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撮影した写真を後で見直した時に「よく撮れている」と思える写真はそう多くはないだろう。よい 写真とそうでない写真の違いは、「構図」にあるといっても過言ではない。今回は、同じ被写体 でも構図を変えることで、どのような違いが出るかを学んでいく。 はじめに 第1章 視点の高さを変えて撮影する 第2章 撮影対象を絞り込む 第3章 アングルを変えて主役に近づく 第4章 季節感を表現する ある1つの物体をさまざまな角度から見ると、角度によって形が変わって見えたり、表情が違 って見えたりする。さらに、近づいて見たり離れて見たりすると、たった1つの物体でもいろいろ な形に変化するのが分かるはずだ。これが、構図を考える時のポイントとなる。よい写真を撮 るには、いきなりシャッターを切るのではなく、構図を意識して撮ることが大切なのだ。 そこで今回は「情景を切り取る」ことに重点を置いて撮影テクニックを紹介する。情感を感じる 風景は人によってさまざまだが、デジタルカメラの長所を生かし、何枚でも、何十枚でも満足の いくまで撮ってもらいたい。 ここがポイント 伝えたいものをはっきりと意識し、写真のフレーム内に必要な要素だけを写し込も 1/3 1 / 105 う。 2/3 2 / 105 【画素数】 デジタルカメラに内蔵されている撮像素子 の数。基本的に画素数が多くなるほど画 像はきめ細かくなり、同時にファイル容量 が大きくなる 【露出】 カメラに取り込まれる光の量。露出が多い と写真は明るくなり、少ないと暗くなる。露 出はシャッタースピードやレンズの絞りで 調節できる 【ズーム】 望遠にしたり広角にする機能のこと。倍率 の値が大きいほど望遠になり、被写体は 近づいて見える COOLPIX 5400 ニコン 画素数:510万画素 光学4倍ズームニッコ ールレンズを搭載。2 ダイヤルのみの操作 系や可動式の液晶画 面など、高性能ながら 使いやすさも秀逸。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告写 真など、幅広い分野 を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 3/3 3 / 105 大人が見る風景と、子供が見る風景はまったく違うといってよいだろう。子供の視点から見え る世界はすべてが大きく映り、同じ物でも印象が変わってくる。何気ない風景を撮る時も、子供 の視点から撮影するとユニークな写真に仕上がるはずだ。 また「犬」の視点や「猫」の視点、「虫」の視点などで撮影するのも面白い。液晶画面が回転す るタイプのカメラならそういった写真も撮りやすいだろう。 1/3 4 / 105 朝市の様子を撮影した。地面に置いてある物を撮影する場合、大人の背 丈だとどうしても見下ろす形の視点になってしまう 子供の目線まで視点を下げると、写真の印象ががらりと変わり、野菜の存 在も強調される。撮影の際には、いろいろなアングルで被写体を確認して みよう 2/3 5 / 105 風景の印象を写真に色濃く残す時には、人物を対比として入れると効果 的だ。この写真では子供を入れることで、神社の重厚さが増している。こ の写真に大人が入ると、また印象は変わるだろう。人に限らず、同時に 何を写すかで風景の雰囲気も変わるのだ。 3/3 6 / 105 絵になる風景を見つけた時は、ついつい欲張っていろいろな要素を写真に収めがちだ。いくら よい題材であっても、中途半端な写真では伝えたいものが分かりづらい。 よい写真を撮るためには、撮影する前に主題となる被写体をしっかりと決め、対象を1つに絞 って撮影するとよい。風景を撮るなら風景が美しく写るように、人物を撮るなら人物が印象的 に写るように心掛けよう。 1/3 7 / 105 非常に風情のある建物だ。建物全体を撮影するのであれば、この構図で も問題ないだろう。今回はさらに人物を加えてみることにした 建物の雰囲気と人物を両方取り込もうとし て失敗した例だ。撮影対象としたい被写体 が分からず、散漫とした写真になってしま った 2/3 人物と販売窓口に対象を絞って撮影した。 必要となる要素が絞り込めたため、撮影の 意図がはっきりした 8 / 105 きれいな青空の下では被写体が映える。しかし、強い日差しの下では、露出がオーバー するため、明るい部分が白飛びしやすくなる。同時に、影の部分はつぶれて黒くなってし まう。空を撮影する場合は、露出補正の対象となる個所をよく考えて撮影しよう。 左の写真では、露出オーバーで白飛びを起こし、空 の色が変になってしまっている。 3/3 9 / 105 次は同じ被写体でも、まわりの背景を入れた場合と、被写体だけを切り取って写した場合の違 いを見ていく。ここでは虫かごと子供達の写真を例にあげているが、どちらも背景を排除して 被写体に近づいた写真のほうが「主役」が強調されている。このように撮影位置やアングルを 変えたり、ズームを利用して被写体に迫るなどして、理想的な構図を探してみてほしい。 庭で遊んでいる子供達を横から撮影した 写真。よくありがちな構図だ 1/2 虫かご全体が写るように撮影した写真。虫 かごの影や、虫取り網が夏の雰囲気を醸 し出している 10 / 105 階段を上り、庭で遊んでいる子供達を2階 から見下ろすように撮影した写真。普段は 見られない角度からの表情を映し出した 虫かごの網にぐっと寄せて撮影した写真。 虫かごの閉塞感が薄くなり、主役も「虫達」 になった 人物を撮影する時はその顔の表情を狙うのが基本となるが、時には背中を写してみるの もよいだろう。この写真の場合、構図と相まって奥行きが一層引き立っている。 あえて背中を写すことで、参道の奥行き感が増している 2/2 11 / 105 日本は四季の移り変わりがとても美しい国だ。その情景を反映させれば、写真にもより一層の 情感が加わる。季節感を表現するには、その時期の風物詩や印象的なものを写すのが手っ 取り早い。しかし、それらを写さずに季節を表現することも可能だ。それは人物の表情や日差 しの強さ、影や服装などである。この写真では「夏」を表現しているが、秋の撮影なら紅葉はも ちろん、いわし雲や柿の木、すすきなど、身近にあるものを利用するとよい。 1/5 12 / 105 夏の海岸でのワンシーン。家族で海水浴に行った場合の写真などでありう るシチュエーションだろう。周囲もそれらしい風景だ 被写体のみに焦点を定め、撮影した。麦藁帽子が夏らしさを醸し出してい る 2/5 13 / 105 さらに望遠ズームをかけ、被写体の顔のみをアップにした。ここでは麦藁 帽子の隙間から差し込む光と、眩しげな表情のみで夏らしさを表現してい る 季節感を出す小物は、写真に彩りを添えるのにとても有効だ。この写真では地面に照りつ ける日差しとラムネを写し、清涼感を狙った。 照りつける日差しと、清涼感のあるラムネの瓶が夏らしさを演出している 3/5 14 / 105 ワンポイントテクニック 日常の何気ない一瞬にも、シャッターチャンスは潜んでいる。撮影することを考えていると、 カメラを持ちながら近所を散歩しているだけでも、思いがけない写真が撮れたりするもの だ。ここではそんな日常で撮影した、ちょっと面白い写真を紹介しよう。 樹木を直接撮影せずに、あえて池の水に映り込んでいる所を撮影した。本 来深い池ではないのだが、空の映り込みが、引き込まれるような感覚を醸 し出している 天気のよい日に、道路に映っている自分 の影を撮影してみた。これはこれで悪くな いがインパクトが弱い 4/5 空を背景にクモとクモの巣を撮影。これと いって面白みのない写真である 15 / 105 思い切って影のみを撮影することにした。 樹木の影と撮影者の影が合わさり、面白 い写真に仕上がった 5/5 周囲の樹木が写らないよう撮影した写真。 クモがまるで空中に浮かんでいるように見 える 16 / 105 プロが撮影した風景写真やグラビア写真は、意識せずとも被写体や主題に直っすぐに視点が 定まります。実はこれは背景をぼかし、見せたい被写体に立体感を与え、際立たせているから なのです。今回は背景のぼかし方を学びます。 はじめに 第1章 マクロ撮影で花の背景をぼかす 第2章 人物はポートレートモードで撮る 第3章 ズームを利用してぼかす 第4章 一眼レフデジカメを使って本格的にぼかす 第5章 ぼけ具合を調整しよう 写真は、立体の世界を平面に写し取るものです。その光景は、奥行きのない縦方向と横方向 だけの2次元の世界となって写ります。 しかし、撮影方法によっては写真に立体感を加えることも可能です。そのテクニックの1つが、 背景をぼかすという手法です。特定の対象にのみしっかりとピントが合い、その他の背景はぼ けて写ることで、遠近感が生まれるのです。また背景に余計なものが写らないため、自然に撮 影対象が際立ちます。 背景をぼかすには、大きく分けて3通りの方法があります。マクロ撮影モードを利用する方法 と、望遠レンズを利用する方法、カメラの絞りを変える方法です。 1/3 17 / 105 ここがポイント 背景をぼかす手法を学び被写体を際立たせる 2/3 18 / 105 【マクロ撮影】 カメラの撮影方法の1つで、近距離の被写 体を接写すること。多くのデジカメには「マ クロ撮影モード」という機能が付いていて、 これを有効にすると、花や小物を近くから 撮ることができます 【ポートレート】 人物が被写体となる肖像写真のこと。多く のカメラにはポートレートモードという人物 写真向きの設定があります。背景をぼか し、人物が引き立つよう撮影されます 【オートフォーカス(AF)】 カメラが自動的にフォーカス(ピント)を合 わせてくれる機能。デジタルカメラでは、 CCDに投影された画像のコントラストを基 に、レンズを動かしながら判断しています COOLPIX 5400 ニコン 画素数:510万画素 光学4倍ズームニッコ ールレンズを搭載。2 ダイヤルのみの操作 系や可動式の液晶画 面など、高性能ながら 使いやすさも秀逸。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告写 真など、幅広い分野 を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 3/3 19 / 105 コンパクトタイプのデジタルカメラは、特に高倍率なズームレンズを搭載しているわけではあり ません。また、絞りを設定できないカメラもあります。そういう時は、マクロ撮影モードを利用し ましょう。 カメラのモードをマクロ撮影に切り替えたら、できるだけ被写体に近づいて撮影します。ただ し、撮影可能な距離はカメラによって異なるので、事前に確認しておきましょう。近づき過ぎる とピンぼけになります。 1/3 20 / 105 マクロモードに設定すると、液晶画面に花のマークが表示されます コンパクトカメラでの例として、「COOLPIX 2200」のマクロモードで撮影しました。白い 花びらが際立って見えます 2/3 こちらは、マクロモードに加えてズームを併 用した写真です。背景のぼけ具合がより強 くなりました。「COOLPIX 5400」を使用して 撮影しています 21 / 105 レンズや絞りの違いを紹介するため、今回は3機種のデジタルカメラを追加して使用しま した。 ニコン D70(610万画素/一眼レフ) ニコン COOLPIX 2200(200万画素/3倍 ズーム) ニコン COOLPIX 8700(800万画素/8倍 ズーム) 3/3 22 / 105 人物を撮影する際にも、背景のぼかしは有効です。被写体のみにピントが合い、背景がぼけ ることで、写真を見た時に自然に視線は被写体に向かいます。 ポートレートモードが付いているデジタルカメラでは、それを使うことで手軽に背景をぼかすこ とが可能です。ただし、コンパクトカメラの場合、背景がぼけにくいので被写体に近づいたり、 ズームを併用したほうがよいでしょう。 1/3 23 / 105 設定の仕方は機種によって違いますが、人物のマークを選ぶとポートレー トモードに切り替わります コンパクトカメラでのポートレート撮影。被 写体から離れた場所から撮影し、ズームも 使用しなかったため、あまり背景がぼやけ ませんでした 2/3 一眼レフデジカメでのポートレート撮影で す。背景がきれいにぼけ、被写体が際立っ ています。なお、コンパクトカメラでは、ここ まで背景をぼかすことは難しいでしょう 24 / 105 光が入っているほうが、ぼけた背景はきれいに写ります。しかし周りがあまりに明る過ぎ ると、絞り値が大きくなってしまうため、ぼけにくくなってしまいます。晴天での撮影時は注 意しましょう。 晴天下では、背景は逆にぼかしにくくなります。この写真ではぼかすために無理に絞り値 を小さくした結果、白飛びを起こしてしまいました 3/3 25 / 105 望遠レンズを利用することでも、ぼかしを表現することが可能です。最近では、5∼10倍程度 の高倍率ズームレンズが搭載された機種も増えてきました。このようなカメラで撮影する場合 は、ズームを最大望遠にし、被写体と背景ができるだけ遠くなる風景を選びましょう。ただし、 ズームを最大望遠にすると手ぶれする可能性があるので、できるだけ三脚などでカメラを固定 して撮影するのがポイントです。 1/4 26 / 105 「COOLPIX 5400」のズームを最大の4倍 にし、手前の稲穂にフォーカスを合わせ て撮影しました。背景が遠くまであるた め、被写体以外がきれいにぼけています 2/4 27 / 105 「COOLPIX 8700」の8倍ズームを最大限 利用して、水滴のしたたる葉を撮影。葉 の手前と奥、及びうしろの葉でぼけ具合 が変わり、遠近感が出ました 3/4 28 / 105 ズームレンズやマクロ撮影を使用した場合でも、そこからさらに被写体に近づくことでぼけ 具合を強くできます。ズームを最大限使ったうえでさらにぼかしたい場合は、被写体にもう 一歩近づいてみましょう。 4/4 29 / 105 背景はどうしてぼけるのでしょうか。それは、ピントの合っている範囲が狭い、つまり被写界深 度が浅いからです。逆に被写界深度が深いと、風景全体にピントが合います。 被写界深度を浅くするには焦点距離(レンズからCCDまでの距離)が長いこと、そして明るい レンズを使うことが有効です。しかしコンパクトデジタルカメラはCCDが小型で、レンズもそれ ほど明るくないので、被写界深度は深くなりがちです。背景もシャープに写し撮りたい記念撮 影には、被写界深度が深いほうが有利です。 1/5 30 / 105 一眼レフデジタルカメラに70∼200mm(約 6倍望遠相当)のレンズを装着し、最大望 遠で「えのころ草」を撮影しました。ピント を合わせた1本だけが際立っています 2/5 31 / 105 3倍ズーム搭載のコンパクトカメラ 「COOLPIX 2200」でズームを最大にして 撮影しました。遠くの畑はぼけています が、草の周りはぼけていません 3/5 32 / 105 同じ距離から、「COOLPIX 8700」を使用 して8倍ズームで撮影しました。一眼レフ ほどではありませんが背景はぼけていま す 4/5 33 / 105 背景をぼかすためには、被写体にフォーカス(ピント)を合わせる必要があります。オート フォーカスが背景に合ってしまった場合、ぼける対象は手前の被写体になってしまいま す。 背景の田んぼにフォーカスが合い、被写体であるはずの「えのころ草」がぼけてしまいま した 5/5 34 / 105 被写界深度は、絞りを開く(絞り値を下げる)ほど浅くなり、 背景はぼけます。またレンズを望遠にするほど、被写体と の距離が近くなるほど浅くなります。この性質を理解してお けば、ぼけ具合を自分でコントロールすることも可能になり ます。被写界深度と絞り、焦点距離、被写体距離の関係 は、カメラテクニックの重要な要素です。覚えておくと、いろ いろと応用が利くでしょう。 絞りをF3.7にして撮影しました。被写界深 度が浅くなり、フォーカスが手前だけにしっ かりと合っています 1/2 絞りをF7.9まで絞って、撮影しました。写真 奥側のぼけ具合が減少し、F3.9のときより もはっきりとしています 35 / 105 ここまでカメラの被写界深度によるぼかし方 を紹介してきましたが、もっと手軽に、小道具 を使って背景にぼかし効果を入れることもで きます。ここでは例として、すりガラスを利用 して背景をぼかしました。適度な光を入れる ことで、きれいな写真に仕上がります。 左の写真は、出窓にある花瓶の手前にすり ガラスを置き、その手前に被写体を置いて撮 影しています。 実際の撮影風景です。身近にあるものを利用すると、 思いがけない写真が撮影できます。 2/2 36 / 105 今回は露出とコントラストに関するテクニックを紹介します。同じアングルでも、光量を調節した り光の向きを変えることで、写真にさまざまな表情を与えられます。いろいろと設定を変更すれ ば、思いがけず魅力的な写真を撮ることもできるでしょう。 はじめに 第1章 露出補正値の違いによる写真の変化を知る 第2章 フォーカスポイントを利用してコントラストを調節 第3章 フラッシュを利用して不要な影を消す 第4章 レフ板を使って採光する 第5章 光が当たる方向を変えてコントラストを演出 多くのデジタルカメラには、写真を明るくしたり暗くする「露出補正」機能が付いています。光量 が足りない場合には「+」補正、明る過ぎる場合には「−」補正すれば、白とびや黒つぶれの 防止の他、写真の印象を変えるのにも役立ちます。 しかし、露出補正を実際に使いこなしている人はそう多くないでしょう。そこで今回は、露出や コントラストの意味を理解し、露出補正の基本的な使い方をマスターします。また、露出補正 以外にも、カメラの位置や角度を変えたり、フラッシュやレフ版を使うことで露出を変化させるこ とも可能です。これらを活用した撮影方法もあわせて見ていきましょう。 1/3 37 / 105 ここがポイント 周囲の明るさに合わせて露出を調整し、明暗のコントラストを演出する 2/3 38 / 105 【露出補正】 カメラが自動的に設定した露出値(EV値) から、明るい(プラス)方向か暗い(マイナ ス)方向に調整して撮影できる機能です 【フォーカスポイント】 マニュアルフォーカスの場合はピントを合 わせる位置、オートフォーカスではピントを 合わせる基準となる場所です。通常はファ インダーの中心となります 【レフ板】 光を反射させるための白色や銀色の板の こと。被写体の影になる部分にレフ板で光 を反射させて照らし、明るくするというのが 主な使い方です COOLPIX 8700 ニコン 画素数:800万画素 800万画素を搭載し、 被写体の細部まで忠 実に再現。光学8倍ズ ームによる望遠でも色 合いを損なわない、高 品質レンズを搭載して います。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告 写真など、幅広い分 野を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 3/3 39 / 105 露出補正を設定しても、1枚しか撮影しなければそれが正しい数値だったか判断しづらいもの です。微妙に補正を変化させて数枚撮影することで、その違いが分かります。まずはカメラが 算出した適正露出で撮影し、その後に露出補正を変えて撮影してみましょう。わずかな光の加 減で、被写体の様子が違って見えるはずです。 1/4 40 / 105 カメラによって多少異なりますが、露出補正をおこなうと、このように液晶モ ニターにEV値が表示されます 花びらや背景が白とびしています 2/4 41 / 105 まだ花びらの一部が白とびしています 悪くはありませんが、やや明る過ぎる感じがし ます この5枚の中では、EV値-0.3の写真が一番落 ち着いた印象を受けます。明る過ぎず、それ でいて光が花びらを通り、透明感ある雰囲気 を出しています 3/4 42 / 105 重厚感はありますが、花の色が黒くなり印象 はあまりよくありません 同じ光量、構図で撮影しても、露出補正を行うことで被写体から受ける印象は大きく変わ ります。わざと暗めにすれば重厚な雰囲気を出せますし、明るさを適正にすれば被写体を はっきり写し出せます。あえて白とびさせるくらい大きく露出補正を行えば、まぶしいくらい 明るいイメージを強調できます。デジタルカメラは、撮影した画像をすぐ確認できるのが大 きな魅力。失敗を気にせず、いろいろな設定で撮影してみましょう。 4/4 43 / 105 人間の目は便利なもので、明暗差の幅が広くても、くっきり見ることができます。しかし、カメラ はそうはいきません。日向と日陰が同じ構図に入っていると、見た目よりも日向は白く、日陰 は黒く写ってしまうのです。こういった被写体を撮影する場合は、ピントを合わせる場所を変化 させることで、露出の度合いを調整できます。 1/3 44 / 105 明るい場所や、暗い場所にフォーカスポ イントを合わせてシャッターボタンを半押 しし、そのままカメラの向きを変えてシャ ッターボタンを押します 明るい部分にフォーカスを合わせてから撮影すると、露出補正が明るいところを基準に調節さ れるため、暗い場所はより暗く写ってしまいます。逆に風景の暗い場所に合わせると、日陰に なっている個所もきちんと写るようになります 2/3 45 / 105 明るい場所と暗い場所がある場合、露出をどちらに合わせて撮影するかで、写真の明るさは 大きく変化します。暗い個所に合わせると、明るい場所が白とびしてしまうことがあります。ど ちらをメインに撮影したいか考えてからフォーカスを合わせましょう 光が入っているほうが、ぼけた背景はきれいに写ります。しかし周りがあまりに明る過ぎ ると、絞り値が大きくなってしまうため、ぼけにくくなってしまいます。晴天での撮影時は注 意しましょう。 屋内にフォーカスを合わせて露出補正 を行った写真。お店の中の様子もきち んと撮れています 3/3 屋外の明るさに合わせているため、お 店の中が暗くなり、様子が分かりません 46 / 105 風景写真や植物の場合は、露出補正やフォーカスポイントを変化させることで、写真の明暗を 調整できます。しかし人物撮影の場合は、それらの方法だとうまくいかないことがあります。そ こで利用したいのが「フラッシュ撮影」です。フラッシュなら、顔にできた影を光で消して、表情を きれいに捉えることが可能になります。 フラッシュは一般的に暗い場所だけで使うものと思われがちですが、明るい場所でも役に立ち ます。被写体を引き立てたり、コントラストの差をなくしたりと、さまざまな効果があるのです。 明るい場所でフラッシュを発光させるには、設定を「強制発光」にすればOKです。 ただし、1つ注意したいのは、デジタルカメラ本体に内蔵されているフラッシュは光の到達距離 が短いということです。フラッシュで撮影する時は、性能に合わせた距離(1∼2m程度)で撮影 しましょう。 1/3 47 / 105 フラッシュを使用して撮影した写真。影 ができていた部分がフラッシュの光で 照らされ、表情が明るくなりました。 暗い場所に露出を合わせて撮影した写 真。光が当たっている顔の右半分が、白 とびしてしまっています 2/3 今度は明るい場所に合わせて撮影しまし た。肌の白とびはなくなったものの、顔に陰 影が付いて暗い表情に見えてしまいます 48 / 105 フラッシュは、暗い場所で撮影する時以外にも便利な使い方があります。それが影の打ち 消しです。 撮影したいアングルがどうしても逆光になってしまう場合、フラッシュを利用すると、被写体 に影がかかるのを防ぐことができます。また、光が横から差していて、被写体に必要以上 に陰影が付いてしまっている場合にも、フラッシュを使うことでその影を消すことができま す。特に女性を撮影する場合、フラッシュによって顔の陰影が消え、肌がきれいに写りま す。覚えておいて損はないでしょう。 逆光や横からの光でできてしまった影を、フラッシュを使うこと で打ち消すことができます 3/3 49 / 105 人物撮影では、光を反射するレフ板を使う方法もあります。フラッシュに比べると、レフ版では 若干影が出てしまいますが、逆にそれで自然な感じに仕上がるのです。レフ版の角度を変え ることでコントラストの違いも理解できるので、手始めに白い画用紙などで試してみるとよいで しょう。 1/3 50 / 105 レフ板使用の様子。屋外で使う 場合、晴れている時は横から、 曇りの時は下からレフ板の光 を当てるようにすると、顔にか かった影を消すことができます レフ板を使って顔に光を当てて撮影。顔が全体的に明 るくなり、目にも光が入っていきいきとした表情に見え ます レフ板を使用せずに撮影した写真。やや顔が暗くなってしまっ ている他、目に輝きがなくて元気がないように見えます 2/3 51 / 105 人物をレフ板で照らして撮影すると、レフ板の反射光が瞳に入り、目が輝いているような 効果を得ることができます。この輝きを「キャッチライト」と言い、これがあると被写体の表 情がとてもいきいきとしたものになります。円形や四角形のレフ板を使えば、その形通り のキャッチライトが入り、レフ板が大きければキャッチライトも大きくなります。 瞳にキャッチライトが入り、引き締まった表情になっていま す。ここでは円形のレフ板を使っているため、キャッチライト も丸くなっています 3/3 52 / 105 被写体によっては、逆に影を付けたほうがより効果的な写真になる場合もあります。下の写真 のように凹凸のある板の上に小物を載せて撮影する場合は、真上から光を当てるよりも、少し 斜めから光を当て、凹凸による陰影を作ったほうが立体感が出て構図として面白みがありま す。 基本一辺倒な採光をするのではなく、被写体や自分が撮りたいイメージにそって採光の向き や影の付け方を工夫してみましょう。 光が斜めに当たるように調整して撮影しました。ウッドボードの凹凸によって陰影ができ、 ほどよいコントラストを生み出しています 1/2 53 / 105 光をほぼ真上から当たるように板を置いて 撮影。ピンバッジの影が下に長く伸びてい ますが、ウッドボードの大半が影に隠れて しまっています 影ができないようにウッドボードの向きを 変えて撮影してみました。見やすいのです が、ややのっぺりした印象を受けます 風景写真の中には、あえて影を強調した写真があります。木陰から差し込む光や、まっすぐに 伸びた影をメインに据えた構図などは、ピリッとした緊張感を生み出してくれます。しかし、こう した構図での撮影は露出補正を何度も設定し直す必要があり、意外と面倒なのです。 そこで利用したいのが、「AEB(オートエクスポージャーブラケティング)」機能です。シャッター ボタンを押すと、デジタルカメラが判別した適正な露出と、それより1段階明るい値と、1段階 暗い値に露出を調整し、連続して撮影を行ってくれます。露出補正が異なる写真を複数枚まと めて撮れるので、設定ミスが大幅に減ります。最近はコンパクトカメラにもこのような機能を備 えたものが増えているので、もしあれば使ってみてください。 まっすぐに伸びた樹の影が、独特の緊張 感や荒涼とした雰囲気を出しています 2/2 光が当たっている場所と影になっている場 所が、強烈なコントラストを生み出していま す 54 / 105 暗い場所での撮影時に自動的に発光するフラッシュ。実は活用場所は暗所だけではなく、日 中のさまざまな場面に存在します。今回は自然光以外の光を取り入れられるフラッシュの上手 な使い方と、シーンに合わせた活用の方法を学びましょう。 はじめに 第1章 日中にフラッシュを使ってみよう 第2章 フラッシュを使って被写体の動きを止める 第3章 ガラスに光を反射させずに撮影する 第4章 夜景と人物を同時に撮影する 第5章 ポートレート写真を撮る 現在、発売されているコンパクトデジタルカメラには、フラッシュが装備されています。フラッシ ュを発光させるとシャッタースピードが速くなるため、暗所でもぶれが少なくなるという効果があ ります。 また、フラッシュは日中の撮影でも有効です。例えば人物を逆光状態から撮影する際に、顔に できてしまう影を消し、明るい表情を写し撮ることができます。そこで今回は、フラッシュを積極 的に活用した撮影方法を紹介します。 ここがポイント 1/3 55 / 105 フラッシュのさまざまな使い方を学び、撮影方法に幅を持たせよう 2/3 56 / 105 カメラに用意されている矢印ボタンを押すと、「強制発光」や「発行禁止」を設 定できます 【フラッシュ】 正式名称は「エレクトリック・フラッシュ」で 「ストロボ」とも呼ばれます。2万∼10万分 の1秒間隔の閃光を1秒間に1000回程度 発光でき、主に光量不足を補うために使用 されます 【シャッタースピード】 デジタルカメラの場合、CCDに光を当てる 時間のこと。速いほど被写体の動きが止 まり、遅いほどぶれやすくなります 【夜景モード】 夜景撮影のためのシャッタースピードが遅 い撮影モードのこと。手ぶれなく撮影する ためには三脚が必須です。また、自動的 にフラッシュが発光する機種と発光しない 機種があります COOLPIX 8700 ニコン 画素数:800万画素 800万画素を搭載し、 被写体の細部まで忠 実に再現。光学8倍ズ ームによる望遠でも色 合いを損なわない、高 品質レンズを搭載して います。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告 写真など、幅広い分 野を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 3/3 57 / 105 日中は太陽の光のみで十分に明るいので、通常フラッシュを使用する必要はありません。し かし逆に、明るい所に露出を合わせた場合、影になる部分が暗く写ることがあります。人物を 逆光状態で撮影する時などにはしばしば発生するシーンです。 このような時は、フラッシュを使うことで、被写体の不要な影を取ることができます。このように フラッシュを補助光として日中に使用する手法を「日中シンクロ」といいます。 1/3 58 / 105 フラッシュ到達距離より遠くから 撮影すると、フラッシュが発光し ても届きません。高倍率のズー ムを使用する際には忘れがちに なるので、注意しましょう 2/3 一般的なデジタルカメラ内蔵フラッ シュの光の到達距離は1∼2m程 度です。説明書を読み、自分の持 っているカメラのフラッシュ到達距 離を知っておきましょう 59 / 105 太陽の光のみで撮影しました。空 の青さは表現できていますが、肝 心の人物の表情に影がかかり、暗 い表情に見えてしまっています 設定を「強制発光」にし、日中に フラッシュを使用しました。人物 の顔にかかった不要な影をなく し、表情を明るく撮影できました 日中シンクロは、露出を合わせる位置によって一段ときれいな撮影が可能です。この写真 では、露出を空に合わせたうえでフラッシュを使用しています。 露出を明るい空に合わせて撮影しました。空の青さと人物の表情、両方を写真に収める ことができています 3/3 60 / 105 激しい動きをする被写体の撮影は難しいものです。ペットや小さな子供などは、なかなかじっと していてくれません。太陽の下で撮影しても、急に動くとぶれてしまうことがあります。そこで、 そのような被写体を撮影する場合もフラッシュを活用しましょう。フラッシュを発光させると、被 写体の動きを止めることができます。 ただしフラッシュの発光時間がシャッタースピードに比べて短いと、被写体は止まっていても、 背景がぶれた写真になります。 1/4 61 / 105 羽ばたいているペリカンを、フラッシュを 使わずに外光のみで撮影しました。体全 体、特に羽がぶれてしまっています。これ はこれで動いている様子が伝わります が、今回はこの動きが止まるように撮影 してみましょう 2/4 62 / 105 こちらはフラッシュを発光させて撮影しま した。シャッタースピードが速くなったため 体の動きが見事に止まって見えます。こ のようにフラッシュには、光の当たった部 分のみを止まって見せる効果があります 3/4 63 / 105 水槽の中を高速で泳いでいる魚を撮影しました。背景 はややぶれ気味ですが、被写体はしっかりと写ってい ます 4/4 64 / 105 ショーケースや水槽などのガラス越しに撮影する機会もあると思います。その際、ガラスの内 部が外に比べて暗かったり、屋内での撮影の場合はフラッシュが必要になります。そして気を 付けなければいけないのが光の反射です。正面から発光させると、ガラスに反射した光が写 真に写ってしまいます。角度を変え、反射光が入らないような位置で撮影を行いましょう。 1/4 65 / 105 ガラスの真正面からフラッシュを使って撮 影しました。フラッシュの光がガラスに反 射し、それが写真に写ってしまっています 2/4 66 / 105 ガラス面に対して斜めの角度から撮影し ました。フラッシュの反射を抑えられ目立 った写り込みもありません フラッシュ使用前にチェック! フラッシュの使用前には、光を遮るものがないか確認しましょう。単純な失敗ですが、だから こそ多い失敗だとも言えます。ここではよくある光の阻害例をあげてみました。 ストラップで遮ってしまう 3/4 指で遮ってしまう 帽子のつばで遮ってしまう 67 / 105 暗い場所ではついついフラッシュを発光させてしまいがちですが、あえてその場の光だけ で撮影するのもいいものです。この2枚はフラッシュを使用せずに撮影しました。被写体は シルエットのみとなりますが、逆に場の雰囲気を表現できました。 プールの水面を泳いでいるイルカを、地 下の水槽からガラス越しに撮影しまし た。イルカはシルエットのみとなってい ますが、下から見上げた際の水の青み や、波打ち具合を写真に表現すること ができました 4/4 特殊なライトアップがされたクラゲを、フ ラッシュなしで撮影しました。フラッシュ を使用するよりも雰囲気のある写真に なっています 68 / 105 夜景撮影には通常、フラッシュは使いません。しかし人物と同時に撮影する際はフラッシュを 使用します。景色はシャッタースピードを遅くして撮影し、人物はフラッシュの一瞬の光で撮る というわけです。これは「スローシンクロ」という手法です。 最近のデジタルカメラでは、夜景モードで自動的にスローシンクロ設定となるモデルが多くなっ ています。ぶれやすい撮影方法ですので、三脚などでカメラを固定しましょう。 ほとんどの機種にはこのような夜景モードが搭載されています 1/2 69 / 105 オート撮影で、フラッシュのみを 利用して撮影しました。人物はき れいに写っていますが、背景は 真っ暗で、何が写っているのか よく分かりません 夜景モードに設定を変え、フラッシ ュを利用して撮影しました。人物に 加え、夜景も明るくきれいに写って います。また手ぶれを防ぐため、三 脚を利用しています シャッタースピードが遅くなると、それだけ写真はぶれ やすくなります。人物の撮影はフラッシュが使用されて いるので多少の動きは問題ありませんが、激しく動か れるとこのような写真になってしまいます 2/2 70 / 105 最後に、写真館のスタジオで撮影したようなポートレート写真を撮るテクニックを紹介します。 室内撮影で、被写体を美しく撮影するのに大切なのは、フラッシュを含めたライティングです。 カメラ内蔵フラッシュでもそれなりに撮影できますが、ここではさらにライトを追加し、光源を増 やしてみました。カメラ内蔵のフラッシュと同調して発光するよう設定し、横から光を当てていま す。このような簡単なセッティングでも、写真の写り方は大きく変わります。内蔵フラッシュに慣 れた方は挑戦してみてはいかがでしょうか。 1/3 71 / 105 実際の撮影風景です。ライトを被写体右側に配置し、背景に白い用紙を貼っています カメラ内蔵のフラッシュのみで撮影しました。きれいに撮れて いますが、背景に影ができてしまっています 2/3 72 / 105 ライトをさらに1つ用意し、カメラのフラッシュと同調させて発光 させました。影のない、明るいポートレート写真が完成しまし た 3/3 73 / 105 デジタルカメラには「ホワイトバランス」という機能が付いています。普段は自動で設定される ため意識することはありませんが、この設定を変えると写真全体の色味が違ってきます。今回 はこのホワイトバランスについて学びましょう。 はじめに 第1章 ホワイトバランスによる違いを知る 第2章 ホワイトバランスを変える 第3章 料理をおいしそうに撮影する 第4章 カクテルの鮮やかな色を再現する 第5章 その場の雰囲気を残しつつ人物を撮影する 撮影した写真を見比べた時に、実際よりも青みや赤みが強いと感じたことはありませんか? これは、デジタルカメラで色の基準となる白色の設定がうまくいかなかったため、起こる現象で す。 人間の目は太陽や電球などの光源の色を自動的に補正するようにできています。しかしデジ タルカメラでは機械に判断させるか、自分で光源の種類を指定しなければなりません。 そこで活躍するのが、「ホワイトバランスの設定」です。ホワイトバランスとは「白い部分を正し い白として表現する機能」のこと。正しい色にならない時は、自分で光源を判断し、ホワイトバ ランスを設定するようにしましょう。 1/3 74 / 105 ここがポイント ホワイトバランスの変更による違いを知り、意図した色彩を再現する 2/3 75 / 105 【光源】 太陽や照明、スポットライト、フラッシュ、ろ うそくの炎などの光の元、発光しているも のをさします 【太陽光】 太陽光の色温度である5000K∼5500Kは それぞれD50、D55と呼ばれ、標準光源と して色の一貫性を評価する際に使用され ます 【マクロ】 被写体を至近距離から撮影する機能で す。接写モードとも呼ばれます COOLPIX 8700 ニコン 画素数:800万画素 800万画素を搭載し、 被写体の細部まで忠 実に再現。光学8倍ズ ームによる望遠でも色 合いを損なわない、高 品質レンズを搭載して います。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告 写真など、幅広い分 野を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 3/3 76 / 105 実際にホワイトバランスを変え、色の違いを見てみましょう。ホワイトバランスの変更は「WB」 と記されたボタンや、メニュー画面から変更します。ホワイトバランスの設定の中には「太陽 光」や「蛍光灯」、「電球」など光源に応じた項目が用意されています。 下の写真は昼光色蛍光灯の下で撮影したものです。ここでは「プリセット」と「太陽光」が最も実 際の色に近い結果になりました。「白熱電球」ではかなり青っぽくなっています。 1/3 77 / 105 ホワイトバランスをカメラ任せの「オートWB」 で撮影しました 基準となる白部分を設定し、撮影する「プリ セット」です 昼間の太陽の下での撮影に向いた「太陽 光」です 曇り空の下で撮影を想定した設定「曇天」で す 2/3 78 / 105 電球の赤っぽい色に合わせた「白熱電球」 です 白っぽい光の蛍光灯に向いた「白色蛍光 灯」です 基準となる白を自分で設定し、全体のホワイトバランスを調整できる機種もあります。 「COOLPIX 8700」では「プリセット」という機能に当たります。メニューからプリセットを選 び、表示された枠内に基準色を写しましょう。その後の写真は、写し撮った白を基準にホ ワイトバランスが調整されます。 プリセットを選ぶと一部をズームした画面になります。この画面から基準の白を撮影しまし ょう 3/3 79 / 105 光の色は「色温度」で表されます。「色温度」の単位はK(ケルビン)で、数値が高くなるほど青 みが強く、低くなるほど赤みが強くなります。例えば、曇天の状況では色温度が6500Kと青っ ぽく、白熱電球だと3000K程度と赤っぽくなります。ホワイトバランスを「曇天」に設定すると、 青みを取るために赤く補正され、「白熱電球」にすると赤みを取るために青く補正され、実際の 色に近い写真に仕上がるのです。 1/3 80 / 105 カメラによって設定できるホワイトバランスの項目は異なりますが、基本的な項目は同じで す。シーンに合わせて変更しましょう 2/3 81 / 105 ホワイトバランスを極端に変えると、この写真のように写真全体の色調が赤か青に偏りま す。わざと色みを付けたい時に活用できます。 3/3 82 / 105 それでは、実際にいろいろな被写体を撮影してみましょう。まずは、白熱電球の下で、料理を 撮影しました。料理をおいしそうに見せるためには、写真が青過ぎないように気をつける必要 があります。なお、フラッシュを使用するとフラッシュ光の色が基準となりますので、今回は発 光禁止にしています。 また、ここでは手ぶれによる失敗を防止するため、三脚を使って撮影しています。 ホワイトバランスをオートにて撮影。実際に 見た時よりも青っぽくなってしまいました 1/3 オートで撮影した写真は全体がやや青っぽく なってしまっているので、店内の照明に使わ れている「白熱電球」をホワイトバランスに設 定してみました。すると、オートよりも青みが なくなり、いっそうおいしそうな色に仕上がり ました 83 / 105 オートの青みを消すためにホワイトバランス を「曇天」にしました。残念ながら今度は赤 みが強くなり過ぎたようです 「白色蛍光灯」をホワイトバランスに設定し てみました。かなりよくなっていますが、まだ 若干赤みが残っています 撮影の際に身近に白い被写体がある時は、それを白の基準としてプリセットで撮影する のも有効です。 ここでは白いランプの傘を利用して、ホワイトバランスを調整しました 2/3 84 / 105 飲食店で料理を撮影する場合はフラッシュは控えたほうがよいでしょう。どうしても近距離 からの撮影になりがちでフラッシュの光が飛びますし、せっかくの雰囲気のある店内でフ ラッシュの光を瞬かせるのも考えものです。 飲食店での料理の撮影はマクロなどの近距離撮影になります。フラッシュを使うと近過ぎ て白が飛んでしまうので注意しましょう 撮影協力:珈琲亭・郷(東京都中野区) 3/3 85 / 105 白熱灯の薄暗いバーの中で青く透き通ったカクテルを撮影してみました。ここでのチェックポイ ントはカクテルの色彩です。加えて、照明の雰囲気が残せればとてもよいでしょう。そのままの 照明で撮影すると、どうしてもカクテルの色彩がくすんだり、白飛びしたりします。 そこで、ここではカクテルだけに光が当たるよう、スポットライトを配置しました。これにより、カ クテルの青さと店内の落ち着いた雰囲気を表現することができました。 1/3 86 / 105 オートホワイトバランスにて撮影しました。若 干青みが強く出ていますが、きれいな色で 写りました 2/3 「太陽光」にホワイトバランスを設定しまし た。カクテルの微妙な色を正確に再現でき ています 87 / 105 「曇天」にホワイトバランスを設定しました。 ここまで緑色になると、別のカクテルに見え てしまいます ホワイトバランス「白色蛍光灯」にて撮影し ました。カクテルの色はかなり緑色に寄って しまっています 店内の照明は非常に雰囲気のあるものですが、この撮影で は、カクテルの色をしっかりと見せるため、真上からカクテル のみにスポットライトが当たるようにしています。 撮影協力:TOMMY'S ROOM(http://www.tommysroom.com/) 3/3 88 / 105 人物を被写体とする場合のホワイトバランスのチェックポイントは肌の色です。肌色の出し方1 つで、被写体は若く見えたり、健康的に見えたりします。 ここでは薄暗い店内で、光はほぼ頭の上の照明のみで撮りました。照明の当たっている部分 と当たっていないシャドー部を生かし、場の雰囲気も残しながら撮影しています。 1/3 89 / 105 この撮影では、オートホワイトバランスの写真が一番雰囲気を出すことができました。肌色 が極端な色になることなく、店内の情景を伝えています 全体的に赤みが強くなり過ぎてしまいまし た。人物の顔色も今ひとつよくありません 2/3 肌色の再現は一番正確に出ていますが、照 明が白過ぎ、店内の雰囲気が伝わらないた め、次点としました 90 / 105 中途半端に薄暗い箇所は、あえて暗いままにすることで、写真が引き締まる場合がありま す。 照明が当たっている部分と背景の真っ暗なシャドー部 が写真を引き立てています 撮影協力:グランドファーザーズ(http://www.grandfather.co.jp/shibuya/) 3/3 91 / 105 夕焼けや夜景をきれいに撮りたくても、日中の撮影とは勝手が違うため、イメージ通りに撮影 するのはなかなか難しいものです。そこで今回は夕景・夜景の撮影テクニックについて解説し ていきましょう。 はじめに 第1章 夕日のある風景を撮る 第2章 夜の街を撮る 第3章 時刻・天候による写り方の違い 第4章 夕景・夜景撮影時の面白いテクニック 夕暮れ時の深みのある空や、光り輝く街の夜景は、オート撮影のままでは美しく撮影すること ができません。プロカメラマンのような写真を撮るのは無理、と思っている人もいるかもしれま せんが、実はちょっとしたことでそのレベルに近づくことは可能です。今回は、そのための撮影 方法をサンプル写真を見ながら学びましょう。 ここがポイント 同じ風景でも撮影方法や時間を変えることでさまざまな色味になる 1/2 92 / 105 撮影モードを「夜景」にすると、シャッタースピードが遅くなり、夜景を きれいに撮れるようになります。またカメラによっては「ノイズリダク ション」機能が働きます。 【ノイズリダクション】 デジカメの場合、シャッタースピードを遅く するとノイズが発生しやすくなります。ノイ ズリダクションは、機械的にそのノイズを除 去する機能のことです 【ISO感度】 CCDが光に対して反応する度合い。ISO感 度の数値が高いと、暗い場所でも明るく撮 影できる半面、写真は粗くなります 【グラデーション】 色の段階的な変化のこと。例えば赤から 青への色の変化を、赤→赤紫→紫→青紫 →青のように自然に、そして滑らかに表現 します COOLPIX 8700 ニコン 画素数:800万画素 800万画素を搭載し、 被写体の細部まで忠 実に再現。光学8倍ズ ームによる望遠でも色 合いを損なわない、高 品質レンズを搭載して います。 本間好久 氏 フリーカメラマン。フ ァッションやコンピュ ーター関連の広告 写真など、幅広い分 野を手がける。 最新デジカメのご購入はこちらから >> 2/2 93 / 105 夕景の撮影は、夕日が沈む前なら手持ちで撮影することができます。しかし夕日が沈んでしま うと光量が足りなくなるので、三脚を使用するようにしましょう。 また、夕焼けの赤さを強調したいなら、ホワイトバランスを「晴天」や「曇天」にするのがコツで す。写真に赤みが加わり、インパクトのある写真になります。もし予算に余裕があるなら、フィ ルターを使って撮影するのも1つの方法です。 ホワイトバランスを「晴天」にすると、夕日の 赤味がやや強調され、鮮やかな夕焼け空に なりました 1/2 ホワイトバランスを「オート」にして撮影しまし た。色味は自然ですが、やや物足りない感 じがします 94 / 105 赤色系フィルターをレンズの前に設置し て撮影しました。夕日が燃えるような赤色 で表現されています。太陽の周りに見え るにじみは、強い光によって発生する「フ レア」によるものです カメラによっては、「夕焼け」という夕景専用のモードを備えた機種もあります。夕焼けのオ レンジ色を強調して表現するために、ホワイトバランスと露出を自動で設定してくれます。 「夕焼け」モードでは赤みが強調されるよう設定されます。 このような専用モードがない場合はホワイトバランスで調整 しましょう 2/2 95 / 105 夜景の場合、手持ちで撮影すればほぼ確実に手ぶれを起こしてしまいます。そのため夜景撮 影では、カメラを三脚などで固定するのが基本です。夜景と人物を一緒に撮影するための「ス ローシンクロ」モードではフラッシュが発光しますが、景色だけを撮る場合はフラッシュは発光 禁止にしておきましょう。 また夜景撮影ではわずかなぶれでも失敗につながるので、シャッターを押す時にも注意してく ださい。 1/3 96 / 105 ビルの上から夜景を撮影しました。シャッタ ースピードが遅いので、車のライトが流れて います 2/3 ライトアップされた東京タワーを撮影しまし た。三脚を使っているので、ぶれることなく 撮影できています 97 / 105 三脚は夜景撮影の必須アイテムです。大きくて重い三脚のほうが撮影時に安定しますが、コ ンパクトカメラであれば、小型の三脚でも十分に役立ちます。夜景スポットの撮影に出かける 時は持ち歩くようにしましょう。 もし三脚がない場合は、手すりやテーブル などを利用して、カメラが動かないようにし ましょう 三脚を使っていても、シャッターを押す時に ぶれが起こります。そのため、セルフタイマ ーやリモコンを使って、なるべくカメラに触れ ずにシャッターを切るのがポイントです ISO感度を上げると、暗い場所で撮影しても明るめに再現されます。ただし、写真にノイズ が乗り、ざらざらとした表現になる場合がありますので注意しましょう。 ISO感度を400相当に変更して撮影しました。写真が明るく表現されましたが、空にノイズ が多く見えます 3/3 98 / 105 夜景撮影といっても、空が真っ暗である必要はありません。日没直後に空に広がる濃紺や赤 のグラデーションを入れて撮影すると、全体が彩られて美しい写真に仕上がります。日没後の 空の色は刻一刻と変化するので、数分おきに写真を撮影してみるとよいでしょう。ここでは1月 中旬頃に撮影した写真を参考に、色の移り変わりを見ていきます。 夕景の時間帯ですが、空がまだ明るいた め、撮影しても白っぽくなってしまいます。も う少し太陽が沈むのを待ったほうがよいでし ょう 1/4 太陽が地平線に近づき、空が赤くなり始め ました。冬はこのぐらいの時間からきれいな 夕景写真になります 99 / 105 太陽が沈み、街の明かりも目立つようになり ました。他の写真に比べて、空のグラデーシ ョンが最もきれいです 太陽は完全に沈み、空は真っ暗です。空が 暗い分、街の様子は一番美しく撮影できま す 夕景・夜景の撮影にフラッシュは不要です。フラッシュを発光させると、景観の中にある明 かりが写らず、暗い写真になってしまいます。またガラス越しの撮影の場合は、光が反射 してしまいます。自動発光を必ずオフに設定しておきましょう。 フラッシュを使うと、街の光は写らず、このように真っ暗 な写真となってしまいます 2/4 100 / 105 夕景の時間帯ですが、空がまだ明るいた め、撮影しても白っぽくなってしまいます。も う少し太陽が沈むのを待ったほうがよいでし ょう 夜になると黄色がかった写真になりました。 天候によって色味が変わるということを覚え ておきましょう 高い建物の中から夜景を撮影する場合は、ガラスへの写り込みに注意してください。せっ かくきれいな夜景を撮影しても、自分が反射して写っていたり、カメラのレンズが大きく写 っていたら、それだけで台無しになります。そこで注意したいのがレンズの位置です。左下 の写真のようにカメラのレンズをできるだけガラスに近づけることで、室内の照明やカメラ の写り込みを防ぐことができます。また、レンズをガラスに近づけることで、ガラスに付着し た汚れが写りにくいという利点もあります。 ガラスに光が写り込むとこのような写真にな ってしまいます。せっかくの夕景写真を台無 しにしないよう、撮影する角度に気を配りまし ょう 3/4 101 / 105 窓際に三脚を設置して撮影しています。土 台がしっかりしていれば三脚なしでも撮影 可能ですが、確実な撮影にはやはり三脚 を設置したほうがよいでしょう このように、ガラスにほぼ密着する形で配 置しています。これはガラスへの写り込み を避けるためと、ガラス表面の汚れを写し 撮らないための措置です 撮影協力:貿易ビルサービス・40階展望台 シーサイド・トップ(http://www.wtcbldg.co.jp/) 4/4 102 / 105 夕方や夜間では、光を生かした面白い効果を写真に与えることが可能です。例えば先に述べ たように、夕日が出ている時であれば、被写体をあえてシルエットにすることで、雰囲気のある 写真にできます。 また夜間の撮影ではシャッタースピードが遅くなるため、光の軌跡が残ります。これを利用して 車のライトを流して撮影すれば、ユニークな写真に仕上がります。 夕日の逆光を利用してシルエットを写し出しました 1/3 103 / 105 強い夕日をバックに撮影すると、手前の 被写体は表情が見えず、真っ暗に写りま す 夜間の撮影ではシャッタースピードが遅くなるため、車のライトが線のよう に写ります カメラはシャッターが閉じるまでの間、絶 え間なく光りを取り込みます 2/3 104 / 105 今回は夕景撮影ということで、海岸での撮影機会が多くなりました。こういった場所で気を つけてほしいのが、レンズの汚れです。市販のクリーナーなどを利用して、こまめに掃除 をしましょう。またフィルターの汚れにも要注意です。 メンテナンスには市販のレンズクリーナーやクリーニ ングペーパーを使用しましょう。ティッシュなどはレン ズを傷つける恐れがあるのでおすすめしません 3/3 105 / 105