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Ⅰ 石炭需給・価格の動向
2005 年石炭技術会議 【特別講演Ⅱ】 原油価格・石炭需給の動向と対アジア戦略について 三室戸 義光 日本エネルギー経済研究所 研究理事 報告内容 I. 石炭需給・価格の動向 1. 2. 3. II. 今後の石炭利用 1. 2. III. 価格動向 需要・供給動向 需給・価格見通し 3Eによる石炭評価 地球温暖化対策 今後の課題(まとめ) 2 Ⅰ 石炭需給・価格の動向 1. 価格動向 2. 需要・供給動向 3. 需給・価格見通し 3 特-II-1 2005 年石炭技術会議 石炭価格 石油危機以来のパラダイムシフト (単位:US$/t) 65 60 55 50 45 ベンチマーク価格 40 35 30 25 2006年1月 2005年1月 2004年1月 2003年1月 2002年1月 2001年1月 2000年1月 1999年1月 1998年1月 1997年1月 1996年1月 1995年1月 1994年1月 1993年1月 1992年1月 1991年1月 1990年1月 1989年1月 1988年1月 1987年1月 BJI スポット価格 1986年1月 20 4 市場による価格決定 情緒的な見方 z z セラーの売惜しみ:価格上昇の元凶 バイヤーの買叩き:価格低迷の元凶 現実的な見方 z 価格が高くても買う人がいる (需要過熱:買い手が価格決定、オークション) z 価格が安くても売る人がいる (供給過剰:売り手が価格決定、バナナの叩売り) 5 特-II-2 2005 年石炭技術会議 市場における二つのサイクル バナナサイクル (生産性向上サイクル) 既存炭鉱の拡張 コスト削減 販売量の増加 オークションサイクル (需要拡大サイクル) 既存炭鉱の拡張 生産優先 販売量の増加 生産量の増加 生産性の高い 新規炭鉱の開発 生産優先 新規炭鉱の開発 負 生産性の向上 生産性の低下 正 高コスト炭鉱 減産、閉山 生産量-需要量 供給量-需要量 負の相関関係 (炭鉱の淘汰) 価格の低下 供給の過剰 供給の不足 価格の上昇 6 価格と生産性(米国の例) 価格と生産性は逆相関性を示す 200 180 実質山元価格指数 生産性指数 160 指数(1990=100) 140 120 100 80 60 40 20 0 7 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 特-II-3 2005 年石炭技術会議 石炭輸入 日本は石炭輸入大国(責任大) 韓国 台湾 独国 英国 2004e 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1980 百万トン 日本 8 アジア主要国の発電用石炭消費 需要増が価格上昇の大きな原因 日 本 韓 国 台 湾 BJI Spot Price(US$/トン) 65 20 18 警戒信号◎ 55 16 駄目押◎ 2005年1月 2004年1月 2003年1月 2002年1月 2001年1月 2000年1月 1999年1月 1998年1月 1997年1月 -2 1996年1月 0 10 1995年1月 15 1994年1月 2 1993年1月 4 20 1992年1月 6 25 1991年1月 8 30 1990年1月 10 35 1989年1月 12 40 1988年1月 14 45 1987年1月 50 対前年比増減量(百万トン) BJIスポット価格(US$/トン) 60 出所: IEEJ、計量分析部「データバンク」、KEEI「Korea Energy Review Monthly, March 2004」台湾経済 部能源委員会「Energy Statistical Data Book, 2002」ほか 9 特-II-4 2005 年石炭技術会議 需給ギャップと一般炭価格 現在は供給過剰気味 20% 60 豪州炭輸出伸び率 55 日本輸入伸び率 15% 伸び率差(日本-豪州) 50 ベンチマーク価格(U$/t) 10% 45 5% 40 0% 35 30 -5% 25 -10% 20 -15% 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 15 10 伸び率の差(%) ←供給強 需要強→ ベンチマーク -20% 10 原料炭輸出 伸びているのは豪州炭のみ 豪州 カナダ 米国 ロシア 中国 原料炭輸出量(百万トン) 120 100 80 60 40 20 11 特-II-5 2004e 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 0 2005 年石炭技術会議 一般炭輸出 豪州、インドネシア、ロシア、コロンビアの各炭が伸び 一般炭輸出量(百万トン) インドネシア 豪州 中国 南ア ロシア コロンビア 米国 120 100 80 60 40 20 2004e 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 0 12 石炭可採年数の低下傾向 中国、インドネシアの傾向が懸念材料 250 R/P(年) 200 150 100 50 0 13 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 世界 224 219 218 230 227 216 204 192 アジア 123 119 118 136 132 126 106 94 84 中国 インドネシア 85 92 111 116 105 82 69 59 87 80 52 47 38 82 出所:BP統計 特-II-6 68 58 164 2005 年石炭技術会議 世界の石炭需要見通し(IEO2005) IEO2004より大幅な上方修正 (百万トン) 8,000 7,463 7,046 7,000 6,573 6,000 466 5,000 4,781 4,000 811 3,000 1,245 2,000 4,694 494 4,774 519 520 707 699 1,038 1,045 771 1,478 1,322 1,247 1,203 882 2,140 2,231 (45.6% ) (46.7% ) 2001 2002 アジア・オセ アニ ア 北 米 1,622 (33.9% ) 793 780 757 3,709 3,239 1,000 416 441 6,051 (56.4% ) 4,104 4,374 (58.2% ) (58.6% ) 2020 2025 (53.5% ) 0 1990 2010 東欧・旧ソ連 2015 西 欧 アフリカ 中近東 中南米 14 莫大なアジアの潜在石炭需要 実績値の伸びは見通しよりも速い (単位:100万トン) 5,000 4,585 IEO2005, 高成長ケース 4,683 IEO2005, 基準ケース 4,000 4,266 IEO2005, 低成長ケース 潜在的石炭需要量(IEEJ) 3,568 3,754 実績(IEA) 3,198 3,000 2,084 2,000 1,000 1990 1995 2000 2005 15 特-II-7 2010 2015 2020 2025 2005 年石炭技術会議 日本の石炭需要見通し 実績値は見通しよりも大きな伸び 総合資源エネルギー調査会 石炭供給長期見通し(2004) 石炭換算百万トン 250 215 200 150 173 141 114 136 180 147 144 139 100 レファレンス 現行対策推進 省エネ進展 新エネ進展 BAU(2001) IEEJ2004 実績 50 136 127 106 0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 16 短期的一般炭価格見通し 高価格の是正 17 特-II-8 2005 年石炭技術会議 中期的一般炭価格見通し ベンチマーク価格(U$/t) 生産拡大から生産性向上サイクルへの回帰 18 56 54 52 50 48 46 44 42 40 38 36 34 32 30 28 26 24 22 20 サイクルの変化 生産性向上→生産拡大 豪州ドル為替上限:1U$=1.23A$ 豪州ドル為替下限:1U$=1.59A$ 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 燃料別日本CIF価格の推移 3.0 原油 LNG 2.5 一般炭 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 日本着CIF価格(¢/1000 kcal) 原油、LNGは2000年から価格上昇 19 特-II-9 2005 年石炭技術会議 原油価格と石炭価格の関係 直接的な相関性に乏しい 石炭、LNG価格(¢/1000kcal) 3.0 2.5 R2 = 0.8461 2.0 石炭 LNG 1.5 1.0 0.5 R2 = 0.0352 0.0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 原油価格(¢/1000kcal) 2.5 3.0 20 原油輸入 1985年以降米国の輸入増加が顕著 西欧 米国 日本 韓国 中国 14 12 百万B/D 10 8 6 4 2 0 1980 21 1985 1990 出所:IEA, Oil Informationより作成 特-II-10 1995 2000 2005 2005 年石炭技術会議 米国の原油動向 価格が上昇しても生産が増えず、輸入が減らない 実質国内価格(2000年) 名目輸入価格 需要 生産 純輸入 80 25 70 20 60 百万B/D 40 10 価格($/bbl) 50 15 30 20 5 10 0 22 0 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005e 出所:EIA, Annual Energy Review 2004などより作成 原油輸出 中東依存大、しかしその伸びは低調 中東 旧ソ連 西アフリカ 中南米 輸出量(百万B/D) 25 20 15 10 5 0 1980 23 1985 1990 出所:BP統計より作成 特-II-11 1995 2000 2005 2005 年石炭技術会議 輸出入需給ギャップと原油価格 中東の輸出の伸びを上回る輸入の伸び ドバイ原油スポット価格 20% 50 15% 40 10% 30 5% 20 0% 10 -5% 0 対90年需給の伸び率の差(%) ←供給 需要→ 価格($/bbl) 需給ギャップ(全輸入-中東輸出) 60 -10% 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 24 Ⅱ 今後の石炭利用 1. 3Eによる石炭評価 2. 地球温暖化対策 25 特-II-12 2005 年石炭技術会議 日本のエネルギー政策の基本目標 「環境保全や効率化の要請に対応しつつ、 エネルギーの安定供給を実現する」 (3Eの調和) Energy Security(安定供給) z Economics(経済効率) z Environment(環境対策) z 26 有事に強い石炭 原油 LNG 原料炭 一般炭 3.0 燃料価格(US¢/1,000kcal) 湾岸戦争 第三次石油危機? 2.5 第二次石油危機 2.0 1.5 第一次石油危機 1.0 0.5 27 特-II-13 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 1973 1971 1969 1967 1965 0.0 2005 年石炭技術会議 価格安定性の高い石炭 変動係数(標準偏差/平均価格、1983~2004) 43 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 16 6 原油 LNG 原料炭 4 一般炭 28 化石エネルギーの環境負荷比較 CO2排出原単位は石炭が最大 (g-C/1,000kcal) 140 120 燃料種別排出原単位 112.90 100% 100 2.03 5.59 89.92 80% 80 生産/設備 0.96 5.09 輸送 77.52 69% 2.36 12.51 60 105.28 83.88 40 62.66 20 0 石炭 29 石油 出所:エネ研定例研究会資料(1999年5月) 特-II-14 LNG 2005 年石炭技術会議 3Eによる化石燃料評価 環境 (1/CO2負荷) 100% 石炭 石油 50% LNG 0% 安定供給 (1/変動係数) 経済性 (1/価格) 30 脱硫、脱硝、集塵技術の進歩 環境負荷が大でもCCTにより克服した例 350 300 M発 電所(1981年 運開) 300 260 250 I 発 電所 (2002年 運開 ) 200 150 100 100 50 20 20 10 0 S Ox(ppm) 31 NOx(ppm ) 出所:電源開発㈱ 特-II-15 PM (m g/m3 N) 2005 年石炭技術会議 CO2削減におけるCCTの必要性と限界 ガス火力の熱効率は石炭火力よりも先行 その差を広げないためにCCTの研究開発は重要 CCTのコスト競争力が実用化の判断基準 CCTのみにCO2対策を委ねることに限界 CCTと京都メカニズムの組合せ z z z z z 世界の発電効率の見通し 38 平均(1997年) 40 PC PC(USC) 41 PFBC 42 46 IGCC(1,500℃) 54-60 IGFC 53 ガスCC(実績) 65 ガスFC 0 10 20 30 40 50 60 70 熱 効 率 (%) 出所:IEA, World Energy Outlook 2002 32 排出権取引の利用 z z 低コストで温暖化ガスを削減できる CCTのコストのベンチマーク 単位:$/t-CO2 日本国内だけ 米国内だけで 欧州内だけで で対策 対策 対策 82 33 48 77 出所:IEA, International Emission Trading - From Concept to Realty 特-II-16 排出権取引 (世界全体) 8 2005 年石炭技術会議 EU排出権価格の推移 今年より排出権価格が急上昇 z 石炭利用に伴う排出権の購入の増加 z Point Carbon CO2 Emissions Price (10ユーロ/t-CO2≒5000円/t-C) 34 英国、独国における石炭火力の競争力 ガスと石炭の価格差により石炭火力優位 スパークスプレッド($/MWh) 2005/12/02 140 120 100 80 60 40 20 0 -20 121.44 51.00 7.40 -0.62 (40%) (49%) (40%) (49%) 石炭火力 GTCC 石炭火力 GTCC 英国 独国 35 特-II-17 2005 年石炭技術会議 排出権価格を含めた石炭価格(EU) 直近では石炭火力がコスト的に優位 排出権込価格 $/mt CIF ARA価格 $/mt CO2 排出権価格 $/mt-石炭 100 2006/1/31 2006/1/24 2006/1/17 2006/1/10 2006/1/3 2005/12/27 2005/12/20 2005/12/6 2005/12/13 2005/11/29 2005/11/22 2005/11/8 2005/11/15 2005/11/1 2005/10/25 2005/10/18 2005/10/4 2005/10/11 2005/9/27 2005/9/20 2005/9/6 2005/9/13 0 36 日本における発電コストの比較 CO2削減対策を含めても石炭火力の競争力は高い 石炭火力 LNG火 力 石油火力 発電・運転コスト(\/kWh) 12 10 8 6 4 2 0 0 2,500 5,000 7,500 10,000 排 出 権 価 格 /環 境 税 (\/t-C) 37 特-II-18 12,500 15,000 2005 年石炭技術会議 温暖化対策を踏まえた石炭利用 経済性のメリットを環境対策へ 環境 (1/CO2負荷) 100% 温暖化対策費:2400¥/t-C 50% 対策前 0% 対策後 安定供給 (1/変動係数) 経済性 (1/価格) 38 石炭利用の将来像 ×従来通り:CO2排出増 ◎ CO2排出を減らしつつ石炭利用 価格競争力 + 競争力あるCCT + 京都メカニズム (3点セットによる石炭利用) ↓ 市場の選択 地球温暖化防止と石炭火力発電の提案について(2005年11月25日) 私ども電力業界は、原子力開発の推進、京都メカニズムの活用などとともに、石炭火力を 含めた火力発電における熱効率のさらなる向上を図り、平成22年度(2010年度)の電力 使用端CO2排出原単位を平成2年度(1990年度)比で20%程度低減するよう、自主的に努 力しております。 出所:電気事業連合会HP,トピックスより抜粋 39 特-II-19 2005 年石炭技術会議 Ⅲ まとめ(今後の課題) 当面の石炭需給・価格動向 豪州の石炭鉱山を中心とした増産、新規開発 による供給の増加によって、当面の需給は安 定する見込み z 価格帯も生産者が持続可能な範囲に落ち着く と思われる z しかし2010年以降になると不確定な要素が多 数存在し、安定供給に向けた対策が今から必 要となる z 40 2010年以降の課題(リスク) z 資源リスク:中国、インドネシアの確認埋 蔵量の低下 z アジアを中心とする莫大な石炭潜在需要 (中国、インド、ASEAN) z 中国、米国、南ア、インドネシアの輸出余 力期待薄→豪州への一極化が進む(原料 炭においては既に進行中) z 為替リスク:日本、米国で経験済み 41 特-II-20 2005 年石炭技術会議 氏 名 みむろと よしみつ 三室戸 義光 (財)日本エネルギー経済研究所 研究理事・産業研究ユニット総括 太平洋コールフロー推進委員会事務局長 最終学歴 主要経歴 1972-1977 年 1977-2001 年 2001 年より 1972 年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程(応用科学) 卒業 出光興産株式会社入社 石油精製に従事 海外炭開発に従事 現勤務先にて石炭市場動向、石炭利用に係わる地球温暖化対策などを主テー マとした調査研究に従事 特-II-21