Comments
Description
Transcript
低価格の電磁調理器対応鍋の加熱適性
平 成 19年 1月 15日 (火 ) 兵庫県立生活科学研究所 低価格の電磁調理器対応鍋の加熱適性 【目的】 電磁調理器(IHクッキングヒーター)は、手入れが簡単で、不完全燃焼や立 ち消えの心配がないといった安全性から高齢者世帯などで普及が進んでいる。 電磁調理器では、耐熱ガラスや陶磁器など非金属製の鍋は使えず、金属製でも ア ル ミ や 銅 は 使 用 で き な い 場 合 が 多 く 、底 面 が 平 ら で な い も の も 使 用 で き な い な ど 、 使 え る 鍋 の 材 質 や 底 の 形 状 に 制 限 が あ る 。そ の た め 、最 近 は 消 費 者 が 判 断 し や す い よ う に「 電 磁 調 理 器 対 応 」 「 I H 対 応 」等 の 表 示 が あ る 鍋 も 数 多 く 販 売 さ れ て い る 。 ところが、県内の消費生活相談窓口には、IH対応表示がある鍋を使用してい る の に 、「 湯 を 沸 か す 時 間 が 他 の 鍋 に 比 べ て 倍 以 上 か か る 」、「 加 熱 し よ う と す る と エラー表示が出て使えない」といった相談が寄せられている。 このような相談の対象となる鍋は、比較的、低価格のものが多いことから、販 売 価 格 3,000 円 以 下 の 低 価 格 の 電 磁 調 理 器 対 応 鍋 を 試 買 し 、複 数 の 電 磁 調 理 器 で の 加 熱 適 性 を 確 認 す る こ と で 、消 費 者 が 簡 単 に 活 用 で き る 店 頭 で 電 磁 調 理 器 対 応 鍋 を 選ぶ際のポイントを調べた。 【実施時期】 平 成 19年 5月 ∼平 成 19年 10月 【試験対象】 (電磁調理器対応鍋) 神戸市内のスーパー、ホームセンターで販売されていた電磁調理器(IHク ッ キ ン グ ヒ ー タ ー ) で 使 用 で き る 旨 の 表 示 が あ っ た 20cm 鍋 の う ち 、 販 売 価 格 3,000 円 以 下 の 計 30 品 。 構 造 は 、 各 鍋 の 表 示 か ら 7 種 類 ( 構 造 A ∼ G ) に 大 別 された。 ( 【別 添 図 表 】表 1) ( 電 磁 調 理 器 ( I H ク ッ キ ン グ ヒ ー タ ー )) AC100V 用 4 機 種 ( 700W 1 機 種 、 1300W AC200V 用 2 機 種 ( 3000W 1 機 種 、 2050W ( 【別 添 図 表 】表 2) 1 機 種 、 1400W 2 機 種 ) 1 機種) の計 6 機種 【試験内容】 1 寸法測定及び構造確認 2 消費電力及び熱効率測定 3 各種測定値の相関分析 【結果】 1 「IH対応」鍋でも火力に大きな差が出る テストに用いた鍋は、用意した電磁調理器 6 機種すべてで、エラー表示(使 えない鍋であることを知らせる表示)が出ることなく加熱することができた。 し か し 、火 力 の 目 安 と な る 消 費 電 力 を 比 較 す る と 、AC200V 用 2050W の 電 磁 調 理 器 の 場 合 、 定 格 ※ の 42.7%( A-4: 875W) ∼ 107.6%( C-2: 2206W) と 、 鍋 に よ る 火 力 の 差 が 大 き か っ た ( 【別 添 図 表 】図 2)。 ま た 、同 じ 電 磁 調 理 器 で 、1 リ ッ ト ル の 水 を 30℃ か ら 90℃ ま で 加 熱 す る の に か か る 時 間 は 、 最 短 の 鍋 で 2 分 22 秒 ( C-2) だ っ た の に 対 し 、 最 長 の 鍋 は 8 分 36 秒 ( A-10) と 3.6 倍 に も な っ た ( 【別 添 図 表 】図 3、4)。 ※電 磁 調 理 器 の「定 格 」とは、メーカーが基 準 として使 った鍋 を加 熱 したときの消 費 電 力 を表 す。基 準 とし た鍋 よりも、さ らに発 熱 し やすい鍋 を加 熱 したと きの消 費 電 力 は、定 格 よりも大 きくなる。 2 底面(接地面)直径の大きいものは消費電力(火力)が大きい 同 じ サ イ ズ ( 20cm) の 鍋 で も 、 底 面 の 直 径 は 132mm∼ 184mm と 50mm 以 上 の 開 き が あ り( 【別 添 図 表 】表 1、図 1)、テ ス ト 結 果 で は 、鍋 底 面 の 直 径 が 大 き い ほ ど 消費電力(火力)が大きくなる傾向がみられた。また、底面に磁性がある(磁 石 に つ く )鍋( 構 造 C 以 外 )で は 、磁 石 の 吸 引 力 が 大 き い ほ ど 消 費 電 力( 火 力 ) が大きい傾向がみられた。 鍋の構造別に消費電力(火力)を比較すると、アルミニウム合金鍋にステン レ ス の 貼 り 底 を し た 鍋( 構 造 A)の 測 定 値 が 全 体 的 に 低 か っ た( 【別 添 図 表 】図 5)。 た だ し 、 こ の 構 造 A の 中 で も A-8 だ け は 他 の 構 造 の 鍋 と 同 程 度 の 高 い 消 費 電 力 ( 火 力 ) を 示 し た 。 こ れ は A-8 の 底 面 の 直 径 が 大 き い 上 、 底 面 の 磁 石 吸 引 力 が 強 い と い う 特 徴 が あ る た め で あ る ( 【別 添 図 表 】写 真 1)。 3 火力の大きさは熱効率にも影響 省エネルギー性能の目安となる熱効率の比較でも、アルミニウム合金鍋にス テ ン レ ス の 貼 り 底 を し た 鍋( 構 造 A)は 、他 の 構 造 の も の よ り も 相 対 的 に 低 か っ た( 【別 添 図 表 】図 6、7)。 こ れ は 、 構 造 A の 鍋 に 用 い ら れ て い る ア ル ミ ニ ウ ム 特 有の保温性の低さに加え、消費電力(火力)が小さいため、鍋の熱が外部に逃 げる時間が長くなったことが影響したと考えられる。 AC200V 用 2050W の 電 磁 調 理 器 の 場 合 、 1 リ ッ ト ル の 水 を 30℃ か ら 90℃ ま で 加 熱 す る の に 要 し た 使 用 電 力 量 は 、87.0Wh( C-2:熱 効 率 80.2%)∼ 125.7Wh( A-10: 熱 効 率 55.5%) と 、 使 用 電 力 量 に も 差 が 出 た 。 【電磁調理器対応鍋を選ぶ際のポイント】 ○サイズや材質が電磁調理器の取扱説明書に示されている使える鍋の条件に合っ ているかを確認する。 ○ 同 じ サ イ ズ( 内 径 )の 鍋 で も 、鍋 底 面( 接 地 面 )の 直 径 が 大 き い も の ほ ど 火 力 が 大きくなることが多い。 ○ 底 面 が 磁 石 に つ く 構 造 の 鍋 は 、磁 石 吸 引 力 が 大 き い も の ほ ど 火 力 が 大 き く な る こ とが多い。 ○アルミニウム合金鍋にステンレス貼り底をした構造の鍋は火力が小さくなるこ と が 多 い が 、そ の 中 で で き る だ け 火 力 の 大 き い 鍋 を 選 ぶ ポ イ ン ト は 、底 面 直 径 が 大きく、磁石吸引力が強いものを選ぶとよい。 ○( 財 )製 品 安 全 協 会 の「 ク ッ キ ン グ ヒ ー タ 用 調 理 器 具 の 認 定 基 準 」を 満 た す 調 理 器 具 に は SG マ ー ク が 付 け ら れ て お り 、 購 入 時 の 目 安 の 一 つ と な る 。 【措置・要望等】 ○電磁調理器対応鍋に関する要望 消費電力(火力)が小さいことが認められた鍋のメーカーに対し、品質の改 善 を 要 望 し た 。ま た 、鍋 メ ー カ ー が 構 成 す る 各 業 界 団 体( 軽 金 属 製 品 協 会 、 (財) 日 本 金 属 ハ ウ ス ウ ェ ア ー 工 業 組 合 、( 社 )日 本 琺 瑯 工 業 会 )に 対 し 、消 費 者 の 商 品選びに役立つ性能目安(SG基準や業界団体の自主基準など)の表示につい て要望した。 ○電 磁 調 理 器 (IHクッキングヒーター)に関 する要 望 電 磁 調 理 器 メーカーが 構 成 する 業 界 団 体 ((財 ) 日 本 電 機 工 業 会 )に対 し 、実 際 の 消 費 電 力 (火 力 )が、ランプやデジタル表 示 などにより一 目 でわかる機 能 を広 く採 用 する よう要 望 した。 【別添図表】 表1 試験対象 20cm 鍋(2007 年 5∼6 月試買) 構造 (側面と底面の断面図) 構造 A 【アルミニウム合金鍋に 18-0 ステンレスの 貼り底】 鍋 No. A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 A-10 A-11 B-1 B-2 B-3 B-4 B-5 構造 B 【18-8 ステンレス鍋にアルミニウムと 18-0 ステンレスの貼り底】 構造 C 【18-8 ステンレス鍋】 構造 D B-6 B-7 B-8 B-9 B-10 購入価格 [円] 798 798 999 1,000 1,480 1,490 1,580 1,980 1,980 1,990 2,280 998 998 999 1,180 1,190 1,580 1,980 1,980 1,990 2,079 底面直径[mm] 図1のa 底面中心浮き[mm] 図1のb 無し 有り 有り 無し 有り 2.4 2.1 2.2 2.3 3.0 2.5 2.6 3.0 2.4 3.0 2.8 2.8 3.0 3.5 3.0 3.4 3.7 3.2 3.2 3.1 3.7 143 140 132 133 143 143 143 160 152 134 164 181 182 183 183 183 139 183 184 183 180 0.40 0.05 0.30 1.00 1.00 1.00 1.10 0.40 0.70 0.70 1.30 0.50 1.50 0.55 0.05 0.90 0.30 1.50 1.70 0.50 1.00 SG マーク※ 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 無し 容量 [ℓ] C-1 980 無し 2.7 162 2.40 C-2 998 無し 2.5 170 0.60 C-3 1,036 無し 3.3 170 0.50 D-1 1,880 無し 3.0 180 1.60 D-2 1,980 無し 3.0 170 1.00 E-1 698 無し 2.8 155 0 E-2 799 無し 2.2 177 1.10 F-1 1,580 無し 2.6 150 1.20 無し 2.8 166 0.70 【ほうろう鍋】 構造 E 【18-0 ステンレス鍋】 構造 F 【18-8 ステンレスで鉄を挟んだ全面 3 層鍋】 G-1 2,980 構造 G 【18-8 ステンレスと 18-0 ステンレスでアル ミニウムを挟んだ全面 3 層鍋】 ※ (財)製品安全協会の認定基準に適合した製品に表示される SG マークのうち、「クッキングヒータ用調理器具」に対応したマーク 90 80 鍋 C-2 温度[℃] 70 b A-10 60 50 40 a 30 0 60 120 180 図 1 鍋底寸法の測定箇所 図4 表2 240 300 時間[sec] 360 420 480 IH200-2 での加熱時の温度変化と時間経過 試験対象電磁調理器 No. 製造年 定格消費電力 タイプ 110 IH100-1 IH100-2 IH100-3 IH100-4 IH200-1 IH200-2 2007 2007 2006 2007 2007 2001 AC100V-700W AC100V-1400W AC100V-1300W AC100V-1400W AC200V-3000W AC200V-2050W 卓上型1口 卓上型1口 卓上型1口 卓上型1口 据置型2口(高火力側) 卓上型1口 100 消費電力% 90 80 70 60 50 A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 A-10 A-11 B-1 B-2 B-3 B-4 B-5 B-6 B-7 B-8 B-9 B-10 C-1 C-2 C-3 D-1 D-2 E-1 E-2 F-1 G-1 40 1 A 2 3 B 4 C E5 D 6 7 F G 構造 図5 鍋の構造別消費電力[%] µ=75.4 =24.61 0.0 20.0 図2 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 IH200-2 での消費電力[%] A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 A-10 A-11 B-1 B-2 B-3 B-4 B-5 B-6 B-7 B-8 B-9 B-10 C-1 C-2 C-3 D-1 D-2 E-1 E-2 F-1 G-1 写真 1 0 100 200 300 400 500 600 図 3 IH200-2 での加熱時間[秒] (1 リットルの水を 30℃→90℃に加熱する時間) 構造 A における底面の直径の違い A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 A-10 A-11 B-1 B-2 B-3 B-4 B-5 B-6 B-7 B-8 B-9 B-10 C-1 C-2 C-3 D-1 D-2 E-1 E-2 F-1 G-1 0.0 µ=71.3 =8.21 10.0 20.0 図6 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 IH200-2 での熱効率[%] 90.0 100.0 90 熱効率 80 70 60 50 40 1 A 2 B 3 C 4 D 5 E F6 構造 図7 鍋の構造別熱効率[%] G7