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長期包括管理運営方針調査報告書(概要版)(PDF:782KB)
所沢市東部クリーンセンター 長期包括管理運営方針調査業務委託報告書 概要版 平成28年3月 一般財団法人 日本環境衛生センター 調査の目的 本調査は、所沢市(以下、「本市」という。)のごみ処理施設(熱回収施設及 びリサイクルプラザ)である所沢市東部クリーンセンター(以下、 「本施設」と いう。)の管理・運営について、長期包括管理運営委託が導入可能であるかどう か、与えられた条件等を基に民間事業者への意向調査等を実施し、事業の経済 性等を評価し、従来の事業方式である公設公営方式と長期包括管理運営委託と を比較し、事業方式の検討について取りまとめることを目的とする。 本調査における主な視点は、 「本事業において、長期包括管理運営委託、又は 長期包括管理運営委託及び基幹的設備改良工事(以下、 「延命化工事」という。) の一体事業は導入可能であるか」、「長期包括管理運営委託、又は長期包括管理 運営委託及び延命化工事の一体事業の導入が可能な場合、どれだけの経済的効 果があるか」、「長期包括管理運営委託を実施する場合の課題等」である。 なお、本調査にあたっては、最新の設備状態や延命化工事及び長期包括管理 運営委託の詳細な条件設定が明確になっていないため、現時点での概算による 試算で検討したものである。 -1- 長期包括管理運営委託の導入状況 1.長期包括管理運営委託について (1)長期包括管理運営委託の特徴 長期包括管理運営委託とは、民間事業者に長期間(一般的に 10~20 年程度) に亘り、施設の運転管理・用役調達管理・維持補修等の施設運営業務を包括的 に委託する方式であり、 「民間事業者が施設を適切に運転し、一定の性能を発揮 できれば、施設の運転方法などの詳細については民間事業者の裁量に任せる」 という、性能発注の考え方に基づく委託方式である。 長期の委託期間が担保されることにより、民間事業者は長期に亘って計画的 な人材育成、用役調達、計画的な設備・装置の維持補修が可能となり、施設運 営の安定化や調達コスト縮減の効果が得られる。 従来方式(公共が主体となって運営)と長期包括管理運営委託の特徴は表1、 表2のとおりである。 表1 従来方式(公共が主体となって運営)と長期包括管理運営委託の特徴(1) 項 目 従 来 方 式 長期包括管理運営委託 性能発注 業務内容を細部に至るまで規定 業務の詳細(具体的な数値等) を規定せず、民間事業者が最低限 満たすべき性能要件(処理量・環 境基準値(公害防止条件)等の遵 守、安定的な施設稼働、発電量の 確保等)のみを規定し、民間事業 者の創意工夫を生かすことが目的 包括委託 (図1参照) 業務ごとに最も安価な委託を組 み合わせることで全体として最安 値になるという積み上げ型 一つの事業を部分ごとに分けた 民間委託 一つの事業に関する業務を包括 的に委託し事業全体の最適化を図 ることが目的 長期間 契約 (図2参照) 単年度委託 計画的な人材の雇用や育成、資 材の調達ができない。 サービス提供のための効率的投 資や、業務内容改善による効率向 上ができない。 民間事業者からの複数年にわた るサービス向上・業務改善提案の 実現が目的 効率化が進まないときは民間事 業者の負担増(一方で、一層の効 率化による収益増) -2- (出典:ごみ処理施設の計画・設計要領 (社)全国都市清掃会議) 図1 包括委託によるコスト縮減効果のイメージ 図2 民間事業者のインセンティブ構造(イメージ) -3- 表2 従来方式(公共が主体となって運営)と長期包括管理運営委託の特徴(2) 項 目 従 来 方 式 長期包括管理運営委託 後年度負担の 固定化 補修費・修繕費等が後年度ほ ど増加傾向 費用(リスク)は全て公共の負担 事業期間を通じて費用負担の 固定化を図ることが可能 委託費の平準化(補修費・修繕 費等の上昇リスクを回避)が可能 監視体制の 強化 計画策定・事業実施・事業の監 視・住民対応など全ての業務を公 共が実施 民間事業者が事業の実施主体 公共は、事業計画の策定・事業 の品質面の監視に集中 事業実施と監視の役割分担 住民の立場での事業監視や住 民とのコミュニケーション体制の構 築のし易さが期待される リスク管理体 制の明確化 「リスクを負担する主体と業務 の履行主体との乖離」 事業リスクのほとんどを施設所 有者である公共側が負担 「リスクを最もよく管理することで きる者がリスク負担する」 業務及び事業に係るリスクを官 民で負担(役割分担) 責任をとる民間事業者が主たる 業務を実施 事務管理コス トの縮減 毎年、民間事業者へ発注(仕様 書等の作成)、事業者の選定、議 会説明等の事務管理業務を公共 側が負担 委託に関する公共側の事務管 理の大幅低減 資格者等も民間事業者から選 任することにより雇用に関わるコ ストや官庁への届出などの諸手続 の軽減 継続性の担保 公共側で、毎年の運営計画・保 守・改造計画を立案 民間事業者が責任を持って事 業を履行 民間事業者の責任において、 運営に対応できる技術者を確保す るので、技術面から見た長期的な 事業の継続性が担保される 高度技術への 対応 公共側で技術対応が困難な場 合は、単年度の運転委託が必要 技術的に優れた民間事業者を 選定できる。 選定された民間事業者が責任 を持って技術管理を行うことで、高 度技術に見合った施設の運営維 持管理が可能 -4- 民間事業者の意向調査 1.意向調査の概要 (1)調査目的 本調査は、平成 15 年度から稼働を開始している本施設の今後の運営方式と して、長期包括管理運営委託又は延命化工事と長期包括管理運営委託の一体事 業(DBO)の導入の可能性について検討するため、民間事業者への意向調査 (アンケート調査)を実施した。 なお、意向調査における市と民間事業者の業務分担の考え方については、よ り多くの業務を公営から民営に委託することで、民間事業者の創意工夫を最大 限に活用すること、また、経済的効果も見込めることから、意向調査を実施す る段階で想定した表3のとおりの分担としている。 (2)調査対象 本調査は、以下に示す条件を満足する民間事業者(6 社)を調査の対象とし た。 1)熱回収施設 ・施設規模 100 t/日・炉以上(かつ 2 炉以上で構成)の発電設備を有する 施設において、施設の建設工事又は延命化工事等の実績を有しているこ と。 ・施設規模 100 t/日・炉以上の発電設備を有する施設において、平成 27 年 3 月 31 日時点で 3 年以上の運転管理実績を有していること。 2)リサイクルプラザ ・リサイクルプラザ(不燃・粗大ごみ処理、資源化処理等)の建設工事又 は延命化工事等の実績を有していること。 ・リサイクルプラザ(不燃・粗大ごみ処理、資源化処理等)において、平 成 27 年 3 月 31 日時点で 3 年以上の運転管理実績を有していること。 (3)調査期間 本調査は下記のとおり、平成 27 年 12 月~平成 28 年 1 月に実施した。 ・アンケート調査票の送信:平成 27 年 12 月 24 日 ・アンケート回答提出期限:平成 28 年 1 月 25 日 -5- 表3 業務分担の考え方(1/2) 事 業 範 囲 区 分 所沢市 民間事業者 事業の内容 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 処理対象物の受け入れ(焼却/リサイクルプラザ) ごみの搬入 ごみ計量 焼却対象ごみ 不燃ごみ、粗大ごみ、資源ごみ 一般持込の料金徴収 搬入車輌の誘導 適正処理困難物(処理不適物)の取扱い 受入確認(ごみピット、ダンピングボックス等) 車両への積み込み 処分 処理後の副生成物の取扱い(貯留設備から先の取扱い) 焼却施設 焼却灰 運搬 資源化 ・ 最終処分 飛灰 運搬 資源化 ・ 最終処分 リサイクルプラザ 可燃物 運搬 焼却 不燃物 運搬 資源化 ・ 最終処分 鉄 運搬 資源化 ・ 最終処分 アルミ 運搬 資源化 ・ 最終処分 施設(建築設備も含む。)の運転(焼却/リサイクルプラザ) ごみ量、ごみ質、排ガス、温度、電力、水質等のデータに基づく適正な運転 管理と各種データの管理 中央制御室における施設内全ての機械施設及び設備の運転監視、保安の 確保並びに各現場作業者への指示 所長 法定有資格者(技術管理者、BT主任、電気主任など) ごみの受入管理(焼却/リサイクルプラザ) 各種測定 焼却施設 ごみ質等(不燃・粗大からの可燃物も含む) 排ガス(ダイオキシン類等も含む) 排水(ダイオキシン類等も含む) 騒音・振動 悪臭 飛灰処理物(ダイオキシン類等も含む) 作業環境(ダイオキシン類等も含む) その他 リサイクルプラザ ごみ質等 排水(ダイオキシン類等も含む) 騒音・振動 悪臭 作業環境(粉じん・ダイオキシン類等も含む) その他 各設備・各機器の保守点検(法定点検、定期点検等を含む) 機器台帳作成・管理(焼却/リサイクルプラザ) 施設の維持補修(焼却/リサイクルプラザ) 修繕 更新 その他 用役費 焼却施設 電気 水道 燃料・プロパンガス 各種薬剤等 リサイクルプラザ 電気 水道 各種薬剤等 各設備・各機器の清掃・整備作業(工場棟)(焼却/リサイクルプラザ) -6- ○ - - - - - ○ ○ ○ ○ - - ○ ○ ○ - ○ ○ 車両への積み込み - ○ ○ 車両への積み込み - - - ○ ○ ○ ○ 車両への積み込み - ○ ○ 車両への積み込み - ○ ○ 車両への積み込み - - ○ - ○ ○ - - ○ ○ ○ - - - - - - - - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - - - ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ - - - ○ ○ ○ - - - - ○ ○ ○ ○ - - - ○ ○ ○ - ○ 表3 業務分担の考え方(2/2) 事 業 範 囲 区 分 所沢市 民間事業者 事業の内容 9. 運転に必要な資材の受入調達及び運転管理上必要な工作機械、計測器 類、工具類、予備品、消耗品等の管理 10. 各種記録の作成・保存等 運転記録(日報・月報・年報)の作成・保存 保守管理上の日報・月報・年報の作成 各種点検記録 11. 12. 13. 14. - ○ - ○ - ○ ○ (機器の補修履歴も含 む) ○ ○ ○ (予備品・消耗品の管理 も含む) ○ ○ ○ ○ 補修・整備に係る記録 - 法令に関する記録 各種測定記録 - - その他必要なもの - 統計事務の実施、及び各種報告書等の作成 運転要領書等の修正(運転現況にあわせた修正) 環境等モニタリング(定期測定の実施、地元協定の対応)※環境影響調査 機能診断(定期機能検査・精密機能検査) 廃棄物処理法関連 運営事務 - - - - 建築部分(管理棟含む)の清掃(焼却/リサイクルプラザ) - 駐車場の清掃 外構・植裁整備 構内(焼却/リサイクルプラザ)の警備 管理棟内の電話使用料(市の使用分) 工場棟内の電話使用料(運営事業者の使用分) 敷地内の光熱費など 水道 事務管理(年度ごとの会計報告等も含む) 教育訓練 消耗品・図書印刷・調査等 - - - ○ - - - - - - ○ (市が付保するもの) 各種保険 ○ (市で必要なもの) その他必要なもの 15. その他(ごみ処理施設の運営に必要な業務) 災害時の緊急対応 ※1 休日、夜間の災害対応 ※2 屋外公害監視盤の管理(メンテナンス及び清掃も含む) 洗車場の管理 - - ○ (市で必要なもの) その他必要なもの ○ (高所窓の清掃も含む) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (民間事業者が付保す るもの) ○ (民間事業者が必要な もの) ○ (事故対応マニュアル*1 に て対応) ○ (初動対応) ○ ○ ○ (民間事業者が必要な もの) ○ ○ 16. 施設見学者への対応 ○ 17. 地元住民への対応 ○ 18. 余熱利用(焼却設備) 発電(売電による収益) ○ ○ 電気事業者との契約 ○ リサイクルプラザへの電気供給 - ○ リサイクルプラザへの蒸気供給 - ○ 管理部門(管理棟)への電気供給 - ○ 場内給湯 - ○ 19. 延命化工事請負者が行う性能確認への協力 実績データ等による性能確認に関する資料の集計(延命化工事請負者が実 - ○ 施)への協力 ●年以内に行われる性能確認試験(延命化工事請負者が実施)への協力 - ○ 20. 保証項目等に関する調整 協議会の開催・報告 - ○ 保証項目確認検査及び初期トラブル改善等に関するモニタリングの実施 - ○ 保証項目確認検査及び初期トラブル改善等に関する記録の保存・提出 - ○ 21. 運営管理状況のモニタリング(焼却/リサイクルプラザ) ○ 22. 施設の解体・建築に関わる業務 測量・地質調査 ○ 関連設備の整備(電力の引き込み、給排水の整備) - ○ ※1 被害が拡大し、周辺環境に影響を及ぼす事故に発展(周辺住民の避難など)した場合、民間事業者は市の管理下に入る。 ※2 初動対応は民間事業者が行う。また、民間事業者から通報・報告を受けた後は、市が対応する。 *1 民間事業者が作成し、市にて承認された事故対応マニュアル -7- 経済性の検討 1.基本条件の整理 本事業において、それぞれの事業方式の負担額を比較する上での基本的な条 件は、以下に示すとおりである。 なお、運営期間については、建設期間中(3 年間※1)、竣工後の 15 年間を考 慮して 18 年間として検討を行うものとする。 ※1 平成 29 年度の運営については既に 3 年間(平成 27~29 年度)の複数 年契約をしていることから平成 30~32 年度の 3 年間とする。 (1)年間処理量:(熱回収施設)55,000 t/年(予定) (リサイクルプラザ)13,000 t/年(予定) (2)事業期間:基幹改良(延命化)工事 平成 29 年度~32 年度(4 年間) 運営期間 平成 30 年度~47 年度(18 年間) (3)事業範囲の概要は表3(図3)のとおりとする。 (4)リスク分担:表4※2の「リスク分担表」による。 ※2 表4は事業概要書作成の段階で検討した、 「リスクを最もよく管理す ることができるものが当該リスクを分担する」との考え方により分担し たもの。 (5)社会的割引率:4% (6)税率-法人税:約 30% 市町村民税:約 12% 灰資源化 熱回収施設 最終処分 処理対象物の 収集・運搬 ・燃やすごみ ・可燃性粗大ごみ ・不燃ごみ ・粗大ごみ ・資源ごみ 副生成物 計 量 棟 引取り業者 焼却・リサイクル 売電 発電、余熱 余熱利用施設 管理諸室 :民間事業者の事業範囲 :市の所掌範囲 (残渣の運搬及び処分の費用は事業者負担の場合有り) 図3 事業範囲の概要 -8- 表4 リスク分担表(1/2) 分担 期間 リスク項目 制度・法令変更 制度関連 税制変更 概 要 市 関係法令・許認可の変更等に係るリスク 公害防止基準等の強化、廃掃法改正によ るごみ区分の変更、維持管理基準等の強 化などで、民間事業者に追加費用が生じる 場合など ○ 民間事業者の利益に課せられる税制度の 変更(例:法人税率等の変更)、新税の設立 に伴うリスク ○ 上記以外の税制度の変更、新税の設立に 伴うリスク。 ○ 政治 政策方針の変更による操業中止、コスト増 大リスク ○ 許認可取得 民間事業者が取得すべき許認可の遅延リ スク ○ 民間事業者が実施する業務に起因する住 民対応に係るリスク ○ 1 全 般 社会環境 第三者賠償 環境保全 ○ 民間事業者が実施する業務に起因して発 生する事故、施設の劣化など維持管理の 不備による事故等に対する賠償リスク 不可抗力 債務不履行 測量・調査 2 計 画 段 階 基幹改良工事及び運営事業にかかる住民 への対応不良(騒音・振動問題、資材等運 搬車輌等のトラブル)など 住民協定等により仕様等をアップした場合 など、要求水準の変更により民間事業者に 追加費用が生じる場合 工事車両の事故、運営時における施設運 転従事者のヒューマンエラーに起因する事 故などにより賠償が発生した場合 民間事業者が実施する業務に起因する有 害物質の排出、騒音、振動等の周辺環境 の悪化及び法令上の規制基準不適合に関 するリスク ○ 排ガス、騒音・振動、臭気などが基準値等 を越えた場合の対策・改善に係る追加費用 の負担 インフレ/デフレ(物価変動)に係る費用増 大リスク (一定の範囲内) ○ インフレ/デフレ(物価変動)に係る費用増 大リスク (一定の範囲外) 金利変動 建築確認申請、経済産業局への届出など ○ 物価変動 資金調達 法人税等 事業開始後の方針変更などで、民間事業 者に追加費用が生じる場合 住民対応 住民対応に伴う管理強化等による操業停 止・コスト増大のリスク 備 考 民間 事業者 民間事業者における本事業実施に際して 必要とする資金の調達に係るリスク 市において本事業実施に際して必要となる 資金の調達に係るリスク 金利上昇に伴う民間事業者における資金 調達コストの増大リスク 金利上昇に伴う市における初期投資に係 る資金調達コストの増大リスク 天災等の不可抗力によるリスク 民間事業者の事由による事業破綻、契約 破棄、契約不履行のリスク 市の事由による事業破綻、契約破棄、契 約不履行のリスク 市が実施した地形・地質等現地調査の不 備に伴う計画・仕様変更によるコストの増 大リスク 民間事業者が実施した地形・地質等現地 調査の不備に伴う計画・仕様変更によるコ ストの増大リスク 賃金指数や消費者物価指数などが一定の アローワンス以内で変動している場合など 賃金指数や消費者物価指数などが一定の アローワンスを超えた場合など ○ ○ 運転資金の確保 ○ ○ ○ ○ △ ○ 民間事業者が事業を継続できなくなった場 合など ○ 手続きの遅れ(支払いの遅延)など ○ 市が提示した条件(地形・地質等について の資料)の不備による場合など 民間事業者の設計ミス等に基づく遅れによ るコストの増大リスク ○ 上記以外の場合 ○ 設計ミスをしたことにより、設計のやり直し、 製作のやり直しが必要となった場合など 設計 市の要求水準を超える指示に基づいた変 更によるコストの増大リスク 変更 民間事業者の事由による計画変更、遅延 によるコストの増大リスク 市の事由による計画変更、遅延によるコス トの増大リスク -9- 要求水準書に示した市が要求する水準を 超えるハイグレードな仕様等を市が要求す る場合など ○ ○ ○ 民間事業者が要求水準書に示す要求水準 の代替案等によることを求め、速やかに設 計に着手しなかった場合など 公害防止条件等の変更が生じた場合など 表4 リスク分担表(2/2) 分担 期間 リスク項目 概 要 市 資材調達、工程管理等の民間事業者の事 由に基づく工事遅延によるコストの増大リ スク 工事遅延 市の事由に基づく工事遅延によるコストの 増大リスク 3 基 幹 改 良 工 事 段 階 ※ ○ ○ 民間事業者の事由による工事費の増大リ スク ○ 工事費増大 市の提示条件不備による工事工程、工事 方法の変更による工事費の増大リスク 既存施設への影響 試運転・引渡性能試験 ごみ量・ごみ質 性能未達 ○ 民間事業者側の事由による既存施設の運 営に影響を及ぼすリスク ○ 試運転・引渡性能試験の結果、契約で規 定した要求性能未達によるコストの増大、 遅延リスク ○ 試運転・引渡性能試験に要するごみの供 給等のリスク ○ 搬入する一般廃棄物等のごみ量・ごみ質 が契約で規定した範囲を著しく逸脱した場 合のコスト変動リスク ○ 施設が要求水準書(発注条件)に規定する 仕様及び性能の達成に不適合で、改修が 必要となった場合のコスト増大リスク 施設瑕疵 運 営 運営コスト ・運転停止 施設破損 事業期間中における施設瑕疵に係るリス ク 設備機器の運営・維持管理の基準未達に よるコスト増大、運転停止リスク 受入した廃棄物に処理不適物が混入して いた場合のコスト 増大 、運 転停 止リ スク (民間事業者の善良なる管理者として注意 義務違反の場合) 受入した廃棄物に処理不適物が混入して いた場合のコスト増大、運転停止リスク (民間事業者の善良なる管理者としての注 意義務を持っても排除できない場合) ○ ○ 既存施設への影 民間事業者の事由により既存施設の運営 響 に影響を及ぼすリスク - 10 - 民間事業者が調達先のトラブルにより、調 達トラブルが発生した場合など 地元住民との建設工事協定等の調整トラブ ルにより工事が遅延した場合、市の承諾行 為の遅延など 設計ミスにより、設計のやり直しや製作の やり直しが必要となった場合、市が示す要 求水準の代替案等によることを求め、速や かに工事に着手しなかった場合、民間事業 者が調達先のトラブルにより調達トラブルが 発生した場合など 当初、提示されていない条件(地中埋設 物、汚染土壌など)が確認されて工事が遅 延した場合など 建設工事作業に伴って、隣接する本市既存 施設が破損した場合、既存施設の利用動 線の切替確保など 引渡性能試験結果により、改善→再試験 の実施→確認が必要となった場合など 設備上の事由により、公害防止基準値等を 満足できない場合の改善・対策など 運転上の事由により、公害防止基準値等を 満足できない場合の改善・対策など 規定のかし担保期間内に瑕疵が見つかっ た場合 ○ ○ 処理不適物が混入したことによるごみピット 火災・爆発の場合の修復など ○ その他の運営不備によるコスト増大、運転 停止リスク 事故・火災等による修復等に係るコスト増 大リスク 施設・設備の老朽化、運営不備、警備不備 による第三者の行為等に起因する施設破 損のリスク ごみ収集車・搬入車に起因する施設破損 のリスク 備 考 市が試運転・引渡性能試験に必要なごみ の確保(ごみの供給)ができなかった場合 など 計画ごみ量が著しく変動した場合の運営費 のコストアップ、ごみ量及びごみ質の低下に 伴って発電量が著しく低下した場合、ごみ 質上昇による排ガス量の増加により薬剤使 用量が著しく増加した場合など ○ 運転維持管理に起因する性能未達 4 運 営 段 階 民間 事業者 ○ ○ オペレーションミス等による事故・火災等が 発生した場合の修復など ○ 民間事業者の警備不備等により、第三者 が施設へ侵入して施設を破損した場合など ○ ○ 運営管理者の指示に従わず、ごみ収集車 などが計量棟、プラットホームなどの設備等 を破損した場合の修復など 回転機器の不調等による騒音被害の対 策、既存施設への給電、給熱の予定外停 止による損害など(既存施設への給電、給 熱を業務範囲とした場合) 2.VFMの算定結果 本事業において、事業方式別(公設公営、公設+長期包括管理運営委託、D BO方式)に検討・試算した結果は表5及び以下に示すとおりである。 本事業の総支出額(現在価値換算)は、公設公営が 23,044 百万円、公設+ 長期包括管理運営委託が 22,352 百万円、DBO方式が 21,973 百万円であり、 DBO方式が最も安価で削減効果がみられると判断できる。 VFMをみると、DBO方式が 4.7%、公設+長期包括管理運営委託が 3.0% となり、DBO方式及び公設+長期包括管理運営委託においてVFMがあると 言える。 表5 VFM試算結果 事業方式 項目 総支出額 (百万円) [単純合計] ライフサイクルコスト (百万円) [現在価値換算] VFM (%) 公設公営 公設+長期包括 管理運営委託 DBO方式 (一体事業) 33,028 32,023 31,520 23,044 22,352 21,973 - 3.0 4.7 【VFM(Value for Money)について】 PFI事業における最も重要な概念の一つで、支払(Money)に対して最も価値の高いサービス (Value)を供給するという考え方。 VFMの評価は、PSC※1とPFI事業のLCC※2との比較により行う。この場合、PFI事業のLCCが PSCを下回ればPFI事業の側にVFMがあり、上回ればVFMがないということになる。 地方公共団体が事業を実施するに当たり、事業手法を選択する際の判断基準となるもので、PFI で事業を実施した方が低廉で良質なサービスの提供が可能であると見込まれた場合、PFIが適切で あると判断される。 PSC - (PFI事業のLCC) VFM(%)= ×100 PSC ※1 PSC(Public Sector Comparator) 公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値※3をいう。 (提案されたPFI事業が従来型の公共事業に比べ、VFMが得られるかの評価を行う際に使用さ れる。) ※2 LCC(Life Cycle Cost) プロジェクトにおいて、計画から、施設の設計、建設、維持管理、運営、修繕、事業終了までの事 業全体にわたり必要なコストのこと。 ※3 現在価値 複数年にわたる事業の経済的価値を図るために将来価値を一定の割引率で置きかえたもの。 [現在価値化の計算式] t年における価格Vtの現在価値=Vt×Rt Rt=1/(1+r)(t-基準値) Rt:現在価値化係数 - 11 - r:割引率 評価結果と今後の進め方 1.評価結果 今回、アンケート調査(民間事業者への意向調査)を実施し、その結果をベ ースにしてまとめたものは以下に示すとおりである。 (1)本事業におけるDBO方式または長期包括管理運営委託の導入可能性 本事業を実施するにあたって、民間事業者の意向や経済性の観点からDBO 方式(延命化工事+長期包括管理運営委託の一体事業)または延命化工事(公 設)+長期包括管理運営委託の導入が可能であると考えられる。 なお、具体的な理由は下記に示すとおりである。 1)民間事業者の意向 本アンケート調査において、民間事業者が本事業への長期包括管理運営委 託の導入について「対応可能である」との回答があり、また、民間事業者(1 社)が「参入意志がある」との回答であった。 「参入意志がある」と回答した民間事業者の推奨する事業方式については、 「DBO方式(延命化工事+長期包括管理運営委託の一体事業)が最も有効 である」という回答であった。 2)VFM算定結果 VFMの算定結果は表6に示すとおりであり、DBO方式が 4.7%で最大 となった。 表6 事業方式 項目 VFM VFM算定結果 公設+長期包括 管理運営委託 DBO方式 3.0% 4.7% 3)事業範囲とリスク分担 本事業の実施にあたり、事業範囲及びリスク分担について、公共側で実施 すべき内容と民間事業者が実施すべき内容を適切かつ明確にすることによ り、公共側の業務範囲及びリスク分担を軽減することが可能となる。 - 12 - 4)市民へのメリット DBO方式で本事業を行うことにより、本市の財政負担額が軽減すれば本 事業に係る市民への負担も少なくなり、間接的ではあるがより効率的な税金 の活用といえる。 5)市民へのサービス DBO方式で本事業を行うことにより、民間事業者との契約において示さ れている一定のサービス水準(市民へ)が運営期間を通じて確保される。 2.今後の進め方 (1)事業方式の課題 前述したとおり、本調査ではDBO方式による事業が最も経済的に有利な手 法であると評価することができた。 なお、DBO方式で事業を行う場合、ごみ処理施設を運営していく上で、最 も重要なものの一つである「安全」や「安心」を確保するための十分な検討が 必要である。 「安全」や「安心」を満足するための方法として、施設の整備段階及び運営 段階において、「事故の発生防止」や「事故やトラブル時の迅速な対応」につ いて、発注者(公共側)が積極的に関与するなど、事業モニタリング(監視) の考え方やその方法も含めて詳細に検討を行う必要がある。 (2)事業範囲とリスク分担の課題 PFI等事業を実施する上での実務上の指針の一つである「PFI事業にお けるリスク分担等に関するガイドライン(内閣府PFI推進室)」においては、 「リスクを最もよく管理することができる者が当該リスク分担する」と述べら れている。よって、今後は、事業における各リスクとその原因を把握し、その リスクの評価を行って適切なリスク分担を設定していく必要がある。 また、公共と民間事業者の事業範囲の設定についても同様に双方で適切な役 割分担を設定していくことが必要である。 (3)VFM検討等の課題 本調査においては、現在想定できる範囲の条件(ごみ量、ごみ質、公共と民 間事業者の事業範囲やリスク分担など)でVFMの検討を行った。しかし、よ り精度の高いVFMの検討を行うためには、今後、下記に示す内容で詳細に事 業計画を検討し、より現実的な内容で事業費の検討を行う必要がある。 - 13 - 【今後必要な検討項目】 ・DBO方式により事業を実施する場合には、「モニタリングに関するガイド ライン(内閣府PFI推進室)」でも示すように、公共(発注者)は、民間 事業者が行う公共サービスの履行に関して、適正かつ確実なサービスの提供 の確保がなされているのか、その水準を監視(測定・評価)する必要があり、 全事業期間(整備・運営段階)に亘り、モニタリングに係る費用を予算化す べきと考える。 よって、公設・公営においては施工監理費用等の公共サイドに必要な経費、 またDBO事業の場合はモニタリング費用等の公共サイドに必要な経費を 考慮し、VFMについて再検討することが必要である。 ・その他、公共側で支出する費用(民間事業者との窓口担当となる公共側の人 件費など)を詳細に設定する必要があり、また、本事業に必要となる各種税 金及び各種保険等を考慮してVFMを再検討することが必要である。 本調査は現在の法制度や税制度のもとに、現在の民間事業者の意向(調査結 果)をベースにして検討を行ったものであり、今後の社会情勢の変化等も含め VFM算定のための諸条件(前述の内容)をより明確に設定し、詳細な事業費 を算出して精度の高いVFMの検討を行っていく必要がある。 (4)その他の課題 DBO方式または公設+長期包括管理運営委託による事業を実施する場合 でも公共側の対応窓口が必要で、本事業においては本市にて実施予定の事業で あるため、本市における本事業の組織的な職員配置の検討も行うことが必要で ある。 (5)今後の作業 今後、本市がDBO方式または公設+長期包括管理運営委託による事業方式 を採用して本計画を実施する場合に必要となる作業(事業者選定)とそのスケ ジュールは表7に示すとおりである。 なお、表7に示す事業者選定方式(総合評価一般競争入札及び公募型プロポ ーザル方式)は参考として示すものである。 - 14 - 表7 今後の作業(事業者選定)及びその工程表(案) ※総合評価一般競争入札及び公募型プロポーザル方式の場合(参考) - 15 -