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大学生の購買行動および購買後評価における製品関与

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大学生の購買行動および購買後評価における製品関与
大学生の購買行動および購買後評価における製品関与の影響
金田宗久
(愛知学院大学心身科学部)
キーワード:購買行動,購買後評価,製品関与
The influence of product involvements on purchase behaviors and post evaluations among college students.
Munehisa KANEDA
(Faculty of Psychological and Physical Science, Aichi Gakuin University)
Key Words: purchase behaviors, post-purchase evaluations, product involvement
目 的
消費者の意思決定に関する Engel-Blackwell-Miniard (EBM)
モデルによれば,欲求認識の後,情報探索,購買前代案評価,
購買,消費,購買後代案評価,結果(満足/不満足,処分)
という購買過程が想定され,それぞれの段階における環境要
因や個人差要因の影響について検討されている(杉本,1997)。
このような購買過程に影響を及ぼす一つの個人差要因として
関与(involvement)があり,その一つとして,対象としてい
る製品に対する関心の度合いとして関与を捉える製品関与が
ある(青木,1987;青木,1988;清水,1999)。小嶋・杉本・
永野(1984)は,製品関与を「消費者の目標志向的な動機的
状態あるいはその結果としての状態」とし,感情的関与,認
知的関与,ブランドコミットメントの 3 つの下位尺度から製
品関与を捉えている。本研究では,製品関連情報に対する認
知的関与が,製品情報の探索や購買後の満足度,製品評価に
及ぼす影響について検討することを目的とする。また,本研
究では研究者があらかじめ決めた特定の製品ではなく,調査
参加者のこれまでの購買経験において「買ってよかった製品」
と「買わなければよかった製品」を想起させ,それぞれの製
品について上記の点を検討していく。
方 法
調査参加者および手続き 大学生 170 名(男性 83 名,女性
87 名)
。平均年齢は 20.36 歳(SD = 1.21)だった。分析では,
回答に不備のあった者を除いた 162 名を対象とした。調査は
2013 年 12 月に授業時間を用いて実施された。参加者には「購
買行動に関するアンケート」と題した質問紙に各自のペース
で回答することを求めた。回答にあたり参加者には,これま
での購買経験において買ってよかったと思った製品(以下,
「good 製品」)と買わなければよかったと思った製品(以下,
「bad 製品」
)を一つずつ思い浮かべてもらった。
質問紙 はじめに,想起された製品の(a)品名および品目,
(b)購入金額,
(c)購入時期,(d)
「買ってよかった」また
は「買わなければよかった」と思ったエピソードについて自
由記述による回答を求めた。つづいて,想起された製品に対
する今の印象としての(a)満足度,
(b)後悔の程度,
(c)製
品価値,そして,購入時における(d)情報収集の程度,(e)
類似品比較の程度を 7 件法で求めた。最後に「製品関与尺度
(小嶋ら,1984)
」の認知的関与尺度(6 項目/7 件法)への
回答を求めた。
結果と考察
操作チェック good 製品と bad 製品に対する満足度および後
悔の程度について,中点との差を検討するため 1 サンプルの
t 検定を行なった。その結果,good 製品に対しては有意にポ
ジティブな評定(ts (161) ≧ 39.47,ps < .001)
,bad 製品に対
しては有意にネガティブな評定(ts (161) ≧ 18.43,ps < .001)
をしていたことが確認された。
想起された製品の特徴 good 製品,bad 製品いずれにおい
てもファッションや化粧品が多く想起されていた(good 製
品:47.2%,bad 製品:54.3%)。このほかには,趣味や娯楽
に関連した製品がいずれも 20%程度の人が想起されていた
(good 製品:21.7%,bad 製品:22.8%)
。
認知的関与得点 想起された製品ごとに認知的関与尺度 6
項目のクローンバックの α 係数を求めたところ,いずれも高
い信頼性が確認されたため,合計得点を算出し認知的関与得
点とした(good 製品: α = .800,M = 25.95,Mdn = 26.50,SD
= 7.86;bad 製品: α = .839,M = 19.50,Mdn = 19.00,SD = 7.90)
。
そして,各製品に対する認知的関与得点の中央値を基準とし,
認知的関与の高群と低群とに参加者を群分けした。想起され
た製品に対する満足度,後悔,価値判断,情報収集,類似品
比較のそれぞれについて認知的関与の程度による t 検定を
行なった(Table 1)
。その結果,満足度と後悔の程度において
は認知的関与の高群と低群に有意な差はみられなかった。し
かしながら,製品の価値,情報収集や類似品比較の程度につ
いては,認知的関与の高群と低群に有意な差がみられ,good
製品と bad 製品において認知的関与・高群の参加者は低群の
者に比べて,購入した製品に対する価値を高く評価し,さら
に製品に関する情報の収集や類似品比較の程度が高かった。
本調査の結果,製品関与の一側面である認知的関与が情報
検索の頻度だけでなく,購買後の製品に対する価値判断にも
影響していることが示唆された。
Table 1
認知的関与の程度による評定値の比較(上段:買ってよか
った製品,下段:買わなければよかった製品)
買ってよかった製品
満足度
後悔
価値
情報収集
類似品比較
認知的関与
低群(n = 81)
認知的関与
高群(n = 81)
6.62 (0.51)
1.41 (0.78)
5.85 (1.18)
3.65 (1.93)
4.36 (1.79)
6.64 (0.93)
1.33 (0.92)
6.47 (0.73)
5.10 (1.89)
5.46 (1.70)
ns
ns
****
****
****
買わなければよかった製品
満足度
後悔
価値
情報収集
類似品比較
認知的関与
低群(n = 84)
認知的関与
高群(n = 78)
2.25 (1.36)
5.32 (1.71)
2.67 (1.54)
2.18 (1.47)
2.98 (1.80)
2.23 (1.04)
5.65 (1.39)
3.37 (1.48)
3.26 (1.92)
4.04 (1.83)
ns
ns
***
****
****
Note: カッコ内は標準偏差を示す。*** p < .005, **** p < .001
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