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PDFファイル - 應用外語系日文組

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PDFファイル - 應用外語系日文組
高 苑 科 技 大 學
Kao Yuan University
院別:商業暨管理學院
系別:應用外語系
學制:日間部 4 年制大學部
102 學年度 專題研究報告
題目:
(日) 台湾の「鬼月」
(中) 台灣的「鬼月」
研究組員
學號
姓名
學號
姓名
4099103476
王韋翔
4099103605
曾琬婷
4099103663
陳楓謹
4099103586
邱佳玉
4099103463
盧郁欣
4099103563
蕭蕙玲
4099103518
劉人豪
4099102445
李盈澤
指導老師:佐藤 健
中華民國 102 年 12 月
高 苑 科 技 大 學
Kao Yuan University
院別:商業暨管理學院
系別:應用外語系
學制:日間部 4 年制大學部
102 學年度 專題研究報告
題目:台湾の「鬼月」
研究組員:李盈澤、劉人豪、邱佳玉、蕭蕙玲、
盧郁欣、陳楓謹、曾琬婷、王韋翔
指導老師:
(親自簽名)
經 審 查 合 格 特 此 證 明
專題審查委員:
召集人:
委員:
委員:
委員:
委員:
(親自簽名)
(親自簽名)
(親自簽名)
(親自簽名)
(親自簽名)
中華民國 102 年 12 月 14 日
目次
序論(王韋翔) ..................................................................................................................................... 1
第一章 台湾の旧暦七月(邱佳玉)................................................................................................ 2
第二章 「鬼月」................................................................................................................................. 7
2-1「鬼月」とは(劉人豪)....................................................................................................... 7
2-2「鬼門開關」 ........................................................................................................................... 8
2-2-1「鬼門開關」とは........................................................................................................ 8
2-2-2「鬼門開關」に関わりのある神............................................................................... 9
2-3「鬼門開關」の際に行われる儀式(李盈澤)................................................................ 11
2-3-1「鬼門開」の儀式...................................................................................................... 11
2-3-2「鬼門關」の儀式...................................................................................................... 13
2-3-3「城隍爺」について ................................................................................................. 16
第二章 まとめ........................................................................................................................... 18
第三章「中元普渡」........................................................................................................................... 19
3-1 「中元普渡」とは(盧郁欣)........................................................................................... 19
3-1-1 「中元」 .................................................................................................................... 20
3-1-2 「普渡」 .................................................................................................................... 21
3-1-3 「普渡」と「盂蘭盆會」 ....................................................................................... 22
3-2「中元普渡」の二種類(蕭蕙玲) .................................................................................... 23
3-2-1 「私普」 .................................................................................................................... 23
3-2-2 「公普」 .................................................................................................................... 24
3-3「大士爺」.............................................................................................................................. 25
3-4 「中元普渡」関連の祭礼................................................................................................... 27
3-4-1 「中元普渡」関連の祭礼一覧............................................................................... 27
3-4-2「中元普渡」の供え物と祭礼の対象(陳楓謹) ................................................ 31
3-4-3「中元普渡」の祭礼におけるタブー..................................................................... 33
3-5 「中元普渡」関連の特に有名な祭礼 .............................................................................. 34
3-5-1「放水燈」
(灯籠流し)
(王韋翔)......................................................................... 34
3-5-2 「搶孤」 .................................................................................................................... 34
3-6「中元普渡」で燃やされる「紙錢」 ................................................................................ 36
3-6-1「紙錢」の由来.......................................................................................................... 36
3-6-2「紙錢」の種類.......................................................................................................... 36
3-6-3 現代の「紙錢」........................................................................................................ 38
第三章 まとめ........................................................................................................................... 40
第四章 「鬼月」関連の禁忌(曾琬婷)........................................................................................ 40
結論(王韋翔) ................................................................................................................................... 44
参考文献(劉人豪)........................................................................................................................... 45
序論
最近、台湾にも外国から旅行者が大勢訪れるようになった。旅行で訪れる以外に、結婚
や仕事の関係で台湾に居留している外国人も多い。台湾は宗教観や文化の異なる多くの民
族が集まった国なので、 ユニークな文化と習俗を持つ国になった。中国、台湾でも日本で
も「郷に入っては郷に従え」という諺があるように、台湾へ来たからには、台湾の習俗を
さらに知ったほうが良い。
このレポートは、我々にとって最も親しい外国人である日本人に、台湾の旧暦の七月に
関する習俗を日本語で紹介することを目的としている。 まず、台湾では旧暦の七月が「鬼
月」という呼び名で呼ばれていることから始め、台湾に住んでいる日本人または台湾に少
しでも興味のある日本人に、さらに「鬼月」について理解してもらえるように、その期間
中に行われる祭祀や習俗について説明し、してはいけないタブーとされる禁忌についても
多少述べたい。
このレポートの構成は以下のようになっている。まず、第一章では、台湾で旧暦の七月
にどのような祭礼が行われるかについて、代表的なものを紹介する。次に、第二章では、
「鬼月」とはどのような期間であるかについて説明し、
「鬼月」の始めと終わりに行われる
儀式と、関連した神について述べる。そして、第三章では、
「鬼月」の期間中に行われる最
も大切な祭礼である「中元普渡」について、関連事項も含めて詳しく紹介する。最後に、
第四章では「鬼月」の期間のさまざまな禁忌を説明する。
1
第一章 台湾の旧暦七月
台湾では昔からいろいろな祭礼1が行われているが、その中で旧暦2七月(鬼月)に行わ
れる代表的な祭礼を、張(1999:157-189)3と各種のウェブサイトを参考にして、以下の
ように整理してみた。
表 1 旧暦七月に行われる祭礼4
日にち:祭礼
特徴と由来
旧暦七月一日:
「鬼門開」
5
旧暦七月の様々な祭
礼に先立ち、寺廟では
「鬼門開」という儀式
が行われる。一般に
「好兄弟」6 と呼ばれ
る死者の霊がこの世
に戻って来て、供え物
を食べたり、行動し始
める。
旧暦七月七日:
「拜床母」7
「床母」と呼ばれるベ
ッドの神に対する祭
祀が行われる。
「床母」
は、特に十五歳以下の
娘を持つ母親にとっ
ては、娘の成長を見守
る守り神である。
1
本稿では、神などを祀る「祭祀」と、祭祀の際に慣習として行われることになっている「儀礼」を合わせて、
「祭礼」という言葉を使っている。
2
中国の伝統的な暦法で、夏暦、農暦、陰暦、旧暦などの呼び名があるが、台湾では「農曆」と呼ばれる。
3
張逸堂(1999)『拜出好運來 好運旺旺來』研智有限公司
4
筆者作成。表中の日本語はすべて筆者訳である。
5
『蘋果日報』「鬼門開」http://www.appledaily.com.tw/realtimenews/article/new/20130807/238591/ 2013.10.25
6
「好兄弟」については、第二章の 2-1 で説明している。
7
『臺灣大百科全書』「拜床母」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=11710 2013.10.22
2
旧暦七月七日:
「七夕」1
旧暦の七月七日は「七
夕」で、昔はその伝統
にもとづき「牛郎」と
「織女」を祭祀してい
た。しかし、現在では、
若い男女が共に過ご
す「情人節」と呼ばれ
る恋人の日になって
いる。
旧暦七月七日:
「七星娘娘」2
「七星娘娘」という女
の子の守り神に対す
る祭祀が行われる。一
般に十六歳以下の子
供は「七星娘娘」の守
護を受けると言われ
ている。
旧暦七月十五日:
「中元普渡」3
毎年旧暦七月十五日4
は、通称「中元節」5と
呼ばれ、元々中国では
道教の祭祀の日だっ
たのが、他に感動的な
民間伝説が加わって、
死者の霊を供養する
ための祭祀が行われ
るようになった。これ
を「普渡」6という。
1
『七夕』「牛郎織女」http://park.org/Taiwan/Culture/Arts/Cyears/b235/index.htm 2013.10.22
『台東代天玉世宮』
「七星娘娘」http://www.gsk.org.tw/gsk/mod/resource/view.php?id=52 2013.10.22
3
筆者撮影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
4
『人鬼同歡嘉年華會─中元節』
「中元普渡」http://163.21.249.211/ctps/country/holiday/hldy_b/hldy_b7.htm 2013.11.08
5
「中元節」については、第三章の 3-1 で詳しく説明している。
6
「普渡」については、第三章の 3-1 で詳しく説明している。
2
3
旧暦七月十八日:
「王母娘娘聖誕」1
「王母娘娘」または通
称「瑤池金母」と言わ
れる神の生誕を祝う
日で、各地の「王母娘
娘」廟で供え物が捧げ
られる。
旧暦七月十九日:
「太歲神生日」2
「太歲爺」という神の
生誕を祝う日である。
干支3 によって六十の
「太歲爺」がいて、そ
れぞれ生誕の日も異
なるが、台湾の寺廟で
は旧暦七月十九日を
「太歲神生日」と定め
ている。現在では、こ
れを家庭で祝うこと
は少なくなっている。
4
1
『王母娘娘』
「趨勢 life」http://www.trendmoto.com.tw/moto/front/bin/ptdetail.phtml?Part=2010081101 2013.10.22
『慈航山三清聖境』「太歲神」http://www.cihhang.org.tw/show_darshan.asp?seq=6647 2013.10.22
3
十干と十二支を組み合わせた 60 を周期とする数詞。暦を始めとして、時間、方位などに用いられる。日本語
版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「干支」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B2%E6%94%AF
2013.12.25
4
中文版自由的百科全書
『維基百科
(Wikipedia)
』
「太歲神」http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E6%AD%B2
2013.12.24
2
4
旧暦七月二十日:
「義民節」1
台湾の客家の祭りで、
豚の大きさを競い、供
え物として神に捧げ
る「賽神豬」という儀
式がよく知られてい
る。
旧暦七月二十三日:
「法主公誕辰」2
「法主公」3 というの
は中国の福建から来
た神で、台湾ではお茶
の守り神として知ら
れている。「法主公」
の生誕を祝って、お茶
を売る店で供え物が
捧げられる。
旧暦七月二十四日:
「國姓爺誕辰」4
「鄭成功」という明朝
5
時代の有名な人物の
生誕を祝う日である。
「鄭成功」は台湾の英
雄で、「國姓爺」とも
呼ばれ、台湾各地の
「國姓爺」廟で祭礼が
行われる。
1
『臺灣大百科全書』
「義民爺」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=6269 2013.10.22
『朝聖』
「法主公」http://www.chaosheng168.com.tw/html/pdt.asp?id=788&menu 2013.10.22
3
『臺灣大百科全書』「法主公」
http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=6264&Keyword=%E6%B3%95%E4%B8%BB%E5%85%AC 2013.10.22
4
『自由電子報時報』「國姓爺」http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/feb/14/today-life15.htm 2013.10.22
5
「明(みん、1368 年~1644 年)は中国の歴代王朝の一つである。明朝あるいは大明とも号した。」以上、日
本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「明」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E 2013.11.26
2
5
旧暦七月最終日:
「鬼門關」1
旧暦七月の最終日2 に
「鬼門關」という儀式
が行われ、「好兄弟」
と呼ばれる死者の霊
は冥界に帰って行く。
以上、台湾で旧暦七月に行われる代表的な祭祀を簡単に紹介した。
なお、以下の第二章以降では、そのうち「鬼月」3の由来である「鬼」と特に関連が深い
「鬼門開」と「鬼門關」
、さらに「中元普渡」を中心に紹介する。
1
『中文百科在線』
「鬼門關」http://www.zwbk.org/MyLemmaShow.aspx?zh=zh-tw&lid=90202 2013.10.22
「東洋の太陰太陽暦では月の日数である大小(大月三十日、小月二十九日)が年により異なるため、七月二十
九日までで七月三十日は存在しない年もある。」以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「七月 (旧暦)」http://ja.wikipedia.org/wiki/7%E6%9C%88_(%E6%97%A7%E6%9A%A6) 2014.01.20 このように、
旧暦七月の最終日は二十九日の年もあるし、三十日の年もあるため、本稿では旧暦七月の「最終日」という表現
をする。
3
「鬼月」については、第二章の 2-1 で詳しく説明している。
2
6
第二章 「鬼月」
以下では、まず「鬼月」とは何かを説明し、
「鬼月」の始まりと終わりに行われる「鬼門
開關」という儀式について述べる。
2-1 「鬼月」とは
台湾では、旧暦七月は「鬼月」とも呼ばれる。
「鬼月」について、
「台灣民族文化室」と
いうウェブサイト1は以下のように述べている。
旧暦七月の俗称は「鬼月」と言い、その時期になると「孤魂野鬼」がこの世に戻って
来て、人々に祭祀される。一般の台湾人の多くは「鬼月」の期間中に重要なことを行う
のを避け、不動産や自動車売買、婚姻、内装業などは閑散期となる。
(筆者訳)
「孤魂野鬼」というのは、台湾で一般には「鬼」と呼ばれるもので、その「鬼」が冥界
からこの世に戻って来る月ということで、旧暦の七月は「鬼月」と呼ばれる。この「鬼」
を野口(2000:134)2は「祀り手のない霊魂」と定義している。また、五十嵐(2006:58)
では「鬼魂」という言葉を使い、それを「冥界への道程に潜んでいる浮かばれない死者の
3
霊魂」と述べているが、
「鬼魂」も「鬼」も同じものを指す。台湾では、一般には「鬼」と
いう言葉がよく使われている。
では、なぜ台湾では「鬼」
(または「鬼魂」
)と呼ばれる「祀り手のない霊魂」
、つまり、
誰からも祀ってもらえない死者の霊に対する祭祀が行われるのだろうか。野口(2000:
262-263)4は、以下のように述べている。
たとえば現在でも台湾では、祀り手のない無縁仏のうち、特に交通事故、溺死、火災
死、転落死、謀殺、自殺、首吊りあるいは疫病で死んだ者、死んで骨をさらしていたり
溺死して流されたままなっている者等は、怨霊が凝り固まり、霊が強く害をなすことが
最も激しいと考えられている。彼らは身代わりを見つけない限り、地獄の苦しみから救
われることはできないため、人にもたたりやすく、そのこともあって人々に最も恐れら
れている。
以上のように、
台湾では祀り手のない死者の霊が恐れられていることがわかる。
それで、
それらの「鬼」または「鬼魂」をなだめるために、丁重に祭祀が行われる。
このように、台湾では「鬼」または「鬼魂」は恐怖の対象であるため、
「鬼」や「鬼魂」
という呼び名を使って直接呼びかけることを避けるために、
「鬼」や「鬼魂」に代わって、
「好兄弟」という呼び名が一般に使われている。以下、本稿では日本語で「死者の霊」と
表記する以外に中国語で「好兄弟」と表記する場合もあるが、どちらも中国語の「鬼」や
「鬼魂」
、つまり、誰からも祀ってもらえない死者の霊という意味で使っている。
1
2
3
4
『台灣民俗文化研究室』「台灣民俗」http://www.web.pu.edu.tw/~folktw/folklore/folklore_b10.htm 2013.11.21
野口鐵郎(2000)『道教の教団と儀礼』雄山閣 p.134
五十嵐真子(2006)『現代台湾宗教の諸相』人文書院 p.58
野口鐵郎(2000)『道教の教団と儀礼』雄山閣 p.262-263
7
2-2 「鬼門開關」
2-2-1 「鬼門開關」とは
第一章で述べたように、旧暦七月の一日と最終日には寺廟で「鬼門開關」という儀式が
行われ、それが「鬼月」の始まりと終わりになる。この「鬼門開關」について、
「臺灣大百
科全書」というウェブサイト1は以下のように説明している。
民間信仰では、旧暦の七月は「鬼月」という俗称で呼ばれる。旧暦七月の初日に「鬼
門開」という儀式が行われると、この時に地藏王2が管轄している地獄の門(鬼門)が開
き、
死者の霊がこの世に戻って来て、
存分に食べたり飲んだりして自由に行動し始める。
地藏王というのは、地獄を管轄する神で、死者の霊は「好兄弟」という俗称で呼ばれて
いる。
(中略)一般的にこれは冥界で行われるものとされ、この世では特に儀式は行われ
ない。だが、納骨堂のある一部の廟では旧暦七月の初日に門を開けて、最終日に門を閉
めて鍵をかけるまで門は開けたままにしておき、祭祀に訪れる民衆の便に供する。門が
開いている一か月間は、引越しや結婚などは禁忌として避けられる。
「鬼門關」という儀
式は旧暦七月の最終日に行われ、一か月間この世で供え物を食べ尽くした死者の霊は冥
界に帰らなければならず、その後地藏王によって門が閉められる。現在では「鬼門開關」
という儀式をあまり重視しない人も多く、地藏王を祭祀する人はさらに少なくなった。
(筆者訳)
以上のように、旧暦の七月一日に冥界に通ずる門が開き、死者の霊がこの世に戻って来
るのを「鬼門開」
、旧暦七月最終日に死者の霊が冥界に帰って行くのを「鬼門關」と言い、
その間の一か月は「鬼門」が開いたままになっているため、
「好兄弟」と呼ばれる死者の霊
がこの世に戻って来ていると考えられている。現在では、この門を開け閉めする「鬼門開
關」という儀式はあまり重視されなくなったが、旧暦の七月は「鬼月」と呼ばれ、今でも
多くの人が引越しや結婚を禁忌として避けている。
図 1 「開鬼門」3
1
『臺灣大百科全書』「開關鬼門」
http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=11724&Keyword=%E9%AC%BC%E6%9C%88 2013.11.21
2
「地藏王」については、第二章の 2-2-2 で詳しく述べている。
3
『台灣鄉土民俗廟會攝影』「開鬼門」http://a0963188a.blogspot.tw/2013/09/blog-post_11.html 2013.11.22
8
2-2-2 「鬼門開關」に関わりのある神
上の 2-2-1 では「鬼門開」の際に「鬼」を管轄する「鬼神」として、地獄の門(鬼門)
の開け閉めをしている「地藏王」という神について書いた。
「地藏王」は日本語で地蔵菩薩
と呼ばれ、本来は仏教の信仰対象である菩薩の一尊であるが、これについて日本語版フリ
ー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
』1は以下のように述べている。
サンスクリット語ではクシティ・ガルバと言う。仏教の信仰対象である菩薩の一尊。
クシティは「大地」
、ガルバは「胎内」
「子宮」の意味で、意訳して「地藏」と言う。ま
た持地、妙憧、無辺心とも訳される。
(中略)
大地が全ての命を育む力を蔵するように、苦悩の人々をその無限の大慈悲の心で包み
込み、救う所から名付けられたとされる。一般的には「子供の守り神」として信じられ
ており、よく子供が喜ぶお菓子が供えられている。
このように、日本において地蔵菩薩は仏教の菩薩の一つで、一般的に、子供の守り神と
して信じられている。
一方、台湾における「地藏王」に対する信仰は、中国からの影響を受けていると考えら
れるが、中国における地蔵菩薩信仰について、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)
』2は以下のように述べている。
道教の十王思想3と結びついて、中国においては地蔵菩薩が閻魔または十王の一尊とし
ての閻魔王と同一の存在であるという信仰が広まった。閻魔王は地蔵菩薩として人々の
様子を事細かに見ているため、綿密に死者を裁くことができるとされ、泰山王とともに
十王の中心に据えられた。
このため中国においては地藏王菩薩と呼ばれ、主に死後の(地獄からの)救済を願っ
て冥界の教主として信仰される。
(中略)
明の民間説話である『西遊記』でも冥界を司る地藏王菩薩が孫悟空(斉天大聖)の暴
れっぷりを地獄から天の玉皇大帝に上奏する場面が描かれている。
このように、中国では「地藏王菩薩」と呼ばれ、日本の地蔵菩薩とは違って道教の十王
思想と結びついており、
死後の救済を願う冥界の教主として信仰されていることがわかる。
これが中国から台湾に渡って、冥界にいる死者の亡霊を救ってくれる神、つまり「鬼門開
關」の際に地獄の門(鬼門)の開け閉めを管轄する「地藏王」として「鬼月」の最も重要
な「鬼神」になったと考えられる。
1
日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「地蔵菩薩」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E8%94%B5%E8%8F%A9%E8%96%A9 2013.11.08
2
同註 1
3
「十王とは、道教や仏教で、地獄において亡者の審判を行う 10 尊の、いわゆる裁判官的な尊格である。」以
上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「十王」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E7%8E%8B 2013.11.14
9
図 1 「地藏菩薩」1
1
『臺灣大百科全書』「地藏王菩薩」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=4446 2013.12.03
10
2-3 「鬼門開關」の際に行われる儀式
「鬼月」の始まりと終わりになる「鬼門開關」について、
「鬼門開」と「鬼門關」に分け
て、それぞれに関連した儀式を紹介する。
2-3-1 「鬼門開」の儀式
まず、
「鬼門開」はどのように行われるのだろうか。
「鬼門開」は「開龕門」1とも呼ばれ、
台湾では基隆の老大公廟で行われる「雞籠中元祭」という祭礼の「開龕門」が最も有名で
ある。
「雞籠中元祭」の際に行われる「開龕門」
(
「鬼門開」と同義)について、中国語版フ
リー百科事典『維基百科(Wikipedia)
』2の内容を以下のように整理してみた。
表 1 「開龕門(鬼門開)
」の儀式3
図 1 楽団の演奏により祭礼が始まる4
図 2 廟の信徒を中心とした参加者5
図 3 供え物を捧げて供養する6
図 4 市長が「錦盒」7を廟の代表者に渡す8
1
「龕」というのは、石窟や家屋の壁面に設けたくぼみのことである。
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「雞籠中元祭」
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%9E%E7%B1%A0%E4%B8%AD%E5%85%83%E7%A5%AD 2013.11.23
3
筆者作成
4
『傳統藝術中心入口網』「傳藝新聞」
http://www.ncfta.gov.tw/ncfta_ce/c05/c05020510.aspx?E=SWRlbnRpdHlJRD01NTEmUGFnZUluZGV4PTI3 2013.12.12
5
『陳碧岩影像實記』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-5〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-5_18.html
2013.12.12
6
『陳碧岩影像實記』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-4〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-4_17.html
2013.12.12
7
「錦盒」とは大切な品物を保存する箱である。
8
同註 6
2
11
図 5 「開龕門」の時間と代表者の名前を名簿に
図 6 「龕門」を開ける鍵2
登録する1
図 7 「龕門」を開ける3
図 8 「龕門」が開いて、
「開龕門」の儀式
が終わる4
以上のように、
「開龕門(鬼門開)
」の儀式は「鬼月」の始まりを告げるもので、この門
が開けられることによって、死者の霊(鬼)がこの世に戻って来ると考えられているので、
この「開龕門(鬼門開)
」の儀式は丁重に行われる。現在では「開龕門(鬼門開)
」の儀式
を見られる寺廟は少なくなったが、ここで紹介した基隆の老大公廟で行われる「雞籠中元
祭」では、
「開龕門(鬼門開)
」に多くの人が集まり、注目を集めている。
1
『基隆中元祭』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-5〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-5_18.html
2013.12.12
2
『痞客邦 PIXNET』「開啟龕門的鑰匙」http://billylo.pixnet.net/blog/post/35574862-2011%E5 2013.12.12
3
同註 1
4
同註 1
12
2-3-2 「鬼門關」の儀式
以下でも、基隆の老大公廟で行われる「雞籠中元祭」を例に、旧暦七月(鬼月)の最終
日に行われる「關龕門」
(
「鬼門關」と同義)の儀式について、2012 年九月の「蘋果日報」
のウェブ記事1の内容を整理してみた。
表 1 「開龕門(鬼門開)
」の儀式2
図 1 道士が死者の霊に冥界に帰るように呼 図 2 市長が「錦盒」を廟の代表者に渡す4
びかける儀式3
図 3 「錦盒」を持った代表者5
図 4 「關龕門」の時間と代表者の名前を名簿
に登録する6
1
『蘋果日報』「鬼月結束「關龕門」老大公廟發爐」
http://www.appledaily.com.tw/realtimenews/article/life/20120916/142669/applesearch/ 2013.12.11
2
筆者作成
3
『陳碧岩影像實記』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-3〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-3_17.html
2013.12.13
4
『陳碧岩影像實記』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-4〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-4_17.html
2013.12.13
5
同註 4
6
同註 3
13
図 5 「龕門」を閉める鍵1
図 6 「龕門」を閉める2
図 7 「龕門」が閉じて、
「關龕門」の儀式が終わる3
このような旧暦七月最終日の「鬼門關」の儀式が終わった後も、まだこの世に残って供
え物を食べて帰ろうとしない死者の霊が多くいる。そこで、そのような死者の霊が人に危
害を加えないように、
「城隍爺」という神に祈るための「城隍爺4夜巡」という儀式が翌日
の旧暦八月一日に行われる。
「城隍爺夜巡」とは、
「城隍爺」という神とその使者が旧暦八月一日の夜に町を巡回する
というもので、最も有名なのは嘉義の城隍廟という廟で行われる。以下では、
「城隍爺夜巡」
の儀式の様子を、2013 年九月の「YAHOO 奇摩新聞」のウェブ記事5をもとに表に整理して
みた。
1
『陳碧岩影像實記』「基隆中元祭《完》---老大公廟關龕門〈5-5〉」http://piyenchen.blogspot.tw/2012/09/5-4_17.html
2013.12.12
2
同註 1
3
同註 1
4
「城隍爺」については、次の 2-3-3 で詳しく述べている。
5
『YAHOO 奇摩新聞』「久違 50 年農曆八月初一嘉義城隍夜巡抓流浪鬼」http://goo.gl/gCii7v 2013.12.08
14
表 1 「城隍爺夜巡」の儀式の様子1
図 2 「七爺八爺」3
図 1 参加者たち2
(右から「七爺」と「八爺」
)4
図 3 「八爺」が「鬼」に扮した人を捕まえる5
図 4 「鬼」に扮した人を監禁する車6
以上のように、旧暦七月最終日を過ぎてもまだ冥界に帰らずこの世の中に残っている死
者の霊に対して、
「城隍爺」という神が「城隍爺夜巡」と呼ばれる夜間の巡礼を行い、平安
を祈る。これは、冥界に帰らず居残った死者の霊を厄払いするという意味を持ち、この「城
隍爺夜巡」が終わったら、
「鬼月」も終わると言える。
1
筆者作成
『生活新聞文章頁』「睽違五十年 嘉義城隍夜巡諸羅風華再現」
http://news.tw.msn.com/living/%E7%9D%BD%E9%81%95%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%B9%B4-%E5%98%89%
E7%BE%A9%E5%9F%8E%E9%9A%8D%E5%A4%9C%E5%B7%A1%E8%AB%B8%E7%BE%85%E9%A2%A8%
E8%8F%AF%E5%86%8D%E7%8F%BE 2013.12.12
3
「「城隍爺」の部下である一対の神。専門は死者の霊を捕まえること。(筆者訳)」以上、中文版自由的百科
全書『維基百科(Wikipedia)』「黑白無常」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%91%E7%99%BD%E7%84%A1%E5%B8%B8 2013.12.08
4
『痞客邦 PIXNET』「JOY 藝術陣頭邀請表演 在 台北藝術大學」http://kuby01.pixnet.net/blog/post/25271975-joy
2013.12.12
5
『隨意窩 Xuite 日誌』「嘉義城隍廟迓暗(夜)香 @ 山神話風水」http://blog.xuite.net/mrt0405/blog/109460470
2013.12.08
6
同註 5
2
15
2-3-3 「城隍爺」について
上の 2-3-2 では、
「城隍爺」と呼ばれる神が冥界に帰らず居残った死者の霊を厄払いする
「城隍爺夜巡」という儀式について述べた。
「城隍爺」は本来、中国の神話における城壁と
堀を守る神であるが、この「城隍爺」について、
「臺灣大百科全書」というウェブサイト1は
以下のように述べている。
城と堀を守る神で、自然崇拝の対象に属する。中国の春秋時代2に書かれた『周禮‧蜡
祭』という本には、天子は八つの神を祭らなければならず、その中で七番目が「水庸」
という神だと記載されている。
「水」は「隍」を指し、城を守る(水のない)堀のことで
ある。
「庸」は「城」
、つまり人民を守る城壁のことである。このように、
「水庸」とは「城
隍之神」という意味で、敵を阻み民衆を守ってくれる堅固な城壁と堀に天子が感謝し、
崇拝の対象とした。
(筆者訳)
このように、天子が城壁と堀を祭祀するようになってから、
「城隍」は城壁と堀の守り神
になった。戦時に人民を敵から守ってくれるように祈願することによって、
「城隍」は次第
に「城隍爺」という呼び名で神格化されるようになった。
図 1 「城隍爺」3
故事伝説から始まって次第に神格化された後、
「城隍爺」はどのようにして台湾の「鬼月」
の最後の儀式を司る神になったのだろうか。陳(2007:355)4は以下のように述べている。
1
『臺灣大百科全書』「城隍爺」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=4443 2013.08.31
「紀元前 770 年から紀元前 403 年までである。」以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペデア(Wikipedia)』
「春秋時代」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E7%A7%8B%E6%99%82%E4%BB%A3 2013.11.28
3
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「城隍」 http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%8E%E9%9A%8D
2013.12.05
4
陳登武(2007)『從人間世到幽冥界:唐代的法制,社會與國家』五南圖書出版社 p.355
2
16
中国の唐朝時代に、地方役人の王簡易が病気になった。お腹の中に大きい腫瘍ができ
て、それが呼吸をするたびに上下に動いて内臓に当たり、ある夜、危篤状態になった。
しばらくして王簡易は意識を取り戻すと、妻に次のように話した。
「夢の中で、自称丁郢
という名前の神の使者に会った。その手中には冥界の公文書を持っていて、
『私は城隍爺
の命令で、王簡易さんを捕まえに来た』と言う。しばらく歩いて城隍廟に到着すると、
廟の門前にいた人が私を見て『王簡易はこの世で、多くの良いことをした。死ぬべきで
はないのに、なぜここに来たのか』と言った。そこで、私は城隍爺の方を見て「私は死
ぬべきではない」と言った。さらに、私を帰してくれるよう請うた。城隍爺は配下の者
に生死簿という本を持って来るように命じて、それから私に『おまえは後五年生きられ
るから、帰してやろう』と言った。
」
(筆者訳)
この話からわかるように、
「城隍爺」は城壁や堀の守り神であるだけではなく、冥界にお
ける人の生死を決める力も持っていることがわかる。このような伝説が伝えられて、台湾
でも、
「城隍爺」は冥界に帰らず居残った死者の霊を厄払いする神になったと考えられる。
図 2 生死簿を持った城隍爺1
1
『中文百科在線』「生死簿」http://www.zwbk.org/zh-tw/Lemma_Show/135076.aspx 2013.09.21
17
第二章のまとめ
第一節では、まず「鬼月」について述べた。
「鬼」とは、祀り手のない死者の霊を指し、
「孤魂野鬼」などの名称や、
「好兄弟」という俗称でも呼ばれる。旧暦の七月は、この「鬼」
がこの世に戻って来るとされる月で、
「鬼月」と呼ばれる。
第二節では、まず「鬼門開關」という儀式について述べた。
「鬼門」は冥界に通ずる門の
ことで、旧暦七月一日に「鬼門」が開いて、
「鬼」がそれを通ってこの世に戻って来て、旧
暦七月最終日に「鬼」が冥界に帰ると 再び「鬼門」が閉まる。この「鬼門開關」に関わり
のあるのが「地藏王」という神で、
「鬼門」の開け閉めを管轄する。これは、
「鬼月」期間
中の最も重要な「鬼神」である。
第三節では、
「鬼門開」と「鬼門關」の際に行われる儀式を具体的に述べた。どちらも、
死者の霊に対して丁重に祭祀が行われる。旧暦七月の最終日を過ぎて、
「鬼月」が終わって
も、まだ冥界に帰らない「鬼」に対しては、翌日の旧暦八月一日に「夜巡諸羅」という祭
礼が行われ、
「城隍爺」と呼ばれる神が巡礼して、この世に居残っている「鬼」を捕まえる
とされる。この「城隍爺」については、人の生死を決める力を持つ神であることを説明し
た。
18
第三章 「中元普渡」
本章では、旧暦の七月十五日に行われる「中元普渡」 という死者の霊を供養するための
祭祀について説明する。
3-1 「中元普渡」とは
台湾で「鬼月」に行われる祭祀の中で、最も盛大に行われるものが「中元普渡」である。
「中元普渡」というのは「中元節」に、
「普渡」という祭祀が行われるという意味だが、
「中
元節」の由来と意義、さらに「普渡」について、
「人鬼同歡的嘉年華會─中元節」というウ
ェブサイト1は以下のように述べている。
毎年旧暦七月十五日の「中元節」は俗に「中元普渡」とも呼ばれ、本来中国で道教の
信者が祖先を祭祀する日であった。(中略)
旧暦七月十五日の「中元節」と正月十五日の「上元節」および十月十五日の「下元節」
は、それぞれ「地官」「天官」「水官」という神(三神を合わせて「三界公」と呼ぶ)
の生誕を祝う日である。「中元節」になると、「地官」が人間の善行と悪行を考察する
ためにこの世へ来る。そこで、民間ではこの日に「地官」を祭祀する儀式が行われる。
また、この日は一般家庭で祖先に加護を祈る日でもある。
「普渡」とは、本来「鬼」を供養するという意味で、「三界公」との関係はない。し
かし、どちらも同じ日にちに行われるので、「地官」の生誕を祝う日と「鬼」を供養す
る「普渡」が一体化した。(筆者訳)
このように、
「三界公」の一つである「地官」の生誕を祝う日である「中元節」と、死者
の霊である「鬼」を供養する「普渡」が同じ日に行われ、二つが一体化したことがわかる。
図 1 「中元節」の儀式2
1
『人鬼同歡的嘉年華會─中元節』「中元普渡」http://163.21.249.211/ctps/country/holiday/hldy_b/hldy_b7.htm
2013.08.25
2
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
19
図 2 「中元普渡」1
3-1-1 「中元」
前節で述べた「三界公」は「三官大帝」とも呼ばれ、元々「中元節」に関係の深い神で
ある。三官大帝について、日本語版フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)
」2は、
以下のように説明している。
三官大帝は龍王の 3 人の娘と人間の「陳子椿」とのあいだに生まれた、龍王の孫であ
る。彼らの誕生日が、三元として祝われるようになった。
さらに、日本語版フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)
」3によると、三元とい
うのは、一年の中で上元・中元・下元の三つの日の総称で、元々は中国の道教の行事であ
る。それぞれの日付と、関わる道教の神は以下の表のとおりである。
表 1 「三元」それぞれの日付と、関わる道教の神4
三
元
上
元
中
元
下
元
日付(旧暦) 日付(新暦)
1 月 15 日
7 月 15 日
10 月 15 日
神
2 月上旬~
賜福大帝・
3 月上旬
天官大帝
8 月上旬~
赦罪大帝・
9 月上旬
地官大帝
11 月上旬~
解厄大帝・
12 月上旬
水官大帝
官職
化身
上元一品天官
堯
中元二品地官
舜
下元三品水官
禹
神徳
賜福
(福を与える)
赦罪
(罪を赦す)
解厄
(厄を祓う)
以上のように、
「三官大帝」を指す「天官」
、
「地官」
、
「水官」のうち、
「地官」は罪を赦
すという神徳を備えており、その誕生日を祝う旧暦七月十五日の「中元」には、死者が犯
したさまざまな罪が赦される贖罪の行事が催されるようになったと考えられる。
1
『ETtoday 東森新聞雲』「中元普渡」http://www.ettoday.net/news/20130827/262118.htm 2013.10.17
日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「三元」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%85%83 2013.12.12
3
同註 2
4
同註 2
2
20
図 1 「三界公」
(左から「水官」
「天官」
「地官」
)1
3-1-2 「普渡」
「中元普渡」というのは「中元節」に、
「普渡」という祭祀が行われるという意味だが、
ここでは「普渡」について、もう少し詳しく述べる。3-1 で「中元節」の由来と意義につ
いて述べたが、その際引用した「人鬼同歡的嘉年華會─中元節」というウェブサイト2は、
続けて「普渡」について以下のように述べている。
旧暦の七月は通称「鬼月」と呼ばれる。
(中略)祀り手のいる死者の霊は、人々に危害
を加えることがないが、誰からも祀ってもらえない死者の霊は違う。人々を「普渡」す
る(救済する)と誓った「地藏王菩薩」が、毎年旧暦七月一日に「鬼門」を開けると、
冥界にいる「鬼」が親友や子孫を訪ねて戻って来て、七月の最終日に再び冥界に戻るま
でこの世に居続ける。したがって、旧暦七月一日の「鬼門開」から最終日の「鬼門關」
までは、 人々は平安な生活を送り、
冠婚葬祭はもちろんみだりに行動するのを慎んで、
家庭では供え物を捧げなければならないとされている。 これらは、通称「好兄弟」を拝
む祭祀と呼ばれ、それが最高潮に達する旧暦七月十五日がいわゆる「中元節」に当たる。
この日、道教の道士たちが読経を行い、
「三牲四果」3と呼ばれる供え物を準備して、死
者の霊(好兄弟)を供養する。
「普渡」という祭祀を行う意義は、供え物を捧げて死者の
霊が人間に祟りをもたらすことを防ぐことにある。
(筆者訳)
以上を簡単にまとめると、旧暦の七月(鬼月)になってこの世に戻って来た死者の霊の
うち、祀り手のいない死者の霊(鬼)に供え物を捧げて供養することを「普渡」と言い、
それは旧暦の七月十五日の「中元節」の日に行われる。
1
『臺灣大百科全書』「三界公」
http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=11990&Keyword=%E4%B8%89%E5%AE%98%E5%A4%A7%E5%B8%9
D 2013.11.24
2
『人鬼同歡的嘉年華會─中元節』「中元普渡」http://163.21.249.211/ctps/country/holiday/hldy_b/hldy_b7.htm
2013.08.25
3
「三牲四果」については、第三章の 3-4-2 で詳しく説明している。
21
3-1-3 「普渡」と「盂蘭盆會」
上で述べたように、旧暦七月(鬼月)の十五日は、祀り手のいない死者の霊を供養する
日だが、
「普渡」以外に「盂蘭盆會」という名前で行われる場合もある。では、
「普渡」と
「盂蘭盆會」はどのような違いと共通点があるのだろうか。
中国語版フリー百科事典 「維基百科(Wikipedia)
」1によると、中国の南北朝2時代の初
代皇帝である梁武帝が、
「盂蘭盆會」という祭祀を行うようになったのが「鬼月」の始まり
で、それ以降、歴代の皇帝と人民の多くは仏教を信仰したため、
「盂蘭盆會」という祭祀に
よって父母や祖先に恩返しの念を伝えるようになったということである。続けて、
「維基百
科(Wikipedia)
」3は「したがって、この月(旧暦七月)は仏教の信者によって吉祥と孝行
の月であると考えられるようになった(中略)
。そして、宋4の時代になると、
「三教合流」
によって「中元節」と一体化して、祭礼の期間も長くなった。
(筆者訳)
」と述べている。
「盂蘭盆節」は本来仏教の祭祀であったが、
「三教合流」の影響で、
「中元節」と一体化し
たということがわかる。
中国語版フリー百科事典 「維基百科(Wikipedia)
」5によると、
「三教」とは儒教、道教、
仏教を指し、
「三教合流」というのは、その三つの思想がお互いに影響を与えるようになっ
たことを言う。
現在の台湾でも、
「三教合流」の影響から、
「三教」のうち特に道教と仏教が一体化して
いる部分が多く、台湾における「中元節」は道教と仏教の内容を包含している。その点に
ついて、中国語版フリー百科事典 「維基百科(Wikipedia)
」6は、
「旧暦七月十五日を、道
教では「中元節」
、仏教では「盂蘭盆節」
(略称「盂蘭節」
)と呼び、民間では「鬼節」また
は「七月半」という俗称でも呼ばれる。
(筆者訳)
」と述べている。台湾で一般に旧暦七月
(鬼月)十五日 の「普渡」の日を指して言う場合、
「中元節」という名称以外に、仏教の
影響を受けた「盂蘭盆會」という名称もある。しかし、一般の民衆は道教と仏教を特に区
別しないため、一般に「中元節」に行う「普渡」
、つまり「中元普渡」という言い方をする
人が多い。本稿でも、必要がある場合以外は、特に道教的側面と仏教的側面について区別
しないで論じている。
1
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「農曆七月」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B2%E6%9B%86%E4%B8%83%E6%9C%88 2013.12.08
2
「中国史における南北朝時代(なんぼくちょうじだい)は、北魏が華北を統一した 439 年から始まり、隋が中
国を再び統一する 589 年まで、中国の南北に王朝が並立していた時期を指す」以上、日本語版フリー百科事典『ウ
ィキペディア(Wikipedia)』「南北朝時代 (中国)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%8C%97%E6%9C%9D%E6%99%82%E4%BB%A3_(%E4%B8%AD%E
5%9B%BD) 2013.11.26
3
同註 1
4
「宋(そう、960 年~1279 年)は中国の王朝の一つである。趙匡胤が五代最後の後周から禅譲を受けて建国し
た。」以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「宋(王朝)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%8B_(%E7%8E%8B%E6%9C%9D) 2013.11.26
5
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「三教合流」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%95%99%E5%90%88%E6%B5%81 2013.12.08
6
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「中元節與盂蘭盆節」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%85%83%E7%AF%80 2013.12.08
22
3-2 「中元普渡」の二種類
3-2-1 「私普」
台湾で行われる「中元普渡」は、
「私普」と「公普」の二種類に分かれる。まず、
「私普」
という儀式について、
「臺灣大百科全書」というウェブサイト1は以下のように述べている。
規模が小さくて、家庭や個人で行うものを「私普」と言う。通常、旧暦の七月一日、
七月十五日、七月最終日に行われ、自分の家の入り口に肉、ご飯、果物、飲み物、菓子
などの供え物を置く。供え物を置くテーブルの下には、洗面器に入れた水を置き、その
上に新しいタオルを置く。テーブルの上には歯ブラシや歯磨き粉も置き、家の年長者か
ら順に線香を立てて拝む。各自線香を三本立てたあと、供え物全てに線香を立て、さら
に地面にも線香を立てなければならない。しばらく(線香が半分燃えるまで)してから、
「紙錢」2を燃やして祭祀が終了する。
(筆者訳)
図 1 「私普」3
以上のように、
「私普」は「鬼月」に一般家庭で行われ、家族の安全を祈願するものであ
る。
1
2
3
『臺灣大百科全書』「私普」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=11719 2013.08.25
「紙錢」については、第三章の 3-6 以下で詳しく述べている。
同註 1
23
3-2-2 「公普」
次に、
「中元普渡」のもう一種類である「公普」について紹介する。
「公普」について、
「臺灣大百科全書」というウェブサイト1は以下のように述べている。
「公普」は「廟普」とも呼ばれ、旧暦七月に行われる最大の祭祀である。参加する家
庭や会社が祭祀用品を用意し、
「公普」が行われる公共の場所に置く。
「公普」を主催す
る寺廟では道士または僧侶を招いて法会2を開き、死者の霊を供養するための読経をして
もらう。
「公普」は時間が決まっていて、日中行われる場合(午前から夕方まで)や午後から
夜にかけて行われる場合(午後一時から夜中十二時まで)
、さらに一日、二日かけて行わ
れる場合もある。時間の長さによって費用や規模も異なるが、一、二か月前から事前準
備を行う。台湾の「鬼月」に行われる「公普」は、死者の霊に供え物をして、お腹がい
っぱいになった上で冥界に帰ってもらうために行われるものである。
(筆者訳)
図 2 「公普」3
以上のように、主に一般家庭で行われる「私普」に対して、
「公普」は寺廟で行われるた
め、規模が大きくて、準備にも多くの時間や労力が必要である。
1
『臺灣大百科全書』「公普」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=11715 2013.08.28
「法会(ほうえ)」は、仏教において仏法を説くためや供養を行うための僧侶・檀信徒の集まりを指す。以上、
日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「法会」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E4%BC%9A 2013.12.08 ただし、台湾における「法會」は仏教の僧侶を
招くもの以外に、道教の道士を招いて行われるものを指す場合が多い。
3
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
2
24
3-3 「大士爺」
「中元普渡」に特に関連の深いのが「大士爺」という神である。
「大士爺」について、
「臺
灣大百科全書」というウェブサイト1は以下のように説明している。
「大士爺」
(客家語では「山大士」
)は悪いことをする「鬼」の頭領である。常に手下
を率いて悪いことをし、この世に不安をもたらしていた。その後、観音菩薩に降伏して
からは悪いことをやめ、正しいことをするようになった。それで、
「大士爺」の頭の上に
観音菩薩像が立つようになり、
「普渡」の期間中に死者の霊を管理するように「大士爺」
に祈願するようになった。
「普渡」の祭礼が終わった後、紙で作った「大士爺」の神像を
他の紙と一緒に燃やさなければならない。これは、
「大士爺」が死者の霊(悪いことする
「鬼」
)を連れて行くことを象徴し、この世に平和が戻って来るとされる。
(筆者訳)
このように、
「大士爺」は死者の霊(鬼)の統領であり、観音菩薩に服従して死者の霊の
管理者になり、
「中元普渡」の間、死者の霊(鬼)を管理するという役目を担っている。台
湾では一般に「普渡公」とも呼ばれ、台湾人にとって大切な神である。
図 1 「大士爺」2
1
2
『臺灣大百科全書』「大士爺」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=7439&Keyword=%E5 2013.11.24
『臺灣大百科全書』「大士爺」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=702 2013.11.24
25
図 2 紙で作った「大士爺」の神像を燃やす1
さらに、台湾における「大士爺」に対する信仰について、
「臺灣大百科全書」というウェ
ブサイト2は以下のように説明している。
台湾では、通常「大士爺」の神像を見ることはできず、代わりに紙製の「大士爺」を
拝む。毎年「中元普渡」の祭祀を行う時期になると、紙製の「大士爺」を作り、廟の正
殿に置く。この紙製の「大士爺」に触れると、厄を払って幸運をもたらしてくれると言
われている。そのため、紙製の「大士爺」が各地を巡礼する際、それに触れようとする
民衆と爆竹の音で、非常ににぎやかである。
(筆者訳)
以上のように、本来「大士爺」は悪いことをする「鬼」の統領だったため、紙製の「大
士爺」に触れることで、厄払いができると考えられるようになったのではないだろうか。
したがって、
「大士爺」は死者の霊(鬼)を管轄するのみならず、人々の不安や悩みを解消
してくれる神として信奉されている。
1
2
『痞客邦 PIXNET』嘉義民雄「沒有具體神祇」 http://mygod0328.pixnet.net/blog/post/35041135-%E5 2013.12.06
『臺灣大百科全書』「大士爺」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=7439&Keyword=%E5 2013.11.24
26
3-4 「中元普渡」関連の祭礼
3-4-1 「中元普渡」関連の祭礼一覧
「中元普渡」関連の祭礼にはどのようなものがあるのだろうか。また、それぞれの祭礼
にはどのような意味があるのだろうか。中国語版フリー百科事典「維基百科(Wikipedia)
」
の内容をまとめて、以下のように一覧にしてみた。
1
表 1 「中元普渡」関連の祭礼2
名称
説明
「點普渡公燈」
3
旧暦七月初日に廟にある提灯に火をつけることを
「點普渡公燈」という。
「普渡公」という神と死者の霊に、供え物がある
場所を示すという意味がある。
「立燈篙」4
「立燈篙」とは、大きい青竹の上に提灯と旗を掛
けたもので、それを日中は上げておき、夜になっ
たら下ろす。これは、法会5を見守ってもらうため
に神を呼び、さらに外にいる死者の霊にもその成
果を享受してもらうという意味がある。
1
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「中元節與盂蘭盆節」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%85%83%E7%AF%80%E8%88%87%E7%9B%82%E8%98%AD%E7
%9B%86%E7%AF%80 2013.08.29
2
表の右側の「説明」の部分は脚注 1 のサイトの内容を筆者がまとめて、日本語に訳したものである。
3
『蘋果日報』「點普渡公燈」http://www.appledaily.com.tw/realtimenews/article/new/20130806/238052/ 2013.10.18
4
『YAHOO 部落格』「立燈篙」
http://tw.myblog.yahoo.com/jw!JK6Zu3mLERDVeRp38YNR8cHAdEDbp8ln/article?mid=1528 2013.10.17
5
第三章 3-2-2 の脚注を参照のこと。(表以下同様)
27
「主普壇開光」1
法会の会場には「主普壇」という壇を設置し、
「大
士爺」2や「山神」などの神が休む場所とする。神
が休む前には、壇に備えられた蝋燭に火をつけな
ければならない。これを「主普壇開光」という。
「請斗燈」3
「斗燈」または「元神燈」とも呼ばれ、天上の星
と対応し、各信者の元神4を代表する。好運を招い
て、凶悪を避ける力がある。一般に米斗という木
箱に米を入れて、傘や宝剣などを準備し、好運を
招いて、凶悪を避けることを祈る。
「斗燈」は吉が長く続き、平安が守られ、子孫が
多く生まれることを象徴する。
「請神放表」5
法会の始まりとともに読経によって天地神明に
「普渡」の始まりを知らせることをいう。死者の
霊に今から「中元普渡法會」という儀式が始まる
ことを知らせ、
「大士爺」という神が現れて、死者
の霊に悪いことをさせないように祈る。
1
2
3
4
5
『Picasa 網路相冊』「主普壇」http://picasaweb.google.com/lh/photo/blDP53aCSuu_JLAO_s7nLw 2013.08.25
「大士爺」については、第三章の 3-3 で詳しく述べている。
『BillyLo 的吃喝玩樂』「2013 基隆中元祭『慶安宮安斗燈』」http://blog.udn.com/llj1688/8191722 2013.10.17
「元神」とは、道教において道法を説く靈魂である。
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
28
「放水燈」1
「中元節」に先立って、川や池沼などの水がある
場所に灯篭を流して、死者の霊がやって来るのを
迎える灯篭流しのことである。これは、死者の霊
を「中元普渡」に招くという意味があり、
「放水燈」
と呼ばれる。
2
「施普」3
「施普」とは、道士が読経によって死者の霊を供
養することである。寺廟では、地藏王菩薩像を「神
桌」という机に置き、経文を聞きに集まるように
死者の霊に告げ、集まって来た死者の霊にはさま
ざまな供え物が捧げられる。
「送大士」4
「普度」が終わって、
「大士爺」や「山神」などの
神を十分にもてなしたら、死者の霊が冥界へ帰っ
て行く。そのために「紙錢」を燃やして、神を天
地へ送り帰すことを「送大士」という。
1
2
3
4
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
「放水燈」については、第三章の 3-5-1 で詳しく述べている。
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
『YUM 蕃薯藤』「Billy 與小孩的生活點滴」 http://blog.yam.com/llj1688/article/68128372 2013.10.17
29
「搶孤」1
「搶孤」2とは、数本の高い柱の上に設置した棚に
旗を立てて、誰が先に柱の上に登って旗を手にす
るかを競うもので、ある。
「跳鍾馗」3
「施普」の祭祀が終わってから道士が演じる「驅
魔真君―鍾馗」という芝居のことで、一般に「跳
鍾馗」と呼ばれる。死者の霊が行った悪い行為を
駆除して、死者の霊にすぐ冥界へ帰ってもらうた
めに行う。
以上のように、
「中元普渡」に関連あるさまざまな祭礼があることがわかるが、その中で
は「立燈篙」
、
「施普」
、
「跳鍾馗」の三つが特に重要だと考えられる。まず「立燈篙」は、
死者の霊に「中元普渡」を享受してもらう前に、法会を見守ってもらうために神を呼ぶた
めのものである。そして、
「施普」では、道士が読経によって死者の霊を供養して、さまざ
まな供え物が捧げられる。最後に「跳鍾馗」は、死者の霊が行った悪い行為を駆除して、
供養が終わった死者の霊に冥界へ帰ってもらうために行うものである。
1
2
3
『ihaoke 好客討論區』「搶孤」 http://www.ihaoke.com/bbs/discuz.web/showtopic-837.aspx 2013.10.17
「搶孤」については、第三章の 3-5-2 で説明している。
『宋盛灶攝影工作室』「跳鍾馗」 http://www.seanphoto.idv.tw/show3/pic/people1/05/32/index.html 2013.10.17
30
3-4-2 「中元普渡」の供え物と祭礼の対象
「中元普渡」の供え物について、現在では何を捧げるかあまり気にする人はいないよう
であるが、本来は、どのような供え物を準備するのであろうか。
「中元普渡」に欠かせない
供え物である「三牲」と「四果」について、
「欣新聞」のウェブ記事1は以下のように述べ
ている。
「三牲」というのは、豚肉と鶏肉と魚のことである。伝統的にはその肉を切ってはい
けないとされているが、それは死者の霊にそれぞれ自分が好きな部位を食べさせるため
である。現代の人は素食2用の肉で代用する場合が多い。また、豚肉の場合は丸ごと肉に
することはできないので、肉の小さい塊で代用してよい。ただし、タウナギ3やウナギな
どの魚は尾ひれがないので供え物にしてはいけないという年長者もいる。というのは、
尾ひれがないということで、
「無後」
(台湾語で「後継者がいない」という意味)になっ
てしまうからである。
図 1 「三牲」4
「四果」というのは、特定の果物四種類を指すのではなく、四季の果物のことである。
比較的よく見られるのはリンゴで、これはリンゴの中国語「蘋果(ping-guo)
」の(ping)
という音から「平安(ping-an)
」を祈願するという意味があるからである。また、柚子
は中国語で「柚子(you-zi)
」で、これは中国語の「有子(you-zi)
」つまり「子供がある」
を連想させる。注意しなければならないのは、3 または 5 という奇数の果物を供え物に
しなければならないことである。また、バナナ(香蕉)とスモモ(李子)とナシ(梨子)
は絶対に供え物にしてはいけない。なぜなら、この三種類の果物の名前を台湾語で発音
すると、台湾語の「招、你、來」
(
「あなたをお呼びする」の意味)と似た音になるので、
死者の霊を家に呼び寄せてしまうとされるからである。
さらに、グアバ、トマト、バンレイシ5も通常は供え物にはしない。
(筆者訳)
1
『欣新聞』「鬼月/中元普渡愛注意 拜拜「三牲四果」有禁忌」
http://www.xinmedia.com/n/news_article.aspx?newsid=139214&type=1&collectionid=171 2013.10.22
2
肉を食べない食習慣のこと。
3
「タウナギ目タウナギ科に属する淡水魚の一種である」以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)』「タウナギ」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE
2013.11.19
4
『自由電子報』「中元普渡 夜購省更多」http://www.libertytimes.com.tw/2013/new/aug/15/today-fashion1.htm
2013.11.19
5
グアバとトマトについては、果肉の中に種子が多く、食べてもそのまま排泄されるので不潔だとされるからで
ある。バンレイシ(釋迦頭)の場合は、釈迦の頭のような形をしているので、それを食べるのは不敬だとされる
からである。
31
図 2 「四果」1
このように、
「三牲」の場合は豚肉、鶏肉、魚をそのままの姿で供え物にすることによっ
て、祭礼する対象に尊敬の意を表すという意味があるのではないだろうか。また、果物を
供え物にする場合は、供え物に適した果物を選ばないと、悪運を招いてしまうおそれがあ
ることがわかる。
また、中元普渡の期間中には、祭礼の対象によって供え物が異なる。以下では、張(1999:
168)2の内容を参考に、祭礼の対象と供え物の違いについてまとめてみた。
表 1 祭礼の対象と供え物の違い3
祭礼の対象
「地官大帝」4
死者の霊
供え物
場所
時間
自宅、
「地官大帝」真昼、旧暦七月十四
木耳、椎茸、昆布、海苔、ソラマメ、
竜眼、果物、お酒、花
を祀る寺廟
ご飯、野菜、お酒、果物、缶詰(い 自宅、会社の入り
ろいろな種類)
、飲み物
口
日の夜十一時
午後四時
「三牲」
(豚肉と鶏肉と魚)
、野菜、
祖先
祖先の位牌の前
果物、ご飯、お酒
真昼
このように、祭礼の対象によって、祭礼が行われる場所も供え物も違うことがわかる。
1
2
3
4
『臺灣大百科全書』「四果」http://taiwanpedia.culture.tw/web/content?ID=12131 2013.11.19
張逸堂(1999)『拜出好運來 好運旺旺來』研智有限公司 p.168
筆者作成
「地官大帝」については、第三章の 3-1-1 で説明している。
32
3-4-3 「中元普渡」の祭礼におけるタブー
台湾の社会では伝統的に犯してはいけないとされる禁忌(タブー)が多いが、祭礼を行
う際にも犯してはいけない禁忌行為がいくつかある。以下では、二つのウェブサイト1の内
容を参考に、祭礼のタブーについてまとめてみた。
表 2 祭礼におけるタブー行為2
禁止行為
禁止される理由
神に対しては、必ず自分の名前、誕生日と住
所を言った上で祭礼を行うが、祭礼の対象が
自分の名前を言ってはいけない
死者の霊の場合は、死者の霊が名前を聞いて
その人に憑かないように自分の名前を言わ
ず、ただ尊敬の気持ちを持つだけでよい。
爆竹の音を聞くと、死者の霊が驚いて帰れな
爆竹を鳴らしてはいけない
くなるからである。
供え物は死者の霊のために準備されたもの
供え物をこっそり食べてはいけない
なので、祭礼の際に勝手に食べると、死者の
霊が悪運を招いてしまう。
「中元普渡」の期間中は、祖先を敬い、神と
「中元普渡」の期間中はみだりにおしゃべり
死者の霊に尊敬の意を表するために、言行を
をしてはいけない
慎み、言葉を選ばずに話してはいけない。
このように、死者の霊を祭礼する際に禁忌とされる行為がいくつかあるが、どれも死者
の霊に対して尊敬の気持ちを持つということから禁止されていることがわかる。つまり、
冗談の気持ちで祭礼を行ってはいけないということである。
1
『蘋果日報』「中元普渡祭拜撇步大公開」
http://www.appledaily.com.tw/appledaily/article/supplement/20070827/3765168/ 2013.11.26
『一起愛台灣』「中元普渡拜拜注意事項」 http://www.17itaiwan.tw/DOC_1491.htm 2013.11.26 2013.11.26
2
筆者作成
33
3-5 「中元普渡」関連の特に有名な祭礼
3-4-1 では「中元普渡」関連の祭礼一覧を紹介したが、以下では、その中で「放水燈」
「搶
孤」について詳しく紹介する。この二つは、本来は「中元普渡」に関連のある祭礼として
行われていたものだが、最近では季節のイベントとして多くの見物客を集めるようになっ
ている。
3-5-1 「放水燈」(灯籠流し)
近くに川がある廟では、
「中元普渡」に先立って「放水燈」という祭礼が行われること
がある。
「中元节百科」というウェブサイト1によると、台湾では、中元祭の前に近くの川
で灯篭流しをする習俗があり、これは道(川)を照らして、死者の霊を「中元普渡」に招
くという意味がある。その際に川に流される灯篭を「水燈」と呼び、紙製で家や蓮に似せ
て作られ、中に蝋と油を入れて火を点す。灯篭には自分の名前を書いて、死者の霊に誰が
奉献したものか伝える。灯篭が遠くまで流れて行くほど、幸運がもたらされるとされる。
図 1 「水燈」2
このように、
「放水燈」は、遠くにいる死者の霊にこれから「中元普渡」が行われること
を知らせるというものであるが、たくさんの灯篭が川を流れて行く姿は幻想的で、多くの
見物客を集める季節のイベントとして有名である。
3-5-2 「搶孤」
「搶孤」は、数本の高い柱の上に設置した棚に旗を立てて、誰が先に柱の上に登って旗
を手にするかを競うものだが、これは「中元普渡」関連の祭礼の中でも、最近ではあまり
見られなくなってきた。しかし、現在でも、宜蘭県の頭城で行われる「搶孤」は有名で、
多くの見物客を集めている。この「搶孤」について、中国語版フリー百科事典『維基百科
(Wikipedia)
』3は以下のように説明している。
1
『中元节百科』「中元节为什么要放水灯?」http://zhongyuanjie.baike.com/article-51504.html 2013.10.08
筆者攝影(高雄左營元帝廟 2013.08.15)
3
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「中元節與盂蘭盆節」
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%85%83%E7%AF%80%E8%88%87%E7%9B%82%E8%98%AD%E7
%9B%86%E7%AF%80#.E6.90.B6.E5.AD.A4 2013.10.08
2
34
主に台湾だけで行われる中元節の特別な儀式で、
「搶孤」と呼ばれる。高い柱の上に
供え物や旗を置き、柱の表面を油で塗って、参加者に棚を登らせ、先に旗を奪った者が
勝ちとなる。勝者は賞品を手にすることができるだけではなく、神や死者の霊の祝福を
得られるという意味がある。ただし、危険性が高いので、清朝1時代には劉銘傳という役
人がこれを禁じた。
(筆者訳)
次に、
「搶孤」の意義について、
「中元节百科」というウェブサイト2は以下のように述べ
ている。
「搶孤」は、
「孤棚」と呼ばれる棚を設置して供え物を置き、参加者がそれを競って
奪うもので、冥界に帰るのを忘れてこの世に居残っている死者の霊を驚かせて追い払う
という意味があると言われている。ただし、危険性が高いので、清朝3時代から長い間禁
じられていたが、1991 年に宜蘭県の頭城で再び行われるようになり、その際は旧来の「孤
棚」を設置した上で競技方法が改善された。
(筆者訳)
以下の図 1 は、現在宜蘭県で行われている「搶孤」の様子であるが、参加者の安全を考
慮した上で、
迫力のあるスポーツ競技のようなイベントとして多くの見物客を集めている。
図 1 「搶孤」4
1
「清(しん、1606 年-912 年)1636 年に満洲において建国され、1644 年から 1912 年まで中国を支配した最後
の統一王朝である。」以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「清」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85 2013.12.13
2
『中元节百科』「中元节的“抢孤”是什么仪式? 」http://zhongyuanjie.baike.com/article-51512.html 2013.10.08
3
同註 1
4
『中元节百科』「搶孤」http://zhongyuanjie.baike.com/article-51522.html 2013.10.08
35
3-6 「中元普渡」で燃やされる「紙錢」
台湾では祭祀の際に「紙錢」と呼ばれる紙製の紙幣を燃やす習慣があり、
「中元普渡」
の期間中は特に多くの「紙錢」が燃やされる。以下では、この「紙錢」について説明する。
3-6-1「紙錢」の由来
祭祀の際に「紙錢」が燃やされるようになった由来について、
「金闕宮」というウェブ
サイト1は以下のように説明している。
中国の後漢2時代から、副葬の習俗が生まれ、副葬品として一般に金銀の財宝類が一緒
に埋葬されたが、王侯貴族の中には死後の世界でも栄華と富貴を享受できるように、一
般的な金銀の財宝だけではなく、生きた人間や家畜類を一緒に副葬するようになった。
それは後に残忍過ぎるという理由で、偽物の模造品が使われるようになった。
(中略)
人々は紙のお金を燃やす方法を思いついて、社会で通用している金銭の代わりとして、
自分の親が亡くなった後もあの世で使えるようにした。
(筆者訳)
このように、台湾の祭祀の際に燃やす「紙錢」は、中国の古い時代にさかのぼる習慣で、
本来は副葬品として金銀の財宝を埋葬していたものが、その後、遺族が紙のお金を死者に
献じるようになったことがわかる。
3-6-2 「紙錢」の種類
「紙錢」の種類と用途について「金銀紙的由來」というウェブサイト3の内容を、以下の
ように整理してみた。
表 1 「紙錢」の種類4
種類
金色の「紙錢」5
特徴
使用対象
吉祥と貨幣としての金を 神を祀る際に使用され
象徴。
る。
値段が最も高い。
1
『金闕宮』「民間習俗燒紙錢的由來」http://www.ccg-usa.info/?p=2643 2013.10.22
後漢(ごかん、中国語:東漢、25 年~220 年)は中国の王朝。漢王朝の皇族劉秀(光武帝)が、王莽に滅ぼさ
れた漢を再興して立てた。以上、日本語版フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「後漢」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E6%BC%A2 2013.12.13
3
『金銀紙的由來』「種類」http://library.taiwanschoolnet.org/cyberfair2007/maioli/story_04.htm 2013.10.14
4
筆者作成
5
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「紙錢」http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E9%8C%A2
2013.10.14
2
36
銀色の「紙錢」1
災厄を除くとされる。
祖先と死者の霊を祀る際
に使用される。
その他の「紙錢」2
表面に金色や銀色の箔が 祖先と死者の霊を祀る際
ないもの。
冥界で使う日用品の絵が
にも、神を祀る際にも使
用される。
描かれている。
このように、「紙錢」の種類は大きく三種類に分けられる。金色の箔がつけられた「紙
錢」は神に献じる目的で燃やされるのに対して、銀色の箔付きの「紙錢」は死者の霊に献
じる目的で燃やされる。また、金色と銀色の二種類以外にも、冥界で使用する日用品の絵
などが描かれた「紙錢」があって、これは種類が多い。
1
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)』「紙錢」http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E9%8C%A2
2013.10.14
2
『中央研究院數位典藏資訊網』「經衣(紙錢)」
http://140.109.18.158/digiarch2/content/repository/resource_content.jsp?queryString=%E5%99%A8%E7%89%A9&oid=43
62978&queryType=qc 2013.10.14
37
3-6-3 現代の「紙錢」
時代の変化によって、最近では新しい「紙錢」が生まれている。最近の「紙錢」の流行
について、中国語版フリー百科事典「維基百科(Wikipedia)」1は以下のように説明してい
る。
近年は、現代的な「紙錢」が流行していて、「冥界のクレジットカード」または「冥
界の小切手」などが出現して、時代の変化を反映している。「冥界のクレジットカード」
は本物のクレジットカードに非常によく似たデザインで(金色と銀色の紙で作り、
「VISA」「Master Card」などのクレジットカードのマークが印刷されている)、真面目
に製作したものである。「冥界の小切手」は、小切手に巨大な金額を書いて、大量の紙
幣を燃やす代わりとするものである。また、金額空白の「冥界の小切手」を燃やす人も
いるが、死者が冥界で自分で自由に小切手に好きな金額を書いて楽しむことができるよ
うにというものである。(筆者訳)
図 1 冥界のクレジットカードなど2
図 2 冥界のアメリカドル紙幣3
中文版自由的百科全書『維基百科(Wikipedia)
』
「現代紙錢」http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E9%8C%A2
2013.11.08
2
筆者攝影(台南市立殯儀館 2013.10.15)
3
筆者攝影(台南市立殯儀館 2013.10.15)
1
38
図 3 紙製の金塊1
このように、伝統文化にもとづいた「紙錢」も、時代の変化によって様々な形のものが
生まれていることがわかるが、神や死者の霊を敬うという本質は変わっていない。
1
筆者攝影(台南市立殯儀館 2013.10.15)
39
第三章のまとめ
第一節では、まず「中元普渡」とは何かについて述べた。
「中元普渡」というのは「中元
節」に、
「普渡」という祭祀が行われるという意味である。
「中元節」は「三界公」と呼ば
れる道教の神のうち「地官」の生誕を祝う日で、それが旧暦七月十五日にあたる。一方、
「普渡」というのは、死者の霊を供養するという意味で、それが「中元節」と同じ日に行
われていたので、この二つが同一視されるようになった。また、現在台湾で行われている
「中元普渡」は、仏教と道教の内容を包含するものだが、一般の民衆は特に二つの内容を
区別していない場合がほとんどである。
第二節では、
「普渡」を種類別に「私普」と「公普」に分けて説明した。
「私普」という
のは、家庭や個人で行うもので、家の外や入り口で行われる「普渡」である。
「公普」は寺
廟などの公共の場所で廟の人員によって催される規模の大きい「普渡」で、一般の信者も
供え物を置きに行くことができる。 現在では、各家庭で「私渡」を行う代わりに、
「公普」
を選ぶ人が多い。それは、供え物を準備して、廟に持って行くだけでいいからである。
第三節では、
「中元普渡」に関連の深い「大士爺」という神について紹介した。
「大士爺」
は一般には「普渡公」と呼ばれ、本来は悪い事をする「鬼」の統領であったのが、観音菩
薩に降伏してから、正しいことをするようになった。
「普渡」の期間中に死者の霊(鬼)を
管理する神として、台湾人の心の中では特に大切な存在である。
第四節では、
「中元普渡」関連のさまざまな祭礼を簡単に説明し、祭礼の際に捧げられる
供え物についても述べた。 どの祭礼も、
「好兄弟」
(祀り手のいない死者の霊)が悪運を供
養することを目的としており、
「中元普渡」期間中の供え物の選び方やタブーからも、民衆
が「好兄弟」が怒るのを畏れていることを見ることができる。
第五節では、
「中元普渡」関連の祭礼の中で、特に有名なイベントとなっているものとし
て、
「放水燈」と「搶孤」を紹介した。
「放水燈」は、日本にもそれに似た灯篭流しがある
が、台湾の「放水燈」は遠くにいる死者の霊に「中元普渡」が行われるのを知らせるとい
う意味がある。
「搶孤」は、この期間に行われる祭礼の中で、唯一競技性を持つもので、テ
レビなどでも放送されることが多い。ただし、危険性が高いので、今では行われる場所が
限られている。
第六節では、
「中元普渡」のさまざま儀式で使われる「紙錢」を説明した。紙で作ったお
金である「紙錢」は神や死者の霊に献じるものであることがわかった。
40
第四章 「鬼月」関連の禁忌
本章では「鬼月」の禁忌(タブー)について説明する。台湾では、
「鬼月」の期間中はし
てはいけないという行為がたくさんある。それらの行為は、昔から必ず守らなければなら
ない禁忌として伝えられてきたものである。現在でも多くの人がそれらのタブーを守って
いるが、その詳しい内容は分からない人が多い。
以下では、
「實景旅遊網」というウェブサイト1に載っている「鬼月」に関する禁忌を 21
項目紹介する。なお、日本語はすべて筆者訳によるものである。
1.部屋で傘を開けてはいけない。なぜなら、傘は魂が宿る法器で、死者の霊が隠れる
のに最も適した場所だと考えられているからである。外で傘をさして歩いていると、死
者の霊が開いた傘の内側に入ってきて休む場所にするので、それをうちへ持ち帰った後
にまた開けると、傘の内側から死者の霊が出てくる。したがって、外で使った傘をうち
へ持って入ってはいけないとされる。
2.「碟仙」2と呼ばれる遊びをしてはいけない。
「碟仙」や「錢仙」と呼ばれる遊びを
すると、霊の世界から戻って来られないおそれがあり、鬼月の期間中は特に死者の霊が
普段より大勢いて非常に危険なので、絶対遊んではいけない。
3.夜に鏡を見てはいけない。なぜなら、鏡や池、湖の水面は冥界への出入口であると
信じられているからである。鬼月の期間中、夜に鏡や水面を見ると、悪い霊や悪運を呼
び寄せてしまうため、よくないこととされている。
4.髪が乱れたまま寝てはいけない。なぜなら、死者の霊の多くは伝統的に乱髪の姿が
多いとされているため、夜間に乱髪のままで寝ると亡霊と同類だと思われてしまうから
である。
5.生理中の女性は祭祀を行ってはいけない。なぜなら、生理中の女性は内分泌の状態
が通常と異なるため、不浄なものを引き寄せやすいと言われているからである。祭祀に
関わってはいけないという以外に、陰湿な湖、河川、海辺、さらに深夜の山も死者の霊
に出会いやすい場所なので避けるべきだとされている。
6.むやみに人の肩を叩いてはいけない。なぜなら、人の体には、頭の上、左右の肩の
上に三つの火があると言われていて、むやみに他人の肩を叩くと、その人を保護してい
る三つの火が消えてしまうとされているからである。また、人に呼ばれても、頭だけ振
り向くと、自分を守る三つの火が消えてしまうので、体全体で振り向かなければならな
い。
7.ご飯を食べる時は箸を茶碗に挿してはいけない。なぜなら、香炉に線香を挿すのと
同じような形になるので、死者の霊を招いてしまうからである。
8.パイナップルなどの果物で祭礼してはいけない。なぜなら、パイナップルを意味す
る台湾語と「旺來」
(
「呼び招く」の意味)という台湾語の言葉が同じ発音なので、死者
の霊を「呼び招く」ことはしない方がいいとされるからである。また、バナナ、スモモ、
1
『實景旅遊網』「鬼月禁忌」http://www.vrwalker.net/tw/themeview.php?mt=&lang=tw&tp=a&mserno=8&item=27
2013.10.25
2
「碟仙」は中国や台湾などで行われている一種の占いで、日本の「こっくりさん」のようなものである。他に
「錢仙」も同様のものである。
41
ナシの三種類の果物を一緒に供え物にしてはいけないとされているが、それも、その三
種類の果物の名前を台湾語で発音すると、台湾語の「招你來」
(
「あなたをお呼びする」
の意味)と似た音になるので良くないからである。
9.壁に寄りかかってはいけない。なぜなら、死者の霊はふだん壁の近くで休むのが好
きなので、壁に寄りかかると死者の霊を呼び寄せてしまうとされているからである。
10.水遊びをしに出かけてはいけない。なぜなら、鬼門が開いて死者の霊がこの世に戻
って来ているので、死者の霊が集まりやすい水辺では死者の霊の身代わりとして自分が
死んでしまうからである。
11.夜遅く口笛を吹いてはいけない。なぜなら、口笛を吹くと霊界と共鳴して死者の霊
を呼び寄せてしまうからである。また、簫や胡琴などの楽器の音は悲しい感じがするの
で、その音を聞きに死者の霊が集まって来るとされている。
12.真夜中を過ぎたらなるべく出掛けない方がいい。なぜなら、夜 11 時ごろから 1 時
ごろまでは最も陰気のある時間帯なので、なるべく出掛けない方がいい。また、真っ黒
や白の服装をすると、不浄な気を引き寄せるとされている。
13.家の中で死者の霊を拝んではいけない。なぜなら、一般的に死者の霊は外や路上で
拝むものなので、家の中で拝むと、死者の霊を引き入れるとされているからである。
14.午後 5 時以降誕生日を祝ってはいけない。なぜなら、申の刻(午後 3 時から 5 時ご
ろ)は昼と夜の境目で、冥界と人間界が最も繋がりやすくなる時間帯なので、誕生日を
祝うと死者の霊まで来てしまうとされているからである。
15.「鬼」という言葉を言ってはいけない。なぜなら、鬼月の期間中は死者の霊(鬼)
がこの世にたくさん来ているので、
「鬼」という言葉を聞くと、自分が呼ばれていると思
ってしまうからである。
16.供え物をあまり食べてはいけない。なぜなら、死者の霊への供え物をたくさん食べ
ると、おなかを壊してしまうとされているからである。
17.「紙錢」を踏んではいけない。なぜなら、
「紙錢」は冥界のお金なので、祭礼の後
焼け残ったり、捨てたり、間違って持ち帰ったりした「紙錢」は既に祭礼を経て冥界に
送られたものだと考えられるので、
それを捨てたり踏んだりしたら、
死者の霊が怒って、
持ち帰った「紙錢」を取り戻すために、家まで一緒について来るからである。
18.トンボとキリギリスを捕まえてはいけない。なぜなら、トンボとキリギリスには死
者の霊が憑きやすいと言われていて、むやみに捕えると、死者の霊を引き寄せる恐れが
あるからである。
19.死者の霊を拝むとき、自分の名前を告げてはいけない。なぜなら、死者の霊があな
たが誰か知ってついて来るのを防ぐためである。したがって、死者の霊を拝む際は、自
分の名前を言わないで、ただ「供え物をどうぞ」と言うだけでよい。
20.道で物を拾ってはいけない。なぜなら、郊外の路上の物はどこから来たものか、死
者の霊が憑いていないかどうかわからないからである。
21.死者の霊がいると言われる屋敷で遊んではいけない。なぜなら、普段から死者の霊
が隠れている可能性があるのに、鬼月になって鬼門が開いたら、死者の霊は普段より数
倍多くなると考えられて非常に危険だからである。
42
このように、
「鬼月」には様々なタブーがあり、禁忌とされていることがわかる。以下で
は、以上のタブー21 項目を、その種類によって分類してみた。
表 1 種類別に分類した「鬼月」のタブー1
4 髪が乱れたまま寝てはいけない。
身体
5 生理中の女性は祭礼を行ってはいけない。
6 むやみに人の肩を叩いてはいけない。
時間
12 真夜中を過ぎたらなるべく出掛けない方がいい。
14 午後 5 時以降誕生日を祝ってはいけない。
1 部屋で傘を開けてはいけない。
物品
3 夜に鏡を見てはいけない。
7 ご飯を食べる時は箸を茶碗に挿してはいけない。
食事
8 パイナップルなどの果物で祭礼してはいけない。
16 供え物をあまり食べてはいけない。
2「碟仙」と呼ばれる遊び(
「こっくりさん」のようなもの)をし
てはいけない。
9 壁に寄りかかってはいけない。
11 夜遅く口笛を吹いてはいけない。
行為
15「鬼」という言葉を言ってはいけない。
17「紙錢」を踏んではいけない。
18 トンボとキリギリスを捕まえてはいけない。
19 死者の霊を拝むとき、自分の名前を告げてはいけない。
20 道で物を拾ってはいけない。
10 水遊びをしに出かけてはいけない。
場所
13 家の中で死者の霊を拝んではいけない。
21 死者の霊がいると言われる屋敷で遊んではいけない。
以上のように、
「鬼月」のタブーは古くから現代まで伝承されてきたものである。現代の
人には、その意味がわからないものも多いが、現在でもそのタブーを気にする人は多く、
これからも伝えられるべき重要な文化であると考えられる。
1
筆者作成
43
結論
第一章では台湾で旧暦七月に行われる祭祀の代表的なものを簡単に紹介した。
その中で、
本稿では「鬼月」の由来である「鬼」と特に関連が深い「鬼門開」と「鬼門關」
、さらに「中
元普渡」に特に注目した。
第二章では、誰にも祀ってもらえない死者の霊が「鬼」として畏れられ、旧暦の八月に
はその「鬼」がこの世に戻って来る月であると考えられていることを述べた。現在でも、
「鬼月」は台湾人の行動に大きな影響を与えている。本稿で紹介した宗教的な儀式や習俗
のみならず、普段の生活の中でも「鬼月」の不祥な雰囲気を感じて、結婚や引っ越しなど
を避ける人は現在でも多い。この章では、死者の霊に対する畏敬の念を抱き、神の庇護を
得ようとする台湾人の考えが分かった。
第三章では台湾の「鬼月」の期間中、最も大切な祭礼である「中元普渡」を説明した。
「中元普渡」は死者の霊を供養するという意味があるだけでなく、 多くの儀式は、古くか
ら中国人そして我々台湾人が死者や祖先に思いを抱いてきたことを反映している。中国の
古い成句に「百善孝為先」というのがある。これは「多くの善行中で、孝行が最も大切で
ある」という教えである。また、中国には「木が揺らされまいとしても、風は依然吹く。
子が親を養おうと思っても、親はもういない。
」という意味の古い詩がある。これも、孝行
の大切さを伝えるものである。中国や台湾では、 親は亡くなってからもあの世で生き続け
るという考えが強く、亡くなった後も自分の親が死後の世界で良い生活を享受できるよう
に、供え物を準備したり、
「紙錢」を燃やしたりする。その一方で、亡くなった後、誰から
も供養してもらえず、祀り手のない霊に対しては、憐憫の意と慈愛の心を持って、丁重に
もてなすというのが、
「中元普渡」の意義ではないかと思う。
最後に、第四章では、台湾に長く住んでいる外国人も知っておいた方がいいと思われる
「鬼月」の期間中の注意事項を、
「鬼月」の禁忌(タブー)として紹介した。台湾の文化は
中国の宗教観から大きく影響を受けていて、禁忌の多くは、祀り手のいない死者の霊と神
に対する畏敬の念に基づいていることが分かった。また、禁忌の一部分は、親が子供に対
して何かを「してはいけない」という際に、
「鬼」の存在を述べることで子供を怖がらせて
いるものがあるように思う。このような禁忌は、信じる信じないは別にして、死者の霊と
神に対する尊敬の念をもとに、子供の無事と安全を願って言い伝えられて来たものだと考
えることが大切ではないかと思う。そうすれば、
「郷に入っては郷に従え」諺のとおり、本
稿を読んでくださる日本人以外に、台湾人である我々も台湾の文化についてより深く理解
できるようになるのではないだろうか。
44
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