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f
rom
NTTコミュニケーションズ
RFID情報流通プラットフォームの取り組み
RFID(Radio Frequency Identification)とは,微小な無線チップに格納された情報を,遠隔から無線通信によって読取り
や更新可能とする個体認識技術のことです.近年,RFID関連情報をネットワーク上で流通させることにより,さまざまな分野で
実証実験の実施やサービスの実用化が進められています.NTTコミュニケーションズは,ネットワーク上でRFID関連情報を安
心・快適に利用するための基盤となる「RFID情報流通プラットフォーム」の開発を行い,サービス化のための実証実験に取り組
んでおり,ここでは,RFID情報流通プラットフォームの紹介と,2005年度に取り組んだ実証実験を紹介します.
RFIDタグの利用状況
止する必要があります.また複数の利用者や企業で情報が
共有されるため,アクセスするユーザの権限に応じた適切
近年,RFIDを利用するシーンでは,RFIDタグにモノを
な情報開示制御の仕組みも必要になります.
一意に識別するID(タグID)だけを記録し,IDに紐付けら
これらの課題を解決するために,NTTコミュニケーショ
れたモノが存在する場所とその時刻などの位置情報や,名
ンズは,RFID情報流通プラットフォームを開発しています.
称や価格などの属性情報は,ネットワーク上のデータベー
全体構成を図1に示します.RFID情報流通プラットフォー
スシステムで管理されています.この仕組みを利用すると,
ムは,RFIDタグが貼付されたモノの位置情報や属性情報に
ユーザはタグリーダでタグIDを読み取るだけで,データ
ついて,ユーザの権限に応じたアクセス制御を実現する新
ベースシステムが管理するモノの位置情報や属性情報の参
しい仕組みであり,プライバシ制御システムとネットワー
照や登録ができるようになります.またRFIDタグを使うと,
ク利用型RFIDシステムで構成されています.
バーコードでは実現が難しかった一括読取りや個体識別が
プライバシ制御システムとは,ユーザID,端末IDそして
可能になるため,効率的な検品作業や在庫管理ができるよ
同じ権限を割り当てられたグループを識別するID(ロール
うになります.現状は,RFIDタグを使用したモノの管理に
ID)の組合せを管理し,ユーザIDと端末IDを使用してアク
ついて,企業内に閉じて行われるケースがほとんどですが,
セスするユーザを認証します.
今後,さまざまなモノにRFIDタグが貼付され,至る所にタ
ネットワーク利用型RFIDシステムとは,タグIDで個体識
グリーダが設置される環境が整えば,複数の企業間および
別されたモノの位置情報や属性情報を一元管理し,ロール
企業グループ間におけるサプライチェーンマネジメン
IDに応じた実行可能な処理とアクセス可能な情報の範囲の
ト(SCM)や複数拠点の物流管理などの効果的なソリュー
制御を行います.
ションになると期待されています.
ネットワーク利用型RFIDシステムに処理要求を行う際,
まずRFIDターミナルはサービスを利用するユーザのユーザ
RFID情報流通プラットフォームの概要
IDと端末IDをプライバシ制御システムに送信します(図1
①).次にプライバシ制御システムは,受け取ったユーザID
データベースシステムが個別に位置情報や属性情報を管
と端末IDを用いて認証し,認証結果であるロールIDを
理する中で,SCMにおけるモノの位置情報や属性情報を閲
ネットワーク利用型RFIDシステムに送信します(図1②).
覧する場合,関連する個々のデータベースシステムと接続
ネットワーク利用型RFIDシステムは,ロールIDを受け取る
しなければならない可能性が出てきます.この場合,サー
と,セッションNoというネットワーク型RFIDシステムへ
ビスを利用するユーザは,個々のデータベースシステムご
のアクセスを期間限定で許可する乱数を発行し,これを
とに接続性を考慮しなければなりません.ここで,各デー
RFIDターミナルにプライバシ制御システムを介して送信し
タベースシステムの情報を一元管理する新たなシステムが
ます(図1③).セッションNoを受信したRFIDターミナル
あれば,ユーザはこのシステムに対して処理要求を行うこ
は,セッションNoと処理内容をネットワーク利用型RFID
とで必要な情報を入手できるようになります.
システムに送信します(図1④).最後に,ネットワーク利
なお,この新しい仕組みは,ネットワーク上に設置され
用型RFIDシステムは,受け取ったセッションNoからロー
るため,アクセスするユーザを認証し,不正アクセスを防
ルIDを検索し,ロールIDで規定される権限に応じた処理結
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NTT技術ジャーナル 2006.8
ネットワーク利用型
RFIDシステム
(a)RFIDターミナルに対して,
ロールIDが通知されない
ロールID
プライバシ
制御システム
セッションNo
3
2
処理内容
セッションNo
5
処理結果
セッションNo
4
3
端末ID
ユーザID
1
(c)セッションNoを利用することで,一定
期間ネットワーク利用型RFIDシステム
に直接アクセスできる
(b)ネットワーク利用型RFIDシステム
に対して,ユーザIDを通知しない
ようにできる
RFID
ターミナル
図1 RFID情報流通プラットフォーム概要
果をRFIDターミナルに返します(図1⑤)
.
本仕組みには3つの利点があります.第1は,RFIDター
ミナルにロールIDが通知されないので,ロールIDの悪用に
せみネット”(倉敷市光ネットワーク)を活用し,児童の安
全と地域コミュニティの連携強化に貢献する実証実験を実
施しました.
よるネットワーク利用型RFIDシステムへの不正アクセスを
本実証実験を行うために,パッシブ型の電子タグを持っ
防止できます.第2は,ネットワーク利用型RFIDシステム
た児童が,自分の電子タグを通学路に設置したタグリーダ
にユーザIDなどが 通知されないので,ユーザのネットワー
にかざすことにより,その児童が通過した場所・時刻など
ク利用型RFIDシステムへの匿名アクセスを確保できます.
の情報(移動履歴)がネットワーク経由で保護者や学校の
第3は,セッションNoを導入することで,RFIDターミナ
先生などに通知できる仕組みを構築しました.その仕組み
ルは一定期間ネットワーク利用型RFIDシステムに直接アク
を図2に示します.
セス可能となり,プライバシ制御システムの負荷の集中回
避や,処理時間の短縮が図れます.
本プラットフォームを利用した実証実験を,2005年度
に2件実施しましたので,その事例を紹介します.
本仕組みの中で,メール通知サービス(移動履歴をE
メールで通知)
,子供行動日記サービス(移動履歴をWebサ
イトから確認),出席情報サービス(小学校への出席状況を
Webサイトから確認)といった3つのサービスを実証実験
への参加同意者に対して提供しました.
子供の安心・安全実証実験
また本実証実験にて,ネットワーク上でのセキュリティ
確保に関する検証と,電子タグ情報のアクセス制御に関す
NTTコミュニケーションズは,総務省が2005年度に実
る検証の2つの技術検証を行いました.
施した「電子タグの高度利活用技術に関する研究開発」に
(1)
基づき,岡山県倉敷市において,IPv6(Internet
ネットワーク上のセキュリティを確保するために,倉敷
Protocol Version 6)地域公共ネットワークである“かわ
市光ネットワークを活用し,IPv6における高度なセキュリ
セキュリティ確保に関する検証
NTT技術ジャーナル 2006.8
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NTTコミュニケーションズ
児童・生徒
1
学校
4
2
5
3
6
倉敷市実証実験フィールド
位置情報
データベース
プライバシ
制御システム
ネットワーク利用型
RFIDシステム
1
2
3
4
5
6
東京側設置システム
4
5
6
2
3
1
2
6
4
5
1
2
3
4
5
6
倉敷市実証実験フィールド
図2 倉敷市実証実験概要
ティ技術の検証を行いました.具体的には,倉敷市のシス
異なる範囲のタグID(各生徒に割り当てられるID)の移動
テムと,東京の検証室に設置されるネットワーク利用型
履歴を提示できることを検証しました.
RFIDシステムとの間でやり取りされるデータを暗号化しま
した.2004年度は,屋内における高速光回線環境下での,
複数の暗号化方式〔SSL(Secure Socket Layer),
化粧品を対象とした販売促進に向けた
実証実験
IPsec(Internet Protocol Security)〕の接続手順やパ
フォーマンスの比較検証を行いましたが,2005年度は,
NTTコミュニケーションズ,㈱セイジョー,デジタル
より実践的な環境を想定し,屋外における複数のネット
ファッション㈱の3社にて,化粧品の販売促進を実現する
ワーク環境下(光,ADSL,無線LAN)での,複数の暗号
ための実証実験を情報通信研究機構(NICT)の情報家電
化方式におけるパフォーマンスの比較検証を行いました.
IPv6化関連研究開発事業と連携し,実施しました.
(2)
電子タグ情報のアクセス制御に関する検証
具体的には,デジタルファッションが開発した「メイク
実験参加者のプライバシ侵害を防止するために,プライ
アップシミュレータ」アプリケーションとRFID情報流通プ
バシ制御システムで管理する位置情報データベースへのア
ラットフォームをネットワーク連携させたRFID連携メイク
クセス許可範囲の制御を行いました.2004年度は3種類
アップシミュレータを開発し,RFIDタグを貼付した化粧品
の権限を設定し,それぞれに対して異なる範囲の属性情報
を読み込むことによってカメラに映されている顔映像に仮
を提示できることを検証しましたが,2005年度は5種類
想メイクアップを施すことを可能にしました.そのRFID連
程度の権限(生徒・保護者・学校の先生・PTAパトロー
携メイクアップシミュレータを,ヘルスケアセイジョーの
ル・ちびっこランド管理者)を設定し,それぞれに対して
実店舗(東京 茶沢通り店)内の化粧品売り場に設置しま
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NTT技術ジャーナル 2006.8
NTTコミュニケーションズ データセンタ
RFID情報流通プラットフォーム
化粧品に貼付されているタグ
IDにより化粧品情報を検索
位置情報
化粧品情報
推薦化粧品情報
オープンネットワーク(IPv6)
メイクアップ画像
好みの複数化粧品をタグリーダに
載せるだけで化粧品情報を取得
タグリーダ
メイクアップ
シミュレータ
化粧品情報
RFIDタグを取り付けた化粧品をタ
グリーダにかざすと,プラット
フォームに格納されている製品情
報を取得し,カメラ入力された顔
映像にメイクアップが施された
り,関連情報が掲載される
セイジョー 茶沢通り店
図3 化粧品を対象とした実証実験概要
す.来店した買い物客がRFIDタグ付化粧品から好みの商品
できました.
を選び,RFID連携メイクアップシミュレータに接続された
タグリーダに置くことで,手に取った化粧品の情報がIPv6
今後の取り組み
ネットワークを介してRFID情報流通プラットフォームにて
検索され,その化粧品情報に基づき,カメラで撮影されて
技術面では,前述の子供の安心・安全分野および化粧品
いる利用ユーザの顔のリアルタイム映像に対して,「この化
分野での実験結果を基に,RFID情報流通プラットフォーム
粧品を自分に使ったらどうなるか」というメイクアップシ
の機能拡充を行います.
ミュレーションを実現します(図3).またその化粧品情報
マーケット面からは,子供の安心・安全分野および化粧
や,お薦めの化粧品なども同時に画面上で紹介され,買い
品分野について,パートナと連携し,新市場開拓に向けた
物の参考とすることができます.
活動を展開していきます.
本実験では,化粧品にRFIDタグを付けることで化粧品管
理が容易になるというRFIDタグ本来の利点以外に,化粧品
を購入するお客さまにとっては,「テスター(販促用サンプ
ル)を塗ったり落としたりという手間と肌への負担を減ら
せる」「何度も試せるので,自分で納得のいく化粧品選びが
しやすい」という利便性の効果が図れました.一方,販売
店・化粧品メーカにとっては,「商品が試された回数から売
◆問い合わせ先
NTTコミュニケーションズ
先端IPアーキテクチャセンタ
ユビキタスプロジェクト
TEL 03-6800-3380
FAX 03-5365-2990
E-mail [email protected]
れ筋情報が分かる」「お薦め商品の紹介機能により,客単価
の向上が見込める」といった販売促進の効果が図れました.
またシステム動作状況は良好,かつ実フィールドで運用で
きることが 確認されました.ユーザアンケートでも良い結
果を得られ,かつ購買意欲向上へ寄与していることが確認
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