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2011年6月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479 Shinkin Central Bank Monthly Review 第10巻 第6号(通巻462号) 2011. 6 ク ー ルで な い 日 本 地域金融におけるストレステストの考え方 住 宅 エコ ポ イ ン ト 制 度 で 関 心 高 ま る 省 エ ネ 住 宅 −熱エネルギーの消費節減には、高気密・高断熱化と太陽熱・地中熱利用が有効− 地域銀行と地域経済に関する実証分析 統計 「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ ○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域」「中小企業」「協同組織」に関連する金融・ 経済分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国におけ る当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。 ○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の 再応募を認める場合があること、を特徴としています。 ○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、 編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論 文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。 詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご 参照ください。 編集委員会 (敬称略、順不同) 委 員 長 清水啓典 一橋大学大学院 商学研究科教授 副委員長 藤野次雄 横浜市立大学 国際総合科学部教授 委 員 川波洋一 九州大学大学院 経済学研究院教授 委 員 鹿野嘉昭 同志社大学 経済学部教授 委 員 首藤 惠 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授 問い合わせ先 信金中央金庫 地域・中小企業研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:山田、刀禰) Tel : 03(5202)7671/Fax : 03(3278)7048 Shinkin Central B a n k Monthly Review 2011年 6月号 目次 クールでない日本 2 信金中金月報掲載論文編集委員 首藤 惠 (早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授) 調 査 地域金融におけるストレステストの考え方 高橋宏彰 住宅エコポイント制度で関心高まる省エネ住宅 4 14 −熱エネルギーの消費節減には、高気密・高断熱化と太陽熱・地中熱利用が有効− 帝京大学 経済学部教授 澤山 弘 査読付論文 「信金中金月報掲載論文」 募集における査読付論文 地域・中小企業研究所 地域銀行と地域経済に関する実証分析 38 39 早稲田大学大学院 経済学研究科博士後期課程 森 祐司 信金中金だより 信金中央金庫 地域・中小企業研究所活動状況(4月) 60 統 計 信用金庫統計、金融機関業態別統計 61 2011 6 個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。 投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。 クールでない日本 信金中金月報掲載論文 編集委員 首藤 惠 (早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授) クール・ジャパンという、BSのテレビ番組がある。毎回数人の外国人が参加し、一人がみず から発見した日本の文化や生活の特異さをレポートし、それがクールかクールでないか全員で 議論するという仕掛けになっている。なんでも修行にしてしまう日本人、ダイエット本が溢れ る日本の本屋、コンビニや100円ショップの便利さと多彩さ、食の安全性や味のこだわりなどな ど。アニメやおたく、温泉文化や江戸情緒といった自他ともに認める日本的なものだけでなく、 ありふれた日本の日常が外国人にとっては目を見張るクールさでいっぱいらしい。 出演者は公募制なので日本大好きな外国人が多く、長らく経済不況と政治の混乱の中で自信 と希望を見失いつつある日本人にとっては、元気が出るなかなか楽しい番組である。日本人は いつからこんなに自虐性が強い国民性になったのかと思うような報道が多いが、海外に行くと 日本の文化の精神性や日本人の誠実な行動に対する評価は日本で考える以上に高いことにしば しば驚かされる。確かに、国際的には日本はユニークであるらしい。ユニークという言葉は、 独自性、類のなさ、無比など、ポジティブな意味だが、しばしば、シニカルな響きをもつ場合 がある。その地域固有の、特定の状況でしか起こらない、といった意味である。先進国日本の 経済や金融における規制・制度、取引慣行は、いまだグローバルな視点から見るとその意味で 驚き以外の何物でもないらしい。 昨年末、日本の公的年金のガバナンスと資産運用方針に関するOECDのワーキング・ペー パーが発表された。日本は高齢化に対処するために、2006年から抜本的な制度改革を行い、年 金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に公的年金積立金の運用を委ねている。GPIFは、約 140兆円の運用資産をもつ世界最大の年金基金である。しかし、これほどの大規模基金であるに もかかわらず、公的年金運用の国際的なベスト・プラクティスの観点から見ると、ガバナンス の基本的な条件を満たしていないという。情報開示がきわめて不十分であるだけでなく、運用 パフォーマンスは先進国の年金基金に比べて著しく低く、機関投資家としての責務を果たして いないと懸念される。国民資産の大きな部分を任されている機関投資家として、日本経済の低 迷のみに運用のパフォーマンスの低さの原因を求める言い訳は許されないのではないかと指摘 2 信金中金月報 2011.6 する。他方で、多くの先進国では社会や環境に配慮した責任ある投資は、年金資産の目的にも 合致する長期運用手段であり、受託者責任を果たす上で不可欠とみなされているにもかかわら ず、GPIFではいまだ十分に検討がなされていないのも特異である。 OECDの研究者は、公的年金の運用責任者であるGPIFについて、情報開示とガバナンスに多 くの問題があると指摘する。主要な問題点を要約すると以下のとおりである。第一に、運用面 での意思決定の独立性への懸念である。GPIFの人事や運営に厚生労働省が深く関わっており、 両者の責任分担が曖昧である。第二に、運用効率をコスト・カットとみなす誤った理解である。 独立行政法人として一律の評価基準でコントロールされているために、資産規模に対して過小 な管理費用を強いられており、専門能力をもつ人的資源の活用がなされず、管理・運用機関と しての機能が発揮できていない。第三に、運営における執行と監督の不分離である。運用機関 のCEOたる理事長に政策決定と業務運営のすべての権限が集中し、任命・解任のプロセスが不 透明である。理事長のほか、理事はわずか1人にすぎない。外部専門家による運用委員会を有す るものの常勤委員は不在であり、専門家の機能および責任態勢が軽視されている。第四に、監 査態勢、リスク管理態勢が弱体である。監事は2人(常勤1人)で、監査委員会、リスク管理委 員会は不在であり、行動規範、利益相反規則、運用方針に関する文書化・公開も不十分である。 第五に、資産運用目標の設定の非合理性である。賃金上昇にリンクした収益目標やベンチマー クの選択に関して再検討が不可欠である。 OECDの報告は、異例の速度での高齢化と人口減少というこれまで経験したことのない社会 構造変化に直面する日本に対する、国際的関心の高さを示すものであろう。上記の指摘に対し て、グローバル・スタンダードを振りかざして日本の状況を十分に理解していないという反論 があるかもしれない。しかし、これらの点の多くは、これまで日本の専門家の間でもしばしば 指摘されてきたことである。時を同じくして公表された、厚生労働省「年金積立金管理運用独 立法人の運営の在り方に関する検討会報告」 (2010年12月22日)に目を通して頂きたい。同報 告でも、OECD報告と重なる指摘が散見されるのである。 わが国における公的年金は、年金運営に必要な基本的なガバナンスの枠組みを欠いており、 グローバル・スタンダードに達していないというOECDの懸念は、謙虚に受け止めるべきであ ろう。日本の高齢化社会への対処は、日本の国民だけの問題ではない。それが国際社会に与え る影響は、日本人が想像する以上に大きいのである。しかし、それを自覚していないのではな いか。外から見ると、日本の文化や技術は魅力的だが、経済制度や政策はクールでない部分が 多いようだ。 蛇足ではあるが、今回の東日本大震災において明らかになったことの一つは、世界における 日本経済の存在感の大きさであり、それと対照的な政府の対応のグローバル感覚の欠如と情報 公開や説明責任に対する鈍感さである。ユニークであるのはよいことだが、理解しがたい異質 な国と言われ続けてはいけない。 3 調 査 地域金融におけるストレステストの考え方 信金中央金庫 地域・中小企業研究所主任研究員 高橋 宏彰 (キーワード)ストレステスト、リスク管理、シナリオ、自己資本比率規制、バーゼル、 スコアリングモデル (視 点) 金融機関のリスク管理は、自動車のブレーキに例えられることがある。強くブレーキを踏 めば自動車は減速するが、緩めれば暴走リスクに直面する。金融機関のリスク管理も厳けれ ば(減速) 、健全性(安全性)には寄与するが、収益面にはマイナス要素として働く。リーマ ン・ブラザーズの破綻をきっかけに発生した金融市場の混乱を経て、金融機関の経営には、 より一層、高度なリスク管理と収益のバランス感覚が求められるようになった。背景には、 民間金融機関は株主の利益最大化を目指す一方で、「お金」を流通させる社会インフラとして の性格を持ち合わせていることがあげられる。 金融機関で、万全なリスク管理を行うことは難しい。日々変化する金融情勢に併せ、組織 には、常に最適なリスク管理手法を取り入れる柔軟な姿勢が求められる。本稿ではストレス テストについて、マクロ経済面への影響、個別金融機関のリスク管理の観点から課題、考え 方などを整理した。 (要 旨) ストレステスト実施の背景には、2つの側面があると考えられる。ひとつは、個別金融機関 のリスク管理の精緻化を図る目的、もうひとつは、金融当局等の主導による域内金融機関 に対して実施するストレステストである。後者の目的は、マクロ環境のストレスシナリオ (経営環境の大幅悪化等)によるテストを実施し、資本不足に陥る懸念のある金融機関をあ ぶり出し、資本手当ての基準を明確化させている。 地域金融機関の経営環境は、営業基盤である地域経済の影響を大きく受ける。融資先は地 元企業に偏り、大手行に比べ貸出先を分散させることが難しい。また空洞化等の外的要因 により、産業構造が変化しやすい。地域金融機関の貸出ポートフォリオは、マクロ経済と の連動性が小さく、地域リスクが反映される。 4 信金中金月報 2011.6 はじめに 「備えあれば憂いなし」は、有事に備え、日 頃から準備を怠らなければ心配はいらない、 機関の経営も様々なストレスシナリオを想定 し、万全な備えを追求しなければならない。 1.ストレステストの目的 という意味である。しかし一方で、その準備 金融機関とストレスの関係からは、 “精神的 をどこまで追求するかは難しい問題である。 苦痛”や“重圧”など、メンタルヘルスを連 3月11日に発生した東日本大震災では、防波 想する読者も少なくないだろう。実際、金融 堤が津波から集落を守った幸運もあったが、 機関は人間関係等を背景とした“ストレス” 津波が防波堤を越えて集落を襲った不幸も が溜まりやすい職場と言われている。しかし、 あった。いかに準備が万全でも、必ずしも良 本稿で取り上げる“ストレステスト”は、精神 い結果に結びつくとは限らない。 医療との関連性はない。金融機関のバランス 金融機関の経営もまた、有事を回避するリ シートに一定の“ストレス(負荷) ”をかけ、 スク管理体制が求められる。金融機関の経営 耐久力を“テスト”するリスク管理の手法を 者は、合理的な手法で経営する金融機関のリ 指している。“ストレス”とは、金融機関を スク特性を把握し、環境変化に対する耐久力 取り巻く経営、金融環境の悪化である。 を認識することが、リスク管理上の新たな課 全国銀行協会が公表しているバーゼルⅡ 題となっている。金融機関にとっての有事と の仮訳案「第3部:第2の柱―監督上の検証 は、取引先の業況悪化や、経済、金融情勢の プロセス」には、「銀行は、自ら設定した自 悪化である。経営環境の悪化に備え、充分な 己資本の目標が十分に根拠のあるものである 自己資本を蓄える必要があるが、法令等が定 こと、およびこの目標が当該銀行全体のリス める基準のみを満たすだけでは、万全とは言 ク・プロファイルや現時点での業務を取り巻 い切れない。自己資本が充分であっても、資 く状況と整合的であることを説明できなけれ 金繰りに行き詰った米大手投資銀行のリーマ ばならない。自己資本の充実度を評価する際、 ン・ブラザーズが破綻を回避できなかったの 銀行の経営陣は現下の経済が景気循環のどの は記憶に新しい。 段階にあるかに注意を払う必要がある。銀行 ストレステストの手法には様々な考え方があ に悪影響を与え得るような事象や市場環境の り、試行錯誤が繰り返されている。津波から 変化を識別できるような、厳格でありかつ今 常に街を守る防波堤を造るのが難しいのと同 後の変化を見据えた(forward-lookingな)スト 様、あらゆる環境変化に対し、金融機関が常に レス・テストが実施されるべき」とある。すな 健全性を保つのは難しい。しかし、防災も金融 わち、バーゼルⅡのルールに従う金融機関は、 (注)1 (注)1.International Convergence of Capital Measurement and Capital Standards:A Revised Framework - Comprehensive Version「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化:改訂された枠組」2006年6月公表 調 査 5 将来の業況変化を見据えたストレステストを 行い、充分な資本手当てを行っていたと考え られる。しかし、リーマン・ブラザーズの破 図表1 ストレステスト実施要請の背景 ① 国全体の金融システム 個別金融機関のリスク管理 金融機関ごとのシナリオ ② 綻以降、金融環境が大きく変化し、欧米では いくつかの金融機関で資本不足が発生した。 マクロシナリオ ①金融当局が提示するシナリオ ②個別行が独自に設定するシナリオ 金融機関の救済手続きが行われる過程のなか で、個別行でのストレステストの実効性向上 (備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成 が再考されている(図表1)。 の信用力低下→金融機関の信用コスト増加→ バーゼルが個別金融機関に対し、自主的な 自己資本比率の低下圧力→業績不振企業から ストレステストの実施を求める一方で、欧米 の資金回収→自己資本比率の維持、といった の金融当局は、主要金融機関に対し当局が提 悪循環が発生し、金融機関は景気悪化が進行 示したシナリオを前提としたストレステスト すると、自行の自己資本比率を維持するた を実施している。米国、欧州では、09年と10 め、「貸し渋り」を発生させる傾向が強くな 年にストレステストが実施され、結果が公表 る。欧米の金融当局は、ストレスシナリオを された。金融市場が混乱により発生した金融 前提とした金融機関の充分な資本手当てを行 システムの不安解消のため、ストレステスト い、信用収縮の回避、金融市場の混乱収拾、 を実施し、今後の金融環境等の悪化を折り込 景気の下支えを試みたと考えられる。 んだ金融機関に対し資本注入を行い、「信用 収縮」の発生を最小限にとどめようと試みた。 金融機関に資本注入される公的資金の原資 2.欧州のストレステストの実状 (1)結果と効果 は、税金等の国民負担で手当てされる場合が 欧州では10年7月23日にストレステストの 少なくない。98年と99年、日本で2度行われ 結果が公表された。欧州でストレステスト た資本注入は、金額が不充分だったため、金 は、09年3月にも実施されたと伝えられてい 融システム機能の回復に時間を要したとの指 る が、 公 表 さ れ た の は10年7月 が 最 初 で あ 摘がある。金融機関が資本不足に陥ると、信 る。スペイン、ギリシャ、アイルランド等の 用収縮を発生させ、企業への資金供給に支障 金融機関で信用不安が広がり、金融当局が混 を及ぼす。金融機関はときに、「晴れの日に 乱収拾の図るために公表に踏み切ったと考え は傘を貸すが、雨が降ると貸した傘を回収す られる。欧州域内で対象となった金融機関は る」と、やゆされる。しかし、これは自己資 91行。公表資料 本比率規制の悪しき影響ともいわれている。 摘されたのは7行で内訳は、スペイン5、ギ すなわち、景気悪化→企業業績の不振→企業 リシャ1、ドイツ1であった。いずれもすで (注)2.http://www.eba.europa.eu/EuWideStressTesting.aspx 6 信金中金月報 2011.6 (注)2 によると、資本不足が指 に公的資金等を活用した経営再建過程にある 約6割を占める一方、信用金庫、地方銀行の 金融機関であった。 合計は、約400に達する(図表2)。 欧州でストレステストの対象となった金融 (2)ストレスシナリオ 機関91行は、域内27か国の代表的な金融セク ターで少なくとも資産規模の半分を占める、 では、7行が資本不足と認定されたストレ と公表されている。確かにマクロ経済への影 スシナリオの内容はどうか(図表3)。シナ 響を勘案すれば、各国の金融セクターの半分 リオは、標準(ベンチマーク)とストレス が健全と判断できれば、仮に「信用収縮」が (アドバンス)の2種類が提示され、①マク 発生しても社会的な影響は小さい、と判断で ロ経済見通し、②倒産確率(金融機関、企 きるかもしれない。加えて実務面を勘案する 業、小口不動産、消費者金融)、③ソブリン と、各国の金融セクターの残り半分は、小規 リスク(各国の5年もの国債金利、ヘアカッ 模かつ行数が多く、「費用対効果」を勘案す ト(割引、減額)比率)、④市場リスクに分 ると、大手金融機関のみをストレステストの かれている。貸出債権の査定等に用いられる 対象とするのは、現実的ともいえる。ちなみ ②倒産確率には、①マクロ経済見通しが反映 にドイツには約1,200、フランスには約2,500 され、景気悪化に伴う倒産確率の上昇によ の協同組織金融機関が存在する。日本は、メ る、引当金等の増加が算定される。一方、③ ガバンク3行+野村証券でマネーストックの ソブリンリスク、④市場リスクはトレーディ 図表2 マネーストックに占める金融機関の負債の割合(概算値) (単位:兆円、為替は1ドル=92円、1ユーロ=135円、1ポンド=150円) 日本 マネーストック 757.8 ドイツ フランス 764.1 303.3 695.3 412.1 三菱東京UFJ 183.4 HSBC 344.5 ドイチェバンク 229.2 BNPパリバ 298.9 みずほ 148.5 JPモルガン 172.2 RBS 238.0 コメルツ 111.3 シティバンク 155.9 バークレイズ 224.5 119.2 クレディアグ リコール 39の地方銀行 2,549の単位組 織 210.0 (比 率はマネース トックに占める負 債の割合) 25.9 ウェルズファーゴ 62.8% (カッコ内は金融 機関数。ドイツは 州立銀行傘下に 貯蓄銀行がある) 英国 バンクオブ 189.9 アメリカ 三井住友 金融機関名と負 債 (預金等) 金額 野村證券 代表的な 地域金融機関 米国 ゴールドマン サックス 81.8 モルガン スタンレー 57.5 99.2% クレジットユ 信用金庫 (272) 115.4 ニオン (7,554) 〔 〕 107.0 ソシエテジェ ネラル 266.1% 住宅金融組合 60.2 (48) 15.2% 7.9% 地方銀行 (105) 256.2 貯蓄金融機関 115.9 (S&L) (1,173) 33.8% 15.2% 16.8% 50.1% 協同組織 51.0 (1,156) 18.9% 州立銀行 (7/431) 35.6% 137.2 156.8% 131.2 BPCE バンクポピュ レール(20) ケスデパル 247.3 ニュ(18) 〔 〕 32.1 7.8% (備考)各国中央銀行、金融機関。マネーストックは各国で計測範囲が異なる。日本、米国はM2、ドイツ、フランスはM3、 英国はM4を使用した。各国の地域金融機関数は、日本は11年1月末、米国、ドイツ、フランスは09年12月末、英国は 10年6月末時点 調 査 7 ソブリンリスク予想 図表3 欧州のストレステストシナリオ(抜粋) マクロ経済シナリオ (ユーロ圏) (単位:%) 実質GDP成長率 失業率 短期金利 長期金利 名目為替レート 消費者物価指数 シナリオ (代表国のみ、標準、ストレスは5年もの金利 (%)、上乗せ幅 の単位はbp) 標準 実績 2010 2011 標準値 0.7 1.5 ストレス -0.2 -0.6 標準値 10.7 10.9 ストレス 10.8 11.5 標準値 1.2 2.1 ストレス 2.1 3.3 標準値 3.5 3.8 ストレス 4.4 5.3 標準値 0.7 0.7 ストレス 0.7 0.7 標準値 1.1 1.5 ストレス 1.1 1.1 2009 2010/Q1 -4.1 9.4 0.2 10.0 フランス 2.94 3.92 ドイツ 2.74 3.49 0 ギリシャ 6.28 13.87 685 アイルランド 3.28 5.62 158 スペイン 3.61 5.78 142 市場リスク見通し(一部抜粋) 金利(USD3M) 単位 標準 24 ストレス bp 100 200 (EURボラティリティ) % 30 60 (上乗せスプレッド) bp 20 40 為替(JPY/USD) % -10 -20 % 30 60 -15 (EUR/USDボラティリティ) % -7 株価(日経) % -10 -20 ヘッジファンド % -10 -20 商品(原油価格) % -15 -30 クレジット(Itraxx) % 20 40 % 30 60 % 100 200 (金/USD) (ABX、CMBS、RMBS) (備考)欧州銀行監督者委員会(CEBS)公表資料より作成 ストレス 上乗せ幅 市場流動性 (Bid-askスプレッド) ング勘定取引に適用される。国債等を見合い 果が導き出される。欧州各国で、どの程度の に資金調達を行うレポ取引を行う際、ストレ 規模の金融機関まで評価モデルを活用したリ ス時は各国の国債の評価の違いから、調達コ スク管理が浸透しているかは不明だが、体制 ストが異なってくる。外部調達の依存度が高 整備、システムコスト等は小規模な金融機関 い金融機関が、ストレス時でも流動性が確保 ほど重い負担となるであろう。 できるかがテストされる。 テスト結果の評価が難しい理由は、①∼④ 3.米国ストレステストのシナリオ の前提条件を個別の金融機関がどのようなモ 米 国 で は 欧 州 よ り1年 以 上 前 の09年5月、 デルを用いて資本に反映させているのか、分 FRB(米連邦準備制度理事会)がストレス かりにくい点にある。例えばストレス時シナ テ ス ト の 結 果 を 公 表 し て い る。08年9月 の リオにおいて09年比11年で、企業の倒産確 リーマン・ブラザーズの破綻以降、金融市場 率の上昇幅は、ユーロ圏平均で61.3%となっ では米国の金融機関、金融システムに対する ている。倒産確率は、倒産した企業の財務 信用懸念が高まっていった。すでに資本不足 データ(変数)をもとに、モデルを利用した が懸念される金融機関に対し公的資金は注入 推計値により算出される。変数、モデルの組 されていたが、金融機関が資金調達を行う 合わせにより様々な結果が導かれるため、欧 際、米政府が保証を付すなど、米国金融機関 州の金融機関がすべて画一的なモデルを利用 に対する疑心暗鬼が払拭できない状況が続い していない限り、金融機関によって異なる結 ていた。景気悪化が進んでも、金融機関の健 8 信金中金月報 2011.6 全性が保たれることを示したストレステスト け貸出が堅調な地域である。近年は、工場の の結果公表は、その後の米金融機関の信頼回 海外移転等を背景に産業構造の空洞化が発生 復のきっかけになったとも言われている。 しており、金融機関の貸出ポートフォリオに 米国ストレステストのシナリオも、欧州同 も変化の兆しが現れている。例えば東京地区 様マクロ経済環境の悪化をもとに設定した損 では、不動産向け貸出が増加傾向にある(図 失確率により、引当金の増加額等を推計して 表4)。背景には、産業構造の変化に加え高 いる。欧州との主な違いは、貸出の勘定科目 齢化等から、廃業した好立地の工場跡地に、 が細分化されていること(欧州4に対し、米 アパート、マンション等の建設が進んでいる 国は15)に加え、損失率には倒産確率(PD: ことが考えられる。大手行の貸出ポートフォ Probability of Default)ではなく、倒産時損 リオは、全国規模で多種、多様な業種で構成 失率(LGD:Loss Given Default)が用いら される。しかし、地域金融機関の貸出ポート れている点である。LGDは「1-回収率」で フォリオは、地域性、地元の産業構造が強く 求められるが、回収率を取り扱うためには、 反映される。 金融機関は倒産した企業の財務データ等を蓄 金融機関で一般的に行われているリスク管 積し、回収額と担保・保全などの関連性を統 理手法は、過去データからモデル等を用い 計的に分析できる態勢、インフラが必要と て、今後の最大損失額をシュミレーション なってくる。LGDの取扱い (内部格付け手法) し、その損失額に対し、現状の資本金が十分 については、日本では、メガバンク等を中心 かどうかを計測するものである。この方法で に対応が進んでいるといわれている。しか は、過去データの計測範囲が広く長期にわた し、貸出ポートフォリオが相対的に小さく、 れば、理論上の精度は向上する。金融機関の 地域性の偏りがある地域金融機関が、普遍的 資産で、主にリスク管理の対象となるのは、 なデータ構築をどのように行っていくのか、 貸出と有価証券である。有価証券の金利、価 メガバンクとは異なる課題を抱えている。 格等の過去データは、公募であれば情報ベン 4.地域金融機関の貸出ポートフォリオ ダー等から、また私募であれば、販売した証 券会社等から入手可能である。一方、貸出債 地域金融機関の貸出ポートフォリオには、 務 者 の 状 況、 貸 出 条 件 等 の 過 去 デ ー タ は、 地域性が大きく反映される。日本の“太平洋 個々の金融機関が保有する個別の情報であ ベルト地帯”と呼ばれる関東から北九州にい り、システム等の対応状況で、データの属 たる重化学工業地帯には、自動車産業を中心 性、整備の状況等が異なってくる。 に製造ラインがピラミッド型に集積してい リスク管理上、貸出債権の「相関」関係を る。同エリアの地域金融機関は、取引先に大 「無相関」に置き換えれば、ポートフォリオ 手メーカー等の下請け工場が多く、製造業向 全体のリスクは低下する。例えば、A社の業 調 査 9 図表4 信用金庫の業種別貸出状況(全国、東京、10年3月末) (単位:億円、%) 業 種 全 国 残 高 製造業 東 京 構成比 残 高 構成比 73,994 11.5 13,214 10.8 金属製品 11,681 1.8 2,103 1.7 業務用機械等 23,329 3.6 4,904 4.0 建設業 54,659 8.5 9,915 8.1 卸売業 32,413 5 8,196 6.7 小売業 30,421 4.7 4,557 3.7 121,003 18.8 34,813 28.4 78,822 12.2 12,892 10.5 飲食業 10,377 1.6 2,272 1.9 医療・福祉 17,196 2.6 1,690 1.4 不動産業 サービス関連 その他 29,613 4.6 4,929 4.0 420,925 65.6 88,516 72.2 36,815 5.7 467 0.4 個人 183,833 28.6 33,534 27.4 合 計 641,573 100.0 122,517 100.0 企業向け計 地方公共団体 (備考)『全国信用金庫概況(2009年度)』より作成 況悪化が、B社の業況悪化にも影響を及ぼす 場合、B社向け与信をA社の影響を受け難い 5.日米の与信判断の違い C社と入れ替えることで、「共倒れ」リスク 日米の国民性の違いは、融資を行う際の与 を低減できる。しかし、地域に密着して営業 信判断にも特長が現れる。マニュアル化、ルー 展開する金融機関が無相関に近い貸出ポート ルの明確化が進む米国に対し、日本は債務者 フォリオを創り出すのは難しい。地域経済で の個別事情を勘案した与信判断を行う傾向が 空洞化が発生すると、業種を問わず地元企 ある。国により金融事情が異なれば、ストレ 業、ひいては雇用に悪影響を及ぼす。地元経 ステストも異なる考え方が必要となろう。 済への貢献を掲げる地域金融機関の役割と、 金融機関としてリスク管理能力を向上させる ことは、相反する問題となってしまう。加え (1)米国の個人金融で用いられるスコアリ ング て、企業が業種転換等を行った場合、債務者 米国では、個人がクレジットカードを取得 の属性データに変化が生じる。例えば、公共 する場合、クレジットスコアを提示する必要 工事等の減少に伴い建設業者が農業に進出し がある。クレジットスコアとは、クレジット た場合、同社の信用リスクデータは不連続と ヒストリー(公共料金の支払い、税金の納入 なり、リスク管理上は特殊な取扱いとなって 状況等を含めた借金の履歴)をもとに点数化 しまう。 したものである。米国では、個人の信用力を 10 信金中金月報 2011.6 測る目安として利用されており、社会保障番 ム層と呼ばれる住宅ローンの借入人は、一般 号(Social Security Number:SSN)による に同スコアが平均を下回っている層を指して 個人識別番号にひも付けられ、クレジット いる。 ビューロー(Credit Bureau)と呼ばれる民 間企業で記録・管理されている。第三者にも (2)債権保全に重点がおかれる日本 照会できるため、企業の採用時の身上調査に 貸出審査の判断基準に、支払い履歴を重視 も利用される。日本での、クレジットカード する米国に対し、日本では個人の資産、年収 発行の際の審査は、職業や年収等が重視され 等、債務返済能力を重視している。さらに、 る が、 米 国 で は ク レ ジ ッ ト ス コ ア に よ り、 日本の金融機関は貸出債権の保全を図るた カード利用の条件等が異なってくる。カード め、借入人から「担保」を徴求する傾向が強 発行に際し、日本は返済能力を重視するのに い。戦後の復興期から高度成長期には、担保 対し、米国ではクレジットスコアを重視す となった資産価格の上昇等も追い風となり、 る。そのため米国では、いかに借金が大きく 金融機関は預金増強に力を注ぐことで、企業 とも、クレジットスコアが良ければ、借入を の旺盛な資金需要に応えてきた。また98年 増やすことができる。安易な借入が社会問題 10月「金融機能の再生のための緊急措置に となった背景には、クレジットスコア偏重主 関する法律(金融再生法)」が施行されて以 義も指摘されている。 降、各金融機関は不良債権の開示が義務付け クレジットスコアは、クレジットカードの毎 られている。金融機関が不良債権を開示する 月の最低支払額(Minimum Payment)が滞らな 際、保全状況(貸倒引当金や担保・保証等で ければ汚点が付かない。消費性向が強い米国 不良債権がどの程度カバーされているか)を では、 「リボルビング払い (クレジットカード利 併せて開示する。健全性を常に維持するため 用額を、毎月一定額の返済額で支払う方式) 」 には、担保・保証に頼らざるを得ない一面も を選択するカード利用者が多く、クレジット ある。日本の金融機関が、新興企業等の「リ カードの利用が、個人ローンの拡大に結びつ スクマネー」を引き受けないと批判されるこ いている。日本人が、生活費等で借金を増加 とがある。しかし、「担保による保全重視」 させることを好まないのとは対象的である。加 という歴史的、制度上の背景が金融機関のリ えて、米国でクレジットスコアの利用が一般的 スク回避傾向を助長させていることも否定で なことは、個人向け融資のデータベース構築 きない(図表5)。 に結びついている。米国で信用リスクの統計 処理が進歩した背景に、クレジットスコアを 6.バーゼルⅢとリスク管理のゆくえ もとにした普遍的なデータ蓄積が行われてき 07年3月期末決算から日本の金融機関は、 たことが考えられる。ちなみに、サブプライ 国 際 決 済 銀 行(The Bank for International 調 査 11 図表5 金融規制が伝播するイメージ図 BIS 国際基準行 大規模 自己資本比率8% 大手行 …しかし、分母と な る 貸 出 資 産の 特徴は大きく 異なる。 全国規模 企業の財務 データ等の 定量面を重 視する貸出 審査 規制の波及 地域金融 信用金庫 地域金融機関 銀行 ‖ 社長の人格等の 定性面を重視す る貸出審査 地 方 大手行 自己資本比率 の算出方法 BIS国内基準行 自己資本比率4% 小規模 (備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成 Settlements:BIS)のバーゼルⅡ(新しい自 エイト比の利回りの高い与信の方が、資本効 己資本比率規制:04年6月)に基づく自己資 率が良いといえる。すなわち高格付けで利回 本比率を公表している。同比率は分子に自己 りが高ければ、自己資本比率を維持しながら 資本額、分母にはリスクアセット等の合計額 高収益を上げることができる。 (与信額に信用格付けに応じたリスクウエイ またリスクウエイトは、債務者が適格金融 ト乗じた額)をおく割り算で計算される。例 資産担保、保証等を差し入れることで、低下 えば、多くの地方金融機関が採用している標 させることができる。例えば、リスクウエイ 準的手法では、中小企業向け融資のリスクウ ト75%の中小企業であっても、信用保証会社 エイトは75%のため、中小企業向け融資の残 等の外部保証を付与すれば、リスクウエイト 高が100あれば、自己資本計算上の分母は75 は10∼20%まで低下する。地域金融機関が健 として計算される。 全性(高い自己資本比率)を維持しつつ、よ リスクウエイトは、信用力に応じ0∼150% り地方の中小企業の資金ニーズに応えるため で 変 化 す る。 最 も 低 い リ ス ク ウ エ イ ト は、 には、リスクウエイトを効果的に低減させる 国・ 地 方 公 共 団 体 で0%、 最 も 高 率 な の は ことも重要であろう。一方、信用保証協会の BB-未 満 の 事 業 会 社 で150% と な っ て い る。 利用に依存しすぎることには弊害もある。① 低格付け(BB-未満)の事業会社は一般的 保証協会の保証基準を重視するあまり、金融 に、有利子負債が大きく、キャッシュフロー 機関が事業内容を精査する目利き能力を低下 (負債返済のための原資)が小さいため貸倒 させてしまう。②中小企業:経済産業省、農 れ比率が高い。金融機関にとって、リスクウ 業:農林水産省、医療:厚生労働省(未対 12 信金中金月報 2011.6 図表6 自己資本比率規制強化の方向性 現行規制 国内基準 リスクアセットの 4%以上 リスクアセットの 2%以上 同 4%以上 Tier1 バーゼルⅢ (2019年1月1日∼) 国際統一基準 リスクアセットの 6%以上 Tier1 同 10.5% 同 8%以上 普通株 Tier1 同 (普通株、 内部留保) 4.5%以上 Tier1追加項目 (償還期限のない優先証券等) 同 (普通株、 内部留保) 2.5% 資本保全バッファー Tier2など 補完的項目 Tier2など カウンターシクリ カルバッファー (償還期限は最低5年で償還イン センティブのない優先証券等) 0∼2.5%で各国当局が設定 (備考)Basel Committee on Banking Supervisionの公表文書をもとに作成 応)と、行政の縦割り的な産業育成が保証制 み、国境と金融サービスの垣根が低くなる一 度に反映するため、必ずしも地域振興とは結 方、地域金融機関には地域密着型のビジネス び付かない。 展開が期待されている。他方、金融規制に関 日本の金融機関に適用されるバーゼルⅡ してはイコールフィッティングの考え方から、 は、 国 際 統 一 基 準 行8%、 国 内 基 準 行4% と 大手行、地域金融機関ともに同一基準が適用 なっている。求められる自己資本比率は、大 される場合が多い。例えば国際基準行に要求 手行に比べ地域金融機関は緩和されている。 される自己資本比率8%は、国内基準行は4% しかし、同比率の計算方法に大きな違いはな となる。しかし、基本的な計算方法は大差な く、リスクウエイトの管理は、大手行、地域 く、事務的には同様な負担が発生する。ちな 金融機関ともに、健全性を維持するための重 みに国内大手8行の平均従業員数は約12,000 要な課題となっている。しかし、地域振興を 人に対し、信用金庫は約500人である。 担う地域金融機関が、リスクウエイトと自己 金融規制は、「護送船団方式」と呼ばれた 資本比率を重視する余り、本来果たすべき役 行政指導に守られた時代から、規制緩和が大 割にとって、制約要件となっていないかどう きく進んだ。規制緩和が進めば、金融機関の か、規制と実態の是非について議論を深める 自己責任能力が問われ、リスク管理の高度化 余地も大きいと考える(図表6)。 が迫られる。大手行に比べ、地域金融機関に おわりに は経営資源に制約があると言わざるを得な い。地域に根ざした金融機関の強みを、引き 主要国の金融機関は、数行の大手行と多数 続き社会還元するためにも、金融当局ならび の地域金融機関に分かれる2極化が進んでい に中央金融機関等は、より一層のサポート態 る。大手行の業務展開はボーダレス化が進 勢を充実させる必要性があるだろう。 調 査 13 調 査 住宅エコポイント制度で関心高まる省エネ住宅 − 熱エネルギーの消費節減には、高気密・高断熱化と太陽熱・地中熱利用が有効 − 帝京大学 経済学部教授 (元信金中央金庫 地域・中小企業研究所主任研究員) 澤山 弘 (キーワード) 省エネ住宅、エコ住宅、高気密、高断熱、太陽熱利用、地中熱利用、ヒートポンプ (視 点) 大幅に増加した家庭部門のCO2排出量を削減するには、暖冷房や給湯など、全消費の3分の 2弱を占める熱エネルギーの消費削減が不可欠だ。このためにはまず、高断熱化を中心とした 省エネ基準の普及が求められるが、住宅エコポイント制度により、省エネ(エコ)住宅への 関心が高まっており、リフォームや新築のための資金需要につながろう。太陽熱や地中熱の 利用も有益なので、これらを取り入れた省エネ住宅の事例も紹介する。 (要 旨) わが国の伝統的木造住宅は、夏の湿気を逃すために「掃出し」など開口部を大きく採って おり、冬寒いのは仕方ないこととされてきた。しかし、高気密・高断熱化を図れば、大幅 な省エネを実現できると同時に、健康で快適な屋内環境を作れる。 国は、かねてから住宅の省エネ基準を設けてきたが、2,000m2未満の住宅・建物には届け出 義務がなかったため、これまで同基準に適合する新築住宅は1∼2割にとどまってきた。し かし、10年春から始まった住宅エコポイント制度は、熱の出入りが最も大きい窓の断熱改 修を中心に人気を呼び、省エネ・リフォームが注目を集めてきた。 太陽光発電のエネルギー変換効率は10%台だが、太陽熱利用のそれは40∼60%と5倍近く、4 ∼6m2程度の集熱パネルで給湯需要の半分程度は賄うことができる。太陽熱温水器は、一時、 悪質業者によるトラブルが相次ぎ評判を落としたが、近年は、屋根の上やバルコニーの手す りに集熱パネルを設置し、貯湯槽は軒下などに置く分離型の「ソーラー給湯システム」が増 えてきた。湯温が低いときは高効率のガス給湯器などが自動的に追い炊きする。床暖房や浴 室暖房、さらには冷房にも使える新製品も開発されてきており、今後が期待される。 太陽の熱エネルギーで暖まった空気そのものを集めて住居内を循環させ、暖房や給湯に使う というユニークなシステムもある。これは、石油などを高温で燃やして作る電気エネルギー を、暖房など低レベルの熱需要に使うのは「もったいない」という考え方に立ったものだ。 さらに、5m程度より深い地中の温度は年間を通してあまり変わらないことを利用して、外気 をいったん地中のパイプを通してから床下に吹き込むことによって、冬は外気よりは暖かく、 夏は外気よりは涼しい空気を屋内に送り込む地中熱利用もある。わが国ではまだあまり普及 していないが、地中熱ヒートポンプの利用はヒートアイランド現象の緩和にも役立つ。 14 信金中金月報 2011.6 はじめに ― 重要な熱エネルギーから のCO2排出量削減 わ が 国 の08年 度 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 は、 リーマンショックの影響を受け産業部門にお ける排出量が急減したため、12.8億トンと90 図表1 家庭における用途別エネルギー使用 量の変化 (単位:P・J) 90年度 暖冷房用 給湯用 厨房用 年度比1.6%増の水準まで大きく落ち込んだ。 動力他 しかし、家庭部門は、前年比では減少したも のの90年度比では24.3%も増加した状態にあ る。京都議定書が求める90年度比6%削減を 合計 08年度 増加量 477 583 106 26.9% 26.5% 24.7% 614 650 36 34.6% 29.5% 8.3% 159 178 20 9.0% 8.1% 4.6% 524 792 268 29.5% 35.9% 62.3% 1,774 2,205 431 100% 100% 100% 増加率 22.3% 5.9% 12.6% 51.2% 24.3% (備考)資源エネルギー庁『総合エネルギー統計』より作成 実現するためには、家庭部門におけるCO2排 出量削減策が強く求められている。 で、大幅に削減できる。このため、国は、かね 家庭部門のエネルギー消費増大の最大要因 てから住宅等を対象とした「省エネ基準」を策 は、51.2%増の「動力他」(エアコンを除く 定し、断熱性能などの向上を促そうとしてき 家 電、 照 明 等 ) に あ る(図 表1)。 こ れ は、 た。しかし、同基準をクリアする新築住宅は、 単身世帯を中心に世帯数が増加するととも 例年1∼2割にとどまってきたのが現状である。 に、TVやエアコンのみならず、DVDプレー そこで、国は、新築住宅の省エネ基準適合 ヤーやPCなど多数の電子機器が日常的に使 の義務化を目指すとともに、既存住宅の省エ 用されるようになったことが原因である。 ネ改修も加速させようとしている。幸い、後 しかし、 「暖冷房用」も24.7%増加しており、 者については、10年4月から始められた「住 家庭部門の全エネルギー消費の26.5%を占めて 宅エコポイント」制度の人気が高まり、よう いるし、 「給湯用」も、伸びこそ鈍化したもの やくはずみがつきつつある。これは、家電を の、依然として29.5%を占めている。同8.1%の 対象とした「エコポイント」制度にあやかっ 「厨房用」も含めれば、これら熱エネルギーの たもので、内窓や複層ガラスの設置といった 消費が全エネルギー消費のほぼ3分の2を占め 省エネ改修を行うと、総額30万円までエコ ている状況に変わりはない。家庭部門におけ ポイントが付与される。ブーム化してきたた るCO2排出量削減においては、熱エネルギー消 め、11年12月までの延長が決まった。 費の節減こそが重要であることが分かろう。 国は、さらに、中長期目標として、 「ゼロ・ 暖冷房における熱エネルギー消費は、住宅 エミッション住宅」あるいは「ネット・ゼロ・ の気密性を高めて熱を運ぶ空気自体の流出入 エネルギー住宅」の実現を掲げている。この を抑えるとともに、屋根や壁、床などから熱 観点からは、 「省エネ」のみならず、 「創エネ」 が逃げるのを防ぐために高断熱化を図ること が求められてくる。ここで、創エネというと、 調 査 15 一般には太陽光発電が思い浮かぶだろうが、 口を兼ねた開口部を大きく取っている点にひ 実は、もっと促進されてよいのが太陽熱の利 とつの特徴があるが、これは夏場が高温多湿 用である。太陽光発電のエネルギー変換効率 になるため、風通しを良くし湿気を外に逃す は10%台に過ぎないが、太陽熱利用のそれは ことが求められてきたことによる。 40∼60%に達するからだ。さらに、空気集熱 しかし、この構造は、省エネという観点か や地中熱利用といった省エネ手法もある。 らは大変効率が悪い。窓など開口部が大きい そこで、本稿では、第1章で、高気密・高 ということは、気密性が低く、冬は隙間風が 断熱化の有益さ、現行の省エネ基準とその普 入りやすいことになるからだ。また、床や、 及状況、住宅エコポイントの利用状況などを 壁、天井、窓などと、外気との断熱も図られて 述べ、第2章以降で、比較的ローテクかつ低 こなかったので、エアコンなどでいくら温風暖 コストで導入可能な、①太陽熱利用、②空気 房をしても、これらの表面温度はなかなか上 集熱、③地中熱利用による省エネ住宅への提 がらない。このため、室内に居ても、体感温 案を取り上げたい。 度は室温自体よりもかなり低くなってしまう。 これらは、いずれも地域の工務店にとって 室温が20℃であっても、断熱性の低い住 リフォーム・新築需要を産み出すものである 宅では、床や壁面の表面温度は10℃近くも とともに、地域金融機関にとっても住宅ロー 低くなり、これに熱を奪われるので(冷輻射 ン需要の拡大につながるものとなろう。 と い う )、 体 感 温 度 は15℃ 程 度 に と ど ま る (図表2)。これに対して、断熱性を高めた住 1.省エネのカギ握る住宅の高気密・ 高断熱化 宅であれば、室温が20℃の場合、表面温度 は18℃とあまり下がらないので、体感温度は 19℃になり快適な住環境が実現するという。 (1)高気密・高断熱化のメリット イ.在来住宅はなぜ寒いのか わが国の伝統的な木造住宅は、いわゆる 「掃出し」など、窓とベランダ等への出入り ロ.問題多い「個別暖房」 わが国では、冬場、室内が寒いのは仕方ない 図表2 室温・表面温度と体感温度 体感温度 15.4℃ 室 温 20℃ 体感温度 19℃ 外気温度 0℃ 表面温度 10.8℃ 低い断熱レベルの住宅 (備考)社団法人建築環境・省エネルギー機構資料より転載 16 信金中金月報 2011.6 室 温 20℃ 表面温度 18℃ 高い断熱レベルの住宅 こととされ、高度成長によって生活水準が大 ハ.高気密・高断熱で快適・健康に きく向上したのちも、住宅の暖房については、 これらの問題を解決できるのが、住宅自体 部屋ごとの「個別暖房」が当然視されてきた。 の高断熱・高気密化である。断熱性能を高め しかし、個別暖房にはいくつもの問題があ ると、室内の温度は、外気温の変化に影響さ る。まず、トイレやふろ場での脱衣時の急激 れにくくなり、一定の範囲内に保つことがで な温度変化が「ヒートショック」を招き、高 きるようになるので、冷暖房のエネルギー効 齢者などが心筋梗塞や脳卒中を引き起す危険 率を高め、消費量を大幅に削減できる。 性だ。これは、冬場に、暖かい室内から寒い 実際、80年代までに建てられた無断熱住宅 トイレに行ったり、寒い脱衣場からいきなり における「個別暖房」に要するエネルギー量で、 熱い風呂に入ったりすると、急激な温度変化 高断熱住宅では屋内の温度差をなくす「全室 によって血圧が急変し、心臓や血管に大きな 暖房」も可能になり 負担がかかってしまうことが原因だ。 宅環境をつくり上げることができるのである。 (注)1 、より快適で健康な住 また、部屋ごとの温度差が大きいと、室温 (2)低い省エネ基準達成状況 が低い所では結露しやすくなる。結露が生じ ると湿気でカビが発生し、これを栄養源とす イ.99年:「次世代省エネ基準」策定 るダニが発生してくる可能性がある。これらは 住宅について、国は、断熱性能の向上を主 アトピーなどのアレルギーやぜんそくの原因に 眼として「省エネ基準」 なる。特に、壁の内側や床下、小屋裏などで してきた(図表3)。「次世代省エネ基準」と 内部結露が生じると、柱や土台が腐りやすく 呼ばれる現行基準は99年に策定されたもの なり、住宅の耐久性が弱まることにもなる。 で、東京などの「Ⅳ地域」を例にとれば、断 (注)2 を設け、逐次強化 図表3 省エネ基準ごとの断熱仕様等の比較 項目 性能基準 80年以前 80年基準 92年基準 2 2 99年基準(現行基準) 2.7W/(m2K)以下 熱損失係数 − 5.2W/(m K)以下 断熱材(外壁) なし グラスウール30mm グラスウール55mm グラスウール100mm 断熱材(天井) なし グラスウール40mm グラスウール85mm グラスウール180mm 開口部(窓) アルミサッシ +単板 アルミサッシ +単板 アルミ二重サッシ 又はアルミサッシ+複層 ガラス 仕様基準 年間暖冷房費 (注) 年間暖冷房エネルギー消費量 (注) 4.2W/ (m K)以下 アルミサッシ +単板 約133千円/年 約92千円/年 約75千円/年 約52千円/年 約56GJ 約39GJ 約32GJ 約22GJ (注)一定の仮定をおいて、国土交通省において試算 (備考)国土交通省・経済産業省・環境省[2010]より作成 (注)1.すでに、北海道など寒冷な地域では、高気密・高断熱住宅における全室暖房が一般化しており、冬場でも健康で快適な屋 内生活が実現している。 2.第2次石油ショック時の79年に制定された省エネ法( 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」 )に基づくもので、逐次改 正されてきた。工場や大規模な建築物については、建物の断熱性能と設備の省エネ性能の両者について省エネ基準を強化し てきている。 調 査 17 熱材であるグラスウールを天井に18センチ、 壁や床には10センチほど敷き詰め、窓には 図表4 年間暖冷房エネルギー消費量の試算 (GJ/年・戸) 60 アルミ二重サッシ、またはアルミサッシ+複 50 層ガラスを用いるとしている。 40 なお、省エネ基準は、全国を6つの地域に 30 20 細かく区分し、地域ごとに断熱性や日射遮蔽 (注)3 性等に関する基準を規定している 。この 10 0 無断熱 80年基準 92年基準 99年基準 基準に従えば断熱性能が大きく高まるので、 (備考)図表3に同じ。 「Ⅳ地域」における一戸あたり年間の冷暖房 エネルギー消費量は22GJと、無断熱の住宅 能の確保に加え、暖冷房や換気、照明、給湯、 の56GJと比べると6割も減少し(図表4)、年 太陽光発電等における高効率機器の利用など 間の暖冷房費も約13.3万円から約5.2万円ま によって、エネルギー消費量を99年基準から で減少すると試算されている。 さらに10%減らすことを求めたものである。 ロ.08年:省エネ規制の対象拡大と「トッ ハ.税制面等からも支援措置 プランナー基準」の導入 国は、住宅の省エネ対策を促そうと、資金 京都議定書第1約束期間(08年度∼12年度) 面や税制面からも様々な支援措置を講じてき が迫った08年には、住宅についても省エネ規 た。たとえば、「優良住宅取得支援制度」(フ 制が強化された。従来から届出義務を有して ラット35S)では、省エネ性能などに優れた いた2,000m2以上の大規模な住宅・建築物につ 住宅であると認められれば、借入金利が一定 いて命令・罰則規定を導入するとともに、新 期間引き下げられる。 たに300m2以上の中小規模の住宅・建築物も届 また、省エネ改修に対する税制優遇措置も 出義務の対象としたのである(10年4月施行) 。 講じてきた。所得税から、工事費用のローン残 加えて、年間150戸以上供給する住宅事業 高の2%相当額を5年間、または工事費用の10% 者(いわゆる「ハウスメーカー」 )に対しては、 相当額を控除でき、さらに、工事翌年度の固定 現行の省エネ基準よりもさらに1割エネルギー 資産税の3分の1も控除できるなどである。 消費を減らすことを求めた「トップランナー基 準」の達成を5年以内に求める(13年に供給す ニ.省エネ基準達成が進まない理由 る住宅の平均値がこれを上回る)こととした。 以上のとおり、国は様々な省エネ対策を打 これは、戸建・建売住宅について、断熱性 ち出してきたが、従来、実績は芳しいとは言 (注)3.Ⅳ地域には、北海道、東北6県、新潟、栃木、長野、宮崎、鹿児島、沖縄を除く本州・四国・九州の34都府県が含まれる。 ただし、厳密には同一都道府県内でも市町村単位で異なる地域に区分されていることがある。 18 信金中金月報 2011.6 えなかった。 の開口部の断熱性能向上に50∼60万円/戸程 00年から省エネ性能を等級表示する「住宅 度のコストを追加すればよいし、さらに、高 性能表示制度」が導入されている。これは、 「住 効率給湯器などの設置を求めたトップラン 宅品質確保法」に基づき、 「99年基準」を満たす ナー基準に適合するには、10∼20万円/戸程 もの を「等 級4」 、 「92年 基 準 」のもの を「等 級 度のコストをかければ済む 3」 、 「80年基準」のものを「等級2」 、 「対策なし」 のコスト増が一般になかなか受け入れられて を「等級1」という4段階に分けて表示するもの いないようだ。節減できるエネルギーコスト だ。この性能表示制度によれば、99年基準を だけで単純に考えると省エネ投資の回収には 達成している新築住宅 ( 「等級4」 ) は36%に達す 25年もかかる計算になるからで る。しかし、住宅性能表示を行っているのは全 は、限られた資金の中では、インテリアの充 新築住宅の2割程度にすぎず、新築住宅全体で 実などに予算を振り向けがちなようである。 (注)4 。しかし、こ (注)5 、一般に は、99年基準の適合率は現在でも1∼2割程度 の低水準にとどまっていると推定されている。 その最大の理由は、床面積、戸数とも8割強 (3)中長期目標は「ゼロ・エミッション住 宅」の普及 を占める2,000m2未満の住宅や建築物には、こ 一方、世界に目を転じると、すでにEUで れまで省エネ法に関する届け出義務がなく、 は英独を中心に住宅における省エネ基準の遵 規制の対象外であったことである(図表5)。 守が義務付けられており、米国やカナダでも 断熱材はそれほど高価なものではないの 州レベルで義務化されている。しかも、先進 で、数千万円は必要となる新築費用全体のな 国では一般に、断熱性能のみでなく、設備の かでは、特別大きなものではないとも言え 省エネ性能も含めた総合的な基準が設けられ る。 新 築 住 宅 が99年 基 準 に 適 合 す る に は、 ている 92年基準に比べ、天井、床、壁や、窓など そこで、わが国でも、 「エネルギー基本計 (注)6 。 図表5 新築住宅の面積区分別分布 0∼300m2 (単位:%) 300∼2,000m2 2,000m2∼ 床面積 (約80百万m2) 64.4 16.7 18.9 棟数(約44万棟) 94.0 5.4 0.6 戸数(約95万戸) 50.9 29.7 19.5 (備考)平成20年度『建築統計年報』より作成 (注)4.ちなみに、これらの省エネにより、CO2排出量を、それぞれ0.5∼0.6t-CO2/戸・年、0.3∼0.4t-CO2/戸・年を削減できる。既 存住宅では、92年基準から99年基準相当に省エネ改修する場合は、200万∼300万円かかるが、CO2削減効果は0.5∼0.6t-CO2/ 戸・年に達する。 5.ただし、高断熱化すれば、たとえば風邪の罹患率は38%も減少するといった研究もある。疾病による経済損失、すなわち 医療費支出や、仕事を休むといったコストも考えれば、投資回収年数は10年近く縮まるといった見方もできるが、こうした 考え方は一般には浸透していないようだ。 6.英国は、16年までにすべての新築住宅を「ゼロカーボン化」し、非住宅については、19年までに既存建築物を含むすべて をゼロカーボン化するとの意欲的な目標を掲げている。また、米国では、30年までに業務用の新築ビルはすべてゼロ・エネ ルギー・ビルにするとともに、住宅についても、20年までにゼロ・エネルギー・ハウスを開発するとしている。 調 査 19 画」の見直しのなかで、家庭・業務部門につ 急経済対策」で新たに導入された「住宅エコ いて、①20年までにZEH( 「ゼロ・エミッショ ポイント制度」は、家電でなじみのある「エ ン・ハウス」または「ネット・ゼロ・エネル コポイント」という名称を用いたこともあり、 ギー・ハウス」 )を標準的な新築住宅とし、お 急速に人気を集めてきた。 おむね新築の半分を目指す一方、既築住宅の これは、省エネにつながる住宅の改修をし 省エネ改修を現在の2倍程度まで増加させる、 たり、省エネ住宅を新築すると、1戸あたり30 ②30年までに、LCCM(ライフサイクル・カー 万ポイントを上限として、商品などと交換でき (注) 7 ボンマイナス) 住宅を増やし、30年までに るポイント(1ポイントにつき1円)がもらえる 新築住宅全体の平均でZEHを実現すること もので、戸建て住宅だけでなく、マンション を目標とすることとした(図表6)。この実 なども対象としている。 現に向け、10年度内にも、省エネ基準義務 制度を立ち上げた当初は、数千万円はかか 化の対象や時期などをとりまとめ、さらに、 る新築住宅に30万円程度の補助金ではたい 断熱に加え、高効率給湯器や、照明、太陽光 したインパクトはないだろうとの懐疑的な見 発電等の設備も含めた住宅全体の新たな省エ 方も多かった。しかし、工務店などの営業努 ネ基準を策定していく方針である。 力もあり、10年2月の開始以来、ポイントの発 行は月を追って増えてきた。10年12月末まで (4)住宅エコポイントで断熱改修が人気化 の累計発行件数は約315千件、約544億ポイ イ.累計申請件数は36万件にも ントに達しており(図表7)、累計申請件数 「はじめに」で述べたとおり、09年末の「緊 は360千件を超えた。 図表6 エネルギー基本計画見直しに向けた施策アクションプラン: ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス ∼2011年度 ∼2015年度 ∼2020年度 ZEHを標準的な新築住宅とする 住宅の省エネ基準の達成に向けて、 義務化の対象、時期、必要な支援 策などについて、2010年内を目途 にとりまとめる ∼2030年度 新築住宅の平均でZEHを実現 基準達成義務化 断熱のみならず、設備(高効率給湯器、照明、太陽光発電 等) も含めた住戸全体のエネルギー消費の基準の検討 省エネ法の執行強化 (現在では1∼2割の基準達成率の向上) 住宅版エコポイントの活用による省エネ化の推進 技術面のイノベーションを支援 規制強化とパッケージとした、予算上の支援、 税制上のインセンティブなどの強化 (備考)国土交通省・経済産業省・環境省[2010]より転載 (注)7.居住時における省エネや再生可能エネルギーの活用のみならず、資材製造時や建築時のCO2の排出量削減を図ることに よって、建築から解体、再利用に至るまでのライフサイクル全体におけるCO2排出量をマイナスにする取組みをいう。 20 信金中金月報 2011.6 図表7 住宅エコポイントの実施状況(10年12月末) 戸数 エコポイントの発行 ポイント数 (百万) 件数 357,759 315,277 54,447 新築 148,546 110,076 44,564 リフォーム 209,213 205,201 11,883 窓の断熱改修 㽎 202,216 9,641 外壁、屋根・天井又は床の断熱改修 㽎 11,342 1,152 バリアフリー改修 㽎 44,671 1,167 (備考)住宅エコポイント事務局・ホームページより作成 ロ.窓や外壁などの断熱改修が対象 差の解消や、廊下幅等の拡張について、最大 エコポイントの対象の第1は、窓の断熱改修 2.5万ポイントをもらえる。 だ。たとえば、既存のベランダ窓の内側に樹 新築の場合は、①99年省エネ基準を満た 脂製サッシの内窓を入れる「内窓設置」は、18 す外壁や窓等を有する木造住宅、または② 千ポイントもらえる(2.8m2以上の場合) 。古い ト ッ プ ラ ン ナ ー 基 準 相 当 の 住 宅 で あ れ ば、 サッシを窓枠ごと新しい断熱サッシに交換す 30万ポイントもらえる。 る「外窓交換」も同様だ(図表8) 。窓枠はそ のままにして、単板ガラスを2枚重ねの複層ガ ハ.窓の断熱改修に人気集中 ラス(ペアガラス)に交換する「ガラス交換」の 窓は、住宅の中でもっとも熱の出入りが大 場合は、1枚につき最大7千ポイントもらえる。 きい部分だ。夏の冷房時には、窓から流入し 第2は、外壁や、屋根・天井、床の断熱改 てくる熱の割合は全体の71%にもなる。冬の 修だ。外壁には10万ポイント、屋根・天井 暖房時も、窓から流出していく熱の割合は には3万ポイント、床の断熱には5万ポイン 48%だ(図表9)。この窓を、これまでのアル トが発行される。 ミサッシと単版ガラスから、樹脂サッシと さらに、バリアフリー改修の場合も、他の 「低 放 射(Low-E) 複 層 ガ ラ ス 」 に 替 え れ 断熱改修と併せて行えば、手すりの設置、段 ば、熱損失を6割以上も減らせる(図表10)。 図表8 窓の断熱改修についてのポイント数 1箇所あたりのポイント数 大きさの区分 大 中 小 内窓設置・外窓交換 ガラス交換(1枚あたり) 面積 ポイント数 面積 ポイント数 2.8m2以上 18,000 1.4m2以上 7,000 1.6m2以上 2.8m2未満 0.2m2以上 1.6m2未満 12,000 7,000 0.8m2以上 1.4m2未満 0.1m2以上 0.8m2未満 4,000 2,000 (備考)図表7に同じ。 調 査 21 図表9 熱の流出入割合 (%) 図表10 熱損失の比較 (①を100とした場合) 窓などの 開口部 外壁 夏の冷房時 (昼) 熱の流入割合 71 13 9 5 2 冬の暖房時 熱の流出割合 48 19 6 17 10 屋根 換気 床 (備考)社団法人日本建材・住宅設備産業協会 「21世紀の住宅には、開口部の断熱を…!」より作成 特にサッシの二重ガラスの内側に透明な金 属膜をコーティングし、遮熱性を高めた低放 射複層ガラスは、冬場に差し込んでくる直射 ①アルミサッシ+単板ガラス 100.0 ②アルミサッシ+複層ガラス 71.4 ③アルミ・樹脂複合サッシ+複層ガラス 53.5 ④樹脂サッシ+低放射複層ガラス 35.7 (備考)図表9に同じ。 図表11 内窓・リフォーム用ガラスの出荷量 の推移(前年同月比・推計) (%) 内窓 リフォーム用ガラス 500 日光はほとんど通過させて室内を暖かくする 400 一方、外へ逃げようとする赤外線は反射させ て熱の流出を抑えるので、屋内が寒くなるの 300 を防げるという優れものだ。 200 前掲図表7に示したとおり、これまでのと 100 ころ、住宅エコポイントの申請件数のほぼ3 0 分の2がリフォームだが、そのほとんどが窓 10年2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 の断熱改修だ。なかでも、内窓は比較的手軽 (備考)経済産業省「住宅エコポイント開始以降の内窓と リフォーム用ガラスの出荷状況について」より作成 に設置できるので最も人気が高い。 従来はリフォームを思い立っても工務店等 このほか、壁断熱に使われるグラスウール に問い合わせるしかなかったが、住宅エコポ の需要も急増し、一部は品薄状態に陥った。 イントは、家電量販店やホームセンターなど も扱うようになったため、消費者の目に付く ホ.11年末まで延長・新規追加 ことが多くなったことも、人気に寄与してい エコカー減税は10年9月に打ち切られ、家 るようだ。都市部では、騒音対策や外への音 電のエコポイント制度も10年12月からポイン 漏れ防止も目的にしている人も多く、量販店 ト数が半減し、11年3月末に終了したが、逆 では、エアコンのほか、音響機器の拡販にも に住宅エコポイントは、11年末まで、工事着 つながっているという。 工ベースでの申請が受け付けられることに なった。 ニ.内窓や複層ガラスに特需 しかも、それまでの窓の断熱改修などに加 おかげで、10年中は、内窓は前年同月比3 え、太陽熱利用システム(ソーラー給湯シス 倍前後、複層ガラスも同2倍程度の売れ行き テム)、節水型便器、高断熱浴槽(魔法びん が続いた(図表11)。 浴槽)の3つが、新たに追加された。いずれ 22 信金中金月報 2011.6 も2万ポイントであるが、住宅エコポイント を利用した給湯・暖房システムを紹介しよう。 制度を知り始めた消費者のいっそうの関心を 惹くことが期待されている。地域の工務店に イ.世界的には人気沸騰 とっては、それだけリフォーム需要を喚起す 太陽熱利用設備の06年における導入実績 るチャンスが拡大することになろう。 を 見 る と、 中 国 が1,800万m2と、2位 の 米 国 (157万m2)や、3位のドイツ(153万m2)を大き 2.もっと普及してよい太陽熱利用シ ステム (1)中国やEUで人気高まる太陽熱温水器 く引き離して、圧倒的なシェアを有している (同年の日本の実績は28万m2、㈳「ソーラー システム振興協会」調べ)。 屋根の上に集熱器とタンクを載せ「太陽の しかし、近年、欧米でも急速に利用が拡大 熱でお湯をつくる」太陽熱温水器を見たこと している。ドイツが太陽光発電の固定価格買 がある人は少なくないだろう。わが国での需 取制度の導入に踏み切って一気に世界最大の 要は80年代後半以降落ち込んだままだったが、 導入量に達したことは有名だが、太陽熱利用 世界的にはこのところ中国やEUなどで設置が 設備も年率20%の伸びを続けている。 急増している。わが国でも最近になって太陽 欧州においては2000年代後半から新規設置 熱の高いエネルギー変換効率を見直す動きが 面積が大きく伸び始めた。図表12によれば、 広がってきた。様々な新製品も登場し、上述 2000年では150万m2程度にすぎなかったが、 のとおり、延長された住宅エコポイント制度の 08年には500万m2弱まで急増したことがわか 中にも、 「太陽熱利用システム」として新たに る。伸びを牽引しているのはドイツで、全体 取り入れられた。そこで、本章では、太陽熱 の38%を占めており、イタリア、スペインな 図表12 欧州における太陽熱利用設備の推移 Kwh Solar Thermal Market in EU 27 and Switzerland (Glazed Collectors) m2 3,500,000 5,000,000 3,000,000 4,000,000 2,500,000 3,000,000 2,000,000 1,500,000 2,000,000 1,000,000 1,000,000 500,000 0 1999 2001 2003 2005 2007 2009 0 Germany Top 6 countries except Germany (Italy, Spain, Austria, France and Greece) Other 21 EU countries and Switzerland ⒸESTIF 2010 (備考)Solar Thermal Markets in Europe ‒ Trends and Market Statistics 2009(June 2010)より転載 調 査 23 (注) 9 イン的にも必ずしも好評とはいえず どがこれに続いている。 、調 理・洗面等も含め、蛇口を回せばすぐに適温 ロ.わが国では80年代初めをピークに需要 の湯が出る一体型のガス給湯設備が普及した 今日では、魅力に乏しくなっていたのは事実 減退 太陽熱温水器は、すでに戦前から生産され である。 ておりその歴史は古い。わが国で需要が大き く 増 え た の は73年 の 石 油 シ ョ ッ ク 以 降 で、 80年には年間販売台数が約83万台に達した。 (2)高いエネルギー効率を誇り、しかも低 コスト しかし、その後の石油価格の低下とともに販 イ.太陽光発電に比べ約5倍の高効率 売は急激に減少し、ピーク時は200社にも及 太陽熱温水器のエネルギー変換効率は40 んだメーカー数も、今では10社程度に減っ ∼60%と極めて高く、7∼18%ほどにすぎな てしまった。 い太陽光発電と比べ、圧倒的に優れている。 これまでの累計設置台数は672万台で、現 家 庭 用 太 陽 光 発 電 装 置 は、 発 電 能 力3∼ 在およそ200万台の太陽熱利用設備が全国で 5kw(年 間 発 電 量3,000∼5,000kwh) 程 度 の 稼働しているが、08年時点の年間販売台数 システムが一般的であるが、この発電量を確 は約6.5万台まで落ち込んでしまった。 保するには22.5m2∼37.5m2もの発電パネルを 不振に陥った原因はいくつか指摘されてい 要 す る(図 表13)。 こ れ は、 年 間 発 電 量 が る。冬場や雨天の日には十分な湯温に達しな 1m2当たり130kwh程度に過ぎないからだ。一 いことがあるのは仕方ないとしても、従来か 方、太陽熱集熱パネルであれば、1m2当たり らの屋根に集熱器とタンクを置く一体型の温 52万kcalを 集 熱 で き る。1kwhは860kcalに 相 水器は、お風呂への給湯専用とされ水道法の 当するので、1m2当たり600kwhという計算に (注)8 規定により飲料用等には使えない 。屋根 上のタンクとの高低差を利用するだけの自然 図表13 太陽光発電装置と太陽熱集熱器の 比較 循環式では、シャワーの水圧が弱いという問 太陽光発電 3∼5kWシステム 一般家庭用 設置システム 太陽熱集熱器 2枚∼4枚 題もあった(ただし、これは加圧ポンプを利 ( ) 22.5m2∼37.5m2 面積に直すと 4∼8m2 用すれば解消する)。 1kWシステム =年間1,000kWh 発電 それぞれ 1単位あたり 1m2 =年間 520,000kcal集熱 1000kWh=7.5m2 に相当、 1m2 =年間130kWh 1m2あたりに 換算すると・・・ 1kWh=860kcal に相当、 1m2 =年間600kWh しかし、一番のダメージとなったのは、一 時、一部の悪質業者による強引な訪問販売 や、いい加減な施工、メンテナンス不足など が横行し、評判を落としたことだった。デザ (備考)チリウヒーター㈱資料より作成 (注)8.ただし、水道法上飲料として使えないのは、厳密に言えば他の給湯器でも同じである。 9.ただし、欧米でも屋根にタンクを置く方式はごく一般的であるという。チリウヒーター㈱(愛知県知立市、資本金10百万 円、従業員数25名)に取材した。 24 信金中金月報 2011.6 なる。これは、太陽光発電に比べおよそ5倍 ロ.分離型(ソーラー給湯システム)でも低 近い高効率であり、通常4∼8m2も設置すれ 価格 ば、家庭の給湯需要の半分程度は賄うことが さらに、太陽熱利用設備は、太陽光発電と できる。 異なり、高価な部材を使っていないためコス 夏 場 に は 最 高70∼80℃ ま で 熱 く な る し、 トも安いのが大きな魅力だ。太陽光発電は、 冬場でも、30℃程度のぬるま湯は確保でき 3.5kwの標準的なもので200万円はかかるが、 るので(図表14)、補助ボイラーで少し加熱 従来からのタンクを屋根に置いて水をそのま するだけで、入浴適温である42℃程度まで ま温める一体型なら20∼30万円で済む。 簡単に引き上げられる。 分離型の「ソーラー給湯システム」(図表 年間のエネルギー節約量は、灯油で222∼ 16)でも、60∼90万円で設置できる。これ 445ℓ、LPガ ス で163 ∼ 325kg程 度 に 及 び、 は、屋根の上には集熱パネルだけを載せ、軒 CO2排 出 量 も420∼1,360㎏ 程 度 削 減 で き る 下に設置した貯湯タンクとの間で、寒冷地で も凍らないよう、不凍液をポンプで強制循環 (図表15)。 図表14 給湯温度の年間変化 (℃) 晴天時最高到達温度 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 最高平均温度 水道平均水温 入浴温度の目安 (42℃) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (月) (備考)チリウヒーター㈱ホームページより作成 図表15 太陽熱利用機器1台あたり1年間のエネルギー節約とCO2削減量 比較エネルギー 太陽熱温水器 集熱面積 3.0m2 集熱量 156万kcal エネルギー節約 CO2削減量 ソーラーシステム 集熱面積 6.0m2 集熱量 312万kcal エネルギー節約 CO2削減量 LPG 節約量/163kg 節約額/47,433円 489kg-CO2 節約量/325kg 節約額/94,575円 975kg-CO2 都市ガス 節約量/199m3 節約額/27,044円 420kg-CO2 節約量/397m3 節約額/53,952円 838kg-CO2 灯油 節約量/222ℓ 節約額/16,805円 553kg-CO2 節約量/445ℓ 節約額/33,687円 1,108kg-CO2 電力 節約量/2,267kWh 節約額/52,141円 680kg- CO2 節約量/4,535kWh 節約額/104,305円 1,360kg-CO2 (備考)図表14に同じ。 調 査 25 させて水道水と熱交換するものである。 この集熱パネルであれば、1面(2m2)40kg 図表16 ソーラー給湯システム (分離型・不凍液強制循環方式) 弱程度の重さなので、屋根に大きな荷重はか からない。デザインも太陽光パネルとほぼ同 様であり、屋根と調和しているので住宅の外 観を損なわない。新築用には、建材一体型集 熱パネルも開発されている。貯湯タンクの容 量は、設置場所や家族構成に応じて自由に選 (備考)チリウヒーター㈱ホームページより転載 べるし、タンクの中は、不凍液が流れる熱媒 基本的に個別入浴なので、日中から大きな給 路が通っているだけなので、不凍液がお湯に 湯需要があり、重宝しているという。ゴルフ 混ざり込む心配はない。水道に直結している 場でも、午後から発生する大量の給湯需要に ので、シャワーの水圧にも問題はない。 合わせて貯湯しておけるので好都合なようだ。 初期投資の回収には、太陽光発電は補助金 等がなければ20年以上かかるが、太陽熱利 用では、一体型であれば10年程度、分離型 でも15年程度で済むという。 (3)「 ソーラークーリングシステム」も含 め、新製品が続々登場 イ.高効率ガス給湯器と連動し追い焚き しかも、近年、高効率のガス給湯器などと ハ.業務用にも活用広がる 連動させ、太陽熱で暖められた温水を優先し ソーラー給湯システムは、家庭用のみなら て利用しつつ、不足分はガスでバックアップ ず、業務用としても、高齢者福祉施設や、ゴル する新製品が次々と登場してきた。この背景 フ場、リゾートホテル、スポーツ施 設、温 水 には、電力業界が推進する「オール電化」に プールなどで、床暖房や給湯に活用されている 対抗すべく、ガス業界が本腰で製品開発に乗 (図表17) 。老人ホームなどの介護施設では、 り出し、大手ハウスメーカーも、太陽光発電 図表17 業務用ソーラー給湯システム(高齢者福祉施設とゴルフ場の事例) (備考)図表16に同じ。 26 信金中金月報 2011.6 だけでなく、太陽熱利用にも目を向け始めた 図表18 マンションの手すりに集熱器 ことがある。 雨天や曇天などで集熱温度が高まらずタン ク内の湯温が低いときは、内蔵してある給湯 器が追い炊きするので湯切れの心配はない。 使い勝手は通常の給湯器と同じであり、床暖 房や浴室暖房・乾燥、ミストサウナなどに利 用できるタイプのものもある。これらであれ ば、蓄熱した太陽熱を余すことなく利用でき (備考)東京ガス㈱ホームページより転載 ることになる。 冷房も可能である。実際、小規模な業務用ビ ロ.バルコニーの手すりにも集熱パネル ルの空調向けとして、冷暖房需要に応える さらに、マンションなどのバルコニーの手す 「ソ ー ラ ー ク ー リ ン グ シ ス テ ム 」 も で て き りに垂直に集熱パネルを設置した新製品も、 た。夏場は、集めた太陽熱を「ソーラー吸収 東京ガス㈱などから発売された (図表18) 。1m2 冷温水機」で冷房に利用する一方、冬場は通 ほどのパネル3枚を設置し、約100ℓのタンクに 常の給湯暖房器を使って暖房に使用する。太 貯湯する。タンクに蓄えた温水は、給湯暖房 陽熱を優先的に利用するが、天候次第で集熱 器を通して、給湯のみならず、床暖房や浴室 量が足りないときは、ガスで自動的にバック (注) 10 暖房に利用することもできる 。集合住宅で アップする点は同様である。 は屋上に限りがあるので、太陽光発電は入居 者別にはたいした発電量に達しないが、バル (4)行政も積極的支援へ コニーの手すりを集熱に利用するのであれば、 環境省は、太陽熱利用の促進により、家庭 各戸ごとに太陽熱を利用できることになる。 部門のCO2排出量を14%削減できるとしてい る。そして、その導入拡大のためには新たな ハ.冷房も可能 方策が必要であるとして、10年度から、 「太陽 太陽熱は温水として蓄えられるので、給湯 熱利用システム」 (強制循環式の太陽熱温水器) や暖房にしか使えないと思われるかもしれな のリースを行う事業者に対し、機器購入費と い。しかし、業務用の冷凍工程で一般に使わ 工事費の2分の1を補助する「家庭用太陽熱利 れている「ガス吸収式冷温水機」であれば、 用システム普及加速化事業」を開始した (注)11 。 (注)10.これだけで、一般的な4人家族世帯の場合、給湯使用量の約22%を太陽熱で賄うことができるという。CO2は従来の給湯 器に比べ32%も削減できる。ガス業界は太陽熱利用温水システムについて「SOLAMO」 (ソラモ)という統一呼称を用いだし た。「空のエネルギーも、ガスがもっと活かしていく」との思いを込めたものという。ECOJAPAN[2010b、2010c]参照 11.これを受け、東彩ガス(埼玉県越谷市)では、月3,800円(期間15年)のリース料で、ソーラーシステムの設置を始めた。 ガス代は約半分になるという。ECOJAPAN[2010c]参照 調 査 27 一方、東京都は「環境確保条例」を制定 まった空気そのものを住居内に循環させて、 し、全国に先駆けて10年度より大規模事業 暖房や給湯に使おうというユニークなシステ 者に対してCO2排出量の削減を義務付けてお ムもある。OMソーラー㈱(静岡県浜松市、 り、09年 度 か ら、 住 宅 向 け に 太 陽 エ ネ ル 資本金約194百万円、従業員36名)の「空気 ギー利用機器の設置に対する補助制度を開始 集 熱 式 ソ ー ラ ー シ ス テ ム 」 が そ れ で あ る。 (注)12 した 。 87年から事業を開始した同社は、現在170社 しかし、2年間で計4万件の目標に対し、10 の工務店ネットワークを有し、累計24,000棟 年12月末時点で、太陽光発電には約14,000件 の住宅と公共建物等約600棟の建築支援実績 の応募があったものの、太陽熱利用は約300 を持つ (注)13 。 件に過ぎなかった。そこで、都は、都内の新 築分譲着工戸数の約7割が集合住宅であるこ とに着目して、11年度から「集合住宅等太 (1)「もったいない」から始まったパッシブ ソーラー 陽熱導入事業」を開始することとした。これ OMソーラーの考案者奥村昭雄氏は、第1次 は、住宅関連事業者(デベロッパーやハウス 石油ショック以前から「環境共生住宅」に関 メーカーなど)に対し、設置費用(機器購入 心を持ち、温風床暖房システムの研究を続け 費と工事費)を最大2分の1まで補助するも てきており、83年には体育館の設計に「空気 ので、太陽熱利用設備設置へのはずみがつく 集熱式ソーラーシステム」を採用した。様々 ことが期待される。都市部など住宅が密集し な建築家たちの試みが持ち寄られ87年に誕 ている地域では、太陽光発電には十分な日照 生したのが、OMソーラーシステムだ。 が得られないケースも考えられるが、設置面 同社の提唱する住宅は、「パッシブシステ 積が小さくて済む太陽熱利用設備であれば、 ム」という考え方に立っている 最も日照が多い部分に集熱パネルを設置すれ 本にあるのは、石油などを高温で燃やして作 ばよいのでより効率的だろう。 る電気エネルギーは照明や動力に使うべきで (注)14 。その基 あって、暖房や給湯に使うのは「もったいな 3.空気で集熱し暖房・給湯に用いる ソーラーシステム い」という考え方だ。そもそも暖房や給湯に 求められる温度はそれほど高いものではな 以上は、太陽の熱エネルギーを集熱パネル い。 冬 の 室 温 は20℃ 程 度、 給 湯 も40℃ ∼ で集めて温水を作り、給湯や暖房などに用い 60℃もあれば十分だ。この程度の熱エネル るものであったが、太陽の熱エネルギーで暖 ギーは、屋根に降り注ぐ太陽熱を活かせばか (注)12.太陽光発電システムには発電能力1kW当たり10万円、太陽熱利用システムにはソーラーパネル1m2当たり最大3.3万円を 補助した。 13.同社村田昌樹取締役情報企画部長に取材した。 14.これは、73年に米国の建築家A.バウエンが提唱したもので、太陽エネルギーをはじめとする自然エネルギーを巧みに建 築の中に取り入れて活かす技術や仕組みをいう。OMソーラー㈱ホームページ参照 28 信金中金月報 2011.6 なりの部分は賄える。家庭用の低レベルの熱 的に使えばよい。ただ、まずは建築・設計の 需要に高度な電気エネルギーを使うのはもっ 工夫により、自然エネルギーをできるだけう たいない。 「熱で済む用途には熱を使うのが一 まく取り入れ、足りない分だけ他で補おうと (注)15 番単純で無駄がない」 というのである。 いう提案である。パッシブなやり方で自然の OMソーラーの住宅では、軒下から取り込 チカラをできる限り生かし、四季を通じて んだ新鮮な外気を太陽熱で暖めて暖房や給湯 「ほどほどに心地よい住宅」をつくろうとい に利用する。冬場は小屋裏からダクトを通し (注)16 うのである 。 ていったん床下に送り込み、床下の基礎コン クリートに蓄熱させ、その熱で床および室内 (2)空気の熱で、冬は暖房、夏は給湯 を暖める。夏場は暑くなった空気を熱交換に イ.冬は屋根で集めた熱で床下から暖房 よって水を温めるのに使い、給湯に利用す OMソーラーの仕組みを、もう少し具体的 る。広く薄くまんべんなく降り注ぐ太陽エネ に、まず冬の場合から説明してみよう(図表 ルギーを、パッシブな(受動的な)やりかた 19)。OMソーラーの住宅では、屋根の仕上 で、そのまま利用しようという発想だ。 材と下地の間にすき間を作ってある。屋根が もちろん、便利な電気やガスを一切使わな 太陽熱で暖まってくると、軒下の取り入れ口 い「昔の生活に戻れ」というわけではない。 (1)から入ってきた新鮮な外気は、屋根との 日差しがない日は暖かくならないのは当然 間の通気層(2)で次第に暖められ、ゆっくり だ。そういう時は無理をせず、暖房器を補助 と上昇していく。屋根の上層部にはガラス付 図表19 OMソーラーによる暖房の仕組み(冬の場合) ファン運転用 4 ガラス付き集熱面 太陽電池(※) 5 棟ダクト 3 ガラス無し集熱面 2 集熱空気層 室内空気循環口 6 ハンドリング ボックス 7 立ち下がり ダクト 1 外気取り入れ口 OM貯湯槽 10 床吹き出し口 8 床下空気層 9 蓄熱コンクリート ※自立運転型ハンドリングの場合 (備考)OMソーラー㈱ホームページより転載 (注)15.OMソーラー㈱ホームページ参照 16.OMソーラーは、床下から温めるので、暖房していると感じないようなほんのりとした自然の暖かさに特長がある。 「ちょう ど、電気毛布の暖かさと、日に干した布団のぬくもりの違いに似ているかもしれない」という。OMソーラー㈱ホームページ参照 調 査 29 きの集熱面(4)が取り付けてあり、これが温 図表20 蓄熱した場合の室温の変化 室のような働きをするので、温度はさらに上 ピークの遅れ 昇する。気象条件次第だが、冬でも快晴の日 蓄えられる熱量 集熱量 発散 (放熱) する量 室温 は60℃にもなるという。家の中には、大黒 柱のように太いダクトが、小屋裏から床下に 変動幅縮小 外気温 向かって通してある。小屋裏に設置したハン ドリングボックス(6)の中にある電動ファン が、棟ダクト(5)に集まった熱い空気を、立 (注)17 下りダクト(7)を通して床下に送る 。 6時 12時 18時 0時 6時 (備考)OMソーラー㈱ホームページより転載 が義務付けられているが、換気すればその分 床 下 空 気 層(8)に 送 り 込 ま れ た 熱 い 空 気 熱は失われてしまう。しかし、OMソーラー は、床下の基礎コンクリート(9)を温め、少 では、寒い冬でも、新鮮な外気が暖められて し冷めながらも、床の吹き出し口(10)から から室内に入ってくるので、換気による熱損 微風となって室内に流れ出ていく。同時に、 失も気にならない。 建物全体を床下空気層からの輻射熱によって もちろん、太陽の熱だけですべての熱エネ 温めるので、北側や廊下、トイレも寒いとい ルギーを賄うことは困難だ。日が射さない時 うことはない。床が全面にわたって暖められ は太陽熱が不足するので補助暖房が必要にな るので、室温があまり上がらなくても温かく ることもある。ただし、その場合も床下で蓄 感じることができる。 熱しているので、一般の住宅に比べ必要とす コンクリートは熱が伝わりやすく、いった るエネルギー消費量は少なくなる。給湯の場 ん温まると冷めにくい。このため、外気温が 合も、水道水からいきなり温水を作るのに比 下がってくる夕方から翌朝にかけても、床下 べれば、ぬるま湯からの追い炊きに必要なエ のコンクリートが日中蓄えていた熱をゆっく ネルギー量ははるかに少なくて済む。 りと放出していくので、室温の急激な低下は NEDO(独立行政法人「新エネルギー・産 やわらげられる(図表20)。空気は、熱を運 業技術総合開発機構」)では、補助金を受け ぶ媒体としては比熱(蓄えられる熱容量)が て各種の「高効率エネルギーシステム」を導 小さいため、効率が高いとは言えないが、屋 入した世帯に、電力・ガス・灯油の使用量な 根全体で集熱するように設計を工夫すれば、 ど「省エネ・モニタリングデータ」の報告を 集熱量を増やせるという。 義 務 付 け て い る が、05年 度 資 料 に よ れ ば、 03年 以 降 の 新 築 住 宅 に は、 主 と し て 「シックハウス対策」の観点から24時間換気 「温風式太陽熱暖房」が最もエネルギー消費 量が少なかったとされている(図表21)。 (注)17.筆者は、同社施設で実際にこのダクト内に手をかざしてみたが、真冬だというのに、小屋裏から暖かい温風が降りてきて いるのにびっくりした。なお、このファンは、小規模な太陽電池で稼働できる。 30 信金中金月報 2011.6 図表21 家庭内エネルギー消費が最も少ない温風式太陽熱暖房 システム区分別エネルギー消費量 電気 都市ガス プロパンガス 世帯 延床 調査 員数 面積 対象 (人) (m2)(世帯) 灯油 130 ダクト式セントラル空調 冷温水式HPセントラル空調 HPマルチエアコン HP個別エアコン ヒートポンプ式冷暖房 (その他) ガス・石油温水暖房 ガス・石油温風暖房 温風式太陽熱暖房 温水式太陽熱暖房 太陽熱利用暖房 (その他) 電気暖房 電気暖房 (その他) ヒートポンプ給湯 太陽熱給湯 その他 平均 168 117 109 125 108 116 80 96 127 221 185 114 111 117 117 0 50 100 150 200 3.56 3.89 3.79 3.67 3.75 3.68 3.67 3.71 3.76 4.75 3.73 3.50 3.75 3.63 3.50 3.71 148 155 146 140 158 149 146 134 157 163 164 142 146 150 161 147 124 9 125 268 87 31 3 121 126 4 63 6 51 16 4 1,038 250 (GJ/世帯・年) (備考)OMソーラー㈱ホームページに掲載された「省エネ量の推計を行った世帯(推計有効世帯)におけるエネルギー種別 消費量」(NEDO平成17年度資料)を転載 同社のシミュレーションによれば、暖冷房 は30∼50℃のお湯が1日約300ℓは取れると 及び給湯に要するエネルギー消費が減ること いう。余った熱は、排気ダクトから外に出さ で、99年省エネ基準レベルの家と比べても、 れる。屋根面の下を強制排気しているので、 CO2をさらに33%削減できるという。 それだけ室内に入り込む日射熱を減らす効果 もある。 ロ.夏は屋根で集めた熱で給湯 なお、夏の場合、晴れた日の夜などは放射 春から秋にかけて暖房需要がないときは、 冷却によって屋根が冷えるので、外気温より 床下への送風は行わない。その代わりに、集 も低くなった空気を床下に送り込み、基礎コ 熱空気層を通して熱くなった空気を「お湯採 ンクリートに冷熱として蓄える。冷房とまで り」に利用できる(図表22)。ハンドリング はいかないが、過ごしやすくはなるという。 ボックスの中に「お湯採りコイル」を取り付 けて、温風を受け温まったコイル内の不凍液 (3)太陽光発電とのハイブリッド製品も誕生 を貯湯槽に強制循環させれば、貯湯槽の水を さらに、同社では、10年6月、太陽光発電 温めることができる。これは、前章で述べた とOMソーラーによる暖房・給湯設備を組合 分離型の太陽熱利用システム(ソーラー給湯 せたハイブリッドシステム「エコスカイルー (注)18 システム)と同じ仕組みだ 。 地域によって異なるが、春から秋にかけて フ」を、三菱重工業グループの菱重エステー トなどと共同開発した。 (注)18.実際、「OMソーラーシステム」も、住宅エコポイントに追加された「太陽熱利用システム」のひとつとして登録されて いる。なお、一般には、集熱器(集熱屋根)と蓄熱槽(貯湯槽)等の構成という形式で登録されるが、OMソーラーの場合 は、貯湯槽がない場合も対象になる。 調 査 31 図表22 OMソーラーによる暖房の仕組み(夏の場合) ハンドリングボックス 駆動用太陽電池 (※) 棟ダクト ガラス付き集熱面 ハンドリング ボックス 夏排気口 ガラス無し集熱面 集熱空気層 お湯採りコイル 外気取り入れ口 床吹き出し口 OM貯湯槽 床下採涼ファン 地中熱 床下空気層 ※自立運転型ハンドリングの場合 (備考)OMソーラー㈱ホームページより転載 太陽光発電パネルには、太陽光を受けて温 地熱発電は、温泉地近くなどの地下を数千 度が上昇しすぎると発電効率が落ちるという メートルも掘って、マグマから高温の蒸気を 弱点がある。このため、通常、パネルの下を 取り出し、蒸気タービンを回して発電するも 空けて風通しを良くし放熱させているが、こ ので、かなり大規模な施設になるが、地中熱 れをOMソーラーにおける集熱空気層として は、あくまで家庭で利用できる自然エネル 利用し、暖まった熱を回収して暖房や給湯に ギーである。 利用すると同時に、発電パネルの温度上昇を 一般に、5メートル程度より深い地中の温 抑え発電効率を低下しにくくさせる。実証実 度は、その地域の年間平均気温程度で、年間 験によれば、エコスカイルーフで家庭のエネ を通して大きく変化しない。むしろ、地中の ルギー需要の65%を自給できたという。 温度変化には、真夏に最も低下し、真冬に最 も高くなるといった、半年程度のずれがある 4.年中ほぼ一定の地中熱を利用した 冷暖房システム (図表23)。これは、地中の温度は、太陽の 熱で暖められた地表の熱が地下にゆっくりと (1)太陽熱を蓄えた地中熱を冷暖房に利用 伝わり蓄えられていくからである。このよう イ.5メートルも掘れば地中熱はほぼ一定 にして地中に蓄積された太陽熱は、尽きるこ 最後に、地中熱を利用した冷暖房システム とがないという意味で、無尽蔵なエネルギー を説明しよう。ただし、地中熱利用といって であると言える。 も、いわゆる「地熱発電」のことではない。 地中の温度があまり変化しないということ 32 信金中金月報 2011.6 は、夏であれば外気温よりも地中温度のほう 図表23 地中における年間の温度変化 が低くなるし、逆に冬であれば外気温よりも 地中温度のほうが高いことになる。これが、 井戸水が夏は冷たく冬は暖かく感じられる理 由である。これを利用して、夏は床下から冷 たい地中熱を吹き込んで室内温度を下げ、冬 は外気温よりは暖かい地中熱を取り込んで暖 房に役立てようというのが、地中熱を利用し た冷暖房システムなのである。 (備考)㈱ジオパワーシステム資料より転載 図表24 地中熱利用システムの仕組み ロ.地中熱を直接取り出し自然換気 「ジオパワーシステム」(山口県美祢市、資 本金95百万円、従業員数19名)は、地中に 向けて5メートル程度のパイプを埋め込み、 取り入れた外気を地中を通してから床下など (注)19 に吹き込む工法を開発した(図表24) 。 地中のパイプを通せば、夏場の高温の外気 であっても、低温の地中温度によって冷やさ れるので、涼しくなった空気を屋内に持ち込 (備考)㈱ジオパワーシステム資料より転載 める。とはいえ、前章でも述べたとおり、空 気は、熱を運ぶ媒体としては比熱(蓄えられ (2)ヒートポンプ熱源に地中熱を利用 る熱容量)が小さいため、それほど効率が良 イ.アクティブな地中熱利用 いものではない。そこで、同社では、床下に この工法は、家屋全体の24時間換気に対 細かく破砕した石を敷き詰め、砕石蓄熱層と 応した自然換気システムの一部として、外気 して、これに蓄熱させるようにしている。 を地中に通してから住宅内に循環させている ただし、高温多湿な外気を取り入れて地中で という意味で、パッシブな方法で地中熱を利 冷やすため、パイプ内に「結露水」が発生す 用しているということができる。 ることがある。これを除去するため、同社で 一方、欧米では一般に、ヒートポンプ(以 はパイプの底にセンサーを設置し、必要に応 下、HPという。)を用いたアクティブな地中 じて結露水をポンプで汲み上げるシステムを 熱利用システムが普及している(図表25)。 採用している。 これは、地中深く50∼100メートルも掘り下 (注)19.同社吉原基文設計企画室長に取材した。 調 査 33 げたパイプの中を不凍液等の熱媒体を強制循 環させることによって、地中で熱交換を行う 図表25 ヒートポンプを用いた地中熱利用シ ステムの仕組み ものだ。(総延長は同じだが、水平に張り巡 らすタイプもある。) ロ.ヒートポンプとは 水・不凍液を循環 初めに、HPの説明をしておこう。HP自体 ヒートポンプ は、冷蔵庫やエアコンなど身近な家電で以前 床暖房等 から使われているもので、原理は簡単であ る。自転車の空気入れを押し込むと、パイプ 地中埋設 (水平ループ) 50∼100m 50∼100cm U字型地中熱交換器 の先が熱くなることは、誰しも知っているだ 地熱 ろう。一方、スプレー缶のノズルからスプ レーすると缶は冷えてくる。要するに、気体 (備考) 「地中熱利用促進協会」ホームページより転載 は圧縮すれば温度が上がり、膨張(減圧)さ せれば温度は下がる。そして、熱は高いとこ く、冷暖房における省エネ効果を高めること ろから低いところに移動する。 ができる。 そこで、代替フロンやCO2といった熱媒体 また、冷房の際、空気利用HPでは、屋内 (熱を運ぶ物質)を圧縮したり膨張させたり から取り出した熱をさらに圧縮機で高温にし して高温や低温にして循環させれば、室外機 て屋外に放出するので、真夏時は40∼50℃ で暖めた熱を部屋の中に取り込んだり(暖 もの熱風が室外機から吹き出される。これ 房)、室内の熱を室外に放出したり(冷房) は、ヒートアイランド現象の助長要因とされ できる。 ているが、地中熱HPであれば、排熱は地中 に対して行われるので、ヒートアイランド現 ハ.地中熱利用HPの有利性 象を緩和できるとされている。 ただし、通常のHPは空気を熱源としてい る。このため、冬場は冷たい外気から採熱し ニ.掘削コストの低減が課題 圧縮機(コンプレッサー)で高温にして暖房 問題は、地中に埋設するパイプ(採熱管) せざるを得ず、外気温が5℃を下回るような の掘削コストだ。わが国では、工事件数が少 場合は効率が落ちる。 ないことなどから、深さ1メートル当たり1 これに対して、地中熱利用HPは、外気の 万∼1.5万円のボーリング費用がかかるとい 代わりに、屋内との温度差が相対的に小さい う。これは米国の2∼3倍だ。すでに述べた 地中熱をHPの熱源に利用するので効率が良 と お り、 一 般 に、 地 中 熱HPは 延 べ100メ ー 34 信金中金月報 2011.6 トルの縦穴が必要とされているので、これだ のエネルギー支出を節減できるうえに、健康 けで100万∼150万円かかってしまうことに で快適な生活を楽しめるようになるのだから、 なる。 その意義は大きい。しかも、これがわが国全 ただし、近年、採熱管を内蔵した基礎杭兼 体のCO2排出量の削減につながるわけだ。 用採熱管が登場してきた。この中に水や不凍 10年春に始まった住宅エコポイント制度 液を循環させて熱交換を行い、HPによって は、それまでの優遇税制等の支援策に比べ、 暖冷房や給湯に利用する。地盤が軟弱な場 直接的でわかりやすく、一般市民の関心を高 合、基礎杭が30本も必要になることもある めることに成功したようだ。従来、リフォーム が、この方式であれば、掘削費用を別立てで といえば、バリアフリー化や、キッチン、水回 考えないで済む。 りの改修等を指していたものだが、窓等の断 わが国は、優れたHP技術を有しており、 熱改修に需要が広がったことは大きな変化と 投入エネルギーの何倍のエネルギーを取り いえよう。国は、99年省エネ基準の適合率引 出 せ る の か を 示 す COP(=Coefficient of き上げ、そして新築住宅における義務化を目 Performance、成績係数。投入エネルギーに 指しており、今後、さらに多くの住宅で省エ 対する産出エネルギーの比率)は、寒冷地用 ネ改修・新築が始まることが望まれている。 でも4を超える高いものになってきた。 次の問題は、家庭のエネルギー消費の半分 とはいえ、HPを稼動させる電力生産には 以上を占める給湯や暖房といった低温の熱エ 主として化石燃料が使われていることに変わ ネルギー消費をいかにして節減するかであ りはない。しかし、地中との間で採放熱する る。これについて、第2章以下では、太陽熱 地 中 熱 利 用HPは、 通 常 の 空 気 利 用HPに 比 や地中熱といった自然のエネルギーを、従来 べ、CO2排出量、電気代とも3割以上は削減 からの技術や建築工法の工夫などによって できるという。 パッシブな形で取り込んでいくだけで、必ず おわりに しも先端的な技術に頼らずともかなりの効果 が期待できることを述べてきた。 本稿では、第1章で、住宅の省エネ化に当 「たかが給湯、たかが暖房に、まだ貴重な たっては、いかに高気密・高断熱化が大切で エネルギーを消費し続けますか?」これは、 あるかを述べた。しかし、わが国における高 太陽熱温水器の老舗・チリウヒーター㈱の 断熱住宅の普及率は、新築住宅でもまだ1∼2 キャッチフレーズである。 割程度とされており、かなりの住宅において、 火力発電のエネルギー変換効率は、わが国 無駄に熱エネルギーが浪費されている状態が が誇る最新鋭の改良型コンバインド・リサイ 続いているといえる。住宅の高気密・高断熱 クル発電所でもようやく50%程度である。4 化を促進すれば、個々の家庭としては、世帯 割近くの排熱は大気の中に拡散している。送 調 査 35 電中のエネルギー損失も5%程度ある。した 太陽光発電に、分散型エネルギーとしての がって、こうして家庭に送られてくる電気エ 発展がおおいに期待されることは言うまでも ネルギーは、大変貴重なものだという認識が ない。ただし、第2章で述べたとおり、わずか 求められよう。 3.5kw程度の発電量を得るために太陽光発電は 技術進歩や生活水準の向上に伴い、冷蔵庫 25m2程度以上の集熱パネルを必要とする一方、 や洗濯機、TVやパソコンなど、電気でしか 太陽熱利用であれば、数m2の集熱パネルで給 動かせない機器は増えていく一方である。上 湯需要の半分程度は賄える。東京都の調査で 質なエネルギーである電気はこうしたものに も、太陽熱利用によるCO2削減量は、太陽光 こそ利用されるべきだろう。 発電に比べ、同じ設置面積なら2倍、同じコス 一方、入浴や皿洗いなどには40∼50℃の トなら4倍も多いとされている お湯があれば充分であるし、暖房用のエアコ て、まず優先すべきは、狭小な住宅でも余裕 ンが必要とする熱風も45℃程度である。冷 をもって設置できる太陽熱利用システムの普 房も外気温より5℃程度低ければ快適に感じ 及であるように思われる。 るものであり、むやみに低くする必要はな 73年に191万戸に達していた新築住宅着工 い。これらに、わざわざ上質なエネルギーで 数は、09年には45年ぶりという約78万戸に ある電気を使わなくてもよいのではないか。 まで落ち込んだ。10年は81.3万戸とわずかに 太陽熱や地中熱は、どこでも得られるもの 持ち直したが、少子高齢化の進展を考えれ であり、その土地、その家庭で賄える「分散 ば、もはや新築住宅に建築関連需要全体の牽 型エネルギー」の最たるものといえよう。化 引を期待することは困難だろう。 石燃料を燃やして得られる電気エネルギーを 幸い、住宅エコポイントには窓断熱人気で わざわざ遠くの発電所から送電してもらわず 注目が集まってきており、今後、太陽熱を利 とも、それぞれの自宅で利用できる自然エネ 用した「ソーラー給湯システム」などの需要も ルギーでかなりの部分は賄えるのである。 でてくることが予想される。地域の工務店な 近年、「スマートグリッド」や「スマート どとともに、金融機関も、こうした新たな省エ シティ」といった地域全体を巻き込んだ省エ ネ需要に着目していけば、リフォーム・ロー ネ化構想が盛んに議論されているが、その場 ンの充実などを通じて、個人向け融資を拡大 合も、個別住宅における自然エネルギーの最 していくことができるのではないだろうか。 大限の活用が前提とされるべきだろう。 (注)20.ECOJAPAN[2009]参照 36 信金中金月報 2011.6 (注)20 。したがっ 〈 参考文献 〉 北村 忠男『日本の木造住宅の常識を変えた高断熱高気密住宅』幻冬舎ルネッサンス(2009) ケンプラッツ「なぜ、高断熱住宅を薦めるのか」(2010年10月15日付け) (2010) 国土交通省・経済産業省・環境省「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」第1回配布資料「住宅・建築物の 低炭素化に向けた現状と今後の方向性」(2010) 西方里見『最高の断熱・エコ住宅を作る方法』エクスナレッジ(2009) 社団法人日本建材・住宅設備産業協会「21世紀の住宅には、開口部の断熱を…!」 南雄三『次世代省エネルギー基準』建築技術(2009) 盛田耕二「大地の熱の冷暖房への利用 −足元に眠っているエネルギーを活かす−」産業技術総合研究所「平成16年度 環境建築研究会」第5回研究会資料(2004) (2009) ECOJAPAN「太陽熱と地中熱に脚光 住宅のCO2排出を削減する切り札」(2009年8月26日付け) ECOJAPAN「発電だけでない 古くて新しい太陽熱の可能性」(2010年2月2日付け) (2010a) ECOJAPAN「東京ガス、集合住宅向け太陽熱利用ガス温水システムを発売」(2010年2月9日付け) (2010b) ECOJAPAN「住宅向けで実用・商品化が進む太陽熱利用 マンションでも戸建でも導入可能に」 (2010年11月24日付 け)(2010c) 調 査 37 「信金中金月報掲載論文」募集における査読付論文 信金中央金庫 地域・中小企業研究所 ここに掲載した査読付論文は、信金中央金庫 地域・中小企業研究所が、大学に籍を置く学者・ 大学院生を対象として平成15年11月より募集している「信金中金月報掲載論文」に応募のあった 論文で、編集委員会が委嘱した審査員による審査を経て、編集委員会が一定のレベルに達してい るものと認め信金中金月報への掲載を決定したものである。 当論文募集の対象分野は、信金中央金庫 地域・中小企業研究所の研究分野でもある「地域」 「中小企業」「協同組織」に関連する金融・経済分野としており、これら分野の研究の奨励を通 じて、研究者の育成を図り、もってわが国における当該分野の学術研究振興に寄与することを 目的としている。 また、当論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けない随時募集として息の長い取組 みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の再応募を認める場合があること、を 特徴点としている。 【査読付論文に係る留意点】 ・審査員による審査および編集委員会における掲載可否の決定は、信金中央金庫 地域・中小企 業研究所および応募論文の関係者等が関与しない形で、独立性、客観性、公平性を確保し厳 正に行われている。 ・応募のあった時点から当月報掲載までには一定の時間の経過がある。 ・掲載した論文の文責は執筆者にある。 (参考)「信金中金月報掲載論文」募集要項(一部抜粋) テーマ 募集する論文の分野は、当研究所の研究分野でもある「地域」、「中小企業」、「協同組織」に関連す る金融・経済分野とし、具体的には、当該分野における理論的、実証的、実務的、法制的、歴史的 研究の論文とします。 応募資格 原則として、大学に籍を置く学者・大学院生とします。 なお、応募資格を有する方による共同執筆も可とします。 応募論文の扱い 編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、編集委員会において「信金中金月報」への掲載 可否を決定します(審査員の氏名、審査内容に関するお問い合わせには応じません) 。また、掲載 可とされた論文(以下「掲載論文」という。)は、当研究所ホームページにも掲示します。 なお、掲載論文の版権は当研究所に帰属します。 編集委員会 編集委員会は次の委員で構成します。(敬称略、順不同) 委員長 清水 啓典 一橋大学大学院 商学研究科教授 副委員長 藤野 次雄 横浜市立大学 国際総合科学部教授(信金中央金庫 地域・中小企業研究所 顧問) 委 員 川波 洋一 九州大学大学院 経済学研究院教授 委 員 鹿野 嘉昭 同志社大学 経済学部教授 委 員 首藤 惠 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授 募集方法等 締め切りを定めない随時募集 ・詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等を参照 38 信金中金月報 2011.6 査読付論文 地域銀行と地域経済に関する実証分析 早稲田大学大学院 経済学研究科博士後期課程 森 祐司 (キーワード)地域銀行、地域経済、銀行貸出、ダイナミックGMM (要 旨) 1990年代と2000年代で地域銀行を取り巻く環境は大きく変化した。地域銀行の貸出行動と 地域経済についての先行研究には、90年代以前を中心としたクロスセクショナル・データで の分析が多い。本稿では2000年代を中心にパネルデータを用いて貸出行動を分析した。貸出 に影響を与える要因としては、90年代までは貸出金利などが有意であり、地域経済環境や競 争条件を示す変数の有意性は低かったが、2000年代には、地価や貸出シェアなど地域経済環 境や競争条件からの影響があることがわかった。また、2000年代では地価の下落にも関わら ず、貸出が伸張する面がある一方、東京を中心に地価が上昇すると、銀行貸出も増加する可 能性も示され、複雑化していることも分かった。貸出シェアは前年から増加すると貸出額も 伸びる傾向がうかがわれ、寡占的な貸出供給理論モデルと整合的である。2000年代になって 不良債権処理が一巡し、その貸出行動の正常化が示唆される。 (*)本稿の作成にあたっては、早稲田大学の森映雄教授と相沢一郎氏、また本誌レフェリーの方々から非常に多くの示唆をいた だいた。記して感謝申し上げたい。 査読付論文 39 え、地銀の貸出供給に影響する要因につい 1.はじめに て、2000年代以降を中心に90年代と比較し 地域銀行(以下、地銀と略す。地銀という つつ検討を行う。 場合、全国地方銀行協会所属の「地方銀行」 のほか第二地方銀行協会所属の「第二地銀」 2.地域銀行と地域経済に関する先行 研究 も含めた定義とする)は、「明治以来、各行 が営業地盤を置く地域で生まれ育ち、各地方 信用金庫や地銀などの地域金融機関は営業 での合同を繰り返して今日の姿に至っている エリアが地域的であるため、経営実績への地 という歴史的背景をもっている」 (全国地方銀 域経済の影響が強いと見られている。このた 行協会事務局[2006])。このため地銀は、本 め、地域経済と銀行貸出や収益性との関係を 店所在の都道府県を営業地域として稠密な店 分析した例が多い。特にわが国の近年の動向 (注)1 舗網 を展開し、地域密着の金融サービス (注)2 を提供してきた 。このように地銀は営業地 を視野に入れた先行研究は以下のものが挙げ られる。 域と共に発展することを経営理念として、地 堀江[2001]は、地域金融機関の行動分析 域との結びつきを深めてきたが、地域経済か には当該金融機関の立地条件をチェックする らの影響を大きく受けることも指摘されてき 必要があるとし、生産関数に資本・労働のほ た。特に、1990年代から現在まで地銀の環境 かに立地条件や地域的特性を導入して分析を 変化が激しく、地方経済の疲弊によって、地 行った。さらに堀江[2008]は、経営地盤を 銀の主業務である企業向け貸出は長く停滞す 重視した分析を行い、地銀の経営行動につい るようになった。しかし、大方の地銀では新 て、経営規模と利益の関係や県外貸出の要 たな経営戦略を描ききれていない。 因、小口貸出や住宅ローン、シンジケート 地銀の利潤や費用に影響を与える営業地盤 ローンなど貸出を種別に分析している。 を考えると、地域経済環境や他の金融機関と 安孫子・吉岡[2003]は、地域経済と地域 の「競争条件」も重要な要素である。90年代 金融の間の長期安定性を検証する。クレジッ 末期の金融危機を契機に、経営体力の劣る第 ト・ビューを踏まえ、地価による貸出への影 二地銀を中心に合併・統合等が行われ、競争 響を貸倒損失リスク等の視点を入れた銀行貸 条件は大きく変化し、2000年代の地銀経営は 出モデルを作り、1975∼99年度の県別パネル 90年代とは異なる競争条件にも直面すること データから貸出変動要因を計測している。結 になった。本研究は、このような変化を踏ま 果は、地域経済の成長や人口増加のほか、地 (注)1.全国地方銀行協会[2006]によれば、地方銀行の本支店の81.2%が本店所在都道府県内に所在するという。第二地銀におい ても2010年時点で80.5%が本店所在都道府県内に集中している。 2.辰巳[1984]は、店舗新設でなく配置転換でも、昭和44年度までは本店所在県内または隣接県内を原則としていたと述べ、 地銀の店舗行政が県内に制約をかけていたことを示唆する。 40 信金中金月報 2011.6 価等資産価格の上昇が貸出を拡大させること 要因と個別特性要因に分けて分析した。結 を確認している。 果、貸出金利の銀行間格差は集中度という地 県別の金融機関の競争条件(市場集中度) 域別特性の差異による面はあるが、もっと重 を考慮し、地域での貸出市場の分析を行う先 要なのは貸倒リスクや経営効率の差異など個 行研究では、貸出金利の地域間格差の決定要 別特性要因だと結論している。以上の先行研 因を分析したものが多い。たとえば、筒井・蝋 究 は、 い ず れ も1990年 代 ま で を 対 象 と し、 山[1987]、堀内[1987・1988]、後藤[1990]、 金子[1994]を除いて県別のクロスセクショ 金子[1994]、加納[1998]、Kano and Tsutsui ン分析を行ったものである。 [2003]が挙げられる。筒井・蝋山[1987]は 中田・安達[2006]は2000年代の貸出金利の 貸出市場が県別に分断され、県別の市場集中 地域間格差についてパネルデータ分析をして 度(貸出シェアでみたハーフィンダール指 いる。彼らは第二地銀と信用金庫の2000∼04 数)の高い県ほど貸出金利が高いとの結果を 年度のデータから、需要要因(産業構成や景 得ている。堀内[1987・1988]は貸出金利の 況)のほか、市場の集中度、供給側(金融機 高い地域と低い地域が固定的なことを指摘 関)の規模や競争欠如による非効率性が、貸 し、貸出市場の集中度の高い地域ほど貸出金 出金利格差をもたらす要因だと結論している。 利が高いことを指摘する。後藤[1990]は貸 他方、銀行の各県別の市場構造と銀行のパ 出市場の集中度の上昇と、地域間の金利格差 フォーマンスに関係について分析したものとし が拡大し、寡占が強まっていると結論してい て、Mori and Tsutsui[1989]、Alley[1993]、 る。加納[1998]も県別業種別のクロスセク 日 本 銀 行[2008]が あ る。Mori and Tsutsui ションデータを用いて貸出金利格差の分析を [1989]は、貸出・費用・利潤関数を同時推 行い、その決定要因を考察する。また貸出市 計し、市場集中度が高くなると独占市場価格 場の集中度は、市場規模の大きい都市部ほど に近づき、技術的効率性が高まることや、高 低く、貸出金利も低い傾向があることを指摘 い集中度は利潤に寄与する一方、銀行の費用 している。Kano and Tsutsui[2003]は、地銀 には負の影響をもたらすとしている。Alley と信金のデータを用いて、各県の貸出需要・ [1993]は、地銀の地域市場での行動につい 供給要因の県別金利への影響について検証し て、産業組織論で議論されてきた市場構造= た。結果は地銀の市場は分断されておらず、 行動=成果仮説 信金の市場は分断されているとの結果を得て の間では有意に共謀が生じているとし、この いる。他方、金子[1994]も貸出金利の格差 仮説を支持している。 について、個別行のデータを用いて地域特性 日本銀行[2008]は、2000年代の地域金融 (注)3 を検証する。結果、地銀 (注)3.この仮説の詳細は植草・竹中・菅久・井手・堀江[2002]を参照されたい。筒井・佐竹・内田[2006]は、都市銀行のパネ ルデータを用いてこの仮説を検証し、必ずしも支持されないとの結果を得ている。 査読付論文 41 機関の費用・利潤構造について、市場規模や 競争条件について考察している。営業地盤の 特 性 が 及 ぼ す 影 響 に つ い て、Dick[2007] が行った米国での分析を日本に適用したもの 3.推計モデルの定式化 (1)営業地盤と競争条件の影響を考慮した 貸出供給モデル である。その結果、市場規模が小さい県で 本節では安孫子・吉岡[2003]による県別 は、貸出集中度は高く、両者の相関に負の関 銀行収益モデルを参考に、地銀の貸出行動に 係があるという。また貸出総利鞘と貸出集中 影響を与える要因として営業地盤や競争条件 度について、パネルデータ推計を行い、貸出 も考慮に入れた個別行ベースでの貸出供給関 集中度が低下すると、貸出総利鞘も縮小する 数を考える。 ことを指摘している。 まずは、地銀の貸出供給への各県での競争 以上の先行研究から、地銀の貸出には地元 条件の影響について筒井[2000]を参考に検 の経済環境の影響のほか、各地域での市場集 討する。仮定として、各期tの都道府県iを本 中度など競争条件と密接な関係があることが 拠とする地銀jの貸出額はすべて同じi県内で 示唆される。しかし、それらは貸出金利の地 行われるものとする。すなわち、地銀jはn行 域間格差を分析し、かつ90年代までを対象 からなるi県で貸出競争を行い、参入・退出 としたものが多く、地銀の再編に見られる競 は考えない(したがって、貸出市場における 争条件や都銀の動向変化の影響が表れてくる 地銀数はnで固定される)。 2000年代を分析した例は少ない。また、分 地銀 j の貸出金利をrtij 、貸出額をLtij 、i 県全 析手法もクロスセクション分析が多く、パネ 体の貸出額Λti≡Σj Ltijと定義する。各地銀は各 (注)4 は少ない。 県で同一の金利下で競争し (すなわち、rtij = rti)、 このため、本稿は2000年代の地銀の貸出 利潤最大化を図るべく、貸出額を決定する行 供給分析にあたり、問題意識の近い安孫子・ 動をとるとする。貸出金利rtiと県別貸出額Λti 吉岡[2003]による県別分析モデルを、個別 には逆需要関数の関係、 行ベースのモデルに拡張し、営業地盤や、各 rti = rti(Λti) …① 県での競争条件(市場集中度)も視野に入れ がある。さらにrはr ti(・)<0を満たすと仮定 て考察する。また、個別行データによるパネ する。リスク中立的な地銀 j の最適化問題は ル推計を行い、90年代よりも、まだ分析さ れていない2000年代を中心に地銀の貸出行 以下の式で与えられる。 max = rti L tij − Ctij ( L tij ) Ltij tij 動の特徴を明らかにする。 ここで、πtijは地銀の収益、Ctij(Ltij)は費 ルデータ分析 …② 用関数を表す。費用関数はさらに次の式で与 (注)4.随[2007]は中小企業向け貸出について地銀と第二地銀を対象としたパネル推計を行っているが、①推計期間が1985㽎 1999年であること、②説明変数は銀行の財務指標だけで競争条件や地域経済環境を示す変数が入っていないことなど、本稿 での考え方とは異なるものがある。 42 信金中金月報 2011.6 えられる。 てはKiyotaki and Moore[1997]が指摘するよ Ctij = rtijd Dtij + EXtij ( L tij , BCtij , CSTtij ) + CRtij ( L tij , Zti , DEFti ) …③ うに、地価下落は土地の担保価値を減少させ るために、地銀が想定する信用リスクを引き上 ここで、r dtij:預金金利、Dtij:預金額、EXtij: げ、貸出を減少させることが考えられる。しか 貸出業務に伴う直接・間接費用、CRtij:信用 し、櫻川・櫻川[2009]は、地価の上昇局面と リスク相当額、BCtij:個々の地銀が本拠とす 下落局面では、銀行行動が必ずしも対称的で る都道府県でビジネス・チャンスに遭遇する はなく、地価が貸出に及ぼす影響が異なる可 確率、CSTtij:Ltij、BCtijで説明される部分以外 能性を指摘する。この点は実証分析を行う4節 を要因とする貸出コスト、Zti: t 期 i 都道府県 で 詳 細 に 検 討 す る。 地 域 の 倒 産 発 生 確 率 の地価変動率、DEFtiは t 期 i 都道府県の倒産 (DEFti) は上昇すると予想貸倒損失額はやはり 発 生 率 を 表 す。Dtij 、CSTtij 、BCtij 、Zti 、DEFtiは 増大すると考えられるため、地銀の想定する信 (注)5 いずれも外生変数 である。 用リスクを引き上げる効果を持つと見られる。 貸出業務に伴う直接・間接費用(EXtij)は、 さて、地銀 j は①、③式に従い、②式の最適 LtijとBCtij、CSTtijの関数を想定する。直接・間 化を行う。このとき、均衡においては、地銀 j 接費用は貸出額の増加関数と考えられる の最適な貸出額は、利潤最大化の一階の条件、 ( EX tij′ ( Ltij ) > 0 ) 。BCtijは各地銀の本拠県で実 現可能な貸出機会に遭遇する確率を表す。す なわち、同じ1単位の貸出を行うにしても、 実現可能な貸出先に遭遇する確率が低けれ ∂π tij ∂rti ∂Λ ti − C tij′ ( L tij ) = 0 …④ = rti + L tij ∂Λ ti ∂L tij ∂L tij および二階の条件 ∂ 2 π tij ∂L tij 2 =2 ば、多くのコストをかけて探す必要があると 2 ∂rti ∂Λ ti ∂ 2r ti − ∂Λ ti ∂L tij ∂Λ2ti − C tij′′ ( L tij ) < 0 ∂rti L ti ∂Λ ti …⑤ ( ) 考える。BCtijの例として本拠県での店舗網の が満たされている。ここで、 密度や、店舗網に対する県内事業所数(ある ti いは人口あるいは人口密度)といった指標が L tij j Ltij L tij 1 k j Ltij L tij …⑥ L 考えられよう。 k j tij であり、 とおくと、 γtijは、地銀j tij L 信用リスク相当額(CRtij)については、Ltijと がdLtijだけ貸出を増やしたときの、それ以外 Ztij、DEFtiの関数を想定する。信用リスクは、 の地銀の貸出額変化の合計(正確にはその値 貸出額が多くなると、信用リスクの高い借手 に関する銀行jの推測値)を表し、「推測的変 が増加すると考えられるために貸出Ltijの増加 動(conjectual variation)」 関数となろう(C R tij′ ( L tij ) > 0 )。地価につい ので、自行の貸出額変化が他行の貸出額変化 tij (注)6 と呼ばれるも (注)5.安孫子・吉岡 [2003]では預金額Dtijを内生変数としているが、多くの先行研究では外生変数として仮定している場合が 多い。 6.推測的変動(conjectual variation)とは、ある企業が産出量を微小に増加させたときに、それ以外の企業の産出量が合計 でどれだけ変化するかを表す測度である。完全競争では推測的変動は㽎1、独占・クールノー競争では0となる。詳細は植 草・竹中・菅久・井手・堀江[2002]を参照されたい。 査読付論文 43 に影響を与える可能性を示唆する。モデルは あり、さらに⑧式の両辺にstijをかけて、県別 非同質的な地銀を考えているので、均衡にお にjで集計すると、 ( rti stij C tij ( Ltij ) ける各地銀の貸出額は④式の n 本からなる連 立方程式を解くことで得られる。 (2)貸出における競争条件の影響 rti (1 ti stij 2 ) ti …⑨ HHI (1 ti ) ti ti となる。HHItiはハーフィンダール指数で県 本節では貸出供給に競争条件が影響するこ 別の集中度を示す。⑨式はこの集中度が大き とを示す。まずγtijと⑥式を用いると、④式 いほど、平均的なマークアップ率も高くなる は、 ことを示している。 rti C tij ( L tij ) L tij rti ( 1 tij ) …⑦ rti rti ti となる。⑦式左辺は、地銀 j の限界費用 に対 以上の分析で、地銀の各地域における競争 条件も地銀の貸出行動に影響を与えることが 確認できた。 する貸出金利が上回る程度で、地銀の市場支 配力を示し、いわゆる「ラーナー指数」と呼 ばれるものである。さらに貸出需要の金利弾 j Ltij j Ltij (3)貸出供給関数の推計モデル 前節での検討を踏まえて、制約として作用 ti ti と定義す rti rti すると見られる⑧式と費用関数③式を考慮し る。また、地銀jの県内の銀行貸出のシェア て貸出供給関数を考える。このとき、貸出決 L tij L tij を Ltij ti stijとおくと、⑦式は、 j 定に各地域での「競争条件」も影響を与える 力性を ti rti rti stij rti C tij ( L tij ) 1 (1 tij ) s tij (1 tij ) rti ti ti …⑧ ことから、個別行の市場シェアと、県別の集 中度(HHI)も推計式に含める。さらに、地銀 の財務内容が貸出態度に影響を与えると考え となる。この⑧式の左辺は上述のラーナー指 て各地銀の財務状態Qtijを説明変数に加える。 数で、地銀 j のマークアップ率ないし粗利潤 Qtijには自己資本比率や不良債権比率が代理 率を示す。この式より、各地銀のマークアッ 変数として考えられよう。また地銀の規模が プ率は、市場の需要の価格弾力性μtiが低い 貸出供給量に与える影響を考慮して、各地銀 ほど、市場シェアstijが大きいほど、また推測 の預金総額Dtijを説明変数に加える。 的変動γtij が大きいほど高くなると示唆され なお、貸出供給行動に関しては、μを通し る。この結果、マークアップ率が高い場合に て貸出需要サイドの要因が影響してくることに は各地銀は貸出額を増加させるように行動す も注意が必要である。すなわち、貸出需要関 ると考えられる。 数との識別ができなくなる同時方程式バイア ここで、γtij が地域の全銀行jに関し共通だ スについて解決しなければならない。そこで、 と仮定して、これをγtiと書くと、γtij = γtiで 貸出需要関数を⑩式のように定式化する。 44 信金中金月報 2011.6 D D Ltij = Ltij ( rtij , Nti , Lt −1ij ) …⑩ ただし、g Ltijは地銀の貸出額の対前年比変 Ntiは地域の成長性を指す。Ntiが拡大すると 化率である。 資金需要が拡大するために、貸出も増大す る。例えば、Ntiは県内総生産の増加率が考え られよう。実際の貸出供給関数推定には⑩式 4.推計結果 (1)データと推計方法について にある変数を操作変数として用いることが考 1995年度から2007年度までの個別行データ えられる。以上のことを踏まえて、推定する を用いて、 ⑫式の貸出供給関数をパネル推定 貸出供給関数を以下のように設定する。 する。図表1では推計に用いる説明変数と各 L tij = L tij ( rtij , Z ti , DEFti , Qtij , CSTtij , BCtij , stij , HHIti , Dtij , L t −1ij ) …⑪ 変数で期待される符号条件、記述統計量を整 理した。被説明変数は個別行の貸出総額の年 なお、説明変数における貸出金利rtijと預金 間増加率である貸出総額増加率とし、参考と 金利r dtijは、強い多重共線性が想定されるこ して各行の中小企業向け貸出総額増加率とし とからr dtijを省略する。結果、実際の推計式 た場合も推計する。 は⑪式に基づき、貸出供給額の増加率で考え なお、各地銀の財務状態Qtijは自己資本比率 た以下の ⑫式で推計する。 g Ltij = g L tij ( g L t −1ij , rtij , Z ti , DEFti , Q tij , CSTtij , BC tij , stij , HHIti , Dtij ) のほかに、不良債権比率も考えられるが、信 頼性のある数値として利用できるのは98年度 …⑫ (注)7 以降であるため、貸倒引当率を利用する 。 区分 図表1 推計に用いる変数とその基礎統計表 項 目 変 数 期待され る符号 平均値 中央値 最大値 最小値 標準偏差 標本数 銀行別 都道府県 貸出総額増加率 0.701 0.770 31.832 -31.105 4.239 1,517 被説明変数 中小企業向け貸 出増加率 0.615 0.478 37.989 -25.634 4.275 1,419 貸出金利 貸出金利 + 2.610 2.535 5.251 1.354 0.537 1,517 貸倒引当率 - 1.675 1.209 39.319 0.029 2.350 1,661 自己資本比率 + 4.046 4.236 8.840 -49.105 3.479 1,663 経費 経常費用率 − 1.405 1.391 3.216 0.171 0.270 1,664 規模の経済性 預金総額 + 14.154 14.243 16.118 11.826 0.867 1,664 営業地盤の リスク 地価変化率 +/- -7.090 -8.085 28.499 -32.843 6.432 611 倒産発生率 - 0.034 0.021 52.568 -52.170 3.540 611 一店舗あたりの 県内事業所数 + 1,712.777 386.496 2,126.710 611 県内貸出シェア + 21.661 県内貸出シェア によるハーフィ ンダール指数 + 財務の健全性 営業地盤の 条件 競争条件 979.870 1,4472.540 22.450 47.100 0.380 9.072 611 2,305.104 2,300.115 4,630.190 1,201.980 525.635 611 (備考)データの出所に関しては補論1を参照されたい。 (注)7.同変数は不良債権比率を示す代理変数として小川[2003]でも用いられている。 査読付論文 45 さらに、個々の地銀がビジネス・チャンスに 地域も2002年度頃まで下落し、その後はおお 遭遇する確率BCtijは、各地銀の一店舗あたり むね上昇している。貸出額増加率と総生産増 (注)8 。Ltij、BCtijで 加率の関係について、詳細に見るため、2000 説明される部分以外を要因とする貸出コスト 年度と2002年度を区切りとして地域別の貸出 CSTtijは経常費用率で代理する。競争条件に 額増加率と総生産増加率について時系列相関 ついては、各行の営業エリアが本店所在県と 係数を算出した (図表2下表参照) 。結果、2000 ほぼ同じであると考え、県内貸出シェアとそ 年度を区切りとした場合は、前期よりも後期 れから算出したハーフィンダール指数を用い でおおむね各地域の相関が低下しているのに る。また、操作変数として貸出需要に影響を 対し、2002年度を区切りとした場合は逆に相 与える県別の経済規模を示す変数Yについて 関が高まっている。このため、2000年度から は、県内総生産成長率で代理する。以上の変 02年度の前後で相関関係の変化が窺えるが、 数の詳細は補論1を参照されたい。 区切りの変更で時系列相関が変化するのは、 対象となる地銀は最大138行となるが、期 2001あるいは02年度のデータがどちらの期間 中で破綻した地銀はサンプルから欠落する一 に含まれるかで左右されていると推察される。 方、合併・統合が起きた場合は、それまでの この点につき、地域別の貸出額増加率と総 地銀とは別の銀行として取り扱った。推計方 生産増加率を各年度でプールした上で計算し 法は、説明変数の中に被説明変数の1期ラグ たクロスセクショナル相関係数を計算した を含めるために、通常のGLS推定量は一致性 (図表3)。その結果、2001年度に大きくなっ の県内事業所数で代理する を持たない。このため、ダイナミックGMMの ていることが分かる。この相関の高まりは、 1つであるArellano and Bond[1991]で提案さ 域内貸出額増加率と域内総生産増加率が全般 (注)9 れた方法を用いて推計することとした 。 的に歩調を合わせて低下したことが要因だと 見られる。また、金融機関の不良債権比率 (2)経済金融動向と期間区分 は、2001年度頃に処理のピークを迎え、現 本節では推計期間の経済金融環境を確認す 在まで低下していることが伝えられているこ る。図表2で域内総生産増加率を見ると、地域 とから(預金保険機構[2007])、バブル崩壊 により高低のバラツキはあるものの、2000年 後、銀行は不良債権処理のために貸出行動を 度を別とすると、おおむね2001年度まで成長 慎重化させた結果、貸出額増加率は鈍化して 率は低下し、その後回復していることがうか いったと推察される。このため、不良債権比 がえる。一方、貸出額増加率は、大体いずれの 率が高まり貸出額増加率が低下した2000年 (注)8.各地域銀行の都道府県別の店舗数と各都道府県の人口密度から算出した、一店舗あたりの人口密度を同様に説明変数とし て推計したが、一店舗あたりの県内事業所数と結果に大きな差異は観察されなかった。 9.GMMの2段階推計であるが、今回の推計は杉原・笛田[2002]の方法に従って、係数はtwo-step、t検定等はone-stepを利用 した。また、2階の系列相関の検定(AR(2) )はone-stepものを利用した。 46 信金中金月報 2011.6 代初頭に、ちょうど景気低下局面を迎えて域 れる。しかし、その後の景気回復とともに不 内総生産増加率が低下したために、クロスセ 良債権比率は低下し破綻金融機関数も急減し クショナル相関係数が高くなったものと見ら て、域内総生産増加率はバラツキも見られる 図表2 地域別貸出額増加率(左)と県内総生産増加率(右)の推移と両者の相関(下表) 地域別貸出額増加率 (%) 域内総生産増加率 (%) 5 8 北海道・東北 中部 中国 九州 6 4 関東 近畿 四国 北海道・東北 中部 中国 九州 4 3 関東 近畿 四国 2 2 1 0 0 -2 -1 -4 -2 -6 -3 -4 -8 1994 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 1994 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 (年度) (年度) 全県ベース 北海道・東北 関 東 中 部 近 畿 中 国 四 国 九 州 平均値 1994∼2002 0.747 0.682 0.704 0.571 0.455 0.577 0.595 0.664 0.624 (年度) 2003∼2007 0.429 -0.231 0.707 0.542 0.188 0.417 -0.249 0.557 0.295 1994∼2000 0.526 0.574 0.138 0.635 0.316 0.397 0.365 0.365 0.415 2001∼2007 0.632 0.563 0.541 0.578 0.650 0.771 0.239 0.869 0.605 (備考)下表の時系列相関係数は各地域期間別に相関係数を計算した。平均値は各期間での相関係数の平均値を示す。 (出所)左上図は『金融マップ』より作成した。右上図は内閣府『県民経済計算』より作成した。 図表3 地域別貸出増加率と地域別総生産増加率のクロスセクショナル相関係数 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.6 1994 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 (年度) (出所)地域別増加率は『金融マップ』、地域別総生産増加率は内閣府『県民経済計算』より作成した。 査読付論文 47 が、徐々に回復傾向をたどって新たな局面に まず、貸出金利は「貸出総額」 、 「中小企業向 入っていったと考えられる。 け」のいずれのモデルでも正で有意であった。 以上を踏まえ、推計は90年代と2000年代で これは期待される符号と合致する。ただし、 区間別に分けて推計を行った。期間区分につ 「中小企業向け」では、用いた貸出金利は実際 いては、上の議論を踏まえて2002年度のほか の値よりも水準が高い可能性があるため、今 2000年度を区分とした推計を行うことにした。 回の結果は過大推計の可能性があることは留 意すべきである。また、被説明変数の1期ラ グは、 「貸出総額」ではModel B2(B2と略す、 (3)90年代を対象とした推計 90年代を対象期間とした推計結果につい 以下同)において負で有意となる一方、 「中小 て、被説明変数を「貸出総額(増加率)」(図 企業向け」ではC1で正で有意となっている。 表4)とする場合を中心に、「中小企業向け 一方、自己資本比率は、 「貸出総額」のA2で (貸出総額増加率)」 (図表5)は適宜参照しつ 正で有意であった。これは期待された符号と 合致する。貸倒引当率はいずれのモデルでも つ見ていく。 図表4 貸出供給関数の推計結果(90年代) Model A1 Model A2 Model B1 1995㽎2002年度 期間 被説明変数 貸出総額増加率(-1) 貸倒引当率(-1) 1995㽎2000年度 貸出総額増加率 貸出総額増加率 貸出総額増加率 -0.079 (-0.848) 0.013 (-0.164) 0.013 (0.334) 自己資本比率(-1) 5.358 (2.387)** 0.880 (1.430) 一店舗あたりの県内事業所数 (-1) -0.002 (-0.872) 貸出金利 49.709 (2.857)*** 地価変化率(-1) Model B2 貸出総額増加率 -0.079 (-2.595)** 2.875 (1.138) 0.187 (0.646) 0.019 (1.234) -0.002 (-2.614)*** -0.002 (-1.375) 59.258 (2.865)*** 32.667 (1.971)** 63.924 (2.786)*** -0.097 (-0.841) -0.296 (-1.199) -0.073 (-0.241) 0.191 (1.427) 1.984 (0.389) -1.692 (-0.609) 1.618 (0.290) -6.089 (-3.447)*** ハーフィンダール指数 (-1) -0.002 (-0.509) 0.007 (-0.589) -0.012 (-1.661)* 倒産発生率(前年差) -0.069 (-0.279) 県内貸出シェア(-1) 倒産発生率(前年差)(-1) 預金総額 経常費用率 -0.021 (-0.910) 0.025 (0.608) -0.194 (-1.236) -0.057 (-0.696) 5.682 (0.279) 11.130 (0.034) -3.998 (-0.249) 9.362 (0.632) -0.548 (-0.498) -2.130 (-1.650)* -0.570 (-1.275) 0.406 (0.220) サンプル数 709 588 482 357 銀行数 127 120 125 120 AR(2) Sargan検定 0.015 (0.732) -0.016 (0.681) 0.017 (0.759) -0.078 (0.206) 29.512 (0.102) 14.761 (0.141) 14.636 (0.146) 9.744 (0.372) (備考)1.定数項と時間ダミーの係数は掲載を省略した。 2.アンバランスド・パネルデータである。各変数の(-1)は1期前を表す。 3.各説明変数の括弧内はWhiteの方法で不均一分散の影響を調整したt値を示す。***は1%、**は5%、*は10%水準で 有意を示す。 4.Sargan検定は過剰識別制約に関する検定を示す(帰無仮説は操作変数が適切) 。括弧内はp値 5.AR(2)は2階の誤差の系列相関に関する検定を示す(帰無仮説は系列相関無し) 。括弧内はp値 6.モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 48 信金中金月報 2011.6 図表5 中小企業向け貸出供給関数の推計結果(90年代) Model C1 被説明変数 中小企業向け貸出増加率(-1) 貸倒引当率(-1) Model D1 Model D2 1995㽎2000年度 中小企業向け貸出増加率 中小企業向け貸出増加率 0.177 (1.878)* 0.051 (0.877) 自己資本比率(-1) 一店舗あたりの県内事業所数(-1) Model C2 1995㽎2002年度 期間 中小企業向け貸出増加率 0.153 (0.939) -0.317 (0.486) -0.578 (-1.161) 中小企業向け貸出増加率 0.012 (-0.011) 1.322 (-0.184) -0.927 (-1.256) 0.002 (1.169) 0.004 (1.513) 0.000 (-0.762) -0.001 (-0.576) 貸出金利 13.771 (2.325)** 102.477 (4.027)*** 39.061 (1.748)* 100.703 (5.790)*** 地価変化率(-1) -0.023 (-0.355) 0.181 (0.715) -0.102 (-0.394) 0.299 (2.061)** 県内貸出シェア(-1) -2.587 (-1.201) -2.952 (-1.023) -1.209 (0.251) -4.911 (-3.449)*** ハーフィンダール指数(-1) 0.003 (0.501) -0.034 (-1.368) 0.002 (-0.655) 倒産発生率(前年差) 0.024 (1.229) 倒産発生率(前年差)(-1) 0.181 (1.542) 預金総額 20.493 (0.958) 経常費用率 -1.252 (-2.134)** 経常費用率(-1) サンプル数 銀行数 AR(2) Sargan検定 -0.042 (-1.563) 0.047 (1.219) 66.606 (1.990)** 0.125 (0.848) -1.992 (-0.546) 76.467 (3.777)*** -1.796 (-1.958)* -1.556 (-0.289) 661 -0.448 (-0.813) 554 127 447 113 115 334 113 0.040 (0.348) 0.023 (0.638) -0.006 (0.918) -0.004 (0.963) 18.402 (0.242) 23.691 (0.165) 4.970 (0.837) 6.863 (0.651) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 有 意 で は な か った。な お、 「中 小 企 業 向 け 」 り、ハーフィンダール指数は、B1でのみ負で (C1∼D2)ではこれら財務健全性についての指 有意となった。これら競争条件からの影響は 標は、いずれも有意ではなかった。経常費用 期待される符号とは逆の結果になっているよ 率は「貸出総額」ではA2で負で有意となり、期 うに見える。 待される符号と合致する。なお、 「中小企業向 以上の結果から、貸出金利以外の説明変数 け」でもC1とD1で負で有意となり、これを支持 はあまり有意でない一方、期待される符号と する結果となった。預金総額は「貸出総額」の は逆の結果も散見される。推計結果が正しい いずれのモデルでも有意ではなかった。ただ として解釈すれば以下のようになる。90年 し、 「中 小 企 業 向け」はC2・D2で 正 で 有 意と 代に見られた「貸し渋り」や「追い貸し」な なっている。地価変化率と倒産発生率(前年 どは銀行の不良債権の顕現化を先送りし、財 差)は、いずれのモデルでも有意ではなかった 務健全性の保持を見せかけられるため、近視 (ただし、 「中小企業向け」では地価変化率はD2 眼的には「合理的」だと言えなくもない。し で正で有意であった) 。一店舗あたりの事業所 かし、地銀は置かれた環境や競争条件を考慮 数はB1で負で有意となった。これは期待され して貸出行動を決定すると考えると、そのよ る符号とは合致しない。各行の県別貸出シェ うな条件を無視する貸出決定は「合理的」で アは、 「貸出総 額 」はB2の み、負 で 有 意 と な はないだろう。また、どのような貸出でもす 査読付論文 49 べて抑制するような場合は、環境条件等から た。このため留保つきとはなるが、自己資本 説明可能な「合理的」行動でなくなり、上記 比率については、財務健全性の向上が積極的 で示した推計の説明力は低下するであろう。 なリスクテイクとなる貸出には正の作用をも これらの点については2000年代の推計でも たらしたと解釈される。また貸倒引当率につ 90年代と同じ前提の理論モデルやデータを いては、不良債権比率が高まり、銀行の財務 使っているため、推計の妥当性も含めて、総 健全性が低下して、貸出に慎重になったと解 合して考察することが有用だと考えて改めて 釈される。なお、「中小企業向け」はH1で貸 次節で検討する。 倒引当率が負で有意となった。中小企業向け 貸出は信用リスクがより高く、不良債権比率 の増加は中小企業向け貸出をより強く抑制す (4)2000年代を対象とした推計 貸出金利は「貸出総額」 (図表6)でのすべて ると考えられる。90年代の推計結果を解釈し のモデルで正で有意となり、符号条件に合致 た際に、合理的でない貸出行動の結果、財務 した。「中小企業向け」 (図表7)でもG2・H2 健全性を示す要因が有意でなかったと見られ で正で有意であった。 たが、2000年代にはこれら要因を考慮して貸 自己資本比率は「貸出総額」ではF2で正で 出行動をとるようになり、より「合理的」に 有意、貸倒引当率はF1でのみ負で有意となっ なったと解釈できよう。 図表6 貸出供給関数の推計結果(2000年代) Model E1 Model E2 Model F1 2002㽎2007年度 期間 Model F2 2000㽎2007年度 被説明変数 貸出総額増加率 貸出総額増加率 貸出総額増加率 貸出総額増加率 貸出総額増加率(-1) 0.013 (0.701) -0.002 (-0.108) 0.115 (1.164) 0.034 (1.364) 自己資本比率 貸倒引当率(-1) 一店舗あたりの県内事業所数(-1) 2.563 (0.850) -1.573 (-0.819) 4.145 (1.996)** -1.496 (-1.969)** 0.000 (0.337) 0.001 (1.261) 0.000 (-0.344) 0.009 (1.952)* 貸出金利 34.138 (3.637)*** 24.716 (1.991)** 18.229 (2.652)*** 58.328 (3.891)** 地価変化率(-1) -0.848 (-1.821)* -1.272 (-1.991)** -0.404 (-2.406)** -0.511 (-2.422)* 県内貸出シェア(-1) -2.764 (-1.872)* -7.769 (-3.221)*** 0.006 (0.881) 0.017 (1.680)* ハーフィンダール指数(-1) -3.837 (-2.139)** -0.006 (-0.390) -0.464 (-0.732) 倒産発生率 倒産発生率(前年差) -0.302 (-2.041)** 預金総額 38.765 (1.025) 経常費用率 -0.420 (0.190) -2.252 (-2.870)*** -0.197 (-1.753)* 99.755 (2.172)** 6.993 (0.410) 80.898 (2.327)** -1.451 (-3.011)*** -0.964 (-1.186) 経常費用率(-1) 0.189 (-0.291)*** -0.011 (-0.926) -1.504 (-1.303) サンプル数 525 655 862 780 銀行数 121 116 129 119 AR(2) -0.040 (0.425) -0.035 (0.445) -0.006 (0.885) -0.059 (0.101) Sargan検定 18.951 (0.525) 27.319 (0.340) 32.894 (0.106) 25.349 (0.387) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 50 信金中金月報 2011.6 図表7 中小企業向け貸出供給関数の推計結果(2000年代) Model G1 被説明変数 中小企業向け貸出増加率(-1) Model G2 Model H1 2002㽎2007年度 期間 中小企業向け貸出増加率 中小企業向け貸出増加率 0.141 (0.619) 0.051 (1.633) 中小企業向け貸出増加率 0.071 (0.252) 自己資本比率 一店舗あたりの県内事業所数(-1) -0.780 (-2.315)** 0.000 (-0.096) 0.009 (2.160)** 18.698 (1.706)* 3.981 (0.370) 85.080 (6.092)*** -1.214 (-1.655)* -0.273 (-1.492) -0.069 (-0.406) -1.982 (-2.009)** -6.751 (-6.490)*** -2.131 (-2.767)*** -5.049 (-2.116)** 0.005 (1.399) 0.010 (1.101) 0.003 (1.110) 0.001 (0.228) 0.006 (1.258) 貸出金利 地価変化率(-1) -0.301 (-1.202) 県内貸出シェア(-1) 倒産発生率(前年差) 預金総額 経常費用率 銀行数 -0.006 (-0.540) -0.110 (-0.649) -0.205 (-1.026) -0.034 (-0.736) -0.037 (0.471) 2.489 (-0.370) 69.869 (2.575)** -7.847 (-0.905) 106.175 (3.023)*** -0.463 (-1.293) -0.770 (-0.089) 経常費用率(-1) サンプル数 0.080 (2.605)*** 0.718 (0.684) -2.082 (-0.575) -2.993 (-0.648) ハーフィンダール指数(-1) 中小企業向け貸出増加率 0.740 (0.361) 自己資本比率(-1) 貸倒引当率(-1) Model H2 2000㽎2007年度 -0.064 (-0.473) 601 625 118 0.636 (0.652) 816 112 121 735 112 AR(2) -0.007 (0.863) 0.034 (0.473) -0.063 (0.085) -0.029 (0.502) Sargan検定 22.492 (0.211) 27.994 (0.260) 48.843 (0.134) 38.889 (0.104) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 預金総額はE2・F2で正で有意となった。 事業所数が増加すれば貸出増加に寄与したと これは相対的に規模の大きな銀行での貸出増 見られる。 加率が高いことを意味する。2000年代に景 県別貸出シェアはF2を除いて負で有意と 気が回復していく中で、貸出も当然増加する なった。図表2で見たように、貸出増加率はお が、規模の大きな地銀ほど、貸出先の規模や おむね1998年度から2004年度頃まで (地域に 貸出先数が多くなるため、規模の経済性が作 よってはもっと長い期間) 負となり、貸出減少 用し、より効率的な貸出が可能となり、貸出 期が長く続いていた。他方、図表8で地銀の貸 増加率がより高くなったものと解釈できる。 出シェア(平均値)の推移を見ると、1994年度 なお、「中小企業向け」でもG2・H2で正で有 から上昇している。堀江[2005]は、 「東京など 意となった。また、経常費用率は総貸出F1 大都市では都銀等大手行が強く貸出シェアを でのみ負で有意であった。 拡大する一方、地方では大手行のシェアが低 一店舗あたりの事業所数はF2で正で有意 下」したことを指摘している。このことから、 (「中小企業向け」ではG2でのみ正で有意) 貸出シェアが高いのは一般的に地方である一 で、90年 代 の 結 果 と は 符 号 は 逆 と な っ た。 方、貸出額は都市圏よりも地方圏で縮小が大 不良債権処理の進展と景気回復によって、貸 きいために、県 別 貸出シェアの符 号が負に 出行動も「合理的」になり、貸出対象である なったと考えられる。そこで、貸出シェアの増 査読付論文 51 減による貸出増加率への影響について考察す ル指数は、 「貸出総額」ではE2でのみ正で有意 るため、図表9、10で貸出シェアの前年度との となったが、それ以外は有意ではなかった。 差分を説明変数とした推計を追加的に行った。 地価変化率は、90年代の推計結果では有 結 果、貸 出シェアの 差 分 の 係 数は、90年 代、 意ではなく、2000年代のすべてのモデルで 2000年代ともに正で有意で、貸出シェアの増 負で有意となった 加は貸出増加率には正の影響をもたらすこと で少し詳しく考察する。 が分かる。これは、理論モデルで期待される符 Kiyotaki and Moore[1997]の議論に関して、 号条件と合致するものである。ハーフィンダー 櫻川・櫻川[2009]は「地価の上昇局面と下落 (注)10 。この点について以下 図表8 地域銀行の貸出シェア(平均値)とハーフィンダール指数の推移 年度 1995 地域銀行の貸出シェア(平均) 1998 2001 (単位:%) 2004 2007 17.16 18.10 19.21 20.74 21.46 東京での地域銀行の貸出シェア 0.47 0.45 0.42 0.63 0.63 東京以外での地域銀行の貸出シェア 20.60 21.36 22.12 23.13 24.45 2181.26 2241.67 2292.05 2343.75 2342.79 東京のハーフィンダール指数 3441.96 3534.39 3898.42 4198.58 3574.18 東京以外でのハーフィンダール指数 2173.97 2234.45 2288.21 2335.32 2351.83 ハーフィンダール指数の全国平均 (備考)貸出シェア・ハーフィンダール指数の計算方法は補論1を参照されたい。 図表9 前年度差変数を用いた貸出供給関数の推計結果(1990年代) Model I1 Model I2 Model J1 1995㽎2002年度 期間 被説明変数 貸出総額増加率 貸出総額増加率 1995㽎2000年度 貸出総額増加率 貸出総額増加率(-1) -0.006 (-0.515) -0.016 (-0.575) 0.006 (-0.245) 貸出金利 32.191 (6.632)*** 21.557 (1.410) 27.142 (7.855)*** 貸倒引当率 0.066 (-0.628) 自己資本比率 経常費用率 預金総額 1.882 (2.263)** 26.401 (0.889) 預金総額(-1) 0.033 (0.774) 0.069 (1.006) 倒産発生率(前年差) -0.010 (0.174) -0.119 (-0.788) 一店舗あたりの県内事業所数 -0.003 (-1.564) ハーフィンダール指数(前年差) サンプル数 銀行数 -0.370 (-0.174) 0.554 (-0.470) 19.791 (0.841) 地価変化率(前年差) 県内貸出シェア(前年差) -0.070 (-1.116) 67.807 (3.235)*** 0.685 (-0.165) -70.238 (-1.701)* 一店舗あたりの県内事業所数(-1) 貸出総額増加率 0.418 (0.373) 6.075 (2.568)*** 0.486 (0.887) Model J2 -35.298 (-1.574) 0.021 (-0.065) 0.088 (0.288) 0.037 (1.377) -0.425 (-0.842) -0.003 (-1.370) -0.006 (-2.110)** -0.004 (-1.229) 1.789 (3.305)*** -0.004 (-0.423) 705 126 1.845 (1.850)* 1.789 (1.680)* -0.012 (-1.291) -0.004 (0.296) 713 125 478 124 2.804 (3.545)*** -0.020 (-1.087) 350 120 AR (2) -0.016 (0.713) -0.044 (0.214) -0.043 (0.476) -0.074 (0.331) Sargan検定 16.371 (0.175) 20.167 (0.175) 14.138 (0.078) 9.341 (0.406) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 (注)10.山崎・竹田[1997]は地価と貸出の関係は正であったことを示している。 52 信金中金月報 2011.6 図表10 前年度差変数を用いた貸出供給関数の推計結果(2000年代) Model K1 被説明変数 貸出総額増加率(-1) Model K2 貸出総額増加率 貸出総額増加率 0.117 (1.102) 44.396 (4.327)*** 0.161 (0.638) 貸出金利 53.251 (4.134)*** 63.645 (2.102)** 貸倒引当率 -3.808 (-1.323) 自己資本比率 預金総額 Model L2 2000㽎2007年度 -0.132 (-2.332)** 経常費用率 Model L1 2002㽎2007年度 期間 貸出総額増加率 貸出総額増加率 -0.115 (-1.889)* 97.745 (6.025)*** -2.256 (-1.450) 12.835 (1.466) 1.120 (1.361) -0.262 (-0.698) 3.339 (1.139) 0.563 (1.297) -2.279 (-1.504) 14.327 (0.125) 50.797 (0.833) 1.297 (0.663) 34.141 (0.112) 地価変化率(前年差) 0.082 (0.814) -0.087 (-1.109) 0.129 (1.934)* -0.158 (-1.465) 倒産発生率(前年差) -0.239 (-1.259) 0.045 (1.179) -0.167 (-1.564) 0.003 (0.702) -0.026 (-1.584) 0.000 (0.464) 一店舗あたりの県内事業所数 県内貸出シェア(前年差) ハーフィンダール指数(前年差) サンプル数 銀行数 AR(2) Sargan検定 1.848 (2.602)*** -0.003 (-0.949) 2.615 (1.983)** -0.004 (-0.148) 525 549 121 1.781 (2.700)*** -0.001 (-0.979) 754 116 125 -0.030 (-0.042) -0.040 (-2.667)*** 2.450 (1.743)* 0.002 (0.371) 783 119 0.036 (0.511) -0.011 (0.818) 0.021 (0.602) -0.031 (0.330) 11.691 (0.765) 6.784 (0.816) 16.027 (0.380) 16.873 (0.326) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 局面では、地価は貸出に及ぼす影響が異なっ と推察する。2000年代も地価下落は継続して てくる可能性がある」として、地価の下落局 おり、本稿での2000年代の検証結果で地価変 面では貸出と地価の関係は必ずしも正の関係 化 率 が 負 で 有 意 と な っ た の は 櫻 川・ 櫻 川 とはならないことを示唆し、最終的に「大量 [2009]が示す結果と整合的である。 の不良債権を被った銀行が何らかの理由で利 しかし、地価下落局面は同じだとしても、 潤最大化という企業本来の行動原理を取れな 90年代と2000年代では銀行貸出と地価の関係 くなり、地価が下落したにもかかわらず、貸 はやや異なることも考えられる。すなわち、不 出の収縮が生じなかった」と指摘する。そし 良債権は2002年頃を境に減少するようになり て地価と貸出についての実証分析を行い、地 (預金保険機構[2007] ) 、貸出増加率は負であ 価の下落局面(1993㽎2005年)を対象とする るがその幅は小さくなるなど持ち直すように VAR分析では地価ショックが貸出に与える影 なった。これは90年代の「追い貸し」のよう 響は有意でなくなることを示している。また、 な正常でない銀行行動によって地価と貸出の 不動産融資シェアを被説明変数とする回帰分 関係性が薄れたのではなく、2000年代は「土 析 で は、BIS規 制 が 導 入 さ れ た1992年 以 降 地担保に頼った貸出では貸出増を期待できな (地価下落局面)では地価変化率の係数は有意 くなるために、銀行は審査による貸出を強 に負であり、90年代に貸出収縮が生じなかっ 化」(櫻川・櫻川[2009])したために、結果 たのは「追い貸し」があったためではないか として地価と貸出の負の相関関係が薄れ、逆 査読付論文 53 に正の相関も見られるようになったと推察さ 降を対象に追加推計を行った(図表11)。地 れるのである。さらに櫻川・櫻川[2009]は、 価の係数は負である一方、地価変化率×東京 地価回復は東京から始まり、地方での回復は ダミーはおおむね正で有意である。これは全 遅れたことを指摘する。このことは上述の議 国レベルでは地価と貸出の関係は負となっ 論を踏まえると、東京と地方の間では、貸出 て、上の議論が妥当するが、地価が逸早く回 と地価の関係が交錯して並存している可能性 復した東京では正の関係となり、貸出行動が を示唆するものである。 正常な利潤目的に基づくものに回帰していっ この点につき、東京を本拠とする地銀にダ た可能性が示唆されよう(地価変化率と交差 ミー変数(以下東京ダミー)を付して、地価 項の係数の和はいずれも正となる)。このよ との交差項を説明変数に入れて2000年代以 うに地域によって地価の回復状況が異なり貸 図表11 東京ダミーを追加した貸出供給関数の推計結果(2000年代) Model M1 Model M2 Model N1 2002㽎2007年度 期間 被説明変数 貸出総額増加率(-1) 貸出金利 貸出総額増加率 貸出総額増加率 0.037 (0.573) 0.078 (0.890) 9.988 (0.990) 21.545 (1.829)* 26.617 (3.498)*** 4.488 (1.266) 4.112 (0.617) -1.451 (-2.935)*** 0.646 (1.056) -24.294 (-0.873) 105.945 (3.495)*** 9.077 (0.928) -1.149 (-1.726)* -1.076 (-2.574)** -0.936 (-3.398)*** 0.294 (1.654)* -0.281 (-2.232)** 倒産発生率(前年差) 0.123 (0.053) 一店舗あたりの県内事業所数 0.003 (0.702) 一店舗あたりの県内事業所数(-1) 0.003 (1.532) 県内貸出シェア 1.016 (0.863) 県内貸出シェア(-1) 5.437 (2.807)*** -3.004 (-2.281)** 0.008 (-0.451) 0.017 (2.259)** 1.427 (1.672)* -0.024 (-3.696)*** 0.010 (1.448) -6.258 (-4.041)*** ハーフィンダール指数(-1) 地価変化率(-1)× 東京ダミー -0.177 (-1.794)* -0.032 (-0.793) 倒産発生率(-1) ハーフィンダール指数 50.797 (0.833) -81.287 (-5.936)*** 倒産発生率 倒産発生率(前年差)(-1) -1.000 (-1.024) -0.500 (-0.602) 預金総額(-1) 地価変化率(-1) -0.069 (-1.786)* 57.954 (3.018)*** -0.699 (-0.787) 経常費用率(-1) 預金総額 貸出総額増加率 1.272 (0.756) 自己資本比率 経常費用率 2000㽎2007年度 貸出総額増加率 -0.124 (-1.616) 貸倒引当率 貸倒引当率(-1) Model N2 0.022 (2.110)** 0.015 (1.285) 2.250 (1.116) 7.245 (1.782)* 7.306 (1.605)* サンプル数 619 653 756 549 銀行数 120 116 127 116 AR (2) -0.057 (0.186) 0.031 (0.513) -0.051 (0.229) -0.011 (0.818) Sargan検定 24.989 (0.161) 21.990 (0.285) 18.807 (0.877) 6.784 (0.816) (備考)図表4の備考1-5を参照されたい。モデルの操作変数は補論2を参照されたい。 54 信金中金月報 2011.6 出行動も異なるのは、地価の上昇局面と下落 出シェアの増減が貸出供給増加率の増減と正 局面で、貸出と地価の関係が異なるという上 の関係にあること、②地銀の信用リスクの期 述の議論を補強するものである。 待値となる倒産発生確率と貸出供給は負の関 次に、倒産発生率は90年代は有意ではな 係があることや、③地価と貸出供給の関係は かったが、2000年代はE2を除いてすべて負 逆相関で、2000年代の地価下落局面での地 で有意となった。これは、2000年代以降に 銀の貸出は担保価値よりも貸出審査に重点を 信用不安が収まり、景気も回復していったこ 置いたという仮説を支持することが分かった。 とを背景として、倒産発生率が減少して地銀 また、90年代の説明変数があまり有意でな の地元の信用状態が回復すれば貸出も増加す いものが多い一方で、2000年代では有意とな るように作用したと解釈でき、いわば貸出行 る説明変数が多いことが指摘された。この点 動が正常化するようになったという上記の議 につき、理論モデルや使用したデータの妥当 論と整合的である。 性、変数選択の問題などの検討は必要である 5.まとめと今後の課題 が、90年代に地銀が「貸し渋り」や「追い貸 し」などのような貸出行動が見られた時期は、 本稿では地域経済環境、競争条件と地銀の 理論モデルで説明可能な地域経済環境や競争 貸出行動の関係について、先行研究ではあま 条件からの影響はあまり検出されず、2000 り分析対象とされていない2000年代を中心に 年代に不良債権処理が一巡し、地銀の貸出供 分析を行った。まず、地銀の貸出供給モデル 給が増加する際には貸出行動も正常化して、 の構築にあたっては、県別・銀行別を意識し、 地域経済環境や競争条件を内容とする説明変 各地銀の貸出行動に影響を与えると考えられ 数が有意になったのではないかと解釈された。 る本拠県での地域経済動向に加え、地銀の競 本稿の分析に関し、今後検討すべき課題は 争条件について考察を行い、それらが貸出供 以下のとおりである。第一に、本稿では、 「各 給量の決定に反映するモデル構造とした。 地銀は本拠県での利潤最大化行動を考える」 計量分析の結果を要約すると以下のように と想定したが、 「本拠県での貸出のほか、進出 なる。 まず、90年代、2000年代のいずれの した他県での貸出配分も考えて利潤を最大化 推計でも貸出供給と貸出金利、自己資本比率 する」という考え方もある には正の関係を検出できた。また預金規模と 産業の疲弊や地域の高齢化などによって、地 貸出供給にも正の関係があること、すなわち 銀の経営環境はさらに厳しさを増す中で、従 規模の経済性も確認できた。競争条件や地域 来からの営業地盤を見直して隣接県へ進出す 経済環境から貸出への影響については、①貸 る地銀 (注)11 (注)12 。近年、地方 や、他行と経営統合する地銀が増 (注)11.この点については本誌レフェリーから貴重な示唆をいただいた。 12.品田[2006]は地銀の営業広域化戦略について分析している。 査読付論文 55 加した。このような動きは、①営業地盤や経 らの影響を受けるとの前提で考察してきた 営規模の拡大によって、規模の経済性を追求 が、逆に地銀の経営状態や地域金融の状態が していること、②営業地盤の拡大で地域リス 地域の実体経済に影響を与えることも考えら クを分散させること、③顧客が地域を超えた れるかもしれない 活動をするのに、地域を超えた金融サービス 関係についての分析を行うことで、地域経済 を提供できないと顧客の利便性向上が図れな と地銀との関係のより深い理解を得られるこ いことが背景にある。本稿では、このような とができると考えられる。この点も今後の課 想定を省略して推計したが、このような考え 題である。 方を取り入れたモデル展開は必要であろう。 第二に、本稿では地銀の営業地盤を県単位 (注)13 。このような逆の因果 補論1.推計に利用したデータ で捉えたが、地銀の営業地盤の強弱はもっと 推計のために利用したデータの詳細は図表 下位レベルのたとえば市町村単位で細分化さ 12のとおり。 れているとの意見もある。このようなさらに詳 細なレベルでの分析も今後の検討課題である。 補論2.推計モデルの操作変数 第三に、期間を90年代と2000年代に区切っ 推計モデルでの操作変数は各モデルにおけ ての推計も試みたが、中小企業向け貸出を対 る説明変数および県内総生産増加率の階差を 象とした推計ではやや説明力が低下している 採用した。各モデルの操作変数は図表13のと ことがうかがわれた。この点については、ま おりである(前 年 差 等の表記は省略してい だ推計方法など改善の余地はあるものと考え る) 。ただし、表中の数字は採用した操作変数 られる。 のラグ値を示す(たとえば、2∼5は2期から5 最後に、本稿では地銀の貸出供給が地域か 期までのラグ値を採用したことを示す) 。 (注)13.堀・木滝[2003]は金融機能の低下によるマクロ経済への悪影響の量的分析について考察している。しかしその結果は、 都道府県別の企業規模別設備投資動向は大企業よりも小企業の方で投資が収縮しているが、金融機関の健全性とはあまり関 係がないというものであった。 56 信金中金月報 2011.6 図表12 変数名 説 明 貸出総額増加率・ 中小企業向け貸出増加率 個別行での貸出利息額を分子に、貸出総額を分母として算出した。 貸倒引当率 各行の個別貸倒引当金を分子に、貸出総額を分母として算出した。 自己資本比率 各行の資本合計を分子に、総資産額を分母として算出した。尚、債務超過の銀行は正 常な営業活動はできないと考え、正のデータのみを対象とする。 経常費用率 各行の経常費用を分子に、貸出総額を分母として算出した。 預金総額 対数値を計測して利用した。 貸出金利 各行の貸出金利息を分子に、貸出総額の平残を分母として算出した。尚、データの都 合上、分母である貸出総額と中小企業向け貸出総額は得られたものの、貸出金利息に ついては中小企業向け貸出利息額が得られなかったため、貸出金利息総額から計算し た。中小企業向け貸出比率は、総資産額・貸出総額が大きい地銀ほど低くなる傾向が ある。一般的な見解としては、中小企業向け貸出は大企業向け貸出よりも貸出金利が 高くなるために、貸出総額の小さい地銀ほど中小企業向け貸出比率が高くなるため、 ここで用いた貸出金利は実際の推計よりも高くなっている可能性がある。 地価変化率 『都道府県地価調査』(国土交通省)から都道府県別の系列を利用して算出した。 (商業地地価対前年変化率) (都道府県別データ) 倒産発生率 『企業倒産調査年報』(平成18年度までは中小企業基盤整備機構、それ以後は(財)企 業共済協会)の都道府県別倒産企業負債残高を分子に、 『金融マップ』(金融ジャーナ ル社、月刊金融ジャーナル増刊号)の都道府県別県内貸出残高を分母として算出し た。尚、実際の推計では倒産発生率の対前年差を用いた。 一店舗あたり県内事業所数 『事業所・企業統計調査』 (総務省)の都道府県別の事業所数を分子に、 『金融マップ』 掲載の各行の店舗数で分母として算出した。 県内貸出シェア 分母となる県内貸出額合計は、都市銀行、長信銀、信託銀行、信用金庫、信用組合に ついては『金融マップ』に掲載された都道府県別の都市銀行貸出合計、長信銀貸出合 計、信託銀行貸出合計、信用金庫貸出合計、信用組合合計をそれぞれ架空の一つの貸 出主体とみなして県内貸出額とし、地銀については『金融マップ』に掲載された各行の 県内貸出額を用いて、それら県内貸出額の和とした。分子の各地銀の県内貸出額は同じ く『金融マップ』掲載の各行の県内貸出額とした。尚、 『金融マップ』では、各行の県 内貸出額は他地域の地銀の分を含み、自行の他県分を含んでいない。これは県内貸出 のシェア計算という目的に妥当するものであるため、このまま採用することとした。 県内貸出シェアによる ハーフィンダール指数 県内貸出シェアの計算で用いた架空の一つの貸出主体とみなして計算した貸出額と、 地銀各行の県内貸出額から計算した各貸出主体の貸出シェアを用いて、各地銀の県別 のハーフィンダール指数を算出した。 県内総生産成長率 内閣府『県民経済計算』の各年度の各都道府県別の県内総生産から算出した。 (備考)貸出総額増加率から貸出金利までは日経NEEDSの金融財務銀行本決算ファイルからデータを取得した。 査読付論文 57 図表13 モデル 中小企業 貸出総額 向け貸出 貸出金利 増加率 増加率 A1 2∼5 1 A2 2∼3 1∼2 B1 2∼5 1 B2 2∼4 1 C1 2∼4 1 C2 2∼5 1 D1 2∼4 1 D2 2∼5 1 E1 2∼5 1 E2 2∼5 1 F1 2∼4 1 F2 2∼3 1∼3 G1 2∼4 1 G2 2∼5 1 H1 2∼6 1 H2 2∼3 1 I1 2∼3 1 I2 2∼3 1 J1 2∼3 1 J2 2∼3 1∼2 K1 2∼4 1 K2 2∼3 1 L1 2∼3 1 L2 2∼3 1 M1 2∼4 1 M2 2∼4 1 N1 2∼5 1 N2 2∼3 1 58 貸倒 引当率 信金中金月報 2011.6 自己 資本比率 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 2 1 県内 総生産 成長率 預金総額 地価 変化率 倒産 発生率 1 1 2 1 1 1 2 2 1 1 2 1 2 2 2 1 1 1 2 2 2 2 2 1∼2 1 1 2 1 2 2 2 1 2 1 2 2 2 2 2 1∼2 1 1 2 1 2 2 2 1 2 1 2 2 2 2 2 1 1 1 2 1 2 2 2 0 2 1 2 1 2 2 2 1∼2 1 1 2 1 2 2 2 1 2 2∼3 2∼3 2 2∼3 2∼3 0∼3 1 1 2 1 2 2 2 1 2 1 2 1 2 2 2 1 1 1 2 1 2 2 2 1 2 1 2 1 2 2 2 0∼1 1 1 1 1 1 1 1 0∼1 1 2 1 1 2 1 1 1∼2 1 1 1 1 1 1 1 0∼1 1∼3 2 一店舗 ハーフィ あたりの 県内貸出 ンダール 県内 シェア 指数 事業所数 経常 費用率 2 2 2 0 1∼3 1 2 1 1 1 1 1 0∼2 1 1 1 1 1 1 1 0∼1 1 1 1 1 1 1 1 1∼2 1 1 1 1 1 1 1 0∼1 1 1 1 1 1 1 1 1∼2 1 1 2 1 2 1 1 1∼2 2 1 2 1 2 2 2 1∼3 1 1 2 1 2 2 2 0 1 2 1 1 1 1 1 0 〈 参考文献 〉 安孫子勇一・吉岡孝昭「パネル・データを用いた地域経済と地域金融に関する実証分析」 『大阪大学経済学』第53巻第2 号(2003) 植草益・竹中康治・菅久修一・井手秀樹・堀江明子『現代産業組織論』NTT出版(2002) 小川一夫『大不況の経済分析』日本経済新聞社(2003) 金子隆「貸出金利の銀行間格差 ―第二地銀協地銀の個別データによる分析―」『地域金融問題研究』、第2号(1994) 加納正二「審査と貸出金利」『国際公共政策研究』、第2巻 第1号 大阪大学(1998) 後藤善行「貸出金利と地域間格差と貸出市場の寡占」『調査季報』 第12号 国民金融公庫調査部(1990) 櫻川昌哉・櫻川幸恵「地価変動に翻弄された日本経済」池尾和人編集『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策 4 不 良債権と金融危機』慶應義塾大学出版会、pp.3-34(2009) 全国地方銀行協会事務局『新・地方銀行読本』金融財政事情研究会(2006) 品田雄志「地域銀行の営業広域化戦略 ―競争激化で進む収益性の低下、再編による新たな棲み分けも―」『金融調査 情報』20-1、信金中央金庫総合研究所(2008年4月9日号) 随清遠「供給サイドからの中小企業貸出分析」『信金中金月報』第6巻第1号、信金中央金庫総合研究所(2007年1月) 杉原茂・笛田郁子「不良債権と追い貸し」『日本経済研究』第44号、日本経済研究センター(2002年3月) 関根敏隆・小林慶一郎・才田友美「いわゆる「追い貸し」について」『金融研究』第22巻第1号、日本銀行金融研究所 (2003年3月) 辰巳憲一『日本の銀行業・証券業』東洋経済新報社(1984) 筒井義郎『金融市場と銀行業』東洋経済新報社(1988) 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Mori, Nobuhiro and Tsutsui,Yoshiro, " Bank Market Structure and Performance: Evidence From Japan," The Economic Studies Quarterly, Vol. 40, No. 4, 1989. 査読付論文 59 信金中金だより 信金中央金庫 地域・中小企業研究所活動状況 (4月) 1.レポート等の発行 発行日 11.4.1 レポート分類 内外金利・為替見通し 通巻 23-1 タ イ ト ル 執筆者 国内金利環境:大震災が当面の景気を下押し。日銀は 斎藤大紀 金融緩和を強化 11.4.15 中小企業景況レポート 143 1∼3月期業況は震災直前までは改善基調を持続 − 2.講座・講演・放送等の実施 実施日 種類 タ イ ト ル 講座・講演会・番組名称 11.4.16 講演 環境変化に挑む中小企業の経営事例 土曜勉強会 大阪商工信用金庫 鉢嶺実 11.4.16 講演 起業の現状と心構え 松本信用金庫 山田健嗣 11.4.16 講演 苫小牧信用金庫 藤津勝一 浜松信用金庫 斎藤大紀 起業セミナー 中小企業金融円滑化法への対応にみ 特別研修 主催 講師等 る経営改善支援の課題 11.4.20 60 講演 今後の日本経済の行方 信金中金月報 2011.6 平成23年度北信会第1回勉強会 統 計 1.信用金庫統計 (1)信用金庫の主要勘定概況 ………… 61 (2)信用金庫の店舗数、合併等 ……… 63 (3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …… 64 (4)信用金庫の預金者別預金 ………… 65 (5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …… 66 (6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……… 67 (7)信用金庫の余裕資金運用状況 …… 68 2.金融機関業態別統計 (1)業態別預貯金等 …………………… 69 (2)業態別貸出金 ……………………… 70 統計資料の照会先: 信金中央金庫 地域・中小企業研究所 Tel 03-5202-7671 Fax 03-3278-7048 (凡 例) 1.金額は、単位未満切捨てとした。 2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。 3.記号・符号表示は次のとおり。 〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔 ̶ 〕該当計数なし 〔△〕減少または負 〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率 〔p〕速報数字 〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続 4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の 4県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。 ※ 信金中金 地域・中小企業研究所のホームページ (http://www.scbri.jp/) よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。 1.(1)信用金庫の主要勘定概況(2011年3月末速報) ○預 金 3月の全国信用金庫の預金は、月中8,564億円、0.7%減と、前年同月 (9,337億円、0.7%減) と同様に減少した。 ① 要求払預金は、月中4,715億円、1.1%減と、前年同月(7,876億円、1.9%減)と同様に減少した。 ② 定期性預金は、月中6,224億円、0.7%減と、前年同月(3,942億円、0.5%減)と同様に減少した。 ③ 外貨預金等は、月中2,373億円、76.4%増加した。 なお、2011年3月末の預金の前年同月比増減率は、2.0%増となった。 ○貸出金 貸出金は、月中5,320億円、0.8%増と、前年同月(681億円、0.1%増)と同様に増加した。 ① 割引手形は、月中308億円、2.9%増と、前年同月(845億円、7.4%減)の減少から増加となった。 ② 貸付金は、月中5,007億円、0.8%増と、前年同月(1,527億円、0.2%増)と同様に増加した。 なお、2011年3月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.4%減となった。 ○余資運用資産 余資運用資産は、月中1兆3,311億円、2.0%減と、前年同月(1兆237億円、1.6%減)と同様に減少した。 主な内訳をみると、預け金は、月中6,940億円、2.6%減となった。 コールローンは、月中3,151億円、66.0%減となった。 有価証券は、国債(3,698億円減) 、外国証券(676億円減)、地方債(564億円減)等が減少したことから、 月中5,800億円、1.6%減となった。 (注) 2011年3月計数が未入手となった一部信用金庫の計数については、2011年2月と同値としている。 統 計 61 信用金庫の主要勘定増減状況(2011年3月末速報) 前月比増減 区 分 現 ( ( ( 資 産 項 目 金 (小 切 手 ・ 手 形) 預 け 金 (信 金 中 金 預 け 金) (譲 渡 性 預 け 金) 買 入 手 形 コ ー ル ロ ー ン 買 現 先 勘 定 債券貸借取引 支 払 保 証 金 買 入 金 銭 債 権 金 銭 の 信 託 商 品 有 価 証 券 有 価 証 券 国 債 地 方 債 短 期 社 債 社 債 株 式 貸 付 信 託 投 資 信 託 外 国 証 券 そ の 他 の 証 券 小 計 貸 出 金 (月 中 平 残) (うち金融機関貸付金) 割 引 手 形 貸 付 金 手 形 貸 付 証 書 貸 付 当 座 貸 越 預 金 ・ 積 金 (月 中 平 残) 要 求 払 預 金 当 座 預 金 普 通 預 金 貯 蓄 預 金 通 知 預 金 別 段 預 金 納 税 準 備 預 金 定 期 性 預 金 定 期 預 金 定 期 積 金 外 貨 預 金 等 実 質 預 金 譲 渡 性 預 金 借 用 金 預 貸 率 残 高 ( 負 債 項 目 ( 1,616,234 197,186 ) ( 25,821,500 △ 20,842,603 ) (△ 11,600 ) (△ 0 162,022 △ 0 5,960 285,686 △ 189,725 △ 5,236 △ 34,418,271 △ 9,566,649 △ 5,562,975 △ 2,196 △ 13,941,783 △ 695,229 △ 2 634,085 △ 3,895,099 △ 119,508 △ 62,504,634 △ 63,849,780 63,330,271 ) ( 826,171 1,064,055 62,785,305 4,555,137 55,412,092 2,818,076 119,750,108 △ 119,554,576 ) (△ 40,121,204 △ 2,580,748 35,353,150 △ 1,094,656 △ 275,138 782,958 △ 33,906 79,081,105 △ 73,362,857 △ 5,718,115 △ 547,622 119,552,922 △ 52,502 △ 378,950 53.2 増 減 額 増 327,378 97,094 ) ( 694,064 △ 1,404,403 ) (△ 47,400 ) (△ 0 315,135 △ 0 926 44,964 △ 23,400 △ 1,895 △ 580,007 △ 369,883 △ 56,453 △ 28,478 △ 36,783 △ 9,491 △ 0 9,892 △ 67,607 △ 2,160 △ 1,331,164 △ 532,043 132,607 ) ( 30,536 30,882 500,741 47,485 353,363 99,894 856,467 △ 42,892 ) (△ 471,528 △ 416,449 716,848 △ 6,818 △ 179,551 348,086 △ 3,579 622,459 △ 576,319 △ 46,272 △ 237,344 953,560 △ 38,191 △ 69,165 (単位:百万円、% ) 前 年 同 月 前年同月比 減 率 増 減 率 月中増減額 月中増減率 増 減 率 25.4 1.8 269,959 20.4 △ 5.1 97.0 ) (△ 1.4 ) ( 27,674 ) ( 16.0 ) (△ 4.4 ) 2.6 13.3 △ 717,320 △ 3.0 6.2 6.3 ) ( 9.6 ) (△ 780,474 ) (△ 3.9 ) ( 4.8 ) 80.3 ) (△ 74.9 ) (△ 41,200 ) △ 47.0 (△ 36.6 ) ̶ ̶ 0 ̶ ̶ 66.0 △ 57.0 △ 294,441 △ 43.8 54.4 ̶ ̶ 0 ̶ ̶ 18.3 △ 60.3 △ 20,369 △ 57.5 △ 80.2 13.5 △ 7.5 △ 37,740 △ 10.8 16.4 10.9 14.4 △ 31,707 △ 16.0 △ 6.2 26.5 2.1 △ 495 △ 8.8 40.0 1.6 0.2 △ 191,630 △ 0.5 5.9 3.7 △ 8.4 171,992 1.6 7.2 1.0 17.7 27,359 0.5 24.3 92.8 △ 0.0 △ 44,638 △ 95.3 △ 92.2 0.2 1.5 △ 38,441 △ 0.2 6.0 1.3 2.6 △ 50,138 △ 6.8 2.9 0.0 0.0 0 0.0 △ 33.3 1.5 5.0 △ 87,642 △ 12.6 △ 8.5 1.7 △ 3.4 △ 156,378 △ 3.7 △ 9.6 1.7 2.3 △ 13,744 △ 10.5 1.4 2.0 4.9 △ 1,023,743 △ 1.6 5.8 0.8 △ 0.4 68,121 0.1 △ 1.1 0.2 ) (△ 0.8 ) ( 43,035 ) ( 0.0 ) (△ 0.9 ) 3.8 16.0 6,307 0.8 2.8 2.9 1.1 △ 84,586 △ 7.4 △ 19.1 0.8 △ 0.5 152,708 0.2 △ 0.7 1.0 △ 5.7 △ 43,061 △ 0.8 △ 10.5 0.6 0.0 85,992 0.1 0.3 3.6 △ 2.5 109,778 3.9 △ 3.8 0.7 2.0 △ 933,776 △ 0.7 1.6 (△ 0.0 ) ( 1.8 ) 0.0 ) ( 1.9 ) (△ 42,420 ) 1.1 3.2 △ 787,697 △ 1.9 0.9 19.2 0.9 159,350 6.6 △ 3.4 1.9 3.5 △ 1,405,587 △ 3.9 1.4 0.6 △ 0.0 △ 6,521 △ 0.5 △ 0.2 187.8 15.7 143,486 152.2 △ 4.9 30.7 △ 0.4 319,953 68.5 △ 3.9 11.8 △ 3.4 1,622 4.8 △ 6.5 0.7 1.3 △ 394,251 △ 0.5 2.0 0.7 1.4 △ 403,143 △ 0.5 2.3 0.8 △ 0.0 8,893 0.1 △ 1.3 76.4 6.1 248,172 92.7 4.8 0.7 2.0 △ 961,449 △ 0.8 1.6 42.1 11.6 △ 14,762 △ 23.8 △ 9.1 22.3 35.2 △ 9,512 △ 3.2 △ 20.5 (備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。) 62 信金中金月報 2011.6 前年同月比 1.(2)信用金庫の店舗数、合併等 信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移 (単位:店、人) 店 舗 数 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 本 店 支 店 (信用金庫数) 287 7,172 281 7,128 279 7,126 279 7,132 278 7,126 274 7,104 272 7,089 272 7,089 272 7,088 272 7,089 272 7,089 272 7,084 272 7,078 272 7,068 272 7,056 272 7,058 272 7,057 271 7,051 p 271 出張所 合 計 275 278 266 266 263 258 258 258 259 259 259 260 263 265 264 264 264 263 7,734 7,687 7,671 7,677 7,667 7,636 7,619 7,619 7,619 7,620 7,620 7,616 7,613 7,605 7,592 7,594 7,593 7,585 7,580 会 員 数 9,256,033 9,278,994 9,311,661 9,324,875 9,325,159 9,334,858 9,317,116 9,317,074 9,320,010 9,322,125 9,319,542 9,318,544 9,321,405 9,322,729 9,324,580 9,328,348 9,327,951 9,330,020 9,318,619 常勤役員 2,292 2,298 2,290 2,292 2,301 2,285 2,271 2,268 2,266 2,274 2,274 2,274 2,273 2,270 2,268 2,271 2,269 2,262 常 勤 役 職 員 数 職 員 男 子 女 子 計 77,908 32,165 110,073 77,110 33,065 110,175 76,956 34,766 111,722 79,240 38,351 117,591 78,513 37,873 116,386 77,963 37,454 115,417 76,640 36,722 113,362 79,067 39,860 118,927 78,888 39,810 118,698 78,458 39,623 118,081 78,254 39,452 117,706 78,081 39,304 117,385 77,776 39,121 116,897 77,608 39,025 116,633 77,452 38,966 116,418 77,194 38,723 115,917 76,986 38,576 115,562 76,822 38,437 115,259 合 計 112,365 112,473 114,012 119,883 118,687 117,702 115,633 121,195 120,964 120,355 119,980 119,659 119,170 118,903 118,686 118,188 117,831 117,521 115,990 信用金庫の合併等 年 月 日 異 動 金 庫 名 新金庫名 金庫数 異動の種類 2004年10月12日 大阪 南大阪 大阪 303 合併 2004年11月15日 大牟田 柳川 大牟田柳川 302 合併 2004年11月22日 足利 小山 足利小山 301 合併 2005年 1 月 4 日 伊勢崎太田 アイオー 301 名称変更 2005年 2 月14日 北海 古平 北海 300 合併 2005年 2 月14日 阪奈 八光 大阪東 299 合併 2005年 3 月14日 (大分県信組) 杵築 298 合併・解散 2005年 7 月19日 仙台 塩竈 (大分県信組) 杜の都 297 合併 2005年10月17日 高鍋 西諸 高鍋 296 合併 2005年11月21日 新川水橋 滑川 にいかわ 295 合併 2005年11月21日 広島 大竹 広島 294 合併 2006年 1 月10日 多摩中央 八王子 多摩 292 合併 2006年10月16日 三島 伊豆 三島 291 合併 2006年10月16日 愛媛 三津浜 愛媛 290 合併 2006年11月 6 日 島根中央 島根中央 290 合併 2007年 1 月 9 日 下関 津和野 西中国 287 合併 2007年10月 9 日 名寄 士別 2007年11月26日 かんら ぐんま 2008年 1 月15日 沼津 駿河 沼津 283 合併 2008年 1 月15日 きのくに 湯浅 きのくに 282 合併 2008年 1 月21日 伊達 2008年 3 月17日 鶴岡 太平 (出雲信組) 宇部 吉南 多野 (室蘭商工信組) 酒田 北星 286 合併 しののめ 284 合併 伊達 282 合併 鶴岡 281 合併 2008年 5 月19日 八戸 十和田 八戸 280 合併 2008年 7 月 7 日 盛岡 二戸 盛岡 279 合併 2009年 2 月16日 山形 山形 279 合併 2009年 7 月13日 羽後 秋田ふれあい 羽後 278 合併 2009年10月13日 西中国 岩国 西中国 277 合併 2009年11月 9 日 八戸 あおもり 青い森 275 合併 2009年11月24日 北見 紋別 北見 274 合併 2010年 1 月12日 山口 萩 萩山口 273 合併 2010年 2 月15日 杵島 西九州 九州ひぜん 272 合併 2011年 2 月14日 富山 上市 富山 271 合併 (山形庶民信組) (下関市職員信組) 下北 統 計 63 1.(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 預金種類別預金 預金計 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 1,113,772 1,137,275 1,154,531 1,175,838 1,173,980 1,185,688 1,173,806 1,188,482 1,185,709 1,196,877 1,192,613 1,196,704 1,195,743 1,197,645 1,194,795 1,208,008 1,199,848 1,206,065 1,197,501 (単位:億円、%) 前年同月比 増 減 率 1.9 2.1 1.5 1.7 1.7 1.7 1.6 1.7 1.7 1.7 2.0 1.8 1.8 1.9 1.8 1.8 1.9 1.9 2.0 要求払 386,576 382,240 385,019 396,876 390,423 398,768 388,510 402,339 396,786 401,875 394,314 397,008 397,783 402,223 399,174 408,277 398,521 405,927 401,212 前年同月比 増 減 率 2.4 △ 1.1 0.7 1.7 1.6 1.2 0.9 1.4 1.2 1.2 2.3 1.7 1.8 2.1 2.0 2.3 2.3 2.4 3.2 定期性 721,712 749,326 764,590 775,550 780,243 783,981 780,139 783,431 786,023 792,177 795,391 796,839 794,763 792,272 792,433 796,269 798,133 797,035 790,811 前年同月比 外貨預金等 前年同月比 増 減 率 増 減 率 1.7 5,483 2.9 3.8 5,707 4.0 2.0 4,921 △ 13.7 1.9 3,411 △ 31.1 1.9 3,313 △ 29.2 2.1 2,937 △ 20.1 2.0 5,157 4.8 2.0 2,711 △ 22.2 2.1 2,899 △ 16.8 2.1 2,823 △ 17.2 1.9 2,906 △ 10.5 1.9 2,856 △ 7.2 1.8 3,195 △ 3.5 1.7 3,149 0.8 1.6 3,186 9.4 1.5 3,461 17.8 1.6 3,194 6.5 1.6 3,102 15.9 1.3 5,476 6.1 実質預金 1,110,316 1,134,949 1,152,438 1,174,809 1,172,599 1,184,175 1,171,806 1,187,163 1,184,671 1,195,868 1,190,900 1,195,752 1,194,235 1,196,061 1,193,787 1,206,349 1,198,863 1,205,064 1,195,529 前年同月比 増 減 率 1.8 2.2 1.5 1.7 1.7 1.8 1.6 1.7 1.8 1.7 1.9 1.8 1.8 1.8 1.8 1.8 1.9 2.0 2.0 譲渡性預金 998 911 517 674 647 623 470 581 880 929 965 960 923 850 869 875 863 906 525 前年同月比 増 減 率 △ 15.4 △ 8.7 △ 43.1 △ 36.0 △ 36.9 △ 34.6 △ 9.1 △ 5.9 42.7 37.8 37.9 36.9 42.5 33.5 33.5 40.4 40.3 46.7 11.6 (備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。 2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。 地区別預金 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p (単位:億円、%) 北海道 59,138 59,718 60,762 63,119 62,538 64,039 62,249 63,906 63,774 64,669 63,960 64,154 63,960 63,958 64,263 65,352 64,057 64,082 63,609 近 畿 220,845 226,819 230,428 235,110 235,930 239,098 236,386 239,967 239,725 241,880 242,003 243,136 243,561 243,590 243,304 245,810 244,398 245,755 242,296 前年同月比 増 減 率 1.9 0.9 1.7 2.6 2.4 2.3 2.4 2.6 2.7 2.4 2.7 2.3 2.2 2.1 1.7 2.0 2.0 1.7 2.1 前年同月比 増 減 率 3.0 2.7 1.5 1.9 2.2 2.8 2.5 2.7 2.7 2.8 3.0 3.1 3.2 3.1 3.0 2.8 2.6 2.7 2.5 東 北 40,258 40,772 41,643 42,896 42,708 43,031 42,044 42,968 42,742 43,327 43,006 43,185 43,037 43,204 43,069 43,533 43,129 43,394 42,595 中 国 52,842 53,292 53,589 54,393 54,089 54,437 53,671 54,305 54,011 54,645 54,427 54,685 54,456 54,627 54,393 54,937 54,452 55,064 54,435 (備考)沖縄地区は全国に含めた。 64 信金中金月報 2011.6 前年同月比 増 減 率 0.1 1.2 2.1 3.1 3.0 2.4 0.9 0.7 0.7 1.0 0.9 0.8 0.7 0.8 1.0 1.1 1.1 1.0 1.3 前年同月比 増 減 率 3.1 0.8 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.6 0.3 0.4 1.1 0.8 0.6 1.0 0.9 0.9 1.1 1.4 1.4 東 京 207,952 211,882 213,414 215,799 216,296 217,529 216,091 218,541 218,043 219,240 218,276 218,616 218,361 219,156 218,232 219,800 218,711 219,778 219,351 四 国 20,731 21,775 22,362 23,135 23,146 23,461 23,230 23,424 23,410 23,694 23,650 23,757 23,667 23,830 23,834 24,053 23,952 24,046 23,929 前年同月比 増 減 率 1.4 1.8 0.7 0.7 1.4 1.1 1.2 1.6 1.4 1.5 1.3 0.9 0.9 1.0 1.0 1.0 1.1 1.1 1.5 前年同月比 増 減 率 4.1 5.0 2.6 4.4 4.3 4.1 3.8 3.6 3.0 2.4 2.6 2.6 2.2 2.3 2.6 2.5 2.4 2.5 3.0 関 東 211,889 216,685 219,830 223,752 222,820 224,863 222,137 224,847 223,965 226,456 225,304 226,220 225,608 226,459 225,501 228,350 226,751 227,875 225,744 九州北部 19,220 19,492 19,858 20,547 20,434 20,597 20,001 20,609 20,493 20,738 20,614 20,641 20,566 20,641 20,520 20,802 20,574 20,700 20,195 前年同月比 増 減 率 1.6 2.2 1.4 1.5 1.2 1.0 1.0 1.0 1.0 1.2 1.5 1.3 1.2 1.4 1.3 1.5 1.6 1.5 1.6 前年同月比 増 減 率 1.6 1.4 1.8 2.3 2.4 1.9 0.7 0.7 0.6 0.9 1.3 0.7 0.6 0.7 0.7 0.9 0.9 0.7 0.9 北 陸 33,765 34,270 34,931 35,827 35,626 35,837 35,517 35,823 35,931 36,277 36,133 36,362 35,982 36,021 35,851 36,223 35,951 36,137 35,885 南九州 24,173 24,313 24,447 25,040 24,896 25,130 24,785 25,159 25,086 25,331 25,208 25,232 25,079 25,222 25,111 25,437 25,320 25,381 25,182 前年同月比 増 減 率 1.2 1.4 1.9 2.9 2.0 1.9 1.6 1.5 1.7 1.2 1.9 1.7 0.9 0.9 1.0 1.0 0.9 0.9 1.0 前年同月比 増 減 率 0.3 0.5 0.5 1.2 1.4 1.2 1.3 1.3 1.0 1.1 1.8 1.4 0.7 1.2 1.1 1.2 1.5 1.6 1.6 東 海 221,464 226,859 231,857 234,702 234,112 236,311 236,300 237,567 237,175 239,138 238,594 239,301 240,023 239,528 239,325 242,303 241,168 242,469 242,854 全国計 1,113,772 1,137,275 1,154,531 1,175,838 1,173,980 1,185,688 1,173,806 1,188,482 1,185,709 1,196,877 1,192,613 1,196,704 1,195,743 1,197,645 1,194,795 1,208,008 1,199,848 1,206,065 1,197,501 前年同月比 増 減 率 2.0 2.4 2.2 2.0 1.5 1.8 1.9 1.8 2.0 1.8 2.3 2.1 2.5 2.4 2.2 2.5 2.7 2.6 2.7 前年同月比 増 減 率 1.9 2.1 1.5 1.7 1.7 1.7 1.6 1.7 1.7 1.7 2.0 1.8 1.8 1.9 1.8 1.8 1.9 1.9 2.0 1.(4)信用金庫の預金者別預金 (単位:億円、%) 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 預金計 1,113,482 1,136,973 1,154,529 1,175,835 1,173,978 1,185,686 1,183,143 1,173,805 1,188,480 1,185,707 1,196,876 1,192,612 1,196,703 1,195,739 1,197,643 1,194,793 1,208,007 1,199,847 1,206,064 一般法人預金 186,590 180,120 178,052 180,195 183,060 186,741 181,203 179,509 182,428 180,906 180,469 181,529 177,683 183,666 183,454 181,062 186,770 178,587 178,069 要求払 10,088 9,087 9,366 12,675 11,406 10,385 10,431 9,297 15,068 16,577 15,081 12,587 15,305 14,852 12,714 16,276 13,838 16,281 16,105 前年同月比 増 減 率 1.9 2.1 1.5 1.7 1.7 1.7 1.8 1.6 1.7 1.7 1.7 2.0 1.8 1.8 1.9 1.8 1.8 1.9 1.9 個人預金 893,616 923,693 944,286 954,384 950,996 962,693 966,812 960,208 966,085 960,246 970,068 968,047 972,194 966,511 972,887 967,271 978,332 975,369 982,813 前年同月比 増 減 率 2.6 △ 3.4 △ 1.1 0.8 1.9 1.4 1.0 0.8 △ 0.0 △ 1.6 0.1 2.2 △ 0.0 0.3 0.0 △ 0.2 0.0 △ 2.2 △ 1.7 要求払 前年同月比 増 減 率 △ 9.4 △ 9.9 3.0 8.8 5.6 12.2 9.3 △ 0.7 23.7 53.1 18.9 2.1 25.2 30.2 34.7 23.8 33.2 57.4 54.3 定期性 102,909 96,086 96,105 97,857 99,573 103,458 97,129 94,976 97,558 95,570 95,469 96,513 92,395 98,131 98,149 96,192 102,343 93,570 92,662 10,864 11,620 11,958 19,056 17,457 16,378 15,710 13,154 14,697 17,212 20,913 21,006 21,150 19,924 18,851 19,234 18,704 18,777 17,722 前年同月比 増 減 率 2.2 3.3 2.2 1.9 1.6 1.6 1.8 1.6 1.6 1.4 1.6 1.9 1.7 1.6 1.7 1.6 1.6 1.7 1.6 要求払 前年同月比 増 減 率 3.6 △ 6.6 0.0 2.9 3.7 0.1 △ 0.8 △ 1.1 △ 2.4 △ 5.7 △ 2.4 1.7 △ 2.5 △ 1.4 △ 1.6 △ 1.8 △ 1.0 △ 5.4 △ 4.5 定期性 270,825 273,708 276,390 283,823 276,525 283,211 287,363 281,284 287,493 282,094 289,175 284,019 287,100 282,501 290,092 284,286 290,555 286,410 294,232 83,430 83,703 81,701 82,096 83,208 83,015 83,796 84,257 84,606 85,063 84,714 84,723 84,974 85,230 84,999 84,580 84,123 84,698 85,083 前年同月比 増 減 率 2.8 1.0 0.9 1.1 0.9 1.4 2.3 1.7 1.9 1.4 1.8 2.8 2.1 2.1 2.4 2.4 2.5 2.7 2.3 定期性 622,333 649,352 667,109 669,783 673,669 678,675 678,618 678,066 677,754 677,287 680,043 683,175 684,203 683,116 681,889 682,107 686,865 688,074 687,677 前年同月比 外貨預金等 前年同月比 増 減 率 増 減 率 2.0 446 △ 13.3 4.3 623 39.4 2.7 778 24.8 2.2 768 16.7 1.9 791 17.6 1.7 797 4.5 1.6 822 14.0 1.6 847 8.9 1.5 827 7.5 1.4 855 9.3 1.5 840 9.4 1.5 843 8.0 1.5 880 13.2 1.4 884 11.7 1.3 896 13.9 1.3 868 5.3 1.2 901 12.9 1.3 875 4.4 1.3 894 8.8 前年同月比 外貨預金等 前年同月比 増 減 率 増 減 率 1.4 242 △ 6.4 0.3 323 33.3 △ 2.3 237 △ 26.3 △ 1.4 233 △ 25.5 △ 0.0 270 △ 13.0 3.0 259 9.6 3.3 270 16.8 3.1 267 12.5 2.9 256 11.7 3.4 265 12.9 3.1 277 18.7 2.8 286 22.1 2.6 306 23.7 2.4 297 9.7 2.0 297 13.1 1.7 281 0.8 1.3 296 14.2 1.4 311 11.9 1.5 315 16.5 前年同月比 外貨預金等 前年同月比 増 減 率 増 減 率 9.3 562 26.4 6.9 752 33.8 2.9 857 14.0 13.3 99 △ 48.0 9.1 46 △ 76.7 8.7 54 △ 12.4 9.2 67 △ 42.8 9.9 778 △ 9.2 7.7 64 △ 1.4 11.7 258 276.9 9.7 115 16.0 9.3 142 35.4 11.9 111 △ 3.3 14.1 62 35.7 13.4 45 △ 26.6 12.5 78 △ 6.9 14.1 103 90.1 14.4 82 26.1 12.8 51 △ 24.4 金融機関預金 11,753 11,692 10,001 9,417 11,005 9,426 8,909 10,850 10,130 10,499 10,221 9,291 10,250 10,715 9,683 10,863 10,251 10,742 11,257 前年同月比 増 減 率 △ 20.5 △ 0.5 △ 14.4 △ 20.9 △ 7.6 △ 0.9 △ 3.4 8.4 8.2 19.7 8.5 △ 8.9 0.7 △ 2.6 5.1 6.4 8.7 18.9 26.3 公金預金 21,517 21,462 22,184 31,834 28,913 26,821 26,213 23,233 29,832 34,051 36,113 33,739 36,570 34,843 31,615 35,592 32,648 35,144 33,882 政府関係 預 り 金 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 前年同月比 増 減 率 △ 0.0 △ 0.2 3.3 11.1 7.1 10.0 9.0 4.7 15.2 29.4 13.4 6.6 17.0 20.5 21.0 17.3 21.7 31.0 29.2 譲渡性預金 968 911 517 674 647 623 617 470 581 880 929 965 960 923 850 869 875 863 906 (備考)1.日本銀行 「預金現金貸出金調査表」より作成。このため、 「日計表」による(3)預金種類別・地区別預金の預金計とは 一致しない。 2.2011年2月計数が未入手となった一部信用金庫の計数については、前月と同値としている。 統 計 65 1.(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 科目別貸出金 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p (単位:億円、%) 貸出金計 634,953 635,433 648,786 642,434 644,595 646,570 641,574 635,020 634,292 634,260 636,198 633,070 637,069 635,390 632,816 640,623 633,791 633,177 638,497 前年同月比 増 減 率 1.3 0.0 2.1 1.9 0.9 △ 0.3 △ 1.1 △ 1.3 △ 1.6 △ 1.2 △ 0.9 △ 1.2 △ 1.1 △ 1.1 △ 1.1 △ 0.9 △ 1.2 △ 1.2 △ 0.4 割引手形 20,168 16,753 13,003 10,645 10,017 11,929 10,515 10,209 10,149 10,174 11,270 9,739 10,078 11,139 10,099 12,110 10,588 10,331 10,640 前年同月比 増 減 率 6.5 △ 16.9 △ 22.3 △ 32.3 △ 34.4 △ 31.1 △ 19.1 △ 13.2 △ 19.1 △ 4.4 9.3 △ 1.0 0.6 0.4 0.9 1.5 △ 8.8 △ 9.0 1.1 貸付金 614,784 618,680 635,782 631,788 634,577 634,641 631,059 624,811 624,142 624,086 624,927 623,331 626,990 624,250 622,717 628,512 623,203 622,845 627,853 前年同月比 増 減 率 1.1 0.6 2.7 2.7 1.8 0.4 △ 0.7 △ 1.1 △ 1.2 △ 1.2 △ 1.1 △ 1.2 △ 1.1 △ 1.2 △ 1.1 △ 0.9 △ 1.0 △ 1.0 △ 0.5 手形貸付 62,626 60,234 54,019 49,022 49,910 50,024 48,306 45,612 44,180 44,179 44,536 44,612 45,687 45,185 45,009 46,180 45,050 45,076 45,551 前年同月比 増 減 率 △ 6.7 △ 3.8 △ 10.3 △ 11.1 △ 12.1 △ 12.3 △ 10.5 △ 10.4 △ 10.4 △ 9.8 △ 9.2 △ 8.7 △ 8.4 △ 7.9 △ 7.8 △ 7.6 △ 7.9 △ 7.5 △ 5.7 証書貸付 522,186 527,985 551,706 554,359 554,695 555,734 553,842 551,896 552,583 552,791 553,367 551,498 552,341 551,896 550,183 554,248 550,875 550,587 554,120 前年同月比 増 減 率 2.2 1.1 4.4 4.5 3.6 2.0 0.3 △ 0.0 △ 0.3 △ 0.2 △ 0.2 △ 0.4 △ 0.4 △ 0.4 △ 0.4 △ 0.2 △ 0.4 △ 0.4 0.0 地区別貸出金 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 29,971 30,459 30,057 28,407 29,970 28,882 28,911 27,302 27,378 27,116 27,023 27,220 28,961 27,169 27,523 28,083 27,276 27,181 28,180 前年同月比 増 減 率 0.2 1.6 △ 1.3 △ 3.2 △ 4.0 △ 4.5 △ 3.8 △ 4.9 △ 3.6 △ 4.5 △ 5.2 △ 4.4 △ 3.3 △ 3.9 △ 4.1 △ 2.7 △ 2.8 △ 2.2 △ 2.5 (単位:億円、%) 北海道 31,012 31,109 31,786 30,463 30,778 30,971 31,002 30,160 29,871 29,846 29,950 29,879 30,167 30,271 30,110 30,592 29,910 29,991 30,590 近 畿 127,784 128,502 131,004 130,275 130,484 131,411 130,804 129,851 129,708 129,833 130,411 129,555 130,361 130,331 129,819 131,768 130,386 130,237 131,538 前年同月比 増 減 率 1.1 0.3 2.1 2.4 0.7 △ 1.3 △ 2.4 △ 2.1 △ 2.4 △ 2.0 △ 1.5 △ 1.5 △ 1.9 △ 1.9 △ 1.4 △ 1.2 △ 2.0 △ 1.8 △ 1.3 前年同月比 増 減 率 2.6 0.5 1.9 1.8 1.1 0.2 △ 0.1 △ 0.5 △ 0.9 △ 0.3 0.0 △ 0.3 △ 0.0 △ 0.1 0.0 0.2 △ 0.1 △ 0.1 0.5 東 北 22,849 22,672 23,392 23,030 22,982 22,940 22,908 22,557 22,596 22,584 22,600 22,550 22,564 22,480 22,432 22,623 22,352 22,304 22,299 中 国 30,232 30,194 30,793 30,294 30,472 30,428 30,417 29,930 29,932 29,888 29,993 29,881 30,096 29,860 29,770 30,106 29,839 29,958 30,229 (備考)沖縄地区は全国に含めた。 66 当座貸越 信金中金月報 2011.6 前年同月比 増 減 率 △ 1.8 △ 0.7 3.1 3.3 2.2 0.9 △ 2.0 △ 2.2 △ 2.3 △ 1.9 △ 1.7 △ 1.8 △ 1.8 △ 1.9 △ 1.7 △ 1.3 △ 1.8 △ 2.1 △ 2.6 前年同月比 増 減 率 3.3 △ 0.1 1.9 1.0 △ 0.0 △ 1.5 △ 1.2 △ 1.3 △ 1.6 △ 1.3 △ 1.2 △ 1.5 △ 1.2 △ 1.4 △ 1.3 △ 1.0 △ 1.1 △ 1.0 △ 0.6 東 京 124,506 123,881 125,048 124,161 124,235 124,264 122,517 121,980 121,596 121,482 121,715 120,814 121,081 120,904 120,445 121,510 120,332 120,047 120,400 四 国 10,608 10,684 11,023 10,981 11,008 10,996 10,893 10,794 10,836 10,811 10,847 10,814 10,837 10,782 10,743 10,798 10,713 10,692 10,708 前年同月比 増 減 率 0.8 △ 0.5 0.9 0.9 0.7 △ 1.2 △ 2.0 △ 2.0 △ 2.4 △ 2.1 △ 1.9 △ 2.3 △ 2.5 △ 2.5 △ 2.3 △ 2.2 △ 2.6 △ 2.6 △ 1.7 前年同月比 増 減 率 △ 0.2 0.7 3.1 2.9 1.3 0.1 △ 1.1 △ 1.2 △ 1.5 △ 1.5 △ 1.1 △ 1.2 △ 1.5 △ 1.7 △ 2.1 △ 1.7 △ 1.9 △ 1.8 △ 1.7 関 東 119,227 119,536 121,363 120,037 120,476 120,950 119,524 118,383 118,282 118,208 118,566 118,102 118,839 118,492 117,961 119,291 118,226 118,106 119,091 九州北部 11,566 11,709 12,258 12,174 12,188 12,238 12,096 11,881 11,855 11,856 11,882 11,811 11,907 11,866 11,838 12,006 11,866 11,820 11,873 前年同月比 増 減 率 0.5 0.2 1.5 1.1 0.1 △ 0.6 △ 1.5 △ 1.7 △ 1.7 △ 1.5 △ 1.2 △ 1.4 △ 1.3 △ 1.4 △ 1.5 △ 1.3 △ 1.5 △ 1.4 △ 0.3 前年同月比 増 減 率 0.3 1.2 4.6 3.6 2.3 △ 0.0 △ 1.3 △ 2.4 △ 2.7 △ 2.6 △ 2.3 △ 2.8 △ 2.3 △ 2.5 △ 2.2 △ 1.8 △ 2.1 △ 2.4 △ 1.8 北 陸 18,384 18,316 18,647 18,472 18,567 18,564 18,293 17,944 17,950 17,913 18,006 17,964 17,965 17,850 17,773 17,955 17,730 17,662 17,646 南九州 14,963 14,652 14,810 14,631 14,694 14,783 14,560 14,418 14,384 14,356 14,407 14,375 14,459 14,444 14,426 14,632 14,464 14,458 14,486 前年同月比 増 減 率 △ 0.8 △ 0.3 1.8 1.4 0.3 △ 0.4 △ 1.8 △ 2.3 △ 3.0 △ 3.0 △ 2.6 △ 2.7 △ 3.2 △ 3.4 △ 3.4 △ 3.2 △ 3.5 △ 3.9 △ 3.5 前年同月比 増 減 率 △ 1.9 △ 2.0 1.0 0.5 △ 0.4 △ 1.9 △ 1.6 △ 1.7 △ 2.1 △ 1.8 △ 1.4 △ 1.6 △ 1.5 △ 1.4 △ 1.3 △ 1.0 △ 1.3 △ 1.2 △ 0.5 東 海 122,722 123,155 127,618 126,871 127,663 127,991 127,512 126,087 126,239 126,441 126,767 126,274 127,735 127,061 126,457 128,294 126,930 126,859 128,591 全国計 634,953 635,433 648,786 642,434 644,595 646,570 641,574 635,020 634,292 634,260 636,198 633,070 637,069 635,390 632,816 640,623 633,791 633,177 638,497 前年同月比 増 減 率 2.3 0.3 3.6 3.3 1.8 0.4 △ 0.0 △ 0.4 △ 0.7 △ 0.3 △ 0.1 △ 0.3 0.0 0.1 △ 0.0 0.2 0.0 0.1 0.8 前年同月比 増 減 率 1.3 0.0 2.1 1.9 0.9 △ 0.3 △ 1.1 △ 1.3 △ 1.6 △ 1.2 △ 0.9 △ 1.2 △ 1.1 △ 1.1 △ 1.1 △ 0.9 △ 1.2 △ 1.2 △ 0.4 1.(6)信用金庫の貸出先別貸出金 (単位:億円、%) 貸出金計 2006. 07. 08. 09. 3 3 3 3 6 9 12 10. 3 6 9 12 年 月 末 2006. 07. 08. 09. 3 3 3 3 6 9 12 10. 3 6 9 12 年 月 末 2006. 07. 08. 09. 3 3 3 3 6 9 12 10. 3 6 9 12 企業向け計 製造業 年 月 末 626,700 634,953 635,431 648,783 642,433 644,594 646,569 641,573 634,259 637,068 640,621 前年同月比 増 減 率 構成比 0.9 1.3 0.0 2.1 1.9 0.9 0.3 1.1 1.2 1.1 0.9 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 △ △ △ △ △ 卸売業 32,103 32,828 32,332 32,996 32,703 33,088 33,551 32,413 31,699 32,051 32,521 407,728 416,942 416,464 427,171 423,022 425,819 428,252 420,925 413,909 417,203 420,242 前年同月比 増 減 率 構成比 0.8 2.2 0.1 2.5 2.4 1.4 0.4 1.4 2.1 2.0 1.8 65.0 65.6 65.5 65.8 65.8 66.0 66.2 65.6 65.2 65.4 65.5 △ △ △ △ △ △ 小売業 前年同月比 増 減 率 構成比 △ 0.6 2.2 △ 1.5 2.0 2.7 2.1 △ 1.0 △ 1.7 △ 3.0 △ 3.1 △ 3.0 5.1 5.1 5.0 5.0 5.0 5.1 5.1 5.0 4.9 5.0 5.0 サービス業 (各種サービス) 前年同月比 構成比 増 減 率 80,075 79,987 78,660 80,166 △ 1.0 △ 0.1 △ 1.6 1.9 12.7 12.5 12.3 12.3 ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ 33,303 32,640 31,544 31,793 31,014 31,097 31,028 30,421 29,890 29,976 29,943 飲食業 11,116 10,780 10,304 10,284 10,479 10,551 10,574 10,377 10,285 10,272 10,216 2006. 07. 08. 09. 3 3 3 3 6 9 12 10. 3 6 9 12 物品賃貸業 前年同月比 構成比 増 減 率 3,399 3,379 3,145 3,159 3,207 3,218 3,303 3,202 3,096 3,137 3,127 0.0 △ 0.5 △ 6.9 0.4 3.2 2.7 5.5 1.3 △ 3.4 △ 2.5 △ 5.3 0.5 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 構成比 △ 3.4 △ 1.9 △ 3.3 0.7 △ 0.5 △ 0.8 △ 3.0 △ 4.3 △ 3.6 △ 3.6 △ 3.4 5.3 5.1 4.9 4.9 4.8 4.8 4.7 4.7 4.7 4.7 4.6 △ 1.5 1.2 △ 3.2 1.3 0.8 △ 0.1 △ 3.2 △ 4.6 △ 4.4 △ 4.2 △ 4.0 12.4 12.4 12.0 11.9 11.8 11.8 11.8 11.5 11.4 11.4 11.4 前年同月比 増 減 率 構成比 7.9 7.8 5.4 3.1 4.2 3.6 3.2 2.8 0.8 1.3 1.3 16.0 17.0 17.9 18.1 18.6 18.6 18.6 18.8 19.0 19.0 19.0 前年同月比 構成比 増 減 率 △ △ △ △ 5.8 3.0 4.4 0.1 2.2 3.3 1.8 0.9 △ 1.8 △ 2.6 △ 3.3 1.7 1.6 1.6 1.5 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 100,316 108,200 114,045 117,600 119,545 120,076 120,657 121,003 120,603 121,653 122,261 宿泊業 8,165 7,887 7,427 7,311 7,416 7,414 7,364 7,144 7,070 6,999 6,936 前年同月比 構成比 増 減 率 △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ 3.8 3.4 5.8 1.5 0.5 0.4 1.1 2.2 4.6 5.5 5.8 1.3 1.2 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.0 1.0 個 人 前年同月比 構成比 増 減 率 21,043 23,294 27,845 32,878 33,391 33,063 33,630 36,815 37,804 37,359 37,961 構成比 前年同月比 構成比 増 減 率 58,229 57,780 56,640 57,509 54,530 55,628 55,857 54,659 52,057 53,080 53,717 △ 2.0 △ 0.7 △ 1.9 1.5 0.3 0.0 △ 3.3 △ 4.9 △ 4.5 △ 4.5 △ 3.8 9.2 9.0 8.9 8.8 8.4 8.6 8.6 8.5 8.2 8.3 8.3 不動産業 前年同月比 増 減 率 地方公共団体 年 月 末 78,118 79,103 76,511 77,564 75,969 76,099 76,587 73,994 72,579 72,830 73,474 建設業 前年同月比 増 減 率 13.5 10.6 19.5 18.0 20.2 17.3 15.6 11.9 13.2 12.9 12.8 3.3 3.6 4.3 5.0 5.1 5.1 5.2 5.7 5.9 5.8 5.9 個人による貸家業 前年同月比 構成比 増 減 率 ̶ ̶ ̶ ̶ 49,847 51,621 52,140 51,766 51,888 52,118 52,227 医療・福祉 4.0 0.9 0.1 ̶ ̶ ̶ ̶ 7.7 8.0 8.0 8.0 8.1 8.1 8.1 前年同月比 構成比 増 減 率 14,053 14,758 15,228 16,406 16,900 17,025 17,251 17,196 17,305 17,425 17,736 4.6 5.0 3.1 7.7 8.0 7.5 6.3 4.8 2.3 2.3 2.8 2.2 2.3 2.3 2.5 2.6 2.6 2.6 2.6 2.7 2.7 2.7 住宅ローン 前年同月比 構成比 増 減 率 197,929 194,717 191,122 188,734 186,020 185,712 184,687 183,833 182,546 182,506 182,418 ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ ̶ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ 0.0 1.6 1.8 1.2 2.0 2.4 2.6 2.5 1.8 1.7 1.2 31.5 30.6 30.0 29.0 28.9 28.8 28.5 28.6 28.7 28.6 28.4 前年同月比 構成比 増 減 率 147,901 149,058 148,973 149,717 148,724 148,984 149,328 148,755 148,383 148,440 149,159 △ △ △ △ △ △ △ △ 2.8 0.7 0.0 0.4 0.3 0.5 0.6 0.6 0.2 0.3 0.1 23.5 23.4 23.4 23.0 23.1 23.1 23.0 23.1 23.3 23.3 23.2 (備考)1.日本銀行「業種別貸出金調査表」より作成。このため、「日計表」による(5)科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一致しない。 2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。 3.2009年6月から日本銀行「業種別貸出金調査表」の業種分類変更に伴い、不動産業の内訳として「個人による貸家業」を追加 サービス業(各種サービス)の更新停止に伴い、 「飲食業」、「宿泊業」、「医療・福祉」、「物品賃貸業」を追加 統 計 67 1.(7)信用金庫の余裕資金運用状況 (単位:億円、%) 年 月 末 現 金 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 年 月 末 193,753 208,064 214,336 233,383 231,012 238,101 227,793 246,738 249,189 260,673 254,679 265,087 261,062 263,855 256,851 257,092 256,008 265,155 258,215 (△ ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( うち信金中金預け金 0.2) 7.3) 3.0) 3.4) 6.2) 7.4) 6.2) 8.1) 10.9) 11.6) 10.6) 13.5) 13.0) 13.3) 9.9) 7.9) 10.7) 12.8) 13.3) 有価証券 2007. 08. 09. 09. 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 年 月 末 2007. 08. 09. 09. 17,490 16,670 16,741 16,495 15,210 16,104 15,872 14,284 14,403 14,159 14,202 13,504 14,643 13,183 14,114 15,449 13,885 12,888 16,162 預け金 318,110 323,482 324,132 331,519 335,707 336,438 343,384 341,779 337,970 336,483 337,193 335,906 336,983 338,510 344,894 348,449 350,961 349,982 344,182 貸付信託 3 3 3 6 9 12 10. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11. 1 2 3 p 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ( ( ( (△ ( ( ( ( ( ( ( (△ ( ( ( ( ( ( ( 168,470 176,971 181,259 206,524 202,244 203,252 190,076 205,117 208,759 220,487 216,627 222,418 220,922 221,989 218,481 218,296 216,561 222,470 208,426 ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( 国 債 3.9) 1.6) 0.2) 0.2) 0.3) 1.9) 5.9) 2.6) 1.1) 1.4) 1.1) 0.2) 0.3) 0.0) 2.1) 3.5) 2.6) 1.3) 0.2) 投資信託 9,518 9,129 6,602 7,850 7,317 7,199 6,037 6,509 6,702 6,758 6,825 6,861 6,774 6,770 6,711 6,549 6,511 6,439 6,340 98,728 101,608 97,509 91,967 96,783 96,658 104,547 101,207 96,942 94,726 93,954 93,602 94,925 93,800 97,260 99,944 100,415 99,365 95,666 外国証券 47,161 47,488 44,613 46,074 44,186 42,581 40,327 40,030 39,882 39,941 40,209 39,896 39,805 40,003 39,685 39,755 39,731 39,627 38,950 ( 10.7) ( 2.9) (△ 4.0) (△ 6.9) (△ 3.1) ( 5.6) ( 7.2) ( 4.7) ( 0.5) ( 2.9) ( 0.7) (△ 2.6) (△ 1.9) (△ 3.3) (△ 0.0) ( 3.4) ( 0.4) (△ 3.3) (△ 8.4) その他の 証 券 1,404 1,616 1,150 1,310 1,304 1,310 1,167 1,236 1,254 1,270 1,273 1,277 1,258 1,258 1,223 1,228 1,225 1,216 1,195 買入手形 11.0) 5.0) 2.4) 4.2) 7.5) 4.7) 4.8) 1.5) 5.4) 6.7) 5.7) 6.1) 9.2) 6.6) 4.6) 7.4) 10.2) 12.4) 9.6) 地方債 0 500 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 短期社債 33,976 34,602 37,995 40,330 42,126 44,445 47,258 48,108 48,789 50,085 50,614 50,464 50,684 51,709 53,641 54,581 55,491 56,194 55,629 169 320 283 710 394 610 21 328 444 481 557 537 153 268 349 329 324 306 21 余資運用資産計(A) 543,515 ( 563,638 ( 562,869 (△ 593,639 ( 592,253 ( 602,961 ( 595,768 ( 615,027 ( 613,777 ( 624,632 ( 618,310 ( 626,968 ( 622,748 ( 626,686 ( 626,595 ( 632,450 ( 631,159 ( 638,357 ( 625,046 ( 3.5) 3.7) 0.1) 0.7) 1.8) 3.5) 5.8) 4.8) 5.1) 5.2) 5.1) 5.2) 5.1) 5.1) 5.0) 4.8) 5.3) 5.3) 4.9) コール ローン 買現先勘定 7,517 8,918 2,439 5,854 4,092 6,351 3,768 6,235 5,966 7,067 5,769 6,339 3,669 4,945 4,788 5,532 4,706 4,771 1,620 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 社 債 116,636 120,431 129,396 135,348 135,995 136,201 137,250 137,333 136,836 136,086 136,561 136,026 136,071 137,393 138,887 139,007 140,168 139,785 139,417 信金中金 利 用 額 (B) 168,470 176,971 181,259 206,524 202,244 203,252 190,076 205,117 208,759 220,487 216,627 222,418 220,922 221,989 218,481 218,296 216,561 222,470 208,426 ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( (△ ( (△ ( ( ( ( ( 1.2) 3.2) 7.4) 7.5) 6.9) 4.8) 6.0) 3.8) 2.2) 0.5) 0.0) 0.6) 0.0) 0.1) 1.5) 2.0) 2.0) 1.5) 1.5) 債券貸借取引 買入金銭 支 払 保 証 金 債 権 1,303 1,299 759 400 799 149 150 536 406 204 354 209 708 338 82 0 0 50 59 公社公団債 44,265 42,898 42,510 44,087 43,746 44,192 45,377 45,614 45,655 45,010 45,279 45,627 45,745 46,471 47,884 47,819 48,174 48,685 48,275 預貸率 (A)/預金 56.9 55.8 56.1 54.6 54.8 54.5 54.6 53.4 53.4 52.9 53.3 52.8 53.2 53.0 52.9 52.9 52.7 52.4 53.2 48.7 49.5 48.7 50.4 50.4 50.8 50.7 51.7 51.7 52.1 51.8 52.3 52.0 52.2 52.4 52.3 52.5 52.8 52.1 金銭の信託 2,641 2,452 2,653 3,811 3,382 3,725 3,090 3,424 3,761 3,895 4,006 3,720 3,452 3,630 3,584 3,675 3,381 3,306 2,856 2,637 2,205 1,768 2,137 2,006 2,044 1,657 1,975 2,032 2,110 2,065 2,161 2,187 2,178 2,228 2,193 2,148 2,131 1,897 金融債 33,925 35,774 37,492 36,822 35,189 34,237 33,622 32,890 32,510 32,235 31,897 31,371 31,028 30,907 30,713 30,358 30,295 30,041 30,058 その他 38,445 41,758 49,394 54,438 57,059 57,771 58,250 58,828 58,670 58,840 59,384 59,027 59,297 60,014 60,289 60,829 61,698 61,058 61,081 商 品 有価証券 59 45 36 36 38 44 51 52 47 38 38 37 41 43 51 56 67 71 52 株 式 10,514 8,284 6,580 7,925 7,598 7,432 6,773 7,023 7,118 7,133 7,198 7,241 7,309 7,305 7,134 7,052 7,094 7,047 6,952 預証率 (B)/預金(B)/(A) 28.5 28.4 28.0 28.1 28.5 28.3 29.2 28.7 28.4 28.0 28.2 28.0 28.1 28.2 28.8 28.8 29.2 28.9 28.7 15.1 15.5 15.6 17.5 17.2 17.1 16.1 17.2 17.5 18.4 18.1 18.5 18.4 18.5 18.2 18.0 18.0 18.4 17.3 30.9 31.3 32.2 34.7 34.1 33.7 31.9 33.3 34.0 35.2 35.0 35.4 35.4 35.4 34.8 34.5 34.3 34.8 33.3 (備考)1.( )内は前年同月比増減率 2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。) 3.余資運用資産計は、現金、預け金、買入手形、コールローン、買現先勘定、債券貸借取引支払保証金、買入金銭債権、 金銭の信託、商品有価証券、有価証券の合計 68 信金中金月報 2011.6 2.(1)業態別預貯金等 (単位:億円、%) 年 月 末 2007. 3 国内銀行 信用金庫 前年同月比 増 減 率 1,113,772 1.9 大手銀行 (債券、信託 を含む。) 前年同月比 増 減 率 7,674,949 3.3 前年同月比 増 減 率 5,191,912 3.8 (債券、信託 を含む。) 前年同月比 うち都市銀行 前年同月比 増 減 率 増 減 率 2,916,384 0.1 2,487,565 △ 0.7 うち預金 地方銀行 前年同月比 増 減 率 1,936,818 2.5 08. 3 1,137,275 2.1 7,780,686 1.3 5,268,076 1.4 3,032,690 3.9 2,525,751 1.5 1,956,991 1.0 09. 3 1,154,531 1.5 7,694,609 △ 1.1 5,131,449 △ 2.5 3,133,105 3.3 2,575,584 1.9 2,002,165 2.3 09. 6 1,175,838 1.7 7,684,306 △ 1.4 5,078,496 △ 3.1 3,121,625 2.7 2,571,576 1.9 2,036,327 2.1 9 1,173,980 1.7 7,651,985 1.6 5,066,773 1.0 3,095,631 2.2 2,536,077 1.7 2,016,367 2.9 2.8 12 1,185,688 1.7 7,633,468 0.1 5,013,004 △ 1.2 3,089,448 1.6 2,534,595 1.7 2,043,112 10. 3 1,173,806 1.6 7,802,680 1.4 5,162,829 0.6 3,186,534 1.7 2,633,256 2.2 2,072,150 3.4 4 1,188,482 1.7 7,772,750 1.4 5,129,094 0.8 3,168,660 1.6 2,615,920 2.2 2,073,746 3.0 5 1,185,709 1.7 7,799,302 2.0 5,153,829 1.8 3,185,893 2.9 2,639,017 3.7 2,077,071 2.8 6 1,196,877 1.7 7,778,507 1.2 5,115,894 0.7 3,174,534 1.6 2,627,392 2.1 2,089,368 2.6 7 1,192,613 2.0 7,720,475 1.2 5,077,245 0.5 3,132,287 1.3 2,583,335 1.7 2,073,691 3.1 8 1,196,704 1.8 7,722,792 1.4 5,082,578 1.1 3,142,245 2.1 2,591,522 2.6 2,072,321 2.7 9 1,195,743 1.8 7,760,577 1.4 5,118,486 1.0 3,169,900 2.3 2,619,065 3.2 2,071,464 2.7 10 1,197,645 1.9 7,707,304 1.6 5,069,744 1.5 3,127,427 2.5 2,579,077 3.2 2,068,207 2.5 11 1,194,795 1.8 7,747,958 1.5 5,105,937 1.2 3,150,045 1.7 2,601,743 2.1 2,073,550 2.4 12 1,208,008 1.8 7,727,318 1.2 5,053,586 0.8 3,123,062 1.0 2,576,384 1.6 2,097,915 2.6 11. 1 1,199,848 1.9 7,719,507 1.2 5,067,902 0.9 3,135,055 1.4 2,591,537 1.9 2,081,173 2.5 2 1,206,065 1.9 7,755,338 1.5 5,089,914 1.3 3,163,488 2.0 2,619,609 2.7 2,091,740 2.3 3 p 1,197,501 2.0 年 月 末 預貯金等合計 郵便貯金 第二地銀 前年同月比 増 減 率 546,219 0.9 前年同月比 増 減 率 1,869,692 △ 6.5 前年同月比 増 減 率 10,658,413 1.3 08. 3 555,619 1.7 1,817,438 ̶ 10,735,399 ̶ 09. 3 560,995 0.9 1,774,798 △ 2.3 10,623,938 △ 1.0 2007. 3 09. 6 569,483 1.3 1,782,331 △ 1.6 10,642,475 △ 1.1 9 568,845 2.2 1,764,443 △ 1.1 10,590,408 1.1 12 577,352 2.7 1,769,908 △ 1.1 10,589,064 0.0 10. 3 567,701 1.1 1,757,977 △ 0.9 10,734,463 1.0 4 569,910 1.0 ̶ ̶ ̶ ̶ 5 568,402 0.7 ̶ ̶ ̶ ̶ 6 573,245 0.6 1,768,055 △ 0.8 10,743,439 0.9 7 569,539 0.7 ̶ ̶ ̶ ̶ 8 567,893 0.1 ̶ ̶ ̶ ̶ 9 570,627 0.3 1,750,404 △ 0.7 10,706,724 1.0 10 569,353 0.1 ̶ ̶ ̶ ̶ 11 568,471 △ 0.0 ̶ ̶ ̶ ̶ 12 575,817 △ 0.2 1,757,299 △ 0.7 10,692,625 0.9 11. 1 570,432 △ 0.2 ̶ ̶ ̶ ̶ 2 573,684 △ 0.1 ̶ ̶ ̶ ̶ 3 (備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、ゆうちょ銀行ホームページ等より作成 2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数 3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含 めた。 4.2007年10月以降の郵便貯金は、振替貯金を含む。また、郵便貯金は2008年4月より四半期ベースで公表 5.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。 統 計 69 2.(2)業態別貸出金 (単位:億円、%) 年 月 末 信用金庫 大手銀行 地方銀行 第二地銀 前年同月比 増 減 率 2,270,176 △ 0.9 都市銀行 前年同月比 増 減 率 1,860,370 △ 1.9 前年同月比 増 減 率 1,445,409 2.9 前年同月比 増 減 率 419,377 1.6 前年同月比 増 減 率 4,769,915 0.7 08. 3 635,433 0.0 2,281,304 0.4 1,854,662 △ 0.3 1,483,586 2.6 429,309 2.3 4,829,632 1.2 09. 3 648,786 2.1 2,391,966 4.8 1,952,042 5.2 1,547,581 4.3 435,832 1.5 5,024,165 4.0 09. 6 642,434 1.9 2,346,518 2.7 1,912,553 2.7 1,527,067 3.2 432,265 1.3 4,948,284 2.6 9 644,595 0.9 2,319,911 1.7 1,873,709 1.2 1,534,325 2.5 436,640 1.4 4,935,471 1.8 12 646,570 △ 0.3 2,306,697 △ 3.5 1,870,486 △ 4.4 1,540,391 0.0 438,591 0.4 4,932,249 △ 1.6 △ 2.1 2007. 3 10. 3 641,574 △ 1.1 2,293,569 △ 4.1 1,846,180 △ 5.4 1,547,663 0.0 434,891 △ 0.2 4,917,697 4 635,020 △ 1.3 2,258,143 △ 4.7 1,826,249 △ 5.8 1,534,487 0.0 430,080 △ 0.6 4,857,730 △ 2.4 5 634,292 △ 1.6 2,244,456 △ 5.0 1,814,893 △ 6.0 1,533,310 △ 0.0 429,332 △ 1.0 4,841,390 △ 2.7 6 634,260 △ 1.2 2,259,091 △ 3.7 1,824,204 △ 4.6 1,532,230 0.3 428,845 △ 0.7 4,854,426 △ 1.8 7 636,198 △ 0.9 2,234,723 △ 4.1 1,808,959 △ 4.8 1,542,202 0.9 430,305 △ 0.6 4,843,428 △ 1.8 8 633,070 △ 1.2 2,227,890 △ 3.4 1,803,887 △ 3.9 1,537,833 0.8 428,518 △ 0.8 4,827,311 △ 1.6 9 637,069 △ 1.1 2,250,279 △ 3.0 1,811,077 △ 3.3 1,550,119 1.0 433,739 △ 0.6 4,871,206 △ 1.3 10 635,390 △ 1.1 2,213,692 △ 3.7 1,786,124 △ 4.2 1,547,526 1.0 431,403 △ 0.6 4,828,011 △ 1.6 11 632,816 △ 1.1 2,199,556 △ 4.1 1,772,065 △ 4.8 1,544,492 1.2 430,321 △ 0.5 4,807,185 △ 1.7 12 640,623 △ 0.9 2,208,028 △ 4.2 1,780,767 △ 4.7 1,559,490 1.2 436,660 △ 0.4 4,844,801 △ 1.7 11. 1 633,791 △ 1.2 2,196,404 △ 3.9 1,775,843 △ 4.4 1,551,552 0.9 432,818 △ 0.8 4,814,565 △ 1.7 2 633,177 △ 1.2 2,198,003 △ 3.7 1,776,232 △ 4.1 1,555,365 1.2 432,799 △ 0.7 4,819,344 △ 1.5 3 p 638,497 △ 0.4 (備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成 2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数 3.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。 70 合 計 前年同月比 増 減 率 634,953 1.3 信金中金月報 2011.6 ホームページのご案内 当研究所のホームページでは、当研究所の調査研究成果である各種レポート、信金中金月報のほか、統計デー タ等を掲示し、広く一般の方のご利用に供しておりますのでご活用下さい。 また、「ご意見・ご要望窓口」を設置しておりますので、当研究所の調査研究や活動等に関しまして広くご意 見等をお寄せいただきますよう宜しくお願い申し上げます。 【ホームページの主なコンテンツ】 ○当研究所の概要、活動状況、組織 ○各種レポート 内外経済、中小企業金融、地域金融、 協同組織金融、産業・企業動向等 ○刊行物 信金中金月報、全国信用金庫概況等 ○信用金庫統計 日本語/英語 ○アジア主要国との貿易・投資に関する各種情報 海外ビジネス支援 ○論文募集 【URL】 http://www.scbri.jp/ I S S N 1 3 4 6−9 4 7 9 2011年(平成23年)6月1日 発行 2011年6月号 第10巻 第6号(通巻462号) 発 行 信金中央金庫 編 集 信金中央金庫 地域・中小企業研究所 〒103−0028 東京都中央区八重洲1−3−7 TEL 03(52 02)7 6 7 1 F A X 0 3(3 2 7 8)7 0 4 8 < 本 誌 の 無 断 転 用 、転載を禁じます>