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Ⅰ 健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価
別紙様式1-1 安田学園 安田女子中学高等学校 指定第1期目 24~28 ❶平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約) ① 研究開発課題 心・技・体のバランスのとれた将来の女性科学研究者・技術者の育成方法とその評価方法を 研究する。 ② 研究開発の概要 生命倫理に根ざした精神を兼ね備え、大学、企業、各種団体等、広く社会の理系分野で活躍 できる行動力、実践力を持った将来の女性科学研究者・技術者の育成を研究していく。その為 に以下のⅠ~Ⅳの研究を行う。 Ⅰ.健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する。 Ⅱ.併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考能力 の育成方法を研究する。 Ⅲ.理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する。 Ⅳ.自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケー ションを可能とする言語技術の育成方法を研究する。 ③ 平成27年度実施規模 学校設定科目はSSH主対象クラス(SSコース:第1学年42名及び第2学年40名、第 3学年34名)のみで実施する。その他の取組に関しては、SSH主対象クラス以外の生徒(中 学生も含む)にも課題研究をはじめとする取り組みを実施する。 ④ 研究開発内容 ○研究計画 【平成27年度(第4年次)】(発展応用期間) 各課題について質的な部分についての検討を図る。高大接続についてはカリキュラムの充実 と進路開発の最終段階に入る。国際性を高める取組については事業の再構築を行う。課題研究 については継続的指導の成果を報告会、コンクール等で検証する。 ○教育課程上の特例等特記すべき事項 SSH主対象SSクラス(1クラス)では、第1学年において「現代社会」及び「情報の科 学」をそれぞれ1単位減ずる。「現代社会」の「私たちの生きる社会」及び「共に生きる社会 を目指して」の内容は、「SS総合Ⅰ」の学習内容に含める。「情報の科学」の「コンピュー ターと情報通信ネットワーク」及び「情報の管理と問題解決」、「情報技術の進展と情報モラ ル」の内容は「SS科学実験」に、「問題解決とコンピューターの活用」の内容は「SS数学 Ⅰ・Ⅱ」の学習内容に含める。第2学年において、「世界史A」を1単位減ずる。「世界史A」 の「世界史へのいざない」及び「世界の一体化と日本」のア.ユーラシアの諸文明、ウ.ヨー ロッパ・アメリカの工業化と国民形成及び「地域社会と日本」のア.急変する人類社会、エ. 地球社会への歩みと課題の内容は「SS総合Ⅱ」の学習内容に含める。 ○平成27年度の教育課程の内容 第7章 関係資料に掲載 ○具体的な研究事項・活動内容 Ⅰ 健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する 将来の健全な科学研究者・技術者に必要なスキル定着を目的とした多様な学校設定科目を実 施した。学校設定科目において、協働的アクティブラーニングを導入するなど、新しい指導方 法への研究を重ねている。またスキルの中でも科学的思考能力の根幹とすることのできるクリ ティカルシンキング(以下CT)の育成に関しては、SSH主対象クラスでの学校設定科目に 限らず、全生徒対象の日常的な授業への汎用を目標として取り組んだ。 Ⅱ 併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考力 の育成方法を研究する SSH主対象クラスの生徒のみではなく、全生徒対象に課題研究を実施している。そして、 課題研究を通して身につけたスキルを主体的・客観的に評価できるよう【課題研究到達度評価 アンケート】を作成した。 今年度の生徒の課題研究は、高校2年生SSクラスのおいては、13テーマの課題研究を行 った他に、高校2年生一般生徒による14系統98テーマの研究と中学3年生による10系統 208テーマの研究も行えた。昨年度はSSクラス以外での研究活動は個人研究としたが、今 年度からは複数での研究も可能として、協働的な活動を推進した。 Ⅲ 理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する SSH主対象クラスのつくばサイエンスツアーや科学部のサイエンスキャンプ、広島大学生 物生産学部の協力での海洋セミナーや安田女子大学や岩国ミクロ生物館での体験学習など多様 な校外研修を実施した。また、生徒が理系分野で活躍する女性を身近に感じられるよう、女性 科学者による講演会・特別講義を開催した。 Ⅳ 自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケ ーションを可能とする言語技術の育成方法を研究する SSH主対象クラスでは、学校設定科目「SS英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の中で、英語でのプレゼンテ ーションや論文作成した。姉妹校提携した台湾国の宜蘭市にある国立蘭陽女子高級中学との交 流をより活用できるように共同研究を開始した。 ⑤ 研究開発の成果と課題 ○実施による成果とその評価 Ⅰ 健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する 授業において育成したCTの定着を客観的・定点的に評価する教材の開発を外部機関と協力 し研究することができた。 Ⅱ 併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考力 の育成方法を研究する 本校で作成【課題研究到達度評価アンケート】による、課題研究を通して定着を期待したス キルとコンピテンシーの定着を評価することが可能となった。今後、アンケートから定点観測 し、結果を分析・評価することで本校の課題研究に対する研究が進むと考えられる。 Ⅲ 理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する 校外の体験学習を一過性のもとせず、生徒の継続的な研究活動の一貫として取り扱うことが できるようになった。 Ⅳ 自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケ ーションを可能とする言語技術の育成方法を研究する 台湾国の宜蘭市にある国立蘭陽女子高級中学との交流において、共同研究を設定することが でき、これまで以上に交流が盛んにすることが可能となった。 ○実施上の課題と今後の取組 学校設定科目や科目の授業において育成したいCTスキル、課題研究を通して育成していき たいスキルを評価していく方法の開発に目処が立ち、その結果を分析していくと、スキル定着 は発達段階に応じたレベルで可能となってきていることが分かった。しかし、定着できている スキルを発揮することができてない、つまりコンピテンシーを身につけていない生徒が多数い ることが分かった。 この課題を優先的に解決していくことで、理系・文系の分野を問わず、実社会においてその 能力を惜しみなく発揮できる生徒の育成できることが可能となる。今後は、課題研究における 育成したいスキルとCTスキルとを関連づけ、スキルを育成する場とスキルを実践する場を生 徒に意識させていくことで、スキルの定着とコンピテンシーの育成の指導方法を確立していく ことが大きな研究目的としてあげることができる。 別紙様式2-1 安田学園 安田女子中学高等学校 指定第1期目 24~28 ❷平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題 ① 研究開発の成果 (根拠となるデータ等を報告書「❹関係資料(平成27年度教育 課程表、データ、参考資料)」に添付すること) Ⅰ 健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する 将来の健全な科学研究者・技術者に必要なスキル定着を目的とした多様な学校設定科目を実 施した。学校設定科目において、協働的アクティブラーニングを導入するなど、新しい指導方 法への研究を重ねている。その成果を下に記述する外部機関でのクリティカルシンキング評価 テストや本校開発の【課題研究到達度評価アンケート】の結果から分析すると、学校設定科目 を実施していくSSクラスにおけるスキル定着が他のクラスに比べ高くなっていることが分か った。特に、他のクラスに比べてのメタ認知能力の高さが顕著となった。 スキルの中でも科学的思考能力の根幹とすることのできるクリティカルシンキング(以下C T)の育成に関しては、SSH主対象クラスでの学校設定科目に限らず、全生徒対象の日常的 な授業への汎用を目標として取り組んだ。その為に、クリティカルシンキングに関して、その 定義や先行研究のまとめ、本校の目指す能力を細分化した新しい評価規準などを、【CTの手 引き】として作成した。 CTの定着を客観的・定点的に評価する教材の開発が必要であると考え、外部機関と協力体 制を構築し、その研究に着手した。また、CTを育成、その評価するためには生徒の言語活動 を有機的に作用させる必要があると感じた。その指導方法に関して外部機関の教員研修へ教科 の代表が参加するようにして、全教員への普及に努めている。 Ⅱ 併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考力 の育成方法を研究する 本校では昨年度から、SSH主対象クラスの生徒のみではなく、全生徒対象に課題研究を実 施している。中高6年間という時間を有効に活用できるよう系統性を持たせた取り組みとなる ように研究している。中学校1・2年生では、言語活動を通して、調べ学習・発表方法の習得 し、3年生で研究・発表している。高校1年生では、自らの進路と関連したテーマの設定をし、 高校2年生での研究・発表をしている。また、SSH主対象クラスにおいては、特に課題研究 を充実させるために高校2年での学校設定科目「SS科学研究」を実施している。 昨年度、文系分野における課題研究の指導の難しさを感じたことを解消する為に、今年度は 特に文系分野での課題研究の指導方法を課題研究の向上を目的に、玉川学園の後藤芳文教諭に よる研修会を実施した。加えて、課題研究を通して身につけたスキルを主体的・客観的に評価 できるよう【課題研究到達度評価アンケート】を作成した。そのアンケート結果を分析・評価 することで本校の課題研究に対する研究の深化に努めている。 今年度の生徒の課題研究は、高校2年生SSクラスのおいては、13テーマの課題研究を行 った他に、高校2年生一般生徒による14系統98テーマの研究と中学3年生による10系統 208テーマの研究も行えた。昨年度はSSクラス以外での研究活動は個人研究としたが、今 年度からは複数での研究も可能として、協働的な活動を推進した。 Ⅲ 理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する 例年実施しているSSH主対象クラスのつくばサイエンスツアーや科学部のサイエンスキャ ンプ、広島大学生物生産学部の協力での海洋セミナーや安田女子大学や岩国ミクロ生物館での 体験学習など多様な校外研修を今年度も実施できた。その中でも、科学部のサイエンスキャン プは一過性の体験に留まらず、科学部における研究活動と関連して行うことができた。また、 呉市かまがり天体観測館や広島市昆虫科学館な外部機関と連携して、生徒の課題研究を進めて いくことができた。 校内で実施する講演会や特別講義では、これまで通り、年に3回以上は必ず女性科学者を講 師としてお招きしている。 Ⅳ 自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケ ーションを可能とする言語技術の育成方法を研究する SSH主対象クラスでは、学校設定科目「SS英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の中で、英語でのプレゼンテ ーションや論文作成し取り組んでいる。その中で育成した能力は、平成26年2月に姉妹校提 携した台湾国の宜蘭市にある国立蘭陽女子高級中学との交流で有効に活用できている。今年度 は、9月には姉妹校を訪れて交流を実施した。交流では、英語を用いた科学的研究内容の発表 や、英語による授業の受講、各地域自然観測などを実施した。また、この台湾での交流から共 同研究を開始した。共同研究の内容は、瀬戸内海と台湾宜蘭市の海岸でそれぞれビーチコーミ ング実施し、その相違点を研究していくことと設定した。今年度は、研究方法の共有に留まっ たが、来年度以降により研究を深めていくことが可能となった。2月の本校の研究成果発表会 には台湾国蘭陽女子高級中学の生徒・教員が来校し共同研究と独自の研究に関しての発表を行 った。 台湾との交流の利点として、母国語として英語を使用していない生徒同士が英語で交流する ことがある。蘭陽女子高級中学の生徒が使うレベルの高い英語を目の当たりにして、本校生徒 の効果的な動機付けとすることができた。 共同研究を題材に、これまで以上に交流が盛んにすることが可能となり、お互いの生徒同士 の英語での日常的な交流が期待される。 ② 研究開発の課題 (根拠となるデータ等を報告書「❹関係資料(平成27年度教 育課程表、データ、参考資料)」に添付すること) Ⅰ 健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する 今年度、CTの定着を客観的・定点的に評価する教材の開発が必要であると考え、外部機関 と協力しその研究を実施した。その評価の結果からいくつかの課題を見つけることができた。 マーク式教材と記述式教材の相関から、スキルの育成とコンピテンシーの育成が異なってい ることである。これまでの取り組みでは、生徒に一定のスキルを定着させていくことができる が、そのスキルが様々場面で発揮させる為のコンピテンシーを育めていないことが分かった。 来年度は、スキル定着の指導方法を高めると同時に、コンピテンシー育成の指導方法を研究す る必要がある。 また、定期試験を利用したCT評価の妥当性やCTスキル定着を検証した結果から、本校の 個々の教員に、CTスキルの定義が統一されていない、浸透されたものにはなっていないとい うことが見受けられた。その改善として、来年度は9月第2週の一週間間を、CT育成公開授 業週間と設定して教員間での意識統一に努める。さらに、それに先だって、つくば言語教育研 究所で言語技術の研修を受講した国語科・英語科の教員による言語技術育成公開授業を実施し、 全教員の言語技術育成のスキル上達に期したい。 Ⅱ 併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考力 の育成方法を研究する SSH主対象クラス以外、高校2年生の全生徒対象の課題研究を実施して2年目となるが、 昨年度は、文系分野での課題研究が調べ学習で終わっている点が課題となり、今年度は教員研 修を開催するなどして、課題が少しずつ解消されてきた。しかし、生徒の研究が深まってくる と生徒の研究スキル、特に研究を進めるにあたっての必要なアンケート項目の設定スキルやP Cを利用した統計処理スキルが備わっていない現状が浮かび上がってきた。教科、数学・情報 との連携を強めていく必要があると考えた。また、全教員が課題研究の指導として、これらの スキル定着の指導を可能とする必要もある。 また課題研究を通して育成を期待したスキルを主体的・客観的に評価する目的で作成した【課 題研究到達度評価アンケート】の結果より、SSH主対象クラス以外では、メタ認知能力の定 着度が低いことが分かった。その原因としては、課題研究においての指導教員の生徒へのコミ ュニケーションの量的アプローチの少なさと考えられる。コミュニケーションを重ねていくこ とで、生徒は自らの研究内容をメタ認知的に捉える機会を得ることができるはずである。来年 度は、この点を全教員の共通認識としていく。 Ⅲ 理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する 昨年度まで、これまでの様々な理数教育の推進の取り組みの結果として、高校2年生での理 系選択生徒の割合が増加させてくることに成功し、最終的には50%以上の生徒が理系選択と なった。しかし、今年度は、SSH指定を受けてから初めての理系選択生徒の減少となった。 その原因としては、昨年度高校入試から形式の変更による、併設型中学校以外からの入学生の 割合が例年以上に高まったことがあると考えられる。高校 1 年生においての数学の成績は、併 設型中学校からの進学生が外部入学生を大きく上回り、数学の苦手意識を持った生徒が例年以 上に多かったことが考えられる。これによって、理系選択をする生徒が例年よりも少なくなっ てしまったと考える。来年度の高校1年生においても同様の問題が起こると予想されるので、 この問題解決優先的に優勢である。また、理系選択生徒にとっても、数学を苦手とし日々の学 習に不安を抱える生徒もいる。文部科学省でのSSH中間評価で指摘を受けたように、女生徒 にどのように数学に興味関心を高めていくことが可能であるかが課題解決の光明となる。CT を駆使した使える数学、「住宅ローン」や「携帯電話のプラン料金の総額」など日常にある数学を 必要と題材と取り入れていくことが必要となると考える。 また、体験的活動や特別講義などを多様に実施してきた。それらの取り組みを終えてからは、 生徒に感想文等を書かせている。しかし、その内容には、教員側が受け取ってほしい、定着し てほしいと願っている内容やスキルが反映されているとは必ずしも限らない。これは、取り組 みにおける事前指導の不徹底によるものであると考えられる。よって、今後は事前指導におい て、取り組みのねらいや目的を生徒に徹底し説明することで意識させ、取り組みをより効果的 に行っていけるようにする。 Ⅳ 自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケ ーションを可能とする言語技術の育成方法を研究する 英語を母国語に持たない生徒との交流は生徒の英語学習への意識の高まりに効果的であり、 今後、台湾国蘭陽女子高級中学との交流をさらに進化させていく必要があった。今年度、姉妹 校と共同研究を開始することが可能となったので、共同研究を題材に学校設定科目「SS英語 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」や校外研究と関連づけ、有意義に活用していく必要がある。 特に、日常的英語での交流に活用することに期待したく、英語科と協力してメール Skype を 利用した交流をこれまで以上に盛んにしたい。 第1章 研究開発の概要 1-1 学校の概要 (1)学校名、校長名 や す だ が く えん や す だ じ ょ し ちゅ う が く こ う と うが っ こう 安田 学園 こうちょう 安田 女子中 学 高等学校 もり ゆ 校長 み こ 森 由美子 (2)所在地、電話番号,FAX番号 広島県広島市中区白島北町 1 番 41 号 電話:082-221-3362 FAX:082-212-0300 (3)課程・学科・学年別生徒数、学級数及び教職員数 ①課程・学科・学年別生徒数、学級数(平成28年1月現在) 高等学校課程 ( 第4学年 課程 第5学年 )内に、理系対象 第6学年 計 学科 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 全日制 普通科 267 6 236 6 (1 2 1 ) 216 (1 0 3 ) 6 719 (2 2 4 ) 18 *第4学年に関して、理系クラスのうち1クラス42名がSSH主対象のクラス *第5学年に関して、理系クラスのうち1クラス40名がSSH主対象のクラス *第5学年に関して、理系クラスのうち1クラス34名がSSH主対象のクラス 中学校課程 第1学年 課程 学科 第2学年 第3学年 計 コース 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 総合 153 4 123 3 128 3 404 10 自然科学 42 1 83 2 86 2 211 5 全日制 普通科 ②教職員数(中学高等学校での総数) 校長 副校長 教頭 統括 教諭 1 1 1 1 61 養護教諭 非常勤講師 実習助手 2 17 4 ALT 事務職員 司書 計 2 5 1 96 1-2 研究開発課題 心・技・体のバランスのとれた将来の女性科学研究者・技術者の育成方法とその評価方法を研 究する。 1-3 研究の概要 生命倫理に根ざした精神を兼ね備え、大学、企業、各種団体等、広く社会の理系分野で活躍で きる行動力、実践力を持った将来の女性科学研究者・技術者の育成を研究していく。その為に以 下のⅠ~Ⅳの研究を行う。 Ⅰ.健全な女性科学研究者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する。 Ⅱ.併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考能力の 育成方法を研究する。 Ⅲ.理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する。 Ⅳ.自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケーシ ョンを可能とする言語技術の育成方法を研究する。 科学的思考能力に基づく学習 理系体験の増加や外部組織との連携 理系分野の力の充実 理系分野への夢や希望 将来の 女性科学研究者・技術者 の育成 国際社会においても活躍できる英語による プレゼンテーション能力・コミュニケーション能力 の育成 1-4 研究開発の実施規模 上記の1-3 研究の概要に示したⅠ~Ⅳを目的として実施を行う。指導には、本校中学高等 学校全教職員の連携を中心に実施する。指導によっては、同学園の小学校、大学の教職員の協力 を得て実施する計画も予定している。学校設定科目はSSHクラス(SSコース)のみで実施す る。その他の取組に関しては、SSHクラスや科学部に所属する生徒をはじめ、SSHクラス以 外の生徒にも参加を呼びかける場合もある。また、高校生の指導による中学生の参加も計画して いる。 1-5 研究の内容 Ⅰ.健全な女性科学者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する。 学校設定科目を中心に、将来理系分野で必要とされる科学的思考力の根幹となるクリティカル シンキング(以下CT)の育成及びその評価方法を研究・検証するため、学校独自の発達段階に 応じて系統別にCTの評価規準を設定した。評価規準・基準の設定、その客観的評価方法に関し ては、安田女子大学の心理学部・教育学部や京都大学、株式会社ベネッセホールディングスと連 携して研究を進めている。 また、CTを育成、その評価するためには生徒の言語活動を有機的に作用させる必要があると 感じた。そこで、先進校での実践や各種文献を参考にして国語科の教員と教育研究部が中心とな り、その言語技術の育成方法を本校の特色に合わせた具体的指導方法の研究に着手した。 Ⅱ.併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考能力の育 成方法を研究する。 CTの評価規準に応じ、中高6年間で系統性を持たせた全生徒への課題研究の支援システムを 構築した。SSH主対象クラスにおいては、特に課題研究を充実させるために高校2年での学校 設定科目「SS科学研究」を実施している。さらに、課題研究のテーマ設定方法や、化学・物理・ 情報各分野において研究スキルの向上を目的として高校1年生に学校設定科目「SS科学実験」 を、実施している。生徒の課題研究は多様な発表機会を持たせ、校内・校外で発表させ、そのプ レゼンテーション能力の向上にも努める。 Ⅲ.理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する。 SSH主対象クラスのサイエンスツアーや科学部のサイエンスキャンプ、広島大学生物生産学 部の協力での海洋セミナーや安田女子大学や岩国ミクロ生物館での体験学習など多様な校外研修 を実施した。また、本校は女子校であり、理系分野で活躍している女性を身近に感じ、具体的な 将来像を考えさせるために、校内での実施する講演会や特別講義では、女性科学者・研究者を中 心に講師としてお招きしている。 Ⅳ.自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケーシ ョンを可能とする言語技術の育成方法を研究する。 学校設定科目「SS英語」を中心に、英語も用いての科学的に内容のプレゼンテーション能力 の育成を重視している。特に課題研究の内容を、英語を使用して全てのグループはプレゼンテー ションする。さらに、台湾国の宜蘭市にある国立蘭陽女子高級中学と姉妹校提携し、英語を用い た科学的研究内容の発表をはじめとする交流を行っている。効果の高い交流にするために、学校 設定科目「SS英語」では、Skype を用いての交流も実施した。 第2章 研究の経緯 A:健全な女性科学者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する B:併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考能力の育 成方法を研究する C:理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する D:自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニケーシ ョンを可能とする言語技術の育成方法を研究する 日時 通年 A 学校設定科 SS総合 SS科学実験 SS科学研究 SS科学言語 SS数学 SS英語 4月 B 課題研究 C 科学部活動 数学研究会活動 D 学校設定科目 SS英語 広島城タンポポ 分布調査 ビーチコーミング (台湾国蘭陽女子共同研究) マイクロ プラスチック調査 かまがり天体観測館での課題研究1 6月 7月 CT校内 研究授業会 海洋セミナー 8月 CT評価テスト 科学部 その他 第1回運営 指導委員会 サイエンスキャンプ SS サイエンスツアー 【SSH全国生徒研究発表会】参加 かまがり天体観測館での課題研究2 大阪市立東高等学校主催 【高校生 水 フォーラム】参加 大阪府立大手前高等学校主催 【マスフェスタ】参加 広島県第2回科学セミナー参加 広島県科学賞作品提出 9月 兵庫県立尼崎小田高等学校主催 【瀬戸内海環境フォーラム1】参加 タンポポのDNA 鑑定実験 台湾研修 かまがり天体観測館での課題研究3 広島大学GSC主催 【課題研究中間発表会】参加 先進校視察 市川学園市川 高等学校 10 月 兵庫県立尼崎小田高等学校主催 【瀬戸内海環境フォーラム2】参加 講演会1 アンデルセン・パン 生活文化研究所 庄林愛氏 講演会2 広島大学大学院 生物学研究科 西堀正英氏 兵庫県立尼崎小田高等学校主催 【瀬戸内海環境フォーラム3】参加 かまがり天体観測館での課題研究4 広島大学理学部主催 【中学生・高校生科学シンポジウム】参加 11 月 広島県科学 オリンピック参加 広島大学附属高等学校主催 【課題研究中間発表会】参加 IEEE広島支部学生シンポジウム主催 【IEEE広島支部学生シンポジウム】参加 かまがり天体観測館での課題研究5 兵庫県立尼崎小田高等学校主催 【瀬戸内海環境フォーラム1】参加 SSH研究発表会 12 月 1月 2月 CT公開授業 課題研究中間発表 CT評価テスト 大 学 院 生 に よ る 卒業生との交流会 研究評価 かまがり天体観測館での課題研究6 兵庫県立尼崎小田高等学校主催 【瀬戸内海環境フォーラム1】参加 第4回科学セミナー 先進校視察 宮城県立仙台 第一高等学校 SSH研究成果発表会 台湾蘭陽女子との宮島研修 広島県立広島国泰寺高等学校主催 第2回運営 指導委員会 【SSH事業報告会ポスター発表】参加 先進校視察 広島大学附属 高等学校 先進校視察 広島県立西条農 業高等学校 3月 課題研究英語 発表会 新SSコース校外 研修 第3章 研究開発の内容 3-1 健全な女性科学者・技術者を育成するためのカリキュラムと評価方法を研究する カリキュラム開発として多様な学校設定科目を設定した。さらに学校設定科目をはじめ通常の 授業においても、CTの定着を意識した授業改善に取り組み、その定着の評価の研究を行ってい る。 I SS総合Ⅰ (1)仮説 科学と生命、科学と倫理に焦点を当てた単元の授業を展開することで、科学研究者・技術者の 社会的責任について理解させ、女性特有の優しさと思いやりを持ちあわせ、公の利益を追求して いく女性科学研究者・技術者の【心】を育成していくことが可能である。さらに、CTの観点を 盛り込んでより深い論理的、批判的思考を深めるための授業を展開し、生徒が、将来、先進的な 科学技術を取り扱う際に、適切な判断ができる人材へと成長していくことができるであろうと考 えた。 (2)実施内容 社会科、理科、保健体育科、家庭科のそれぞれの視点から、下の表にある題材について、各教 科での生命倫理について考えさせる学習を重ね知識を与え、生命に対していかにあるべきかにつ いての活動を行った。 前期 脳死と臓器移植の問題について 社会科 《3時間》 クローン技術とその問題点について 理科 《3時間》 妊娠・中絶・出生前診断について 保健体育科 《4時間》 食料生産と安全 家庭科 《3時間》 後期 安楽死・尊厳死について 《3時間》 遺伝子治療とその問題点について 《3時間》 不妊治療の現状について 《4時間》 食料資源 《3時間》 授業では、担当教員から知識を与える形式だけでなく、生徒同士による会得した知識を活用 しての討論やディベートなどを行い、協働的アクティブラーニングの形式も取り入れている。 (3)評価 アンケート結果より、生徒の生命倫理を扱う各分野への関心の高まりを読み取ることができた。 授業内で生徒に課したアンケートや感想などは、回数を重ねる毎にその記述する量は多くなって きた。感想としては次のようなものがあった。 「本当に難しい内容で自分の中で意見を考えるのも精一杯でした。『人間らしい』とは何なのか、 『生きる権利はあるのに死ぬ権利はないのか』など、授業を受けるうえでたくさんの疑問も生ま れました。また考えを隣の人や班の人と共有することで自分とは違った意見を聞くことができ、 とても刺激を受けました。このような考える授業を体験することができて自分のためになりまし た。」「そして一番大切なのは明確に自分の考えを持つことだと思う。また家族で話しておくこ とも重要だと思う。」生徒は、これまで知識もなく遠い問題として捉えていた生命倫理の問題を、 自分自身への問題と認識し、主体的に関わっていく姿勢に変容していったことが読み取れた。 Ⅱ SS総合Ⅱ (1)仮説 科学と歴史の関連に焦点をあて、科学技術発展の背景や科学者の思考を読み取っていくことで、 科学的に社会のニーズを捉え、思考していく力を育成していくことができると考えた。また、授 業で得た新しい知識・新しい情報をCTを活用して、応用することで科学的に自然を視ていく能 力の育成を可能とする。 (2)実施内容 実施時 実施内容 期 4 理科的取り組み ~ 1 古代ギリシャの政治制度と哲学者の登場 7月 原子論を提唱したデモクリトスをはじめとする哲学者の登場した古代ギリシャの政治制度との関 連や原子論に否定的なアリストテレスなどの哲学者の思想を読み解く活動を展開した。 2 古代ギリシャからローマ、ルネサンス 真空に対する哲学者・科学者の思考、科学的な証明方法を学ぶと同時に、当時のキリスト教の科学 への影響を知る。 3 ルネサンスから近代科学 物質の三態と粒子の配列など物理的な領域から、粒子の結合の変化に結びつけ化学的な領域へと原 子論が発展し、最終的にはドルトンによって確立された論理までの様々科学的な検証方法を学ぶ。 9 家庭科的取り組み ~ 1 繊維の歴史 11 世界は繊維でできている・天然繊維・繭玉・ペットボトルから糸を取り出す 月 羊毛に触れる・半合成・再生繊維・合成繊維 2 食品加工の歴史 縄文~江戸時代り・明治時代~1975年・1976年~現代 の加工食品についてのレポート作成 りんごジャムづくり実習 12 社会科的取り組み ~ 1「科学」の歴史 3月 西欧社会の考え方を歴史的にたどることによって、「科学」という思考方法がどのように発展し てきたかの本質をとらえ、またそれを相対化できる視座を持つ。具体的な内容は、神話的世界観か らの離脱、ギリシア自然哲学と三哲人、中世のキリスト教世界観、近世の認識論、近代の「科学革 命」の時代について、思想の変遷を学んだ。 2「科学技術」の社会的影響 「科学技術」によって生み出されたものがどのような影響を社会に与えるかを知り、多角的に物事 を分析し、解決法の手がかりを得る。具体的な内容は、産業革命による社会の変化、第1次大戦と 兵器開発(毒ガス)を例にとった。 3「社会科的なものの見方」 歴史学的な考え、分析方法について知ることで、多角的に対象をとらえ客観的に評価できる力を持 つ。具体的には、近代歴史学の誕生とその手法、学説=解釈についての学習をフランス革命や縄文 時代の発掘物を例に行った。 (3)評価 「科学的なものの見方とは?」という題目で論述させると次のような回答があった。 「多様な角度から読み取ること・・・」「なぜそうなるのか。それは本当に正しいのかを考える」 「規則性のあるもののデータから実証していくこと」など科学を捉えた文章は多く見られた。ま た、「身の回りには科学的に証明された物に囲まれているので、科学的な考え方に基づいて生活 する必要がある」など態度に関するものをある。知識としては身についてきているが、それが活 用できているかは不明であり、今後はその検証を行っていく必要を感じる。 Ⅲ SS科学実験 (1)仮説 SSコース以外の一般生徒が行う課題研究とは異なり、SSコースにおける課題研究は自然科 学的領域における高度な事柄について扱い、さらにグループでの協働的な作業での研究が期待さ れる。その為に、4年生次の準備段階としては、通常の授業では扱わない検証方法、コンピュー ターでのデータ処理方法の取得を目指し、グループでの物作り活動などを実施することで、5年 生次における研究がより円滑に進むことが可能となる。 (2)実施内容 実施時期 4~6月 6月 6月 7月 7~9月 10~1月 1~2月 2月 3月 実施内容 備考 基礎実技1 らっきょう漬け教室 ピタゴラ装置作り準備 4グループでの素案作り サイエンスツアー事前学習 ピタゴラ装置作り 基礎実技2・3・4 サイエンス教室準備 特別講義 マツダ株式会社の女性技術者による サイエンス教室 小学5年生対象のサイエンス教室 基礎実技1・2では、40人クラスを4グループに分けて、輪番で4領域の授業を受ける。 基礎実技3・4では、物理・情報の合同グループと化学、生物の3領域の授業を受ける。 領域 内容 物理 実技1:有効数字と誤差 実技2重力加速度の測定 物理・情報 化学 生物 情報 実技3:摩擦力と標準誤差 実技4:反発係数と標準誤差 実技1:分光光度計(希釈) 実技2・3:COD定量実験(希釈と逆滴定) 実技4:中和滴定によるpH変化(実験器具と適正) 実技1:顕微鏡(ミクロメーター)とスケッチ 実技2:DNA抽出(マイクロピペット) 実技3:基質濃度と酵素反応(グラフ化) 実技4:植物細胞と浸透圧(希釈とグラフ化) 実技1:相関分析(Excel関数の使用) 実技2:最小二乗法による直線フィッティング (3)評価 スキルの習得を目標とする授業であったが、生徒がそのスキルを活用できるレベルまで引き上 げることができているかと点では、まだ不十分であるといえる。例えば、最小目盛りの十分の1 まで読み取ることは知っているが、実験中に適切に実行できている生徒は約 30%であり、化学に おいても、本来はホールピペットを使用する操作において、駒込ピペットを使用した生徒は 90% 以上であった。一方、生物においては実験の手順の理解度は 30%から 60%へ上昇を見ることが出 来た。情報におけるグラフ作成では、教員指導の演習では全ての生徒が正しく作成できているが、 試験として実施すると、10%まで落ち込んでいった。今後、実験全体をデザインしていくコンピ テンシーの育成を目指す必要があると感じた。 Ⅳ SS科学研究 (1)仮説 生徒の主体的な研究活動を推進することにより、科学的な思考方法や研究方法、プレゼンテー ション等のスキルの定着が図れると思われる。また、発表練習を数回行うことで、前回の発表か ら、どのような事実を積み重ねた、表現方法を工夫したなど自らの改善点を意識させていくこと で、メタ認知的思考の習得も可能になると考える。 (2)実施内容 4年生で実施した学校設定科目「SS科学実験」にて、個人に課題研究の研究計画の立案と発 表をさせており、そのテーマの中から、研究グループの設定を行った。グループの設定に関して は、ある程度の自由度を与え、グループの人数制限や複数のグループに属することを可能とした。 11月30日の研究発表会をポスターによる中間発表、2月12日の研究成果発表会をスライド での口頭最終発表と設定し、さらに最終発表を次年度のSSH全国研究発表会の選考会とするこ とを生徒へ明示した。 実施時期 実施内容 4~5月 研究グループ決定・研究方法の検証 5~7月 研究、テーマ再設定(夏期休業も含む) 7月 テーマ設定発表(評価1) 9~11月 ポスター制作 10~11月 ポスター発表プレゼンテーション(各グループ×1回)(評価2) 11月30日 ポスター中間発表(TA評価) 1月 スライド作成 2月6日 課題研究発表会 選考会*(評価3) 2月12日 課題研究発表会 最終口頭発表 2~3月 まとめ、論文作成 研究に関しては、主に放課後の時間を利用し、クラブ等の時間を調節し生徒の主体的な活動と した。グループによっては大学や専門機関を訪れ指導を仰ぐこともあった。また、他のSSH校 主催の研究発表会や大学でのシンポジウム等へは、各グループが最低1回は出向くようにした。 課題研究の評価に関しては年に3回実施し、それぞれで評価項目は異なるように設定した。 評価1・評価2では○と×の2段階評価、TA評価と評価3はルーブリック表を用いての評価と した。評価1~3は本校教員による評価で、TA評価はSSH研究発表会における中間発表での 広島大学大学院生物生産学研究科の院生によるものである。 評価1の観点 テーマの設定は妥当であるか。 テーマは有用性があるものになっているか。 研究計画は適切か 先行研究を十分に調べているか 基本的知識の習得はできているか 評価2の観点 研究方法は適切か 収集したデータ・資料を適切に分析できているか 必要な情報をポスターにまとめているか 研究内容を理解し自らの言葉でプレゼンテーションできているか TA評価のルーブリック表 評価観点・評定 テーマ設定 1 2 3 4 動機は不明である。 根拠が明確でない、ま 根拠が明確である、必 根拠が明確である、 高校生(中学生)らい たは必然性のない動 然性のある動機では 必然性のある動機で しテーマではない→大 機である。 あるが、先行研究を調 はあり、先行研究を 人(教員)がテーマを べることができていな 絡めてテーマを設定 設定しているように感 い できている じ取れる。 研究方法 ポスター 目的を達成するため 目的達成の為の適切 仮説検証が繰り返さ 目的を達成すること の研究とはなっていな な研究を実施してい れた研究となってい ができた研究となっ い。 る。 る。 ている。 研究発表に必要なデ 必要なデータは揃って 必要なデータを図式化 最適に図式化するこ ータが揃っていない。 いる。 (グラフ・表・図)するこ とができている。 とができている。 プレゼンテーション 原稿を見てプレゼンテ 原稿は見てはいない 自らの研究内容を理 聞いている相手に合 ーションしている。 が、暗記した文章でプ 解して、プレゼンテー わせたプレゼンテー レゼンテーションしてい ションしている。 ションができている。 る。 評価3のルーブリック表 評価観点・評定 1 2 3 根拠が明確でない、または 根拠が明確である、必然性 根拠が明確である、必然性のあ 必然性のない動機である。 のある動機ではあるが、先 る動機ではあり、先行研究を絡 行研究を調べることができ めてテーマを設定できている テーマ設定 ていない 研究方法 スライド 目的を達成するための研究 目的達成の為の適切な研究 仮説検証が繰り返された研究 とはなっていない。 を実施している。 となっている。 研究発表に必要なデータが 必要なデータは揃ってい 必要なデータを図式化(グラ 揃っていない。 る。 フ・表・図)することができて いる。 プレゼンテーション 原稿を見てプレゼンテーシ 原稿は見てはいないが、暗 自らの研究内容を理解して、プ ョンしている。 記した文章でプレゼンテー レゼンテーションしている。 ションしている。 説明 根拠を示すことができてお 根拠を示すことができてい らず論理的な説明となって るが、展開の論理性が弱い。 論理的な説明となっている。 いない。 質疑応答 適切な質問に対して、その 質問に対して、適切な返答 質問に対して適切な返答がで 意図をくみ取れていない。 ができていない。 きている。 (3)評価 今年度より、SSクラスのおける課題研究を含めて、1年生~5年生(高2)までの全生徒へ 課題研究における自己評価と課題研究のスキル定着を測る【課題研究到達度評価アンケート】を 実施した。自己評価と到達度評価の内容はリンクさせており、その対象は次の表に示す。主体的 評価と客観的評価との関連を分析することで、指導方法の改善に役立てていく目的である。ただ し今年度は、到達度評価を行った後に自己評価を行ったことで、主体的評価が低くなっている可 能性がる。次年度以降は質問事項の順番を逆転させる予定である。3-2(本文30ページ~3 8ページ)の(3)評価においても以下の質問項目を用いている。 自己評価 質問番号 到達度評価 質問番号 26~27 1 28~29 2~7 26・30 8~13 31 32 33 34 14~23 24 25 1~26 評価対象能力 テーマ設定能力 問題領域を見抜く力 検証能力 テーマ設定能力 科学と非科学の弁別能力 言語表現能力 参考文献選択能力 視覚資料作成能力 評価能力 CT能力 分析 論理 分析 論理 多角 多角・分析 メタ認知 自己評価(主体的評価)の質問項目 質問番号26 適切にテーマを設定する能力が身についた。 質問番号27 適切に問題の本質を見抜く力が身についた。 質問番号28 目的にあった手段を選ぶ力が身についた。 質問番号29 研究や実験を適切に計画・実施する能力が身についた。 質問番号30 科学的か科学的でないか見定める能力が身についた。 質問番号31 適切に書く、話す能力が身についた。 質問番号32 他者に伝わる、目的に合った資料を作る能力が身についた。 質問番号33 信頼できる資料を見つける能力が身についた。 質問番号34 適切に自分や他者を評価できる能力が身についた。 到達度評価(客観的評価)の質問項目 岡村さんは、クロオオアリがアブラムシの排泄物を食糧として利用していることを、図鑑で知 りました。そして、アブラムシの側はクロオオアリに助けられてはいないのか、という疑問を持 ち、研究することにしました。次の課題研究のタイトルのうち、この研究のタイトルとして最も ふさわしいものを1つ選びなさい。 質問番号1 ① クロオオアリとアブラムシについて ② クロオオアリとアブラムシを飼育してみた ③ クロオオアリはアブラムシにどのように依存しているか? ④ アブラムシはクロオオアリに依存しているか? ⑤ アブラムシはクロオオアリに依存しているに違いない。 夏目さんは、「コーヒーを飲むと血圧が高まるのか」確かめようとしている。次の各実験手順 のうち、方法として正しいものは①、正しくないものは②としなさい。 質問番号2 すべての実験を受ける人に同じ濃さ、同じ成分、同じ量のコーヒーを飲んでもらった。 質問番号3 男性はコーヒーを飲む20分前と20分後、女性はコーヒーを飲む30分前と 30分後に血圧を測定した。 質問番号4 男 性 1000 人 、 女 性 1 0 0 0 人 の 計 2 0 0 0 人 に 実 施 し た 。 質問番号5 街角に場所を作り、近辺で参加者に声をかけ、参加を了承してもらえた人から ブースに入ってもらって実験した。 質問番号6 参 加 者 は 2 0 代 、3 0 代 、4 0 代 、5 0 代 、6 0 代 、7 0 代 の 各 人 数 が 同 じ に な る ようにし、10代以下と80代以降は被験者の健康に留意し実験しなかった。 質問番号7 高 ま っ た 被 験 者 を A 群 、不 変 も し く は 低 下 し た 被 験 者 を B 群 と し 、血 圧 の 数 値 も し くは体温の上昇が見られた被験者を A 群とした。 次 の 示 す 内 容 を 「現実に確かめる方法がある」場合は①、「現実に確かめる方法がない」場 合は②を選択しなさい。 質問番号8:「雀はハマグリが成長した姿だ」説は本当か? 質問番号9:UFO は 実 在 す る か ? 質問番号10:最も美しい音階とは何か? 質問番号11:納豆はダイエットに有効か? 質問番号12:遺伝の法則はハツカネズミにおいても当てはまるか? 質問番号13:冥王星の大気の組成はどのようになっているか? 各文について、研究をレポートや論文にする際の言葉として、「適切である」場合は①をマー クしなさい。「不適切で」場合は②を選択しなさい。 質問番号14:~を調べる上では、―という問題があった。 質問番号15:~と言える根拠は、―である。 質問番号16:~について、私は―だと思う。 質問番号17:~を調べるにあたり、―という方法を用いた。 質問番号18:~と―については、以下のような関連がある。 質問番号19:~について、確か研究者の―は、次のように述べている。 質問番号20:実験中に~という現象が観察されたことから、―であると言える。 質問番号21:~について、―の方法で調べると、すごく多くの証拠が見つかった。 質問番号22:~については、―の方がましだ。 質問番号23:~に関して、―という事例が挙げられる。 安田さんは、ある歴史的に有名な合戦 X の、実態を研究しています。これに関連する、次の① ~⑤の参考文献が、今目の前にあります。この中で、信頼できる可能性が最も高い情報源はどれ か。1つ選びなさい。 質問番号24 ① X に つ い て 書 か れ た Yahoo 知 恵 袋 ② 国立大学の X 研究者の教授が、学会発表を元に執筆した研究論文 ③ 週刊誌の X にまつわる記事 ④ ウィキペディアの X の項目 ⑤ X について書かれた自費出版の本 ⑥ X について書かれたブログ記事 中学2年生の野宮真貴子さんは、課題研究をしました。テーマは、「キュウリとトマトを一緒 に食べるべきか?」です。実験はせず、文献(本や資料)を調べて研究しました。そして、発表 のためのポスターを作ることになりました。発表の際は、ポスターを見せながら、ポスターに書 いていないことも口頭で説明します。あなたは、以下の①~④のうち、どのポスターが、最も適 切な形式であると思いますか。①~④から一つ選びなさい。 (注 研究の内容ではなく、ポスターの形式が最も適切なものを選ぶこと。) 質問番号25 ② ① テーマ「キュウリとトマトを一緒に食べてよいか」 テーマ「キュウリとトマトを一緒に食べてよいか」 野宮真貴子 動機・目的 野宮真貴子 ①動機・目的 ・我が家「トマトキュウリサラダ」が定番 ・我が家の定番「トマトキュウリサラダ」 ・いいか悪いか確かめたい …本当 に食べて健康によいのか?検証したい! 先行研究調査 ②先行研究調査 1.食べ合わせの3効果 1.食べ合わせについて 相乗 複数の食材の栄養素を 相加 相殺 A相乗 倍以上に高め合う B相加 補い合う C相殺 打ち消しあう ※1 2.トマトの主要栄養素 2.トマトの主要栄養素(100gあたり) 糖分 2.63 g 食物繊維 1.2 g ビタミンC(17%) 13.7 mg アルギニン 0.021 g アスパラギン 0.135 g グルタミン酸 0.431 g ビタミンC(17%)13.7 mg ※2 3.アスコルビナーゼ キュウリに含有…VC破壊 ※2 4.「アスコルビナーゼVC破壊説」への反論 実態…VCを「還元型」から「酸化型」に変換するだけ 「酸化型」VCは体内で「還元型」に戻る ※3 3.キュウリのアスコルビナーゼ VCを破壊する ③考察 ②1.2.3.から言えること 4.「アスコルビナーゼVC破壊説」への反論 「キュウリ+トマト=相殺効果あり」 ②1.2.3.4.から言えること アスコルビナーゼ 「キュウリ+トマト=相殺効果なし」 ④結論 「キュウリとトマト」一緒に食べてもよい」 飛躍的な健康増進(相乗)効果はない 還元型VC ⑤参考文献 ※1 安田虎雄「食べ合わせの効果研究」 (○○大学出版 2013年) 結論 ※2 △△出版編集部「食べてはいけないもの100」 上記より ①キュウリとトマトをとる VCが酸化型になる ②(しかし)酸化型VCになっても問題ない ③(ゆえに)キュウリとトマトを一緒に食べてもよい ④(ただし)すごく健康によくはない (△△出版 1968年) ※3 小西康・野本刈矢共著 「アスコルビナーゼの作用」 (「××大学官吏栄養学部紀要」p.6-9 2915年5月) ③ ④ テーマ「キュウリとトマトを一緒に食べてよいか」 テーマ「キュウリとトマトを一緒に食べてよいか」 野宮真貴子 ○動機・目的 野宮真貴子 ○動機・目的 我が家では、キュウリトマトサラダが毎晩食卓にのぼる。 しかし、本当に健康によいのかわからない。 ・我が家の定番メニュー…「トマトキュウリサラダ」 →効果、弊害を確かめたい 家族の健康のため、キュウリトマトサラダの効能を 確かめたい。 ○先行研究調査から分かる結論 ・結論① ○先行研究調査 キュウリとトマトは相殺効果がある まず食べ合わせについて調べた。すると、相乗効果、 ・結論② 相加効果、相殺効果の3つがあると分かった。(注1) 相乗…食べ物どうしの栄養を高め合う キュウリとトマトは相殺効果がない ○考察 相加…食べ物どうしの足らないものを補い合う Aまず食べ合わせについて調べた。すると、相乗効果、 相殺…食べ物どうしの効果を打ち消し合う 相加効果、相殺効果の3つがあると分かった。(注1) 相乗…食べ物どうしの栄養を高め合う トマトの栄養素の中心は、ビタミンCだ。キュウリの栄養 素のうち、ビ タミンCを打ち消すものはないか調べてみた。すると、アスコルビナーゼとい う成分が、ビタミンCを打 ち消すことがわかった。これは相殺作用である。 (注2) 相加…食べ物どうしの足らないものを補い合う 相殺…食べ物どうしの効果を打ち消し合う トマトの栄養素の中心は、ビタミンCだ。キュウリの栄養 素のうち、 ビタミンCを打ち消すものはないか調べてみた。すると、アスコルビナーゼ しかし、小西・野本の論文によると、アスコルビナーゼの 作用はビタ ミンCの破壊ではない。ビタミンCを「還元型」から「酸化型」に変換するだ という成分が、ビタミンCを打 ち消すことがわかった。これは相殺作用で ある。(注2) けである。「酸化型」VCは体内で「還元型」に戻るため、事実上相殺 されない。(注3) Bしかし、小西・野本の論文によると、アスコルビナーゼ の作用はビ タミンCの破壊ではない。ビタミンCを「還元型」から「酸化型」に変換す ○結論 るだけである。「酸化型」VCは体内で「還元型」に戻るため、事実上相殺 以上のことから、キュウリとトマトを一緒に食べても相殺 作用は起こ されない。(注3) らない。ただし、相乗作用があるとはどの文献に も書かれていなかったの で、非常に高い効果があるわけでは ないと言える。 ○結論 キュウリとトマト…相殺作用は起きない。 ○参考文献 ただし相乗作用があるとはどの文献にも書かれていなかったので、 非常に高い効果があるわけではないと言える。 注1 安田虎雄「食べ合わせの効果研究」 (○○大学出版 2013年) 注2 △△出版編集部「食べてはいけないもの100」 (△△出版 1968年) ○参考文献 注3 小西康・野本刈矢共著 注1 安田虎雄「食べ合わせの効果研究」 「アスコルビナーゼの作用」 (○○大学出版 2013年) (「××大学官吏栄養学部紀要」p.6-9 2915年5月) 注2 △△出版編集部「食べてはいけないもの100」 (△△出版 1968年) 注3 小西康・野本刈矢共著 「アスコルビナーゼの作用」 (「××大学官吏栄養学部紀要」p.6-9 2915年5月) 質問番号26~34、自己評価の結果が下のグラフとなる。 34 33 32 ① 31 ② 30 ③ 29 ④ 28 ⑤ 27 26 0% 20% ①とてもあてはまる 40% ②まああてはまる 60% 80% ③どちらともいえない 100% ④あまりあてはまらない ⑤全くあてはまらない 全項目において課題研究スキルの定着への肯定的回答(①・②)がほぼ80%以上との結果と なった。生徒は研究を通して、自らの能力の伸長を感じ取れることができたと思われる。 質問番号1~25、到達度評価の正答率(%)の結果が下のグラフになる。 100 90 80 70 60 50 SS 40 全体 30 20 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10111213141516171819202122232425 同学年の他クラスや他学年の結果とも比べても全体的に高い正答率となった。SSH主対象ク ラスとして、他の課題研究活動よりも質の高いものとすることができたと考えられる。 下の表は到達度評価問題の正答数とその中での自己肯定回答数をまとめた表である。 正答者数 自己評価質問番号 肯定評価数 評価対象能力 26 28 テーマ設定能力 1 29 問題領域を見抜く力 27 25 28 7 2~7 検証能力 8 29 5 26 1 テーマ設定能力 8~13 1 科学と非科学の弁別能力 30 1 14~23 言語表現能力 23 31 19 24 参考文献選択能力 33 32 27 到達度評価質問番号 25 視覚資料作成能力 27 33 22 下の表は自己評価問題肯定数とその中での到達度評価問題の正答数をまとめた表である。 自己評価質問番号 到達度評価質問番号 肯定数 正答数 評価対象能力 テーマ設定能力 1 28 問題領域を見抜く力 26 34 テーマ設定能力 8~13 1 科学と非科学の弁別能力 テーマ設定能力 27 31 1 25 問題領域を見抜く力 28 32 2~7 7 検証能力 29 30 2~7 5 検証能力 テーマ設定能力 30 33 8~13 1 科学と非科学の弁別能力 31 33 14~23 19 言語表現能力 32 32 24 27 参考文献選択能力 33 33 25 28 視覚資料作成能力 *今回の分析では、評価対象能力に対して複数の到達度評価が設定している場合は、全問正解の みを抽出している。 自己評価と客観的評価との関連を分析すると、到達度問題正解者の自己評価肯定の回答率は概 ね80%以上あることが分かる。一方、自己評価肯定者の到達度正解率を見ていくと、複数問題 の影響を排除すると80%以上の正解率が見られた。これらの点を踏まえると、生徒のメタ認知 的能力の育成にも課題研究の活動成果が波及されていると考えることができる。 その中でも、自己評価問題31における肯定回答者33名中19名が到達度評価問題14~2 3の全てに正解している。この結果は非常に興味深く、2つの要因が考えられる。1つは、学校 設定科目SS科学言語を実施していることである。SS科学言語では、CT能力を駆使した思考 力・読解力・表現力の育成を目的としてからである。もう1つの要因として、プレゼンテーショ ンをする機会が多かったことが考えられる。SSH主対象クラスとして、他のSSH校や学会・ コンテスト等での研究発表の機会が多くあったため、適切な表現方法が精錬されていったと思わ れる。 今年度、SSH主対象クラスのみならず、中1年生から高校2年生までの全生徒を対象に【課 題研究到達度評価アンケート】を実施した。質問項目、分析方法の見直しなど検討すべき課題も あるが、SSH主対象クラスと取り組み成果と一般生徒の取り組み成果を比較することで、有効 はカリキュラム開発へつなげていくことができると考えられる。特に、今年度の分析からあらわ になった、 〈プレゼンテーションをする機会を増やすことで生徒の言語表現能力が高まる〉といっ た仮説は次年度に検証することが可能となった。今後もこの取り組みを重ね、有効なカリキュラ ム開発への研究を進めていく。 Ⅴ SS科学言語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ (1)仮説 ①科学、哲学にまつわるテキストや問題領域に触れることで、科学に適切に向き合う態度と知性、 他者に適切に応答する能力が育つ。 ②適切なモデルの獲得と反復練習により、CT に根差した思考読解表現力が育つ。 (2)実施内容 昨年年末、それまでの SS 科学言語の取り組みを踏まえて、「SS 科学言語学習活動リスト」を 設定した。CT評価規準枠組みに当てはめて分類することで本校CTと関連付けた。これにより、 教材内容に関わらず、特定の種類の問いで反復訓練することにより、CT能力を強化することが 可能となった。ワークシートに記載した全発問に、項目名を当てはめることで、実際にいつ何を どのくらいやったかが計測できる形をとった。 また、授業内では「授業内 CT 評価問題」を反復実施し、生徒の実態、伸び方を測定し続けた。 評価問題の種別は、構造図作成、記述、要約、多肢選択、反論、説得などの多岐にわたる。 種 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 月 教材 教材 教材 内 4 教「ふしぎと人生」 教「木を伐る人/植える人」 教「ぬくみ」 容 オ「なめとこ山の熊」 オ「小論文作成訓練(問題領 オ「具体抽象訓練」 オ「共生」 域の発見)」 オ「一元論と二元論」 オ「弁論術」 オ「他者」 オ「センス・オブ・ワンダー を追いかけて」 5 教「羅生門」 教「人類による環境への影響」 教「抗争する人間」 オ「行為論モデルの使い方」 オ「読む技術(分析・総合・概念 オ「定義する訓練」 語)訓練」 オ「原因と結果を読む訓練」 オ「主体・客体」 オ 「小論文作成訓練(人と自然の関係)」 6 教 「サイボーグとクローン人間」 オ「心身二元論問題」 教「美しさの発見」 7 オ「性と日本語」 教「山月記」 オ「言語技術―再話―訓練」 オ「実存」 教「ミロのヴィーナス」 9 教 「経済の論理/環境の倫理」 教「ホンモノのおカネの作り方」 教「わかろうとする姿勢」 10 オ「棗椰子の木蔭の文学」 教「南の貧困/北の貧困」 教「遅れてきた〈私〉」 教「戦争の不可能性」 教「ロゴスと言葉」 11 教「夢十夜」 教「「である」ことと オ「反例―論理」 「する」こと」 オ「ディベート訓練」 オ「問題領域でつなげる訓練」 12 オ「反例―倫理」 オ「有限性」 オ「暗黙の前提訓練」 オ「接続と論理」 オ「有限性」 1 教「歴史はいま・ここ・私に 教「こころ」 向かっていない」 オ「テクスト論」 オ「難解概念を小学生にわか 教「市民のイメージ」 るよう説明する訓練」 教「宇宙樹」 オ「ロボットの申し分」 オ「非連続テキストを読む」 教「虚ろな眼差し」 オ「要約訓練」 教「日本文化の雑種性」 オ「空所を読む訓練」 センター演習 反 復 回 数 上 位 項 目 未 実 施 例 位 1 2 3 4 5 6 7 7 10 10 項目 構造化する 対比構造を読む 比較する 文意を読む 根拠理由を述べる 具体抽象を分ける 言い換える 定義する 構造化する 指示語を読む インタビューする 非連続テキストを分析する 6W1Hで書きなおす 主観客観を読み分ける CT 回 分 41 分 29 多 25 分 20 論 19 分 18 分 17 多 17 論 16 分 16 総 0 分 0 分 0 分 0 % 7 5 4 3 3 3 3 3 3 3 0 0 0 0 位 1 2 3 4 5 6 8 8 10 10 項目 接続詞を使う 言語調整する 文意を読む 言い換える 構造化する 根拠理由を述べる 原因結果を読む 要約する 解釈する 共通構造を抜出す 要素分解する 段落関係を読む 描写する 説得する CT 回 論 51 論 47 分 34 分 23 論 18 論 17 論 13 分 13 分 11 分 11 分 0 分 0 総 0 総 0 % 10 10 7 5 4 3 3 3 2 2 0 0 0 0 ※「CT」欄 論…論理的思考 分…分析的思考 多…多角的思考 「教材」欄 教…教科書教材 オ…オリジナル教材 ※学習活動の通算実施回数 Ⅰ…576 回 Ⅱ…489 回 Ⅲ…381 回 位 1 2 3 4 5 7 7 8 9 項目 添削する 評価する 対比を読む 比較する CT 回 メ 61 メ 47 分 29 多 27 原因結果を読む 論 19 言語調整する 論 16 根拠の妥当性 メ 16 を評価する 言い換える 分 14 構造化する 論 11 再話する 総 0 物語を書く 総 0 ディベートをする 総 0 報告する 総 0 メ…メタ認知 % 16 12 8 7 5 4 4 4 3 0 0 0 0 総…総合的 (3)評価 Ⅰ~Ⅲの取り組みを縦割りでそろえ構造化したため、事後の評価も共通の枠組みを持つことが できるようになった。そこで、1月15日にⅠ~Ⅲ共通で「SS 科学言語評価テスト」を実施。C Tの能力の有無を客観的に評価するため、記述と選択式両方が含まれている。以下の記録を得た。 Ⅰ Ⅱ Ⅲ (2)より、構造図作成を徹 (2)より、言語技術面、特に (2)より、前期はメタ認知の 底反復したことがわかる。そ 表現面に大きく特化した授業展 強化が行われたことがわかる。 の結果、A「情報の明確化」 開が行われた。また、内容面で 一方。後期はセンター演習のみ において他学年をわずかなが は暗黙の前提を読む、という活 である。結果、「未実施の項目 ら上回った。ⅡⅢの生徒も昨 動が多く実施されたため、評価 例」に明らかなように、言語技 年度、あるいは今年度、構造 テストにおいてもその力が発揮 術に特化した学習活動はⅠⅡに 図作成の反復訓練を受けてい されている。また、(2)には 比べ少なかった。結果、ⅠⅡに るため、上回ったポイントは 記載しきれなかったが、説得、 比べ平均値が下回る項目が多か わずかである。しかし、この 反論、対話などの言語技術を多 った。G「演繹する」能力はⅡ 活動がCTの重要な要素であ く取り入れたことで、J「推論 より高いが、J「推論の結果を る情報の明確化能力を伸ばす の結果の検証」能力が他学年に 検証する」能力は低い。前期に ことに関与していることは明 比べ顕著に高い。受験学力面で メタ認知の強化がなされている らかであり、今後も継続する も、マーク模試で( )とい はずだが、それがセンター演習 。ⅡⅢが2単位に対し、Ⅰは うレベルにあり、言語技術を取 の中で生きていないことがわか 単位数が3と多かったため、 り入れた授業で順調に能力を伸 る。次年度SS科学言語Ⅲにお 反論、ディベート、概念語習 ばしてきている。Ⅲが言語技術 いても、センター演習に特化す 得などの特殊な言語活動に時 の活動を減らして思考力を下げ ることはやむを得ない。ただし 間を割けた。 たことを考えると、次年度はセ 、言語技術の活動を効果的に取 ンター演習に至っても言語技術 り入れる方法を模索せねばなら をとり入れる必要がある。 ない。 Ⅵ SS数学Ⅰ・Ⅱ (1)仮説 教科書では扱わない発展的な数学的課題の解決に取り組むことを通じて、数学の世界を探究す る姿勢を育むことが可能となる。また、パズルや敷き詰めなどの題材やPCを使用することによ り、数学の学習への関心・意欲を高め、身近な事象を数学的にとらえようとする態度が身につく と考える。さらに、課題解決のための具体的な手順や根拠をアルゴリズム化したり、プログラミ ングしたりすることで、仮説・検証・実験を自ら行う態度を育み、論理的思考力を高めることが できる。 SS数学Ⅰ(5年生) (2)実施内容 これまでのSS数学の理念を生かしつつ、授業内容とのリンクや問題解決の難易度(生徒の興 味関心が高まる題材)などを考えた上で、今年度は以下の取り組みを行った。 実施時期 実施内容 ○ハノイの塔の伝説にせまる ・1枚~5枚の時、何回で終了するか実際にやってみた後、規則性を探り、 n枚の時に何回で終了するか求め方を考える。 ・既習事項である階差数列や漸化式を用いて、何回で終了するかを求める。 後 期 ・棒の本数を4本にするとどうなるかを考える。 ○平面の敷き詰め ・正多面体による平面敷きつめ ・ドミノやテトロミノによる敷きつめ可能性の問題 (3)評価 授業後に以下のようなアンケートを行った。質問内容と結果は以下の通り。 (ⅰ)ハノイの塔の授業終了後のアンケート ①主体的に取り組むことができた。 ②問題の内容は難しかった。 ③手を動かして考えることは好きである。 ④他者の意見をもとに、自分の考えをさらに深めることができた。 ⑤既習事項の理解がさらに深まった。 ⑥具体例から規則性を見つけ、一般化していく流れを理解できた。 ⑦今後もこのような活動をしたい。 ⑧身近な問題を数学化して考えることへの興味関心が高まった。 ⑨今回の取り組みで学んだことは将来に生かせると思う。 0% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 20% 40% 60% 80% 100% とてもそう思う そう思う どちらでもない あまり思わない 思わない (ⅱ)敷きつめの授業終了後のアンケート ①主体的に取り組むことができた。 ②問題の内容は難しかった。 ③他者の意見をもとに、自分の考えをさらに深めることができた。 ④試行錯誤だけでなく、論理的に考えることのよさを感じた。 ⑤今後もこのような活動をしたい。 ⑥身近な問題を数学化して考えることへの興味関心が高まった。 ⑦今回の取り組みで学んだことは、将来に生かせると思う。 0% 1 2 3 4 5 6 7 20% 40% 60% 80% 100% とてもそう思う そう思う どちらでもない あまり思わない 思わない 投げ込み式の題材となり、年度を通した継続的な取り組みがうまくできなかったことが反省点 であるが、生徒は課題に対して意欲的に活動することができた。互いに意見を出し合いながら、 「これでいいのか?」 「他のやり方はないか?」と考えることは、CTの理念にもつながるもので ある。 2つのアンケートの共通問題①,②,⑦の結果から、問題の難易度と生徒の活動に対する主体 性の関わりが深いことが分かる。この結果を踏まえ、どの程度の難易度で題材設定をすることが 本校の生徒にとって最適なのかということを考えていきたい。 今年度は、手作業による活動が多かったことと、特にハノイの塔の活動では結果を求めること (既習事項とのつながりを意識し過ぎた)に偏り、アルゴリズムという観点やPCの補助的利用 を印象付けるところがうまく達成できなかった。次年度は今年度の取り組みをさらに深く掘り下 げることを目的に、円盤の動かし方をアルゴリズム化することや、プログラム作成についても考 えていきたい。 取り組みの中で、答えは何となく分かるが、それがなぜそうなるのかということを言葉にして 言ったり書いたりすることが困難な生徒が多いという状況が非常に多くみられた。数学の授業の 中で、こうした言語活動を充実させることも重要な研究課題であると考える。 SS数学Ⅱ(6年生) (2)実施内容 実施時期 実施内容 ○Excel VBA を活用して、三角形の成立条件とその形状を算出するプログラムの 前期 作成および演習をする。 (4~7月) ○その後、分散、標準偏差の計算処理をするプログラムの作成および演習をする。 後期(10月以降)は受験指導のため、実施していない。 (3)評価 CT育成の観点から学習の到達度を評価し、その評価点と実際の学力点との相関を検証する。 研究事例として『三角形の形状判定』プログラミングを挙げる。問題に対して、到達度点(0 点 ~3 点)を設定し、授業後に自己評価(自己採点)を行った。学力点との相関は、数学の模試偏 差値との関係をみて検証した。 評価点と学力偏差値との相関(相関係数=0.2825) 学力偏差値(点) 70 65 60 55 50 45 40 35 30 3 5 7 9 11 自己評価合計得点(12 点) 13 相関係数からみると、CT評価と学力偏差値には相関関係はないと言える。負の相関になって いないことから、若干ではあるが、学力偏差値が高い生徒ほどCT評価も高い傾向にあるとも見 てとれるが、データ数が少ないこともあり、この検証は十分とはいえない。また、昨年度行った 同じ課題に対するCT評価点と数学,英語,国語の学力偏差値との相関係数が、順に 0.0675,- 0.1202,-0.0146 であったことは参考までに述べておきたいが、各教科の得意・不得意に左右さ れているだけとも考えられる。できるだけ継続的にこの検証を続け、CT育成の成果が学力向上 とどのように関係があるのかを調査していきたい。 数学的課題をプログラミングして解決し、その最適化を図ることが「CT育成」のひとつの手 段と考え取り組んだ。「なぜ○○になるのか?」「他に手立てはないか?」と言う多角的かつ分析 的な思考力・判断力を養うことにつながると考えるからである。この目的のもと、どんな数値の 時にエラーが発生し、なぜそのエラーが起きるのか、そしてそのエラーを解消するための正しい プログラムは?などを論理的に推し進めていくプロセスを比較的スムースに進めることができた。 問題を解決するためのアルゴリズムの構築からプログラムの最適化を図る中で、仮説・検証・実 験のサイクルを自ら実践することができ、一定の成果は得られたと思う。一方で、プログラミン グの基礎が十分定着していない生徒がいることや、特定のPC言語の修得に目的化されやすいと いう問題も、今後の課題にしていきたい。 Ⅶ SS英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ (1)仮説 国際的な場面において自らの研究を英語で発表できる人材とは、以下の2点が可能とする人材 である。 ・自らの研究を英語で発表・質疑応答できるようになること。 ・自らの研究論文の英語版を作成できるようになること。 そのために、次の点を実践すれば、上記の目標を達成することが可能である。 ・教科書の内容や共通課題をプレゼンさせるなど、文理の内容を問わず英語で発表する機会を多 く与える。 ・プレゼンテーションの模範を見せて、発表の仕方や表現方法を学ばせる。 ・研究論文を含む様々な英文を読ませ、ひな形や表現方法を学ばせる。 ・添削の際に教員が修正するのではなく指摘をする中で、専門用語や必要な表現を調べる方法を 学ばせる。 ・英語の教材自体が文系分野に偏りがちなので、理系分野の教材にも積極的に取り組ませる。 (2)実践内容 SS英語Ⅰ(4年生) SS英語Ⅰにおいては、 「アウトプットする機会を多く与える」という意図のもと、コミュニケ ーション英語の授業で学習している教科書の内容について、レッスンごとにパワーポイントでプ レゼンテーションをさせた。主に留意した点は以下の通りである。 ・本文で学習した言語材料を積極的に活用するように指示した ・個々に責任を持たせるため、1 人 1 人にプレゼンさせた ・質疑応答力を身につけるため、予め質問役を指定しておいた ・原稿を読むのではなく、スライドに書かれている英語を利用して英語を話すように指導した ・ビデオカメラで録画して、各自のプレゼンを簡単に評価した また、筆記試験においては、「英文を読んでパワーポイントのスライドを完成させる問題」と、 「パワーポイントのスライドをもとにプレゼン原稿を書かせる問題」を出題した。例として後者 の問題の一部を示しておく。 1枚目のスライド(イントロダクション) ①挨拶 ②自己紹介(名前と所属) ③プレゼンする機会を持って嬉しい ④テーマは安田女子高校についてである 月 SS英語Ⅱ(5年生) 以下に示すような様々な帯活動に加え、英語Ⅰの教科書 Crown をベースにした文系内容のプレ ゼン活動及び、共通理系課題のプレゼン活動、各自研究分野のプレゼン活動を行った。 【Input】 【Output】 4 5 共 通 課 題 の プレゼン 「Keep It Cool」班ごとに実験をし、その結果を発表 させた。 6 Review 7 Prezi を使って「各自研究発表の概要(abstract)」 を説明させた。 8 9 各自研究課題のプレ ゼン Homework ・「暗唱用例文集」 10 ・「English Expressions for Science Presentation」 ・TED 11 12 1 ・Basic English for Physics/ Chemistry Review Poster Session 準備 Vocabulary Quiz/ Poster Session(11/19) One-minute Presentation 台湾発表者選考準備 2 3 台湾発表者選考[スライド・全員・英語で] SS英語Ⅲ(6年生) SS英語Ⅲの主な目標は、自らの研究論文の英語版を作成することであった。SS 英語Ⅰ及びⅡ では、主にプレゼンテーションのスキルを中心に育成してきたのであるが、SS 英語Ⅲにおいては その研究成果を論文にまとめあげていくことになった。今年度は英語の論文の共通のフォーマッ トを作成して、生徒たちはそのフォーマットに基づいて、自分たちの手元にある研究成果を論文 の形へと整えていった。英語科の教員は、それぞれ2~3グループの研究論文を担当し、基本的 にはグループごとの個別対応を行った。全体で共有するべきことが生じた場合は適宜授業時間内 にフィードバックを行うこととした。今回の指導にあたり、留意した点は以下の通りである。 ・日本語の研究論文を、きちんと理解しておくように指導した。 ・平易で分かりやすい日本語で説明できるように論文の文章を噛み砕くように指導した。 ・その上で、身の丈にあった平易な英語に直すように指導した。 ・提出する前には専門用語の使い方を調べておくことを指導した。 ・文型をきちんと確認するように指導した。 ・教員は基本的な文型などをチェックし、意味が通る英文になっているかどうかを確認するのみ にとどめた。 ・添削して正しい英文にすることよりもむしろ、インターネットなどを活用して「専門用語の使 い方等を調べる方法」の指導に力を入れた。 (3)評価 平成 27 年の 4 月と 2 月に各学年においてアンケートを行い、1~5 段階で自己評価をさせた ところ、次のような結果となった。なお、高校 1 年生については、文理の内容にこだわらずに 上記の目標を達成するために、アンケート項目を改良した。来年度以降はこちらのアンケート を統一して使用する予定である。 SS英語Ⅰ(4年生) アンケート項目 4月 2月 差 英語のプレゼンを聞いて理解できるようになりたい。 英語のプレゼンを聞いて理解することができる。 4.8 2.3 4.6 2.9 -0.2 0.6 英語でプレゼンができるようになりたい。 4.8 4.5 -0.3 英語でプレゼンをすることができる。 1.6 2.4 0.8 プレゼンに関する英語の表現を知りたい。 プレゼンに関する英語の表現を知っている。 4.7 1.5 4.3 2.6 -0.4 0.9 英語で質問ができるようになりたい。 英語で質問をすることができる。 4.6 1.5 4.4 2.4 -0.2 0.9 英語の質問に英語で答えることができるようになりたい。 英語の質問に英語で答えることができる。 4.7 1.6 4.5 2.2 -0.2 0.6 質疑応答に関する英語の表現を知りたい。 質疑応答に関する英語の表現を知っている。 4.7 1.4 4.3 2.2 -0.4 0.8 英語の論文が読めるようになりたい。 英語の論文を読むことができる。 4.5 1.5 4.3 1.6 -0.2 0.2 英語の論文が書けるようになりたい。 英語の論文を書くことができる。 4.6 1.1 4.2 1.5 -0.4 0.4 論文に関する英語の表現を知りたい。 論文に関する英語の表現を知っている。 4.5 1.2 4.1 1.4 -0.4 0.2 「英語でプレゼンをすることができる」、「プレゼンの関する英語の表現を知っている」、「英語 で質問をすることができる」、「質疑応答に関する英語を知っている」の項目において比較的大き な差が見られた。プレゼンの場数を踏み、質疑応答の機会を多く与えた分、まだまだ力不足と感 じているものの、少しずつ技能の向上を実感できているようである。その一方で、論文を読み書 きする技能についてはほとんど変化がなかった。論文の指導及び作成については SS 英語Ⅲで実施 予定であるため、今後の向上が見込まれる。なお、モチベーションに関する項目においては、数 値としては若干の低下が見られたが、これは数名のモチベーションが低下したことによる影響だ と考えられ、大多数の生徒は依然として高いモチベーション(4 または 5)を維持している。 SS英語Ⅱ(5年生) アンケート項目 4月 2月 差 理系リーディング(意欲) 理系リーディング力 文系リーディング力 4.0 2.0 2.1 4.1 2.2 2.2 0.1 0.2 0.1 理系リスニング(意欲) 理系リスニング力 文系リスニング力 4.2 2.0 2.1 4.2 2.3 2.4 0.0 0.3 0.3 理系ライティング(意欲) 理系ライティング力 文系ライティング力 4.2 1.9 2.0 4.3 2.1 2.3 0.1 0.2 0.3 理系スピーキング(意欲) 理系スピーキング力 文系スピーキング力 4.0 2.3 2.2 4.1 2.0 2.3 0.1 -0.3 0.1 理系単語力 文系単語力 2.1 2.2 2.1 2.4 0.0 0.2 研究論文(意欲) 研究論文力 4.3 2.4 4.4 2.3 0.1 -0.1 研究プレゼン(意欲) 研究プレゼン力 4.2 2.3 4.2 2.6 0.0 0.3 「意欲」の点においてはどの分野においても向上が見られた。その一方で、能力の点においては 「理系スピーキング力」と「研究論文力」においてマイナスの結果となった。 「理系スピーキング 力」がマイナスになった原因として、聞き手が生徒や教員の場合が多く、「何のために」「誰を対 象として」という部分が曖昧となり失速してしまった感がある。今後は大学や研究機関と連携を 深め、留学生などを積極的に招致し、実践的なプレゼンの場を多く持つことでこの問題を解消し たい。また「研究論文力」については、高校 3 年時の SS 英語Ⅲにて指導予定であるため、今後の 向上が期待できる。 SS英語Ⅲ(6年生) アンケート項目 4月 2月 差 理系リーディング(意欲) 理系リーディング力 文系リーディング力 4.0 2.3 2.1 4.2 2.8 2.4 0.2 0.5 0.3 理系リスニング(意欲) 理系リスニング力 文系リスニング力 4.2 2.3 2.1 4.4 2.7 2.3 0.2 0.4 0.2 理系ライティング(意欲) 理系ライティング力 文系ライティング力 4.0 2.1 2.0 4.3 2.6 2.2 0.3 0.5 0.2 理系スピーキング(意欲) 理系スピーキング力 文系スピーキング力 4.2 2.2 1.9 4.4 2.5 2.1 0.2 0.3 0.2 理系単語力 文系単語力 2.7 2.1 3.1 2.3 0.4 0.2 研究論文(意欲) 研究論文力 3.8 2.8 4.0 3.4 0.2 0.6 研究プレゼン(意欲) 研究プレゼン力 3.7 2.8 4.0 3.3 0.3 0.5 全項目について上昇が見られるが、印象的なのはやはり研究論文及び研究プレゼンに対する意欲 とプレゼン力の自己評価である。全般的な理系ライティングやスピーキングについても、意欲及 び自分の持つ力に対する評価は上昇したが、その評価の値は自己の研究論文及び研究プレゼンに 対する意欲と力の自己評価の方が大きい。生徒たちは、自分の研究について発表し、論文にまと めあげるプロセスを通じて「自分の研究なら、頑張れば論文が書けるし発表もできる」というこ とを体感し、それは生徒たち自身の自信へと繋がったのである。この結果から言えることは、 「自 分のしたいこと」に取り組むことによって、「自分のしたいこと(興味関心)」は「自分がやった こと(成果実績)」となり「自分ができること(自信)」に繋がったということである。自分たち の研究について語る生徒たちの様子からは、各自が自分で選んだ取り組みであり、 「自分たちの研 究」であることに誇りを抱いていると感じた。これは、理系のテーマに限らずどのような分野の 研究においても共通するはずである。このような意欲と自信の向上を全ての生徒において実現す るために、日々の英語の授業の中でも他の教科と連携をしながら、生徒がこのような研究に取り 組める機会をいかに設けていけるかということが今後の課題である。 3-2 併設型中高一貫校教育の特性を生かし、発達段階に応じた系統性のある科学的思考 能力の育成方法を研究する 課題研究は通常授業に比べて思考・判断・表現などの科学的思考能力を可視化しやすいと考え、 課題研究においても6ヶ年を見通した流れをつくり、その実践に取り組んだ。 Ⅰ 中学1年生 (1)仮説 少人数からなるグループで、以下の①~③の流れを繰り返し体験させることで、課題研究に必 要とされるCTの基礎力を育成できる。 ①1つのテーマについて、様々な立場から考える。 ②考えたことを、相手にわかりやすく伝える。 ③他者の意見をもとに、自分の意見を再考し、構成を考えてわかりやすく主張する。 生徒に考えさせるテーマは、具体的で生徒にとって身近なもの、かつ様々な立場から考えるこ とが容易なものを選んだ。 (2)実践内容 11月までは、CTの基礎力を育成するための言語活動を実施した。12月からは、総合コース と探求コースに分かれて活動した。総合コースは広島をテーマに(2020 年 広島で東京オリンピ ックを盛り上げよう「Discover Hiroshima」「Enjoy Hiroshima」)、自然科学探究コースはプラン クトンをテーマに研究を行った。【調査⇒多角的に思考⇒表現(生み出す)】 月 内 容 備 考 7 CTを育てる取り組みの説明 言語活動とプレ課題研究についての説明 コンクールごとにゼミを作り、研究の手法や注意点を 全員 夏休み課題 ガイダンス 説明する。 8 岩国市立ミクロ生物館専門員、末友靖隆先生のご指導 自然科学探究コース の下、微生物の採取・観察技能を学ぶ。実際に川と海 プランクトンの研究・夏編 のプランクトンの観察・比較を行う。 9 8つのコンクールに出品 全員 コンクールに出品 10 11 12 1 全員 意見文の「型」を学ぶ 「給食はなくすべきか」という論題 全員ミニディベート 総合コース冬休み課題 多角的に思考する練習と自分の意見を書く練習を行う ガイダンス 総合コース「Discover Hiroshima」 自然科学探究コース 「Discover Hiroshima」の冬休み課題についての説明。 冬休み中に、各自で調査を行う。 他者と意見を交換することによって、表現力と共に多 角的に物事をとらえる視点を育てる。 岩国市立ミクロ生物館専門員、末友靖隆先生のご指導 の下、ゾウリムシの生理実験を行う。 プランクトンの研究・冬編 2 総合コース「Enjoy Hiroshima」 自然科学探究コース 「外国の方に薦めたい広島の○○」を各自で企画し、 学習のまとめとして企画のパンフレットを作成。 これまでに学んだことを班ごとに1枚のポスターにま とめ、クラス内発表会を行う。 プランクトンの研究 (3)評価 【課題研究到達度評価アンケート】の結果、質問番号5・6(適切な検証能力をはかる問い【論 理】)が高学年よりも正答率が高かった。 質問番号5…1年 56% 2年 54% 3年 28% 質問番号6…1年 79% 2年 72% 3年 66% これは、多角的に思考する練習を繰り返し行ったことにより、検証能力が向上したのではない かと思われる。2年生ではゼミを開講し、課題研究をプレ体験する。また、言語トレーニングも 学年全体で継続的に取り組む。こうした2年生での活動に、この到達度評価アンケートの結果を 活かして、より充実した内容にしていく予定である。 Ⅱ 中学2年生 (1)仮説 課題研究形式で、担当教員からの評価、修正を繰り返すことで、CT能力を飛躍的に向上できる。 (2)実践内容 年間を通じて言語技術を実施した。 月 内 容 備 考 課題研究CT基礎授業 言語技術形式で、CTを訓練する。 4 ①報告する ①要約・連絡・報告・評価の技 ②視点を変える ②非連続テキストから推論する技 ③調べる ③図書館資料検索法・資料の信頼性評価法 5 無限白墨(総合) チョークを限られた時間条件で高く積み上げること を競い、CTに基づく問題解決能力を訓練する。 9 ~ 11 11 ~ 3 タンポポ(探究) フィールドワークする能力を訓練 課題研究 オリエンテーション 講堂で今後の流れを説明 課題研究 課題研究 探究講義 10人の学年所属教員によりオムニバス講義する。 各教員の専門性を活かした講義に、課題研究、CT で必要な10の力を割り振ってからめることで、全生 徒のCT能力を訓練した。 10人の学年所属教員がゼミを開講する。 ポスター発表に向けて、個人・グループでの課題研 究を行う。 (3)評価 【課題研究到達度評価アンケート】の結果、客観的な評価試験で以下の結果を得た。他学年と比 較して顕著に高いもの、低いものを抜粋する。 質問番号1 … 1年57% 2年79% 3年74% 5年72% 質問番号10 … 1年32% 2年51% 3年40% 5年40% 質問番号24 … 1年73% 2年83% 3年75% 5年88% 質問番号16 … 1年12% 2年33% 3年62% 5年56% 原因は、以下のように分析できる。 1 …課題研究の中で、テーマを疑問文し、テーマに仮説が含まれることを指導したこと 10…言語技術の中で、事実と意見を弁別する訓練を複数回実施したこと 24…課題研究の中で、インターネットに頼らず文献を読むことを推奨したこと 1 6 …「 すご い 」と いう 言 葉は レポ ー トに 含ま れ る言 葉と し て妥 当か 否 かを 問う 問 題で ある が、まだ発達段階として言葉が幼いためチェック機能が働いていないこと。 これは以下の自己評価アンケートのうち、26、30、33、31 にそれぞれ対応する。 質問番号 26 27 28 29 30 31 32 33 32 5とてもあてはまる 1 2 0 2 3 1 1 0 2 4まあまああてはまる 4 17 5 15 15 22 20 9 8 3どちらともいえない 40 73 44 65 81 77 84 63 76 2あまりあてはまらない 107 83 101 79 70 74 71 74 80 1全くあてはまらない 39 16 41 29 22 17 15 45 25 以上より、自分の能力を客観的に認識できていないという評価ができる。 次年度は言語技術をより一層徹底指導することで、言語表現能力を高めたい。また、課題研究に おいてメタ認知能力、自己評価能力の精度を高めるため、ゼミ担当教員と生徒間のコミュニケー ションの機会を増やす必要がある。 Ⅲ 中学3年生に関して (1)仮説 【概説を受ける→下調べ→テーマの掘り下げ・外部講師によるガイダンス→テーマの設定→実 験・観察・調査の計画立案→実行→レポート作成→ポスター作製と発表→まとめ】という課題の 研究に必要な流れを体験・経験し、1・2年生での探究活動をより深化させる取り組みとした。 3年生での活動では、研究テーマの設定を課題とした。研究のテーマ設定は、課題研究の全体の 流れの中でも大きな意味を持つことがわかっている。さらに、テーマ設定の妥当性が、研究手法 の定着、レポートやポスターの出来・不出来、研究活動の充実・満足度などに影響を与えると考 えた。そこで、生徒のテーマ設定について、抽象的で考察の範囲が広すぎるものは避け、テーマ を疑問形にする、またものづくりや実験・観察が必要になるようなものにすることを念頭に置い て指導した。こうすることで、単なる調べ学習を乗り越えられ、研究内容がより深化させられる と考えた。 (2)実践内容 ① 開設したゼミ 番号 分 野 教科 ゼミ名 人数 1 言 語 国語・英語 ことばの作り方 18 2 文 学 国語・歴史 百人一首 18 3 歴 史 歴史 歴史それって本当? 24 4 公 民 公民 広島から平和を 15 5 現代社会の問題 地理・公民 水が世界を救う! 19 6 芸 術 芸術 わたしの和紙作り 22 7 数学・情報 数学・情報 情報科学 24 8 音楽・数学 楽器を作ろう 24 理学・工学 9 生物 身近な環境と生物 26 10 化学 果物の科学 25 ② 活動の流れ 月 内容 備考 4月 3年生課題研究についての説明会(4/22) 今年一年の流れと目標を説明 各所属ゼミの決定 5月 各ゼミでの活動 テーマ設定についての下調べ 6月 中学3年生 課題研究・ガイダンス(6/5) 外部講師を招聘し、「研究活動」につい テーマ設定の完了(6月末) て学ぶための講演会を開催 7月 研究計画の作成 お互いを評価する練習も行う ゼミ内・研究計画発表会(中間報告①・7/22) 夏休み 研究活動を進める期間 研究の進み具合を確認(夏期休業の登校日) 9月 課題研究中間報告会(中間報告②・9/9) 夏休み中の研究についての成果報告 課題研究レポートの作成作業開始 自然科学観察コンクール出品 約25グループの作品を出品 秋休み 課題研究レポート提出(10/26) 11月 SSH研究発表会(11/28) 各ゼミ代表1名+数名がポスター発表 図書館を使ったコンクール出品 約10名の作品を出品 12月 ポスター作製作業開始 ここでは生徒全員が作製 冬休み ポスター作成作業を進める 1月 ゼミ内ポスター発表会(研究成果最終発表) 1・2年生も見学。活動の継承を目指す。 お互いに評価する練習の2回目を行う 2月 SSH研究成果発表会(2/12) 学年代表1名が口頭発表。ゼミ代表合計 課題研究振り返りアンケート 11グループがポスター発表 ③ 中学3年生 課題研究・ガイダンスの講師の先生方 番号 ゼミ名 講師の先生・所属など 1 ことばの作り方 安田女子中学高等学校 教誓先生 2 百人一首 安田女子大学 日本文学科 古瀬雅義 先生 3 歴史・それって本当? 安田女子中学高等学校 中西先生 4 広島から平和を 被爆体験伝承者グループ 岡田恵美子 先生 5 水が世界を救う! 県立広島大学 人間文化学部 国際文化学科 富田和広 先生 6 わたしの和紙作り 株式会社 因州屋 田村博史 先生 7 情報科学 広島市立大学 情報科学研究科 情報工学専攻 永山 忍 先生 8 楽器を作ろう 近畿大学 工学部 機械工学科 西村 公伸 先生 9 身近な環境と生物 広島市昆虫館主任学芸員 坂本充 先生 10 果物の科学 安田女子中学高等学校 柳澤 教頭先生 ④ 相互評価の練習のために ゼミ内・研究計画発表会(中間報告①) テーマ設定の妥当性 テーマ設定の有用性 研究計画の適切性 先行研究の調査 基本的知識の習得 中学生に実現でき 研究が社会に有用 る も の で あ る の で であるので○、有用 ○、小学生レベルな でないので×。 ので×、大学生でな いとできなさそう なので× 夏休み中に調査や 実験をすすめられ そうなので○、調査 や実験が1・2回で 終わりそうなので ×。 同じようなテーマ に関して、本や論文 を調べているので ○、できていないの で× 自分のテーマや 研究に関して基 本的な語句の意 味を理解できて いるので○、で きていないので ×。 調べ学習で終わっ てしまわないテー マなので○、調べた らすぐ終わるもの なので× 何をどのように調 査するのかが明確 で十分であると考 えられるので○、不 明確・不十分なので × 研究が個人の趣味 で終わりそうなの で×、個人の趣味を こえた結果が出そ うなので○ ゼミ内ポスター発表会(研究成果最終発表) A B テーマ設定 1 2 3 研究方法 調べたらすぐ終わ 目 的 を 達 成 す る、浅いテーマであ る た め の 研 究 る。 方法となって いない。 すぐ終わらないが、 目 的 を 達 成 す 調べ学習にとどま る た め の 研 究 るテーマである。 を行えている。 半年かけて研究す 目 的 を 達 成 す るに値する、探究的 る た め の 研 究 なテーマである。 を行えており、 かつ目的を達 成できている。 C D E ポスター 発表 説明の根拠と論理性 研究発表に必要 な調査・データ がそろっていな い。 研究発表に必要 な調査・データ がそろってい る。 研究発表に必要 な調査・データ がそろい、わか りやすく配置で きている 原稿:見ている 説 明 に 根 拠と 論 理性 声:あまり聞こ がない。 えない 原稿:あまり見 ずにできてい る 声:聞き取れる 原稿:見ないで 内容を理解し て発表できて いる。 声:はっきり聞 き取れる 説 明 の 根 拠と 論 理性 は あ る が 、つ な がら な い と こ ろも あ りわ かりづらい 説 明 に 根 拠と 論 理性 があり、よくわかる (3)評価 取り組みに対する自己評価結果 【課題研究到達度評価アンケート】質問番号26~34 26 31 27 107 18 94 28 30 32 38 33 37 34 61 56 40 52 76 ②まああてはまる 24 57 88 ② 60% ③ ③どちらともいえない ④ 0 17 2 53 40% 3 15 1 57 82 ① ①とてもあてはまる 40 87 20% 100 14 1 69 46 0% 39 86 26 31 17 0 105 33 90 66 41 29 47 80% 80 100% ⑤ ④あまりあてはまらない ⑤全くあてはまらない 【課題研究到達度評価アンケート】の結果、全体の到達度としては、1・2学年と比べて平均的 には高い結果となった。(25 点満点中、1 年 16.7、2 年 18、3 年 18.8、5 年 18.9)。このことから 3学年の取り組みは、仮説①のことに影響を与えているといえる。 次に「適切なテーマ設定能力・適切に問題領域を見抜く力」は 74%の正答率となり、「適切な テーマ設定能力が身についた」と自己評価した割合は 71%(とてもあてはまる・あてはまるの割 合)であったことから、客観・主観共に全体としては高い割合であったため、仮設②についても 満足いく結果となったと考えられる。 また、 「適切な言語表現能力」 ・ 「適切な視覚資料作成能力」の正答率が高かった。これは、中学 3年生では実際にレポート・ポスターの作成が取り組みとしてあること影響していると思われる。 また自己評価の「適切に書く、話す能力が身についた」の割合が高いことからも満足度にも結び 付いていると思われる。これから、3学年での取り組みは仮設③においても一定程度の相関性が あると思われる。ここで一定程度となるのは、自己評価の「他者に伝わる、目的に合った資料を 作る能力が身についた」については、 「とてもあてはまる・あてはまる」の割合が6割程度にとど まったことから、不十分なところがあると考えられる。 さらに、 「適切な科学と非科学の弁別能力」に関して、正答率が高いところと低いところとがま ちまちになっているところは、自己評価の「科学的か科学的でないか見定める能力が身についた」 の割合が4割程度と低いところと関連していると思われる。これについては、教員側としてこの 視点で意識的に取り組んだプログラムがないことからの結果であると思われる。広範な範囲から 課題研究を行うためにも、この部分は、今年の反省と共に、今後の学年の改善点として指摘して おきたい。 Ⅳ 4年生 (1)仮説 4 年生 2 月~5 年生 1 月にかけて行う「課題研究」を円滑に、より高度に実施するためには、そ のための事前学習としてスキル習得や研究の手法を学ぶ機会を設定することが重要である。 (2)実施内容 実施時期 内容 10 月 SSH 講演会① SSH 講演会② 11 月 12 月 ~1 月 学問の入り口 ディベート 2月 ~3 月 課題研究 目標 広島大学大学院生物圏科学研究科准教授 西堀正英氏 研究の意義・方法を学ぶ 株式会社 アンデルセン・パン文化研究所 庄林愛氏 女性研究者としての生き方を知る 多様な研究分野に触れる 議論能力(物事を分析する能力、状況にあわせて判断す る能力、自分の主張を論理的に構成し、わかりやすく発 表する)を向上させる 時事問題の知識を身に着ける 背景となる基礎知識を蓄えながら、仮説を含む疑問形の テーマを設定する SSH 講演会①では、 「突然変異、ん~?それは、遺伝子の失敗作なのか?」というタイトルで農 学、生物学のおもしろさをお話しいただいた。大学生が書くニワトリの絵から仮説を立て、デー タを分析しながらそれを検証していくことで、生徒たちは研究の基本的な手法を学ぶのみならず、 課題研究に対する期待感を高めることができた。 SSH 講演会②では、 「自分らしく生きること」というテーマで、食品開発の話、女性が仕事を続 けるため、そしてなりたい自分になるための様々な手がかりをご教示いただいた。高校 1 年生は、 自身の将来像が見えずに焦ってしまいがちな年代であるが、講師の実体験に基づくお話に勇気づ けられた生徒が多かった。 「学問の入り口」では、専門の先生方から研究の方法やその評価方法など、学術的な内容につい て概論的な示唆を与えていただいた。生徒は文系・理系の内容を 1 講座ずつ聴講し、興味関心の 幅を広げるとともに、自らの課題研究のヒントを得ることができた。 講師名 所属 演題 小川景子氏 広 島大 学大学 院総 合科学 研 夢を見る仕組み~夢の科学的研究~ 究科 古澤嘉朗氏 広島市立大学国際学部 国際社会と武力紛争 山川健一氏 安 田女 子大学 英語 英米文 学 留学のススメ 科 谷川大輔氏 近畿大学工学部建築学科 建築・インテリアの魅力 清水則雄氏 広島大学総合博物館 ヨダレカケの不思議 神名麻智氏 広島大学大学院工学研究院 バイオマス利用の現状と展望 <生徒の感想> □ 私達は新聞やテレビなどから情報を受け取り、それが全て正解であるように思っているが、 それは依存であるということに衝撃をうけた。将来何らかの形で発展途上国へ支援に行きた いと思っているので、とても興味深く面白い講演だった。 □ 観察や研究を何度も繰り返す研究者はとても素敵だと思った。私もやる気と根性と努力でい ろいろなことを頑張っていきたい。 □ 日常の中で一瞬だけ気に留めるささいなことにも、こんな風に深く触れてみると新鮮な発見 があって、自分の世界が広がるものなのかと思った。 ディベートでは、前半4回(ディベート A)で身近なテーマを設定してクラスの中で班対抗の 試合を行い、後半5回(ディベート B)で専門的な内容のテーマでクラス対抗の試合を行った。 ディベート A では、立論原稿はしっかりしていても、反論・反駁で話がかみ合わなかったり、本 質を突いた議論ができない班もあり、 「論理的とはどういうことか」、 「信頼性の高いデータとは何 か」ということを考えるきっかけとなった。ディベート B は難しい論題であったため生徒たちは かなり苦労していたが、ディベート A の反省を踏まえ、反論や反駁にもデータを用意して的確に 答えることができた。説得力のある意見が出されると審判・聴衆から感嘆の声が漏れることもあ り、程度の差はあれ、生徒たちの「論理的に考える力」が育っている手ごたえを感じた。ディベ ートを体験する中で、生徒たちは肯定・否定どちらの側にも確からしいデータや論理があること を知り、それをいかに吟味するかが重要であるかを学んだ。これは今後の「課題研究」に直結す る姿勢であると思う。 <論題> ディベートA (1)2歳児にプレゼントする本は A と B のどちらがよいか A:きんぎょがにげた B:ごあいさつあそび (2)年賀状は廃止すべきである (3)学校給食において、牛乳を廃止すべきである(パン食の時以外) ディベート B (1)所得税はすべて確定申告により納税すべきである (2)高校も義務教育にすべきである (3)遺伝子組み換え作物の栽培を禁止すべきである 本年度の課題研究は問題発見能力を向上させることを目的とした。テーマを見つける準備段階 としてマインドマップとフレームワークを行ったが、生徒は「どう広げても良い」という自由さ に戸惑い、考えが硬直しがちなので、ガイダンスの中で教員が実際にやって見せ、手法のイメー ジを持たせた。さらに、漠然としたテーマを検証可能なものに深めるためには背景となる基礎知 識が不可欠であるので、読むべき本をリストアップし準備することを例年よりも強く指導した。 テーマ決め後のゼミ活動では、本読みと面談を主にし、生徒とゼミ担当がやり取りをしながら考 えを深め、テーマをより良いものに練り上げた。本年度最後の授業では、各ゼミにおいて自分の テーマを 1 分間でプレゼン(1 分間質疑応答)し、自己と教員による以下の評価基準による評価 を行う。 <評価基準> 満足 評価基準 あと少し 「Why」の質問に 答えられる 「What」の質問に 2個以上答えられる 質問に答えられない 仮説を含む疑問形*1であ 疑問形ではあるが、絞り込 テーマが疑問形になって り、絞り込まれた論題であ みが不十分である。 いない。 る。 (例)ジャニーズはなぜ人 (例)SNS の普及により、女 気があるのか 目標 関連の本を読んで、概 観をつかむ 絞られた、疑問形の テーマをたてる 研究の大まかな道筋を 立てる *1 Yes/No 不十分 or 疑問形ではあるが、論題に 子高生のジャニーズに対 ならない。 する評価は変化したか。 (例)ジャニーズについて 調べるべきことが具体的 調べるべきことが具体的 調べるべきことがあいま に複数あげられている に1つあげられている いである で答えられる問い(=仮説を含む問い) (3)評価 この 1 年をかけて、視点を変えれば身の回りには興味深いことがたくさんあり、知る、考える ことはとても楽しいのだということを生徒たちに伝えてきた。課題研究に対する「わずらわしい」 「難しい」などというマイナスイメージを少しでも払拭し、期待感を高めることができたのでは ないかと思う。年度末に実施する評価をもとに、数値の面でも仮説を検証し、次年度の指導に生 かしたい。 Ⅴ 5年生 (1)仮説 ①「中間発表会」や「ポスターセッション」などの節目を定期的に入れることで、昨年度より PDCA サイクルを回す頻度を高め、さらに生徒のモチベーション向上につなげることができ る。 ②先行研究を重視することで、より適切な資料を探すことができる。 ③前年度は論文作成のあとに、代表チームのみポスター作成という流れを取っていたが、本年 度は全員にポスター作成をさせ、そのあとに論文を作成させる。これにより、より的確に自 らの資料をまとめ、論じることができる。 (2)実施内容 4月の全体指導後、研究をチーム単位で進めていき、7月までに先行研究をさらって研究の大 枠を設定させた。その際、7月中旬に中間発表を2ゼミ合同で実施した。これにより、生徒の研 究テーマを担当教員やゼミ内の生徒以外にも見てもらえるようにし、より多角的に研究に対して フィードバックをもらえる機会をつくった。その後、夏休みの検証(実験・調査)を経て9~10 月は研究をポスターにまとめ、拡散している情報を一度まとめることで研究を自分で振り返る機 会をつくっている。また、前年度は代表生のみだった発表会も、一度ゼミ内で全員発表させ、自 分の研究を話して説明させている。その後、まとめられた研究を文章にしていく中で、より精緻 に自分の研究を言葉にさせた。 日程 4 月初旬 (時数 2) 5~7 月 (時数 7) 9~10 月 (時数 7) 11~12 月 (時数 6) 1 月初旬 2 月中旬 授業内容 全体指導 「文献の調べ方」「研究チーム作り」 「研究計画書について」 ゼミ活動 「個別指導」「発表の仕方」「中間発表」 ゼミ活動 「個別指導」「ポスター制作」「ゼミ内発表会」 学年発表会・ゼミ活動 「論文作成のポイント」「輪読会」「個別指導」 冬休み明けに論文を提出して全体指導は終了 SSH 研究成果発表会 (本校だけでなく国泰寺高校の発表会にも参加) 目的 研究の大枠を決め、誰と、何を、ど う進めていくかをまとめる 夏休みに調査(実験)できるよう、先行 研究を調べ、論を組み立てる 調査(実験)の結果を、ポスターにまと め、発表する 研究の成果を発表し、その後論文に まとめる 各ゼミ優秀論文1本を論文集に掲載 研究成果を発表し、よりよいフィー ドバックを受ける (3)評価 【課題研究到達度評価アンケート】(N=783、5 年:N=216)の結果、他学年に比べて平均的に は高い結果となった。(25 点満点中、1 年 16.7、2 年 18、3 年 18.8、5 年 18.9)しかし、3 学年 との差があまり見られず、高校入学後の研究スキル育成に関する指導を充実させる必要がある。 個別の項目ごとでは、 「 適切な参考文献選択能力」が比較的高い正答率を記録した。(1 年 73%、 2 年 83%、3 年 75%、5 年 88%)これは、初期の全体指導において先行研究の調べ方などを丁 寧に指導していたからだと思われる。しかし、ポスターを全員に作成させたにも関わらず、 「適 切な視覚資料作成能力」の正答率は他学年に比べて高くなかった。(1 年 43%、2 年 52%、3 年 67%、5 年 55%)これは、ポスターを作成する際の基準や好事例を紹介していなかったから だと思われる。事実、クラス全体に一度ポスターの作り方を一斉指導していた 5 年 SSH クラ スのみでは正答率は 88%となっている。 また、 「適切にテーマを設定する能力が身についたか」というアンケート項目に対して、89% が「あてはまる・まああてはまる」を選んでいた。これは、4 年後半から 5 年前半にかけて、 テーマを疑問文にする、研究可能な形にするなどの指導を行ってきた結果だと思われる。 3-3 理系分野に対して夢や希望を持たせていくための取組を研究する 科学部や数学研究会などの課題活動や校外研修、講演会・特別講義など通常の授業とは異なり、 生徒の理数分野への興味関心を高めていく活動を実施する。 Ⅰ 科学部活動 (1)仮説 中学生には様々な科学的体験をさせることにより、科学に対する興味関心を抱かせることが できる。また学年が上がるに応じて中長期的な研究に取り組ませることによって、高校生での 課題研究に対する研究手法や課題設定能力を育成させることができる。 高校生では中長期的な研究テーマを設定し、具体的な研究計画を作成させ、研究内容をまと め発表させることにより、科学的思考力やコミュニケーション・プレゼンテーション能力を育 成することが可能である。またクラブでの活動や研究内容を校内の教育活動に還元することに より、クラブ生はもとより、全校生徒の理科に対する意欲・関心を高めることができる。 (2)実践内容 中学科学部では、中学1・2年生は動物や植物を分担し、その飼育と観察を中心に活動して いる。他機関・団体との連携では、広島市主催の「広島地球ウォッチングクラブ」に参加し、 自然観察・環境観察などを行っている。3年生は中期的な研究として、学校近くの干潟でのカ ニの生育調査や、夏休みに実施するサイエンスキャンプを活用し、小グループを編成してグル ープごとに研究を行い、各グループを高校科学部の生徒が指導することにより研究・調査内容 をまとめ、文化祭で発表した。また11月の広島大学中学生・高校生科学シンポジウムや本校 SSH研究発表会でも発表を行った。 高校科学部では、高校生は3~5名のグループに分かれて、長期的な研究活動を行っている。 長期的な研究活動は以下に示す通りである。 ・ミヤコグサの播種実験 ・広島城堀のプランクトンの研究(プランクトン調査グループ 水質調査グループ) ・水中のカルシウムイオン、マグネシウムイオン濃度の定量を活用した大田川の研究 ・オジギソウ種子に含まれる成長阻害物質 また、次に示す短期的な取組を実施した。 科学部サイエンスキャンプ 8月5日~7日(山口方面) 中学2年生~高校1年生を対象に、以下の日程でサイエンスキャンプを実施した。昨年度 より現地での調査をサイエンスキャンプ中にまとめ、現地で全員参加によるディスカッショ ンをして、研究内容を共有することを試み、9月以降の発表につなげている。 (目 的) 観察や実習などの実体験により、自然現象を大局的にとらえ、理科に対する興味・関心を高める。 研究・観察の視点を養い、内容をまとめ発表することで、プレゼンテーションの能力を養成する。 (実 施) 参加人数 中学生 27名 高校生 4名 引率者:3名 *高校生は中学生に対して、活動中指導的役割を果たした。 日 時 6~8月 行 程 ・ 内 容 事前学習(3回) *ルートの確認と各地域の地質的な解説・資料の配布 *グループ編成 研究テーマの決定 *事前学習 秋吉台の地質的歴史等 8月5日 (1日目) 山口県水産センター(山口県長門市)見学 青海島でのプランクトン観察実習 8月6日 (2日目) 秋吉台科学博物館(講義・化石採取・フィールドワーク) 天体観測(国立徳地青少年自然の家) 8月7日 (3日目) まとめ作業(国立徳地青少年自然の家) 生命科学先端実験講座 日 時:12月26日(土) 参加者:本校生徒:7名 広島国泰寺高等学校生徒:4名 本校科学部生徒:4名 内 容:GFP をつかってセントラルドグマを理解しよう。 指導者:2名(本校教員) 愛媛大学プロテオサイエンスセンターと連携し、生命科学におけるセントラルドグマを理解 するために GFP タンパク質の合成実験を行った。この取り組みでは愛媛大学に進学した本校卒 業生(在学中はSSH対象クラスに在籍)を実験アシスタントとして招き、本校科学部の生徒 4名がティーチングアシスタントを務めて、本校のみならず他校の高校生も巻き込んで、生命 科学の現象を視覚的に理解する試みであった。 昨年度に引き続き2度目の実施であったが、マイクロピペット等の器具の操作を本校科学部 の生徒が指導することにより部員のスキルやモチベーションも高まり、またSSHの課程を修 了して大学に進学した先輩と交流することで、理系進路に対する意欲・関心も高まった。事後 アンケートの結果、参加者のセントラルドグマに対する理解も高まった。 アンケートの結果 1、GFP タンパク質合成実験では、生命科学について興味がもてた。 2、セントラルドグマについて理解が深まった。 3、実験全体を通じて、有意義だった。 ①とてもあてはまる ②よくあてはまる ③あまりあてはまらない ④全くあてはまらない (1) ① ② (2) ③ ④ (3) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 昨年に引き続き2度目の実施ということもあり、実験自体がスムーズに実施できた。 昨年度の課題を踏まえ、指導上押さえるべきポイントに配慮したため、理解度・満足度 は昨年以上に高まった。 (3)評 価 中学科学部・高校科学部の活動を通して、今年度は以下の点で改善が見られた。 ・中学校科学部と高校科学部がサイエンスキャンプ等の共同的な活動をすることで、中学生が 高校での活動内容を知ることができ、つながりが強まり、今後の中学生と高校生との共同研 究の素地が整った。 ・8月に実施するサイエンスキャンプを中期的な課題研究と位置付け、その中で「現地での調 査をサイエンスキャンプ中にまとめ、現地でディスカッションして研究内容を全体で共有す る」ということが定着してきた。情報を共有し議論をすることで研究の質を高め、内容を深 めることができた。その研究内容を9月以降さらに整理し、秋以降に行われる各種研究発表 会(広島大学・本校SSH研究大会等)で発表した。 ・昨年から実施している「生命科学先端実験講座」 (12月実施)を、広く科学技術を校内外の 高校生に広める機会ととらえ、生徒が学校を超えた理科的交流をする中で互いが刺激し合い 理科に対する興味・関心を高めた。今年度より卒業生を実験アシスタントとして招くことも できるようになり、高大連携や在校生の理系分野での進路観育成にも大きく役立っている。 学校を超えた同年代の理系女子が交流することで、視野を広げ、コミュニケーション能力を 高めることにも貢献した。 Ⅱ 数学研究会 (1)仮説 数学研究会は、数学に興味がある生徒を中心に「数学を語り数学を楽しむ」ことを目的とし て3年前に創部された。中学校や高等学校の教育課程の中で履修される内容に限定することな く、教科書の中で生徒自らが興味・関心を持った内容や、各種研究発表会で他校の生徒が発表 した内容、また各種講演会などの内容で興味を感じたものを参考にして、より高い内容のテー マを設定して研究させてきた。 同時に、広島大学中・高校生科学シンポジウムや、大阪で行われた第7回数学生徒研究発表 会に参加していくことで、リポート作成能力やプレゼンテーション能力の育成を図った。並行 して、夏の広島大学理学部数学科主催数学講座にも積極的に参加していくことで、幅広い数学 的素養の育成と知的好奇心が育成できると考えた。 (2)実践内容 高校1年生については、中学校で研究してきた「和算」を続けて研究させることを目的とし て、宮島の千畳閣(豊国神社)を訪れ、そこに掲げられている「算額」(レプリカではあるが) を見せ、また北関東や東北地方に現存する算額を、ウェブを通して見ることにより研究させた。 擬古文で書かれた文章を読みその内容を理解し、さらにその問題を発展させることを研究させ た。高校2年生に対しては、昨年度研究した「グラフ理論」の続きとして、 「グラフの頂点に自 然数を適切に配置し、辺には両端の頂点の自然数の差を入れたとき辺上の自然数が1から順に 並ぶようにする問題」を提案し研究させた。 また、以下のように校外研修・研究発表を行った。 日時 内容 備考 8月8日 広島大学公開講座 数学研究部外生も含む 「数学の基礎と展望」 高校生:10名参加 8月22日 第7回数学生徒研究発表会 パワーポイントおよびポスター発表 高校生:5名参加 「グラフについてのあるパズル」 9月26日 文化祭(本校) 作成指導「たまごひよこにわとり」 パズル 「川渡りの問題」 ポスター「あるパズルの拡張」 ポスター「算額の問題の研究」 11月7日 広島大学中学生・高校生科学シンポジウム ポスター発表 高校生:9名参加 「あるパズルの拡張」 「算額の問題の研究」 1 1 月 2 8 SSH研究発表会(本校) ポスター発表 日 「あるパズルの拡張」 「算額の問題の研究」 2月12日 SSH研究成果報告会(本校) ポスター発表 「あるパズルの拡張」 「算額の問題の研究」 (3)評価 高校2年生については、昨年度研究したグラフ理論の続きとして、新しく「グラフ上に一定 の規則で整数を配置するパズル」を研究した。8月に開催された大阪マスフェスタでの発表会 参加を皮切りに、11月に行われた広島大学の中・高校生科学シンポジウムや、校内 SSH 研究 発表会などで発表してきた。昨年度も発表しているということで、レポートをまとめポスター やパワーポイントを作成し、ポスターセッションでの発表も手際よく行った。研究してきたこ とを整理し発表することは、色々と苦労していたようだが、行った後は自信に繋がっていた。 大阪での発表については「他校の発表には、それぞれ面白い視点があって楽しかった」 「私たち のポスターについても、皆さんが興味をもって色々と質問してもらえて嬉しかった」という感 想の一方で「他校の方が聴衆の人を意識して話をされていて聴きやすかった」 「他校の生徒は一 人で自信を持って発表していたことはとても勉強になった」と感想に述べられていた。この大 阪での発表会の反省が、11月や2月の発表会に活かされ発表の仕方も改善された。11月の 広島大学や校内での発表会では「中学生に説明するときと、大人の人に説明するときとで、発 表の仕方を工夫した」し「特に質問があるところを詳しく説明することが大切」だと考え、聴 いてくださる相手のことも考慮して発表するように変わってきた。 また、数学への興味付けや研究内容の充実という視点から勧めてきた、8月に開催された広 島大学で行われた数学の公開講座に参加した生徒の感想は「講座の内容は難しかったけど高校 で学んでいる数学は広い数学の世界のほんの一部分にすぎないことが分かった」という感想も 多く、特に「他の高校の生徒や大人の方と一緒に学習することはいい刺激となった」と言って いた。参加した生徒からは「来年も是非とも参加したい」 「 来年は前もって予習をして臨みたい」 という意見も多く、これらの活動から主体的に数学を学習する習慣がついていくことが期待さ れている。 今年度の反省として「来年度は数理モデルについて研究したい」という意見や「公開講座で 聞いた敷き詰めの問題」について研究したいという意見もあって、これらの意見に基づいて新 しいテーマを設定して行くことも一つであるが、今年度研究してきた内容を次の学年へ継承し ていくこともできたらと考えている。 Ⅲ 校外研修 (1)仮説 豊かな体験活動を通して、生徒の内面に根ざした理系分野への興味関心を高めていくことが可 能となる。また、課題研究等に関連し個々の連携先にて実習をすることで内容の深まりとともに 先端的技術等に触れ、研究に対する動機付けになると考える。 (2)実施内容 実施時期 実施内容 4月 広島城内におけるタンポポの分布調査 7月 8月 3月 対象 2年理系コース 4年SSコース 広島大学生物生産学部附属練習船 豊潮丸での海洋セミナー 4・5年希望者 科学部サイエンスキャンプ(山口県) 科学部 SSコースサイエンスツアー(島津製作所・spring-8) 4年SSコース 岩国市立ミクロ生物館 美祢市立秋吉台科学博物館 安田女子大学薬学部 新年度 4年SSコース (3)評価 8月に実施しているSSコースサイエンスツアーは、全国SSH生徒研究発表会への見学を行 程に取り入れているので、これまではつくばにある研究施設への訪問を行っていた。今年度は、 関西圏での開催に合わせて、京都の島津製作所等の新しい研修先を選定した。島津瀬製作所では 分光器に関連しての実験や、田中耕一氏のノーベル賞受賞に関する話を聞けるなどこれまでの受 け身の体験から生徒参加型の体験とすることができた。今後も生徒にとって受け身中心の研修で はなく、主体的に参加することのできる研修を選定したい。 Ⅳ 講演会・特別講義 (1)仮説 現在、活躍をされている女性科学研究者・技術者の講演会等を実施することにより、生徒は将 来、科学技術系分野での女性としての活動をイメージすることが可能となり、理系分野への進出 増加へと繋げていけると考える。 (2)実施内容 実施時期 実施内容 10月 広島大学理学研究科:坪田博美准教授 【タンポポのDNA鑑定実験】 広島大学大学院生物圏研究科:西堀正英准教授 【研究のすすめ】 株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所製パン技術研究室 :庄林 対象 4年SSコース 4年生全員 愛氏 4年生全員 【自分らしく生きること】 2月 マツダ株式会社 パワートレイン開発本部 古城美貴子氏 4年SSコース 【Be a driver.~ 一本の映画から 自動車エンジンの設計者になって ~】 (3)評価 女性の研究者による講演・特別講義を意識的に取り入れている。しかし、生徒の感想からは、 女性研究者としてのキャリアデザインを考えるヒントを、講演から受け取っているとは見受けら れない。これは、事前学習の徹底が不十分であることが原因であると考えられる。来年度以降は、 事前学習において講演会・特別講義のねらいを十分に生徒に意識させることを徹底していくこと で、より効果的なものへとしていきたい。 3-4 自ら研究した科学の内容について、国際社会の中でプレゼンテーション、コミュニ ケーションを可能とする言語技術の育成方法を研究する。 (1)仮説 国際的な場面において自らの研究を英語で発表できる人材を育成する」という目標を達成する ために、「SS 英語」を中心に、英語によるスピーキング活動やプレゼンテーション活動といった 様々な取り組みを積極的に行ってきたが、さらに実践的な機会を生徒に提供するために、台湾北 東部の宜蘭市に位置する台湾国立蘭陽女子高校と姉妹校提携を結んだ。 本校は既に、英語圏ニュージーランドに姉妹校を持っているが、この度、非英語圏である台湾 の高校と新たに提携した。英語を外国語として学習している同年代の生徒と、英語を通じてのコ ミュニケーションを図ることで、言語的に対等な立場で交流し、 「国際共通語」としての英語の役 割をより一層体感させることが主な狙いである。台湾の生徒と交流する中で、文化的側面はもち ろんのこと、彼女らの高い英語運用能力を目の当たりにすることを通して、高い動機づけに繋が ることを期待した。数ある台湾の高校の中で蘭陽女子高校を選定した主な理由としては、理数ク ラスが存在し課題研究を実施していること、優れた教育活動を行っている著名な国立の高等学校 であること、本校と同様に女子校であること、日本の SSH 校との連携も過去に経験済みであるこ と等が挙げられる。 (2)実施内容 Ⅰ 蘭陽女子高校での交流 時期: 9 月 13 日(日) ~ 9 月 16 日(水) 場所: 国立蘭陽女子高級中学及びその周辺の施設(宜蘭縣宜蘭市女中路二段 355) 参加者: 6 名 (H27 年度 6 年 6 組 SS コース)及び教員 2 名(柳沢温郷・大久保朋奈) 広島城のお堀におけるカワシオグサの生態(新開智佳子・西川晴美) 浸透圧調整の仕組み (岸川和・松苗響香) 光合成と光の色の関係(木本小夏・中井菜々) 日時 地名 内容 広島駅 リムジンバスにて広島空港 9/13(日) 広島空港 2 階国際線カウンター前集合 台北 ホテル内にてプレゼンの最終チェック サントスホテル(三徳大飯店)にて宿泊 開会式 代表挨拶・学校紹介プレゼンテーション 両校発表グループによる研究発表会 English Class 【Learning English can be fun!】 9/14(月) (蘭陽女子・ネイディブ英語教諭による) Science Class【Dye-Sensitized Solar Cell】 (蘭陽女子・理科教諭による) 蘭陽女子高級中学 共同研究・ビーチコーミングについて、その研究目的と実 施方法についてのプレゼンテーションをし、その後海岸で 実際にビーチコーミングを行う。 生徒はホストファミリーと対面、ホームステイへ。 移動 蘭陽女子高校集合、Sinphar 製薬会社へ移動 Sinphar 製薬会社 Sinphar 製薬会社を見学 移動 蘭陽女子へ移動 意見交流 ホストシスターや高校1年生の生徒と交流 9/15(火) 閉会式 代表挨拶・閉会式 蘭陽博物館 蘭陽博物館を見学 北關海潮 北關海潮公園を見学 公園 再度ビーチコーミングの実施 台北 サントスホテル(三徳大飯店)にて宿泊 台北 桃園空港に到着 9/16(水) 桃園空港 出発 広島空港 広島空港着 広島駅 広島駅着・解散 生徒の感想(一部抜粋) *研究発表会の準備について ・日本語でポスター発表をしていたが、その段階でどれだけ内容を濃くできているかが大切だと 感じた。研究の内容が不十分であったと感じた。 ・日本語から英語にしていく準備に早く取り掛かれたことが良かった。実際にどの英語をどのよ うに使うのかが難しかった。 ・パートナーとたくさん練習ができた。他のメンバーにも見てもらって、Prezi の分かりにくい 点を指摘してもらい、修正をすることができた。 *研究発表会について ・今回の発表ではいかに伝えられるかが重要だったので、発音、目線や間の取り方などを気をつ けながら頑張った。本番では途中で詰まってしまったけれど、パートナーに助けてもらいなが らできたので嬉しかった。質疑応答についてはもっとどんどん質問すればよかったと思った。 もっと練習しておく必要があった。蘭陽の生徒のプレゼン力は素晴らしかった。話に引き込む 力が素晴らしかった。 ・出来るだけ簡単な英語で原稿の文を作っていたので、自分の頭の中で日本語を思い浮かべなが ら英語で話すことができた。科学的な質問だけではなく、さまざまな視点からの質疑応答を考 えていったので、本番の質疑応答で全く同じ内容の質問が来て、対応することができたので良 かった。台湾の生徒たちの英語のコミュニケーション力がすごくて驚いた。発表の際に、聞く 人にわかりやすく、楽しくさせるために会話型にしたりしていたので、プレゼンを楽しくする 方法も学ぶことができた。 ・Prezi などいろいろなツールの使い方が学べてよかった。まだまだ人の興味を引くような話し 方をすることが上手くできなかった。プレゼンは、硬い感じではなく、ジェスチャーなどを使 えるようになると興味が引けていいと思った。蘭陽の生徒はプレゼンの時に生き生きとしてい て、興味を引く話し方をしていて、少しでも近づきたいと思った。質疑応答については、日本 語でも、英語でも、質問をされても質問をされた内容について、うまく伝えることがなかなか できなかった。 生徒のまとめ(後輩へのメッセージの中から) ・研究発表の準備以外にも、日本で流行っていることや習慣など、広島のこと、安田のこと、自 分のことをちゃんと説明できるようにしておくと良い。ホストマザーとファザーは英語が全く 話せなかったので、中国語を少しでも話せたらよかった。研修の代表選考の時は、絶対に自分 が選ばれるという強い気持ちを最初から持って練習をしていた。練習をしても失敗したけれど、 実際に代表に選ばれてもう一度発表の機会を与えてもらえたことがありがたかった。 ・研究発表に関しては行く前に何度も練習しておくことで本番での緊張は少なくて済むと思う。 蘭陽の生徒は発表の技術が素晴らしかったのでやりすぎだと思うぐらい、いろいろ工夫すると 良い。しかし何よりも大切なことは、コミュニケーション能力だと思った。仲良くなりたいと いう気持ちと英語を話そうという気持ちが、何よりも英語を上達させてくれたと思う。普段か らの英語の授業も大切にして、ひとつひとつ真面目に取り組むことが、台湾の遠田値をたくさ ん作る近道だと思う。 ・研修中は本当に充実していた。研修中は、みんなが助けてくれたので本当に困ったことはなか った。でも、行くまでが大変で、しなければならないことがたくさんあるので準備は早く取り 掛かると良い。研修に行くことでリスニング力も上がり、海外の友達がたくさんできる。そし てかけがえのない思い出となる。この研修のおかげで、留学したいと思うようになった。 Ⅱ 蘭陽女子高校来日・安田女子高校での交流 時期: 2016 年 2 月 12 日(木) ~ 2 月 13 日(金) 場所: 安田女子高校及びその周辺の施設・宮島 訪問者: 高校 2 年生の生徒 6 名 及び教員 2 名 日時 地名 内容 安田女子 校内見学 2/12(金) 上野学園 SSH 研究発表会 ホール ・共同研究、ビーチコーミングの途中経過報告 “Seashell Collection and Observation” ・蘭陽女子高校学校紹介 ダンス、DVD上映 ・研究発表 “Solution to Plastic Bags” “The Relationship between Pressure, Volume, and Temperature” 安田女子 生徒はホストファミリーと対面、ホスト宅 教員はホテルステイ 安田女子 安田女子高校集合、宮島へ移動 バス内で生徒交流 宮島 広島大学宮島植物実験所 講義とフィールドワーク 2/13(土) 安田女子 安田女子高校帰着 歓迎会 (3)総評と今後の展望 本校にはニュージーランドにも姉妹校があり、長年にわたって交流をしているが、台湾の姉妹 校との交流と大きく異なる。台湾との交流の最大の長所と言えるのが、 「お互いにとって英語が外 国語である」という点である。ニュージーランドの姉妹校の生徒が完璧な英語を話すのに対して 憧れを持ち、意欲を高める効果がある一方で、ネイティブではない自分との差を目の当たりにす る。それに対して台湾の生徒との交流では、お互いが完璧ではない英語を一生懸命に駆使してコ ミュニケーションをとろうという意識が高かったようである。お互いに完璧ではないので、失敗 に対する恐怖や発音やアクセントに対するコンプレックスも少なく、コミュニケーションツール として英語を活用したわけである。さらに、同じ外国語として英語を学んでいる台湾の生徒たち の中には英語を自由に使いこなす生徒も多く、その姿を見て英語に対する学習意欲が高まるとい う効果も大きかった。 今年度の9月の研修においては、教員の手によって修正された英語の原稿を読むのではなく、 自分の研究成果を自分の言葉で「伝える」ことに重点を置いて指導をしたが、まったく新しい視 点からの質問を受けた場合には対応することは困難であった。 「分かっている」はずのことであっ ても、実際に人に何かを説明したり伝えたりすることは、母語であっても容易であるとは限らな いので、日々の授業の中で身近なことについて「伝える」機会を設けていくことが重要である。 また、2月に本校に蘭陽女子高校の生徒・教員を迎えての交流では、中高合同の SSH 研究発表会 の場で、全員が蘭陽女子高校の生徒の発表を見る機会が得られた。前回の交流で行ったポスター 発表よりも、今回のパワーポイントを用いたステージ上での発表は、蘭陽の生徒たちのプレゼン スタイルや英語力をよりはっきりと確認することができたため、生徒たちに与えた衝撃は大きく、 学習や研究に対する意欲を高め、より多くの生徒が台湾研修への参加を熱心に希望するようにな った。今回来日した生徒は英語力も高く社交的で、休憩時間にも中学生を含め、多くの本校の生 徒たちが彼女たちに話しかけ、交流している姿が見られた。たった2日の交流であったが、友情 を深め、ホストシスターと涙を流して別れを惜しんだ。来年度は短い滞在時間でより多くの生徒 と交流をできるようにプログラムに工夫をし、その効果を最大限に活用したい。 第4章 4-1 実施の効果とその評価 理系選択者の増加と理数系分野への進学実績増加 本校がSSH導入時に行ったアンケートでは、本来、理系分野進路希望者の多くが、理数科目 の苦手意識から、文系選択に追い込まれるという現状が明らかになっていた。本校SSHの目標 である将来の女性科学研究者・技術者の育成の為に、理系分野への進学実績を45%までに上昇 させるという数値目標を設定した。女性の研究者との交流や自然体験の増加から、理数科目の苦 手にとらわれず、理系分野への夢・希望を志へと昇華させていくことが可能であると仮説を立て た。 下の表は過去、7年間での高校2年生時の文理選択者数と、理系選択者2科目の生物・物理選 択者数を示している。SSHに指定から、自然体験的な取組や科学的内容の講演会などを増加さ せるなど、学校全体に理系分野への意識が高まり、昨年度は50%まで理系選択者を増加させる ことに成功した。しかし今年度は、初めて理系選択率の減少が見られた。原因としては今年度の 高校入試形式の変更による、併設型中学校以外からの入学生の割合が例年以上に高まったことが あると考えられる。高校 1 年生においての数学の成績は、併設型中学校からの進学生が外部入学 生を大きく上回り、数学の苦手意識を持った生徒が例年以上に多かったことが考えられる。また、 これまで以上に多かったことが考えられる。よって、来年度からこの問題を解決することが最優 先である。 平成21年度入学 平成22年度入学 平成23年度入学 平成24年度入学 平成25年度入学 平成26年度入学 平 成 27年 度 入 学 文系選択者数 理系選択者数 理系生物選択者数 理系物理選択者数 132 63 48 15 150 77 59 18 122 89 62 27 133 109( 37) 65 44 118 104( 34) 73 31 120 121( 40) 58 63 174 91( 37) 60 31 国公立大学の推薦・AO入試での理数系進学実績数と総数をまとめたものが下の表になる。 理数系 総計 平成 24 年卒業 7 11 平成 25 年卒業 7 12 平成 26 年卒業 15(8) 19 平成 27 年卒業 15(8) 20 同様に大学等の進学実績をまとめたものが下の表になる。 理数系 総計 平成 24 年卒業 54 200 平成 25 年卒業 60 176 平成 26 年卒業 72(27) 213 *( )内はSSH主対象クラス SSH主対象クラスにおいて、推薦・AO入試を活用できている事が分かる。高大接続に課題 研究における取り組みを有効活用しているからである。その結果を踏まえて、理数系の進学実績 については、目標としている45%には届いていないが、約30%まで上昇させている。SSH 主対象クラスをはじめ、学校全体で理系女子の育成に手がけている効果は確実に表れているとい える。 4-2 CTの評価 Ⅰ 授業と定期試験 SSHの取り組みにおいて、通常の授業改善としてCTの育成を1つの目標にしてきた。今年 度はその定着をはかるべき、授業内でのCTの評価と、定期試験におけるCTを評価問題との関 連を研究題材とした。そのいくつかの例を記載する。 *理科 1 分野(中学1年) CT評価では、 (性質と現象の分析力/論理的説明力/言語技術)の3点に関して、ほぼ同等の 重みで評価している。分析より授業でのCT評価と第一試験には一定の相関があること(R=0.4) が読み取れた。また、2 回の定期試験のCT問題の比較することで、CT評価の変化から「努力」 や「成長の度合い」を読み取ることができ、一定の相関(R=0.4)が見えている。さらに、CT変 化が低い生徒に関しては、全体的に成績が低位であることが目立っている。 *化学基礎(高校 1 年) 塩化ナトリウムの質量計算、電子てんびんの使い方、水溶液の調製について授業で、細かく指 導せずに、自分たちで考えて行わせた結果についての自己評価をさせた。自己評価と定期試験に おけるCT評価問題の相関関係を調べたが、相関(R=0.01)を見いだすことはできなかった。 *数学(高校 1 年) 数学においてCTということで、図をしっかり描くこと、問題文を読解することを1つの目標 に、数学 I 『三角比」の単元を取り組んだ。小テスト、第2試験のCTに関係する問題の解答状 況について調べた。全体的に相関(R=0.3)があるとは言いがたい。しかし、生徒を学力と学習習 慣を観点に 4 分割し分析すると、学力上位・学習習慣下位において、やや強めの相関(R=0.53) が見られた。 授業内での評価と定期試験での評価に相関が見いだせにくい結果となっている。これらは各教 員のCTの認識の不一致からなる可能性も拭えない。今年度は 7 月に校内研修会を実施しCTの 意識共有を図った。研究授業の実施は 1 日の設定であり、十分に意識共有できているとは言えな い。よって来年度に向けて教員向け【CTの手引き】を作成し、9 月に一週間の公開授業週間を 設定することで、教員間の意識共有を高めたい。同時に生徒向けの【CTの手引き】を作成し、 授業におけるCTの育成とその評価観点を明示することで、教員と生徒との意識共有を高めてい きたいと考える。さらに、下に示す「ベネッセ教育総合研究所」の批判的思考力試験を活用する ことで、その成果を定量的に測定していけるようにしたいと考える。 Ⅱ 「ベネッセ教育総合研究所」の批判的思考力試験の活用 育成した生徒のCTをどのように客観的に評価していくかは、SSHにおいてCTの育成を目 標に掲げて以来の課題であった。これまでに様々な取り組みを実施し、その分析を行ってきたが、 今一つ成果に乏しいものであった。 そこで、 「ベネッセ教育総合研究所」が試行している思考力試験を活用することで、生徒のCT 定着を客観的・定点的に評価することが可能であると考えた。 「ベネッセ教育総合研究所」の思考 力試験は、マーク式の試験と記述式の試験があり、その監修には京都大学大学院教育学研究科 の 楠見 孝先生があたられている。 「 ベネッセ教育総合研究所」と楠見先生はCTを3つのスキル【明 確化・土台の検討・推論】から成ると定義し、そのスキルを評価することを試みている。 マーク式の試験では、明確化・土台の検討・推論の 3 スキルを 1 問 1 答で問う問題である。 記述式の試験では、登場人物が主張の根拠としている資料の妥当性を批判的思考を働かせて検討 する問題である。今年度、8 月に中学1年生から高校 2 年生までの生徒がマーク式の試験を受験 した。(中学 1 年生と中学 2 年生は簡易的な問題であり今回の実施報告書への記載はしない)12 月には、高校 2 年生からSSH主対象クラスを含む3クラスを抽出して記述試験を行った。以下 はその結果と分析である。なお、データ分析及び資料作成は「ベネッセ教育総合研究所」に協力 を得ている。 *3つのスキル【明確化・土台の検討・推論】に関しては、 「ベネッセ教育総合研究所」の以下の リンクを参照 http://berd.benesse.jp/assessment/topics/index2.php?id=2578 上のグラフは、中学 3 年生から高校 2 年生までの得点率の分布である。得点率のピークは学年 が上がるごとに高くなっている。下の表はコース別の得点率を示している。 平均得点率 標準偏差 中央値 中学 3 年総合コース 0.542 0.165 0.546 中学 3 年理系コース 0.602 0.161 0.636 高校 1 年一般クラス 0.627 0.164 0.636 高校 1 年SSコース 0.716 0.160 0.750 高校 2 年生一般クラス 0.661 0.158 0.682 高校 2 年生SSコース 0.769 0.121 0.773 *SSコース(SSH主対象クラス:学校設定科目の実施クラス) SSコースの得点率が、一般コースに比べて高くなっている。これは、SSHでの、学校設定 科目をはじめとする取り組みの効果の有効性を示していることであると言える。また、スキル別 の分析においては、SSコースにおいても【土台の検討】の標準偏差が他の2つのスキルに比べ 大きかったことから、全体的に授業の中で育成できていないスキルであることが覗える。 次に、マーク式試験と校外模試(国・数・英)との相関を分析した。下の表はそれぞれの得点 率の相関関数を関係をまとめたものである。 中学3年 国数英 国 数 英 0.539 0.492 0.416 0.432 正答率 0.380 0.349 0.263 0.335 明確化 0.524 0.453 0.439 0.402 土台の検討 0.310 0.314 0.228 0.242 推論 高校 1 年 正答率 明確化 土台の検討 推論 SS 国数英 高校 2 年 正答率 明確化 土台の検討 推論 SS 国数英 SS 国 SS 数 SS 英 11 月 国数英 11 月 国 11 月 数 11 月 英 0.428 0.515 0.238 0.318 0.476 0.507 0.306 0.399 0.294 0.401 0.135 0.213 0.341 0.418 0.199 0.277 0.441 0.456 0.281 0.343 0.428 0.423 0.283 0.366 0.233 0.328 0.113 0.162 0.324 0.331 0.219 0.272 SS 国 SS 数 SS 英 11 月 国数英 11 月 国 11 月 数 11 月 英 0.350 0.362 0.184 0.322 0.491 0.444 0.399 0.385 0.213 0.215 0.137 0.178 0.303 0.290 0.255 0.222 0.307 0.346 0.131 0.283 0.414 0.373 0.352 0.327 0.255 0.241 0.144 0.248 0.375 0.334 0.276 0.304 国語との相関が高いこと、数学との相関は低いことがデータから読み取れる。また、スキル【土 台の検討】と各教科との相関が高くなっているのは、先に記載したように、スキル【土台の検討】 における標準偏差が大きいことに由来すると考えられる。 下のグラフは、記述式試験でのクラス別の観点指摘数の人数分布である。1 組が文系クラス、5 組が理系クラス、6 組がSSクラスである。 クラス別観点指摘数 15 16 14 度数 12 11 10 10 8 8 5 6 8 3 4 8 6 2 2 4 3 5 7 5 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 0 1 2 1組 3 4 5 1 5組 2 3 4 5 6 6組 指摘数 また、下のグラフはマーク式試験正答数と観点指摘数の相関を示したものである。相関関数は 約 0.36 である。 観点指摘数とマーク式正答数 マーク式正答数 25 20 15 10 5 0 0 1 2 3 4 5 6 7 観点指摘数 SSクラスが他のクラスよりも観点指摘数が多いことから、マーク式の結果と同様に、CT能 力の育成が進んでいることが考えられる。しかし、マーク式と記述式の相関は低い。今回の結果 で、全体的に記述式の観点指摘数がさらに増加すれば、相関は高くなってくることから、次のよ うな事が考えられる。 *マーク式の問題:1問1答でCTスキルを確認するので、生徒にとってCTスキルを使用する 場面は明確である。 →CTスキルが身についていれば正答が可能である。 *記述式の問題:資料の中のどこにCTスキルを使用するかは不明である。 →スキルがあっても活用できていない生徒が多いのではないか!? つまり、スキルはあってもコンピテンシーとして定着していないことと捉えていくことができ る。今後は、スキル定着に加えて、コンピテンシー定着の為の指導方法へと改善してく必要性を 感じた。 4-3 コンテスト等への出品・実績 第59回広島県科学賞 入選受賞 広島県教育委員会賞 「魚の生臭さについて」 「植物のアレロパシー活性の研究」 「広島城のお堀におけるカワシオグサの生態に関する研究」 努力賞 広島県教育委員会賞 「アントシアンの染色」 「凝固点降下による水溶液の濃度変化について」 「レモンの洗浄効果について」 「汽水域に生息する植物(ヨシ)」 「鉄とプランクトンの関係について」 「繊維の吸水性・吸湿性と構造の関連について」 「生育条件と酵母の増殖について」 「光合成と光の色の関係」 「ヒトの唾液分泌量に変化について」 平成27年度 「科学の甲子園全国大会」広島県予選 広島県科学オリンピック 筆記競技 14位 実験競技 3位 総合競技 14位 総合順位 9位 平成27年度 第4回広島県科学セミナー 生物部門 最優秀賞 「発光植物を作り出すことはできるか」 「本の虫~チャタテムシ、その隙間、入れますか?~」 優秀賞 「ハイゴケのアレロパシー活性の研究」 「ストレスは唾液分泌量に影響を与えるのか」 「広島城のお堀におけるカワシオグサの研究」 地学部門 最優秀賞 「星のスペクトル観測による天体の旋律作成」 未来博士3分間コンペティション2015 1枚で未来を拓く!ポスターセッション部門 広島大学特別賞 「発光植物を作り出すことはできるか」 「ストレスは唾液分泌量に影響を与えるのか」 「星のスペクトル観測による天体の旋律作成」 第13回 高校生科学技術チャレンジ JSEC2015 出品 「電話音声の話者認識~音源・声道特徴を用いたテキスト独立型話者認識~」 第12回中高生南北極科学コンテスト出品 「北極に住み動物の目の秘密」 「日本と変わらない味を出す」 「ミドリムシが極地の生活を変える」 「南極・北極での唾液量の変化の活用」 「海水の塩分濃度を下げると海面上昇を防ぐことができるか」 「北極海での植物プランクトンの大発生のメカニズムを探る」 「極地におけるビタミンD増量食品の開発」 「南極でのオーロラの電磁波の研究」 「ホッキョクグマから学ぶ、再考の防寒着」 「ホッキョクグマの毛は南極で断熱材の役割を果たせるのか?」 第5章 研究組織の概要 〔運営組織概要図〕 安田学園法人本部 校務運営委員会 運営指導委員 SSH委員会 アドバイザーグループ SSH運営会議 事務部 教育研究部 教務部 教科主任会 学年主任会 総務部 校内の運営委員会と連立する形で管理職・分掌主任を主なメンバーとするSSH委員会を設立 して学校全体としての組織的な取り組みとしている。またSSHの取組が効果的に作用するため に、平成25年度より分掌として教育研究部を新設し、週1回の会議を設定しSSHの活動を分 掌扱いとした。平成26年度からは、SSH各活動をより具体的で細部にまで及ぶ計画・実施を 討議すべきSSクラスの担任を含めたSSH運営会議を設けた。これによりSSH委員会が、学 校全体を縦に貫き、教育研究部で横に広げ、SSH運営会議が細部を埋めるという体制になり、 同時に連絡体制を密にすることができてきている。 問題点としては、これまでの取り組みではアドバイザーグループは、SSクラスの課題研究に 関連したより高度な指導者を紹介していただくことがその中心となり、実質に生徒の指導にあた っていただくことがなかった。来年度から、これまでの実績を踏まえ、生徒や評価方法など教員 の取り組むに指導いただいた外部の方を中心にアドバイザーグループのメンバーの再構成にあた りたい。 第6章 研究開発実施上の課題及び研究開発の方向・成果 の普及 6-1 研究開発実施上の課題及び研究開発の方向 CTの定着を客観的・定点的に評価する教材の開発からがいくつかの課題を見つけることがで きた。特に、スキルの育成とコンピテンシーの育成が異なっていることである。これまでの取り 組みでは、生徒に一定のスキルを定着させていくことができるが、そのスキルが様々場面で発揮 させる為のコンピテンシーを育めていないことが分かった。来年度は、スキル定着の指導方法を 高めると同時に、コンピテンシー育成の指導方法を研究する必要がある。加えて、本校の個々の 教員に、CTスキルの定義が統一されていない、浸透されたものにはなっていないという課題も 明確になった。その改善として、来年度は9月第2週の一週間間を、CT育成公開授業週間と設 定して教員間での意識統一に努める。 さらに、生徒の課題研究の結果から、課題研究の社会調査に対するアンケート項目の設定スキ ルやPCを利用した統計処理スキルが備わっていない現状が浮かび上がってきた。教科、数学・ 情報との連携を強めていく必要があると考える。全教員が課題研究の指導として、これらのスキ ル定着の指導を可能とする必要もある。 加えて、課題研究を通して育成を期待したスキルにおいて、メタ認知能力の定着度が低いこと が分かった。その原因としては、課題研究においての指導教員の生徒へのコミュニケーションの 量的アプローチの少なさと考えられる。コミュニケーションを重ねていくことで、生徒は自らの 研究内容をメタ認知的に捉える機会を得ることができるはずである。来年度は、この点を全教員 の共通認識としていく。 また、昨年度高校入試から形式の変更によって、併設型中学校以外からの入学生の割合が例年 以上に高まった。それによって高校 1 年生においての数学の成績は、併設型中学校からの進学生 が外部入学生を大きく上回り、数学の苦手意識を持った生徒が例年以上に多くなった。これによ って、理系選択をする生徒が例年よりも少なくなってしまったと考えられる。文部科学省でのS SH中間評価で指摘を受けたように、女生徒にどのように数学に興味関心を高めていくことが可 能であるかを検討していかなければならない。CTを駆使した使える数学、「住宅ローン」や「携帯 電話のプラン料金の総額」など日常にある数学を必要と題材と取り入れていくことが必要となる。 体験的活動や特別講義などを実施後の評価では、取り組みにおける事前指導の不徹底が課題と して分かった。今後は事前指導において、取り組みのねらいや目的を生徒に徹底し説明すること で意識させ、取り組みをより効果的に行っていけるようにする。 最後に、今年度、姉妹校と共同研究を開始することが可能となったので、共同研究を題材に学 校設定科目「SS英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」や校外研究と関連づけ、有意義に活用していく必要がある。 特に、日常的英語での交流に活用することに期待したく、英語科と協力してメール Skype を利 用した交流をこれまで以上に盛んにしたい。 6-2 成果の普及 ①平成27年11月29日(土)研究発表会 他SSH校関係者を含め62名の外部来場者 実施項目 実施内容 開会行事 本校のSSH概要説明 7つ公開授業 本校で研究を進めているCTの定着及びその評価方法に関する公開研究授 分科討議会 業を実施し、その授業に関する分科会を開き内容の討議を実施した。 ポスター発表 中学3年生課題研究発表12テーマ 高校2年生課題研究発表14テーマ 高校2年生SSコース課題研究発表13テーマ 科学部研究発表8テーマ 数学研究会研究発表2テーマ 熊本県立熊本北高等学校研究発表4テーマ 広島県立西条農業高等学校研究発表3テーマ 閉会行事 一昨年度に続いて3回目の研究発表会とした。ポスター発表では、本校独自のルーブリック表 を用いて広島大学のTAによる課題研究評価を実施した。実施後には、TAよりルーブリック表 に対してのヒアリングを行い、評価方法の改善に努めた。 ②平成28年2月7日(金)研究成果発表会 他SSH校関係者を含め74名の外部来場者 実施項目 実施内容 開会行事 口頭発表1 研究成果報告 ポスター発表 口頭発表2 中学3年生課題研究発表1テーマ 高校2年生課題研究発表2テーマ SSH重点枠瀬戸内海環境フォーラム参加報告 高校3年生SSコース台湾研修報告 台湾国蘭陽女子高級中学との共同研究報告 台湾国蘭陽女子高級中学研究発表2テーマ 中学1年生自然科学探究コース研究発表1テーマ 中学3年生課題研究発表11テーマ 高校2年生SSコース課題研究発表7テーマ 数学研究会発表2テーマ 高校2年生SSコース課題研究発表7テーマ 閉会行事 昨年度から始めた全校生徒が参加形式での研究成果発表会である。中学1年生から高校2年生 までの全生徒が参加することで、下級生にとっては、SSHでの活動内容への理解が高くなり、 自らが課題研究等には、円滑に取り組めるようになる利点がある。 今年度のアンケートより、生徒の研究内容には高校生らしくテーマでのものが多く、創意工夫 がなされているという評価が多かった。一方で、11月の研究発表から研究内容の深まりが見え ないという意見もいただいた。最後まで粘り強く研究に対して打ち込ませていく指導が不十分で あることを実感した。 6-3 SSH中間評価においての指摘を受けた事項への改善・対応状況 1 主な講評 ○ 大学との連携が,特に評価方法の研究や教育改善に有効となっている。また姉妹校を海外に もっていることや,中高一貫での自然観察、家庭科との連携も強みである。 ○ 課題研究などの指導は,外部人材等をうまく活用して実施がなされている。これらの指導方 法を更に通常の教科指導にもいかせるようにできると望ましい。 ○ 運営指導員会に地域の多様な分野の専門家を擁しているので,SSH プログラムにも地域連携 の要素を取り入れることが考えられる。 2 対応 *大学との連携をさらに強化することにした。大学側と協議を重ね来年度、平成28年12月に は、安田女子大学の施設を利用して、中学生・高校生・大学生・大学院生の女性研究者による 研究発表会を開催することとした。 * SSH主対象クラスのみならず、全生徒へ課題研究を行わせている。その活動状況から、高校2年 生における、個々の生徒が会得しているデータ分析スキルのレベルが全体的に低い事が判明した。 教科「情報」における表計算スキルと「数学」における統計の指導の見直しを図るようにした。 *CT育成の指導を、通常の科目に広げていくために、来年度9月に第二週の一週間を、研究公開授 業週間を設定した。SSH指定から課題研究・学校設定科目で取り組んだ指導方法の改善を、日常 レベルまで普及させていく狙いである。 第7章 7-1 Ⅰ 関係資料 運営指導委員会議事録 第1回運営指導委員会 日時 平成27年6月12日(金)16:00~17:30 場所 安田学園安田女子中学高等学校 出席者 運営指導委員(敬称略) 片上宗二(安田女子大学心理学部 教授) 井上智生(広島市立大学情報学部 教授) 福永健二(県立広島大学生命環境学部 准教授) 長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科 准教授) 西原直久(江田島市さとうみ科学館 館長) 庄林 愛((株)タカキベーカリー生活文化研究所 課長) 大杉政克((株)マツダ R&D 技術管理本部 アシスタントマネージャー) 安田女子中学高等学校 森由美子(学校長) 三好義城(副校長) 水野善親(安田学園教育監) 柳沢温郷(教頭) 佐藤 聡(事務長) 岸田宜治(教諭 SSH 主担当者) 議事 1、学校長挨拶(森校長) 2、事業計画等の説明(岸田) ・平成26年度活動報告 ・平成27年度活動予定 ・平成27年度の重点的な取り組み 3、質疑応答及び指導助言 質疑及び指導助言 平成26年度の活動報告について この委員会の目的をはっきりして欲しい。 (長沼) 回答等 平成26年度の活動報告をし、その延長とし ての平成27年度の活動計画を説明する中で、 専門的立場から有益な指導・助言を得ること と考えている。 ゼミは学校の中でどのような位置づけか(井上) SS コースについては学校設定科目である。 高大接続の研究はどのような方向性をもってい るのか。 (井上) 今後とも継 続的な取り 組みとして 続けてい きたいが、例えば安田女子大学との連携につい て は夏休み等 を利用した 単位認定ま でできれ ばいいと考えている。 英語の取り組みなど、生徒はどの程度理解してい るのだろうか。 (福永) 英語の取り組み(姉妹校とのポスターセッション)につ いては、だんだん自分の力でしゃべっていこう という生徒が出てきている。 平成27年度活動予定について クリティカルシンキングの評価項目は生徒に 示しているのか。 (西原) 教員間では認識を持っているが、生徒にはまだ クリティカルシンキングについては定義もたく さんあるので、共通認識をもった方がよい。クリ ティカルシンキングはあくまでも方法であって、 本当の目的はリテラシーでもある。 (長沼) 態度の評価は難しいと思うが、どのようにやって いるのか。 (井上) しっかりとは示せていない。今後工夫してみた い。 書かせた文章から評価することも考えたが、表 現がうまくできない生徒もおり、言語技術も含 めた検討に入っている。 統計はどのレベルまでやるつもりなのか(福永) 研究を始めた段階でありまだ検討中である。 姉妹校交流を通じての英語技能の向上について は、4技能すべてを望むのではなく、ポイントを 絞ることも必要ではないか。 (井上) 今の日本の学生は語彙力がなく語るべき背景を もっていない。 (長沼) 英語が不得意でも、場数を踏むことで伝わるよう になる。ある程度自分が思っていることを表現で きるようになると、自信が持てるようになると思 う。 (庄林) Ⅱ 第2回運営指導委員会 日時 平成28年2月12日(金)16:00~17:00 場所 安田学園安田女子中学高等学校 出席者 運営指導委員(敬称略) 西原直久(江田島市さとうみ科学館 館長) 庄林 愛((株)タカキベーカリー生活文化研究所 課長) 大杉政克((株)マツダ R&D 技術管理本部 アシスタントマネージャー) 新田哲之(安田小学校校長) 安田女子中学高等学校 森由美子(学校長) 三好義城(副校長) 柳沢温郷(教頭) 岸田宜治(教諭 SSH 主担当者) 議事 1、学校長挨拶(森校長) 2、平成27年度SSH事業の概況報告(成果と改善) (ア)課題研究について 中学3年生と高校2年生での課題研究の取り組みが軌道に乗ってきた。また今年度は個人の 課題研究をグループでの活動にシフトしていったため、指導側の負担軽減と生徒相互のコミュ ニケーション・問題解決力を高めていくことができた。評価規準についても1年間の活動を3 期に分け、それぞれの段階でその時の目標にふさわしい評価規準を作成することができた。新 年度からはこの規準を事前に生徒に提示したい。 (イ)授業改善について 科学的思考力育成の大きな柱としているクリティカルシンキングについて、その定着の度合 いを客観的に評価する流れが徐々にできつつある。今年度は試行的に、客観的評価テストを8 月(マーク方式 中学2年生~高校2年生)と12月(記述式 高校2年生3クラス)で行い、そ の結果を分析している。今後これらの試験を定点観測的に実施することで客観的な指標としつ つ、更には「言語技術」を全教科に浸透させながら、科学的思考力の育成に全校体制で努めて いきたい。 (ウ)国際交流について 学術交流を目的とした台湾蘭陽高級女子中学校との交流は、当初の相互発表から共同研究へ と発展し、今後ますますの緊密な交流が期待される。さらに3月には、オーストラリアの学校 と広島大学グローバルキャンパス事業のつながりで交流会も予定されており、学術交流を目的 とした国際交流についても今後の発展が期待できる。 (エ)今後の展望 来年度は次期SSH申請の年度でもあり、高校生の視点に合致した研究を着実に実行し、そ の取り組みの成果を他校へも還元するために、自己の客観的な思考・判断をさらに高めていく 「拡張的クリティカルシンキング」の方向性を検討している。また今年12月に安田女子大学 を会場に中学生から大学生までを対象にした大規模な研究発表交流会を予定しており、理系女 子の発表機会の場を広く提供するとともに、今後の理系の女性研究者・技術者の育成にも大き く貢献していきたい。 3、質疑応答及び指導助言 質疑及び指導助言 回答等 概要報告・SSH成果研究発表会を受けて 生徒の発表内容に幅が出、フランクな雰囲気での 発表になってきている。大変いい方向だと思う。 (庄林) 発表かこなれてきている。先輩から後輩へのつな がりという面が、学校文化になってきていると感 じている。テーマも生徒にとって身近なものであ る。 (林) テーマを自分の課題として取り組んでいると感 じた。理科だけでなくすべての教員が推進してい る体制も評価できる。 (新田) ・生徒同士のディスカッションの中に言語技術な どを取り入れているのか。 (西原) 発表 の練習につ いては事前 にそのよう な時間 をとっている。数値としては出せないが今後と も一方通行ではない、やりとりを重視した形で 今後の取り組みの方向性について 「多様な分野で活躍できる女性の育成」というこ の、指導に心掛けたい。 とに関して、今後はキーコンピテシーという視点 も必要ではないか。またサイエンスという視点か キー コンピテシ ーは新学習 指導要領で も取り ら考えると、「実証的かつ合理的な解を導き出す 上げられる可能性があり、多様な価値観がある ことがサイエンスである」ともいえる。これらの 現代社会において、最適解を導き出すための資 質能力の育成は大切なことだと認識している。 ことを学校の学習文化にすることが必要だ。 (林) 学校全体で多様な分野で活躍できる女性の育成 に取り組むと、理系女子の育成という位置づけと 指導 として理系 の中での広 がりをもた せるこ の整合性が難しくなる。この分野を薄れさせない とも必要だと考えている。次期SSH申請を見 ための取り組みも必要である。 (西原) 据え、理系女子育成の取り組みもさらに発展さ せたい。 本日の文系分野の発表も興味深かった。女性は統 計やマーケッティングなどの仕事に就く人も多 現在数学科や情報科と連携し、授業の中で 統計 処理や解析 まで学ばせ ることも検 討して く、このような分野での指導も大切だと思う。 (庄林) いる。 7-2 教育課程表 標準 単位 1学年 総・理 SS 国語総合 現代文B 国 語 古典B SS科学言語 4 4 4 6 世界史A 世界史B 日本史A 日本史B 地 歴 地理A 地 理B 世界史B演習 日本史B演習 地理B演習 2 4 2 4 2 4 教 科 科 目 現代社会 2学年 文系 理系 共通 SS 共通 2 3 3 2 2 2 ※ 2 * 4 ※ 2 * 4 2 1 * 4 2 2 科学と人間生活 物理基礎 物理 化学基礎 化学 理 科 生物基礎 生物 地学基礎 地学 SS科学実験 課題研究 2 2 4 2 4 2 4 2 4 コミュニケーション英語Ⅰ コミュニケーション英語Ⅱ 英 語 コミュニケーション英語Ⅲ 2 2学年の選択については、以下のいず れかとする。 世界史A+日本史B 世界史A+地理B 日本史A+世界史B 4 授業単位数 合計 単位数 合計 4 1 3 3学年文系の地歴B演習については、 2学年で選択した地歴Bの継続履修と する。 3学年文系の公民演習(現代社会演 習・倫理政経演習)は、合わせて5単 位の受講とする。 ☆ 3 3 4 4 5 3 5 3 SS数学は、2学年は数学Bの読み替 え。 3 4 3 3 2 △ 3 2 3 2 △ 3 △ 4 2 2 △ 4 △ 4 3 2 3 4 3学年理系・SSの物理・生物は、2学年から 4 2 の継続履修とする。 2 △ 3 △ 3 △ 4 2 SS科学実験は、情報の科学の読み替え。 △ 4 △ 4 1 1 7~8 2 2 1 2 1 2 1 2 1 1 3 3 ☆ 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 〇 2 〇 2 2学年で芸術Ⅱを選択する場合は、1 学年で選択した芸術Ⅰと同じ名称の 科目を受講する。 ○ 2 □ 2 〇 2 〇 2 3学年で芸術Ⅲを選択する場合は、2 学年で芸術Ⅱを選択した生徒のみと し、同じ名称の科目を受講する。 ○ 2 □ 2 〇 2 〇 2 ○ 2 3学年で芸術特講を選択するのは、大 学受験に必要な生徒のみとする。 □ 2 ☆ 3 3 4 4 6 4 4 4 4 英語表現法Ⅰ 英語表現法Ⅱ SS英語 家庭基礎 家 庭 家庭総合 家庭演習 情 報 情報の科学 SS総合 総合的な学習の時間 H R SS科学言語は、1学年は国語総合、 3 2・3学年は現代文Bの読み替え。 2 2 3 □ 2 3 4 5 2 2 2 音楽Ⅰ 音楽Ⅱ 音楽Ⅲ 美術Ⅰ 美術Ⅱ 芸 術 美術Ⅲ 書道Ⅰ 書道Ⅱ 書道Ⅲ 芸術特講 備 考 SS ◎ 5 ◎ 5 ◎ 5 数学Ⅰ 数学Ⅱ 数学Ⅲ 数学A 数 学 数学B 数学活用 数学演習 理系数学演習 SS数学 保健体育 理系 4 公 民 公民演習 体 育 保 健 総合体育 3学年 文選 文系 4 2 SS英語は、1学年はコミュニケーション英語 Ⅰ、2学年は英語表現法Ⅰ、3学年は 英語表現法Ⅱの読み替え。 2 2 2 4 2 2 2 3 1 2 1 1 1 2 1 35 36 35 36 2 2 2 ○ 2 3学年で家庭総合を選択できるのは、 2学年で家庭総合を受講した生徒の みとする。 □ 2 ☆ 3 1 2 1 2 1 23 12 36 12 36 37 1学年は現代社会、2学年は世界史Aの読み替え。 1 1 15 1 1 17 36 3 20 36 37 105単位 SSコースは107単位 7-3 その他 台湾研修時報道 課題研究での報道