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平成8年函審第83号 漁船第二十三幸進丸遭難事件 言渡年月日 平成9

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平成8年函審第83号 漁船第二十三幸進丸遭難事件 言渡年月日 平成9
平成8年函審第83号
漁船第二十三幸進丸遭難事件
言渡年月日 平成9年11月27日
審 判
庁 函館地方海難審判庁(平野浩三、大島栄一、岸良彬)
理 事
官 熊谷孝徳
損
害
船体転覆、行方不明
原
因
船体強度についての配慮不十分
主
文
本件遭難は、船体強度についての配慮が十分でなかったことに因って発生したものである。
受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
理
由
(事実)
船 種 船
名 漁船第二十三幸進丸
総 ト ン
数 2トン
機 関 の 種 類
電気点火式機関
漁 船 法 馬 力 数 60
受
審
人 A
職
名 船長
海 技 免
状 四級小型船舶操縦士免状
指定海難関係人 B
職
名 船舶所有者
事件発生の年月日時刻及び場所
平成6年1月8日午後4時10分
北海道歯舞諸島北方海域
第二十三幸進丸(以下「幸進丸」という。)は、採介藻及び刺網漁業に従事する漁船法馬力数30馬
力の船外機を2基備えた長さ8.72メートル幅2.44メートル深さ0.88メートルのFRP製漁
船で、船橋を船尾寄りに配置し、平甲板が船底から約0.6メートルの高さにあって2重構造となって
おり、その内部材として5本の肋材が船首から船尾まで等間隔に、また船幅をほぼ3分割する桁板が船
底外板及び平甲板間にそれぞれ設けられてあった。
受審人Aは、平成4年3月23日父親の指定海難関係人Bを名目上の船舶所有者として船舶登録し、
自らが船舶管理に当たり、登録後船外機を73キロワットのもの2基に取り換えて全速力を25ノット
とし、また船首甲板上に揚網機及び発電機など重量約200キログラムの機器を装備して運航していた
ところ、同5年11月末ビルジが増加するので、その修理を最寄りの造船所に依頼した。
調査の結果、機器装備下のサイドガーダ及び船底板のそれぞれの船首尾方向に約30センチメートル
の亀裂が認められたので、同種の修理経験豊富な同造船所からA受審人に対し、航行中の波の衝撃によ
り船首船底に大きな荷重を繰り返し受けたことで亀裂が生じているから、船底外板全体及び内部材を補
強する必要があるとの助言を受けたが、同受審人は、その工期が約10日間要し、長期間の休漁で減収
になると思い、同助言に従って補強工事を行うなど船体強度に十分配慮することなく、当初の亀裂部の
みの修理を依頼し、B指定海難関係人に対して、その旨を報告しないまま修理を終えた。
B指定海難関係人は、前示の修理について報告を受けなかったので、修理後の堪航性について関与し
ていなかった。
その後A受審人は、歯舞諸島付近海域に7回ばかり出漁し、同6年1月8日、1人で乗り組み、かに
刺網漁の目的で、船首甲板上に重量約150キログラムの網を載せ、船首船尾共0.15メートルの喫
水をもって、午後2時、北海道珸瑤瑁漁港を発し、歯舞諸島多楽島北方沖合の漁場に向かい、同時9分
ごろ納沙布岬灯台から354度(真方位、以下同じ。)4海里ばかりの地点で針路を50度に定め、約
16ノットの速力で、北西寄りの白波の立つなかを船首船底に波の衝撃を受けながら進行していたとこ
ろ、前示の修理箇所に亀裂が生じて徐々に浸水し、同4時3分ごろ多楽島灯台から340度8.2海里
ばかりの漁場に達して機関を停止したとき、左舷傾斜と甲板下の空所に浸水を認め、ポンプを使用して
排水に努めたがその効果が認められず、同時5分ごろ機関を最大速力の約26.5ノットとし、付近で
操業中の僚船に向けて同地点を発進し、同4時10分ごろ多楽島灯台から326度7.8海里ばかりの
地点に達したとき、浸水量が増加して航行不能となって遭難した。
当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、波の高さは約2メートルであった。
遭難の結果、A受審人は遭難地点付近において僚船に移乗し、幸進丸が転覆したとき船底部の昨年修
理した箇所から海水が噴出しているのが見受けられたので、船体の曳航をあきらめて珸瑤瑁漁港に帰港
し、その後の捜索において同船を発見することができなかった。
(原因)
本件遭難は、航行中、船底に波による衝撃荷重を繰り返し受け、船首甲板下の内部材及び船底板に亀
裂を生じてその修理を行った際、船体強度についての配慮が不十分で、当初認めた亀裂箇所のみの修理
で運航中、波の衝撃を受けて船底外板に亀裂が生じて浸水し、航行不能となったことに因って発生した
ものである。
(受審人等の所為)
受審人Aが、航行中、波の衝撃を受けて船首甲板下の内部材及び船底に亀裂が生じた箇所の修理を行
う場合、同種の修理経験豊富な造船所から船底全体及び重量機器搭載下の内部材を強化するなどの助言
を受けていたから、船体強度に配慮して十分な補強工事をすべき注意義務があったのに、これを怠り、
修理の間休漁すると減収になると思い、船体強度に配慮して十分な補強工事を行わなかったことは職務
上の過失である。A受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1
項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
指定海難関係人Bの所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。
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