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2011.4 e-ニュースレター NO.8 (通算62)

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2011.4 e-ニュースレター NO.8 (通算62)
2011.4 e-ニュースレター NO.8 (通算62)
目
次
特集「JAMIT 大会開催告知」
第 30 回 日本医用画像工学会のご案内
勝俣 健一郎 (国際医療福祉大学保健医療学部放射線・情報科学科)
・・・3
特集「JAMIT FRONTIER 大会後記」
International Forum on Medical Imaging in Asia (IFMIA)2011 および
JAMIT フロンティア 2011(メディカルイメージング連合フォーラム)
羽石 秀昭 (千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター)
・・・5
技術交流の輪① 非剛体レジストレーション
放射線治療計画における非剛体レジストレーション
上村 幸司 (香川大学医学部附属病院医療情報部)
・・・9
技術交流の輪② 標準脳
アルツハイマー病の MRI 診断支援ソフトウェア VSRAD®
松田 博史 (埼玉医科大学国際医療センター核医学科)
・・・11
JAMIIT のひろば
近赤外光イメージング装置 OMM-3000 シリーズ
今井 豊 (島津製作所医用機器事業部マーケティング部)
・・・13
お知らせ
医用画像データベース
清水 昭伸 (東京農工大学大学院共生科学技術研究院)
・・・17
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
特 集「JAMIT 大会開催告知」
第30回 日本医用画像工学会のご案内
勝俣 健一郎*
お話をいただく予定でおります。
大震災で被災された方々、またその影響で発
生した原発事故で被災された方々に心よりお見
舞い申し上げます。
企画テーマ
あまりに大きな災害で、なかなか前向きに考
今回この学会のカバーする幅広いジャンルの
えられない状況ではありますが、ともかく新し
中から一つテーマを選びだし、特集という形で、
い年度が始まり、心新たに研究活動に取り組ま
そのテーマに関する基調講演に続き関連する一
れていることと思います。第 30 回を迎えます
般演題の発表、そしてその後にワークショップ
日本医用画像工学会大会は 2011 年 8 月 5 日
を実施するという企画をいたしました。
(金)と 6 日(土)の 2 日間にわたり国際医療
そのテーマに興味ある方でいままでこの学会
福祉大学大田原キャンパスで開催させていただ
にあまり関心のなかった方々にも参加していた
きます。
だこう。医師や技師の皆さんにも多く参加して
医師、技師、工学者、メーカーのそれぞれが
いただこうということで、今回はテーマを「CT
協力してニーズ、シーズをうまく結び付け、そ
Image Wisely」とし、CT で最近最も注目され
れを世の中に製品として出していき、世の中の
ている被曝低減を前提にして、いろいろな新し
医療に貢献していくという、本学会の大きな目
い臨床価値をどのように開発していくかという
標に少しでも貢献できますことを期待しており
議論をしたいと思います。その中で特にデュア
ます。
ルエナジー、逐次近似再構成をとりあげ、基調
講演、ワークショップを開催します。
是非たくさんの方のご参加をお待ちしており
特別講演
ます。
まず特別講演で本学の学長の北島政樹先生に、
本学会の目的である「医用画像工学や、医用画
シンポジウム
像工学に関連する研究の連絡提携をはかり、学
術の発展と人類の福祉に寄与すること」を達成
前述の企画テーマの他にもう一つ、目覚まし
するのに大切な「医工連携」
「産学連携」につい
い進歩をしているさまざまな医用画像診断機器
て先生のこの分野における先駆的ご経験を交え
の中から超音波装置の最近の進歩について「超
3
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
音波装置の進歩」というテーマでシンポジウム
では CT や MRI、超音波装置、各種 X 線装置な
を計画しています。
ど画像診断機器を中心に研究、開発、製造をし
ています。今回東芝の協力を得て希望者による、
工場見学会を企画しております。なかなかこれ
教育講演
また工学者の皆さん向けに教育講演として
らの医療機器を製造しているところを見る機会
「医用画像工学における統計的推定・機械学習」
はないかと思います。是非この機会に多くの方
をテーマに行う予定でいます。
が参加されますよう、お待ち致しております。
なお参加要領については追ってご連絡いたしま
す。
CAD コンテスト
CADM 学会大会で開催されてきた CAD コン
テストを、今回も JAMIT 大会において実施し
ます。今回のコンテストの課題は、
「3 次元腹部
CT 像からの肝血管腫の抽出」です。最優秀ア
ルゴリズムの開発者には、コンテスト実行委員
長から賞が授与されます。開発を始めてまだ日
の浅い方でも腕試しのつもりで気楽にご参加く
ださい。
ランチョンセミナー
場所のご案内
産学連携を行おうとしたとき、関心のありそ
大会の会場になります国際医療福祉大学の大
うなパートナーを見つけることから始まります
田原キャンパスは、栃木県の北部に位置し、JR
が、どんな会社に可能性があるのか、どのよう
の最寄り駅は那須塩原で東京から東北新幹線で
に連絡を取ればいいのかなど分からないと、具
1 時間 15 分、そこからバスで 20 分のところ
体的な一歩が踏み出せません。そこで今回はい
にあります。大会の時にはチャーターバスを用
ろいろな会社から、その会社の紹介、PR をして
意しできるだけ、皆さんの交通の便をサポート
いただきますので、皆さんが研究、開発のパー
したいと計画しております。車でも 2 時間くら
トナーが欲しいと思った時の参考にしていただ
いですので、車でお越しいただくと便利かと思
ければと思います。会社の皆さん方にとっても、
います。大学には駐車場はたくさんありますの
パートナー探し、製品の拡販はもちろんのこと、
で、駐車場の心配はありません。
学生さんもたくさん参加してくださるので、リ
那須温泉、塩原温泉や那須ガーデンアウトレ
クルートの助けにもなるかと思います。
ットが間近に控えており、大会の前後に、温泉
にでもつかり、夏の暑さをしばし忘れゆっくり
工場見学会
とされると良いかと思います。多くの皆様方の
参加を心よりお待ち致しております。
大学から 10km ほどのところに、東芝メディ
カルシステムズの本社・工場があります。ここ
4
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
特 集「JAMIT FRONTER 大会後記」
International Forum on Medical Imaging in Asia (IFMIA)2011 および
JAMIT フロンティア 2011(メディカルイメージング連合フォーラム)
秀昭*
羽石
写真1:International Forum on Medical Imaging in Asia (IFMIA) 2011 の集合写真
はじめに
研),医用画像情報学会(MII)の共同主催として,ここ数
2011 年 1 月 18,19 日に医用画像に関する国際会
年は沖縄で開催している会合です.今年は,IFMIA に
議 International Forum on Medical Imaging in Asia
つなげるかたちで実施しました.なお今年の連合フォ
(IFMIA) 2011 が那覇市ぶんかテンブス館で開催され,
ーラムには,上記の学会・研究会に日本写真学会
同じ会場で19日夕から 20 日にかけて,国内学会で
(SPSTJ)も加わりました.本稿では,これら2つの
あるメディカルイメージング連合フォーラムが開催さ
会合の開催状況を報告します.なお,IFMIA2011 に
れました.
IFMIA は 2007 年 1 月に済州島で第1回が,
ついては以下のホームページに,写真も含めて詳細な
2009 年 1 月に台北で第 2 回が開催され,2年後の今
情報がありますのでご覧ください,
回は,日本開催の運びとなりました.
筆者は韓国 KAIST
http://www.cfme.chiba-u.jp/~ifmia2011/
の Ra 教授とともにこの国際会議の General co-chair
を担当しました.
IFMIA2011
一方,メディカルイメージング連合フォーラムは,
組織運営
例年,JAMIT,電子情報通信学会医用画像研究会(MI
※
千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター
IFMIA の過去2回は,主催学会が必ずしも明示的で
〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町 1-33
5
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
はありませんでしたが,今回は,日本医用画像工学会
表1
一般演題の国別,分野別演題数
日
本
(JAMIT) , 医 用 画 像 情 報 学 会 (MII) , 日 本 写 真 学 会
(SPSTJ),Korean Society of Imaging Informatics
韓
国
台
湾
中
国
タ
イ
計
CAD
15
9
6
2
0
32
in Medicine および Biomedical Engineering Society
CAS
7
1
1
0
0
9
of the ROC の5学会の共催として明示的に扱ってい
Display, IQ, MI*
ます.
Imaging
Image Analysis
プログラム委員会は日本,韓国,台湾,中国からそ
計
れぞれ 10~16 名程度ずつ,さらにイラン,シンガポ
5
4
3
1
2
15
18
11
4
0
0
33
6
8
5
2
0
21
51
33
19
5
2
110
*IQ: Image Quality, MI: Medical Informatics
ール,タイ,インドから各 1 名で構成ました.プログ
ラム委員長は以下の 4 名の方です.
全体の時間枠が少なく,一般講演の口頭発表の時間
Yoshinobu Sato (Osaka Univ., Japan)
は7分発表,3分質疑と短くタイトでしたが,講演時
Jong Hyo Kim (Seoul National Univ., Korea)
間,質疑時間ともほとんどのセッションで時間を守っ
Ruey-Feng Chang (National Taiwan Univ.)
ていただき,大きな遅れが出ずに済みました.筆者の
Tianzi Jiang (Chinese Academy of Sciences)
見る限り,いずれの演題もよく準備され語学力を含め
また国内実行委員会も組織しました.JAMIT や MI 研,
てプレゼンテーションのレベルは高かったように思い
MII 等で委員や幹事として活躍されている方を中心に
ます.一方,質疑応答では,意思の疎通ができてない
構成しました.
ケースも見受けられました.概して,韓国,台湾から
アドバイザは IFMIA の立ち上げに尽力された徳島大
の講演者の質疑におけるコミュニケーション力は高く,
仁木先生,第1回大会長の岐阜大藤田先生,JAMIT 会
日本人の参加者には大変刺激になったものと思います.
長の赤塚先生および韓国,台湾の先生方にお願いしま
した.
会合の統計・学術発表の様子
IFMIA2011 の参加者総数は 188 人でした.1ペー
ジ目の写真1は,1日目午前のセッション終了時に参
加者全員で撮った集合写真です.
招待講演は主要4か国から,1国あたり30分を持
ち時間とし,日本と中国からは15分×2名,韓国と
台湾からは30分×1名で行われました.
一般講演数は 110 件,うち口頭発表 46 件,ポスタ
ー発表 64 件でした.このうち当日キャンセルの演題
写真2:招待講演をする山形大学湯浅先生
が若干数ありましたが,ほとんど予定どおりに講演が
行われました.一般演題の国別,分野別演題数を表1
にまとめてみました.なお,国別とは所属機関が属す
る国を意味しており,日本からの演題でも発表者の国
籍は外国という場合も若干あります.一般演題数全体
に占める各国の割合はおよそ,日本46%,韓国30%,
台湾17%,中国5%,タイ2%でした.また分野別
では Imaging と CAD が大きな柱になっています.演
題数の多い日本,韓国とも,これら2分野が中心的の
写真3:活発な質疑応答
ようです.
6
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
写真4:ポスターセッション
写真6:エイサーに合わせて壇上で踊る!
レセプション
口頭発表会場であるテンブスホールにて立食形式で
行いました.参加者はそれぞれが他研究者との交流を
深めていました.また,この場で,フォーラムの各種
役員や招待講演者の紹介を行いました(写真5)
.
途中,沖縄の芸能であるエイサーのアトラクション
がありました.これは沖縄観光ビューロの支援により
地元の芸能団体が演じてくれたものです.太鼓を使っ
た音楽と激しいダンスで参加者を圧倒しました.最後
写真7:表彰式
写真8:Ra 教授のクロージング
には参加者を壇上に上げての踊りとなり,大いに盛り
上がりました(写真6)
.
表彰およびクロージング
メディカルイメージング連合フォーラム
台湾での IFMIA2009 のときと同様に,学生を対象
1月19日午後から開催しました.JAMIT は JAMIT
とした優秀ポスターの表彰も行いました.今回は5演
フロンティア 2011 として,
これを共同主催しました.
題に対してポスター賞が授与されました(写真7)
.
連合フォーラムは他に MI 研,MII,日本写真学会が共
会の最後には Ra 教授より,締めのあいさつがなされ
催しています.運営はおもに,MI 研の委員長である京
ました(写真8)
.この中で,2年後に Ra 教授ら KAIST
大の杉本先生,幹事補佐の国立循環器病研究センター
が中心となって韓国で開催するので,そのときまた会
の原口先生,JAMIT フロンティア世話人である筆者ら
いましょう,とあいさつされました.
が主体となって行いました.このフォーラムでは参加
費を無料とし,各学会から 2 万円~9 万円程度の支援
をいただいて運営しました.JAMIT からは今回8万円
の支援を行いました.
演題は一般演題 45 演題から構成されました.この
うち口頭発表は 21 演題,ポスター発表は 24 演題で
した.例年,この連合フォーラムでは招待講演やパネ
ルディスカッションの企画を用意しますが,今年は
IFMIA との連続性も考えて一般演題のみとしました.
ただし,IFMIA2011 の最後の招待講演のセッション
はオープンとして,連合フォーラムの参加者もこの招
写真5:レセプションでの招待講演者紹介
待講演の聴講を可能としました.
7
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
口頭発表は8分発表,7分質疑で行いました.十分
て一定のアクティビティーを保っていると思います.
な質問時間がとれましたので,ある程度掘り下げた議
演題集めでそれほど苦労することはなく,むしろ3日
論ができたように思います.一方,ポスター演題につ
間の日程の中で多数の演題をどう編成するか悩ましい
いては,ポスター発表に先立ちポスターティーザーを
こともありました.しかし,アジア,特に韓国の研究
実施しました.ここでは演者は1分間のショートプレ
活動の活性化は日本の上をいくように感じられます.
ゼンテーションを行いました.名古屋大の森先生が司
世界に目を向けるのはもちろんですが,アジアの中で
会をし,時には演者にツッコミを入れて笑いをとりな
も中心的な役割を担っていけるように,われわれ
がらも,時間どおりにまとめられました.
JAMIT 会員はいっそう研究を推進し,力をつけていく
必要があると感じました.
演題はほとんどが大学等,教育機関からのものでし
た.IFMIA と同様に,イメージング関係(イメージン
グのハードウエアおよび再構成などのソフトウエア),
画質改善のポスト処理,さらに CAD 等の検出や認識,
位置合わせ法など,多岐にわたっています
なお,今回,日本写真学会側からの演題として,富
士フイルムからステレオマンモグラフィー装置の開発
に関する発表がありました.口頭発表で行われました
が,実機を使ったデモも行われ(写真9),多くの人の
関心を集めていました.連合フォーラムに日本写真学
会が加わり,医用画像工学の研究分野がより拡がって
いく予感がします.
写真9:デモステレオマンモグラフィーのデモ
おわりに
1月に開催された IFMIA2011 およびメディカルイ
メージング連合フォーラムについて報告しました.国
内の医用画像工学の研究は,特に教育機関を中心にし
8
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
技術交流の輪-1
非剛体レジストレーション
放射線治療計画における非剛体レジストレーション
上村
幸司*
いては、同じ患者であっても、時期が異なれば、
はじめに
がんの放射線治療後に局所再発した場合、以前
体位や患者の状態により、治療計画 CT 画像の形
治療した部位と近接しているため、再発病巣に新
状も異なるため、単純に剛体レジストレーション
たに放射線治療を行うことは、照射の重複による
を用いて、線量分布の位置合わせを行うことは不
放射線障害のリスク上、困難な場合が多かった。
可能である。
さらに、現在、自動的な手法は存在しないため、
近年、強度変調放射線治療(IMRT)や重粒子線治
療などの高精度な照射方法が開発され、複雑な形
放射線腫瘍医は、過去の線量分布と現在の治療計
状の病巣に放射線を集中照射し、かつ周辺の正常
画 CT 画像を別々に参照し、頭の中で重複をイメ
組織にはなるべく照射しない治療が可能になっ
ージしながら手動で新たな治療計画を行ってお
てきた。そのため、放射線治療後の局所再発患者
り、その作業は非常に煩雑であり主観的になりが
への、再度の放射線治療が可能なケースも増えて
ちである(図 1)
。
本稿では、胸・腹部に複数回放射線治療を行う
きている。
際、非剛体レジストレーションを放射線治療計画
局所再発部位に対して新たな治療計画を行う
に適用した例を紹介する。
場合、なるべく過去の線量分布と重複しないよう
に計画しなくてはならない。その場合、治療計画
を行う医師が、過去の治療計画で作成した 3 次元
過去の線量分布と現在の治療計画 CT 画像の融合
的な線量分布の情報を、正確に把握する必要があ
複数回放射線治療を行う場合、過去の治療計画
り、そのためには、過去の線量分布を現在の治療
を参照しながら新たな治療計画を行う。そのため、
計画 CT 画像と 3 次元的に位置合わせし、融合表
過去の治療計画で作成された線量分布を、これか
示することが有効である。しかし、胸・腹部にお
ら治療計画を行う CT 画像上に融合表示できれば、
図 1. 2 回目の放射線治療を行う場合の治療計画
*香川大学医学部附属病院医療情報部
〒761-0793 香川県木田郡三木町池戸 1750-1
9
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
の線量分布に非剛体レジストレーションを適用
非常に有用である。
まず、過去の治療計画のため撮像された CT 画
した結果、過去の線量分布を現在の治療計画 CT
像を現在の CT 画像に位置合わせするために、非
画像に融合表示することが可能になった。その結
剛体レジストレーション[1,2]を適用し、変形パ
果、新たな治療計画を行う際、過去の線量分布を
ラメータを得る。次に、過去の治療計画 CT 画像
正確に参照しながら、照射方向や照射線量などを
に対応した DICOM-RT の PLAN/DOSE 情報から、任
設定することができる可能性が示せた。
意の座標における線量値を画素値に持つ線量分
布画像を作成し、変形パラメータを適用して、現
在の治療計画 CT 画像に位置合わせする。
最後に、
位置合わせされた線量分布画像を、DICOM-RT の
PLAN/DOSE 情報に再変換することで、DICOM-RT ビ
ューワ上で、過去の線量分布と現在の治療計画 CT
画像を融合して表示することができる。
図 2. 腹部 CT 画像の非剛体レジストレーション
実験結果
図 2 に、同一患者で時期の異なる腹部 CT 画像
に、非剛体レジストレーションを適用した結果を
示す。左:axial 画像、右上:coronal 画像、右
下:sagittal 画像の結果であり、互いの画像の差
分をとり、位置があわず差分が生じている部位に、
色をつけて表示している。赤のグレースケールは
正の差分値、青のグレースケールは負の差分値を
表している。腸管や胃などの管腔臓器では、若干
差分が見受けられ、位置合わせが不十分な部分が
認められるが、全体的には非常によく位置合わせ
ができている。解剖学的に特徴的な基準点を複数
図 3. 2 回の線量分布と CT 画像の融合結果
点定めて、エキスパートによる目視評価を行った
結果、両画像間の基準点のずれは平均 1.13 mm と
なり、放射線治療で求められる 3 mm の精度は満
参考文献
たしていた。
[1]. N. J. Tustison, B. B. Avants and J. C. Gee, Directly
manipulated
次に、2 回放射線治療を行った患者の、1 回目
free-form
deformation
image
の線量分布(左)を非剛体レジストレーションし、
registration, IEEE Trans Image Process, vol.18,
2 回目の線量分布(右)と治療計画 CT 画像に融合表
no.3, pp.624-635, March 2009.
示した結果を図 3 に示す。その結果、1 回目と 2
[2]. D. Ruechert, L. I. Sonoda, C. Hayes, D. L. Hill,
回目の線量分布の位置関係や、各部位の照射線量
M. O. Leach and D. J. Hawkes, Nonrigid
が明確に把握できた。
registration
application
using
to
free-form
breast
MR
deformations:
images,
IEEE
Transactions on Medical Imaging, vol.18, no.8,
おわりに
pp.712-721, August 1999.
胸腹部に複数回放射線治療を行う患者の、過去
10
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
技術交流の輪-2
標準脳
アルツハイマー病の MRI 診断支援ソフトウェア VSRAD®
松田博史*
エーザイ、ファイザー両株式会社の支援の元に、
を行うこともできます。ただし、数十スライスの
われわれが大日本印刷株式会社と共同開発した
撮像断面にトレースすることは長い時間を要し、
Magnetic Resonance Imaging (MRI)によるア
内側側頭構造の専門的知識も必要となります。こ
ルツハイマー病の補助診断を目的とした解析ソ
られのことから、アルツハイマー病の MRI による
フ ト ウ ェ ア で あ る Voxel-based Specific
診断は、長い間、専門家の目による判断に頼らざ
Regional analysis system for Alzheimer’s
るを得ない状況が続いてきました。
®
Disease (VSRAD )について紹介します。
画期的な解析法の開発
今世紀にはいってロンドン大学の Ashburner
アルツハイマー病での MRI の必要性
博士が Voxel-based Morphometry(VBM)とい
MRI は、脳の詳細な構造を良好な組織コントラ
ストで画像化することができ、放射線被ばくもな
う
いため認知症の診断に広く使われています。認知
した。この手法では、まず MRI から、神経細胞が
症の中で最も頻度が多い疾患はアルツハイマー
多く存在する灰白質、神経線維が多く存在する白
病であり、原因疾患の 50%近くを占めます。ア
質、脳脊髄液成分を抽出します。この抽出には、
ルツハイマー病では、側頭葉の内側部が最初に選
各成分の信号値の違いと、あらかじめ多数の正常
択的に萎縮することが知られており、この部位の
例で得られたそれぞれの成分の分布様式を参照
萎縮を正確に検出することが早期診断につなが
として使います。次に灰白質成分画像を、標準脳
ります。ただし、側頭葉の内側構造は容積が小さ
図譜の形態に線形変換と非線形変換手法により
く、内側構造の中でも最も早く萎縮を示すとされ
変形します。この変形により、すべての被検者の
る嗅内皮質は両側あわせても 1cc 前後しかあり
灰白質画像が 3 次元的に同じ位置を持つことに
ません。その次に萎縮がみられる海馬でも両側あ
なるわけです。さらに、これらの画像に平滑化処
わせて 6cc 前後しかありません。全脳容積は
理を行います。多数の健常者から得られた灰白質
1,300cc ぐらいですから、嗅内皮質と海馬を両
画像データベースを作製し、アルツハイマー病患
方あわせても、全脳の 0.5%程度の萎縮をみつけ
者脳から得られた灰白質画像を標準脳図譜上で
なければならないことになります。しかし、高齢
統計学的に処理すれば、コンピュータを用いて自
になると脳は萎縮しますので、加齢による生理的
動的に脳萎縮部位が評価できるわけです。この
な萎縮か病的な萎縮かを目で判断することは難
VBM の解析には Matlab という高額な画像の数
しいことが多くあります。目で診断することを補
値演算ソフトウェアが必要でしたが、VSRAD®
う意味で、海馬や嗅内皮質の輪郭をコンピュータ
は Windows PC 上で単独で VBM 解析を行うソ
画像上に手でトレースすることにより、容積測定
フトウェアとして開発されました。
*
MRI を用いた新しい容積解析法を発表しま
埼玉医科大学国際医療センター核医学科 〒350-1298 埼玉県日高市山根 1397-1
11
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
VSRAD®の主な特徴
法などについてマイナーバージョンアップが
1) ユーザーフレンドリーネス
なされ、現時点では全国約 1,900 施設で用い
VBM 解析は、もともと Matlab 上で動く
られています。さらに、大幅なバージョンア
Statistical Parametric Mapping (SPM) と
ップを 2011 年内に行う予定です。次回のバ
呼ばれるフリーソフトウェア上で解析されま
ージョンアップでは、灰白質成分の抽出およ
す。SPM は研究用に開発されているためもあ
び解剖学的標準化の精度が向上しており、ア
り、解析項目、統計処理項目の設定が複雑で、
ルツハイマー病の診断精度が数%向上してい
難解です。また、何ステップも入力操作を行
ます。また、白質の萎縮評価も可能となり、
わなければなりません。その上、個々の患者
アルツハイマー病のみならず、認知症を来す
の萎縮を評価する目的では設計されていませ
他の疾患の診断にも威力を発揮するものと期
ん。VSRAD では Ashburner 博士の許可の
待されます。さらに、従来の VSRAD®では著
もとに、SPM の灰白質成分画像の抽出、標準
しい脳室拡大などのために解析不能であった
脳形態への解剖学的標準化、平滑化などのモ
症例も、処理可能となります。懸念されるの
ジュールが移植され、自動的に処理が進むよ
は、処理時間ですが、コンピュータの性能は
うになっています。また、健常者の画像デー
日進月歩で向上しているので、1 症例 10 分
タベースとの統計検定においては、画像デー
程度で処理できると考えています。ご期待く
タベースの平均画像と標準偏差画像を用いて、
ださい。
®
脳局所ごとに個々の患者の灰白質濃度が健常
者の平均濃度から何標準偏差離れているかを
70 代女性、アルツハイマー病の MRI
示すZスコアが算出されます。このZスコア
内側側頭部の萎縮判定は困難です。
は、カラーマップとして標準脳または被検者
脳の断層面または脳表上に表示されます。あ
る画素のZスコアが2であれば、正常データ
ベースと比べて統計学的に危険率 5%未満で
有意に萎縮していることになります。
同症例の VSRAD®解析
萎縮を示すZスコアのカラーマップが右側頭
葉内側に認められます。萎縮程度を客観的に容
易に判断することができます。
VSRAD®では、いったん被検者の MRI を入力
すれば、統計処理から結果表示まで自動的に
進むわけです。処理時間はコンピュータの性
能にもよりますが、1 症例 5~10 分程度です。
さに、複数例の処理も自動的に可能です。
2) 正常データベースを標準装備
VSRAD®には 54 歳から 86 歳の健常者 80
例からなる良質の画像データベースが装備さ
れています。これらの健常者は神経心理学的
に正常であり、MRI で明らかな脳梗塞がなく、
糖尿病や高血圧などの治療も受けていない方
たちです。
3) 進化し続ける解析技術
VSRAD®は 2005 年に最初のバージョンが
開発されました。その後、2009 年に表示方
12
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
JAMIT のひろば
近赤外光イメージング装置 OMM-3000 シリーズ
今井
1.
豊*
テーション効果、高次脳機能障害に関する研究な
はじめに
ど、幅広く研究に使用されており、これからも適
近赤外法の医学応用とは、近赤外光が高い生体
用範囲は広がっていくと期待できる1)。
透過性を有し、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘ
モグロビンが近赤外領域で異なる吸収スペクト
島津製作所では1985年より、生体組織内の酸素
ラムを持つことを利用して、生体組織内の酸素状
状態の測定を目的としたNIRSの研究を始め、1991
態を測定することが可能であることを利用して
年には、日本初の臨床装置としてOM-100Aの製品化
診断に供することである。その中で、最近、注目
に成功した。この装置は主に手術中の脳内酸素状
を集めているのは、脳神経活動と脳血流変化との
態の監視、運動負荷試験における筋肉への血液供
カップリング原理に基づいて、脳の賦活状態を測
給のモニタなどに使用された。その後、2ヶ所を同
定する手法であり、機能的近赤外分光法
時測定可能な2チャンネル型OM-220から多チャン
(functional NIRS:fNIRS)と呼ばれている。
ネル型OMM-2001へと、ユーザの要求に基づき、開
fNIRS の臨床応用には、1)言語野関連病変(側
発を進めてきた。脳の科学は未踏の領域が広く、
頭葉腫瘍等)又は正中病変における外科手術に当
そのためfNIRS装置は、脳機能測定の様々な用途に
たり言語優位半球を同定する必要がある場合、2)
対応する必要があり、高い性能や拡張性が要求さ
難治性てんかんの外科的手術に当たりてんかん
れている。本稿では、島津製作所のfNIRS装置であ
焦点計測を目的に行われた場合について、各手術
る近赤外光イメージング装置OMM-3000シリーズの
前に 1 回保険適用となっている。最近では、うつ
特長について、以下に述べる(図1. 1)
(図1. 2)
。
状態の鑑別診断補助として第 2 項先進医療に承認
2.
されている。
2.1
fNIRS 装置の特長は、脳機能を測定する他のモ
ダリティである MRI や PET 装置と比較して、以下
特長
光源と光検出器
fNIRS装置では、光源から出力された近赤外光
の点があげられる。
が送光ファイバを介して頭表より脳内に照射さ
1)微弱な近赤外線を使用しているため、無侵
れ、大脳皮質で吸収・散乱を受けた近赤外光が受
襲である。
光ファイバを介して光検出器で検出される。した
2)小型で装置を移動することができ、特殊な
がって、fNIRS装置の重要な構成要素としては、
検査室を必要としない。
光源と光検出器があげられる。本装置は、安定な
3)被検者を寝台に固定する必要がなく、自然
光出力が得られるよう、光源に半導体レーザを採
な状態で測定できる。
用している。また、3波長方式を用いることによ
上述の特長を活かして、新生児をはじめ未熟児や
り、安定した高精度な測定を実現している。光検
児童の発達に関する研究、脳卒中患者のリハビリ
出器には光電子増倍管を採用しており、これはダ
*
島津製作所 医用機器事業部マーケティング部 〒604-8511 京都市中京区西ノ京桑原町 1
13
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
イナミックレンジが広いため、光の通りやすい新
点灯することでサンプル時間を短くする方式が
生児から、光の通りにくい毛根密度の高い被検者
あるが、復調時のクロストークノイズはゼロには
に対してまで広く適用できる。また、光電子増倍
ならないので、本装置はサンプル時間を尐々犠牲
管は感度が高く、光ファイバの長さを10m以上に
にしてでも順次点灯によるクロストークノイズ
延長することができ、MRIとの同時測定やリハビ
ゼロを求めた。可能な限り信号の質をあげる工夫
リテーションの歩行時計測など、被検者と装置本
を行っている。
本装置は、送光ファイバと受光ファイバの数が
体を離して測定をすることが可能である。一方、
異なる 4 タイプがあり、用途に応じて、タイプを
送光の仕方にはレーザ光に変調をかけて同時に
選択することができる(表1)
。
表1
装置名
装置構成
送受光
測定チャン
ファイバ数
ネル数
OMM-3000/4
4組
10
OMM-3000/8
8組
24
OMM-3000/12
12 組
38
OMM-3000/16
16 組
52
2.2
ネットワーク統合機能
ネットワーク統合機能(オプション)は、多くの
測定チャンネル数が必要な場合に、2 台の装置を
ネットワークで接続し、1つのシステムとして統
合する機能である。この機能を用いると、測定チ
図 1.1
ャンネルを 100 チャンネル以上に拡張できる。2
OMM-3000 外観
台の装置のうち1台をマスター装置、他方をスレ
ーブ装置として、マスター装置の画面で全チャン
ネルのデータをリアルタイムで観測することが
できる。このネットワーク統合機能では、多チャ
ンネルの測定が可能でありながら、装置を大型化
することなく、NIRS 装置の特長である機動性を保
つことができる。測定時には必ずしも常にすべて
のファイバを使うわけではないため、分離すれば
1台ずつ独立した装置としても使用でき、装置の
稼働率を上げることができる。
2.3
自在調整曲面ホルダ
自 在 調 整 曲 面 ホ ル ダ ( FLexible Adjustable
Surface Holder:FLASH)は、様々な形状の頭部
に密着させることができる島津独自の構造を持
図 1.2
つファイバホルダである。安定したデータを取得
OMM-3000 と被験者
14
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
するためには、送受光ファイバの距離を等間隔に
のファイバホルダに送受光ファイバを自由に配
保持し、頭部にしっかり密着させる必要がある。
置できることから、目的部位を容易に計測するこ
ファイバホルダは成型タイプや伸縮タイプが考
とができる。全頭用ファイバホルダ(オプション)
えられるが、成型タイプは原理的に曲率の異なる
では、シームレスに全脳測定が可能である。また、
曲面に配置することはできない。頭部の局率は個
ホルダキット(オプション)を用いて、ユーザが
人差によって異なるため、送受光ファイバが頭部
独自のホルダを作成することができる。
に密着できない場合が発生する。伸縮性タイプは
2.4
新生児ホルダ
近似的に曲率の異なる曲面に配置させることは
新生児ホルダは新生児専用の小型のファイバ
できるが、送受光ファイバ間距離が変化する可能
ホルダ(オプション)である(図 3)
。NIRS は無
性がある。我々が開発した FLASH は、ガウス-ボ
侵襲であることから新生児にも使用することが
ンネの公式を曲面上の四角形に適用することに
できるが、新生児では特に安全性に配慮する必要
基づいている。その公式から、四角形を様々な曲
がある。この新生児ホルダは、装着面がフラット
面にフィッティングさせるためには、四角形の内
で、突起のない構造とし、新生児の非常にデリケ
角の和を曲率に応じて変更できる機構が必要で
ートな皮膚に対応した。ファイバホルダ形状が小
あることが導かれる。基本構造を送受光ファイバ
さいことから、ファイバホルダの周囲を形状可変
4 つで四角形を形成すると考えると、四角形の辺
ワイヤで構成し、自在に形状を変更可能である。
に相当する部材に、伸縮性は有せず可撓性(曲げ
また、厚さ 5mm の薄型直角の送受光ファイバを開
やすさ)を有する素材とし、その辺の両端に送受
発し、小型軽量で、新生児の小さな頭部への装着
光ファイバを保持するソケットを設け、各辺が回
が容易である。
転可能で回転角を保持できる構造とする。この基
2.5
GLM 統計ソフトウェア
本構造により、辺の可撓性と協調によって、四角
GLM 統 計 ソ フ ト ウ ェア は 、 一 般 線 形 モ デ ル
形の内角の和を変更でき、ソケット構造により、
(General Linear Model:GLM)を用いた統計的
任意の曲面を保持することができる。本装置では、
検定評価を行う解析ソフトウェアである。GLM は
FLASH を用いた頭頂用ファイバホルダ、側頭用フ
MRI 信号のような時系列データに対処可能に一般
ァイバホルダを標準装備している(図 2)
。これら
化され、脳機能画像の標準的な統計解析法として
図 2 頭頂用(左)
、側頭用(中)、全頭用(左)のファイバホルダ
15
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
図4
t値マッピング表示
図 3 新生児ホルダ
3.むすび
近赤外光イメージング装置 OMM-3000 シリーズ
定着している手法である。本ソフトウェアでは、
あらかじめ設定された統計的パラメータや応答
の特長について紹介した。本装置が、臨床診断の
関数によって、検定ボタンを押すだけで、有意差
一助となることができれば幸いである。今後とも、
のあるチャンネルを色付けし、視覚的に表示する
より充実した機能を拡張していく予定である。
ことができる。応答関数として、デルタ関数、ガ
ウス関数、2パラメータガンマ変数関数が選択で
参考文献
き、応答遅れや時間シフトなどのパラメータ設定
1)片山容一、酒谷薫:臨床医のための近赤外分
も可能である。また、平均値、標準偏差やt値な
光法(日本脳代謝モニタリング研究会).振興
どの統計データや統計モデルから得られたフィ
医学出版社,2002
ッティングカーブをグラフ表示し、検定結果の確
認をすることができる。さらに、より視覚的にわ
製造販売認証番号
かりやすくするために、t値や有意差の統計検定
21600BZZ00195000
のマッピング表示をすることも可能である(図 4)
。
*
*
16
*
機能検査オキシメータ [近赤外光イメージング装置 OMM-3000シリーズ
JAMIT News Letter(No.8) 2011. 4
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JAMIT e-News Letter No.8(通算62
※
)
発 行 日
平成23年4月15日
編集兼発行人 安藤 裕
発 行 所
JAMIT
日本医用画像工学会
The Japanese Society of Medical Imaging Technology
http://www.jamit.jp/
〒113-0033 東京都文京区本郷 6-2-9
モンテベルデ第二東大前 504 (有)クァンタム内 日本医用画像工学会事務局
TEL: 03(5684)1636 FAX: 03(5684)1650
E-mail: [email protected]
※本誌の前身であるCADM News Letterからの通算号数です。
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