Comments
Description
Transcript
還元反応を用いた環境汚染物質の 除去
2002 年 度 修士論文 還 元 反 応 を用 いた環 境 汚 染 物 質 の 除去 高知工科大学大学院 物 質 ・環 境 システム工 学 コース 博士課程前期 坂輪研究室 眞邊照展 1 目次 第一章 序論 1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第 二 章 塩 化 水 素 除 去 材 の開 発 2− 1 序論 2− 2 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2− 2− 1 原料の選定 2− 2− 2 含浸操作 ・・・・・・・・・・・・・・・・9 2− 2− 3 炭化処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・9 2− 2− 4 塩化水素吸着試験 2− 2− 5 物性評価 2− 3 結果及び考察 2− 3− 1 ・・・・・・・・・・・・・・9 ・・・・・・10 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 ・・・・・・・・・・・・・・・13 酢酸カルシウムの熱変化 ・・・・・・・・・・・13 2− 3− 2 塩化水素除去材の重量変化 ・・・・・・・・・・・13 2− 3− 3 塩化水素除去材の BET 比 表 面 積 値 ・・・・・・15 2 2− 3− 4 塩化水素除去材の鉱物組成 ・・・・・・・・・・・・・15 2− 3− 5 含浸溶液濃度の決定 ・・・・16 2− 3− 6 塩化水素吸着試験の結果 ・・・・・・・・・・・・・17 2− 3− 7 試験後の鉱物組成 2− 3− 8 SEM-EDS に よ る 観 察 2− 4 まとめ ・・・・・・21 ・・・22 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 第 三 章 鋳 造 廃 砂 中 クロムの還 元 抽 出 について ・・・・・・・・・・24 3− 1 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 3− 1− 1 鋳造業界における問題 3− 1− 2 金属の還元抽出技術 3− 1− 3 用語説明 3− 2 ・・ 24 ・・・・25 ・・・・・・・・・・・・・・26 実用炉での実施について ・・・・・29 第 四 章 鋳 造 廃 砂 における塩 基 度 調 整 の効 果 ・・・・・・・・・・・・・31 4− 1 序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 3 4− 1− 1 は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・31 4− 1− 2 塩 基 度 に つ い て ・・・・・・・・31 4− 2 実 験 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 4− 2− 1 原 料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 4− 2− 2 塩 基 度 の 調 整 方 法 ・・・・・・33 4− 2− 3 溶 融 度 の 評 価 方 法 ・・・・・・34 4− 2− 4 還 元 性 の 評 価 方 法 ・・・・・・35 4− 3 結 果 及 び 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・36 4− 3− 1 塩 基 度 調 整 の 結 果 ・・・・・・36 4− 3− 2 溶 融 度 の 評 価 ・・・・・・・・・・37 4− 3− 3 還 元 性 の 評 価 ・・・・・・・・・・40 4− 4 第五章 結言 ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4 第一章 序論 1 はじめに 工業活動に伴い副次的に排出される環境汚染物質は様々な方 法で除去されている。本研究では、これら環境汚染物質を還元 反応を用いて新しい除去方法を考案した。具体的には塩化水素 除去材の開発及び、鋳造廃砂中クロム酸化物の還元抽出の研究 を行った。 塩化水素は、焼却炉等で問題となっている。ゴミ焼却時に発 生する塩化水素が炭化水素と反応し、環境ホルモンの一種であ るダイオキシンを発生させる。現在では消石灰スラリーによる 吹き込みを行って除去をしている。しかしながら、消石灰は強 アルカリ性を呈しており、ハンドリング時の安全性に疑問が持 たれている。そこで、木炭中に石灰を担持させることで、ハン ドリング時の安全性を向上させた塩化水素除去材の開発を行っ た。また、この塩化水素除去材は木炭と石灰を複合させた材料 であるため、木炭の微細構造に由来する物理吸着と、石灰の塩 化水素との反応性の相乗効果が期待できる。この開発により石 灰業界の活性化、新規産業の創出、地球環境の浄化につながっ ていく。 鋳造会社から出る廃棄物は全て鉱さいとして取り扱われてい るため、特別管理型処分場での処理が義務付けられている。し かし高知県の鋳造会社の場合では県内に管理型処分場が存在し ないため他県に廃棄物の処理を任している。現在、その処理費 が 12,000 円 /t と 高 く 、 鋳 鋼 会 社 の 存 続 問 題 に ま で な っ て い る 。 廃棄物の処分方法としてセメント会社への委託が多く用いられ ているが、鋳造に用いられる砂には熱的性質が良いことから、 クロムが多量に含有されている。クロムは 3 価の状態が安定で はあるが、長時間塩基性成分の中に存在していると一部が 6 価 クロムに酸化されることが報告されている。そのため、石灰を 多量に使うセメント会社にはクロムが含有していることで引き 取りが困難となる。そこで、鋳造廃砂を溶融しクロムを還元抽 5 出することで廃棄物の無害化を行う。さらに還元されたクロム を鋳造原料として利用することで工業的利益にもつながるクロ ーズドシステムを考案した。今回、この研究は即効型地域新生 コンソーシアムでの採択を受け、産学官での共同研究として進 められている。我々の研究室で行ったのは、このクロムを還元 抽出時に副産物として生成されるスラグ層についての研究を行 った。スラグ層は還元反応時の残留物の様なものだが、この成 分が反応全体に大きな役割を果たしている。スラグの性質は塩 基度と呼ばれる尺度で表現され、その性質改善のために塩基度 調整を施す。塩基度を高くすると金属との分離性の向上や炉壁 侵食性の軽減になる。そこでスラグ層へ塩基度調整を施したと きに、スラグ層の溶融温度と還元反応にどのような影響を与え るのかを検討した。 焼却炉等 HCl 鋳造会社 Cr2O3 還元反応 HCl+CaO→CaClOH Cr3++3e-→Cr 環境汚染物質の除去 図 1− 1; 本 研 究 の 概 略 6 第二章 塩化水素除去材の開発 2− 1 序 論 焼却炉からのダイオキシン発生が重大な問題となって い る 。ダ イ オ キ シ ン 類 は 互 い に よ く 似 た 化 学 構 造 を し て お り 、い ず れ も き わ め て 毒 性 が 強 く 、汚 染 さ れ る と 人 体 に 生 殖 障 害 、免 疫 抑 制 、ホ ル モ ン 撹 乱 作 用 、ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 な ど の 生 体 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る た め に 、汚 染 軽 減 対 策 が 進 め ら れ て い る 塩 素 系 環 境 汚 染 物 質 で あ る 。焼 却 に 伴 うダイオキシン類の生成機構の詳細についてはまだ不明 な 点 が 多 い 。し か し な が ら 、不 完 全 燃 焼 に よ っ て 出 来 る 未 燃 有 機 物 と 塩 素 が 結 合 し た も の が 約 200℃ ∼ 450℃ の 範 囲 に冷却された時に反応してダイオキシン類を生じること が 分 か っ て い る 。そ の 解 決 策 の 一 つ と し て 排 ガ ス 中 の 塩 素 系 ガ ス の 排 除 が 効 果 的 で あ る 。現 在 、そ の 塩 化 水 素 ガ ス は 200℃ ま で 冷 却 さ れ た 排 ガ ス に 消 石 灰 ス ラ リ ー の 吹 込 み を 行 い 、バ グ フ ィ ル タ ー に て 捕 集 、回 収 を 行 っ て い る 。し か し 、消 石 灰 は 強 ア ル カ リ 性 を 呈 し て お り 、作 業 時 の ハ ン ド リ ン グ に 危 険 を 伴 う 。そ こ で 木 炭 を 保 持 体 と し 、そ の 内 部 に 石 灰 を 担 持 さ せ 、ハ ン ド リ グ 時 の 安 全 性 を 考 慮 し た 材 料 の 開 発 を 行 っ た 。こ れ に よ り マ ク ロ 的 に は 木 質 系 材 料 で あ り 、接 触 時 の 危 険 性 を 低 減 し た 。ま た 、酸 性 ガ ス の 固 定 化 に寄与するミクロ的な部分では石灰質による回収を行う。 吸 着 は 大 き く 二 種 類 に 分 け る 事 が で き 、一 つ は 固 層 上 に ファンデルワールス力といった弱い力で吸着する物理吸 着 と 、も う 一 つ は 共 有 結 合 や イ オ ン 結 合 と い っ た 強 い 力 で 吸 着 す る 化 学 結 合 で あ る 。物 理 吸 着 は 凝 集 に 似 て お り 、濃 度 の 低 い 分 子 に 働 き 、固 体 の 表 面 上 か ら 濃 度 分 布 が 出 来 る 。 吸着の力である分散力は距離の 6 乗に反比例するファン デ ル ワ ー ル ス 力 で あ り 、化 学 結 合 よ り も 遠 く ま で 力 が 働 く 為 に 多 分 子 層 を 形 成 す る こ と が 可 能 で あ る 。ま た 、吸 着 の 為 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 低 く 、吸 着 速 度 も 早 い 事 が 特 徴 で あ る 。化 学 結 合 は 特 定 の 性 質 を 持 っ た 物 質 の み 吸 着 サ イ ト に 吸 着 さ れ る 。吸 着 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 高 く 、一 度 物 理 吸 着 さ れ た 後 に 、吸 着 サ イ ト に 移 動 し 結 合 さ れ る 為 に 物 理 7 吸 着 よ り も 吸 着 の 速 度 が 遅 い 。し か し 、結 合 の エ ネ ル ギ ー は 高 く 脱 離 し 難 い と い う 特 徴 を 持 っ て い る 。今 回 作 製 し た 複 合 材 料 で は 、木 炭 内 部 に 含 浸 さ せ た 石 灰 が 木 炭 基 質 上 に 堆 積 す る こ と に よ り 、物 理 吸 着 と 化 学 吸 着 の 両 方 の 利 点 が 得られ、高い回収率が期待できる。 クリーンエアー ガスの流れ 焼却室 冷却 塩化水素除去 装置 廃棄物 ・800℃以上 ・200℃以下に冷却 ・今回開発した除去材の利用 ・滞留時間2秒以上 ・外気と遮断 図 2 - 1; 開 発 し た 塩 化 水 素 除 去 材 の 利 用 概 略 8 2− 2 実験 2− 2− 1 原料の選定 石 灰 系 材 料 と 木 質 系 材 料 を 複 合 さ せ る 手 法 と し て 、石 灰 材 料 を 水 溶 液 化 し 、木 質 系 材 料 に 含 浸 さ せ る 方 法 を 選 択 し た 。石 灰 系 材 料 と し て は 、酢 酸 カ ル シ ウ ム を 用 い る こ と に し た 。こ れ は 水 に 対 す る 溶 解 度 の 高 い カ ル シ ウ ム 塩 を 考 慮 し 、硝 酸 カ ル シ ウ ム 、塩 化 カ ル シ ウ ム 等 を 用 い た が 、熱 分 析 の 結 果 に よ り 、 活 性 の 高 い 酸 化 カ ル シ ウ ム ( 生 石 灰 )、 水 酸 化 カ ル シ ウ ム( 消 石 灰 )に は な ら ず に 融 解 し て し ま う ために有機系カルシウム塩から水溶性の高い酢酸カルシ ウ ム を 選 択 し た 。酢 酸 カ ル シ ウ ム を 使 用 す る こ と で 炭 化 時 に出る木酢液を回収し、再利用できる利点を有している。 ま た 、木 質 系 材 料 と し て は 含 浸 性 を 考 慮 し 、杉 の 辺 材 部 を 用いた。 2− 2− 2 含浸操作 市 販 の 特 級 酢 酸 カ ル シ ウ ム 1 水 和 物 を 用 い て 、0 . 0 1 、0 . 1 、 0 . 5 、1 . 0 m o l / L の カ ル シ ウ ム 濃 度 を 持 つ 水 溶 液 を 作 製 し た 。 含 浸 操 作 は 、 10×10×50mm( 半 径 方 向 ×接 線 方 向 ×繊 維 方 向 )に サ イ ジ ン グ し た 杉 材 を 1 0 5 ℃ の 乾 燥 機 で 乾 燥 さ せ た 後 に デ シ ケ ー タ に 封 入 し 真 空 ポ ン プ を 用 い て 1kPa ま で 減 圧 し た 後 に 3 0 分 間 保 持 し 、徐 々 に 大 気 圧 に 戻 し な が ら 、 濃度調製した酢酸カルシウム溶液を注入する事によって 行った。含浸前後の杉重量を測定し、含浸率を求めた。 2− 2− 3 炭化処理 酢 酸 カ ル シ ウ ム 溶 液 を 含 浸 操 作 し た 後 、 105℃ の 乾 燥 機 で 杉 材 を 乾 燥 さ せ 、管 状 炉 を 用 い て 炭 化 を 行 っ た 。炭 化 条 件 は 昇 温 速 度 10℃ /min、 目 標 温 度 で 1 時 間 保 持 、 窒 素 雰 囲 気 下 で 行 っ た 。一 連 の 材 料 の 調 整 方 法 を 下 記 の 図 2 - 2 に 9 示す。 密閉容器 管状炉 Ca(CH3COO)2・H2O N2 H2O Ca溶液の作成 木材 含 浸 操 作 耐熱処理(炭化) 図 2-2;塩 化 水 素 除 去 材 の 作 成 方 法 2− 2− 4 塩化水素吸着試験 上記の方法で作成した除去材の性能試験を行う為に図 2-3 に 示 す 試 験 装 置 を 作 成 し た 。 ガ ス 吸 着 方 は 実 際 の 使 用 に よ り 近 い 方 法 を 取 る た め に 、カ ラ ム 方 式 を 採 用 し た 。試 験 方 法 は 、標 準 ガ ス を 流 量 計 で 流 量 調 整 し た 後 に 、試 料 を 充 填 し た カ ラ ム を 通 す 。テ ド ラ ー パ ッ ク に 通 過 し た ガ ス を 回収し、検知管を用いて濃度測定を行った。この時、 “ (標 準 ガ ス 中 の HCl 量 )ー (テ ド ラ ー パ ッ ク に 回 収 さ れ た HCl 量 )= (試 料 に よ る HCl 吸 着 量 )” と 仮 定 し た 。 検 知 管 の 測 定 濃 度 範 囲 は 0.5∼ 1,000ppm で ある。測定条件は以下の通りに設定した。 ・初 期 HCl濃 度 3,000ppm/N2 ・ガ ス 流 量 ; 100ml/min ・ガ ス 圧 ; 49kPa ・カ ラ ム 内 温 度 ; 25℃ 100℃ 150℃ 200℃ ・検 知 管 測 定 濃 度 範 囲 ;0.5∼1,000ppm ・測 定 時 間 ; 40min ・測 定 試 料 ; 作 製 試 料 , 木 炭 , 試 薬 消 石 灰 ・試 料 重 量 ; 1.00g 10 また、装置内容積を測定して、試料内にガスが充填する まで流してから測定を行った。装置内容積はシリコンチュ ーブ交換ごとに測定をした。 2− 2− 5 物性評価 各温度において炭化した固定化材及び無処理材、塩化水 素 ガ ス 吸 着 試 験 後 の 試 料 に つ い て X 線 回 折 、S E M − E D S に よる観察を行った。 X 線回折は(株)マック−サイエンス社製 MXP-18 型 を使用し、試料を乳鉢で粉状にした後に測定を行い、測定 条 件 は C u K α, 4 0 k V, 1 0 0 m A に 統 一 し た 。S E M は ( 株 ) 日 本 電 子 社 製 J S M - 5 8 0 0 - LV 型 、 EDS は (株 )日 本 電 子 社 製 JED-2210 型 を 使 用 し た 。 11 流量計 カラム 標準ガス 捕集袋 図 2-3;塩化水素吸着試験装置 12 2− 3 結果及び考察 2− 3− 1 酢酸カルシウムの熱変化 市販の酢酸カルシウム1水和物の窒素雰囲気化での熱重量 変 化 を 熱 分 析 ( TG) に て 測 定 を 行 っ た 。 図 2-4 か ら 、 酢 酸 カ ルシウム1水和物の熱分解挙動は 3 段階に分かれていること が推測できる。熱変化による重量割合の変化と酢酸カルシウ ム 1 水和物の分子式より挙動の推定をすると次式のようにな る。 Ca(CH3COOH)2H2O → Ca(CH3COOH)2 + H2O↑ → CaCO3 + (CH3)2CO↑ → CaO + CO2↑ 110 重量[wt%] 100 2-4; 酢 酸 カ ル シ ウ ム 90 図 80 1水和物の熱分解挙動 70 60 50 40 30 20 0 100 200 300 400 500 600 700 800 温度[℃] 図中の 8wt%の 減 少 を 示 す 区 間 で は 結 晶 水 の 脱 離 、 32wt% の 減 少 区 間 で は ア セ ト ン の 脱 離 、 24.9wt%の 減 少 区 間 で は 炭酸ガスの脱離に伴う重量減少を起こしていると考えられ る。 2− 3− 2 除 去 材 の 重 量 変 化 図 2-5 よ り 、 炭 化 温 度 が 上 昇 す る に つ れ て 試 料 重 量 減 少 率 が減少する傾向を示した。また、含浸させるカルシウム溶 13 液濃度が上昇するにつれて試料重量減少率が減少していっ ている。これは、木材中に含まれるカルシウム化合物量が 増加していることを意味している。 ま た 、 含 浸 処 理 を し て い な い 試 料 に 対 す る 増 加 率 は 0.1mol/L と 0.5mol/L の 間 で は 変 化 が 大 き か っ た の に 対 し て 、 0.5mol/L と 1.0mol/L の 間 で は 差 が 見 ら れ な い 。 こ れ に よ り 、カ ル シ ウ ム 溶 液 濃 度 の 最 適 な 濃 度 は 0 . 5 m o l / L で あ ることが分かる。 50 CTRL 0.1mol/l 0.5mol/l 1.0mol/l 45 重量[%] 40 35 図 2 - 5;炭 化 温 度 に 対する重量変化 30 25 20 300 400 500 600 700 800 900 温度[ ℃] 50 0.1mol/l 0.5mol/l 1.0mol/l 重量増加率[wt%] 40 30 図 2 - 6; 無 処 理 材 に 対する重量増加率 20 10 0 200 400 600 温度[℃] 800 1000 14 2 -3-3 除 去 材 の 炭 化 温 度 に よ る 比 表 面 積 の 変 化 BET 法 を 用 い た 比 表 面 積 測 定 装 置 を 用 い て カ ル シ ウ ム 溶 液 濃 度 を 変 化 さ せ た 試 料 の 比 表 面 積 値 を 図 2-7 に 示 す 。 含 浸 さ せ て い な い 試 料 に 対 し て 100℃ 遅 れ た 温 度 か ら 、 カ ル シ ウム溶液を含浸させた試料の BET 比 表 面 積 値 は 上 昇 を は じ め 、 700℃ ∼ 800℃ で 最 大 に な っ た 。 ま た 、 カ ル シ ウ ム 溶 液の濃度が上がるにつれて、低下する傾向が見られた。 BET比表面積値[m2/g] 400 CTRL 0.1mol/l 0.5mol/l 1.0mol/l 300 200 100 0 300 500 700 900 温度[℃] 図 2-7; BET 比 表 面 積 値 2-3-4 固 定 化 材 の 炭 化 温 度 に よ る 鉱 物 組 成 の 変 化 図 2-8 は 酢 酸 カ ル シ ウ ム 濃 度 0.5mol/L の 水 溶 液 を 含 浸 さ せ た試料の X 線回折を行った結果である。これにより、試料 内部に結晶化したカルシウム化合物の同定を行った。 試 薬 の 酢 酸 カ ル シ ウ ム 水 溶 液 で は 700℃ で 全 て 酸 化 カ ル シ ウ ム に な っ て い た の に 対 し 、 昇 温 速 度 10℃ /min で 炭 化 す る と 800℃ に お い て も ほ と ん ど 酸 化 カ ル シ ウ ム が 作 ら れ て いないことが分かる。炭化温度を上昇するごとに炭酸カル シウムのピークが消えて、変わりに酸化カルシウムのピー ク が 大 き く な る 傾 向 が み ら れ た 。炭 化 温 度 9 0 0 ℃ 以 上 で は 、 15 ほぼ炭酸カルシウムのピークがなくなり、酸化カルシウム になっていることが分かる。これは、木炭内部にカルシウ ム 化 合 物 が 存 在 す る た め に 、熱 量 が 伝 わ り 難 い か ら で あ る 。 ま た 、 900℃ で 炭 化 し た 試 料 に 水 酸 化 カ ル シ ウ ム の ピ ー ク が見られた。これは、試料中の酸化カルシウムは空気中の 水分と容易に反応するため、次の様に生成されていると考 えられる。 CaO+ H2O→ Ca(OH)2 水 酸 化 カ ル シ ウ ム も 酸 化 カ ル シ ウ ム と 同 様 に 酸 性 ガ ス に 対 す る 活 性 は 高 い た め 、 水 分 の 吸 着 は 酸 性 ガ ス と の 反 応 性 に は 大 き な 影 響 を 及 ぼ さ な い と 推 察 す る 。 C Intensity, a.u. 図 2 - 8; X 線 回 折 C; CaCO3 C L C L; CaO CC C P; Ca(OH)2 L L 800℃ 850℃ P 900℃ 950℃ 10 30 2theta, deg(CuKα) 50 2-3-5 含 浸 液 の 性 状 決 定 に つ い て 図 2-9 は 0.5mol/L と 1.0mol/L の カ ル シ ウ ム 溶 液 で 作 成 し た塩化水素除去材の SEM 画 像 で あ る 。 カ ル シ ウ ム 濃 度 が 1 . 0 m o l / L で 作 成 し た 試 料 で は 、木 炭 の 木 質 細 胞 に 由 来 し た 細 孔 を 塞 ぐ よ う に 析 出 し て い る こ と が 分 か る ( 写 真 左 側 )。 そ れ に 比 べ 、0 . 5 m o l / L の カ ル シ ウ ム 濃 度 の 溶 液 で 作 成 し た 。 試料においては、細孔の壁面に沿ってカルシウム化合物が 16 析 出 し て い る こ と が 見 て 取 れ る( 写 真 右 側 )。カ ル シ ウ ム 化 合物と酸性ガスが効率良く反応を促すためには、化合物の 表 面 積 が 多 く な く て は い け な い 。し か し 1 . 0 m o l / L で 作 成 し た試料では固まって析出しているため、体積あたりの表面 積 は 小 さ く な っ て い る と 推 測 さ れ る 。 ま た 、 0.5mol/L で 作 成した試料は薄く析出しているために化合物の表面積が多 く な っ て い る 。 こ の こ と か ら 、 0.5mol/L と 1.0mol/L の 試 料を比較した場合では 0.5mol/L の カ ル シ ウ ム 溶 液 濃 度 で 作成した方が酸性ガスとの反応性は効率がよいと考えられ る。また、化合物量はできるだけ多く担持させるために、 カ ル シ ウ ム 溶 液 濃 度 は 0.5mol/L が 最 適 で あ る と 判 断 し た 。 図 2-9; 塩 化 水 素 除 去 材 の 二 電 子 像 右 , 0.5mol/L 左 , 1.0mol/L 2-3-6 塩 化 水 素 吸 着 試 験 の 結 果 各炭化温度で作成した試料の塩化水素吸着率を図 2-10 に 示す。グラフは 1 系列につき 3 回の試験結果の平均をグラ フにした物である。 図 2 - 1 0 を 注 目 す る と 、炭 化 温 度 が 9 0 0 ℃ の 試 料 が 最 も 高 い吸着量を示していた。その理由としては炭化温度ごとの 鉱 物 組 成 図 2 - 8 よ り 、8 0 0 ℃ で は 木 質 中 に 含 ま れ て い る 酢 酸 カルシウムが完全に酸化カルシウムに変化しておらず、ほ とんどが炭酸カルシウムとして残っている為に、表面上に 17 化学吸着を起こさない。そのため高い温度域で炭化したも の に 比 べ 、吸 着 量 が 少 な い 。9 5 0 ℃ で 炭 化 し た も の で は 、カ ルシウム化合物は全て酸化カルシウムとなっている。しか 800℃ で 最 も 高 く な り 、 そ れ 以 上 の 温 度 で し木炭の活性が はグラファイト化が起こるために気体分子への活性が低下 し吸着量が減少している。また、本実験では試薬の消石灰 と酸化カルシウムを比較試料として測定したが、測定濃度 の範囲を超えたためグラフには記載していない。 0.80 100 93.89 98.83 0.75 92.78 95 90.44 81.44 85 0.718 0.60 0.673 0.673 0.658 0.55 80 75 0.590 0.50 r 1h r 吸着量(mmol/g) 0× 95 90 0× 1h r 85 0× 1h r 1h 0× 80 rブ ラ ン ク 70 1h 0× % 90 0.65 80 mmol/g 0.70 吸着率(%) 図 2-10; 炭 化 温 度 別 の 塩 化 水 素 吸 着 の 比 較 18 こ の 結 果 を 受 け 、 900℃ で 炭 化 し た 試 料 、 比 較 試 料 と し て 800℃ で 炭 化 し た 木 炭 、 市 販 の 試 薬 消 石 灰 を 5 分 ご と に テ ド ラーパックを試験装置から取り外し、検知管による濃度測定 を 行 っ た ( 図 2 - 1 1 )。 吸 着 温 度 2 5 ℃ に お い て は 、木 炭 が 最 も よ い 吸 着 率 を 示 し た 。 今回作成した石灰系木質複合材料においても非常に似た吸 着をしている。試薬消石灰では、あまりよい吸着率を得られ なかった。これは、各材料の物理的な形状に依存していると 考えられる。多孔体の木質系の材料は、気体分子との接触面 積が大きいために早く吸着を起こす。これに対し、試薬の消 石灰では気体分子との接触面積=反応面積が少ないことと、 吸着に大きな活性化エネルギーを必要とする化学結合をす るために吸着速度が遅くなり、吸着量が減少していると考え られる。 カ ラ ム 内 温 度 を 上 昇 さ せ る と 、木 炭 の 吸 着 温 度 は 急 激 に 低 下 している。木炭の吸着率が温度上昇と共に大きく減少してい るのは、吸着エネルギーが小さい為に一度吸着しても、気体 分子の熱エネルギーが大きいためにすぐに脱離をしてしまう からと考えられる。また消石灰についてはカラム内温度が上 昇すると共に吸着率が上昇をしていた。これは気体分子の運 動が温度と共に大きくなり、反応サイトにあたる確率が上昇 し、反応速度が速くなるためである。複合材料においては、 カラム内温度変化に対する吸着率の大きな変化は見られなか った。複合材料では、一度物理吸着された分子が、化学吸着 されるために吸着速度が温度に対して変化が少ないと考えら れる。 19 Ratio of Adsorption, % Ratio of Adsorption, % 100 80 60 25℃ 40 20 100 80 60 40 100℃ 20 0 0 0 10 20 30 40 0 50 10 100 40 50 100 Ratio of Adsorption, % Ratio of Adsorption, % Time, min 20 30 Time, min 80 60 150℃ 40 20 0 80 60 200℃ 40 20 0 0 10 20 30 Time, min 40 ;石 灰 系 木 質 複 合 材 ;木 炭 ;消 石 灰 50 0 10 20 30 Time, min 40 50 図 2 - 11 ; 時 間 経 過 に お け る 塩 化 水素吸着率の推移 カ ラ ム 内 温 度 ; 右 上 25 ℃ , 左 上 100℃ , 右 下 150℃ , 左 下 200℃ 20 2-3-7 塩 化 水 素 吸 着 試 験 後 の 鉱 物 組 成 の 変 化 L CL 吸着試験前 吸着試験後 H 10 Ch P H P 吸着試験6ヶ月後 0 Ch L 20 30 ChC C 40 50 60 2θ 図 2-12; X 線 回 折 C; CaCO3 Ch; CaClOH L; CaO P; Ca(OH)2 H; Ca(ClO)2・3H2O 図 2-12 は 、 吸 着 試 験 後 の 試 料 を X 線 回 折 装 置 で 同 定 し た 結 果 で あ る 。 吸 着 試 験 を 行 う 前 の 試 料 で は L i m e( 生 石 灰 、 C a O ) が 生 成 されており、これは酢酸カルシウムの熱分解によって生成してい る 。 吸 着 試 験 後 で は 、 CaClOH が 検 出 さ れ て お り 、 こ れ に よ り 、 CaO+HCl→ CaClOH の反応が起こっていることが分かる。酸化カルシウムと塩化水素 を無水条件で反応させた場合、カルシウムと酸素の結合を切断し て 塩 素 が 置 換 す る こ と が で き ず 、 π結 合 の 部 位 に 塩 化 水 素 が 付 加 反応を起こしていると考えられる。 吸 着 試 験 後 6 ヶ 月 放 置 し た も の で は 、酸 化 カ ル シ ウ ム と 吸 着 試 験 後 に 生 成 さ れ て い た C a C l O H の ピ ー ク が 消 え 、水 酸 化 カ ル シ ウ ム( C a ( O H ) 2 )と さ ら し 粉 ( C a ( C l O ) 2 3 H 2 O ) の ピ ー ク が 検 出 さ れ た 。 21 水酸化カルシウムは、酸化カルシウムが空気中の水分と反応し生 成 さ れ た と 考 え ら れ る 。 ま た 、 Ca(ClO)23H2O も CaClOH が 空 気 中の水分や木質系基質中に物理吸着されていた塩素と反応し生 成されたと思われる。 2-3-8 塩 化 水 素 吸 着 試 験 後 の 拡 大 像 二次電子像 Ca K α 図 2-13 ; SEM-EDS によるマッピング像 Cl K α 塩化水素吸着試験後の試料を EDS に よ る 元 素 マ ッ ピ ン グ を 行 っ た 。 図 2 - 1 3 で は C a K α像 と C l K α像 が 非 常 に 一 致 し て い る こ と が見て取れる。これにより、カルシウム化合物による塩化水素の 選択的吸着がしていることが分かる。 22 まとめ ・ 木 材 中 に 含 浸 さ せ る カ ル シ ウ ム 化 合 物 は 、有 機 系 カ ル シ ウム塩の酢酸カルシウムが最適である。 ・ カ ル シ ウ ム 溶 液 の 濃 度 を 変 化 さ せ る こ と で 、除 去 材 中 に 担持される石灰の量をコントロールできる。 ・ 炭 化 温 度 700 ℃ ∼ 800 ℃ に お い て 、 BET 比 表 面 積 が 200m2/g を 上 回 っ た 。 ・ 炭化温度 800℃ ∼ 900℃ に お い て 、 活 性 の 高 い カ ル シ ウ ム化合物(消石灰、生石灰)が得られ、酸性ガスの化学 吸着性能が期待される。 ・ 炭 化 温 度 900℃ の 試 料 に お い て 、 最 も 高 い 塩 化 水 素 吸 着 性能がある。 ・ 実 際 に 使 用 さ れ る 際 に 想 定 さ れ る 温 度 200℃ に お い て 、 試薬の消石灰よりも高い吸着性能がある。 ・ 除去材中のカルシウム化合物は塩化水素と化学反応を 起 こ し 、 CaClOH に な り 、 6 ヶ 月 後 で も 塩 素 を 固 定 化 し ている。 参考文献 竹 内 節 ; 吸 着 の 化 学 , 産 業 図 書 株 式 会 社 , 1995 岩 沢 康 裕 、 小 間 篤 ; 表 面 の 化 学 , 丸 善 株 式 会 社 , 1994 社 団 法 人 日 本 化 学 会 編 ; ダ イ オ キ シ ン と 環 境 ホ ル モ ン , 1998 真田雄三、鈴木基之、藤元薫;新版活性炭 基礎と応用,株式会 社 講 談 社 , 1992 S . L o w e l l , J o a n E . S h i e l d s ; P o w e d e r S u r f a c e A r e a a n d P r o s i t y, YUASA-IONICS 23 第 三 章 鋳 造 廃 砂 中 クロム酸 化 物 の 除 去 に つ い て 1序論 3−1−1高知県鋳物業界の問題 金属加工技術は大きく二つに分けることができる。一つ は鋳造であり、もう一つは塑性加工である。鋳造とは溶解 した金属を型に流し込み成型する技術であり、塑性加工と は金属を曲げ、プレス、切削によって成型する加工技術で あ る 。 鋳 造 技 術 は 大 変 古 く か ら あ り 、 紀 元 前 3500 年 よ り あ る と 言 わ れ て お り 、 そ の 歴 史 は 5000 年 に も 及 ぶ 。 日 本 では奈良の大仏が鋳造によって作られていることは有名で ある。その他には自動車、船舶、飛行機の部品など複雑な 形状の金属部品は鋳造で作られていることが多い。このよ うに我々の身の周りにも大小を問わず、多くの鋳造物が存 在している。一般的な鋳造の方法としては、まず目的とな る形状の模型を作成し、それを元に反対の形状をもつ砂型 (鋳型)を取る。次に原料となる金属を電気炉で融解し、 鋳型に流し込む。温度が下がり金属が凝固したら鋳型を壊 し、製品を取り出す。最後に表面加工をして製品になる。 鋳 型 の 砂 は 約 95%以 上 が 再 生 機 に よ っ て 再 生 さ れ 再 利 用 されているが、再生操作中に再生不能となった砂は鋳造廃 棄物となる。廃棄物処理法により鋳造廃棄物は鉱さいとし て管理型処分場での処理が義務付けられている。現在、高 知県には管理型処分場が存在しないことから、県外の廃棄 物処理業者に委託し、管理型処分場にて処理されている。 そのため、県外の鋳造会社より処理費が高くなり、競争力 の低下を引き起こしている。 そこで、石灰産業が盛んであるという高知県の特色を生 かし、セメント会社への引き取りを行ってもらうことにし た。しかし、鋳造で使用される鋳型の砂の一部は耐火性、 熱 膨 張 率 が よ い こ と か ら 、 Cr2O3 を 多 く 含 有 し て い る ク ロ マイト砂を使用している。クロマイト中のクロムは 3 価で あるが、長時間、特にアルカリ雰囲気化においては 6 価の 24 クロムに変化することが報告されている。そのため、クロ ムを含有している廃棄物については引き取りを拒否されて いる。 研究の概要 鋳造工場から排出される鋳造廃砂を、鋳造に使用されて いるアーク式電気炉を用いて、抽出還元を行う。その際、 塩基度調整を行うことで溶融温度の低下、操作性の向上が できることが、高知県工業技術センターでの前研究により 可能となることを見出した。メタル層に抽出されたクロム は鋳造原料として利用でき、工業的利益も期待できる。ま た、スラグはクロム濃度 1wt%以 下 に す る こ と で 、 セ メ ン ト細骨材、または研磨剤としての利用も考慮している。将 来的には人工砂化して鋳造用の砂への再利用を行い、クロ ーズドシステムの構築を目標としている。 3− 1− 2 金属の還元技術 金属化合物を還元するにはその難易によって数多くの方法 がある。また還元法の分類によっても様々に分けられる。 還 元 剤 ( reducing agent) に よ っ て 分 類 す る と 、 炭 素 に よ る 場 合 、 ガ ス ( CO, H2, CH4 な ど ) に よ る 場 合 、 金 属 元 素 ( Fe, Al, Si, Mg, Ca な ど ) に よ る 場 合 な ど に 分 け ら れ る 。 例をあげると 炭素による還元 SiO2( s ) + 2 C( s ) = Si( l ) + 2 CO( g ) MgO( s ) + C( s ) = Mg( g ) + CO( g ) T i O 2 ( s ) + C( s ) + 2 C l 2( g ) = T i C l 4( g ) + C O 2( g ) ガスによる還元 FeO( s ) + CO( g ) = Fe( s ) + CO2( g ) MoO2( s ) + 2 H2( g ) = Mo( s ) + 2 H2O ZnO( s ) + CH4( g ) = Zn( l ) + CO( g ) + 2 H2( g ) 25 金属元素による還元 化 合 物 Me1 X を X と Me1 と の 親 和 力 よ り X と よ り 強 い 親 和 力 を も つ Me2 で 還 元 す る 。 PbS( l ) + Fe( s ) = Pb( l ) + FeS( l ) 3 SiO2( s ) + 4 Al( l ) = 3 Si( s ) + 2 Al2O3( s ) 2 MgO( s ) + Si( s ) = 2 Mg( g ) + SiO2( s ) 以上の反応を起こさせるために、電熱や燃料の燃焼によっ て高温度を必要とする。これらの方法を乾式製錬または乾 式 治 金 ( pyrometallurgy) と い う 。 こ れ に 対 し 水 溶 液 で 抽 出したり、置換したり、電還元する方法を湿式製錬 ( hydrometallurgy) と い う 。 3− 1 − 3 用 語 説 明 ・ 「 ス た 分 が ク 持 再 年 鋳 造 廃 棄 物 」: 鋳 造 工 場 よ り 排 出 さ れ る 廃 棄 物 は 、 廃 砂 、 ラ グ 、集 塵 ダ ス ト 、廃 棄 模 型 、な ど 様 々 な も の が あ る 。ま 、そ れ ら す べ て の 廃 棄 物 は 、廃 棄 物 の 種 類 上「 鉱 さ い 」に 類 さ れ 、埋 め 立 て 処 分 す る 場 合 は 、管 理 型 処 分 地 で の 処 理 義 務 づ け さ れ て い る 。ま た 、鋳 造 工 場 は 、原 料 の 多 く に ス ラ ッ プ を 利 用 す る な ど あ る 面 、廃 棄 物 処 理 工 場 的 な 側 面 も っ て お り 、鋳 型 に 多 く 使 わ れ て い る 砂 な ど も 9 0 % 以 上 は 処 理 設 備 に よ り 、再 利 用 さ れ て い る 。そ れ で も 日 本 全 国 で 間300万トン近い廃棄物が排出されている。 ・ 「 炉 率 れ 低 黒 を 他 を ア な や て 周 鉛 発 の 通 ー ど 成 い 波 電 生 電 さ ク た 分 る 溶 極 さ 気 な 式 溶 融 炉 」: 溶 解 炉 に は 電 気 炉 、 ガ ス 炉 、 コ ー ク ス く さ ん の 種 類 が あ る 。そ の 中 で も 、電 気 炉 は 溶 解 効 調整のしやすさなどから多くの溶解設備で使用さ 。また、電気炉の中でもアーク炉、高周波溶解炉、 解炉など多くの種類があるが、アーク式溶融炉は、 間 に 電 気 の 力 に よ り ア ー ク( ス パ ー ク 、約 3 0 0 0 ℃ ) せ そ の 熱 に よ り 溶 融 を 行 う 装 置 で あ る 。ア ー ク 炉 は 、 炉 と 異 な り 金 属 だ け で な く 、無 機 物 、ゴ ミ な ど 電 気 いものの溶解にも使用されている。 ・ 「 還 元 溶 融 」: ア ー ク 式 電 気 炉 を 使 用 し て 溶 解 を 行 う 場 合 、 炉 内 は あ る 程 度 密 閉 さ れ た 環 境 で あ る 上 に 、溶 融 物 や 電 極 な 26 ど 融 こ の 有 出 に 物 と 強 用 す よ 自 に い 金 こ る 身 よ 還 属 と 酸 化 反 応 に よ り 還 元 雰 囲 気 と な っ て い る 。ま た 、溶 の還元性を向上させる為にコークス等を添加する り 更 に 強 い 還 元 性 を 持 た せ る こ と が 可 能 と な る 。こ 元 性 を 利 用 し て 廃 棄 物 を 溶 融 し 、そ の 中 に 含 ま れ る の酸化物を還元させることにより有用金属を取り を還元溶融と表現した。 ・ 「 塩 基 度 」: 鉄 鋼 の 操 業 で は , 鋼 滓 の 機 能 を 表 す 尺 度 と し て 塩 基 度 が 便 宜 的 に 用 い ら れ て い る 。 塩 基 度 = 全 塩 基 性 鋼 滓 成 分 の 重 量 %の 和 ----------------------------全 酸 性 鋼 滓 成 分 の 重 量 %の 和 し か し , 塩 基 度 = CaO(%) / SiO2(%)が 簡 易 的 に 広 く 使 用 さ れ て お り , 通 常 高 炉 ス ラ グ は 塩 基 度 1.2-1.25, 焼 結 鉱 の 塩 基 度 は 1.6∼ 1.7 程 度 で 操 業 さ れ て い る 。 ・ 「 種 湯 」: 鋳 造 廃 棄 物 は 、 S i O 2 、 C r 2 O 3 、 F e 2 O 3 な ど の 酸 化 物 を 主 成 分 す る た め 、電 気 を 通 さ な い 。こ の 為 、電 気 式 溶 解 炉 で 溶 解 す る 場 合 、あ ら か じ め 電 気 を 通 す 金 属 分 な ど を 溶 か し た 種 湯 を 作 っ て お く 必 要 が あ る 。固 体 状 態 で は 電 気 を 通 さ な い 鋳 造 廃 棄 物 も 、種 湯 の 温 度 に よ り 溶 解 さ れ 液 体 に な れ ば 電 気 を 通 す よ う に な り 抵 抗 加 熱 が 可 能 と な る た め 、電 気 炉 に よ る溶解が可能になる。 27 処理業者 製品 ・金属原料 ・添加材 現状のシステム 集塵ダスト 溶融炉 鋳造工程 回収砂 再生機 再生砂 原料化 スラグ層 人工砂化(将来的) メタル層 集塵ダスト 溶融炉 (有用金属抽出) クローズドシステム(将来的) 図 3-1;鋳造廃砂中クロム酸化物の除去模式図 28 3−2実用炉の実施について 高知県の某鋳造会社において、夜間電力を使用して鋳造 廃砂中クロム酸化物を還元させる実験を行った。実験の簡 単 な 手 順 を 図 3-2 に 示 し た 。 原料となる集塵ダストは鋳型に用いられた砂を再生処理 した時に排出される粉塵状の砂である。鋳型に用いられて いるものは、珪砂とクロマイト砂、硬化用のフラン樹脂で ある。 集塵ダストの固形化は、投入時の利便性と安全性を向上 させるために行った。バインダーは有機系の物を使用し、 直 径 約 5 c m の ア ー モ ン ド 状 に 成 型 し て い る 。石 灰 は 炭 酸 カ ル シ ウ ム ( CaCO3) を 使 用 し て い る 。 炭 酸 カ ル シ ウ ム は 約 700℃ で 熱 分 解 す る た め 、 溶 融 ス ラ グ 中 で は 酸 化 カ ル シ ウ ム ( CaO) と し て 存 在 し て い る 。 ま た 、 還 元 剤 と し て Al を 投 入 し て い る 。A l は 酸 化 物 の 生 成 自 由 エ ネ ル ギ ー が 非 常 に小さく、還元剤として非常に有効であることが知られて いる。 集塵ダストを固形化(原料) アーク式電気炉で種湯を溶融させる。 原料、石灰、還元剤の投入 有用金属の抽出 鋳造用砂型 スラグの排出 研磨剤 コンクリート細骨材 出鋼(インゴット) 鋳造原料として利用 図 3-2; 還 元 実 験 の フ ロ ー チ ャ ー ト 29 溶融処理は、鋳造に使用している炉であるアーク式電気 炉を用いた。成分測定はメタル層を固体発光分析装置によ って濃度測定を行い、スラグ部分は携帯型蛍光 X 線装置を 用いて、還元性の評価を行った。 実験では、スラグ中のクロム酸化物の濃度が 4wt%を 下 回 る 値 を 示 し た が 、目 標 と す る 値( 1wt%)は ク リ ア す る ま でには至っていない。また、スラグ層に多量のマグネシウ ムが検出されたことから、大きく炉壁が侵食されているこ とが分かった。また、セメント細骨材への利用を考えた場 合 で は 、 塩 基 度 1.4 以 上 、 ガ ラ ス 化 率 が 95% 必 要 で あ る 。 これらのことを踏まえてさらに条件を決めていく必要があ る。 30 第四章 鋳造廃砂のクロム還元における塩基度調整の効果 1 序論 1−1はじめに スラグは金属抽出の際の最も価値の低いものであるが、抽 出反応において大きな役割を占めている。本研究では、最 も良いスラグの条件について検討を行った。良いスラグと は、低温で溶融して適当な流動性を持ち、比重が軽くて金 属とよく分離し、耐火物を侵さず、精錬作用が大きく、さ らに有価金属の含有量が少ないものである。この全てを完 全に満たすことは不可能に近いが、それに最も近いスラグ を目指した。今回は、試料に石灰を混入することで、塩基 度調整を行い、その効果を検討する。塩基度を高くすれば 粘性や炉壁侵食性が低下することが知られているが、その 他の影響は、各成分によって変化する。 実 験 は カ ー ボ ン 坩 堝 ( 直 径 80mm 高 さ 100mm) の 中 に 塩 基 度( CaO/SiO2)を 変 化 さ せ た 試 料 を 挿 入 し 小 型 昇 降 式 電 気炉(型番等)中で溶融させた。塩基度調整が融解温度や 塩基度に対してどのような影響を検討した。 1− 2 溶 融 ス ラ グ 金属の製錬において、良質の金属を得るために各種の反応 を行わせる。その反応は、固相である炉床、液相である溶 鋼およびスラグ、気相の炉内雰囲気ガスおよび液相中に含 まれる気泡の各相間で起こるが、その性格を大きく作用す るのはスラグである。スラグは各種元素の酸化物が主であ り、その組成は溶解炉の種類,原料,操業法等により広範 31 囲に及ぶ。スラグは電気陰性度の差により塩基性、中性、 酸性に区分され、以下のように分類されている。 強塩基性 弱塩基性 ( CaO, MgO) (FeO, MnO) 弱酸性 強酸性 (Al2O3, Fe2O3) (SiO2, P2O5) 溶 融 ス ラ グ は イ オ ン 性 溶 体 と 見 な さ れ 、塩 基 性 成 分 で は O 2 が 、ま た 酸 性 成 分 で は S i O 4 - な ど の 錯 陰 イ オ ン が 、そ れ ぞ れ 各種イオンと中和されているとされている。スラグ中の陽 イオン濃度が増加し遊離 O2-が 現 れ る と 酸 素 の 供 給 源 と な り、製鋼反応における重要な役割を果たす事になるのでn O2-を 塩 基 度 の 尺 度 と 見 な す 事 も 出 来 る 。 実 用 ス ラ グ で は 、 多 元 系 で あ る が 、そ の 基 本 は あ く ま で も C a O − S i O 2 の 2 元 系 で 、塩 基( O2 − を 放 ち 易 い も の )の 代 表 と し て CaO が 用 いられる。つまり、 塩 基 度 = 塩 基 性 成 分 [wt%]の 総 和 /酸 性 成 分 [wt%]の 総 和 で 表 し 、さ ら に 簡 単 に( C a O )/( S i O 2 )で 示 す こ と が 多 い 。 塩 基 度 が 1 . 0 以 下 を 酸 性 ス ラ グ と 称 し 、1 . 2 以 上 を 塩 基 性 ス ラグと称する。 一般に、酸性スラグほど粘性が高い。粘性の高い理由とし ては錯イオン形成された分子が互いに相互作用をし、結晶 構造に似た高分子の構造を取るためと言われている。塩基 性スラグの存在はこの高分子構造を切断し、約 10mol%で 粘性値が平衡になる。粘性が高いスラグは、製錬時に溶鋼 との分離性が悪く扱い難いためにスラグ性能としては悪く なる。 ま た 、 今 回 実 用 さ れ る 炉 の 耐 熱 壁 が マ グ ネ サ イ ト ( MgO) を使用している。これは塩基性耐熱材であるために酸性ス ラグに対して、ケイ酸マグネシウムを作り易く、侵食が大 きい。 今回行う実験では、粘性、炉壁の侵食性について塩基度は 高いほどスラグとしての性能が良いと言える。そのため出 来るだけ塩基度を高くし、融点を低くし、さらに還元性が 良い条件を見つけることが課題である。 32 2 ,実 験 2−1原料 鋳造工程の型崩しの際に出る、再生不能となった劣化した 砂型用の砂(鋳造廃砂)を集塵ダストによって回収したダ ス ト を 使 用 す る 。 原 料 に は SiO2 が 99% 以 上 の 珪 砂 と オ ー ストラリア産クロマイト砂に加えてフラン樹脂が混在して いる。それぞれの元素組成を以下に示す。 珪 砂 ; SiO2 99.8% ク ロ マ イ ト ; SiO2 Al2O3 1.6% Al2O3 MgO 9.6% 珪砂の融点は 0.03% SiO2 の 融 点 FeO 13.1% Cr2O3 50.3% 21.8% 1700℃ で あ り 、 ク ロ マ イ ト は 2 0 0 0 ± 2 5 ℃ 、 軟 化 点 は 11 8 0 ∼ 1 4 0 0 ℃ で あ る 。 鋳造廃砂は、溶融炉に挿入する際に粉塵を発生させないよ うに有機系のバインダーによって直系 5c m 程 度 の ア ー モ ンド状に固形化した。 2−2塩基度の調整 塩基度の調整方法は以下の方法で実施した。 ② 原 料( 鋳 造 廃 砂 )中 の S i O 2 を 蛍 光 X 線 装 置 を 用 い て 測 定 し 、 元素濃度を定量した。 ③ 原 料 中 の S i O 2 濃 度 に 応 じ て 原 料 に 炭 酸 カ ル シ ウ ム( C a C O 3 ) を 混 入 し た 。塩 基 度( C a O / S i O 2 )は 重 量 比 で 0 . 2 、0 . 4 、0 . 6 、 0.8、 1.0、 1.2、 1.5、 2.0、 2.5、 3.0 に す る 。 ④ 遊 呈 型 ボ ー ル ミ ル に て 速 度 150rpm,10 分 間 ,4 往 復 拡 散 さ せ 、 試料中の濃度を均一にした。 33 2−3溶融度の評価 上 記 の 方 法 で 塩 基 度 調 整 し た 試 料 を 3 0 g 測 り 取 り 、カ ー ボ ン坩堝に入れ昇降式電気炉(型番等)内にて昇温した。昇 温 速 度 2 0 ℃ / m i n に お い て 1 2 0 0 ℃ 、1 3 0 0 ℃ 、1 4 0 0 ℃ 、1 5 0 0 ℃ 、 1550℃ 、1600℃ に て 溶 融 を 行 っ た 。融 解 し た 評 価 は 以 下 の 基準により決定した。 融解している。 ガラス状;試料の表面、断面上に融解前の状態に由来す る粒子が確認できない。 融解していない。 焼結;試料の表面、断面上に融解前の状態に由来する粒 子が確認できるが、ある程度(持ち上げても破損 しない)の強度を持っている。 粉体状;試料が粒子状に分散しており、熱処理前と同様 の形状をしている。 電 気 炉 に よ り 熱 処 理 を 施 し た 試 料 は 、カ ー ボ ン 坩 堝 の 真 上 か ら 写 真 を 撮 り 、融 解 し た 試 料 は ダ イ ヤ モ ン ド 切 断 機 で 坩 堝 上 部 よ り 垂 直 に 切 断 し 、 撮 影 を し た ( 図 4 - 1 )。 砂状 焼結状態 溶 融 していない ガラス状 溶 融 している 図 4-1; 融 解 評 価 基 準 34 2−4還元効果の影響 還 元 効 果 は ス ラ グ 層 を 蛍 光 Ⅹ 線 装 置( 株 )川 崎 化 学 3270E 型を用いて定量分析を行い評価とした。分析方法は(ビー ド法)を用いた。ビードの作成方法は以下に示す。 ① 試 料 は 0.4g に 対 し て ホ ウ 酸 リ チ ウ ム 5g を 混 ぜ る 。 ② Pt 坩 堝 中 に て 1200℃ で 融 解 し 、 ビ ー ド 状 成 型 す る 。 ③ 蛍 光 X 線 装 置 で 測 定 す る 。 測 定 法 ; SFP バ ル ク ま た 、溶 融 し た 試 料 を 切 断 し 、SEM− EDS に よ る 元 素 分 析 と金属とスラグ層の境界面において元素マッピングを行い、 還元効果を評価した。 35 3結果及び考察 3−1塩基度の調整 原料である鋳砂を蛍光 X 線装置にて元素測定をした。表記 は全て酸化物として求められ,主成分は鉄酸化物とクロム 酸 化 物 、珪 素 酸 化 物 で あ る 。原 料 中 に S i O 2 が 含 ま れ て い る た め 、 原 料 に 炭 酸 カ ル シ ウ ム ( CaCO3) を 混 入 し 、 塩 基 度 調整を行った。塩基度調整を行った試料では、全体量が増 え る 為 に 原 料 中 に 含 ま れ て い た 物 質 の 濃 度 が 図 4-2 の よ う に変化する。 60 CaO SiO2 50 含有率[wt%] Na2O 40 K2O 30 MgO Fe2O3 20 Al2O3 10 Cr2O3 0 ZrO2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 塩基度, CaO/SiO2[wt%] 図 4-2; 配 合 に よ る 各 酸 化 物 の 濃 度 変 化 36 3−2溶融度の評価 小 型 電 気 炉 を 用 い て 溶 融 し た 様 子 を 図 4-4 に 示 す 。 スラグの状態観察による結果は以下のようになった。 ・原 料( 塩 基 度 0 ) ; 1 3 0 0 ℃ で は 焼 結 状 態 に あ り 、1 4 0 0 ℃ では溶融層と焼結層が確認できた。 1500℃ 以 上 で 完 全 に 溶 融 し て い る 。 ・ 塩 基 度 0.2∼ 0.6; 1300℃ 以 上 で 完 全 に 融 解 を す る 。 ・ 塩 基 度 0.8∼ 1.2; 1400℃ 以 上 で 完 全 に 融 解 を す る 。 1.5; ・塩基度 1400℃ で は 上 部 は 融 解 を し て い た が 、 断面をみると上部の薄い層のみが溶解し ているだけで、あとは焼結状態である。 ・ 塩 基 度 2.0∼ 3.0; 融解はまったく確認できず、全て 砂状である。 塩 基 度 0.2 か ら 0.6 の 時 に 最 も 融 解 温 度 は 低 く な っ た 。 塩 基 度 1 . 5 か ら 溶 融 温 度 が 急 激 な 上 昇 を 始 め 、2 . 0 で は 今 回 の 溶 融 温 度 範 囲 1 6 0 0 ℃ で も 融 解 を し て い な い 。粘 性 や 炉 壁 の 耐食性は塩基度が高いほど良いことに比べ、酸化カルシウ ムを加えることで塩基度調整をした試料では酸性側の方が 溶融温度を低くする傾向を示した。 考察 溶 融 エ ネ ル ギ ー を ΔG と 定 義 す る 。 ⊿ G= ⊿ H− T⊿ S ここで、H はエンタルピー、T は温度、S はエントロピー である。 ま た 、気 体 を 微 小 な 熱 源 を 与 え た と き に 、圧 力 が P0 か ら P に変化するときの⊿S は ∆S = ∫ d 'q = T VdP p0 T ∫ p PV=nRT よ り dP P = nR ln P0 P P0 ∆S = nR ∫ P こ こ で 分 圧 p1 に 対 し て 、 モ ル 分 率 x1 と 全 圧 P が p1 = x1P が 成 り 立 つ 理 想 状 態 を 考 え 、 ま た 、 x1+x2+… +xn=1 で あ る 37 から、 ∆S = x1R ln P P P + x2 R ln +・・・+ xn R ln p1 p2 pn = − R( x1 ln x1 + x2 ln x2 +・・・+ xn ln xn ) この式を、分子間の相互作用エネルギーの変化や、分子の 大きさを無視して、原子の配列の項のみを考え、塩基度調 整による濃度変化を代入した。求めた塩基度調整による混 合 エ ン ト ロ ピ ー ⊿ S の 変 化 を 図 4 − 3 に 示 す 。高 い 温 度 で は ギブスの自由エネルギーはエントロピー項が大きく作用す る。グラフの Y 軸を逆にしたものと、今回観察した溶融温 度が非常に良く一致していることが分かる。これにより、 塩基度調整の溶融温度の変化は混合エントロピーの変化が 大きく作用していること推測される。また、ここで元素濃 度 の 最 も 大 き い S i O と C a O 間 に は 、塩 基 度 1 . 0 と 2 . 0 の 所 で CaSiO3 と Ca2SiO4 の 化 合 物 を 生 成 す る す る 。 特 に Ca2SiO4 は 安 定 で あ る た め 、 内 部 エ ネ ル ギ ー ⊿ E が 大 き く な る と 考 え ら れ 、 融 解 温 度 が 上 昇 し 、 塩 基 度 2.0 で は 融 解 し な か っ た 。 ま た 、 ⊿ E の 項 を 考 え る と 、 塩 基 度 0.0 で は 1500℃ で 完 全 に 融 解 を し て い た の に 対 し 、 塩 基 度 が 極 限 の 状 態 CaO の 融 点 は 2500℃ 付 近 で あ り 、 内 部 エ ネ ル ギ ー は 塩基度が増加するごとに上昇していると考えられる。その 影 響 に よ り 、融 解 温 度 が 0 . 2 ∼ 0 . 6 付 近 で 最 低 に な っ た と 考 えられる。 また、原子濃度のばらつきがもっとも少ない塩基度で融 点が低くなったことから、この成分では成分濃度比が少な いほど融点が下がることが分かる。 混合エントロピー,J/mol 13 図 4 - 3; 塩 基 度 調 整 に よ る 混 合 エ ン ト ロ ピ ーの変化 ( Si , Ca , Cr, Fe , Al, Mg[mol%]) 12.5 ⊿S 12 11.5 11 10.5 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 塩基度 1.4 1.6 1.8 2 38 温度(℃) 1600℃ 1550℃ 1500℃ 1400℃ 1300℃ 1200℃ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.5 2.0 塩基度 図 4-4;溶融性の評価 39 3−3還元性への影響 3 − 3 − 1 , S E M ―E D S 融 し た 試 料 の EDS に よ る マ ッ ピ ン グ 像 を 図 4-5 に ッピング部位はメタル層とスラグ層の境界面にて を見ると中央部分に還元操作によって生成された 存 在 し て い る 。メ タ ル 層 に は C r と F e の K αが 確 認 化物の生成自由エネルギー⊿F の小さい酸化物が て い る こ と が 分 か る 。 ま た 、 Si や Ca な ど の ⊿ F 元 素 の K αは ス ラ グ 層 側 か ら 検 出 さ れ て い る 。 このことから、還元された酸化物はメタル層に移 ため、スラグ層の濃度が低下している事が分かる。 実験では生成されるメタルはごく微量であり、濃度 困難である。そのためスラグ層を分析することによ タル層への移動を考察することを試みた。 溶 マ 図 が 酸 れ い 二次電子像 示 行 メ さ 還 が し っ タ れ 元 大 た。 た。 ル 、 さ き 動 今 測 り す 回 定 、 る の が メ O K α 40 Ca Kα Cr Kα Si Kα Fe Kα Mg K α Al Kα 図 4− 5; 還 元 操 作 後 の SEM-EDS マ ッ ピ ン グ 像 41 3− 3− 2 ス ラ グ 成 分 の 濃 度 分 析 25 1400℃ クロム濃度[wt%] 20 1500℃ 15 1550℃ 10 1600℃ 5 初期理論値 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 塩基度, CaO/SiO2[wt%] 図 4-6, ス ラ グ 層 の ク ロ ム 濃 度 の 変 化 蛍 光 X 線 装 置 を 用 い た 定 量 分 析 を 行 い 、ス ラ グ 中 の C r 2 O 3 濃 度 を 測 定 し た 。 そ の 結 果 を 図 4-6 に 示 す 。 原 料 の ク ロ ム 還 元 率 は 、1 4 0 0 ℃ ∼ 1 6 0 0 ℃ の 温 度 範 囲 に お い て 全 て 63% の ク ロ ム が 還 元 さ れ て い る 。 原 料 に お い て は 1400℃ の 温 度 域 で 還 元 が ほ ぼ 終 了 し て い る こ と が 分 か る 。 この温度域は融解温度と同じ温度域であり、融解と同時に クロムが還元され平衡に達している。 一 方 、 塩 基 度 調 整 を 施 し た 試 料 で は 、 1550℃ ま で の 温 度 範 囲においては原料よりも還元効率が低下している。塩基度 が 0 か ら 0.2 に な る 時 に 、 還 元 率 が 大 幅 に 低 下 し 、 塩 基 度 を増加させると配合によるクロム濃度低下に沿ってクロム 濃度が低下していく。この事から、カルシウムを添加する こ と に よ り 、ク ロ ム の 還 元 が 阻 害 さ れ て い る こ と が 分 か る 。 ま た 、 塩 基 度 を 0.2 以 上 に 操 作 し た 場 合 、 還 元 の 効 率 に は 42 大 度 ほ ウ い 度 ム り で さ と きな変化が見られず、ほぼ一定となっていた。溶融 が 1600℃ で は 塩 基 度 調 整 を し て も ク ロ ム 還 元 が 原 ぼ 変 わ ら な い 値 で あ っ た 。1 5 5 0 ℃ ∼ 1 6 0 0 ℃ の 間 で カ ム添加によるクロム還元の阻害が失われることを示 る。 塩 基 度 調 整 を 行 っ て も 、 1600℃ で 溶 融 す る 場 合 に は 調整していない試料とほぼ同じ濃度までスラグ中の 濃 度 を 低 下 す る こ と が 出 来 る 。 種 湯 に Fe を 使 用 し 、そ の 融 点 1538℃ 以 上 の 溶 融 温 度 が 必 要 な た め 、実 溶融する場合には塩基度調整をしても大きな影響を ない。また、粘性の低下による沈降速度の上昇を考 塩基度調整をすることの有利性は明白である。 の 料 ル し 温 と シ て 塩 ク て 用 及 え 基 ロ お 炉 ぼ る カルシウムが還元を阻害している理由の推察 炭 酸 カ ル シ ウ ム は 約 700℃ に お い て 脱 炭 酸 を 起 こ し 酸 化 カ ルシウムとなる。 CaCO3→ CaO+ CO2 炭 中 る が は 酸 に 。 高 電 ガスはこの時点で酸化カルシウムとな 融解しているカルシウムはすべて酸化 Ca は O と の 電 気 陰 性 度 の 差 が 大 き く いために錯イオンは形成されにくく、 離状態となっている。 CaO⇔ Ca2 塩 が し 高 基 知 て 分 度 ら く 子 + + O2 る カ 、 溶 の ル イ 融 で シ オ ス 、 ウ ン ラ ス ム 結 グ ラ で 合 中 グ あ 性 で − 0.0 の 酸 化 ケ イ 素 は 高 分 子 状 態 で 存 在 し て い る こ と れている。そこに、イオン結合性の強い分子が混入 るとシリコン分子が酸素を取り込もうとするため、 状態の分子鎖が切れ、錯イオンが形成される。 ―( O ―S i ―O ) ― + 2O2- → SiO44- また、クロム酸化物の場合では、酸化カルシウムほどイオ ン結合性が強くないが、二酸化珪素よりはイオン結合性が 大きいため、カルシウムが存在しない場合では、シリコン 43 原子がクロム酸化物から酸素を取り込もうとするため還元 方向に電位が働く。 Cr2 O3⇔ 2 Cr3 と シ る カ 酸 還 な リ の ル 素 元 る コ で シ が 反 + + 3 O2 − 。しかしながら、カルシウムが存在している場 ン原子はカルシウムから優先的に酸素を奪おう 、ク ロ ム 酸 化 物 へ の 還 元 電 位 が 働 か な く な る 。ま ウム酸化物の酸素が放出されることで、スラグ 飽和状態となることで酸化方向に電位が働くこ 応を阻害していると考えられる。 合 と た 中 と 、 す 、 の で、 蛍 光 X 線 装 置 に よ る Fe2O3 の 濃 度 変 化 を 図 4-7 に 示 す 。 14 1400℃ 10 1500℃ Fe濃度[wt%] 12 8 1550℃ 6 1600℃ 4 初期理論値 2 0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 塩基度[CaO/SiO2] 図 4-7; ス ラ グ 層 の 鉄 酸 化 物 の 濃 度 変 化 44 塩基度調整していない試料ではクロム酸化物とは違い、溶 融 と 同 時 に 還 元 が 平 衡 に 達 し て は お ら ず 、 1550℃ ま で 還 元 が進んでいた。クロム酸化物と同様に塩基度調整のために カルシウムを添加すると還元効率が低下をしており、その 後配合による濃度低下の曲線に沿って濃度が低下している。 クロム酸化物に比べると温度の影響を大きく受けており、 1550 ℃ で 塩 基 度 調 整 し て い る 物 と し て い な い 物 の 還 元 効 率 の 差 が な く な っ て い る 。 1600℃ で は 塩 基 度 調 整 し て い な い試料よりも大きく還元効率が増加していることが分かる。 これにより、塩基度調整することで還元反応を促進してい ることが示唆されている。理由としては、二酸化珪素の高 分 子 鎖 に 捉 え ら れ て い た 粒 子 が Ca の 添 加 に よ っ て 高 分 子 鎖が切れることで自由になり、マクロ的な粒子の移動速度 が上昇することで反応率を上昇されていると考えられる。 こ れ は 、ク ロ ム 酸 化 物 の 場 合 で も 当 て は ま る 可 能 性 が あ り 、 温度を上昇させることで塩基度調整の効果が謙虚に現れる と考えられる。 45 4まとめ 本 研 究 で は 、塩 基 度 調 整 を 行 っ た 時 の 溶 融 温 度 と 還 元 性 へ の 影 響 を 調 べ る た め に 、小 型 電 気 炉 を 用 い て 、簡 易 的 に 実 験 を 行 っ た。そこから得られた知見を以下にまとめた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 塩 塩 塩 塩 達 約 塩 ク 塩 い 鉄 調 温 能 粘 い 基 度 0.2∼ 0.6 で 溶 融 温 度 は 最 も 低 く 、 1300℃ で あ っ た 。 基 度 1.5 以 下 で あ れ ば 、 1600℃ 以 下 で も 溶 融 す る 。 基 度 2.0 の 試 料 は 1600℃ 以 下 で は 溶 融 し な い 。 基度調整をしていない試料は溶融と同時に還元が平衡に し て 、 1600℃ ま で 変 化 し な い 。 ク ロ ム 酸 化 物 の 含 有 量 は 6wt%に な る 。 基 度 調 整 を 施 し た 試 料 は 1500℃ 以 下 で 鉄 、 1550℃ 以 下 で ロム還元率を低下させる。 基 度 調 整 し た 試 料 の ク ロ ム 酸 化 物 は 溶 融 温 度 1600℃ に お て高い還元率を示す。 酸 化 物 は 1600℃ 以 上 で 塩 基 度 調 整 し た 試 料 の 方 が 塩 基 度 整していない試料よりも還元効率がよくなる。 度 が 高 い ほ ど 、塩 基 度 調 整 の 還 元 性 へ の 影 響 は 良 く な る 可 性がある。 性 や 耐 火 物 の 侵 食 を 考 慮 す る と 塩 基 度 1.5 が 最 も 望 ま し 。 参考文献 横 セ 山 松 丸 金 式 改 社 改 社 川 ン 口 下 善 属 会 訂 , 訂 , 敏夫:高温融体の化学,長崎誠三編,株式会社 アグネ技術 タ ー , 1998 一 良:航 路 を 支 え た 操 業 技 術 と 原 燃 料 ,東 北 大 学 出 版 会 ,2 0 0 1 幸雄 盛利貞 不破裕 館充 森一美 瀬川清:治金物理学, 株 式 会 社 , 1970 工 学 講 座 2, 治 金 物 理 化 学 と 製 錬 基 礎 論 , 橋 口 隆 吉 他 編 , 株 社 朝 倉 書 店 , 1960 4 版 鋳物便覧,社団法人 日本鋳物協会 編,丸善株式会 1986 5 版 金属便覧,社団法人 日本金属協会 編,丸善株式会 1990 46 第 5 章 今 環 二 れ や る 解 回 境 つ 、 ア 。 決 結言 の研究では、塩化 汚染物質を除去す の研究を行った。 CaClOH に 固 定 化 ルミニウムによっ この二つの還元反 策を提案できた。 水 る 塩 す て 応 素 た 化 る 、 を と め 水 。 還 用 ク に 素 ま 元 い ロ 、 は た を て ム 還 酸 、 引 今 酸 元 化 酸 き 回 化 反 カ 化 起 課 物 応 ル ク こ 題 と を シ ロ さ と い 用 ウ ム れ し う い ム ( て て 全 る に Ⅲ 金 い く 点 よ ) 属 た 違 で っ は ク 環 う 共 て カ ロ 境 二 通 還 ー ム 問 つ し 元 ボ に 題 の た さ ン な の 第一章では、研究全体の背景と目的をまとめた。 第二章では、塩化水素除去材の開発とその性能の評価を行 った。そこから得られた知見を以下にまとめる。 ・ 石 灰 を 木 炭 中 に 担 持 さ せ る た め に 、Ca 溶 液 を 木 材 に含浸させる方法を選択した。 ・木材中に含浸させるカルシウム化合物は、有機系 カルシウム塩の酢酸カルシウムが最適である。 ・カルシウム溶液の濃度を変化させることで、除去 材中に担持される石灰の量をコントロールできる ・ 炭 化 温 度 700℃ ∼ 800℃ に お い て 、 BET 比 表 面 積 が 200m2/g を 上 回 っ た 。 ・ 炭 化 温 度 8 0 0 ℃ ∼ 9 0 0 ℃ に お い て 、活 性 の 高 い カ ル シウム化合物(消石灰、生石灰)が得られ、酸性 ガスの化学吸着性能が期待される。 ・ 炭 化 温 度 900℃ の 試 料 に お い て 、 最 も 高 い 塩 化 水 素吸着性能がある。 ・ 実 際 に 使 用 さ れ る 際 に 想 定 さ れ る 温 度 200℃ に お いて、試薬の消石灰よりも高い吸着性能がある。 ・除去材中のカルシウム化合物は塩化水素と化学反 応 を 起 こ し 、 CaClOH に な り 、 6 ヶ 月 後 で も 塩 素 を固定化している。 第三章では、現在、産学官の共同で行われている鋳造廃砂 中クロム酸化物の除去についての研究概要を説明した。現 在 ま で に 、 ス ラ グ 中 の ク ロ ム 酸 化 物 の 濃 度 を 約 4wt %に ま 47 で低下させることに成功しており、還元技術プロセスを確 立していく段階である。しかし、さらに細かい条件の設定 や操業技術の確立が求められている。 第 性 壁 に 知 四章では塩基度調整を行うことでスラグの溶融性と還元 への影響を検討した。塩基度調整は金属との分離性や炉 の侵食性を考慮すると必要である。そこで、それら以外 与える影響を実験によって検証した。そこから得られた 見を以下にまとめる。 ・ 塩 基 度 0.2∼ 0.6 で 溶 融 温 度 は 最 も 低 く 、 1300℃ で あ った。 ・ 塩 基 度 1.5 以 下 で あ れ ば 、 1600℃ 以 下 で も 溶 融 す る 。 ・ 塩 基 度 2.0 の 試 料 は 1600℃ 以 下 で は 溶 融 し な い 。 ・塩基度調整をしていない試料は溶融と同時に還元が 平 衡 に 達 し て 、1600℃ ま で 変 化 し な い 。ク ロ ム 酸 化 物 の 含 有 量 は 約 6wt%に な る 。 ・ 塩 基 度 調 整 を 施 し た 試 料 は 1500℃ 以 下 で 鉄 、 1550℃ 以下でクロム還元率を低下させる。 ・塩 基 度 調 整 し た 試 料 の ク ロ ム 酸 化 物 は 溶 融 温 度 1 6 0 0 ℃ においてとほぼ同じ還元効率をしめした。 ・鉄 酸 化 物 は 1600℃ 以 上 で 塩 基 度 調 整 し た 試 料 の 還 元 効 率は上昇する。 ・ 粘 性 や 耐 火 物 の 侵 食 を 考 慮 す る と 塩 基 度 1.5 が 最 も 望 ましい。 48 謝辞 本 賜り シス ます 研究を遂行するにあたり、熱心な御指導、御鞭撻を 、多くのことを教えて頂いた高知工科大学物質環境 テム工学科 坂輪光弘教授に心よりお礼を申し上げ 。 本研究を遂行するにあたり、終始一貫して暖かい御指 導、御鞭撻を賜りました高知県工業技術センター、資源 環境部主任研究員の河野敏夫氏に厚くお礼を申し上げま す。 さ 員 場 主 本 り の 長 任 研 ま 真 の の 究 し 鍋 土 岡 の た 豊 居 村 遂 高 士 康 敏 行 知 氏 純 之 に 県 、 氏 氏 あ 工 株 、 に た 業 式 株 深 り 技 会 式 く 、 術 社 会 感 貴 セ 特 社 謝 重 ン 殊 特 を な タ 製 殊 申 ご ー 鋼 製 し 指 材 所 鋼 上 示、ご 料技術 常務 所 品 げます 助 部 取 質 。 言 主 締 管 をくだ 任研究 役 工 理課 本研究を進めるにあたって、ご助言いただきました福 富兀教授 谷脇雅文教授にお礼を申し上げます。 最後に、多くのことを教えて頂いた豊田勇樹君、山崎 和紀君、野中重太郎君、また物質環境システム工学コー スの皆様方にお礼を申し上げます。 49