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住宅政策 - Housing and Urban Analysis Laboratory

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住宅政策 - Housing and Urban Analysis Laboratory
参考文献
住宅政策
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻
浅見泰司
Yasushi Asami
1
1.住宅財の特異性
2
立地の固定性(不動産)
耐久性(耐久財)
適合の限界性(需要変化にすぐには反応できない)
異質性(財の多様性)
外生性(地域の状況に影響される)住宅への外部
効果
空間的外在性(住宅は近隣に影響)住宅からの外
部効果:取引費用など
政策制御性(制度的な影響を受ける)住宅政策の
影響
それは何か?
3
住宅という財の特質
Yasushi Asami
4
住宅財のサービス機能
シェルター(生活財、住む場所)
不動産持ち分(財産)
住宅単体だけでなく、近隣も含めた統合的
財と考えるべき
居住という消費対象だけでなく、投資対象と
もなる
多くの関連産業に波及(内需拡大策の典型
例)
Yasushi Asami
Yasushi Asami
住宅という財の性質
住宅という財は普通の財と比較して特異な
特性がある。
Yasushi Asami
住田昌二,延藤安弘,三宅醇,小泉重信,西村一朗(1985)『ハ
ウジング:新建築学大系14』彰国社.
社団法人日本不動産学会(編)(2002)『不動産学事典』住宅新
報社.
金本良嗣(1997)『都市経済学』東洋経済新報社.
岩田規久男 (1977) 『土地と住宅の経済学』日本経済新聞社.
岩田規久男,八田達夫(編)(1997)『住宅の経済学』日本経済
新聞社.
西村清彦(編)(2002)『不動産市場の経済分析:情報・税制・都
市計画と地価』日本経済新聞社.
中谷 友樹, 谷村 晋, 二瓶 直子, 堀越 洋一(2004)『保健医療
のためのGIS』古今書院
所有(専有、共同、区分)、賃借、利用
ステータス(社会的地位の象徴)
周辺にも影響・・・環境要素
5
Yasushi Asami
6
1
住宅市場と住宅
2.住宅問題から住宅政策へ
「衣食住」・・・基本的な生活財、必需性
住宅問題の「先進国」はイギリス
住宅政策の発祥は衛生問題
悲惨な住宅事情
生活する上での基本的に必要なもの
ある程度の水準を選択できる社会→社会保障
高価な耐久消費財(耐久性・重要性)
イギリス
住宅購入は通常何度も経験できない
消費者にとって失敗が許されない消費
産業革命→大都市への労働者集中→貧民街の形成
チャールズ・キングスレー:キリスト教社会主義者、貧民
の住まいを錐を持って訪ね、貧民の驚き怒るのもかまわ
ず壁に穴をあけた。狭い部屋に過密居住、小さい窓も閉
め切った衛生上悪い状態を憂慮。過密(overcrowding)・・・1840年代の言葉
次ページ・次々ページ図:住田ほか(1985)より
固着性
住宅はすべて異なる財(多様性)
情報の非対称性
情報量: 供給者>需要者
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7
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8
出典:住田昌二,延藤安弘,三宅醇,小泉重信,西村一朗(1985)『ハウジング:新建築学大系14』彰国社.
出典:住田昌二,延藤安弘,三宅醇,小泉重信,西村一朗(1985)『ハウジング:新建築学大系14』彰国社.
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1837-38 ロンドンで熱病流行
チャドウィック・レポート(1842)
湿気・不潔・狭小な過密居住
不衛生・悪い換気条件が労働者の早死の原因
衛生改革の推進を政府がすべき
救貧法(救貧税)による処置より効果的
上下水の整備、道路拡張、過密抑制規制を提案
出典:中谷 友樹, 谷村 晋, 二瓶 直子, 堀越 洋一(2004)『保健医療のためのGIS』古今書院
Yasushi Asami
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12
2
公衆衛生法(1848)
住居法(1851)
イギリスで公衆衛生法を成立
シャフツベリー卿の提案で世界初の住居法
が成立(シャフツベリー法)
チャドウィック・レポートやコレラ流行を経て
衛生状態を監視
Yasushi Asami
労働者宿泊所法
大衆宿泊所法
宿泊所に地方自治体が立入検査権限
地方自治体が市債で労働者の住宅を建築可
13
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14
住宅の協同性
その後、労働者階級の住宅事情を改善すべ
く、法制度やプロジェクトが行われた
機能的な住み良さだけでなく、デザインの高
さによって心を高めることも
住宅貯蓄組合(18世紀後半以降)
定期的に積み立て、資金がまとまると住宅を建設
Building Society
コーポラティブ運動(19世紀前半以降)
労働者の自治によるコミュニティ建設
共同所有型住宅
Housing Society(住宅供給組合)
理想都市
田園都市、田園郊外
Yasushi Asami
15
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16
3.住宅政策
従来の住宅政策の目的
住宅政策の類型
過密居住の解消(衛生面)
悪質な居住水準住宅の減少
住居費軽減
経済的な諸階層の融和
持ち家の促進
コミュニティの活性化
特定住宅弱者階層向けの住宅供給増大
安定的住宅建設
H.J. Aaron (1981) "Policy Implications: A Progress Report" in: K.L. Bradbury
and A. Downs (eds.) Do Housing Allowances Work?, Brookings Institution,
Washington, D.C..
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17
公的住宅供給
住宅助成政策
統制政策
規制政策(基準設定)
計画策定
住宅地整備事業
土地利用規制
住宅税制(省略)
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18
3
4.日本の住宅政策
明治時代
土地関係制度・税制の整備(近代化)
江戸時代
幕府:
(1)建築費暴騰(工賃,建築材料費,投機的買占め)
を抑制
(2)家賃の不当な釣り上げを禁止
(3)建築着手の督促や不急建設の手控えなどの制
令を公布
屋根や建築の構造(土蔵など)に関する規制や2
階建までに制限するなど現在の建築基準法に類
する規制も。
Yasushi Asami
1869(M2)東京遷都、1871(M4)田畑勝手作の許可、東京府下、翌年各
府県の無税市街地にも課税、1872(M5)土地永代売買の禁制解除、
1873(M6)地租改正条例を制定、1875(M8)分地制限令の撤廃……こ
れで藩政下の制限を廃止
1886(M19)旧登記法…所有権移転に関する公証制度
1896(M29)新民法の制定
1899(M32)新不動産登記法を制定
都市計画の体制
1888(M21)東京市区改正条例公布。芳川顕正知事:「家屋は末」
1899(M32)耕地整理法を制定
1894(M27):日清戦争
1904(M37):日露戦争
住宅・不動産関連
1909(M42)建物保護法を制定
1911(M44)東京市で公設細民長屋を建設、内務省で東京市細民調査を
実施、工場法が公布(施行は1916(T5))
19
大正時代
Yasushi Asami
20
昭和時代(戦前・戦中)
戦時統制
都市計画・建築法規の整備
1931(S6):満州事変、1936(S11)二二六事件、1937(S12)日
華事変
1938(S13)国家総動員法
1941(S16)第二次世界大戦(日本開戦)
1945(S20)終戦
1918(T7)東京市区改正条例を東京以外の5大市にも
準用
1919(T8)都市計画法,市街地建築物法
1914(T3)第一次世界大戦勃発
住宅・不動産関連政策
都市計画
1933(S8)都市計画法の改正
1919(T8)公益住宅建設開始
1920(T9)内務省に社会局を設置、第1回国勢調査
1921(T10)住宅組合法、借地法,借家法
1922(T11)借地借家調停法
住宅・不動産関連
1927(S2)不良住宅地区改正法が制定
1939(S14)現在価格停止令、価格統制令、地代家賃統制令、労
務者住宅3か年計画
1940(S15)厚生省社会局に住宅課、住宅対策要綱が閣議決定
1941(S16)住宅営団法、貸家組合法、全国規模で最初の住宅調
査
1923(T12):関東大震災、特別都市計画法
1924(T13)財団法人同潤会を設立
Yasushi Asami
21
昭和時代(戦後)
22
昭和時代(高度成長期)
戦後の復興
1945(S20)罹災都市応急簡易住宅30万戸建設要綱が閣議決定、
住宅緊急措置令
1945, 1946農地解放
1946(S21)余裕住宅の解放措置、罹災都市借地借家臨時処理法,
地代家賃統制令、特別都市計画法、戦災復興土地区画整理事業が
開始
住宅・不動産関連
1948(S23)建設省が発足、1949(S24)住宅対策審議会を設置
1950(S25)住宅金融公庫法が成立
1951(S26)公営住宅法が成立
朝鮮動乱→日本の経済に特需
都市計画
1950(S25)建築基準法を制定
1954(S29)土地区画整理法を制定
Yasushi Asami
Yasushi Asami
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高度経済成長と人口の大都市への集中
住宅・不動産関連
1955(S30)日本住宅公団を設立
1960(S35)住宅地区改良法を制定
1963(S38)新住宅市街地開発法
1963(S38)不動産鑑定評価法
1956(S31)「もはや戦後ではない」、「技術革新と近代化」
都市計画
1956(S31)都市公園法、首都圏整備法を制定
1959(S34)首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する
法律
1961(S36):建築基準法改正(特定街区)、宅地造成等規制法を
制定
1962(S37)全国総合開発計画、新産業都市建設促進法、工業整
備特別地域整備促進法
1963(S38)建築基準法改正(容積地区)
Yasushi Asami
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4
昭和時代(石油危機以後)
住宅・不動産関連
1965(S40)地方住宅供給公社法を公布
1966(S41)住宅建設計画法を制定、住宅建設五ヶ年計画
都市計画(スプロール防止)
1971(S46):ニクソン米大統領による緊急経済政策の声明
(ドルショック)
1973(S48):中東戦争→アラブ石油輸出機構は石油供給制
限、原油公示価格の大幅な引き上げを一方的に決定→石油危
機→物価狂乱(オイルショック)
住宅・不動産関連(開発ブームと環境問題)
1971(S46)田中角栄による日本列島改造論→地価高騰、宅地
開発要綱、第2期住宅建設五箇年計画、「一人一室」を目標
1975(S50)宅地開発公団を設立
1976(S51)第3期住宅建設五箇年計画、居住水準
1978(S53)住環境整備モデル事業制度、住宅宅地関連公共施
設整備促進事業制度
1968(S43)都市計画法が新法として誕生
1969(S44)都市再開発法を制定、新全国総合開発計画
1970(S45)建築基準法改正(用途地域改正)
いざなぎ景気
都市計画
1974(S49)国土利用計画法を制定、国土庁
1976(S51)建築基準法改正(日影規制,総合設計制度)
Yasushi Asami
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Yasushi Asami
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平成時代
バブル崩壊と後始末(景気低迷→地価下落→規制等緩和政策)
都市計画
1989(H1)土地基本法
1990(H2)大都市法改正(住宅基本計画)
1980(S55)都市計画法・建築基準法改正(地区計画制度)、
都市再開発法改正(都市再開発方針)
1987(S62)建築基準法改正(斜線制限の緩和)
1988(S63)再開発地区計画制度
都市計画
住宅・不動産関連
1981(S56)第4期住宅建設五箇年計画、宅地開発公団は日
本住宅公団と合併、住宅・都市整備公団、住環境整備モデル事
業制度が発足
1982(S57)住宅性能保証制度実施
1983(S58)HOPE計画、市街地住宅総合設計制度
1986(S61)第5期住宅建設五箇年計画
住宅付置義務制度(要綱)
高地価と大都市対策(バブル)
Yasushi Asami
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低金利時代へ、地方分権化・行政の効率化
1997(H9)建設大臣の住宅・都市整備公団解体論
都市計画
1997(H9)建築基準法・都市計画法改正(高層住居誘導地区、
共同住宅共用部分の容積不参入、敷地規模別総合設計制度)、
密集法(密集市街地の明示、権利変換円滑化、防災街区整備
地区計画)
1998(H10)建築基準法・都市計画法改正(連担建築物設計
制度、特別用途地区←用途地区類型廃止)
1999(H11)建築基準法・都市計画法改正(建築確認業務民
間開放、中間検査導入、機関委任事務廃止、自治事務化)
住宅・不動産関連
1998(H10)住宅・土地統計調査、住宅需要実態調査、定期借
家制度導入論議、高齢者向け優良賃貸住宅制度(高優賃)
1999(H11)住宅品質確保法(住宅性能表示制度)(2000.4
から施行)、都市基盤整備公団(←住宅・都市整備公団)、新借
家法(定期借家制度:2000から施行)
Yasushi Asami
29
1990(H2)地区計画(用途別容積型、住宅地高度利用地区計画)
1992(H4)建築基準法・都市計画法の改正(用途地域改正,市町村マス
タープラン)、地区計画(誘導容積型、容積適正配分型)
1995(H7)地区計画(街並み誘導型)
住宅・不動産関連
1991(H3)借地法・借家法改正(定期借地制度)、第6期住宅建設五箇
年計画
1993(H5)特定優良賃貸住宅法
1994(H6)ハートビル法
1996(H8)公営住宅法改正(家賃)、第7期住宅建設五箇年計画
1995(H7):阪神・淡路大震災
Yasushi Asami
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住宅・不動産関連
2000(H12)マンション管理適正化法(2001から施行)
2001(H13)都市再生論議、公庫・公団廃止論議、公社問題、
第8期住宅建設五箇年計画(居住・住環境水準&指標)、住
宅ローン減税制度,贈与税緩和、高齢者居住法
2002(H14)マンションの建替えの円滑化等に関する法律、
区分所有法改正、住宅性能表示制度(既存住宅にも適用)
2003(H15)住宅金融公庫の機構改革(証券化支援業務、
独立行政法人化)、住宅・土地統計調査、住宅需要実態調査
2004(H16)都市再生機構(←都市基盤整備公団)
2005(H17)地域住宅特別措置法(地域住宅交付金)
2006(H18)住生活基本法(←住宅建設計画法)
2007(H19)住宅金融支援機構(←住宅金融公庫)
2008(H20)200年住宅論議、省エネ法改正、長期優良住
宅法
2009(H21)高齢者住まい法改正(住宅・福祉連携)、ゼロゼ
ロ物件問題
Yasushi Asami
30
5
大震災以降
都市計画
2000(H12)建築基準法・都市計画法改正(特定用途制限
地域、準都市計画区域、都市計画区域外の開発許可)
2001(H13)総合規制改革会議第1次答申(規制緩和、透
明性、時間短縮、性能規定化)
2002(H14)都市再生特別措置法、建築基準法・都市計画
法・都市再開発法など改正、再開発等促進区(再開発地区
計画・住宅地高度利用地区計画を統合)、地区計画(高度利
用型)、構造改革特区、土壌汚染対策法(2003施行)
2003(H15)密集法改正(特定防災街区整備地区、防災街
区整備事業)、建築基準法改正(シックハウス対策)
2004(H16)景観法(景観計画制度、景観地区制度、景観
協定)、建築基準法改正(既存不適格建築物の順次適合化
の容認、是正命令制度、罰則強化)
2005(H17)耐震強度偽装問題
2008(H20)国土形成計画
2009(H21)都市計画法の大改正論議
Yasushi Asami
31
住宅市場の参考文献
33
De Salvo, J.S. (1975) "Benefits and Costs of New
York's Middle-Income Housing Program" Journal of
Political Economy, 83, 791-805.
Murray, M.P. (1975) "The Distribution of Tenant
Benefits in Public Housing" Econometrica, 43, 771788.
Olsen, E.O. and D.M. Barten (1983) "The Benefits and
Costs of Public Housing in New York City" Journal of
Public Economics, 20, 299-332.
住宅建設研究会(1987) 『公営住宅の建設』 住宅部品
開発センター.
宮尾尊弘 (1985) 『現代都市経済学』日本評論社.
Yasushi Asami
震災復興
2012(H24)エコまち法(低炭素化推進)
2013(H25)耐震改修促進法改正、特定都
市再生緊急整備地域指定
2014(H26)都市再生特別措置法改正(立
地適正化計画、都市機能誘導区域、居住誘
導区域)、空家等対策の推進に関する特別
措置法(特定空家除去)
Yasushi Asami
32
5.公的住宅供給政策
Smith, L., K. Rosen, G. Fallis (1988) "Recent Developments in
Economic Models of Housing Markets" Journal of Economic
Literature, 26(1), 29-64.
Sweeney, J. (1974) "A Commodity Hierarchy Model of the
Rental Housing Market" Journal of Urban Economics, 1(3),
288-323.
岩田規久男 (1977) 土地と住宅の経済学, 日本経済新聞社.
森泉陽子 (1991) 「日本の住宅市場と住宅の特殊性」『住宅土
地経済』1, 26-30.
森泉陽子 (1991) 「住宅需要の分析」『住宅土地経済』2, 28-31.
森泉陽子 (1992) 「住宅供給の実証分析」『住宅土地経済』3,
28-31.
森泉陽子 (1992) 「住宅政策と住宅市場の計量モデル」『住宅
土地経済』4, 28-31.
Yasushi Asami
2011(H23)3/11 東日本大震災
35
[参考文献]
Agus, M.R. (1989) "Public Sector Low Cost Housing in
Malaysia" Habitat International, 13(1), 105-115.
Clemmer, R.B. (1984) "Measuring Wefare Effects of InKind Transfers" Journal of Urban Economics, 15, 46-65.
De Borger, B. (1986) "Estimating the Benefits of
Public-Housing Programs: A Characteristics Approach"
Journal Regional Science, 26, 761-773.
De Borger, B. (1987) "Alternative Housing Concepts
and the Benefits of Public Housing Programs" Journal of
Urban Economics, 22, 73-89.
De Salvo, J.S. (1971) "A Methodology for Evaluating
Housing Programs" Journal Regional Science, 11, 173185.
Yasushi Asami
34
公的住宅供給:民間市場では供給が不十分
な住宅について公的に供給していく政策
公益住宅,同潤会,住宅営団,公営住宅,
機構(公団)住宅,公社住宅,公立住宅の建
設など
日本の戦後の住宅政策の大きな柱。公的住
宅として困窮する階層(例えば低所得層)向
けの住宅を供給する。公的住宅政策は弱者
に対する保護という意味合いを持つことが
多く、分配政策(富の再分配を目的とした政
策)。
Yasushi Asami
36
6
公営住宅
公営住宅は昭和26年に制度創設。
2006年で公営住宅の管理戸数は約219
万戸、全国住宅総数の約5%、借家総数の
約13%。(昭和40~50 年代前半にかけて大量供給)
政令月収20万円以下の世帯。
所得基準をオーバーした世帯は明渡努力
義務、割増家賃制度
昭和40年以前の公営住宅の建設は、住宅
難への短期的な対応に追われる結果、住
戸規模が小さく画一的な住宅建設。
公的住宅の政策目的層を「政策目的層」、
それからはずれる層を「非政策目的層」と呼
ぶと、政策目的層の保護を目的とするため、
その層へ特別な恩恵が与えられる。政策目
的層のすべてにまかなえる公的住宅を供給
することは不可能なため需要が供給を上回
る。政策目的層でいながらその恩恵に預か
る層と預かれない層との間に大きな不平等
が生まれる。
Yasushi Asami
37
Yasushi Asami
38
収入超過者、高額所得者の推移
国土交通省資料
○収入超過者、高額所得者の推移
(千人)
700
35.0%
624.700 617.883
600
595.984
576.630
586.216
30.0%
貢献
516.597
住宅の量的な不足を解消する目的に合うべく大量供給した
食寝分離に基づく住戸平面計画の普及、集合居住形式の
確立
各種住宅部品、工法の開発など住宅
高度成長期が終焉、「量から質へ」の転換(最低居住水準
未満世帯の解消を基本目標に、昭和40年代後半から50
年代半ばにかけて新規建設の住戸規模が急速に拡大。)
昭和44年に公営住宅法の改正により建替事業が施行。
課題
老朽化した住宅の建て替えや、比較的長期にわたり使用可
能な住宅の住戸改善
不公平のない運営
500
454.603
400
21.4%
28.3% 516.577
25.3%
25.2%
28.8%
29.5%
収入超過者数(高額含む)
高額所得者数
割合(収超)
割合(高額)
568.481
28.8%
27.7%
30.0%
26.6%
26.0%
417.153
511.947
604.515
25.0%
22.6%
394.843
20.0%
20.0%
349.533
313.932
300
16.2%
15.0%
277.925
253.889
14.5%
226.435
12.8%
198.843
11.7%
200
180.540
10.4%
9.1%
100
57.681
3.0%
167.701
7.7%
10.0%
158.078
7.2%
5.0%
71.481 74.068 71.998 65.296
66.018
58.151
56.510
53.457
3.5%
3.4%
3.4%
3.2%41.409
3.1%
41.765 43.511
2.7%
2.7%30.252
2.6%
2.2%
2.1%
23.656 19.274 16.292
2.0%
13.387 12.754 9.224 7.927 7.490
1.4%
1.1%
0.9%
0.7%
0.6%
0.6%
0.4%
0.4%
0.3%0.0%
0
S60
8.2%
87.361
4.4%
S61
S62
S63
H元
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
(年度)
国土交通省作成
「収入超過者」 : 公営住宅に引き続き3年以上入居し、かつ政令月収(各種控除後)20万円を超える者。(高齢者、障害者等裁量
階層については、26万8千円以下で事業主体が条例で定める額を超える者。)
「高額所得者」 : 公営住宅に引き続き5年以上入居し、かつ最近2年間の月収が政令に定める基準額(39万7千円)を超える者。
Yasushi Asami
39
収入超過者に係る家賃制度の合理化
国土交通省資料
収入の超過度合い及び収入超過者となってからの期間に応じて家賃の割増率を定めることとし、収
入超過者となれば遅くとも5年目の家賃から近傍同種家賃となることとした。 【政令:平成18年4月
1日施行。平成19年度家賃から適用】
改正前
近傍同種家賃
近傍同種家賃
5
4
4
3
3
2
2
1
1
年目
1
1/2
1/4
割増率
1/7
収入
分位
機構(公団)住宅
改正後
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
Ⅷ
Ⅴ
2
1
1
Ⅵ
Ⅶ
〔参考〕家賃算定基礎額
収入分位
入居者世帯の収入(月額)
Ⅰ
0-10 % 123,000円以下の場合
Ⅱ 10-15 % 123,000円を超え153,000円以下の場合
Ⅲ 15-20 % 153,000円を超え178,000円以下の場合
Ⅳ 20-25 % 178,000円を超え200,000円以下の場合
Ⅴ 25-32.5% 200,000円を越え238,000円以下の場合
Ⅵ 32.5-40 % 238,000円を超え268,000円以下の場合
Ⅶ 40-50 % 268,000円を超え322,000円以下の場合
Ⅷ 50- % 322,000円を超える場合
家賃算定基礎額
37,100円
45,000円
本来入居者
53,200円
61,400円
70,900円
81,400円
Ⅷ
昭和30:日本住宅公団設立、昭和56:宅地開発公
団と合併して、住宅・都市整備公団
大都市に勤労する世帯向けの耐火共同住宅の供
給が主だった
77万戸の賃貸住宅
436平方キロのニュータウン開発
民間でできることは民間でという流れで、業務が変
貌
2004年に都市再生機構となり、都市再生のプロ
デュースが主な仕事になった
収入超過者
94,100円
107,700円
(注)収入月額は、年間の収入から各種控除を行ったものを12で除した額
Yasushi Asami
42
7
公的住宅政策の理論的分析例
公的住宅供給の非効率性
De Borger, B. (1986) "Estimating the Benefits of PublicHousing Programs: A Characteristics Approach" Journal
of Regional Science, 26, 761-773.
公的賃貸住宅=助成されて減額された家賃で住宅に入居する
か否かを対象者に選択させる。住宅の質を入居者が選択する
のではない。行政側が対象者を割り当てる形式。
ベルギーのリエージュ市のデータ(221 世帯)30%が公的住
宅
世帯規模,教育,社会的地位,所得は住宅需要に重要
な要因
教育が高いほど衛生・構造面よりも規模や住戸形式を
重視
平均すると公的住宅の便益は少ない!(助成額は便益
の2倍以上) ← 公的な住宅より質が低く、規模の大き
い住宅を選ぶ傾向
非住宅財
A
G
C
E
F
D
B
Yasushi Asami
43
Yasushi Asami
住宅財
44
6.住宅助成政策
参考文献
Aaron, H. and von Furstenberg, G. (1971) "The Inefficiency of
Transfers in Kind: The Case of Housing Assistance" Western
Economic Journal, 9, 184-191.
Carlton, D.W. and J. Ferreir, Jr. (1977) "Selecting Subsidy
Strategies for Housing Allowance Programs" Journal of Urban
Economics, 4, 221-247.
DeSalvo, J. (1971) "A Methodology for Evaluating Housing
Programs" Journal of Regional Science, 11, 173-185.
Fallis, G. (1990) "The Optimal Design of Housing Allowances"
Journal of Urban Economics, 27, 381-397.
Friedman, J., Weinberg, D.H. (1981) "The Demand for Rental
Housing: Evidence from the Housing Allowance Demand
Experiment" Journal of Urban Economics, 9, 311-331.
Yasushi Asami
Mayo, S.K. (1986) "Sources of Inefficiency in Subsidized
Housing Programs: A Comparison of U.S. and German
Experience" Journal of Urban Economics, 20, 229-249.
Plaut, S.E. (1986) "Mortgage Design in Imperfect Capital
Markets" Journal of Urban Economics, 20, 107-119.
浅見泰司(1994)「大都市における家賃補助政策の効果に関する
研究」『日本不動産学会誌』9(1), 57-66.
外国住宅事情研究会 (1986) 『欧米の住宅政策と住宅金融』 住
宅金融普及協会.
高野義樹 (1984) 『日本の住宅金融』住宅金融普及協会.
宮尾尊弘 (1985) 『現代都市経済学』日本評論社.
45
住宅金融・助成政策
46
住宅融資
金融上や組織上の便宜をはかることにより住宅市
場を活性化させようという政策。住宅組合法,貸家
組合制度,住宅金融支援機構などがある。
差別化による助成政策:本来公平に負担すべきも
のを、通常「弱者」などに特例として差別かして負担
を軽減する政策。様々な税金免除の特例。公正性
の面から保護層については単なる既得権擁護では
なく社会的な意味付けを常に問うことが重要。農地
への固定資産税・相続税軽減,住宅用途の固定資
産税軽減などがある。
Yasushi Asami
Yasushi Asami
47
1)住宅金融支援機構
昭和25:住宅金融公庫が、長期・低利の住宅資金を融資し
住宅建設を促進する目的で設立。
公庫融資:国民の持家取得の促進という役割の他、設計審
査、現場審査を条件としているため住宅の質向上のために
貢献してきたこと、全建設工事費(一戸当りの利用者の予算)
に占める公庫融資の割合は約40%であり、残りの約60%は
手持ち資金または他からの借入金であることから、民間資金
を住宅投資に向けさせる民活型融資となることなどの役割を
も果たした。
2003年に利子率低下、民間金融機関の住宅ローンの活発
化を背景に、証券化支援業務にシフトしつつある。
2007年に住宅金融支援機構に組織替え
Yasushi Asami
48
8
2)民間金融
昭和30年代:民間金融機関としては労働金庫の住
宅融資が最初。(東京労働金庫など)
勤労者向けに住宅融資制度:住宅預金を積み立てた者に
対する住宅融資制度
都市銀行は35年に住宅ローンを開始。ローンの金利は高
く、期間は3~5年でしかも一定額の定期預金積み立てを
条件とする。36年にも引続き長期信用銀行,信託銀行でも
同様の住宅ローンを開始。36年7月の金融引締めにより
中断。
38年に入り金融引締めが解除されると、銀行は多方面に
わたって消費者金融を再開し、提携方式の住宅ローンも開
始。
1)不動産業者が販売を促進するため金融機関と提携。2)
金融機関として提携先の保証を求めて信用を補完。
Yasushi Asami
49
現在の住宅金融支援機構の業務
昭和40年代:住宅ローン増加
1)40,41年の大不況で産業資金需要が急速に冷え
込み。2)返済金の口座引き落しなど事務負担の軽減
化。3)高度成長による所得上昇で国民の住宅取得意
欲が強い。→非提携ローンでも融資期間の長期化,限
度額の拡大,金利の引き下げなど緩和。
昭和50年代以降
低成長時代→様々な融資方式の開発
融資条件の緩和:単に利息が下がったのみならず、返
済方法も多様に。
不動産会社やハウス・メーカーが自社系列のローン会
社をつくる。
リース会社,消費者金融会社なども住宅ローンへ進出
Yasushi Asami
50
家賃補助政策の理論的検討
家賃補助の方が入居者が望む住宅を自由に選べ
るため、ミスマッチによる非効率性が少ない。
ただし、本来は行政コストも加味して比較すべき。
家賃助成の方式
フラット35
長期固定金利住宅ローン
災害復興支援
定額補助方式(定額所得手当方式)一定額を補助:a=
(一定)
再建・補修の融資
他市場へのひずみは少ない
良質賃貸住宅建設支援
定率補助方式:家賃の一定比率を補助:a=t(家賃)
サービス付き高齢者向け賃貸住宅など
不相応に大きめの家に。市場家賃増大。財政支出増大。
応能家賃方式:標準家賃額から所得の一定割合を減じた
額を補助:a=(標準家賃)-s(所得)
垂直的公平性の改善。労働市場に若干のマイナス影響。
Yasushi Asami
51
Yasushi Asami
52
7.統制政策
[参考文献]
Appelbaum, R.P., J.I. Gilderbloom (1990) "The Redistributional
Impact of Modern Rent Control" Environment and Planning A,
22, 601-614.
Gyourko, J., Linneman, P. (1989) "Equity and Efficiency
Aspects of Rent Control: An Empirical Study of New York
City" Journal of Urban Economics, 26, 54-74.
Gyourko, J., Linneman, P. (1990) "Rent Controls and Rental
Housing Quality: A Note on the Effects of New York City's Old
Controls" Journal of Urban Economics, 27, 398-409.
Ho, L.S. (1992) "Rent Control: Its Rationale and Effects" Urban
Studies, 29(7), 1183-1190.
Yasushi Asami
53
Levine, N., Grigsby, J. E. ,Heskin, A. (1990) "Who
Benefits fron Rent Control?: Effects on Tenants in Santa
Monica, California" Journal of American Planning
Association, 56(2), 140-152.
Linneman, P. (1987) "The Effect of Rent Control on the
Distribution of Income Among New York City Renters"
Journal of Urban Economics, 22, 14-34.
Tucker, W. (1987) "Where Do the Homeless Come from?"
National Review, 25 September, 32-43.
三田村一太郎 (1954) 「地代家賃統制令とは」 『住宅』
3(5), 4-13.
宮尾尊弘 (1985) 『現代都市経済学』日本評論社.
Yasushi Asami
54
9
統制政策
民間における住宅に関する売買取引や賃貸借取引に
関してその取引(契約)条件に統制を加える政策。価格,
地代,家賃などを統制したり、賃貸人が賃貸借契約を
容易に解約できないようにする、契約期間を規制する
など。
統制政策が課された場合、通常供給者側に不利にな
る条件を付す場合が多く、短期的には需要者に有利で
あっても、長期的には供給量を抑制する効果や別の形
での供給に転化される効果を持ち、市場を歪曲化する
恐れが高い。
建物保護法,借地法・借家法,地代家賃統制令,国土
利用計画法など。
Yasushi Asami
55
家賃統制施策の効果
D
家賃
S
Yasushi Asami
56
家賃統制の効果
イギリスの家賃統制:20世紀にイギリスで家賃統制を行
い、その結果民間賃貸住宅を減退させてしまった。そのた
め、公共住宅建設でそれをカバー。しかし大変な財政負
担。
s
d
説明の例として家賃統制をとりあげる。家賃統制においては借家需
要が急速に高まったために家賃が急騰するのを抑えるために戦時
中などに出された統制令で家賃を凍結するというもの。統制される
以前は需給均衡に達していたと仮定。需要が高まっても依然として
家賃はそのまま。自由市場で得られる均衡点とならない。しかも統
制家賃は変わらないことが判っているため、供給者は家賃額より多
くの家賃を得ることはあきらめざるをえないので、より多い家賃に相
当する部分の供給曲線は無効となる。統制家賃価格のもとでは需
要と供給が乖離。
仮に家賃統制を撤廃し自由市場に委ねると短期的には供給は増え
ず、本来の均衡家賃より大きい家賃額となる。本来の自由市場家賃
よりも大きい家賃となるため、借家人としては家賃統制の撤廃には
強い抵抗がある。そこでこの種の統制政策はどうしても需要者の強
い抵抗から撤廃することがむずかしく、単なる暫定措置として行なっ
ても、長引きその後の市場環境を歪めてしまう。
1915:家賃および抵当利子制限法
家具付き住宅(ホテル並みの高級住宅)を除く借家(全
住宅の85%)の家賃を1914年8月の水準に固定。
C
p
B
r
A
1920年法:1923年まで延長し、賃料評価の上限を3倍に引き上
げ、家具付き住宅を除く民間借家の98%が対象となる。統制家
賃を40%まで引き上げ。
1923年オンスロウ委員会:統制が借家供給の阻害要因となって
いることを指摘し、契約自由の拡大を答申。
D
s
S
d
m
Yasushi Asami
n
世帯数
57
1923年法:借家人が移動し、空家になると統制を解除。
1931年マーレイ委員会:統制が労働力移動の妨げになって
いること、労働階級借家の解除が少ないことを指摘。
1933年法:一定賃料評価の住宅を解除。ロンドンで20~
45、その他で13~35ポンドの住宅は空家になると解除され、
その他は統制が続行。
1938年法:第1次リドレー委員会(Ridley Committee)に
基づき、ロンドンで35ポンド、その他で20ポンド以上が解除。
1939~1945:第2次世界大戦
1939年法:ロンドンで 100ポンド、スコットランドで90ポンド、
その他で75ポンド以下で家具なしの住宅を1939年9月水
準に固定。
Yasushi Asami
59
Yasushi Asami
58
1946年:家賃裁判所(Rent Tribunals)が設置され、家具付き
住宅の家賃裁定、新貸出住宅の家賃の裁定など。
1954年:住宅修繕・家賃法(Housing Repairs and Rent
Act)家賃の増価分を修繕に用いることを条件として賃料評価の
最高2倍にまで上昇することを認めた。
1957年:家賃法(統制解除の方向へ)
ロンドン,スコットランドで40ポンド,その他で30ポンド以上の住
宅を解除。借家人が移動したら解除できるものとした。
1965年法:1965賃料評価でロンドンで 400ポンド、その他で
200ポンド以下の家具なし住宅を新たに規制借家(regulated
tenancies )として、Fair Rent(公正家賃)制を適用
Yasushi Asami
60
10
アメリカの家賃統制
家賃統制の効果:短期的には有効だが長期化しや
すく、長期化すると多くの弊害がでてきて、その調
整が複雑かつ困難になる。その弊害は多面的。
(1)家屋の質の低下。古く、壊れ、設備不足になる。不誠
実な家主のみが残る。
(2)労働の移動性が低下。(空家になると売ってしまう)
(3)市場の固定性から狭い家に大家族が住んだまま、あ
るいはその逆の状態が起こりやすい。
(4)統制の体系が複雑化し、不公平が生じる。
(5)供給不足が慢性化。
(6)政治的には統制を解除しにくく、長期化しやすい。
Yasushi Asami
1960年以前の家賃統制体制。家主の収益性を全く考えずに絶対上限
家賃を設定。第2次世界大戦中の賃金・物価統制として制定されたもの。
(2)moderate rent control(緩和型家賃統制)
拘束的家賃統制の反省から1970年代初期に導入された家賃統制。家
主と借家人の双方の利益を勘案する点に特徴。家賃高騰を防ぎつつ家
主の公正な収益(fair and reasonable return)を保証。
(3)strong rent control(強化型家賃統制)
非常にインフレ傾向の強い賃貸住宅市場で、緩和型家賃統制が不十分
であるとされる地区で行なわれる。家賃上昇率はCPI(消費者物価指数)
より低く設定。空家になっても家賃統制からはずれない。
nonrestrictive rent control ではそのような悪影響はほと
んどない。(Appelbaum & Gilderbloom, 1990)
Yasushi Asami
62
基準化政策
[参考文献]
Dwyer, D.J. (1975) People and Housing in Third
World Cities, Longman, London.
Grimes, D.F., Jr. (1976) Housing for Low-Income
Urban Families, Johns Hopkins University Press,
Baltimore.
Mayo, S.K., S. Malpezzi and D.J. Cross (1986)
"Shelter Strategies for the Urban Poor in Developing
Countries" World Bank Res. Observer, 1, 183-204.
Ravallion, M. (1989) "The Welfare Cost of Housing
Standards: Theory with Application to Jakarta"
Journal of Urban Economics, 26, 197-211.
63
Ravallion (1989)は住宅基準の社会厚生費用を考察
住宅基準:住宅の質や規模に対して公的に課す制約敷地
面積,床面積,構造面などの最低限度を決めることが多い。
住宅基準が課せられるとその完全な代替財がない限り(普
通はない)、消費者のwelfare lossをもたらす。しかも、低所
得者ほど強く制約を受ける。従って垂直公平性に対して不
公平性を増す効果がある。
住宅基準設定により、基準より低い住宅ならば取得できた
はずの人々で基準設定により住宅取得を諦めた人々の影
響も考慮する必要がある。
インドでの住宅基準「少なくとも2部屋あり、トイレなどが完備」
これより低い水準ではスラム化の恐れ有りと、インド都市計画
協会が述べた。これはBombayやCalcuttaでは高水準の住
宅!
Yasushi Asami
(1)restrictive rent control(拘束的家賃統制)
61
8.基準設定政策
Yasushi Asami
Appelbaum & Gilderbloom (1990)
アメリカでは 200余都市で家賃統制を行なっている。
3種類の家賃統制
65
住宅が満たすべき主として最適基準を定め
ることにより、住宅としての水準を確保しよう
とする政策,住宅の質空間を制限する。
基準は実効性を考えて設定すべき。
衛生面・構造面の規制,市街地建築物法,建
築基準法など
Yasushi Asami
64
Jakarta (インドネシア,ジャワ島)で住宅基準
が設定された場合
基準化の社会費用は無視できない。ただ基準
に達するために必要な費用でそのコストを計
算すると過剰評価。例えば下から1/3 の所得
分位の人では基準に達するための費用の1/2
で評価すれば良い。
基準化は望ましくないわけではないが、こ
のような低所得者の人々への影響を十分
考慮すべき。
Yasushi Asami
66
11
9.計画策定政策
計画策定政策
[参考文献]
日端康雄 (1985)「審議会答申にみる戦後住
宅政策の変容と特質」『日本不動産学会誌』
2, 25-40.
崔廷敏,浅見泰司(2004)「言語統計分析に
よる住宅建設五箇年計画及び答申の特性
分析:政策の立案と評価における非定型・
大量情報の活用可能性」『日本建築学会計
画系論文集』579, 89-96.
Yasushi Asami
67
計画や理念を提示することにより、全体の
政策や人々の考え方を規定。概念的になり
がちであるが、実効性のある方策の理由付
け手段として利用することができる。また、
宣言にすぎなくても意識改革を狙っているこ
ともあり、宣伝効果もある。安易な計画立案
は避けるべき。住宅建設計画,整備・開発・
保全の方針(都市基本計画),土地基本法,
また現在作業の進められている住宅基本計
画など。
Yasushi Asami
68
住宅建設五箇年計画
住宅難解消
第五期(昭和61-平成2年度): [目標]早期にすべての世帯が最低
居住水準を確保、昭和75年度を目途に半数の世帯が誘導居住水
準を確保、都市居住型と一般型誘導居住水準の2つの水準を設定
第一期(昭和41-45年度): [目標]住宅難の解消、一世帯一住宅
計画-670万戸、実績-673.9万戸(256.5万戸)
計画-670.0万戸、実績-835.6万戸 [地価上昇で先高感→取得
意欲,借家が伸びた]
第二期(昭和46-50年度): [目標]住宅難の解消、一人一室
計画-957.6万戸、実績-828.0万戸 [第一次石油危機あり]
量から質へ
第三期(昭和51-55年度): [目標]居住水準目標の設定(最低居住
水準・平均居住水準)
計画-860.0万戸、実績-769.8万戸 [第二次石油危機あり]
第四期(昭和56-60年度): [目標]居住水準目標の達成を図る、住
環境水準を別途設定
計画-770.0万戸、実績-610.4万戸 [地価が上がらず金利が高
め→住宅取得意欲無し→住宅不況]
第六期(平成3-7年度): [目標]全国で半数の世帯が誘導居住水
準を確保、平均床面積を95m2に、2010年までに全ての都市圏で
半数の世帯が誘導居住水準を確保、良質住宅ストック確保,大都市
住宅問題解決,高齢化社会対応
計画-730.0万戸、実績-762.3万戸
第七期(平成8-12年度): [目標]最低居住水準はすべての世帯で
確保
計画-730.0万戸、実績-681.2万戸 今後高齢化する中で、今度
の計画期間がストックを増やす最後のチャンスという認識。
市場・ストック重視
第八期(平成13-17年度): [目標]持続可能性、目標の定量化
計画-640.0万戸、実績-593.5万戸
Yasushi Asami
69
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70
浅見泰司(2004)「住環境の住宅政策、消費者、市場における位置づけ」『季刊不動産研究』46(4), 1-7.
住生活基本計画
住生活基本法(H18制定)
住生活基本計画(H18年度から)
市場、ストック重視
福祉・まちづくりと連携
地域の実情に合ったきめ細やかな対応
住生活の質の向上に関するアウトカム目標
現行の住生活基本計画(H23~32年度)
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http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/h
ouse/torikumi/jyuseikatsu/gaiyo.pdf
2015.10現在 改訂のための作業中
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72
12
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73
住宅基本計画
74
東京都の例
1990年6月29日 大都市法改正
→ 「大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関す
る特別措置法」
(1)首都圏,近畿圏,中部圏
住宅及び住宅地の供給に関する基本方針(供給基本方針)を策
定
(2)関連都府県
住宅及び住宅地の供給計画を策定
→これを受けて市町村では住宅基本計画を策定
住宅基本計画
公営住宅・公立住宅・福祉住宅の供給,公団・公社住宅の誘致,
公有地などの有効活用,公共住宅の建て替え,民間住宅建設へ
の助成・誘導,共同化促進,融資斡旋,相談・指導体制の充実,
住環境整備(オープンスペース確保,緑化,生活関連施設整備),
現行法制度上の問題点の分析 などが地区別に盛り込まれる
Yasushi Asami
Yasushi Asami
75
http://www.t
oshiseibi.metr
o.tokyo.jp/ju
utaku_kcs/84
3master.htm
2011~2020年
度の計画期間
Yasushi Asami
76
10.住宅地整備事業
[参考文献]
Atkinson, A.B., J.E. Stiglitz (1980) Lectures on Public
Economics, McGraw-Hill, New York.
Green, J., J.J. Laffont (1979) "Incentives in Public
Decision Making“ Studies in Public Economics, Vol.1,
North Holland, Amsterdam.
Horayangkura, V. (1988) "Cultural Housing
Preferences in Low-Income Resettlement Communities
in Bangkok, Thailand" Housing and Society, 15(2), 145157.
Varian, H.R. (1984) Microeconomic Analysis, 2nd ed.,
W.W. Norton & Company, New York.
Yasushi Asami
77
Yasushi Asami
78
13
住宅地整備事業
佐藤圭二, 井沢知旦 (1988)「住環境整備のための問題住
宅地区の摘出方法に関する研究」 『日本建築学会計画系
論文集』 391, 73-85.
高見沢邦郎, 洪正徳 (1987)「東京区部における住宅地区
改良事業候補地区の変容実態について」 『日本建築学会
計画系論文集』 377, 58-67.
土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学大系20,
彰国社, 177-220
山本哲 (1984)「換地計算式の原理的系譜に関する考察」
『日本都市計画学会学術論文集』 19, 139-144.
簗瀬範彦 (1985)「土地区画整理事業における換地設計方
式の構造に関する基礎的考察」 『都市計画論文集』 20,
457-462.
Yasushi Asami
79
住宅福祉政策上または土地利用効率上から改善すべ
きと認められる地区において事業的に整備していく政
策。
不良住宅地区改良事業,住宅地区改良事業,土地区
画整理事業など。
区画整理などでは、地価減少による事業費捻出困難化。
Yasushi Asami
80
日本の整備事業
例:木造密集地区では自助努力には限界があり、環境の良い住
宅地にするにはかなりの投資が必要。また、周辺部にも火災危
険があって悪い影響。そこで公共の補助で全体の改善事業を行
なう。短期的にはその住民は一次的に別の所に居住することを
強いられ不便であり、自分達の負担もあるが、事業後は改善さ
れた住宅地を享受でき最も便益を得る。周辺住民も道路整備や
住宅地イメージの改善,火災危険度の現象などで便益が増加。
環境改善によって地価は上昇→固定資産税が上昇。本来は対
象地区の地価上昇に伴う固定資産税増分で長期的にはまかな
われるべき。問題点は、適用地区選定の際、「客観的」条件をつ
けるためにどうしても救済すべき地区の一部のみに集中し、また
事業自体もかなり限定される点。問題地区はそれぞれ事情が異
なるために、全ての救済すべき地区を対象とするには多くの事業
をおこす必要→事業の多様化と対象条件の緩和がなされる傾向。
Yasushi Asami
81
集団的な住宅の供給。宅地分譲は認めない。内容は都市
計画決定。公共性の裏付けを必要→最近少ない。
事業主体:地方公共団体,(旧)住都公団,地方住宅供給
公社など公共セクター
特色:土地の強制買収,先買権/宅地・住宅の一体的建
設/公共性の裏付けが現在は困難/大規模なものは困
難
立地:都市内部,近郊,市街化区域内
規模:1ha以上でかつ50戸以上
Yasushi Asami
82
3)土地区画整理事業(土地区画整理法,事業機
関法:公団・公社)
2)新住宅市街地開発事業(新住宅市街地開発
法,土地収用法)
住宅需要の大きい大都市地域での住宅大量供給。非
住宅用地は含まない。
事業主体:地方公共団体,(旧)住都公団,地方住宅供
給公社
特色:土地の強制買収,先買権/土地提供者の生活
再建措置/高い住環境水準の実現/小規模なものは
不可
立地:大都市・拠点都市の郊外,ニュータウン,用途地
域を決定
規模:1住区(1万人,居住人口密度100~300人/
ha),33ha以上
Yasushi Asami
1)一団地住宅施設経営事業(都市計画法,土地収
用法)
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歴史が長い方式。換地による公共施設の整備と宅地の
整序。保留地,減歩。
事業主体:土地所有者,区画整理組合,地方公共団体,
(旧)住都公団,地方住宅供給公社
特色:宅地利用の適応性大/先買との組合せで多様な
開発の可能性/事業機関の長期化傾向/民有換地の
市街化停滞
立地:都市計画区域内どこでも
規模:不定
cf. ドイツ,1920年 アディケス法(区画整理法)フランク
フルトで1893年に初めて試みられた。
Yasushi Asami
84
14
4)一般宅地開発事業(都市計画法)
通常の宅地開発。事業者の個々の目的による宅地供
給。市街化区域内では1000m2 以上の開発には開発
許可が必要。市街化調整区域では原則禁止、ただし、
20ha以上の良好な開発は可。民間企業による住宅地
開発の大部分はこの方式。
事業主体:土地所有者,民間開発企業,地方公共団体,
(旧)住都公団,地方住宅供給公社
特色:事業者にとっての自由度大/土地の取得(任意
買収)が鍵/公共事業,公益サービスとの不整合が起
こりやすい/スプロールの原因となりやすい
立地:都市計画区域内どこでも
規模:不定
Yasushi Asami
5)市街地再開発事業(都市再開発法)
第一種:土地・建物の権利を変換移動すること
により、合理的な土地利用を実現。高度利用地
区で非耐火建築が多いなど再開発の必要性が
高い地区で適用。
第二種:事業完成後の建築と土地の優先譲渡
を条件として、一時諸権利を施行者に移して速
やかに事業を行なう(収用権あり)。高度利用地
区で非耐火建築が多いなど再開発の必要性が
高い地区や災害のおそれが著しい地区で適用。
85
Yasushi Asami
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整備事業の負担の問題
負担原則:
6)住宅地区改良事業(住宅地区改良法)
受益者負担
公共性があるものについては補助
公平な負担
いわゆるスラムクリアランス。
住環境整備モデル事業(部分クリアランス)
過密住宅地区更新事業(ころがし方式)
1)受益者負担原則
事業を行なうと、対象地域に居住する人は利便性が高まり、
資産価値が上昇するなどの便益を享受。これらの受益分
は本来受益者が負担すべきであるという考え方が受益者
負担原則。
仮に一般の人々が得る利益があればその費用については
公共が負担するのも受益者負担の原則の一部に含まれる。
しかし、受益量を計測するのは非常に困難で、原則を厳密
に実行することは困難。そこで定められた比率を公共が補
助するなどいわば近似的な受益者負担を行なうようにする
制度が多い。
開発事例:cf. 土肥・御舩 (1985) 183-218
Yasushi Asami
87
2)事業の効果分析方法
88
3)公共財(=事業)供給にかかわる理論
Atkinson, A.B., J.E. Stiglitz (1980) Lectures on
Public Economics,McGraw-Hill, New York.
Atkinson, A.B., J.E. Stiglitz (1980) Lectures on Public
Economics, McGraw-Hill, New York.
Varian, H.R. (1984) Microeconomic Analysis, 2nd ed., W.W.
Norton & Company, New York.
費用・便益分析(cost-benefit analysis )
かかる費用の現在価値をC,全便益の現在価
値をBとすると、(B-C)が正ならば事業は実行
すべき。ただし、通常は便益は長期にわたり、費
用は初期費用が大きいという時間的なアンバラ
ンスがあるため、どうしても予算制約を受けるの
が通常。この場合、 便益率=(B-C)/C が
高いものから実行するのが自然な考え方。
Yasushi Asami
Yasushi Asami
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公共財(public goods):
(1)等量性:他人と同じ量を消費(使用)
(2)非競合性:ある人がそれを消費しても他の人の消費できる量
は減らない。
(3)非排除性:仮にある人がそれの負担をしなくてもその人が消
費するのを妨げない。→free rider問題
完全な受益者負担原則にはのりにくい。このような財は税金
で負担し、供給量は多数決などで決定するのが普通。
私人の負担に任せると過小供給。
Yasushi Asami
90
15
4)受益量の開示
参考文献
仮に受益者が受益量を算定できてもそれを
正直に申告して税として納入するようなシス
テムは難しい。
Bagnoli, M., B.L. Lipman (1989) "Provision of Goods:
Fully Implementing the Core through Private
Contributions" Review of Economic Studies, 56, 583-601.
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Decision Making“ Studies in Public Economics, Vol.1,
North Holland, Amsterdam.
Jackson, M., H. Moulin (1992) "Implementing a Public
Project and Distributing Its Cost" Journal of Economic
Theory, 57, 125-140.
Varian, H.R. (1984) Microeconomic Analysis, 2nd ed.,
W.W. Norton & Company, New York.
Yasushi Asami
各受益者はどうしても少なめに申告する動機。
→受益者に受益量を正直に開示させるよう
な社会システムをつくることは不可能か?
・・・実は特定の状況下ではうまく働くシステ
ムの設計方法(メカニズム)がいくつか提案
されている。
91
Yasushi Asami
92
Clarke-Groves mechanism
n人の社会で集合Aの選択肢の中からひとつ選択。政
策aを採択した場合の個人iの便益は ui(a) で表わさ
れる。ui に関する情報は個人iしか知らない。個人iは
効用値xi(a)を宣言。
Σixi(a*)=supb{Σixi(b)} 申告値の合計が最大となる
政策を採用。
さらに、政策a* の実施とともに次の金額ti を個人iが受
け取る。
ti(x)= Σj≠i xj(a*) – supb{Σj≠i xi(b)}
個人iがこの社会でのこのルールのもとでの政策決定
に参加するとiの真の効用は vi(x)=ui(a*(x)) +ti(x)
Yasushi Asami
93
xi=ui(正直な申告)が「最適」戦略(dominating strategy )と
なる!(他人がどのような戦略を使おうと正直に申告するこ
とが最適。)
すべてのiについてti(a*(u))=0のとき均衡がパレート最適。
メカニズムの特徴
補助金は与えずにすみ、場合によって税金を徴収するしくみ
となっている
社会の決定を変えるような付け値を行った場合のみ税金を課
せられる
自分にとっての便益以上の税は課せられないために誰にとっ
てもこのメカニズムを行う動機がある
一般には全体での財政バランスがとれる保証がなく、これが
大きな欠点。
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94
5)土地区画整理事業の換地
Bagnoli and Lipman (1989) は公共財の供給にあたり、全て
の人が負担額よりも多い便益を得るようなメカニズムを示し
た。これは、まず全員にそれぞれ公共財の供給(あるかない
かの2種類のみで、公共財の供給水準に関する選択は無
い。)についてどの程度貢献するかの額を申告させる。そして、
全貢献額が公共財の費用以上であるならば、その額を徴収
して供給し、さもなければ供給しない。
Jackson and Moulin (1992) は、より実用的で汎用性の高いメ
カニズムを提案。まず、各人は総便益額の推定値vi を同時
に提出。すべてのvi が供給費用c以下であるならば供給しな
い。さもなければ、全員に自分の便益額を申告させて、所定
の規定に従って配分、事業化を決定。このメカニズムがうまく
できており、正直に申告するインセンティヴがあり、かつ財政
バランスがとれている。ただ、すくなくとも2人が便益額の総
和を正確に知っている必要がある。
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95
山本哲 (1984) 「換地計算式の原理的系譜
に関する考察」 『都市計画論文集』 19, 139144.
簗瀬範彦 (1985)「土地区画整理事業におけ
る換地設計方式の構造に関する基礎的考
察」 『都市計画論文集』 20, 457-462.
Yasushi Asami
96
16
土地区画整理における換地
面積で計算する方法
土地区画整理事業における土地評価は「路
線価式土地評価」。
街路に面した標準的な宅地の価格(路線価)を
想定し、各画地の個別的要因に応じて修正して
各々の画地の評価値を求める方法。個別条件
としては、道路との位置関係,画地の形状,利
用の状態などがあるが、特に道路との位置関係
を重視。角地は評価が高く、島地(盲地)が低く
評価される。修正には要因毎の修正率を乗じて
行なわれる。島地は0.9倍、三角地は0.9倍な
どというように行なわれる。
Yasushi Asami
97
整理前のi画地の面積をAi,整理後のi画地の面積をEiと
する。
保留地の面積はG,公共用地として道路のみを考える。
整理前後の路線価をa,eとする。(i画地単価については
添え字iで表現)
整理後の道路用地増加分をK,減歩地積をDとすると、
D=G+K
減歩率d=D/A (A=ΣjAj)
公共減歩率dk=K/A,保留地減歩率dg=G/A (d=dk+dg)
増進率yi=ei/ai
地区平均単価:
整理前a0=ΣjAjaj/A,整理後e0=ΣjEjej/E (E=ΣjEj)
Yasushi Asami
99
「地先加算」
i画地とj画地があり、i画地は普通の長方形の画地、j画地
は旗竿敷地とする。この場合、i画地の方が道路に面して
いる幅が広いため、道路拡幅によってi画地の法が面積
減少分が多い。しかもi画地の方が整理前の価値も高く、
区画整理への貢献も大きい。そこでこれを是正する目的
で、前面道路の幅員の半分と画地の間口分をかけたい
わば「画地の道路分」を道路加算地積として従前地地積
に加えて換地設計を行なうことがある。
「地先負担」
整理後に上記同様の面積を求めたものが地先負担で、こ
れを換地設計に組み込むこともある。
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98
土地区画整理事業成立の条件
aA≦e(E+G)=e(A-K)=e(1-dk)A
公共減歩分は少なくとも土地評価額が
上昇する事業でなければならない。
画地iについては
単価:ai→eiに上昇
面積:Ai→Eiに減少
価値上昇分:Eiei-Aiai=Δi
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100
現行の換地設計方式
換地設計方式の考え方
a)整理前の資産額(Aiai)に応じて地区全
体の増加額(ΣjΔj)を配分する方式
Δi∝Aiai
b)整理前の資産額(Aiai)に応じて減歩の配
分を行なう方式
(Ai-Ei)ai∝Aiai すなわち Ai-Ei∝Ai
c)見かけの増加額Ai(ei-ai)に応じて増加額
(ΣjΔj)を配分する方式
Δi∝Ai(ei-ai)
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101
一定減法方式換地設計方式(一律減歩方式,単純地積式)
最も単純な方式。Ei=(1-d)Ai。これはb)に沿った考え方
比例評価式換地設計方式
最も一般的な換地設計の方式。Eiei=Aiai[(ΣjEjej)/(ΣjAjaj)]
これはa)に沿った考え方。仮にeiやaiがiによらず一定であるならば上と同値。
地積式換地設計方式
Ei=Awi-Bi-Ci ∝ (Awi-Bi)(1-dc)
Awi:i画地の整理前の地先加算した画地面積、Bi :i画地の地先負担、Ci :
i画地の共通負担
dc:共通負担率(保留地及び地先負担以外の公共減歩分の負担)
これはa)に沿った考え方。
折衷式換地設計方式
公共減歩を地積式で求めて暫定換地とし、それをもとに保留地減歩を比例
評価式で換地を行なう方式。c)に沿った考え方。
再評価式換地設計方式
もとの位置での暫定換地をおこなって再評価額Aiei' を求め、増加配当率
(S=(ΣjEjej-ΣjAjaj)/(ΣjAjej'-ΣjAjaj)) によって換地計算を行なう方式。c)に
沿った考え方。
Yasushi Asami
102
17
11.配置規制政策
配置規制政策:土地利用、施設配置を規制して、集中を排除したり、
土地利用の効率化をはかる。用途地域制。
[参考文献]
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Alternative Approach" Journal of Urban Economics,
28, 277-286.
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Yasushi Asami
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土地利用規制の経済学的分析
浅見泰司 (1989) 「平衡市街地論:用途地域の中で
の住宅の適正配置に向けて」『都市計画論文集』 24,
325-330.
大方潤一郎 (1989) 「市街地住宅確保とゾーニング」
『住宅』 38(10), 16-19.
山田正男 (1961) 「大都市における自動車交通需要
よりみた都市構成論:特に東京都における都市高速
道路ならびに街路計画への適用について」 『土木学
会論文集』.
渡辺俊一 (1985) 『比較都市計画序説:イギリス・アメ
リカの土地利用規制』 三省堂, 東京.
Yasushi Asami
107
土地利用規制:3つの経済的根拠(Mark and Goldberg,
1986)
1.
2.
3.
都市の土地市場における外部不経済を是正するのに必要
効率的な土地利用パターンを創設するのに必要
土地市場における投機的サイクルを歯止めするのに必要
Peterson (1974)
Peterson, G. (1974) “The Influence of Zoning Regulations on Land and
Housing Prices" Urban Institute Working Paper 1207-24.
3つの効果
1.
2.
3.
税金の減少効果→戸建住宅の高家賃化につながる可能性
土地利用規制が拘束となり、最高の利用ができない→価値減少効果
外部不経済排除効果→価値増大効果
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18
12.持家と借家
Pogodzinski and Sass (1991) の文献レビュー
V=b0+b1C+b2L+b3D+b4F+b5E+b6Z+ε
V:土地または土地と建物の価値、 C:土地や建物の特性ベク
トル、 L:立地特性ベクトル、 D:需要決定要因(所得など)、
F:財政変数ベクトル(税率など)、 E:外部経済効果ベクトル
(近隣の商業施設,汚染施設など)、 Z:ゾーニング変数ベクト
ル、 ε:誤差項
データ制約,多重共線性,説明変数不足,変数の不適切性
により既存研究では不満
外部効果(負の効果)と利用転換効果(より高度利用に転換
できる可能性が高いための正の効果)を区別する必要
土地のみのデータと建物価値を含むデータとでは大きく結果
が異なり、土地だけの方がゾーニングの効果がでやすい。
持家と借家の選択・・・tenure choice
単純モデルでの無差別性(岩田, 1977)
仮定
持家と借家は所有形態が異なるだけで同じサービスを
供する
取引・転用費用がない
税制の影響がない
借入れ制約がない
リスクや情報の非対称性の問題なし
持家と借家の選択
a)一定期間家を取得して自己利用する。
b)一定期間家を借りて、余剰資金を別の投資にむける。
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一定期間を1年間として、期首の家の価格をP0 、期末の価格
をP1 、1年間の家賃をr(期末に支払う)、他への最高投資収
益率をi(利子率と考えてもよい)とする。期首にP0 のお金を所
持していたとする。
a)の場合には1年後家を売却した場合の収益πa はπa =P1-P0
b)の場合の収益πb はお金の運用益から家賃を差し引いたも
の、 πb =iP0-r
πa > πbと仮定すると、i<[r+(P1-P0)]/P0
他への収益率が住宅投資よりも収益性が低いことを意
味するが、その場合投資先として住宅投資をすれば良
いはず。これが成立することは(完全競争下では)ない。
πa < πbと仮定すると、r<iP0-(P1-P0)
別の投資をする方が得。借家自体が市場に出てこない。
唯一ありうる均衡はπa = πb 。持家も借家も無差別な場合だけ。
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持家と借家は所有形態が異なるだけで同じサービス
を供する
市場に出ている物が違う
取引・転用費用、税制の影響がない
税は非対称(所得税)にきく。取引費用や移転費用、転用費
用はかかる
借入れ制約がない
現実には借入れ制約が存在し、各個人が無制限に金を借り
入れることはできない。そこで初期資産が十分にない者は
必ずしも持家と借家の2者択一がなく、借家のみが可能とな
る可能性がある。
リスクや情報の非対称性の問題なし
モラルハザードにより借家の維持管理が悪くなるおそれ。第
三者が確認できない。
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112
19
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