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低栄養で生じる病態

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低栄養で生じる病態
NSTセミナー
2006.5.31
低栄養で生じる病態
外科
松本敏文
井上 裕
栄養状態
生体が生命活動を営むうえで必要とされるエネルギー
を産生する栄養素、ならびにそのエネルギーを活用・
利用するための代謝関連物質の需要・貯蔵状態を評価
する総合的な指標
栄養状態を形成するもの
① エネルギー基質
② 水分
③ 電解質
④ ビタミン
⑤ 微量元素
⑥ 身体構成組織
⑦ 代謝動態を制御する生体反応物質
栄養障害(不良)
多種多様の物質(栄養素)の身体への必要と摂取の
不均衡から生じ,欠乏,依存,毒性あるいは肥満の
症候群が起こった状態
栄養不足(低栄養):栄養素が供給、摂取不足
栄養過多(高栄養):栄養素が供給、摂取過剰
低栄養
現在、一般的な日常生活にて、極端な栄養不良に
遭遇することは稀で、虐待や拒食・過食症などの
疾患時にみられる。もっとも普通にみられるのは、
入院患者である。
入院患者の 30 - 50% にみられる
栄養障害や栄養療法についての重要性が急速に認識され、NST
をはじめとする栄養治療法の発展はめざましく、栄養療法に関
する知識と技術は医療スタッフが必要最低身につけるべき必須
の治療法となっている。
低栄養の原因
・不十分な摂取
・吸収不良
・全身性の喪失(下痢、出血、腎不全など)
・感染
・薬剤依存
低栄養状態の鑑別
1.マラスムス(Marasmus)
タンパク質、エネルギーともに摂取不足による
骨格筋、貯蔵脂肪の著減
血清タンパク濃度は維持
浮腫は出現しにくい
2.クワシコール(Kwashiorkor)
タンパク質の摂取不足
骨格筋からのアミノ酸放出と脂肪組織からの遊離脂肪酸抑制
血清タンパク濃度減少(浮腫出現)
肝臓での脂肪酸の酸化障害、分泌障害(脂肪肝)
低栄養状態の鑑別
マラスムス(Marasmus)
低栄養状態の鑑別
クワシコール(Kwashiorkor)
低栄養によるNitrogen Death(窒素死)
健常時
Lean Body Mass 100%
筋肉量の減少(骨格筋、心筋、平滑筋)
内臓蛋白の減少(アルブミンなど)
免疫能の障害(リンパ球、多核白血球、抗体、急性相蛋白)
創傷治癒遅延
臓器障害(腸、肝臓、心臓)
生体適応の障害
Nitrogen Death
Lean Body Mass 70%
日本静脈経腸栄養学会:コメディカルのための静脈・軽腸栄養がイドライン、2000
蛋白エネルギー栄養障害
Protein Energy Malnutrition (PEM)
米国Nutrition Care Management Institute
・PEMリスクの個数と平均在院日数は相関
・入院3日以内からの栄養管理は、平均在院日数を
2.1日減少させる
低栄養の身体所見
体重減少、食欲不振、活動性低下、うつ状態
皮膚;乾燥、ざらつき、萎縮、点状出血
口 ;口角炎、舌炎、歯肉の腫れ・出血
毛髪;色素脱失
爪甲;スプーン爪
筋肉;大きさ、強さ、柔らかさ の低下
神経学的所見
;見当識障害、歩行障害、反射障害、
感覚・運動ニューロンの異常
など
体蛋白の代謝
グルコース
ピルビン酸
グリコーゲン
糖新生
NH3
BCAA
NH3
ピルビン酸
アラニン・グルタミン
肝臓での
糖新生
アラニン・グルタミン
筋タンパクの崩壊
ビタミン
微量で体内の代謝に重要な働きをしており、
正常の発育ならびに健康の維持に必須にも
かかわらず自分でつくることができない、
あるいは極微量しかつくることができない
低分子有機化合物
代謝反応の補酵素としてはたらくもので、
補給しなければならない
ビタミン欠乏・過剰
欠乏症
【水溶性】
B1
B2
B6
B12
葉酸
ニコチン酸
ビオチン
パントテン酸
C
【脂溶性】
A
D
E
K
過剰症
脚気、代謝性アシドーシス、ウェルニッケ-コルサコフ
眼症状、舌炎、口角炎
末梢神経炎、脂漏性皮膚炎
悪性貧血、知覚障害、生新症状、舌炎
大球性貧血、白血球・血小板減少、胃腸症状
ペラグラ(皮膚炎、色素沈着、不眠、下痢など)
筋肉痛、皮膚炎
易疲労感、頭痛、嘔気
壊血病、創傷治癒の遅延
なし
なし
なし
なし
なし
なし(神経過敏など)
なし
なし
なし
夜盲症、結膜の乾燥、聴力障害
くる病、骨軟化症
小脳失調症、腱反射消失
凝固障害による出血傾向
疲労感、嘔気、脱毛
食欲不振、嘔気、高Ca
なし
溶血性黄疸(小児)
ペラグラ
微量元素欠乏・過剰
欠乏症
過剰症
亜鉛
味覚障害、食欲不振、皮疹、脱毛、口内炎、
疲労感
嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、
嗅覚低下、貧血
セレン
易感染症、筋肉痛、心筋症、脱毛
脱毛、脱爪、筋肉痛、下痢、
皮膚障害
マンガン
コレステロール低下、凝固能低下、皮膚炎、
成長障害
無気力、易疲労感、浮腫、頭痛、
毛髪の赤色化
銅
白血球減少、貧血、神経形成不全、
毛髪色素脱落
嘔吐
クロム
耐糖能低下、末梢神経障害、体重減少
嘔吐
モリブデン
頻脈、多呼吸、神経学的異常
高尿酸血症
低栄養になると
免疫機能の低下
創傷治癒の遅延
合併症の発生頻度の増加
入院期間の延長
医療費の増加
死亡率の上昇
あんた、元気がねえなー
見た目が大切!
痩せた
目の下が窪んだ
頬がこけた
顔色が悪い
むくんだ
⇒
是非、栄養療法を考えてください
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