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コミュニケーションを楽しむ児童を育てる外国語活動の在り方(PDF形式

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コミュニケーションを楽しむ児童を育てる外国語活動の在り方(PDF形式
コミュニケーションを楽しむ児童を育てる外国語活動の在り方
-段階を踏まえた単元指導計画の工夫-
高松市立鬼無小学校
教諭
髙木
美紀
研究の概要
コミュニケーション能力の素地を養うには,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の
育成が重要であり,そのためには児童にコミュニケーションの楽しさを体験をさせることが必要で
あると考えた。そこで,単元指導計画の作成に当たり,まず児童の興味・関心に合ったコミュニケ
ーション活動を設定し,それを行うのに必要な段階を踏まえた慣れ親しみの活動を設定することに
した。このような単元指導計画に基づき授業実践を行った結果,児童はコミュニケーション活動に
おいて,聞くこと・話すことにも積極的に取り組み,単元を通して外国語活動を「楽しい」と感じ
ることができた。
<キーワード>
Ⅰ
単元指導計画
コミュニケーション活動
慣れ親しみの活動
主題設定の理由
小学校学習指導要領によれば,外国語活動の目標は「外国語を通じて,言語や文化について体験
的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や
基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う」ことである。同解説
では,外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点が置かれてお
り,コミュニケーションに関して指導する内容として「(1)外国語を用いてコミュニケーションを
図る楽しさを体験すること,(2)積極的に外国語を聞いたり,話したりすること,(3)言語を用いて
コミュニケーションを図ることの大切さを知ること」が示されている。このことから,積極的にコ
ミュニケーションを図ろうとする態度を育成するには,児童がコミュニケーションを楽しいと感じ
ることが重要であるといえる。
置籍校で昨年度2月に5年生41名に対して実施した「英語活動に関するアンケート」で,「英語
活動が好きですか」という設問に対する回答は,「とてもそう思う・そう思う」は63.4%だった。
「どんな活動が好きですか」という設問では5つの活動について尋ねたところ,お話が90.2%,ゲ
ームが87.8%で,聞くことは65.9%,歌は48.8%,話すことは46.3%であった。この結果から,英
語活動については半数以上の児童が好きであること,お話・ゲームに比べると,聞くこと・話すこ
とや歌は好きな児童が少ないことが分かる。特に,聞くこと・話すことは,音声を中心とする外国
語活動ではコミュニケーションの主な手段であることから,児童が十分にコミュニケーションを楽
しめていない実態があると考えられる。そこで本研究の主題を,コミュニケーションを楽しむ児童
を育てる外国語活動の在り方とした。
外国語活動で行う活動には,歌やチャンツ,ゲーム,コミュニケーション活動などがあるが,聞
いたり話したりする活動を好きな児童が少ない背景には,コミュニケーション活動自体が児童にと
って魅力的なものになっていないこと,ゲームや歌などの活動がコミュニケーション活動にうまく
生かされていないことが考えられる。児童がコミュニケーションを楽しめるようにするには,児童
の興味・関心に合ったコミュニケーション活動を設定すること,そこに至るまでに歌やチャンツ,
- 1 -
ゲームの中で必要な単語や表現に慣れ親しませ,抵抗感を取り除いておくことが必要である。その
ためには,段階を踏まえた単元指導計画を作成することが重要である。置籍校において主な教材と
して使用している『英語ノート』では,各レッスンが「Let's Play」「Activity」など5種類の活
動によって構成されている。これらの活動を通してコミュニケーションを楽しむ児童を育てること
ができるような単元指導計画を工夫したい。
Ⅱ
研究方法
○ 文献や先行研究から,本研究に関する効果的な指導の在り方を探る。
○ 『英語ノート』を活用した外国語活動の単元指導計画を考え,授業実践をする。
○ 実践後,児童の振り返りカードを分析して,成果と課題を明らかにする。
Ⅲ
研究内容
1
単元計画の工夫
(1) 児童の興味・関心に合ったコミュニケーション活動
コミュニケーションは話し手と聞き手の相互のやりとりであり,「話したい」「伝えたい」と思う
気持ちと,「聞きたい」「知りたい」と思う気持ちがあって成り立つものである。コミュニケーシ
ョン活動において児童がコミュニケーションを楽しむには,興味・関心をもって取り組めることが
必要である。卯城は「『表現を聞いたり,話したりすることが自然であるような場面』を,児童の
『興味・関心・生活から選択し,それに基づき活動を組
む』など,児童が進んでコミュニケーションを図りたいと
話したい
聞きたい
楽しい
やってみたい
話題
活動内容
工夫
思うような興味・関心のある題材を取り上げることが大事
である」 1) と述べている。話題の設定について述べられる
ことは多いが,児童の興味・関心に合ったコミュニケーシ
ョン活動には他にも必要な条件があると考え,話題,活動
・新しい気付き
・知的好奇心が
満足
・ゲーム的要素
内容,工夫の三つを取り上げることにした。<図1>。
①
児童が「話したい」「聞きたい」と思う話題
・意欲付け
・活動の組み方
・活動を続ける
手立て
〈図1〉コミュニケーション活動の条件
新しく知ったり気付いたりすることがある,知的好奇心を満足させられるなど,児童が「話した
い」「聞きたい」と思う話題を扱うことが大切である。食べ物やスポーツの好み,買物など,身近
な話題だと児童はイメージしやすいと考える。
尼崎市立潮小学校の実践例※1(英語ノート2Lesson9)では,将来の夢について発表する前に,
児童にとってより身近な将来である「中学校でやってみたい部活動」を話題として取り上げている。
ほかにも,家庭科でみそ汁づくりについて学習した後,「我が家のみそ汁」を紹介することで,家
庭によって違うことに気付くなど,他教科との関連から話題を考えることもできる。より身近な話
題を選択することで児童の意欲も高まり,話が広がったり発見や驚きが生まれたりすると考える。
②
児童が「楽しい」と感じる活動内容
置籍校の6年生が5年生時の2月に実施したアンケートでは,87.8%の児童が「ゲームが好き」
だと回答している。児童は外国語活動に限らずゲームが好きである。コミュニケーション活動にゲ
ーム的要素を取り入れると,児童は活動そのものを「楽しい」と感じて意欲的に取り組むと考える。
なお,ゲーム的要素とは,ルールがあり,友だちとかかわりながら行えるものと考えている。
※1
尼崎市立教育総合センター:「外国語活動におけるコミュニケーションを図る楽しさを味わう授業の研究」
研究報告書紀要48号,2011,p.17-36
- 2 -
八戸市立市野沢小学校の実践例※2(英語ノート1Lesson8)に,「自分と同じ教科を選んだ友だ
ちを探す」活動がある。多くの友だちと交流する必要をもたせるために,教科を二つ選ばせ,同じ
組合せを選んだ友だちを探すという設定である。ゲームでは,児童が「できるだけたくさんの人と
交流しよう」と,あまり接することのない相手にも気軽に話しかけることが期待できる。
③
児童が「やってみたい」と感じる工夫
児童が活動を続けるには,「やってみたい」と感じる工夫が必要である。意欲付け,活動の組み
方,活動を続けるための手立ての三つを考えた。
意欲付けでは,事前に関連のある話やゲームをして児童の関心を高めたり,活動をするとサイン
やシールが集まる,作品が出来るなどの楽しみがある設定にしたりすることが考えられる。
活動の組み方では,人数や形態を考え一人一人に役割をもたせることが大切である。熊本市立池
上小学校の実践例※3 (英語ノート1Lesson8)では,児童が時間割を考えて発表する活動を5人
のグループで行い,一人が一つの曜日について紹介できるような設定にしている。
活動を続ける手立てとして,英語で表現することが難しい場合には,友だち同士で助け合うこと,
ジェスチャーや表情など非言語を活用すること,場合によっては日本語を使うことなどが考えられ
る。京都市立藤ノ森小学校の実践例※4(英語ノート1Lesson5)では,自分が選んだ服を「どこ
に着て行きたいか」を発表するとき,日本語を使ってよいという設定にしている。自分の思いを英
語だけで伝えることが難しい場合には,日本語を使うことも有効である。
(2) 単語や表現に慣れ親しませ,抵抗感を取り除く工夫
コミュニケーション活動を楽しむには,単語や表現への慣れ親しみが必要である。萬谷は「慣れ
親しみの活動は,楽しい中にも『さりげなく』障害を取り除く配慮が込められ,コミュニケーショ
ン活動において,『知らないうちに』使用表現がなめらかに言えるようになっていることが理想で
ある」2)と述べている。このような活動としては,歌やチャンツ,ゲームなどが考えられる。
単元の構成について,『小学校外国語活動研修ガイドブック』では「聞く活動から口まねする活
動,記憶したり自分のものにしたりする活動,自分の意思で選んで発話する活動へ」3)と,直山は
「『聞く』『まねて言う』『記憶に残す』『自分の立場で自分の思いを話す』の順に仕組む」4)と述べ
ている。本研究では,これらを参考に,単語や表現に慣れ親しませるための活動を「知る・聞く・
繰り返す」「聞き取る」「必要な英語を話す」の3段階に
設定した。「知る・聞く・繰り返す」は,何度も聞いたり
言い慣れたりする段階で,継続して行う必要があると考
える。「聞き取る」は集中して意味を考えながら聞く,
「必要な英語を話す」は活動するのに必要な単語や表現
を自分で考えて発話する段階である。慣れ親しみの各段
階において歌やチャンツ,ゲームをどのように活用した
らよいかを以下に述べる<図2>。
①
慣れ親しみ
の3段階
知る・聞く
・繰り返す
継
続
し
て
行
う
歌・チャンツ
ゲーム
新しい単語や表現
キーワードゲーム
に触れる
ステレオゲーム
一緒に何度も言う
聞き取る
一部を変えて聞か 色塗りゲーム
せる
カルタ取り
必要な英
語を話す
必要な表現に言い ミッシングゲーム
換える
カード当てゲーム
〈図2〉慣れ親しみの各段階における活動例
歌やチャンツの活用
置籍校では,歌を好きな児童が48.8%(前述のアンケート)と少ない。しかし,歌やチャンツで
は,英語の音声やリズムに慣れ親しむことができること,一緒に手拍子をし,体を動かすなど楽し
※2
※3
※4
文部科学省:「新学習指導要領に対応した外国語活動及び外国語科の授業実践事例映像資料(小学校版)」(DVD)2010
文部科学省:前掲※2
第5回全国小学校英語活動実践研究大会:「公開授業指導案集」2009,p.103-108
- 3 -
むこともできることから,慣れ親しませるために積極的に活用したい活動である。歌やチャンツは,
新しい単語や表現に触れたり一緒に何度も言ったりすることができ,「知る・聞く・繰り返す」段
階に有効である。また,チャンツの一部を変えて聞かせることで「聞き取る」活動をしたり,一部
を自分に必要な表現に言い換えて「必要な英語を話す」活動をしたりすることもできる。
『英語ノート1』では歌は5曲,チャンツは6つ,『英語ノート2』では歌は3曲,チャンツは
7つが扱われており,各レッスンに歌かチャンツのいずれか一つは用意されているが,適切な歌や
チャンツがない場合には,自作することも考えられる。なお,歌やチャンツは,難易度を考えて使
用する必要がある。やや難しいものに挑戦した場合も,言えるようになったという満足感を味わえ
るまで継続して活用するようにしたい。
②
ゲームの活用
前述したように,児童はゲームが好きである。ゲームだと,児童は活動そのものを楽しいと思っ
て取り組み,単語や表現を自然に何度も繰り返し言うことができる。
『英語ノート』では,様々なゲームが扱われている。「知る・聞く・繰り返す」ものとしてキー
ワードゲームやステレオゲーム,「聞き取る」ものとして色塗りゲームやカルタ取り,「必要な英
語を話す」ものとしてミッシングゲームやカード当てゲームなどがある。ゲームについても適切な
ものがない場合には,改良したり自作したりすることも考えられる。
慣れ親しみの活動としてゲームを扱う場合には,必要な単語や表現を使う場面が十分あるような
ゲームを選択する必要がある。また,慣れ親しみの3段階に沿って,活動のねらいは何か,児童に
とって無理のない内容になっているかを考えておくことも大切である。
(3) 単元指導計画作成上の留意点
慣れ親しみの
活動
『英語ノート』は,1単元が3~4時間扱いになって
いる。指導を行うに当たっては,前項の(1)(2)で示した
ことも踏まえ,以下の三つのことに留意して単元指導計
画を作成する必要があると考えた<図3>。
①
単元指導計画を考える順序
『英語ノート』の構成について,菅は「単元最後に行
う活動が,その単元の目標を達成させるために用意された
コミュニケーション
活動
考える
順序
必要な活動を
計画
最初に設定
話すことへの
抵抗感を
取り除く
・ペアやグループで
・温かい雰囲気
自信
発達段階を
考慮
・知的好奇心を刺激する
・自主性を大切にする
〈図3〉単元指導計画作成上の留意点
活動となっている」5)と述べていることから,コミュニケーション活動がその単元のねらいを達成
させるのに重要であるといえる。そこで,単元指導計画を作成する場合には,どのようなコミュニ
ケーション活動を行うかを最初に考えるようにする。児童の実態やねらいに合ったコミュニケーシ
ョン活動が決まると,それを行うのに必要な単語や表現が明らかになる。そこで,単語や表現に慣
れ親しませるために,それまでにどのような活動を取り入れるとよいかを考えていくようにする。
慣れ親しみの段階に応じて,ねらいに合った歌やチャンツ,ゲームなどの活動を取り入れるように
することも大切である。
②
話すことへの抵抗感を取り除く活動の設定
児童の中には,「恥ずかしい」「声が小さい」など人前で話すことを苦手と感じている児童も少
なくないことから,話すことに慣れ,抵抗感を取り除けるような工夫をする必要がある。単語や表
現に慣れ親しませるための活動においてもコミュニケーション活動を意識し,教師や友だちとペア
やグループで話す場面を設定する。話す相手がいることで相手意識をもつこともできる。同時に聞
- 4 -
くときの態度や分からないときには教え合うことなどを意識させ,温かい雰囲気作りをしておくよ
うにする。特に,クラス全体の前で発表するようなコミュニケーション活動を設定する場合には,
一人一人が自信をもって言えるようにする配慮が必要となる。
③
高学年の児童の発達段階への考慮
高学年になると,論理的思考力・理解力が高まってくる。知的好奇心も強くなり,新しいことを
知りたい,学びたいという意欲が旺盛になる。抵抗感を取り除くことは大切だが,簡単な活動ばか
りでは満足感や達成感を得ることが難しくなる。そこで,児童が自信をもって取り組める活動と,
児童の知的好奇心を刺激し「少し難しいけどやってみたい」と思える活動の両方を取り入れること
が必要となる。そして,「使えた」「通じた」という成功体験を積み重ねることが満足感や達成感
につながると考える。また,児童の自主性を大切にし,活動の中に自己決定や自己選択の場を取り
入れ,自分の考えや思いを表現できるようにすることも考えられる。
2
授業実践Ⅰ(第6学年英語ノート2Lesson3「友だちの誕生日を知ろう」)
(1) 単元指導計画の作成
本単元の指導計画を,表1のように作成した。扱う単語が多く,月の言い方を第1時に,日付の
言い方を第2時に新しく習うこととなる。そこで,児童が単語や表現に慣れ親しむための時間を十
分確保できるように,コミュニケーション活動は第4時のみに行うこととした。新しく習った単語
や表現は,その時間に聞いたり繰り返したりする活動を行い,話す活動はすぐに行わないよう配慮
した。また,単語や表現は,単元を通して継続して耳にすることができるように活動を考えた。
〈表1〉Lesson3単元指導計画と慣れ親しみの活動の段階
時・主題
1
季節の行事
や月の言い
方を知ろう
2
日付の言い
方を知っ
て,自分の
誕生日を言
えるようにな
ろう
3
誕生日につ
いて聞き取
ろう
4
友だちと誕
生日を伝え
合おう
児童の活動
太字は英語ノートにない活動
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
6
Activity
月の言い方の練習
Let's Listen
Let's Play(キーワードゲーム)
歌♪Twelve Months
月の言い方の復習
歌♪Twelve Months
キーワードゲーム2
Activity(日付の言い方)
色塗りゲーム
誕生日チャンツ
1 月と日付の言い方の練習
(歌を含む)
2 誕生日チャンツ
3 Activity①
4 Let's Listen
5 ドンジャンケン
6 誕生日チャンツ2
知る・聞く・
繰り返す
Activity
月の言い方
Let's Play
(キーワードゲーム)
歌
単語や表現に慣れ親しませ,抵抗感を取り除く活動
月の言い方
日付の言い方
聞き取る
必要な英語を話す
知る・聞く・ 聞き取る
必要な英語を
繰り返す
話す
Let's Listen
行事について
月と国名を聞き
取る
キーワードゲーム2
日本語で言い,キーワ
ード以外を英語に直し
て言う
誕生日
チャンツ
Activity①
Let's Listen
家族の誕生日
を聞き取る
(*1)
1 誕生日チャンツ
2 誕生日チャンツ2
(グループで練習)
3 誕生日集めゲーム
(コミュニケーション活動)
ドンジャンケン
床に並べたカードの英
単語を言いながら進み,
出会ったところでジャン
ケンをする(*2)
誕生日チャンツ2
自分の誕生日を入れて
言う(*3)
誕生日チャンツ2
チャンツを使ってグルー
プで誕生日の聞き方や
答え方を練習する(*4)
Activity
日付の言い
方
誕生日
チャンツ
色塗りゲー
ム
日付の言い
方を聞き取
り,色を塗る
Let's
Listen
(*1と同じ)
ドンジャンケン
(*2と同じ)
誕生日チャンツ
2
(*3と同じ)
誕生日チャンツ
2
(*4と同じ)
(2) 慣れ親しみの活動の工夫
①
色塗りゲーム(日付の言い方に慣れ親しませる活動)
第3時に誕生日を聞き取る活動があるが,日付の言い方だけを聞き取る活動は『英語ノート』に
なく,慣れ親しみが不十分であると考えた。そこで,日付の言い方を聞き取る活動として,第2時
- 5 -
で色塗りゲームを行うこととした<図4>。
日付の言い方に変わったものの,数の言い方は既習であるこ
と,31日までで数が少ないこと,数がカレンダーのように並んで
いて見付けやすいことから,児童は色塗りをしたら何の形になる
のかを予想しながら集中して聞くことができた。
②
誕生日チャンツ
(誕生日の尋ね方と答え方に慣れ親しませる活動)
〈図4〉色塗りゲームワークシート
『英語ノート』には,“When's your birthday?”という誕生日の尋ね方を練習する活動がないこ
とから自作したチャンツである。誕生日
When's
の尋ね方だけでなく,児童に関係の深い
January
先生方の誕生日や行事の日付を使って月
February
14th.
February
14th.
や日 付 の言 い 方に 慣れ 親 しめ る よう に
February
27th.
February
27th.
し,内容はプレゼンテーションソフトで
March
your
birthday?
1st.
3rd.
示した<図5>。また,チャンツは繰り
January
March
When's
your
birthday?
1st.
3rd.
〈図5〉誕生日チャンツの一部
え返し言うことができるように工夫した。
③
ドンジャンケン(月と日付の言い方に慣れ親しませる活動)
第3時では,ドンジャンケンというゲームをした<図6>。絵カ
ードを列に並べ,その単語を言いながら進み,反対側から来た児童
と出会ったところでジャンケンをし,負けたら勝った児童に道を譲
り,次の児童と交代するゲームである。月と日付のカードを使用し
たため単語数が多く,自分で考えて英語を言うことは児童にとって
少し難しいと思われた。そこで,分からない時には,“Help.”と言
〈図6〉ドンジャンケンの様子
って助けを求め,同じチームの友だちに教えてもらえるというルールにした。
「分からないのがあった」「ちょっと難しかった」と感じた児童もいたが,スタート前には近く
のカードの単語を練習するなど前向きにゲームに取り組んでいた。また,分からない単語は教え合
い,不安な児童の横には友だちが付き添う姿も見られた。
(3) コミュニケーション活動の工夫
単元の最後に行うコミュニケーション活動は「誕生日集めゲー
ム」とした。366日分のカレンダーを印刷したワークシートを使
い,友だちに誕生日を尋ね,言われた日付を押さえたり日本語で言
えたりしたらサインがもらえるという設定にした<図7>。6年間
同じクラスだった児童が多く,お互いの誕生日を既に知っているこ
とも考えられるため,サインをもらうことで伝え合う必要があるよ
〈図7〉誕生日集めゲームの様子
うにした。本単元の学習に入ってからは授業の始めに誕生日が近い児童にバースデイカードを渡し,
誕生日への関心を高めるようにした。また,授業後にワークシートを見たら友だちの誕生日が分か
ること,ワークシートを活用して家族や他のクラスの友だちにも誕生日を尋ねてサインをもらえる
ようにしたことも工夫点である。
活動を始める際には,話し方として,相手に分かりやすいように表情も考えること,何回か繰り
返して言うこと,聞き方として,目を見たりうなずいたりすること,相手の言ったことを繰り返す
- 6 -
ことなどを助言した。
活動時間を十分に確保した結果,児童は男女関係なく全員のサインを集めようと活発に活動した。
ワークシートの受渡しがあることで“Thank you.”“Goodbye.”という言葉が自然に言え,相手の
言葉を最後までよく聞いて活動ができてい
た。6年生になるとサインにも個性があり,
サインを集める活動は児童にとって興味ある
ものとなった<図8>。
(4) 考察(振り返りカードより)
音声・表現への慣れ親しみの活動では,図
〈図8〉ワークシートの一部
とてもそう思う
9のように,「よく聞いたり声に出したりし
第1時
たか」という問いに対して「とてもそう思
第2時
う」と答えた児童が回を重ねるごとに増えて
第3時
いることから,単語や表現に慣れ親しむこと
そう思う
あまりそう思わない
8
全然そう思わない
11
11
2
7
3
13
8
〈図9〉よく聞いたり声に出したりしましたか(人)
ができたと考えられる。児童の感想には,「月や日付を言いながら進むゲームが楽しかった」「ゲ
ームがちょっと難しかったけど楽しかった」と意欲的に活動に取り組んだ様子や,「自分の誕生日
が完ぺきに言えるようになってよかった」と活動を通して自信をもてるようになった様子が表れて
いた。
とてもよい
コミュニケーション活動である「誕生日集
めゲーム」について,「誕生日を伝え合う」
「英語を使う」「友だちと伝え合う」「サイン
よい
あまりよくない
誕生日を伝え合う
6
15
英語を使う
11
10
が集まる」の4項目について児童に評価させ
友だちと伝え合う
14
たところ,図10のような結果となった。サイ
サインが集まる
14
ンが集まるという工夫については全員の児童
ぜんぜんよくない
1
6
7
〈図10〉 「誕生日集めゲーム」でよかったことは?(人)
が「とてもよい」「よい」と答え,おおむね予想どおりであったが,誕生日という話題についても
関心が高かったことが分かった。また,昨年度のアンケートでは聞くこと・話すことを好きな児童
は少なかったが,友だちと伝え合うことについて「よい」ととらえた児童が多かった。児童の感想
には,「たくさんの友だちの誕生日が分かった」「分からないところはジェスチャーなどで教えて
もらった」とあり,友だちと上手に伝え合うことができたと考えられる。
図11のように,第3時終了後よりも,実際
とてもそう思う
にコミュニケーション活動を行った第4時終
第3時
了後の方が,誕生日を聞いたり教えたりした
第4時
いという児童の気持ちが高まっていることか
ら,今回のコミュニケーション活動は児童の
興味・関心に合っていたと考えられる。
そう思う
あまりそう思わない
11
全然そう思わない
8
14
1 1
6
1
〈図11〉誕生日を聞いたり教えたりしたいですか(人)
とてもそう思う
第1時
単元を通して,児童は図12のように「とて
第2時
も 楽 し か っ た 」「 楽 し か っ た 」 と 感 じ て い
第3時
る。特に,第4時終了後にはほとんどの児童
第4時
が「とても楽しかった」と感じている。
そう思う
あまりそう思わない
8
全然そう思わない
13
17
4
14
7
19
2
〈図12〉楽しかったですか(人)
以上のことから,段階を踏まえて慣れ親しみの活動を積み重ねた結果,児童の意欲が高まり,コ
- 7 -
ミュニケーション活動においても楽しく活動できたと考えられる。しかし,本実践におけるコミュ
ニケーション活動は誕生日という決まった内容について聞いたり話したりする活動であったため,
“Thank you.”“Goodbye.”といった自然な発話はあったものの,話を聞いて質問するなどのコミ
ュニケーションの深まりは不十分であった。そこで,コミュニケーションの深まりを意識したコミ
ュニケーション活動を設定し,授業実践Ⅱを行うこととした。
3
授業実践Ⅱ(第5学年英語ノート1Lesson7「クイズ大会をしよう」)
(1) 児童の実態
置籍校で本年度の7月に実施された「英語活動に関するアンケート」の結果,授業を行うクラス
の「英語活動が好きですか」という設問に対する回答は,「とてもそう思う・そう思う」が77.8%
であった。しかし,「どんな活動が好きですか」という設問では,ゲームが77.8%で,他の4つは
お話44.4%,話すこと44.4%,聞くこと40.7%,歌34.6%であった。この結果から,児童は英語活
動は好きなものの,ゲームを除く他の活動をあまり楽しいと感じていないことが分かった。
そこで,本実践に当たって,児童が「チャンツなどでリズムに乗って英語を言うことの楽しさを
感じること」「コミュニケーション活動として行うクイズ大会の中で友だちと十分に話す・聞く活動
をすること」が大切であると考えた。
(2) 単元指導計画の作成
本実践では,表2のような単元指導計画を作成した。
〈表2〉Lesson7単元指導計画と慣れ親しみの活動の段階
時・主題
1
これは何
かな?言
葉の成り
立ちの面
白さを知ろ
う
2
身近なも
のを使っ
たクイズに
答えよう
3
ダブルチ
ャンスクイ
ズを作ろ
う
4
ダブルチ
ャンスクイ
ズ大会を
開こう
児童の活動
太字は英語ノート以外の活動
1 Activity
2 海の生きものクイズ
3 Activity1
4 Let's Chant
5 文房具チャンツ
6 キーワードゲーム
7 ウィンドウクイズ
(ヒントチャンツ1)
1 文房具&ヒントチャンツⅠ
2 指さしゲーム
3 Activity2 (*1ダブルチャ
ンスクイズでする)
4 Let's Play
5 ヒントチャンツ2
6 シルエットクイズ (*1)
1 文房具&ヒントチャンツⅡ,
イエスノーチャンツ
2 ウィンドウクイズ
ブラックボックスクイズ
シルエットクイズ
3 クイズづくり
4 クイズの練習
1 文房具&ヒントチャンツⅡ,
イエスノーチャンツ
2 クイズ紹介
3 クイズ大会(前半)
4 クイズ大会(後半)
5 工夫・感想発表
単語や表現に慣れ親しませ,抵抗感を取り除く活動
知る・聞く・繰り返す
聞き取る
必要な英語を話す
Activity
Let's Chant
文房具チャンツ
ウィンドウクイズ
ヒントチャンツ1(色・形)
・文房具を答える
キーワードゲーム
・第1時なので,英語で答
・文房具(実物)を使って行う
えられない場合は,絵を
・キーワードを三つ設定し,キーワードの
指したり日本語で言った
文房具を選んで取るようにする
りする
(文房具+ヒント1)
指さしゲーム
・文房具,色と形で行う
・言われたものの絵を
ヒントチャンツ2
押さえる
Activity2(ブラックボックスク
(シルエットクイズのやり
イズ)
方)
Let's Play
シルエットクイズ
(文房具+ヒント1+ヒント
2)
イエスノーチャンツ
ウィンドウクイズ・ブラックボックスクイズ・シルエットクイズ
・ヒントの出し方,答え方を練習する
・クイズを出す役も児童がする
クイズの練習
クイズ大会
・前半・後半3グループず
つに分かれる。
・1グループ7~8分
その他
海の生きも
のクイズ(漢
字)
Activity1
(数は既習)
ヒ ン ト チ ャン
ツ1(色・形
は既習)
何をクイズに
出したいか,
どのクイズを
したいか希
望調査をし
ておく
クイズづくり
クイズ紹介
工夫・感想
発表
本単元のコミュニケーション活動として「ダブルチャンスクイズ大会」を設定した。「ダブルチ
ャンスクイズ」とは,一つのものについて二つのクイズを行うもので,2度答えるチャンスがある
ことから名前を付けた。第1クイズは出題する児童が自分の大切にしているものや好きな食べ物,
嫌いな食べ物の絵や写真,実物などを用意し,解答者はそれが何かを当てるクイズである。第2ク
イズは,第1クイズに出したものについて出題者が“I like~.”又は“I have~.”と言い,その
- 8 -
ことについて,解答者が○×カードを挙げて“Yes”か“No”かを当てるクイズである。第1クイ
ズには,ウィンドウクイズ,ブラックボックスクイズ,シルエットクイズの3種類を取り入れるこ
ととし,第1時には色と形を使うウィンドウクイズ,第2時にヒントを言う必要があるブラックボ
ックスクイズ,シルエットクイズを扱うこととした。
クイズ大会を行うのに必要な表現には,ヒントを出すとき・ヒントをもらうとき・答えるときの
表現や色・形の表現がある。そこで,これらの表現を慣れ親しみの活動で扱うことにした。なお,
本単元で扱う単語には,海の生き物と文房具があるが,クイズ大会で使うことや児童にとって身近
であることから文房具を継続して扱うこととし,海の生き物については第1時のみとした。
(3) 慣れ親しみの活動の工夫
①
キーワードゲーム・指さしゲーム(文房具・色や形の言い方に慣れ親しませる活動)
キーワードゲームは児童が既に何度も経験していることから,消しゴムだけでなく筆箱,定規な
どの実物を置いて取るようにすることで,繰り返すだけでなく聞き取る活動も行えるようにした。
指さしゲームは,文房具や様々な色をした形を印刷したプリントを使って行った。聞き取る活動
として絵をきちんと押さえられているかを確認しながら行い,押さえる速さは競わせないようにし
た。後半は一度置いた指は動かしてはいけないことにして,5つ
の言葉のうちいくつ押さえられるかを楽しむゲームとした。
キーワードゲームでは,児童は文房具の名前を聞き取り,実物
をよく見て言われたものを取ることで活動に集中していた。指さ
しゲームでは,図13のように絵を探して,その場所に応じて押さ
え方も工夫するなど,よく見たり考えたりしながら楽しくゲーム
をすることができた。
②
〈図13〉指さしゲームの様子
ヒントチャンツ・イエスノーチャンツ(クイズ大会に必要な表現に慣れ親しませる活動)
ヒントチャンツは,クイズ大会で第1クイズに必要な表現である“What's this?”“Hint,
please.”を練習するために作ったチャンツである。ま
What’s this?
What’s this?
た,シルエットクイズに必要な“Change,please.”も
入れ,表現だけでなくクイズの仕方についても慣れ親し
めるようにした。リズムは『英語ノート』の“♪What's
this?”のものを使用した。図14は児童に示した画面の
一部である。
Hint, please.
.
Change,please.
.
〈図14〉ヒントチャンツの一部
イエスノーチャンツは,第2クイズに必要な表現
Orange juice, orange juice.
を練習するために作ったチャンツである。“Do you
Do you like orange juice?
like~?”“Do you have~?”“Yes, I do.”“No, I
Yes, yes, yes, I do.
don't.”の表現に慣れ親しめるようにした。リズム
No, no, no, I don't.
は『英語ノート』Lesson5のチャンツのものを活用
〈図15〉イエスノーチャンツの一部
して作成した<図15>。新しく作成したチャンツであったが,児童は画面を見ながらすぐに言うこ
とができた。表現が短かったこと,既習の表現やチャンツのリズムを活用したことが,児童の慣れ
親しみにつながったと思われる。
(4) コミュニケーション活動の工夫
コミュニケーション活動は「ダブルチャンスクイズ大会」とした。授業実践Ⅰでの課題であるコ
- 9 -
ミュニケーションの深まりを意識して設定した活動である<図16>。
第1クイズでは児童に関係のあるものを
問題にすること,第2クイズでは出題者に
ウィンドウクイズグループの例
〈第1クイズ〉
関する問題に答えるために相手のことを思
A(出題者): What's this?
い浮かべる必要があることが,自己決定や
B(回答者): Hint, please. Red window, please.
相手理解につながると考えた。
1グループ4~5人のグループを6つ作
(略)
It's a dog.
〈第2クイズ〉
り,ウィンドウクイズ,ブラックボックス
A: I have a dog. Maru or batsu?
クイズ,シルエットクイズの三つをそれぞ
B:(予想して○×カードを出し,) Do you have a dog?
れ2グループが担当した。そして,クイズ
A: Yes, I do.
大会では,前半と後半に分かれて,三つず
〈図16〉ダブルチャンスクイズの一例
つのグループがそれぞれのクイズを出題した。出題グループ以外
は,自分たちと違うクイズをしている二つのコーナーを回ること
で,全てのクイズを体験できるようにした。
第1クイズで答えられなくてももう一度チャンスがあること,第
2クイズは○×カードを挙げることで一人一人に解答権があること
が活動の工夫点である。また,クイズの答えを英語でどう言えばよ
いか分からない場合には日本語で答えてもよいことにした。
児童は,“Hint, please.”や“Change, please.”などの表現を
使いながら,クイズ大会に取り組んだ<図17>。どの児童も生き生
きとした表情で,クイズに参加していた。第2クイズでは,答えが
“Yes,I do.”ばかりにならないように,持ち物を友だちと交換し
て出題しているグループもあった。また,「給食の時に食べるのに
困っていた」や「持っているのを見たことがある」など今までに見
たり聞いたりしたことを思い出しながら答えを考えることができて
いた。
〈図17〉ダブルチャンスクイズ大会の様子
(5) 考察(振り返りカードより)
とてもそう思う
音声・表現への慣れ親しみの活動では,図18
第1時
のように,よく聞いたり繰り返したりしたと思
第2時
う児童がほとんどであることから,進んで練習
第3時
できたと考えられる。クイズに使う表現をチャ
そう思う
あまりそう思わない
16
ぜんぜんそう思わない
9
20
2
6
18
1
8
〈図18〉よく聞いたり繰り返したりしましたか(人)
とてもよい
ンツにしたことで,「覚えやすかった」という
よい
あまりよくない
クイズをする
感想もあった。
英語を使う
コミュニケーション活動である「ダブルチャ
友だちとやりとりをする
ンスクイズ大会」について,「クイズをする」
チャンスが2回ある
「英語を使う」「友だちとやりとりをする」「チ
自分や友だちのクイズがある
全然よくない
22
13
4
10
16
3
9
18
19
1
8
5
2
ャンスが2回ある」「自分や友だちのクイズがあ〈図19〉「ダブルチャンスクイズ」でよかったことは?(人)
る」の5項目について児童に評価させたところ,図19のような結果となった。アンケートでは聞く
こと・話すことが好きではないと答えていた児童も,クイズのような活動の中であれば,友だちと
- 10 -
やりとりをすることを「よい」ととらえられていることが分かる。また,自分や友だちのクイズが
あることについては,「恥ずかしい」「いやなことは言いたくない」という意見はあったものの,
「自分のことを分かってもらえる」「自分の好きなものがクイズに使えてよかった」「友だちのこ
とが分かる」「友だち世界が広がる」など多くの児童が「よい」ととらえていた。「友だちに知っ
てもらっていてよかった」と友だちがクイズに正解してくれることを喜んでいる児童もおり,この
活動でコミュニケーションを図ることの大切さを感じることができたようである。また,クイズに
出すものを自分で選んだり自分の持ち物を使ったりするなど,児童が自己選択や自己決定をする場
があったことが,児童の意欲の向上につながったのではないかと考える。
授業後,多くの児童が図20のように「できるだけ英語を使った」と答えており,日本語の使用が
多いと感じた教師とは,とらえ方が違うこと
が分かった。そこで,どの場面で英語を使え
たと思うか調べたところ,図21のような結果と
とてもそう思う
第4時
語が使えているのは,グループの友だちと一
B
緒に声を出す方が,出題者として一人で言う
C
ときよりも児童にとって負担が少なかったか
D
のは,“Hint, please.”“Change, please.”
ぜんぜんそう思わない
13
10
使えた
A
トを聞くときに使えたと思う児童が一番多い
あまりそう思わない
3
〈図20〉習った英語をできるだけ使いましたか(人)
なった。出題者よりも解答者としての方が英
らだと考えられる。また,解答者としてヒン
そう思う
もう少し
13
13
15
11
22
4
18
E
8
16
10
場面
主な表現
A〔出題者〕クイズを出すとき
What’s this?
B〔出題者〕ダブルチャンスクイズを出すとき I like~.I have~.Yes, I do. No, I don’t.
C〔解答者〕ヒントを聞くとき
Hint, please. Change, please.
D〔解答者〕クイズに答えると
It’s (a) ~.
E〔解答者〕ダブルチャンスクイズの答えを聞くとき
Do you like~? Do you have~?
といった表現が簡潔で,児童にとって使いやす 〈図21〉英語をよく使えたと思うのはいつですか(人)
かったからだと考えられる。
とてもそう思う
第1時
単元を通して,児童は図22のように「とて
第2時
も楽しかった」「楽しかった」と感じており,
第3時
第4時のコミュニケーション活動においても
第4時
楽しく活動することができた。
そう思う
あまりそう思わない
ぜんぜんそう思わない
15
12
18
9
23
21
3
5
〈図22〉楽しかったですか(人)
以上のことから,英語の使用については課題が残るものの,本実践において児童はコミュニケー
ションを楽しむことができたと考えられる。
Ⅳ
成果と今後の課題
1
成果
単元指導計画の作成に当たり,最初にコミュニケーション活動を設定し,それを行うのに必要な
活動をねらいを考えながら計画することで,単元全体の見通しをもつことができ,活動の流れにも
系統性が生まれることが分かった。コミュニケーション活動を意識した活動を積み重ねることで,
児童が活動をイメージしやすくなり,スムーズな実施につながったと考えられる。
慣れ親しみの活動には,歌やチャンツ,ゲームを活用した。特にチャンツは,必要な表現に慣れ
親しむために,『英語ノート』のその単元に用意されているチャンツだけでなく,一部変更して使
ったり,既習のチャンツのリズムを活用したり自作したりした。チャンツは様々な活用ができ,慣
れ親しみの活動を行うのに大変有効であった。また,高学年であってもリズム等が楽しければ自然
と体を動かし活動したことから,教材の工夫が大切だと分かった。ゲームにおいては,ねらいに応
じて活動を設定し,同じゲームでも児童が飽きないように工夫することが必要だと分かった。段階
- 11 -
に合っていること,ねらいがはっきりしていることが,集中してよく聞くなど児童の取り組み方の
変化につながったと考える。
コミュニケーション活動については,聞くこと・話すことを好きではない児童もいるが,興味・
関心に合った活動を設定することで,積極的に活動に取り組み,活動の中でコミュニケーションを
図ることが分かった。授業実践Ⅱのコミュニケーション活動で紹介した食べ物やペットのことを話
題にしている児童を休み時間などに目にし,活動を行ったことが友だちとの話が広がったりあまり
接することのない相手と話したりするきっかけとなっていると感じた。このことから,児童にとっ
て身近な話題を扱った活動を設定することが大切であり,それによって相手に興味・関心をもつこ
とができ,コミュニケーションが広がることにつながると分かった。また,高学年においても,グ
ループの組み方や時間の設定などを考慮することで意欲的に活動し,男女関係なく多くの友だちと
交流を図ることが可能になることが分かった。
2
今後の課題
コミュニケーション活動において,日本語を使ってもよい場面の設定に課題が残った。授業実践
Ⅰでは,使用表現が限定されていたため,英語と表情やジェスチャーで伝え合うことが可能であっ
たが,コミュニケーションの深まりが十分ではなかった。そこで,授業実践Ⅱでは話題や活動内容
を工夫したが,コミュニケーションを深めるには授業で扱った単語や表現だけでは児童が言いたい
ことを言い表すことができず,日本語を使うことが必要であった。英語を使う場面と日本語を使っ
てもよい場面とを教師が見極め,慣れ親しんだ英語表現についてはきちんと使える設定にすること
が大切である。
また,話すことへの抵抗感を取り除く活動の工夫についても課題が残った。児童にとって話すこ
とへの抵抗感はやはり大きく,特に,一人で発表することは難しかった。授業実践Ⅱのようなコミ
ュニケーション活動を行う場合には,グループでの練習時間をもっと多く取るべきであった。段階
を踏まえた単元指導計画を作成し,児童の実態によっては修正することも必要である。
<引
用
文
献>
1)卯城祐司,蛭田勲:『小学校教育課程講座外国語活動』ぎょうせい,2009,p.14
2)直山木綿子編:『小学校外国語活動モデル事例集』教育開発研究所,2011,p.14
3)文部科学省:『小学校外国語活動研修ガイドブック』2009,p.45
4)直山木綿子:「全面始動!外国語活動」小五教育技術5/6月号,小学館,2011,p.54
5)菅正隆編著:『誰でもできる!「英語ノート」でらくらく授業5年生』ぎょうせい,2010,p.9
<参
考
文
献>
・八戸市立市野沢小学校:
「研究の軌跡」2011
・樋口忠彦編:『小学校英語教育の展開
よりよい英語活動への提言』研究社,2010
・影浦攻編:『「ゲーム」の指導のテキスト』明治図書,2007
・影浦攻編:『小学校英語プレビュー 完全実施で知っておきたい指導法&実践案』明治図書,2010
・岡秀夫編著:『小学校英語教育の進め方-「ことばの教育」として』成美堂,2007
・小学校英語活動研究会・東京ネットワーク編:『小学校英語活動発展活動ハンドブック』学研,
2006
・高橋美由紀編著:『これからの小学校英語教育の発展』アプリコット出版,2011
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