...

第 1 章 国際 UHF―RFID の新動向

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

第 1 章 国際 UHF―RFID の新動向
第1章
国際 UHF ―RFID の新動向
電波(RF:Radio Frequency)と識別(ID:Identification)の技
術革新と用途開拓が全世界で拡がっています。
新次元リーダの Mojix と大量消費のウォルマートは米国、リーダチッ
プの新機軸を開いたのはアジア圏の韓国、使い方のユニークな Arduino
(アルデュイーノ)はヨーロッパのイタリアです。
それぞれの大きい話題はどれを取っても素晴らしいものです。
この章では、国際的な UHF―RFID の新しい動向を話題に取り上げま
す。
第 1 章 国際 UHF―RFID の新動向
1.1 新次元リーダの Mojix
日本 IBM が RFID 分野に進出しました。その動機となったのが、RFID リー
ダに人工衛星通信技術を取り入れた Mojix 方式(日本 IBM では分散励起型と
呼ぶ)の出現です。
従来のRFIDリーダー
現在の RFID リーダの内部機能は、タグに対してデータを送信するブロック
と、タグからデータを受信するブロックがハッキリと分かれております。送信
は電池などを持たないパッシブなタグ群に対して問いかけ、データと同時に送
り返して貰うときに必要なエネルギーも与えます。受信はタグの微弱な反射電
波からデータを聞き分けます。これを図示すると電力供給と通信のブロックに
分かれて構成されています(図 1―1―1)
。
図 1―1―1 従来のリーダ
両者で数百倍の電力の差があるものが一つの箱に入っていたことへの反省と
して、これを二つにわけたのが、この Mojix です。
この図の電力供給部と通信部は全く別な大きさと数量になりますが装置を分
けて、送信(電力供給の役割)は eNode と呼び沢山の数を配置(タグの近く
に分散配置)し、受信(情報通信の役割)は STAR レシーバと呼ばれる大き
1つのeNodeに4
枚のAntenna
eNode
い装置がクラウドコンピュータのように、集中して読み取ります。人工衛星通
4
1
信技術を取り入れたものです。eNode と STAR レシーバの関係を図示します
Antennaの照
射範囲
3
2
eNode
(図 1―1―2)
このシステムの概要は
4
1
① STAR の受信感度は従来のリーダに比べて読取距離は 20 倍、約 200m
3
2
eNode
の範囲を読み、25000m2 のエリアをカバー
② 1.2 テラフロップの信号処理能力(テラはギガの 1000 倍)
eMux中継器
③ 厳しい電波環境でも高精度でタグを読む
Master
Controller
次に STAR レシーバを分散励起と呼ぶ構成イメージを図示します(図 1―1―
eNode、Antenna、eMux は増設可能
3)。
一つの eNode から 4 枚のアンテナ、これはパッチアンテナのようです。こ
タグ
STAR Receiver
4
4
1
3
3
2
Antenna
1
2
©2010 IBM Corporation
図 1―1―2 eNode と STAR レシーバ
れから位置情報とエネルギーを周囲のタグに与えます。
パッシブなタグはすぐ自分の情報を反射のように発信し、 それを中央の
8
9
第 1 章 国際 UHF―RFID の新動向
コラム ̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶ のれんアンテナ
Mojix
(分散励起型)
RFIDシステム
位置情報
位置情報
位置情報
正式名称はフレキシブルアンテナと呼び、HF 帯電波の 13.56MHz のとき
に開発されました。
これが UHF 帯の現在では
Ⅰ 導入が容易、設置簡単
Ⅱ 柔らかいアンテナでコスト安
Ⅲ ISO18000 6 に準拠したタグやカードをマルチで読み込める
出典:920MHz 帯電子タグシステムに関する意見陳述 分散励起型 RFID システムの
技術的条件の検討願い 平成 23 年 2 月 17 日 日本アイ・ビー・エム株式会社
図 1―1―3 構成イメージ
Ⅳ 新しい用途でテスト向
などの利点があります(写真 1)
。
STAR レシーバが受信するというシステムです。
1.2 韓国は新勢力―UHF リーダチップから
お隣の国、韓国に UHF 技術のエースが登場してきました。
前著「IC タグの使い方」(おわりに、2005 年 4 月)で紹介した経済産業省
の響プロジェクトの「5 円タグを実現する響き」の中にあるリーダライタ用 IC
チップの仕様と同じあるいはそれ以上の市場動向に適するものを開発している
韓国パイチップス(PHYCHIPS)社をご紹介します。
日本では同社開発のキットが販売されています(図 1―2―1)
。 さらにその
リーダ IC チップを PC 用ハンディリーダとして組込み、「響振会」
(コラム参
照)のメンバ会社が製品化しています(7.4 中出力リーダ参照)。
また、本書の特徴であるタグ試作時になくてはならないテストツールにも貢
献しました(7.5 P テスター参照)。
このチップの開発は今なお継続され、チップを搭載したモジュールが発表さ
写真 1 左が入るところ、右がのれんをくぐるところ
れています(図 1―2―2)
。
この韓国技術のもっと凄いことは、これからのスマートフォンに UHF リー
ダ機能を持たせていることです。これは次節に述べます。
さらに、RFID 採用の具体例が Hanmi 製薬を筆頭に明確になってきていま
10
11
第 1 章 国際 UHF―RFID の新動向
す(図 1―2―3、図 1―2―4)
。
ほかの韓国内基盤事業の RFID 化を挙げます。
○釜山港のコンテナ ○政府の物品管理 ○感染性医薬廃棄物
○記録物管理 ○輸入貨物通関 ○軍需物流管理 ○植物工場
○鉄鋼物流 ○宅配サービス ○酒類物流………
パック
ビン
メタル
ボール箱
図 1―2―3 Hanmi 製薬の 500 種アイテムにタグ
図 1―2―1 パイチップス社の開発キットと筆者試作アンテナ
図 1―2―2 新発表モジュール
12
図 1―2―4 Carton Box へのタグ挿入法
13
Fly UP