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環境にもヒトの体にも優しい養殖魚の開発!

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環境にもヒトの体にも優しい養殖魚の開発!
環境にもヒトの体にも優しい養殖魚の開発!
~廃棄米糠を用いた健康機能性賦与魚の作出と水圏環境保全方法~
群馬工業高等専門学校 長阪 玲子
〒371-8530 群馬県前橋市鳥羽町 580
℡:027-254-9204 FAX:027-254-9198
[email protected]
廃棄穀類糠には生活習慣病予防効果があること,魚類に投与すると脂質代謝を活発にす
ることで飼料効率が高まることが明らかとなった.現在の魚類養殖では,高エネルギー飼
料が大量に使用され,水圏環境に大きな負荷を与えるとともに,大量の食資源を浪費して
いる.本研究によって,穀類残滓糠投与による魚類脂質代謝制御を可能とし,水圏環境負
荷の大幅な軽減だけでなく,生活習慣病を予防するための養殖魚の提供が可能となる.
米は精白してから我々の食卓に上るが,その際に生じ
る米糠は莫大な量となり,水圏環境負荷などの問題が生
HO
O
C
O
-Oryzanol
CH3O
じている.我々は米糠の新たな有効利用を考え,米糠
質・糖質代謝が改善され,2 型糖尿病予防など生活習
ニジマスの脂質代謝・糖質代謝を促進させること
を明らかにした.
2007 年度日本水産学会秋季大会にて発表
特願 2007-178082「魚類のタンパク質節約剤
およびタンパク質節約方法」他
慣病に効果を示すことが明らかとなった.また,東京
・抗炎症作用
中に含まれるオリザノールに着目して研究を進めた
ところ,マウスに米糠やオリザノールを投与すると脂
大学大学院獣医薬理学教室,東京海洋大学との共同研
(Nagasaka et al., BBRC, 2007, 特願 2006-165308)
・脂質代謝亢進作用
究でオリザノールには抗炎症作用があり,アレルギー
(WO2006/013750, 特願 2006-531398)
や炎症性大腸炎に効果があることが明らかとなった.
・アルコール性肝炎の予防
これらについては,既に化粧品として製品化が成功し
ている.さらに,アルコール性肝炎の予防や改善にも
(Chotimarkorn et al., Phytomedicine, 2008)
・炎症性大腸炎の治療
(Ozaki et al., Br. J. Pharmacol., 2008)
効果があることも最近の研究で明らかとなった.
このように,ヒトやマウスなどの哺乳類で様々な生理作用を発揮する米糠とオリザノー
ルであるが,魚類でも同様な効果が認められることが明らかになってきた.ニジマスにオ
リザノールを投与すると,糖質と脂質の代謝を改善し,タンパク質の蓄積が促進されて 10
から 20%程度の体重増加が確認された.このことは,少ない飼料で速やかに出荷できるこ
とを示し,飼料の節約や環境負荷の軽減につながる.また,我々と東京海洋大学,坂本飼
料株式会社との共同研究によって,ブリでも同様の効果が確認された.魚類でも哺乳類と
同様に,オリザノールが脂肪細胞からのアディポネクチンの分泌を高め,脂肪酸や糖質の
燃焼を促進してタンパク質節約効果を示したものと考えられる.
坂本飼料株式会社らとの共同研究で新たに確認された事実が,魚類は哺乳類に比べてオ
リザノールをより積極的に吸収・蓄積するということである.一般に,哺乳類ではオリザ
ノールは腸管から吸収されにくく,全身には回りにくい.一方,魚類の場合は,吸収量も
蓄積量も哺乳類に比べて数千倍に達し,筋肉にも多くのオリザノールが蓄積されることが
明らかとなった(特願 2008-077700「魚類を用いた植物生理活性物質の濃縮・蓄積方法」).
これまでの我々の検討によると,体重 60kg の成人では 1 日当たり 9mg 程度のオリザノー
ルを摂取することによって生活習慣病予防効果が期待できることが明らかとなっている.
上述の技術によって養殖魚では通常の食事で消費される筋肉 100g 当たり約 10mg のオリ
ザノールが蓄積されるため,この養殖魚を毎日食べることによって生活習慣病を予防でき
ることになる.また,我々が別途開発した濃縮法(PCT/JP2009/001169「健康機能成分を
吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠,該糠から調整した健康機能成分の濃縮物,およびそれら
の製造方法」)によってオリザノールの濃縮が可能であることから,さらに高濃度にオリ
ザノールを蓄積した養殖魚を作出することも可能である.また,この方法を用いれば魚類
飼料だけではなく,様々な家畜の飼料に適用でき,ヒトを対象とした健康機能性を考慮し
た畜肉等の開発にもつながるものと期待される(WO2006/013750「脂質代
謝調節作用を有する食品素材、健康食品、動物飼料及び動物の飼育方法」).
一方,オリザノールはフェノール性のヒドロキシ基を持っており,抗酸
化性を持つことが知られている.
ブリなどでは貯蔵に伴って血合肉が緑色に
変色し,商品価値が著しく低下することが問題となっているが,オリ
切り身にして 48 時間後のブリの切
り身を写したもの. オリザノール
をより多く含んだ餌を与えた方(写
真左)で変色が抑えられている.
ザノールを蓄積した魚肉ではこの変色も効果的に抑制されることが明
らかとなった(現在特許出願中).
オリザノールを含む飼料やオリザノールに富む米糠を配合した飼料
養殖魚のエネルギー代謝を改善し,体重増加を早め,飼料効率の改善にも効果的
健康機能性のあるオリザノールが魚肉に蓄積した養殖魚を提供できる
これらのことから,穀類糠やオリザノールの添加によって養殖魚の品質および付加価値
向上が可能となるだけでなく,その養殖魚を用いた生活習慣病予防が可能となる.
***特許技術に関するご相談***
PCT/JP2009/001169「健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠,該糠から調整した健康機能成
分の濃縮物,およびそれらの製造方法」
WO2006/013750「脂質代謝調節作用を有する食品素材、健康食品、動物飼料及び動物の飼育方法」
東京海洋大学 産学・地域連携推進機構
Tel 03-5463-4037
Fax 03-5463-0894
〒108-8477 東京都港区港南 4-5-7
[email protected]
特願 2008-077700「魚類を用いた植物生理活性物質の濃縮・蓄積方法」
東京海洋大学 海洋科学部
食品生産科学科
〒108-8477 東京都港区港南 4-5-7
潮
秀樹准教授
Tel 03-5463-0615
Fax 03-5463-0627
[email protected]
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