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2000年前後に生まれた 「アラウンド・ゼロ世代」を追う

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2000年前後に生まれた 「アラウンド・ゼロ世代」を追う
2012.10.31 修正
1997年 → 2007年 → 2012年
「子供の生活15年変化」調査レポート
2000年前後に生まれた
「アラウンド・ゼロ世代」を追う
Copyright © 2012 Hakuhodo Insutitute of Life and Living, Hakuhodo Inc.
本レポートの概要
博報堂生活総合研究所では、5年前(2007年)と15年前(1997年)に行った、小学4年生∼中学2年生対象の「子供調査」を、今年(2012年)、同世代の
子供たちに行いました。前回の2007年から2012年の間は、次のような、それまで経験したことのない大きな出来事があった期間でした。
・ 2008年 リーマンショック
・ 2009年 民主党への政権交代
・ 2010年 GDPで日本が中国に抜かれ、世界第三位へ
・ 2011年 東日本大震災
これらの出来事が、直接的、間接的に子供たちに与えたであろう影響を念頭に置きながら、1997年から2002年までの2000年前後に生まれた子供たち
「アラウンド・ゼロ世代」の特徴を15年間の生活変化から8つのFindingsとして、明らかにしました。
子供調査 2007
子供調査 2012
調査対象
2007年7月1日現在で小学5年生∼
中学3年生に在学する男女
調査地域
首都40km圏
調査手法
訪問留置
サンプル数
800人
調査対象
2012年3月31日現在で小学4年生∼
調査時期
2007年6月18日∼ 7月9日
(1992年4月∼ 1997年3月生まれ)
中学2年生に在学する男女
(1997年4月∼ 2002年3月生まれ)
サンプル数
1,200人
調査時期
2012年2月16日∼ 3月12日
企画・分析
博報堂生活総合研究所
実施・集計
株式会社 東京サーベイ・リサーチ
子供調査 1997
調査対象
1997年3月31日現在で小学4年生∼
中学2年生に在学する男女
(1982年4月∼ 1987年3月生まれ)
サンプル数
1,500人
調査時期
1997年3月7日∼ 3月31日
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Copyright © 2012 Hakuhodo Insutitute of Life and Living, Hakuhodo Inc.
8 つの Findings
1.
「自分の世界」より「家族と一緒」。家族との親密さが増している
家族との関係
2.
「友達」よりも「家族」。家族の求心力が高まっている
3.友達との関係性は以前よりややドライに
友達との関係
4.コミュニケーションツールは「深さ」から「広さ」へ。メールは減って、SNSへの関心高まる
5.学びの場:学校を楽しむ傾向が高まるなか、塾に通う子供は減少
生活圏について
6.遊びの場:
「ゲームセンター」より「テレビゲーム」。遊びの場は「家の中」志向が増加
7.東日本大震災が身近な関係の大切さを痛感させている
その他
8.激動の時代を過ごす中でも、子供たちの幸せ実感は増加している
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Copyright © 2012 Hakuhodo Insutitute of Life and Living, Hakuhodo Inc.
1.
「自分の世界」より「家族と一緒」。家族との親密さが増している
家族との関係
子供たちが家の中で一番いる場所は、97年から07年の推移がさらに加速し「自分の部屋」がこの5年間で大幅に減少し、
「居間」が大きく増加。
また、97年から07年までは低下していた「家族といっしょにいる方が好き」が復調、
「ひとりでいる方が好き」が減少しています。
さらに、
「家族にいっていない秘密がある」、
「部屋に親が入ってくるのはいやだ」といった一定の距離を保つ意識が15年間連続で減少し、
逆に、家族といる時は「ほっとする」との気持ちが増加しています。
このように、家族との親密さが増しており、子供たちは自分の世界を確保することよりも、家族と一緒にいて安心できることを求めているようです。
家の中で一番いる場所
家の中でのすごし方
(%)
100
親・家族に対する意識
(%)
100
80
(%)
100
80
76.2
80
家族といっしょにいる方が好き
69.3
居 間
家族にいっていない秘密がある
63.0
60
60
65.3
61.9
部屋に親が入ってくるのはいやだ
(自室保有者ベース)
60
50.3
56.4
45.6
ひとりでいる方が好き
40
40
自分の部屋
32.3
46.0
29.1
45.5
40
34.5
38.1
34.5
38.3
45.8
39.4
36.6
30.7
家族といる時の気持ち= ほっとする
20
20
20
17.3
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
(年)
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2.
「友達」よりも「家族」。家族の求心力が高まっている
家族との関係
家族と友達の大切さ比較をすると、97年から07年まで横ばいだった「家族の方が大切」と答える子供が、ここ5年で増加し、友達は減少。
さらに大切な話をはじめに話す相手として、97年から07年にかけて親が減少し、友達が増加したことでその差は縮小しましたが、
今回の調査ではその差が拡大に転じました。また「もっと増やしたい時間」でも「家族と過ごす時間」が増加し、
「友達と過ごす時間」が減少。
このようにいずれの項目でも「家族」を重視する意識が上昇しており、家族へ気持ちがシフトしている様子、
家族の求心力が高まっている様子が印象的です。
家族と友達大切さ比較
大切な話をどちらの方にはじめに話すか
(%)
100
もっと増やしたい時間
(%)
100
(%)
100
家族の方が大切
86.1
80
80
81.1
79.7
80
友達と過ごす時間
お父さん、お母さんの方
60
60
60.1
56.9
60
63.5
61.9
51.0
59.0
49.0
40
40
41.7
40
39.9
友達の方
家族と過ごす時間
友達の方が大切
20
0
20
17.8
18.8
1997
2007
20
31.3
25.0
20.6
13.8
2012
0
(年)
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
(年)
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3.友達との関係性は以前よりややドライに
友達との関係
97年から07年にかけて大幅に上昇していた「友達の話」がダウン傾向にあります。
また、前回調査で大きく増加した友達の数も、若干減少しました。
さらに97年から07年にかけて減少した「クラスが変わると前のクラスのなかよしの友達とは遊ばなくなる」が上昇し、
「自分の必要に応じて、つきあう友人を替える」も増加しています。
小学生においては「親友が欲しい」が減少するなど、友達への関心が少し薄れ、感覚がややドライになっているようです。
もっと「知りたい」と思うこと
友人関係に関する意識
友達の数(平均)
1997年 → 50.7人
2007年 → 66.6人
2012年 → 63.1人
親友が欲しい(小中学生別)
(%)
80
(%)
80
(%)
80
60
60
60
40
40
友達の話
48.1
40
40.3
39.2
自分の必要に応じて、
つきあう友人を替える
27.8
20
20
22.0
27.3
25.4
小学生
20
20.0
17.7
17.2
12.1
クラスが変わると前のクラスの
なかよしの友達とは遊ばなくなる
12.7
中学生
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
0
(年)
1997
9.0
10.0
2007
2012
(年)
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4.コミュニケーションツールは「深さ」から「広さ」へ。メールは減って、SNSへの関心高まる
友達との関係
メールはどうやら5年前ほど活発ではないようです。
07年よりメール友達の人数は減少しており、
メールのやりとりをする友人がいる人の比率もこの5年間で減少しています。
以前にはよく聞かれた「友達と一対一で深くつながっていたい」気持ちにも変化が起きているのでしょう。
SNSやアバターを実際に利用している子供は増加し、今後の参加意向も高まりました。
前述のドライ化する友達への意識変化も影響してか、
リアルな関係を深めることからバーチャルな関係を広める方に関心が移っているようです。
携帯電話やパソコンでメールの
やり取りをする友人がいる
メール友達の数
(該当者ベース・平均)
2007年 → 24.5人
2012年 → 20.2人
SNS参加率
(%)
80
SNS参加意向率
※インターネット利用者ベース
(%)
80
※インターネット利用者ベース
(%)
80
60.4
60
60
60
40
40
48.3
40
アバターを利用した
ネットサービスの参加率
20
アバターを利用した
ネットサービスへの参加意向
18.5
20
20
15.2
13.8
17.7
10.7
SNS参加率
SNSへの参加意向
6.6
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
23.2
2012
0
(年)
1997
7.8
2007
2012
(年)
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5.学びの場:学校を楽しむ傾向が高まるなか、塾に通う子供は減少
生活圏について
遠足、音楽会、学芸会、マラソン大会などの学校行事を「楽しい」と思う子供の比率は、
97年から07年にかけては減少または微増でしたが今回の調査ではすべての項目で、増加に転じました。
一方、塾に関しては、97年も07年も、現在通っている子供の方が一度も通ったことがない子供よりも多かったのですが、今回それが逆転。
通ったことがない子供の方が上回る結果となりました。
学びの場において、より身近な学校の存在感が高まっていることが想像されます。
学校行事への感想=楽しい
塾の通学経験
(%)
100
(%)
100
77.8
遠 足
80
75.3
80
71.4
60
60
46.8
40
45.8
43.9
46.8
44.3
47.0
40
学芸会
36.5
35.8
マラソン大会
20
通っている
52.3
音楽会
40.0
45.4
40.8
一度も通ったことはない
24.6
24.5
20
18.8
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
(年)
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6.遊びの場:
「ゲームセンター」より「テレビゲーム」。遊びの場は「家の中」志向が増加
生活圏について
遊びの場についても、
「外よりも家」にシフトしている傾向が見られます。
97年から07年にかけて上昇していた「家の中よりも、家の外で遊ぶ方が好きだ」が減少しており、同様に自宅以外でよく遊ぶ場所でも、
前回まで上昇していた「ゲームセンター」や「映画館」が少なくなっています。
逆に、テレビゲームを今以上にやりたいと思っている子供は前回までの減少が転じて増加。
前述の学びの場と同様、子供たちの生活圏が「家」というごく身近なところに集中してきている様子が感じられます。
家の中よりも、家の外で遊ぶ方が好きだ
自宅以外でよく遊ぶ場所
(%)
80
今してみたいこと
(%)
80
(%)
80
60
60
60
40
40
40
68.1
70.5
65.1
いろいろなテレビゲームをしつづける
35.3
30.1
ゲームセンター
20
26.5
23.4
20
20
19.2
15.5
5.1
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
14.5
映画館
6.1
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
(年)
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7.東日本大震災が身近な関係の大切さを痛感させている
その他
東日本大震災後に自分の考え方や行動が「変わったと感じることがある」と答えた子供は約半数の47%でした。
性別では女子の方が、学年別では中学生の方が自分の変化を感じています。
「変わった」と感じることの内容を見ると、
「1人でいるとこわい」、
「みんなと一緒にいるようにしている」などの回答が見られました。
また、普通の生活のありがたさを実感する声もあり、自分の身近な領域を見直すことのきっかけにもなっているようです。
東日本大震災後の自分の変化(2012年のみ聴取)
東日本大震災後に、
自分の考え方や行動で
「変わった」と感じること
(自由回答)
変わったと感じることがある : 47.1%
1人がこわい。家族の大切さ
全 体
男子計
変わったと
感じることは
ない
変わったと
感じることが
ある
40.0 %
60.0 %
変わったと
感じることはない
変わったと
感じることがある
52.9 %
47.1%
小学生計
変わったと
感じることは
ない
54.9 %
変わったと
感じることが
ある
45.1 %
女子計
変わったと
感じることは
ない
変わったと
感じることが
ある
45.8 %
54.2 %
中学生計
変わったと
感じることは
ない
変わったと
感じることが
ある
50.0 %
50.0 %
●1人になるとあぶないから、みんなと一しょにいるように
している。1人で、遠いところにいかないようにしている!
(小4・女子)
●だれかと一緒じゃないと寝れない。一人でいるとこわい。
小さい地震がきただけでもこわい(中1・女子)
●いつもドキドキしている(小6・男子)
●大震災のあと弟のことを考えちゃって泣いた(小4・男子)
●東北に実家があり、発生時は非常に心配した。その頃か
らだろうか、家族みんなで過ごすことを考えなおしたのは
(中2・男子)
普段、普通の大切さ
●今、こうして普通に生活していけてることへ、感謝できる
ようになった(中1・女子)
●あいさつをかならずするようになった(中2・男子)
●1日の生活で、豊かさがわかった(中1・男子)
●ごはんをのこさずたべれるようになった(小6・女子)
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8.激動の時代を過ごす中でも、子供たちの幸せ実感は増加している
その他
東日本大震災による精神的影響だけでなく、リーマンショックによる経済環境の激変など、
この5年間の変化は、大人だけでなく、子供たちにも多大な影響を及ぼしていることは想像にかたくありません。
しかし、そのような中にあっても、
「幸せな方だと思う」
「楽しい生活をおくっている」という数字は、過去15年で見ても上昇し続けており、
変化する時代の中でも自分たちの「幸せ」
「楽しさ」を柔軟に見つけ出す子供たちの姿が見て取れます。
幸福感
生活の楽しさ
(%)
100
(%)
100
幸せな方だと思う
85.8
80
90.5
88.6
80
92.5
93.8
楽しい生活をおくっている
77.6
60
60
40
40
20
20
0
1997
2007
2012
0
(年)
1997
2007
2012
(年)
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アラウンド・ゼロ世代に見る身近固め現象
身の周りとの関係性を深めて、時代の荒波を乗り越える子供たち
過去の調査を振り返ってみると、1997年調査では子供たちを「アメンボ・キッズ」と名付けたように、人間関係、社会変化に“スイスイ”と巧みに適応していく、大人顔負け
の子供たちの姿が浮き彫りになりました。その10年後の2007年の調査では、家で休息確保、学校で関係確保、興味関心の場で自我確保する「3点確保」を意図的にせざるを
得ない子供たちの状態が明らかになりました。このように、2007年以前の子供たちは、自分を取り巻く人間関係や生活圏の中を、バランスをとりながら生きていました。
ところが、今回の調査では、一転して、そのバランスを崩さざるを得ない子供たちの様子が見えてきました。友達よりも家族、家の外より中、塾より学校といった、身近な人
や場所に重心をシフトする「身近固め現象」が起きていたのです。
友達 家の外
塾
家族 家の中 学校
身近固め現象
自分を取り巻く人間関
係や生活圏の中でバラ
ンスをとる状態から、
身近な人や場所に重心
をシフトした結果、自
分に近い中心部が濃
く、その周りがやや薄
い状態になること。
東日本大震災
この激変の5年間、子供たちは経済環境・社会変化の中を生きる親の様子を見たり、世の中の不穏さを感じたりしつつ、心のどこかに常に気がかりな気持ちを抱えながら過ご
してきたのでしょう。そうした不安感に打ち勝つためには、人間関係や生活圏をバランスよく行き来するよりも、自分の身の回りに重心をシフトせざるを得なかったのです。
2011年の東日本大震災は、そのような状態をさらに加速させました。子供たちは、身の周りとの関係性を深めることで時代の荒波を乗り越えようとしているようです。
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Copyright © 2012 Hakuhodo Insutitute of Life and Living, Hakuhodo Inc.
本件に関するお問合せ
株式会社 博報堂 博報堂生活総合研究所
http://seikatsusoken.jp/
TEL.03 - 6441- 6450(山本/吉川)
株式会社 博報堂 広報室
http://www.hakuhodo.co.jp/
TEL.03 - 6441- 6161(山野/大野)
2012年9月14日発行
2012.10.31 修正
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