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脂質異常症(高脂血症)

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脂質異常症(高脂血症)
6
2016
6
2016 June
脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症とは
脂質は、細胞を作る材料に使われたり、体を動かすエネ
ルギー源になったりするなど、体にとって欠かせない栄養
素です。健康な状態では、血液中を流れる脂質は一定の量
にコントロールされていますが、何らかの原因で一定量よ
り増えること(一部の脂質については減ること)があり、そ
の状態を「脂質異常症」と呼んでいます。
脂質には、増えすぎると血管に負担をかけて動脈硬化
(=血管が硬くもろくなったり、血管内が狭くなって血が流
れづらくなったりした状態)を
進行させる「LDLコレステロー
ル」、
「 中性脂肪」や、逆に余分
なコレステロールを回収して
動 脈 硬 化 を 防ごうとする
「HDLコレステロール」などが
あります。
脂質の種類
LDL
コレステロール
働きなど
肝臓で作られたコレステロールを全身に
運ぶ役目をしている。多くなりすぎると、
血管の内壁に溜まっていき動脈硬化を
進行させる。
別名、悪玉コレステロール。
体を動かすエネルギー源として使われ
る。余った分は、内臓や皮下組織に蓄え
られるが、必要以上に増えると動脈硬化
中性脂肪
(トリグリセライド) を進行させる物質を増やす。
極端に多くなるとすい臓の障害を起こ
し、
すい炎の原因にもなる。
HDL
コレステロール
全身の組織から余分なコレステロールを
回収し肝臓に戻す役目をしている。別
名、
善玉コレステロール。
HDLコレステロールが減ると、
使用されず
に余ったLDLコレステロールなどが回収
されずに血液中に残り、動脈硬化を進行
させる。
脂質異常症は、
血液中のLDLコレステロールや
中性脂肪が多すぎる状態や、HDLコレステロールが少なす
ぎる状態のことを言います。
疾患名
どんな状態か
診断される基準値1)
(空腹時血液検査)
高LDL
コレステロール血症
LDLコレステロール
が多すぎる
140mg/dℓ以上
高トリグリセライド
血症
中性脂肪(トリグリ
セライド)
が多すぎる
150mg/dℓ以上
低HDL
コレステロール血症
HDLコレステロール
が少なすぎる
40mg/dℓ未満
脂質異常症自体には自覚症状がなく、脂質異常症である
かどうかは、血液検査で調べないと分かりません。しかし、
自覚症状がないからといって脂質異常症を放っておくと、
動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳卒中(脳血管障
害)などを招く要因になります。したがって、治療により余
分な脂質を下げておくことがたいへん重要です。
なお、脂質異常症の中で、遺伝が関係する「家族性高コレ
ステロール血症」では、肘や膝、アキレス腱の中に特徴的な
コレステロールの塊(黄色腫:おうしょくしゅ)や黒目の周り
に白い輪(角膜輪:かくまくりん)ができることがあります。
脂質異常症の原因と治療
脂質異常症は、遺伝によるものもありますが、多くの場合
では食事や運動などの生活習慣が深く関係しています。
したがって、脂質異常症の治療の基本は食事療法と運動
療法で、
これらを根気強く続けていく必要があります。
2016 年 6 月号
食事、
運動などで気をつけること2-5) 分類
主な薬
働きと特徴
スタチン
クレストール、
リピトール、
リバロ、メバロチン、
リポバス、ローコール
コレステロールの合成
を抑える。
LDLコレステロールを
効果的に低下させる。
※主治医と相談してから始めましょう
食物繊維を多く含む野菜類・海藻類・豆類などを
積極的にとる。
■ LDLコレステロールを低下させるために
■ 中性脂肪を低下させるために
食事は腹八分目にする。
糖質が多いもの
(お菓子、
清涼飲料水など)
や
アルコールを控える。
青魚
(サバ、
イワシ、
サンマなど)
を多く食べる。
肥満を解消・予防するために、摂取カロリーの
コントロールを行う。
主にLDLコレステロールを下げる
食事
動物性脂肪
(肉類・乳製品など)
を含む食品を減らす。
植物性脂肪
(大豆類など)
を含む食品を増やす。
コレステロールを多く含む食品(鶏卵、
魚卵、
レバーなど)
を減らす。
※動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品も
さまざまな栄養素が含まれているので、
まったく
食べないのではなく、
食べ過ぎないようにする。
小腸
コレステロール
ゼチーア
トランスポーター
阻害薬
クエストラン、
コレバイン
腸で胆汁酸と結合し、胆汁
酸の排泄を促す。減った胆
汁酸を補うために、胆汁酸
の原料であるコレステロー
ルが消費され減少する。
プロブコール ロレルコ、
シンレスタール
胆汁中へのコレステロー
ルの排泄を促進し、ま
た、
コレステロールの合
成も抑える。
黄色腫の除去を期待し
て使われることも。
陰イオン
交換樹脂
■ HDLコレステロールを上昇させるために
トランス脂肪酸(マーガリンなど)の過剰摂取を避ける。
体重
食事と運動をコントロールして、
標準体重を維持する。
※標準体重(kg)
=身長(m)
×身長(m)
×22
(成人用)
食事療法と運動療法で脂質異常が改善しない時や、
すで
に動脈硬化が進行している場合、家族性コレステロール血
症の場合などは、
薬による治療が行われます。
薬による治療
中であっても、食事療法と運動療法は継続していくことが
大切です。
脂質異常症の治療薬
患者さんの病態
(LDLコレステロールが高いのか中性脂肪
が高いのかなど)
に応じて、
適切な薬が処方されます。
1つの
薬で検査値が改善しない場合は、
薬の量を増やしたり、
別の
薬を追加したりします。
【参考文献】
PCSK9
阻害薬
主に中性脂肪を下げる
運動
無理のない運動を毎日30分以上行う。
(ウォーキング、
水泳など)
は脂質代
※有酸素運動
謝の改善
(特にHDLコレステロールの増加)
に有効
小腸でのコレステロー
ルの吸収を抑える。
スタチンと一緒に飲むこと
で、
相乗効果が期待できる。
レパーサ
LDLコレステロールを肝
臓に取り込んで減らす。
今年発売の新薬。脂質異
常症によって心臓の血管
の 病 気 が 起こりやすく
なっている人に、スタチン
と一緒に使う注射薬。
フィブラート ベザトール、
リピディル
主に中性脂肪の合成を
抑えるとともに、
分解を
促進する。
HDLコレステロールを上昇
させる作用も比較的強い。
EPA製剤
エパデール、
ロトリガ
肝臓からの中性脂肪の
分泌を抑えるなどの作
用をもつ。
魚の油の成分。
ニコチン酸
誘導体
ユベラN、
コレキサミン
主にコレステロールの
代謝を改善する。
たいへん稀ではありますが、
脂質異常症の薬の中
(スタチン
やフィブラートなど)
には筋肉障害を起こすものがあります。
薬の使用中に強い筋肉痛や手足のしびれ、
赤褐色の尿などが
出た場合は、
薬を中止して主治医に相談してください。
1)
日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版
2)
アルフレッサ:SAFE−DI 薬効シリーズ 脂質異常症
3)
アステラス製薬:なるほど病気ガイド 脂質異常症
(高脂血症)
https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/index.html 4)
オムロンヘルスケア:生活習慣病ガイド 脂質異常症 http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/guide/
5)
塩野義製薬:病気の知識 脂質異常症
(高脂血症)
と動脈硬化 http://www.shionogi.co.jp/wellness/diseases/index.html 
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