
で必要と考えられる。
また、研究機関、大学、病院、施設などでの開発機器のフィールドテスト、意見聴取、助言お
よび指導には、各企業の現在までの研究開発実績、大学との連携実績などのネットワークを
互いに活用することで、身体機能のリハビリ訓練をトータルに捕らえた評価が可能になり、実
用化により貢献すると考えられる。
(2)成果普及広報体制
各分担の研究開発において成果が得られた場合には、一般向け学会向け問わず積極的に
普及広報するとともに、医福研、NEDO、推進側にも通知する。また、終了報告書は医福研、
NEDO、推進側で管理され、一般への広報等に活用される。
2-19
(3)事業運営(実施者、管理者)の現状、変更点等
<<当初の研究開発担当者>>
担当機関
ダイヘンテック
(株)
(株)安川電機
三洋電機(株)
(技)
医福研
氏名
所属・役職
川谷
孝雄
メカトロシステム部 部長
後藤
宏人
メカトロシステム部 課長
松崎
剛之
メカトロシステム部 研究員
諫山
謙二
医療システム部
係長
矢野
幸一
医療システム部
研究員
都筑 千秋
技術開発本部 理事
山崎 宗重
所長
河野 寿之
つくば研究所 課長
榊泰輔
つくば研究所
平田 亮吉
つくば研究所
岡田 誠一郎
つくば研究所
前川 正弘
メカトロニクス研究所 研究部長
青木 英明
メカトロニクス研究所 研究室長
小川 淳
メカトロニクス研究所 主管研究員
北條
三木夫
メカトロニクス研究所 主任研究員
角谷
和重
メカトロニクス研究所 主任研究員
河上
日出生
メカトロニクス研究所 主任研究員
森川
雅司
メカトロニクス研究所 主任研究員
瀬尾
和宏
メカトロニクス研究所
研究員
鷹尾
本田
松田
白石
宏
幸雄
正敏
孝
メカトロニクス研究所
専務理事
研究開発部 部長
研究開発部 課長
研究員
2-20
<平成 13 年度研究開発担当者>>
担当機関
氏名
*川谷
所属・役職
孝雄
メカトロシステム部 部長
久積 良雄
メカトロシステム部 課長
太田
雅也
メカトロシステム部 課長
ダイヘンテック
寺司
文人
メカトロシステム部 係長
(株)
後藤
義和
メカトロシステム部 研究員
緒方
忍
メカトロシステム部 研究員
松崎
剛之
メカトロシステム部 研究員
智
宗重
千秋
和彦
泰輔
亮吉
誠一郎
メカトロシステム部 研究員
技術開発本部 理事
社長補佐
理事
基礎研究所
課長
基礎研究所
係長
基礎研究所
研究員
基礎研究所
研究員
(株)安川電機
荒金
*山崎
都筑
横山
榊
平田
岡田
旭化成グループ
・ 旭 エ ン ジ ニ ア リ *笠
ング
(株)
・旭化成(株)
潮
システム機器事業部 取締役事業部長
鍛冶本 敬次
システム機器事業部 部長
鈴木 貞美
システム機器事業部 課長
西村 昭二
システム機器事業部 研究員
玉置
久
システム機器事業部 研究員
飯高
賢治
システム機器事業部 研究員
竹中
重和
システム機器事業部 研究員
前原
和雄
電子応用研究所
所長
*井上
昭夫
電子応用研究所
部長
鈴木
英弘
電子応用研究所
派遣研究員
田中
松田
白石
修
正敏
孝
専務理事
研究開発部 部長
研究開発部 課長
(平成13年度よ
り三洋電機(株)
から引継)
(技)
医福研
2-21
(4)他からの指導・協力者名および指導・協力事項
身体機能リハビリ支援システム開発委員会
氏
名
役
職
指導協力事項
木村
哲彦
日本医科大学
医療管理学教室 教授
助
言
内田
成男
慶應義塾大学
月ヶ瀬リハビリテーションセンター 理学療法室 課長
助
言
久場
康良
生命工学工業技術研究所 福祉医用工学研究室 主任研究官
助
言
熊谷
公明
社会福祉法人聖母訪問会 小さき花の園 園長
助
言
古荘
純次
大阪大学大学院 工学研究科 電子制御機械工学 教授
助
言
斎藤
之男
東京電機大学
助
言
手嶋
教之
立命館大学
助
言
富田
豊
慶應義塾大学
助
言
道免
和久
東京都リハビリテーション病院 診療部 医長
助
言
畑田
和男
社会福祉法人
助
言
宮川
浩臣
大分大学
助
言
平木
治朗
星ヶ丘厚生年金病院 リハビリテーション部 技師長
助
言
安井
平吉
大寿会病院
助
言
理工学部 知能機械工学科 教授
理工学部 ロボティックス学科 助教授
理工学部 情報工学科 教授
太陽の家 理事長
工学部 福祉環境工学科 教授
リハビリテーション顧問
適宜,次の方々の協力を得る予定
氏
名
役
職
指導協力事項
岡島
田中
小寺
小田
後藤
康友
尚文
貴子
博道
茂治
杏林大学医学部リハビリテーション教室教授
慶應大学月が瀬リハビリテーションセンター助手
慶應大学月が瀬リハビリテーションセンター理学療法士
社会福祉法人 太陽の家 開発課長
財団法人 大分県産業創造機構 技術コーディネータ
助言および調査
助言および調査
助言および調査
助言および調査
助言および調査
元田
英一
名古屋労災リハビリ工学センター 臨床応用研究部長
助言および調査
小田
邦彦
大阪医専リハビリテーション学科 教務部主任
助言および調査
5.実用化、事業化の見通し
5.1 事業全体についての実用化の見通し
本研究開発を通じて確立されたリハビリシステム・ノウハウは、それぞれ研究終了後に
製品化を予定。本研究開発終了後、さらに医師・療法士と協力を進め患者を対象とした臨
床実験を継続し、身体機能リハビリ支援システムの実用化・製品化を進める。
5.2 要素研究開発項目毎の実用化の見通し
(1)歩行訓練支援システム
平成13年度より一次試作機を用いて、高齢者・障害者を被験者として臨床データ
2-22
の収集を開始する予定である。このデータをもとに平成14年度以降コンパクト化され
た二次試作機を製作し、施設等へ搬入して継続的な臨床データを収集する。ここで得ら
れたデータをもとに、改良を重ねるとともに、実用機へ向けた検討を行う。
実用化した際の市場としては、2000年7月現在で厚生労働省の統計によるとリハ
ビリテーション総合承認施設数は460箇所であり、年間にそのうちの 10%にあたる
約50箇所が装置を導入すると仮定すると2.5億~5億円の規模が見込まれる(一セ
ットあたり500万~1000万と設定)。また、安価な簡易バージョン等の開発によ
り、全国の保健所や民間のアスレチックジムなどでも高齢者用の訓練機器として市場の可
能性がある。対象者については寝たきり高齢者は約60万人、介助が必要な65歳以上の
入院患者は約41万人、何らかの下肢障害者は約60万人と見積もられており、今後、さ
らに増えることが予想される。一人あたりの理学療法士が担当する患者数は軽度で30人
程度、重度で10人程度と見込まれ、訓練に装置を導入することで安全上の問題や療法士
の精神的・身体的負担を軽減することができ、これだけでも有効性は高いと考えられる。
立位から自立した歩行への橋渡しの役割を持つ機器に対応するものは、現場ではほとんど
使われておらず、傾斜台により脚への負荷訓練を行った後、平行棒や歩行器で訓練を行う
現在のステップは患者にとって非常に負荷が大きいと考えられ、この部分に本装置を導入
することは訓練の効果を上げ、安全性を高めることができる。また、床反力等の歩行デー
タは診断の情報として利用でき、医師や療法士の訓練計画にも有効であると考えられる。
(2)下肢機能回復支援システム
脳卒中高齢者歩行障害リハビリニーズの増大、他方、医療経営の効率化を求める環境の
中で、人手と経験に頼る現在の医療システムから、できる限り有効なリハビリ支援機器の
活用へという方向がリハビリ医療分野に見えてきている。医療制度改革による急性期・回
復期における入院期間の短縮化傾向は病院と患者双方に厳しい環境ではあるが、本開発機
器を使うことで入院期間を短縮してもADLレベルを落とさないケアの実現が期待される。
また、介護保険に関連して要介護度がリハビリの前後において改善することが期待される。
このような医療制度・介護保険制度のコスト・パフォーマンスの課題について貢献できる
可能性がある。特に脳卒中については、近年、急性期からの早期治療開始により、回復レ
ベルの向上や入院期間の短縮をはかることが重要視されている。このことから回復期・維
持期とあわせ、効果的・効率的な治療を施すためのリハビリ機器実用化への期待が高まっ
てきている。また、リハビリ医療の計数化・標準化に対しても学会等で工学への期待の声
が出ており、本開発装置の実用化により臨床効果検証データの取得を容易にし、効能の定
量化や治療の標準化を促進することが期待できる。また、在宅医療・介護の現場において、
本開発装置の要素技術を応用した単機能装置の実用化が期待できる。このように、本研究
開発成果による波及効果は大きいと考えられる。
プロジェクトの成果を実用化した際の市場としては、脳卒中患者を例にすると、毎年新
たに発症する患者数のうちの 10 万人(発症患者総数 14 万人の 2/3)と、現患者数のうちの
35 万人(現状患者総数 170 万人の 20%)とをあわせた合計 45 万人(いずれも下肢の歩行機
能訓練が必要と思われる割合を仮定)を対象数とし、患者の平均治療期間を1ヶ月程度、
2-23
装置(耐用年数 5 年)が1日 5 人で年 200 日稼動して訓練を実施すると仮定すると、年 1400
台(価格 500 万とすると年 70 億円)の潜在市場が推定され、これに施設規模・数による購
買力を加味すると年 20~30 億程度の市場が見込まれる。
実用化への計画としては、平成13年度の中間時期までに目標通りの開発が完了する予
定であり、平成14年度からの医療現場における開発装置の試用を通じ、まず回復期にお
ける臨床効果をプロジェクト後半の2年間で検証し実用化をはかる。また、急性期用とし
ても別途臨床計画を検討中である。さらに、尖足防止用機器など維持期用のリハ外来・介
護施設用また訪問リハビリ用の簡易な装置についても複数の製品イメージが考えられる。
このように、プロジェクト開発目標装置の実用化、および要素技術をベースにした単機能
装置の実用化について、それぞれ検討を進めている。
(3)上肢動作訓練支援システム
技術的に見ると、まず平成12年度末までに各個別要素の調査、基本設計、予備実験を
終了し基本仕様を明らかにしており計画通りと言える。平成13年度は、上肢支持機構と
訓練パターン、計測・評価について、これまでの知見にさらなる検討を加え一次試作機を
製作中であり、今年度末までにはこれらの検証とデータを蓄積し、安全性向上、効果的な
訓練方法、安定した計測手法などの課題を解決する。フィードバックは計測データの応用
手法を再度検討し今年度中に目処をつけ平成14年度から本格的に検証していく。従って
各個別要素については今年度中に試作完了の予定である。またシステム装置は、平成13
年度中に予備試作し課題抽出を早期に実施する。現時点においてはこのようにほぼ計画通
り開発段階にあり、実用化の可能性は高いと考える。なお平成14年度よりシステムの本
格試作と小型化、軽量化、低価格化を目指して各要素二次試作も実施し、より多くの施設
や病院で利用できる装置を目指して研究開発を行う。本試作機により得られたデータをも
とに、本装置の一部を応用した簡易版への検討も実施する。
市場性いう観点からは、脳血管障害者に例をとると平成8年では約47万人発症してお
り、平成17年には約73万人発症すると推定される。そのうちリハ機を使用する人は約
10万人(1年間で発症した患者の15%と推定)と考えられる。別途調査によると作業
療法士は平成13年にて約 1 万7千人であり、未だ療法士への負荷は大きく実用化の要求
は高いと言える。リハビリ回数を72回/一人(治療期間:6ヶ月間、12回/一ヶ月)、
1日当たり6回/1台、年間300日稼動し装置耐用年数を5年間と仮定すると、施設用
として800台/年(価格400万とすると約30億円)は見込まれる。厚生労働省統計
によると全国のリハビリ総合承認施設数は平成12年の時点で460施設でありその数を
勘案する必要はあるが、研究機関等を含めると十分に事業性はあると考えられる。
6.今後の展開
本事業は、平成13年度までにほぼ試作機の試作を完了する予定であり、今後の展開
における課題としては、本事業終了年度の平成15年度までにそれぞれの試作機の有効
性を証明する臨床データを取りながら改良を重ねることとなる。現場における十分なデ
2-24
ータ取得とその解析を行い、リハビリ従事者からの評価を本システムの改良点としてフ
ィードバックすることにより、より完成されたリハビリ支援機器を目指す。
その後の実用化に関する展開としては、5章にて事業者毎に実用化のシナリオを詳細
に記述した。
予測される実用化の見通し
NEDO事業終了
H15年度
H16~17 年度
H18~19 年度
H20~21 年度
下肢機能回復
支援システム
臨床最終評価
製品試作と評価
製品化
(小型化とコスト低減)
歩行訓練
臨床最終評価
製品試作と評価
支援システム
上肢動作訓練
製品化
(小型化とコスト低減)
ソフト開発と臨床評価
製品試作と評価
支援システム
製品化
(コスト低減)
7.中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
プロジェクトの3年目に中間評価を行い、5年間の研究開発期間終了後に事後評価を行う。
8.研究開発成果
8.1 事業全体の成果
身体機能リハビリ支援システムでは、「上肢、下肢の動作」に関する身体機能低下の予
防と機能維持および軽度の障害の回復訓練に広く応用可能なフィードバック機能を備えた訓
練システムを開発する事を目的とする。本システムは、下肢の動作に関する「歩行訓練支援シ
ステム」と「下肢機能回復支援システム」、上肢の動作に関する「上肢動作訓練支援システム」
の3つの装置システムからなり、装置システムごとに研究開発を進めてきた。現在までに、各シ
ステムの範疇となる生体動作機能やリハビリ訓練に関する調査・解析を行うとともに、装置を構
成する各要素技術および装置システムの設計、試作、実験を行っている。各システムの現在
までの成果を簡単にまとめると以下のようになる。
歩行訓練支援システムは、水中歩行と同様の訓練を施設や病院内で行えることを目指
し、訓練者を吊り上げることで足にかかる負担を調節する方式で歩行訓練を行うもので
2-25
ある。負担の調節をするために、足に加わる力をフォースプレートにより計測し、その
データを元に吊り上げ力をリアルタイムに調節する。開発要素技術項目としては、訓練
に適したデータを収集でき安価なフォースプレート部、訓練者を安全にかつ適切に吊り
上げることができる吊り上げ機構および制御システム、訓練者の歩行を制限せず痛み等
不快感を与えない保持ジャケット、被訓練者の立位時のバランスを評価・訓練するポス
チャーコントロールシステム等がある。フォースプレートはコストダウンと動的測定精
度の向上のため、訓練装置に求められる仕様、材質等を検討し、力センサ等を含め新規
開発を行った。保持ジャケットは直接訓練者と接触するもので、本装置では重要な要素
と考えられる。歩行を制限せず、痛み等を与えない素材、形状について検討を行い、実
際にジャケットを試着させ,吊り実験をするためにジャケットを試作し、良好なものを
考案した。その他、各要素部について設計制作を行い、装置の一次試作を行った。ポス
チャーコントロールシステムについては基本仕様を決定した。H13年度は、一次試作
機を用いて高齢者や障害者の臨床データを収集し、本装置の有効性を検証するとともに
二次試作へ向けたデータを収集する。また、ポスチャーコントロール装置の試作を行う。
下肢機能回復支援システムは、高齢者・障害者および脳機能障害患者の寝たきり防止、
自立と社会参加を促進すること、療法士・介護職員の作業を支援・補助し負担を軽減す
ること、さらに従来療法士の徒手にて行われている訓練動作の効果を定量的に評価する
ことを目的とし、臥位から立位による歩行が可能になるまでの期間の治療を促進するこ
とを目指すものである。開発する要素技術項目としては、下肢や体幹を無理なく支える
下肢支持機構、複数の生体情報を計測し患者の状態を評価する計測・評価機能、評価結
果から最適な訓練パターンを対応させる訓練パターン提示機能、患者動作の介助や生体
情報をフィードバックするフィードバック機能がある。下肢支持機能に関しては、臨床
現場のヒアリング調査結果をもとに基本仕様をまとめ、可動範囲等の仕様にもとづき両
下肢訓練予備実験装置を試作し仕様を確認した。計測・評価機能に関しては、現状の計
測レベルと計測機器の調査を行い、生体計測の手法について検討し、試作装置へセンサ
を組込み健常者による試験を行った。訓練パターン提示機能に関しては、生体状態のレ
ベルを考慮した各種訓練機能(他動運動、自動介助運動 等)の検討結果から仕様を明
らかにし試作装置(片下肢訓練装置)に移植した。また、健常者による衝撃応答等の動
作確認試験を行った。フィードバック機能に関して、人間にフィードバックできる刺激
の種類と現状のレベルの調査をもとに、フィードバック手法について仕様をまとめ、バ
イオフィードバックの動作試験を行った。さらに、システムの基本設計として両下肢協
調訓練のコンセプトを検討した。H13年度には両下肢訓練装置の試作完了と、両下肢
協調動作やバイオフィードバック等基本機能の開発完了、他動運動機能等の一部患者で
の実験開始を予定している。
上肢動作訓練支援システムは、上肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者に対し、
上肢運動の機能を評価して、医師・療法士等の治療ノウハウに基づいた訓練内容を提示
し、また計測・評価の結果を視覚・聴覚等のフィードバックを行うことによって、訓練
の効果を使用者に提示し、使用者の訓練に対する動機付けを与えることが可能なシステ
ムを開発することを目的とする。開発項目としては、肩関節など自由度の大きい関節を
2-26
ゆるやかに支持する上肢支持機構、上肢動作評価に必要な計測項目の抽出を行い評価す
る計測評価機能、患者、療法士に訓練動作のフィードバックを行い動機付け向上を図る
フィードバック機能、から構成される。上肢支持機構の開発では、肩、肘、など自由度
の大きい複雑な上肢を無理なく保持する機構について調査を行い、訓練作業の絞込みと
効果的な基本構造のアイデア抽出を行った。また、上肢訓練に適した動作範囲・速度等
を検証するため、多自由度マニピュレータを製作し、その動作実験を行った。計測評価
機能に関して、手首位置の表示や力覚呈示に因る効果を調査するため、手首部の簡易測
定機器と訓練軌道を呈示可能な機器を製作して臨床現場でのヒアリングを行い、必要項
目の絞込みを実施した。また、リーチング動作を計測するために必要なセンサを決定す
るため、関節位置・体幹動揺などの計測実験を行った。フィードバック機能では、上肢
訓練の動作把握に必要なパラメータの調査と予備実験を実施し、効果的なパラメータの
抽出を行い、効果的な上肢訓練動作を実現するための画像情報と動作域の関連について
臨床ヒアリングを行った。さらに、上肢動作訓練支援機器の試作に向けた基本設計を行
った。平成13年度には各要素の一次試作、システム装置の基本設計、予備試作を予定
しており、本格的なシステム装置試作への必要なデータを得る予定である。
8.2 研究開発項目毎の成果
8.2.1
成果概要一覧
(1)歩行訓練支援システム
構造支柱、吊り上げ機構部、フォースプレート部、計測制御部の設計、製作を行い、シ
ステムを構築した。フォースプレート、センサの特性を検討し、保持ジャケットの試作
評価を行った。(図①-1、図①-2)
(2)下肢機能回復支援システム
両下肢訓練予備実験装置の試作、健常者によるセンサ組込み試験、健常者による衝撃応
答等の動作確認試験、バイオフィードバックの動作試験、および両下肢協調訓練のコン
セプトをシステム基本設計として検討した。(図②-1、図②-2)
(3)上肢動作訓練支援システム
上肢支持機構、計測・評価機能、フィードバック機能に関して、各要素の予備実験装置
の試作と臨床ヒアリングを行い、基本仕様を明らかにした。(図③-1)
2-27
図①-1
12 年度に製作した歩行訓練支援システム一次試作機
図①-2 12 年度に試作した保持ジャケット
2-28
図②-1 12年度に試作した両下肢訓練予備実験装置の全体
図②-2 12年度に試作した両下肢訓練予備実験装置の下肢駆動部分
2-29
図③-1 12年度に試作した上肢動作訓練支援システム予備実験装置
2-30
2-31
総表
研究内容
(研究成果)
研究内容
研究目標
年度
目的・意義
8.2.2
平成12年度
歩行訓練支援システ
ムおよび下肢機能回
復システムについて
要素技術の一次試作
とシステムの基本設
計を行う。上肢動作訓
練支援システムにつ
いて基本設計を行う。
平成13年度
歩行訓練支援システ
ムについては、一次試
作機を用いた臨床デ
ータの収集を行う。下
肢機能回復システム
について要素技術の
二次試作とシステム
の試作を行う。上肢動
作訓練支援システム
について要素技術の
一次試作とシステム
の基本設計を行う。
2)下肢機能回復支援システム
1)歩行訓練支援システム
フォースプレート部、 構造支柱、吊り上げ機 一次試作機の調整を
構造支柱、吊り上げ制 構部、フォースプレー
御部など各部の基本 ト部、計測制御部の設 行い、臨床データの収
設計を行うとともに、 計、製作を行い、シス 集中である。
保持ジャケットの試 テムを構築した。フォ
作評価を行った。
ースプレート、センサ
の特性を検討し、保持
ジャケットの試作評
価を行った。
平成11年度
歩行訓練支援システ
ムおよび下肢機能回
復システムについて
要素技術の基本設計
を行う。上肢動作訓練
支援システムについ
て概念設計を行う。
平成14年度
歩行訓練支援システ
ムおよび下肢機能回
復システムについて
要素技術とシステム
の評価・改良を行う。
上肢動作訓練支援シ
ステムについて要素
技術の二次試作とシ
ステムの試作・評価改
良を行う。
平成15年度
要素技術の評価・改良
とシステムの臨床的
総合評価を行う。
高齢者の身体機能低下の予防と機能維持および軽度の障害の回復訓練に広く応用可能なフィードバック機能を備えた身体
機能計測・訓練装置を開発し、高齢者の自立と社会参加を促進する一助となることを目的とする。また、これらの開発およ
び高齢者の動作特性の解析を通して、運動療法への工学的支援の可能性を探り、「上肢、下肢の動作」に関するあらゆる福
祉機器、介護機器等の開発の設計手法、評価方法および開発環境に応用を試みる。
2-32
両下肢訓練予備実験
装置の試作、健常者に
よるセンサ組込み試
験、健常者による衝撃
応答等の動作確認試
験、バイオフィードバ
ックの動作試験、およ
び両下肢協調訓練の
コンセプトをシステ
ム基本設計として検
討した。
1+3
14+2
1
11
口頭発表数
外部展示
新聞報道
特許出願
14+28+13
2+2
2+2
学術講演会発表論文数
1
4+9
24
21
19
研究担当人員
235
224
電気粘性流体応用ク
ラッチを試作し動作
確認を実施した。空転
トルクが小さい流体
シール機構の評価装
置を試作した。システ
ム装置は基本設計を
現在継続中であり予
備試作までほぼ完了
した。
両下肢訓練装置の試
作を完了した。両下肢
用センサ組込み試験、
患者による自動介助
等の動作確認試験、バ
イオフィードバック
の動作試験を完了し
た。両下肢協調訓練の
コンセプトをまとめ
ヒアリングした。
106
3)上肢動作訓練支援システム
上肢支持機構、計測・ 上肢支持機構、計測・
評価機能、フィードバ 評価機能、フィードバ
ック機能についての ック機能の各要素に
概念設計、及び臨床現 ついて、試作した装置
場のヒアリングを行 をもとに対象者・症例
い、症例や程度に応じ の絞込みを行い、各要
た必要機能の調査、お 素の基本仕様を明ら
よび各要素の予備的 かにした。
実験を行なった。
下肢支持機構、計測評
価機能、訓練パターン
提示機能、フィードバ
ック機能の各要素技
術について、臨床現場
のヒアリング調査結
果をもとに基本な仕
様・手法を明らかにし
た。
研究予算(百万円)
(研究成果)
19
129
17
61
8.2.3
要素研究毎の成果
(1)歩行訓練支援システム
歩行訓練支援システムは、フォースプレートおよび各種位置センサからの情報をもとに、吊
り上げ力を調節し、水中での歩行訓練と同様の効果を得ようとするものである.訓練者は、上
部から吊るされた吊り上げ機構に支えられ、フォースプレート上を歩行する.訓練者の回復程
度に合わせて吊り上げ力を訓練中リアルタイムに調節することでもっとも効果的な負荷を訓練
者に与えることができるほか、フォースプレート等から得られたデータをもとに訓練効果を評
価することが可能となる。
歩行訓練支援システムに関して、プロジェクトの 2 年目となる本年度は要素技術の一次試作
とシステムの構築を行った。具体的には昨年度行った基本設計を元に、各要素部の設計、製作
を行い、各要素部における機能的評価と改良を行い、装置システムとして組立を行った。また、
歩行を行う上で必要な姿勢コントロールを評価訓練できるシステムとしてポスチャーコントロ
ールシステムの基本設計を行った。
本歩行訓練支援システムは、訓練者を吊り上げる機構を有するが、この吊り上げ機構を支持
する構造支柱は 2 本の支柱と吊り上げ機構部が移動するレール部および基盤フレームからなる。
吊り上げ機構部はレール上を移動し、無限に回ることができるように、電源はトロリーから集
電し、吊り上げの上下コントロール、移動のコントロール等は無線を通じて行える形である。
基盤フレーム上にはフォースプレートを載せる。
吊り上げ機構部に関しては、サーボモータにより、保持ジャケットを上下させ、レール上を
移動できる構造とした。サーボモータのコントロールには吊り上げ機構部に積んだ基盤を通し
て、メイン制御部からの SS 無線通信によって行う。
フォースプレートに関しては、精度の向上とコストの観点から、天板を軽く剛性の高いアル
ミハニカム構造をカーボンファイバでサンドイッチする方式とし、試作機ではストレンゲージ
を用いた力センサを利用した。ストレンゲージ方式の力センサは、ゲージの貼り方や荷重構造
により測定精度が依存する、経年変化が問題になるなどの欠点を持っており、主に静的特性の
計測に用いられるため、本装置には必ずしも最適ではない。そのため、液体を閉じ込めた筒の
中に半導体圧センサを配置した新型の力センサを考案し、開発を行っているが、温度特性が不
安定な面があり、試作機には搭載できなかった。今後、さらに開発を行い、二次試作では搭載
することを目標にしている。
計測制御部はフォースプレートからの力情報を計測し、適切な調整量を計算し吊り上げ機構
に送信する。フォースプレートからの伝送データはフォースプレートに付属したセンサ制御部
によりディジタル化され、RS485 高速シリアル通信を通じて 1 本のケーブルで伝送される。これ
により計測制御部からフォースプレートへの信号線は一本で済み、フォースプレートのセンサ
制御部はディージーチェーンにより接続される。データのフォーマットは 12 台までのプレート
のデータを同時に測定できるように構成した。
保持ジャケットについては、さまざまな素材、形状、機構で検討した結果、図①-2 に示すよ
うにデニム生地を用い、股下および腕により体重を支える形式とした。股下の部分は裁縫をく
ふうして接触部に縫い目が来ないようにしたほか、クッションを工夫し、痛みが少ないものに
した。また、体幹を覆い固定する、肩の位置から吊り上げることで、安定感をよくしたほか、
2-33
腰の位置に腕の置けるパイプを設置し、腕でも体重を支えることができるようにするとともに、
精神的な安心感も確保できるようにした。現在のところ、健常者で試験した結果、歩行の制限
や痛みは発生しにくく比較的良好である。しかし、障害者や高齢者の体力、障害部位等によっ
ては不都合を生じる可能性もあるので、今後、さまざまな対象者について検討をするとともに、
これ以外の方式についても検討を行う。
<参考文献>
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今戸啓二・三浦篤義・池内秀隆・宮川浩臣
日本機械学会バイオエンジニアリング学術演論会秋季セミナ-(新潟)講演論文集, 2000, p.91-92
吊り上げ式歩行訓練機の吊り上げ用装具に関する研究
今戸啓二,三浦篤義,池内秀隆,宮川浩臣
第21回バイオメカニズム学術講演会講演予稿集, 2000, p.219-222.
吊り上げ式歩行訓練装置の開発
池内秀隆,川谷孝雄,荒金智,今戸啓二,宮川浩臣,斉藤之男
第21回バイオメカニズム学術講演会講演予稿集, 2000, p.269-270.
吊り上げ式歩行訓練装置の開発
池内秀隆、川谷孝雄,荒金智,今戸啓二,宮川浩臣,斉藤之男
第17回ライフサポート学会大会講演予稿集, 2001, p49
フィードバック型歩行訓練装置に関する研究
中川雄公、斎藤之男
人と福祉を支える技術フォーラム
2000講演予稿集,2000, p. 41-42
杉山裕輔、田島孝光、斎藤之男;歩行訓練パワーアシスト装置に関する研究
人と福祉を支える技術フォーラム
2001講演予稿集,2001, p. 13-14
斎藤之男、田島孝光、黒田和弘、佐々木繁美;一人用歩行訓練装置
2001年度精密工学会春季大会講演論文集, 2001, p.585
宮島秀一、斎藤之男;ポスチャーコントールシステムに関する研究
人と福祉を支える技術フォーラム
2000講演予稿集,2000, p. 79-80
宮島秀一、斎藤之男;ポスチャ-システムに関する研究
第39回
日本機械学会
学生員卒業研究発表講演会 講演前刷集,2000, p. 345-346
2-34
渡辺淳一、田島孝光、斎藤之男;視覚フィードバック系を備えたポスチャ-コントロールシステムの研究
人と福祉を支える技術フォーラム
2001講演予稿集,2001, p. 31-32
田島孝光、斎藤之男;視覚フィードバック系を兼ね備えたポスチャ-コントロールシステムの研究
日本機械学会関東支部第7期総会講演会講演論文集, 2001, p.137-138
砂川善宏、斎藤之男、田口慎一;福祉ロボットのためのバイラテラル油圧力伝達機構の研究
日本機械学会
関東支部ブロック合同講演会:
'99宇都宮
講演論文集,1999, p. 341
砂川善宏、斎藤之男、田口慎一; 福祉ロボットのためのバイラテラル油圧力伝達機構の研究
第10回
日本機械学会
バイオエンジニアリング学術講演会
秋季セミナー講演論文集,1999, p. 65-
66
Application of a Hydraulic Bilateral Servo Actuator for a Patient Supporting Robot
Y. Saito, K.Ohnishi, Y.Sunagawa; Conference proceeding of the 7th International Conference on
New Actuator: ACTUATOR 2000, 2000, p.266-271
(2)下肢機能回復支援システム
下肢機能回復支援システムは、高齢者・障害者および脳機能障害患者の寝たきり防止、自立
と社会参加を促進すること、療法士・介護職員の作業を支援・補助し負担を軽減すること、さ
らに従来療法士の徒手にて行われている訓練動作の効果を定量的に評価することを目的とし、
臥位から立位による歩行が可能になるまでの期間の治療を促進することを目指すものである。
下肢機能回復支援システムに関して、プロジェクトの2年目にあたる本年度は、要素技術の
一次試作とシステムの基本設計を行った。具体的には昨年度行った要素技術の基本設計をもと
に、下肢等を支持する下肢支持機構、関節角度等の計測・評価の手段、他動運動等の訓練パタ
ーン提示の手段、訓練結果をフィードバックする技術の各要素技術の一次試作と来年度の本格
的な試作を見据えたシステムの基本設計を行った。以上の成果を来年度のシステムの本格的な
試作につなげていく。以下、本年度の成果概要を要素技術ごとに説明する。
下肢支持機構に関しては、最終目標である体幹、大腿、下腿、足部をそれぞれ無理なく支持
もしくは保持する機構とすることに対し、昨年度実施した、体幹、大腿・下腿、足部等の肢体
の支持・保持方法、肢体の可動範囲、訓練時の負荷についての検討結果をもとに、両下肢訓練
予備実験装置の試作をおこない仕様の確認を行った。本装置は来年度本格試作するための予備
試験を行うために試作したものである。図②―1に試作装置を示す。
計測・評価機能に関しては、下肢運動機能データとして関節角度、関節角速度、関節トルク、
筋電、接触分布圧等を計測・評価するという最終目標に対し、昨年度選定した、関節角度、関
節トルク、筋電等のセンサについて、単体試験および昨年度試作した装置へ組込み健常者によ
る試験を行った。来年度は両下肢の運動と同期して計測する機能を実装する予定である。
訓練パターン提示機能に関して、他動運動訓練、関節可動域訓練、自動介助訓練、自動運動
訓練、抵抗運動訓練等の訓練パターンを提示するという最終目標に対し、昨年度試作した装置
2-35
へ実装した、他動運動機能や自動介助運動機能についての仕様とアルゴリズムについて、健常
者による衝撃応答、介助動作速度等の動作確認試験を行った。来年度は、患者による検証実験
を一部おこなうこと、また両下肢を協調して駆動・介助する機能を実装する予定である。
フィードバック機能に関しては、計測・評価結果に基づいて負荷、軌道、速度等の訓練パラ
メータを調整可能としその効果を定量的に実証可能とするという最終目標に対し、昨年度調
査・検討した柔軟制御のパラメータ調整技術と自動介助訓練時のバイオフィードバック訓練技
術について、調整用インターフェースの評価およびバイオフィードバックの動作試験を健常者
にて行なった。来年度は、両下肢動作に同期したフィードバック機能の開発を行う予定である。
また、システムの基本設計に関しては、歩行の総合的な機能の回復をねらうシステム的アプ
ローチ、臥位または斜位の状態でも歩行を指向した運動を並行して実施する並列的アプローチ、
および脳・筋骨格・感覚受容器間のリアルタイムループを結ぶ運動を支援するためのシステム
コンセプトを検討した。来年度は、本格的なシステムの試作に結び付けていく。
<参考文献>
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Takako Kodera, Shigeo Uchida, Yasutomo Okajima, Naofumi Tanaka, Yutaka Tomita, Taisuke
Sakaki: Therapeutic Exercise Machine: Stretching Exercise by Soft Motion Followed by
Gradual Forced Retraction, The 13th International Congress of WCPT, 1999, p.383,
Masaya Taki, Shigeo Uchida, Takako Kodera, Risa Shirakawa, Naofumi Tanaka, Yasutomo
Okajima, Yutaka Tomita, Seiichito Okada, Taisuke Sakaki, Toshio Horiuchi: Effect of
Continuous Passive Range-Of-Motion Exercise on Passive Joint Torque, The 13th International
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Shigeo Uchida, Masaya Taki, Takako Kodera, Risa Shirakawa, Naofumi Tanaka, Yasutomo
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ブロック法の効果に関する実験的研究,理学療法,Vol.17, No.11, 2000, pp.1033-1037,
特許
特願 2001-155794,歩行訓練装置および歩行訓練装置用載置台,
(3)上肢動作訓練支援システム
本システムは、上肢機能に軽度の障害をもつ高齢者・障害者に対し、上肢運動の機能を評価し
て、医師・療法士等の治療ノウハウに基づいた訓練内容を提示する。また視覚・聴覚等で計測・評
価の結果をフィードバックすることにより、訓練の効果を使用者に提示し、使用者の訓練に対する
動機付けを与えることが可能なシステムを開発することを目的とする。
開発項目としては、肩関節など自由度の大きい関節をゆるやかに支持する上肢支持機構、上肢動
作評価に必要な計測項目の抽出を行い評価する計測評価機能、患者や療法士に訓練動作のフィード
バックを行い動機付け向上を図るフィードバック機能、から構成される。
本年度は、まず、各要素の基本設計にあたり臨床現場のヒアリングをもとに症例や程度に応じた必
要機能の調査、および各要素の予備的実験を行い、基本仕様を明らかにした。
支持機構については、関節可動域訓練等の理学療法、運動協調性の向上を図る作業療法、等運動
性訓練等の筋力増強訓練に適した機構を検討し、感覚統合訓練を中心とした作業療法での有用性を
明らかにした。また、その概略構造の決定のため、2つのタイプの支持機構について試作・予備実験
を行い、臨床現場でのヒアリングによる検討を行った。
計測・制御機能については、シリアルリンク構造での前腕位置計測と手先部の力計測の予備実験
を行い、机上作業範囲の特定と自動運動の計測が可能であることを確認した。また、リハビリ訓練
の評価機としての協調動作の予備実験機を試作し、臨床現場でのヒアリングを実施した。
フィードバック機能については、力覚および視覚フィードバックに着目したシステムの試作と臨
床ヒアリングを行い、その有効性と課題を抽出した。また、前記の計測結果を基にしたフィードバ
2-39
ック制御方法、および負荷、軌道、速度等使用者に対するリハビリ情報のフィードバック予備実験
機器を試作し、臨床現場でのヒアリングを行い、感覚統合訓練などに対しての有用性を検討した。
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小柳健一,小倉拓,古荘純次:リハビリ訓練のための力覚提示装置の開発,計測自動制御学会第2回
システムインテグレーション部門学術講演会(SI2001),2001
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坂口正道,章国光,古荘純次:両方向回転型ERアクチュエータのモデリングと運動制御,日本機械学
会論文集(C編), Vol.66
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古荘純次:ER 流体を用いたメカトロニクスシステム(解説),フルイドパワーシステム(日本油空圧
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JUNJI FURUSHO,MASAMICHI SAKAGUCHI,NAOYUKI TAKESUE,KEN'ICHI KOYANAGI:DEVELOPMENT OF ER BRAKE
AND ITS APPLICATION TO PASSIVE FORCE DISPLAY,The Eighth International Conference on ER Fluids
and MR Suspensions (ERMR2001) ,2001
2-41
(特許)
特願2000-326304号、訓練ロボット、訓練ロボットシステムおよび訓練ロボットの制御
方式(三洋電機)
特願2001-69352号、アクチュエータ装置(三洋電機)
特願2001-235230、電気粘性流体の制御回路および制御方法(旭化成)
9.情勢変化への対応
(1)開発委員会における当初目標の変更・修正の議論。
下肢機能訓練システム、上肢機能訓練システムに関しては、開発委員会での評価は高く当初目標
の変更・修正に関する議論はない。
歩行訓練支援システムに関しては、12年度内に一次試作機を製作しその評価を完了する予定で
あったが、開発委員会にて一次試作機の動作評価に関して議論があり、ロードセルのみならず関節
角度、筋電等の計測による歩行動作の十分な評価とリハビリテーション効果の十分な検討を行って
から二次試作機の開発を進めることが示唆された。そこで当初予定を変更し、13年度には一次試
作機のリハビリテーションにおける有用性を実証することとし、二次試作機の製作は一次試作器の
評価結果を考慮して判断することとした。
(2)機動性の変更
平成13年4月よりやむなき理由により上肢機能訓練システムの開発分担先を、三洋電機㈱に
代わり旭化成㈱、旭エンジニアリング㈱とした。また、旭エンジニアリング㈱の再委託先として
大阪大学工学部を加えた。
10.今後の事業の方向性
(1)歩行訓練支援システム
本装置は寝たきり防止、高齢者・障害者の歩行支援・歩行訓練の数値化を通じて、誰もが寝たき
りにならないことを目標に開発を行ってきた。
平成 13 年度には、健常者を被験者に一次試作機の動作確認を行い、安全性の確認を経てロードセ
ルのみならず、筋電、関節角度等のデータ取得を可能とする改良を行う。さらにこれにより歩行に
障害を持つ被験者に対する臨床データの収集を開始し、本装置のリハビリテーションの有効性、安
全性を検証していく。一次試作機の実験により、そのリハビリテーション効果の有効性が確認でき
た時点で、二次試作機の検討を行う。二次試作機は、さまざまな施設に搬入できるサイズで製作し、
施設内での継続的な臨床試験を行い、改良を加えていく。
実用化にあたっては関係機関や施設・病院で実演や展示を行い、これらの意見をフィードバック
して、コストダウンと使いやすさ・有効性を見極め、製品化を検討する。
2-42
(2)下肢機能回復支援システム
脳卒中高齢者歩行障害リハビリニーズの増大、他方、医療経営の効率化を求める環境の中で、人
手と経験に頼る現在の医療システムから、できる限り有効なリハビリ支援機器の活用へという方向
がリハビリ医療分野に見られてきている。このような中、学会などで医療側から本開発への期待が
聞かれるようになってきている。
実用化への計画としては、平成13年度の中間時期までに本格的な試作であるシステムの試作を
完了し、機器開発完了を受け引き続き後半の臨床試験へ結び付ける目処が立っている。平成14年
度からの医療現場における開発装置の試用を通じ、安全性・有効性を検証することにより、実用化
が促進されるものと期待される。まず回復期における臨床効果をプロジェクト後半の2年間で検証
する予定である。さらに急性期への適用についても実用化のため別途臨床計画を検討している。ま
た、尖足防止用機器など維持期用のリハ外来・介護施設用また訪問リハビリ用の簡易な装置につい
ても複数の製品イメージが考えられる。このように、プロジェクト開発目標装置の実用化、および
要素技術をベースにした単機能装置の実用化について、事業計画を検討しているところである。以
上より、成果の実用化可能性は大きいといえる。
本プロジェクトの実用化においては、それぞれ臨床を重ねながら実用性を高めていくもの、要素
技術を短期間で実用的にまとめた簡易な装置など、急性期・回復期・維持期また在宅用装置といっ
た用途に対し、成果からいくつもの製品イメージが考えられる。また、実用化化には製品のシリー
ズ化が不可欠であることから、複数の製品イメージを考案しつつ可能なところから製品化していく。
なお、リハビリ機器の実用化には可能な限り多くの臨床実験を通じた検証が必要であり、医学会に
て認知されるプロセスが必要である。製品化したものを大きな事業に結び付けるため、こうした地
道なプロセスを通じて着実に進めていく。
(3)上肢動作訓練支援システム
脳卒中障害者等に対する効率的なリハビリのニーズは今後ますます増加する見込みであるが、そ
の中で三次元まで拡張した上肢動作訓練機はまだ実用レベルのものは世界に存在していない。従っ
て、本研究による上肢動作訓練支援システムのニーズは高いと言える。
そのような背景の中、本研究においては三次元以上の自由度を持つ上肢動作訓練機を開発しており、
今後もその方向で開発を進めていく。具体的には、平成13年度までに一次試作を含む要素の開発
が完了する予定であり、平成14年度からは、本格的なシステム装置の試作と医療現場での検証、
臨床ヒアリングを実施しながら開発を進めていく。なお、上肢動作訓練は、数多くの訓練への提案
がなされている作業療法に深く関わっているため、開発委員会や研究機関からの助言、医療現場で
の臨床ヒアリング等を通じて、計画を逐次修正しながら対応していく。さらに、施設用を基本とし
て開発する本装置をコンパクト化、簡易化することにより、在宅でのリハビリ訓練の動機付けを向
上させる機器として応用可能であり、その方向での実用化への検討も加えていく。
2-43
[事業原簿の作成・修正時期]
作成時
1. 国の関与の必要性・制度への適合性
○
2. 事業の背景・目的・位置づけ
○
3. 事業の目標
○
4. 事業の計画内容
○
5. 実用化、事業化の見通し
○
6. 今後の展開
7. 中間・事後評価の評価項目・評価基
準、評価手法及び実施時期
○
8. 研究開発成果
報告書
取得時
モニタリング評価
直前
直後
分野別
評価後
変更時
▲
▲
▲
▲
○
▲
△
9. 情勢変化への対応
△
10. 今後の事業の方向性
△
○:新規作成
▲:修正
△:追加
2-44
第3章 評 価
第3章 評価
【Ⅰ.総論】
1. 総合評価
機器を用いる運動療法には一定の価値があると期待される。サブテーマ
それぞれの開発意図は理解できるが、現時点ではテーマによって目標達成
度が一律でない。今後の研究継続については、慎重な判断が必要である。
下肢機能回復支援システムは、歩行にターゲットをしぼり、基本機能の
回復訓練と歩行訓練の2段階に分けてそれぞれで要求されるレベルを実現
するための訓練システムを提案しており、歩行訓練に対して新しい可能性
を示している。システム開発もほぼ計画通り進んでおり、今後の臨床場面
での評価をしっかり行えば、実用的なシステム構築が可能と判断される。
歩行訓練装置は、新規性及び工学的意義が認められ、機器開発は技術的
に可能であると判断する。しかしながら、動的荷重制御技術を用いること
が、他の類似機器に比べて治療効果が高いことを実証し、臨床的優位性を
明らかにしないと実用化は難しいと思われる。
上肢動作訓練支援システムは、世界的にも数少ない技術であり、これを
開発することに技術的意義がある。しかしながら、この機器で実現しよう
とする機能訓練方法が具体的に整理されておらず、コンセプトの検討が不
十分であると判断できる。
【肯定的意見】
○事業全体について
z 人口の高齢化に伴い増加しつつある高齢者を、ねたきりにさせないため
には、運動療法が有効である。このことは広く認知された考え方である。
z 運動療法を行う理学療法士・作業療法士数は増しつつあるが、診療報酬
などで認められた治療時間は 15 分から 40 分と限度がある。したがっ
て多くの高齢者・高齢障害者に治療効果を及ぼすことは困難。地域の高
齢者に対する機能訓練を行うのは、地域のマンパワーが不足しており、
さらに困難。したがって本プロジェクトで示されたような、機器を用い
る運動療法には一定の価値があると期待される。
z 上肢・下肢を対象とした身体機能回復の訓練場面において、機械システ
ムによる支援を行う点は将来性もあり、実用性もある。特に下肢につい
ては、歩行にターゲットをしぼり、基本機能の回復訓練と歩行訓練の2
段階に分け、それぞれで要求されるレベルを実現するための訓練システ
ムを提案しており、歩行訓練に対する新しい提案の可能性を含んでいる。
3−1
システム開発もほぼ計画通り進んでおり、今後の臨床場面での評価をし
っかり行えば、実用的なシステム構築が可能と判断する。
z 訓練・現場の効率を上げる面での貢献が期待できる。
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムについては、本プロジェクトの実施以前に企
業内で開発した装置(TEM)の発展型のようであり、期待が持てた。
z 下肢機能回復システム、および、歩行訓練装置は成果が着実に出ており、
今後の進展が期待できる。
○歩行訓練装置について
z 下肢機能回復システム、および、歩行訓練装置は成果が着実に出ており、
今後の進展が期待できる。
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
【問題点・改善すべき】
○事業全体について
z 機器で目的を達成できる場合と、人間のセラピストが関わらなければな
らない場合とがある。そこで機器の適応を明確にする必要がある。この
ためには学術的な検討が必要。
z 機器が高価な場合には、在宅や地域までの広い範囲への普及が困難。実
用化に際しては、価格をさげることやレンタルできること、など工夫が
必要。
z サブテーマそれぞれの開発意図は理解できる。しかし現時点では目標達
成度が一律でない。今後の研究継続について、慎重な判断が必要である。
z 各技術とも実用化・事業化のシナリオが弱いように思う。販売価格・売
り上げ数の見込みだけでなく、商品化・流通・認知を上げるための販促
に関わるコストも事業化の際は計算してほしい。
z 高齢者や障害者が自発的にリハビリに取り組める工夫が弱い。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置は、床反力を使って足に掛かる負担を一定に保つという
新しい制御方式を強調していたが、その効果や利点が実証されていな
い点が問題と考えられる。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢については、対象とする利用者の特徴および実現する機能訓練方法
が具体的に整理されておらず、コンセプトの検討が不十分であると判断
できる。摂食動作の訓練をターゲットとするのであれば、摂食動作を実
現するための現状の訓練過程と、それをどのように代替するのかが示さ
れるべきである。軌道呈示による訓練が示されているが、上肢障害のあ
3−2
る片麻痺者にとって、それがどの程度効果をあげるかは疑問が残る。対
象者の特徴によっては軌道にはこだわらず、摂食を実現することに主眼
をおいた訓練が実施されるべきである。このような訓練現場の観点から
コンセプトを構築しているとは考えられない。等張性運動(理学療法の
領域?)、他動運動、自動介助運動、抵抗運動がどのように組み合わさ
れて、最終的な摂食動作の獲得に至るかを整理すべきである。また、軽
度の片麻痺者の摂食訓練であれば、このような大がかりな装置は必要な
いと思われる。現実的には健側で食べることになると思う。
z 日常生活動作(ADL)か、あるいは肩や肘の運動機能か、等目標につ
いてポイントを絞る方がよい部分がある。
z 上肢動作訓練支援システムに関しては、担当が交代したことを考慮して
も、現状のままでは、具体的なリハビリの目標が十分明らかとは言えず、
今後の進展が懸念される。
【その他の意見】
○事業全体について
z 訓練者の介助という表現が随所に出てくるが、これは適切ではないと思
われる。
z 3 つのシステムはそれぞれ内容の違ったものであり、全体を一つにまと
めた評価は難しい。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
2. 今後の研究開発の方向性等に関する提言
下肢機能回復支援システムは、実用化へ向けて、臨床評価を十分行い、
資金を追加してでも開発を加速した方がよい。また臨床試験に時間が掛か
るのであれば、期間を延長することも考えられる。
歩行訓練装置は、動的支援機能のついた本装置が、他の歩行訓練装置よ
りも高い治療効果や訓練の効率向上など臨床における導入メリットを示さ
なければならない。臨床効果の検証などを中心とした事業は継続する必要
があると思われる。
上肢動作訓練支援システムは、この機器の適応(障害レベル等)や訓練
方法が明確でない。問題分析を十分行った後、リハビリテーション科医、
整形外科医、神経内科医、上肢機能訓練の専門家である作業療法士などと
研究を分担し、焦点を絞った技術開発を行うことが妥当と判断される。
3−3
【研究開発を拡大・縮小・内容変更すべき点】
○事業全体について
z この種の技術開発には費用がかかることを考慮すると、今後も開発を
継続すべきであると思われる。
○下肢動作訓練支援システムについて
z 「下肢動作訓練支援システム」については、技術的な新規性もあり、さ
らに学術的な評価も受けており、ここまでの研究開発を評価したい。今
後の実用化へ向けて、さらなる研究の進捗が望まれる。
z 試作機が計画通りにできあがるならば、つぎに臨床試験が必要。臨床試
験のつぎには、実用化へ向けた検討が必要。実用化までの開発援助が望
ましい。
z 下肢機能回復支援システムについては現状の研究計画通りで、問題ない
と判断する。ただし、できるだけ、臨床評価をしっかり行い、システム
の効果を明らかにしてほしい。
z 特に変更を求めることはありませんが、本システムで想定した効果を評
価しうる評価項目を具体的に設定し、しっかりとした臨床評価により、
その効果が得られることを検証してください。
z 下肢機能回復支援システムについては、資金を投入して開発が加速でき
るものであれば、さらに推進してほしい。臨床試験に時間がかかるので
あれば、何らかの条件の下で期間を延長することも考えられる。
z 計画書に記載されているように、臨床試験の結果をフィードバックして
改良を進めてほしい。
z 臥位から立位へ変更した場合の変化(効果の違い)を明確にしてほしい。
z 既に開発委員会でも言われているように、市場の拡大に向けて、装置の
簡素化などの検討、安全性の検討が必要である。
○歩行訓練装置について
z 「歩行訓練装置」についてであるが、この装置で開発した足底力のフ
ィードバックによる動的歩行支援に技術的新規性を認めるとしても、
この機能が臨床で要求される歩行訓練に必要でない可能性がある。あ
るいは必要であるとしても、この部分を組み込むことで機器が高価と
なるならば、普及を阻む大きな要因となる可能性がある。すなわち歩
行訓練装置を選択する場合に、動的歩行支援は無くても、より廉価な
製品があるとしたら、そちらが選択される可能性が大きい。動的支援
がどうしても必要であると主張するためには、臨床の立場からの学術
的な評価を得て、動的支援機能のついた歩行訓練装置が、他の歩行訓
練装置よりも高い治療効果があることを示さなければならない。
z 歩行訓練装置は、2次試作に至る前に臨床評価を行うとあったのが、
3−4
その際に免荷の効果については実験しているものの、本提案の主眼で
ある床反力のフィードバックを行う制御方式の効果については検討が
行われていなかった。この点の検証を十分に行わない限り、他の訓練
装置に対する優位性が主張出来ず、実用化に際してもセールスポイン
トが示せないことになる。
z 歩行訓練装置については、実用化を念頭に置いた評価と改良を行うべき
である。
z 装置をコンパクトにする工夫など現場への適合を視野に入れながら、従
来機器との差別化、優位性の検証をさらに行う必要がある。
z 動的荷重コントロールの臨床的検討、
(適応を明確にした上で、効果を
他の同種の機器と比較)の結果、このシステムの臨床的価値が高いと証
明されるのであれば、その点を踏まえた上で実用化へつながる機器開発
を検討すべきである。
z 要素技術の開発については、現状の研究計画で十分と考える。
z 開発技術による十分な評価・効果を確かめてほしい。
z 拡大する必要はないと思われ、リハビリテーションにおける効果の検証
などを中心に継続する必要はあると思われる。
z 途中段階で実施したとされる臨床評価が新しい方式の有効性を実証す
るまでに至っておらず、実用化された場合における他の製品との優位性
を示すことが出来ないのではないかと懸念される。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 「上肢動作訓練支援システム」については、3次元で上肢動作を訓練す
る機器が世界中に無いとのことで、技術的な新規性を評価したい。しか
し、これが臨床で用いられる機器となるためには、機器のコンセプトに
ついて、これまで以上にリハビリテーション科医師や作業療法士などの
積極的な協力を得ることが必要である。中間評価で説明された内容では、
この機器で訓練を行う適応(疾患・障害)や訓練方法が明確でない。臨
床とより緊密に協力し、この機器の誤った使用による関節障害の悪化な
どを引き起こさないよう、十分な配慮が必要である。この機器の適応は、
比較的麻痺の軽い患者であって、機器の使用目的は上肢動作機能の評価、
上肢を用いた食事・整容などの日常生活動作、あるいは認知訓練などの
領域に限定されるものと思われる。なお、この機器は治療にとどまらず、
より複雑な上肢動作の指導(例えば毛筆習字動作指導など)へ応用する
可能性があると思われる。
z 上肢訓練システムについては、軽度の片麻痺者をターゲットとしており、
ターゲットとする訓練動作をしぼり、その訓練過程をしっかり整理した
上で、なるべくシンプルな装置としての再構築が必要である。今後の実
施計画によっては、開発の取りやめも検討する必要がある。
3−5
z 上肢動作訓練支援システムについては委託先に変更があったが、その場
合のスケジュール・予算配分、技術の移行などについて、しっかり検討
していただきたい。
z 上肢動作訓練支援システムは、単に3次元で上肢の運動を支援する、と
いうような漠然とした目標設定ではなく、どのような運動軌跡、どの部
分のリハビリを行う、というようなかなり細かな目標設定を行わないと、
技術的な特徴づけとならない。シーズ指向ではなく、リハビリの観点か
らのニーズに基づく目標の再設定が必要である。
z 他のサブテーマと同じく工学と医学の協働が必要とされる分野である。
本分科会において、片麻痺患者を想定した訓練機器との説明を受けた。
しかし片麻痺患者は一般に下肢よりも上肢の障害が重度で、この機器の
適応がない症例が多いと思われる。適応が無い場合に、無理にこの機器
で運動訓練を行おうとすると片麻痺患者に多く見られる肩関節痛など
の合併症を悪化させる危険がある。
いっぽう麻痺が軽い症例を対象とする場合は、食事や整容などの身の回
り動作、あるいは半側空間無視などの症状への認知訓練に目的を限定す
れば、この機器の機能が活かされる可能性がある。したがって今後の機
器の開発にあたっては、リハビリテーション科医、整形外科医、神経内
科医、上肢機能訓練の専門家である作業療法士などと研究を分担すべき
である。機器の適応や訓練プログラムについてのコンセプトが明確でな
いまま、機器開発がすすめられると実用化・普及が困難になる。
z 残りの期間で実用性の得られるところまで、開発を進めることは困難で
あると判断する。ある程度、規模を縮小し、問題分析をしっかりした後、
焦点を絞った要素技術開発を行う方が有意義ではないか。
z 開発技術を現場利用に適した製品として実用化していくために利用者
のニーズ調査に一層配慮してほしい。
z 訓練機器として考えるのであれば、ADL に絞った方がよいのかもしれ
ず、方向性を明確にすることが必要である。
z 計画の途中での実施企業の交代なので、現時点で判断を下すのは不公平
とも思える。臨床での応用を明確にして、あと2年間継続するのが妥当
と考えられる。
z 研究開発の目標を、身体リハビリの観点から絞り込み、さらに具体的な
ものに変えて機能を限定した開発を行わない限り、実用化までには至ら
ない危惧がある。
【その他の意見】
○事業全体について
z 実際に患者と接する多数のセラピストの意見をデータとして整理し、今
後の研究へ必ずフィードバックしてほしい。
3−6
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムについては、2つの関係を明確に示し、そ
れらの違いを具体的な症例を示して評価できる段階まで進められると、
有効性をより主張できる。同一被験者において、2つのシステムの試
用評価を行うなども一つの方法である。
z 実用化の段階で、普及のための現実的な価格とするために、この下肢機
能訓練機で達成した技術の一部のみが使われる可能性が高い。この機器
は、歩行再獲得訓練に、下肢関節運動範囲拡大・筋力増強、体幹筋力増
強、歩行リズムの再学習とバイオフィードバックなどの要素があること
を認識し、これらの要素をシステムとして提供している。この点がユニ
ークである。したがって、このシステムの一部の機能だけを用いた実用
機では、システムとしての特徴が薄れ、既存の訓練機器との差別化がで
きなくなる可能性がある。実用化にあたっては、経済性・技術的優位性・
臨床的価値などを総合的に判断する必要がある。
z 本システムにおいて、どこまで訓練をすれば良いのか。どの段階で、実
際の歩行訓練に移行した方がいいのかを、是非明らかにしていただきた
い。それによって、最終的にどのような仕様にするかが明らかになると
思われます。
z このままでいいと思います。
○歩行訓練装置について
z 健常歩行ばかりではなく、障害歩行の獲得や杖歩行等の獲得への対応も
考慮していただきたい。
○上肢動作訓練支援システムについて
z この機器で訓練を行う場合、利用者はモニターの指示にしたがって上肢
運動を行う考え方と理解した。2次元動作であれば、2次元のモニター
上に示された指示に従うことは容易である。しかし3次元動作を2次元
のモニターに、どのように提示するのか、工夫が必要と思われる。
3−7
【Ⅱ.各論】
1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性
人間のセラピストが行うべきことを、機器で行う場合には、工学的な工
夫と、臨床的工夫を機器開発に生かさなければならず、民間の最先端の技
術といえどもその努力だけで良い機器が開発されるとは期待しがたい。ま
た、公共性の強いテーマであり、この課題に NEDO が開発援助を行ったこ
とは妥当である。
メカトロニクスの技術を活用すれば、世界的にも競争力のある機器の開
発が期待でき、経済産業省の政策方針に適合している。
【肯定的意見】
z 高齢社会の到来に対して、高齢者がねたきりとなることを防ぐことは重
要である。多くの方策の中で、運動療法の効果は広く認知されているが、
理学療法士・作業療法士の関与にも限界がある。そこで運動機能を維持
あるいは高めるための機器に大きな期待が寄せられる。しかしながら人
間のセラピストが行うべきことを、機器で行う場合には、工学的な工夫
と、臨床的工夫を機器開発に生かさなければならず、民間の努力だけで
良い機器が開発されるとは期待しがたい。したがって、この課題に
NEDO が開発援助を行ったことは妥当である。
z 公共性の強いテーマであり、NEDO の関与は妥当である。
z 対象技術の有用性の確認には、民間のみで取り組めない要素が多いため
関与するテーマとして妥当。
z 高齢化社会を迎え、今後も高齢者人口の増加が見込まれる中で、身体機
能のリハビリテーションに対する必要性は高い。したがって NEDO の
事業として、適切であると思われる。
z リハビリの支援機器を開発することは現場の要望でもあり、また産業と
しても有望である。従って、経済産業省の政策方針に適合している。特
に、メカトロニクスの技術を活用すれば、世界的にも競争力のある機器
の開発が期待できる。
z 公共性があり、また、医療機関との連携が必要な不確実な課題である。
z 高齢化社会において、緊急性もある。
z 高齢者・障害者の身体運動機能のリハビリテーション支援には NEDO
が関与する意義は極めて大きい。
【問題点・改善すべき点】
z 訓練システムの開発であり、高齢社会への直接的な対策というよりも、
3−8
訓練の質の向上、訓練者の負担軽減といった側面が強い。
z トータルシステムとして提案していく際に、各委託先の研究速度・進度
のばらつきをまとめる機能が必要と思われる。
【その他の意見】
(なし)
2. 事業の背景・目的・位置付け
高齢社会の到来に対して、高齢者が寝たきりとなることを防ぐことは重
要である。多くの方策の中で、運動療法の効果は広く認知されているが、
理学療法士・作業療法士の関与にも限界がある。そこで運動機能を維持あ
るいは高めるための機器に大きな期待が寄せられる。したがって研究開発
の背景・目的・位置付けについては妥当であると判断する。しかしながら
他の類似システムとの差異を明確にする方がよい。
【肯定的意見】
z 高齢社会の到来に対して、高齢者がねたきりとなることを防ぐことは重
要である。多くの方策の中で、運動療法の効果は広く認知されているが、
理学療法士・作業療法士の関与にも限界がある。そこで運動機能を維持
あるいは高めるための機器に大きな期待が寄せられる。しかしながら人
間のセラピストが行うべきことを、機器で行う場合には、工学的な工夫
と、臨床的工夫を機器開発に生かさなければならず、民間の努力だけで
良い機器が開発されるとは期待しがたい。したがって、この課題に
NEDO が開発援助を行ったことは妥当である。
z 研究開発の背景・目的・位置付けについては妥当である。
z 目的、政策的位置付けについては明確である。
z 高齢社会に向けて、このような機器を開発することは、時代的にも的確
である。
z 上肢下肢のリハビリ支援、および歩行訓練支援という目的は意義が大き
い。
【問題点・改善すべき点】
z 全般的なリハビリテーション技術に関する今後の方向性などの分析が
ほしい。
z 技術開発によって新たに生まれる効果・効用が不明瞭でインパクトに欠
ける。
z 政策課題の解決に資する物ではあるが、十分とは言えない。システムに
ついて、他の類似システムとの差異を明確にする方がよい。
3−9
【その他の意見】
z 事前評価、実施者公募など事業開始までの流れ、また開発委員会におけ
る経過などについて、情報が十分でない。
3. 事業の目標
リハビリ機器開発は、臨床現場からのフィードバックによって方向を修
正することが重要なので、最終的な成果の実用性(臨床現場での反応など)
に重点をおいた目標設定が望まれる。そのような観点から、下肢機能回復
支援システムならびに歩行訓練装置の目標設定は、脳血管障害などの急性
期あるいは慢性期患者の歩行障害を機器によって治療しようとするもので
妥当と判断できる。
上肢動作訓練支援システムは、機器の対象が脳血管障害等による上肢麻
痺とされているが、どのレベルの障害を対象とするかが、明確でない。開
発目標と開発しようとするシステムのマッチングがされていないと判断さ
れる。どのような動作・作業を念頭においた訓練支援か、目標をより明確
に設定すべきである。
【肯定的意見】
○事業全体について
z 高齢社会の到来に対して、高齢者がねたきりとなることを防ぐことは重
要である。多くの方策の中で、運動療法の効果は広く認知されているが、
理学療法士・作業療法士の関与にも限界がある。そこで運動機能を維持
あるいは高めるための機器に大きな期待が寄せられる。しかしながら人
間のセラピストが行うべきことを、機器で行う場合には、工学的な工夫
と、臨床的工夫を機器開発に生かさなければならず、民間の努力だけで
良い機器が開発されるとは期待しがたい。したがって、この課題に
NEDO が開発援助を行ったことは妥当である。
z 各システムに対し、具体的な開発目標が設定されている。
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムについては、しっかりとした目標が定められ
ており、妥当である。
z 歩行訓練装置ならびに下肢機能回復支援システムの研究開発目標は妥
当である。
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置ならびに下肢機能回復支援システムの研究開発目標は妥
当である。
3−10
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
z 今後のリハビリテーションの方向性を加味してほしい。
z 既存の他の機器、システムとの差異を含め、開発目標が十分明確でない。
目標達成度を測定するための指標の設定が十分でない。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢動作訓練支援システムは機器が対象とする疾患や障害が明確でな
い。対象が明確でないために開発目標に達していないと思われる。
z 上肢訓練システムでは、ターゲットとしている肩・肘動作訓練と、摂食
動作訓練は異なる要素を含んでいる。摂食動作は手首や把持が加わるた
め、肩・肘のみの動作ではない。この点で、開発目標と開発しようとす
るシステムのマッチングが、しっかりなさているか明確ではない。
z 上肢動作訓練支援システムに関しては、どのような動作・作業を念頭に
おいた訓練支援か、目標をより明確に設定すべきである。
【その他の意見】
○事業全体について
z このような開発は、臨床現場からのフィードバックによって方向を修正
することが重要なので、数値的な目標を設定することは難しい。それよ
りも、最終的な成果の実用性(臨床現場での反応など)の方に重点をお
いたほうが良い。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
3−11
4. 事業の計画内容
事業内容が広がりすぎており3テーマが殆ど独立している。3テーマを
統率するリーダーが曖昧であるために、本事業の計画が効率的・効果的に
進行しているとは言い難い。今後は 3 テーマの成果によって、予算の傾斜
配分、内容整理も考慮すべきである。
下肢機能回復支援システムは、ロボット技術を応用した訓練装置の開発
など妥当な計画といえる。また、臨床現場、大学との連携もなされており、
事業体制も妥当である。
歩行訓練装置は、臨床現場や大学との連携がなされており、今後の臨床
データ収集には妥当な研究体制と言える。計画内容は動的荷重制御の臨床
的意義について医学との協働による確認が不十分である。まずは、動的荷
重制御の有効性の確認が必要であると考えられる。
上肢動作訓練支援システムは、大学との連携が図られており、技術移転
の観点からは評価できる。しかしながら今後望まれることは、臨床現場の
専門家が、より積極的に開発に関与する体制を整えて、機器の適用やコン
セプトを明確にすることである。その上で、要素を絞った開発へ計画を変
更すべきである。
【肯定的意見】
○事業全体について
z この種の機器が実用レベルに達するためには、工学と医学の協働が必要
であり、開発段階でこの協働を効果的にマネージメントできるかどうか
が重要である。
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムについては、ほぼ妥当な計画となっている。
また、臨床現場、大学との連携もなされており、事業体制も妥当である。
z サブテーマ3種のうちで、下肢訓練システムは工学と医学の協働が効果
的に行われている。
z コンセプトに示された機器が計画通りに完成されるならば、事業体制は
適切と判断される。
z 医療側との連携もとっており、事業体制は適切と判断する。
z 学識者・専門家の意見を取り入れる姿勢がある。
z 目標達成に向けて事業体制は適切であると考えられる。
z コンセプトにしたがった機器が完成するならば、プロジェクトマネージ
メントは適切と判断される。
z 開発委員会を設置し、適切に運営されており妥当であると判断する。
z 意思決定、進捗状況など、いずれも適切に行われている。
3−12
z サブテーマのリーダーは、臨床上の問題も十分に把握しているように思
われた。
○歩行訓練装置について
z 臨床現場との連携や大学との連携もとられており、妥当であると判断す
る。
z 今後、臨床データの収集には事業体制は適切と思われる。
z 大学と企業の連携は取れていて、開発体制は概ね妥当である。
z 試作機の作製について、臨床的検討の結果から判断するという実施者の
方針は妥当である。
z 開発委員会を設置し、適切に運営されており妥当であると判断する。
z 特に問題はないと思われる。
z 開発委員会の意見に基づいて計画の修正は行っていた点は評価できる。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 大学との連携が図られている点で、技術移転の観点からは評価できる。
z 開発委員会を設置し、適切に運営されていると判断する。
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
z 3つのテーマがほとんど独立している。それならば、別々のことをする
のではなく、目標を1つにして3社で競争させた方が良かったのではな
いか。
z 1つのプロジェクトとして取り組んだのであれば、3つのテーマを統合
し、総合的な仕組みとして機能する工夫が望まれる。
z 各研究開発実施者の選定で、今回、不可抗力による変更という事態があ
ったが、その適切さは十分検証されているか、疑問が残る。
z 開発委員会と実施者との関係が十分理解できない。
z 身体機能リハビリの内容が広がりすぎている。現在 3 通りのシステム開
発となっているが、中間評価の結果によっては傾斜配分や整理も検討す
べきである。
○下肢機能回復支援システムについて
z コンセプトに示された機器を、計画通りに完成させることが必要。
z 他のシステムと連携・統合させる機能、全体としての効果測定の必要性。
z 今後試作される機器が、中間評価で示されたコンセプト通りにできあが
っているかどうか、これを実施者が確認することが必要。
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置は、動的荷重制御の臨床的意義について医学との協働によ
る確認が不十分である。
z 動的な荷重制御の臨床的優位性が確認されていない。機器開発委員会で
3−13
も同種の意見がでて、臨床的な成果が確認されるまでは次の試作機の作
製が留保されているとのことである。現在臨床評価中とのことなので、
結果を見た上で今後について検討すべきであると思われる。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢動作訓練支援システムは機器の対象とする臨床的課題について、こ
れまで以上に医学との協働による目標設定が必要である。
z 実施体制が変更されている点について、関係者間の連携に課題がある。
全体スケジュールや予算など具体案を提示していただきたい。
z 臨床、医療現場の担当者に対するヒアリングが必要である。
z 臨床現場から意見を聞くだけでなく、開発メンバーとして積極的に関与
できる体制が望まれる。
z リハビリ専門家とのより密接な協力関係が必要である。
z 種々の問題があった点は考慮できるが、臨床現場の調査結果やそれに基
づいたシステムコンセプトがしっかり引継がれているかどうかについ
ては疑問である。もしくは、前任実施者側の問題かもしれないが。
z 意思決定など方向性の決定が実施者に適切に伝達されるようにする必
要がある。
z 研究開発を途中で引継ぐことは、一般的にはかなり難しいと思う。引継
ぎ後の研究開発目標は達成可能なもの、十分に絞り込んだものへと見直
しが必要である。それが適正なものだったか疑問である。
【その他の意見】
○事業全体について
z 3つのサブテーマを統合するリーダーが不明だった、あるいは、そもそ
も居なかったのではないかと推察される。
○下肢機能回復支援システムについて
z 本件と同じ目標を設定して、2、3社に機械を作らせて競争すれば、優
劣もはっきりし、開発も加速されたかも知れない。
z 引き続き、実際のリハビリテーション機関での実評価をしっかりやって
いってほしい。
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢訓練支援システムについて
(なし)
3−14
5. 研究開発成果
下肢機能回復支援システムは、運動訓練機器へロボット技術を応用し、
「身体を損傷しない」という、リハビリ機器が備えるべき基本的な機能を確
保している。また歩行能力を再獲得するために必要な要素をシステムとして
提供しており、このようなコンセプトをハードウェア上に具現化することに
努力している。国際的にも高い水準にあると思われ、ロボット開発先進国の
日本が取り組むのにふさわしい研究開発内容及び成果である。現段階まで
は、ほぼ計画通りに進んでおり、目標を達成していると判断できる。広報に
ついても発表の質・量等から考えて十分評価できる。
歩行訓練装置は、床反力の計測と吊り下げ力の自動調整の機能が、きめ細
かい歩行支援を行うことの出来るシステムとして新規性及び工学的意義が
認められる。しかしながら、臨床的観点からすると、歩行訓練に動的荷重制
御が必要であるかについて効果が実証されていない。現時点では目標達成度
は低いと判断される。
上肢動作訓練支援システムは、世界的にも数少ない技術であり、これを開
発することに技術的意義がある。しかしながら、3次元的な上肢運動訓練を、
流体クラッチを用いて安全性を高めたというだけでは、成果として十分では
ない。すなわちこの機器の特性を活かした治療対象を明確にし、現状行われ
ている訓練等とのマッチングが必要であった。現段階では、機器で達成しよ
うとする内容が明確でないために、構築したシステムの目標達成度は低いと
判断される。
【肯定的意見】
○事業全体について
(なし)
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムは、技術的成果、臨床的評価がともに高く、
実用化の努力に期待を寄せられる。
z リハビリ支援機器として、国際的にも優れた成果である。
z 下肢機能回復支援システムについては、現段階まででは、ほぼ計画通り
に進んでおり、目標を達成していると判断できる。要素技術も実用化を
考慮した研究としては高いレベルにあると判断できる。広報については
発表の質・量等から考えて十分である。
z 下肢機能回復支援システムについては、論文の数も十分であり、また技
術的にも優れたものと思われる。
z 下肢機能回復支援システムは、期待度が高い。成果が楽しみである。
z 運動訓練機器へロボット技術を応用し、
「身体を損傷しない」という、
この種の機器が備えるべき基本的な機能を確保している。
3−15
z 歩行能力を再獲得するために必要な要素をシステムとして提供してい
る。すなわち、下肢関節運動範囲確保と筋力増強、立位とすることでの
体幹筋群への刺激、立位として歩行リズムで下肢を動かすことでの歩行
準備、バイオフィードバックなどである。こういったコンセプトをハー
ドウェア上に具現化することに努力している。
z 要素技術の開発はほぼ計画通りに進んでいる。
z システムとして、国際的にも高い水準である。
z 歩行運動を歩行障害者にティーチングすることは、現状理学療法士が行
う訓練でも困難であり、新たな市場を発掘する可能性がある。
z 現状では当初の目標はほぼクリアできている。
z 目標値はクリアしていると考えられる。
z 新たな市場創造につながる先進性があり、汎用性のある技術開発が行わ
れている。
z 海外にも誇れる成果と思われる。
z 大掛かりなシステムではあるが、ロボット開発先進国の日本が取り組む
のにふさわしい研究開発内容である。
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置については一歩ごとの動的荷重制御技術を開発したこと
に工学的意義が認められる。
z 吊り下げ型歩行支援装置はほとんど実用に近い。
z 床反力データを用い、きめ細かい歩行支援を行うことができるシステム
としては、新規性があり有用である。
z 目標値に達しているとは言い難いが、独創性はある。
z 床反力の計測と吊り下げ力の自動調整の機能は面白い。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢の機能評価・訓練器機は世界的にみても、数が少ないことが周辺調
査で示された。
z 特に2次元ではなく、3次元の評価・訓練機器となるとほとんど前例が
無く、これを開発することに技術的意義はある。
z 上肢訓練場面に支援システムを導入することに意義はある。
z 3次元による意義・効果が明確になれば、世界初の開発ということで評
価できる。
z 3次元の力覚フィードバック装置としての実用性は認められる。
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
(なし)
○下肢機能回復支援システムについて
z 現在のわが国の経済情勢から考えると、大規模なリハセンターといえど
3−16
も、高額の機器は導入できない。この機器の普及については、このプロ
ジェクトで開発された技術のどの部分を実用機器に生かすか、そして導
入しやすい価格にすることができるか、その方針を決めることが重要に
なる。
z デモ用に作成された CD のアニメ通りの機器となれば素晴らしいが、現
時点ではそのレベルの試作機にたどり着いていない。コンセプト通りの
機器に近づくように、今後の研究進行管理が必要。
z 目標で挙げている急性期リハへの、システムとしての対応がなされてい
ない。
z 今後の臨床試験に際し、現場のニーズを十分取り入れてほしい。
z 装置の大型化、複雑化が、どの程度まで臨床の現場で受け入れられるの
かが心配である。
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置及び上肢動作訓練支援システムについては、技術的成果は
ともかく、医療福祉機器として普及するために必要な、工学と医学の協
働が不十分と思われる。
z 免荷(身体をつり上げて下肢へかかる体重負担を部分的に軽減)での歩
行訓練器機は、すでに存在する。このプロジェクトでの技術的成果は、
床反力を計測して、その1歩の荷重量から免荷量を加減する部分(動的
サポート)であるとの説明を受けた。この技術が世界的水準であるかど
うかをただちに判断することはできないが、臨床的観点からすると、歩
行訓練に動的荷重制御が必要であるかについては疑問がある。臨床的な
価値が確認されない場合、この部分を装置に付加することで高額機器と
なり、これはこの機器の普及をさまたげる要因となる。
z 当初の計画から、1年ほどの遅れが報告され、臨床場面での評価がしっ
かり行えるかどうかが問題となる。
z 実用化へのシナリオが課題。
z 臨床での検証は本年度より開始されたばかりであり、利用者の反応や障
害による差異が認められるかどうかなど、実際のデータが提示されてい
ない。類似の機器との差が明確でない。
z ビデオによる股からの吊り下げの状況では床反力測定が十分活かされ
ていない。
z 床反力をフィードバックしてつり上げ力を制御する方式がポイントの
ようであったが、この利点に関して効果が実証されていない。
z フォースプレートなどの設備のスリム化が課題。また、吊り下げた時の
姿勢の保持方式も課題。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 歩行訓練装置及び上肢動作訓練支援システムについては、技術的成果は
3−17
z
z
z
z
z
z
z
z
z
ともかく、医療福祉機器として普及するために必要な、工学と医学の協
働が不十分と思われる。
上肢訓練システムについては、種々の事情があるものの、目標の達成度
は低いと判断する。要素技術の点では評価できるが、対象者の特徴把握、
現状行われている訓練等とのマッチングがなされていないため、目標と
したシステムに対して、構築したシステムの妥当性が評価できない。
上肢動作訓練支援システムは目標の設定やシステムの構築が不十分で
あり、目標値をクリアしていない部分がある。
上肢動作訓練支援システムは、現状のままの開発を行った場合の研究成
果が十分でないと懸念される。医学やリハビリの専門家がむしろ主体と
なった研究開発組織とするくらいの体制を取り、上肢の運動機能のどの
部分に着目するか限定した目標設定をしない限り、十分な研究成果が期
待できない。
他のサブテーマにも共通することであるが、先進的な工学技術を用いた
機器が臨床的に優秀な機器になるとは限らない。
この機器の適応、訓練効果などを出発点で確認しておかないと、実用
化・普及が困難になると危惧される。
ほぼ計画通りに進んでいるとの説明はあったが、ターゲットとする上肢
訓練が明確になっておらず、システム設計がしっかりされているとは言
い難い。摂食動作をターゲットとするのであれば、手首、手部の動作も
ターゲットとするべきである。種々の事情があったとのことであるが、
問題分析および概念設計がなされていないのは、問題である。また、要
素技術開発で3年間必要とする技術を、残り2年で実用化まで持ってい
くという計画にも、疑問を感じる。
目標値をクリアしているかどうか不明である。目標そのものがやや不明
確である。ADL か、肩や肘の ROM か、三次元の機器の実用化にはど
こにポイントを置くか、絞る必要があると思われる。
流体クラッチを使ったことによる安全性を強調していたが、実際には訓
練者に対して能動的に動いてくる部分があるので、安全性が向上してい
るとしても、これだけで安全性が確保されているとは言い難い。
単に3次元と流体クラッチを用いるというだけでは、
「身体リハビリ」
の観点からの成果としては十分ではない。上肢のどの部分の、どういう
動きを支援するのか具体的な目標設定と、身体リハビリから見た技術的
な特徴があきらかではない。
【その他の意見】
○事業全体について
(なし)
○下肢機能回復支援システムについて
3−18
z 患者の状態や足圧などをフィードバックすることが、どの程度有効に機
能するのか、見極めてほしい。
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
6. 情勢変化への対応
開発委員会を設置し、必要に応じて対応が概ね出来ていると判断される。
しかしながら、やむを得ない事情における突然の研究担当企業の変更につ
いては、途中交代が事業へ及ぼす影響を考慮して、計画の実現が可能かどう
かについて慎重に判断し、テーマの継続、中止について十分に検討する必要
があったと思われる。
【肯定的意見】
○事業全体について
z 開発委員会を設置し、必要に応じて対応できていると判断する。
z 意思決定、情勢変化への対応は概ね適切であったと考えられる。
z 開発委員会の意見に基づいて、見直しが行なわれていた。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作支援システムについて
z 開発担当者が途中から交代したが、今度担当することになったメーカー
は、2次元ではあるが上肢機能訓練器機開発の実績があり、このプロジ
ェクトにも資するところが大きいと思われる。
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
z 一般に、特定テーマの研究担当者が変わった際には計画の現実が可能か
どうか慎重に判断すべきである。他のテーマとの2年間の時間の差は大
きい。無理に計画を続行するのではなく、勇気を持って中断することも
必要。
○下肢機能回復支援システムについて (なし)
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢動作訓練支援システムについては、見直しが必要と思われる。
【その他の意見】
(なし)
3−19
7. 実用化、事業化の見通し(実用化のイメージ)
下肢機能回復支援システムは、新たな訓練を提供できるシステムとして、
ニーズもあると考えられ、それに応えるだけの要素技術も成果として開発さ
れている。臨床現場との連携も十分図られており、これらを上手くかみ合わ
せることで、実用化の可能性は十分あると考えられる。また、関節を機器が
他動的に動かすときに、身体を傷つけない安全性は、他の福祉機器などにも
応用できる可能性がある。
歩行訓練装置は、技術的には可能であると判断するが、小型化・コスト面
の配慮など現場への適用に課題がある。また、動的荷重制御技術を用いるこ
とが、他の類似機器に比べて訓練効果が高いことを実証し、臨床的優位性を
明らかにしないと実用化は難しいと思われる。
上肢動作訓練システムは、利用者の身体を傷つけないような流体クラッチ
の利用は、今後同種の機器が開発される場合に応用される可能性がある。し
かしながら、実際の訓練場面に即したシステムとして構築する必要があり、
現状では本テーマの目標設定が十分ではなく、実用化までの道のりは厳しい
と思われる。
【肯定的意見】
○事業全体について
z 身体機能回復訓練の支援装置として、インパクトは強いものと判断でき
る。訓練に対する新たなパラダイムを提案できる可能性がある。
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復訓練システムについては、機器が実用化された場合に医療
費削減などの効果として現れる可能性がある。
z 実用的なものが開発されているので、期待できる。
z 下肢機能回復訓練システムのように製品化に向けて実用化が既に始ま
っているものもあり、十分可能性があり、また波及効果も期待できる。
z 下肢機能回復支援システムは、開発規模が大きく装置も大掛かりである。
機能回復の内容を絞り込んで、実用化を意識した開発が望まれる。
z 関節を機器が他動的に動かすときに、身体を傷つけない安全性は、他の
福祉機器などにも応用できる可能性がある。
z 歩行再獲得に、この機器が提案している運動療法の効果があると認めら
れたとき、同種の運動訓練器機開発が促進される可能性がある。
z 新たな訓練を提供できるシステムとして、ニーズもあると考えられ、そ
れに応えるだけの要素技術も成果として開発されている。これらをうま
くかみ合わせることで、実用化の可能性は十分あると考えられる。臨床
現場との連携もうまくはかられている。
3−20
z 実用化の可能性は高いと思われる。
○歩行訓練装置について
z セラピストの不足を機器で補って、高齢者の身体機能維持を図ることは
重要である。歩行能力の著しく低下した人々に対して、吊り上げ装置が
ついた歩行訓練装置は、比較的安全に訓練を行うことができ、また本人
の歩きたいという欲求に応えることもできる。したがってこの種の機器
の普及は期待される。事実、市場には同じような考え方の機器が存在す
る。
z 技術的な実用化は可能であると判断する。
z 課題は多いと思われるが、前向きに取り組んでほしい技術。
z 総合リハビリテーション施設などでは使用できるように思われる。
z かなり実用的なところまで来ている。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 利用者の身体を傷つけないような流体クラッチの利用は、今後同種の機
器が開発される場合に応用される可能性がある。
z 上肢動作機能解析を行おうとする場合、既存の3次元の光学的計測装置
によって位置測定はできる。しかしこの機器の有意な点は、位置だけで
なく、上肢の力(出力)を計測できることである。上肢動作解析装置と
して、普及・実用化する可能性がある。
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
z 臨床の現場で受け入れられる実用的な機器につなげることが必要で、こ
れまで以上に工学と医学の協働が必要である。
z 訓練支援であるため、臨床サイドの考え方が大きく影響する。それを説
得するだけの効果を明らかに示すことと、訓練士の本システムに関連す
るニーズを発掘することが必要である。
○下肢機能回復支援システムについて
z ロボット技術の応用によって機器が高額となるならば、普及を妨げる可
能性がある。
z 歩行を下肢の運動パターンのみで再現できるかどうかをご検討いただ
きたい。本システムが有効に働く訓練の範囲を明確にできるものと思わ
れます。
z 健常者の歩行とはかけ離れた障害歩行に対する検討もお願いいたしま
す。
z 事業性は検討すべき。特にコスト面は現場ニーズをヒアリングしてほし
い。
z 実用化を考えると、どこの部分がもっとも特徴となりうるかをよく考え、
3−21
機能の絞り込み、装置のスリム化を検討した方が良い。
○歩行訓練装置について
z 実用化後の機器普及には、地域の病院や施設が入手しやすい価格である
ことが必要である。もしやむを得ず高額のシステムとする場合は、他の
機器に対する優位性を臨床的な観点から証明することが必要である。
z 臨床評価を通じて、有効な症例を明らかにする必要がある。
z 最終的な実用場面として療護施設や老人ホームなどを考えた場合、本シ
ステムの特徴である床反力計が、設置場所の問題によりネックとなるこ
とが予想される。このような施設では広さがあまり確保できないため、
歩行訓練の専用スペースをつくることが難しい場合が考えられる。床反
力計がなければ、その他の目的にも使用するスペースを提供できる。ま
た、床反力計の段差があるため、職員のいない時に入所者が転倒するな
どの危険性も考えられる。ただし、このあたりは導入する際の施設側の
考えかた、管理体制に依存する。
z 小型化・コスト面の配慮など現場への適用に課題あり。
z 大きすぎるという問題点をどのように解決するか、研究目的であれば床
反力を1歩毎に測定することもよいが、実用ではそこまでの必要性はな
いと思われる。
z 今回の方式が、従来の方式に比べて、訓練効果が高いなど、臨床的なメ
リットが分からないと、実用化は難しいのではないか。
z 吊り下げ支持部分の改良など、実際に使用することを考慮した改善と評
価をお願いしたい。
○上肢動作訓練システムについて
z 作業療法訓練を目標とするのであれば、手首・手部の動作は不可欠であ
り、実際の訓練現場への導入において問題となることが予想される。現
段階では実用の見通しは立たないものと判断する。
z 実用化にあたっては複数の場所で効果測定や現場適用に十分な調査を
行うべき。
z どれを目標とするかを決めることが最優先である。
z 2次元での上肢動作を3次元にした場合の目標設定が明らかでないた
め、実用化の見通しは明らかではない。
z 上肢動作訓練支援システムのようにテーマによっては今後の研究を進
めるには何を目標とするか等、さらに検討が必要で、実用化までは到達
することが難しいと思われるものもある。
z 上肢動作訓練支援システムは、現状ではリハビリの観点からの目標設定
が十分ではなく、実用化までの道のりは厳しい。3次元ならではのニー
ズを明らかにする必要がある。
3−22
【その他の意見】
○事業全体について
z この分野では、波及効果を期待するのは難しいが、強いて言えば、健
康産業であろうか。
○下肢機能回復支援システムについて
(なし)
○歩行訓練装置について
z 階段の登り下りに特化した歩行訓練は意義があるので、余力があれば拡
張してはどうか。
○上肢動作訓練支援システムについて
(なし)
8. 今後の展開(実用化までのシナリオ)
下肢機能回復支援システムは、有用性が既に検証されつつあり、コストの
試算も行われており、実用化の見通しはあると評価できる。
歩行訓練装置は、技術的には実用化可能と考えられるので、開発した動的
荷重制御技術の有効性が既存の機器に対してどれだけ優位であるかについ
て、臨床の現場で確認することが必要である。従って現段階では実用化の見
通しは立てることは難しいと判断する。
上肢動作訓練支援システムは、どの様に現状の訓練に導入するか等のシナ
リオが不明確である。またそれらが現場のニーズと合致しているかについて
検証が必要である。従って、現段階では実用化の見通しは立てることは難し
いと判断する。
【肯定的意見】
○事業全体について
(なし)
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムは、実用化を視野に入れた検討が進んでいる。
z 下肢機能回復支援システムについては、システムの構築がまず必要であ
り、今後も計画通りに進めることは妥当である。
z 下肢機能回復支援システムのようにシステムの有効性は既に検証され
つつあり、実用化の見通しが立っているものがある。
z 下肢機能回復支援システムについては、コストの試算が行われており、
見通しもあるように見えた。
○歩行訓練装置について
(なし)
○上肢動作訓練支援システムについて (なし)
3−23
【問題点・改善すべき点】
○事業全体について
z 技術として利用者に恐怖感を与えないかなど、利用者側のニーズあるい
は作業療法士(OT)・理学療法士(PT)を聞く機会・反映する仕組み
の提案を期待する。
z 患者側に訓練を継続させるための工夫など、ソフト面で独創性や新規性
のあるプログラムにも平行して取り組み、従来の開発技術・訓練機器と
の差別化を図ってほしい。
○下肢機能回復支援システムについて
z 下肢機能回復支援システムは、現在のシステムのスリム化・機能の簡素
化により実用化が可能な範囲まで絞り込みが必要である。
○歩行訓練装置について
z 歩行訓練装置については、開発した技術(荷重の一歩ごとの動的制御)
の有効性、すなわちこの技術が既存の機器に対してどれだけ優位性であ
るかについて、臨床の現場で確認することが必要。
z 歩行訓練装置は、本分野での製品化経験のない企業が担当しており、実
用化に関する検討が、コスト面も含めて弱いように思われる。
z 現状の歩行訓練装置では、利用者の体の保持が十分でない。この吊り下
げの支持部分を改良すべきである。
○上肢動作訓練支援システムについて
z 上肢動作訓練支援システムについては、機器に対する利用者側のニーズ、
すなわち医師・作業療法士・理学療法士などが、上肢動作訓練支援シス
テムに何を期待するかに関する意見を反映する仕組みが必要である。
z 上肢訓練システムについては、現状の訓練にどのように導入するかのシ
ナリオが不明確であり、またそれらが現場のニーズとあっているかどう
かも疑問が残る。したがって、現段階では実用化の見通しはたてられな
い。
z 上肢動作訓練支援システムは、本分野での製品化経験の企業が担当して
おり、実用化に関する検討が、コスト面も含めて弱いように思われる。
z 上肢動作訓練支援システムのように目標が十分定まらず、実用化の見通
しはまだ立っていないと考えられる部分がある。
z 上肢動作訓練は、目標設定からやり直すべきである。
【その他の意見】
(なし)
3−24
第4章 評点法による評点結果
第4章 評点法による評点結果
「身体機能リハビリ支援システム」に係る中間評価の実施に併せて、下記に基づき、本分科
会委員による「評点法による評価」を実施した。
1. 経緯
(1) 評点法の試行
通商産業省(当時)において、平成 11 年度に実施されたプロジェクトの
評価(39 件)を対象に、評点法を試行的に実施した。その結果を産業技術
審議会評価部会に諮ったところ、以下の判断がなされた。
z 数値の提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効
z 評価者が異なっていてもプロジェクト間の相対的評価がある程度可
能
(2) 評点法の実施
平成 12 年 5 月の通商産業省技術評価指針改訂にて「必要に応じ、評点
法の活用による評価の定量化を行うこととする」旨規定された。
以降、プロジェクトの中間・事後評価において、定性的な評価に加え各
評価委員の概括的な判断に基づく評点法が実施されている。
2. 評点法の目的
z 評価結果を分かりやすく提示すること
z プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること
3. 評点の利用
z 評価書を取りまとめる際の議論の参考
z 評価書を補足する資料
z 分野別評価、制度評価の実施において活用
4. 評点方法
(1) 評点の付け方
z 各評価項目について 3 段階( 1,3,5)で評価する。
z 総合点の算出に当たっては、表 1 に示す評価項目の各点数に重み付けの
数値を掛け合わせた後、合算することとする。
z 重みについては、経済産業省で採用されている重みとの整合をとり、両
者を比較できるようにする。
(2) 評点法実施のタイミング
z 第 1 回分科会において、各委員へ評価コメント票とともに上記(1)の点
数の記入を依頼する。
4−1
z 評価書(案)を審議する前に、集計結果(各項目の平均値、ばらつき等)
を委員に提示、議論の際の参考に供する。
z 上記審議を行った分科会終了後、委員の評点及びそれに基づく総合点を
計算し、当該分科会での議論等を踏まえた評点の修正を依頼する。
z 評価書(案)の確定に合わせて、評点の集計を行う。
(3) 評点結果の開示
z 評点法による集計結果を開示するが、個々の委員の素点については、個
人情報保護の観点から開示の対象外とする。但し、分科会長については、
議論を円滑に進めるため各委員の素点を参照できることとする。
z 評点法による評価結果の開示については、あくまでも補助的な評価であ
ることを踏まえ、数字のみが一人歩きすることのないように慎重に対応
する。
z 具体的には、図表による結果の掲示等、評価の全体的な傾向がわかるよ
うな形式をとることとする。
4−2
表 1 評点の重み付け
評点項目
A 関与の必要性
B 目的・位置付け
C 目標の妥当性
重み
9/120
9/120
8/120
(1)
(2)
(1)
(2)
D 計画内容の妥当性
E 実用化の見通し
8/120
9/120
8/120
8/120
17/120
16/120
8/120
F 実用化のシナリオ
(1)
(2)
(3)
(1)
(2)
G 研究開発成果の妥当性
H 情勢変化対応妥当
18/120
12/120
6/120
8/120
9/120
36/120
17/120
40
20
10
4−3
H 情勢変化への対応
の妥当性
G 研究成果の妥当性
F 実用化のシナリオ
E 実用化の見通し
D 計画内容の妥当性
C 目標の妥当性
B 目的・位置付け
0
A 関与の必要性
重み
30
5. 評点結果
(各項目:5点満点)
評価項目
Ⅰ.A.今後のプロジェクトの方向
Ⅱ.A.事業の目的・政策的位置付け
Ⅱ.B.事業の背景・目的・位置付けの妥当性
Ⅱ.C.事業の目標の妥当性
Ⅱ.D.事業計画内容の妥当性
Ⅱ.E.実用化、事業化の見通しの妥当性
Ⅱ.F.実用化のシナリオ
Ⅱ.G.研究開発成果の妥当性
Ⅱ.H.情勢変化への対応の妥当性
全体(加重平均)
平均点
3.4
3.8
3.8
4.2
3.2
3.2
4.2
3.1
2.6
3.3
標準偏差
1.67
1.10
1.10
1.10
0.86
0.84
1.10
0.38
1.13
0.56
(各項目:5点満点)
5.0
1.8
平均点
標準偏差
4.2
1.6
4.2
1.4
4.0
3.8
3.8
1.2
3.4
3.1
1.0
3.0
0.8
2.6
標準偏差
3.2
3.2
平均点
3.3
0.6
2.0
0.4
0.2
1.0
0.0
体
全
)
の
当
性
妥
当
の
性
当
性
け
妥
の
付
し
妥
当
の
妥
オ
応
対
果
リ
の
成
均
発
へ
化
開
変
平
重
勢
(加
.情
究
ナ
通
見
の
性
当
性
置
け
付
置
位
向
方
・位
妥
の
容
化
業
内
シ
画
の
、事
化
計
的
的
トの
当
妥
・目
の
景
標
背
目
の
化
用
用
.研
.実
.G
.F
.実
.H
Ⅱ
Ⅱ
Ⅱ
.E
Ⅱ
業
.事
の
業
事
業
策
・政
的
目
ク
ェ
ジ
ロ
プ
の
業
.事
.D
.B
.
.C
Ⅱ
Ⅱ
Ⅱ
.事
.A
Ⅱ
の
後
.今
.A
Ⅰ
性
4−4
(別 紙)
評点法による評価シート
【Ⅰ.総論(中間評価のみ)
】
A.今後のプロジェクトの方向
(1)プロジェクトの内容について
5 3 1
z 国費を使用した技術開発の効果・効率達成の観点に鑑み、今後の事業計画はいかにあ
るべきか。
《判定基準》
z 拡大を図るべき
→ 5
z 現行どおり継続すべき
→ 3
z 合理化・縮小することが妥当
→ 1
【Ⅱ.各論】
A.事業の目的・政策的位置付け
(1)NEDO の関与の必要性・制度への適合性
5 3 1
z 経済産業省の政策方針に適合しているか(現在及び事業開始時点の時代背景認識から
見て)
z 研究開発制度の趣旨、目的(選定基準)に適合しているか
z 特定の制度に基づく事業でない場合、以下のような「市場の失敗」に該当し、NEDO
の関与が必要とされるテーマか(政策立案・評価ガイドライン参照)
— 公共財的性格を持つ財・サービスの供給
— 環境問題等市場原理が働かない外部性
— 不確実性(リスクの高さ)や情報の偏在などに基づく市場の不完全性 等
z 上記には該当しないものの、民間のみでは改善できない問題に対応するために
z NEDO の関与に公共性が認められるものか
z 上記を踏まえた上で、緊急性、重要性が高く優先して実施すべき研究開発と
z 判断されるか。
(緊要性は高いか)
《判定基準》
z 民間のみでは問題解決が図られず、NEDO の事業として
実施する緊要性が極めて高い
→ 5
z NEDO の事業実施は妥当
→ 3
z NEDO の関与がなくとも民間による取り組みで問題解決が可能
→ 1
B.事業の背景・目的・位置付けの妥当性
(1)事業目的・政策的位置付けの妥当性
z
z
z
z
z
5 3 1
評価時点の時代背景から見て、事業の目的は妥当で、政策的位置付けも明確か
事業開始時点の時代背景から見て、事業開始時の目的は妥当で、政策的位置付けも
明確か
事前評価は当時の時代背景認識から見て妥当なものであったか
政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか
4−5
《判定基準》
z 事業の目的は非常に重要で、政策的位置付けも明確
z 事業の目的は妥当であり、政策的位置付けも大まかにはなさ
れている
z 事業目的の妥当性は失われており、政策的位置付けも不明確
→ 5
→ 3
→ 1
C.事業の目標の妥当性
(1)研究開発目標の妥当性
5 3 1
z 立案時または計画見直し時点の時代認識から見て、目的達成のために、具体的かつ明
確な開発目標、目標水準を設定しているか
z 目標達成度を測定、判断するための適切な指標が設定されているか
z エネルギー特別会計を使用している場合には、費用対効果分析など定量的なエネルギ
ー政策上の目標が立てられているか。
《判定基準》
z 世界最高水準の目標や事業の目的に応じた目標が具体的に設定
され、指標設定も適切
→ 5
z 目標等が概ね過不足なく設定されているが、必ずしも具体的
ではない
→ 3
z 指標が十分に設定されておらず、目標水準も曖昧
→ 1
D.事業計画内容の妥当性
(1)研究開発計画の妥当性
5 3 1
z 目的達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を含む)と
なっているか
z 目標達成に必要な要素技術を過不足なく、取り上げているか
z 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か
《判定基準》
z 計画は、予算、スケジュール、要素技術の設定とも的確であり、
予算配分も適切に行われている
→ 5
z 計画は概ね妥当で、予算配分も概ね適切である
→ 3
z 計画はスケジュール、予算とも不適切である
→ 1
(2)研究開発実施者の事業体制の妥当性
5 3 1
z 目標を達成する上で、事業体制は適切なものか
z 各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか
z 関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか
《判定基準》
z 適切な事業体制が構築され、関係者間の連携/競争も十分行わ
れている
z 概ね妥当な事業体制が構築されている
z 事業体制が適切に構築されていない
4−6
→ 5
→ 3
→ 1
E.実用化、事業化の見通しの妥当性
(1)成果の実用化可能性
5 3 1
z 産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか
z 公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか【注】
z 公共性は実際にあるか。見込みはあるか【注】
《判定基準》
z 成果の産業応用について参加企業等が意欲的で実用化へ向けた
課題解決に向けて自主的な取り組みが期待できる
z 実用化に向けての課題は明らかであるが、具体的な道筋等は必
ずしも明確ではない
z 具体的に産業応用が可能であるか否かを含め実用化に向けた道
筋が描けていない
(2)波及効果
5
→ 5
→ 3
→ 1
3
1
z 成果は、関連分野へのインパクトを期待できるものか
z 当初想定していなかった波及的な成果が得られているか
z プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果を生じてい
るか
《判定基準》
z 成果について当初想定されていた分野を越えて広範な応用が考
えられ、当該分野の研究開発を触発する効果を有する
→ 5
z 成果の応用、波及が当初の想定程度には期待できる
→ 3
z 成果の波及はほとんど期待できない
→ 1
F.実用化のシナリオ
(1)実用化の見通し
5 3 1
z コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等の見通
しは立っているか
《判定基準》
z 成果の産業応用について参加企業等が意欲的で実用化へ向けた
課題解決に向けて自主的な取り組みが期待できる
→ 5
z 実用化に向けての課題は明らかであるが、具体的な道筋等は必
ずしも明確ではない
→ 3
z 具体的に産業応用が可能であるか否かを含め実用化に向けた道
筋が描けていない
→ 1
G.研究開発成果の妥当性
(1)計画と比較した目標の達成度
5 3 1
z 成果は、目標値をクリアしているか
z 全体として目標の達成度はどの程度か
z 立案時点または計画見直し時点の時代認識から見て、事業は研究開発として成功した
といえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか
4−7
《判定基準》
z 目標水準を大きく上回る成果をあげて、研究開発として成功
した
z 目標は概ね達成され、研究開発としては成功したと言っても
良い
z 目標にはかなり遠く、研究開発としては失敗した
(2)要素技術から見た成果の意義
→ 5
→ 3
→ 1
5 3 1
z 世界最高水準、世界初、又は国際水準から見て優れた成果があるか
z 新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか
z 新たな市場創造につながるような新規性、先進性があるか
z 汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか
z 当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか
z 将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのようなものか
《判定基準》
z 要素技術として特筆すべき成果が多く見られる
→ 5
z 要素技術として意義のある成果が多く見られる
→ 3
z 要素技術として意義のある成果はほとんどない
→ 1
(3)成果の普及、広報
5 3 1
z 論文の発表は、質・量ともに十分か
z 特許は適切に取得されているか
z 必要に応じ成果の規格化に向けた対応がとられているか
z 広報は一般向けを含め十分に行われているか
《判定基準》
z 重要な特許が取得され、論文の質、量とも十分で、広報も十分
z 論文、特許ともほどほどに出ており、広報も適宜行われている
z 論文、特許とも少なく、広報もほとんど行われていない
H.情勢変化への対応の妥当性
(1)情勢変化への対応の妥当性
→ 5
→ 3
→ 1
5 3 1
z 技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直したか
z 計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮したか。
(特段の情勢変化はなかったと考えられる場合は空欄とする)
《判定基準》
z 変化を的確に把握し、計画を適切に見直している
→ 5
z 変化を概ね把握し、計画の見直しも行っている
→ 3
z 変化を把握せず、計画の見直しも行っていない
→ 1
(2)研究開発実施者の運営の妥当性
5 3 1
z 意志決定、進捗状況の把握、計画見直しの検討等が、適切に行われているか
z プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能しているか
z プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含む)への対応は
適切か
4−8
《判定基準》
z 運営上の課題に対し迅速な意志決定と柔軟な対応がなされ、
適切なプロジェクト管理が行われている
z 概ね妥当な運営管理がなされている
z 運営管理は適切とは言えず、情勢変化にも対応していない
【注】
:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
4−9
→ 5
→ 3
→ 1
参考資料1
本資料は、第1回「身体リハビリ支援システム」(中間評価)分科会において、プロジェク
ト実施者がプロジェクトの概要を説明する際に使用したものである。
「身体機能リハビリ支援システム」
身体機能リハビリ支援システム
事業の概要
高齢者・障害者介護支援センター等の施設におい
て、健常もしくは四肢機能に軽度の障害をもつ高齢
者・障害者を対象として、四肢の運動機能の計測・
評価を行い、その結果を医師・療法士、高齢者・障
害者等にフィードバックすることによって、医師・
療法士の負担を軽減するとともに、高齢者・障害者
の訓練に対する自発的意欲を向上させるリハビリ支
援システムを開発する。
「身体機能リハビリ支援システム」
国の関与の必要性
・本研究開発の下肢、上肢機能の計測・訓練装置は、人間の、
運動障害のある部分に直接働きかける力制御という技術的ブ
レークスルーを持つ開発である。
・本研究開発は、医療・リハビリテーション現場からのニーズや療
法士、医師の不足に伴う作業の効率化などから緊急に開発が
要望されているにもかかわらず、一般の産業機器に比較して、
未だ市場規模が小さいため、国が積極的に研究開発投資を
行い市場形成、産業化を図る必要がある。
・本研究開発は、医療・リハビリテーション現場におけるニーズの
的確な汲み上げと、先端技術の開発を要し、被験者による十分
なフィールド試験が必要なことから、国によるリーダシップのも
とに医療関係者と工学者による密接な連携により開発を進め
ていく必要がある。
参考1-1
「身体機能リハビリ支援システム」
市場規模
(薬事工業生産動態統計年報:厚生省11年度版)
医療用具の生産額:1.5兆円
運動療法用機械器具:451品目、51億円
(国内19億、輸入32億円)
(HCR2001福祉機器業界の市場推計)
福祉機器:2300億円
リハビリ機器は
その他(183億円)の
内の一部として
分類される。
各機器別の市場規模
参考1-2
「身体機能リハビリ支援システム」
医療福祉機器技術研究開発制度
【背景】
少子高齢化社会の到来に伴い癌・心臓病などの成人病へ
の対応、寝たきりの人への介護の充実、介護者の負担軽減、
社会参加への支援など緊急に対応を迫られている問題が山
積みしている。
【制度が目指すこと】
これら諸問題に対応するため、経済産業省において最先端
の産業技術を活用し安全性、利便性に優れ、かつ、低価格で
高性能な医療福祉機器の実現を目的とした研究開発に取り組
んでいる。
「身体機能リハビリ支援システム」
制度への適合性
本研究開発の目的は、最先端の福祉技術を活用し、安全
性、利便性に優れ高性能な医療福祉機器の開発を行うもの
であり、医療福祉機器研究開発制度に適合したものである。
費用対効果
上肢、下肢機能が衰えた高齢者、寝たきり患者等のリハビ
リテーション訓練をより効果的に行うことができるような計測・
訓練装置が開発されることで、介護負担、本人の負担ひい
ては医療保険制度に対する負担が大幅に軽減される。
また高齢者や患者の予後の生活の質が向上し、社会復帰
の割合が高まることで社会全体の生産力拡大へ寄与できる
等の効果が期待できる。
参考1-3
「身体機能リハビリ支援システム」
負担軽減予測
脳血管障害者:年間14万人発生
10~30%が当該機器により社会復帰できたと仮定
社会復帰:1.4~5.2万人
介護負担:10~15万人の軽減
「身体機能リハビリ支援システム」
事業の背景・目的・位置付け
我が国の急速な高齢化の進行の中で、大きな問題の一つと
して高齢者の身体機能低下があり、歩行中の転倒や脳機能
低下につながるなど影響が大きい。これらの能力低下を適
切な手段で早く察知し身体機能の維持、回復につとめるこ
とが、寝たきりや要介護の高齢者を減らすこと、また高齢
者の積極的な社会参加のために必要である。
従って本事業では、身体機能のうち、四肢の運動機能に対
するリハビリ支援システムを開発し、高齢者・障害者等の
自立と社会参加を促進する一助となることを目的とする。
本研究開発で開発するリハビリ支援システムは、上肢およ
び下肢に関する身体機能の低下に対し、トータルにリハビ
リ支援をサポートするものであり、他の研究開発では例を
見ない。
参考1-4
「身体機能リハビリ支援システム」
事業の目標
身体機能計測・訓練装置の開発
高齢者の自立と社会参加の促進
運動療法への工学的支援の可能性
福祉介護機器の設計評価方法への応用
「身体機能リハビリ支援システム」
今後の展開
本事業は、平成13年度までにほぼ試作機の
試作を完了する予定であり、今後の展開にお
ける課題としては、本事業終了年度の平成1
5年度までにそれぞれの試作機の有効性を証
明する臨床データを取りながら改良を重ねる
こととなる。事業終了後は、現場におけるさ
らなる臨床試験を経て、より完成されたリハ
ビリ支援機器を、その後に実用化を目指す。
参考1-5
「身体機能リハビリ支援システム」
情勢変化への対応
1)当初目標の変更・修正
歩行訓練支援システムに関しては、13年
度に二次試作を行う予定を、一次試作機のリ
ハビリ効果の有用性を実証することとした。
2)機動性の変更
平成13年4月より上肢機能訓練システム
の開発分担先を旭化成グループに変更、再委
託先として大阪大学工学部を加えた。
「身体機能リハビリ支援システム」
NEDOの評価
下肢機能訓練システム
開発委員会における評価は良好であり、委
員からの提案による、臥位による訓練を立位
まで可能とする拡張を行う等、進捗状況は良
好と評価している。
参考1-6
「身体機能リハビリ支援システム」
NEDOの評価
歩行訓練支援システム
開発委員会にて一次試作機の動作評価に関して
議論があり、ロードセルのみならず関節角度、筋
電等の計測による歩行動作の十分な評価とリハビ
リテーション効果の十分な検討を行ってから二次
試作機の開発を進めることが示唆された。
そこで当初予定を変更し、13年度には一次試
作機のリハビリテーションにおける有用性を実証
することとし、二次試作機の製作は一次試作器の
評価結果を考慮して判断することとした。
「身体機能リハビリ支援システム」
NEDOの評価
上肢機能訓練システム
平成13年4月よりやむなき理由により上
肢機能訓練システムの開発分担先を、三洋電
機㈱に代わり旭化成㈱、旭エンジニアリング
㈱とした。また、旭エンジニアリング㈱の再
委託先として大阪大学工学部を加えた。
今年度の進捗状況は良好であり、今後の開
発状況に注意を払っていく。
参考1-7
医療福祉機器技術研究開発
身体機能リハビリ支援システムプロジェクト
中間評価委員会 概要説明資料
2002.1.15
ダイヘンテック(株)・大分大学・東京電機大学
(株)安川電機
旭エンジニアリング(株)・旭化成(株)・大阪大学
事業理念
• 事業理念:上下肢リハビリの質・量の充実に、ロボット技術で貢献
• 意義: 高齢者の寝たきり防止、自立機能回復・維持、療法士の介助
• 目的: 脳卒中患者等の機能回復を支援する装置を開発
• 政策的位置付け:治療効率化で医療費削減・介護負担軽減
参考1-8
背景
• 患者・医療従事者・病院をとりまく環境の変化
• ロボット技術の医療への貢献
病院格付け、患者の選択
医療制度改革
患者
より快適で早い回復
EBMによる治療
医師・療法士
医療技術の向上
医療への貢献
ロボット技術
病院
病院淘汰の時代
医療の効率化・コストダウン
背景
脳卒中への適用例
• 急性期からの早期治療開始で回復を促進
急性期
急性期
1W~1M
1W~1M
病棟ベッドサイド
病棟ベッドサイド
回復期
回復期
2W~2M
2W~2M
リハセンターPT室
リハセンターPT室
慢性期
慢性期
介護センター
介護センター
/外来リハ
/外来リハ
急性期の重視
共通
NEDO装置
関節可動域
筋再教育・筋力強化
自動介助運動
下肢
座位耐性・バランス
歩行訓練(装具)
立ち上がり
応用歩行・階段
上肢
食事・整容
更衣・書字
参考1-9
外来訓練
・指導
開発のねらい
3つのサブシステム間の関係
開発のねらい
下肢機能回復支援システム
• 脳卒中急性期~回復期、臥位~立位に対応し、
両下肢を協調させた歩行模擬訓練をアシスト
療法士にとって困難だった、
立位での両下肢協調(歩行)訓練を可能に
療法士をアシスト
生体情報の計測
運動の介助
下肢支持機構
フィードバック
両下肢訓練装置
参考1-10
開発のねらい
下肢機能回復支援システム
• 複合的な歩行訓練アシスト技術は世界初
• 歩行機能回復の早期治療開始に貢献
臥位~立位に対応
両下肢協調・歩行模擬
バイオフィードバック
従来困難だった訓練でPTをアシスト
複合機能による
アシスト技術は世界初
→ 早期治療の開始へ貢献
→ 医療機器市場創出への挑戦
下肢機能の回復促進
開発のねらい
歩行訓練装置
• 老人介護・在宅介護を支援する動的歩行支援技術
病気・障害の回復期での適切なリハビリ歩行訓練や、
身体機能維持のための定期的な歩行訓練を無理なく効率的に
吊上げによる
身体支持
足底力等データ
の計測評価
足底力のフィードバック
足底力のフィードバック
による動的歩行支援
による動的歩行支援
実際の路面の歩行
吊上げ型歩行訓練装置
参考1-11
開発のねらい
歩行訓練装置
• 訓練者の早期社会参加の促進
• 医師・療法士を総合的に支援
動的体重支持
床反力の計測
実際の路面を歩行
介護者の負担軽減と訓練効率向上
訓練者と介護者をサポー
トする総合支援システム
→歩行解析技術による適切な診断
→ 最適な訓練メニューによる早期回復
歩行機能の回復促進
開発のねらい
上肢動作訓練支援システム
• 脳卒中による障害者・高齢者に対し、上肢の運動機能回復、
維持を図る装置を開発し、社会復帰支援、ADL向上を目指す
世界初の安全性が高い3次元上肢訓練機の実用化を目指し、
かつリハビリ効果の定量評価を実現
三次元
上肢動作支援機構
各種データ計測
訓練メニュー
フィードバック
上肢動作訓練装置
参考1-12
開発のねらい
上肢動作訓練支援システム
• 三次元上肢訓練機の実用化は世界初
• 上肢機能の早期回復に貢献
肩や肘に対応
各種データ計測
リハビリ効果の定量化
肩、肘の訓練で療法士をアシスト
三次元まで拡張した
上肢訓練機は世界初
→ 医師・療法士の負担軽減
→適切な訓練による早期回復が可能に
上肢機能の回復促進
事業の計画内容
(1)研究開発の年度計画(当初)
サブテーマ名
単位:百万円
( )内は人数
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
概念設計
一次試作・評価
二次試作
製造評価
装置改良
36(5)
57(4)
49(4)
19(2)
9(2)
基本設計
製作・評価・改良
評価・改良
臨床的総合評価
20(2)
30(2)
15(1)
10(1)
基本設計
一次試作・評価
二次試作・評価
33(5)
60(4)
40(3)
10(2)
9(2)
基本設計
試作
評価・改良
臨床的総合評価
20(2)
44(3)
19(2)
10(2)
概念設計
基本設計
一次試作・評価
33(9)
63(9)
35(8)
30(6)
9(4)
基本設計
試作・評価・改良
臨床的総合評価
計
1.歩行訓練装置
(1)装置要素技術開発
(2)システムの開発
2.下肢機能回復支援
システム
(1)装置要素技術開発
(2)システムの開発
3.上肢動作訓練支援
システム
(1)装置要素技術開発
(2)システムの開発
170(17)
75(6)
評価・ 改良
二次試作
152(16)
93(9)
評価・改良
170(36)
33(4)
32(6)
10(6)
4
4
4
4
75(16)
20
224(21)
235(24)
129(19)
61(17)
755(100)
4.運営管理
4
経費(単位:百万円)
106(19)
参考1-13
事業の計画内容
(2)研究開発体制
• 事業部との連携 (医療関連事業の実績)
• 臨床現場との連携 (臨床実施とアドバイス)
• 開発委員会からの助言
臨床・助言
医学部
リハセンター
病院
各社
技術開発本部
連携
各社事業部
(医療関連事業)
助言
医療福祉機器研究所
医療福祉機器研究所
開発委員会
事業の計画内容
(2)研究開発体制
プロジェクト開発委員会
木村 哲彦 日本医科大学 医療管理学教室 教授 (委員長, MD)
内田 成男 慶應義塾大学 月ヶ瀬リハビリテーションセンター 理学療法室課長
(PT)
熊谷 公明 社会福祉法人聖母訪問会 小さき花の園 園長(MD)
古荘 純次 大阪大学大学院 工学研究科 電子制御機械工学 教授
斎藤 之男 東京電機大学 理工学部 知能機械工学科 教授
手嶋 教之 立命館大学 理工学部 ロボティックス学科 助教授
富田 豊 慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 教授
道免 和久 兵庫医科大 リハビリテーション部 助教授(MD)
畑田 和男 社会福祉法人 太陽の家 理事長(MD)
宮川 浩臣 大分大学 工学部 福祉環境工学科 教授
平木 治朗 星ヶ丘厚生年金病院 リハビリテーション部 技師長(PT)
安井 平吉 大寿会病院 リハビリテーション顧問(PT)
参考1-14
参考資料2
周辺動向調査(報告書)
本資料は、第1回「身体機能リハビリ支援システム」
(中間評価)分科会において、評価の
事務局である新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評価部から、株式会社旭リサーチセン
ターへ関連技術の周辺動向調査を依頼したものである。
身体機能リハビリ支援システム(中間評価)周辺調査
目次
目次
1 . 開 発 対 象 装 置 の 周 辺 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 2
( 1 ) 開 発 対 象 装 置 の 社 会 的 ニ ー ズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 2
1 ) 高 齢 者 人 口 、 高 齢 者 患 者 数 、 上 肢 ・ 下 肢 障 害 者 に 関 す る 概 況 デ ー タ ・ 参 考 2- 3
2 ) リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 施 設 数 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 7
3 ) 理 学 療 法 士 ・ 作 業 療 法 士 数 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 9
4 ) 療 法 士 の 需 給 バ ラ ン ス の 状 況 と 将 来 予 測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 11
5 ) 理 学 療 法 士 1 人 当 た り の 患 者 数 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 13
( 2 ) 当 該 技 術 分 野 の 開 発 ト レ ン ド ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 14
1 ) 類 似 機 器 ( 市 販 中 、 開 発 中 ) の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 14
2 . 類 似 研 究 開 発 の 状 況 と 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 21
( 1 ) 特 許 出 願 数 ・ 論 文 数 等 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 21
1 ) 特 許 出 願 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 21
2 ) 身 体 機 能 リ ハ ビ リ 支 援 に 関 連 す る 論 文 数 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 25
( 2 ) 歩 行 支 援 ・ 下 肢 リ ハ ビ リ 機 器 に 関 す る 国 内 の 研 究 開 発 動 向 ・・・・・・・・・ 参 考 2- 26
1 ) 研 究 開 発 テ ー マ の 分 類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 26
2 ) 研 究 開 発 を 行 っ て い る 期 間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参 考 2- 26
( 3 ) 米 国 の 公 的 機 関 支 援 の 上 下 肢 機 能 回 復 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト の 状 況 ・・・・・ 参 考 2- 31
参考 2-1
1 . 開 発 対 象 装置 の周 辺 状 況
( 1 ) 開 発 対 象装 置の 社 会 的 ニ ー ズ
高齢化社会の大きな問題の一つとして高齢者の身体機能低下がある。下肢およ
び上肢機能の低下は歩行中の転倒や運動能力の低下、日常動作への支障などの直
接的な影響の他、脳機能低下の要因となっている。この身体機能低下をできるだ
け早く検知し、維持、回復につとめることは、寝たきりや要介護の高齢者を減ら
すのはもちろんのこと、高齢者の積極的な社会参加のために必要な措置と考えら
れる。
本プロジェクト「身体機能リハビリ支援システム」では、高齢者を中心に「上
肢、下肢および歩行動作」に関する身体機能低下の予防と維持および軽度の障害
の回復に応用可能なフィードバック機能を備えた訓練システムを開発することを
目標としている。
歩行 訓 練 装 置 は 、 高 齢 者 や 脚 疾 患 の 術 後 の 回 復 訓 練 な ど 歩 行 訓 練 の 必 要 な 患
者・訓練者を、上部からの吊り下げ機構により支え、訓練を行う。フットセンサ
および各種位置センサからの情報をフィードバックさせ、吊り下げ力を調節し、
水中での歩行訓練と同様の効果を得ようとしている。
下肢機能回復支援システムでは、発症直後から立位にてバランスをとれるよう
になるまでの期間、臥位の状態で下肢の関節可動域の確保などの基本的な機能回
復訓練を行う。下肢を無理なく支持する機構、各種の訓練パターンの提示、運動
データの計測とフィードバックにより、立位での訓練にスムーズに移行するため
の支援を実現しようとしている。
上肢動作訓練支援システムは、上肢運動機能を評価して、医師や療法士の治療
ノウハウに基づいた訓練メニューを提示、支援を行う。さらに、計測、評価結果
を訓練者の視覚や聴覚等へリアルタイムでフィードバックできるので、訓練を継
続する動機付けとなり、より効果的な動作訓練を実現できる。
こ こ で は 、「 身 体 機 能 リ ハ ビ リ 支 援 シ ス テ ム 」の 周 辺 状 況 調 査 と し て 、高 齢 者 人
口・患者数・上肢下肢障害者数、リハビリテーション施設数、理学療法士・作業
療法士の状況等を調査し、開発対象装置の社会的ニーズを検証・考察した。
参考 2-2
1)高齢者人口、高齢者患者数、上肢・下肢障害者数に関する概況データ
上肢、下肢および歩行動作に関する機能低下の予防と機能維持を必要とする対
象者は高齢者を中心に増大している。また、生活習慣の変化により高血圧症、高
脂血症、糖尿病など脳血管障害の引き金となる生活習慣病の低年齢化が進行して
いることから、軽度の障害回復への応用まで含めると対象者の年齢層は幅広いも
のとなる。
a.高齢者の人口増加の状況
国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 の 統 計 で は 、 98 年 の 合 計 特 殊 出 生 率 は 1.38 で
人 口 を 安 定 化 さ せ る た め に 必 要 な 2.08 を 下 回 る 。 こ の た め に 日 本 総 人 口 は 2007
年 ピ ー ク に 達 し 50 年 後 に は 25% 減 少 し 、 100 年 後 に は 半 減 す る 。
図 1 に 高 齢 化 の 推 移 と 将 来 推 計 を 示 す 。65 歳 以 上 の 高 齢 者 人 口 は 99 年 で 2,119
万 人 と な り 高 齢 化 率 は 16.7% で あ る 。今 後 の 高 齢 化 の 推 移 を 平 均 寿 命 の 延 び や 低
い 出 生 率 を 反 映 す る と 、 2015 年 に は 高 齢 者 人 口 は 3,188 万 人 、 高 齢 化 率 は 25%
を 超 え 、 2050 年 に は 35% に な る と 予 想 さ れ る 。
図 1 高 齢 化 の 推 移 と 将 来 推 計 ( 1950 年 ~ 2050 年 )
(出所)国立社会保障人口問題研究所
参考 2-3
b.高齢者患者数増加の状況
青年期を過ぎると、加齢とともに脳神経系、循環器系、呼吸器系、消化器系、
腎・泌尿器系、血液・造血系、骨・関節系では生理的な機能の低下が始まる。
加齢にともなう生理機能の低下により、高齢者は病気になると、循環不全、腎
不 全 、呼 吸 不 全 な ど 、障 害 の 第 一 段 階 の 機 能・形 態 の 障 害( impairment)が 生 じ
る。
図2に年齢階級別にみた推計患者数の年次推移を示す。65歳以上の高齢者が
全患者数の中で占める割合が急速に増え続けていることがわかる。
図2 高齢者の患者数の増加
(千人)
(千人)
入 院
外 来
3000
900
65 歳 以 上
800
35~ 64 歳
2500
700
600
500
2000
65 歳 以 上
15~ 34 歳
35~ 64 歳
1500
400
1000
300
15~ 34 歳
200
0~ 14 歳
500
0~ 14 歳
100
0
0
昭和40年45
50
55
59 62 平成2年 5
(年)
8
昭和40年45
11
50
55
59 62 平成2年 5
(年)
8
( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 「 患 者 調 査 」: 平 成 11 年 度 調 査 の 概 況
c.上肢・下肢障害者数の状況
上肢・下肢障害の大きな要因としては、脳血管障害、脳性麻痺、脳挫傷、骨関
節 疾 患 、リ ウ マ チ 性 疾 患 が あ る 。厚 生 労 働 省 の 調 査 で は 、上 肢・下 肢 障 害 者 数 は 、
表1のとおりである。
表 1 上 肢 ・下 肢 障 害 者 数
上
下
肢 障 害
肢 障 害
合 計
者
者
1996年
4 8 0 ,0 0 0( 人 )
5 7 4 ,0 0 0( 人 )
1 ,0 5 4 ,0 0 0( 人 )
( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 「 身 体 障 害 者 実 態 調 査 」「 身 体 障 害 児 実 態 調 査 」
参考 2-4
11
とくに高齢者は、病気などにより寝込んだりすると、ただちに障害の第二段階
の 能 力 不 全( disability)が 生 じ 、移 動 の 制 約 、日 常 生 活 動 作 な ど が で き に く く な
る。
さらにすすむと、従来行なっていた社会生活ができなくなり、障害の第三段階
で あ る 、 大 き な 社 会 的 不 利 益 ( handicap) を 生 じ る 。
厚生労働省は身体障害の程度に応じて 1 級から 6 級に分け身体障害者手帳を交
付 し て い る 。 平 成 12 年 度 の 調 査 で は 、 新 た に 身 体 障 害 者 手 帳 の 新 規 交 付 を 受 け
た 18 歳 以 上 の 者 の 数 は 303,868 人 で あ る 。 そ の う ち 、 上 肢 、 下 肢 、 体 幹 の 障 害
に よ る 肢 体 不 自 由 者 は 160,120 人 で 、 全 体 の 53% を 占 め て い る 。
平 成 9 年 か ら 平 成 12 年 に 、 18 歳 以 上 で 上 肢 、 下 肢 、 体 幹 の 障 害 の た め 身 体 障
害 者 手 帳 新 規 交 付 を 受 け た 者 の 数 を 図 4 で 示 す 。 こ れ を み る と 、 毎 年 15 万 か ら
16 万 人 の 成 人 が 肢 体 不 自 由 の た め 新 た に 障 害 者 と し て 認 定 さ れ て い る こ と に な
る。
図 4 18 歳 以 上 の 肢 体 不 自 由 の 障 害 者 手 帳 新 規 交 付 者
人数
80,000
下肢 62,713
60,000
下肢 75,237
下肢 70,740
上肢 8,554
上肢 58,204
上肢 52,843
体幹 40,635
下肢 71,715
体幹 43,261
上肢 52,258
体幹 43,604
40,000
体幹 35,325
20,000
0
1997
1998
1999
2000
年度
( 出 典 ) 厚 生 労 働 省 「 福 祉 行 政 報 告 例 」「 厚 生 省 報 告 例 」 よ り 抜 粋
d.高齢患者の外来・入院治療の増加と開発対象装置の社会的ニーズ
65 歳 以 上 の 高 齢 者 の( 外 来 + 入 院 )の 患 者 数 の 増 加 状 況 お よ び 高 齢 者 人 口 の 増
加状況を図5に示す。
参考 2-5
高 齢 者 人 口 は 、1995 年 時 点 で 約 1,800 万 人 で あ っ た も の が 、そ の 後 5 年 毎 に 約
3 00 万 人 、20 年 後 の 2015 年 に は 約 1,200 万 人 増 え て 約 3,000 万 人 に な る と 予 測
されている。そしてこれに優るとも劣らぬ勢いで増えているのは高齢者患者数で
ある。
脳血管障害、脳性麻痺、脳挫傷、骨関節疾患、リウマチ性疾患では医療が主体
になり、障害の第一段階の機能・形態の障害すなわち疾病の診断・治療にとらわ
れ、障害の第二、第三段階を忘れがちである。しかし高齢者やその家族にとって
は、いままでと同様な生活ができるのか、どのような介護が必要か、どのような
福祉機器を使用すれば能力をカバーできるか、どのくらい生きられるのか、経費
はどうかなどが大事な問題である。従来のような診断・治療中心ではなく、高齢
者全体をみた、包括的アプローチが大切である。
国民医療費の観点からは、高齢者には病気、寝たきり等からの予防や回復、そ
のためのリハビリテーション支援システムの開発が強く望まれる所以である。
図5 高齢者の患者数(外来+入院)の増加
4000
40000
3531
高齢者患者数
3000
2720
2961
30000
21877
20000
14895
上肢・下肢障害者
)
1054千人
1000
高齢者人口
0
千
人
)
千
人
10000
0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
年
(出所)厚生労働省「患者調査」、
「身体障害者実態調査」他
参考 2-6
高
齢
者
人
口
(
18261
2000
(
高
齢
者
患
者
数
3545
2)リハビリテーション施設数の状況
リハビリテーションの普及には、リハビリテーション施設の整備が必要とされ
る。また、リハビリテーション施設において、専門職員体制を充実するとともに
医学的リハビリテーションの総合的な推進のためには、リハビリテーション支援
システムの導入が必要とされている。
いっぽう、リハビリテーション施設を通所によっても利用できない障害者のた
めに、訪問による在宅ケアの充実を図ることが指摘されており、在宅ケアの充実
のためにも簡便で使いやすいリハビリテーション支援機器の開発が望まれている。
a.全国のリハビリテーション総合施設の状況
リハビリテーションでは、主に理学療法士が行う理学療法と、作業療法士が行
う 作 業 療 法 が あ る 。各 療 法 と も 、専 用 の 施 設 が あ り 、そ の 施 設 が リ ハ ビ リ テ ー シ ョ
ン承認施設になる。
届 出 に よ り 都 道 府 県 知 事 が 承 認 す る 施 設 の 基 準 は Ⅰ 、Ⅱ 、Ⅲ 、Ⅳ の 4 つ が あ る 。
Ⅰ の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 総 合 承 認 施 設 は 、ス タ ッ フ は 医 師 が 専 任 常 勤 2 人 以 上 、
理学療法士が専従で5人以上、作業療法士が専従で3人以上として、1日1人の
スタッフが受け持つ患者は、簡単な15分程度のリハビリで、36人程度、複雑
な40分以上のリハビリで12人程度を限度としている。
その他、療法室専門の面積や新看護や基準看護の届出、専用の器械や器具を備
えていることなどを定めており、本プロジェクトで開発される大型のリハビリテ
ーション支援システムが利用される機会が多いと考えられる。
理学療法はⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの4の施設で実施されるが、作業療法はⅠ、Ⅱでの
み実施される。リハビリテーション施設では、それぞれの患者の障害の状態に よ
って、実施されるリハビリテーションのプログラムの内容が異なる。そのプログ
ラムによって、必要な施設や道具も変わってくる。患者がリハビリテーション病
院を選択する上で、自分が必要とする施設や道具があるかないか、或いはスタッ
フがいるかいないかが目安になる。
ベッドサイドでの簡単なリハビリテーションの場合は、Ⅲでも十分であるが、
頸髄損傷などによる全身麻痺などの重度な状態のリハビリテーションとなると、
施 設 の 整 っ た 、最 低 で も Ⅱ の 基 準 を 取 っ て い る 病 院 が 好 ま し い と い う こ と に な る 。
リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 施 設 基 準 の 詳 細 は 表 2 の 通 り で 、Ⅳ は 施 設 基 準 外 に な る 。
参考 2-7
表 2 リハビリテーション施設基準
リハビリテーション
施設基準
Ⅰ
Ⅱ
リハビリテーション
総合承認施設
Ⅲ
Ⅳ
専任常勤 2 人以上
専任常勤 1 人
以上
1 人以上
指導監督
下 /監 視
下
理 学 療 法 士 (PT)
専 従 PT 5 人 以 上
*専 従 PT 1 人
以上
・週 2 日 以 上 の
PT1 人 以 上
・専 従 理 療 経 験
従事者 1 人以上
監視下
作 業 療 法 士 (OT)
専 従 OT 3 人 以 上
*専 従 OT 1 人
以上
-
-
12 人 限 度
12 人 限 度
12 人 限 度
12 人 限 度
36 人 限 度
36 人 限 度
36 人 限 度
36 人 限 度
300m 2 以 上
100m 2 以 上
要
要
*100m 2 以 上
*75m 2 以 上
不要
要
45m 2 以 上
-
不要
要
-
-
不要
不要
医師
複 雑 なもの 40 分 以 上
1 日 患 者 数 /1 人 あたり
簡 単 なもの 15 分 以 上
1 日 患 者 数 /1 人 あたり
理学療法専有面積
作業療法専有面積
新 看 護 ・基 準 看 護 届 出
専 用 の器 械 、器 具 具 備
*印は理学療法と作業療法とで該当する施設基準をそれぞれ読み替える。
(出 所 )社 会 保 険 研 究 所 「施 設 基 準 等 の事 務 手 引 き」
全 国 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 総 合 承 認 施 設( 理 学 療 法 I)数 は 、1996 年 の 258 施
設 か ら 2000 年 に は 460 施 設 に 伸 び て 、4 年 間 で 約 200 施 設 、1.8 倍 に 増 加 し た 。
図 6 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 総 合 承 認 施 設 ( 理 学 療 法 I) 数 の 増 加
施設数
500
増加
400
300
200
100
0
95
96
97
98
99
2000 年
(出所) 厚生労働省統計
参考 2-8
3)理学療法士・作業療法士数の状況
わ が 国 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 施 設 で は 、身 体 リ ハ ビ リ 指 導 者 と し て 理 学 療 法 士 、
作業療法士が存在する。
急速に社会が超高齢化に向かうなかで、病院はリハビリテーション総合承認施
設を中心に回復期・維持期のリハビリテーションを進めている。また、長期療養
に 対 応 す る 療 養 型 病 床 を 取 り 入 れ た ケ ア・ミ ッ ク ス 型 の サ ー ビ ス も 始 ま っ て い る 。
一方、住み慣れた自宅で療養したい、家族だけでは十分に介護できないという
患者のために、身体に障害のある高齢者が家庭復帰後も、医学的管理のもとに機
能回復・維持を図るデイケアも提供されている。
高 齢 者 を 中 心 と し た 早 期 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン か ら 社 会 復 帰 、Q O L( 生 活 の 質 )
向上をめざすには、機能回復や二次的障害の予防など早期治療にとどまらす障害
のある人の自立する力を心と体の両面で高めて、生活の質の改善をめざす患者の
生活全般にかかわる医療ネットワークが必要になる。
医療ネットワークでは、医師、看護婦など治療に取り組むスタッフのほかに、
P T( 理 学 療 法 士 )、O T( 作 業 療 法 士 )、S T( 言 語 療 法 士 )、M S W( 医 療 ソ ー
シャルワーカー)などの専門スタッフによる総合的な医療支援が推進される。
脳卒中やケガなどにより、筋肉や関節・心肺機能などが衰える廃用症候群が問
題となっている。とくに、高齢者の場合は、軽い風邪でも何日も横になると、廃
用症候群になり全身の機能が急激に衰え、寝たきりになることもある。
脳卒中などでは、以前に比べ医療技術が発達し助かる人が増えた反面、後遺症
でマヒが残り、体を動かさずにいると衰えが進んでしまう。日本の場合、いった
ん介護が必要な状態になると、再び自立できるようになる可能性は低く、米国の
の三分の一程度との情報もある。リハビリを開始する時期が遅いことが大きな原
因であり、必要以上に安静な状態を続けたり安易に車椅子に頼ったりすると、筋
肉などの機能が衰え、回復が一層難しくなってしまうことによる。
これまでのリハビリは、例えば足の筋力など個別部位の回復だけに主眼が置か
れることが多かった。また、歩行訓練でも、リハビリ用の訓練室でただ歩く練習
をするだけに終わる場合がほとんどであった。正しいリハビリを行うためには施
設 に お け る PT、OT の 人 数 の 充 足 と と も に 、個 々 の 患 者 の 障 害 の 度 合 い に 対 応 し
て PT、OT の 仕 事 を 支 援 す る リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 機 器 の 整 備 を す る 必 要 が あ る 。
参考 2-9
a.理学療法士数の状況
理学療法士は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下に、身体に障害の
ある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他
の運動を行わせ、必要に応じ電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を
加 え る 。1990 年 か ら の 理 学 療 法 士 国 家 試 験 合 格 者 数 の 累 計 の 推 移 は 次 の 通 り で あ
る。
表 3 理 学 療 法 士 国 家 試 験 合 格 者 数 累 計 の 推 移
国家試験合格者
同
累
計
協 会 会 員 累 計
国家試験合格者
同
累
計
協 会 会 員 累 計
1990 年
1991 年
1992 年
1993 年
1994 年
1995 年
1,015
977
1,029
1,069
1,086
1,422
10,024
11,001
12,030
13,099
14,185
15,607
8,532
9,405
10,397
11,277
12,258
13,563
1996 年
1997 年
1998 年
1999 年
2000 年
2001 年
1,688
1,797
2,215
2,566
3,048
3,140
17,295
19,292
21,307
23,874
26,921
30,061
14,964
16,534
18,496
20,731
-
-
(-:未集計)
こ れ を グ ラ フ 化 し た 図 7 で み る と 、 1990 年 ~ 1994 年 は 毎 年 1,000 人 前 後 で 増
加 し 、 1995 年 ~ 1997 年 は 1,500 人 前 後 で 増 加 し て い る 。 1998 年 ~ 2001 年 は 、
毎 年 、 2,000 人 ~ 3,000 人 の ペ ー ス で 急 速 に 増 加 し て い る 。
図7 理学療法士国家試験合格者数の累計推移
参考 2-10
b.作業療法士数の状況
作業療法は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下に、身体又は精神に
障 害 の あ る 者 に 対 し 、主 と し て そ の 応 用 的 動 作 能 力 又 は 社 会 的 適 応 能 力 の 回 復 を
図るため、手芸、工作その他の作業を行わせる。
作 業 療 法 士 国 家 試 験 合 格 者 数 累 計 の 推 移 を 図 8 に 示 す 。グ ラ フ で み る と 、1990
年 ~ 1994 年 は 毎 年 400 人 前 後 で 増 加 し 、 1995 年 ~ 1997 年 は 700 人 前 後 で 増 加
し て い る 。1998 年 ~ 2001 年 は 、毎 年 、1,000 人 ~ 2,000 人 の ペ ー ス で 急 速 に 増 加
している。
図8 作業療法士国家試験合格者数の累計推移
4)療法士の需給バランスの状況と将来予測
理 学 療 法 士 、 作 業 療 法 士 を 定 め た 「 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 法 」 は 、 1965
年 (昭 和 40 年 )に 制 定 さ れ た 。国 家 資 格 を 得 る に は 、高 校 卒 業 後 、文 部 科 学 大 臣 指
定の学校または厚生大臣指定の養成施設において、3年以上の専門知識及び技能
を 修 得 す る 必 要 が あ る 。学 科 は 、4 年 制 大 学 、3 年 制 短 期 大 学 、4 年 制 専 門 学 校 、
3 年 制 専 門 学 校 に 設 置 さ れ て お り 、2001 年 度 の 学 校 数 、定 員 は 表 4 の と お り で あ
る。なお、国家試験は、年 1 回実施されている。
参考 2-11
表 4 理 学 療 法 士 、 作 業 療 法 士 の 学 校 数 、 定 員 ( H13 年 度 )
H13 年 度
理 学 療 法 士
作 業 療 法 士
合 計
学校数
135
129
264
入学定員
4,963
4,300
9,263
(出所)日本理学療法士協会、日本作業療法士協会
a. 理学療法士の需給バランスの状況と将来予測
理学業法士の今後の需給について、厚生労働省医療関係者審議会は次のように
推 計 ( 平 成 12 年 ) し て い る 。
表 5 理 学 療 法 士 の 需 給 バ ラ ン ス の 推 移
理 学 療 法 士
1999 年
2004 年
需 要
23,800
( 1991 年 時 推 計 )
46,000
( 1999 年 末 推 計 )
供 給
23,896
( 1999 年 末 現 在 )
37,200
( 1999 年 末 推 計 )
入 学 定 員
3,631
( 1999 年 4 月 )
5,500
( 1999 年 末 推 計 )
1999 年 末 時 点 で は 理 学 療 法 士 の 需 給 は バ ラ ン ス し て い る よ う に う か が わ れ る
が 、 5 年 後 の 2004 年 で は 9000 人 弱 の 供 給 不 足 が 予 測 さ れ て い る 。
b .作 業 療 法 士 の 需 給 バ ラ ン ス の 状 況 と 将 来 予 測
作業療法士の需給バランスの状況と将来予測を次に示す。
表6 作業療法士の需給バランスの推移
作 業 療 法 士
1999 年
2004 年
需 要
15,800
( 1991 年 時 推 計 )
33,000
( 1999 年 末 推 計 )
供 給
12,627
( 1999 年 末 現 在 )
24,200
( 1999 年 末 推 計 )
参考 2-12
作 業 療 法 士 の 需 要 バ ラ ン ス は 、 1999 年 末 時 点 で 約 2000 名 不 足 し て お り 、 5 年
後 の 2004 年 で は 、 9000 人 弱 の 供 給 不 足 が 予 測 さ れ て い る 。
5)理学療法士1人当たりの患者数の状況
理学療法士協会が協会会員を調査対象として行った「理学療法士実態調査
(n=10,886)」 に よ る と 、 理 学 療 法 士 1 人 当 た り の 患 者 数 は 次 の と お り で あ る 。
表 7 理 学 療 法 士 1 人 当 り の 患 者 数
1日の患者数
0人
1-5 人
6-10 人
11-15 人
16-20 人
療法士(%)
1. 2
2.6
10.9
17.2
24.1
1日の患者数
21-25 人
26-30 人
31-35 人
36-40 人
41-45 人
療法士(%)
14.3
10.2
2.2
2.7
0.3
1日の患者数
46-50 人
51-100 人
101 人 以 上
療法士(%)
0.9
2.3
1.4
こ れ を グ ラ フ 化 し た 図 9 で み る と 、 1 日 に 患 者 16~ 20 人 を 診 る 理 学 療 法 士 が
全 体 の 約 4 分 の 1 (24.1%)で 最 も 多 い 。理 学 療 法 士 の 約 3 分 の 2( 65.8%)が 、一
日 に 11~ 30 人 の 範 囲 の 患 者 に 対 応 し て い る 。
図9 理学療法士 1 日当たりの患者総数
101人以上 未回答
1.44%
9.75% 0人
51-100人
1.18%
2.26%
46-50人
0.90%
1-5人
2.59%
6-10人
10.94%
41-45人
0.30%
36-40人
2.68%
11-15人
17.24%
31-35人
2.21%
26-30人
10.19%
21-25人
14.26%
16-20人
24.06%
参考 2-13
な お グ ラ フ で は 、1 日 当 り の 患 者 数 が 100 人 を 越 え る 療 法 士 が 見 ら れ る が 、こ
れは指示だけを与えているということである。
理 学 療 法 士 の 実 労 働 時 間 を 1 日 8 時 間 と す る と 、平 均 的 な 理 学 療 法 士 は 1 日 16
~ 20 人 の 患 者 を 診 て い る こ と か ら 、患 者 1 人 に 割 け る 時 間 は 20~ 30 分 程 度 と い
いうことになる。
高齢化が進み、リハビリの患者数が増えることが予測されている状況から、患
者1人当たりにあてる時間は減少せざるを得ないと思われる。これを解決するた
めには、リハビリテーション施設においては、理学療法士や作業療法士を支援す
るためのリハビリの補助機器開発が必要となってくる。
( 2 ) 当 該 技 術分 野の 開 発 ト レ ン ド
1)類似機器(市販中、開発中)の状況
下肢機能回復支援システム、歩行訓練装置、上肢動作訓練支援システムについ
て市販されている類似の機器についてインターネット検索を行った。
検索結果を製品名、機関名、特徴とセールスポイント、販売状況、価格につい
てまとめるとともに、製品の写真付概要説明を参考として添付した。
a.下肢機能回復支援システム
表 8 下 肢 機 能 回 復 支 援 シ ス テ ム の 類 似 機 器 の 状 況
名称
会社等
膝用
パフォーマ
Smith+Nephew
Kinetec社(仏)
(輸入元:
酒井医療)
ハイドロマス
キュレーター
膝関節専用
OG技研
下肢リハビリ
システム
機械技術研究所
福岡県工技術セン
ター
筑波技術短期大学
高齢者用下肢機能リハビリ支援システム。
安全、低コストで自宅用。
身体機能
リハビリ支援
システム
産業技術総合研究
所九州センター
高齢者、身体不自由者を対象に、下肢に定負荷
を与えつつ、下肢の機能低下予防、維持、回復
訓練を行える訓練装置。
安川電機、慶大、
慶大月ヶ瀬リハ
多自由度機構や、インピーダンス制御による柔
軟な動作を特徴。実用的な運動療法を実施でき
る。運動のモードとして、他動的な関節可動域
訓練のみならず、他に自動介助運動を選択でき
る。
参考 2-14
下肢用運動
療法装置
TEM
特徴・セールスポイント
運動軸を膝及び股関節でとらえたタイプ。
運動角度、速度等が設定可能。
座位姿勢で使用できる下肢屈伸訓練器。
「自力モード」及び高齢者向け「おまかせモード」
が設定可能。
販売状況
価格
2001年
約20台販売
110
万円
12年前より導入。
年間20台前後販売
。
298
万円
開発をスタート
(2001年)
-
開発中
(1999年)
-
開発段階機器
(1999年)
-
< 参 考 > 下 肢 機 能 回 復 支 援 シ ス テ ム 市 販 類 似 機 器 の 概 要 (写 真 )説 明
① Smith+Nephew Kinetec 社 (仏 )「膝 用 パフォーマ(ハイグレードタイプ)」
運 動 軸 を膝 及 び股 関 節 でとらえたタイプ。運 動 角 度 、速 度 等 が設 定 可 能 。
② OG 技 研 「ハ イ ド ロ マ ス キ ュ レ ー タ ー 膝 関 節 専 用 」
座 位 姿 勢 で使 用 できる下 肢 屈 伸 訓 練 器 。
「自 力 モード」及 び高 齢 者 向 け「おまかせモード」が設 定 可 能 。
参考 2-15
歩行訓練機器には、幼児用の歩行器を発展させたものも多く市販されている。
その一例を以下に示す。
<参考>幼児用歩行器を発展させた歩行訓練器の一例
㈱パーカーコーポレーション「メイウォーク」
福祉先進国デンマークで生まれたテクニカルエイド製品。
座面はスイングバーで下降、乗降が楽に行える。介護の負担がほとんどない。
【 寸 法 】 長 さ 95cm×幅 70cm 【 重 量 】 26kg 【 価 格 】 236,000 円
参考 2-16
b.歩行訓練装置
表9 歩行訓練装置の類似機器の状況
名称
会社名
等
特徴・セールスポイント
販売状況等
価格
歩行能力
開発装置
セノー
株式会
社
歩行困難者の下肢を他動的に動かし、神経-筋活動を賦活させ、負荷調節により歩行
能力を回復させる装置。下肢を動かすステップ部は、左右個別に歩行速度、軌道、歩幅
を自由に設定出来る。体幹を支える免荷部は、障害に応じて免荷重を調節し、訓練中の
体幹バランスを安定させる。モニターにより血圧、心拍数などを画像データでフィードバッ
クし、被訓練者の動機付けを図っている。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
平成11~12
年に開発。
貸出あるが、
販売に至って
いない。
1000
万円
(当初
2000
万円)
歩行訓練
システム
PW-2
日立
製作所
機械
研究所
高齢者用高機能歩行訓練機。左右のベルトが独立して動き、片麻痺者にも使用可。体
重の一部を訓練器が支えるため足の負担が小さく、転倒防止。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。また体重
の支え方は、自力によるサポート。
平成6年頃よ
り13台販売。
480
万円
今まで10年で、
60台以上販
売。
800
万円
2001年実証
実験中。
百万
~
数百
万円
1998年8月販
売開始。
あまり売れて
ない。
800
万円
歩行訓練
オートリフト
AID-1-M
ジャパン・ 水の浮力利用と同じように、空気圧制御の吊上力(0~40kg)で負荷をコントロールしな
がら訓練。急な負荷の変動にもスムーズに追従。転倒防止機構。
イーエム
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
天井
つり下げ型
歩行支援
システム
「フローラ」
トーキン
トーキンは熊谷組などと共同で天井つり下げ型の歩行支援システム「フローラ」を開発。
独立行政法人、産業安全研究所の特許を実用化したもの。トーキンが磁性体の技術を
生かして磁石式のつり下げ歩行支援装置を生産し、熊谷組が天井に設置する鋼鉄板を
施工、使用者の体に装着する部分は、ロボトピアが開発。従来の歩行支援システムは、
体を支える部品をレールなどでつり下げる方式で、新システムは、天井に設置した鋼鉄
板に強力な永久磁石と車輪を組み合わせた歩行支援装置を張りつける。レールが不要
になるため、鋼鉄板の設置した範囲内を自由に動ける。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
運動療法
システム
StrengthErgo
(ストレングス
エルゴ)
三菱
電機
下半身にマヒのある患者向け。VR技術を駆使し、両足でペダルをこいだり踏んだりする
と森林などの画面が動く。患者の筋力に応じて、無理のない運動負荷や運動メニューを
自由に作成できるのが特徴。医療機関のPT(理学療法士)らに提案しながら売り込む。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
参考 2-17
< 参 考 > 歩 行 訓 練 装 置 の 市 販 類 似 装 置 の 概 要 (写 真 )説 明
① セノー株 式 会 社 「歩 行 能 力 開 発 装 置 」
歩 行 困 難 者 の下 肢 を他 動 的 に動 かし、神 経 -筋 活 動 を賦 活 させ、負 荷 調 節 により歩 行 能 力 を回
復 させる装 置 。下 肢 を動 かすステップ部 は、左 右 個 別 に歩 行 速 度 、軌 道 、歩 幅 を自 由 に設 定 出 来
る。体 幹 を支 える免 荷 部 は、障 害 に応 じて免 荷 重 を調 節 し、訓 練 中 の体 幹 バランスを安 定 させる。
モニターにより血 圧 、心 拍 数 などを画 像 データでフィードバック。訓 練 者 の動 機 付 けを図 っている。 ② ㈱日 立 製 作 所 機 械 研 究 所 「歩 行 訓 練 システム」
高 齢 者 用 高 機 能 歩 行 訓 練 機 。左 右 のベルトが独 立 して動 き、片 麻 痺 者 にも使 用 可 。体
重 の一 部 を訓 練 器 が支 えるため足 の負 担 が小 さく、転 倒 防 止 。
参考 2-18
③ ジャパン・イーエム「歩 行 訓 練 オートリフト AID-1-M」
水 の浮 力 利 用 と同 じように、空 気 圧 制 御 の吊 上 力 (0~40kg)で負 荷 をコントロールしな
がら訓 練 。急 な負 荷 の変 動 にもスムーズに追 従 。転 倒 防 止 機 構 。
参考 2-19
c.上肢動作訓練支援システム
上 肢 動 作 訓 練 装 置 は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 検 索 で 検 出 さ れ た も の は 、こ れ 1 件 の み
であった。
表 10 上 肢 動 作 訓 練 シ ス テ ム の 類 似 機 器 の 状 況
名称
マスキュ
レーター
上下肢用
GT- 30
会社名等
OG技研
特徴・セールスポイント
販売状況等
価格
14~15年前か
関節運動を伴わない、上肢・下肢の主要
ら販売。
筋群を対象にした測定並びにアイソメトリッ
累計販売台数
ク(等尺線運動)訓練装置。
は何百台のオ
(関節の動きはない。)
ーダー。
125
万円
< 参 考 > 上 肢 動 作 訓 練 支 援 シ ス テ ム 類 似 装 置 概 要 (写 真 )説 明
① OG技 研 「マスキュレーター上 下 肢 用 GT-30」
関 節 運 動 を 伴 わ な い 、上 肢・下 肢 の 主 要 筋 群 を 対 象 に し た 測 定 並 び に ア イ ソ
メトリック訓練装置。
参考 2-20
2 . 類 似 研 究 開発 の状 況 と 動 向
開 発 対 象 装 置 の 類 似 研 究 開 発 状 況 と 動 向 を 把 握 す る た め 、国 内 の 特 許・論 文 数 、
歩行支援・下肢リハビリ機器の国内研究開発動向および米国における公的機関支
援の上・下肢機能回復研究開発プロジェクトの状況について調査を行った。
( 1 ) 特 許 出 願数 ・論 文 数 等 の 状 況
1)特許出願の状況
身体リハビリ支援に関する特許のうち歩行訓練、下肢訓練、上肢訓練に関る出
願についての検索結果は図10のとおりである。
図10 身体リハビリ支援に関連する特許出願の状況
検 索 方 法 :特 許 庁 電 子 ライブラリー
検 索 項 目 :要 約 +請 求 の範 囲 (公 開 特 許 広 報 )
・下 肢 機 能 回 復 支 援 システム :下 肢 、訓 練 、装 置
・歩 行 訓 練 装 置 :歩 行 、訓 練 、装 置
・上 肢 動 作 訓 練 支 援 システム :上 肢 、訓 練 、装 置
16
14
15
14
15
15
歩行
6
5
5
下肢
2
上肢
12
10
8
6
7
8
4
7
6
3
2
0
8
0
1993
1
0
1994
1
1995
1996
0
1997
1
0
1998
1999
2000
2001
歩行訓練装置に関連する出願数が一番多く、全体的には増加傾向である。
上 肢 、 下 肢 に つ い て は 、 2000 年 よ り 公 開 件 数 は 増 え て い る 。 従 っ て 、 出 願 は
1998 年 ~ 1999 年 頃 か ら 増 加 し た も の と 思 わ れ る 。
参考データとして歩行訓練装置、下肢訓練装置、上肢訓練装置に関る特許と実
用新案の公開番号と名称を年代別にリストした。
参考 2-21
<参考>身体機能リハビリ支援に関連する特許出願の状況
① 歩行訓練装置に関連する特許出願、実用新案登録の状況
特許公開番号
名 称
歩行機能訓練装置
1 特 開 平 13-299959
歩行訓練装置
2 特 開 平 13-299839
歩行訓練装置
3 特 開 平 13-286577
歩行器
4 特 開 平 13-276155
人造馬スリーファイブ
5 特 開 平 13-260057
歩行足跡の可視化装置
6 特 開 平 13-252264
歩行訓練装置
7 特 開 平 13-238982
水中歩行練習機
8 特 開 平 13-137383
歩行訓練装置
9 特 開 平 13-120685
平行棒型歩行訓練機
10 特 開 平 13-079114
歩行訓練装置
11 特 開 平 13-037908
歩行介助装置
12 特 開 平 13-029410
足関節訓練装置とその制御方法
13 特 開 平 13-029409
特
開
平
13-017017
犬用運動器具
14
交差歩行訓練器
15 特 開 平 13-008987
荷重訓練支援方法及び装置並びに荷重訓練支援プロ
16 特 開 平 12-308698
グラムを記録した記録媒体
歩行回復装置及びリフト付き車椅子
17 特 開 平 12-300613
愛玩動物用保持紐
18 特 開 平 12-300105
歩行訓練機安全装置
19 特 開 平 12-278855
介助装置およびそれを用いた歩行訓練装置
20 特 開 平 12-237252
歩行訓練装置
21 特 開 平 12-229108
移動式歩行訓練機能付温水プ―ルユニット
22 特 開 平 12-210350
競走馬の訓練時間計測システム
23 特 開 平 12-157091
画像比較表示装置
24 特 開 平 12-138927
歩行訓練装置
25 特 開 平 12-102576
歩行訓練装置
26 特 開 平 12-084016
歩行訓練装置付き折り畳み車椅子
27 特 開 平 12-084002
歩行補助器具
28 特 開 平 12-042066
歩行訓練装置
29 特 開 平 12-037477
歩行訓練機
30 特 開 平 12-024137
歩行訓練機
31 特 開 平 11-347147
歩行訓練装置
32 特 開 平 11-333022
歩行訓練装置およびその制御方法
33 特 開 平 11-253573
歩行訓練・矯正装置
34 特 開 平 11-137718
歩行訓練機
35 特 開 平 11-128390
歩行介助装置
36 特 開 平 11-113986
作業支援装置
37 特 開 平 10-337309
歩行障害者用の入浴装置
38 特 開 平 10-263041
リハビリテイション装置
39 特 開 平 10-263026
歩行訓練装置
40 特 開 平 10-243979
運動訓練装置
41 特 開 平 10-155934
歩行実習・訓練器
42 特 開 平 10-146369
参考 2-22
10-113368
10-111648
10-108884
10-099390
10-099389
10-099388
10-055131
10-043327
10-033625
09-308663
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
53
特 開 平 09-276348
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
78
特 開 平 07-121092
79
80
81
82
83
84
85
86
87
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
09-271497
09-122269
09-120464
09-024077
09-010264
08-229084
08-141027
08-141026
08-141025
08-126768
08-111838
08-089537
08-037978
07-282299
07-265368
07-259363
07-250867
07-236669
07-213570
07-213569
07-163627
07-163626
07-163625
07-124208
07-096015
07-080034
06-233796
06-210024
06-169960
06-169959
06-141956
06-070963
06-039007
歩行訓練装置
自動車教習用側方感覚練習設備
歩行訓練・矯正装置
歩行訓練装置並びに歩行訓練システム
歩行訓練機
歩行訓練機
歩行体験装置
運動訓練装置
湯中、脚・腰自動式リハビリテーション支援装置
補助動力装置付歩行介助機
歩行周期の音符化方法並びにこの方法を応用した歩
行動作の訓練装置及び分析装置
簡易型のトレーニングシステム
走行・運動訓練装置
リハビリテーション支援装置
在宅介護向け自動昇降式歩行器
ベッドにおける手摺装置
アーム駆動制御装置
歩行訓練装置及びその制御方法
歩行訓練装置
歩行訓練の介助方法並びに歩行介助装置
高齢者および障害者に適した砂場
映像記録再生システム
歩行機能回復訓練支援装置
畜犬用歩行訓練実習器
表示方法及び表示装置
歩行機能回復訓練支援装置
回流式リハビリテーションプール
障害者移動装置
歩行訓練装置
歩行機能回復訓練支援装置
歩行機能回復訓練支援装置
歩行訓練装置
歩行訓練装置
歩行浴槽装置
歩行訓練機
訓練支援情報システム及びそれを利用した病院情報
システム
歩行浴槽装置
歩行機能回復訓練支援装置
ベッドにおける身体障害者用の手摺装着装置
歩行訓練機
歩行訓練装置
歩行訓練装置
障害者用手摺装置
ベッドの障害者用手摺装置
歩行器
参考 2-23
88
89
90
91
92
93
94
95
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
特開平
06-000232
05-329186
05-309118
05-309117
05-237201
05-115518
05-042257
05-007608
実用新案公開番号
実 開 2000-000056
実 開 平 06-068747
実 開 平 06-050635
実 開 平 06-015658
実 開 平 06-010962
実 開 平 05-084324
実 開 平 05-084323
実 開 平 05-009537
実 公 平 06-009642
実 公 平 06-007707
実 登 2606688
運動機能訓練方法及びその装置
歩行介助装置
歩行訓練装置
歩行訓練装置
歩行訓練装置
歩行訓練装置
加重歩行訓練用装具
歩行訓練装置
名 称
歩行訓練浴槽
歩行訓練浴槽
身障者歩行訓練補助装置
免荷歩行訓練装置
複数方角対向車への注意力養成灯
歩行訓練用等の案内装置
歩行訓練用等の案内装置
歩行訓練用自動懸垂装置
歩行訓練用自動懸垂装置
歩行補助器取付用操作装置
歩行訓練浴槽
② 歩行訓練装置に関連する特許出願の状況
特許公開番号
名 称
歩行訓練装置
1 特 開 2001-299839
特
開
2001-170207
下肢創動運動訓練装置
2
大腿筋訓練装置
3 特 開 2001-104416
機能回復訓練装置
4 特 開 2001-061912
足関節訓練装置とその制御方法
5 特 開 2001-029409
下肢リハビリ装置
6 特 開 2000-325413
下肢リハビリ装置
7 特 開 2000-325412
下肢機能訓練装置
8 特 開 2000-233031
下肢用訓練装置
9 特 開 2000-152968
歩行訓練装置
10 特 開 2000-102576
肢体駆動装置
11 特 開 平 11-076329
歩行機能回復訓練支援装置
12 特 開 平 08-089537
歩行機能回復訓練支援装置
13 特 開 平 07-265368
歩行機能回復訓練支援装置
14 特 開 平 07-213569
荷重計測装置
15 特 開 平 07-204236
参考 2-24
③
1
2
3
4
5
6
7
8
9
上肢訓練装置に関連する特許出願の状況
特許公開番号
名 称
特 開 2001-161765
健康増進器具
特 開 2001-061912
機能回復訓練装置
特 開 2000-288046
上肢訓練支援システム
特 開 2000-288045
簡易型上肢訓練装置
特 開 2000-279464
肢体機能回復訓練支援システム
特 開 2000-279463
上肢機能回復訓練装置
特 開 2000-279462
生体動作支援システムおよびその装置
特 開 2000-271180
肢体機能回復訓練支援装置
特 開 平 11-253505
身体補助装置
10
特 開 平 09-164121
非侵襲的に測定された指血圧波に基づいて上腕動脈圧波を決定す
るための方法及び装置
11
12
特 開 平 07-308352
特 開 平 07-059821
上肢機能回復訓練装置
上肢動作補助機構
13
特 開 平 06-023004
可動副子に取り付けることのできる可逆電動装置とその装置を使
用した可動副子
2)身体機能リハビリ支援に関連する論文数の状況
身体機能リハビリ支援に関わる歩行訓練、下肢訓練、上肢訓練の国内研究論文
数 に つ い て 、 科 学 技 術 振 興 事 業 団 ( JICST) が 提 供 す る デ ー タ ベ ー ス に よ り 検 索
を行った。結果は図11のとおりである。
図 11 身 体 機 能 リ ハ ビ リ 支 援 に 関 連 す る 論 文 数 の 状 況
検 索 キーワード
・下 肢 機 能 回 復 支 援 システム :(下 肢 )(リハビリ、訓 練 )(機 器 、装 置 、システム)
・歩 行 訓 練 装 置 :(歩 行 )(リハビリ、訓 練 )(機 器 、装 置 、システ ム)・ 上 肢 動 作 訓 練 支
援 システム :(上 肢 )(リハビリ、訓 練 )(機 器 、装 置 、システム)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
歩行
上肢
下肢
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
上肢、下肢、歩行ともに論文数はここ最近大きく伸びている。
参考 2-25
( 2 ) 歩 行 支 援・ 下肢 リ ハ ビ リ 機 器 に 関 す る 国 内 の 研 究 開 発動 向
J I C S T に よ り 、 キ ー ワ ー ド を ( 下 肢 or 歩 行 ) and リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン
and( 機 器 or 装 置 or 器 具 )と し て 、1993 年 以 降 の 研 究 開 発 論 文 文 献 に つ い て 検
索 を 行 っ た 。 検 索 件 数 が 多 数 で た の で 、 検 索 期 間 を 1998 年 以 降 に 限 っ た と こ ろ
63 件 が 検 索 さ れ た 。内 容 か ら 判 断 し 、そ の う ち の 22 件 を 抽 出 し 、解 析 を 試 み た 。
以下に結果をまとめた。
1)研究開発テーマの分類
新 し い 装 具 の 開 発 、現 在 使 用 さ れ て い る 支 援 装 具 の 使 用 状 況 及 び 問 題 点 の 調 査 、
機器開発のための動作解析及びそのための手法の開発があり、次のように分類で
きる。
•
油圧シリンダー、ロボットアーム、モーター等を用いて下肢機能補助機器
性 能 向 上 を は か る 研 究 が 11 件 あ り 、そ の 内 、歩 行 訓 練 用 装 置 に 関 す る も の
が2件あり、他は下肢装具に関するものである。また、ソフト関連が2件
ある。
•
調 査 、評 価 、解 析 関 係 に 研 究 が 10 件 あ り 、義 足 関 連 2 件 、L L B の 使 用 評
価1件、歩行支援下肢装具関連5件、サーボモータ使用福祉機器開発関連
1件、歩行解析1件がある。
•
訓練自動化の検討が1件ある。
2)研究開発を行っている機関
開 発 の 中 心 は 大 学( 高 専 )、企 業 、国 あ る い は 自 治 体 の 研 究 所 又 は リ ハ ビ リ セ ン
ター及び病院で、殆どが共同研究である。分類すると下記のようになる(重複カ
ウ ン ト を 含 む )。
① 大 学 ( 高 専 含 む ): 13 件
② 企業:5件
③ 国 、 自 治 体 施 設 の 研 究 所 、 リ ハ ビ リ 施 設 : 13 件
④ 病 院 ( 大 学 及 び 自 治 体 付 属 病 院 ): 6 件
解析や現状評価は大学や病院の共同研究が多く、新しい機器の開発は企業との
共同開発が中心である。
上 記 22 件 の 研 究 論 文 を 、 開 発 実 施 機 関( 大 学 ・高 専 、 企 業 、 自 治 体 国 、 病 院 )、
研究概要、研究開発テーマ(機器開発、調査解析評価、ソフト自動化)別に整理
した結 果を 表11 に示し た 。表中 、A F O :短 下 肢 装 具 、R O M :関 節 可 動 域 、A
D L :日 常 生 活 活 動 、P T :理 学 療 法 士 、T E M :運 動 療 法 装 置 、S L B :短 下 肢 装
具、LLB:長下肢装具である。
参考 2-26
表11 国内研究開発テーマの概要、機関の分類、テーマの分類結果
開発テーマ
開発実施機関
3
○ ○
4
○
5
○
○
○
油圧シリンダー、粘性2段切り替え式AFO
○
ソフト自動化
○
歩行再建を目指す油圧シリンダー接手AFOの
試作
下肢不自由者対象の身体支持機構。ワイヤーで
つり下げ。床反力計付。
大腿と下腿を把持、ロボットアームで駆動。
調査解析評価
2
研 究 の 概 要
機器開発
○
病院
○
自治体国
企業
1
大学・高専
論
文
番
号
○
○
○
○ 義足歩行訓練の問題点、義足処方の原則の解説
○
下肢運動療法訓練用リハビリ装置。PTの訓練
○ ○
○
○
6
技術を移植
LLB処方57例からSLBに移行できた例か
○
○
7 ○
ら、訓練用具の有用性
歩行機能回復訓練装置による訓練自動化の検討
○
8 ○
義肢、装具製作状況、補装具製作技術向上の概
○
○
9
要
膝・股関節屈曲進展運動機能回復リハビリ装置
○
○
10
TEMの開発
モーター制御型股/膝用TEMの開発。ストレ
○
11 ○ ○ ○
ッチ訓練のモデル化
歩 行 支 援 下 肢 装 具 Walkabout、ARGO に よ る 訓
○ ○
○
12
練経過計測評価システム
歩 行 支 援 下 肢 装 具 Walkabout、ARGO に よ る 訓
○
○
13
練経過計測評価システム
流体圧サーボ使用医療福祉介護機器の現状と開
○
14 ○
発
関節モーメントに着目し、補助モーメント装備
○
○
15 ○
短下肢装具検討
脊髄損傷対麻痺装具歩行についての下肢装具の
○
○
16 ○
考察
対 麻 痺 歩 行 再 建 及 び 装 具 的 解 決 と 、 ハイブリッド補
○
17 ○
助システムと動力化
○ トレッドミル上歩行の解析
○
18 ○
下 肢 装 具 の 柔 軟 性 特 性 研 究 。 シューホーン型 プラスチック
○ ○
○
19
短下肢装具の試作
身障者の転倒防止策。バリアフリーと軽量下肢
○
○
20
装具の必要性
短下肢装具適合評価のための歩行分析手法
○
○
21 ○
下肢障害者立上り介助システムのための新しい
○
22 ○ ○
アクチュエータ開発
ま た 、 抽 出 さ れ た 上 記 22 件 の 研 究 論 文 の 表 題 、 出 典 、 概 要 に つ い て 、 表 12 に
まとめた。
参考 2-27
表 1 2 研 究 論 文 の 表 題 、 出 典 、 概 要 (抽 出 22 件 )
番
号
表題
出典
1
短下肢装具に
おける
可変関節粘性
の検 討 試 作 と
歩行評価
バ イオ エ ンシ ゙ニ ア
リング学 術 講
演会講演論
文集
:VOL.13thP
AGE.292 2
932001
2
下 肢 リハビリ
支 援 システム
の開 発
大分県産業
科 学 技 術 センタ
ー研 究 報 告
:VOL.1999
PAGE.24 ‐
25 2000
3
下肢用運動
療法装置
医科器械学
:VOL.70,NO
.10
PAGE.565‐
566 2000
4
スイッチング剛 性 を
有 する
短下肢装具に
ついての検 討
日本機械学
会年次大会
講演論文集
:VOL.2000,
NO.Vol.1
PAGE.459‐
460 2000
5
透析患者の
運動 療 法の実
際 実 例 にみる
透 析 リハビリテーシ
ョンの
実 際 II 切 断 例
J
Clin
Rehabi
l:VOL.9,NO
.8
PAGE.790‐
793 2000
透 析 切 断 患 者 の 義 足 歩 行 訓 練 の 問 題 点 ,義 足 処 方 の 原 則 ,
周 径 変 化 へ の 対 処 法 な ど に つ い て 解 説 す る 。筆 者 ら が 経
験 し た 透 析 患 者 の 下 肢 切 断 後 リハビリテーション 2 例 を 通 し て ,
特徴的な病態やその背景にある問題に留意して述べる。
技報安川電
機
:VOL.64,NO
.2 PAGE.93
‐ 98 2000
運 動 療 法 装 置 TEM(TherapeuticExerciseMachine)は ,リハ
ビリテーションの 現 場 に お い て 脳 卒 中 患 者 の 歩 行 機 能 回 復 を 目
指 し た 下 肢 の 運 動 療 法 訓 練 を 実 施 す る リハビリ装 置 で あ る 。
TEM は ,PT(理 学 療 法 士 ,PhysicalTherapist)の 訓 練 技 術
を 移 植 し , 繰 り 返 し 再 現 で き る こ と ,機 能 評 価 の た め の 計
測 評 価 機 能 を 備 え て い る こ と が 大 き な 特 長 で あ る 。本 稿
で は ,TEM の 仕 様 ,特 長 に つ い て 紹 介 す る と と も に ,突 然
の 負 荷 発 生 に 対 す る 柔 軟 動 作 の 効 果 と連続的他動運動
(ContinuousPassiveRangeofMotion,CPROM) 訓 練 の け
い性患者への効果を検証した臨床実験について述べてい
る。
6
運動療法装置
TEM による
脳卒中患者の
けい性 緩 和 効
果 について
概要
短 下 肢 装 具 (AFO)は 歩 行 再 建 を め ざ す 下 肢 障 害 者 に と っ
て 重 要 な ツールで あ る 。本 報 で は ,粘 性 可 変 の 油 圧 シリンダを 継
ぎ 手 よ り 後 部 に 配 置 し た AFO を 試 作 し た 。こ の AFO は
背屈 5 度から底背屈 0 度に至る区間の弾性特性が可変で
あ り , 既 存 AFO の 同 じ 範 囲 の 底 屈 方 向 へ の 剛 性
(0.2~2.2Nm/deg)を カバーす る こ と を 確 認 し た 。ま た ,フットスイ
ッチ信 号 に よ る 粘 性 切 替 を 行 う 仕 組 み に も と づ き ,片 麻 ひ
者 1 名 に よ る 歩 行 実 験 を 行 い ,意 図 し た と こ ろ の 機 能 で
ある遊脚期の底屈防止と立脚初期の底屈許容を認めた。
本 研 究 で は ,高 齢 者 や 下 肢 不 自 由 者 を 対 象 と し た 下 肢 リハ
ビリ支 援 システムの 開 発 を 目 標 と し た 。訓 練 者 の 下 肢 の 負 担 を
軽 減 す る よ う に ,下 肢 へ の 負 荷 を 調 節 す る 身 体 支 持 機 構
に つ い て 検 討 し た 。そ の 結 果 ,身 体 支 持 機 構 か ら 吊 り 下 げ
た ワイヤで 訓 練 者 の 身 体 を 支 持 し ,カメラで マーカの 位 置 を 検 出 し
て 訓 練 者 の 動 き に 追 従 す る よ う 支 持 機 構 を 制 御 す る システム
を 設 計 し た 。下 肢 へ 与 え る 負 荷 を 調 節 す る に は ,床 反 力 計
な ど を も と に 支 持 機 構 を 制 御 し た 。支 持 機 構 部 に パラレルリン
ク機 構 を 用 い た 。
脳 卒 中 の 急 性 期 後 期 か ら 回 復 期 に お い て ,理 学 療 法 室 に
お い て 関 節 可 動 域 (ROM) 訓 練 や 神 経 筋 再 教 育 訓 練 を 実
施 し ,理 学 療 法 士 を 支 援 す る 下 肢 用 運 動 療 法 装 置 を 開 発
し た 。装 置 は ,片 下 肢 の 大 腿 と 下 腿 を そ れ ぞ れ 把 持 ,駆 動
す る 二 つ の ロボットアーム で 構 成 さ れ ,負 荷 ・ 角 度 セ ン サ を 搭 載 し
た 。装 置 の 特 長 は ,ROM が 広 く ,膝 伸 展 位 で の 股 屈 伸 に よ
り 二 関 節 筋 の ストレッチが で き る ,装 置 に 装 着 し た 患 者 の 下 肢
を 理 学 療 法 士 が 動 か し , 手 技 の 入 力 が 簡 単 に で き る ,な ど
で あ る 。 こ の 装 置 で 患 者 を 訓 練 し た 結 果 は リ アル タ イム で 計 測
さ れ る の で ,手 技 の 評 価 ,改 善 に 利 用 で き る 。
短 下 肢 装 具 (AFO)は 片 麻 ひ 者 な ど 歩 行 障 害 者 に と っ て 重
要 な ツール で あ る 。AFO の 複 素 剛 性 が 立 脚 期 の 足 関 節 運 動
に 与 え る 影 響 は 大 き い が ,従 来 は 主 と し て 弾 性 の み に よ
る 剛 性 に 注 目 さ れ て き た 。本 研 究 で は ,油 圧 シ リンダ を 用 い ,
粘 性 を 二 段 階 に 切 り 替 え る AFO に つ い て 検 討 し た 。片 麻
ひ 者 の 歩 行 解 析 を 基 に ,し ょ う 接 地 ・し ょ う 離 地 ・足 尖 離
地 の 歩 行 イベントか ら ,スイッチングの タイミングを 決 定 し ,こ の AFO
の力学的特性が遊脚期の足尖の接地など危険な状態につ
な が ら な い こ と ,立 脚 初 期 の スムースな フットフラットを 導 く 可 能 性
を 確 認 し た 。(著 者 抄 録 )
参考 2-28
7
脳卒中片麻ひ
患 者 に対 する
長下肢装具処
方 の実 態
1988 年 か ら
1998 年 までの
11 年 間
PO アカデミージ
ャーナル
:VOL.7,NO.
4 PAGE.325
‐ 329 2000
8
歩行機能回復
訓 練 装 置 の研
究訓練過程の
自 動 化のため
の一 考 察
ヒュ ーマ ンイ ンタ フェ ー
ス学 会 研 究 報
告
集
:VOL.1,NO.
5 PAGE.43
‐ 46 1999
9
臨 床 サービス班
1999 年 の 活
動状況
リハビリテーション
工 学 研 究
:NO.20
PAGE.26 ‐
29 1999
10
ヒューマンフレンドリ
ーロホ ゙ッ ト 運 動 療
法 装 置 「TEM」
ロ ホ ゙ ッ ト
:NO.131
PAGE.33 ‐
38 1999
11
下肢可動域訓
練 ロボットの開
発 柔 らかさと剛
さを兼 ね備 えた
ストレッチ装 置
医用電子と
生体工学
:VOL.37,NO
.3
PAGE.293‐
300 1999
12
脊 損 患 者 の自
立保持,歩行
補 助 のための
長下肢装具の
改 良 と臨 床 応
用脊損者用下
肢 装 具 の リハ 訓
練効 果に関す
る計 測 と評 価
(第 2 報 )評 価
指 標 の確 立
EIREC 研 究
報告集
脳 卒 中 発 症 か ら 2 週 間 以 内 に 入 院 リハを 開 始 し ,金 属 製 長
下 肢 装 具 (LLB)を 処 方 し た 57 例 を 対 象 と し た 。両 側 金 属
支 柱 付 短 下 肢 装 具 (SLB)に 移 行 で き た 症 例 (SLB 移 行 群 )
と 出 来 な か っ た 症 例 (SLB 非 移 行 群 )に 分 類 し て 各 種 項 目
に つ い て 調 査 分 析 し た 。 SLB 非 移 行 群 で は , 深 部 感 覚 障
害 ,半 側 空 間 無 視 ,座 位 保 持 不 能 を 高 率 に 認 め ,装 具 処 方 時
の 有 力 な 判 断 材 料 に 成 り う る と 考 え た 。LLB を 用 い た リハ
プ ロク ゙ ラム を 積 極 的 に 行 う こ と に よ っ て リ ハ 期 間 全 体 が 短 縮
し た こ と で ,LLB の 訓 練 装 具 と し て の 有 用 性 が 示 唆 さ れ
た。
歩行機能回復訓練装置は加齢に伴う歩行異常の予防と治
療 を 目 的 と す る 。本 装 置 で は 歩 行 訓 練 を 自 動 化 す る た め
に ,1)足 底 傾 斜 に よ る 歩 行 の 矯 正 ,2)IC カードを 用 い た 訓 練
プログラムの 個 別 仕 様 化 を 提 案 し た 。1)は 訓 練 者 に 適 し た 傾
斜 角 度 を 判 定 す る 指 標 を 見 出 し ,歩 行 訓 練 の 効 率 化 及 び
機 能 回 復 を 目 指 す 。ま た ,2)で は 正 常 な 床 反 力 を 出 力 す る
足 底 傾 斜 か ら 段 階 的 に 角 度 を 減 少 さ せ ,正 常 な 床 反 力 を
体 得 す る 方 法 (訓 練 の 段 階 化 )を 個 人 差 に 対 応 さ せ る た め
に ,個 別 情 報 を IC カードに 記 録 す る 。具 体 的 に は ,床 反 力 と
身 体 重 心 位 置 を 測 定 し て 歩 行 へ の 影 響 を 調 べ た 。さ ら に ,
床 反 力 データ を ニューラルネットワークで 学 習 し ,訓 練 の 段 階 化 を 自 動
化する方法を示した。
リハビリテーション工 学 科 臨 床 サービス班 の 1999 年 度 の 義 肢 お よ び
装 具 の 製 作 状 況 を 報 告 し た 。ま た ,こ れ ら 直 接 の 臨 床 サービ
スと は 別 に 行 っ て い る 補 装 具 製 作 技 術 の 向 上 に 必 要 な 調
査 ・臨 床 研 究 や 発 表 ,ワークショップと し て の 機 能 を 生 か し た 義
肢 装 具 士 養 成 校 学 生 や 海 外 か ら の 実 習 受 け 入 れ ,県 内 の
義肢装具士などを対象とした講習会の開催などについて
の 概 要 を 示 し た 。義 肢 製 作 状 況 は 受 け 付 け 人 数 117 人 で ,
新 規 製 作 お よ び 修 理 製 作 件 数 は 合 計 138 件 数 (上 肢 24%,
下 肢 76%)で あ っ た 。装 具 の 製 作 件 数 は こ こ 2,3 年 40 件 前
後 で 推 移 し て お り ,そ の ほ と ん ど が 下 肢 装 具 で あ る 。
下 肢 マヒの 高 齢 者 障 害 者 の ,膝 ・股 関 節 の 屈 曲 進 展 運 動 機 能
回 復 の た め の リハビリ装 置 TEM を 開 発 し た 。双 腕 アーム,スライド
機 構 付 き リクライニンク ゙ベ ッドお よ び コ ントロー ラ よ り 成 る 。 双 腕 リン ク
機 構 は 大 腿 部 と 下 腿 部 を 独 立 に 動 か せ る アームに つ な が り ,
矢 状 平 面 内 で 並 進 ・回 転 の 3 自 由 度 運 動 が 可 能 で あ る 。力
センサを 用 い た インピーダンス制 御 を 応 用 し ,動 作 範 囲 が フレキシブル
で 広 く ,医 師 や 理 学 療 法 士 が 装 着 し た 下 肢 を 直 接 手 で 治
療 す る 事 に よ っ て 装 置 に 直 接 ティーチング出 来 る 。
1995 年 に 永 田 ら は 多 自 由 度 で 運 動 軌 道 を 入 力 し 再 現 で
き る モータ制 御 型 股 /膝 関 節 可 動 域 訓 練 装 置 (TEM)を 考 案 し
た 。こ こ で は ,TEM に 療 法 士 の 技 術 を 移 植 す る た め に ストレ
ッチ訓 練 を モデル 化 し ,インピーダンス制 御 に よ る 柔 ら か さ と 同 時
に 剛 さ を 実 現 す る こ と を 検 討 し た 。インピーダンス制 御 に よ る
柔 ら か さ を 保 持 し な が ら 剛 さ ,す な わ ち 関 節 ストレッチを 加 え
る た め に 引 戻 し 定 数 を 導 入 し ,積 分 項 が 入 っ た 制 御 方 式
を 考 案 し た 。さ ら に ,考 案 し た 機 構 を TEM に 組 込 み ,計 算
上の応答と実際の負荷に対する機器の応答を比較した。
ま た ,軽 度 の 筋 短 縮 を 有 す る 対 象 者 の 下 肢 に 対 し て TEM
に よ る 訓 練 を 行 い ,今 回 考 案 し た 新 し い 制 御 方 式 に よ る
訓練の有効性を確認した。
対 麻 ひ 者 の 歩 行 を 支 援 す る 下 肢 装 具 と し て
Walkabout,ARGO な ど が リハビリテーション 訓 練 に 使 用 さ れ る
よ う に な っ た の で , 訓 練 経 過 を 簡 単 に 計 測 評 価 し て ,訓 練
に 反 映 さ せ る 必 要 性 を 生 じ て き た 。そ の た め に 体 装 着 型 セ
ンサに よ る 簡 易 計 測 評 価 システムを 構 築 し た 。 こ れ に よ っ て ,訓
練効果を定量できることを示した。
参考 2-29
13
対 麻 ひ用 歩 行
補 助 装 具 の簡
易歩行機能計
測 評 価 システム
人間工学
:VOL.35,
特別号
2 PAGE.274
‐ 275
1999
被 験 者 4 名 を 対 象 に , 下 肢 装 具 と し て Walkabout と
ARGO を 用 い て ,歩 行 訓 練 を 行 っ た 。従 来 の 運 動 分 析 システム
を 用 い た 訓 練 効 果 の 計 測 評 価 結 果 か ら ,心 拍 数 ,歩 幅 ,杖 と
脚 の 接 地 / 離 地 の 時 間 因 子 ,下 肢 や 体 幹 の 傾 斜 角 度 等 が 訓
練 効 果 の 評 価 に 有 用 で あ る こ と が 示 さ れ た 。こ の 結 果 に
基 づ き ,体 装 着 型 センサに よ る 簡 易 型 計 測 評 価 システムを 試 作 し
た 。 こ の システム は , 心 拍 センサ , 杖 や 足 底 の 接 地 / 離 地 センサ ,体 幹 ・
下 肢 の 加 速 度 計 な ど の 出 力 を パームトップ 型 の パソコンに 取 り
こ み ,データ収 録 ・処 理 を 行 う も の で あ る 。
14
フルイドパワーサー
ボの新 たな展
開 フルイドパワーサ
ーボの医 療 福
祉 分 野 への応
用
フル イト ゙ハ ゚ワ ーサ ー
ボの 新 た な
展 開 フルイド
パワーサーボの
医療福祉分
野への応用
:VOL.30,NO
.3
PAGE.236‐
241 1999
患 者 介 護 ・ 高 齢 者 介 護 に 使 用 す る 流 体 圧 サーボを 用 い た 動
力 義 足 ・移 乗 機 器 ・リハビリ機 器 等 の 医 療 福 祉 介 護 機 器 の 現
状 と 開 発 に つ い て 解 説 し た 。福 祉 分 野 の ロボットは 室 内 空 間
で 柔 ら か に 動 く 人 間 親 和 性 が 要 求 さ れ る 。動 力 義 足 は 膝
継 手 を 油 圧 ま た は 空 気 圧 で 制 御 し ,両 下 肢 麻 ひ 患 者 の 歩
行 訓 練 に 使 用 す る 動 力 装 具 は 患 者 の 関 節 の 動 き を 油 圧 サー
ボアクチュエータが 補 助 す る 。 空 気 圧 アーム で 患 者 を 吊 下 げ て 歩 行
訓練を行う機器を開発中である。
15
脳卒中片麻ひ
者のための短
下肢装具関節
機 能 の基 本 設
計歩行時力学
的 特 性からの
検討
バ イオ エ ンシ ゙ニ ア
リング学 術 講
演会講演論
文集
:VOL.11th
PAGE.356‐
357 1999
16
対 麻 ひの装 具
による歩 行 機
能再建
17
胸 ・腰 髄 損 傷
患 者 の装 具 に
よる歩 行 再 建
18
19
変形性膝関節
症 のリハビリテーシ
ョン医 療 技 術 開
発 と下 肢 装 具
による移 動 能
力確 保に関す
る研 究 (厚 生 省
S)
労災病 院で歩
行 訓 練 と処 方
決 定 のために
活 用 される試
験装着用装具
その 2 試 験 装
着用短下肢装
具 の試 作
日 本 パラプレシ
゙ア医 学 会 雑
誌
:VOL.12,NO
.1 PAGE.30
‐ 31 1999
日 本 パラプレシ
゙ア医 学 会 雑
誌
:VOL.12,NO
.1 PAGE.16
‐ 19 1999
短下肢装具を臨床上の必要条件を満たしながら力学的に
も 合 理 的 に 設 計 す る こ と は 重 要 で あ る 。本 研 究 で は ,周 期
運動である歩行の各位相に合わせて必要となる短下肢装
具 関 節 機 能 を 運 動 学 的 ・運 動 力 学 的 に 考 察 し た 。運 動 力 学
的 に は 矢 状 面 内 足 関 節 モーメントに 着 目 し ,健 常 者 の 緩 速 歩 行
時 と 片 麻 ひ 者 の 裸 足 歩 行 時 の 差 異 か ら ,必 要 と な る 補 助 モ
ーメントを 一 例 に つ い て 求 め た 。ま た ,こ れ ら 機 能 を 具 現 化 す
る た め の 全 体 形 に つ い て ,当 面 の 開 発 方 針 を 靴 一 体 型 装
具とすることに言及した。
九州労災病院での脊髄損傷対麻ひの装具歩行について,
対 麻 ひ の 下 肢 装 具 の 歴 史 的 考 察 を 中 心 の 述 べ た 。次 に ,対
麻 ひ の 歩 行 訓 練 に つ い て ,そ の 意 義 を 解 説 す る と 共 に ,対
麻 ひ 者 と 処 方 側 に 対 す る ア ン ケー ト 調 査 を 行 っ た 結 果 を 紹 介
し た 。 最 後 に , 歩 行 の 実 用 性 に つ い て ,レベル 毎 に 疲 労 ,移 動
(目 的 重 視 ),歩 行 (パターン重 視 )の 観 点 か ら 概 説 し た 。
対麻ひ歩行再建の概念および装具的解決とその問題点に
つ い て 解 説 し た 後 ,著 者 ら が 行 っ て き た アプローチを 紹 介 す
る と 共 に 対 麻 ひ 者 の 歩 行 再 建 法 と し て ,か さ ば り 対 策 と
し て の 内 側 系 と そ の 改 良 , 受 動 的 対 策 と し て の ハ イ ブリット ゙
補 助 的 システムと 動 力 化 の 2 つ つ い て 述 べ た 。さ ら に ,装 具 の
チェックポイントを 簡 単 に 記 述 し ,今 後 の 展 望 に つ い て 論 じ た 。
長寿科学総
合研究
:VOL.1997(
6)
PAGE.186‐
189 1998
動的運動時における変形性膝関節の不安定性を検証する
た め ,トレッドミル上 で 歩 行 速 度 を 変 化 さ せ ,屈 伸 ,内 外 反 ,回 旋
の 各 角 度 を 計 測 し ,さ ら に 足 関 節 筋 活 動 を 検 討 し た 。歩 行
速 度 の 増 加 に 伴 い 1 歩 行 周 期 に 要 す る 時 間 は 短 縮 し ,筋
活 動 は 増 加 し , 内 反 角 の 増 加 が み ら れ ,回 旋 角 度 も 増 加 傾
向 を 示 し た 。足 底 板 装 着 歩 行 で は 臨 床 上 の 改 善 は 得 ら れ
て も , 膝 関 節 可 動 域 は 回 旋 以 外 は 増 加 し ,不 安 定 防 止 は 得
られなかった。
EIREC 研 究
報告集
:VOL.1997
PAGE.17 ‐
22 1998
下 肢 装 具 の 柔 軟 性 特 性 の 研 究 及 び ア ン ケー ト 調 査 の 結 果 に 基
づ い て ,評 価 の た め の 試 験 適 合 装 具 の 有 効 性 を 処 方 使 用
の 推 定 で 示 し た 。第 一 段 階 で ,試 験 の た め の シューホーン型 プラス
チック短 下 肢 装 具 の 試 作 を 試 み た 。第 二 の 試 作 は 柔 軟 性 ,脱
着 ,及 び 重 量 に 焦 点 を 絞 っ た 。一 次 試 作 品 の 機 構 は が た つ
き が あ り ,強 度 に 不 安 が あ っ た 。二 次 試 作 品 で は 重 量 軽 減
は 困 難 で ,耐 久 強 度 で は 要 素 間 の 結 合 方 法 に 問 題 が あ っ
た 。脱 着 操 作 で は ,ナット留 と し た た め 操 作 性 が 劣 っ た 。
参考 2-30
20
転 倒 しやすい
患 者 のリハビリテ
ーション障 害 者 の
転 倒 骨 折 と防
止策
J
Clin
Rehabil
:VOL.7,NO.
3 PAGE.248
‐ 253 1998
21
短下肢装具適
合 評 価のため
の簡 便 な歩 行
分 析 手 法 の検
討足関節運動
に着 目 して
バ イオ エ ンシ ゙ニ ア
リング学 術 講
演会講演論
文集
:VOL.10th
PAGE.141‐
142 1998
22
移乗介助支援
シス テムの ための
水素吸蔵合金
アクチュエータの開
発
バ イオ エ ンシ ゙ニ ア
リング学 術 講
演会講演論
文集
:VOL.10th
PAGE.56 ‐
57 1998
奈 良 県 心 身 障 害 者 リハビリテーションセンターの 転 倒 と 防 止 策 に つ い
て 述 べ た 。高 齢 者 ,障 害 者 の 転 倒 に よ る 骨 折 頻 度 は 転 倒 に
対 し て 3~5% で , 大 腿 骨 け い 部 ,椎 体 骨 な ど に 多 い 。 自 室 ,
ベ ッ ト ゙ 周 辺 , 排 せ つ 行 動 に 関 連 し た 場 に 多 く 見 ら れ , 冬 季
に 多 い 。 一 般 的 な 対 策 は ,バ リアフリー の 考 え に 基 づ き 状 況 に
応 じ た ADL の 方 法 設 定 が 必 要 で あ る 。下 肢 装 具 は ,適 正
な 範 囲 で 軽 量 な も の を 使 用 し ,積 極 的 に 外 出 を 心 掛 け る
と良い。
現在一般に行われている歩行分析手法により運動学的・
運 動 力 学 的 定 量 テ ゙ ー タ が 得 ら れ る が ,臨 床 に お い て 疾 患 の
ある被験者にとって更衣や計測に要する時間などが負担
に な る こ と が 普 及 の 妨 げ の 一 因 と 考 え ら れ る 。本 研 究 で
は , 予 め マ ーカ を 装 備 し た シュ ーホン形 短 下 肢 装 具 を 用 い 足 関 節
運 動 に 着 目 し た 簡 便 な 歩 行 分 析 手 法 を 提 案 す る 。健 常 者
に よ る 計 測 実 験 か ら ,装 具 装 着 時 の 適 合 状 態 の 指 標 と な
る 足 関 節 角 度 な ど 定 量 的 データが 短 時 間 で 得 ら れ ,脳 卒 中
片 麻 ひ 者 等 の た め の 装 具 の 処 方 ・製 作 支 援 に つ な が る 可
能性が示された。
加齢や下肢の障害により自力での立ち上がり動作が困難
な 高 齢 者 へ の 移 乗 介 助 支 援 システム の た め の ニューアクチュエータを 開
発 し た 。 本 アクチュエ ータは , 水 素 吸 蔵 合 金 を 力 源 に 利 用 し た も
の で あ り ,高 出 力 重 量 比 ・コンプライアンス可 変 性 ・静 粛 性 と い っ
た 一 般 的 な アクチュエータに は な い 福 祉 介 護 機 器 に 適 し た 特 性
を 具 備 し て い る 。他 方 ,リハビリ運 動 学 的 な 視 点 か ら の 基 礎
実 験 を 行 い ,移 乗 介 助 システムに 関 す る 基 本 的 な 設 計 指 針 を
得 た 。以 上 の 成 果 に 基 づ き ,在 宅 で の 使 用 を 考 慮 し た 移 乗
介 助 支 援 システムを 試 作 し た 。
( 3 ) 米 国 の 公 的 機 関 支 援 の上 下 肢 機 能 回 復 研 究 プ ロ ジ ェ クトの状況
リハビリテーションは、第二次世界大戦で負傷した米国兵士の身体機能回復・
補助のため始まったという歴史がある。
米国の医療研究はNIH(米健康研究所)がリードしているが、リハビリテー
ションの研究は行っていない。リハビリテーションの技術・機器開発を実施また
は 支 援 す る 公 的 機 関 と し て 、米 国 退 役 軍 人 局( Veterans Affairs Department)が
著名である。
下記VAのホームページより、上下肢の機能回復研究プロジェクトの実施状況
について調査した。
参考 2-31
図 12 米 国 の 公 的 機 関 支 援 の 上 下 肢 機 能 回 復 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト の 状 況
(http://www.vard.org/)
ホ ー ム ペ ー ジ 下 部 の 、 「VA Research & Development」よ り リ ン ク を た ど っ て 、
本プロジェクトリハビリテーション支援システムと類似または関連すると思われ
る代表的研究開発事例を抜粋して、表13に示す。
表 1 3 米 国 V A (退 役 軍 人 局 )代 表 的 研 究 開 発 事 例
① 歩 行 訓 練 の 一 貫 と し て 足 踏 み を 行 う 時 に 、部 分 的 に 体 を 支 え る 方 法 の 安 全 性 と 効 果
(Differential Pressure Walking Assistance)
②四肢麻痺患者の腕、手の機能を回復するための埋め込み式機能神経刺激システム
( FNS) の 実 装 と そ の 評 価
(Functional Neuromuscular Systems for Upper Extremity Control)
③ 高 齢 者 が 踏 み 板 の 上 を 歩 行 す る 時 に 、装 着 し た ヘ ッ ド・デ ィ ス プ レ ー に 様 々 な 障 害
物を映し出して、それへの対応を改善する方法の開発
(Improving Stepping-over Responses in the Elderly using Simulated Objects)
④ 脳 卒 中 患 者 の 歩 行 回 復 の た め 、回 復 の 程 度 に 従 っ て 荷 重 を 変 え る 訓 練 の 効 果 の 実 証
(Graded Weight-bearing Exercise for Improved Ambulation after Stroke)
⑤慢性の脳卒中患者の上肢運動回復に、ロボットを使った訓練の評価と効果
(Mechanically Assisted Upper Limb Movement for Assessment and Therapy)
本 プ ロ ジ ェ ク ト に 関 連 す る 分 野 に お い て 、米 国( VA)で は 、高 齢 者 、脳 卒 中 患
参考 2-32
者 を 対 象 に し て 運 動 機 能 の 回 復・歩 行 訓 練 の 研 究 が 進 め ら れ て い る こ と が 分 か る 。
VAの上下肢機能回復研究プロジェクトの要約を、表14に示す。
表 1 4 米 国 V A (退 役 軍 人 局 )の 上 下 肢 機 能 回 復 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト の 要 約
1 .訓 練 の 一 環 と し て 足 踏 み を 行 う 時 に 、部 分 的 に 身 体 に 圧 力 を か け る 方 法 の 安 全 性
と そ の 効 果 ( Differential Pressure Walking Assistance)
上 半 身 と 下 半 身 の か け る 圧 力 を 変 え て 身 体 の 浮 力 を つ け 、あ た か も 水 中 に あ る よ う
な 状 態 に す る 。し か も 、浮 力 を 体 重 の 0~100%ま で 変 え ら れ る の で 、水 中 歩 行 で は 得
られない状況が作れる。試作された歩行訓練装置は、腰の周りでシールされた袋で、
その中にトレッドミル(注:足踏み車かベルト式か否かは不明)が入っている。
2 . 脳 卒 中 者 の 運 動 学 習 を 促 進 す る た め の 装 置 の 開 発 ( EMG-controlled Stimulator
for Stroke Rehabilitation)
開 発 予 定 の 装 置 は 、麻 痺 し た 筋 肉 の 微 弱 な 筋 電 流 を 検 知 し て 、そ の 筋 肉 に 刺 激 電 流
を 送 る こ と に よ っ て 強 い 収 縮 を 起 こ さ せ よ う と す る も の 。検 知・刺 激 用 の 電 極 と 、シ
グナルの処理と刺激電流を発生させる回路から成っている。
3 .四 肢 麻 痺 患 者 の 腕 、手 の 機 能 を 回 復 す る た め の 埋 め 込 み 式 機 能 神 経 筋 刺 激 シ ス テ
ム ( FNS) の 実 装 と そ の 評 価 ( Functional Neuromuscular Systems for Upper
Extremity Control)
第 一 世 代 の FNS と し て は 、 1997 年 に FDA の 承 認 を 得 た 8 チ ャ ネ ル の 埋 め 込 み 式
刺 激 装 置 が あ る 。 こ の 研 究 で は 、 10 チ ャ ネ ル の 埋 め 込 み 式 刺 激 装 置 を 腕 首 に 装 着 し
てテストを行う。
4 .FNS を 用 い て 、厳 し い 脳 卒 中 患 者 の 歩 行 を 回 復 す る 効 果 の 評 価( Restoration of
Gait in Acute Stroke Patients using FNS)
埋 め 込 ん だ FNS に よ る 歩 行 回 復 の 効 果 を 、通 常 の 治 療 や 表 面 に 付 け た FNS の 場 合
と比較する。
5 .高 齢 者 が ト レ ッ ド ミ ル の 上 を 歩 行 す る 時 に 、装 着 し た ヘ ッ ド・デ ィ ス プ レ ー に 様 々
な 障 害 物 を 映 し 出 し て 、 そ れ へ の 応 答 を 改 善 す る 方 法 の 開 発 ( Improving
Stepping-over responses in the Elderly using Simulated Objects)
高 齢 者 が ト レ ッ ド ミ ル の 上 を 歩 行 す る 時 に 、装 着 し た ヘ ッ ド・デ ィ ス プ レ ー に 様 々
な 障 害 物 を 映 し 出 す 。足 の 位 置 を コ ン ピ ュ ー タ で 監 視 し 、バ ー チ ャ ル 障 害 と の 衝 突 を
検 知 し 、振 動 を 足 に フ ィ ー ド バ ッ ク す る 。こ の 装 置 に よ る 訓 練 は 安 全 で 、楽 し い も の
であろうと期待されている。
6.脳卒中者の歩行回復の程度に従って、荷重を変えて行う訓練の効果の実証
( Graded Weight-bearing Exercise for Improved Ambulation after Stroke)
患 者 の 回 復 の レ ベ ル に 従 っ て 荷 重 を 変 え て 下 肢 の 運 動 を 動 的 に 変 え て ゆ く 訓 練 。患
者 は 、自 転 車 の サ ド ル に 腰 掛 け る 代 わ り に 、自 由 に 傾 き が 変 え ら れ る 背 板 に 乗 っ て ペ
ダルを漕ぐ。幾人かの患者に実施して、この効果を統計的に調べる。
参考 2-33
7.慢性の脳卒中患者の上肢運動回復に、ロボットを使った訓練の効果の評価
( Mechanically Assisted Upper Limb Movement for Assessment and
Therapy)
ある患者グループに、ロボットを使って3種の腕の運動(ロボットが動かす運動、
ロ ボ ッ ト が 腕 の 運 動 を 邪 魔 す る 、良 い 方 の 腕 の 運 動 を ま ね て ロ ボ ッ ト が 悪 い 方 の 腕 を
動かす)によるリハビリを行い、これを通常の治療を行ったグループと比較する。
8 . 下 肢 麻 痺 患 者 の 機 能 回 復 ( Behavioral and Functional Problems in Dementia
Patients with Sensor Loss)
患 者 の 立 ち 上 が る 機 能 の 回 復 に 、機 能 神 経 刺 激 シ ス テ ム( FNS)と 部 分 的 に 体 重 を
支 持 す る 免 荷 シ ス テ ム ( WRS)を 組 み 合 わ せ て 訓 練 す る 方 法 の 開 発 。WRS は 、シ ー
ソ ー の よ う な 構 造 を し 、釣 り 合 い の 重 り が 付 い て い る 。こ の 重 り は 、患 者 の 下 肢 の 力
レベルに従って調節出来るようになっている。
以上
参考 2-34
参考資料 3
周辺動向調査(説明資料)
身体機能リハビリ支援システム(中間評価)
周辺調査
㈱旭リサーチセンター
2002年 1月15日
1)身体機能リハビリ支援システムに係る疾病の状況
2)全国のリハビリテーション総合承認施設の状況
(理学療法 I )
3)リハビリ指導者(理学療法士)の状況
4)本分野における類似機器(市販中、開発中)の状況
5)特許出願数・論文数等の状況
1
1)身体機能リハビリ支援システムに
係る疾病等の状況
①高齢者の人口増加の状況
②高齢者患者数の増加
2
参考3-1
① 高齢者の人口増加の状況
(出所)国立社会保障・人口問題研究所
3
②高齢者(65歳以上)の患者数(外来+入院)の増加
4000
40000
3531
高齢者患者数
3000
2720
2961
30000
21877
20000
14895
上肢・下肢障害者
)
1054千人
1000
高齢者人口
0
千
人
)
千
人
高
齢
者
人
口
(
18261
2000
(
高
齢
者
患
者
数
3545
10000
0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
年
(出所)厚生労働省「患者調査」、
「身体障害者実態調査」他
参考3-2
4
2) 全国のリハビリテーション総合承認施設
(理学療法 I )
施設数
500
増加
400
300
200
100
0
95
96
97
98
2000 年
99
(出所) 厚生労働省統計
・ 施設の増加がみてとれる
5
3)リハビリ指導者(理学療法士)の状況
①理学療法士数の推移
②理学療法士の需給バランスの状況と将来予測
③理学療法士1人当たりの患者数の状況
6
参考3-3
① -1 理学療法士数の推移
理学療法士国家試験合格者累計(人)
人
35000
30000
増加
25000
20000
15000
10000
5000
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001 年
7
① -2 作業療法士数の推移
作業療法士国家試験合格者累計(人)
人
20000
18000
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
増加
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001 年
8
参考3-4
② -1 理学療法士の需給バランスの状況と将来予測
理学業法士の今後の需給について、厚生労働省医療関係者審議会は次のよう
に推計(平成12年11月)している。
理学療法士
1999年
2004年
需 要
23,800
(1991年時推計)
46,000
(1999年末推計)
供 給
23,896
(1999年末現在)
37,200
(1999年末推計)
9
② -2 作業療法士の需給バランスの状況と将来予測
作業療法士の今後の需給について、厚生労働省医療関係者審議会は次のよう
に推計(平成12年11月)している。
作業療法士
1999年
2004年
需 要
15,800
(1991年時推計)
33,000
(1999年末推計)
供 給
12,627
(1999年末現在)
24,200
(1999年末推計)
10
参考3-5
④ 理学療法士1日当たりの患者総数
0人
1.18%
未回答
101 人以上
9.75%
1.44%
51-100人
2.26%
46- 50人
41- 45人 0.90%
0.30%
36- 40人
2.68%
31- 35人
2.21%
1-5 人
2.59% 6-1 0人
10.94%
8時間労働の場合
患者 1人当たり
20~30分
11- 15人
17.24%
患者増加に伴い時間が減少
補助機器開発が必要
26- 30人
10.19%
21-25人
14.26%
16-20人
24.06%
(出所) 理学療法士協会 「理学療法士実態調査(n=10,886)」(2000年)
11
4)本分野における類似機器
(市販中・開発中)の状況
①下肢機能回復支援システム
②歩行訓練装置
③上肢動作訓練支援システム
12
参考3-6
①下肢機能回復支援システムの類似機器状況
名称
会社等
特徴・セールスポイント
膝用
パフォーマ
Smith+Nephew
Kinetec社(仏)
(輸入元:
酒井医療)
ハイドロマス
キュレーター
膝関節専用
OG技研
下肢リハビリ
システム
機械技術研究所
福岡県工技術セン
ター
筑波技術短期大学
高齢者用下肢機能リハビリ支援システム。
安全、低コストで自宅用。
身体機能
リハビリ支援
システム
産業技術総合研究
所九州センター
高齢者、身体不自由者を対象に、下肢に定負荷
を与えつつ、下肢の機能低下予防、維持、回復
訓練を行える訓練装置。
下肢用運動
療法装置
TEM
安川電機、慶大、
慶大月ヶ瀬リハ
多自由度機構や、インピーダンス制御による柔
軟な動作を特徴。実用的な運動療法を実施でき
る。運動のモードとして、他動的な関節可動域
訓練のみならず、他に自動介助運動を選択でき
る。
運動軸を膝及び股関節でとらえたタイプ。
運動角度、速度等が設定可能。
座位姿勢で使用できる下肢屈伸訓練器。
「自力モード」及び高齢者向け「おまかせモード」
が設定可能。
販売状況
価格
2001年
約20台販売
110
万円
12年前より導入。
年間20台前後販売
。
298
万円
開発をスタート
(2001年)
-
開発中
(1999年)
-
開発段階機器
(1999年)
-
13
② 歩行訓練装置の類似装置状況
名称
会社名
等
特徴・セールスポイント
販売状況等
価格
歩行能力
開発装置
セノー
株式会
社
歩行困難者の下肢を他動的に動かし、神経-筋活動を賦活させ、負荷調節により歩行
能力を回復させる装置。下肢を動かすステップ部は、左右個別に歩行速度、軌道、歩幅
を自由に設定出来る。体幹を支える免荷部は、障害に応じて免荷重を調節し、訓練中の
体幹バランスを安定させる。モニターにより血圧、心拍数などを画像データでフィードバッ
クし、被訓練者の動機付けを図っている。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
平成11~12
年に開発。
貸出あるが、
販売に至って
いない。
1000
万円
(当初
2000
万円)
歩行訓練
システム
PW-2
日立
製作所
機械
研究所
高齢者用高機能歩行訓練機。左右のベルトが独立して動き、片麻痺者にも使用可。体
重の一部を訓練器が支えるため足の負担が小さく、転倒防止。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。また体重
の支え方は、自力によるサポート。
平成6年頃よ
り13台販売。
480
万円
歩行訓練
オートリフト
AID-1-M
ジャパン・
イーエム
水の浮力利用と同じように、空気圧制御の吊上力(0~40kg)で負荷をコントロールしな
がら訓練。急な負荷の変動にもスムーズに追従。転倒防止機構。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
今まで10年で、
60台以上販
売。
800
万円
天井
つり下げ型
歩行支援
システム
「フローラ」
トーキン
トーキンは熊谷組などと共同で天井つり下げ型の歩行支援システム「フローラ」を開発。
独立行政法人、産業安全研究所の特許を実用化したもの。トーキンが磁性体の技術を
生かして磁石式のつり下げ歩行支援装置を生産し、熊谷組が天井に設置する鋼鉄板を
施工、使用者の体に装着する部分は、ロボトピアが開発。従来の歩行支援システムは、
体を支える部品をレールなどでつり下げる方式で、新システムは、天井に設置した鋼鉄
板に強力な永久磁石と車輪を組み合わせた歩行支援装置を張りつける。レールが不要
になるため、鋼鉄板の設置した範囲内を自由に動ける。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
2001年実証
実験中。
百万
~
数百
万円
運動療法
システム
StrengthErgo
(ストレングス
エルゴ)
三菱
電機
下半身にマヒのある患者向け。VR技術を駆使し、両足でペダルをこいだり踏んだりする
と森林などの画面が動く。患者の筋力に応じて、無理のない運動負荷や運動メニューを
自由に作成できるのが特徴。医療機関のPT(理学療法士)らに提案しながら売り込む。
本プロジェクトとの違い:足底力のフィードバックによる動的歩行支援はない。
1998年8月販
売開始。
あまり売れて
ない。
800
万円
14
参考3-7
③ 上肢動作訓練支援システムの類似機器状況
名称
マスキュ
レーター
上下肢用
GT- 30
会社名等
OG技研
特徴・セールスポイント
販売状況等
価格
14~15年前か
関節運動を伴わない、上肢・下肢の主要
ら販売。
筋群を対象にした測定並びにアイソメトリッ
累計販売台数
ク(等尺線運動)訓練装置。
は何百台のオ
(関節の動きはない。)
ーダー。
125
万円
15
5)特許出願数・論文数等の状況
①身体機能リハビリ支援に関連する特許出願数の状況
②身体機能リハビリ支援に関連する論文数の年次推移
(JICST)
③米国の公的機関(米退役軍人局)支援の上下肢機能
回復研究プロジェクトの状況
16
参考3-8
①身体機能リハビリ支援に関連する特許出願数の状況
検索方法:特許庁電子ライブラリー
検索項目:要約+請求の範囲(公開特許広報)
・下肢機能回復支援システム? :下肢、訓練、装置
・歩行訓練装置
:歩行、訓練、装置
・上肢動作訓練支援システム :上肢、訓練、装置
16
15
15
14
14
15
歩行
5
下肢
2
上肢
12
10
8
7
6
8
4
8
7
6
6
5
3
2
0
0
1993
1
0
1994
1
1995
1996
0
1997
0
1998
1
1999
2000
2001
年
2001年は11月 7日検索時点の値
17
②身体機能リハビリ支援に関連する論文数の状況(JICST)
検索キーワード
・下肢機能回復支援システム? :(下肢)(リハビリ、訓練)(機器、装置、システム)
・歩行訓練装置
:(歩行)(リハビリ、訓練)(機器、装置、システム)
・上肢動作訓練支援システム :(上肢)(リハビリ、訓練)(機器、装置、システム)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
歩行
上肢
下肢
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
年
18
参考3-9
③米国の公的機関支援の上下肢機能回復研究プロジェクトの状況
調査対象:VA(米退役軍人局)のホームページ
(http://www.vard.org/)
19
VA(米退役軍人局)ホームページにあるリハビリテーションR&D進捗報告書(1998)より抜粋。
● 歩行訓練の一貫として足踏みを行う時に、部分的に体を支える方法の安全性と効果
(Differential Pressure Walking Assistance)
● 四肢麻痺患者の腕、手の機能を回復するための埋め込み式機能神経刺激システム
(FNS)の実装とその評価
(Functional Neuromuscular Systems for Upper Extremity Control)
● 高齢者が踏み板の上を歩行する時に、装着したヘッド・ディスプレーに様々な障害物を映
し出して、それへの対応を改善する方法の開発
(Improving Stepping-over Responses in the Elderly using Simulated Objects)
● 脳卒中患者の歩行回復のために、回復の程度に従って荷重を変える訓練の効果の実証
(Graded Weight-bearing Exercise for Improved Ambulation after Stroke)
● 慢性の脳卒中患者の上肢運動回復に、ロボットを使った訓練の評価と効果
(Mechanically Assisted Upper Limb Movement for Assessment and Therapy)
20
参考3-10
<参考>①下肢機能回復支援システム
a.Smith+Nephew Kinetec社(仏)「膝用パフォーマ(ハイグレードタイプ)」
運動軸を膝及び股関節でとらえたタイプ。運動角度、速度等が設定可能。
21
<参考>b. OG技研「ハイドロマスキュレーター膝関節専用」
座位姿勢で使用できる下肢屈伸訓練器。「自力モード」及び高齢者向け
「おまかせモード」が設定可能。
22
参考3-11
<参考> c.
(株)パーカーコーポレーション 「メイウォーク」
メイウォークは福祉先進国デンマークで、長年の経験と研究開発の結
果生まれたまったく新しい、画期的なテクニカルエイド製品です。座面
はスイングバーで下降しますので乗降が楽に行え、介護者の負担が
ほとんどありません。歩くことをあきらめず、歩く楽しさを満喫できます。
【寸法】 長さ95cm×幅70cm 【重量】26kg 【価格】 236,000円
23
<参考>②歩行訓練装置の類似装置状況
a.セノー株式会社「歩行能力開発装置」
歩行困難者の下肢を他動的に動かし、神経-筋活動を賦活させ、負
荷調節により歩行能力を回復させる装置。下肢を動かすステップ部は、
左右個別に歩行速度、軌道、歩幅を自由に設定出来る。体幹を支え
る免荷部は、障害に応じて免荷重を調節し、訓練中の体幹バランスを
安定させる。モニターにより血圧、心拍数などを画像データでフィード
バックし、被訓練者の動機付けを図っている。
24
参考3-12
<参考> b. (株)日立製作所 機械研究所「歩行訓練システム」
高齢者用高機能歩行訓練機。左右のベルトが独立して動き、片麻痺者にも使
用可。体重の一部を訓練器が支えるため足の負担が小さく、転倒防止。
25
<参考> c.
ジャパン・イーエム「歩行訓練オートリフトAID-1-M」
水の浮力利用と同じように、空気圧制御の吊上力(0~40kg)で負荷をコントロー
ルしながら訓練。急な負荷の変動にもスムーズに追従。転倒防止機構。
26
参考3-13
<参考> ③上肢動作訓練支援システム
a. OG技研「マスキュレーター上下肢用GT-30」
関節運動を伴わない、上肢・下肢の主要筋群を対象にした測定並びにアイソメ
トリック訓練装置。
27
参考3-14
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