...

捕捉した電力システム波形を 使用した自動車用 ECU の

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

捕捉した電力システム波形を 使用した自動車用 ECU の
捕捉した電力システム波形を
使用した自動車用 ECU の
トランジェント・テスト
Application Note
目次
●
はじめに
2
●
概要
2
●
問題
2
●
ソリューション
2
●
電圧トランジェントの捕捉
3
●
データの調整
4
●
N6705A へのデータの転送
7
●
波形の再生
7
●
SCPI コマンドを使用したプログラミング
8
●
まとめ
9
はじめに
問題
このアプリケーション・ノートでは、
Agilent N6705A DC 電源/アナライ
ザを使用して自動車で発生する実際
のトランジェント信号を再生するこ
とにより、車載用電子制御装置
(ECU)
の徹底的なトランジェント・テスト
が短時間で行えることを説明しま
す。
自動車の電力システム・テストに対
する規格のテスト手法と電圧プロ
フ ァ イ ルは、ECU テストの有効な
ベースになります。しかし、自動車
の ECU に現われる実際のトランジェ
ント信号を十分に反映していない場
合があります。車内の各 ECU の配
置は固有であり、電力システムのト
ランジェント信号は、ECU の位置に
よって異なります。大電流モータま
たはソレノイドが ECU と同じ電力
支線や近くに配置されている可能性
があり、バッテリ性能は環境条件に
より変化します。このため、電力シ
ステムのトランジェント信号テスト
に使用する規格のプロファイルは、
使用する ECU に現われるトランジェ
ント信号を完全に表現したものでは
ありません。
概要
自動車の電力システムは、非常に厳
しい電気環境です。大電流モータ、
ソレノイド、その他のコンポーネン
トにより、電力システムではしばし
ば電圧トランジェントやドロップア
ウトが発生します。自動車の電子機
器がうまく動作するかは、適切な電
力トランジェント・イミュニティに
依存し、自動車の電子機器の重要性
から、徹底的な ECU テストが必要
不可欠です。
ISO-7637、ISO-16750 な ど の さ ま ざ
まなテスト規格で、テストに有効な
トランジェント波形プロファイルが
文書化されています。しかしこれら
は、自動車の ECU に現われると予
測される、最良の波形を表したもの
です。このアプリケーション・ノー
トでは、厳しい車載用電力システム
環境で ECU の動作を確認するため
に、自動車で電圧トランジェントが
発生したときにその信号を実際に捕
捉し、後で再生して ECU をテスト
する方法について説明します。
2
究極のテストは、自動車自体のあら
ゆる動作条件で ECU を実際にテス
トすることです。しかし、この方法
は実用的とはいえません。
ソリューション
自動車で発生するトランジェント信
号を記録し、必要に応じて開発ラボ
でそれらを再生できるとしたらどう
でしょうか。
トランジェント信号の捕捉は、オシ
ロスコープを使用して簡単に行えま
す。オシロスコープを電力システム
に接続し、トランジェント信号が発
生する条件を整えて、トランジェン
ト信号を捕捉します。エンジンのク
ランキング、コンプレッサの起動、
低温での操作などの条件で実行し、
得られた電力システムのトランジェ
ント信号を捕捉します。
捕捉したトランジェント信号を PC
にロードし、必要に応じて修正して
任意波形発生器(arb)にダウンロー
ドします。広帯域パワーアンプ経由
で ECU に接続された任意波形発生
器で出力波形を再生します。この方
法により ECU の自動車内での機能
を理解でき、さまざまな ECU プロ
トタイプを開発したときにこの方法
を何度でも繰り返すことができま
す。複数のトランジェント・シナリ
オを保存して、ライブラリを完成さ
せて、必要に応じて使用できます。
間欠的な感受性をテストするため
に、トランジェント信号で長時間(例
えば一晩中)テストすることもでき
ます。
通常、このような作業には任意波形
発生器とパワーアンプを個別に使用
す る 必 要 が あ り ま す が、 こ れ ら の
セットアップとプログラミングは、
面 倒 で 時 間 が か か る 作 業 で す。
N6705A DC 電源/アナライザでは
任意波形発生器と電源が 1 つにパッ
ケージ化されているので、テストが
迅速に行えます。
電圧トランジェントの捕捉
N6705A ソリューションは、最大 4
チャネルのクリーンなハイ・グレー
ド電源と、正弦波、方形波、ランプ
波などの内蔵標準波形を使用できま
す。さらに必要に応じて、最大 512
デ ー タ・ ポ イ ン ト の 波 形 メ モ リ を
使ってユーザ定義波形を作成できま
す。また 20 種類を超える DC 電源モ
ジュールから、アプリケーションに
最適なモジュールを選択できます。
高速なスルーレートの内部任意波形
信号源でドライブすると、必要な電
力トランジェント信号を出力できま
す。N6705A により最大 600 W の電
力を供給できます。最大 20 A を供
給できるモジュールもあります。フ
ロント・パネルは、人間工学的に設
計され、操作しやすく、デザイン検
証 に 最 適 で す。 ま た N6705A に は、
テストに必要なすべての機能が統合
されているため、ECU の商品化にか
かる時間を短縮できます。
説明のために、エンジンのクランキ
ング中に発生する電力システムのト
ランジェント信号を捕捉します。オ
シロスコープをバッテリに接続し、
正 し く セ ッ ト ア ッ プ し た 後、 イ グ
ニッション・キーを回してエンジン・
スタータのクランキングを開始する
ことによりオシロスコープをトリガ
し、電圧トランジェントを捕捉しま
す。図 1 に捕捉波形を、図 2 にオシ
ロスコープにより保存されたデータ
の表形式データの一部を示します。
電圧トランジェントの捕捉には、さ
まざまなオシロスコープを使用でき
ま す。 オ シ ロ ス コ ー プ を 自 動 車 の
バッテリ端子に直接接続し、捕捉す
るトランジェント信号に合わせてサ
ンプリング・レート、掃引持続時間、
トリガを調整します。
波形を捕捉して PC にインポートし
た後、データを Microsoft Excel で開
いてチェックすることができます。
必要に応じて、波形をカスタマイズ
できます。
図 2. 表データ
図 1. スタータ・モータのクランクによる電力システムのトランジェント信号
3
データの調整
N6705A は、ポイント/待ち時間を
使用して、ユーザ定義の任意波形を
指定します。すなわち、波形は、電
圧
(または電流)
ポイントのリストと、
対応する待ち時間(各ポイントに 1
個)
のリストで表現されます。例えば、
図 3 に N6705A のユーザ定義電圧の
入力ウィンドウを示します。ウィン
ドウには、入力した波形データの 4
個のポイントが表示されています。
図 4 は N6705A のフロント・パネル
に表示される波形です。
この方法では、長い時間電圧が変化
しなければ、長い待ち時間を持つ 1
個のメモリ・ポイントだけで出力を
定 義 で き ま す。 図 3 と 図 4 か ら、
11.2 s 継続する波形を 4 個の波形デー
タ・ポイントで効率的に表現できる
ことがわかります。
この方法により波形メモリを効率良
く使用できますが、N6705A で用い
られるフォーマットに合わせて波形
データを調整する必要があります。
N6705A のユーザ定義波形をプログ
ラミングする最良の方法は、データ・
ポイントの数によって異なります。
512 個以下のデータ・ポイントで
波形を表現する場合:
波形が 512 個以下のメモリ・ポイン
トに含まれる場合は、待ち時間を時
間/電圧ポイントに対応する固定値
に設定します。例えば、波形の長さ
が 500 ms で、500 個のデータ・ポ
イントがある場合は、1 ポイントあ
たりの待ち時間を 1 ms に設定し、
電圧データまたは電流データを入力
します。
512 個を超えるデータ・ポイント
で波形を表現する場合:
図 3. N6705A のユーザ定義電圧の入力画面
図 4. 得られたユーザ定義電圧
4
捕捉された波形データが最初から
512 メモリ・ポイントより長い場合
は、ほとんど変化のない波形部分に
対して波形の待ち持続時間を選択的
に調整することにより、データを圧
縮して、必要なメモリ量を減少でき
ます。図 3 と図 4 に示した波形は、
この方法の良い例です。この場合は、
適切な待ち時間を設定することによ
り、4 個のデータ・ポイントで完全
な波形を表現できます。
以下に、この変換を行うサンプル・アルゴリズムを示します。
1. 初期電圧しきい値 Vinc を選択します(これは、0.02 V などの小さい電圧になります)。
2. オシロスコープ・データをソートして(1)電圧リストと(2)待ち時間リストを作成します。
以下の方法を使用してリスト値を作成します。
a. 最初の電圧リスト(ylist(0))値を 1 番目のオシロスコープ・データ値に等しく設定します。
b. オシロスコープ・データから、前の電圧リスト値との差が Vinc より大きい次の値を見つけて、
以下を実行します。
i. このオシロスコープ・データの電圧値に等しい次の電圧リスト・ポイントを作成します。
ii. 前の電圧リスト・ポイントの待ち時間リスト値を、現在のオシロスコープ・データ・ポイン
ト時間から前のオシロスコープ・データ時間までの時間差に設定します。
c. 次のオシロスコープ・データ値に進みます。
d. リストのポイントまたはオシロスコープ・データがなくなるまで、ステップ b ∼ c を繰り返し
ます。
3. 結果の波形電圧リスト・ポイントの数が 450 から 512 の範囲になるまで、異なる Vinc 値を使っ
て反復しながら、上記を繰り返します。Vinc が小さすぎると、圧縮データ・ポイントが多くなり
過ぎます。Vinc が大き過ぎると、圧縮波形とオシロスコープ・データの近似が良くなりません。
電圧
長い波形の場合は、さらにアルゴリ
ズムを用いて、メモリ要件を減少で
きる場合があります。例えば、オシ
ロスコープ・トレースを捕捉すると、
通常、大量のデータが存在します。
アルゴリズムを使用して、長いオシ
ロスコープ・データをポイント/待
ち時間リスト・フォーマットに圧縮
できます。
N6705A の arb のリスト・ポイント ylist(n), dwell(n)
オシロスコープの電圧ポイント ypts(n), xypts(n)
時間
図 5. 30 個のオシロスコープ・データ・ポイント(ypts, xpts)を 7 個の電圧/待ち時間データ・ポイント
(ylist, dwell)に圧縮
5
このアルゴリズムは、内蔵 VBA を
使用して Microsoft Excel で簡単に
実現できます。図 6 に、このコード
の一部を示します。
データを 512 個以下のポイントに圧
縮 し た 後、Excel を 使 用 し て、
N6705A で使用される適切なフォー
マ ッ ト に 調 整 で き ま す。Excel で、
A3 から始まる列 A(行 1 および行 2
はコメント用に予約されています)
に電圧ポイントを持つ新しいワーク
シートに、電圧列と待ち時間列を入
力(またはコピー)します。Excel が
このデータを浮動小数点表記で表示
し て い る こ と を 確 認 し ま す。
N6705A は、データが“x.y”フォー
マットであると仮定するので、その
他のフォーマットでは、ファイルを
正しくインポートできません。
対応する待ち時間が列 B にリストさ
れます。最後に、3 番目の列 C を使
用して、そのセグメントのスタート
でトリガを発行するかどうかを指示
します。1 に設定すると、トリガが、
その波形ステップで外部トリガ・ポ
イントまたはデジタル I/O ポート経
由で発行されます。適切なファイル・
フォーマットについては、図 7 を参
照してください。
図 6. VBA コードによるアルゴリズム処理
ファイルをカンマ区切りテキスト
(.csv)フォーマットで保存します。
図 7. N6705A のユーザ定義波形のフォーマット
6
N6705A へのデータの転送
波形の再生
波形データが .csv ファイルになれ
ば、2 つの異なる方法で N6705A に
入力できます。
データを N6705A のメモリにロード
した後、N6705A を使用してユーザ
定義電圧として再生できます。図 7a
と図 7b を参照してください。
●
矢印キーを使用して User Defined
Voltage を選択し、Properties ボ
タンを押します。
●
矢印キーを使用して Import を選
択し、ファイル・ブラウザを使用
して、.csv ファイルを検索しイン
ポートします。
●
チ ャ ネ ル を オ ン に し た 後、Arb
Run/Stop を押して arb を起動し
ます。
USB フラッシュ・ドライブの使用
.csv ファイルを N6705A に転送する
一番簡単な方法は、USB フラッシュ・
ドライブを使用する方法です。作成
した .csv ファイルをフラッシュ・ド
ライブに保存します。フラッシュ・
ドライブを N6705A のフロント・パ
ネルの USB コネクタに接続し、ファ
イルを N6705A のメモリにコピーし
て保存します。
●
●
N6705A Arb ボタンを 2 回選択し
て、Arb Selection 画面を表示し
ます。
適 切 な カ ラ ー・ コ ー ド 化 さ れ た
Select Output ボタンを押して、
使用するチャネルを選択します。
Web ブラウザの使用
.csv ファイルを N6705A に移動する
第 2 の方法は、Web ブラウザを使用
する方法です。Web ブラウザを開き、
N6705A の IP アドレス(またはホス
ト名)
を入力して、“Get Data”タブ
を選択します。“Get Data”ウィン
ドウで、PC 上のローカル・ファイ
ルを見つけて、N6705A のメモリに
転送します。
図 7a. Arb Selection 画面
図 7b. User Defined Properties 画面
7
以下は、元の波形(図 8)と、N6705A
で再生された波形(図 9)です。
SCPI コマンドを使用した
プログラミング
前述の .csv 波形ファイルを転送して
起動する方法は、ベンチ環境では非
常に便利です。しかし、波形のダウ
ンロードと起動を自動化したい場合
もあります。トランジェント波形を
プログラムでダウンロードして起動
す る に は 別 の 方 法 が あ り ま す。
N6705A は、ユーザ定義波形のダウ
ンロードとセットアップを支援する
ために複数の SCPI コマンドを提供
しています。これらのコマンドにつ
いては、表 1 のリストを参照してく
ださい。コマンドの完全なリスト、
およびプログラムによる任意波形の
セットアップと実行の詳細について
は、プログラミング・リファレンス
を参照してください。
図 8. オシロスコープによって捕捉された元の
トランジェント信号
図 9. N6705A により再生されたトランジェント
信号
8
表 1. ARB のユーザ定義波形の主な SCPI コマンド。完全なリストについては、プログラミング・リファレンス
を参照してください。
まとめ
自動車の電力システムは、非常に厳
しい電気環境です。自動車の電子機
器の良好な動作は、十分な電力トラ
ンジェント・イミュニティに依存し、
自動車の電子機器の重要性から、徹
底的な ECU テストが必要不可欠で
す。
今後の使用、および長期サポートと
ECU の再検査用に、トランジェン
ト信号のライブラリを開発し、アー
カイブできます。
N6705A DC 電源/アナライザの詳
細については、Agilent の Web サイ
ト(www.agilent.co.jp/find/n6705a)
をご覧ください。
これに対応するために、N6705A DC
電源/アナライザは、電力システム
のトランジェント信号を簡単に捕捉
して再生することができ、テスト時
間の短縮、ECU のテスト・カバレー
ジの向上が可能です。また N6705A
を使用すると、独自のトランジェン
ト波形を作成し、後で再生できます。
9
メモとしてお使いください
10
メモとしてお使いください
11
アジレント・テクノロジー株式会社
電子計測UPDATE
Remove all doubt
www.agilent.co.jp/find/emailupdates-Japan
Agilent からの最新情報を記載した電子メー
ルを無料でお送りします。
www.agilent.co.jp/find/agilentdirect
測定器ソリューションを迅速に選択して、使
用できます。
www.agilent.co.jp/find/open
Agilent は、テスト・システムの接続とプロ
グラミングのプロセスを簡素化することによ
り、電子製品の設計、検証、製造に携わる
エンジニアを支援します。Agilent の広範囲
のシステム対応測定器、オープン・インダス
トリ・ソフトウェア、PC 標準 I/O、ワールド
ワイドのサポートは、テスト・システムの開発
を加速します。
www.lxistandard.org
アジレント・テクノロジーでは、柔軟性の
高い高品質な校正サービスと、お客様のニ
ーズに応じた修理サービスを提供すること
で、お使いの測定機器を最高標準に保つお
手伝いをしています。お預かりした機器を
お約束どおりのパフォーマンスにすること
はもちろん、そのサービスをお約束した期
日までに確実にお届けします。熟練した技
術者、最新の校正試験プログラム、自動化
された故障診断、純正部品によるサポート
など、アジレント・テクノロジーの校正・
修理サービスは、いつも安心で信頼できる
測定結果をお客様に提供します。
本社〒 192-8510 東京都八王子市高倉町 9-1
計測お客様窓口
受付時間 9:00-19:00(土・日・祭日を除く)
FAX、E-mail、Web は 24 時間受け付けています。
TEL ■■ 0120-421-345
(042-656-7832)
FAX ■■ 0120-421-678
(042-656-7840)
Email
電子計測ホームページ
www.agilent.co.jp
また、お客様それぞれの技術的なご要望や
ビジネスのご要望に応じて、
●
アプリケーション・サポート
●
システム・インテグレーション
導入時のスタート・アップ・サービス
教育サービス
●
●
など、専門的なテストおよび測定サービス
も提供しております。
[email protected]
●
記載事項は変更になる場合があります。
ご発注の際はご確認ください。
Copyright 2008
アジレント・テクノロジー株式会社
世界各地の経験豊富なアジレント・テクノ
ロジーのエンジニアが、お客様の生産性の
向上、設備投資の回収率の最大化、測定器
のメインテナンスをサポートいたします。
詳しくは:
www.agilent.co.jp/find/removealldoubt
LXIは、GPIBのLANベースの後継インタフェ
ースで、
さらに高速かつ効率的なコネクティ
ビティを提供します。Agilentは、LXIコンソー
シアムの設立メンバです。
February 4, 2008
5989-7763JAJP
0000-00DEP
Fly UP