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蒸気機関の開発貢献者は誰か

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蒸気機関の開発貢献者は誰か
矢田技術士事務所
蒸気機関の開発貢献者は誰か
蒸気圧で仕事をさせるという発想は古くは紀元前 200 年頃にエジプトの Hero が蒸気の噴
き出す球体が回転している様子を描いた絵が有名である。これを実際に作ったどうかは解
らない。また 1543 年にスペインのチャールス 5 世の海軍士官 Blasco de Garay が蒸気機関
で 200 トンの船を動かしたという記録が有るらしいがこれも確証はない。事実とすれば蒸
気による動力利用の最も古い例である。しかし、水を加熱すると蒸気圧が上がることは 17
世紀初頭には一般に知られていたが、この中でイタリアの奇人カルダン(Gerolamo
Cardano)
(1501-1576)は 1670 年頃に出版した著書のなかで、水蒸気の充満している容器
の中に水を入れると凝縮が起り真空が得られることを記しているらしい。この記述が後の
ワットの復水器の発明につながるが、それはかなり後(100 年後)のことである。
この原理を使ってイギリスの Worcester の貴族 Edward Somerset が図のような噴水装置
を考えた。図において水の入った右の容器を加熱すると蒸気圧によって右のパイプから水
が吹き上がる。次いで両容器をつなぐコックdを開けると蒸気圧は左の容器に加わるので
左のパイプから水が吹き上がる。ここでgから水を注入すると蒸気が凝縮し負圧が発生す
るので左のコックcを開けると水を吸い上げることが出来る。つまり下のレベルの水を噴
水によって高いレベルにまで揚げる揚水装置として使うことが出来る(1663)。これを更に
改良した揚水装置をサバリ(Thomas Savery)が 1708 年に特許を獲得した。この背景には
当時イギリスでは炭坑で効率の良い揚水ポンプが求められていた事情があるが、サバリの
機関は効率が悪く燃料代が高くつき、爆発事故を起こし
ていたので改良型が造られている。
一方、フランス人パペ(Denis Papin)は蒸気圧の研
究を英国で行ない、最初に開発したのが圧力釜調理器で
g
d
c
ある(1680 年頃)。ここで彼は重錘でシリンダー上端を
押える方式の安全弁を開発している。この圧力釜の帰結
としてシリンダー内部で動くピストンを考えた。ここで
は加熱により蒸気圧が上がってピストンが上昇し、加熱
を止めるとシリンダー内部は気圧が下がり大気圧で押
されピストンが往復運動する(1690 年)。この動作原理
は後の Watt につながる蒸気機関の原型であった。彼は
ピストン運動を水の長距離輸送や船の動力源として使うことを英国王立学会に提案したが、
サバリ を応援していたニュートン(Isaac Newton)によって拒絶される。英国ではこの後
ニューコメン(Thomas Newcomen)による大がかりな揚水専用の蒸気機関が開発されるが
(1712)、パペは王立学会に好いように使われ、蒸気機関の功績をサバリとニュコメンに与
えるとする企みがニュートンにあったとする説
1)がある。英国のこのような雰囲気の中で
彼は失意の内に貧困の中、どこで亡くなったか解らない状態で英国から消えてしまった
(1712)。彼はこの蒸気機関の効率を上げるには摩擦を少なくするためにシリンダー内の仕
上げが重要性であり、優れた工作機械の必要性を認識していた。また彼の提案した蒸気船
構想は 100 年後のアメリカで Robert Fulton により実現した。
目次へ
1)P.Valenti:http://www.21stcenturysciencetech.com/Articles%202008/papin_steam_engine.pdf
http://chestofbooks.com/crafts/scientific-american/XXXVI-8/Papin-s-Steam-Engine.html
http://www.berkshirehistory.com/bios/smorland2.html
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