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カーネーション編
品質カイゼン室の 花のソコが知りたい! カーネーション編 「母の日」にプレゼントするお花といえば、「カーネーション」 ほとんどの方がイコールでイメージする程、母の日の定番の贈り物となっています。 5月の母の日に注目を浴びるカーネーションですが、この時期だけの流通ではありません! 暖地から高冷地へとリレー栽培を行い、1年を通してアレンジや仏花、ブーケなど さまざまなシーンで活躍するとても魅力的なお花なのです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆カーネーションの歴史◆ 古代ギリシャ時代、2000年ほど前から、食用や観賞用として栽培していたとされています。 原種は、地中海沿岸に自生していた多年草で一重の小さな花でした。 19世紀に現在の品種の大もととなる四季咲き性のカーネーションが誕生し、1939年にアメリカで作出された 「ウイリアムシム」をもとに、シム・カーネーションという1輪咲きが人気になりました。 その後、1960年代になると中輪のスプレー咲きが人気となり、現在では様々な変わり咲き品種が誕生しています。 フリンジ咲き 日本には、江戸時代にオランダから渡来しました。和名は阿蘭陀石竹(オランダセキチク) または、麝香撫子(ジャコウナデシコ)といい、麝香(ジャコウ)とは、ジャコウジカからとれる香料の一種のことで 英語ではムスクと呼びます。 「ジャコウ」という名前が付いている通り、品種によってはスパイスの丁子(クローブ)に似た、甘くスパイシーな香りが 特徴的なものもあります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆カーネーションの由来◆ ダイアンサス 【学名】 由来① カ リ オ フ ィ ル ス Dianthus caryophyllus 【英名】 Carnation カーネーションの香りには酒酔いを防ぐ効果があると信じられており、 シェークスピアの時代(16世紀頃)に戴冠式の花冠としてカーネーションが使われていたことから、 戴冠式(coronation)に因んだという説。 由来② 原種の色が似ていたという理由でラテン語の肉(incarnation)からつけられたという説。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 花弁がうねった 【クレージーパープル】 ユニークな花形 バラ咲き スター咲き 【カロンテ】 花弁の縁が 【マーロ】 激しくギザギザ 花弁が4等分 された咲き方 尖った花弁の スプレー咲き 【スターチェリーテッシノ】 ◆栽培◆ ●暖地と高冷地 ◎主な生産地 国内では、1 つの産地で周年生産することができないため、 11~5 月は暖地・6~10 月は高冷地とリレー栽培を行うことで、 1 年中カーネーションを楽しむことができます。 暖地 高冷地 愛知県・千葉県・香川県・長崎県など 北海道・長野県など ●栽培ポイント ◎風通しをよくすること! 乾燥した気候を好み、高温多湿に弱い性質を持つカーネーション栽培で 最も重要な栽培ポイントは空気の入れ替えです。 扇風機の設置や、連棟ハウスにしない構造に することで、風通しがよくなりカーネーションの 生育適温10~25℃を保ちます! 昼夜温の格差が大きい方が開花 促進やボリューム向上が望める。 茎の硬さは、涼しさが影響 ※カーネーションは茎の弱い植物です。 高温での栽培環境では茎が軟弱になり、 花色も不良となりやすいです。 もともと、茎が弱い性質のため 人の背くらいまで成長する切り花用栽培 では、自立することができません。 ハウス内を覗いてみると、 このように、支柱をたて・・・ 5 段目 4 段目 3 段目 2 段目 1段目 その支柱に 10cm角にネットを張り、升目を描き・・・ さらに、成長とともに間隔をあけてネットを張り、 最終的に 5 段張ることで、茎の曲がりを防ぎます! ◆よいカーネーションの見分け方◆ よ~~~く見てみると、 葉がくるんっとカールして いて、葉の色も白っぽい ことがわかります。 ◎葉がくるんっとカールしていると、栄養状態がよいこと を示して います。葉がピンっとしているのは、水・温度・肥料の吸わせ方が 適切でないことを表しています。 ◎ 葉の色が白っぽいのは、ワックスと呼ばれる植物が自分自身を 守るために出すもので、これがあると病気に強いことがわかります。 ※品種特性にもよります 葉の形や色に注目することで栄養状態など、この花が元気なのかどうか、 また日保ちする花か判断する知識として覚えておくといいですね。 もちろん葉以外にも花姿に勢いがあり、ガクがギュッと引き締まっているものを選ぶことも重要です! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆カーネーションの敵 エチレン◆ エチレンとは、植物の生長を促す植物ホルモンの一種です。その生理作用として果実の成熟促進や 切り花の老化促進が代表的で、カーネーションはとくにエチレンの感受性が高い(影響を受けやすい)ことで 有名な花です。また、カーネーションは自らエチレンを多量に生成し、老化が進みます。 エチレンの影響を受けると極端に花保ちが悪くなり、花弁が内側にカールし咲ききる前に萎んでしまいます。 エチレンの影響で写真のように、 このエチレンの影響を防ぐための解決策は 異なる咲き方をしています。 ないのでしょうか・・・。 そこで、ヒントとなったのがエチレンが発見されるもっと前に、 「銀製の器に果物を盛り付けると日保ちする」という現象です。 ※リンゴやメロンなど自らエチレンを発生させる果物です。 内側にカールしていることが わかりますね! この現象を花にも応用できないか… ◆STS剤の誕生◆ そして、研究が進み開発されたのがエチレン阻害剤であるSTS剤(チオ硫酸銀錯塩の略)です。 STS剤とは「前処理剤」とも呼ばれ、産地で行う処理のことです。(茎から吸い上げる方法) この処理をしっかり行うことで、エチレンによるカーネーションの老化を防ぎ、 常温で 2 週間程度、高温でも1週間以上の花保ちが可能となりました。(日保ち検査基準) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ◆もうすぐ、「母の日」です◆ 今年も「お母さん」に感謝の気持ちを表す日がまもなくやってきます。 5 月の2週目の日曜日は ”母の日” です。 そもそも、“母の日”とはどのような由来から来ているのでしょうか。 さかのぼること約100年前、アメリカ人女性アンナ・ジャービスが 苦労しながら懸命に育ててくれた母親の死を悼み、母親が好きだった白いカーネーションを 教会に飾ったのが発端とされています。 これをきっかけにしてアメリカ全土に母への感謝の気持ちを表す動きが広まっていきました。 そしてアンナの母が亡くなった日である 1905 年 5 月 9 日(第2日曜日)が「母の日」として制定され、 母親が健在な場合は赤いカーネーションを、すでにお亡くなりになられている場合は 白いカーネーションを胸に飾るようになりました。やがてその風習がプレゼントとして カーネーションを贈る日となりました。日本には大正時代に伝わり、 今日では花き業界最大のイベントのひとつとなっています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー カーネーションはスタンダード咲き(1本に1輪の花)や スプレー咲き(1本に数輪の花)に加え、さまざまな咲き方があります。 またカラーバリエーションも豊富にあり、あらゆるシーンで活躍します! そして5月には「母の日」と、最もカーネーションを街中で見かける時期となります。 丹精込めて作った生産者様の「想い」の詰まったカーネーションを、 お母さんに贈ってみてはいかがでしょうか。 【参考文献】 ・宍戸純・長塩由実著「花屋さんの花材が全てわかる アレンジ図鑑」 ・市村ら 農研機構 花き研究所「日持ち保証に対応した切り花の品質管理マニュアル」 ・宇田明 桐生進著 「花屋さんが知っておきたい花の小事典」 ・農研機構 http://www.naro.affrc.go.jp/flower/hinshu/miracle_r_s/cultivated/ (株)大田花き 品質カイゼン室