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第2章(時代潮流)

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第2章(時代潮流)
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
第2章
1
時代潮流と鹿児島の主な特性
時代潮流
❶ 少子高齢化や人口減少の進行
我が国においては,1970 年に 2.13 であった合計特殊出生率1が,晩婚化や未婚率の上昇などの
影響を受け,人口の維持に必要な水準を過去 30 年間下回り続け,2005 年には 1.26 と過去最低となっ
ています。
この長期的な少子化の影響を受けて,同年の出生数は死亡数を下回る水準となり,我が国の総
人口は,2004 年の約1億 2,800 万人をピークに戦後初の減少に転じ,人口減少社会が現実のもの
となりました。
今後も少子化の影響が一層深刻化し,国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると 2035
年までの 30 年間に約 1,709 万人が減少し,50 年後の 2055 年の総人口は 9,000 万人を割り込むと
予測されています。
また,65 歳以上人口の総人口に占める割合は,2005 年の 20.1%から 2035 年には 33.7%に,65
歳以上の一人に対する 15 ~ 64 歳(生産年齢人口)の人数は,2005 年の 3.3 人から 2035 年には 1.7
人になると予測されています。
本県においては,2006 年の合計特殊出生率は,全国の 1.32 を上回る 1.51 であるものの,長期
的な出生数の減少及び県外への転出者の影響により,県人口は 1985 年の約 181 万9千人から一貫
して減少を続け,2006 年には約 174 万3千人となっています。さらに今後も急速な人口減少が続き,
2035 年までの今後 30 年間に約 35 万4千人減少(約2割の減少)し,約 138 万9千人となると予
測されています。
65 歳以上の人口の県人口に占める割合は,2005 年に 24.8%と全国第6位で,全国水準より 10
年先行して高齢化が進んでおり,2035 年には 35.9%に,また,65 歳以上の一人に対する 15 ~ 64
歳(生産年齢人口)の人数は,2005 年の 2.5 人から 2035 年には 1.5 人となることが予測されてお
り,全国に比べ少子高齢化の影響は一段と大きいものになることが予想されます。
このような少子高齢化や人口減少の進行により,労働力人口の減少に伴う経済活力の減退や年
金・医療等の社会保障制度の持続可能性への対応,さらには,集落の維持が困難となるいわゆる「限
界集落2」への対応など,我が国の社会・経済システムの再構築が求められています。
合計特殊出生率:15 歳から 49 歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので,一人の女子が一生の
間に産む子どもの数を表す。
2 限界集落:65 歳以上の高齢者が,人口比率で住民の 50%を超え,冠婚葬祭など共同体としての機能が
衰え,やがて消滅に向かうことが懸念されている集落。
1
2
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
合計特殊出生率の推移【鹿児島県・全国】
40,
000
35,
000
出生数 ︵人︶
30,
000
3.
0
2.
5
2.
0
25,
000
20,
000
1.
5
15,
000
1.
0
10,
000
0.
5
5,
000
0
0.0
1960 1970 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006(年)
出生数【鹿児島県】
37,821 24,311 24,540 23,275 18,892 16,649 16,272 14,834 15,080
合計特殊出生率【鹿児島県】 2.66
2.21
1.95
1.92
1.73
1.62
1.58
1.49
1.51
合計特殊出生率【全国】
2.00
2.13
1.75
1.76
1.54
1.42
1.36
1.26
1.32
資料:厚生労働省「人口動態統計」
総人口の推移及び将来推計【全国】
全国
将来推計
(万人)
14,
000
77712,
55712,
543
12,
10512,
11,
927
11,
194
11,
068
10,
044
9,
828
12,
000
10,
000
8,
993
8,
928
8,
000
6,
000
4,
000
2,
000
0
1955 1965 1975 1985 1995 2005 2015 2025 2035 2045 2055(年)
資料:総務省「国勢調査」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
人口の年齢構成の見通し【全国】
(%)
100
将来推計
5.3
6.
3
7.
9
10.
3
14.
5
20.
1
26.
9
80
60
61.
2
68.
0
67.
7
68.2
69.
4
65.
8
40
20
65歳∼
15歳∼64歳
0歳∼14歳
0
33.
4
1955
25.
7
24.
3
21.
5
1965
1975
1985 1995
15.
9
13.
7
61.
2
30.
5
33.
7
59.
5
56.
8
38.
2
40.
5
52.
8
51.
1
11.
8
10.
0
9.
5
9.
0
8.
4
2005 2015
2025
2035
2045
2055(年)
注)四捨五入による算出及び年齢不詳者の存在により合計が100%とならない場合がある。
資料:総務省「国勢調査」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
3
合計特殊出生率
出生数【鹿児島県】
合計特殊出生率【鹿児島県】
合計特殊出生率【全国】
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
総人口の推移及び将来推計【鹿児島県】
鹿児島
(千人)
1,
800
2,
044
1,
854
1,
819
1,794
1,
753
将来推計
1,
724
1,
656
1,
600
1,
529
1,
389
1,
400
1,
200
1,
000
1955
1965
1975
1985
1995
2005
2015
2025
2035(年)
資料:総務省「国勢調査」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」
人口の年齢構成の見通し【鹿児島県】
(%)
100
将来推計
6.
2
8.
5
11.
5
14.
2
19.
7
24.
8
28.
9
60.
8
58.
4
80
60
56.
8
59.
5
64.
7
64.
2
62.
4
40
20
65歳~
15歳~64歳
0歳~14歳
0
37.
0
1955
32.
1
1965
33.
8
35.
9
54.
8
53.
5
23.
8
21.
6
17.
8
14.
4
12.
6
11.
4
10.
6
1975
1985
1995
2005
2015
2025
2035(年)
注)四捨五入による算出及び年齢不詳者の存在により合計が100%とならない場合がある。
資料:総務省「国勢調査」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」
❷ 経済情勢と産業構造の変化
情報通信技術の飛躍的な進歩と国際間の輸送・交通手段の高速化・広域化により,資本・労働・
情報等が国家を超えて自由に,また,活発に移動するグローバル化が進展しており,著しい経済
成長を遂げる BRICs 1や VISTA 2と呼ばれる新興国も出現しています。
中でも,東アジア3の国々,とりわけ中国においては,沿岸部を中心に,豊富な労働力を背景と
する工業化や海外からの多額の投資をもとにした都市化が進むなど,将来的には世界屈指の経済
大国になることが予想されており,世界経済は,北米,EU4にアジアを加えた三極構造へ移行し
つつあります。
BRICs:経済発展が著しいブラジル(Brazil),ロシア(Russia),インド(India),中国(China)
の頭文字を組み合わせた造語。
2 VISTA:有力新興国であるベトナム
(Vietnam),インドネシア(Indonesia),南アフリカ共和国(South
Africa),トルコ(Turkey),アルゼンチン(Argentina)の頭文字を組み合わせた造語。
3 東アジア:ここでは,日本,中国,韓国の3か国とASEAN(東南アジア諸国連合)10 か国を含む
地域を指す。
4 EU:European Union の略。欧州連合。加盟国数は 27 か国(2007 年1月1日現在)
。
1
4
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
グローバル化の影響は,我が国の第一次産業や第三次産業でも見られ,近年交渉が進められて
いる自由貿易協定(FTA)1 や経済連携協定(EPA)2 の拡大は,農林水産物の関税撤廃やサービス
分野における外国人労働者の受入れの問題などを含んでおり,本県においても基幹産業である農
業分野をはじめ地域経済への影響が懸念されています。
今後,グローバル化の一層の進展が予想される中,本県の産業・経済の振興のためには,大き
な発展可能性を秘めている東アジアの動向に留意しながら,産業,観光,文化などの各分野にお
いて,これらの地域との戦略的な連携・協力関係を構築することが求められています。
我が国の経済は,バブル経済崩壊後の長い低迷から脱却し,2002 年以降,息の長い景気回復が
続いているものの,今後,中長期的には低成長社会が続くことが予想されています。
経済のグローバル化に伴う国境を越えた地域間や企業間の競争の激化は,国内における産業の
立地や景気回復の度合いにも影響を与え,地域間格差や所得格差の拡大を招いています。また,
一部海外から国内に生産拠点を回帰させる動きがみられるものの,製造業の海外移転などを中心
とした国内産業の空洞化や,第二次産業の衰退なども懸念されています。
今後,科学技術や情報技術等が高度に進展し,付加価値の高い新製品の開発,研究の促進,
ICT 3 関連産業の展開により我が国の産業構造は大きく変化していくものと考えられており,こ
のような中,異業種・異分野間の交流促進や産学官連携の強化,技術力の向上,人材育成に努め
るなど,本県経済の基盤強化が求められています。
世界のGDPの国・地域別割合(2006年)
中南米
6.1%
ロシア
2.0%
その他
11.1%
EU27
29.8%
県内総生産(名目)の推移
(億円)
60,
000
アジア
(日本含)
21.3%
世界のGDP
48兆2,
449億
ドル
米国
27.4%
50,
000
40,
000
55,
113
50,
459
53,
717 52,
575
054 53,
870 52,
906 53,
44,
471
34,
401
30,
000
20,
000
10,
000
カナダ 2.6%
資料:外務省「主要経済指標」
0
1985 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 (年度)
注)1995年度以前と2000年度以降は推計体系が異なるため,単純比較はできない。
資料:県企画部「県民経済計算」
自由貿易協定(FTA)
:Free Trade Agreement の略。特定の国や地域が貿易を活発にするために
関税を撤廃したり,お互いの制度を調和させたりする取決めのこと。投資やサービス,知的財産権,
紛争解決など幅広い分野での取決めが盛り込まれている例が多い。
2 経済連携協定(EPA)
:Economic Partnership Agreement の略。特定の二国間又は複数国間にお
いて,域内のヒト,モノ,カネの移動の自由化,円滑化を図るため,国内の規制の撤廃等,幅広い
経済関係の強化を目的とする協定。
3 ICT:Information and Communication Technology の略。情報通信技術の総称。
1
5
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
1人当たり県民所得と対全国格差の推移
(千円)
3,
000
2,
983
2,
819
2,
159
2,
230
2,
066
2,
000
1,
617
1,
000
2,
929
2,
840
2,
336
79.
7%
74.
9%
2,
791
2,
253
79.
3%
2,
804
2,
223
79.
6%
1人当たり国民所得
1人当たり県民所得
対全国格差
(%)
2,
878
90
2,
841
2,
212
78.
9%
2,
272
2,
218
78.
1%
79.
0%
74.
8%
1985
1990
1995
80
75
73.
3%
0
85
2000
2001
2002
2003
2004
70
2005(年度)
注)1995年度以前と2000年度以降は推計体系が異なるため,単純比較はできない。
資料:県企画部「県民経済計算」
アジアの経済概況
ロシア
6.7%
9,849億ドル
6,877ドル
1億4,322万人
韓 国
5.0%
8,880億ドル
18,481ドル
4,805万人
中 国
11.1%
2兆6,447億ドル
2,017ドル
13億1,448万人
香 港
6.9%
1,898億ドル
27,135ドル
686万人
インド
9.4%
8,262億ドル
717ドル
11億5,175万人
ソウル750km
大阪580km
上海860km
台北1,130km
ベトナム
8.2%
609億ドル
723ドル
8,312万人
バンコク
3,650km
マレーシア
5.9%
1,489億ドル
5,702ドル
2,664万人
シンガポール
7.9%
1,322億ドル
29,474ドル
448万人
シンガポール
4,380km
東京960km
鹿児島
香港1,900km
タ イ
5.0%
2,063億ドル
3,284ドル
6,283万人
2000km
1000km
マニラ
2,120km
台 湾
4.9%
3,655億ドル
16,030ドル
2,288万人
フィリピン
5.4%
1,176億ドル
1,363ドル
8,626万人
日 本
1.3%
4兆3,757億ドル
34,247ドル
1億2,777万人
【凡 例】
(上から)
国 名
経済成長率
(2006年)
名目GDP総額
(2006年)
1人当たりのGDP(2006年)
人口
(2006年)
※矢印は主要都市までの直線距離
(太線は国際定期航空路線
(予定含む)
)
インドネシア
5.5%
3,645億ドル
1,592ドル
2億2,886万人
資料:内閣府「世界経済の潮流」
(ただし,ベトナムについてはJETRO Webページ『海外のビジネス情報 国地域別情報』)
6
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
県内総生産(名目)の経済活動構成比
民間非営利
農業 3.8%
農林水産業計:4.
5%
林業 0.2%
サービス生産者
水産業 0.5%
2.6%
鉱業 0.3%
政府サービス生産者
製造業
13.7%
12.3%
建設業
6.2%
2005年度(名目)
電気・ガス・水道業
県内総生産額
サービス業
3.2%
5兆3,575億円
21.4%
卸売・小売業
11.3%
金融・保険業
運輸・通信業
不動産業
5.7%
8.4%
10.4%
注)構成比は帰属利子等控除前の県内総生産を100%として算出。
産業区分別県内総生産(名目)の構成比
【鹿児島県・全国】
1985年度
第一次産業
第二次産業
鹿児島県 8.
4% 22.
9%
第三次産業
68.
7%
全国 3.
1% 35.
1%
61.
8%
2005年度
鹿児島県 4.
5%18.
8%
76.
7%
全国 1.
4%26.
4%
72.
2%
注1)構成比は帰属利子等控除前の県内総生産を100%として算出。
2)全国値は暦年表示。
資料:県企画部「県民経済計算」
資料:内閣府「国民経済計算年報」,県企画部「県民経済計算」
❸ 地球規模での環境問題
世界的規模での人口増加,経済成長に伴う産業活動の拡大や生活水準の上昇は,エネルギー消
費量の増大による地球温暖化,オゾン層1の破壊,生態系の変化といった一国では解決できない地
球規模での深刻な環境問題を引き起こしています。
地球温暖化については,主に石油などの化石燃料の大量消費により排出された二酸化炭素をは
じめとする温室効果ガス2の影響とされており,大気中の二酸化炭素濃度は産業革命前の約 1.4 倍
に増え,毎年排出される二酸化炭素の量は,自然が年間に吸収できる量の2倍以上の規模となっ
ています。
これまで大半の温室効果ガスは,日本をはじめとする先進国から排出されていましたが,今後
は経済発展に伴う生活水準の向上,モータリゼーション3の進展等が見込まれる中国,インド等の
開発途上国の排出量が急増し,世界全体の 2030 年のエネルギー消費量は 2002 年の約 1.6 倍となり,
その増加量は日本の消費量の約 12 倍に相当する量になると予測されています。
我が国は,米国,中国,ロシアに次ぐ温室効果ガスの排出国となっており,京都議定書4に基づ
き温室効果ガスの 1990 年比6%削減に向けた取組が進められているものの,2006 年度(速報値)
は 1990 年比 6.4%増となっており,一層の削減が求められています。
温暖化により,地球の平均気温は,1906 年から 2005 年の 100 年間で 0.74℃上昇し,特に最近
50 年間は過去 100 年間の約2倍のペースで上昇しており,また,20 世紀を通じた平均海面水位は
約 17cm 上昇しています。
今後,化石燃料に依存した社会が続くと,21 世紀末には平均気温が約 4.0℃上昇し,平均海面
オゾン層:大気の成層圏の中で,地上から 10 ~ 50 キロにあるオゾン濃度の比較的高い層。生物に有
害な紫外線を吸収する働きがある。
2 温室効果ガス:地表の暖まった熱を吸収して,温室のガラスのように大気中に閉じ込め,地球を暖め
る性質を持ったガスのことで,二酸化炭素・フロン・メタン・一酸化二窒素など。
3 モータリゼーション:自動車の大衆化現象。
4 京都議定書:1997 年 12 月に京都で開催された気候変動枠組条約第 3 回締約国会議(COP3)におい
て採択された議定書。先進各国の温室効果ガスの排出量について法的拘束力のある数値目標が決定
されるとともに,排出量取引などの新たな仕組みが合意された。2005 年 2 月発効。
1
7
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
水位は 26㎝~ 59㎝上昇するとの予測なども示されており,世界的な気候変動により,異常高温や
集中豪雨といった異常気象の増加や生態系の変化が懸念されています。
本県は,亜熱帯域から温帯域にかけて南北 600km に及ぶ広大な県土とともに,豊かな自然や多
様な生態系を有していますが,温暖化の進展に伴う気候変動は,植生の変化や病害虫の発生,海
水温の上昇などに伴う農林水産業への悪影響や,台風の大型化などによる風水害の発生といった
県民生活に直結する影響も懸念されます。
こうした温暖化をはじめとする地球規模での環境問題については,大量生産・大量消費・大量
廃棄という経済社会活動やライフスタイルを転換し,省資源・省エネルギーに配慮した循環型社
会の形成に向けた取組を進めるとともに,環境保全と経済発展がバランスよく両立する国際的な
取組を通じて,環境への負荷の少ない持続可能な社会を実現していくことが求められています。
地球温暖化のメカニズム
温室効果ガス濃度が
産業革命以前の水準
世界の二酸化炭素排出量(国別排出割合)
温室効果ガス濃度の上昇
アメリカ
21.4%
その他
25.6%
インドネシア
1.3%
オーストラリア
1.4%
メキシコ 1.4%
韓国 1.7%
カナダ 2.0%
インド 4.2%
平均気温 14℃前後
気温の上昇
日本 4.5%
2005年
約271億トン
二酸化炭素(CO2)
換算
ロシア
5.7%
中国
18.8%
EU15か国*
12.0%
資料:環境省
ドイツ 3.
0%
イギリ 2.
0%
イタリア 1.
7%
フランス 1.
4%
その他 3.
9%
*EU15か国は,京都会議開催時点での加盟国数
資料:IEA「CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION」2007 EDITION,環境省
世界の年平均地上気温の平年差の経年変化(1891~2007年)
+1.
0
世界の年平均地上気温の平年差
+0.
5
平年差︵℃︶
0.
0
−0.
5
−1.
0
1890 1900 1910 19201930 1940 1950 1960 1970 1980 19902000 2010(年)
棒グラフ:各年の平均気温の平年値との差
折 れ 線:平年差の5年移動平均
直 線:長期的な変化傾向
平 年 値:1971∼2000年の30年平均値
資料:気象庁
8
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
❹ 高度情報化の進展
我が国の情報通信事情は,インターネットの急速な普及,ADSL1や光ファイバ2等によるブ
ロードバンド3化,携帯電話に代表されるモバイル4化,放送のデジタル化,デジタル・コンテン
ツ5産業の発達など,今世紀に入ってから劇的に進展しています。情報通信産業の 2005 年の名目
生産額6は,国内生産額の約1割を占める約 93 兆円で全産業の中で最大規模の産業に成長し,ま
た 2006 年の企業間電子商取引規模は 148 兆円,消費者向け電子商取引規模は 4.4 兆円に達してい
ます。
我が国のインターネット人口普及率は 2006 年で 68.5%,利用者数は 8,754 万人に上る中,高速
で定額の情報通信サービスを提供するブロードバンド契約数は 2,644 万件で世帯普及率が 51.7%,
ブロードバンド世帯カバー率(全国の総世帯数に占めるブロードバンド利用可能世帯数の割合)
は 95%と,世界的にも最も低廉で高速なブロードバンド環境の水準に達しています。
また,企業,既存メディア等からの一方向型の情報伝達サービスに加えて,ブログ7,SNS8,
口コミサイト等の消費者発信型のサービスがここ数年で急速に普及しつつあり,情報発信を行う
主体の裾野が拡大しています。
一方,本県の 2007 年 12 月末のブロードバンド契約数は 23 万件ですが,世帯普及率は 29.7%,
ブロードバンド世帯カバー率は 85.0%でそれぞれ全国最下位となっており,全国との格差が大き
い現状であることから,情報基盤の整備や高度情報化への対応が必要です。
今後,「いつでも,どこでも,何でも,誰でもネットワークにつながる社会」,いわゆるユビキ
タスネット社会9の実現が期待されています。企業・産業分野のみならず個人・世帯等の社会生活
領域にまで情報通信ネットワークが深く浸透する中,利用される多種多様な情報・知識が経済成
長の源泉となる本格的な「情報・知識の時代」の到来が予想されています。
ADSL:Asymmetric Digital Subscriber Line の略。非対称デジタル加入者線。電話線の回線を使
い高速のデータ通信を行う技術。
2 光ファイバ:ガラスやプラスチックの細い繊維でできている,光を通すケーブル。数 10 ~最大 100
Mbps 程度の超高速インターネット通信が可能。
3 ブロードバンド:高速・超高速通信を可能とする回線。
4 モバイル:小型・軽量化,高性能化された携帯性のある情報通信機器やコンピュータなどの端末機器。
5 デジタル・コンテンツ:インターネットなどの情報サービスにおいて,提供される文書・音声・映像・
ゲームソフトなどの個々の情報のこと。
6 名目生産額:物価変動の影響を加味せず,市場価値で評価した生産額。
7 ブログ:ウェブログ(Weblog)の略。個人や数人のグループで運営され,日々更新される日記的な
Web サイトの総称。
8 SNS:Social Networking Service の略。人と人のつながりを促進サポートする,コミュニティ
型 Web サイト。
9 ユビキタスネット社会:社会の至る場所に整備されたネットワークの中で,あらゆるモノにコンピュー
タを埋め込み,それらが互いに自律的な通信を行うことによって生活や経済が円滑に進む社会。
1
9
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
インターネット利用者数及び普及率の推移【全国】
(万人)
10,
000
66.
8
インターネット利用者数
9,
000
60.
6
人口普及率
7,
000
60
50
44.
0
6,
000
37.
1
40
5,
000
4,
000
21.
4
3,
000
1,
000
-
13.
4
9.
2
1,
155
1.
694
(%)
70
62.
3
54.
5
8,
000
2,
000
68.
5
6,
942
4,
708
948
7,
730 7,
754 30
8,
529 8,
20
5,
593
10
2,
706
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006(年)
資料:総務省「通信利用動向調査(世帯編)」
ブロードバンド契約者数の推移【全国】
(万契約)
3,
000
2.
500
無線
(FWA)
FTTH
ケーブルTVインターネット
DSL
2,
330
2
1,
956
2
2,
000
1.
500
1,
000
500
-
22
0
0
22
0,
02
1999
86
0.
09
0.
02
387
0.
8
3
78
7
148
2000
2001
943
3
31
1,
495
3
114
258
207
1,
120
546
2,
644
1
880
290
331
361
1,
368
1,
452
1,
401
2004
2005
2006(年度末)
296
702
238
2002
2003
FWA(Fixed Wireless Access)
加入者系無線オフィス・家庭等と電気通信事業者の回線設備との間を,直接無線により接続して,大容量の情報通信を可能とする。
FTTH(Fiber To The Home)
各家庭まで光ファイバケーブルを敷設することにより,数10~最大100Mbps程度の超高速インターネットアクセスが可能。
DSL(Digital Subscriber Line)
デジタル加入者回線。電話用のメタリックケーブルにモデム等を設置することにより,高速のデジタルデータ伝送を可能とする方式
の総称。
資料:総務省「情報通信白書」
10
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
ブロードバンド契約者数の推移【鹿児島県】
(契約数)
200,
000
150,
000
100,
000
(%)
60
FWA
FTTH
CATV
ADSL
FWA
FTTH
CATV
ADSL
合計
鹿児島県
九州
46.
2
全国
38.
7
50
40
50,
000
0
ブロードバンド普及率の推移
【鹿児島県・九州・全国】
29.
9
30
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
3月末 3月末 3月末 3月末 3月末 12月末
0
0
2,624
9,657
12,281
0
0
3,622
32,142
35,764
0
23
33
133
8,551 18,728 41,326 95,574
4,075
5,422
5,654
5,380
74,606 113,265 130,495 129,479
87,232 137,438 177,508 230,566
20
10
18.
7
8.
8
20.
3
33.
8
27.
4
51.
7
38.
7
54.
7
41.
3
7
27.
3 29.
23.
2
18.
0
5
10.
8 11.
4.
64.
8
7
0 1.
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2007年
4月
3月
3月
3月
3月
3月
12月
資料:総務省九州総合通信局
資料:総務省九州総合通信局
❺ 価値観やライフスタイルの多様化
高度経済成長期からバブル経済の崩壊などを経て,人々の価値観は,スローライフ1やスローフー
ド2,ロハス3といった言葉に象徴されるように「物の豊かさ(経済的な豊かさ)」より「心の豊かさ(精
神的な豊かさ)」を,また,「集団」より「自分」の個性を重視する傾向が強まるなど,多様化し
てきています。こうした価値観の多様化や高齢化,女性の社会進出などにより,働き方などを含め,
個人のライフスタイルも多様化してきています。
また,近年,NPO4による活動やボランティア活動,企業のCSR5活動など,個人や団体に
よる社会貢献活動が活発になってきています。
本県においては,自治会等への加入者の減少はみられるものの,小中学生の子ども会への加入
率が高く,自治公民館数が多いなど,地域内のつながりが残っています。また,NPOの認証数
やボランティア登録者数も毎年着実に増加しており,地域活動や社会貢献活動に対する県民の関
心が高まりつつあります。
一方,価値観やライフスタイルの多様化が進む中,地域のコミュニティ6機能の低下,社会規範
意識の低下による犯罪の質的変化が懸念されています。また,最近では,食品の偽装問題や子ど
もが巻き込まれる事件・事故が目立つようになってきており,食の安心・安全や安心して子育て
ができる環境づくりなど,安心して生活できる地域社会づくりへの関心が高まっています。
スローライフ:のんびり,ゆったり,あせらず,自然体で生活し,伝統や物を大切にする暮らし方。
スローフード:各地に残る食文化を尊重し将来に伝えていこうという活動。または,地域に根ざした
質のよい食材や食文化のこと。
3 ロハス:LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability の略。
)健康や環境問題に関心の高い
人々のライフスタイル。
4 NPO:Non Profit Organization の略。営利を目的としない団体の総称。自発的・自立的な市民活
動団体という意味で用いられる場合が多い。
5 CSR:Corporate Social Responsibility の略。企業の社会的責任。一般的には,
株主,取引先,顧客,
地域住民などの利害関係者に対して企業が負う責任のこと。
6 コミュニティ:一定の地域に居住し,
何らかの共通のテーマの下に仲間意識を持ち,互いにコミュニケー
ションを行っているような人々の集まりのこと。自治会や町内会などは,コミュニティの最小単位
と考えられる。
1
2
11
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
NPO法人認証件数と法人数【鹿児島県】
(件数)
400
376
350
NPO法人数
(累計)
NPO認証件数
300
274
250
200
171
150
111
100
0
63
34
50
3
1999
12
9
2000
22
2001
29
48
61
2002
2003
2004
105
2005
108
2006 (年度)
資料:県総務部
10年前と比較した地域のつながりの強さ【全国】
無回答
0.
4%
強くなっている
1.7%
やや強くなっている
5.3%
強くなっている
7.0%
わからない
15.4%
弱くなっている
11.4%
弱くなっている
30.9%
やや弱く
なっている
19.5%
変わっていない
46.5%
資料:内閣府「国民生活選好度調査」(2007年)
❻ 地方分権の進展
少子高齢化や人口減少が進む中,多様化する人々の価値観やライフスタイルに対応する公共サー
ビスを的確に提供していくためには,これまでの中央集権型の行政システムから,住民に最も身
近な地方自治体が自己決定,自己責任の原則の下に,その創意と工夫によって公共サービスを提
供する地方分権型の行政システムに移行することが不可欠となっています。
2000 年の地方分権一括法1の施行,市町村合併の進展,三位一体の改革2,2007 年の地方分権改
革推進法3の施行など,地方公共団体を取り巻く環境は大きく変化しており,国と地方の役割分担,
地方分権一括法:正式名称は「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」。地方分
権推進の柱として,1997 年 7 月,地方公共団体の事務に関する記述のある法律のうち,475 本の法
律の改正部分を 1 本の法律として改正。2000 年 4 月施行。
2 三位一体の改革:
「地方にできることは地方に」という理念の下,国の関与を縮小し,地方の権限・責
任を拡大して,地方分権を推進することを目指し,国庫補助負担金改革,国から地方への税源移譲,
地方交付税の見直しの3つを一体として行う改革。
3 地方分権改革推進法:地方分権改革を総合的かつ計画的に推進することを目的とした法律。2007 年 4
月施行。3 年間の限時法。
1
12
第2章 時代潮流と鹿児島の主な特性
国から地方への権限や税財源の移譲など,地方分権改革の議論や道州制1をにらんだ都道府県のあ
り方についての議論が高まってきています。
「平成の大合併」により市町村合併は全国的に急速に進み,全国の市町村数は 1999 年 3 月末の
3,232 市町村から,2008 年 3 月には 1,793 市町村へ半減しています。
本県においても,96 市町村から 46 市町村となり,一定程度,基礎自治体としての規模拡大が図
られるとともに,「権限移譲プログラム2」に基づき,県から市町村に対し,2008 年 4 月までに 31
法令 317 事務の移譲が行われるなど,地域の実情に応じた地方分権への取組が着実に進展してい
ます。
今後とも,市町村合併の推進に努めるとともに,市町村が将来にわたって,良質な行政サービ
スを安定的に供給できるよう,行財政基盤の強化を図る必要があります。また,国から地方への
更なる権限移譲や地方税財源の充実など,残されている課題を的確に処理するとともに,地域の
実情を十分踏まえ,地方の自主性が高まるような制度を構築するなど,地方分権改革を一層推進
する必要があります。
1
2
道州制:都道府県を広域の「道」や「州」に再編し,国から道や州に権限と財源を移譲する制度。
権限移譲プログラム:県から意欲を持つ市町村に対し,地域の実情に応じて,ニーズに合った権限・
財源の移譲を進めるため,移譲の進め方や移譲対象事務などを示したもの。2005 年 7 月策定。
全国の市町村合併の状況
3,232市町村(1999年3月末)が1,793市町村(2008年3月末)に
市町村数の減少率(1999年3月末→2008年3月末)
50%以上
21県
40%以上50%未満 10府県
30%以上40%未満
7県
20%以上30%未満
4県
10%以上20%未満
3道県
10%未満
2都府
0%
0
212→180(15.1%)
67→40(40.3%)
35→15(57.1%)
41→19(53.7%)
91→41(54.9%)
99→42(57.6%)
39→19(51.3%)
69→25(63.8%)
112→35(68.8%)
78→27(65.4%)
50→26(48.0%)
86→23(73.3%)
44→26(40.9%)
59→35(40.7%)
44→35(20.5%)
35→17(51.4%)
71→36(49.3%)
59→21(64.4%)
90→60(33.3%)
49→31(36.7%)
97→66(32.0%)
49→20(59.2%)
70→38(45.7%)
56→20(64.3%)
85→44(48.2%)
92→70(23.9%)
79→23(70.9%)
40→39(2.5%)
80→56(30.0%)
94→48(48.9%)
96→46(52.1%)
37→33(10.8%)
58→18(69.0%)
44→30(31.8%)
64→28(56.3%)
69→29(58.0%)
47→39(17.0%)
44→43(2.3%)
120→81(32.5%)
74→42(43.2%)
88→61(28.4%)
50→30(40.0%)
凡 例
a→b(c%)
a:1999年3月末の市町村数
b:2008年3月末の市町村数
c:減少率
※ 合併新法による合併18件を含む。
13
43→17(60.5%)
50→24(52.0%)
70→20(71.4%)
53→34(35.8%)
53→41(22.6%)
資料:総務省Webページ
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