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モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) ID:91424

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モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) ID:91424
モッ...モリアさんは最
強なんやで(棒読み)
ニルドアーニ四世
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
8月16日をもちましてチラシ裏から本投稿させて頂きます
モリアさんは設定だけならカッコいい...海賊旗はトップクラスにセンスいいし、世
男...。
界最大の船を持ってて、七武海に世界一の医者、メンタル削るチート能力者、透けるエ
ロ能力者をクルーにしててカイドウと張り合った
ください。
これは作者のモリアによるモリアの為の作品です。多少のご都合主義は多めに見て
だが彼は不遇過ぎる...。そんな彼を救済できればいいなと思います...
?
目 次 〝麦わら〟と〝黒ひげ〟 ││││
プロローグ ││││││││││
麦 わ ら と の 邂 逅 * ∼ 原 作 ∼
海賊としての格 6 │││││
海賊としての格 5 │││││
海賊としての格 4 ││││││
海賊としての格 2 ││││││
海賊としての格 1 ││││││
七武海の来襲 1 │││││││
七武海の来襲 2 │││││││
74
85
93
131 124 118 112 107 104 97
人物紹介とエニエスロビー │││
脂肪フラグをかっ消そう ││││
スリラーバーグ編* ││││
∼* │││││││││││││
海賊としての格 3 ││││││
23
ゴースト娘 ││││││││││
厨二変態野郎 │││││││││
影の侵食 1 │││││││││
影の侵食 2 │││││││││
影の英雄 1 │││││││││
影の英雄 2 │││││││││
影の英雄 3 │││││││││
32 28
新時代の幕開け *∼原作スタート
38
モリアの為すべきこと │││││
1
〝記憶〟 │││││││││││
60
8
66
14
43
17
46
52
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラー
バーグ編終了∼* │││││││
空からの軍艦とモリアの暗躍 ││
若き王の成長 │││││││││
精神の攻防 ││││││││││
ダークサイド │││││││││
最強との過去 1 │││││││
相反する二人の王 1 │││││
小手調べ │││││││││││
戦場の序章 2 ││││││││
歴史の序章 1 ││││││││
* ││││││││││││││
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼
138
204 199 192 184 179 174 168 164 155 147
友への激昂 ││││││││││
海軍の策 1 │││││││││
海軍の策 2 │││││││││
海軍の策 3 ││││││││
海軍の策 4 │││││││││
怪物 │││││││││││││
救われた灯火 1 │││││││
老兵の決意 ││││││││││
潰えぬ炎 ││││││││││
エドワード・ニューゲート 1 │
エドワード・ニューゲート 2 │
闇の深淵 1 │││││││││
闇の深淵 2 │││││││││
290 278 268 263 254 249 245 239 233 227 224 219 210
戦争の終結と新たな時代へ 1 │
戦争の終結と新たな時代へ 2 │
覇道への歩み │││││││││
︿番外編﹀ 魚人島 │││││││
新生〝麦わらの一味〟 │││││
新世界への挑戦者 │││││││
バギーズデリバリー 2 ││││
編∼* ││││││││││││
バギーズデリバリー 1 *∼新世界
316 305 300
352 342 337 324 320
白く長い立派な顎髭を生やした好々爺のような人物がゆっくりと降りてきた。その老
俺はそう考えてしばらく周囲を警戒しつつ観察をしていた。すると頭上から一人の
がないので何もしないよりかは賢明な判断だと考えた...。
である。おそらくどう足掻いたところで何も変わらぬとは思うが、何分魂になった経験
そして今、俺がすべき事は周囲を観察して少しでも自分の利益となるように計らう事
い。つまり意図的に記憶を消されたということだろう。
の通った小学校の名前は覚えているが、クラスメイトの顔と名前は誰一人思い出せな
ないだろう。なにより好都合なのは対人関係以外の記憶は全て残っているのだ。自分
いるかもしれない。仮にそうだとして未練なくスパッと切り替えられる人はそうはい
ろ好都合だ。生前は婚約者や親友、そして寝たきりの両親、もしくは最愛の子供達まで
世での記憶をよく思い出せないという事は多少は不安になるだろうが、今の状況では寧
る。正確には実体がないという所であり、現在俺という存在は魂であると理解した。現
ただ一つ理解したのは俺自身の身体はなく、ただキラキラと輝いており、昇天してい
何も存在しない光の世界で俺はそこに確かに存在した...
プロローグ
1
人は神々しい純白のローブを身につけている。その老人は神であるかと理解するのに
俺の思考は必要なかった。
︶
夏休みにチャラ男の叔父のクルーザーに乗ってたら、海面から出てきたエイにぶつかっ
﹁あ∼お前死んだから。覚えてないだろうから教えたげる...。えぇっと君は中学生で
て頭を強く打って死んだんだよ。﹂
︵ほ∼ん...。んでここは天国的な
︶
﹁...﹂
と特殊だから気にならなくもないが大した問題ではないだろう。
俺は軽く返事をした。正直記憶なんて一切ないから死因何かどうでもいい。ちょっ
?
のだろう。もう既に死んだという事は受け入れているから、どうでもいいのだ。
神と思われる老人は少し考えこんだ。おそらく俺の適当すぎる態度が予想外だった
︵ん
?
味はない。むしろ今俺の状況をどうすべきか考えるべきである。夢という事は何でも
コスパとかいう人には理解できぬキーワードが出てきたが、そんな事を考える事に意
てくよりコスパいいんだわ...。眠らせたら適当な箱にぶち込んで終わりだからさ∼。﹂
が人間は自由に選べて欲望を具現化するって感じかな...。ぶっちゃけると天国に連れ
﹁まぁいいや、だいたい全ての生き物は死んだら、夢を見せる事になっている。まぁこれ
プロローグ
2
可能という事だろう。女囲ってハーレムや金を大量に持つのが大部分だろう。だがそ
んな事より前提を〝誰も逆らえぬ絶対的権力者〟というモノにして仕事はその国の象
徴てある故、何もする必要はなくただ好きな事をしていていいと設定した方が遥かに合
理的である。だが従順過ぎる社会というのも考えモノだ。今この瞬間では女や金や権
︶
力に興味はあってもいつかは飽きる。つまり飽きず常に優位に立てる立場が理想とな
るはずである。つまり手の抜けぬヌルゲーが一番の理想なのだ。
︵んじゃ、ワンピースとかへ転生も可能ってとこ 夢だから多少の希望は通せるよね
?
﹁りょーかい。七武海になれるけど原作ブレイクしない感じでそこそこの能力で才能あ
る感じでおなしゃす。あと鍛えたら最強クラスに登り詰める才能をくださいな...。︶
ない感じがいいし...。じゃあそこそこ強い悪魔の能力者で覇気はそこそこの才能があ
︵ん∼。やっぱ海賊だよね∼。七武海になりたいな。でも可能な限り原作はブレイクし
﹁イケるよ...。希望あるなら聞いちゃるよ∼...。﹂
ある。
言えば一般市民として生きるかもしれないし、下手したらハエに転生する可能性も充分
そう...これがベストである。仮に俺が希望など通さず、ワンピースに転生したいと
?
3
るヤツな...。んじゃちょっと待っとき...。言われてないけど、時代とか性別も考慮し
といてやるから。﹂
迂 闊 だ っ た あ り が た き...。俺 は そ う い う と 同 時 に 意 識 が プ ツ リ と 消 え て 目 の 前 が
真っ暗になった。そしてゆっくりと目を開いた。これがワンピースの世界へ今、俺は飛
び込んだ。
***
ジャーに群衆の一人が誰もが知りたがっていた質問をした。
罪人の名は富、名声、力、この世の全てを手に入れた男...〝海賊王〟ゴールド・ロ
処刑台に座った。
と理解していながらもその目には絶望という文字は写っていなかった。そして静かに
今、とある大罪人の公開処刑が執り行われようとしていた。その男は今日生き絶える
︿ローグタウン﹀
プロローグ
4
ワ
ン
ピー
ス
〝ひとつなぎの大秘宝はどこにある
〟
探せッ‼ この世の全てをそこへ置いてき
?
﹂
﹁俺の財宝か
たッ
欲しけりゃくれてやるッ
て純真無垢な少年のようにニヤッと笑うと口を開いた。
ロジャーはその質問を耳にすると溢れんばかりの自分の処刑を見にきた群衆へ向け
?
!
彼の死に際に放った一言は人々を全世界へ駆り立てた...。世は〝大海賊時代〟を迎
!!!!
?
5
える...
そして俺がその全ての海賊の頂点ま
そして後に〝大海賊時代〟を担う事となるとある男は〝海賊王〟の言葉を耳にして
歓喜した。
る高貴そうな黒い服にオレンジと黄色のズボンを履いていた。
男は気まずくなり、つい頭を掻くと変な感覚があった。普通の人間なら存在しないは
?
な
えた変な声の主に目を合わせないように地面を見つめた。すると男は貴族を彷彿させ
無事に転生を果たした男は海賊王の処刑を目の当たりにした。そして近くから聞こ
!
キシシシシシシ...。﹂
﹁こりゃいい‼ 始まるぞ。海賊達の時代がァ
で上り詰めてやる
?
︵うわ∼変な声...。目ぇ合わせないどこ...︶
!!!!
俺 の 服 な ん か 見 覚 え あ ん ぞ...。ど こ の 貴 族 様 だ よ。っ て か 俺...デ カ く ね
?
んかめっちゃ見られてるし...。︶
︵ん
プロローグ
6
確かにそこそこ強い能力だ
確かに七武海になりたいって言った
ってかこの笑い声に、高い声...。おいお
ずのツノのようなモノが確かにそこに存在していた。
︵何か硬い何かが俺の額の両端から生えてね
い...待 て 待 て...。ま さ か ア レ じ ゃ ね ぇ よ な
し、原作はあんまりブレイクしたくないとも言ったよね
確か四皇さんにボコられて拗ねて、ルフィにボコ
!
ん...。︶
?
と憑依した。
そう...。俺は七武海最弱候補にして最大の噛ませ要員ゲッコー・モリア︵24歳︶へ
﹁モリアじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇかァァァァァ⁉
﹂
られて、戦争で派手なサングラス野郎と熊さんファミリーに消される︽仮︾ヤツじゃ
に...。そんなんはどうでもいいっ
し...。ま さ か 七 武 海 で 一 番 影 薄 い ア イ ツ じ ゃ ね ぇ よ な...。カ ゲ カ ゲ の 能 力 者 だ け
?
?
?
7
れるじゃん。あと声高いし、何よりデブじゃん。
ヤバそうなカイドウさんにボコられるよか鍛えた方がいいし、フラミンゴ野郎に消さ
俺はまだ海へは出ない事にした。
原作通りなら恐らくこれから海賊になるのだろう。
グ編でのモリアは覇気を身につけてないはずだったのに多少の人の気配を察知できる。
俺はモリアに憑依した。幸いにもまだ賞金首じゃないし、なぜか原作のスリラーバー
脂肪フラグをかっ消そう
脂肪フラグをかっ消そう
8
脂
肪
死亡フラグがビンビンじゃん。
よし...。強くなったろ...
俺...ゲッコー・モリアは修行を開始した...
***
3年後
︿新世界﹀
9
グ ラ ン ド ラ イ ン
﹁何て強さだよ...。バケモノが...。﹂
偉大なる航路 の 後 半 の 海...〝 新 世 界 〟 に て 海 賊 同 士 の 抗 争 が 行 わ れ て い た。抗 争 と
言うより一方的に強者による蹂躙を行われていた。弱者の船はボロボロになっており、
多くの者は深手を負い息絶えている。荒廃寸前の船でただ一人は無傷な者がおり、手負
いや死した敵のクルーを見下すように一瞥すると口を開いた。
﹁お前らが弱いんだよ...。俺のせいにするな...。﹂
とんでもねぇ野郎と出くわしちまっ
貴族のような黒い服に身を纏った男はゴミでも見るかのような瞳で睨みつけ歩き始
くそッ
!
めた
﹂
﹁こいつ海賊潰しのモリアじゃねぇかッ
たッ
!
男はその手配書の金額を見て声をあげた。
船 の ク ル ー の 一 人 が シ ワ シ ワ に な っ て い る 手 配 書 を 両 手 で 握 り し め て 震 え て い る。
!
が溢れる圧倒的な威圧感を放っていた。
が映っている。モリアは厳正な鍛錬により身体は異常なほど筋肉質で大物という大物
その手配書には3年前のモリアとは比べものにならぬほどの端正な顔立ちをした男
﹁ほぅ...。俺の賞金があがってるのか...﹂
脂肪フラグをかっ消そう
10
***
〝常闇〟ゲッコー・モリア 懸賞金4億8000万ベリー
***
さてと俺の船に戻るか...。﹂
陽が船を照らす頃には船という原型を留めておらず、もはや人も船も残骸となって海に
そしてモリアの消えた船は影の雨が次々と船を貫き、全てが降り注ぎ、雨雲が消え太
すると雨雲から黒い雨が降り注いだ。モリアはその様子を見ると一瞬で消えた。
﹁〝 黒 鉄 雨 〟。﹂
ダークフォール
影の雨雲が船の頭上へ現れた。
は一切見えない。するとモリアの右手から影が揺らめき、すると天へ素早く昇ると黒い
モリアは先日海軍の8隻の艦隊を一人で沈めたのだ。モリアの海賊団は周囲の海に
﹁ふむ...。最近海軍の艦隊を沈めたからかな
?
11
脂肪フラグをかっ消そう
12
漂っていた。
ゲッコー・モリア︵27︶
修行を終えた結果...
尖った顔は引き締まり、常人以下の小顔のイケメンフェイスへ...
数メートルという身体は肉体や骨格は異常な負荷に押し潰され2メートルというほ
ど良き身長へ...
弱かった原作のモリアなど比べものにならぬほどの強者へと変貌した...
・脂肪フラグ回避成功
・死亡フラグ回避成功
・カイドウさん...超怖い
?
13
そして...
・噛ませキャラ回避成功︵確実︶
モリアの為すべきこと
浮かぶ島を改造した巨大船〝スリラーバーク〟の影から現れた。スリラーバークは
西の海の島を買取って船にしたのだ。原作の知識があったため容易く提案して改造さ
グ ラ ン ド ラ イ ン
フロリアン・トライアングル
せたが、大いに人々に衝撃を与えた。そして世界最大の海賊船として有名になった。新
世界で海賊を狩るモリアは通常は〝偉大なる航路〟の〝 魔 の 三 角 地 帯 〟でこの巨大な
ゴ
ミ
船を隠している。海域は常に霧に囲まれているため隠すには絶好の場所だった。
そのせいかモリアは世間から圧倒的な支持と人気を集めており、モリアが街へ食料の
を無利子で貸したり、時には与えたりした。
賊に襲われている時は海賊を潰し、村や国が廃れた場合は自分が海賊から掻き集めた宝
救助と影の狼煙をあげた上でその場から立ち去るようにしている。むろん民間人が海
捉えようとする海軍を潰しはするものの、海兵は尊敬に値するとして近辺の海軍基地の
や冒険目当ての海賊にはこちらからは手を出さず、市民から略奪行為をする者や海賊故
モリアは世界政府から海賊嫌いの海賊として知られていた。モリアは基本的に財宝
﹁実にくだらぬ海賊だった。あんな輩が世に蔓延るのは虫酸が走る。﹂
モリアの為すべきこと
14
買出しへ向かうと行く先々で歓迎を受けた。時には海兵からも尊敬されており、モリア
の船と海軍の船が出くわした場合もスルーする場合があった。その海兵の多くはシャ
ボンディ諸島の〝天竜人〟へのやるせなさや海兵による汚職など、そして海軍の過激派
による一般市民を巻き込んだ戦闘などの不満を抱えていた。
モリアはそのまま宝物庫へ移動し、頑丈で巨大な扉を開けると眩い限りの財宝が所狭
しと雑に置かれている。モリアは宝と宝の隙間に手を突き出すと影が現れ先ほどの海
賊から奪った財宝がボロボロと落ちていく。これはカゲカゲの実の能力により叶うも
のであり、この能力は大変便利だった。
あとは別に返して貰わなくてもいい借金は三十億くらいだ
したのだ。大半を書き終えるとザコキャラ過ぎて凹んだが、今は違う...。
モリアは憑依した時に原作を忘れぬように片っ端からモリアに関する情報を書き出
な。何か墓場の王になりたいとか言ってたね...。﹂
アブサロムは知らないから、透ける能力者がいるっていう情報があったらスカウトだ
死んでからだよね...。今の居場所は抑えてあるから死んでからスカウトだね。あとは
いけど。原作ではペローナはモリアが拾って、ホグバックはシンドリーとかいう女優が
な。まぁ大分金は集まったけど、一人は寂しいな...。まぁ変なのかき集めるよりはい
﹁ザッと四十億ってとこか
?
15
モリアの為すべきこと
16
3億2000万の七武海︵笑︶のモリアじゃねぇ
4億8000万の〝常闇〟のモリアだッ
んぉ...七武海にはどうやってなるんだっけ
?
!!!!
査に乗り出したが、皆が返討ちにあった。その噂を世界中にいる情報屋の一人から仕入
の。壁をすり抜けただの。そんな噂が近辺に流れ海兵や名だたる研究者がその娘の調
その子は亡霊を呼びおこしただの。からかった少年の精神を呪いで不安定にしただ
〝ゴースト娘〟
こに住む孤児の一人の女の子が有名であった。村中の人々は彼女をこう呼ぶ...
〝西の海〟のとある田舎の国のとある村にどこにでもあるような寂れた教会だが、そ
∼ミルトーン教会∼
数年後
ゴースト娘
17
﹂
れた男がその教会へやってきた。そしてその庭にいた教会のシスターらしき女性へ声
をかけた。
釈をすると走って逃げていった。
モリアの名前を聞いたシスターはビクッとしたが、怯えた顔を首を勢いよく降って会
﹁俺はゲッコー・モリア...。〝ゴースト娘〟はここにいるのか
?
う〟と覇気は弱体ないし使用が不可能になるのだろう。原作のモリアは自分で﹃昔はお
覇気の真髄は﹃自分を疑わない﹄ということ。つまり裏を返せば〝自分を疑ってしま
だ。
なかったとは考えられない...。二人の共通点は過去に自分より強者に敗れたという点
コダイル〟も同じである。七武海にも成り得る強さを持つ者ならば覇気を習得してい
た。だがその後のモリアは覇気の習得前のルフィに敗れた。また同じ七武海の〝クロ
原作のモリアが覇気を習得していないのにカイドウと張り合ったという情報があっ
操座りをしていることを感じた。
モリアは気配を察知する〝見聞色の覇気〟を使用し、教会の地下に一人の女の子が体
の事で乱したな...。まぁいい...。﹂
﹁...俺が海賊で民間人を襲わないことを知っていただろう...。明らかにゴースト娘
ゴースト娘
18
19
れも自力の過信と野心に満ちてた﹄とルフィに言っていた。そして頂上戦争後にクロコ
ダイルは﹃傷はもう癒えてる。﹄と言っていた。つまり傷が精神的なモノで己が敗れた白
ひげが死んだことにより癒えたのなら辻褄が合う。つまり...
〝自分の強さを疑わなかったが、強者に敗れて自分が信じられなくなった〟
という事だろう...。考察するに七武海就任後ち二人は強者に敗れて覇気を使えなく
なったのだろう。政府としても七武海に就任させた以上メンツがある。だから他の海
賊達に敗れぬように偉大なる航路の前半の海で強者に敗れぬように指示を出していた
のだろう。
そしてカイドウに挑んでいないモリアが覇気を使えるというのは自然な流れであっ
た...
***
∼地下室∼
そこは薄暗く床は足を載せるたびにギシギシ鳴り響いた。ランプにより明るいもの
の不気味な空気を醸し出している。すると小さなクマのぬいぐるみを持っている可愛
らしい少女が壁にもたれかかって座っている。
﹁お前が〝ゴースト娘〟だな...。﹂
﹂
モリアが尋ねると女の子は敵意をむき出しにした顔で睨みつけた。そして口を開い
た。
呪われたくないなら出て行って
!
﹂
探し求めていた人である可能性が高いが、決定的ではなかったため、〝能力〟が本物で
興味深そうな顔をしたモリアは己に呪いをかけるように挑発した。この娘が自分の
﹁ほぅ...。呪ってみるがいい...。﹂
た。
ゴースト娘は声をあげてモリアを威嚇した。だがモリアはニヤッと笑うと口を開い
﹁私はバケモノよ
!
〝ネガティヴホロウ〟
!
あるかを確かめたかったのだ。
﹁ふん
!
ゴースト娘
20
娘は手から小さな白い光を発するとたらこ唇に黒く丸い目をしている可愛らしいオ
縫 〟。﹂
シャドウ・ストリング
バケのようなモノをモリアへ飛ばした。
﹁〝 影
モリアは影で産み出した黒い針を〝ネガティヴホロウ〟の影に突き刺すとホロウは
動かなくなった。人は影と表裏一体である。人が動けば影も動く...。つまり影が動か
なければ人も動かない...。そしてこの針は影を固定する力を持つ。この世で影ができ
ない物質は存在しないため、モリアは万物の動きを止めることが可能なのだ。もちろん
﹂
針を抜かれたり、全身を強力な武装色で覆えば解放されるという弱点もあるが...
﹁なんでうごかないのよっ
者...ペローナ。︶
モリアが手から影を出してペローナに見せつけた。するとペローナはあり得ないと
﹁それは俺がお前と同じ能力者だからだよ。﹂
バ ケ モ ノ
︵や っ と 会 え た...将 来 の 〝 ゴ ー ス ト プ リ ン セ ス 〟 に し て 〝 ホ ロ ホ ロ の 実 〟 の 能 力
しに止まったからだ。モリアは動かなくなったオバケを見て嬉しそうに笑った。
娘は声をあげた。今まで己の能力が自分の意思に反したことがないのに、己の指示無
!
21
いうような顔をしてモリアの影に興味を抱いた。
グ ラ ン ド ラ イ ン
﹁だが俺とお前はバケモノではない...。マズい果物を食ったろ
﹂
ペローナは自分と同じような特別な力を持つ人間に初めて出会い、モリアに純真無垢
﹁うん...変な白い果物を食べたらオバケが出せるようになった...。﹂
を知らないと考えたのだ。
在は知られてなく、また呪いであるという噂があったため、ペローナが悪魔の実の存在
マズい果物とは悪魔の実である。ここは〟偉大なる航路〝でない以上、悪魔の実の存
?
世界
ペローナ...。俺と共に来い...。お前のいる
な好奇心を抱いていた。その様子を見抜いたモリアはゆっくりと口を開いた。
界
?
厄介払いができたというような顔をして快くモリアが引き取ることを承諾した。
モリアがロリコンなわけではない︶地下室を出た。そしてシスターに事情を説明すると
気よく返事をした。そしてそのままモリアと手を繋いだまま︵ペローナの要望であって
まぁ...俺もそこまでは出歩かないがな...とモリアが付け加えるとペローナは元
狭き地下室から俺のいる海を見せてやる...。﹂
世
﹁本当はこんな所に居たくないのだろう
ゴースト娘
22
厨二変態野郎
数年後
∼高級ブティック∼
原作通り七武海になったモリアはペローナを連れて栄えている街へ買い出しに来て
いた。ペローナが気に入っている店の新商品がウィンドウに飾られているのを見てい
たのでモリアが提案したのだ。
﹁ありがとなモリア。選んでくる
﹂
たが、モリアがそれを許さなかったのでモリアと呼び捨てになっていた。
あるためか吸収は早いようだ。今では完全に打ち解けた。初めはモリア様と呼んでい
教師の家で教えてもらい、航海術や地理学も叩き込んだ。原作ではペローナは航海士で
モリアはペローナに時折モノを買い与えていた。もちろん勉強などは腕の良い家庭
﹁好きなものを持ってくるといい...。金の心配はするなよ。﹂
23
!
10歳になったペローナはオシャレに興味を持ち始める年頃でその事をモリアは配
慮し、最近はよく出かけるようにしている。モリアはペローナの走っていく様子を見て
微笑んだが、背後から気配を感じた。するとブティックのガラス張りのドアを勢いよく
﹂
開くと激しく息切れをしている金髪の男がいた。
まで来た。
金髪でそこそこ顔の整っている男がモリアに尋ねた。そして歩いてモリアの目の前
﹁ゼェ...ゼェ...。あんたが七武海のモリアか
?
俺をあんたの部下にしてくれ
﹂
モリアは男の目的を見抜いて拒否をした。まだ拒否した。このようなことはよくあ
﹁あぁ...。生憎だが部下なら間に合ってるし、必要ない...。﹂
るのだ。
﹁頼むッ
!
注目した。だがモリアの目は冷ややかであった。
そしてお前は何がしたい
﹂
?
は思っていた。
自分でできなくはないが、ペローナがやってくれる。意外と家庭的な女なんだとモリア
少なからず使えぬ人間ならはなっからいらないし、必要ない。料理も掃除もモリアは
?
男は手を床について土下座をした。その様子にブティックにいた店員と客は二人に
!
﹁ならばお前の価値を見せろ...。お前は俺に何をくれる
厨二変態野郎
24
﹁俺は力をあんたに...。そして俺を〝墓場の王〟にしてくれッ‼
この海には幾らでもいる。
。﹂
﹁あ...〝厨二〟はなおさらいらねぇ。相手すんの面倒くさいんで...。﹂
俺を〝墓
!
﹂
悪魔の実を食ったからあんたの役にたてるはずだ。頼む
︵厨二病くせぇな。ってか墓場の王...どっかで聞いたことあるな。なんだっけ
﹁俺はアブサロム
場の王〟にしてくれ
︶
使えないが、かなりガタイはいい。力に自信があるのだろう。だがその程度の強さなら
モリアはこいつが自分が強さに自信を持っているのかと考えたが、見たところ覇気は
?
﹁なんだこの厨二野郎は
モリア...誰こいつ
﹂
?
﹁俺も知らねぇ...何の実を食った
﹂
するとアブサロムを偏見の目で見ていた。
派手なゴスロリの数着の服が入ったカゴを持ったペローナがモリアの側に来ていた。
?
気でそうなりたいと考えていると理解した。
アブサロムは決意の固さがうかがえる瞳でモリアを見た。モリアはアブサロムが本
!
!
?
25
?
︵こ い つ ア ブ サ ロ ム じ ゃ ね ぇ か ッ ⁉
確 か ホ グ バ ッ ク に 身 体 を 改 造 し た ん だ っ た
そんなのはどうでもいい
どうだ
?
リアも原作知識でエロサロムであることを知っている。
﹁誰がエロサロムだッ⁉
﹂
!
返事はアブサロム本人だと知ってから仲間にすることは決めている。
アブサロムは地面に頭をつけてモリアの部下にしてほしいと頼んだ。だがモリアの
て使えるはずだ。俺を部下にしてくれ
あんたの諜報部員とし
ペローナは幼いながらもアブサロムが変態であるということを見抜いた。むろんモ
﹁奇遇だなペローナ。俺もそう思った。﹂
﹁おいモリア...。こいつ多分変態だぞ...。確実に女湯を覗いてる。私は嫌だぞ。﹂
ろうと考えた。
入っているブティックの店員にモリア達が来たら連絡でもするように頼んでいたのだ
モ リ ア は ア ブ サ ロ ム が 自 分 を 探 し て い た と 理 解 し た。そ し て 最 近 ペ ロ ー ナ が 気 に
﹁俺は〝スケスケの実〟の透明人間。﹂
な...。だからわかんなかったのか...。︶
?
!
?
モリアの返事にアブサロムは顔を輝かせて大声でなんども礼を言った。モリアは微
﹁着いてこい...。お前の能力は使えそうだ。﹂
厨二変態野郎
26
能力もウソかもしんねぇぞ
﹂
!
笑むとペローナは声をあげた。
こんな変態を仲間にすんのか
?
...構成員合計3名
王下七武海〝常闇海賊団〟︵モリア命名︶
こうして変態厨二野郎のアブサロムが〝墓場の王〟になるべく仲間になった。
算してくる。﹂
﹁いや、本当だ。変態扱いされた時の対応が手慣れていたからな。さぁカゴを渡せ。精
は最もらしい答えを言った。
ペローナは客観的にアブサロムの事が信用できないとモリアへ訴えた。だがモリア
﹁おいモリアッ
!
27
影の侵食 1
∼新世界∼
とある海軍基地
つ影さえ存在すれば瞬間移動することも可能であるため、うってつけだとして選ばれ
ないのだ。そこで急遽モリアが討伐することになった。モリアは筋を通す男でなおか
実力者は出払っているが、比較的近くの港にいるルーキーをみすみす逃すわけにはいか
若い芽は積んでおきたいが、新世界の大物達による覇権争いのせいでこの海軍基地には
奢な男だが、彼は大海賊時代史上最強のルーキーとして名高い男である。海軍としては
壊滅である。モリアは手配書の男に目を向けた。長く整った緑色の髪をした色白で華
モリアは七武海としての任務を与えられていた。それはとある海賊団の殲滅ないし、
で...。﹂
﹁ん で...俺 は こ い つ を 殺 せ ば い い ん だ な。可 能 で あ れ ば 捕 ら え る っ て い う 前 提
影の侵食 1
28
た。
***
〝奇術師〟リンダ
懸賞金4億2000万ベリー
そして我らはこれよりモリア様を近くの港まで護送させていただきます
***
﹁ハッ
﹂
!
モリアが足元の影の中にゆっくりと沈むように入りこむとその場から消えた。そし
﹁いや、さっさと狩ってくるわ...。あと〝様〟は付けなくていい。﹂
た。
敬礼をしている海兵がモリアに船に乗るように促した。だがモリアはそれを拒否し
!
29
てモリアはリンダのいる港のとある船影から姿を現した。少し見渡すとそれらしき海
﹂
賊旗が見えたので跳躍して乗り込んだ。すると船番をしているモブ海賊がモリアを見
モッ...モリアだァッ‼
つけると声をあげた。
﹁誰だおめぇ⁉
﹂
?
﹂
ら逃れようと手首を外そうと両手に力を加えるがビクともしない。
そうつぶやくと同時にモリアに首を片手で掴み、持ちあげられた。男はモリアの手か
﹁はっ...〝覇王色〟の覇気...。﹂
てモリアを見るとゆっくりと歩いて間合いを詰めた。
いて皆が倒れた。ただ一人残った男は倒れた仲間を見ながら冷汗をかいている。そし
モリアが目を鋭めた刹那に次々とクルー達は気絶をした。すると臆病そうな男を除
﹁雑兵に用はない...。﹂
貴様ら
動を待っているとモリアは口を開いた。
モリアの突然の来襲に次々と戦闘態勢に入った。そして銃や刀を持ってモリアの行
﹁なんで七武海がこんなとこにッ⁉
?
?
?
した。そして右手に力を加えて男の首の骨を破壊して殺そうとすると港に強者の気配
モリアがそう尋ねるが、男は首を振る。どうやら話す気は無いようだ。モリアが落胆
﹁リンダはどこにいる
影の侵食 1
30
﹂
を感じた。その気配は船に跳躍して飛び乗ると声をかけた。
﹁わかんだろ
てめぇを狩りに来た。﹂
モリアは男を投げ捨てると、男は激しく噎せた。
モリアは男の顔を見ると手配書通りの長い緑色の髪をした男が立っていた。すると
﹁おいおい...七武海様がどうしてここにいるんだい
?
31
?
影の侵食 2
二人は同時に地面を蹴り、拳を武装色で黒く染めるとぶつかりあい火花が舞った。そ
して片方の拳が一方的に押し負けるとそのまま船の外へ飛ばされた。
船に残っていたモリアは骨を砕いた感覚を得て呟いた。建物に激突したのかリンダ
﹁...拳は砕いたな。﹂
の土煙が立ち昇る様子をこの様子を見て早く帰れそうだと思った。そしてモリアは船
から飛び降りて歩いてリンダの元へ向かった。
﹁案外弱ぇな...。最強︵笑︶ルーキー。﹂
モリアは土煙が立ち昇る場所の手間まで来ると貶すように言い放った。煙が晴れる
と右手がドス青黒く変色して腫れているリンダを見下すように見た。確実に骨まで砕
いている
﹁バケモンだね...。再痛感させられるよ...
影の侵食 2
32
ギフト
僕の能力の有能さをね...。〝譲渡〟。﹂
リンダがそう言い放つとモリアは己の右拳に激痛が走った。右手を見ると先ほど見
たリンダと同じようにドス青黒くなっている。するとリンダは立ち上がると折れてい
たはずの右手が元通りになっていた。
?
﹁考え事なんかしてる暇あるのかい
﹂
い...。最強のカウンター能力といえる...。︶
︵恐ろしく厄介だな...。ダメージも傷もヤツが認識できぬ程の早さで始末するしかな
さぁおいでよ...七武海。﹂
ない。致命傷程度じゃ死ぬのは君...
僕の疲労や痛み、傷、病気も...。かなり特異な能力でね。僕を殺すには一瞬でやるしか
﹁僕は〝パスパスの実〟の譲渡人間。常人では渡せぬモノを僕は一方的に譲渡できる。
33
ギフト
リンダは隠し持っていたであろうナイフを手に持つと己の腕に突き刺した。そして
﹂
再び〝譲渡〟とつぶやくとモリアの腕からナイフによる出血の傷が溢れ出てきた。
べると口を開いた。
モリアは毒が全身に回らぬ様に腕に力を加え圧迫した。するとリンダは笑みを浮か
﹁...毒か。麻痺系と言ったとこか
?
﹁正解...。30秒位で全身に回る神経系の毒だよ。﹂
﹁そうか...
﹂
感謝する...。﹂
﹁は
?
影の侵食 2
34
リンダはモリアの言葉に目を丸くさせるとモリアはニャッと笑った。そして全身か
ブラック・ミスト
ら影の煙のようなモノが溢れ出した。
ノに覆われている。
ギフト
﹃プシュ。﹄...〝譲渡〟。﹂
?
つのトカゲ
﹁なッ...でも覇気で攻撃すれば君を捉えられるよね...。﹂
したに過ぎない。
だの影にする事も可能である。そしてこの技はモリアという実体化された影を虚無化
化して攻撃する事ができると結論に達する。つまりその逆...実体化してある影をた
は覇気を使用できないはずであるのに影を攻撃として利用できるという事は影を実体
原作のモリアは頂上戦争でオーズJr.の身体を〝角刀影〟で貫いていた。モリア
れた影を虚無化しただけのことだ。﹂
﹁俺は影を自在に実体化する事ができる。ならば逆に虚無化も可能。俺という実体化さ
足そうに見据えていた。
その様子を見たリンダは焦ったように何度も繰り返した。だがモリアはその様子を満
リ ン ダ は 自 分 の 腕 を 斬 り 裂 い て 〝 譲渡 〟 を し た が モ リ ア は 何 と も な い よ う だ っ た。
﹁何言ってるの
ギフト
すると地面にピチャっと水滴の音がした。するとモリアの身体は黒い霧のようなモ
﹁〝常闇狭霧〟﹂
35
リンダは右腕を武装色で硬化し、モリアへ間合いを詰めて殴ったが、まるで霧を殴っ
たかのようにすり抜けた。今度は足を硬化して回し蹴りをしたが再びすり抜けた。
﹁無駄だよ...。お前じゃ俺に勝てない...。﹂
いう理由で打撃、斬術、銃、その他大半の悪魔の実の攻撃系能力も全てを無駄な足掻き
︵原作のルフィがゴムだからという理由で打撃が効かないのなら、モリアが影だからと
と化す事ができる。ロギアより数段厄介だろうな。なぜならパラミシアは覇気で捉え
られない実体のない攻撃が可能だからだ...。無論この技も弱点は存在する。︶
本来ロギアが無敵である条件は相手が覇気を覚えていない場合か己以上の覇気の使
い手か弱点を突くかに限られる。頂上戦争での青雉は白ひげの覇気を纏った槍で刺さ
れたが無傷だった。つまり青雉の覇気が白ひげを上回っていたと予測できる。そのた
め全身を纏う黒い影の霧に武装色を纏いその武装色が敵の武装色を上回る場合にのみ
無敵の防御を誇る。
無論虚無化したのならモリア自身も攻撃が不可能である。だからモリアが攻撃に転
体化させている時にその部位を攻撃するしかない...。﹂
﹁お前の攻撃は通らず、俺の攻撃はお前を捉える。今のお前にできる事は俺が身体を実
影の侵食 2
36
ずる場合はその部位を実体化せねばならないのだ。だから敵が格下の場合はその実体
化した瞬間にモリアにダメージを与えるしかない。リンダは絶望したような顔でモリ
﹂
あきらめなよ...影に攻撃してダメージをあたえよ
アを見るとモリアは狂気的な笑みを浮かべて言い放った。
﹁そんな事不可能だって思ったろ
うなんていうバカはこの世に存在するか
納すると先ほどいた海軍本部へ戻った。
モリアが満足そうに笑みを浮かべて己の影にリンダの亡骸をモリアの影の空間に収
うだ...。﹂
ていれば最強格だったのにな。さてこいつの死体を貰うか...こいつの能力は使えそ
﹁〝 影法師 〟...。や っ ぱ り 俺 の 能 力 は チ ー ト だ な。原 作 の モ リ ア も も っ と 使 い こ な し
ドッペルマン
て理解したが、そのまま絶命した。
中で目の前にいたはずのモリアがただの黒く薄っぺらな影になっているのをかろうじ
そう言い終わった瞬間にリンダの首はゴキッと折られた。そしてかすれゆく意識の
?
?
37
影の英雄 1
〝聖地マリージョア〟
聖地〝マリージョア〟にはこの世で最も気高く、世界の頂点に君臨する一族〝天竜人
〟が住んでいる。そして天竜人はどんな振る舞いをしても許される。なぜなら海軍大
将を自由に呼べ動かせる権限を持つため傍若無人な振る舞いを事実上認められていた。
そして天竜人が所有する奴隷の一人が捕らえられている牢獄の目の前に二人の男が突
然現れた。容姿の整った貴族のような黒い服を着た男とそこそこ容姿の整った長い金
髪の男は牢獄の中で捕らわれている赤い肌をしたタイの魚人を見た。そして黒い服を
着た男、モリアは口を開いた。
モリアはタイガーに挨拶をするとタイガーは不機嫌そうな顔をした。二人が突然現
﹁御機嫌よう⋮。〝フィッシャー・タイガー〟。﹂
影の英雄 1
38
れたことに関して驚かなかったのは何度かタイガーの元を訪れているからである。
﹁...ッ
何が目的だ
あんたは海賊とはいえあんたは政府側の人間のはずだ。﹂
?
﹁大丈夫だ...。バレたら皆殺しにすりゃいい。まぁ極力やらないけどな。﹂
タイガーは目を見開いてモリアへ尋ねた。だがモリアは全く動じず口を開いた。
﹁あんた...。七武海にいられなくなるかもしれねぇぞ。﹂
したが、途中で鎖が張り金属の音が響いた。
モリアがその一言をその言葉を聞いた瞬間に身を乗り出してモリアへ詰め寄ろうと
﹁俺は全ての奴隷を解放したい。﹂
代わりに政府の犬とならなくてはいけないのだ。
タイガーはモリアの意図を探ろうと尋ねた。そもそも七武海とは政府が略奪を許す
!
りと聞いたタイガーは目を見開いた。
モリアはそろそろ本題を切り出すべきだと思い、タイガーへ提案をした。自由が見返
﹁なぁに...あんたと取引がしてぇ。見返りはあんたの自由だ。﹂
うになった。
めはモリアの言葉を無視し続けていたが、やがてタイガーが折れて多少の会話をするよ
タイガーは天竜人の振る舞いや人間による魚人の迫害から大の人間嫌いなのだ。初
﹁消えろ人間...。七武海だろうが俺は奴隷なんだ。関係ねぇ...。﹂
39
﹁...話してみろ。いや話してくれ。﹂
タイガーはモリアの揺るがぬ瞳を見て話を聞く価値があると考えた。七武海という
地 位 を 賭 け て 奴 隷 を 解 放 し た い と 言 っ て い る の だ。む し ろ こ ち ら が 頼 む ほ う だ ろ う。
モリアはニヤッと笑うと口を開いた。
﹂
﹁あんたに〝奴隷解放のシンボル〟となって貰う。﹂
﹁どういうことだ
生追われる身となるのだ。そして天竜人は海軍大将を動かす権限を持っている。
タイガーはようやくモリアの意図を理解した。つまり自由と引き換えに海軍から一
?
﹂
コックに恩を売ったほうがいい。もちろん俺の方が奴隷は安全に解放できるからな。︶
い。何もしなくても脱獄するだろうが、どうせならいずれ七武海になるジンベエやハン
偶然かもしれないけど、爆発する首輪はあった今でもあるから内通者がいた可能性が高
︵偶然思い出したけど、タイガーがどうやって脱獄したかは原作に乗ってないんだよな。
﹁俺には立場がある。俺も奴隷解放に参加はするが、七武海という座は守りたい。﹂
タイガーはモリアの〝シンボル〟という言葉の意味が理解できないようだった。
?
﹁つまりお前が得る奴隷解放の名誉と罪を俺に背負えということか
影の英雄 1
40
﹁そうだ。このままクソみてぇな生活を続けるか俺にかけてみるか...。﹂
あんたに俺の命を預けた
計画を教えてくれ
﹂
!
モリアの提案を聞くと同時にタイガーはニヤッと笑って声をあげた。
﹁のってやろうじゃねぇか
!
自
分
俺は何をすればいい
﹂
?
ズイため外へ出すわけには行かないのだ。
﹁わかった。それにはアテがある。奴隷はどうやって逃す
?
くてはならない。スリラーバーグはモリアが匿えば安全圏だが、天竜人にバレるのはマ
モリアはタイガーが海軍からの追っ手から逃がさなければならないため、手を回さな
な...﹂
ん た の 命 を 匿 う あ て を 見 つ け ろ。最 悪 ス リ ラ ー バ ー グ で 一 生 を 過 ご す こ と に な る が
して世界政府の追撃を受けるからな。だからあんたの無事の手まわしだな。一年であ
﹁契約成立だ。まずはあんたを単独で逃す。理由はあんたが単独で奴隷を解放させたと
とタイガーは思っていた。
の人間は自分の地位を脅かす計画を魚人に委ねてくれるのだ。こんな人間がいたのか
モリア
らという理由で避けられ、海賊にはハクをつけるために襲われたりもしたのだ。だがこ
て扱ってくれる人間に出会わなかったのだ。冒険家として世界を回りつつも魚人だか
ガーは驚いたような顔をすると戸惑いながらも手を握り返した。魚人を同じ人間とし
タイガーはモリアの提案を受けると言うとモリアは檻の中に手を差し出した。タイ
!
41
﹁まずはあんたがマリージョアで暴れろ。そして俺が奴隷達をスリラーバーグへ匿う。
あんた以外の奴隷だとわかっても七武海の傘に守られれば世界政府とはいえ迂闊に手
を出せないだろうな。﹂
モリアは七武海として最も政府のために働いている。政府の命で狩った大物の海賊
達も少なくはない。︵ただその分モリアは強力な死体を得る事ができたのでどうでもい
爆発しちまうぞ。﹂
いが...︶ 奴隷を解放したタイガーでなく、いち奴隷ならば諦める可能性が高いのだ。
﹁だが〝天竜人の枷〟はどう外す
﹂
れた枷は外れた。そしておなじ要領で足首にもつけられた鎖を外した。
ら出し、タイガーの鍵穴へ入れた。そして影を実体化し、鍵のように捻ると首にかけら
〝影法師〟を使い檻の中に入ると驚くタイガーを余所にゆらゆらしている影を手か
ドッペルマン
﹁簡単だ。俺の能力を使う...。﹂
行かないのだ。
ているのだ。つまり枷を外さない限りタイガーだけでなく奴隷達を解放するわけには
天竜人の枷とはセンサーがついており、一定の範囲外へ出ると爆発する仕組みになっ
?
﹁さぁ逃げようか...。どこへ連れて行って欲しい
影の英雄 1
42
?
影の英雄 2
シャボンディ諸島 海岸
ラーバーグにいるとは限らないからだ。
捕ったり殺したり、アブサロムはかつての強者達の死体を荒らし盗んでいるため、スリ
また部下とはペローナのことである。モリアは〝新世界〟のあちこちで海賊達を生け
がないため気にしないでよく、モリアが見聞色で気配を探っているので問題なかった。
まま会話をしていた。周囲から見れば何も存在せず、声が聞こえてくるだけだが、人目
モリアは人気のない海岸でアブサロム、タイガーがアブサロムの能力で透明になった
表立って派手には動けない。﹂
﹁一年後に俺の部下のビブルカードを辿ってスリラーバークに来い。フォローはするが
43
地
位
﹁あ ぁ...。一 つ 聞 い て い い か
てを託してくれるんだ
﹂
あ ん た に 奴 隷 を 解 放 す る メ リ ッ ト が ね ぇ。そ れ だ け
が逃がしてくれたなんて言っちまえばあんたは全てを失う。どうしてあんたは俺に全
じゃなくあんたの七武海を揺るがすことになる。ましてや俺がトンズラこいてモリア
?
ますから仲良くしようなんて虫のいい話あるか
らである。
魚
人
間
だからあんたが英雄になる事が最善
いを受けているのだ。人間だけでなく魚人、巨人、ミンクなどの種族も囚われているか
の多くは人間の手によって連れ去られ、人間によって狂気の沙汰とも思えんばかりの扱
天竜人
モリアであれば政府に露見せずに奴隷を解放させる事は十分に可能である。だが奴隷
モリアは損得感情抜きに心の内を語った。彼は本来平和を愛する男なのだ。確かに
だと思ったんだよ。﹂
?
ないし、隔たりを無くしたいと思ってる。だが今まで散々迫害してきた俺達が今更助け
人
﹁さぁな...。俺は天竜人も海賊も嫌いなんだよ。種族間の差別っていうのも気に食わ
?
﹁フフッ...任せるぞ。これを持っていけ。金なんて持ってねぇだろ
﹂
モリアは小さな袋を渡した。タイガーが袋の中身を見ると金貨や宝石などがぎっし
?
とあんたに誓う。﹂
﹁...あんたの想いは俺が受け止めてやる。絶対に俺は全ての奴隷達を自由にしてやる
影の英雄 2
44
﹂
り入っている。1000万ベリーは下らないだろう。
﹁あんた...。﹂
﹁早くいけよ...。故郷へ帰りてぇだろ
﹁すまねぇ...。この恩は絶対ぇ返す。﹂
***
﹁モリア...。﹂
引き入れるだけだ。だがまだ時が満ちていない。﹂
墓場から遺体や遺骨を掻き集めさせてるだろ。あとはその遺体の質を跳ね上げる男を
﹁わかってる。お前を墓場の王にするのはもう少し時を待て...。現にお前に世界中の
?
45
影の英雄 3
∼聖地マリージョア∼
天竜人の方々を逃せぇぇッッ
敵は魚人たった一人だ
﹂
!
﹁襲撃だァァッッ
!
聖地マリージョアが豪炎に包まれる中モリアが逃がしたタイガーが力の限り暴れま
!
〝CP0〟はなぜこない
﹂
わっていた。天竜人の近衛兵が銃や刀で襲いかかるがタイガーに軽く蹴散らされる。
﹁クソッ
!
!
軍に来ないのだ。だから〝新世界〟にあるCP0の本部へ直接連絡をし、近くにいるC
るのは数名の手練れがいるはずだ。それなのに前代未聞の大事件にCP0が一人も援
である〝CP0〟へ連絡をしようとした。ここがマリージョアとはいえ、ここを警護す
近衛兵のリーダーらしき男が〝でんでん虫〟を天竜人直属の諜報機関の最上級組織
﹃プルプル...プルプル...﹄
影の英雄 3
46
Pのメンバーを呼び出そうと思ったのだ。
﹂
?
﹄...。﹂
るし、爆発する錠は力任せに引っこ抜いて手を武装色で覆えば爆発を限りなく抑え込め
込む程の力量を持っている。見聞色の覇気を使えば奴隷がどこに居るのかを判断でき
ようだったが、モリアがペローナと共に覇気を教えたので新世界でも比較的上位に食い
り、黒いローブを羽織った男がモリアである。原作のアブサロムは覇気を覚えていない
リーダスと呼ばれた男は一瞬で消えた。もちろんリーダスはアブサロムの偽名であ
﹁了解...。﹂
手で破壊できるな
﹁〝リーダス〟...。お前は中に取り残された奴隷を解放しろ。お前なら手錠ぐらい素
黒いローブを羽織った人物は受話器を直すとでんでん虫の音が切れた。
のローブを羽織っている。そしてもう一人は目元が隠れる仮面を付けている。そして
そう声が聞こえると一瞬でフワッと二人の人物が現れた。一人は黒い仮面を被り、黒
﹁こ こにいるCP0は全員始末したが、援軍を呼ばれんのは面倒だ。﹂
マリージョア
衛兵達を斬り裂いた。
向けるが誰もいない。すると無数の細く黒いヒモのようなモノが飛んできて一瞬で近
すると突然リーダーの首が横にへし折られ前に倒れた。驚いた部下の近衛兵は銃を
﹁これであの魚風情を始末でき...﹃ゴキッ
!
47
るのだ。
﹁何者だ
﹂
横から近衛兵達は鎧ごと斬り裂かれ生き絶えた。
﹁さてと...マリージョアに眠る宝や悪魔の実を根こそぎ頂くか...。﹂
***
30分後
!
こんな地獄から抜け出せるなんて何度夢見たことかッ
﹂
モリアがそういい放つと伸ばした手に影を纏わせると真横に一閃振った。すると真
﹁ただの反逆者だよ。〝三日月の影〟。﹂
ダ ー ク・ ナ イ ト
ニヤッと笑うと口を開いた。
二人の存在に気づいた近衛兵がモリアへ向かってきた。するとモリアは仮面の下で
!
﹁自由だッァァ
!
影の英雄 3
48
降りるなんて不可能よ
﹂
暴れまわっているタイガーが手錠の鍵を奴隷達に渡すと次々と外へ出て走り出した。
ここはレッドラインの頂上
!
すると後ろにいた若い女性の奴隷が口を開いた
﹁でもどうやって逃げるのよ
!
﹂
?
﹁早く行け。ここの奴隷達全員を逃したいのだ。天竜人の世話を今一度受けたいか
﹂
一人の奴隷がその言葉を聞いて勢いを付けて飛び込むとそれに続くように次々とモ
?
ていないようだった。
ぬ得体の知れぬ男の得体の知れぬ技により創られたモノに飛び込む勇気は持ち合わせ
すると扉の前にするが奴隷達は入るか入らまいか迷っている。敵か味方かもわから
部下がいる。そいつがお前達を世話する手筈になっている。﹂
﹁この技で二つの扉を創り繋いだ。一つはここに、もう一つは俺の拠点に。そこに俺の
﹁何だこれは⁉
いた。扉の向こうはとても暗くまるで先の見えないトンネルのようだった。
〝 扉 鏡 扉 〟モリアがつぶやくと天にまで届くほどの巨大な扉が現れ、ゆっくりと開
シャドウ・ホール
﹁安心しろ...。我が能力ではそんなこと容易い。﹂
き渡るとその持ち主が口を開いた。
ようにレッドラインをよじ登るような芸当は不可能である。すると真横から足音が響
確かにその通りである。ここはレッドラインの頂上であり、誰もが原作のタイガーの
!
49
リアの創った扉へ入って行った。人間、魚人、小人、ミンク、魚人、手長族、足長族な
どが次々と扉へ入って行くと政府の役人がやってきて声をあげた。どうやら天竜人は
能力者か⁉
﹂
逃がしきり、近衛兵の様子を見に来たようだった。
﹁何だあのドアは
﹂
!
?
﹂
その様子を見たモリアは口を開いた。
﹁他に人魚はいたか
﹁いやこの娘だけだ。大半の奴隷はもう後ろにいない。ん
その子は何だ
﹂
?
?
るだけだったのでモリアが諦めたのだ。
でピッタリ離れない。モリアは何度も扉へ行くように声をかけたが頭を横に激しく振
可愛らしい子兎のミンクは小さなウルウルとした涙目でモリアの足をギュッと掴ん
﹁子兎のミンクだ。離してくれなくてな。﹂
アブサロムはモリアの足元に小さな耳にモコモコした人型の生き物に気づき尋ねた。
?
す る と 後 ろ か ら 美 し い 黒 髪 の 若 い 人 魚 を 担 い だ ア ブ サ ロ ム が 役 人 を 蹴 り 飛 ば し た。
﹁どけ
!
モリアは足に子兎のミンクを引っ付けたままタイガーを待った。奴隷達が次々と扉
﹁あぁ。俺はタイガーを待つ。﹂
﹁そうか...俺は人魚の娘をスリラーバーグの海岸まで連れていく。﹂
影の英雄 3
50
へ 駆 け 込 む 中 2 0 分 程 待 つ と 両 腕 に 小 さ な 子 供 を 抱 え た 血 塗 れ の タ イ ガ ー が 現 れ た。
今にも倒れそうでフラフラしている。
た。
世界に轟かせる事となる。そして協力者の黒いローブの男の正体は誰もわからなかっ
これが後々〝聖地マリージョア襲撃事件〟として英雄フィッシャー・タイガーの名を
えた
モリア達が扉の中へ入ると扉はだんだん小さく縮みはじめ、そしてシュッと一瞬で消
﹁よくやってくれた。さぁ行こう。早く手当をせねば...。﹂
モリアは二人の子供を受け取り、左腕で二人を抱え、タイガーの肩を抱えた。
﹁ハァ...ハァ...ハァ...これで全員だ。﹂
51
としての闇は完全に取り払われたようだった。
の安全な生活を望んだ。街々は日が当たらないモノの活気に溢れており、かつての奴隷
れの故郷へ帰すつもりだったが、大半の奴隷達は七武海の傘下にあるスリラーバーグで
以外の奴隷を救出した。モリアはほとぼりが冷めるまでスリラーバーグで匿い、それぞ
13年前、モリアはタイガーと共にマリージョアを襲撃し、追っ手により死に絶えた
てここへ最初に住み着いた人々が元天竜人の奴隷であるということである。
の国と違う事が幾つかある。それは様々な種族が分け隔てなく生きている事だ。そし
た。民家や商店街もあれば、人も住み、法律もあれば大臣もいる。ただここの住民は他
した世界最大の船である。ここは世界政府も知らぬが船でなく、一つの国のようであっ
〝スリラーバーク〟...それは〝王下七武海〟ゲッコー・モリアの所有する島を改造
∼13年後∼
新時代の幕開け *∼原作スタート∼*
新時代の幕開け *∼原作スタート∼*
52
53
そしてこの島は三つのエリアに区切られている。中心にあるのが〝Aエリア〟。そ
してその周りに高い塀があり、大量の銃を持った警備員が配置しており巨大な扉には他
のエリアからの厳しい関所がある。ここはおよそ二百名程が住んでおり治安は異常な
程いいのだ。
そして〝Aエリア〟の周りにあるのが〝Bエリア〟である。ここは元奴隷の賞金首
や大工や鍛冶職人などの戦闘系以外のゾンビが住んでいる。Bエリアからはモリアの
許可証さえあれば自由に行き来できるが、一度でも犯罪、迷惑行為をすると投獄生活の
後に〝Bエリア〟かその下の〝Cエリア〟へと追放になる。
そして〝Cエリア〟にはアブサロムとモリアが死体を掻き集め、そして世界最高の外
科医師〝ドクトル・ホグバック〟の手により肉体改造のされたゾンビや一部の新米の傘
下の海賊達が住むエリアである。ここは外からの襲撃に備えるために配置してある。
さらに地下にモリアに影を取られた手練れの海賊達が比較的自由に管理されている。
食事や酒、雇った女などが生活していた。またモリアの強さに絶望し、命乞いをしたた
め反乱などの意思は全くなかった。
***
〝Aエリア〟
∼城内∼
***
た無邪気な笑顔の青年だった。
モリアが手配書を机に置くと集まった皆が覗き込んだ。そこには麦わら帽子を被っ
あると判断し、調べたところこいつの所業である事がわかった。﹂
七武海の〝サー・クロコダイル〟が大佐程度の海兵に捕らえられた件だろう。俺は裏が
﹁さて...今回政府からの招集を受けた。世界の海は極々平和だが、おそらく俺と同じ
新時代の幕開け *∼原作スタート∼*
54
モンキー・D・ルフィ
懸賞金一億ベリー
***
﹁〝モンキー・D〟...海軍の〝英雄〟ガープの血縁者か
﹁ガルルル...英雄の孫ってとこだな...。﹂
﹂
であることを見抜き、感動したためモリアの配下へと願い出たのだ。
語った。彼は元々政府の上層部の人間だったが、マリージョア襲撃事件の黒幕がモリア
長い白髪に立派なヒゲを生やした老人がスラスラとモンキー・D・ルフィの情報を
モンキー・D・ルフィ〟はガープの孫です。﹂
三千万にして〝ノコギリ〟のアーロン率いる魚人海賊団の撃破により付けられた。〝
﹁モンキー・D・ルフィ...。私の〝記憶〟によれば東の海のルーキーですね。初頭金は
兵と同じ姓なのだ。
ペローナがそう呟いた。かつて〝海賊王〟ゴールド・ロジャーを追い詰めた伝説の海
?
55
ホグバックの手によってありとあらゆる動物の筋肉を移植されたアブサロムはもは
やそこらのゾオン系能力者より身体能力は高くなり、モリアの部下として最強の強さを
誇る
﹁うるせぇ歩く未確認歩行物体。てめぇの能力で猥褻物加減が警官にバレねぇからって
調子のってんじゃねぇぞ。 ﹂
ペローナの側にいたショタ顔の幼い兎のミンク〝のアルフレッド〟が普段の可愛ら
しい様子とは正反対のゲスい顔でモコモコの三つに分かれた指の真ん中だけ立ててい
部下を止めろ
!
﹂
る。このミンクはマリージョア襲撃時にモリアから離れなかった子兎のミンクが成長
おいペローナ
!
!
し、ペローナの副官となったのだ。
てめぇ口悪いんだよ
!
﹁あ゛
ペローナ様に声かけんな万年発情野郎が
﹂
!
をあげた。彼女には可愛い兎のミンクがゲス兎になるのがたまらないようだった。
アルフレッドがアブサロムに毒を撒き散らす様子を見たペローナはご機嫌そうに声
﹁ホロホロホロ...可愛いからいいじゃねぇか。﹂
?
なかったから部下からは完全に舐められているのだ。
うに言った。覗きが趣味の彼に威厳というモノは存在せず、そして彼自身の性格に合わ
アブサロムは少し慌てながら上官であるペローナに毒舌のアルフレッドを止めるよ
﹁んなッ
新時代の幕開け *∼原作スタート∼*
56
﹁ねぇ...そんなに殺して欲しいの
﹂
﹂
散ってしまう。すると腰から斬れ味の良さそうな細長い包丁を二本取り出した
か宙をふわふわと浮いているが、そんな事よりドス黒く焦点の合っていない瞳に気が
突然霧のようなモノが現れて固まると美しい長い黒髪の人魚が現れた。人魚はなぜ
?
キ
とっても容易でない。
ガ
!
第一貴方の幸せを邪魔するつもりは
も ち ろ ん 〝 居なかったことに 〟 し ま す よ。ま
殺
私は男の子でも女の子でもいいですよ。全て貴方の希望に
望まない性別だったら
た作ればいいし...勘違いしないでくださいね
従 い ま す。え
?
?
ち ゃ ん が 女 の 子 が い い な ら 従 い ま す わ。だ っ て 私 は 貴 方 の 幸 せ が 大 事 な ん で す か ら。
り 前 じ ゃ な い で す か...私 以 外 の 雌 が 貴 方 に 近 づ い て し ま う か ら で す...。私 達 の 赤
者ら始末しますからご安心ください。私としては女の子は少し気が引けますわ。当た
ありませんよ。あぁその前にお義父様とお義母様に挨拶ですね。私たちの邪魔をする
?
?
子供は何人欲しいですか
だ な ん て 〝 ま る で 妻 〟 み た い で す ね...ま ぁ い ず れ そ う な る ん で す け ど ね。あ っ...
﹁だってこのクソ兎は貴方にそんな無礼な言葉何て許しておけませんわ。きゃっ
貴方
であるから言うことを聞くが目が虚ろになったリディアナを止めるのはアブサロムに
アブサロムはリディアナを止めようとした。普段のリディアナはアブサロムの副官
﹁待っ...待て〝リディアナ〟
!
57
妊娠してしまいそうですわ。
貴方のマリージョアの勇姿は忘れませんわ。貴方が水槽に取り残された私を助けて下
さったのを思い出すと私はいつでも幸せなんです。あぁ
だからどんな事でも命じてくださ...etc
いるとペローナが機嫌良さげに口を開いた。
リディアナのヤンデレっぷりを見たアブサロムは顔を青ざめ頰肉をピクピクさせて
!
じゃねぇか。﹂
﹁フォスフォスフォス...。ヤンデレが嫌なら好みの死体を持ってこい。﹂
覗き野郎
ヤンデレ
﹁俺はヤンデレもゾンビも嫌なんだよ。生きたまともな花嫁が欲しいだけなんだ
!
﹂
!
モリアがアルフレッドに一言注意をするとモコモコの手をおでこの前に置いて敬礼
﹁了解
﹁アルフレッド...。一応アブサロムの立場はお前より上だという事をわすれるな。﹂
サロムを不憫に思ったのも事実である。
らなかった。なぜならこれが信頼関係の証であると思っていたからである。だがアブ
上司のモリアを前に部下達が散々好き放題にしているが、モリアは全く機嫌が悪くな
﹁変態の嫁は変態で十分だろ。﹂
﹂
﹁ホ ロ ホ ロ ホ ロ ホ ロ...。ア ブ サ ロ ム...結 婚 し て や れ よ。お め ぇ 結 婚 し た が っ て る
新時代の幕開け *∼原作スタート∼*
58
﹂
ポーズをとった。その様子は可愛く殺伐とした皆の雰囲気が少し紛れた。
﹁それはモンキー・D・ルフィを潰すのですかな
メレスシード。﹂
プレゼント
プレゼント
﹁やはり便利だな。〝メモメモの実〟メモ人間にしてこの国の大臣〝賢者〟ギルノス・
くとメモが折られ紙飛行機ができると自動で飛んで行った。
〝複製〟と唱えると数十枚のメモ用紙がコピーされ、増えた。そして〝 送 信 〟と呟
コ ピー
﹁〝複製〟...。〝 送 信 〟。﹂
コ ピー
老人が頭に指を添えると突然メモ用紙が出て、チラッと中身を確認すると呟いた。
﹁えぇ...。﹂
天敵〟だとか...。世界に散らばる幹部達に〝記憶〟を送ってくれ。﹂
して最近七武海を蹴ったポートガス・D・エース。マリージョアではDの一族は〝神の
﹁いや...決して侮るなという事だ。ゴール・D・ロジャーやモンキー・D・ガープ、そ
?
59
している。
竜人〟と呼び、そしてこの〝聖地マリージョア〟に住んでおり、この世界の頂点に君臨
から800年前に20人の王により創設された。そしてその20人の王の末裔を〝天
それは世界へ圧倒的な影響力を持つ国際組織で、加盟国は170ヵ国以上に及び、今
世界政府...
∼聖地マリージョア∼
〝麦わら〟と〝黒ひげ〟
〝麦わら〟と〝黒ひげ〟
60
そしてその世界政府に略奪行為を許された七人の海賊の猛者がいる。その代わりに
政府の犬となり海軍と共にこの不安定な世界の均衡を保っている。そしてその一人が
今、マリージョアの海岸へ到着し、船から降りて来た。
数時間後
***
の海賊でなく、七武海である事を安堵した。
そして彼がマリージョアの内部へ入ると海兵達は胸を撫で下ろし、そして彼らがただ
備をしている海兵達は固唾を呑んで彼を見守った。
してその端正な顔立に似合わぬほどの異常すぎる威圧感と威厳に護衛という名目で警
高貴な印象を持たせる黒い貴族服に身を包み、血のような紅き髪は背中まで届き、そ
〝王下七武海〟 ゲッコー・モリア様がお着きに...﹄
﹃海軍本部からマリージョアへ...
61
何をするッ
﹂
!
﹁違うんだ
手が勝手に‼
﹂
た。すると首を絞めている海兵が慌てたように声をあげた。
会議の行われる円形の広い机に座っている海兵が側にいる海兵に首を絞められてい
﹁おいやめろ‼
?
?
﹁バカ言えッ
こんな時にふざけてる場合かッ
﹂
!
り人形のように...
声をあげた海兵は手を緩めない。正確には緩めることができないようだ。まるで操
!
ドフラミンゴは指を怪しげに動かしていた。
〝海軍中将〟おつるが王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴへと注目が集まった。
﹁そうだよ。ふざけてる時ではない。ドフラミンゴ...。いい子だからおやめ。﹂
!
らよ...
﹁フ フ ッ...フ ッ フ ッ フ...い い 子 だ か ら か。敵 わ ね ぇ な ぁ。あ ん た に ゃ...。だ っ た
〝麦わら〟と〝黒ひげ〟
62
バカよせッ
﹂﹁うォ
﹂
さっさと話すこと話して終わらせちまおうぜ。こんな集会...。﹂
﹁おい‼
!
!
の動きが止まった。
﹁お
﹂
...やんのか
﹂
?
?
張り裂けるようなピリピリとした二人の雰囲気は誰にも止められないと実感させら
?
んでやろうか
﹁俺は海兵の争いなんぞ、滑稽で不快だったがな...。なんなら代わりに俺がおめぇと遊
るとモリアはゴミを見るかのような目で見下すように見ていた。
ドフラミンゴは二人の海兵の影に黒い針が刺さっているのを見てそう判断した。す
?
﹁おぉ...。﹂﹁助かった...。﹂
...モ リ ア。お め ぇ の 仕 業 か
!
よぉ...。﹂
﹁...ッ
邪 魔 す ん な よ...楽 し い と こ だ っ た の に
すると二人の中将は刀を抜き、互いを切り裂こうとした。だが刀が交わる寸前に二人
?
63
れた中一人の男が止めた。
﹁やめんか海のクズ共...。﹂
ア フ ロ に 細 長 く 編 み 込 ま れ た 顎 髭 に 丸 メ ガ ネ し た 巨 大 な 男 が ヤ ギ を 連 れ て 現 れ た。
かの男が海軍のトップに立つ〝海軍元帥〟センゴクである。
﹁フフッ...〝仏〟の名が泣くぞセンゴク。﹂
﹂
﹁だが的を得ている...。﹂
﹁ほぅ...俺もクズか
この男は世界最強の剣士〝鷹の目〟のミホーク。
足音が響き渡り皆の注目が集まると背中に巨大な黒い刀を持った細身の男が現れた。
﹁おぉ最も意外な男が来なすった。﹂
﹁三人も集まるとは私の予想以...﹃コツン...コツン...コツン...。﹄
歩いて向かった。
センゴクの挑発と威圧を軽く受け流した。そして議題について話そうとゆっくりと
?
るとその場に居合わせた強者達が一斉に窓際に鋭い目を向けた。
麦わらのルフィの情報を得ていたのかそのまま空けられた四つの椅子に座ろうとす
るだけだ...。﹂
﹁フン...。俺はただの傍観希望者だ。たまたま今回の議題に関わる海賊達に興味があ
〝麦わら〟と〝黒ひげ〟
64
﹁ならば私も〝傍観希望者〟として参加させて頂きたい...。空いた七武海の枠に推薦
したい男がいるのでね﹂
窓の端に座りながら口を開き、そしてタップダンスと杖をクルクルと回しながら歩い
てきた。
リラーバーグへ飛ばした。
その海賊団のキーワードを聞くとモリアの顔色が変わった。そして腕から蝙蝠をス
﹁その男の海賊団は〝黒ひげ海賊団〟。﹂
65
〝記憶〟
﹂
〝マリージョア襲撃事件から二年後〟
?
う記憶改竄を行っていた。
ている影を奪われた強者達の記憶を削除し、犯罪や横暴な振る舞いをしない人間だとい
そしてギルノスはモリアに命じられ、スリラーバーグの地下で比較的自由に管理され
除、改竄、渡す事も可能である。
つけ、何も話さない奴隷から無理矢理記憶を盗み見たのだ。また他にも記憶の保存や削
作できる力を持つ。ギルノスの前に隠し事などは通用しない。彼は元奴隷の一人を見
き止めた。〝メモメモの実〟は人の記憶をメモという形に具現化したり、自由自在に操
かつてギルノスはその〝能力〟でモリアが〝マリージョア襲撃事件〟の黒幕だと突
﹁ギルノス...。記憶の消去を頼めるか
〝記憶〟
66
さらにここで管理されているのは〝スラム街で貧困に喘いでいたところをモリアが
救ってくれたが、他の住民達が怖がるから止むを得ず地下へ住まわせてもらっている。
〟と思い込ませ、そして彼らは〝モリアに勝てばここから無条件に解放する〟とモリア
が言い。誰一人勝てなかったので諦めて地下での暮らしを謳歌していた。むろん彼ら
﹂
はモリアから影を取られている事を知っているため、無闇に脱獄しようとは考えていな
い。
﹁ほぅ...どの辺りの記憶ですかな
モリアは損得勘定抜きで二つの事をしたいと考えていた。既に成功したマリージョ
は沢山あるが、もう疲れたし十分だ。︶
︵時の流れを知っているとこの世の出来事が作業になってつまらない。確かに良いこと
﹁ほぅ...。興味深いですが聞きませんよ。﹂
前の憑依したという記憶のみであるため、これが正しい。
モリアに憑依したのはゴールド・ロジャーの処刑時である。モリアが消したいのは生
﹁このゴールド・ロジャーの処刑より前の記憶...。﹂
?
67
ア襲撃。そして〝いちファン〟としてエースの救出だったが、七武海という立場のため
斬り捨てる事にした。だが万が一手を貸してしまったら七武海という傘が無くなり、ス
﹂
リラーバーグの住民達に危険が及ぶかもしれないのだ。
﹁本当によろしいので
﹁あぁ...頼む。﹂
﹁わかりました。﹂
﹁...ッ
﹂
れたメモを取り出そうとした。
ギルノスはモリアの頭へ指を近づけ、モリアの頭から小さくて見えない程文字が書か
?
だ。
ツ
デリート
グラグラの実を奪ったのだ。〝黒ひげ〟は世界の脅威になり得ると突然思い立ったの
ヤ
最後に突然思い出した様に〝黒ひげ〟という名前を出した。死んだ〝白ひげ〟から
伝えてくれ。﹂
﹁ただし記憶を消した後に﹃〝黒ひげ〟と名乗る男が現れたら確実に戦争で始末しろ﹄と
出す前だったのでまだ憑依前の記憶はある。
だがメモを取り出す寸前にモリアがギルノスの手首を掴んだ。幸いにもメモは取り
!
﹁意味はわかりませんが...。伝えておきます。では...〝削除〟﹂
〝記憶〟
68
69
デリート
ギルノスは少し戸惑いながらもメモを抜き取り〝削除〟とつぶやくとメモの文字が
スゥと消えて透明なメモになった。
これでモリアは完全に憑依したゲッコー・モリアでなく、ONE PIECE︵改︶の
住人となった
***
〝現在〟
∼スリラーバーグ∼
﹂
﹁暇だぁぁ∼。モリア様かペローナ様からナデナデして欲しい
遊びたいけど嫌われたくない
ペローナ様を起こして
!
ン
デ
レ
信じられなくなって覇気が使えなくなったのよね...。能力はチートだけど...﹂
スも強いけど大臣だから頼る訳にはいかないし...。何より年老いたことで自分の力が
﹁修行をしたいにも敵からの襲撃に備えて万全の体制でなければならないしね。ギルノ
理解してるからか互いを尊重する感じで意外と仲がいいのだ。
ければ普通の優しいお姉さんなのだ。敵対関係になりそうな二人だが、お互いの心情を
サロムに惚れている。彼女はアブサロムが絡むとおかしくになるが、アブサロムが居な
ヤ
ナはアブサロム大好きである。モリアはあくまでも恩人だが、自らを助けてくれたアブ
きな上司が不快な思いをしないように牽制をしているのだ。それとは反対にリディア
リアとペローナに撫でられることである。そしてアブサロムは変態なので自分の大好
二人の副官達がモリアの城の中で嘆いていた。アルフレッドにとって至高なのはモ
〟へ...。はぁ...。﹂
﹁そうね...愛夫のアブサロム様は死体を盗みに行ったし、モリア様は〝マリージョア
!
ギルノスは元はCPとして働いてどんどん出世したが、覇気が使えなくなり前線を退
﹂﹁...ッ
!
﹂
いてからは上官として任務を遂行していたのだ。
﹁...ッ
!
〝記憶〟
70
二人が同時に気配を感じて窓を見ると蝙蝠が 部屋の中に入り、二人の眼の前でま
るで毛糸から糸が解けるかのように影の糸が文字を作り出した。
***
∼至急〝黒ひげ〟について調べてくれ∼
***
﹂
﹂
二人はモリアからの指示を数秒間ジッと見ると二人は同時に顔を見合わせた。
頼られたぜ
﹁これってモリア様からの指令じゃないかしら⁉
﹁ヒャッハー
!
アルフレッドはこの指示を完璧に全うすればモリアから褒められると思い、急にテン
!
?
71
ションが上がった。だがそのテンションもすぐに終わりを告げることとなる。
﹁でも情報って確実にアブサロム様かギルノスの役目よね...。﹂
リディアナがごもっともな事を言うとアルフレッドは何も言い返せなかった。そし
﹁...。﹂
覗
き
野
郎
て二人はゆっくりと天を仰ぎながら声をあげた。
﹁あぅ...。目の前の人参をアブサロムに踏みつけられた感覚...。﹂
﹁はぁ...。アブサロム様の風呂場で隠し撮りして蒸気で全く見えなかった感覚...。﹂
二人の空気は重かったがモリアのため素直にギルノスの元へ伝えに行った。
***
一月後
﹂
﹁...〝マーシャル・D・ティーチ〟。元〝白ひげ海賊団〟です。しかも〝2番隊〟に所
?
懸賞金は分かったか
?
モリアは〝黒ひげ〟の情報の報告を求めた。
﹁〝黒ひげ〟とは何者だ
〝記憶〟
72
属していました。﹂
ギルノスが宴中の集合写真のようなモノをモリアへ提示した。この写真はアブサロ
ムが透明になり、〝白ひげ海賊団〟のところから盗んできたのだ。アブサロムの〝スケ
﹂
スケの実〟と同時に見聞色の覇気を使用し、何もしなければ彼の存在を察知するのはほ
...見覚えのない男だ。懸賞金は幾らだ
ぼ不可能であるのだ。
﹁〝2番隊〟だと
?
コ ピー
プレゼント
判断したため、〝麦わらのルフィ〟と同じように警戒対象に加えた。
?
﹁了解...。〝複製〟...〝 送 信 〟。﹂
〝黒ひげ〟と戦争をするのか
?
だ。思い出すこともあるまい...。︶
まぁいい。ギルノスに記憶を復元させるのも手だが、何らかの意図があって消したの
︵俺 の 伝 言 の 〝 戦 争 〟 と は 何 の こ と だ
読 め な い な。
モリアは自身の謎の伝言と〝黒ひげ〟という男の分析をした結果、危険な男であると
ベルは最高だと伝えろ。﹂
﹁実 力 を ひ た 隠 し に す る タ イ プ。計 算 高 く 野 心 家 だ な。幹 部 た ち に 連 絡 を...。警 戒 レ
﹁0です。能力、戦闘力は共に未知数と見るべきですな。﹂
?
73
人物紹介とエニエスロビー
〝常闇海賊団〟
∼ゲッコー・モリア∼
︿年齢﹀ 48歳
︿通り名﹀ 〝常闇〟
︿能力﹀カゲカゲの実
せた。原作知識がある事により作業となった事で人生がつまらなくなり、ギルノスに記
た。マリージョア襲撃事件に加担し、奴隷達を解放させ大半をスリラーバーグへ住まわ
元日本人...。原作知識と神のサービス、何気に鋭い頭脳の甲斐あって七武海に就い
︿立場﹀ 王下七武海・常闇海賊団船長
︿懸賞金﹀元4億8千万ベリー
人物紹介とエニエスロビー
74
憶を消させた。今では世界が平和になることと戦力を高めるために強者の死体と影を
掻き集めている。
*︵彼の年齢の名誉の為に...赤犬︵53︶ 黄猿︵56︶
∼アブサロム∼
が、リディアナのヤンデレ的報復を恐れてスリラーバーグでは行わないようにしてい
囲まれて日々を満喫している。彼の男の浪漫とも言えん能力で覗きを繰り返している
変態...。墓場の王になるべくモリアの部下となった。今では部下の強者達のゾンビに
覗き野郎
︿立場﹀ 諜報部員
︿懸賞金﹀ 0ベリー
︿能力﹀ スケスケの実
︿通り名﹀ 〝墓場〟
︿年齢﹀ 不明
75
る。天才外科医ホグバックの手により動物の筋肉を移植され、中級ゾオン系能力者を上
回る身体能力を得る。更に覇気を使えるため実力はモリアに次ぐ強さを誇る。
*︵年齢は不明設定でしたので...︶
∼ペローナ∼
︿年齢﹀ 23歳
︿通り名﹀ゴースト・プリンセス
︿能力﹀ ホロホロの実
ンクのアルフレッドのことを大層気に入っており、その欲求は薄れつつある。
女の感性にとって可愛いモノが好きで動物系ゾンビを配下にしている。だが最近はミ
ツンデレ...幼い頃にモリアに引き取られたため、モリアの事を大層慕っている。彼
︿立場﹀ 航海士
︿懸賞金﹀0ベリー
人物紹介とエニエスロビー
76
∼ホグバック∼
︿年齢﹀ 17歳
∼アルフレッド∼
半を担っている。
アの部下となった。彼の手によりゾンビの身体能力は著しく上昇し、モリアの戦力の大
世界最高の天才外科医として名を馳せたが、愛していた女性を蘇らせる代わりにモリ
︿立場﹀ 船医
︿懸賞金﹀ 0ベリー
︿能力﹀ 無し
︿通り名﹀〝ドクトル〟
︿年齢﹀ 不明
77
︿通り名﹀ 黒兎
︿能力﹀ ︿通り名﹀ 狂 艶
きょうえん
︿年齢﹀ 27歳
∼リディアナ∼
が無かったため、ミンク族は全員がスリラーバーグへ残った。
だった。モリアに救われて異常に懐いた事やミンクの住む〝ゾウ〟へのビブルカード
たため、奴隷の中では比較的優しい扱いを受けていたが幼いミンクにとって最悪の恐怖
手により連れ去られ、その数ヶ月後にモリアに救われた。幼い女の子の天竜人に飼われ
見た目は最高に可愛いが超絶口の悪いウサギのミンク...。彼は5歳の頃に人攫いの
︿立場﹀ ペローナの副官
︿懸賞金﹀ 0ベリー
?
︿能力﹀ パラミシアorロギア
?
人物紹介とエニエスロビー
78
︿懸賞金﹀0ベリー
ヤンデレ人魚...。燃え盛るマリージョアの中で水槽の中に取り残されたリディアナ
︿立場﹀ アブサロムの副官
はアブサロムに救われた事でアブサロムに惚れた。彼女は8歳の時に捕らえられたた
である
め、好きな人への接し方がわからず、ヤンデレと化した。武器は二本の包丁で天竜人の
余興のピラニアとの格闘により身につけた剣術
∼ギルノス・メレスシード∼
︿年齢﹀ 74歳
︿通り名﹀ 〝賢者〟
︿能力﹀ メモメモの実
︿懸賞金﹀ 0ベリー
︿立場﹀ 参謀andスリラーバーグの大臣
ギルノスは元々世界政府の上層部の人間のだったが、彼の能力によりマリージョア襲
?
79
撃事件の黒幕のモリアに感動し、部下になった。彼の能力と聡明さを見抜き、彼をスリ
ラーバーグの大臣に任命した。マリージョアの地下で管理されている影を取られた強
者達の記憶を能力で改竄し、脱走しないようにしている
∼ディルゴ∼
︿年齢﹀ 34歳
︿通り名﹀ 巨雷兵
︿立場﹀ 舵船士
なお店で手錠とロープで拘束されている時にグルだった人攫いの手により、ヒューマ
ドMな巨人族...海賊傭兵として荒金を稼いでいた。シャボンディの大人のエ○チ
?
︿懸賞金﹀ 元1億8000万ベリー
︿能力﹀ 無し
人物紹介とエニエスロビー
80
ン・ショップへ売り飛ばされた。
フロリアン・トライアングル
モ リ ア へ の 恩 義 を 返 す 為 に 部 下 と な っ た。〝 魔 の 三 角 地 帯 〟 を 出 る 時 は ス リ ラ ー
バーグをロープで引いて船を移動させる。︵島でなく改造船のため底が地面についてな
いから案外楽︶これによりログに関わらず自由に世界を行き来出来る。普段は森の中で
寝ているか修行を続けている。
〝友人〟
∼ジンベエ∼
︿懸賞金﹀ 元2億5000万ベリー
︿能力﹀ 無し
︿通り名﹀〝海狭〟
︿年齢﹀ 44歳
81
︿立場﹀ 王下七武海・魚人海賊団船長
ジンベエザメの魚人...。モリアと共にマリージョアを襲撃したフィッシャー・タイ
ガーの右腕だった男。その縁で仲が良くたまにスリラーバーグへ招いている。彼は魚
人島を守ってくれた〝白ひげ海賊団〟だけには手を出さぬようにモリアへ頼んでいる。
∼ボア・ハンコック∼
︿年齢﹀ 29歳
︿通り名﹀ 〝女帝〟
へ送ってもらった一人であり、モリアに大恩を感じている。たまにモリアを〝アマゾン
世界一の美女で女人国〝アマゾンリリー〟の女帝。元天竜人の奴隷で数少ない故郷
︿立場﹀ 王下七武海・九蛇海賊団船長
︿懸賞金﹀ 元8000万ベリー
︿能力﹀ メロメロの実
人物紹介とエニエスロビー
82
リリー〟へ招いてもてなしている。
***
∼スリラーバーグ∼
﹂
﹂
?
に戻ると口を開いた。
モリアはアルフレッドに息を整えさせ、何が起こったのかを尋ねた。そして息が正常
﹁息を整えろ...。そして何があった
が現れた。何やら一大事のようだった。
モリアが城の中で本を読んでいるとドアが突然開き、呼吸の荒れているアルフレッド
﹁ハァ...ハァ...大変です
!
83
﹂
﹁ふぅ...。警戒対象の〝麦わらルフィ〟率いる麦わらの一味が〝エニエスロビー〟を
落としました‼
ずだ...
﹁な ん だ と ⁉
するとは想定外だった。
﹂
...〝 エ ニ エ ス ロ ビ ー 〟 か ら の ロ グ は 〝 魔 の 三 角 地 帯 〟 へ 通 る は
フロリアン・トライアングル
七武海の〝クロコダイル〟を倒した時から警戒対象にしていたもののここまでの事を
裁く裁判である。その世界の均衡を保つための三つの施設の一つを落としたのだ。元
〝エニエスロビー〟...それは世界政府の直轄地で〝司法の島〟と呼ばれる海賊を
?
?
そこで麦わらの一味を始末する。ペローナとリディアナを呼べ
!
人物紹介とエニエスロビー
84
麦 わ ら と の 邂 逅 * ∼ 原 作 ∼ ス リ ラ ー
だったら俺が影を取り返してやるよ。﹂
!
鳴をあげた。
ンと小さなオバケが現れた。ブルックが悲鳴をあげるとオバケに弱いメンバー達も悲
を奪った犯人から取り返すと答えた。ブルックが感動していると船内の壁からヒョコ
麦わら帽子をかぶった青年、〝モンキー・D・ルフィ〟がブルックの話を聞いて、影
﹁何言ってんだよ水クセェ
取られた者が太陽の光に触れると身体が消滅すると話した
〝ヨミヨミの実〟を食べたアフロの骸骨〝ブルック〟が自身に影のない理由と影を
ないでしょう...。﹂
﹁影は数年前ある男に奪われました...。この海で彼に勝てる者は数える程しか存在し
∼サニー号∼
バーグ編*
85
***
∼スリラーバーグ∼
〝Aエリア〟 が次々と入っていくと、ムクリと立ち上がった。
隷だったが、恩義を果たすために配下となった。すると項垂れているペローナへオバケ
の整った巨人族の〝巨雷兵〟ディルゴが待機していた。モリアが逃がした天竜人の奴
の能力者のペローナには偵察を任せていたのだ。そして城の窓からは短い金髪の容姿
〟がスリラーバークの近くに来るのを待っていた。オバケを出せる〝ホロホロの実〟
モリアは〝スリラーバーク〟にいる幹部と副官を集めて殲滅対象の〝麦わらの一味
︿城内﹀
麦わらとの邂逅 *∼原作∼ スリラーバーグ編*
86
﹁モリア...。正面の門から南西の方角に〝麦わらの一味〟の船を発見したぞ。何か可
愛い動くアフロガイコツが乗ってた。あいつは私にくれ...。﹂
﹂﹂﹂
!
∼サニー号∼
数時間後
***
﹁﹁﹁了解
である。それはさて置きモリアは部下達に指示を出した。
下は皆可愛い︵ペローナにとって︶動物達のゾンビであり、唯一の例外がアルフレッド
アフロガイコツをモリアは何かの能力者かと思いすぐに許可をした。ペローナの部
そしてリディアナはスリラーバークに〝霧〟を撒け。﹂
﹁構 わ な い...。デ ィ ル ゴ は 南 西 に 船 を 引 け。ア ブ サ ロ ム は ス リ ラ ー バ ー ク を 透 明 化。
87
〝麦わらの一味〟のサニー号はスリラーバークの外壁を閉じられ、外部へ逃げられな
いようにされた。門を突き破って逃げるように伝えるとブルックは海面を高速で走り、
スリラーバークへ上陸した。だが船長の〝麦わら〟のルフィが興味を持った。そして
スリラーバークへ乗り込もうとした瞬間に突然勝手に船の錨が沈んだ。
ハッチが空いたが、誰もそこにはいなかった。そして獣のような声が微かに響き渡る
と突然〝泥棒猫〟のナミは身体をベロッと舐められた。ナミは気持ち悪さと恐怖で悲
鳴をあげた。
﹂
!
マー メ イ ド
﹁若い人魚ォォッッ
﹂
?
!
何で浮いてんだ⁉
!
魔
﹁あら浮気かしら...。その美少女...殺すね。﹂
邪
日老女の人魚と出くわして幻滅した思い出があったのだ。
コ コ ロ ばぁ さ ん
がら、身体をくねくねさせた。そして他のメンバー達も人魚に目を見開いて驚いた。先
空中を泳ぐそうに飛んでくる若く美しい人魚に目をハートにしたサンジは発狂しな
﹁おい
﹂
が飛んできた。目を凝らして見てみると声をあげた。
そして〝黒脚〟のサンジがナミに何が起こったのか尋ねるとナミの背後から何者か
﹁どうしたナミさん
﹁ガルルル...。好みの女だ。﹂
麦わらとの邂逅 *∼原作∼ スリラーバーグ編*
88
光のなく黒く虚な瞳をしたリディアナは腰から細長く鋭い包丁を抜き、ナミへ向かっ
リディアナ
やめろ
﹂
て突撃した。するとアブサロムはナミから少し離れて声をあげた。
﹁おい
!
!
リディアナが力を加えるとゾロが押し負けて船の外壁へぶつかり、壁を突き破って船
〝前半の海〟にしてはだけど。﹂
パ ラ ダ イ ス
﹁〝海賊狩り〟のゾロ。腕と力はまぁまぁいいわね...
は意外そうな顔をしてつぶやいた。
ゾロは身体の線の細く女性からは考えられぬほどの力を感じた。そしてリディアナ
︵この人魚...。なんて力だよ。一瞬でも気を抜いたら押し負けそうだ。︶
﹁血の気の多い女だな...。﹂
た。三本の刀を腰に差した男がリディアナの前に立ち塞がった。
ナミの首を落とそうと包丁を振りかざそうとした瞬間、リディアナの包丁が止められ
!
89
セイスフルール
内へ飛ばされた。すると〝悪魔の子〟ニコ・ロビンが動いた。
﹁〝六輪咲き〟。﹂
リディアナの身体から六本の腕が現れ、関節を決める寸前まで身体を押さえ込まれ
た。
...〝ロギア〟。﹂
気が集まり、再びリディアナが現れた。
﹁...ッ
!
﹁〝ゴムゴムのォォ...ガトリングッッ
〟。﹂
そして〝ゴムゴムの実〟の力で血流を激しく流し、身体能力を著しく上昇させ、さら
!
アナへ向けて攻撃を繰り出した。
うにしたのだ。船長のルフィが〝ギア2〟とつぶやき身体から蒸気を放出させ、リディ
そして彼女の力で霧を覆わせ、スリラーバーグが陽の当たる場所でも通る事が出来るよ
リ デ ィ ア ナ は モ リ ア が 天 竜 人 の 倉 庫 か ら 盗 ん で き た 悪 魔 の 実 の 一 つ を 食 べ た の だ。
ているのも蒸気だからよ。ロギア系最弱種だけど、貴方達じゃ相手にならないわよ。﹂
﹁その通り...。私は〝スチスチの実〟を食べた蒸気人間。この深い霧は私が作り浮い
スチーム
関節技を決められたリディアナの身体は霧のようにファッと舞い消えると、やがて蒸
﹁〝クラッチ〟。﹂
﹁確か貴方は〝ハナハナの実〟の能力者だったわね...。油断してたわ。﹂
麦わらとの邂逅 *∼原作∼ スリラーバーグ編*
90
にゴムの反動を利用し素早く攻撃に繰り出す原理である。
覇気を纏わなければロギアのリディアナの実態は捉えられないのだ。そして攻撃の
﹁無理よ。今の貴方じゃ蒸気には触れる事すら出来ない。﹂
〝フレッシュ・ファイア〟
﹂
対象をルフィに切り替えると〝サイボーグ〟フランキーが声をあげた。
﹂
﹁だったら炎はどうだ蒸気女
﹁きゃっ
!
た。
﹁フランキー
てめぇ
﹂
﹄﹂
﹁スゥーーパァ...﹃グホッ⁉
﹂
なにしやがる⁉
!
﹁麗しきレディに手ぇだすんじゃねぇ
しかもマーメイドだぞ
マーメイド
!
﹂
!
クソッ
?
サイボーグか...。リディアナ
!
!
に触れて二人は透明になった。
﹁大丈夫か⁉
一旦引くぞ。お前じゃ相性が
サンジが抗議をするフランキーに対して怒っている背後でアブサロムはリディアナ
!
美人に惚れやすい性格のサンジは決めポーズをしているフランキーを蹴飛ばした。
﹁〝黒脚〟
?
!
?
!
想外の攻撃に炎から回避するのが遅れてしい、リディアナの右腕が少し焦げてしまっ
自身の身体を改造した人造人間〝フランキー〟が口から炎を出すとリディアナは予
!
!
91
アブサロム様
。﹂
悪い。この程度の火傷くらいホグバックならすぐに治せるはずだ
﹁はーい
??
﹂
!
愛しのマーメイドォォ。﹂
人は彼を〝死の錬金術士〟と呼ぶ...。﹂
た男は元4億8000万ベリーの〝ゲッコー・モリア〟 王下七武海の一人...
﹁〝影〟、アブサロム、そしてホグバック...。マズイわ...。恐らくブルックの影を奪っ
その中最も頭のいいロビンがとある結論に達した。
サンジやリディアナの強さを感じた麦わらの一味はしばらく動けなかった。そして
!
て叫んだ。
走って退いた。そして意気揚々キメ顔で振り返ったサンジは消えたリディアナへ向け
リ デ ィ ア ナ は 担 が れ て 幸 せ そ う に お 姫 様 だ っ こ を さ れ て 船 医 の ホ グ バ ッ ク の 元 へ
!
﹁待ってよォォ
麦わらとの邂逅 *∼原作∼ スリラーバーグ編*
92
海賊としての格 1
どうしてここへ⁉
∼スリラーバーク∼
﹁皆さん
﹂
?
﹁先ほど会ったばかりの貴方達に死んでくれとは言えません。私の影を取り戻す事です
心などを優先し、人の言う事など聞かないのだ。
ルフィがブルックへそう言い放った。ある意味傍若無人なルフィは自分の興味や関
﹁おめぇはもう俺の仲間だろ。﹂
ブルックは門を突き破って脱走しなかったことに驚いた。
スリラーバーグへ上陸した麦わらの一味はブルックと城へ向かう森の中で再会した。
!
93
モリアって野郎をぶっとばせばいいんだな。﹂
ら不可能に近いのに...。﹂
﹁うるせぇ
ただ闇雲に突っ込むのなら全滅よ。﹂
﹁貴方達...本当に良い人達ですね...。是非ともお力をお貸しください..,。﹂
だった。
き〟チョッパーはモリアにビビっているが、それを除いたメンバーは腹をくくったよう
のメンバー達はナミ、〝狙撃の王様そげキング〟ことウソップ、そして〝わたあめ大好
サンジはブルックの肩を持ちモリアを倒すのに協力する気のようだった。そして他
﹁あぁなったルフィはもう止められねぇ。諦めろ。﹂
﹁何を言っ...
聞かずブルックの手助けを無理やりする気なのだ。
ブルックはルフィ達を巻き込むまいと帰るように言うが、ルフィはブルックの言葉を
!
?
見えていた
アなのだ。まともにぶつかり合えば〝麦わらの一味〟とブルックは全滅するのが目に
上司と思われるアブサロム、更にその上に君臨するのが〝王下七武海〟ゲッコー・モリ
は冷静にブルックに疑問をぶつけた。確かに敵に〝ロギア〟のリディアナ、そしてその
モリア側
ブルックはうっすら涙を浮かべ〝麦わらの一味〟を頼ることにした。そしてロビン
﹁作戦はあるの
海賊としての格 1
94
﹁...えぇ。ここの地下にモリアに影を奪われた人達が地下で捕らえられています。彼
らに反乱を起こさせ、そしてその混乱に乗じてモリアを倒すのです。﹂
ブ ル ッ ク は 7 年 前 モ リ ア と ア ブ サ ロ ム の 留 守 の 時 を 狙 っ て 影 を 取 り 返 す 為 に ス リ
ラーバークへ乗り込んだ事があった。自分の入れられたゾンビを見つける事ができず、
情報だけを掻き集めたのだ。そこで地下に囚われた強者の香りのする人達が幽閉され
ているのを見つけたのだ。やがてアブサロムが帰ってきたのに気づき、素早くスリラー
﹂
バークから脱出したが、アブサロムの透明化により船を見失ってしまったのだ。
﹁ちょっと待て。じゃあ何でおめぇは海にいたんだ
だって自由じゃねぇなんてあり得ねぇだろ。﹂
!
れない〟のです。﹂
者達を次々と捕らえ地下へ幽閉しています。彼らは〝逃げない〟のではなく、〝逃げら
﹁それが彼の強さを物語っているのです。モリアは政府の命令や独自に〝新世界〟の猛
﹁何でそいつらは逃げねぇんだ
ルゴを森へ住まわせ監視をさせていた。
た者から影を奪い地下で管理せずに森へ野放しにしたのだ。勿論逆らわぬようにディ
事実、モリアはスリラーバークに迷い込んだり、戦闘を仕掛けた海賊の内弱いと思っ
の当たらない地下で幽閉しています。﹂
﹁私は弱かったからです。影は持ち主が死んだら影は消滅します。だから彼は強者を光
?
95
支配される事を嫌うルフィはモリアと管理される者に腹を立てたが、ブルックは静か
に反論した。すると〝麦わらの一味〟の周囲を取り囲むように海賊達が現れ、リーダー
格らしき女性〝求婚〟のローラが口を開いた。
﹁話は聞かせて貰ったよ。私達はずっとこの森でチャンスを待ち続けた。私達にも協力
させて。﹂
ルフィ達はローラの頼みを受け入れる返事をすると森の奥から何者かの足音が森へ
響くと同時に薄暗い森へ威厳のある低い声が轟いた
絶対的で唯一のルールだろ。﹂
﹁実にくだらぬ...。海賊なら海賊らしく力強くで奪いに来い。それがこの海における
海賊としての格 1
96
海賊としての格 2
﹁モリアだァァァァァァッッッ
﹂
﹂
俺はサシでも全員でも構わない。﹂
骨の影を返せッッ
﹁さぁ...俺を倒したいのだろう
﹁おめぇがモリアか⁉
!
る男だと肌身に感じさせた。
は恐怖に満ちた顔をし、怯んだ。本能が彼を恐れているのだ。これが世界に名を轟かせ
〝王下七武海〟ゲッコー・モリアが森の中へ現れると麦わらの一味を取り巻く海賊達
!!!!
モ
リ
ア
﹁ルフィ、こいつはやべぇ...。お前はブルックと先に地下へ行け。バケモノは俺達で押
七武海を落とせる気になっているのかと思ったからである
銃や刀を持った寄せ集めの集団を見てモリアは嘲る様な笑みを浮かべた。烏合の衆で
モ リ ア が 冷 た く 言 い 放 つ と 一 斉 に 〝 麦 わ ら の 一 味 〟 や 海 賊 達 は 戦 闘 態 勢 に 入 っ た。
と決めている。﹂
﹁勘違いするなよ。俺は防衛とモーガニア以外の敵には極力こちらからは手を出さない
あげた。だがモリアは身長差からルフィを見下す様に見て言い返した。
モリアが余裕の表情でかかってくるように言うとルフィがモリアの前へ現れて声を
?
?
97
行くぞブルック。﹂
さえておく。﹂
﹁わかった
ようにルフィを追いかけた。
﹁無茶です。あの方達は死にますよ
クラス
クラス
﹁大丈夫だ。ゾロが任せろって言ったんだ。地下はどっから入るんだ
!
﹂
一歩も動かずに貴様ら全員を捻り潰せる。﹂
﹂
﹁内乱を起こすなど、無駄な事だが...。一つ格というものを教えてやる。俺はここから
バタするのは彼らに対する侮辱だと思い、地下へと向かった。
ルフィが仲間を信じているから心配をしていないのだとブルックが理解するとジタ
?
﹂
ダメージを与えた方が得策だと考えたのだ。ルフィは走り出したがブルックは慌てる
したのだ。反乱を誘導する事を悟られた可能性が高い以上、反乱を起こさせて間接的な
ロビンの言う通り正面からやりあえば全滅という言葉が現実味を帯びている事を理解
ゾロはモリアからクロコダイル 級でなくミホーク 級であると初見で感じた。そして
!
?
彼らに危機感を抱くほどモリアは落ちぶれてはいなかった。
理するまでもないと判断した雑魚をそのまま放流したツケが回ってきたなと感じたが、
モリアが多くの強者達を管理しているのは記憶の改竄を行っているからだった。管
﹁舐めてんのか
海賊としての格 2
98
ブラック・ブレット
〝 影 血 閃 〟﹂
ブラック・ブレット
﹁いや...正当な評価だ。それとも貴様らなど取るに足らないと言った方がわかりやす
いた。
﹁来ぬのか
***
地下
ブルックは7年前に見つけた地下へ侵入できる穴の元へ行き、ルフィと共に中へ入っ
せめて俺に触れられるとよいな。﹂
〟と僅かな雑兵のみとなった。ナミ、ウソップ、チョッパーは震えてモリアに恐怖して
のように斬り裂いた。刀や銃は斬り裂かれ倒れた。もやは残ったのは〝麦わらの一味
の形を楯のように変えて軽く防いだ。今度は限りなく細くし糸を使ってドフラミンゴ
とムチのように海賊達を吹き飛ばした。そしてモリアへ向けて次々と銃を撃ったが影
リアが手を動かすと太い無数の鞭のようにしなる植物のように形を変え、手を横へ振る
モリアが〝 影 血 閃 〟とつぶやくとモリアの周囲に自在に揺らめく影が現れた。モ
かったか
?
?
99
た。そしてしばらく進んだ。薄暗い中一定の間隔で蝋燭が灯され、まるで商店街のよう
なモノが並んでいたが、店番などおらず自由に持って行っていいようだった。ルフィは
何度か摘み食いをしようとしたが、ブルックはそれを認めず先へ進んだ。すると騒がし
こんな所に閉じ込められてていいのか⁉
﹂
い酒場があったのでそこへ入った。すると皆が陽気に酒盛りを楽しんでいた。その様
子を見た無言でルフィは声をあげた。
﹁何でおめぇらは自由を望まねぇんだ
?
﹁あぁ...新入りか
何言ってんだよ。俺たちゃスラム街で落ちぶれてた所をモリア様
が驚いたような顔をしが、追いついた口調で話しかけた。
ルフィが大声をあげると騒がしかった酒場はシンとなった。そして酒場にいた一人
!!!!
?
は影を渡したんだ。﹂
﹂
に拾って貰ったんだ。人並みの生活を保障し、与えてくれた。だからその代わりに俺ら
?
ここにいる奴ら全員か
?
﹁...,﹂
﹁なんだよブルック。案外モリアっていいヤツじゃねぇか。﹂
緩めた。むろん記憶を改竄していることを知らないからこそ辿り着いた結果である。
ルフィは管理されている人達からモリアに感謝しているのだと知ると強張った顔を
﹁大抵はそうだな。みんなモリア様にゃ感謝してる。﹂
﹁ん
海賊としての格 2
100
﹁ブルック
﹂
思い出したらしく声をあげた。
﹁貴方はスラム街の人間じゃない
クソ骸骨にクソ麦わら。この老いぼれに何の用だ
七武海の一人を討ち取った大剣豪ですよね⁉
﹁俺を知ってるのか
﹂
?
﹂
海賊〝コナー・ナルキス〟4億7000万の男。 ルフィがブルックへ声をかけるとブルックは一人の老人をジッと見ていた。そして
?
あげた
!
﹂
?
ブルックは自身のしる海賊達を見つけて声をあげた。当時腕にそこまでの覚えはな
﹁じゃあはこいつらは海賊なのか⁉
4000万の〝瞬弾〟のレミン。彼らは私世代の最高位の海賊達ですよ。﹂
﹁違います...。はっ
あそこにいるのは〝3億ベリー〟金棒〟のデルコフ、それに2億
周囲の人間やルフィがただの老人だと言うがブルックは周囲を見回すと次々に声を
﹁そうだぞブルック。これはただのじぃさんだ。﹂
さんだ。﹂
﹁おいおい何言ってんだよ。確かにコナーじぃさんだが、ただの酒好きな口の悪ぃじい
と呼ばれた大剣豪のはずだったのにコナーは何のことかは分からないようだった。
ブルックは老人を見て声をあげた。見覚えのある人間がいたのだ。かつて〝海割〟
?
?
!
101
かったブルック達が警戒していた海賊達が軒並み捕らえられている。これがモリアと
いう男の強さを物語っていた。
﹂
住人だと...。﹂
﹁しかも揃いに揃って悪名を轟かせた強者ばかり...。でもどうして自分をスラム街の
﹁何でだ
け怒りに任せて吠えた
。﹂
かぬ俺に触れる事もできぬネズミらと同じレベルのネズミに過ぎぬが。﹂
﹁ほ ぅ...。野 獣 の 如 き 男 だ...。だ が 所 詮 ネ ズ ミ 程 度 の モ ノ...。ま ぁ 一 歩 た り と も 動
たからである
を見た。エニエスロビーを落とした〝麦わらのルフィ〟がこの程度だとは思わなかっ
森の中で掠れかけたルフィの声を聞いたモリアはニヤッと笑ってルフィのいる方角
!!!!
竄し、己の都合のいいように生かしてあるだけなのだ。そして息をすぅと吸うと天へ向
なのは支配をする事だ。そしてそれがより非道であると更に嫌う。モリアは記憶を改
その言葉を聞いた瞬間ルフィはこめかみに筋を入れ、目は鋭くなった。ルフィが嫌い
れません。意思を殺し自らに都合よく生きながらせるために...。﹂
﹁恐らく悪魔の実の力...。もしかしたら彼らの記憶を改竄して、支配しているのかもし
?
﹁モリアァァァァァァッッッッッッッッッ
海賊としての格 2
102
103
モリアが嘲るように影の大樹の実のように吊るされ気絶している麦わらの一味とそ
の他の海賊達を見ていた。むろん一歩も動かずに...
﹂
海賊としての格 3
仲間を見捨てれば長生きする可能性はあったのにな。まぁもう逃がさんが
﹁モリアッッッッッッ
﹁どうした
!!!!
﹁仲 間 は 返 し て も ら う ‼
‼
お前は俺の嫌いな奴らによく似ている‼
?
ルー
キー
﹂
!!!!
﹁てめぇも一端の海賊ならわかんだろ‼
お 前 の 平
﹂
この世とは強者のエゴにより世界は動く‼
モリアはルフィの覚悟を込めた言葉を戯言だと嘲笑いつつ大声をあげた。
くだらねぇな麦わら
!!!!
守る為なら命を軽々捨てる事ができるような男なのだ。だがモリアはそれを嘲笑った。
ルフィがモリアへ問いかけた。ルフィの最も恐れるのは仲間を失う事であり、仲間を
和ってモンは人の自由を奪ってまで、守らなくちゃなんねぇモンなのか
?
!!!!
?
リアの影の植物の監獄に囚われている仲間を見て声をあげた。
ルフィがブルックと共に森へ戻ってくるとモリアは向かって走ってきた。そしてモ
な...。世界の平和の為に死ぬがいい。﹂
?
﹁フフフ...ハァッハッハッハッハッハ
海賊としての格 3
104
?
世界だッ
現実だッ
答えは強者だ。世界破壊だろうが世界平和だろうが所詮人のエゴだ...
悪を管理し戦力とする俺と、悪を解放し自由とするお前じゃどちらが未来の現実と
なる
欲
望
この世とはエゴだ...。﹂
﹁〝ギア2〟 〝ゴムゴムのォォ jetピストル〟
に過ぎないのだ。
﹂
望
リアからしてみれば〝世界を滅ぼしたい〟、〝世界を平和にしたい〟も所詮は人のエゴ
欲
れるのだ。食事、行動、願望、道徳、倫理...この世の全てが欲望だと言い放った。モ
モリアはこの世の理を語った。人とは何かをしたい、やりたい。それだけで全てを語
!
これが歴史だッ
!
気に入らねぇなら潰しに来い...
!
?
?
た。
﹂
!
︵これは避けられんな...。一歩も動かぬと宣言した以上カッコがつかぬからな。まぁ
﹁〝ギア3〟 ゴムゴムのォォ 巨 人 の 銃
ギガント・ピストル
アはルフィを挑発的な瞳で見据えたが、ルフィは親指を噛んで空気を入れて膨らませ
身体から蒸気が溢れ出したルフィに全く動じず、軽々身体を仰け反らせて躱したモリ
!
105
捕らえた奴らはもはや動けまい...。︶
モリアは植物の監獄の全ての影をモリアの目の前に移動させ、盾に変化させ軽々防い
だ。すると空気が抜けたのかルフィの身体が萎んで小さくなった。そしてモリアはつ
やっ...やべぇ‼
﹂
まらなそうな顔をし、盾を数本の影の槍にした。
﹁ゲェ
?
﹂
は逃れられないのは明らかだった。ルフィへ影の槍が貫く寸前に邪魔が入った。
声の高くなり、子供のように小さくなったルフィは逃げようとしたがモリアの影から
!
!
そして〝麦わら一味〟がモリアへ反撃をせんと向かってきた。
モリアが麦わら一味を軽んじていたという事になる。
つもりが戦闘の意志を挫けない程度のダメージしか与えられなかったようだ。つまり
獄にしていたモノを盾にしたため解放されたのだ。モリアとしては確実に失神させた
り裂けなかった事を不満気な顔をしていた。〝麦わら一味〟は〝影血閃〟で植物の監
飛ぶ斬撃がモリアの槍の影を吹き飛ばした。するとゾロは刀を二本抜いていたが斬
﹁〝七十二煩悩鳳〟
海賊としての格 3
106
海賊としての格 4
いる。感謝される事はあるが、それはあくまでも副産物であり、どう捉えるかは千差万
動くが自分を一海賊である事を認めているし、それが自分の自己満足である事も認めて
モリアは常に自分を客観的な位置で見る事ができる人間である。世界の平和の為に
ぬと知れ...。﹂
﹁現実を見据えぬのは愚か者のすることだ。だが非を認めたからと言って未来は変わら
の片鱗を感じた。するとモリアは小さく鼻で笑うと口を開いた。
フランキーは顎を摩りながら口に出した。そしてモリアという人物は敵だが人格者
﹁案外律儀なんだな...。﹂
志を残す程度のダメージと恐怖しか与えきれなかったと感じたからである。
えていたため植物の監獄をルフィの攻撃の為に盾に変えたことの判断ミスと戦闘の意
いと斬り捨てていたのは誤りだと思ったのだ。第一モリアは完全に意識を奪ったと考
モリアは素直に自分の非を認めた。〝麦わら一味〟を取るに足らない、一歩も動かな
﹁...流石に過小評価をしていたのは認めよう。前言撤回だ。﹂
107
私から行かせて頂きますよ。〝鼻唄三丁矢筈...ッ⁉
別、十人十色であるのでそれを誇りに思う事など微塵も無かった。
﹁ヨホホホ
﹂
?
フランバージュ・ショット
〝火の鳥星 ファイアーバード〟ッ。﹂
本倒しそのままグッタリとした。
回し蹴りに切り替えてブルックの腹を蹴飛ばした。ブルックは吹き飛ぶと森の木を数
のパワーに押されまるで2メートル程のクレーターの様な穴が空いた。そして素早く
モリアはブルックの刃を掴んだままサンジを力任せに地面に叩きつけた。地面は彼
﹁身体能力は中々...。﹂
脛の部分を掴まれた。
た。彼はブルックの背後から人体の急所である首筋を狙ったが、モリアに炎の届かない
地面に脚をめり込ませ回転する事により生じる炎を纏った蹴りをモリアへ繰り出し
﹁〝 悪 魔 風 脚 〟〝 画 竜 点 睛 〟。﹂
ディアブルジャンブ
んだ。ブルックは彼の指の力ですら解く事ができない事に驚いた。
リアに通じるはずもなかった。モリアは左手の人差し指と親指で仕込み杖の剣先を掴
ある王国の護衛団のボスである。この海を統べる七つの怪物の一人を担うゲッコー・モ
七武海
彼は元々居合術に優れとある王国の護衛戦団団長を任されていた。だがそれは所詮と
〝麦わらの一味〟を巻き込んだと自覚しているブルックがモリアへ戦闘を仕掛けた。
!
﹁能力なしでこの強さかよ
!
海賊としての格 4
108
﹁〝サンダーボルト・テンポ〟ッ
﹂
〝 風 来 砲 〟﹂
クー・ド・ヴァン
考えたモリアだったが、真横を振り返った。
る
えた軽い衝撃で脳震盪を起こし意識を失い、ゆっくりと倒れた。次はロビンを潰すかと
や
に驚いた。そしてロビンの方を振り返った。するとその背後で二人の脳はモリアの与
いるサンジを地面に無数に生やした手で避難させていたロビンは彼の身体能力の高さ
の間へ移動すると二人の顎を撫でるように軽く力を込めて弾いた。少し離れて倒れて
りだった。ウソップとナミが遠距離で炎と雷の攻撃を仕掛けるがモリアは一瞬で二人
実力差があるため覇気など一度も使ってなかった。だから彼は体術で終わらせるつも
てはこの一味の全員をゾンビにする為、出来る限り損傷しないようにしたかった。無論
ウソップはモリアのパワーに驚いたがモリアはかなり加減をしていた。モリアとし
!
﹁硬いな...。﹂
聞いていたのでこの程度の力加減が最適だった。無論一撃で意識を刈り取られた。
影響を極力避け、そして腹を少し強めに殴った。アブサロムからサイボーグである事を
間を稼ごうとしたのだ。だがモリアはそんな事を見抜き素早く身体を少し跼めて風の
ロビンが動けないサンジを移動させているのを止めてはならないと考え、この攻撃で時
フ ラ ン キ ー の 両 の 腕 が 大 き く 膨 ら む と モ リ ア へ 強 力 な 突 風 で 吹 き 飛 ば そ う と し た。
﹁吹き飛びやがれ
!
109
アームポイント
こくてい
ロゼオミチエーリ
﹁〝腕力強化〟。〝刻蹄〟〝 桜 吹 雪 〟。﹂
モリアがフランキーの硬度を感じつぶやくとフランキーの隣にいたチョッパーが何
やら小さい丸薬を噛むと腕の筋肉が発達し、モリアへ攻撃を仕掛けたがモリアは体勢を
セイスフルール
崩しながらも蹴りを加えてチョッパーを吹き飛ばさせた。
﹁〝六輪咲き〟 。﹂
﹁遅ぇ...。﹂
サンジを避難させたロビンがモリアへ関節技をかけようと六本の腕を生やした。関
節技を決めようと手を伸ばしモリアの身体へ触れようとした瞬間、ロビンは掌底を腹に
...ッ⁉
﹂
打ち込まれた。気絶した事により能力の手が消えると背後から研ぎ澄まされた殺気を
感じた。
﹁〝二刀流 羅生門ッ
?
俺の仲間に手をだすんじゃ...﹃ボゴン‼
﹄
蹴りあげた。ゾロはかろうじてモリアの攻撃を予測し激しく歯軋りをして耐えようと
前にモリアが現れて自分の手首を押さえ込んでいた。目を見開くと同時にモリアは顎
ゾロがモリアへ向けて攻撃を仕掛けたが、刀を抜く前に両手が止まった。見ると目の
!
?
したがゆっくりと倒れた。
!!!!
身体が元に戻ったルフィがやられて倒れた仲間を見て吼えたがモリアが今更相手に
﹁お前ッッッッッ
海賊としての格 4
110
するわけはなく、覇気を纏ってルフィの顔を殴った。ルフィの意識が一撃で刈り取られ
ると地面に叩きつけられ、サンジの時にできたクレーターの倍以上の広さと深さはある
と思われる程の穴が空いた。
﹁〝一刀流 獅子歌々〟ッ
﹂
に刀を抜きかけているゾロがいた。
モリアがつぶやくと背後から本の微かな気配を感じ、背後を素早く振り返ると目の前
る海賊には思えぬ...。まだ若い...。﹂
﹁〝エニエスロビー〟を落とした海賊もこの程度か...。とても〝新世界〟で生き残れ
111
!
﹂
海賊としての格 5
﹁〝一刀流 獅子歌歌〟ッ
﹁...ッ
身体が動かねぇ
﹂
﹁かなりの筋だ...。間合いに入るまでの集中力は凄まじい...。﹂
が興味深そうな顔をしている。
感じれない程度の気配の消し具合は見事だった。モリアの顔色には余裕はなくなった
モリアがゾロの間合いに入っている事を理解し、突然目を鋭めた。自分が微かにしか
!
!
の間の影へ向けて針を放ったのだ。
ない。ゾロの足元の影には黒い針が刺さっていた。ゾロがモリアを斬り裂く前に両脚
ゾロは刀を半分程抜き、いつでもモリアを斬り裂く事ができるが身体が一ミリも動け
!
いたら死んでいたな。︶
︵凄まじい腕だ。奴の殺気は微塵も感じなかった...。覇気と能力がなく察知が遅れて
海賊としての格 5
112
﹂
?
に大声をあげた。
縫 〟は全身に覇気を込めれば軽く拘束は免れる。だがそれはモ
やめろッ
やめろォォォ
﹂
﹂
!!!!
﹂
!!!!
モリアが拘束されて一歩も動けぬゾロの願いを軽く突っぱねて見下すように冷たく
﹁喚くなよ...。俺がお前らを生かすメリットがない...。﹂
﹁頼む待ってくれ
らく立ち上がることは不可能であると思われた。
から地面へ叩きつけられた。地面がひび割れる程の衝撃を受けたサンジはもはやしば
リアを攻撃しようとしたが、軽く躱され、そして顔を鷲掴みにされるとそのまま後頭部
するとロビンに避難させられ休んでいたサンジが復活し、脚に炎を纏わせた蹴りでモ
!!!!
﹁クソッォォ
!!!!
﹁俺の仲間に手ぇ出すんじゃねぇよッ
!!!!
してモリアは倒れているルフィへ止めを刺そうとするとゾロはモリアへ懇願するよう
にはそれ以上の覇気を込めるか覇気を込めた力を上回る程の力があれば問題ない。そ
リアの放つ針に覇気を込めなければの話である。仮に覇気を込めた場合に拘束を解く
モリアの〝 影
シャドウ・ストリング
﹁まだ貴様じゃ影の拘束は解けない。そこで船長の死に様を目に焼き付けておけ。﹂
﹁おめぇ...なにをした
113
見た。
﹁...どうしてもルフィの首をとるのか
﹂
ウオォォォッッッッ...﹃パリン
﹁あぁ...。正確には〝麦わらの一味〟の首だがな。﹂
﹁首はやるよ。だが俺の首だけだッ
﹄﹂
!!!
?
﹂
?
を取るのは自分だけにして欲しいと頼んだ。
ゾロは地面に頭を叩きつける様に土下座をすると〝麦わらの一味〟に手を出さず、首
になる男だ。ここで死なせるわけにはいかねぇ﹂
﹁未来の世界最強の剣士の首を取れると思えば不足はねぇはずだ...。ルフィは海賊王
﹁ほぅ...逃れたか。だが貴様は何を言ってる
ンと砕け散るとモリアの目の前へひざまづいた。
ゾロは全身に異常な程力を込めるとモリアの拘束から抜け出した。そして針がパリ
!
らは仲間の為に落としたと聞いているため案外危険因子ではないとも考えられる。た
ない。そして世界の均衡を崩しかけたのはクロコダイルの件とエニエスロビー。これ
︵...アブサロムとギルノスの情報によれば〝麦わらの一味〟が海賊行為を行った事は
がある。まぁ放棄するかどうかは別の話だが。﹂
﹁二度言わせるな。俺にはお前の首だけでなく、ここで倒れている敗者の首を取る権利
海賊としての格 5
114
だ何をしてかすか分からないという危険があるのも事実だ...。︶
﹁後生だ...。﹂
﹂
ゾロの覚悟にモリアは少し眉毛をピクッとさせるとゾロの目の前に跼み手のひらを
一体何のメリットを与えてくれる
ゾロの頬へ添えて顔を上げさせた。
﹁ならばお前は俺に何をくれる
?
させられる。貴様にチャンスをやろう...。俺のゾンビ兵に剣士のお前に相応しい侍が
﹁クックック...気に入った...。揺るがぬ意志程美しく逞しいモノは存在せぬと実感
ゾロの瞳に迷いは見られない。するとモリアは突然笑い始めた。
モリアはゾロの揺るがぬ瞳をジッと睨みつけ覇気を解放させて彼を威圧した。だが
﹁何なりと...。﹂
?
115
いる...。そいつにサシで勝ったら船長の首、そしておめぇらの首も取らない。そして
尚この海域での安全の保障を約束しよう。無論影も返してやる。ただし負けたら反乱
因子ごと皆殺しだ。管理してないゴミなどまた掻き集めればいいからな。﹂
﹁恩にきる...。﹂
ゾロが静かにモリアからチャンスを貰った事へ感謝した。彼の面持ちからは自分が
破れる事など信じないと思わせる程の気迫を放っていた。﹃良き眼だ...。﹄とつぶやく
と息をスゥと吸うと口を開いた。
﹂
せられた肉体に白と黒の着物、そして頭には丁髷をした倭国の武人の格好をしていた。
カ ツ ン...カ ツ ン...と 響 か せ な が ら 歩 い て き た。容 姿 は ホ グ バ ッ ク に よ っ て 改 造 さ
スリラーバークへ響き渡る程の声が轟くと数分後一人のゾンビがゆっくりと下駄を
﹁〝リューマ〟ッ
!!!!
﹁さぁ斬りあえ‼
勝てば全てを守り、負ければ全てを失う。リタイア不可能な無慈
様に命じるとリューマは了承し、日本刀を抜くと刃先は黒く艶めいた。
リューマは不機嫌気味にモリアに何の用があるかを尋ねた。そしてゾロと斬り合う
﹁了解...。﹂
﹁殺し合いの時間だ。この男を殺せ...。﹂
﹁何の用だ...クソモリア。﹂
海賊としての格 5
116
?
117
殺 し 合 い
悲で非人道的なゲーム
海賊らしくていいじゃねぇか
!
﹂
!!!!
海賊としての格 6
﹁強ぇ⋮。﹂
ゾロは身体のあちこちに浅い切り傷ができ、血がゆっくりと垂れていた。それに反し
てリューマの着物は一閃の切り傷も付いていなかった。致命傷を与えきれない事から
二人の力量は僅差だが剣士にとってはその差が命取りになるのだ。だがゾロは仲間と
その他の海賊達の命が己の剣にかかっているというのにどこかこの状況を楽しんでい
るようだった。
だが落ちたモノだな。﹂
コナーはかつてモリアが生け捕りにした〝新世界〟の強者の一人である。彼は彼を
︵やはりリューマの肉体に〝覇気〟のない影はダメだ。︶
精神
﹁〝 海 割 〟 コ ナ ー・ナ ル キ ス...。そ の 者 の 全 盛 期 の 剣 は 海 を も 斬 り 裂 い た と い う...。
海賊としての格 6
118
倒し捕らえたところまでは良かったものの自分の限界を感じ、〝自分を信じられなく
なった〟のか覇気が使えなくなってしまったのだ。そもそもゾンビにおける影とは技、
性格などの特徴を表すモノである。むろん覇気も影の力に委ねられている。そして剣
士だからリューマの影にしようと思ったのが打算であると再認識した
︵...ック⁉
﹂
スキがねぇ...だったら...︶
﹁〝斬波天鐘〟﹂
﹁〝一刀流 飛竜火焔〟ッ
リューマがそうつぶやくと着物が大きく斜めに裂け、ホグバックに改造された強靭な
﹁クックック...生意気なクソガキだ。﹂
そのままゆっくりと膝を着いて口から血を吐いた。
二 人 の 刃 が 交 わ り 剣 を 同 時 に 鞘 に 収 め た。数 秒 後 ゾ ロ の 腹 が 裂 け 血 が 飛 び 散 っ た。
!!!!
?
ると素早くゾロへ間合いを詰めた。
いが影は当人の性格の影響を出るためそう言ったのだろう。リューマは刀に手を添え
リューマは黒刀を鞘に収めそう言い放った。ゾンビである以上老体などとは関係無
体にゃ応えちまう。﹂
﹁まぁそこそこはやるようだが、若い...。面倒くせぇからさっさと終わらせようぜ。老
119
肉体にヒビが入ると同時に傷口が発火した。
﹁私が剣士に敗れるとはな...。私も老いたものだ。受け取れ...。〝秋水〟をその折れ
た刃の代わりにするがよい...。﹂
着物から引火し全身が燃え盛るリューマはゾロへゆっくりと歩み刀をゾロへ渡した。
彼はゾロが刀を三本使用する事やその内の一本が折れていることを見抜いていた。そ
して同時にリューマはゾロを気に入ったようだった。ゾロはリューマの技にどう足掻
いても捌けないと判断し〝避けなかった〟のだ。そして相打ち覚悟でゾロも技を撃ち
込みその結果彼は自分より力量が上のリューマに打ち勝ったのだ。
﹁はぁ...はぁ...。﹂
わせた者の影は全て返そう。﹂
﹁約束は守る。少なくとも俺が逃がしたって事はDクラス以下のはずだ。この場に居合
モリアがゆっくりと息を整えてえるゾロの元へ向かうと傷口を押さえながら息を整
えていた。そしてモリアはかなり細め糸にした〝影血閃〟でゾロの傷口に注ぎ込み傷
口を塞いだ。するとゾロはリューマから受け取った刀をモリアへ突き出した。
先の影の糸は傷を防いだだけ
だったらリューマの意志じゃねぇ。﹂
?
﹁いや...あと刀は持っていけ。貴様の戦利品であろう
に過ぎん。貴様の治療が先だ。﹂
?
﹁刀は返す。ゾンビの性格は〝影〟なんだろ
海賊としての格 6
120
ゾロはモリアに刀を返そうとした。ゾンビにおいて影は精神面を担うのだ。つまり
肉体のリューマの意志とは言い切れずリューマやモリアのモノである可能性が高いか
らである。モリアはゾロを右腕で抱え更に側に倒れているルフィを左腕で抱えると麦
わら帽子をまじまじと見た。
﹁ディルゴッ
倒れている者達を屋敷へ移動させろ。﹂
∼スリラーバーク∼
数時間後
***
て声をあげて部下へ命じた。約束では手を出さず安全を保障するとあったからである。
モリアはかつてシャンクスとの交流を少し思い出したがすぐに現実に戻った。そし
﹁了解したぜボス。﹂
!
︵この帽子...。あぁ...この子がシャンクスが言ってた子供か⋮。︶
121
モリアは城内のホールに先ほどの場に居合わせた者達を連れ影を返した後に食事や
治療を施した。そこまでは約束の範囲外であるが、それはゾロを気に入ったモリアの一
存である。ホールには豪華な食事が置いてあり大半はそれに貪り食っている。そして
完治しているはずのサンジや一部の海賊の男はペローナとリィディアナの看病をデレ
デレした様子で治療を望み、ペローナがツンツンした様子で拒むのを見てサンジや海賊
達にアルフレッドが悪態をついたりボコったりしている。
城内の一室にゾロを除いた一味が回復し集められたところでモリアが口を開いた。
﹂﹂﹂﹂
なにが目的か
ゾロは
﹁アラバスタやエニエスロビーの件は見逃してやる。緑色の剣士に感謝しろ...。﹂
﹁﹁﹁﹁ゾロ⁉
一味のメンバーが目を覚ますとモリアになぜ生かしたのか
?
と次々と質問攻めにしたがモリアは一味が集まってから答えるの一
?
点張りだったのだ。そしてモリアは約束の流れを話した
どこにいるのか
?
?
﹂
?
船医のチョッパーが大声をあげた。ホグバックは天才外科医としてその道で知らぬ
﹁ホグバックって...ドクトル・ホグバックか⁉
﹁奴は治療室にいる。船医のホグバックが治療しているから安心しろ。﹂
海賊としての格 6
122
者は無いと呼ばれる程の名声を得ている。
た。
リアが目線でペローナとアルフレッドに合図を送ると二人は無言で部屋から出て行っ
ら警告をするとモリアの幹部達がピクッと反応して同時に同じ方向を見た。そしてモ
モリアがそう説明をし、チョッパーから見学とかサインなどのワードを聞き流しなが
安全圏はこの海域だけだと思え...。﹂
﹁あぁ...。今は俺のクルーだ。それはさておき、これ以上は無闇に暴れるな。貴様らの
123
七武海の来襲 1
∼スリラーバーク海岸∼
﹂
﹁久しぶりの侵入者だと思って来てみたら...。七武海の〝くま〟じゃねぇか。戦争が
してぇなら今すぐにでもおっぱじめるかよ
アと同じ〝七武海〟の一人である〝バーソロミュー・くま〟だったのだ。ペローナはく
体、そして左手に聖書を持った男がいた。二人はすぐにこの男が誰かを理解した。モリ
ペローナがアルフレッドと共に侵入者の元へ急いで向かった。すると巨大で丸い身
?
﹂
まの狙いがわからぬ以上、挑発的な態度をとっていた。
﹁旅行をするならどこへ行きたい
七武海の来襲 1
124
?
﹂
くまは何気ない世間話のような質問を二人にぶつけるとアルフレッドはビクッとこ
根暗拗らせて中身までシケってんのかよ。クソオタク野郎がッ
めかみに筋を入れて口を開いた。
﹁あ
!
﹁ハッ
ペースに乗せられた‼
﹂
?
﹁下がってて...俺が先にやるよ。その代わり...
フの腕でペローナの進路を塞いだ。
いる状況を思い出した。ペローナがくまの前に行こうとするとアルフレッドがモフモ
アルフレッドがペローナに習って素直に答えた。するとペローナは自分の置かれて
!
﹁んじゃ俺はモリア様のいる所かペローナ様のいるところ。﹂
えた。するとアルフレッドはペローナの様子を見て口を開いた。
ペローナは頬を片手で押さえながらゴースト・プリンセスの名に相応しい旅行先を答
呪いの唄でも歌って過ごしたい。﹂
﹁でも...やっぱりバカンスなら。暗くて...湿ってて.
..怨念渦巻く古城のほとりで
レッドとは異なる態度をとっていた。
アルフレッドはくまの物静かな様子に悪態をついたが、隣にいるペローナはアルフ
?
125
倒したらニンジンと撫で撫でを所望する
﹂
﹁ホロホロホロ...構わねぇ。単純な戦闘スキルじゃお前の方が上だ。﹂
たのかペローナはご機嫌な顔で返事をした。
アルフレッドが真顔でくまを倒したご褒美をペローナに求めた。その様子に満足し
!
〝獣人化〟...。﹂
﹁OK...。んじゃ初めから飛ばしますか...
七武海の来襲 1
126
***
∼スリラーバーク∼
侵入者がくまであると知らぬモリア達は未だに部屋の中にいた。モリアは〝麦わら
俺の恩情と仲間の力に救われた命が腑に落ちぬか
の一味〟に質疑応答を終えると巨大な骨つき肉を大量に乗せた皿を床に置き、むすっと
して肉にかぶりついていた。
﹁ク ッ ク ッ ク...拗 ね て い る の か
﹂
た。
謝んなさい
﹂
!
モリアの旦那に礼を言え
﹂
!
﹁ほらルフィ
﹁そうだルフィ
!
!
ソップ、チョッパーがルフィの元へ急いで移動をしてナミがルフィの頭を押さえつけ
モリアはルフィを揶揄うように尋ねるがルフィは返事をしなかった。するとナミ、ウ
?
?
127
﹁ルフィ∼...。俺はまだ死にたくねぇぞ∼
俺は謝らねぇし
認めねぇし
﹂
許さねぇ
納得もできねぇ
!
﹂
三人は約束を守ると言ったモリアの発言を鵜呑みにせずに怯えているのかモリアの
!
!
!
機嫌を損ねぬ様にしたいようだった。
﹁うるせぇ
!
アのやり方が納得できぬ様だった。
﹁ならばなぜ食事にありついている
それになぜ敵視する男を倒しにかからん
﹂
?
俺はいつか強くなってお前をぶっ飛ばす
﹂
!!!!
だろう。その事を時間と共に思い出し、単純な頭なりにじっくりと考えたのだろう。
達に勝利したからであり、敗れていればこんな仲間だけでなく自分の命をも失っていた
分の自由や仲間へ手を出した者達を倒してきた。今この状況にあるのは自分がその者
ルフィは戦闘前のモリアの言葉がずっと引っかかっていた様だ。ルフィは今まで自
﹁ほぅ...潔いな。﹂
メェに勝てねぇってのも...。﹂
﹁よ く わ か ん ね ぇ け ど...。お 前 が 間 違 っ て な い っ て の は わ か る。そ れ に 今 の 俺 が オ
開いた
するとモリアは静かにルフィへ問いかけた。するとルフィは突然静かになると口を
?
ルフィが軽く力を入れて三人の拘束から逃れると声をあげた。やはりルフィはモリ
!
﹁だけど認めねぇ‼
?
七武海の来襲 1
128
﹁﹁﹁ルフィ
﹂﹂﹂
﹂﹂﹂
?
た。
このバカはッ
﹂
によりモリアを警戒し、離れていたルフィとトリオ以外は少しモリアの生き方を認め
モリアが海賊の先輩として麦わらの一味に海賊としての在り方を説いた。この言葉
ねぇモンなんだ。﹂
守るには力がなくちゃいけねぇ...。こんな簡単な事は自由じゃ無くならねぇとわから
﹁そ れ で い い...。俺 達 は 海 賊 な ん だ。い つ で も 自 由 に 生 き れ ば い い。た だ そ の 自 由 を
今まであった者の中で最強の敵だったモリアからは想像もつかぬ様子だった。
ご機嫌そうなモリアが三人にルフィを解放してやる様に言った。その様子は先ほど
﹁﹁﹁へ
﹁クックック...放してやれ。﹂
全力を尽くしていた。だが三人の心情とは裏腹にモリアは突然笑い始めた。
ウソップはルフィの上に乗りかかりながらモリアへ向けて必死に機嫌を損ねぬ様に
!!!!
ないのはわかっているが何もせずにはいられない様だ。
フィを抑え込もうとした。絶対に自分の信念は曲げず嘘をつけないルフィを抑え込め
ルフィがモリアのやり方を認めぬと盛大に宣言すると再び胡麻擦りトリオは再びル
!!!!
﹁すみません旦那ッ‼
?
129
客
人
﹂
いつか自分が勝つと宣戦布告をした。するとモリアは笑みを浮かべると口を開いた。
ルフィが真剣な表情で自分では足元にも及ばぬ事を見せつけられたモリアに向けて
﹁今日は負けたけど...俺はいつかお前より強くなって海賊王になる
!!!!
らん。俺が戻るまでこの城からは決して出るでないぞ。﹂
﹁クックック...再戦の日を楽しみにしているぞ。俺は〝侵入者〟を迎えに行かねばな
七武海の来襲 1
130
七武海の来襲 2
∼スリラーバーク∼
んじゃ始めようか...。﹂
﹁正解。俺は〝ネコネコの実 ︿モデル﹀サーベルタイガー〟を食べた...
﹁〝古代種〟か...。﹂
肉食獣が半分程混じったようだった。
牙がギュッと三日月型に伸びた。可愛らしい草食動物のようなアルフレッドに獰猛な
アルフレッドがそう呟くと身体は黄金色の毛が生え、更に上半身の筋肉が発達し鋭い
﹁〝獣人化〟...。﹂
︿海岸﹀
131
アルフレッドが地面を後ろ脚で力強く蹴り、くまとの間合いを詰めようとした瞬間に
身体を白いゴーストが身体をすり抜けた。
﹂
アルフレッドは跪き途轍もなくネガティヴになった。これはペローナの出したゴー
﹁水虫のおっさんに踏みつけられた最高級ヘチマになりたい...。﹂
何度言わせりゃわかんだ
ストによるもので防御不可避の精神攻撃である。
﹁...その姿は可愛くねぇ
!!!!
﹂
だって案外この能力はパワーは強いけど顎の力と脚力は意外と
レッドの獣人化が余り好きではない様だった。
ペローナはプンスカしてアルフレッドに獣人化をやめる様に叱った。彼女はアルフ
!!!!
だからミンクの跳躍力とスピードが必要なの
﹁しょうがないじゃん
弱いんだよ
!
!
う...
滅した事により小型の動物を狙ったが脚力の弱さ故捕らえる事ができず餓死したとい
一種のマンモスを食料とした肉食獣であるのだ。ただマンモスが気候変動の影響で絶
り、強靭な筋力を誇った。一説によればサーベルタイガーは唯一古代で最強と呼ばれる
ガーは顎と脚力は弱かったが現在のライオンやトラなどより遥かに前脚が発達してお
アルフレッドはペローナに反論をした。確かに生物学者の話によればサーベルタイ
!
﹁ホロホロホロ...下がってな。そもそも私の能力じゃイチコロだ。﹂
七武海の来襲 2
132
***
数分後
モリアはペローナとアルフレッドの二人が侵入者を片付けるのに手間取っていると
思い、侵入者のいる海岸へ歩いていた。見聞色の覇気で気配を探ると巨大な人間がペ
﹂
ローナを手の平で叩くとペローナの気配が一瞬で消えた。モリアはその瞬間に海岸の
影へ一瞬で移動をした。
﹁クソがァァァァァァァッッッッッ
?
ていた。
﹁ッグ⁉
...。強いな。﹂
た。くまの服だけでなく肉体が深く斬り裂かれ何やら機械がビリビリと故障を起こし
出して武装色の硬化をし、更にミンクの特性の電気を纏いくまを思いっきり斬り裂い
がアルフレッドはニヤッと笑うと身体を元に戻し小さくなり躱した。そして爪を突き
獣人化したアルフレッドはくまへ単調に突っ込んだ。くまは手の平で弾こうとした
!!!!
133
鉄
屑
﹁硬えな。サイボーグかよ。最低でもあと3発ブチ込んだら昇天させられるな。﹂
アルフレッドはじっくりとくまの身体を見聞色の覇気で観察した。すると全身が機
械に覆われていることから急所を確実に狙える部位か見当たらない事から3発で倒せ
ると予測した
だが俺には勝てん...﹂
その手に触れられずに闘えばいいだけのことだろうが
﹂
﹁...流 石 に 今 の 一 撃 を も ろ に 受 け た ら 死 ぬ な...。モ リ ア に は 強 力 な 部 下 が い る...。
﹁ホザけッ‼
!!!!
した。
てめぇ...俺の部下に何をしやがった⁉
﹂
?
た。今までスリラーバーグへくまが訪れた事はないため、モリアは彼が戦争を仕掛けに
覇気を剥き出しにしたモリアがかつてないほどブチ切れてもくまは全く動じなかっ
!!!!
ドが一瞬で消されたのを見た。そしてペローナも居ない事からくまにやられたと判断
アルフレッドの背後へくまが移動した時に海岸へついたモリアは確かにアルフレッ
を触れるとその場から消した。
ると手の平でくまは軽く弾き、そのまま素早く間合いを詰め体勢を崩したアルフレット
した。アルフレッドは素早く勘づき振り向くと同時に電撃を纏わせて斬り裂こうとす
アルフレッドが素早く突っ込むとくまが消えアルフレッドの背後へくまが瞬間移動
?
﹁〝くま〟ッッッッッ
七武海の来襲 2
134
来たのかと推察した。
﹁俺がここへ来たの...﹃なに勝手に話を進めてる
﹄
どこにいる
﹂
?
気はないのか反論をした。
﹁つまり俺の部下を弾き飛ばしたという事か
?
モリアが部下に手を出した以上くまを許す気はないと言い放つとくまは戦闘をする
球人間。ありとあらゆるモノを弾く能力だ。﹂
﹁...安心しろ。お前の部下達は無傷で無事だ。俺は〝ニキュニキュの実〟を食べた肉
変わらねぇだろ...。﹂
﹁幾ら俺の部下の過失で正当防衛だとしても...お前が俺の部下をやったという事実は
ていてもわかる程にモリアが怒りを覚えていた。動じぬくまにモリアは口を開いた。
くまが単調に語りだすとモリアが遮った。モリアは大分大人しくなったが、目を瞑っ
?
を表していた。
非礼を詫びた。非があれば素直に謝罪をできるのがモリアの人間としての器の大きさ
くまはモリアへ戦争をするつもりはないと言い、状況を説明するとモリアは部下らの
﹁そうか...。それは申し訳ない事をした。﹂
衛といったところだ。﹂
﹁戦闘の意志はない...。お前の部下達が早とちりをして俺に攻撃を仕掛けた。正当防
135
﹁二人とも〝シッケアール王国〟へ飛ばした。あいつらの希望通りに飛ばしたから旅行
をさせているとでも思えばいい。﹂
シッケアール王国が確かに〝偉大なる航路〟に存在する王国だという知識のあった
モリアは少し思考を研ぎ澄ました。確かにシッケアール王国はジメジメしていて薄暗
かったはず...、いかにもペローナが好きそうな場所である。そしてアルフレッドはペ
ローナのいる場所がいいとでも言ったのだろう。
事前に連絡でも寄越すのが筋だろうが。﹂
﹁...それならいい。お前が嘘をつく理由もメリットもねぇはずだ。とりあえず何の用
だ
﹂
?
まぁいい。〝麦わらの一味〟とは先日エニエスロビーを落
らの一味〟というワードを聞いたがモリアは顔色一つ変えなかった。
くまは淡々とモリアへの伝言係としてこの島へ来たという事を伝えた。また〝麦わ
るのか
﹁新たな七武海についてと強制召集の通達だ。一つ聞くが...〝麦わらの一味〟は来て
うと思った。
モリアはくまが部下達を飛ばす理由がないと考え、話を聞いてから部下達を戻させよ
?
?
いたが、見つからなかった。おそらくもうこの海域は抜けてるはずだろう。﹂
としたルーキーだったな。ログからしてこの海域を通る可能性があったから警戒して
﹁政府は何か仕掛ける気か
七武海の来襲 2
136
モリアは〝麦わらの一味〟がスリラーバークには来ていないと言った。くまは普段
のモーガニア、均衡を崩す危険のある海賊らを狩り続けているため疑うことなく信用し
た。
レ ター
くまが自分を弾いて消えるとモリアは振り返るとスリラーバークへ帰って行った。
なければ戻ってくる仕組みであるため、二人の生存を確かめる事にもなるのだ。そして
暇を与える。所用が片付いたら迎えに行く〟というモノである。むろん二人を見つけ
モリアは二匹のコウモリをシッケアール王国へ飛ばした。メッセージは〝しばし休
﹁了解したと伝えろ。その前に俺の部下へ伝言と無事を確認させて貰う。〝影便〟﹂
﹁そうか...。あと今すぐマリージョアへ向かうようにとの伝言だ。﹂
137
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼
*
∼スリラーバーク城内∼
めた。
﹁ナッ...ナミ⁉
バレたら殺されちまうかもしんねぇだぞ
﹂
!
ナミが盗みなどバレなければないいと言い放つとナミの真後ろにいたのだ。二人は
﹁そうだな...。バレなければ何もしていないのは事実だ。バレなければな...。﹂
﹁大丈夫よ。バレなきゃいいのよ。﹂
した。するとウソップが慌てて止めようとした。
ナミはモリアの机の引き出しから何やらゴーグルの様なモノを取り出し胸の間に隠
?
で部屋の中にいた。ウソップは訳がわからぬ様子だったが、ナミは部屋の中を物色し始
先ほど一味が集められ、モリアの部屋と思われるところでナミとウソップが二人きり
﹁筋のある情報じゃ...ここにある可能性が高いのよ。﹂
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼*
138
﹂
!!!!
ゆっくりとモリアの様子を見て叫んだ。
﹂﹁ギャァァッッ
!!!!
﹂﹂
?
金なら腐る程ある。トレジャーマークぐらいなど取るにたらん...。俺も存在を
?
﹂﹂
!!!!
産より多く持っているのだ。そのためいち海賊の宝の在り処など興味ないし、大して必
モリアは海賊達を狩るついでに宝を根こそぎ奪っているため、金などそこらの国家財
﹁﹁あっ...ありがとうございます
忘れていたぐらいだ。〝右手〟のもな。﹂
﹁ん
と思ったのだ。
部下に引き抜きたかったが、ゾロの決意は本物だったため、仲間に勧誘するだけ無駄だ
モリアはゾロという男に出会えた事を良く思っており大層気に入っていた。そして
いところだが、命を張る程の価値のある一味を抜けるつもりはないだろうからな。﹂
﹁やるよ...。ロロノアという男に出会えた礼という事にしよう。部下に向かい入れた
予想外の言葉にキョトンとする二人をよそにモリアは再びわかりやすく言い直した。
﹁﹁へ
﹁騒ぐな...。欲しいなら許可を得ろ。﹂
を開いた。
二人はお互いの手を合わせ顔色を青ざめさせている。モリアは両手で耳を塞ぐと口
﹁ヌォォォォッッ
139
エ ン ジ ェ ル・ テ ィ ア
要でもないのだ。二人は礼を言うとモリアの気が変わらぬ内に一目散に逃げ出した。
∼スリラーバーク広間∼
五分後
***
てもダメージはないため見逃してやったのだ。
モリアとしては興味なかったので一応記念として部屋に残してあったのだ。別に失っ
を殺すついでに盗んだ最高級品のダイアである。3億ベリー程の価値はあるらしいが、
〝神の落とし子〟とはモリアが民衆に悪政を強いていたとある独裁者気取りの海賊
エ ン ジ ェ ル・ テ ィ ア
盗んでやがる。ありゃ泥棒としての経験は長ぇはずだ。﹂
﹁クックック...生意気な女だ。俺の書斎の裏に保管してあった〝神の落とし子〟まで
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼*
140
﹁ナミ...どうだった
見つかった
﹂
?
じゃあ約束通りに...﹂
?
...ゾロの〝爪〟よ。寝てる時に少し削ったけど、気付かれなかったわ。﹂
!
リアの財宝についてダメ元で嗅ぎ回っていた時にローラから有益な情報がありそう
ナミは小さな小瓶に入った白い小さな爪の欠片をローラへ渡した。これはナミがモ
﹁もちろん
﹁くれたの⁉
示を出していた。そのことをナミに教えたのだ。
アが興味を示し﹃これは自分が預かっておく、他の財宝は金庫にぶち込んでこい﹄と指
キャプテン・ジョン〟の財宝の在り処を示すトレジャーマークだと知った。そしてモリ
すぐ側に隠れていたローラは二人の会話を盗み聞いていると悪名高い伝説の海賊〝
サロムが棺の中ならゴーグルのようなモノを取り出したのだ。二人をいち早く見つけ
の中でアブサロムが一つの棺を抱えて城へ向かっている途中にモリアと出会うと、アブ
ナミがモリアの部屋に忍び込んだのはローラから情報を得たからである。ある日、森
﹁えぇ...でもバレちゃったけど結局モリアがくれたわ。貴重な情報ありがとう。﹂
ら逃げ出したナミがヒソヒソと話していた。
酒を飲み交わしている男共を他所にローリング海賊団船長ローラとモリアの部屋か
?
141
だったためビブルカードを作る時に必要な爪を取引として要求したのだ。ローラはモ
リアから説明を受けた時にゾロの男気を耳にし、惚れたのだ。〝求婚〟の名を持つ彼女
だが心から人に惚れた事がなかったのでいつもの調子が出せなくなり、臆病になってし
私達は姉妹分よ
﹂
まったのだ。そこで心の用意が出来た時に再会出来るようにこっそり爪を取ってきて
∼スリラーバーク医療室∼
***
投合し、本当の姉妹のように仲がよくなった。
た。当初ナミはローラを利用しただけのつもりだったが、酒を酌み交わしたことで意気
ローラはゾロの爪の欠片が入った小瓶を受け取るとグラスに酒を注いでナミに渡し
!
欲しいと頼んだのだ。
!
﹁えっ...えぇ...。﹂
﹁ありがとうナミ
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼*
142
﹂
﹁フォスフォスフォス...この病気の患者はここをこうやって...。﹂
どうしてこんな発想ができるんだ⁉
?
﹂
?
ようだった。
﹂
﹁そりゃおめぇ天才だからよ。あっ
﹁食うぞ
プリン食うか
なので素直にホグバックを褒め称えた。これは自尊心の高いホグバックには心地よい
た。そして医術書を片手に教えていたのだ。チョッパーは正直で嘘をつけないタイプ
ゾンビの改造をする医務室とは別の医務室でホグバックはチョッパーと話をしてい
﹁すげぇな〝ドクトル〟
!
子に抗議をする様に声をあげた。
!!!!
た。ホグバックはシンドリーの影を可愛くお淑やかな女の子の影を入れて欲しかった
その一言にホグバックは反論できずにテンションをただ下りの中プリンを食べ始め
﹁ちょっとシンドリーちゃん。口が悪いよ。可愛いん﹃キメェんだよ。デブ野郎が
﹄
シンドリーはプリンを投げ置く様にテーブルに置いた。そしてホグバックはその様
﹁さっさと食えよクソ野郎...。﹂
持ってテーブルの前まで来た。
げ よ う と 思 っ た。す る と ホ グ バ ッ ク の 使 用 人 ゾ ン ビ の シ ン ド リ ー が 二 個 の プ リ ン を
ホグバックは胸を誇らしげな顔をし、冷蔵庫に残しておいたプリンをチョッパーにあ
!
!
143
が、モリアは一般人から影を奪うわけなかった。流石に男の海賊の影を入れるわけにも
いかず、止むを得ず女海賊の影を入れたのだ。お淑やかさなどとは無縁だが、第一人称
が俺になるよりかはマシだと割り切ってしまったのだ。
***
∼次の日∼
大海賊時代
モリアは〝麦わらの一味〟の出航の見送りをしていた。ホグバックの手により傷は
なら己と向き合え...さすれば道は現れるであろう。﹂
い...。絶え間なく流れる時と海の中で己の強さを疑わずただ突き進め...。叶わぬの
人権は与えられず、強き者は全てを手に入れる。貴様らが頂点に達つにはまだまだ弱
﹁〝麦わらの一味〟...強くなるがよい。この世とは強者の生き残る時代だ。弱き者に
︿スリラーバーク海岸﹀
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼*
144
完全に塞ぎ、チョッパーにその後の治療を任せたため命に別状はないと判断したため、
そして海賊王に俺はなる
﹂
出航を許可したのだ。そしてモリアは一味にたわむけの言葉を送った。
﹁あぁ...いつか俺達はお前を超えてやる
!!!!
そしてそれが許される程の強者になりし時、俺に挑み
!
ひ
げ
再
戦
が楽しみだ。それより〝あの男〟とのリベンジがあると思うと...
白
わる。その時代の狭間に敗北という味を知った〝麦わらの一味〟がどう成長するのか
﹁...これから世界を揺るがす〝戦争〟が起きる。どちらが勝とうとも時代は大きく変
り、これから何が起きるかを見抜いていた。そして静かに呟いた。
誰も居なくなった海岸でモリアは新たな七武海の情報と政府の緊急招集の理由を探
ローリング海賊団も出航しスリラーバークを出て行った。
モリアとルフィが言葉を交わすと船は出航し、やがて準備のできた影を奪われていた
に来い。海賊王としての器に足るかどうかを試してやる。﹂
﹁クックック...好きに生きろ
!
145
146
新たな世代と時代の歯車 *∼スリラーバーグ編終了∼*
血が滾る...。﹂
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼*
数日後
∼海軍本部∼
モ リ ア は 政 府 に 用 意 さ れ た 豪 華 な 一 人 部 屋 で 新 聞 を 読 ん で い る と 一 面 に シ ャ ボ ン
ディでの大事件が載っていた。ルフィが天竜人を殴り飛ばし人質にして立て籠もった
という...するとモリアは笑い始め、新聞を畳んで机に置いた。モリアは世界の均衡の
為に世界政府の命に従うが、天竜人は嫌いなのだ。むろんマリージョアをタイガーと共
に襲撃したのはこれが理由である。
﹁クックックッ...ルフィが〝ヒューマンショップ〟で天竜人を殴り飛ばしたのか。つ
147
くづく自分に素直である意味傍若無人な男だ...。ヤツは俺の助言など憶えておらぬだ
ろうな。まぁいい...天竜人もヒューマンショップもじきに潰す予定だったから俺と
してはどうでもいいことだが...。﹂
同日
***
た政府だとは思えん。︶
ど政府は危険な橋を渡るものだな。長年は〝白ひげ海賊団〟に対して慎重に接してい
い...。そんな事よりも戦争覚悟で〝白ひげ海賊団〟の二番隊隊長の公開処刑を行うな
生きていると推察される。まぁ...くまの能力なら可能だが、思いつく限りの動機がな
衝突。そして一味は全員行方不明となった。手配書と情報が取消されてないことから
︵その後の〝麦わらの一味〟はシャボンディ諸島で天竜人の呼んだ海軍大将〝黄猿〟と
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼*
148
∼アマゾンリリー∼
﹂
?
差を思い知らされたばかりだったのだ。
日前ルフィはモリアに海賊としての格を見せつけられ、更に黄猿、くま、戦桃丸に力の
ハンコックの口からモリアというワードが出てきてルフィは声をあげた。ほんの数
﹁モリアっ⁉
が一人おる。名を〝ゲッコー・モリア〟という...。﹂
﹁じ ゃ が...一 つ 言 わ ね ば な ら ぬ 事 が あ る。ル フ ィ...。七 武 海 に 妾 よ り 遥 か に 強 い 男
了承した。
事をハンコックに話し、インペルダウンまで自分を送ってくれる様に頼んだ結果彼女は
ろ惚れたのだ。そしてインペルダウンに収監されたポートガス・D・エースが兄である
だ。そして天竜人を殴り飛ばした事件を耳にし、ルフィに天竜人の奴隷だと語ったとこ
あげた。ルフィはシャボンディ諸島でくまの急襲により、仲間はバラバラとなったの
ルフィはモリアと同じ〝王下七武海〟の〝海賊女帝〟ボア・ハンコックへ向けて声を
﹁ふふふっ⋮そなたを気に入ったぞ。目的地を言え...船を貸そう。﹂
149
﹁世間ではタイガーの他に主犯がもう一人いたとされている。それがモリアじゃ。当時
から七武海だった彼は立場を失うリスクを犯し奴隷達を救う為に尽力したのじゃ。﹂
ハンコックら奴隷を解放したのがモリアであると知ったルフィは何も言えなかった。
﹁...。﹂
ルフィの知るモリアは海賊を地下へ幽閉し、自分の戦力とする男であるのにハンコック
にとっては大恩人であったのだ。
きん。﹂
めせねばならん。よいな
妾はお主とモリアの味方じゃ。そなたに過度な肩入れはで
つまり妾はバレぬようにお主のサポートをしつつ、七武海として白ひげ海賊団を足留
えばどうなるかは分からん...
れどそれ過去の話...。白ひげは老い、モリアはさらなる鍛錬を積んだ。おそらく今戦
じゃがモリアが白ひげを逃がさん。かつてはモリアは白ひげに僅差なれど敗れた。な
な れ ぬ。一 番 良 い の は エ ー ス を い ち 早 く 救 い、白 ひ げ が そ の 場 か ら 逃 げ る こ と じ ゃ。
に海軍を滅ぼさぬように白ひげを殺し、兄上を処刑させるじゃろう。妾は彼の障害には
生かけても返せぬ大恩がある。彼が第一に望むのは世界の安定じゃ。彼は平和のため
﹁妾は戦争にてお主の手伝いをしたいが、フィッシャー・タイガーと同様にモリアには一
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼*
150
?
***
同日
∼インペルダウン Level6∼
﹂
...わしはどちらにも容易く返せぬ恩義がある。あの
二人の殺し合いを前にわしはどちらの味方もできん
!
﹁よ せ よ ジ ン ベ エ...。親 父 も モ リ ア も 分 か っ て い る は ず だ。こ こ に い る 以 上 〝
番隊隊長〟ポートガス・D・エースが口を開いた。
の大監獄〝インペルダウン〟の最下層で嘆いていた。すると同室の〝白ひげ海賊団二
〝白ひげ〟と戦うことを拒否した王下七武海の一人〝海侠〟のジンベエが世界最強
!
で争えば必ずどちらかが死ぬ
﹁わしゃこの戦争を死んでも止めたかった。〝白ひげの親父さん〟とモリアさんが本気
151
俺
た
ち
恩
人
故
郷
白ひげ海賊団〟側だろ。それにタイガーと魚人島じゃ後者を取ることも...。そして仁
義に貫くお前が仁義に背くこともな...。﹂
エースは嗜める様に言うとジンベエは何も言い返せなくなった。ジンベエはモリア
﹁...。﹂
には兄貴分のタイガーを救ってくれた大恩、そして大海賊時代に故郷の魚人島は大いに
﹂
どっちが死んでも面白ぇ
﹂
!!!!
荒れたが白ひげの縄張りにした事により島は平和になったのだ。この二つの恩を天秤
二人の首を取ってやるよ
!
にかけるなら後者に決まっていた。
﹁俺をこっから出せ
!!!!
﹂
?
相手にならんぞ
﹂
生
け
捕
り
﹁モリアさんは貴様らの様な輩には負けやせん。政府の命によって見逃された奴らじゃ
﹁おめぇらが親父の首を取るだと
騒ぎ始めた。どうやらここの囚人達はモリアと白ひげに怨みがある様だった。
同じLevel6内の囚人達がジンベエとエースの会話を盗み聞きすると声をあげ
!!!!
﹁おいおい...〝白ひげ〟とモリアがやり合うのかよ
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼*
152
!
153
***
同日
∼海軍本部∼
ポートガス・D・エースの公開処刑まで、あと6日...。〝白ひげ〟が監視船を全滅さ
せたことにより〝海軍本部〟は一層緊張を増し、マリンフォードの港には各地で名を挙
げる屈強な海兵達が続々と着港...〝正義〟の名を持つ全ての戦力が海軍本部に集結
していた。
***
稼働せし時代の歯車 *∼頂上戦争編∼*
154
∼聖地マリージョア∼
警護として居合わせた海兵達が固唾を呑む中既に招集された七武海の海賊達にも戦
闘陣営が伝えられるがいずれも手に余る曲者揃い...ただ一つだけ理解できることは
彼らが一丸となって戦う事はまず考えられない
歴史の序章 1
∼海軍本部∼
〝正午〟
﹁処刑3時間前です。罪人を処刑場前へ送ります‼
していた。
﹂
己の足音のみを感じる空間において生と死の狭間にいるエースは弟との過去を思い出
死へと向かう処刑台までへの階段を一歩ずつ登っていく。通路は細くそして暗いため
手錠を課せられた〝二番隊隊長〟ポートガス・D・エースは二人の死刑執行人と共に
﹃カツン...カツン...。﹄
?
155
***
﹃ギィ∼∼...。﹄
の扉がゆっくりと鈍い音が響き渡った。
執行人はエースを閉じられた門を開く仕掛けを作動させると錆びた金属と重い木製
?
...いいかルフィ
俺たちは絶対にくいのない様に生きるんだ‼
うん‼
***
?
﹁止まれ...門を開けるぞ。﹂
歴史の序章 1
156
157
***
いつか必ず海へ出て思いのままに生きよう ‼
誰よりも自由に
***
?
戦局のカギを握る5名の曲者達海賊〝王下七武海〟
ぶ
三日月形の湾頭及び島全体を50隻の軍艦が取り囲み湾岸には無数の銃砲を立ち並
海軍本部により招集された名のある海兵達総勢約10万人の精鋭が
!!!
そして広場の最後尾に高くそびえる処刑台には
事件の中心人物〝白ひげ海賊団〟二番隊隊長
その眼下で処刑台を軽く守るのは海軍本部〝最高戦力〟3人の﹁海軍大将﹂
今考え得る限りの正義の力がエース奪還を阻止する為〝白ひげ海賊団〟を待ち構え
る
***
∼海軍本部処刑台∼
前にでんでん虫を手に演説を始めた。
捕らえられたエースの真横で〝海軍元帥〟センゴクが総勢10万人の正義の軍隊を
いての大きな意味についてだ...。﹂
﹁諸君らに話しておく事がある。ポートガス・D・エース...この男がここで死ぬ事につ
歴史の序章 1
158
﹁エース...お前の父親の名を言ってみろ。﹂
﹂
﹂
!!!!
﹁違う
〝白ひげ〟だけだ
!!!!
お前の父親は...
らんわけではあるまい...
年と三ヶ月を経て、世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供...それがお前だ。知
のだ。そしてお前を産むと同時に力付き果てその場で命を落とした。父親の死から一
頭にある常識を遥かに超えて子を思う一心で実に20ヶ月もの間、子を腹に宿していた
〝バリテラ〟という島がある。母親の名は〝ポートガス・D・ルージュ〟。女は我々の
あったのだ‼ ...それは我々の目を...いや、世界の目を欺いた‼ サウスブルーに
それもそのはず、お前の出生には母親が命を懸けた母の意地ともいえるトリックが
来る子供。そして母親達を隈なく調べたが見つからない...。
れないというCPの微かな情報とその可能性だけを頼りに生まれてきた子供、生まれて
﹁当時、我々は目を皿にして必死に探したのだ...。ある島にある男の子供がいるかもし
と海兵達はザワザワとし始めるとセンゴクは諦めた様にゆっくりと口を開いた。
センゴクがエースに質問をし、答えたが満足のいく回答は得られなかった様だ。する
﹁違わねぇ
!!!!
﹁俺の親父は〝白ひげ〟だ...。﹂
159
〝海賊王〟ゴールド・ロジャーだ
﹂
﹂
日...ここでお前の首を取る事には大きな意味がある...
たとえ〝白ひげ〟との全面戦争になろうともだ
?
センゴクが大声をあげ世界最強の海賊と戦うかも知れぬ海兵達を鼓舞し士気をあげ
!!!!
だ か ら こ そ 今
の遺伝子がまたしても目の前で処刑されるという事実を皮肉に思った。
モリアがエースの処刑の意味を理解した。かつて自身の目の前で処刑された海賊王
しときてぇはずだ。﹂
﹁ほ ぅ...海 賊 王 に 息 子 か...。漸 く 腑 に 落 ち た。政 府 と し て は そ ん な 害 悪 因 子 を 始 末
句した
虫により世界へと重大な事実を伝えた。そしてその事実を耳にした全ての者は驚き絶
センゴクはポートガス・D・エースの母親、そして出生を語り、海兵、映像でんでん
!!!!
﹁ま も な く す れ ば 大 海 賊 時 代 の 頂 点 に 立 つ 資 質 を 発 揮 し 始 め る ‼
歴史の序章 1
160
させた。海兵達はセンゴクの目論見通り一斉に10万の雄叫びが島に響き渡った。そ
〝正義の門〟が誰の許可なく開いてます‼
動力室とは連絡がつかず
れを他所に処刑台のセンゴクに慌てながら近づく一人の海兵が現れた。
﹂
﹁報告します
‼
﹂
?
裏切り者か侵入者だな...。﹂
?
全員戦闘態勢
為その考察が自然だった。
﹁来たぞォォーッ‼
?
﹂
﹁目標はあの船長格の半分の死体の入手だな...。﹂
〟の一員だと理解した。合計43隻の大艦隊を前にするとモリアは呟いた。
やがて海賊船に乗る人物らが〝新世界〟に名を轟かせる者達にして〝白ひげ海賊団
!!!!
モリアが鋭い目で海賊の艦隊を見据えると呟いた。動力室はマリンフォードへある
﹁...なぜ門が開く
に多くの髑髏マークを掲げた海賊の艦隊が湾内に侵入しようとしていた。
ゆっくりと巨大な正義の門がゆっくりと鈍い音を島に響かせると霧の向こうに微か
﹃ゴゴゴゴゴ...﹄
抜けられ、正義以外の船を封じる〝正義の門〟がセンゴクの指示なしに開いたのだ。
センゴクが耳を疑う程の報告を受けると政府の三つの機関を繋ぐ一方的な海流から
﹁何だと⁉
?
?
!
161
海兵達は〝白ひげ〟や隊長達の乗る本船を見つける為に忙しなく動き始め海上に目
を見張り始めた。すると誰よりも初めにモリアが事態を飲み込んだ。
布陣のミスだな...。﹂
﹄
﹁そうだったのかあいつら全員‼
﹃ザパン
コーティング船で海底をッ⁉
?
﹂
?
空気が湧きあがると見聞色の覇気に薄い者達も理解し始めた。
モリアの呟きから次第に強者達は海底を見つめ始めた。すると湾内からブクブクと
﹁...ッ⁉
?
〝モビーディック号〟が来たァァァッッッ
!!!!
海賊船が海上に勢いよく現れた。
﹁うわァァァッッッ
﹁〝白ひげ〟...。﹂
刀、更に〝白ひげ〟の名に相応しい三日月形の白い髭の男が現れた。
た。そして次第に豪傑と言えんばかりの巨大で強靭な肉体、そして手に持つ太く長い薙
14名の隊長達の乗るモビーディック号の本船の奥から巨大な金属音が聞こえてき
﹂
!!!!
海が揺れ4つの影が現れるとやがて白いクジラをモチーフにしたデザインの巨大な
!!!!
﹃カツン...カツン...カツン...。﹄
歴史の序章 1
162
﹁何十年ぶりだ
センゴク...
俺の愛する息子は無事なんだろうな。
?
﹂
ちょっと待ってな...エース。﹂
﹁オヤジィ
!!!!
163
戦場の序章 2
﹁こうも急接近されるとは...。﹂
﹁...。﹂
センゴクが作戦で白ひげ海賊団に遅れを取ると白ひげは槍を船に突き刺し両腕を交
差して構え、そのまま大気にぶつけると大気がパキパキとヒビ割れた。するとマリン
フ ォ ー ド の 両 側 の 海 が 盛 り 上 が っ た。海 兵 達 が そ の 様 子 に 怯 む と 処 刑 台 の 上 に 座 る
エースが声をあげた。
俺の身勝手でこうなっちまったのに‼ ﹂
﹁俺はみんなの忠告を無視して飛び出したのに...
なんで見捨ててくれなかったんだよォ
!!!!
エースが仲間へ向けて大声をあげると白ひげは静かにその返事を返した。
﹁ウソつけ
バカ言ってんじゃねぇよ
あんたがあの時止めたのに俺は...﹂
!!
﹁俺は行けと言った...そうだろマルコ。﹂
!!!!
﹁いや...俺は行けと言ったハズだぜ、息子よ。﹂
戦場の序章 2
164
﹁あぁ、俺も聞いてたよい
言う通りだと答えた。
この海じゃ、誰でも知ってるはずだ...。﹂
﹂
﹁俺たちの家族に手ぇ出したらどうなるかぐらいはな
﹁待ってろエース‼ 今助けるぞォォッ
!!!!
﹂
へのケジメをつける為に海へ繰り出したのだ。そして一番隊隊長のマルコも白ひげの
エースはボスである白ひげの忠告を無視し、鉄の掟を破って仲間を殺した自分の部下
!!
汝等の使命を思い出せ
悪の頂点に立つ男だ
臆すな
強の男だッ ‼
海兵よ
!!!!
!!!!
敵は正面にいる
さぁ全力で叩き潰せ
﹂
!!!!
気迫に押されていた海兵達は先ほどは劣らぬ程の雄叫びをあげ返した。上級階級の海
モリアの声がマリンフォードへ響き渡ると白ひげの起こした海震と白ひげ海賊団の
!!!!
!!
!!!!
汝等の犠牲と健闘により世界の均衡は守られ悪は淘汰される
!!!!
?
﹁クックック...グラグラの実の能力者〟白ひげ〝エドワード・ニューゲート。世界最
ている海兵達を見て口を開いた。
入ろうとした。するとモリアが〝白ひげ海賊団〟の一丸となっている様子に気圧され
マルコの言葉を皮切りに次々と白ひげ海賊団は雄叫びをあげ始め海軍本部へと攻め
!!!!
165
兵や一部の過激派の海兵達は不快そうな顔をしたが、それ以外の者達はモリアの鼓舞に
より士気を取り戻した。その様子を見て処刑台の眼下で待機している三大将の内の一
人の〝赤犬〟が不快そうな声を漏らした。
﹁ふん...こいつらは海兵失格じゃの。モリアこそ悪である事を忘れちょる。﹂
海賊排斥主義の中でも随一の過激派である赤犬はモリアを見下す様に睨みつけると
あいつはほぼ海兵みたいなモンだろ。﹂
逆に穏健派の〝青雉〟が口を開いた。
あっしら
﹁別にいいんじゃねぇの
た伝説の海兵〝ガープ〟が口を開いた。
という地鳴りが響いてきた。するとルフィの祖父にしてゴールド・ロジャーを追い詰め
からと寛容な態度を示すと赤犬は納得はせぬモノの口を紡いだ。すると突然ズズズズ
青雉がモリアを擁護する様な発言をすると同じく大将の〝黄猿〟も士気が上がった
﹁海軍としては士気があがる事に越したことはないからねぇ...。﹂
?
だ‼
?
﹁勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ‼ 最後を迎えるのは我々かも知れんの
らんと距離を詰めていた。
すると遠くから二つの巨大な津波がマリンフォードを挟み撃ちにする様に襲いかか
﹁さぁ...奴の仕掛けた海震が津波に変わってやってくる。﹂
戦場の序章 2
166
?
167
あの男は...世界を滅ぼす力を持っているんだ
***
﹂
攻め入るは白ヒゲ率いる新世界の海賊47隻の海賊艦隊
!!!!
‼
?
迎え撃つは政府の二大勢力﹁海軍本部﹂﹁王下七武海﹂
誰が勝ち...誰が負けても時代が変わる‼
?
小手調べ
やがて白ひげの起こした巨大な二つの津波がマリンフォード一体へ襲いにかかると
三大将の一人〝青雉〟が動いた。マリンフォードの中央へ跳躍すると両手を津波へ向
アイスエイジ
﹂
けて左右に突き出した
﹁〝氷河時代〝 パルチザン
品へと変わり動きを止めた。そのまま白ひげへ向けて攻撃を仕掛けた。
両手から一本の氷の棒が放出され、津波へ命中すると一気に凍りつくと、まるで彫刻
!!!!
寸前に実体化し、凍らせて作った足場に手をおいてマリンフォード湾内の海を全て凍ら
は青雉諸共コナゴナにした。青雉は﹃あらら...﹄とつぶやくと海へ向けて落ちた。着水
青雉は四本の矛を白ひげへ向けて放つと白ひげは左腕を振るい大気をヒビ割ると矛
﹁〝両棘矛〟。﹂
小手調べ
168
せた。
船の動きを封じられると白ひげ海賊団はいい足場ができたとして次々と船から飛び
降りてエースの処刑台へ向けて走り出した。その様子を見た海軍の中将達が次々と氷
へと降りた
すると天が真っ二つに裂け、その隙間からは空に青空が差し込んだ。やがて雲が晴れ
ヒビ割った。
白ひげは薙刀を力強く掴むと素早く先端に白い光を覆うとそのまま天へ向けて大気を
が弱体化した。家族が次々と倒れていく様子を見て薙刀を細かに動かして防いでいた
かった。海賊の身体など容易く貫通し、青雉の張った氷を次々と貫き海へ触れると勢い
天 か ら 武 装 色 の 硬 化 を さ せ た 万 を 優 に 超 え る 黒 き 鉄 の 雨 が 白 ひ げ 海 賊 団 を 襲 い か
﹁〝 黒 鉄 雨 〟﹂
ダークフォール
た。
と到達すると白ひげ海賊団側を覆いきる程の黒き雨雲が現れ、日光を遮り曇りと化し
海賊団〟と海軍は圧倒的強者たるモリアが動いたため注目を集めた。やがて影が天へ
モリアは右手に影を纏わせ天へと突き出し影を渦巻かせながら昇らせた。〝白ひげ
攻撃で氷を溶かす手筈のはずだが、海兵の犠牲は少ない方がいい...。仕掛けるか...。﹂
﹁本船の連中は〝白ひげ〟とマルコを除いて前線へと向かうか...。恐らく〝赤犬〟の
169
ると〝白ひげ〟はモリアを見据えた。
﹁グララララ...おめぇの雨なんざ傘も必要ねぇ...だが相変わらず生意気な小僧だ。﹂
白ひげがモリアの雨を嘲笑するとモリアが軽く鼻を鳴らすと頭を本の少し仰け反ら
せ見下す様に口を開いた。
た...。﹂
﹁ほ ん の 腕 試 し に 足 る 程 度 か...。だ が 貴 様 が 薙 刀 を 振 え ぬ 程 老 い た か ど う か が 知 れ
すると二人はお互いの皮肉を通わすと同時にニヤッと笑った。白ひげがモリアの黒
雨を吹き飛ばした事により活気づいた白ひげ海賊団はエース奪還へ向けて攻め込んだ。
***
海軍side
何故か姿の見えぬ〝黒ひげ〟、そして戦争に反対してインペルダウンへ収監されたジ
﹁フフフッ何だやんのかお前...。﹂
小手調べ
170
ンベエを除いた5名の七武海が戦況を伺う中、〝鷹の目〟ミホークが背中に巨大な黒刀
を抜いた。
世界一の斬撃を
けて剣の軌道を変えた。
﹁止めたッ‼
﹂
﹁大将の攻撃を止めたッ
﹂
!!!!
。﹂
﹂
白ひげへ向けて光の弾丸が次々と迫り来ると青い炎の塊が素早く現れ悉く防いだ。
﹁おいおい...眩しいじゃねぇか...。﹂
あげた
黄猿が現れ両手から無数の光の玉を白ひげへと放った。すると白ひげは呑気に声を
﹁〝黄猿〟だッ
!!!!
﹁〝八尺瓊曲玉〟...﹂
歓声が上がると突然天に眩いばかりの光が現れた
海兵かそう叫び土煙が晴れると身体の半分をダイアにした男が現れた。白ひげ側の
?
?
﹁三番隊隊長〝ダイヤモンド〟ジョズ ‼
!!!!
タイのいい男が斬撃の前へと飛び出した。少しずつ押されはするモノのやがて天へ向
ミホークは剣を縦に一閃振るうと斬撃が白ひげへ向けて飛ばした。すると一人のガ
﹁推し量るだけだ...近くに見える。あの男と我々の本当の距離を...。﹂
171
﹁いきなり〝キング〟は取れねえだろうよい。﹂
〝白ひげ海賊団〟一番隊隊長〝不死鳥〟マルコが黄猿へそう言い放った。すると黄
猿はのんびりとした口調で返事をした。
﹁コ ワ イ ね ぇ ∼...〝 白 ひ げ 海 賊 団 〟...。〝 ロ ギ ア 〟 よ り 更 に 希 少...〝 ゾ オ ン 系 幻
獣種〟...。﹂
黄猿は再び光の弾丸を放つとマルコは全身を不死鳥へと変化し突っ込んで黄猿との
間合いを詰めた。そして身体のみを人間に戻し覇気を含ませた脚で黄猿を蹴りつけた。
すると黄猿は勢いを殺しきれずに光となって地面へ激突した。だが無傷のまま出てく
ると上を向いて声をかけた。
合計8名の巨人族の海兵達が返事をすると突然〝ジョズ〟が氷となった地面に手を
﹁巨人部隊...空も注意しなよ∼。﹂
突っ込みながら声をあげた。
下がってろ...。﹂
﹂
モリアが影で氷で飲み込んで投げ返そうかと思ったが、背後で気配を察知したため振
!
る大きさであったため、モリアは感嘆の声を漏らした。
力尽くで氷塊をくり抜くと巨人族へ向けて投げつけた。氷塊は巨人族を遥かに上回
﹁お前ら
!
﹁ほぅ...かなりのパワー。だが氷遊びなら他でやれ...ッ
小手調べ
172
り返ると座っていた赤犬が立ち上がっていた。
﹁フフフ...派手な葬式は嫌いか白ひげ...。﹂
﹁誕生ケーキにでも灯してやがれマグマ小僧...。﹂
の元へと向かうと薙刀で軽く刺し、燃え盛るマグマの塊を息で履いて消した。
船の一隻が引火し燃え盛り、更にモビーディック号の先端で仁王立ちをしている白ひげ
隕石の流星群の様に次々とマグマの塊が白ひげ海賊団へと襲いかかった。白ひげの本
巨大な氷塊は赤犬のマグマがぶつかる事によって全てが蒸発した。そしてそのまま
﹁〝大噴火〟﹂
右腕からボコボコとマグマが湧きあがると構えて巨大な氷塊へ向けて放った。
﹁まったくわしらが出払ったら誰がここを守るんじゃ...。﹂
173
﹂
相反する二人の王 1
﹁行けぇリトルオーズJr.
上の巨大に海兵側の巨人は初めて人を見上げる経験を味わった。
巨大な包丁のような刀を手に持った巨人が前線へとやって来た。普通の巨人の倍以
!!!
現状であった。
せるために武装色を極めた者以外影にするつもりはないため、中々ゾンビにできぬのが
ノがないため冷凍保存してあるのだ。モリアとしては最低でも強靭な肉体を引き立た
モリアの持つ死体の中で最強クラスの逸物だが、覇気を司る影がオーズに相応しいモ
あって損はあるまい...。﹂
﹁〝 国 引 き オ ー ズ 〟 の 子 孫 か...。ヤ ツ に 相 応 し い 影 が な く 冷 凍 保 存 さ れ た ま ま だ が、
相反する二人の王 1
174
﹁エースぐんは優じいんだ絶だいに死なせねぇ...。﹂
オーズは舌足らずの口調でエースを助けようと躍起になっていた。そして海軍の軍
﹂
艦一隻を湾内でひき回し突破口を開こうとした。
﹁湾内の侵入を許すな
﹂
?
を飛んだ。
く、地面へ降りた。そしてドフラミンゴは高笑いをしながら糸の力で雲へ括り付けて空
圧倒的なパワーにより七武海の足場は崩れたがその程度の攻撃を食らう七武海ではな
オ ー ズ は ド フ ラ ミ ン ゴ へ 狙 い を 済 ま せ る と 雄 叫 び を あ げ な が ら 拳 を 振 り 下 ろ し た。
﹁あ
﹁ハァ...ハァ...せめて七武海の一人だけでも。﹂
が太陽に近いからと心配したエースが編んでくれたのだ。
でなく身体中から大量の血が流れた。その衝撃で落ちた藁の傘を見た。これはエース
なダメージを与えた。オーズは意識を失いかける程の衝撃を辛うじて耐えたが頭だけ
ゆっくりと肉球型の空気砲がオーズの腹へ命中すると大気が弾け飛び内臓に爆発的
﹁〝熊の衝撃〟。﹂
ウルススショック
が両手の肉球で空気を弾き圧縮し始めた。そしてオーズへ向けて放った。
巨人族の海兵達がオーズへ襲いかかるが全く歯が立たないようだった。するとくま
!!!!
175
﹁面白ェ
フッフッフッフッフッ
﹂
!!!!
れない為無効化ではないのだ。
海である以上弱体化はするモノのモリア本体が能力が使えなくなるわけでなく、直接触
撃に優れているのだ。むろん実体でない以上海水面での攻撃が可能である。もちろん
ようとも接近戦と中距離のロギアと違い実体を捉えられない。つまり遠距離からの攻
も含まれる︶の手から離れた攻撃に実体が含まれないという事だ。これは覇気で攻撃し
の〝カゲカゲの実〟を含むパラミシアの強みは一部例外が存在し、パラミシア︵ロギア
能力者は直接海や海楼石に触れれば力が抜け能力は使用できなくなる。ただモリア
つけぬ様に攻撃に移る事にしたのだ。
を忍ばせ〝いざ〟という時の〝影法師〟に使用するつもりだったがこれ以上死体を傷
貫いた。これは先ほど海底に沈んだ雨の影を固めて操作した。モリアは海水にこの影
し、上向きへスッと小さく振ると地面の氷から影が突き抜けてきてオーズの急所辺りを
モリアはパッと突き出した拳を掴む様に握り、拳を上向けにして人差し指を突き出
﹁斬ったか...まぁいい...。﹂
その様子を見てモリアはつぶやいた。
ドフラミンゴが地面へ舞い降りるとオーズの右脚が糸により切り裂かれ宙を舞った。
!!!
﹁オーズ...。﹂
相反する二人の王 1
176
悲しんでる暇はねぇぞ
﹂
白ひげが手を伸ばせばエースにギリギリ届かぬ位置で倒れたオーズを見てつぶやい
た。
﹁隙を見せたな白ひげ
!!!!
だ所でピタッと止まった。
﹂
所から影の槍が地面を割ってモビーディックの先端を貫かせ、そして影の槍は少し進ん
貫こうとした。白ひげは攻撃の気配を察知し、後ろへタッと引くと先程まで立っていた
る。そしてモビーディックの真下まで来ると実体化し、真上に立つ白ひげへ向けて縦に
モリアは跼み氷の大地に手を置くと虚無化した細い影を入れて氷の中を素早く伝せ
﹁そろそろ出るか...。﹂
クの先端に仁王立ちしている白ひげを見てニャッと笑った
出した。するとモリアは面倒くさそうに雑兵の進撃を見据えると未だにモビーディッ
白ひげ海賊団はうっすら涙を浮かべる者をいる中オーズを倒した七武海へ向けて走り
突 破 口 を 開 い た オ ー ズ の 犠 牲 を 無 駄 に し な い た め に も 白 ひ げ は 部 下 達 を 鼓 舞 し た。
﹁オーズを踏み越えて進め
!!!!
んだ。気絶したロンズ中将を力任せに投げ飛ばすと地面に無様に倒れた。
は軽く振動を起こし砕いた。そして体勢を崩したロンズの頭を掴み直接振動を叩き込
斧を持った巨人族のロンズ中将が白ひげへ襲いかかった。斧を振り降ろすと白ひげ
!!!
177
ドッペルマン
﹁〝影法師〟...そう暴れてくれるなよ...。﹂
影の槍がモリアに一瞬で変化するとモビーディックの先端で相反する二人の王が静
かに向かい合うと両軍は自分達の戦闘を忘れただ二人の戦闘を見守った。
﹁グララララ...。かつて俺の首を取りに単身で乗り込んできた男によく似ている。お
めぇの顔を見ると傷が疼いてしかたねぇ...。﹂
かつてのモリアと今のモリアの変わり様を嘲ると白ひげは胸の無数の比較的小さな
11年前
斬り傷がピクッと微かに疼いた。するとモリアは嘲る様に白ひげを見据えた。
き〟だと悟っただけに過ぎん。﹂
モノを消滅させるべき〟と考えていたが、今では〝俺が支配するのではなく、支えるべ
﹁当時とは実力、思想が共に異なるぞ。かつては貴様を殺し〝頂点に立つ事で均衡その
相反する二人の王 1
178
最強との過去 1
11年前︵モリアが記憶を失って3年後︶
∼レニス島∼
モリ...﹃バタン...。﹄
!
と倒れていく。
き始めるとモリアを止めようと迫り来る海賊達が覇王色の間合いに差し掛かると次々
否定しなかった事から本物であると突き止めたモリアが覇王色を剥き出しにして歩
﹁何だてめ...モッ...
記憶を失って3年たったモリアは白ひげ海賊団の拠点を見つけだし、単身で現れた。
﹁貴様らが〝白ひげ海賊団〟だな...。﹂
179
﹁貴様らでは俺を捉えられぬ...。﹂
モリアがどんどん先へ進むと前方からマルコを横に連れた〝白ひげ〟が薙刀を片手
で持ち地面を突きながら歩いてきた。来襲者が七武海でも名のある方の男だと理解し
てもなお王者として余裕の表情で笑った。
﹂
﹁グ ラ ラ ラ ラ ラ...。お め ぇ...七 武 海 の 影 小 僧 じ ゃ ね ぇ か...俺 に 挑 み に で も 来 た か
?
痺れていたが白ひげは何ともない様だった。おそらくモリアは肉体で上回り、白ひげは
二人は互いの力量を感じると互いに間合いを取るとモリアの腕は痛みでビリビリと
亀裂が入り天が割れた。
モリアがそう言い放つと硬化した二人の拳がぶつかり合うと二人の拳の間の大気に
殺しに来たのだ。﹂
﹁愚問だな...挑むのではない...
最強との過去 1
180
覇気で上回った。その二つを差し引いた結果モリアの方が劣っていると理解しつぶや
いた。
に立つ器と強さがあるという事に等しい...
故に喧嘩を売らせて頂いた。﹂
﹁グララララ...おめぇみてぇなハナッタレがこの俺に勝てるとでも思ってんのか
?
モリアは指に影を纏い地面を削ってブレーキをかけて勢いを殺すと白ひげは目の前
した。
げの腹を殴ろうとすると白ひげは空いている右手で殴り返してモリアを軽く吹き飛ば
白ひげは薙刀を振るうがモリアは軽々躱し、間合いを詰めた所で武装色の覇気で白ひ
﹁二度言わせるな。勝つ気はない...殺すのだ。﹂
﹂
﹁貴様が海賊の頂点と呼ばるる男...。貴様に勝てば均衡は崩れはするものの、俺が頂点
ざらにいる。海賊の頂点に立つ男が王の資質を持たぬわけがなかった。
〝白ひげ〟は世界最強の海賊。そしてこの〝新世界〟では覇王色の覇気を持つ男は
﹁グララララ...〝王の資質〟。生意気な...。﹂
﹁やはり持っていないわけないか...。﹂
181
におり、薙刀でモリアを真上から叩き落とす様に振り落とした。すると激しい土煙が舞
うと側にいる部下達は歓声をあげた。
〝白ひげ〟はまだモリアが薙刀で叩き潰す程度では倒せぬことを理解していた。そ
﹁まだだ...。この程度でやられる様なタマじゃねぇ。﹂
して土煙が晴れると右手で薙刀を力任せに掴んでいるのが見えた。
と地面に亀裂が入り土煙が激しく舞った。
那に白ひげはモリアの顔を右手で掴むと力任せに地面に叩きつけ、右手を白い光で覆う
白ひげの武器を機能停止にさせた瞬間モリアはほんの少しだけ油断をした。その刹
突き刺さった。
し、真上に蹴り上げると薙刀の先端の刃のついた棒は折れ、宙をクルクルと舞い地面へ
モリアはグィッと引き薙刀を自分の身体に引き寄せると自分の左脚を武装色で硬化
﹁貴様も俺を過小評価しておるがな...。﹂
最強との過去 1
182
ブラックローブ
﹁〝 影 鎧 〟...。﹂
183
ダークサイド
地面に叩きつけられたモリアの全身が薄く黒い煙が湯気の様に立ち昇っていた。そ
してモリアはゆっくりと立ち上がると唯一残された顔は無傷で土煙の汚れしか付いて
ドッペルマン
いなかった
ドッペルマン
使用するものである。
り武装色の劣る者﹄が対象であるがこの技は﹃対強者用及び覇気の力量が不明な強者﹄に
力で鉄壁の鎧と化す。この技は〝常闇狭霧〟と対になるモノで〝常闇狭霧〟は﹃自分よ
この技は〝影法師〟の強度を鎧として全身に纏い更に武装色を二重で覆う。故に強
︵もう〝影法師〟は使えぬな...。︶
ダークサイド
184
***
∼3時間後∼
世
界
微かな汗と目に疲れた様子の見える白ひげはここまでモリアがやるとは思ってもみ
﹁グララララ...。この海でもおめぇの強さはかなりのもんだ。﹂
新
の覇気が上回っていれば勝機は十分にあった。
モリアの影の鎧ではある程度しか効果がなかった。仮に〝白ひげ〟の覇気よりモリア
な破壊力を誇るのだ。振動とはどこまでの突き抜けて全身にダメージが響き渡るため
与えることでダメージを与えられる。その振動に武装色を織り交ぜる事により爆発的
頭から血を流しつつも影の鎧は破壊されていなかった。白ひげの能力は〝振動〟を
﹁ハァ...ハァ...これが最強か...。俺の実力不足が手に取るようにわかる。﹂
185
なかったのだ。だがモリアの顔は冷たく淡々とした口調で語りかけた。
﹁なぜそう呑気でいられる...。﹂
﹂
﹁...。﹂
﹁わからぬのか
なぜゴールド・ロジャーの残した椅子につかぬ...。﹂
とができなかったのだ。
モリアの情緒の突然の変化に白ひげは聞き返した。言葉の意味がすぐに理解するこ
﹁あん
?
ら
﹂
どう
約束された地位でありなが
貴様がその座に就くことでこの海が安定することを理解しておきながら
して王にならぬ
ン
ピー
ス
ン
ピー
ス
て い た 〝 白 ひ げ 〟 は 〝 ひとつなぎの財宝 〟 を 探 さ な か っ た の だ。そ の 結 果 海 賊 達 が 世
ワ
ひとつなぎの財宝〟を求めて海へと飛び出した。ロジャーの死後、次期海賊王と呼ばれ
ワ
事 を 望 ん だ 理 由 は 世 界 の 安 定 の 為 で あ る。ロ ジ ャ ー の 処 刑 後 世 界 の 海 賊 達 が 〝
モリアは白ひげの様子に感極まり大声をあげた。彼が〝白ひげ〟を殺し頂点になる
!!
!!
怒りを抱いていたのだ。
になれば〝海賊王〟になれるのに白ひげはそれを望んでいなかった事に対して疑問と
モリアはこの時代の頂点に君臨する力がないと理解し、白ひげに問いかけた。その気
?
!!!!
!!
﹁なぜ貴様はそれ程の力がありながら貴様は王座につかん
ダークサイド
186
ワ
ン
ピー
ス
界で略奪、殺人、誘拐などの狼藉を働き罪なき人々の平安を侵し続けた。
それ故モリアは〝白ひげ〟を始末し、自分が〝ひとつなぎの財宝〟を見つけ海賊王に
ワ
ン
ピー
ス
なる事によって海賊達の勢いを抑え込もうとしたのだ。
﹁...俺ァ〝ひとつなぎの財宝〟なんぞに興味がねぇんだよ。﹂
〝白ひげ〟の一言はモリアを激昂させた。彼の命と世界の均衡をかけた決意を〝興
味がない〟...。ただそれだけの事で彼の想いを踏みにじられたのだ。
﹂
お前
強者とは常に強者以外の全ての状況を揺るがす 強者の頂点たる
の匙加減一つで多くの人々の命が救われるのだぞ
!!!!
お前の一声で海賊から足を洗う連中がどれ程いるかを知らぬわけではあるまい
﹁そうではない
!!!!
負って好きなだけ暴れてみろ...
﹁この俺に意見するたァ...生意気な小僧だ...。まだ暴れたきゃこの海で俺の名を背
為に海賊王にならねばならぬと説いた。
モリアは興味がある、ないではなく海賊という害意の権化から市民という存在を守る
!!!!
!!
187
俺の息子になれ...。﹂
〝白ひげ〟はニヤッと笑いモリアの元へ歩いたそして手を差し伸べた。ゲッコー・モ
リアという男を家族にしたいと心から思ったのだ。だがその勧誘もまた彼の神経を逆
撫でした
!!!!
だが敗者に人権は非ず...
﹁ふざけるなァァッッッ
ダークサイド
188
従わせたいのなら従わせろ...殺すなら殺せ...
俺はこれから起こり得る現実の全てを受け入れる覚悟などとうにできてる。﹂
モリアは影の鎧を解いた。彼は〝強者は全てを肯定できる〟と考える男でそれを持
論として振舞ってきた。海賊を狩ってゾンビにするもの強者の権利、海賊から影を奪っ
て島から出さぬのも強者の権利。
無論その持論は己を例外でないことは初めてその理を悟った時から、己がいつか敗者
としてどの様な現実が待ち構えていようと〝耐え抜く〟か〝抗い続ける〟かの覚悟は
できていた。たがモリアは〝白ひげ〟の仲間になる気は微塵もなく戦闘で敗れた以上
抗うだけ見苦しいと考え死を受け入れるつもりだった。
彼の矜持を前にした〝白ひげ〟は更にモリアという男をいたく気に入った。そして
満足気に呟いた。
︵キシシシシシ...なんてザマだ。お前は無様で惨めな雑魚だ。︶
声が響いていた。
〝白ひげ〟がそう呟き終わると同時にモリアの耳に悪魔のような高い声をした男の
﹁くそ生意気な...。﹂
189
﹂
モリアが一切の気配の感じぬ男の声を耳にして周囲を勢いよく見回した。だがその
どこにいる⁉
男らしき男は見当たらない。
﹁誰だお前は⁉
﹂
?
ねぇ...。︶
せ。︶
﹂
馬鹿な野郎だ。だったら無理矢理奪えば済む話だ。俺に全てを寄越
!
﹁俺だとッ⁉
何を言ってやがる
︵馬 鹿 だ な...俺 は 〝 お 前 〟 だ。白 ひ げ は 俺 に や ら せ ろ。お 前 み た い な 雑 魚 じ ゃ 勝 て
こえぬ声のようだった。
モリアの様子に〝白ひげ〟は理解できずに声をかけた。どうやら自分だけにしか聞
﹁お前は何を言ってやがる
?
?
謎 の 男 の 声 が モ リ ア の 脳 内 へ 響 き 渡 る と 今 ま で 感 じ た こ と の な い 程 の 頭 痛 が 彼 を
!
?
︵キシシシシシシ
ダークサイド
190
襲った。モリアが突然頭を抑え込んでもがき苦しむ様子を見て〝白ひげ〟の後ろにい
クソがッ
﹂
たマルコが仲間に船医を呼ぶ様に指示を出した。
﹁うオォォォォッッ...ック
!
﹁...。﹂
?
漸く手に入れた
感謝するぜ白ひげェ
!!!!
﹂
!!!!
げた。
﹁キシシシ...キィッシッシッシッシ
!!!!
げた。モリアは狂気的な程歪んだ笑みを浮かべ、悪魔の如き恐ろしく冷たく高い声を上
突然大人しくなったモリアに〝白ひげ〟が問いかけるとモリアはゆっくりと顔をあ
﹁大丈夫か
﹂
︵キシシシシ...。早く楽になれ。俺に全てを委ねろ。全てを終わらせてやる。︶
!
191
わない力〟。上記した精神力で彼は覇気の腕前をぐんぐん上昇させた。覇気とは精神
そしてもう一つは彼の覇気が自分の覇気を遥かに上回っていた事だ。覇気とは〝疑
かった。
が っ た。ま た 好 き な 漫 画 だ っ た O N E P I E C E の 世 界 で 精 神 な ど 弱 ま る は ず な
原作モリアは知らぬが彼には原作知識があり、未来を知るという事は大いなる自信に繋
肉体の自由はない以上精神に影響を与える事以外に肉体を取り戻す術はなかったのだ。
だ が 原 作 の モ リ ア に 誤 算 が 二 つ 起 き た。一 つ は 彼 の 精 神 が 全 く ブ レ な か っ た 事 だ。
と狙っていた。
えはしたものの憑依者の意識の及ばぬ奥底から肉体の主導権を奪い返そうと虎視眈々
役割を担っていたが神の都合により彼本来の人格と肉体は奪われた。人格は表面上消
ゲッコー・モリアは憑依者である。本来原作のモリアは確かに存在し、原作としての
精神の攻防
精神の攻防
192
力であるため原作モリアの覇気を含む精神力では敵わなかったのだ。
彼は半ば諦めつつも決して己の肉体を取り戻すことを諦めなかった。未来を知る憑
依者は記憶を消し、そして強者の白ひげに挑むと実力の差を見せつけられて敗れた憑依
者は自分の力を信じられなくなりつつあった。即ち〝覇気が弱まってきた〟のだ。
その隙を原作のモリアは決して逃さなかった。そして精神力で彼を上回ると22年
もの長い月日の経てゲッコー・モリアは憑依者から肉体を取り戻す事に成功した。
﹂
﹁キシシシ...手始めに〝白ひげ海賊団〟の殲滅に移ろう...。﹂
た。
全に支配下に置いたモリアがもはや敵などいないと過信するのは極々自然な事であっ
失われたはずのモリア本来の覇気と弱まりつつあった憑依者の覇気...この二つを完
以上、鍛え抜かれた肉体と弱まった覇気を手に入れた。そして原作ではカイドウに敗れ
原作のモリアは己の力を実感し、酔い痴れた。憑依者の肉体と精神を支配下に置いた
!!!!
﹁キ シ シ シ...何 て 覇 気 だ...何 て 肉 体 だ。あ り 得 ね ぇ ほ ど の 力 が 湧 き 上 が っ て く る
193
モリアがそう言い放つと〝白ひげ〟、マルコらの顔色が一瞬で変わった。だが憑依モ
リアを完全に抑え込む事が出来なかったのか、頭に声が響いてきた。
︶
?
︵ふざけるな...我が肉体をどうする気なのだ⁉
﹂
︶
お前が俺の肉体を奪ったんだ
早く返せ
!!!
﹁黙れ
︵俺は奪ってなどいない
!!!!
した。
作モリアの話が噛み合うわけもなく言い合ったが、原作モリアは彼を後回しにする事に
記憶を失った事により己が憑依者である事を忘れた憑依モリアと肉体を奪われた原
下に置いてやる...。﹂
﹁うるせぇ野郎だ....。まぁいい。あとでゆっくりと精神だけでなく人格をも俺の支配
!!!!
!
〝白ひげ〟は右手に光を覆うと原作モリアへ向けて大気を割り覇気を含ませた振動
﹁よくわからねぇが...ほっとくわけにもいかねぇな。﹂
精神の攻防
194
ドッペルマン
を与えた。モリアは口元を歪めて軽く呟いた。
白ひげの目の前から一瞬で影の塊と化した。背後に気配を感じて振り向くが遅かっ
﹁〝影法師〟﹂
俺
た。モリアは右手に強力な武装色で硬化をして後ろから白ひげの脇腹殴りつけた。白
肉体も覇気も能力もあり得ねぇ程研ぎ澄まされてやがる
!!!
ひげの脇腹にモリアの拳がめり込むと強靭な身体が浮くほどの威力があった。
﹁キィッシッシッシッシ
﹂
!!!!
ち
容易く行えたのだ。
こっ
?
放った。この技は両斜めからの影の一閃を互いに細々と無数に交差させたもので一本
原作モリアは憑依モリアの原作知識や己の記憶により編み出した数々の技の一つを
﹁座る気のねぇ王座なら俺に寄越せ...。〝影編交刃〟。﹂
シャドウクロス
を手にした原作モリアは世界最強と呼ぶ事に過言はないようだった。
なくなった覇気に憑依モリアの才能の輝く覇気、更に憑依モリアに鍛えあげられた能力
それは皮肉な事に憑依モリアの記憶によって回避されたのだ。原作モリアは失う事の
白ひげは知らぬが、原作モリアは本来カイドウへ挑んで敗れ覇気を失っていた。だが
﹁ダークサイドに変わった瞬間...覇気の精度が跳ね上がりやがった。二重人格か
﹂
原作モリアは己の最盛期をビシビシと感じた。目の前の最強を完璧に出し抜く事を
こそが海賊王に相応しい男だ
!!!!
195
一本に異常な程強力な武装色が編み込ませてある。初めて使用する技でありながらモ
リアという人格に染み込まれた技を使うなど実に容易い事だった。
白ひげは右手を硬化させ白い光で覆い、モリアの放った交差された影の糸々を殴り壊
そうとした。だがモリアの放った影は振動を〝すり抜けた〟。予めこの技は虚無化さ
せておき、対象に触れる瞬間よりごく僅か前に実体化させるのだ。つまりこの技は無傷
で破壊不可避な技であった。
白ひげは硬化した右手から影が斬り裂いたが一歩も引かず、逆に右手で掴んで影の
糸々の勢いを殺した。そして左手を硬化して再び光で覆い攻撃を加えると実体化され
た影を粉々に破壊した。
クソッ
だが破片の一部が飛び散り白ひげの胸の上を数個が深く抉り、掴んだ右手からはポタ
...ッ⁉
?
?
ポタと血が滴り落ちた。
﹂
﹁キシシシ...防がれたのは想定外だが、血を流すのは何時ぶりだ
雑魚の癖に抵抗しやがって
!!!!
俺にはやらねばならぬ事がある
︶
!!!!
と激しい頭痛がした。どうやら精神力を取り戻した憑依モリアが暴れ出したようだ。
原作モリアが強さの余韻に浸っていると再び頭の中で憑依モリアの声が響いてくる
!!!!
︵さっさと俺の肉体を返せ
!!!!
精神の攻防
196
頭
ん
中
ならおめぇのお花畑でやってろ
ようやく取り返した肉体をやすやす明け渡すか
﹂
!!!!
慕ってくれる部下や国民がいたことを...
俺は決して屈さぬッッッ
︶
!!!!
︵俺にはやるべき使命と大切な仲間がいる
まるかッ
!!!!
界
平
和
得体の知れぬ貴様などに肉体を奪われてた
俺はいつどの時もおめぇ狙い続ける
を伺おうとジッと注目した。
﹁...。﹂
︵覚えていろ
︶
!!!!
!!!!
ぶっ壊してやる
そしておめぇの大事なモンを全て
!!!!
モリアは自然と身体を仰け反らせ途端に静かになると周囲の海賊達はモリアの様子
!!!!
か っ た。全 て を 失 う 寸 前 に 思 い 出 し た の だ。自 分 の やるべきこと へ の 想 い と 自 分 を
世
原作モリアは頭を押さえ込んで頭痛に耐えるが、憑依モリアは大人しくなどならな
!!!!
﹁仲間なんざくだらねぇ...。今の俺の力があれば世界を手に入れられる。海賊ごっこ
197
﹁...悪ぃな。邪魔が入っちま...﹃バタン﹄
原作モリアへ打ち勝った憑依モリアはつぶやき終わる前に気を失いゆっくりと前に
倒れた。そして白ひげは彼から圧倒的なオーラを感じると機嫌良さげに口を開いた。
ニューゲートに深傷を負わせた二人目の男として世界に名を轟かせることとなった。
世 界 最 強 と 呼 ば れ る 〝 白 ひ げ 海 賊 団 〟 に 単 身 で 乗 り 込 み 〝 白 ひ げ 〟 エ ド ワ ー ド・
ある。
これが後にゲッコー・モリアの伝説の一つとして語り継がれる〝レニス島〟の決闘で
コ...奴を医務室まで運んでやんな。﹂
﹁グ ラ ラ ラ...弱 ま り か け て や が っ た 奴 本 来 の 覇 気 が 逆 に 〝 上 が っ て や が る 〟。マ ル
精神の攻防
198
若き王の成長
?
開いた。
﹁張り合っただと
くだらん。あれは政府の誇張と戦闘後の状況のみよって都合良く書
白ひげが皮肉めいた言葉をモリアへぶつけた。モリアは不快そうな顔をすると口を
﹁グラララ...かつて俺と張り合った男にしちゃ甘ぇこというじゃねぇか。﹂
リアの言葉の一部にピクッと反応するとニヤッ笑った。
い者もいる。つまり権利がありそれを行使するかどうかは別問題なのだ。白ひげはモ
確かに強いからと言って〝赤髪のシャンクス〟のように傍若無人な振る舞いをしな
る...﹂
〝 貴 方 へ 〟 の 不 義 理 を 正 当 化 す る...実 に 不 本 意 だ が 俺 に も 立 場 と い う モ ノ が あ
儘は全て許される権利がある。ただ義務ではない。それ故俺は貴様以上の強者となり
﹁命を救われた〝恩義〟があるとはいえ...貴様を狙うのは申し訳なく思う。強者の我
199
プロパガンダ
かれた報道により植え付けられた妄 言に過ぎない。当時の俺は若く実力も海賊として
の心構えもなってなかった。﹂
モリアは白ひげとの決闘は惨敗だったと思っていた。無事に生きて帰ったモリアは
政府の息のかかった新聞記者の取材にありのまま答えた。翌日の新聞にはダークサイ
ドの事は一切書かれておらず胸上と右手から出血している〝白ひげ〟の写真が撮られ
ていた。もちろん敗れたと明記してあったが、僅差であったと曖昧な文章が載せられて
いた。この時に初めてモリアは自分がつけられていた事に気付き記者の隠密行動のス
キルに関心した。そして〝白ひげ〟もこの新聞を読んだが大して気に止めなかった。
考えがなっていないというのは海賊としての覚悟が足らず〝白ひげ〟が王座につく
かどうかは強者として選ぶことができたはず、それなのにモリアは敗者として意見を述
べてしまった事を若気の至りたして恥じていたのだ。
﹂﹂﹂﹂
!!!!
としていたのだ。
シ
重々知っているが今を生ける最強の七武海が一対一で11年前の決闘の再戦を行おう
サ
た。海軍側は知らぬ情報だが〝白ひげ〟は病に侵されていたのだ。〝親父〟の強さは
熟だった王は筋の通す絶対的な王へと成長し、絶対的な王はもはや伝説の王へと老い
モビーディックの先端で向かい合う2人の王に白ひげ海賊団は声をあげた。若く未
﹁﹁﹁﹁親父ッ
若き王の成長
200
﹁﹁モリアッ
﹂﹂
ちにしようとした。
として、そして地上から船に飛び乗ったジョズが身体をダイアに変えてモリアを挟み撃
白ひげの後ろにいたマルコが右前へと飛び出し両手から青い炎を噴き出すと不死鳥
!!!!
﹁よく口が回るじゃねぇか...。﹂
ヤ
ツ
つの大恩を仇として還す事を恥と言わずになんと言うのかとモリアは考えていた。
める機会を与え、更に勝者として彼の命を散らす権利を得たのに見逃したのだ。その二
かつて一方的に喧嘩を吹っかけた若き日のモリアに〝白ひげ〟は最強として登りつ
俺にチャンスと命を与えた貴様を殺さなくてはならぬ事を末代までの恥と心得る。﹂
た...
だ...。結果は俺という存在は強者として、海賊として高みへと登りつめることとなっ
俺は貴様に敗れた直後己の全てと向き合いダークサイドを封じ込む為に鍛錬を積ん
﹁横槍は控えて貰おう...
2人が己の影を見ると武装色の覇気を込められた〝針〟が刺さっていた。
白ひげは2人の様子を見てぼやいた。するとその言葉通りに2人の身体は静止した。
﹁余計ぇなことをしやがって...。﹂
201
﹁無口だと申告した憶えはない。﹂
白ひげの向かいあい同時に地面を蹴った。モリアは硬化した右手に影の鎧をつけ、そ
して白ひげは硬化した右手に白い光を覆った。
二人の攻撃が亀裂を産み11年前と同じ様に再び王の資質のある者達が衝突すると
二人の拳の間の大気にビキビキと亀裂が入り周囲に衝撃波を与えた。やがえモリアの
覇気が上回り白ひげを後退させた。
﹁やはり最強とはいえど齢には勝てぬようだ...。覇気が以前やりあったより数段衰え
﹂
ている。もはや貴様の薙刀は俺には届かぬ。﹂
﹁親父から離れろ
的な笑みを浮かべた。
真横からマルコは脚で攻撃をしたけたがモリアは軽々としゃがんで躱しフッと挑発
!!!!
装色で硬化した強靭な肩が見えた。
薄っすら笑みを浮かべたマルコが前を見る様に言うと目の前にはダイアの上から武
﹁前を見ろよい...。﹂
﹁覇王の衝突で針が抜けたか...。﹂
若き王の成長
202
﹁〝ブリリアントパンク〟ッ
した。
﹂
ばされた。海軍の後方部隊の場所まで飛ぶと硬化した手を地面に突き立てて勢いを殺
させてガードするしかできなかった。モリアはジョズのパワーを前に勢いよく吹き飛
モリアはジョズの渾身の一撃を回避する事は出来ず致命傷を避ける為に両腕を硬化
!!!!
なんて野郎だ...。﹂
!
﹁だから余計だと言ったろ...。次は邪魔をするんじゃねぇ...。﹂
を取ったのだ。
耐えられなかったに過ぎず、むしろモリアは抵抗せず衝撃をモロに受ける事により距離
武装色で上回ったからである。ジョズが吹き飛ばせたのはモリアの体重が彼の衝撃に
ガードをしていたに過ぎない。モリアが無傷でジョズにダメージを与えたのは単純に
ジョズの肩はビリビリとした鈍い痛みを感じていた。彼の攻撃にモリアは武装色で
﹁クソッ
を見たジョズはモリアを見て嘆いた。
モリアはノーダメージで立ち上がると平然と歩き始めて戦場へと戻った。その様子
邪魔が入っちまう。﹂
﹁さすがにタイマンなんてやらせねぇか。隊長を引き離す程に追い込んでからだな...。
203
﹂
空からの軍艦とモリアの暗躍
このバケモンがッ
!!!!
...ん
﹂
?
﹂
ノが降ってきた。次第に異常な光景を前に皆がその影の正体を理解し始めた。
モリアが上空から微かな声を聞くと空を見上げた。すると空から黒い影のようなモ
﹁貴様らの親父の方がバケモンだ。もう七十超えてるのではないのか
?
手をしていた。銃や剣を駆使して集団で襲いかかるが全くもって無駄な抵抗だった。
モリアは遥か後方まで吹き飛ばされたがゆっくりと進み己に襲いにかかる雑兵の相
﹁クソッ
!!!
?
﹁ルフィ
﹁エース
﹂
やっと会えたァ
!!!!
﹂
立っているルフィは笑顔で返した。
死刑台の上からこの戦争の引き金となったエースが大声をあげた。そして船の上に
!!!!
水飛沫が激しく昇ると次第に船の中にいた面子が現れ始めた。
軍 艦 は 凄 い 勢 い で 落 下 す る と ジ ョ ズ が 氷 を く り 抜 い た 部 分 に 思 い っ き り 着 水 し た。
﹁あれは海軍の軍艦...。囚人服を着ている者が多いな...。まさか脱獄囚か
空からの軍艦とモリアの暗躍
204
!!!!
﹂
﹂
ルフィも歓喜の声をあげると次第にインペルダウンから脱獄した強者達が船の上に
登り集まった。
インペルダウンの脱獄囚達だッ
﹁ジンベエ、クロコダイル、革命軍のイワンコフまで ﹁後ろにいるのは過去に名を馳せた海賊達
!!!!
﹂
?
いや厳しい。正義の門を通れ
だがヤツの姿は見えぬ。﹃戦争で
ツが主犯...。誰が手引きをした ...船に潜り込むか
るのは政府関係者と俺達七武海...。〝黒ひげ〟か
?
モリアが〝黒ひげ〟がルフィを手引きし、インペルダウンへ引き入れたと考察すると
﹁...。﹂
ならぬな...。おそらくヤツの手引きだ。︶
始末しろ﹄という俺のメッセージ...。少なくともヤツが戦争に来たのなら始末せねば
?
?
︵ヤツがインペルダウンに囚われたという情報はなく、囚人服も着ていない。恐らくヤ
﹁なぜ麦わらがここへ
父のガープへ問い詰めると頭を抱えて困った声をあげた。
る。どう考えても味方にはならないからだ。処刑台の上に立つセンゴクはルフィの祖
海兵達が次々とメンツを見て大声をあげた。白ひげは海賊であり、自分らは海兵であ
!!!
!!
205
﹂
比較的近くにいたハンコックがモリアを意味深な瞳でジ∼ッと見ていた。
﹁どうした
どこへ行ってた
﹂
?
罪を認めた。これでハンコックが〝麦わら〟を手引きしたと理解する
ハンコックは普段男に扱うようにモリアにもそう振る舞ったが恩人である為一言で
﹁男が妾に話しかけるなど無礼千万であ...﹃他人のふりをするな...﹄...すまぬ。﹂
動するとハンコックは声をあげた。
ハンコックが関係があるとは思えぬが、かなり怪しい。モリアが彼女の目の前にまで移
思い出してみればハンコックは七武海の招集に最後に応じてやってきた。囚人達と
﹁ハンコック...お前は遅れて来てたな
?
少し目を細めるとハンコックへの距離を詰めながら質問をした。
ハンコックに問いかけるとわかりやすく顔をぷいっと逸らした様子を見たモリアは
?
〟の皇帝でいたいのならな...。﹂
﹁わかった...あとで事情は聞かせてもらうが、〝麦わら〟の援護はするな...〝九蛇
くエースを助けに向かったのだろう。やはり面白い男だ︶
︵おそらくハンコックは〝麦わら〟が天竜人を殴った事件から気に入っていり、おそら
空からの軍艦とモリアの暗躍
206
﹁...ッ
見逃してくれるのか
﹂
?
の知るモリアならば確実に怒られると思っていたのに案外あっさりと終わったのだ。
モリアがハンコックの元から離れようとすると彼女は彼へ声をかけた。ハンコック
!
﹂
﹁礼を言う...。我儘じゃがルフィにだけは手を出さないでくれまいか
?
﹁〝 影 扉 影 〟...。﹂
シャドウホール
し生き残りを出すわけにはいかぬと思っていたのだ
﹂
モリアがそう言い放つと地面に手を触れた。あの数の援軍を相手にするには面倒だ
﹁...。﹂
心得よ。﹂
ら〟が出会わぬ事を祈れ。お前がどちらにつくのは自由だが敵となれば容赦はせぬと
﹁...それはできぬ。七武海という立場も尊重せねばならぬからだ。せめて俺と〝麦わ
に挟まれていたのだ。
た。彼女はルフィに惚れていたが大恩人の彼もぞんざいに扱う事のできぬという二つ
むしろ多くの死体を手に入れられると思っていた。ハンコックはモリアに頼み事をし
モリアはインペルダウンの囚人達やルフィよりも世界の均衡の方が大事だったのだ。
?
する。いいな
﹁当たり前だ...お前は強い。七武海から除名させるわけにはいかぬ。ただ囚人は始末
207
モリアの手から影が地面へ伝い地面から黒い出口が現れると常闇の奥底からゾンビ
兵達が続々と現れた。
﹂
﹁よ う や く 動 い た か...こ れ が ヤ ツ の 最 強 た る 所 以 の 一 つ...ゾ ン ビ 兵 の 道 を 空 け ろ
続々と増え続けていく様子を見て白ひげが声をあげた
﹁グラララ...これがヤツの能力の最大の強みだ。おめぇらゾンビの両腕を狙え
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
!!!!
だった。そしてモリアを中心に隊を成すとモリアは口を開いた。
﹂
地面から全てのゾンビ兵が完全に地上へ出てくると凡そ少なくとも七十体はいる様
活する。故に両手さえ斬り落とせばもう何もできないのだ
食らわぬため頭を切り離そうとも何ともない。仮に頭を斬り落とされても手で拾い復
〝白ひげ〟の指示はゾンビの数少ない弱点を指摘した。ゾンビは肉体にダメージを
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁オオオッッッ
!!!!
センゴクが待ち侘びた様にモリアを見て部下達に指示を出した。するとゾンビ兵は
!!!!
くは行えぬぞ...
痛みも苦痛も感情も失われしゾンビよ
!!!!
﹁余計な事を言いやがって...だがこいつらは俺の最強クラスのゾンビばかりだ。容易
空からの軍艦とモリアの暗躍
208
209
痛みに非ず
せよ
パ
ド
〝殺戮の行進〟...。﹂
レー
貴様らを死の淵から蘇らせた主の為その身が朽ち果て千切れようともこの俺に奉仕
!!!!
貴様らには如何様な攻撃も決して届かぬ
苦痛に非ず
!
恐怖に非ず
!
!
!!!!
友への激昂
﹁おい...ゾンビ兵には昔〝新世界〟で暴れてた連中が混じってるぞ
気づき始めた。
***
﹂
全く攻撃する素振りを見せなかった顔の整った長い緑色の髪をしたゾンビは刀で胸
﹁あ∼ダル...はいはい...〝譲渡〟。﹂
ギフト
かかった。よく見るとかつて名をあげた強者達がモリアのゾンビと化していたことに
モリアがゾンビ兵に自由に動くよう指示を出すと目の前にいる海賊達へと次々襲い
!!!!
や頭を斬り裂かれたり銃弾を次々放たれたが〝譲渡〟とつぶやくと全てのダメージと
傷が周囲の人間に返された。
﹁面倒くせぇから早く攻撃してよ...。致命傷ぐらいでさ...﹂
友への激昂
210
﹁あいつは〝奇術師〟リンダ
確かあいつは譲渡人間だ
﹂
!!!
﹃ボゴンッ
﹄
全身が黒の毛で覆われなぜか頭だけ短い金髪をした男が小さく呟いて腕を振るった。
﹁邪魔...。﹂
***
つくと武装色を身体に纏い襲いかかった。
リンダを知っている男が能力を仲間に教えた。能力をバラされたリンダはため息を
!!!
﹂
彼が腕を振るうと雑兵は纏めて吹き飛ばされた
〝ヒトヒトの実︿モデル﹀ゴリラ〟を食べ、獣人化している男が力任せに暴れている。
!!!!
﹁あいつは〝獣碗〟ビルド・シュタイン
***
!!!
211
﹁アッヒャッヒャッ
死んどけや
﹂
!!!!
半世紀前のガンマンだ
﹂
!
﹂
?
身
体
中
身
〝白ひげ海賊団〟十二番隊隊長ハルタはナイフを持つ青年に名前を尋ねた。
﹁早いな...。君の名前は
同じく小柄で剣を持った栗色の髪の少年と斬り合っていた。
笑顔でナイフを持つ童顔の青年のゾンビが﹃タン...タン﹄とステップを刻みながら
﹁さっさ退きや...はよせんと殺してまう﹂
***
﹁〝聖弾〟のカリー
と脳天に銃弾を命中させるとバタバタと倒れていく
肉体が腐りかけているゾンビが両手に太めのピストルを持って連射していた。次々
!!!!
!!!
***
殺職やった...。海賊は専門外やけどしゃぁないなぁ...。﹂
﹁肉体 は 〝 骸 拾 〟 マ ル フ ォ ー ス...。精神 は 〝 闇 討 ち 〟 ア ル ト や。ど っ ち も し が な い 暗
友への激昂
212
﹂
?
エースがゾンビの戦闘力を目の当たりにし嘆いた。70を超えるゾンビ軍勢を前に
﹁何だよありゃ...一体一体が強過ぎる。﹂
あがる者ばかりであった。
センゴクが処刑台の上でモリアのゾンビ達を見ていた。全員が聞く者が聞けば震え
ンマン、海兵専門の暗殺者、そして〝新世界〟で名をあげた海賊共...。﹂
﹁錚々たる面々だ...残虐非道で知られた伝説の海賊達、超人的な逸話を持つ剣豪やガ
∼処刑台∼
***
の一人であった。
ビは海賊達をスパスパと斬り捨てていく。男はかつて世界で名を轟かせた伝説の海賊
酒瓶をラッパ飲みしながらサーベルを片手に完全に肉体が腐っている長い髪のゾン
﹁おいおい...あいつもしかして〝キャプテン・ジョン〟じゃねぇのか⁉
213
友への激昂
214
仲間達が次々と蹴散らされていくのだ。例外に取り押さえられて氷の大地に仰向けに
倒されて身体のあちこちに刀を突き刺して固定されたゾンビもいるが大半はゾンビ兵
が戦況を揺るがしていた。
ゾンビにおける影は精神面及び特徴を担う...。主に性格、技術などの肉体以外の役
目であり、極端な例を出すと伝説級剣士の肉体に伝説級狙撃手の影を入れてもゾンビと
しての強さは格段に落ちる。なぜなら剣士には剣士に向く肉体があり、狙撃手には狙撃
手に向く身体があるのだ。事実モリアがホグバックに一番こだわらせるのは改造をす
る事により肉体の特徴を消さぬことである。
他にも隠せぬ部位をゾンビ風に改造させない事もこだわりに含まれる。モリアはス
パイとして世界に己のゾンビ兵を放っている。入手した時点で死体が腐っていればホ
グバックに筋肉を移植させてカバーさせ、死後間も無い死体を入手した場合は冷凍保存
をしている。それは肉体を腐らせぬ様にするためである。むろんスパイとして放つゾ
ンビも肉体が腐らぬわけではなく。もちろん防腐剤を使用し寿命を伸ばしてはいるが
それでも長くは持たない。更に出血や痛覚などがないため海軍や海賊などの密偵には
向かない。そこでいつ行方をくらませても気づかれにくい酒場の従業員や清掃員とし
て潜り込ませている。
モリア
﹂
!!!!
﹁久方ぶりだな麦わらッ
﹁ゲェ
!!!!
﹂
え、〟ギア2〟で身体の身体能力をあげるとモリアの攻撃を躱しつつ先へ進もうとし
アがいた事に驚いた。そして勝てる相手でも無い為モリアとの戦闘を回避しようと考
ルフィはエースを救出しようと全速力へ走っていて気づかなかったが、目の前にモリ
!!!!
と見覚えのある顔が現れた。
いなかった。モリアが数名のゾンビを護衛としておき〝白ひげ〟の元へ向かっている
の強者の覇気や戦闘力スキル。それらの全てを併せ持つゾンビ兵などにもはや敵など
死人故に感じぬ痛み、天才外科医に改造された肉体、各々の達人の極めた技、新世界
﹁だいぶ減らしたな...。俺の兵達は〝隊長達〟でも易々と太刀打ちできぬ...。﹂
***
﹁...。﹂
﹁政府としちゃ決して失いたくない男というわけかよ...。﹂
215
た。
るジンベエだった。
ブラックブレット
〝 影 血 閃 〟﹂
持ち主の足元へ帰っていった。モリアが鋭い目で海水を起こした者を睨むと友人であ
にした。そして海水の勢いが止まると側につけていたゾンビ兵の身体から影が抜けて
切って回避しようとしていたルフィから目を離し、影の盾を創って己が海水に触れぬ様
突 然 氷 の 大 地 が 割 れ て 目 の 前 に 海 水 が モ リ ア へ 向 け て 放 た れ た。モ リ ア は 己 を 横
﹁貴様の命をもら...ッ
!
れたりするのが実に痛い。格上だと理解はしているが己が敗れる可能性がある以上ジ
影を失った後の死体が問題なのだ。大砲などの流れ弾で死体が燃え尽きたり、傷つけら
持ち主へ戻ってしまう。強者の影は地下で管理している為再び取り返せばいい。だが
るモリアにとって海水は脅威であり、失神でもしてしまえば今まで掻き集めた影が全て
沈んでいった。ジンベエは魚人であり、海水を己の武器として使用できる。能力者であ
モリアがそう言い放つと全てのゾンビ兵の足元に小さな影の円が現れとゆっくりと
貴様は俺の数少ない天敵だからな...﹂
消えたり傷つけられるのは面倒だ。
﹁俺に海水を当て気絶させれば影を失いゾンビは動かぬ肉片と化す...。動かぬ死体が
友への激昂
216
﹂
ンベエがこの戦場にいる以上ゾンビ兵を使うわけにはいかなかった。
わしゃエースさんを助けたい
!!!!
﹁仁義云々の前に敵が目の前にいるだろうジンベエ
救いてぇなら救ってみろ
﹂
!!!
として相見えたのに命を奪う気概で来ぬジンベエに腹が立ったのだ。
べるまでもないと考えていたので何とも思わなかった。だがモリアは声をあげた。敵
ジンベエは許しを請う様に嘆いた。だがモリアは恩人一人と故郷での恩の価値は比
﹁仁義を通せぬわしを許してくれ
!!!!
﹁おぉう
...〝魚人空手奥義〟ッ
﹂
!!!!
﹁昂ぶらせてくれんじゃねぇか
﹂
目を一瞬で開くと拳に水を纏いモリアへ繰り出した。
詰めた。ジンベエはモリアが己の剛拳の間合いに入るのをただ待った。そして閉じた
〝影鎧〟を一瞬で纏い右手を武装色で硬化すると地面を思いっきり蹴って間合いを
!!!!
えた。その様子を見たモリアは機嫌良さげにニヤッと笑った。
ジンベエは目を閉じ精神を可能な限り抑え込み、モリアが間合いに入る瞬間を待ち構
!!!!
ジンベエもまたモリアの意図を理解し全力でモリアを倒さんと己の最強の技で挑んだ。
敵
だ。だ が 戦 場 に 互 い の エ ゴ を 持 ち 込 み そ れ が 相 反 し た 以 上 戦 わ ぬ わ け に も い か な い。
う言い放った。敵である以前に友人であり、世界の均衡の一つを担う同胞でもあるの
仁義を貫けぬジンベエの心情を察しているからこそモリアは敵である彼に対してそ
!!!!
217
ぶらいかん
﹂
に氷が砕け散りまるで人形の様に海底へと沈んでいった。
で少しずつ氷の大地にヒビが入り始めると氷が割れジンベエは気絶すると同時に完全
ジンベエは両手でモリアの脚を掴んで退かそうとするが離れず、次第にモリアの脚力
﹁ぐぬぬぬぬぬぬ...。﹂
アが脚でジンベエの腹を力任せに踏み込んでいた。
身体をふらつかせながら立ち上がろうとすると腹に衝撃を感じた。目を上げるとモリ
ジンベエが苦しみ紛れの声をあげると押し負け吹き飛んだ。ジンベエが仰向けに倒れ、
2 人 の 拳 同 士 は 激 し く ぶ つ か り 合 い 辺 り の 人 々 を 吹 き 飛 ば す 程 の 衝 撃 波 を 放 っ た。
﹁〝武頼貫〟ッ
!!!!
にはいかぬのだ...。﹂
﹁海底で休んでいろ...七武海でなくなったとはいえ、世界に貴様という男を失うわけ
友への激昂
218
海軍の策 1
ルフィッ
﹂
!!!!
は彼の言葉を理解できないというような顔をした。
思うままの海へ進んだはずだ
!!
お前に立ち入れられる筋合いはねぇ
俺もお前も海賊なんだ
俺には俺の仲間がいる
﹂
!!!
俺の冒険がある
!!!
なぜ来たんだ
!!!
﹁わかってるはずだぞ
帰れよルフィ
!!!!!!!
俺には
が 彼 は 自 分 だ け で な く ル フ ィ ま で も が 犠 牲 に な る 事 を 恐 れ て い た の だ。彼 の 言 葉 に
エースは自分には自分の冒険があり、ルフィには関係ないと無慈悲に言い放った。だ
︵頼むルフィ...お前にまで道連れにならねぇでくれ...これは俺の失態なんだ...︶
!!!!!!!!
突如処刑台の上でエースがルフィへ向けて大声をあげた。その言葉を聞いたルフィ
﹁来るな
!!
219
﹂
悟ったか悟らずかルフィは少し怒った様な顔をして大声をあげた。
﹁俺は弟だ
!!!
して振るい弾き飛ばしていた。
﹂
たかだかルーキー一人に戦況を左右されるな
害因子〝革命家 ドラゴン〟の実の息子だッ
﹁何をしている
!!!
?
︵〝麦わら〟を始末すれば革命軍を敵に回しかねんな...それは避けておきたい。少し
﹂
子だった。だがそれはモリアも同様であった。
革命軍の手により落とされているのだ。その場に居合わせた両勢力は驚きを隠せぬ様
は世界政府を倒そうと目論む革命軍のリーダーであり、国民に圧政を強いる国が次々と
世界最悪の犯罪者〟と呼ばれる男の実の息子であるという事実を伝えた。ドラゴンと
ルフィの特攻に海兵達が押され始めるとセンゴクが彼らを処刑台の上から鼓舞し、〝
!!!!
エースと同じ未来の有
モリアが海賊を〝影血閃〟を身体の周囲に待機させまるでとても太い鞭の様な形に
﹁...少なくともロジャーの子ではあるまい...。義兄弟が妥当か...。﹂
エースのいる処刑台へ目掛けて全力疾走で向かっていた。
そ の 言 葉 を 聞 い た マ リ ン フ ォ ー ド の 海 兵 達 が ど よ め き 始 め る の を よ そ に ル フ ィ は
!!!!
﹁なんだと...⁉
海軍の策 1
220
語弊はあるが同士討ちなど実に滑稽だ...︶
モリアは本来は世界政府などクズの巣窟という認識であり嫌っている。彼が七武海
の座に今でもついているのはスリラーバーグの安全、また世界の均衡を守るため、そし
て政府の情報網を利用するためである。革命軍は世界政府と敵対しており、世界政府の
犬とも呼ばれる七武海だがモリアは予め政府との協定で海賊以外の任務に従うかどう
﹂
かはモリアが決めると約束してあるので直接は革命軍と争ったことはなかった。
﹁オオオッ
気を注ぎ込むと拳を巨大化させた。
﹂
俺は死んでも助けるぞォォォッ
﹂
!!!!
りつけると気絶して倒れた。
﹁好きなだけ何とでも言えッ
!!!
巨人の中将は金棒をルフィへ叩きつけるが、ルフィはそれ以上のパワーで押し返し殴
﹁〝ゴムゴムのォォ巨人の回転弾〟ッ
!!!!
た海軍中将がルフィへ向けて振り下ろそうとした。それに対してルフィは指を噛み空
モリアがルフィに手を出す優先順位をかなりさげる決心をすると巨大な金棒を持っ
!!!
221
***
∼数十分後∼
エースに何する気だ
まだ時間じゃねぇぞ
﹂
!
﹁元帥殿準備が整いました。﹂
﹁あいつら
?
外のものだった。
る...
!!
策はゆっくりと稼働していく。
でんでん虫の映像を切ることを命じるとセンゴクは静かにつぶやいた。そして彼の
数時間後...世界に伝わる情報は我々の﹃勝利﹄この二文字でいいんだ。﹂
我 々 に 対 し て 世 間 が 不 信 感 を 持 っ て は 困
センゴクへの謎の報告がエースの処刑だと勘付いた海賊達だったが、彼の言葉は予想
!
﹁直 ち に 映 像 で ん で ん 虫 の 通 信 を 切 れ
海軍の策 1
222
﹁湾頭を見ろ
何かいるぞ
﹂
!!!
姿が同じ顔で七武海であったからだ。
〝白ひげ海賊団〟の背後に巨大な人影が現れると彼らは目を見開いた。皆の顔や容
!!
待ちくたびれたぜやっと出番だ
政府の人間兵器である。
﹁さァおめぇらッ
!!!
最終局面へと一気に雪崩れ込む
〝戦争〟は急速に流れを変え
﹂
開戦より約一時間半の死闘を経た頃﹃海軍﹄が大きく仕掛ける
!!!!
を担いだ金太郎の様な男が引き連れている。これは〝パシフィスタ〟と呼ばれる世界
モリアが海軍側の作戦を見抜くと同時に20を超える〝バーソロミュー・くま〟を鉞
火という算段か...。﹂
﹁動いたな...本来は海賊を湾内に追い込んで〝パシフィスタ〟で進路を塞いで集中砲
223
海軍の策 2
行けぇパシフィスタ
﹂
!!!!
﹁後方の敵に構うな
一気に広場へ攻め込むぞォッッッ
く揺るがす手を打った。
﹂
!!!!
海賊達を決して上げるなッ
﹂
!!!!
﹁全ての映像が切れた時点で〝包囲壁〟を作動
その後すぐにエースの処刑と共に敵を
を背に引き返す海兵達を逃がす為に一歩も動かず前線に残った。
その一言で海兵達は続々と氷上から要塞へと撤退していく。モリアは白ひげ海賊団
!!!!
白ひげの一言で海賊達はより一層激しく攻め立てる。するとセンゴクが戦局を大き
!!!
達は地面に当たったビームからの爆発により次々と犠牲を出していく
金太郎の様な男が指示を出すと一斉に手や口から光のビームを放った。すると海賊
﹁始めるぞ
!!!
﹁全員直ちに氷上を離れろッ
海軍の策 2
224
!!!
一網打尽にする
﹂
﹁後方に構うな前へ進めッ
﹂
と確信しつつ、海賊らを抑え込んだ。
センゴクは海兵らに指示を出した。モリアは包囲壁と聞いて己の考察が正しかった
!!!!
∼モビーディック号∼
***
たのかもしれない。
のを追う方が賢明だと考えた。〝包囲壁〟というワードを聞いて海軍の意図を見抜い
白ひげは後方からのパシフィスタを相手にして時間をかけるのではなく、海兵が引く
!
225
﹁スクアード...無事だったか。さっきてめぇに連絡を...。﹂
未だに傘下の海賊達が後方にモビーディックに一人で残っている白ひげは背後から
の気配を察知し振り返ると〝大渦蜘蛛〟スクアードがいた。彼は巨大な日本刀を手に
白ひげへ詰め寄りながら謝罪した。
白ひげの横へ着いたスクアードは後方からパシフィスタに襲われる傘下の海賊達を
﹁あぁすいませんオヤッさん...後方の傘下の海賊達はえらいやられ様だ...。﹂
見て口を開いた。
こっちも一気に攻め込む他にねぇ...。﹂
﹁持 て る 戦 力 は 全 て ぶ つ け て 来 る。後 ろ か ら 追 わ れ る ん な ら 望 む 所 だ。俺 も 出 る
も仕掛けなければならないと言った。
白ひげはここがピンチではあるが戦局を大きく揺るがす状況であるためこちらから
!!
﹂
!!
ゴ
﹁〝白ひげ海賊団〟とはいえ所詮は人...。終いには己の欲望の為にしか動かぬ...。﹂
エ
が止まった。モリアはその瞬間を静かに見据えると冷たく無慈悲に言い放った。
た。白ひげはスクアードの行動に目を疑い、その様子を見ていた白ひげ海賊団達の時間
スクアードは大太刀から鞘を外し、その刹那白ひげはスクアードに腹を剣で貫かれ
らねえ
﹁そうですね...俺たちも全員あんたにゃ大恩がある...白ひげ海賊団の為なら命も要
海軍の策 2
226
海軍の策 3
ぬ...
な ど と い う 面 倒 な 真 似 を 両 軍 せ ぬ は ず だ。間 違 っ て も 公 開 用 で ん で ん 虫 な ど 配 備 せ
人がその情報を知り得たのか...。ましてや傘下の海賊達を売るだけで済むのなら戦争
︵脳が足りぬにせよ少し考えればわかる話だ。なぜ海軍と既に話がついているのに奴一
稽...。﹂
ながら、〝白ひげ〟という男を疑い己らの命惜しさに...怒りに任せて刺すなど実に滑
﹁実にくだらぬ茶番だ...。白ひげ海賊団の為、〝火拳〟の為に命を捨てると言うておき
227
そもそも奴のいう見返りの通りなら戦争の初めに本船にのる〝白ひげ海賊団本体〟
は初めから来ぬ。傘下の海賊vs.海軍となるからな...
そんな回りくどいことではなく〝火拳〟を捕えたという情報を世間に隠し、白ひげに
のみ取引の情報を流せば事は自然に運ぶ...
﹃息子を助けにこなかったという〝白ひげ〟の面子は立ち﹄
∼モビーディック号∼
***
人の心とは実に脆い...
その状況が回避された以上白ひげが仲間を売るなど断じて無いと断言できる。︶
﹃〝海軍〟としても白ひげ海賊団全軍との全面戦争を回避できる﹄
海軍の策 3
228
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
なぜお前がこんな事
﹂
!!!!
翼に変えてモビーディックへ戻りスクアードの顔を掴んで地面に叩きつけた。
スクアードに刺され出血した白ひげは膝をついて胸を抑えた。マルコは両腕を炎の
﹁﹁﹁﹁﹁﹁オヤッさん
!!!!
たのだ。
﹁うるせぇ
こうさせたのはお前らじゃねぇか
﹂
!!!!
マルコは冷や汗をかきながら吠えた。心から信頼している家族が白ひげを突然刺し
﹁スクアードッ
!!!!
﹁こんな茶番劇やめちまえよ〝白ひげ〟
もう海軍と話はついてんだろ⁉
﹂
お前ら〝白
?
と話しかけた。
﹁俺達ァ罠にかけられたんだよォォッ
!!!!
その様な事はしないからである。スクアードはそのまま大声で戦場に散らばる家族へ
界中の人々をも驚かせた。ほんの少しでも〝白ひげ〟という男を知っていれば断じて
スクアードの一言に〝白ひげ海賊団〟が響めき始めた。そしてこの戦争を見守る世
?
したが白ひげが静止させた。
スクアードはマルコへ大剣を振るうがマルコは軽々躱し、スクアードを攻撃しようと
!!!!
ひげ海賊団〟とエースの命は必ず助かると確約されてんだろ⁉
!!!!
229
本当かよ
﹂
そうだろ⁉
〝白ひ
!!!!
?
ひきかえにエースの命を買ったんだ
すでにセンゴクと話はついてる
!!!
俺
達
﹂
﹂
俺たちはエースの為白ひげの為と命を投げ出してこ
!!!
俺達傘下の海賊団の船長の首を売り
げ海賊団〟とエースは助かる
そんな事も知らずにどうだ⁉
!!!
こまでついて来て...よく見ろよ
!!!!
?
海軍の標的になってんのは現に傘下の海賊団じゃねぇか
﹁オヤッさん⁉
!!!!
言われてみりゃコイツら俺達しか狙わねぇぞ
!!!!
!!!!
?
なぜ親父を信じない
!!!
﹂
!!!!
﹁ハァハァ...一度刺せただけでも奇跡だ...もう覚悟はできてる...殺せよ。﹂
らスクアードの叫びが強ち嘘ではない可能性があると思ってしまったのだ。
後方からのパシフィスタの猛攻に傘下の海賊団ばかりが次々と崩されて行くことか
﹁ウソだろ⁉
?
担がれやったなスクアード
!!!
だした。
のやり取りを映す中センゴクは海軍に不信感を持たれるのを防ぐために部下へ指示を
思っているようだった。インペルダウンの囚人達に奪われた映像用でんでん虫が彼ら
あげる。だがスクアードには正気を失われた顔をしており、白ひげから裏切られたと
胸からの出血を抑える白ひげをよそにマルコはスクアードの胸ぐらを掴んで大声を
﹁バカ野郎
海軍の策 3
230
﹁青雉
﹂
﹁〝包囲壁〟作動
﹂
で凍結させた。その様子を見たセンゴクは最後の策を打った。
青雉がその場から素早く移動し、辺り一帯にいた映像でんでん虫を待つ囚人達を一瞬
!!!!
れた男への怒りを露わにした。
〝白ひげ〟
!!!
﹁あの野郎...
﹂
み っ と も ね ぇ じ ゃ ね ぇ か
ねぇぞ
﹁...。﹂
!!!!
だ...。﹂
俺はそんな〝弱ぇ男〟に敗けたつもりは
﹁ス ク ア ー ド...お め ぇ 仮 に も 親 に 刃 物 を つ き 立 て る と は と ん で も ね ぇ バ カ 息 子
体調は悪化するばかりだ...。︶
︵今までのオヤジなら仲間の攻撃だろうとこんなんくらうアンタじゃなかったよい...
!!!!
軍の包囲壁が作動し始めていた。その様子に気づかずにクロコダイルはかつて己が敗
〝白ひげ〟の疑惑に揺れる中で密かに海底でボコボコと気泡があがり始め、確実に海
!!!!
231
﹂
の前へ来ると白ひげは彼を優しく抱きしめた。
え世界最強と呼ばれる男に殺されるという恐怖は何一つ変わらない。スクアードの目
白ひげがゆっくりとスクアードへ近づくと彼は悲鳴をあげた。命を覚悟したとはい
﹁ウァァッッ
!!!!
﹁バカな息子を...それでも愛そう。﹂
海軍の策 3
232
海軍の策 4
﹁ッ
﹂
﹂
?
センゴクが流石だとつぶやいた。味方から受ける己への疑いを払拭させ、いつでも逃
﹁海賊共に退路を与えたか...。﹂
させると動かなくなっていた〝白ひげ海賊団〟の船を解放させた。
白ひげは両腕を交差させて大気をヒビ割り地震を起こすと青雉の凍らせた海を破壊
俺が息子らの首を売っただと
﹁衰えちゃいねぇなセンゴク...。見事に引っ掻き回してくれる...
しまったのだと理解した。そして処刑台の上に立つセンゴクを睨みつけてつぶやいた。
白ひげの言葉でスクアードはハッとした顔をし、自分がとんでもない事をしでかして
!!!!
﹁仲良くやんな...エースだけが特別じゃねぇ。みんな俺の家族だぜ。﹂
233
げられる様にしたのだ。
﹁海賊なら信じるものはテメェで決めろォォ
﹂
︵弱ぇ男か...ワニ小僧。俺だって悪魔だの怪物だの言われようともいつまでも〝最強
た。
クロコダイルは葉巻をギリッと噛みながらこめかみに筋をいれ憤怒の表情をしてい
﹁...。﹂
部を攻め立てた。もちろん誰一人も引く者はいなかった。
白ひげの一言で海賊達は海軍の罠であると理解した海賊達は雄叫びをあげて海軍本
!!!!
︶
﹂
〟じゃいられねぇんだよ。若ぇ命をたった一つ未来につなげりゃお役御免でいいだろ
う
﹂﹂﹂﹂﹂
﹁俺と共に来る者は命を捨ててついて来い
!!!!
ス
白ひげがモビーディックから飛び降りて氷の地面へ降りると海軍達の表情が強張っ
若い命を救うべく仲間を鼓舞した。
エー
自分が老い最強でないという本心を隠しながらも己が最強である〝白ひげ〟として
!!!!
?
﹁﹁﹁﹁﹁ウォォォォォッッッ
海軍の策 4
234
﹂
た。世界最強と呼ばるる男が暴れようとしていたからである。そして離れた場所でモ
リアが口をひらいた。
﹁部下に刺されるなど認知症にでもなったか
***
ビクともしねぇ...。﹂
数分後
﹁くそ
だった。
軍隊が塞いでいた。だが正面の壁がオーズが倒れているからか作動せず下がったまま
包囲壁が同時に上がり始め湾内を包囲した。唯一空いた後方の穴はパシフィスタの
!
!
﹁さっきから言ってた〝包囲壁〟ってのは
﹂
﹁グラララ...この程度じゃ俺は止まらねぇ...。﹂
離れた場所でモリアが皮肉を放つと白ひげはニヤッと笑うと言い返した。
?
235
﹁おいどうなっている
完璧に作動させろ
﹂
込んでパワーダウンしたようです
﹁締まらんが始めろ赤犬
﹂
!!!!
﹂
!!!!
﹁それが包囲壁がオーズの巨体を持ち上げられず...どうやら奴の血がシステムに入り
!!!!
り注いだ。
﹁〝流星火山〟。﹂
﹂
センゴクが隙を見て冷たく言い放つとモリアら強者達はピクッと反応して倒れてい
﹁処刑を実行しろ...。﹂
けて砲弾を次々と撃ち込んだ。
モビーディック号に引火しすると激しく燃え始めた。そして海に落ちた海賊達へ向
と前進するが、次第にマグマで滾る海へ落ちてゆく
火山の隕石が凍った大地へ次々と降り注ぎ溶かしていく。そして海賊達は逃れよう
﹁氷を溶かして足場を奪え
!!!!
赤犬が両腕からマグマを噴き出し始め天へ向けて放った。するとマグマの流星が降
!!!!
﹂
﹂
るオーズを見た。すると血に塗れながらもゆっくりと立ち上がっていった。
﹁オーズだ
!!!!
﹁...急所を外したか
海軍の策 4
236
?
﹂
人
間
モリアは意外そうな声をあげた。彼自身は巨人族との戦闘経験はごく僅かしかなく
丈夫であるという印象しかなかったのだ。
﹁オーズ
センゴクの指示に二人の処刑人が刀を左右から同時に振り下ろそうとした。その刹
﹁やれ...。﹂
﹁ならばやってみよ...。だが処刑は止まらぬぞ...。﹂
少し手加減をし過ぎたのかと反省をした。
目に疲れた様子の見えるジンベエだったが、戦闘可能である事をモリアは確認した。
﹁わしゃエースさんを助けるぞ。﹂
﹁タフだな...ジンベエ。﹂
ら水の柱が天高く上がりマストを持ったルフィが三大将のいる目の前に降り立った。
モリアは影を出し槍の様な形にしてオーズの頭を貫こうとした。すると突然海底か
﹁頭をブチ抜くか...。﹂
かったからである。
おかしいと感じさせられた。なぜなら3人の七武海の攻撃を耐え抜くとは到底思えな
オーズはゆっくりと立ち上がったが、全身から血を流しもやは常人であれば動く方が
!!!!
﹁エ...エースぐん...。﹂
237
﹂
那に〝砂の刃〟が二人を斬り裂いた。
﹁クロコダイル
!!!!
よ...。﹂
﹁あ ん な 瀕 死 の ジ ジ イ 後 で 消 す さ...そ の 前 に お 前 ら の 喜 ぶ 顔 が 見 た く ね ぇ ん だ
海軍の策 4
238
怪物
﹁元帥殿
湾内の海賊達が妙な動きを
﹂
!!!
﹂
!
﹂
!!!
オーズが雄叫びをあげながら艦船を抱えて湾内へ引き上げた。そして船から次々と
﹁行くどみんな
海兵は艦船を砲撃し続けるがそれが誤りだと気づくには遅すぎた。
﹁外輪船です。こちらへ突っ込んできます
パドルシップ
巨大な艦船は帆を畳んでいるにも関わらず速い速度で突っ込んでくる。
﹁ウチの船が出揃ったと言った憶えはねぇぞ。﹂
﹁コーティング船を海底へ待機させていたか...。﹂
て巨大な影が現れると激しい水飛沫と共に艦船が現れた。
海軍は砲撃を海賊達へ向けて放ち続けるとゴポゴポと海面へ気泡が上がり始め、やが
た海兵がセンゴクへ報告した。
赤犬によって溶かされた海を海賊達が泳いでオーズの方へ向かっているのを発見し
!
239
降りた
﹁エースを救えェェッッ
﹁野郎共ォ
﹂
エースを救い出し、海軍を滅せェェッッ
﹂
!!!!
いた。大気が割られ振動で前線にいた海兵達がまるで埃を払うかのように吹き飛んだ。
の様子をしみじみと見た〝白ひげ〟は薙刀を構え、先端に白い光を覆うと一気に振り抜
誰かの鼓舞により士気のあがる海賊達だったが、限界が来たのかオーズが倒れた。そ
!!!!
死んだか青雉
﹂
!!!!
貫いた。
﹁覇気で刺した
!!!
バキンという音と共に氷が砕けた白ひげは素早く覇気を込めた薙刀で青雉の身体を
﹁あららダメか...〝振動〟は凍らねぇな...どうも。﹂
ヒビが入った。
青雉の攻撃により白ひげは全身が凍りついて動かなくなった。数秒経つとピキッと
﹁〝アイスボール〟﹂
食らわせようとしたら、一人の海兵が現れて氷を放った。
白ひげが海軍本部へ己の存在を轟かせると再び薙刀の先端に白い光を覆いもう一撃
!!!!
青雉は軽く受け流した。彼は確かに覇気で貫かれたが、身体を覇気を纏った。そして
﹁NOォォ∼、バカ言ったいけねぇよ。﹂
怪物
240
その青雉の覇気が白ひげの覇気を上回ったため無傷だった。身体を貫かれたまま平気
な様子で薙刀をパキパキと凍らせ始めると真横からの衝撃を受けた。
二人が本日二度目の邂逅を終えると共にモリアが下がって間合いを取った。そして
﹁そう邪険にするな...。俺とて老人を嬲るのは気が引ける。﹂
﹁懲りねぇ野郎だ...。邪魔だな...おい。﹂
の進撃を止められる状況ではなかった。
ほどモリアの妨害をしたマルコとジョズは黄猿、青雉と向かい合っており、到底モリア
モリアは影を纏った足で薙刀の刃を踏みつけるように抑え込んで相殺したのだ。先
﹁ようやく機が熟した...。﹂
すると白い光とは相反する黒い影が受け止め、周囲に強力な衝撃波が飛んだ。
白 ひ げ は 道 を 開 け る 海 賊 達 の 間 を 進 み 先 頭 へ 出 る と 先 端 に 白 い 光 を 覆 い 振 る っ た。
きる。これは攻撃を受け流せることと共にロギアの強みとして知られている。
ア系の能力者は覇気で身体を破壊されようとも時間さえあれば容易く復活する事がで
た。覇気はあくまでも能力者の実体を捉えるモノであって無効化ではい。それ故ロギ
ジョズのラリアットにより青雉は全身が粉々になったが、すぐさま全身を元通りにし
﹁あぁ...。﹂
﹁オヤジ...先へ。﹂
241
すぐさま下から持ち上げるように拳を握ると地面から白ひげの周囲を円状に無数の影
ダークスフィア
の剣先が現れた。
モリアが呟くと一気に円状に散りばめられた影の剣が白ひげへ襲いかかろうとした。
﹁〝 影 喰 球 〟。﹂
白ひげは薙刀の下に白い光で覆うと地面を突いた。すると影の刃は無残に割れ散った。
﹁こりゃ陽動だろ。﹂
白ひげは素早く薙刀を後方へ向けて振りかざした。するとモリアが背後に移動して
ドッペルマン
攻撃を繰り出そうと間合いを詰めていた瞬間であり、到底躱せぬと思われた。
﹁〝影法師〟﹂
白ひげが薙刀を振り抜くがモリアは目の前から完全に消えてしまっていた。そして
前方を素早く振り返ったが、モリアは完全に攻撃を仕掛けており、武装色と影を覆った
手刀で白ひげの腹を貫いた。
され、マルコは不死鳥の能力を封じる為に海楼石の手錠をはめた後に黄猿のレーザーに
コとジョズが気をとられた瞬間に二人の大将は攻撃を仕掛けた。ジョズは全身を凍ら
辺りに大量の血飛沫が飛んだ。白ひげは膝をついて傷口を抑え込んだ様子を見たマル
モリアの手刀は完全に白ひげの内臓をも傷つけていた。モリアは素早く手を抜くと
﹁ゴフッ...。﹂
怪物
242
貫かれた。
早く白ひげを討ち取れ
背後から大声が聞こえた。
﹁何をしている
!!!!
動した。
﹂
こ
こ
としてのメンツが立たない事を理解していたため、赤犬の真横を通って後方へ歩いて移
モリアは海賊の頂点たる白ひげが同じ海賊であるモリアに殺されたのであれば海兵
﹁無論...。これより俺は防衛に徹しよう。﹂
た。
背後から赤犬がモリアに忠告をすると彼は当たり前だという顔をしながら返事をし
﹁モリア...わかっちよろうの...。﹂
回避したため無傷だったが、少し不満げな顔をした。
まるで蟻が象を薙ぎ倒す様に激しく攻め立てた。モリアは素早く〝影法師〟で後方へ
ドッペルマン
モリアがいる事を他所に一斉に海兵達が大砲を放ち、剣で次々と白ひげの胸を貫く。
!!!!
戦場へ出てきていいという身体ではなかったのだ。その様子をモリアが悟った瞬間に
白ひげは止まらぬ出血を他所に心臓辺りを抑え込んでいた。彼は病にかかっており、
思え...。﹂
﹁やはり老いた老兵は戦場に出るモノではないな。もはや戦場に貴様の居場所はないと
243
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
俺ァァ白ひげだァァッッッ
﹂
白ひげより実力者と思われるモリアという男もまた怪物であると理解した。
無事であることから圧倒的に短い能力の発動時間に精密度、そして己らが怪物と感じた
ついて停止するとゆっくりと地面へ降ろされた。そして吹き飛ばされた海兵達が全員
吹き飛ばされ宙を舞う海兵達は己の死を覚悟したが、身体の中心に細い影の糸が巻き
した。
吹き飛んだ。この手負いでなおこの強さ、その場に居合わせた者達は﹃怪物﹄だと理解
白ひげは薙刀に力を加えて力の限り振るった。すると海兵達がゴミのように一斉に
!!!!
おれを殺せると思ってやがる...。助けなんざいらねぇよ...ハァ...ハァ...
﹁こいつら...これしきで...。ハァ...ハァ...
て後ずさりとしたが踏みとどまった。
モリアの背後で胸を無数の海兵に貫かれた白ひげはもろに砲撃を顔に受けた。そし
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁親父
!!!!
﹁前言撤回だ。老いてもなお怪物か...。﹂
怪物
244
救われた灯火 1
白ひげは海兵達を薙ぎ払い突き進むと彼の背中を守る様に海賊達が集まった。する
とセンゴクは素早く執行者にエースを殺す様に命じた。海賊達が彼の名を叫ぶと白ひ
げは処刑を止めようとしたが、大きく吐血をして膝をついた。誰もがエースは処刑され
ると思った刹那、マリンフォードへ怒号が響いた。
﹂
しれないのだ。ルフィを人質として単独で呼び寄せて捕らえればいい。最低でも有害
ただでさえドラゴンの息子という強力なカードを得れば革命軍のボスを潰せるかも
ドラゴンの息子という存在だけならまだしも、覇王色まで持つとは...。﹂
﹁覇王色の覇気...まだ制御すらままならぬ。だが奴はこの戦場からは逃れられない。
フィの周囲にいた海兵達も次々と気を失っていく。
頭から出血し、ボロボロのルフィが叫ぶと執行人の二人がバタリと倒れた。するとル
﹁やめろォォォォォォォォォッッッッッ
!!!!
245
麦わらのルフィを全力で援護しろォォォッッ
因子として海軍が始末するだけでも十分な収穫である。
﹁野郎共ォォ
﹂
!!!!
ルフィお前を敵と見なす
が走りながら何かを見ると祖父であるガープが立ち塞がっていた。
﹂
!!!!
わしゃァ海軍本部中将じゃ
!!!!
そこどいてくれよ
﹁どくわけにいくかルフィ
﹂
!!!!
理をした。ルフィが半分程登ったところで頭上から何かが落ち、土煙が舞った。ルフィ
その上をルフィが単独で登り始めると海軍は大砲で的にしようとしたが、隊長達が処
﹁...便利な能力だな。﹂
での道を作った
ハサミになっている男が現れて、刃を開いて地面を削り、そして上へ放り投げ処刑台ま
やがてルフィの側にいた革命軍のイワンコフの派手なアフロの中から両手が巨大な
一部の囚人が海軍を抑え始め、ルフィを優先に進ませ始めた。
王の資質を持つ事を知った白ひげはルフィを援護するよう指示を出した。海賊達や
!!!!
!!!
ガープは処刑台までの通路から落ちると地面へ激突した。そしてエースとセンゴク
り拳への力が緩んだ。そして静かに目を瞑るとルフィの拳を受け入れた。
二人は拳を振り下す刹那、ガープの脳裏に幼き頃のエースとルフィとの思い出が過ぎ
!!!!
﹁じいちゃん
救われた灯火 1
246
の立つ処刑台へ登りつめた。密かにハンコックから貰ったエースの手錠の鍵を差し込
﹂
もうとすると一本の光が鍵を貫いて破壊した。
﹁私が逃すと思うか
あの処刑人...手から何かを...。﹂
?
︵だが実に厄介だ。〝白ひげ海賊団〟の士気が尋常なく上がっている...。早急に手を
達の様子を確認すると大いに歓声が上がっていた。
モリアは処刑人が作ったと思われる鍵を見て仲間へ加えたいと考えた。そして海賊
ろ...欲しいな。生きていたら部下へ勧誘しよう。︶
︵あ の 鍵...蝋 の 能 力 者。か な り 応 用 力 の 効 く 〝 テ ゾ ー ロ 〟 の 下 位 互 換 の よ う な と こ
斉に砲撃をした。一斉砲撃による爆炎の中に炎が現れて3人の人影が地面へ降りた。
処刑台はセンゴクの拳の力に耐えられず砕けるとルフィと生身のエースへ向けて一
﹁ん
血を吐きながら庇った。
した。ルフィは全身をゴム風船の様に膨らませて、海楼石により生身となったエースを
センゴクが突然巨大な大仏に変化し、全身は金色に変化してルフィ諸共殴り潰そうと
?
247
エー ス
殺
る
打たねば滅ぼされるのはこっちだな。︶
とエースは静かに弟を庇う様に前へ立ち塞がった。
エースにより蹴散らされた海兵の後方へ現れた。ルフィはモリアの襲来に慌て始める
モリアは冷たく呟くと地面へと潜り込んでその場から姿を消した。そしてルフィと
﹁...士気を削るか。﹂
救われた灯火 1
248
老兵の決意
こいつはめちゃくちゃ強ぇぞ
気をつけろ
!!!
﹂
!!!!
﹁白ひげのおっさんと
﹂
白ひげ海賊団
﹁しかも今より10年前だからな...。だがモリア。俺がお前を討ち取りゃ俺 達の士気
わなかった。無理して否定する手間かける気にはならなかったのだ。
モリアは張り合うという言葉を聞いてピクッと不快そうな反応をしたが、特に何も言
!!!!
﹁下がってろルフィ...。こいつは全力の親父と張り合った男だ。﹂
声をあげた。するとエースはルフィの前へ出た。
ルフィはモリアとの戦いで容易く殺されかけた苦い思い出がまだ癒えていないのか
﹁エース
!
ロギア系最強種メラメラの実など取るに足らない能力者の一人に過ぎないのだ。
モリアはエースを悪の芽でなく、出芽すらしていない種と称した。彼からしてみれば
種〟を取り除けば借りができる。﹂
﹁自由になって早々悪いが死んで貰うぞ。貴様の存在は戦局を左右し、政府の不安の〝
249
が上がるとは思わなかったのか
﹂
﹁格 下 に 敗 れ る こ と を 考 え な が ら 戦 う 者 が い る か
が...。﹂
﹁へぇ...じゃ俺に負けたら俺が格上だな。﹂
りかぶった。
﹂
無論微塵も考えぬ者は敗れる
面白き男だ。﹂
二人は互いに挑発をし合いニヤッと笑うとすぐにエースは炎を纏った手で大きく振
﹁まだ若いな...力量も探れぬか。いや理解してもなお引かぬのか
?
?
?
﹁やったか
﹂
豪炎の拳がモリアを襲い焼き尽くすとその様子を見たルフィが口を開いた。
﹁さぁな...〝火拳〟ッ
!!!!
は少し表情を強張らせながらつぶやいた。
を継がなかった理由に多少なりと含ませるのではないか
海
賊
王
ジャー
ロジャーの息子と呼ばれた
?
﹁最強など客観的に見た第三者の邪推に過ぎぬ。呼称などあてにならぬぞ。海賊王の名
ロ
炎の中から無傷のモリアが現れるとゆっくりと歩いて間合いを詰め始めるとエース
﹁〝常闇狭霧〟...。やはりまだ若い。﹂
ブラック・ミスト
﹁いや...まだだ。﹂
?
﹁やっぱり一筋縄じゃいかねぇか...。流石は七武海最強の男。﹂
老兵の決意
250
くないという心情が... ﹂
﹂
!
﹁エース
こんにゃろ
!!!!
﹂
!!!!
から血を吐くと両手を地面についた。
モリアは足に覇気を込めてエースの腹を蹴りあげた。実体を捉えられたエースは口
﹁能力の発動が遅いな...。﹂
したのだ。
の足元の地面からモリアがすっと現れた。彼は地面へ影となりスイスイ移動して回避
モリアを取り囲む無数の光が爆発し激しい土煙が舞ったが、それが晴れる前にエース
﹁〝螢火...火達磨ッ〟
エースがニヤリと笑うと声をあげた。
モ リ ア が つ ぶ や く と 彼 の 周 囲 に フ ワ フ ワ と し た 黄 緑 色 の 無 数 の 光 が 囲 ん で い た。
﹁無駄な足掻きだ...。﹂
は〝影血閃〟で盾のようにして軽々ガードをした。
モリアは自分の非を認めるとエースは二本の燃え盛る炎の槍を投げつけた。モリア
﹁これは失礼...。無粋だったな。﹂
だ。﹂
﹁俺はゴールド・エースじゃねぇ...ポートガス・D・エース...そして白ひげの息子
251
﹁下がれルフィ
おめぇの敵う敵じゃねぇ
﹂
!!!!
加勢に来るだろうから早急に始末せね...ッ
﹂
﹂
エースを連れて
!!!
海兵や氷の大河を破壊し突き進む中、突如ドゴォォッッという激音が響いた。すると
みんな逃げろォ
﹁たとえ償いにならなくてもこうでもしなきゃ俺の気が収まらねぇ
こには赤犬に唆されて白ひげを刺したスクアードとその部下たちが乗っていた。
突然モリアの背後でバトルシップが動き始め、海軍本部へと突っ込み始めていた。そ
!!!!
﹁...流 石 は 二 番 隊 長。力 の 差 を 理 解 し て も 尚 立 ち 塞 が る か...。そ ろ そ ろ ジ ン ベ エ が
﹁こいつは俺の敵だ...。手ぇ出すな。﹂
いということを理解していた。
では手に負えない強さであるが、エースは自分とルフィがモリアから逃れる事もできな
ルフィはエースの言葉の本心を長い付き合いから理解していた。モリアには自分達
﹁エース...。﹂
ルフィがエースに加勢しようとすると、エースの怒号が響いた。
!!!!
!!!!
﹂
白ひげが片手で抑え、受け止めていた。
!!!!
腹からポタポタと血を流し命を削りながら戦場で暴れ続ける白ひげはスゥと息を吸
﹁親父
老兵の決意
252
うと大声をあげた。
全員必ず生きて新世界へ帰還しろ
﹂
!!!!
お前らとおれはここで別れる
!!!!
﹁今から伝えるのは最後の船長命令だ。よォく聞け野郎共...
253
潰えぬ炎 父
﹂
新時代に俺の乗り込む船はねぇ
﹂﹁ここで死ぬ気か⁉
親
?
達
﹂
!!!!
﹁オヤジッ
子
!!!
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁親父ッッ
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
ケ
屠らんとギロリと睨んだ。
リ
息子達は涙を流しながら父親を呼んだが、白ひげは一切振り返らずただ息子達の敵を
!!!!
と海軍の要塞を一撃で破壊した。
海賊達が白ひげの決意を目の当たりにすると、白ひげは大気にパキパキとヒビをいれる
息
﹁俺ァ時代の残党だ
!!!!
***
﹁随分長く旅をした...決着つけようぜ...海軍...。﹂
潰えぬ炎 254
∼モリアside∼
﹁モリア
﹂
行こうおっさんの覚悟が
﹂
!!!!
無駄にゃしねぇ...。﹂
!!!
∼モリア・白ひげside∼
***
﹁わかってる
止めてこの島から脱出するべきだど言った。
その様子を見たエースが叫ぶがもう遅かった。するとルフィが白ひげの想いを受け
﹁エース
!!!!!!!!
モリアは白ひげを睨みつけると地面にある影に潜り込んでその場から消えた。
﹁あのジジイ...マリンフォードを鎮める気だな。勝負はお預けだ。﹂
255
﹁歳不相応に暴れてくれるよ...俺は血の気の多い老人の介護などする気はないぞ。﹂
リベンジ
モリアと白ひげが三たび相見えると挑発するような余裕の笑みを浮かべ、嘲笑した。
彼は今まで何度も白ひげとの再戦の機会を奪われ続けた。だがもう面倒な隊長は退却
を始め、更に近くには赤犬の様な海賊排斥主義者はいなかったのだ。即ち誰にも邪魔を
されることなく、己が白ひげを討ち取る事ができると理解していた。擦り傷一つ負わず
﹂
若い自分と腹を貫かれ更に無数の銃弾と斬り傷を受け、かつて最強であった老人とでは
勝負にならぬと悟っていた。
﹁グラララ...墓は要らねぇ。海軍本部の瓦礫の上が俺の墓場だァァァッッ
された
すると土煙の隙間から刃が迫り来たのでモリアは覇気でガードするが少し後方へ押
リアは後方へ軽く下がり避けると、薙刀の刃は地面に激突し土煙が舞った。
目を血走らせ命を削りながらモリアへ攻撃を仕掛けようと薙刀を前に振るった。モ
!!!!
﹁お前らそこをどけ
﹂
!!!!
と暴れまわる〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートという男に舌を巻いた。
モリアは命が枯れそうになりながらも最強の海賊として親父として息子達を守らん
﹁先よりパワーが増している...。やはり貴様は俺の予想の上を行く...。﹂
潰えぬ炎 256
突如モリアと白ひげを崖を除いた全てを取り囲んでいた海兵達が豪炎に包まれて苦
しんだ。炎の中にはエースがおり白ひげへ土下座をしていた。これは謝罪としてでは
﹂
なく感謝としての意味を持つという事を誰もが理解していた。
﹂
﹁一つ聞かせろエース...。俺が親父でよかったか
れ
∼ルフィ・エースside∼
***
﹁決意の固めた男の餞けを邪魔をする事など到底俺にはできまい...。﹂
別
﹁すまねぇな...時間取らせた。﹂
と白ひげはゆっくりと息子達の殿の為に目の前の敵わぬ強敵︵モリア︶を見据えた。
そして声をあげて笑うとエースは後ろを振り返り走り始めた。満足そうな顔をする
﹁グラララララ...。﹂
白ひげはエースの鋭き視線を受けると愉快そうにニヤッと笑った。
﹁勿論だ
!!!!
?
257
﹁エースを逃して即退散とはとんだ腰抜けの集まりじゃのう白ひげ海賊団...船長が船
長...それも仕方ねぇか。白ひげは所詮先の時代への敗北者じゃけぇ...。﹂
﹂
ルフィとエースの背後から赤犬が挑発する様につぶやいた。その言葉を聞き逃さな
...取り消せよ...今の言葉ッ
!!!!
かったエースがピクッと反応し振り返った。
﹁敗北者...
乗るなッ
﹂
!!!!
エースは父親の侮辱を耳にし赤犬へ距離を詰めようとした。
?
ゴミ山の大将にゃ誂え向きじゃろうが
﹂
!!!!
を払いのけて距離を詰める
﹁白ひげは敗北者として死ぬ
﹁白ひげはこの時代を作った大海賊だ
白ひげだァ
﹂
!!!!
﹁この時代の名が
!!!!
﹂
︶
!!!!
!!!!
赤犬がエースを挑発するとエースは激しく歯軋りをして大声をあげた。
!!!
海賊の一人がエースの肩を抑えて親父の望みを為すべきだと言ったが、エースはそれ
﹁エース
!!!
︵俺を救ってくれた人をばかにするじゃねぇ
潰えぬ炎 258
エースは豪炎を纏った炎を、赤犬は炎をも焼き尽くすマグマを、二人の拳は激しく激
﹂
突したがエースが軽々吹き飛ばされて身体が焼けた。その様子をわき見していたモリ
アが口をあけた。
﹁向こうでも始まっ...ッ
∼ルフィ・エースside∼
***
飛んだ。
て〝 影 鎧 〟を身に纏ったが強力な破壊力も前に身体を水平を保つことができず吹き
ブラックローブ
さなかった。完全に薙刀の間合いに入っていたモリアは到底避ける事ができず、辛うじ
かっただろう。だが相手は〝白ひげ〟エドワード・ニューゲート。彼はその隙を一切逃
けていた老人を前に僅かな慢心があったのだ。普通の強き老人であれば何の問題もな
白ひげが薙刀の先端に光を纏って薙刀を振るおうとしていた。モリアは命の尽きか
!!!!
259
﹁よぉ見ちょれ...。﹂
焼かれた痛みに耐えるエースを他所に赤犬はルフィへと目を向けて狙いを定めた。
エースの制止に赤犬は全く耳を傾けず、エースをも焼き尽くすマグマを右手に纏いル
フィの身体を貫こうとした。
ルフィが赤犬の攻撃が自分へ向けている事に気付いた瞬間、目の前を炎が遮った。
ルフィはその炎がエースであると理解すると同時に彼が腹を貫かれて血反吐を吐い
たのを目の当たりにした。赤犬はエースの身体から己の腕を抜くとゆっくりとエース
はルフィへもたれかかるように倒れた。そして海賊達の悲鳴のような叫びと兄が自分
を庇って致命傷を受けた事に錯乱するルフィの耳元でエースが静かに呟き始めた。
﹁ルフィ...おれがこれからいう言葉をお前からみんなに伝えてくれ...
潰えぬ炎 260
261
オヤジ
みんな
そしてルフィ...
!!!
愛してくれてありがとう
﹂
も言える大海賊時代を引き起こした〝海賊王〟ゴールド・ロジャーを父親に持つ。即ち
ポートガス・D・エース...。彼の死した顔には笑みが浮かんでいた。彼はこの悪夢と
面へ突き伏せた。
その言葉を言い放つと同時にエースはゆっくりと倒れ、まるで人形の様に抵抗せず地
!!!!
鬼の血を引くこの俺を...
今日までこんなにどうしようもねぇ俺を...
!!!
親
族
弟
誰もがロジャーを憎んでおり、誰もが嫌悪していた。その悪魔の様な息子である自分と
家
いう存在が誰からも必要とされていないと幼き頃より肌に感じていた。
父
だが今では自分の命を投げ打ってくれる仲間達
悪魔の子を受け入れてくれた白ひげ
そして数多くの修羅場を超えてまで己を助けようと模索してくれたルフィ
﹄
彼の望んだ本当のモノは名声や力などではなかった
?
みが全てを物語っていた
その答えを知る事こそが彼の想いであり、そしてその問いの答えは彼の幸せそうな笑
﹃自分はこの世に生まれてきてよかったのか
潰えぬ炎 262
﹂
エドワード・ニューゲート 1
﹁次こそはお前じゃ〝麦わら〟ッ
ジンベエ
﹂
!!!!
マルコが赤犬を見て口を開いた。
エースの弟を連れて行けよい
!!!
赤犬がマグマを右手に纏いルフィを貫こうとすると青い炎が現れた。一番隊隊長の
!!!!
﹂
魚人であるジンベエが一番ルフィを生かせる可能性が高かったので指示をだしたのだ。
マルコは赤犬には手出しを出さない様にいい、更に島であるマリンフォードにおいて
﹁こいつの命はやらねぇ
!!!
ジンベエはルフィを小脇に抱えて走り始めるとマルコは白ひげ海賊団に問いかけた。
﹁わかった
!!!!
﹁その命こそ生けるエースの意思だ
!!!!
263
エースに変わって俺達が必ず守り抜く
もし死なせたら白ひげ海賊団の恥と思え
﹂
!!!!
ルフィを逃す事に一致団結した白ひげ海賊団は赤犬から逃げるのをやめて取り囲ん
!!!
危ない
﹂
だ。やがて赤犬はマルコを吹き飛ばした。
﹁赤犬さん
!!!!
﹁オヤジが怒ってる
みんなここから離れろォ
﹂
!!!!
﹂
岸にいる海賊達を前に海兵達は乗り越えられず何もできなかった。
白ひげの背後の広場がぱっくりと巨大な狭間現れ、海兵と海賊達を隔離させた。向こう
動けぬ赤犬は真っ二つに割れた地面の亀裂の下へと落ちていった。土煙が晴れると
!!!!
れた。だがその振動の勢いは止まらず海軍本部へとぶつかり完全に大破させた。
だが全く怯まず白ひげは赤犬の脇腹に拳をぶつけて振動を起こすと赤犬は吐血し倒
した。白ひげは避けようとしたが深手の傷と疲労からか躱しきれず顔の一部を削った。
赤犬は苦悶の表情を浮かべながらマグマに変えた拳で白ひげの顔へ殴りつけようと
﹁グ...冥狗。﹂
めいごう
憤怒の表情で赤犬へ襲いかかる白ひげを見た海賊達は一斉にその場から離れ始めた。
!!!
一撃を赤犬の頭部を殴り、そのまま地面へ叩きつけた。
とある海兵の一言で背後に気配を察知すると共に今までより強力な白い光を纏った
!!!
﹁ゲホッッ...おんどれぇ...白ひげェェ
エドワード・ニューゲート 1
264
﹁く そ...油 断 し た。や は り 俺 も ま だ 未 熟 か...。俺 な ら 余 裕 で 向 こ う 岸 へ 行 け る が 〝
白ひげ〟を始末せねばならん。﹂
モリアが己の未熟さを11年前の白ひげに敗れた時と同じ様に痛感させられた。そ
﹂
して影で白ひげの元へ移動しようしたが、一人の海兵の声によって阻まれた。
本部要塞の影に何かいるぞ
!!!!
﹁ゼハハハハハハ
久しいな
死に目に会えそうでよかったぜオヤジッ
!!!
﹂
!!!!!
負ってもなお戦意の消えない白ひげを見て嘲笑った。
〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチは常人ではとうに死に絶えているであろう傷を
﹁ティーチ...。﹂
!!!!
い手であるはずなのにこの戦争へ参加せずインペルダウンへ向かったと知ったからだ。
処刑台の上にいる人影の存在に気づき呟いたモリアは冷たく睨みつけた。均衡の担
﹁黒ひげ海賊団...。﹂
めき始めると処刑台の上に数名の人影がいることに気がついた。
栗のような顔をした巨人族が呟いた。オーズ程巨大そうな巨体をみた海兵達はどよ
﹁あ...見つかっちった。﹂
巨人がいたのだ。しかも巨大な囚人服を来ていた。つまり脱獄囚である。
その一言で戦場の後方にいた者達は気付いた。海軍本部に身を隠すようにしていた
﹁何だありゃ
!!!
265
そして四番隊隊長のサッチを殺して逃亡し、更にエースを海軍に引き渡した元部下を
白ひげは睨みつけた。
そして怒りに身を任せて振動を処刑台へ向けて放つと衝撃が大気を伝わり、黒ひげ達
の足場を完全に破壊した。やがて瓦礫の中から出てきた黒ひげ達は無傷であった。
﹂
!!!!
オヤジ
﹂
黒ひげの元へ向った白ひげだったが、全身から血を垂れ流していた。二人が向かい合
﹁サッチの無念...このバカの命を取って俺がケジメをつける
サッチも死んだがエースも死んだなぁ
!!!!
うと黒ひげが動いた。
ブラックホール
!!!
みのリングの様に闇の足場を創った。
突如黒ひげの身体から闇が噴き出す様に溢れ出し広がった。そして白ひげと自分の
﹁〝 闇 穴 道 〟
!!!!
﹂
﹁おっとっと...無駄だぜ
俺の前では能力は全て無駄
!!!
くろうず
〝闇水〟﹂
!!!
﹁ゼハハハ...もう振動は起こせねぇ。﹂
様に
黒ひげの闇を纏った右手で、白い光に触れるとそれが消滅した。まるで呑み込まれる
!!!
白ひげは右手に白い光を覆い、黒ひげへ向けて打ち付けようとした。
!!!!
﹁俺はアンタを心より尊敬し、憧れてたがアンタは老いた 部下一人救えねぇ程にな
エドワード・ニューゲート 1
266
白ひげは薙刀を思いっきり黒ひげへ振るった。すると激しく血が飛び散り、黒ひげは
﹂
倒れて痛みに悶え苦しんだ。白ひげは薙刀と足で黒ひげの両手を封じると空いた右手
俺ァァ息子だぞォォォ
で黒ひげの首を掴み白い光で覆った。
﹁おいやめろォォ
!!!!
死に損ないの癖に黙って死にやがらねぇかァァァッッッ
右手に白い光を覆った。
﹁この怪物がァァァ
﹂
!!!!
は怒りで身体中から蒸気を噴き出しながらゆっくりと歩いて間合いを詰めた。そして
晴れると頭から大量の血を流した黒ひげがゆっくりと立ち上がった。すると白ひげ
白ひげは無言で強力な振動を起こすと大地がヒビ割れ、激しく土煙をあげた。
!!!
光が消えて一瞬怯んだ。
﹂
げの身を案じて叫ぶが、白ひげは一歩も動けず銃弾と斬撃を受け続けた。 黒ひげが部下達にそう指示をすると銃弾と斬撃を雨の様に浴びせた。海賊達が白ひ
﹁やっちまえェェお前らァァァ
!!!!
黒ひげが吐き捨てる様にいいながら銃を取り出して撃った。すると命中する寸前に
!!!
267
エドワード・ニューゲート 2
﹁んあっ弾切れだ...。﹂
満身創痍で暴れ尽くし、全身から垂れ流す様に血を流し続ける白ひげへ向けて黒ひげ
海賊団達の攻撃が止むととうに死したと思われた男が口を開いた。
﹂
﹁お前じゃねぇんだ...。﹂
あげた
白ひげの気力を絞り尽くして発する様な声を聞いた黒ひげはおののくように大声を
﹁まだ生きてんのかよ
!!!!
か来るその世界中を巻き込む程の巨大な戦いを恐れている
負ってこの世界に戦いを挑む者が現れる...。センゴク...お前達〝世界政府〟はいつ
と 受 け 継 が れ て き た。そ し て 未 来...い つ の 日 か そ の 数 百 年 分 の 〝 歴 史 〟 を 全 て 背
達がいる様に...いずれエースの意志を継ぐ者が現れる。そうやって遠い昔から脈々
﹁ロジャーが待っている男は少なくともお前じゃねぇよ...。ロジャーの意志を継ぐ者
エドワード・ニューゲート 2
268
!!!
269
ピー
ス
﹂
興味はねぇが〝あの宝〟を誰かが見つけた時...
世界はひっくり返るのさ...
誰かが見つけ出す...
ン
その日は必ず来る...
ワ
〝ひとつなぎの大秘宝〟は実在する
ン
ピー
ス
を祈り、やがて意識はゆっくりとゆっくりと蒸発する様に消滅し始めた。
や が て 彼 の い う 〝 ロ ジ ャ ー の 求 め る 男 〟 が 〝 ひとつなぎの大秘宝 〟 を 見 つ け る こ と
ワ
狂させ新世界へ選ばれた強者共が暴れに来ることとなる。
ロジャーを彷彿させる様な語り口であり、そして白ひげの最後の一言は再び海賊達を熱
まるで遺言の様な白ひげの言葉はまるでかつてローグタウンで処刑されたゴールド・
!!!!
﹂
!!!!
感謝しているさらばだ...息子達...
お前達には全てを貰った...
俺はここまでだ
許せ息子達とんでもねぇバカを残しちまった...
広まった。
センゴクの怒号は白ひげの耳へと届く事なく無情に〝でんでん虫〟から世界中へと
﹁貴様ッ
エドワード・ニューゲート 2
270
宝や海賊のロマンに全く惹かれなかった男が欲しかったのは〝家族〟であった。誰
もが当たり前に持つ存在であっても彼にはそうでなかったのかもしれない。どうあれ
﹂
〝白ひげ〟はこの望みを叶えることができ、〝新たな意志〟へこの大海賊時代の頂点の
座を託した。
﹁死んでやがる...立ったままァッ
***
最強の男は静かに静かに頬から雫を垂らしていた。
達の声がマリンフォードに響き渡る中、少し離れた場所で周囲に海兵しか居ない七武海
黒ひげが微塵も動かぬ白ひげを見据え驚きの声をあげた。親父の死を泣き叫ぶ海賊
!!!!
271
∼黒ひげside∼
﹂
!!!!
なくなった。
∼11年前∼
***
人
る事なく頬を涙で濡らし続けた。
ク ルー
モリアはただ死した〝白ひげ〟との思い出を振り返りながら、周囲の海兵に気づかれ
恩
巨大な黒い布を白ひげへ被せ、部下達が周囲を取り囲むとその中へ黒ひげが入って居
﹁ハァ...ハァ...始めるぞ
エドワード・ニューゲート 2
272
〝モビーディック号・船長室〟
子
〟を天秤にかけて長考による長考を重ねた。だが彼自身の大望を成し得る程の実力は
モリアは敵である自分を治療してくれた恩義と己の大望である〝大海賊時代の終焉
ねばならぬ事がある。﹂
﹁...俺は貴方の息子にはならぬ。命を見逃してくれた大恩があるとはいえ俺にはやら
に来たモリアが隊長になるのは皆の信用を得てからの話だったが...。
は空席の二番隊副隊長の座を約束していた。もちろん敵として〝白ひげ〟の命を狙い
仲間に誘われていたのだ。モリアの強さは隊長達を凌駕しかねない強さであり、白ひげ
息
モリアはこの数日前〝白ひげ〟と決闘をし敗れるものの治療を受け、更に白ひげの
た。
そして二人に向き合う様に立つ〝王下七武海〟ゲッコー・モリアが三人で船長室にい
マルコ。
椅子に座る白ひげ海賊団船長〝白ひげ〟、そして彼の側に立つ一番隊隊長〝不死鳥〟
﹁それで...出直すか空席の二番隊隊長につくか決めろよい...。﹂
273
なかった。かといって彼の夢を諦めるなど到底できなかった。
﹁グララララララ...だったらしょうがねぇ。﹂
﹄と言い
白ひげは彼の苦渋の決断を吹き飛ばす様に豪快に笑いながら、巨大な瓢箪に入った酒
﹂
を呑んだ。勿論その程度でモリアが納得するわけもなく口を開いた。
﹁だが恩義に背くのは筋が通らぬ...。俺は何を貴方にすればいい
﹃おめぇみてぇなハナッタレに何かをされる程この俺は落ちぶれちゃいねぇ
の遥か奥底の想いをモリアに語り出した。
様な事は言えなかった。そして瓢箪を地面に置くと静かに海賊の最強とされる己の心
返そうとした白ひげだったが、モリアの真剣で揺るがぬ覚悟を秘めた両の瞳を前にその
!!!!
?
﹂
?
白ひげ
そしてこの海はどう
?
には誰も託せぬかもしれない頼みをした。
一瞬で正解を導いたモリアに白ひげは真剣な表情でモリアの瞳を見つめると彼の他
﹁覇権争いだな...。海賊、市民、海兵、多くの命が失われる。﹂
は彼の問いに答えた。
モリアとマルコは〝最強〟らしくない問いに驚きを隠せなかったが、すぐさまモリア
なる
が寿命には勝てねぇ。もし俺という傘を失った家族はどうなる
﹁俺ァ...怪物だ、バケモノだと呼ばれてるが所詮俺も人の子...。最強とも呼ばれよう
エドワード・ニューゲート 2
274
〝白ひげ〟にも黒ひげにも何の異変はない
﹁どの道俺はそう長くはねぇ老いた老兵だ。もし俺が死んだら...
***
∼黒ひげside∼
﹁黒ひげが出てきたぞ
﹂
!!!!
﹁う
何だ⁉
!
﹂
﹁ゼハハハ...〝 闇 穴 道 〟
ブラックホール
?
﹂
黒ひげが勿体ぶるように海兵達の前へ出ると彼の部下達はニヤニヤと笑っている。
﹁海軍ん∼...晴れて再び敵となるわけだ...。俺の力ってモンを見せておこう...。﹂
特に以前と変わらぬ様子の二人を見て声をあげた。
巨大な黒い布から出てきた黒ひげとその隙間から見える白ひげの亡骸を見た海兵は
!!!
275
!!!
ちから
地面を闇が覆い尽くす様に広がると海兵達の足元からゆっくりと沈み始め、やがて全
身が呑み込まれた。
黒ひげがニヤッと笑って白ひげが振動を起こす様な構えをし、掌に白い光を覆うと大
﹁これが俺のヤミヤミの実の能力。そして...﹂
気へ叩きつけヒビを入れる寸前に荒れ果てたマリンフォードの戦場に途轍もない爆音
﹄
が響いた。
﹃ボゴン
***
軋りを止め、儚げで渇いた瞳で黒ひげを睨みつけていた。
黒ひげが目を見開き驚くと、死神の如く殺気を放つ男は異常なほど激しくしていた歯
識した。
勢力に侵されて消滅すると誰もが得体の知れぬ黒ひげへと立ちふさがる彼の存在を認
圧倒的な武装色の覇気を覆った影の拳が白い光を抑え込んだ。そして光が全て影の
!!!!
﹁もし俺が死んだら...
エドワード・ニューゲート 2
276
277
おめぇが家族を守ってやってくれ...。﹂
闇の深淵 1
﹂
﹁ゼハハハおめぇは関係ねぇだろモリア。もうくたばった時代遅れのじじぃに何の義理
があるんだ
されたただの男だという事を理解した黒ひげは疑問をぶつけた。
﹁義理はないが...大恩がある。﹂
白ひげ海賊団
モリアがゴミでも見る様に見下すとゆっくりと口を開いた。
﹁どうしたお前ら...
そしてエドワード・ニューゲートの意志を絶やすんじゃねぇ
まだ戦争は終わってねぇ...
エースの意志をッ
!!!!
き始め立ち上がり始めた。
!!!!
白
ひ
げ
﹂
モリアの言葉で悲しみに明け暮れる海賊達は下げていた顔をハッとしてあげ、涙を拭
!!!!
己の目の前に立ち塞がったモリアの様子から七武海としてではなく、一人の恩人を殺
?
﹁モンキー・D・ルフィを逃せ そいつは海賊の頂点が認めた未来の王に成り得る器を持
闇の深淵 1
278
つ男だ
げ
‼
﹂
?!!
死を恐るるな
ひ
?
恐れとは自ら意志を挫くこと
白
白ひげ海賊団ッ‼
!!!!
ルフィを殺さんとする赤犬へ向けて攻撃を仕掛けた。
***
∼マルコside∼
!!!
をさせた。そして部下達へ口を開いた。
一部の納得出来ぬ海賊達がモリアへ向けて銃を向けようとするとマルコが腕で制止
親父を何度も殺そうとしといて何を今さ...ッ
﹂
敵とはいえモリアの鼓舞により海賊の頂点の想いを絶やすわけにはいかないと感じ、
さぁ立ち上がれッ
!!!
!!!
!!!
﹁あの野郎
!!!
279
ア
イ
ツ
﹁ティーチ は モ リ ア に 任 せ ろ。あ の 言 葉 は 本 心 だ よ い..
.。本 当 は こ の 戦 争 に 参 加 し た
くなかったはずだよい。﹂
事実モリアはこの戦争で二つの天秤に惑わされていた。恩人か正義の要塞...護る
恩
人
べきモノはどちらも重く大切だった。そこで彼は己の立場を尊重し、白ひげ海賊団に牙
を剥いた。そして白ひげの頼みを今成し得ようと動いたのだ。己の立場を揺るがしか
﹂
ク
ズ
ねない彼の想いをマルコと11年前の出来事を聞いていた隊長達は〝黒ひげ〟をモリ
アへ任せた。
﹁マルコ隊長...一体どういう
はそれを遮りモリアを睨みつけながら己を妨げる敵︵白ひげ海賊団︶へと距離を詰めた。
マルコの側にいた海賊の一人が疑問をぶつけようとするが、ルフィを始末したい赤犬
﹁白ひげ海賊団の肩を持つなどモリアといえど所詮は海賊...。﹂
?
***
﹁後で皆に話すよい...。ひとまず赤犬を止めるぞ。﹂
闇の深淵 1
280
∼モリア・黒ひげside∼
ねぇよ。﹂
黒ひげがモリアを挑発すると、彼は静かに口を開いた。
﹂
﹁一つ問おう...戦場において最も足手纏いになる者が何かわかるか
﹁あん
?
我が命が貴様の前で生ける限り。﹂
ぬ...
手く剣は振るえない。故にもはや海兵、海賊だろうと何人たりとも貴様らに殺させはせ
﹁臆病者でも敗者でもない...死んだ者だ。人は友人や仲間や恋人、肉親の屍を前に上
?
﹂
﹁ゼ ハ ハ ハ...〝 白 ひ げ 〟 の い ね ぇ 〝 白 ひ げ 海 賊 団 〟 み て ぇ な 小 物 の 衆 に は も う 用 は
﹁戯言をぬかすな...。俺は貴様の様な義理を通さぬ男は好かん。﹂
はなく己の仲間にしようとした。だがモリアは冷たい目で睨み続けるだけだった。
黒ひげはモリアの鼓舞を気に入らなそうにしたが、彼ほどの男をみすみす見逃すわけ
きる。おめぇの言う均衡ってモンがなくなるはずだ。﹂
﹁ふん...モリア俺の仲間になれよ。おめぇ程の男が俺と手を組めばこの世界を支配で
281
連れねぇ野郎だ。﹂
モリアがこれ以上黒ひげ海賊団による犠牲者を一人も出さぬと言い放つと黒ひげは
ニヤニヤしながら口を開いた。
﹁おいおい...俺たちゃ殺していいってか
﹁言うたろう...貴様は好かぬ。﹂
﹁おめぇも理解したはずだ...ヤミヤミの能力とグラグラの能力を手にした俺は最強だ
実の白い光を...そして左手にはヤミヤミの実の闇を溢れ出させた。
モリアは冷たく黒ひげの冗談を流すと、黒ひげはニタァっと笑い、右手にグラグラの
?
よほど脳への損傷が大きいと見える...。﹂
?
﹂
﹁最強だと
!!!!
にグラグラの地震を叩き込まれればどうなるかは予想などする必要はない。更に白ひ
黒ひげの闇の手に捕まれば影の能力は発動できなくなり、無防備な状態となる。そこ
ある。
影法師〟によるトリッキーな攻撃、そして白ひげより若い肉体と研ぎ澄まされた覇気で
ドッペルマン
ア が か つ て 白 ひ げ と ま と も に 戦 え た の は 〝 影 鎧 〟 に よ る 鉄 壁 の 防 御、そ し て 〝
ブラックローブ
黒ひげの言葉にモリアは何も言い返せなかった。確かにそうであるのだ。まずモリ
て無傷のおめぇだ。﹂ ﹁ゼハハハ...流石にわかってるだろうが圧倒的に不利なのは傷を負ってる俺じゃなく
闇の深淵 1
282
げの様に年老いてなく、覇気が弱体化していない黒ひげと覇気をかなり使い込んだモリ
アでは差は歴然だった。
更に能力の相性である。ヤミヤミの能力とカゲカゲの実は互いに性質は異なるとは
いえ、影と闇では完全に上下関係があると容易に予想できる。つまり影であるモリアは
闇からは逃れられない可能性が高いということだ。
つまりモリアは黒ひげの左手に一切触れることなく、最低限の覇気で同年代の肉体を
だんまりかよ
くろうず
〝黒渦〟
﹂
!!!!
持つ黒ひげの攻め続け勝利せねばならないのだ。
﹁ゼハハハ
!!!!
﹁ゼハハハ...あのモリアでさえも俺の前じゃ無力だ
事を見せつけられ容易に理解させられた。
﹂
二人の戦闘を見守る海兵達は黒ひげの振動攻撃が白ひげの放った振動を遥かに上回る
そして白い拳をモリアへぶつけると、大気が時空を歪んだと錯覚する程ヒビ割れた。
!!!!
力を封じられると黒ひげは右手に白い光を覆い、満足そうな声をあげた。
モリアは闇の引力から逃れる事はできず、黒ひげの闇に捕らえられた。肩を掴まれ能
た。
モリアは突如身体が黒ひげに引き寄せられ、初めて闇に引力の力があることを理解し
!!!
283
ブラックローブ
モリアは武装色の覇気でガードをしたが、〝 影 鎧 〟のない無防備な肉体は黒ひげ
俺
の覇気と振動に耐え切ることができずに、大量の血反吐をドバッと吐き、頭をガクンと
﹂
!!!!
前へ傾けた。確実に内臓を破壊したと感じた黒ひげは愉快そうな声をあげた。
そして全てを破壊する地震の力
これからは俺の時代だァァァッッ
!!!!!!
全てを引きずり込む闇の引力
世界中のつまらねぇ野郎共
!!!!
こそが最強だ
!!!!
﹁ゼハハハハハハ
!!!!
﹁...ッ
﹂
なかった。
中の人々は怯え始め、そしてあのモリアさえ圧倒する力を手にした事を未だに信じられ
インペルダウンの囚人の落としたでんでん虫により黒ひげという新たな脅威に世界
!!!!
でミシミシと言わせ、頭を傾けたまま口を開いた
黒ひげは突如右の手首に激痛が走った。見るとモリアの左手が己の手首の骨を握力
!!??
﹂
?
微かな声を黒ひげは聞き取れず、聞き直すとモリアは勢いよく血に塗れた頭をあげて
﹁あ
﹁...................ない。﹂
闇の深淵 1
284
周囲に血の水滴を飛ばすと大声をあげた。
﹂
!!!!
﹃ゴキュリ
﹄という身の毛のよだつ骨の軋み折れる音を響かせると黒ひげの右手は完
全に有り得ぬ方向にへし折れていた。
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹁野郎共やっちまぇぇぇッッ
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁ッ⁉
﹂
﹂
いた。そして前方からの常軌を逸する気迫を感じて前へ振り返した。
黒ひげが部下達の足元に覇気の込められた影の針が突き刺さっていることに気がつ
船長の一言で再び動こうとするが、何故か一歩も動けずその場に立ち尽くした。
?
!!!!
にモリアを蜂の巣にしようと部下達へ指示を出した
黒ひげは先ほどの白ひげの恐怖に劣らぬ程の絶望を感じた。そして先ほどと同じ様
めていく。
と口元から血をタラタラと垂らしながら、影を渦巻かせ一歩ずつ黒ひげとの間合いを詰
黒ひげは右手の想像を絶する程の激痛に悶え苦しんでのたうち回った。モリアは頭
﹁グァァァァァァァァァァァァッッッッッ
!!!!!
!!!!
モ リ ア は 右 手 に 出 来 う る 限 り の 力 を 込 め て 黒 ひ げ の 右 手 首 を 真 横 か ら 殴 り つ け た。
﹁〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートの力は断じてこの程度ではない
285
﹁ハァ...ハァ...テメェの闇は能力の使用不可であって〝解除〟じゃねぇんだろ
だ。
﹂
の闇の引力に引き寄せられる僅かな時間に影の針を黒ひげの部下達の足元へ放ったの
モリアが息を整えながら黒ひげへ言い放つと図星の様な顔をした。モリアは黒ひげ
?
このバケモンがァァァァッッッ
﹂
部下に頼らずに自分の力でどうにかするしかないと理解した黒ひげは右手を庇いな
がらゆっくりと立ち上がった。
﹁だったらこのまま沈んじまえ
!!!!
ある男を呼び出した。
リアは足元からゆっくりと沈み始めたが全く動じなかった。そして目を瞑り、心の中で
無事な左手で〝闇穴道〟をして、モリアを闇に呑み込ませて閉じ込めようとした。モ
!!!
み
モリアがそう言い放つと万物の時が止まった。目の前には怯えながらも技を放つ黒
時に影は闇をも喰らう...。﹂
〝黒ひげ〟...
我が本気を見せてやる...
高
﹁影とはこの世に存在す限り逃れられぬ宿命...
闇の深淵 1
286
ひげに二人の戦闘を固唾に見守る海兵達。彼らは微動だにしなかったが、ただ唯一モリ
アの精神のみは動き続けた。なぜなら彼は自分のもう一つの人格を呼び醒ましただけ
に過ぎず、これは極限まで凝縮された精神世界であるからだ。
モリアの精神の空間に7メートルはあろうかという恐ろしい男が現れた。彼の名は
ゲッコー・モリア...。奇しくも二人は同一人物である。かつて精神の攻防で肉体を奪
い合ったなかであるが憑依をしたモリアは完全に己の支配下に置き肉体は奪いにくる
事は無くなった。
本来のモリアは憑依モリアに対してもはや敵意を持ち合わせていなかった。彼の強
力な精神力に太刀打ちできなくなったため、争うより仲良くした方が偽物とはいえ憑依
モリアとある程度の会話や期間限定で肉体を譲る交渉もできるからである。
︶
?
本来のモリアは恐ろしく高い声だが威圧や敵意を微塵も感じさせぬ口調で話しかけ
る。一つ確実に言えるのは確実に均衡は崩される。偽善者のおめぇはどうしたい
︵キシシシ...よぉ半端野郎...確実にあの黒豚野郎は〝白ひげ〟の後釜を奪いにかか
287
た。彼は偽物という以前に憑依モリアをいたく気に入り、彼の野望がどこまで世界に通
用するかを見てみたくなったのだ。
粋な闇でない俺では貴様の様に非情にはなれぬ。だが時にそうにならればならぬ時も
﹁俺という存在はある時に光へ、ある時に闇へと形を変える。ゆえに闇でありながら純
ある。さっさと俺に力を寄越せ。﹂
︵キシシシ...おめぇに手を貸しゃ面白ぇモンが見られそうだからな。もしおめぇが腑
抜けちまったらその時は容赦しねぇぞ...︶
本来のモリアは珍しく憑依モリアへ真剣な表情を見せると、憑依モリアは軽く笑みを
浮かべながら鼻を鳴らすと口を開いた。
た。
の塊を放出して憑依モリアの身体へとスゥと同化し、影という影が全身から溢れ出し
その言葉を本来のモリアが耳にするとギザギザの歯を見せる様に笑うと、身体から影
﹁あり得ぬな...俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。﹂
闇の深淵 1
288
289
ゆっくりと目を開くと時は再び動き始め、モリアの身体は以前より遥かに強力で大量
に影が纏われていた。
モリアが己の狂気性を秘めた第二の人格を拒まず完全に受け入れし時...
彼の能力は新たなステージへと登りつめる
闇の深淵 2
悪魔の実の新たなステージ...それを人は〝覚醒〟と呼ぶ。能力者は稀に覚醒し、能
力の系統ごとに影響は異なる。カゲカゲの実を含むパラミシアでは己以外にも影響を
与え始める。
イ ロー ジョ ン
モリアが膝をついてしゃがみ闇が蠢く地面へ手を触れつぶやいた。
が、誰しもが〝ある異変〟に気がついた。
配下と化した。海賊達や海兵らは黒ひげの〝闇穴道〟とは違い地面に沈むことはない
成す術がなく影の支配下におかれるとマリンフォードの地面は影に覆われ、モリアの支
煙の様にゆらゆらと蠢く闇をまるで喰らい尽くす様に水平な影が広がっていく。闇は
モリアの右手からは影が渦巻き素早く地面へ侵食する様に広がり始めた。黒ひげの
﹁〝暗黒大陸〟 。﹂
闇の深淵 2
290
﹁なんで俺は動けねぇ
﹂
﹁常識だが物体は動くと影も動く。だが俺はある程度の影を動かして物体を動かす事が
も雲も風も土煙も微動だにしなかった。
黒ひげは大声をあげた。モリアを除く目に入る全ての動きが止まっているのだ。人
!!!!
﹃万物の動きが止まり、視線と口以外は何一つ動かせなくなっていた。﹄
291
できる...。覚醒により地面へと影を覆い尽くし万物の動きを封じただけだ...。﹂
原作のモリアには〝影革命〟という技があった。物体の影に〝影法師〟を潜ませて
本体を自由自在に形を変えることができた。
そしてカゲカゲの実の覚醒により、地面に影の影響を与えた。つまりマリンフォード
一帯に影を侵食させ、〝闇穴道〟ごと地面を影で覆い尽くしたのだ。つまり万物の物体
の影を喰らい、影そのものを一時的に無くしたのだ。つまり影を持つ全ての物体、液体
の動きを受け止めることができるのだ。
影と闇じゃ上下関係があってもおかしくはねぇ
もっとシンプルに言うと気体を除く全ての動きを停止させる事がモリアのカゲカゲ
﹂
じゃ何で俺の闇が⁉
の実の覚醒による最大の特権なのだ。
﹁何だと...⁉
が、影が上回るなんて思えねぇ
?
付け刃程度の能力と研ぎ澄まされた俺の力を同格に見るなど滑稽...。
!!!!
?
?
は世界でも五本の指に入る程使いこなしている。更に覚醒という新たなステージへと
か生半可なところがある。それに対しモリアはカゲカゲの実を自由自在に操り、精密度
黒ひげがヤミヤミの実の能力者になったのは数ヶ月程度前であり、まだコントロール
単純に格が違うのだ。﹂
﹁馬鹿か貴様は
闇の深淵 2
292
上り詰めている。
仮に上下関係にあろうともその程度で勝敗が揺らぐ程能力者の争いは単純ではない。
即ち一部の部位だけ自由にする事も可能
?
風による影は新たに上書きされた影であるからだ。
事が可能であるのだ。なぜなら元々地面にあった影は既にモリアの支配下であるが、爆
は機動し、爆発することはできる。つまり爆風が体外へ出てモリアへダメージを与える
間が体内に時限爆弾を仕込んでいたとする。体内であり影は存在しないため時限爆弾
例えばモリアの影の支配下に置かれて動けない人間がいるとしよう...。更にその人
元々影のない内部では動かせることができる。
い た め 動 く の は 可 能 で あ る。た だ 影 を 一 時 的 に 無 く し た た め 動 く こ と は で き な い が、
ら口元と眼球を能力の対象外にした。元々人の内臓や筋肉は内部にあり影は存在しな
モリアは万物の動きを止める事が可能である。だがそれではつまらないのだ。だか
だ。ここまでの精密さを出すにはかなり苦労したがな...。﹂
﹁俺 は 万 物 の 動 き を 支 配 で き る と 言 っ た な
を分析した。確かに動きを支配したのであれば目線や口を動かせるはずではない。
黒ひげ海賊団の一人の〝雨〟のシリュウは慌てる他のメンバーとは違い、冷静に現状
路...。﹂
﹁人 も 銃 弾 も 土 煙 も...動 き が 止 ま っ て や が る。動 か せ る の は 目 線 と 口 と 思 考 回
293
つまり支配下にさえあれば内部を動かすことは可能であるが、外部は一切動かない。
﹂
つまり臓器、血液、筋肉は動かせる。ただし表面...人で言えば皮膚か服は一切動かす
事ができないため全身は動かせないのだ。
﹁おめぇだけ動けるなんぞ卑怯じゃねぇか
!!!!
少なくとも俺が動け
?
事実原作ではローは覇気使いであり、ヴェルゴに能力を軽減させずぶった切られてい
ければならないのだろう。
ないし無効化ができるという事になる。ただそれは能力者の覇気に一定の差をつけな
ぐとドフラミンゴが言っていた。つまり武装色の覇気さえあれば実体が無くとも軽減
事実原作のパンクハザード編ではヴェルゴの強力な武装色はローの能力でさえも防
可能である。
力の実体を捉えるだけであるが、その道の達人は実体のない攻撃でさえも軽減する事が
である。覇気をより強力な攻撃をする〝武装色の覇気〟...。覇気は本来悪魔の実の能
そもそも覇気とは弱点を突く以外に能力者の実体を捉えることができる唯一の手段
るのは元々影が必要ないからで貴様らが動けないのはただ〝小物〟だからだ。﹂
能だ...。だがこの戦場で覇気を使わず温存した強者などいるか
﹁この影の支配下とはいえ強力な武装色の覇気さえ纏えば抵抗はあるものの動くのは可
闇の深淵 2
294
る。
恐らく﹃能力+能力に込めた覇気︿覇気﹄という条件が満たせば可能であると思われ
る。
ジンベエはルフィから垂れて地面に落ちかけていたルフィから垂れた血の水滴は宙
は変わらずわしは休息をとれる。﹂
﹁これはモリアさんの〝覚醒した能力〟...。これは有り難い...ルフィ君のダメージ
∼マルコ・ジンベエ・赤犬side∼
***
名を付けたが、図らずもそれが彼の真の力の名に相応しかった。
黒ひげがモリアの通り名の通り名をつぶやいた。海軍は彼の影の能力を恐れてこの
﹁とっ...〝常闇〟。﹂
295
に浮いており、傷口から血が体外へ出る寸前で止まりこれ以上の出血を図らずも抑えて
いる。傷口から血液が出る寸前であれば内部でないため動かないのだ。
ルフィとジンベエの外傷は治療さえすれば何の問題もない。ただルフィは兄を目の
前で殺された事でかなりの精神的ダメージを受けたのだ。だが気絶をしており、インペ
ルダウン、マリンフォードでの肉体的負荷が甚大であったため目を覚ますことはないと
ジンベエは判断したのだ。
敵
敵
それよりもルフィを抱えて逃げるジンベエの体力を温存した方がいい。休めるのは
赤犬も同様であるが赤犬を抑える白ひげ海賊団も同じ条件である為、体力の回復により
食い止める時間を稼ぎジンベエの体力を回復させるのは都合が良かった。
﹁モリアのヤツ...これほどまでに能力を...。﹂
マルコはかつて悪魔の実の力の暴走とも言えるモリアの過去を見た。それに対して
海
兵
当時とは比べものにならぬ程の能力精度である事に驚いた。
***
赤犬は動かぬ白ひげ海賊団から目を逸らし、目の端でモリアを睨みつけた。
﹁儂らにまで能力の範囲内にするとは裏切りじゃのぅ...憶えちょれよ。﹂
闇の深淵 2
296
∼センゴク・ガープ・黄猿side∼
***
﹁...。﹂
対してガープは歯を激しく食いしばり赤犬への殺意を殺そうとしていた。
センゴクとそう遠くない所にいた黄猿は呑気にモリアの技の分析を始めた。それに
ゲッコー・モリア...怖いねぇ...。﹂ をつけられてるって事だよねぇ...
﹁影と対極にある〝あっし〟でさえも拘束するって事は覇気か能力、もしくは両方に差
光
センゴクは己の覇気と衰えた身体能力では影の拘束はどうにもならないと嘆いた。
るものを...。﹂
﹁モリアめ...。儂等じゃ影の支配からは逃れられん。もうふた回り若ければ何とかな
297
∼モリア・黒ひげ海賊団side∼
黒ひげの足元の影がフッと消えると彼自身の影が拘束を解かれて自由に動ける様に
﹁動かぬ貴様を屠るのは興醒めというモノだ...。格の違いを教えてやろう。﹂
なった。
黒ひげは思いっきり折れた右手首を掴んでグキッと強制的に戻すと激痛が走ったが、
﹁ゼハハハ...後悔させてやる。﹂
シャドウクロス
歯を激しく食い縛って悲鳴をあげなかった。そして不気味にニヤッと笑った。
﹁〝影編交刃〟﹂
﹂
モリアは両斜めからのありったけの覇気を込めた強力な影の一閃を互いに細々と無
おめぇの影なんぞ支配さえされなきゃ恐るるに足りねぇぇぇぇッッッ
!!!!
数に交差させ、黒ひげへ放った。
!!!!
黒ひげは網状に激しく身体を切り裂かれて尋常なく出血をするとゆっくりと仰向け
をすり抜け、身体にぶつかる寸前で実体化し黒ひげを斬り裂いた。
黒ひげは覇気を纏った振動を起こして破壊しようとしたが、虚無化してあるため振動
﹁ゼハハハ
闇の深淵 2
298
にバタリと倒れた。
黒ひげは息も上手く吸えぬ程のダメージを受けて目を濁らせた。モリアはゆっくり
﹁ハァッ...ハァッ...ハァッ...ハァッ...。﹂
と歩いて黒ひげの顔の近くでしゃがんだ。
かつての白ひげはこの技を冷静に対処したのに黒ひげはなす術なく致命傷を負った
﹁やはり貴様は小物だ。さっさと死ね﹂
俺の長年の計画がァァァァァッッッ
︶
からである。モリアは黒ひげのデコに人差し指を置いた。そして指から実体化した鋭
クソッォォ
!!!!
い影を放出すると黒ひげの頭を容易く貫いた。
クソッ
!!!!
︵クソッ
!!!!
とはなかった。 黒ひげは薄れゆく意識の中で悔しさを滲ませる声をあげたが、それがモリアに届くこ
!!!!
299
戦争の終結と新たな時代へ 1
モリアが黒ひげの命を狩ると影の侵食が消え、戦場に居合わせた万物の物体は再び動
き始めた。
黒ひげの遺体の下に影の円ができるとゆっくりと沈んで消えていった。その様子を
見た開放され自由になった黒ひげ海賊団達は戦意を喪失して呆然していた。モリアが
ゆっくり立ち上がり見据えると次々に口を開いた。
﹁まっ...待つんだにゃ
俺はあんたの部下になる
﹂
!!!
〝三日月狩り〟カタリーナ・デボンは半ば死を受け入れた様子だった。
﹁ムルフフフ...とんでもない男ね。どう足掻いても勝てる気がしないわ...。﹂
〝悪政王〟ピサロはまだ死にたくないのか特徴的な口調で命乞いをした。
!
七武海の会議に潜入して黒ひげの七武海入りを推薦したラフィットがつぶやいた。
﹁船長があっさりと...。﹂
戦争の終結と新たな時代へ 1
300
﹁やべぇな...死んじまった...。﹂
シリュウが太い葉巻を吹かしながら冷静に冷たく言い放った。
口を開いた。
?
た。
し
も
べ
戦艦〟サンファン・ウルフの存在を思い出して視線を向けるがそこには誰もいなかっ
破損した内臓の応急処置を行った。そしてふと海軍本部の影に身を隠していた〝巨大
モリアは原作でのドレスローザでのドフラミンゴと同様に影を体内で糸の様に操り、
﹁相変わらず反動が凄まじいな...。それよりはやく内臓の修復をせねば...。﹂
せ終わるとモリアはガクンと膝を付いた。
船員の数だけの影の槍で心臓を貫いて殺した。そして倒れた遺体を船長同様に沈ま
﹁許すわけがなかろう。船長と共に死に我がゾンビとなれ。﹂
た。
黒ひげ海賊団の船員のハッとした顔を見て、モリアはニヤッと笑うと残酷に言い放っ
﹁...我が旗下に加わりたいのか
﹂
何を言わないメンバーは無関心か唖然、平静を保っていた。その様子を見たモリアは
病弱そうな馬に乗った病弱そうな男が血を吐きながら、船長の死を割り切った。
﹁それもまた運命...。ゴフッ...。﹂
301
﹁ま さ か 能 力 者...身 体 の サ イ ズ を 操 作 す る 能 力 者。い や も し く は 海 へ 逃 亡 し た の か
﹂
それよりも内臓の応急処置と覇気の回復を優先させた。
***
数分後
∼ルフィ・ジンベエ・クロコダイルside∼
!
!
の腹を貫いてルフィの胸辺りに傷を負わせ倒れていると、クロコダイルが〝 砂 嵐 〟で
サーブルス
白ひげ海賊団の妨害を突破した赤犬がジンベエごとルフィへ攻撃を仕掛け、ジンベエ
これ以上こいつらの好きにさせんじゃねぇよッ
﹂
くとも黒ひげに恩義を感じるようなタイプとは思えなかったので深追いはしなかった。
モリアは思考を研ぎ澄ますが情報が少な過ぎた。だがインペルダウンの囚人で少な
?
﹁守りてぇならしっかり守れッ
戦争の終結と新たな時代へ 1
302
二人を吹き飛ばした。
この様子を見ていたモリアはクロコダイルの行動と態度に少しは驚いたものの特に
友人のジンベエと白ひげが託した命を守ってくれた事に対する感謝以外の気持ちはな
かった。
余談だがもしモリアが記憶を失わず、原作知識を覚えたまま今日に至り、同じ状況で
あればこう思ったことだろう。
コられて...後々消されちゃう。改変したとはいえ悲しいね...。︶
ね...。それに対して原作モリアは影で自分を強化しておきながらジンベエに一発でボ
クロコは赤犬だけじゃなくてドフラミンゴやミホークとも少なからず戦ってたし
︵う わ ぁ...ア レ だ。原 作 の 七 武 海 最 弱 グ ラ ン プ リ が モ リ ア に な っ た 決 定 的 瞬 間...。
303
と彼はそう感じただろう。
天
竜
人
赤犬を押さえ込まんと再び白ひげ海賊団とクロコダイルが取り囲む様子を見てモリ
アはゆっくりと大の字になって地面に寝転がった。
たらねばならぬ︶ ︵もう戦争には参加しなくていいだろう...。だが世界政府からの〝最後の指令〟に当
戦争の終結と新たな時代へ 1
304
大丈夫か
﹂
戦争の終結と新たな時代へ 2
﹁おい
?
***
数分後
﹁そこまでだァァァァァァァッッッ
﹂
もうこれ以上戦うのやめましょうよ
!!!!
で大声をあげて立ちふさがった。
﹁もうやめましょうよ
﹂
!!!!
ルフィを逃す時間を稼ぐ白ひげ海賊団と悪の芽であるルフィを殺したがる赤犬の間
!!!!
しばりポタポタと涙を流し始めると一目散に走り出した。
れており、それを開くと家族の写真だった。桃色髪の海兵〝コビー〟は歯を激しく食い
くなった海兵の身体を揺すっていた。その海兵の手には血に塗れたペンダントが握ら
海軍の正義と書かれたコートを羽織っていない桃色の髪をした海兵が足元で動かな
!
305
コビーは涙を激しく流しながら赤犬へ声をあげた。海兵や海賊を問わずコビーとい
う存在に気づき彼に注目した。だがコビーはただ言いたい事を言ったに過ぎなかった。
兵士一人一人に帰りを待つ家族がいるのに...目的はもう果たし
彼の頭の中で消えゆく声が響き渡ったのだ。
だっ...誰か...
助け...
...﹃バタン﹄
いま手当て
!!!
﹁命がもったいない
やめられる戦いに欲をかいて
﹂
その上にまだ犠牲者を増やすなんて...
てるのに...戦意のない海賊を追いかけ
をすれば助かる兵士を見捨てて
!!!
今から倒れていく兵士達はまるで...馬鹿じゃないですか
!!!
し心を動かされかけていた。
コビーの叫びの様な演説はマリンフォードへ響き渡った。あのセンゴクでさえも少
!!!!
!!!!
覇気と体力をある程度回復させたモリアは感嘆の声をあげる。今はただの名も無き
﹁あの海兵...実に見事。﹂
戦争の終結と新たな時代へ 2
306
海兵に期待の目を向けた。
誰じゃ貴様...。数秒無駄にした。正しくもない兵士は海軍には要らん
﹂
!!!!
まだ間に...来たか...。﹂
とコビーへ向けて振り下ろそうとした。
だが赤犬はセンゴクやモリアとは異なり特に効果はなかった。右手にマグマを纏う
﹁あん
?
﹁ん⁉
﹂
﹁この戦争を終わらせに来た。﹂
そして地面に落ちた麦わら帽子を抱えると声をあげた。
男は海兵を褒めるとマリンフォードの海岸に巨大な船が着港した。
たった今、世界の運命の大きく変えた。﹂
﹁良くやった...若い海兵。お前が命をかけて生み出した勇気ある数秒は良くか悪くか
己の攻撃が誰かに食い止められ、若き海兵は緊張からかゆっくりと気絶し倒れた。
?
た。
マグマの右手は大剣によって受け止められ、次第にその男が誰か皆が理解をし始め
その気配が先に赤犬の攻撃を食い止めた。
モリアが影で移動し、コビーへ向けられた攻撃を防ごうとするととある気配を感じ、
﹁くそッ
!
307
四皇の一人〝赤髪〟のシャンクスが荒れ果てたマリンフォードに現れた。
突如現れた四皇にどよめく海兵と海賊達を他所に赤犬とシャンクスは向いあった。
少し離れた場所でモリアがニヤッと笑いつぶやくとシャンクスは歩き出し、海軍元帥
﹁赤髪...。﹂
のセンゴクの近くにやってきた。
俺達が相手をしてやる
﹂
﹁両軍...これ以上欲しても両軍被害が無益に拡大する一方だ。まだ暴れたりないのな
ら...
来い
!!!!
シャンクスは刀を収め語りかけた。
シャンクスの後ろに赤髪海賊団の幹部が並びどよめく海兵、海賊達が静かになると
!!!
﹁構わん
﹂
﹁すまん。﹂
!!!!
を開いた。
シャンクスの予想外の発言に海兵が抗議の声をあげた。センゴクが歯を噛み締め口
はさせない...。﹂
う。戦いの映像は世界に発信されていたんだ。これ以上そいつらの死を晒す様な真似
﹁全員...この場は俺の顔を立てて貰おう。白ひげ エースの弔いは俺達に任せてもら
戦争の終結と新たな時代へ 2
308
﹂
センゴクが海兵らを黙らせる様に大声をあげると、自分の顔を立ててくれたセンゴク
に軽く謝った。
﹁戦争は終わりだァァァァァァァッッッ
∼マリンフォード湾岸∼
数時間後
***
歴史として語り継がれる事となる。
しなかったが〝白ひげ〟、エースという最大の悪の芽を摘んだ海軍の勝利として新たな
センゴクのマリンフォードへ響き渡る一声により戦争は無事に終結、両軍被害は果て
!!!!
309
ない。
﹂
人間兵器では満足に暴れられぬだろう...。俺が相手をしよう。﹂
シフィスタの半数は糸で斬り裂かれ機能停止しているが、流石に数という有 利は覆せ
アドバンテージ
ドフラミンゴはモリアの背後に並ぶパシフィスタ軍団の猛攻により声をあげた。パ
﹁テメェ...モリアッッッッッ
!!!!
エバーホワイト
﹁テメェ...。〝海原白波〟ッ
のままに動き始めた。
﹂
﹁覚醒してるのがお前だけだと思ってんじゃねぇよ
﹂
上半身と下半身を切り離したが、切り口から見えたのは血ではなく糸の断面だった。
延長線にいたドフラミンゴをも真っ二つに斬り裂いた。
影の一閃が素早くサッと真横にまたたくと、糸の塊が一斉に斬り裂いた。そしてその
﹁だが...脆い。﹂
で笑った。
先端が武装色で硬化された無数の糸の塊がモリアへ襲いかかった。だがモリアは鼻
!!!!
ドフラミンゴが地面に手を触れると地面が巨大な糸の塊に変化し、ドフラミンゴの意
!!!!
爆風に吹き飛ばされ倒れているドフラミンゴにモリアが声をかけた。
﹁どうだ
?
﹁ほぅ...。﹂
戦争の終結と新たな時代へ 2
310
﹁糸の分身か...。見えているぞドフラミンゴ。﹂
背後に現れたドフラミンゴが五本の指から糸を出して斬り裂こうとしたが、見聞色の
覇気で何をしようか見通していたモリアが硬化した右腕で軽々と糸をガードした。
﹂
?
ある。つまり討ち取れる程の人材さえいれば生かしておくもはや理由はない。
だがそれはドフラミンゴが強く天竜人の放つ刺客では討ち取れなかったからの話で
はドフラミンゴを始末するより利用した方がいいと考え七武海へ迎えた。
やがて成長したドフラミンゴは天竜人の貢金を乗せた船を襲撃した。すると世界政府
そして口封じの為に追手を差し向けたが、ドフラミンゴは全てを退けたり逃げ出した。
ドフラミンゴはマリージョアを揺るがしかねない程の国宝の存在を知り、逃亡した。
して消されなかったのは単純にお前が強くて消せなかったから...。もうわかるな
﹁お前が七武海になったのはマリージョアに眠る国宝の存在を知っていたから...。そ
はそれを見下す様に見ると口を開いた。
れている。そこからたらたらと血を流しドフラミンゴは悔しそうな顔をしたが、モリア
煙が舞い、やがて収まると両手両足が4本の影の杭の様なモノが突き刺さり地面に繋が
モリアは右手でドフラミンゴの顔を掴んでそのまま地面に力任せに叩きつけた。土
﹁分身は得意分野でな。﹂
﹁このバケモンが...。﹂
311
モリア...。﹂
天竜人の差し金か.
..胸糞悪りぃ野郎共だ。とこ
ろで俺を始末するとどうなるかわからねぇわけでもねぇよなぁ
ておけば新世界へ危険な物資の流通が止まらなくなる。どちらにせよリスクは大きい。
の物資が消えてしまえば今度どの様な行動に出るかぎわからない。かといって生かし
ドフラミンゴは裏の世界でジョーカーとして新世界の強者達と取引をしている。そ
新世界の大物達の手綱をな...。﹂
俺が手綱を引いているんだ...
の大物達は準備を整えるだろう。王座につかぬ番人の消えた海賊王という椅子をな...
﹁この世で白ひげという楔が消えた今、この海は大いに混乱する。そして確実に新世界
様に語り始めた。
ドフラミンゴの言葉に顔色一つ変えず何も言い返さないモリアに追い打ちをかける
﹁...。﹂
?
﹁フフフ...フッフッフッフッフッ
!!!!
﹂
?
ることだった。
モリアが選んだのはドフラミンゴを消してこれ以上、新世界へ危険な物資を食い止め
﹁なんだと⁉
世界の大物の首を全て絞めてやる。﹂
﹁そうか...だったら俺がその手綱を切り離してやる。そしてその手綱でお前の言う新
戦争の終結と新たな時代へ 2
312
﹁貴様を潰せば、少なくともカイドウとの〝スマイル〟の取引は消える...。お前だけ
じゃなく七武海という傘がなくなるんだからな...。そうすれば混乱によりカイドウの
進出を遅らせる事とこれ以上の戦力の増加を抑えるのが可能になる。﹂
ドフラミンゴの最も大きな取引相手は四皇の一人〝百獣〟のカイドウ。そのカイド
ウに流す物資は〝人造悪魔の実〟...その名を﹃スマイル﹄。人造ゆえにリスクは大き
いが悪魔の実という誰しもが欲しい力だ。欲しがる者は大勢いる。
阻止しようと動く白ひげ海賊団の残党達...。
どう転ぼうとも新世界の大物達が暴れだし、大海賊時代最高の覇権争いが始まる
﹂
それこそおめぇの望む世界じゃねぇよな
多くの市民が傷つくことになるぞ...。
フフフ...フッフッフッフッフッフッ
?
﹁安心しろ...。この戦争で白ひげが死んだ時に一つ妙案が浮かんだ。今までは七武海
賊達が巻き込まれる。その事を容易に見抜いたドフラミンゴが高笑いをした。
〝ビックマム〟が侵攻しかねない。どちらにせよ新世界は激しい戦乱に市民や海軍、海
仮にカイドウの戦力を食い止めるとしてもガラ空きの白ひげの縄張りを四皇の一人
!!!!
!!!!
を止めようとする赤髪に、〝白ひげ〟にとって変わろうとする新たな勢力に、それらを
﹁フフフ...だったらその隙を見てビッグマムが先に暴れだすだけの話だ。さらにそれ
313
七武海
ゴ
ミ
として海軍という組織のしがらみのある者じゃなく、自由な海賊として海賊を狩る。
まさか...﹂
今まではこれが最善だと思ってた...。﹂
ン
ピー
ねぇからタチが悪い
ス
﹂
!!!!
ミリーは崩壊しちまう。﹂
おっかねぇ野郎だ。お前なら本当にやりかね
俺の部下をお前の傘下に入れてやってくれ。七武海という傘の無くなれば俺のファ
﹁ふぅ...腐れ縁だがウマの合わねぇおめぇに一つだけ、頼みがある...。
なく、本気だと理解した。そして急に静かになると穏やかな口調で語りかけた。
ドフラミンゴがモリアという男であればこんな世迷いごととも取れる言葉を嘘では
!!!!
い放つと、彼は荒れ果てたマリンフォードへ響き渡る様に大声で笑い始めた。
モリアは己が海賊王へなるべく新世界へ乗り込む決意を固めたとドフラミンゴに言
という存在が大海賊時代を終わらせる...。﹂
〝ひとつなぎの大秘宝〟を俺が見つけ、俺という抑止力こそが世界の頂点に君臨し、俺
ワ
﹁あぁ...白ひげが守っていた海賊王の座を俺が登り詰め、俺が世界を支配すればいい。
中に聞き流せないワードがあった。
モリアは静かにドフラミンゴに語りかける。するとドフラミンゴはモリアの言葉の
﹁〝思ってた〟
?
﹁フフフ...フッフッフッフッフッフッ
戦争の終結と新たな時代へ 2
314
ドフラミンゴという男は天竜人に激しい怨みを持ち、この世界を破壊する事が夢で
あった。だが彼はその夢よりも大切なモノがある。それは己の家族ともいえる幹部の
ファミリーである。家族によって人生を大いに狂わされた彼にとって命をも投げ出せ
る幹部は何よりも大切だった。
﹁あぁ...ドレスローザに使いを出そう。﹂
﹁...こんな事をおめぇに頼むなんぞ予想できなかったがな。﹂
モリアがドフラミンゴの頼みを受け入れ、元々最悪の仲だったのに二人は軽口を叩き
﹁それは俺もだ。﹂
﹂
合いニヤッと笑った。そしてモリアは右手に影を纏わせながら口を開いた。
貴様は先に地獄で俺を待っていろ...
﹁さらば〝堕ちた天竜人〟ドンキホーテ・ドフラミンゴ...
俺が良い土産話を持ってきてやる。﹂
ブラックブレット
﹁...楽しみに待っているよ。フフフ...フッフッフッフッフッ
〝 影 血 閃 〟で影の槍を一本作り、高笑いを続けるドフラミンゴの心臓を貫いた。 !!!!
315
覇道への歩み
∼マリンフォード頂上戦争から数日後∼
〝とある島〟
げ海賊団達の刀が突き刺ささっていた。
まれた墓石の側には遺品の帽子やナイフ、薙刀やマントが供えられ、その背後には白ひ
ここでは頂上戦争で亡くなった〝白ひげ〟、〝火拳〟の葬儀が行われており、名を刻
﹁赤髪...モリア...なんと礼を言ったらいいか。﹂
覇道への歩み
316
二つの墓石の前で中心に立つマルコ、右側には裏切り者で〝白ひげ〟を殺した黒ひげ
を仇打ちにしたモリア、そして左側には戦争を止めにきて二人の亡骸を無事にここまで
連れてきた赤髪。白ひげ海賊団から見ると二人は恩人であった。
マルコとモリアは赤髪が立ち去った後もその場にいた。二人は黙って白ひげとエー
﹁...。﹂
﹁...。﹂
赤髪は白ひげとエースの墓場を後にすると引き返し、己の部下の待つ船へ戻った。
﹁あぁ...ありがとよい。﹂
﹁じゃあ...俺達はもう行く。﹂
だから大半の者達は一部の反発者を除いてモリアに敵意を持ち合わせていなかった。
ら 聞 き 理 解 し た。そ し て 白 ひ げ 亡 き 後 は 約 束 通 り 白 ひ げ の 家 族 を 守 る 為 に 尽 力 し た。
間にあったモリアが立場を選び政府の味方をしたというやむをえない事情をマルコか
雑兵達を攻撃した。この場にいる事さえ不自然なのに白ひげ海賊団は立場と恩義の狭
フォードで敵対関係にあり、白ひげの腹を貫いたりオーズの胴体を狙った。更に多くの
赤髪とモリアは礼には及ばないという心情であった。本来であればモリアはマリン
﹁俺は約束を守っただけだ。恩を得るために動いたのではない。﹂
﹁敵でも白ひげは敬意を払うべき男だった。センゴクですらそうだった。﹂
317
スの墓を見つめているとモリアが口を開いた。
﹁〝白ひげ〟エドワード・ニューゲート...貴方は俺の目標だった。自惚れ...王にな
れ る と 傲 慢 だ っ た こ の 俺 に 海 賊 と し て の 在 り 方 を 示 し て く れ た。本 当 に 感 謝 し て い
る...
願う事なら一度だけでも貴方と二人で酒を飲み交わしたかった...。﹂
最
強
11年前モリアは白ひげに挑み敗れた。だが今振り返ると海賊としての覚悟も現実
も理解しておらず、〝白ひげ〟に見合うだけの実力さえもなかった。戦争へ挑む際には
成長した自分は白ひげを対等の海賊になれたと思っていたが、それこそが傲慢で過信
だった。まだ海賊として未熟な己を再び気づかせてくれた事に心から感謝していた。
方の守りたかった宝を守り続ける...
家族
﹁俺は貴方から頂いた享受は一生かかっても返せぬ程の価値がある。だからこそ俺は貴
﹂
マルコ...俺は七武海を脱退し、海賊王になるべく新世界へ出る。お前達白ひげ海賊
団も俺と共に来ないか
?
﹁返事はまだいい...。俺も何かとせねばならぬ事がある。少なくとも白ひげの海域は
一番隊の隊長とはいえ独断で返事をして皆がすぐに従うという事にはならない。
モリアはマルコへ白ひげ海賊団が己の傘下に加わらないかと提案をした。もちろん
﹁...。﹂
覇道への歩み
318
早く抑えろ。俺が加勢しても構わぬ。﹂
モリアはマルコへ忠告をしてその場から去った。白ひげの家族を守るのであれば傘
下にする必要はない。ただ援軍を与えればいいのだ。更にモリアは個人的には新世界
の均衡を揺るがしかねない事なので都合が良かった。
モリアが白ひげ海賊団達からの何とも言えない表情に見向きもせず歩き続けた。そ
して海岸に己の腹心として連れてきたアブサロムがその場から離れてモリアの前で止
まった。
新世界の王へなるべくゆっくりと動き始めた。
ない空間でモリアは天を見上げて固まるとやがて覇権争いで激動の渦に巻き込まれる
するとアブサロムの地面から影の円が揺らめいてゆっくりと沈んだ。周囲に誰もい
﹁了解です。﹂
﹁あぁ...すまない。二人を見つけたらでんでん虫をかけろ。﹂
だからという腹心の彼としての気遣いである。
ルフレッドを自分が迎えに行くと言った。海賊として尊敬し憧れていた白ひげの葬式
アブサロムは真剣な表情で〝くま〟にシッケアール王国に飛ばされたペローナとア
す。﹂
﹁ボ ス...。ひ と ま ず 俺 を シ ッ ケ ア ー ル に 送 っ て く だ さ い。あ の 二 人 を 迎 え に 行 き ま
319
ひとつなぎの大秘宝
バギーズデリバリー 1 *∼新世界編∼*
マリンフォード頂上戦争からおよそ一ヶ月後
戦争は終結し、海賊たちは新たに空いた四つの席の一つ及びワンピースを目指し、新
世界へなだれ込んでいた。
膨れあがった海賊達を潰す、又は配下にしている男は単身でとある海賊達の明暗を分
ける決断を問いに向かっていた。
ジャー
本人。﹂
ク ルー
海賊王の船員である道化のバギーと共にインペルダウンで大量の囚人を脱獄させた張
ロ
﹁...〝 元 バ ロ ッ ク ワ ー ク ス M r.3 〟 ギ ャ ル デ ィ ー ノ。ド ル ド ル の 実 の 蝋 人 間。元
バギーズデリバリー 1 *∼新世界編∼*
320
︵良い人材だが...均衡を揺るがす事をしでかした。囚人は俺が狩り尽くせばいいが、
ここがかの王下七武海の道化のバギー様の拠
道 化 の バ ギ ー は 七 武 海 に な っ ち ま っ た か ら な。ど ち ら に せ よ 動 か ぬ 訳 に は 行 く ま
い...。︶
***
バギーズデリバリー予定地
さっさと働きやがれ
!!!!
﹁おうおう野郎共
﹂
!!!!!
彼らは一月と少し前にはインペルダウンで終わりなき拷問を受けていた。そして麦
かったガネ...。﹂
﹁それにしても私達は運がいい。一月前にはこんな派遣会社など作るとは思っても見な
達が雄叫びをあげ、作業へ勤しんだ。
新王下七武海となった〝道化〟のバギーにより解放されたインペルダウンの脱獄囚
点となるのだァァァッッッ
!!!
321
この俺様に運が向いてきたってことよ
﹂
わらのルフィの侵入による混乱に乗じて他の囚人を解放しつつ脱獄。そして頂上戦争
そりゃ兄弟
﹂
だがその強運もついえかねない決断を二人は迫られていた。
から七武海の地位を確立した。
二人は実力は並み以下の実力しかないのに、並外れた強運と謎の過大評価により政府
!!!!
へ乗り込み名をあげ、政府からの七武海の任命により今に至る。
﹁ギャハハハハ
!!!
﹁金の匂いがプンプンするがね...。﹂
!!!
あれはなんだ
?
?
﹃ボゴォォォォォォォォォォォォン
﹄ !!!!
人である事を理解すると同時に爆音が響いた。
バギーは遠くから何かがこちらに飛んでくるのを確認した。そしてそれが部下の一
﹁ん
バギーズデリバリー 1 *∼新世界編∼*
322
バギーらの横に立てかけていたテントが崩れ、部下の鼻の骨がグチャと潰れ血をポタ
ポタ流しながら気絶していた。
ヤツです 最近七武海を脱退したゲッコー・モリアが...﹃そ
二人は口を開いてポカンとしていると、向こうから切迫している部下の声が響き渡っ
た。
﹁キャプテン・バギー
!!!!
て頬の肉をビクビクさせ青ざめた顔をしている二人を見下す様に見据えた。
元王下七武海のゲッコー・モリアがバギーズデリバリー︵予定地︶に来襲した。そし
う喚くな...今の所俺に戦闘の予定はない。﹄
!!!
323
俺 様 は 神 に 選 ば れ た ん じ ゃ ね ぇ の か よ ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ
バギーズデリバリー 2
︶
︶
モリアは市民に害を加える海賊を狩り尽しかねない男...。そ
︵モ ッ...モ リ ア だ と ォ ォ
がある。そして先日のインペルダウンの騒動から自分達を始末しに来たとしても不思
更に彼は自分達のような海賊を毛嫌いしており、どちらも民間人に損害を与えた経験
新旧の七武海同士であるとはいえ実力差は歴然であっからだ。。
二人は心の中で大声をあげ、己らの幸運の終わりを実感し絶望した表情を浮かべた。
!!!!
!!!
れを解放した我らは間違いなく始末されるガネ
!!!
!!!!
︵すっごくマズイガネ
バギーズデリバリー 2
324
議でなかったからである。
二人じゃねぇか
だ
﹂
ねぇのか
!!!
﹂
﹁﹁﹁﹁﹁﹁バギー
﹂
バギー
!!!
バギー
!!!
バギー
!!!
バギー
!!!
バギー
!!!
バギー
!!!
﹂﹂﹂﹂﹂﹂
互いを見回すとテンポを合わせて雄叫びをあげながら、右手を天へ突き上げた。
元インペルダウンの囚人にしてバギーを崇拝する部下達が都合のいい解釈をしてお
﹁いやもしかしたら傘下に入れてもらう様に頼みに来たのかも...。﹂
?
!!!
﹁お い
も し か し て...モ リ ア が キ ャ プ テ ン・バ ギ ー と 同 盟 を 結 び た が っ て る ん じ ゃ
﹁あぁ違いねぇ...あのモリアがキャプテン・バギーに取引を持ちかけにやってきたん
!!!!
﹁見ろよあのキャプテン・バギーとゲッコー・モリアを...ありゃ生ける伝説の筆頭格の
ビって何も言えなかった。
そしてモリアは部下を攻撃したのはやむを得ない事であると言い放つが、バギーはビ
ギーズデリバリーの矯正及び殲滅である。
モ リ ア は バ ギ ー と 取 引 が し た い と 申 し 出 た。彼 の 目 的 は M r.3 の 引 き 抜 き と バ
﹁おっ...おう...。﹂
﹁急なことで悪いが取引をしたい。あいつは俺の用も尋ねず襲いかかったため潰した。﹂
325
!!!
︵オイッッッ
何言ってやがんだよ
あのモリアだぞ
!!!!
俺なんかの傘下に...︶
!!!!
︵ブチ切れそうだガネ
どうにかせねばいかんガネ
だったら...︶
!!!!
︶
!!!!
﹁静まれぃこの馬鹿野郎共がぁ
﹂
﹁俺への来客に恥かかすんじゃねぇよ。作業へ戻りやがれぃ
﹂
バギーの一言に一部の部下達は涙を流しながら、膝から崩れ落ちて声をあげた。
!!!!
バギーの大声に騒いでいた部下達はぴたっと止み、彼に注目を集めた。
!!!!
二人は心の中で会話のキャッチボールを交わすと、バギーは意を決して口を開いた。
︵どちらにもひけねぇじゃねぇか
!!!
を見ると彼はこめかみにビクッと筋を入れ、ご機嫌斜めの様子だった。
己の命の危機とは裏腹に能天気に騒ぎ立てる部下達を心の中で叫び、チラッとモリア
!!!!
あんたはライバルに恥をかかせぬようにと...。﹂
作業へ戻るぞ
﹂
﹁キャプテン・バギー...器がデカすぎるよ。俺達じゃ計り知れねぇ
﹁こうしちゃいられねぇ
!!!!
部下達は再びバギーにさらなる心酔と勘違いを深める事となる。
!!!
﹂
がそれに実力が伴っていないだけである。そしてその実力を買い被る部下達はバギー
これも一種の才能であった。彼には確かにカリスマ性というものを有している。だ
!!!!
﹁流 石 だ...キ ャ プ テ ン・バ ギ ー。白 ひ げ の 首 を 狙 っ て い た 者 同 士 だ か ら 敵 な の に...
バギーズデリバリー 2
326
が海賊王になると信じてやまなかった。
そして完全にバギーがモリアに気を使っただけであると盛大に勘違いをかました部
︶
下達は先ほど当たっていた仕事に戻っていく。
︵上手くまとまったガネ∼
﹁まずは要件の一つからだ...貴様らの創る予定の会社だが、気に食わん。﹂
∼テントの中∼
数分後
***
Mr.3は心の中で絶叫した。
!!!
327
︵︵ですよね∼︶︶
バギーとMr.3は人払いをしたテントにモリアを招き、話を聞いていた。彼らはモ
︶
〝今の所〟戦闘の意思はない。﹂
リアの言葉の一つ一つにビクビクし、決して彼の機嫌を損ねぬ様にせねばならなかっ
た。
﹁俺の言葉の意味がわかるな
︵今更止めますなんて言えねェェよ
!!!!
?
﹁だ が 貴 様 ら と て 急 に 路 線 を 変 更 す る に は 少 し 手 間 取 る だ ろ う。俺 の 傘 下 に 入 れ...。
いいかわからず2人は慌て始める。
モリアは従わぬのなら潰すと言い放つ。その顔からは冗談とは到底思えず、どうして
︵かと言ってモリアを敵に回して生き残る自信はないがね...︶
バギーズデリバリー 2
328
俺は白ひげ海賊団の抑えた海域の支配圏を広げている。﹂
兄弟。︶
?
は抗えぬ未来...。﹂
︵言い返せねぇぇぇッッ
︶
世界の均衡とは〝海軍+七武海=四皇︵の一角︶〟である。ある意味敵対関係にあり、
て彼なりの答えを言い放った。
Mr.3がどうにかしてモリアの傘下入りを断ったとしても、無事に済む方法を考え
﹁だっ...だが政府直属の七武海が海賊の傘下に下るのはマズイことだがね。﹂
!!!!
﹁脱獄囚達が格下のお前達に従うのは買いかぶっているからだ。いつか反乱が起きるの
ることだがね。︶
︵ただ問題なのは脱獄囚に私達が小物だとバレてしまうこと...。だけどいつかはバレ
が賢いよな
︵傘下ってことか...俺としちゃ争って滅ぶぐらいならモリアの傘下として生き残る方
329
俺はモリアからのオーラでちびりそうだ。︶
政府の傘下となる七武海がいち海賊に従うのは少々無理があった。
︵よくやった兄弟
していた
る。どう考えても戦闘に自信のない2人にとってはかなりの好カードである事を理解
モリアにとって最善の解決策は会社の方針を管理しつつ、己の傘下にいれることであ
敵対組織や海賊達との戦闘は俺達が請け負う。対価としては十分だろう。﹂
﹁そこは配慮するつもりだ。あくまでも建前でいい。会社の管理を俺達がやる代わりに
なかった
バギーはMr.3の頭のキレに感謝しながらモリアの顔を伺うが、彼はそこまで甘く
!!!
ぬ...︶
!!!
︵︵のる︹ガネ︺ぞ
︶︶
︵ど ち ら を 選 ん で も 俺 達 は 死 ぬ 可 能 性 が あ る わ け だ。だ が モ リ ア を 選 ば ね ぇ と 今 死
︵つまりは...反乱が起きたら守ってくれるということだがね。︶
バギーズデリバリー 2
330
***
かと言って今更反故にはできねぇぇッッッ
俺達バギー海賊団はゲッコー・モリアのさn...
一時間後
﹁野郎共
︵言っ...言えねぇぇッッッッッ
︶
!!!!
﹁体調でも悪いので
﹂
﹁どうしましたキャプテン・バギー⁉
?
﹂
が少しずつ青ざめて様子を不審に思う部下達が声をあげる。
うとしたが、つい口ごもる。どちらに回ろうとも己の命を散らせかねないバギーの表情
バギーは先ほどMr.3と決めた傘下加入の話を緊急招集された部下達の前でしよ
!!!!
!!!!
?
331
﹁〝さn〟って...もしかして傘下に入るのか
﹂
?
だったら一世一代の大勝負じゃぁいッッッ
部下達は自身らのボスの表情から悪い話であるのを悟ったのか、モリアとバギーへ疑
いの表情を向けざわつき始める。
や
!!!!
︶
︵ど っ...ど の 道 殺 ら れ ん じ ゃ ね ぇ か よ
バギーその一言に部下達は大声をあげて同調した。キャプテン・バギーとモリアが手
﹂
!!!!!!!
!!!!
﹁モリアと同盟を結ぶことになったァァァァァァッッッッッ
バギーズデリバリー 2
332
を組めば四皇どころか海賊王への近道だと各々が勝手に深読みしてしまった。
バギーの発した言葉が先ほどの話と異なる事からモリアがこめかみに筋をビクッと
︶
入れた様子を見てMr.3の顔から血の気がひいていた
︵救いようのない程やばいガネぇぇぇッッ
***
∼テント内∼
俺は同盟と傘下は別ものだという認識だが...。﹂
?
﹁まぁ...いい。血の気の多い部下らに傘下になると明言するのは少々キツいか。ただ
﹁すまねぇ...でもよぉ...。﹂
﹁約束が違うではないか
!!!!
333
俺の命には従わせる。﹂
﹁﹁はい...。﹂﹂
同盟者であるモリアへの配慮の為略奪は禁止 戦争などの戦力としての派遣海賊
傭兵会社として運営することとなる。
そしてバギーには商才があったのか、はたまた需要が多かったのか盛大に栄える事と
なる
俺 は 貴 様 を 高 く 勝 っ て い る。ク ロ コ ダ イ
?
バギーの傘下である屈強な海賊達の加担により戦争が早く終結する可能性が高いと
ところで民間人に害を与えた以上悪であり、モリアの殲滅対象の一つとなる。
ると考えたのだ。戦争とは悪というの名のついたエゴである。いくら綺麗事を並べた
今回ではMr.3は殺すには惜しいと思い、バギーら海賊派遣会社は平和への礎にな
た。
モリアが当人に殺すのは惜しいと思わせる程の価値があり改心するのであれば別だっ
彼は確かに民間人に損害を与える海賊を始末する。だが最終的に平和への礎となるか、
モリアはMr.3とバギーの過去など把握しており、その上での取引と勧誘である。
ルのように使い捨てなどせん。﹂
﹁と こ ろ で M r.3...。俺 の 配 下 に 来 ぬ か
バギーズデリバリー 2
334
そ
れ
感じたからである。そもそも相応の戦力が欲しがり、要請するのはより財力に余裕のあ
る方である。
戦争において優位に立つのは財力のある方で戦争を終わらせる為に呼ぶ易いと判断
した
もちろん劣勢の側が要請する可能性も低くはない。だが勝算の低い場合に第三者で
あり、七武海とはいえ海賊の手を借りるとは思いにくい。
なぜなら一般人から見れば略奪をされる懸念の方が大きく、そうされても七武海であ
るまめ海軍は手出しができない。万が一そうなれば自分らの保身に関わるからである。
くなっちまってる。︶
︵だがよ兄弟...断っちまうとここで死ぬぞ。さっきの俺の同盟発言で確実に機嫌が悪
︵とんでもないがね...私があのモリアの幹部など買い被りにも程があるがね...︶
﹁弱いのなら俺がお前を強くする。お前ならば我が側近へ迎えよう...。﹂
Mr.3は両手で拒む様に振りながら声をあげた。だがモリアは淡々と口を開いた。
﹁きゅ...急過ぎるがね...。買いかぶっちゃ困る。私はまったく強くないガネ。﹂
335
﹁わかっ...わかったがね。その代わりバギーズデリバリーに害を加える者を全力で排
除するのが条件だがね。﹂
﹁市民を傷つけたり、悪戯に均衡を崩しかねない行為以外により生まれた敵は排除しよ
貴
様
う。政府の強制招集におりには顔の割れていない強力な部下を預ける...。討ち取った
者は全てバギーの手柄にせよ。﹂
﹁了解だガネ。﹂
﹁兄弟...。﹂
交わした。
上がり号泣しながら彼へ抱きついた。するとMr.3もまた泣き始め彼と熱い抱擁を
Mr.3は立ち上がりモリアの元へ向かおうとした。そしてバギーは勢いよく立ち
﹁このバギーデリバリーを任せたがね。﹂
バギーズデリバリー 2
336
新世界への挑戦者
∼マリンフォード頂上戦争から半年∼
る〝不死鳥マルコ〟率いる〝白ひげ海賊団〟の残党達の大半がモリアの傘下になった
し、白ひげ海賊団の縄張りの海域を僅か一ヶ月で抑えたからである。海域を熟知してい
二ヶ月程であった。なぜなら当時王下七武海であったゲッコー・モリアが戦争後に脱退
角が崩れた。誰もが新世界の海が荒れると予想したものの、実際に荒れたのは最初の
半年前に行われたマリンフォード頂上戦争にて〝白ひげ〟、〝火拳〟が死に四皇の一
﹃〝死の錬金術士〟ゲッコー・モリア、四皇へ﹄
337
新世界への挑戦者
338
のが大きな要因の一つである。
元々白ひげとは敵対関係にあったものの、信頼関係があり互いを尊重していたのだろ
う。少なくとも頂上戦争では互いが認め合っている様に見え、仲間を殺して白ひげ海賊
団 を 裏 切 っ た 〝 黒 ひ げ 〟 が ケ ジ メ を 付 け よ う と し た 白 ひ げ を 卑 怯 な 手 段 で 殺 害 し た。
その時に真っ先に黒ひげに立ち塞がったのはモリアであり、白ひげ海賊団もまたモリア
に黒ひげの〝手打ち〟を任せた。
ここからは我が社の予想だが、事前に密約があったと思われる。﹃白ひげ死後の白ひ
げ海賊団の面倒を見る﹄ということだろう。頂上戦争ではモリアは白ひげを討ち取る
チャンスは素人目でも何度かあった様に思われた。だが彼は何かしらの理由でそれを
しなかった。恐らくモリアは白ひげを討ち取れなかったのではなく討ち取らなかった
のだ。そうでもなければ敵対関係にあった男の傘下などには入らないだろう。
少なくともモリアは現段階で最も海賊王に近い男であるのは間違いない。縄張りの
海域は今でも広がり始め白ひげ海賊団だけでなく白ひげ海賊団の傘下をも己の戦力は
迎え、更にモリア本来の屈強な親衛隊の幹部、豊富な財力にゾンビ軍団、更に元々の傘
下の海賊団や新たな傘下の海賊団などがある。確実に頭数は他の四皇より多く、死んで
もゾンビとしてこの世に再生するため優位は揺るがない。
それに近日、また一人実力の高い男がモリアの親衛隊へ加わったと発覚した。たった
一人で男は先日海軍の軍艦を悪魔の実の能力のみで5隻を戦闘不能にして見せた。政
府は彼を大きく警戒するとの発表である。
∼著者アブサ∼
***
∼スリラーバーグ∼
げ海賊団船長〟マルコである。彼はその文を読み終えるとモリアの方を見た。
モリアは彼の書斎でアブサロムの書いた社説の原稿を男へ渡した。その男は〝白ひ
﹁アブサロムの書いた社説だ。傘下に入ったのは間違いないが確認のためだ。﹂
339
***
た。
して現在は力を蓄える時期に入り、資金や武器、悪魔の実などを率先して掻き集めてい
モリアは彼らを受け入れ、かつて〝白ひげ海賊団〟の抑えた海域を全て制覇した。そ
壊滅的被害受けた。そして生存したおよそ半数はモリアの傘下を願いでて今に至る。
海賊団〟を名乗ったが、予想された通りに怨恨と名をあげる為に毎日の様に襲撃を受け
こまで問題なかったため、一部の納得しない者のみは白ひげ海賊団から抜け〝新白ひげ
モリアの傘下に下る条件はただひとつ...彼の海賊団の掟を守ることで、その掟はそ
の銀メダリストからの襲撃など予想された。
たが、白ひげのいない白ひげ海賊団では縄張りを守れず、更に白ひげに怨みを持つ多く
た。そして葬式の後の傘下に入るかどうかの提案を皆に伝えた。初めは大いに反発し
戦争が終結後マルコは白ひげ海賊団にへ白ひげがモリアに頼んだ事を皆の前で話し
あのエースと白ひげの葬式の後、彼らは正式にモリアの傘下に入った。
じゃないよい。﹂
﹁問題ないよい...。俺達としては自由にやらせて貰っている。文句なんて言える立場
新世界への挑戦者
340
∼そしてマリンフォード頂上戦争から2年∼
吹雪吹き溢れる雪の中に一人の青年が初雪を踏む音を響かせながら大木へ歩む。そ
して大木の足元にある巨石に載せた麦わら帽子の目の前で立ち止まり呟いた。
そして雪に埋もれた〝麦わら帽子〟を掴んだ
﹁早ぇなぁ...もう2年か...。﹂
341
其の五 世界の均衡は己及び仲間の命の次に尊重すべきであるが、時としてそ
其の四 裏切り者は即座に始末せよ。但し止むを得ない場合は例外とする
外とする
其の三 仲間間での争いは禁止であるが対等な条件での喧嘩、そして鍛錬は例
其の二 己及び仲間の命はシンボルより優先せよ
友を守る為なら例外である
其の一 民間人、政府関係者には如何なる害を加えてはならない。但し自衛及び
∼六ヶ条の掟∼
新生〝麦わらの一味〟
新生〝麦わらの一味〟
342
343
うでない場合もある
其の六 主人が錯乱すれば始末してよい。主人とはゲッコー・モリアのみであ
る
***
∼シャボンディ諸島∼
2年前、かつて海賊〝麦わらの一味〟船長モンキー・D・ルフィが天竜人を殴りつけ
彼
ら
て七武海の一人の経営していた店にて立て篭もり事件を起こした。
〝麦わらの一味〟の起こしたのはその大事件だけではない。〝王下七武海〟サー・ク
ロコダイルを討ち取り、司法の島〝エニエスロビー〟を落とし、〝インペルダウン〟か
ら囚人達を脱獄させ、マリンフォードに二度も乗り込んだ
だがこの2年間麦わらの一味は一切の活動の痕跡が見られなかった。世間もかつて
の出来事と忘れ始めていた。その間、〝麦わらの一味〟は未熟だった己らの牙を研いで
いたのだ
そしてその一味がシャボンディ諸島に再び現れたという情報を得た海軍が彼らを捕
らえに迫ってきた。
そして麦わらの一味船長〝麦わら〟ルフィ、〝海賊狩り〟ロロノア・ゾロ、そして〝
黒脚〟サンジを確認した部隊が銃をむけ投降する様呼びかけた。
﹃ホロホロホロホロ...﹄
舌を出しており、可愛らしさを漂わせるゴースト達が海兵たちの身体を通り抜けた。
すると一瞬で膝をついて倒れ始める。
にイライラしている人型のウサギがいた。
サンジとゾロの目線の先にはゴスロリファッションの可愛らしい女の子とこの騒ぎ
﹁おい...あれは確か。﹂
人の人影が現れた。
顔を青ざめさせながら、ネガテイブになって倒れていた。すると海兵達の後ろから二
﹁俺は...シラミになりたい。﹂
新生〝麦わらの一味〟
344
﹁やっぱりお前らか
この大騒ぎ。﹂
なったのか、この島まで連れてきたのだ。
﹂
れ 今 に 至 る。そ し て ア ル フ レ ッ ド に 付 き 添 っ た ペ ロ ー ナ は 方 向 音 痴 な ゾ ロ を 心 配 に
だが〝くま〟に敗れた事からアルフレッドも修行の為の2年間の休暇を願い出て許さ
戦争後ゾロはミホークに弟子入りをした次の日にモリアとアブサロムが迎えにきた。
〟が現れた
ばされた。まもなくゾロが飛ばされた数日後に王下七武海〝ジュラキュール・ミホーク
ペローナとアルフレッドはバーソロミュー・くまにより、〝シッケアール王国〟へ飛
ローナとその副官〝黒兎〟アルフレッドである。
四皇〝死の錬金術師〟ゲッコー・モリアが部下の航海士〝ゴーストプリンセス〟ペ
﹁あぁ面倒くせぇ、この上なく面倒くせぇよ。あぁ怠い、この上なく怠ぃよ。﹂
?
君はスリラーバークのォォォ
!!!
﹂
?
しながらペローナへ近づく。
﹂
﹁お前ら、なんでまだこんなとこにいるんだ
﹁はぁぁぁぁん
私がいなきゃお前、今頃...ん
﹂
ゾロの呆れた声はサンジの感性により掻き消された。そしてサンジはくにゃくにゃ
﹁ウォォォォッッ
!!!!
?
?
﹁この島にまで送ってやった恩人になんて言い草だ
?
345
ゾロの言葉に苛立ちを覚えたアルフレッドは見下す様な顔をし、ペローナは少しだけ
大きな声をあげた。
﹂
ゾロは確かに正論だと感じバツの悪い顔をして反論できずにいると、サンジがくんく
んとペローナの匂いを嗅いでいた。
﹁本物の女...。﹂
﹁当たり前だろうがなんの病気だテメェ
く
デ
ジャ
ブ
た
だ
の
変
態
野
郎
アルフレッドが幸せそうな顔をしているサンジをゲシゲシ踏みつけながら悪態をつ
﹁んだよ。どっかで経験済みかと思ったらアブサロムのお友達じゃねぇか。﹂
た。
ペローナが叫ぶと同時にアルフレッドはペシッとサンジを殴って、地面に叩きつけ
!!!!
﹂
?
﹁おぉッ
﹂
﹁やっと見つけたァァァッ
!!!
﹂
た。すると五人は影に覆われると、愛らしい声が響いてきた。
ペローナの言葉を耳にしたゾロは声をあげると、アルフレッドは空気を読み足を退け
﹁なんだと⁉
﹁それはそうとこの島に軍艦がきてるぞ。﹂
新生〝麦わらの一味〟
346
!
同
族
﹂
空から巨大な怪鳥が現れ、その上にはツノの生えたタヌキの様な生き物が乗ってい
た。
﹁〝綿あめ大好き〟チョッパー。ミンクなのかな
∼魚人島付近の海底∼
およそ一ヶ月後
***
中にルフィはあの二人が誰なのかをようやく思い出しかけていたのだった。
そして三人はチョッパーに言われ、怪鳥の背中に乗って去っていった。そしてその道
﹁さっさと行きな。私らもスリラーバークに帰りたいんだよ。﹂
?
347
〝魚人島〟でホーディとバンダーデッケンの野望を打ち砕き、ヒーローとなった麦わ
﹂
らの一味は盛大に見送られ次の目的地へ向かっていた。
***
そう呟いたルフィはかつて出会い己に影響を与えた者達の言葉を思い出し始めた。
﹁ここ上ったら...。シャンクスの海だ。﹂
珍しく考え込んでいた船長の様子を見た一味の一人が彼に声をかけた。
﹁どうしたルフィ
?
標
シャンクス...
目
になってな...。﹂
﹁この帽子をお前に預ける。俺の大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い。立派な海賊
新生〝麦わらの一味〟
348
兄
人
お前にまだ残っておるものはなんじゃ
﹁お前なら必ずやれる。俺の弟だ。﹂
エース...
恩
﹁確認せぇ
ジンベエ
!!!
匠
レイリー
師
﹁頂点にまで行って来い。﹂
﹂
!!!!
349
強
者
﹁気にいらねぇなら潰しに来い。﹂
モリア
﹁その最後の海を人はもう一つの名前でこう呼ぶんです。次の時代を切り開く者達の集
友
達
う海。その海を制した者こそが海賊王です。﹂
コビー
***
﹁この海底を抜けたら世界最強の海だ...
新生〝麦わらの一味〟
350
351
行くぞ野郎共ォォォ新世界へェェッッッ
﹂
!!!!
モリアは白ひげ海賊団とバギー海賊団を傘下にし、次々と縄張りの海域を広げ四皇の
七武海ジンベエ、同じく元王下七武海ゲッコー・モリアである。
一人は魚人島の〝リュウグウ王国〟の王ネプチューン、魚人海賊団船長にして元王下
魚人島の王の間にて三人の男が座り話し合いをしていた。
∼魚人島∼
マリンフォード頂上戦争から三ヶ月後
︿番外編﹀ 魚人島
〈番外編〉 魚人島
352
一人に数えられた。そしてその頃から一ヶ月後に友人であるジンベエに大事な話があ
るからと魚人島へ招かれたのである。
ジンベエは魚人島を縄張りにして海賊達の手から守ってくれるのであれば、己の海賊
モリアさんの傘下、魚人島もワシらもそうして欲しい。﹂
傘下に
﹁魚人島は〝白ひげ〟のオヤジさんの縄張りじゃった。そして今の〝白ひげ海賊団〟は
あるジンベエを呼び、パイプ役を担ってもらった。
し、新たに四皇の傘下に入りたいと考えた。そこでモリアに頼みたいと彼と交友関係の
ネプチューンはいずれ自分達の軍隊では手に負えぬ程の海賊団が現れることを危惧
屈強な兵士達により討伐されている。
所詮は欲に目が眩むだけの連中が大半のため、人間の十倍の握力を持つ魚人の中でも
しかし、白ひげは戦死したことにより多くの海賊達は新世界へ雪崩れ込んでいた。
多発していたが、亡き白ひげが縄張りにすることにより魚人島の治安は守られてきた。
新世界へ向かう為の最も安全なルートの1つであるため、昔から海賊による犯罪行為が
巨大なシーラカンスの魚人ネプチューンはモリアへそう伝えた。魚人島は無法者が
﹁ほぅ...。﹂
﹁この魚人島をお主の縄張りにして欲しいんじゃもん。﹂
353
団も傘下にするべきだと言う。彼は七武海でありながら白ひげ海賊団と交友が深く、ほ
とんど傘下のようなものだった。
皇と強さを見比べると見劣る。﹂
﹁だが一つ、気がかりがある。俺は〝白ひげ海賊団〟の海域は大半抑えた。だが他の四
普通であれば縄張りが増え、更に元七武海の海賊団が傘下になるのは戦力として申し
分ない。しかしモリアは己の戦力強化より魚人島に住む民達の方が大事であると考え
た。
﹂
浅い、つまり組織の為に尽力する者が少ないのだ。四皇クラスと抗争にでもなれば敗れ
﹁頭数の話ではない。結束力、つまり組織としての強さだ。俺が戦力を掻き集めて日が
るのは目に見えてる。﹂
﹁ワシらの話を断るということか
﹁む∼ん...。﹂
始めたが彼の傘下にしてもらうのが無難ではないのかと思考を研ぎ澄ませる。
ジンベエは少し残念そうな顔をし、ネプチューンはモリアの言うことが正しいと感じ
?
﹁だが...。﹂
上納すれば問題ない。﹂
﹁あぁ、〝ビックマム〟がいいだろう。あの女は危険だが、種族間の争いを嫌い菓子さえ
〈番外編〉 魚人島
354
〝ビックマム〟は四皇の一人シャーロット・リンリンの通り名である。彼女は甘いお
菓子が好物であり、己のシンボルを貸す代わりに大量のお菓子の上納をさせている。だ
が彼女には1つ厄介な点がある。それはお菓子を上納せねば島を滅ぼすのだ。
この点は大変危険であるがお菓子を上納さえすれば己らの安全を買えるのだ。他の
四皇と比べれば比較的自由にさせて貰える。
そう言い放つと彼は背を向けてゆっくりとその場から歩み始めた。
妬みもせん。﹂
﹁確かに危険だが、今の俺は不安定過ぎる。無難な方を選ぶがいい。俺は拒みはせぬし、
場から立ち上がった。
ネプチューンはモリアの言う事に完全に納得すると、モリアは軽くフッと笑うとその
﹁確かに魚人島のお菓子は名産品、彼女に口に合うかもしれん。﹂
355
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