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気 密 性 能 と換 気 計 画
1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 気 密 性 能 と換 気 計 画 2 3 4 ㈲北 欧 住 宅 研 究 所 平 成 17年 2月 14日 執 筆 者 住環境コンサルタント 所長 川本清司 目 次 頁 1.住宅の換気量実態調査からみた換気システムの問題点 1 2.換 気 量 の必 要 性 について 1 3.必要換気量 2 (1)必要換気量はどれくらいか (2)換気量と室内空気質との関係 (3)室内揮発性有機化合物の低減化を図るためには 4.住宅の気密性能と自然換気量 4 (1)住宅の気密性能と換気量について ①住宅の気密性能と温度差換気量 ②住宅の気密性能と風力換気量 (イ)住宅の気密性能による風力換気量 (ロ)住宅の気密性能による風力換気量と温度差換気量(換気稼働時) (2)風の影響を受けないための気密性能と換気レジスターの設置数 (3)気密性能と換気による熱ロス 5.高気密住宅における換気方式 7 (1)第1種熱交換型セントラル換気方式について (2)第3種排気型セントラル換気方式について 第3種換気の設計上の注意点 ①第3種換気システムの場合 (イ)必要な内外差圧と気密性能 (ロ)給気レジスターの設置 (ハ)排気ダクトの設置について (ニ)換気量・排気ファンについて (ホ)換気経路 (ヘ)個別換気について ②第3種換気システムの設計方法 (イ)システム設計上の必要データ (ロ)換気システム設計のフロー 6.価格について(イニシャルとランニング) 第3種と第1種換気システムのコスト上の比較 ①初期設備費(イニシャルコスト) ②ランニングコスト(維持費) 11 1. 住宅の換気量実態調査からみた換気システムの 問題点 平成6年~13年迄の7年間に相当隙間面積 2.5 ㎝ 2 /㎡~0.5 ㎝ 2/㎡の高気密・高断熱住宅80棟の換気 量について実測調査をしました。 (図-1を参照)調査北欧住宅研究所 その結果、必要換気量 0.5 回/h を満たしたのはわず か1棟のみであり、換気回数 0.45 回/h 以上を確保 したのは 10%程度であった。その為、換気量不足に より、窓に結露が発生したり、汚染物質が容易に排 出されていないなどの被害が発生していた。(表-1 換気量不足の主原因参照) 表-1 換気量不足の主原因(第3種の場合) (○印:原因有り) 調査住実測換気量 換気量不足の主原因 宅(典(m3/h) 換気ファンの選圧損抵抗の大きコントローラ目圧損抵抗の大き圧損抵抗の大きファン本体から排気グリルの調 型例) 定ミス(能力不いダクト配管 盛設定の不具合い排気フードをいチャンバーを排気フード迄の整不足 足) 使用 使用 ダクト径が小さ く長い Normal運転 ○ ○ 穴あきタイプに 0.1回/時 (以上に曲りが 2.5mもある 付き調整不能 (50.4m3/h) ○ 多い)(末端Y字 ○ ○ _ A High運転 管分岐) 曲り2ケ処 0.2回/時 3 (100.7m /h) High運転 ○ ○ 穴あきタイプに B 0.29回/時 _ ダクトが一部つ _ _ _ 付き調整不能 3 (129.5m /h) ぶれている(末 曲り2ケ処 端Y字管分岐) High運転 ○ ○ ○ 0回/時 圧損の大きいダ 網付を使用 約5m+曲り2 3 C (0m /h) _ クト使用(合流 _ _ ケ処 ○ 管方式としてい る) 強運転 D 0.26回/時 (120.7m3/h) _ ○ 合流管方式とし ている 強運転 ○ ○ E 0.14回/時 総圧力損失に見合流管方式とし (59.4m3/h) 合わぬファン選ている 定 Normal運転 0.24回/時 _ ○ (100.3m3/h) F 異常に曲りが多 い・ダクトがつ ぶれている _ _ ○ ○ チャンバーとフ ァンの距離が長 曲り2ケ処 すぎる _ ○ 100φフード _ ○ _ ○ _ ○ ○ ○ 調整がなされて いない ○ ※ファン本体に 調整機構が設置 されているが、 設定流量と大幅 に相違するし、 グリル自体では 調整不能 -1- その主な原因を調査してみると以下の様な点が原因で す。 ① 換気システムの圧損抵抗計算を行わずに、そのまま 施工を行っていること。 ②換気システムに、圧損抵抗が大きな排気フード、 ダクト・チャンバーを使用していること。 ③ダクト配管に多くの曲がり部があり、つぶれたり、 折れ曲がったりした施工が行われていること。 ④ファン本体から排気フードまでのダクトの径が小 さく、且つ長い、或いは曲がりが必要以上にいく つも有ること。 ⑤換気システムの総圧損抵抗の計算をすることなく、 ファンの静圧が0の時の最大流量を、そのまま設 計換気量としてファンを選定していること。 逆に言うと、以上の①~⑤の事項を注意すると、 適切な換気量を得る事が出来ることになります。 これらを、設計上の注意点(ポイント)で言い換え ると、次の①~④となります。 ①ダクト配管の圧力損失抵抗を出来るだけ、小さく なるような設計・施工を行うこと(圧力損失抵抗 が小さい設計・施工)。 ②換気システムの総圧力損失抵抗の計算をすること (客観的事前評価)。 ③総圧力損失抵抗を考慮して、適切な換気量が得ら れるファンを選定すること(省電力消費設計)。 ④完成後には公的機関による校正を行った風量測定 器で換気量を測定し、設計風量と同等になるよう 調整を行うこと(客観的事後評価)。 以上述べてきた様に、実際には必要換気量が確保 されていない住宅が大半という実態が実情。 唯、単に換気経路図を作成し、希望する換気量を 配分しただけでは適正な必要換気量を手に入れる 事が出来ないことになります。 2.換気の必要性について 室内で人が健康で快適な生活を行うためには清浄な新 鮮空気を室内に供給する必要があります。 1人が1時間に消費する酸素は約 21 ㍑であり、最低こ れだけの酸素を供給しなければ生きていくことが出来 ません。更に、室内では人体や燃焼器具、喫煙、壁や 床、天井等から空気を汚染する人体に有害な物質や人 間に対して不快な物質が大量に発生します。 (図-2) 従って、汚染された空気を外に排出し、新鮮な外気 を供給する必要があります。人は温度感覚には大変 優れており、暑い時にはクーラを付けたり、寒い時 には暖房をつけますが、臭いや空気の汚れに関して は比較的鈍感で、部屋の空気がかなり汚れていても 気がつかないことが、しばしばあります。 特に日本の従来からの住宅(写真ー1)は隙間が 多く、この隙間によって自然に換気されていました から、特に意識して換気を行う必要がありませんで した。 写真-1●典型的な日本の住宅(桂離宮)大きな開口部と庇に特徴がある しかしながら、昨今は寒冷地北海道を中心にいわゆ る高断熱・高気密住宅が普及し始め、自然換気だけ では必要換気量を賄う事が出来ず、機械換気に頼ら ざるを得ない状況となっています。換気が不足する と室内で様々な障害が生じます。 極端な例は一酸化炭素中毒による死亡事故ですが、 これ以外にも室内が高湿度になることによる結露、 カビ、ダニの発生、最近では建材などから発生する ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物によるア レギーやシックハウス症候群などが問題となってい ます。 -2- 平成15年7月1日施行の改正建築基準法でも、ク ロロピリホスの全面使用禁止、ホルムアルデヒドの 室内空気中濃度 0.08ppm 以下 、 ホ ル ム ア ル デ ヒ ド の 放 散量による施行面積の規制や建材の選択に よる必要換気量の規制(0.5 回/h~0.7 回/h)等が 組み込まれました。 住宅の高断熱・高気密化は室内に快適な温熱環境を 形成するばかりではなく、換気の出入口を特定化し 、換気経路を形成し、室内全体の換気を効率良く働 かす手段でもあります。 高断熱・高気密化は暖房計画と並んで一体不可欠のも のです。 従って、機械換気設備等を利用した計画換気は高断 熱・高気密住宅には必要不可欠のものです。 3.必要換気量 (1)必要換気量はどれくらいか 居住者の健康を保持するためには、住宅内の空気の 質を適切な清浄さに保つ必要があります。 換気は、一般的には、室内で発生する汚染物質を希釈、 或いは除去するために行われます。 通常の部屋においては、汚染物質の種類別に許容濃 度(常にその値以下に保たなければならない濃度) が規定されています。 例えば、一酸化炭素 10ppm、二酸化炭素 1,000ppm 浮 遊粉塵 0.15mg/m3 などです。 居住に伴って発生する汚染物質としては、表ー2のよ うに、各種有害ガスのほかに、粉塵、臭気、水蒸気、 微生物類、放射線物質(ラドン)、ホルムアルデヒド 等の揮発性有機化合物(VOC)などがあります。 汚染物質の種類や量はその部屋の用途や状況によって 様々です。 例えば、燃焼器具を使用する台所では大量の換気が必 要ですし、水蒸気を発生する浴室でも結露を防止する ための換気が必要となります。 また、煙草を1本吸うと約100m3/h の換気が必要と 言われています。従って、これらの汚染物質が想定さ れる発生量に対して、その濃度を許容濃度以下に保つ 為にも、最小の換気量が必要となり、この換気量を「必 要換気量」と呼んでいます。 この必要換気量は、一般的に、一人1時間に20~3 0m3 と言われていますが、厳密にいえば、汚染発生の 状態によって、その都度変化しているのです。 住宅内の各室における必要換気量の目安は、部屋の用 途に伴う汚染物質の発生量や人数等によって、およそ 表-3のとおりです。 ホルムアルデヒド濃度は、換気システムがある場合は 許容濃度指針値(80PPb)以下となっていますが、換気 システムがない場合にはいずれも指針値より多くなり、 中には200PPb を越える住宅も有ります。図ー4は、 換気システムを、ONーOFFした場合のホルムアル デヒド濃度を測定したもので、換気回数を通常の 0.45 ~0.5 回/h とすることによって、指針値よりも、かな り低く出来ることが分かります。 換気システム無し 表-2 室内で発生する様々な汚染質 汚染質 発生源または原因 二酸化炭素 人体、燃焼器具、煙草 一酸化炭素 燃焼器具、煙草 窒素酸化物 燃焼器具、煙草 粉塵 煙草、人体、掃除、一般生活 臭気 人体、調理、煙草、排泄、ゴミ オイルミスト 調理 ホルムアルデヒド 建材、家具 ラドン 土、建材 微生物・菌類 結露、高湿度 水蒸気 人体、調理、入浴、洗面、洗濯、燃焼器具 表-3 各室における必要換気量の目安 居間 25m3/h 人 寝室 25m3/h 人 室の大きさと無関係 3 その他の部屋 25m /h 人 台所 180m3/h 室 室の大きさと無関係:常時使用のための装置容量 浴室・トイレ 20m3/h 室 燃焼器具使用時には燃焼排ガスから計算される換気量が必要 居室には床面積の1/20以上の面積を持つ換気に有効な開口を設けなければならない。 出典・石原正雄 著:建築換気設計、朝倉書店 ふつう、平均的な汚染に対応した換気量があれば多 少の時間の遅れがあっても汚染空気は排出されま すが、安全を見込んで、多少多めに換気量を考えお きます。 室内で発生するVOCなどを含めて考慮すると、通 常時 0.5 回/h 位の換気量が必要となります。 また、人数が増えたり、鍋物料理などで水蒸気が多 量に発生するなどに対して、MAX0.6~0.7 回/h 位まで、増量可能な換気システムを設置することが 必要です。 第3種換気システム 図-3換気システムの有無によるホルムアルデヒド濃度 また、冬期間に必要換気量を確保しょうとすると、 室内空気が過乾燥気味になりますが、そのときは、 ランニングコストのかからない加湿器を使用する などで対処し、換気量を減少させることをしてはな りません。 (2)換気量と室内空気質との関係 図-3は、機械換気システム(主に第3種換気・換 気回数 0.4~0.5 回/h)の有無による住宅内のホルム アルデヒドの濃度との関係を示したものです。 -3- 図-4換気回数の相違によるホルムアルデヒド濃度 (3)室内揮発性有機化合物の低減化を図るためには 室内の揮発性有機化合物(VOC)の発生源は、建材・ 施工材に用いられる接着剤、塗装、保存材、防蟻材 などが主なものです。 従って、室内の揮発性有機化合物の低減化を図るため には、数多くの実験データから得た知見から判断する と、 (1)放散量の出来る限り少ない建材・施工材を用い ること。 (2)新築後約1ケ月間で、最も多く放散されるので、 ベイクアクウトを行う。 (3)換気回数 0.5 回/h 程度の室内換気(全体換気) を行う。 などで、室内VOC濃度低減化を図る上で有効な方法 となります。 4.住宅の気密性能と自然換気量 (1)住宅の気密性能と換気量について ①住宅の気密性能と温度差換気量 建物の内と外に温度差がある時、暖かい室内の空気 は外気よりも軽い為、建物の上方の隙間から外に逃 げようとし、反対に冷たい外気は下方の隙間から侵 入してきます。つまり、暖かい室内の空気のドラフ ト効果(煙突効果)によって、換気が行われます。 従って、この温度差による換気量は、内外温度差と 隙間量(気密性能)が関係しています。表-4に示 されているように、相当隙間面積が小さく、気密性 能が高い住宅では、この温度差換気量は少なくなり ます。 (表-4)住宅の気密性能と内外温度差による換気回数(回/h) 相当隙間面積 2 (㎝ /㎡) 内 外 温 度 差 10℃ 20℃ 30℃ 40℃ 5 0.17 0.33 0.50 0.66 4 0.13 0.27 0.40 0.53 3 0.10 0.20 0.30 0.40 2 0.07 0.13 0.20 0.27 1 0.03 0.07 0.10 0.13 内外温度差30℃時では、相当隙間面積1㎝ 2/㎡以下 の高い気密性能の場合には温度差換気量はおよそ 0.1 回/h以下に少なくなってきます。 但し、この場合は第3種換気では給気口が全閉で、換 気システムは運転停止状態の時です。 第1種換気では運転状態でも停止状態でも同様です。 -4- 又、内外温度差が小さくなってくると、温度差換気量 はやはり少なくなってきます。更に、第3種換気装置 によって、室内の負圧が1mmAq 位生じているときは、 通常の2階建住宅で計算してみると、おおよそ内外温 度差 94.3℃までは温度差換気量は発生しないことにな ります。 従って、実際には温度差換気は全く発生しないことに なります。 ②住宅の気密性能と風力換気量 (イ)住宅の気密性能による風力換気量 私たちが実際に生活しているところでは、無風状態 の時は少なく、風の存在を無視する事は出来ません。 因みに、札幌市近郊を例にとると、冬の平均風速は 2.5~3.0m/秒位で、日最大風速の月平均値は6m/秒 位と云われています。 従って、風の強い日には温度差換気以外に、風の影響 によって更に換気量が増えることになります(風力換 気量という)。 そして、風力換気量は住宅の気密性能と風速によって (表-5)のように異なります。 (表-5) 第1種換気システム稼働時の気密性能と風・温度差との関係 〔条件〕第1種換気システム稼働時・床面積150 ㎡ 必要換気量0.5 回/h(180m3/h)・高さ5.3m・容積360m3 相当隙間面積 2 (㎝ /㎡) 風速 2.5m~ 風速 6.0m/秒の時 温度差換気量 3.0m/秒の時 総漏気量 内外温度差30℃時 (2.5m~3.0m/秒の時(6.0m/秒の時) (回/h) (回/h) (回/h) (回/h) (回/h) 5 0.600 1.512 0.5 1.100 2.012 4 0.480 1.209 0.4 0.880 1.609 3 0.360 0.907 0.3 0.66 1.207 2 0.240 0.605 0.2 0.44 0.805 1 0.120 0.302 0.1 0.220 0.402 0.9 0.108 0.272 0.09 0.198 0.362 0.8 0.096 0.242 0.08 0.176 0.322 0.75 0.090 0.227 0.075 0.165 0.302 0.7 0.084 0.212 0.07 0.154 0.282 0.6 0.072 0.181 0.06 0.132 0.241 0.5 0.060 0.151 0.05 0.110 0.201 0.4 0.048 0.121 0.04 0.088 0.161 0.3 0.036 0.091 0.03 0.066 0.121 0.2 0.024 0.060 0.02 0.044 0.080 0.1 0.012 0.030 0.01 0.022 0.040 0.05 0.006 0.015 0.005 0.011 0.020 0.0 0 0 0 0 0 データ作成者 (有)北欧住宅研究所 所長 川本清司 室内負圧が 0.377mmAq です。 〔条件〕第3種換気システム稼働時・床面積150㎡・給気口5ケ処 しかし、温度差による上・下の圧力差は、それとほと んど同じなので(0.318mmAq)、温度差による換気量は (相当隙間面積14㎝ 2/㎡) 30℃時では発生しないことになり、従って、温度差 必要換気量0.5 回/h(180m3/h)・高さ5.3m・容積360m3 換気量は0回/hということになります。 相当隙間 風速 2.5m~ 風速 6.0m/秒 温度差換気量 総漏気量 面積 3.0m/秒の時 の時 内外温度差30℃ ( 2.5m~3.0m (6.0m/秒の時) この条件下では、第3種換気システムが稼働している 時 /秒の時) (㎝2/㎡) (回/h) (回/h) (回/h) (回/h) (回/h) と気密性能も関係して風力換気量が、6m/秒のときで 5 0.481 1.403 0.380 0.861 1.783 は 0.302 から 0.193 回/hに減少し、温度差換気量は発 4 0.348 1.101 0.280 0.628 1.381 3 0.214 0.798 0.182 0.396 0.980 生しないことが分かります。 2 0.080 0.496 0.083 0.163 0.579 ※1.402 0 0.315 0.024 0.024 0.339 それに対して、第1種換気システムでは稼働・非稼働 1 0 0.193 0 0 0.193 に拘らず、内外共にバランスしているため、機械換気 0.9 0 0.163 0 0 0.163 0.8 0 0.133 0 0 0.133 による室内負圧が発生せずほぼ表-8のように第3種 0.7 0 0.103 0 0 0.103 換気システムよりもかなり自然換気量が多くなります。 0.6 0 0.073 0 0 0.073 0.5 0 0.042 0 0 0.042 つまり、1㎝ 2/㎡の住宅では、トータルでは第1種換 0.4 0 0.012 0 0 0.012 ※0.36 0 0 0 0 0 気システムでは、機械換気量 0.2 回/h(60%回収後) 0.3 0 0 0 0 0 +自然換気量 0.402 回/h=0.602 回/h(実質換気量 0.2 0 0 0 0 0 0.1 0 0 0 0 0 0.902 回/h)となり、第3種換気システムでは、機械換 0.0 0 0 0 0 0 2 2 気量 0.5 回/h+自然換気量 0.193 回/h=0.693 回/h ※0.36 ㎝ /㎡から6m/秒で漏気量が0となる。3m/秒では 1.402 ㎝ /㎡ から漏気量が0となる。 (実質換気 0.693 回/h)となります。 データ作成者 (有)北欧住宅研究所 所長 川本清司 以上の計算結果をまとめると、以下の表の通りとなり ます。 表-6から分かるように、平均風速は 2.5~3.0m/秒 位と最大風速 6.0m/秒の時の換気回数を比較すると、 (表-7)第1種・3種稼働時の1㎝ 2/㎡の住宅の漏気量 これらの気密性能の違いによって以下のように風力 換気量が相当異なります。 第1種・第3種共稼働時、(0.5 回/h=180m3/h) 風速 6.0m/秒のとき 1㎝ 2/㎡・150㎡・給気口14㎝ 2 5ケ処(第3種) 風量漏気量 温度差漏気量 合計漏気量 気密性能が5㎝ 2/㎡で約 1.512 回/h 第3種換気システム 約 0.193 回/h 約 0 回/h 約 0.193 回/h 第1種換気システムのとき 気密性能が2㎝ 2/㎡で約 0.605 回/h 第1種換気システム 約 0.302 回/h 約 0.1 回/h 約 0.402 回/h 気密性能が1㎝ 2/㎡で約 0.302 回/h (表-6)第3種換気システム稼働時の気密性能と風・温度差との関係 第3種換気システムのとき 気密性能が5㎝ 2/㎡で約 1.403 回/h 気密性能が2㎝ 2/㎡で約 0.496 回/h 気密性能が1㎝ 2/㎡で約 0.193 回/h (ロ)住宅の気密性能による風力換気量と温度差換気 量(換気稼働時) 第3種換気では、ファンが稼働しているときは室内が 負圧となるため、その負圧分だけ控除されて風力換気 量も温度差換気量も少なくなります。 一体どの位になるのかは、住宅の気密性能・給気口の 数・第3種換気による総排気量・給気口の相当隙間面 積αA・平均風圧係数・風速・内外温度差等によって 異なります。 表ー8を御覧になると、150m3の住宅で、1㎝ 2 /㎡、給気口(14㎝2)5ケで、第3種換気システム を 0.5 回/hの換気量で運転しているときに発生する (2)風の影響を受けないためための気密性能と換気レ ジスターの設置数 風の影響を出来るだけ受けないレベルで考えるすれば、 やはり6m/秒位の風速下でもあまり自然換気量が増 えないことを考えるべきです。 風速6m/秒の風が建物に当てると、内外の圧力差、つ まり室内で発生する負圧はおおよそ、1mmAq 位(室内 側が負圧)になります。 従って、第3種換気の場合では、1mmAq 位の負圧状態 が生じる程度の機械的な排気量があれば、風速6m/秒 位までの風による自然換気量の増加がなくなるのがポ イントで、このとき、換気装置による排気量=必要換 気量であればよいのです。 第3種換気方式で、例えば、150m2・給気口14㎝2 で5ケ処・必要換気量を180m3/h(0.5 回/h)とし ます。(4~5人家族)。換気装置の排気量(=必要 換気量)が180m3/hを排気しているとき、その負圧 -5- は1mmAq であることが望ましいのです。 負圧が1mmAq となっているときには、6m/秒までの 風が吹いても風力換気量は実際はゼロで、風による影 響は、理論的には全く受けないことになります。 このように、換気による熱損失量の面から見ると、第 1種換気システムの場合、熱交換を行っていても風に よる隙間からの換気量が加わるため、約65%位の熱 回収効率を達成しょうとするならば、表ー8の通り、 0.3 ㎝ 2/㎡以下の高い気密性能が必要であることがわ かります。スウェーデンでは、第1種換気のときの気 密性能は 0.3 ㎝ 2/㎡以下が望ましいと言われています。 それでは、例をあげて説明します。 ①給気レジスターを5個設置するとき (表-8)気密性能値と換気方式による熱ロス上の換気回数の関係 給気レジスター5個分の相当隙間面積(1個当り約 隙間相当 第1種集中熱交換換気システム 第3種集中換気システム 14㎝ 2 )を考慮して、必要な住宅の総隙間相当面積 2 面積 (内外差圧±0mmAq) (室内負圧ーmmAq) (αΑ)は、αΑ=180×0.689-(14 ㎝ ×5)=124.02 2 2 2 (㎝ /㎡) 風力+温度差+機械(熱ロス 実質換気回数 風力+温度差+機械(熱ロス 室内負圧 -70=54.02 ㎝ したがって、54.02 ㎝ ÷150 ㎡=0.36 分)=熱ロス換気回数 分)=熱ロス換気回数 (回/h) (mmAq) ㎝ 2/㎡の気密性能が必要ということになります。 5 1.512+0.5+0.2=2.212 回/h 2.512 1.403+0.380+0.5=2.283 回/h -0.040 この場合、必要換気量180m3のうち、給気レジス 4 1.209+0.4+0.2=1.809 回/h 2.109 1.101+0.280+0.5=1.881 回/h -0.057 ター5個による合計給気量は、(14×5)÷0.685=約 3 0.907+0.3+0.2=1.407 回/h 1.707 0.798+0.182+0.5=1.480 回/h -0.087 101.6m3/h(約 56.4%)となります。 2 0.605+0.2+0.2=1.005 回/h 1.305 0.496+0.083+0.5=1.079 回/h -0.156 1ヶ当りは、約 20.3m3/h です。 1 0.302+0.1+0.2=0.602 回/h 0.902 0.193+0+0.5=0.693 回/h -0.377 残りの 180-101.6=78.4m3/h (43.6%)が隙間から 0.9 0.272+0.09+0.2=0.562 回/h 0.862 0.163+0+0.5=0.663 回/h -0.426 給気されることになります。 0.8 0.242+0.08+0.2=0.52 回/h 0.822 0.133+0+0.5=0.633 回/h -0.484 この場合、風速6m/秒までの強風下でも、風の影響 0.75 0.227+0.075+0.2=0.502 回/h 0.802 0.118+0+0.5=0.618 回/h -0.519 は全くなく、安定して必要換気量180m3/h が得ら 0% れます。又、内外温度差換気量も全く発生しません。 0.7 0.212+0.07+0.2=0.482 回/h 0.782 0.103+0+0.5=0.603 回/h -0.557 なぜならば、【式】(0.004×℃×高さ 5.3m)÷2= 3.6% 1.0mmAq∴℃=93.4℃なので 94.3℃迄は全く温度差に 0.6 0.181+0.06+0.2=0.441 回/h 0.741 0.073 +0+0.5=0.573 回/h -0.649 よる換気量は発生しないことになるからです。 11% 0.5 0.151+0.05+0.2=0.401 回/h 0.701 0.042+0+0.5=0.542 回/h -0.767 19.8% (3)気密性能と換気による熱ロス 2 2 0.4 0.121+0.04+0.2=0.361 回/h 0.661 0.012+0+0.5=0.512 回/h -0.923 150m ・給気口14㎝ で5ケ処の時、次に、第1 27.8% 種(強制給排気型)熱交換換気システムと第3種(強 0.109+0.036+0.2=0.345 回/h 0.645 0+0+0.5=0.5 回/h -1.000 制排気型)換気システムにおいて、気密性能と換気に 0.36 31% よる熱ロスの関係について試算すると、表-8のよう 0.3 0.091+0.03+0.2=0.321 回/h 0.621 0+0+0.5=0.5 回/h -1.137 になります。 35.8% この表より、第1種熱交換換気システムにおいて、熱 0.2 0.060+0.02+0.2=0.280 回/h 0.580 0+0+0.5=0.5 回/h -1.442 回収を考慮して、換気による熱損失量が換気回数 0.5 44% 回/hに相当 す る気密性能は、0.75 ㎝ 2/㎡のときです。 0.1 0.030+0.01+0.2=0.240 回/h 0.540 0+0+0.5=0.5 回/h -1.901 一方、第3種換気システムにおいては、室内差圧が 52% 1.0mmAq 発生する気密性能の時、つまり 0.36 ㎝ 2/㎡ 〔条件〕 以下であれば、風速6m/秒の時でも隙間からの換気 ①風速6m/秒 ②内外温度差 30℃ ③必要換気量 180m3/h(0.5 回/h) ④熱交換 量は0となって、換気による熱損失は 0.5 回 /h と一 効率 60%(必要換気量 0.5 回/h のうち、0.2 回/h 分の換気による熱ロス)⑤容積計 算中の平均天井高は 2.4mとします。⑥第3種集中換気システムは、給気口5ケ処と 定になります。 風力換気量が20%位多くなってもよいと許容する します。⑦床・天井断熱とします。⑧住宅の延床面積は 150 ㎡とします。⑨1階から ならば、第3種換気の場合の気密性能は、0.69 ㎝ 2/ 2階までの高さは 5.3mとします。※:%は実質熱回収効率を示します。 ※:□は 0.75 ㎝ 2/㎡が第1種の 0.5 回/h を示し、0.36 ㎝ 2/㎡が第3種の-1.0mmAq ㎡以下が必要ということになります。給気口5ヶ処設 を示します。 置時で室内負圧 1.0mmAq を確保しょうとするときの ※室内負圧が 1.00mmAq 以上にマイナスになるとき、おおよそ 0.15mmAq 増える 気密性能はおおよそ、0.36 ㎝ 2/㎡以下です。 ごとに給気口1ヶ増すことになります。(そうすると、1.00mmAq となります。) データ作成者 (有)北欧住宅研究所 所長 川本清司 -6- 5.高気密住宅における換気方式 (1)第1種熱交換型セントラル換気方式について 給気系と排気系両方に送風機を設けた方式で、給気 は熱交換設備を経由するとき、排気熱で予熱加温さ れ、室内に供給される。安定した給気量が得られ、 給排気のバランスを変えることにより、室内圧を正 負どちらにも設定できる。 しかし、室内圧を排気側負圧を高くすると、その分 だけ熱回収されないため、熱交換効率が減少します。 従って、給排気量はバランスすることが望ましいこ とになります(図-5参照)。 熱回収方式で、全熱型と顕熱型タイプの2種類があ ります 表-9第1種と第3種換気システムとの相違点 第1種 イニシャルコスト ランニングコスト 図-5 図-6 高い(第3種の約2.5倍)70万~ 安い 80万円位 30万~35万円 高い(第3種の約5.5倍) 安い (電気代) 給気温度 室温より低いが、第3種より高い 低い(但し、給気側に給気加温装 (約15℃位=内外温度差30℃時) 置を設置すると室温と同等以上) ファン数 給気側と排気側にそれぞれ必要 排気側のみ必要 給・排気量の調整 可能 風速による漏気量の発生量 約0.12回/h 約0回/h (第3種より12%多い) 全く発生せず 約0.1回/h 全く発生せず 有り(約50%位回収可能) なし 2 (但し、1㎝ /㎡のとき) 可能(但し、気密性能が高い場合) 平均風速2.1~3.0m/秒 内外温度差による漏気量の発生量 (2)第3種排気型セントラル換気方式について 排気系のみに送風機を設け、給気は自然給気を行う 方式で、室内圧が負圧になるため、室内で発生した 汚染物質が他室に漏れてはならない場合に適して います。 室内を負圧にすることで、その負圧の度合いにより、 風や温度差の影響による漏気量を減少させること ができることになります(図-6参照)。 第3種 (内外温度差30℃時) 熱回収の有無 内外温度差30℃時 給・排気側のフィルタ有無 必ず装着(掃除必要) 必ずしも必要ない(掃除不要) 高気密・高断熱住宅においては、換気計画が適正に行 われなければ、著しい換気不足により、様々な障害が 発生します。 本来、気密化を進めることの目的には換気計画を適正 に行うことにもあるのです。 つまり、気密化とは全ての隙間を埋め尽くす作業では なく、気密化することにより、改めて、新鮮空気の入 口、汚染空気の出口を特定化し、入口と出口の経路を 確立させて、必要換気量を確保することにあります。 それ故、換気計画を忘れた気密化は本末転倒と言わざ るを得ません。 それでは、高気密化された住宅における換気方式では 一体どのようなものなのであるのかについて考えてみ ましょう。 高気密住宅で新鮮な空気の下、健康的で快適な暮らし を実現するには、次の条件が満たされていることが必 要です。 換気経路 汚染空気が逆流したり、長い時間滞留したりしないよ うに、新鮮空気が給気される入口と汚染空気が排出さ れる出口とが、一定の圧力で継っていること、つまり、 換気経路が明確になっていることが必要です。 -7- 換気量 居住者の健康的な生活を維持するためには、建物内の 空気の質を人間にとって最適な清浄さに保たれなけ ればなりません。室内で発生する様々な汚染物質の発 生量に対して、その濃度を許容濃度以下に保つ換気量 が必要となります。一般的には室内許容の半分、一時 間に0.5 回、つまり、0.5 回/h位あれば良いでしょう。 供給空気の加温 導入する新鮮空気をそのまま室内に供給すると、室内 での温度環境を悪化させ、又、直接人体にも冷たい給 気が当って不快になるので、なるべく室温に近い温度 に予熱加温する必要があります。 具体的には、給気加温チャンバーを通して供給する方 法があります(特許工法)。 気流速度 換気によってザワザワした不快感を与えないように、 冬の室温の流速は、0.15m/秒以下とすること。従来の レジスター(外壁の換気口)や、壁にいくつかの換気 扇(パイプファン等)を取り付けた程度の換気方式で は、上述の四つの条件を満たすことは出来ません。高 気密住宅での換気は次に示す一般的に行われている 代表的換気方式の中から個々の住宅に合わせて選択 することが必要です。 第3種換気の設計上の注意点 これまでに述べてきた換気システムと必要な住宅の 気密性能の関係を含めて、第3種換気システムの計 画・設計上のポイントをあげてみましょう。 ①第3種換気システムの場合 (イ)必要な内外差圧と気密性能 機械排気によって内外差圧が 1.0mmAq 位発生するよ うにすると、2階の給気口から排気されるようなこと もほとんどなくなります。 確かに内外温度差が30℃のときには、1階の給気口 には約-0.2mmAq、2階の給気口には+0.2mmAq の圧 力が生じます。 しかし、機械排気によって、理論的に 1.0mmAq の圧力 がかかると、1階の給気口にはー0.2mmAq 分だけ給気 口の開度を小さくし、2階の給気口の開度は逆に+ 0.2mmAq 分だけ大きくして、1・2階共同じ給気量を 確保することができるようになるのです(その場合、 給気口の開度と圧力と給気量のデータ、つまり給気 量・圧力・開度線図のデータがしっかりある給気口を -8- 選択することが必要)。 必要な住宅の気密性能は、風速6m/秒位の風の影響を 受けないようにするために、室内負圧を1mmAq とする ときには次のような点に注意が必要です。 給気レジスターを全くつけないときは、気密性能は 0.8 ㎝ 2/㎡以下が必要ですが、現在の改正建築基準法の解 釈では、外被の隙間を無視するという考えですので、 給気口を居室に設置しないという考えは、確認申請が おりないことになります。 従って、法規通りに居室には給気口を設置することに なります。 その場合、室内に1mmAq の負圧を発生させる気密性能 値の計算は次の式で求めます。 《例》 150㎡の住宅・4LDK・必要換気量199m3 /h (0.5 回/h)・容積 397.5m3のとき 【式】〔(実質延床面積 S ㎡×相当隙間面積 C ㎝ 2/㎡+ 給気口相当隙間面積αΑ×個数)/0.689〕×1.01/1.7mmAq =0.5 回/h の必要換気量 Qm3/h 〔(150 ㎡×C ㎝ 2/㎡+給気口1個当り 14 ㎝ 2×5 ケ 処)/0.689〕×1.01/1.7mmAq =必要換気量 199m3/h(0.5 回/h) (217.71C+101.60)×1.01/1.7mmAq=199m3/h 217.71C+101.60=199m3/h 217.71C=199-101.60=97.4 C=97.4/217.71 ∴ C=0.44738 ≒0.45 即ち、この住宅では、0.45 ㎝ 2/㎡で給気口は4LDK の各居室に1個ずつ、LDKに1個合計5ヶ処設置し、 0.5 回/h、199m3/h の第3種換気システム稼働によっ て、1.0mmAq の室内負圧が確保可能となります。 更に、給気レジスターを付ける場合、その個数が多く なるほど、室内負圧が小さくなるので、その分、より 気密性能を高めて 1mmAq となるようにしなければなり ません。 (ロ)給気レジスターの設置 換気経路を明確にした換気をするためには、より気密 性を高めて給気レジスターを付けなければなりません。 その場合のレジスターの設置は、 ①主寝室(1個)②居間③子供室などの居室の順とな ります。 4LDKなら通常、居間1個+4居室×1個=5個と いうことになります。 レジスターは、天井下20~30㎝位の範囲の所 に設置し、丸型か角型で、廻りから拡散するタイプ がよいでしょう。冷たい外気が直接人体にあたらな いようにするためです。 給気量が 1mmAq の圧力差が室内・外に発生したと きに、最大で30m3/h 以上の給気量が確保可能で 且つ、10段階位に給気量が調整可能なものを選択 すると、変化する室内状況に対応できるでしょう。 レジスターの各室での設置位置は、ドアとの反対 方向で対角線状になるようにするのが一番良いこと になります。 レジスターの給気量は内外圧力差が 1mmAq のときに 30~32m3/h で最大で10段階に調整可能なタ イプがよいでしょう(必要に応じて、増やしたり 、減らしたりできるから)。 給気レジスターの外気側から室内側に向かって、レジ スターの室内壁のカバーの裏に結露防止用の断熱材 が貼り付けられているタイプのものは、給気量開度を 3/10 以下にしなければ結露がしないものがあるので、 そういうタイプのレジスターを選択するとよいでし ょう。 〈写真-2〉ファン本体からの接続配管 (ハ)排気ダクトの設置について 室内排気口の設置箇所は、汚染空気が発生する場 所を中心として、以下のところに設置する。 ① 洗面・脱衣室 ②台所・食堂の食堂側(レンジフ ードから離れているところ) ③ トイレ ④寝室 ⑤浴室(局所換気でもよい) 〈写真-3〉ファン本体+チャンバー直接配管 ⑥二階ホール ⑦納戸 ⑧子供室(ホールに設置して、 経路を形成した場合、子供室内に設置しなくとも可) ・排気量の調整は各排気口で出来ることが必要です。 ダクト配管上の注意 ダクトの配管方法は、各排気口で排気量の確保と調整 ダクトの径は全体の圧力損失抵抗を考慮して、直 がしやすくなるようファン本体から直接配管するか、 径90φmm~100φmm位のものを使用します。 ファン本体にチャンバーを接続してそこから直接配 ファン本体から外部のセルフードまでのダクトの径は 管するものとします。 各排気口の流量が全て集合する大風量となるので、太 (写真-2、3参照) めのダクトを使用しなければなりません。 125φmm~150φmm位でファンからセルフー ド迄の距離も1m以内にします。 外部への騒音防止のため、一部のダクト(1m中 0.5 m位)は、消音ダクトを使用しましょう。 ファン本体からセルフード迄の配管は絶対に曲げては いけません。 -9- その他の各排気口に至るダクト配管の曲りは最大で 4曲り位最小で2曲り程度で施工すると低圧損の配 管となり、省電力で最大流量も多くなり、余裕の換気 システムとなります。又、天井断熱している小屋裏に 配管するときは、断熱層内に配管するか断熱ダクトと します。 屋外セルフードの注意点 屋外の排気口(セルフード)は120φ~150φ程 度のものとし、目づまりを防止するため、防虫網のつ いていないガラリタイプのものを使います。 (ニ)換気量・排気ファンについて 必要最低換気量(排気量)は30m3/h・人ですが 居住者が少ない場合でも、建物の建材や日用品からの VOC放散などを考慮して、建物全体の容積の 0.5 回 /h(容積の半分)位必要です。 《例》150 ㎡×2.4m=360 ≒180m3 360m3×0.5 回/h=180m3/h という具合に設定 します。吹抜がある場合には、その部分も容積の対象 とします。 ②第3種換気システムの設計方法 (イ)システム設計上の必要データ システムの設計に当たっては、以下の換気部材の圧力 損失抵抗値に関するデータが必要となります。 ①排気用直管ダクトの圧力損失 ②排気用曲り管の圧力損失 ③排気フード用接続ダクトの圧力損失 ④Y字分岐管の圧力損失 ⑤チャンバーの圧力損失(チャンバー使用の時) ⑥排気フードの圧力損失 ⑦排気グリルの圧力損失 ⑧給気グリルの圧力損失 ⑨使用するファン本体のP-Q特性曲線図 ⑩使用するファン本体の電力-流量曲線図 ⑪使用するコントローラの電力-流量曲線図 新築時に、適正な換気量を確保するための設計方法に ついては、以下の設計フロー図ー7のように行います。 (ロ)換気システム設計のフロー 換気システムの設計の流れは、図-7の通りです。 (図-7)換気システムの設計の流れ 換気ファンの能力は全圧力損失抵抗計算を行い、設 計必要換気量と圧力損失抵抗値を圧力・流量曲線にプ ロットし、設計換気量が確保可能か否か確認すること。 又抵抗曲線を作成し、最大流量よりも下廻る位置で運 転出来る余裕のあるファンを選択することが必要で す(詳細は、第3種換気システムの設計の方法参照)。 1 必要換気量の計算 2 必要換気量の配分 3 給気口設置数の算定 4 換気システム配管経路図の作成 (ファン本体・排気グリル・チャンバーの位置) 5 排気ダクトの長さ、曲り管の数を求める 6 各配管の圧力損抵抗値の算出 (ホ)換気経路 a排気グリルを除いたチャンバー(又はファン)迄の圧力損 室→廊下などへの経路はドアのアンダーカット(10 ~15mm 幅)でよいところ以外は、排気用ダクト(消 音ダクト)又は排気口を設置するなどの工夫が必要 です(和室では充分に隙間があるので特にアンダ ーカットする必要はありません)。 失抵抗値の算出 bチャンバー(又はファン)迄の圧力損失抵抗値が等しくな るように各排気 グリルの開度の設定 cチャンバー(又はない場合)・ファン又はチャンバーから 排気フードに至 (ヘ)個別換気について 個別換気とするところは①浴室②レンジ廻り(逆 止防止弁ダンパー付)などです。浴室については換 気システムに組み込んでも差しつかえありません。 乾燥室・洗面・脱衣室(洗濯乾燥に使うとき)・ 観葉植物などが多い所では通常の換気システムの中 で処理し、少し、通常より設定量の配分を多くするこ とで十分です。あえて、個別換気扇を設置する必要は ありません。設定量は30m3/hもあれば良いでしょ う。 - 10 - る接続管及び排気フードの圧力損失の算出 7 全圧力損失抵抗値の算出 8 ファンP-Q特性曲線に基づく設定必要換気量の評価により、設定 換気量確保可能なファンの設定 9 全圧力損失抵抗値と設定換気量に基づき、P-Q特性曲線に抵抗 曲線を作成 10 抵抗曲線・電力ー流量曲線及びコントローラ実測データにより、 各コントローラ目盛り別、換気量と電力を算出 11 各コントローラ別、換気量に基づく1ケ月当りの消費電力代を算出 換気量設計にあたっては、図-7の設計フローに 図-8 したがって行うものの、特に注意すべき点は、当然 のことながら、全圧力損失計算を行い、ファンのP -Q(圧力-流量)特性曲線との照合を行い、それ ぞれの換気量調整コントローラ目盛(強・中・弱・ 微弱)上で、必要換気量が得られるように設計しな ければなりません。 又、出来るだけ低圧損な設計を行い、換気システム稼 働時における1ケ月当りの電気代も200m3/h位 で400円前後におさえたいものです。 6.価格について(イニシャルとランニング) 図-8は第3種換気システムにおけるファンのP 第3種と第1種換気システムのコスト上の比較 -Q特性曲線と換気システムの全圧力損失値(抵抗曲 比較条件は、実質延床面積150㎡・実質容積 397.5 線)との関係を実測したある例を示したものです。 m3・気密性能1㎝2/㎡・冬期間平均風速 2.5m/秒・ 抵抗曲線とP-Q特性曲線の交点が、施工された換 冬期間平均内外温度差25℃・必要換気量 0.5 回/h= 気システムにおける換気量となります。図中の(a) 約200m3/hとします。 3 の抵抗曲線では(強)でもわずか 59.4m /hしか確 保出来ず、総圧力損失抵抗値は 15.3mmAq と大きな値 ①初期設備費(イニシャルコスト) になっています。 約 150 ㎡位の住宅で比較すると、個別換気設備費を除 それに対して、図中の(b)の抵抗曲線では(強)で いて、第1種熱交換換気システムで約 70 万~80 万円位 190m3/hで、9.9 mmAq となっています。 (6ケ処排気・5ケ処給気)第3種換気システムで約 190m3/hが必要換気量=0.5 回/hと仮定すれば、 30 万~35 万円位(6ケ処排気・5ケ処給気)です。コ この場合、(b)のような設計を行い、少なくとも全 スト比較では、第1種は第3種の約 2.3 倍のコストと 圧力損失抵抗値を 9.9 mmAq 以内に収まるような、配 いうことになります。 管設計を行うことが必要です。 圧損抵抗値を出来るだけ小さくすることが、必要換気 ②ランニングコスト(維持費) 量(=設計換気量)を確保する上での最も重要なキー 第3種換気システムの場合、200m3/hの換気量を ポイントとなります。 確保する場合、低圧損で適正な設計をすることによっ (a)のように、必要換気量が得られない最大の原因 て、25W/h位の電力で運転可能となります。 は換気システムの設計上の圧損抵抗が大きすぎるこ 従って、1ケ月当りの電気代は、0.025 KW×24h×30 とに起因しているのです。 日×約 24 円/KW=約 432 円/月となります。 計画通りに、必要換気量を確保するためには、換気シ 換気よる熱損失係数は、200m3/h×0.3KCal/m3・h・℃ ステム全体の圧損抵抗を正しく計算し、ファンのP- ×25℃=1500 KCal/h・℃となります。 Q特性曲線と計算された全圧力損失値に基づいて作 自然換気による換気量はこの条件下では全く発生しま 成された抵抗曲線から換気量を求めることが基本と せん。 なるのです。 その理由は、 【式】 〔(150 ㎡×1.0 ㎝ 2/㎡+5 ケ処×14 ㎝ 2 )÷0.689〕 ※設計の詳細が知りたい方は、北海道住宅環境協議 ΔP1/1.7=200m3/h 会発行、北欧住宅研究所所長川本清司著「住宅にお ∴ΔP≒0.45mmAq の室内負圧となり、風力換気の 2.5 ける集中排気型換気システムの設計法」を御覧下さ m / 秒 の 約 0.25 ~ 0.3mmAq ・ ※ 内 外 温 度 差 25 ℃ の い。 0.27mmAq をいずれも室内負圧が上廻っているために発 生しないのです。 ※内外温度差25℃時の上・下圧力差 簡易式【式】(0.004×25℃×5.3m)÷2=0.265 ± 0.27 mmAq - 11 - 第1種熱交換換気システムの場合は一般的に電気代 は高くなります。 熱交換エレメントやフィルターがシステムに組み込 まれており、又給気と排気の双方に送風機が必要だか らです。200m3/hの給・排気量を確保しょうとする と約 200W/h位、1ケ月当りの電気代は 0.200KW×24h×30 日×約 24 円/KW=約 3,456 円/月 となります。 表-10で比較するとお分かりのように、実質的には、 第1種熱交換換気システムは第3種換気システムの約 1.3 倍のランニングコストがかかるシステムであると いうことになります。 換気よる熱損失係数は、 (イ)200m3/h×0.3KCal/m3・h×25℃×※0.4= 600KCal/h ※60%の熱回収の場合 (ロ)※札幌近郊での冬期間の平均風力換気量及び 平均温度差換気量合計 80m3/h 80m3/h×0.3KCal/m3・h・℃×25℃= =600 KCal/h 実質的には合計 1.200 KCal/hとなります。 ※札幌近郊での冬期間の平均風力換気量及び平均温 度差換気量とは冬期間の平均風速は、2.5m/秒~3.0 m/秒であるから、平均風力換気量は約 0.12 回/h、 平均温度差換気 0.08 回/hとなります。 又、冬期間の平均温度差は約25℃とすると、0.08 回/hとなります。 従って、397.5m3×0.2 回/h=79.5≒80m3/hとい うことになります。 第1種と第3種と実質的ランニングコストを比較す ると以下の表のようになります。 (表-10) 第3種換気システム 1ケ月当りの 電気代 1ケ月当りの 電気代による 熱損失量 (総熱損失量 の)灯油換算 第1種熱交換換気システム 432 円/月 3,456 円/月 1500KCal/h×24h×30 日=108,000 KCal/1 ケ 月 108,000KCal/7416 KCal=145.6 ㍑ ∴145.6 ㍑×40 円/㍑ =5,824 円/月 1200KCal/h×24h×30 日 =864,000 KCal/1 ケ月 1ケ月当りの 6,256 円/月 864,000 KCal/7416 KCal =116.5 ㍑ ∴116.5 ㍑×40 円/㍑ =4.660 円/月 8,116 円/月 合計金額 - 12 -