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第2章 環境の現状と課題

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第2章 環境の現状と課題
第2章 環境の現状と課題
1.今日の環境問題の特徴
2.堺市の環境の現状と課題
3.区別の環境の現状
-7-
第2章
環境の現状と課題
1.今日の環境問題の特徴
今日の環境問題は、産業公害と開発にともなう自然の減少が課題の中心であった高度経
済成長期までの環境問題とは大きく変化しています。堺市の環境の現状を見る前に、今日
の環境問題が持っている特徴を、私たちの社会経済との関わりの視点から整理します。
◆日常活動と環境問題の密接な関わり
環境問題の多くが私たちの日常生活や事業活動に起因しており、その影響が我々自
身の暮らしに及んできています。社会や経済状況の変化にともなって、環境に様々な
影響が生じる可能性が考えられ、持続的な社会経済の発展を確保するために環境に関
わる様々な課題への対応が必要になっています。
◆地球規模の環境問題の深刻化と、これと関わる日本の環境問題
世界における社会経済活動の拡大や、グローバリゼーションの進展により、私たち
の生活が世界と切り離せなくなっています。このことが、地球規模の環境の変化をも
たらすとともに、世界の様々な社会経済・環境問題と、国内の環境問題に深い関わり
が生じています。
◆複雑化・深刻化する環境問題
地球温暖化問題に代表されるような、影響があらわれるまで、また影響の期間が長
期間にわたる問題、発生のしくみや影響の解明が十分でない問題が増加し、放置すれ
ば甚大な被害を将来もたらす可能性があります。
-8-
■社会経済活動と環境問題の関わり
人の社会経済活動
環
境
日 本
日常活動の変化
日本の環境問題
○エネルギー使用量の増加
社会経済の動向
○国・地方財政の悪化
○少子・高齢化、人口減少
環境変化への影響
○精神的な豊かさ志向の高まり
○環境問題への社会的要請増大
○海外への資源・エネルギー依存
社会経済への影響
マイナス面/プラス面
様々な影響
○化石燃料資源の枯渇
○地球温暖化
○ヒートアイランド現象
○自動車による大気汚染や騒
音問題
○ごみ処分場の不足、不法投棄
○土壌・地下水汚染
○森林や藻場等、自然環境の量
的減少・質的劣化
○外来生物による生態系への
影響
等
相互に影響
世界・地球環境問題
○環境負荷の増大
○地球温暖化による気温・海面
の上昇、異常気象の増加等
○酸性雨、黄砂、大気・海洋汚
染
○開発途上国を中心とする
水・栄養不足
○絶滅の恐れのある野生生物
種の増加
等
世 界
○世界人口の増加、アジア中心の経済
成長拡大
○上記によるエネルギー・資源需要の
増大
○開発の進展による土地利用需要の
拡大
環境影響の長期化・複雑化、科学的に未解明な問題の増加
○大量生産・大量消費・大量廃棄の
社会経済構造
※資料:『第三次環境基本計画』(国)第1章第1節「社会経済と環境の現状」を参考に作成
-9-
2.堺市の環境の現状と課題
(1)生活環境
①大気汚染、悪臭
本市における大気中の二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質につ
いては、工場・事業場に対する排出規制指導、公害防止技術の進展及び自動車排出ガス
規制の強化等によって一定の改善が進み、環境基準が達成されています。しかし、光化
学オキシダントは、環境基準未達成の状況が続いており、国・大阪府と連携した対策を
強化する必要があります。
また、悪臭については、最近5年間で毎年約70∼90件の苦情が発生しており、その内
の約4割が発生源不明となっています。発生源の実態把握に努めるとともに、発生源に対
して、規制指導の徹底を図る必要があります。
■主な大気汚染物質の市内平均濃度の推移
ppm(NO2,SO2,OX)
mg/l(SPM)
ppm(CO)
0.07
3.5
0.06
3.0
0.05
2.5
0.04
2.0
0.03
1.5
0.02
1.0
0.01
0.5
0
二酸化窒素(一般局)
二酸化窒素(自排局)
二酸化硫黄(一般局)
昼間オキシダント(一般局)
浮遊粒子状物質(一般局)
浮遊粒子状物質(自排局)
一酸化炭素(自排局)
0.0
S53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 H1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
(年度)
※年度により測定局数が異なる
※一般局:一般環境大気測定局、自排局:自動車排出ガス測定局
■大気汚染物質別環境基準の達成状況
H17
6/6
2/2
9/9
8/8
9/9
8/8
0/9
H18
6/6
2/2
9/9
8/8
9/9
8/8
0/9
(年度)
H19
6/6
2/2
8/8
6/6
8/8
6/6
0/9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
工場
28
25
32
21
21
9
13
19
工場以外
33
51
35
33
30
23
18
26
発生源不明
31
18
33
23
32
37
38
38
〔臨海コンビナート〕
12
8
6
10
8
7
6
5
〔畜産〕
1
0
0
0
1
1
3
0
合 計
92
94
100
77
83
69
69
83
※臨海コンビナート悪臭件数は、〔工場〕及び〔発生源不明〕の内数
※畜産は、〔工場以外〕の内数
※〔悪臭防止法に規定された物質〕によるものと〔その他の悪臭物質〕によるものを合わせた数値
H18
30
24
34
7
0
88
(件/年度)
H19
27
22
27
9
0
76
項目
二酸化硫黄
一酸化炭素
局
H10
H11
H12
H13
一般局
6/6
6/6
6/6
6/6
自排局
3/3
3/3
3/3
3/3
一般局
10/10
10/10
9/9
9/9
二酸化窒素
自排局
3/7
5/7
5/7
5/7
浮遊粒子状物質
一般局
8/10
10/10
8/9
0/9
自排局
1/4
3/4
0/5
0/5
昼間オキシダント
一般局
0/9
0/9
0/9
0/9
※表中のm/nは、m=環境基準を達成した測定局数、n=全測定局数
H14
6/6
3/3
9/9
5/7
1/9
2/7
0/9
H15
6/6
3/3
9/9
6/7
9/9
7/7
0/9
H16
6/6
2/2
9/9
7/8
9/9
8/8
0/9
■悪臭苦情件数の推移(新規受付分)
区
分
- 10 -
②水質汚濁
本市の河川におけるBOD(生物化学的酸素要求量)については、工場・事業場に対す
る規制指導や下水道整備等により、概ね改善傾向にありますが、環境基準を達成してい
るのは、6評価区間のうち3評価区間(平成19年度)にとどまります。また、環境基準
点以外の地点でも十分な改善には至っていません。
平成19年度末、市街化区域(私道・里道を除く)の下水道普及率は、旧堺市域では概
ね100%で、旧美原町域でも97.3%まで整備が進んでいます。さらに、市街化調整区域
を含めた家屋等汚水の発生する区域の下水道整備を進めるとともに、下水道に接続して
いない家庭等の生活排水対策等を推進し、早期に環境基準の達成を図る必要があります。
なお、地下水については、平成19年度の水質概況調査7地点(健康項目26項目)のう
ち1地点でトリクロロエチレンが環境基準を超過しています。また、定期モニタリング
調査4地区(5地点)においても、1地点でシス-1,2-ジクロロエチレンが環境基準を超
過していることから、継続した監視に努める必要があります。
■環境基準類型指定河川及び海域の汚濁の推移(年平均値)
mg/l
30.0
石津川(4測定点のBOD平均値)
大和川(2測定点のBOD平均値)
大阪湾表層C-4(COD)堺市地先
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
S53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 H1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19(年度)
※平成10年度までの大和川は3測定点の平均値
- 11 -
③騒音・振動
騒音、振動に関する苦情は、工場、事業場(商店・飲食店等)及び建設作業現場に対
するものが多くを占めています。これらは、住工商が混在している地域や幹線道路沿い
等で顕著にあらわれ、土地利用に起因する部分が大きいと考えられます。また、住宅地
域等で営業するカラオケ騒音や規制の対象とならないエアコン等の日常生活に係る生活
騒音に関する相談が増えています。
自動車騒音については、幹線道路(22区間)の環境基準達成率は88.1%となってお
り、道路に面する地域では、騒音の環境基準の達成率が低くなっています。
そのため、規制指導の徹底に加え、環境に配慮した事業活動や生活様式への転換を促
進するとともに、関係部局と連携した交通対策や道路対策を一層推進する必要がありま
す。
なお、道路交通振動については、全ての地点で要請限度を下回っています。
■騒音苦情件数の推移
(件)
250
(%)
100
90
200
80
70
150
60
50
40
100
30
20
50
10
0
H15
H16
H17
H18
H19
■自動車騒音に係る環境基準の達成状況(H19 年度)
昼夜間とも
に未達成の
戸数の割合
4.7%
いずれかの
時間帯で、
達成の戸数
の割合
7.2%
昼夜間とも
に達成の
戸数の割合
88.2%
- 12 -
0
(年度)
その他
交通
生活
カラオケ
建設作業
工場・事業場
解決率(%)
④環境美化
まちの美化については、ごみの散乱のない快適なまちをめざし、美化清掃等のボラン
ティア活動を推進する堺市美化促進事業やパトロール等による不法投棄の未然防止に取
り組んでいます。
今後は、路上喫煙禁止を含む(仮称)安全・安心・快適な市民協働のまちづくり条例
の制定等により規制指導の推進を図るとともに、市民・事業者との連携による地域環境
美化活動の促進や不法投棄を防止するための監視・指導体制を強化する必要があります。
■環境美化作業実績の推移
(件)
6,000
5,000
4,000
その他
墓地清掃
臨時処理
町会清掃
不法投棄
3,000
2,000
1,000
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
- 13 -
H18
H19(年度)
⑤有害化学物質
ダイオキシン類及びその他の有害大気汚染物質については、平成19年度現在、全ての
測定地点において環境基準を達成しています。引き続き、法の規定に基づく継続的な監
視を実施する必要があります。
化学物質等に対しては、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促
進に関する法律(以下、「PRTR法」という。)等に基づき、事業者による化学物質の自
主的な管理の改善を促進するとともに、健康リスクに係る情報の収集・提供等に努め、
市民・事業者・行政が情報を共有し、社会全体で化学物質に対する安全性を確保する必
要があります。
■大気中のダイオキシン類(H19 年度)
測定場所
平均値
春期
夏期
秋期
冬期
(pg-TEQ/m3)
環境基準
深井局
0.056
0.039
0.095
0.037
0.054
年平均
登美丘局
0.065
0.061
0.087
0.058
0.053
0.6 以下
浜寺局
0.054
0.063
0.061
0.045
0.047
金岡局
0.057
0.038
0.089
0.045
0.057
■水質中のダイオキシン類(H19 年度)
区
分
公共用水域
水質
(pg-TEQ/L)
調査地点
石津川(石津川橋)
0.066
1.3
0.18
0.99
西除川(大和川合流直前)
0.077
0.5
内川(竪川橋)
0.063
105
0.06
0.24
和田川(小野々井橋)
東除川(新大阪橋)
地下水
大阪湾(堺第 7-3 区沖)
0.026
堺区向陵西町
0.013
-
西区山田
0.013
-
美原区平尾
0.013
-
※調査日は、H19.8.7(内川は H19.11.13.に2回目を実施)
※内川の値は、2回の平均値
■土壌中のダイオキシン類(H19 年度)
調査地点
西区浜寺石津町中 2-3-28
堺区大仙中町 11-1
北区中村町
北区金岡町 2415-8
中区深井中町 731
底質
(pg-TEQ/g)
濃
度
(pg-TEQ/g)
環境基準
0.16
年平均
1.2
1,000 以下
84
20
0.62
東区引野町 2-7
4.8
南区城山台 1-19-1
2.2
※調査日は、H20.1.30
- 14 -
環境基準
水質:年平均 1 以下
底質:年平均 150 以下
19
年平均 1 以下
⑥地盤
地下水の過剰採取が主な原因で起こる地盤沈下については、大きな地盤の変動はみら
れませんが、継続した監視が必要です。
土壌汚染については、工場等の跡地において汚染等が顕在化していることから、法令
等に基づいた規制指導の徹底を図ることが必要です。
■土壌汚染に係る指定地域の指定等(累計)
土壌汚染対策法
(H19 年度末)
大阪府生活環境の保全等に関する条例
指定区域の指定
1件
管理区域の指定
10件
指定区域の解除
0件
管理区域の解除
2件
⑦その他
中高層建築物や高架道路の増加にともない、日照・電波障害等の問題が発生していま
す。
快適な生活環境が維持されるためには、日照阻害、電波障害、風害、ネオンサイン等
による光害について、法令等に基づき良好な環境の保全が確保できるよう未然防止に努
めることが必要です。
- 15 -
(2)自然環境
①緑
本市における緑は、南部の丘陵地や仁徳陵古墳(大仙古墳)を中心とする古墳群、市
街地周縁の農地、神社・寺院の境内や都市公園等にまとまって分布しており、市民一人
当たりの公園面積は8.13㎡(平成19年度)、樹林・樹木でおおわれた緑の空間(緑被
率)は約16%(平成20年度)となっています。これらは、本市の貴重な自然的要素で
あり、市民が身近に自然とふれあうことのできる数少ない存在であることから、適正な
保全・活用及び緑のネットワーク化が求められます。
また、都市部の緑は、うるおいとやすらぎのある都市空間の形成に役立つだけでなく、
ヒートアイランド現象*の緩和、二酸化炭素の吸収源となる等、環境の保全に大きな役割
を果たすことから、市民と連携した緑化の推進を図る必要があります。
■緑の現況図(H20 年度)
堺区
北区
美原区
西区
中区
東区
着色部分:樹木、樹林地
(二次林、低木地を含む。
)
南区
- 16 -
②水辺
本市は、環濠や河川等、水と共生し、発展してきた歴史を有しており、堺旧港周辺に
おける公園や親水護岸の整備、狭山池・仁徳陵ネットワーク再生水路の整備、ため池に
おける地域総合オアシス整備等、市民が水辺とふれあえる親水空間の整備を推進してい
ます。
これらと連携し、より一層身近な水辺の再生や人が水と親しむことのできる水辺環境
の創出を図ることが必要です。
■仁徳陵・内川 水環境再生プラン
一級河川大和川
大和川からの導水
三宝下水処理場
二級河川内川・土居川
大和川
芦ケ池ルート
仁徳陵古墳
百舌鳥古墳群
準用河川百舌鳥川
二級河川石津川
狭山池ルート
狭山池
内川水系水環境改善事業イメージ
- 17 -
狭山水みらいセンター
一級河川西除川
③身近な自然(植物・動物)
南部の丘陵地等、自然が多く残されている地域には、未だ多様な野生生物が生息して
おり、学術上貴重な種も確認されていますが、開発等による生物種の減少が心配されま
す。
また、外来種については、市域南部を中心に野生化しているアライグマ、河川等にお
けるオオクチバス(ブラックバス)、河川敷等に群生しているアレチウリ等、多くの動
植物が確認され生態系への影響が心配されます。
今後は、『堺市レッドリスト』等に基づき、開発に際しての環境配慮指導の徹底や環
境影響評価を通じて生物多様性に係る生息環境の保全に努めるとともに、身近な自然(植
物・動物)とのふれあいの場の創出を図ることが必要です。
■堺市レッドリスト/種の選定状況
絶滅
Aランク
Bランク
(最重要保護) (重要保護)
Cランク
(要保護)
情報不足
要注目
分野計
哺乳類
-
-
-
2
-
2
4
鳥類
1
14
8
20
3
6
52
両生・爬虫類
-
3
3
1
5
5
17
淡水魚・貝類
-
3
9
17
-
-
29
陸生無脊椎動物
12
38
41
61
7
16
175
維管束植物
42
61
44
24
-
99
270
蘚苔・藻・菌類
-
5
5
3
9
5
27
カテゴリー計
55
124
110
128
24
133
574
オオタカ(Aランク)
ゲンジボタル(Bランク)
カスミサンショウウオ(Aランク)
キンラン(Aランク)
- 18 -
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