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衛環研ニュース(PDF:346KB)
2010 年 11 月 はしょうふう 破傷風 の発生動向と予防方法について 破傷風は、破傷風菌が傷口から入って体の中で けいれん ま 増え、筋肉を痙攣させる神経毒(破傷風毒素)を よる死亡が生じやすくなります。 大量に出すために起こる感染症です。診断・治療 (回復または死亡) が遅れると死に至る場合もあります。 ひ ちっそく 上持続することが多く、呼吸筋麻痺または窒息に 第三期を経て、数週間位で症状が次第に回復し 毎 年 、破 傷 風 患 者 は 、日 本 国 内 で は 100 人 前 後 、 県 内 で は 1~ 4 人 程 度 の 報 告 が あ り ま す 。 ますが、開口障害は長く残ります。 破 傷 風 の 死 亡 率 は 、新 生 児 で は 約 75%、50 歳 以 上 で は 約 40%、 全 体 で は 30%で す 。 感染経路 ヒトからヒトへ感染することはありません。破 け ん き せいきん 治療 めんえき 傷風菌は、嫌気性菌(空気に触れない状態を好む 発病した患者には、破傷風菌免疫ヒトグロブリ 菌)で世界中の土壌中に存在します。原因や患者 ンの血清療法を行います。さらに傷口の消毒や気 の違いから以下の二つに分類されます。 道確保、抗痙攣剤、抗生剤の投与を行います。ヒ そうしょう ( 創 傷 性破傷風) けいれん トからヒトへ感染はしませんので隔離等は不要で ほこり 成人患者が最も多く、土や 埃 がついた釘や木片 け す。 が の刺し傷、ガーデニング等でできた怪我、傷口か ら破傷風菌が体内に侵入することで感染します。 予防方法 け (新生児破傷風) が 怪我をした場合、まず水道水で傷口を洗い流し 不衛生な出産環境が原因で新生児が感染します。 て消毒して下さい。 破傷風は、自然感染による免疫が成立しないた 症状 け め、何度でも感染します。予防接種のみが免疫を が 怪 我 を し て 、 感 染 し て か ら 約 3~ 21 日 間 の 潜 伏 期間の後、以下の症状が見られます。 獲得することができるため有効です。 小児期には、予防接種法に基づく定期予防接種 と し て 、 DPT 三 種 混 合 ワ ク チ ン ( ジ フ テ リ ア 、 百 (第一期) ・ 口 を 開 け に く い ( 開 口 障 害 )、 舌 が も つ れ る 日咳、破傷風)の接種を受けることができます。 ・ 顔 の 筋 肉 を 動 か し に く い 、笑 っ た よ う に 引 き 接種対象年齢になったら、なるべく早くワクチン けいしょう つった顔になる( 痙 笑 ) を接種するようにして下さい。海外渡航する予定 ・ 味が分からない(味覚異常) がある方も予防接種(任意・有料)の検討をお勧 ・ 首筋が張る、寝汗をかく、歯ぎしりする めします。 (第二期) ・ 口がますます開けにくくなる。 ・ 飲食物が飲み込めない(嚥下障害) ・ 呼吸困難、歩行困難。 え ん げ (第三期) ずいいきん 痛みを伴う、全身の筋肉(随意筋)を弓なりに けいれん かんけつてき 反 ら せ る 姿 勢( 弓 な り 緊 張 )で の 痙 攣 が 、間 欠 的( 一 定の時間をおいて起きたり、止んだりする)に見 られるようになり、数秒から数分間持続します。 けいれん 次第に痙攣する回数も増加し、痛みも強くなりま す。患者の意識ははっきりしているので、大変苦 しく、最も危険な時期です。この状態は 1 週間以 弓 な り 緊 張( ス コ ッ ト ラ ン ド の 外 科 医 C.Bell が 書 いたもの) 沖縄県衛生環境研究所 沖縄県南城市大里字大里 2085 TEL:098-945-0781 http://www.eikanken-okinawa.jp/ 2010 年 11 月 破 傷 風 患 者 の発 生 動 向 図1 破傷風患者の保健所別発生状況 (沖縄県:2006~2010年) n=14 人 <海外> 5 発展途上国などでは、不衛生な出産環境のため 4 に新生児が感染し、世界の破傷風死亡例の多くを 占 め て い ま す 。 WHO(世 界 保 健 機 関 )の 推 計 に よ る 3 と 、2004 年 に は 1 年 間 で 128,000 人 の 新 生 児 が 破 2 傷風が原因で死亡しました。 1 0 <全国> 2006年 2007年 破 傷 風 は 、 戦 後 、 1950 年 に は 届 出 患 者 数 1,915 宮古 2008年 中央 2009年 中部 2010年 南部 北部 人 、死 亡 者 数 1,558 人 と 致 死 率 が 高 く( 81% )、死 亡 者 の 過 半 数 は 15 歳 未 満 の 小 児 で し た 。特 に 、新 図2 破傷風患者の月別発生状況 (沖縄県:2006~2010年) 生児を中心に多数報告されていましたが、その後 人 の出産環境の改善とワクチンの導入などで大きく 5 減少しました。 n=14 4 感染症発生動向調査※によると、国内では年間 100 人 前 後 の 患 者 が 報 告 さ れ て い ま す 。 2004 ~ 3 2008 年 で の 報 告 で は 、40 歳 以 上 の 中 高 齢 者 、特 に 2 60 歳 以 上 の 高 齢 者 が 占 め る 割 合 が 高 く な っ て い ま 1 す。 そ の 理 由 と し て 、 DPT 三 種 混 合 ワ ク チ ン 定 期 接 0 1月 種 が 開 始 さ れ た 昭 和 43( 1968)年 以 前 に 出 生 し た 、 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 40 歳 以 上 の 多 く の 中 高 齢 者 は 抗 体 陽 性 率 ( 免 疫 ) が 低 い の に 対 し 、 30 代 以 下 の 者 は 抗 体 陽 性 率 ( 免 疫 )が 高 く 患 者 が 少 な い こ と が 指 摘 さ れ て い ま す 。 図3 破傷風患者の性別・年齢別内訳 (沖縄県:2006~2010年) 破 傷 風 患 者 を 減 ら す に は 、 40 歳 以 上 の 者 に 、 ワ n=14 5 クチンによる免疫を付与することが必要であると 考えられます。 4 女性 4 男性 3 3 <沖縄県> 3 沖 縄 県 で は 、 2006~ 2010 年 10 月 末 現 在 ま で に 2 14 人 の 破 傷 風 患 者 が 報 告 さ れ て い ま す (図 1)。 感 1 そうしょう 染 原 因 は 、12 人 が 創 傷 ( 転 倒 の 際 に で き た 傷 、草 1 1 1 1 とげ の棘による傷、釘等の刺し傷等)によるものであ 0 り、2 人は不明でした。 1―5歳 50―59歳 70―79歳 80歳以上 患 者 発 生 状 況 を 、保 健 所 別 に み る と 八 重 山 保 健 所 管 内 以 外 の 地 域 で 報 告 が あ り ま し た (図 1 )。月 別 に みると 5 月が最も多いですが、年間を通して報告 ※ 感 染 症 発 生 動 向 調 査・・・感 染 症 法 に 規 定 さ れ た が あ り ま す (図 2 )。性 別・年 齢 別 内 訳 を み る と 、50 疾患の患者がどのくらい報告されたかを調査集計 歳 以 上 に な る と 患 者 報 告 数 は 多 く な り ま す (図 3 )。 します。また過去のデータとの比較分析した情報 2008 年 に は 70 歳 代 男 性 の 死 亡 例 が あ り ま し た 。 を沖縄県感染症情報センターで公開しています。 (http://www.idsc-okinawa.jp/) 【企画管理班】 沖縄県衛生環境研究所 沖縄県南城市大里字大里 2085 TEL:098-945-0781 http://www.eikanken-okinawa.jp/ 2010 年 11 月 も っ と 詳 し く 知 りたい 方 は ・ ・ ※ 感 染症 法にお ける 取扱い・・ 破 傷 風 は 5 類 感 染 症 全 数 把 握 疾 患 に 定 め ら れ て お り 、 診 断 し た 医 師は 7 日以内に最寄りの保健所への届出が必要となっています。 URL: http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-12.html ※ 日 本の 定期 /任 意予 防接種 スケ ジュー ル(20 歳未 満) URL: http://idsc.nih.go.jp/vaccine/dschedule/Imm10-03JP.pdf ※ 海 外渡 航者の ため の予防 接種 那覇 検疫 所 HP URL:http://naha.keneki.go.jp/02immunization/yobouannai/yobousessyu.htm ※ 感 染症 の話( 破傷 風)国 立感 染症研 究所 HP URL: http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_15/k02_15.html ※ 破 傷風 2008 年 末 現在 (IASRVol.30: 65-66: ,病 原 微 生 物 検 出 情 報 2009 年 3 月 号 ) URL: http://idsc.nih.go.jp/iasr/30/349/tpc349-j.html 沖縄県衛生環境研究所 沖縄県南城市大里字大里 2085 TEL:098-945-0781 http://www.eikanken-okinawa.jp/ 2010 年 11 月 →戻る 年 齢 別 抗 破 傷風 毒 素 抗体 保 有 状 況 (一 部 抜 粋) <全国> 年齢別抗破傷風毒素抗体保有状況: 2008 年 度 の 感 染 症 流 行 予 測 調 査 速 報 ( 検 体 数 1,078: 2009 年 2 月 19 日 現 在 の 暫 定 値 ) に よ る 破 傷 風 の 防 御 レ ベ ル の 下 限 の 0.01IU/ml 以 上 の 抗 破 傷 風 毒 素 抗 体 陽 性 率 を 年 齢 別 に み る と 、 0 歳 で は 92% で 、 1 ~ 4 歳 で は 99% に 達 し 、35~ 39 歳 ま で は 92% 以 上 と 高 く 維 持 さ れ て い ま し た 。40 代 以 上 の 陽 性 率 は 低 く 、40 代 後 半 ~ 50 代 後 半 で は 平 均 25% 前 後 で 、60 代 以 降 で は 約 11% と 極 め て 低 い 結 果 と な り ま し た 。 沖縄県衛生環境研究所 沖縄県南城市大里字大里 2085 TEL:098-945-0781 http://www.eikanken-okinawa.jp/