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IMT-2000サービス特集(2) ―モバイル新世紀の先駆け
NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 IMT − 2000 サービス特集 (2) −モバイル新世紀の先駆け「FOMA」誕生− コアネットワーク技術 本稿では,IMT − 2000 におけるコアネットワークについ て,網構成,および制御方式などの技術概要を述べる. やまもと こ う じ 山本 浩治 ふみあき ふくしま ひろのり 石野 文明 い し の 福島 弘典 さ わ だ ひろし かいやま あきら はなおか みつあき 澤田 寛 貝山 明 花岡 光昭 1. まえがき 次世代移動通信(IMT − 2000 : International Mobile Telecommunications−2000)は,国際標準化された第 3 世代 移動通信方式であり,携帯電話を用いた高速で高品質なマ ルチメディアサービスの提供を可能とするものである. 本稿では,ドコモが採用している IMT−2000 のコアネッ トワークの特徴,物理網構成,基本制御方式,および各装 置の機能配備について述べる. 2. コアネットワーク技術の概要と特徴 IMT−2000は,これまでの第2 世代携帯電話システムであ るディジタル自動車電話方式(PDC : Personal Digital Cellular)のコアネットワークとは異なったさまざまな特徴 を持つ.その主な特徴について,以下に述べる. ∏ 国際標準 IMT−2000の大きな特徴の1 つは,国際標準に準拠したシ ステムであるということである.第 2 世代のシステムは PDC という日本標準のシステムであったが,日本以外では 採用されていないシステムであるため,日本で使用してい る端末を海外で使用することはできなかった.これに対し, IMT−2000 は国際標準に準拠したシステムであることから, 同一標準であればドコモ以外のエリアにおいても,普段使 用する端末をそのまま使用すること(グローバルローミン グ)が可能となる. π 回線交換/パケット交換統合システム IMT − 2000 のコアネットワーク(CN : Core Network) は,回線交換からパケット交換へと発展してきた第 2 世代 システムからのエボリューションとして,新たに必要な機 能・能力を実現するための拡張が行われている.国際電気 通信連合・電気通信標準化部門(ITU − T: International 17 Telecommunication Union−Telecommunication standardiza- 交換機間の音声データ転送と,ハンドオーバにおける加入 tion sector)勧告では,ネットワーク要素として,回線交換 者線延長時の無線ネットワーク制御局(RNC : Radio 機能(CS(Circuit Switched)ドメイン)とパケット交換機 Network Controller)間での移動機制御信号およびユーザデ 能(PS(Packet Switched)ドメイン)が別々に定義されて ータ(回線交換およびパケット交換)転送に AAL type2 が いる[1].これらは論理的な機能単位群を表しており,イン それぞれ適用されている. プリメント上の物理的な装置・ノードとの対応は任意であ ATM は,現在の IP ネットワークと比較しても高いトラ る.ドコモは,回線交換機能とパケット交換機能を単一ノ ヒック管理能力を持っており,IMT−2000 では,ATM のト ードで実現することによって,音声トラヒックから大容量 ラヒック制御を利用してサービス品質(QoS : Quality of データトラヒックまで,さまざまなメディアを統合的に交 Service)の保証を行っている.高いリアルタイム性が要求 換・伝送するシステムを構築している. される音声や動画像通信は,ATM のシグナリング情報を用 ∫ ATM 技術 いて,コネクション設定時に一定の帯域を確保することに IMT − 2000 の伝送・交換方式として非同期転送モード より品質を保証する.図 1 に ATM を利用した QoS 制御のイ (ATM : Asynchronous Transfer Mode)が採用されている メージを示す.この ATM の QoS 制御機能をパケット通信 にも適用することにより,さまざまな QoS を実現すること [2]. ATM は,セルと呼ばれる 53 バイトの固定長のフレーム が可能となる[3][4]. にユーザデータを分割して伝送,交換する技術である. ª IN サービス IMT−2000 の CN では,音声やオーディオビジュアルなど非 高度 IN(Intelligent Network)は,従来 1 つの交換機上に 制限ディジタルの回線交換のデータと,IP(Internet 実現されていたスイッチ制御に関する機能とサービス制御 Protocol)接続に用いられるパケット交換のデータを扱う に関する機能を,サービス交換機能(SSF : Service 必要があるが,ATM 技術を用いることにより,これらを統 Switching Function)とサービス制御機能(SCF : Service 合的に伝送することを可能としている. Control Function)とに分離・階層化する.これにより,サ IMT−2000 の CN では,回線交換,パケット交換通信とも ービスの追加・変更を柔軟かつ迅速に実現できる[1].高度 に,交換機間の通信回線として ATM −SVC(ATM − IN では,SSF ∼ SCF 間のインタフェースとして,ITU−T で Switched Virtual Channel)を設定し,コネクション型のル 勧告されている標準インタフェースである INAP(IN ーチングを実現している.回線交換用データには AAL Application Protocol) を 元 に 3GPP( 3rd Generation (ATM Adaptation Layer)type1 が,パケット通信用データに Partnership Project) で 標 準 化 さ れ た CAP( CAMEL は AAL5 が,そして,IMT−2000 端末間の音声通信における Application Part)信号を適用することで,SCF 側に手を加 MMS 音声,動画像など MMS RNC 高優先 帯 域 確 保 「リアルタイム性確保」 VP E−mail,Web閲覧など 品質非保証 低優先 「遅延許容」 MMS:Mobile Multimedia switching System RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) VP:Virtual Path(仮想パス) 図1 18 MMS の QoS 制御 セル NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 メッセージ 処理装置 MIS 新移動サービス 高度サービス 制御装置 制御装置 NMSCP HLR MPS サービス管理 生成環境 SMS ASCP SCE GRIMMセンタ iモード サーバ 共通線信号網 他PLMN/PSTN moperaセンタ 関門中継系 移動マルチメディア 交換機 GMMS/TMMS 回線交換 機能 加入者系 移動マルチメディア 交換機 ATM ATM LMMS 回線交換 機能 各種 サーバ パケット交換 機能 LMMS パケット交換 機能 回線交換 機能 RNC MS BTS パケット交換 機能 RNC 無線ネットワーク 制御装置 BTS 基地局 ASCP:Advanced Service Control Point(高度サービス制御ノード) MPS:Message Processing System ATM:Asynchronous Transfer Mode(非同期転送モード) NMSCP:New Mobile Service Control Point BTS:Base Transceiver Station(無線基地局装置) (大容量移動通信サービス制御装置) GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System PLMN:Public Land Mobile Network GRIMM:Gateway service Representative Internet Market PSTN:Public Switched Telephone Network(公衆交換電話網) Mobile access exchange RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) HLR:Home Location Register SCE:Service Creation Environment LMMS:Local Mobile Multimedia switching System SMS:Service Management System MIS:Mobile Information Storages System TMMS:Toll Mobile Multimedia switching System (移動通信情報蓄積システム) mopera:Mobile OPEration Radio Assistant 図2 ドコモの IMT − 2000 コアネットワーク えるだけで新サービスの提供を可能としている.ドコモ網 いる大容量移動通信サービス制御装置(NMSCP : New では,高度 IN サービスとして,留守番電話サービス,着信 Mobile Service Control Point) ,高度 IN サービス制御を行う 転送サービスなどが実現されている. 高度サービス制御ノード(ASCP:Advanced Service Control 3. 網構成/制御手順 3.1 網構成 ドコモの IMT−2000 コアネットワークの構成を図 2 に示 Point)/ SMS(Service Management System) ,およびショ ートメッセージセンタである MPS(Message Processing System)で構成される.各装置の詳細については,4 章で 述べる. す.CN は,回線交換/パケット交換の呼接続処理などを 実施する交換機 LMMS(Local Mobile Multimedia switching 3.2 制御手順 System)/ TMMS(Toll Mobile Multimedia switching IMT−2000 のネットワーク(以下,IMT 網)における基 System)/ GMMS(Gateway Mobile Multimedia switching 本処理手順(位置登録,発信・着信)および代表的な付加 System),加入者プロファイルや在圏位置情報を登録して サービス処理(IN サービス処理,ショートメッセージ発 19 MS LMMS RNC NMSCP 旧在圏 MMS Location Updating Request 認証処理 send Authentication Info 認証用パラメータ生成 send Authentication Info ack Authentication Request Authentication Response combine Update Location cancel Location 加入者プロファイル削除 cancel Location ack insert Subscriber Data [ 加入者プロファイル ] 加入者プロファイル保持 insert Subscriber Data ack combine Update Location ack 秘匿処理 Security Mode Command Security Mode Complete Security Mode Command Security Mode Complete Location Updating Accept TMUI Reallocation Complete Iu Release Command Iu Release Complete LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MS:Mobile Station(移動局) NMSCP:New Mobile Service Control Point (大容量移動通信サービス制御装置) RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) TMUI:Temporary Mobile User Identity 図3 位置登録シーケンス 信・着信処理)について説明する. ∏ 位置登録処理(図 3) IMT 網では,PDC 網とは異なり,VLR(Visitor Location 換とを統合した位置登録処理手順を実施している. π 回線交換発着信手順 Register)方式を採用している.VLR 方式とは,位置登録処 回線交換の発信処理手順を図 4 に示す.発信処理では 理の際に NMSCP から MMS(Mobile Multimedia switching VLR 上の加入者プロファイルを使用して発信翻訳処理を実 System)に対して加入者プロファイルをダウンロードし, 施するため,処理はMMS 内に閉じて実施される. 発着信処理の際には,VLR 上の加入者プロファイルを使用 する方式である. 20 リソースの効率的利用を考慮して,回線交換とパケット交 回線交換の着信処理手順を図 5 に示す.ドコモ網では着 信処理の際における Paging処理に,Pre−Paging 処理を適用 また,ドコモ網では回線交換処理とパケット交換処理を している.Pre−Paging 処理とは,着側在圏交換局まで回線 同一の交換機(MMS)で実現しているため,ネットワーク を設定する前に Paging 処理を実施し,着ユーザが圏外・圏 NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 MS LMMS RNC 後位局 DCCH設定 CM Service Request 認証処理 秘匿処理 Setup 発信翻訳処理 (契約サービス判定など) Call Proceeding RAB Assignment Request Establish request Establish Confirm 無線ベアラ設定 RAB Assignment Response IAM IAA ACM CPG Alert ANM Connect Connect Ack 通信中 ACM:Address Complete Message ANM:ANswer Message CM:Connection Management CPG:Call ProGress DCCH:Dedicated Control CHannel IAA:IAM Acknowledgment message IAM:Initial Address Message LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MS:Mobile Station(移動局) RAB:Radio Access Bearer RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) 図4 回線交換発信シーケンス(移動機→他網) 内状況を判定する処理である.圏外時には,在圏交換機ま 特定するためのアドレス解決処理を行う.さらに,パケッ での回線を捕捉することなく,圏外時処理を行うことがで ト通信においてさまざまな QoS を実現するため,回線交換 きる. と同様に呼ごとに ATM−SVC を設定して,ユーザパケット IMT 網では,ローミング番号 MSRN(Mobile Station の転送を実現している. Roaming Number)を着ユーザ在圏交換局で割り当てる. ª IN サービス制御手順 MSRNは着在圏局に呼をルーチングすることを可能とし,か IN サービスの制御手順の一例として,発信時の IN サー つ着在圏局内で着ユーザの識別を可能にする番号である. ∫ パケット交換処理手順 ビス制御手順を図 7 に示す.MMS が IN(CAMEL (Customized Application for Mobile network Enhanced パケット交換の発信処理手順を図 6 に示す.パケット発 Logic))サービスの実施要否を判断する情報には CSI 信時には移動局(MS : Mobile Station)から接続先として (CAMEL Subscription Information)を用いる.CSIには加入 接続ポイント名(APN : Access Point Name)が設定され 条件による CSI(D − CSI(Dialed service CSI)/T − CSI る.MMS では,受信した APN に関して接続する GMMS を (Terminating CSI) )とネットワーク条件による CSI(N−CSI 21 MS LMMS RNC NMSCP GMMS 他網[NTT など] IAM Early ACM SendRoutingInfo 着信翻訳処理 (契約サービス判定など) Provide Roaming Number Pre −Paging 処理 Paging Paging DCCH設定 Paging Response ルーチング番号 [MSRN] を割り当て Provide Roaming Number ack [MSRN] Send Routing Info ack [MSRN] 認証処理 秘匿処理 IAM [MSRN] IAA ACM CPG 着信翻訳処理 (契約サービス判定など) Setup Call Confirmed RAB Assignment Request Establish request Establish Confirm 無線ベアラ設定 RAB Assignment Response Alert CPG CPG RBT Connect ANM Connect ack ANM 通信中 ACM:Address Complete Message ANM:ANswer Message CPG:Call ProGress DCCH:Dedicated Control CHannel GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System IAA:IAM Acknowledgment message IAM:Initial Address Message LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MS:Mobile Station MSRN:Mobile Station Roaming Number NMSCP:New Mobile Service Control Point (大容量移動通信サービス制御装置) RAB:Radio Access Bearer RBT:Ring Back Tone RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) 図 5 回線交換着信シーケンス(他網→移動機) 22 NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 MS RNC LMMS GMMS DCCH設定 Service Request 認証処理 秘匿処理 Activate PDP Context Request [APN] 発信翻訳処理 DNSアドレス解決処理 SCCP routingを行うためのアドレス解決処理 ARF(GMMS) アドレス解決処理 Create PDP Context Request APNプロファイル分析処理 Create PDP Context Response RAB Assignment Request IAM IAA ANM 無線ベアラ設定 RAB Assignment Response IAM パケット用ATM−SVC設定処理 IAA ANM Activate PDP Context Accept PPP確立 ANM:ANswer Message APN:Access Point Name(接続ポイント名) ARF:Access link Relay Function ATM−SVC:ATM−Switched Virtual Channel DCCH:Dedicated Control CHannel DNS:Domain Name System GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System IAA:IAM Acknowlegment message 図6 IAM:Initial Address Message LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MS:Mobile Station PDP:Packet Data Protocol PPP:Point to Point Protocol RAB:Radio Access Bearer RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) SCCP:Signalling Connection Control Part パケット交換発信シーケンス(PPP 接続) (Network service CSI) )が存在する.加入条件による CSIと ータとして設定される. は加入者がサービスに加入することで付与される CSI のこ º ショートメッセージ送受信手順 とであり,ネットワーク条件による CSI とはネットワーク ショートメッセージの発信処理を図 8 に,着信処理を図 に在圏していることで,サービスを享受できるサービスに 9 に示す.GSM(Global System for Mobile communications) 対して適用する CSI である.前者の CSI は留守番電話サー /3GPP 標準における局間(交換機間)のショートメッセー ビスなどの加入付加サービスの制御に用いられ,発信時の ジ転送方法は,移動管理用信号(MAP :Mobile Application サービス判定で用いる CSI(D−CSI)は位置登録時に加入 Part)を用いて転送する規定になっている.ドコモでは, 者プロファイルとして MMS で保持される.後者の CSI は 共通線信号網の処理負荷を考慮して,ショートメッセージ クイックナンバーサービスなどに適用され,MMS の局デ 転送に用いる MAP は,共通線信号網を経由して転送するの 23 MS RNC LMMS ASCP DCCH設定 CM Service Request 認証処理 秘匿処理 Setup [1411] Call Proceeding RAB設定処理 CSI判定処理 IN未起動(サービス未契約者) IN起動(サービス契約者) InitialDP サービス設定処理実行 Play Announcement + Release Call Progress ガイダンス「ただいまから留守番電話サービスを開始します+CPT」 Disconnect Release Release Complete Iu区間開放処理 ガイダンス「ご利用方法を確認のうえ、おかけ直し下さい」 切断処理 ASCP:Advanced Service Control Point CM:Connection Management CPT:ComPletion Tone CSI:CAMEL Subscription Information DCCH:Dedicated Control CHannel DP:Detection Point 図7 IN:Intelligent Network LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MS:Mobile Station RAB:Radio Access Bearer RNC:Radio Network Controller (無線ネットワーク制御装置) 発信系 IN サービスシーケンス(例.留守番電話サービス開始設定: 1411) ではなく,MMS−MMS 間の ATM 回線に重畳させて転送し MMS ている.また,PDC でのショートメールとは制御手順が異 MMS は,IMT−2000 の CN の中核をなす基本呼制御を行 なるため,PDC ユーザ宛てのショートメッセージを受け付 う交換機であり,ATM 技術を採用することで,大容量で効 けないように NMSCP −TMMS 間で着ユーザ判定処理を実 率的かつ経済的なマルチメディア交換を実現している. 施している. 4. 各装置概要 IMT−2000 の CN の構成各装置のハードウェア構成,ソフ トウェア構成,配備機能,特徴などについて述べる. 24 4.1 この MMS のハードウェア構成,ソフトウェア構成につ いて述べる. ∏ ハードウェア構成 図 10 にMMS(LS(Local Switch) ,GS(Gateway Switch) ) の論理ハードウェア構成を示す. NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 MS RNC LMMS TMMS MPS NMSCP DCCH設定 CM Service Request [CM Service Type = SMS] 認証処理 秘匿処理 CP−DATA [PR−DATA] CP−ACK 発信翻訳処理 (契約サービス判定など) MO ForwardSMS Inquiry User Info PDCユーザ/IMTユーザ 判定処理 Inquiry User Info ack ユーザ判定処理 Message Transfer [RP−DATA] Message Transfer ack MO ForwardSMS ack [RP−ACK] CP−DATA [RP−ACK] CP−ACK Iu区間開放処理 CM:Connection Management CP:Control Protocol DCCH:Dedicated Control CHannel LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MPS:Message Processing System MS:Mobile Station(移動局) NMSCP:New Mobile Service Control Point (大容量移動通信サービス制御装置) 図8 MO:Mobile Originated PDC:Personal Digital Cellular (ディジタル自動車電話方式) RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) RP:Relay Protocol SMS:Short Message Service TMMS:Toll Mobile Multimedia switching System ショートメッセージ発信(回線交換)シーケンス ① 回線(CS)・パケット(PS)共有部 セッサ結合機能部(PHUB : Processor HUB)は,数 ・プロセッサは,機能分散型(保守・運用プロセッサ 十台までのプロセッサが収容可能である. (OMP : Operation and Maintenance Processor) ,リソ ・ 共通線信号リンクを終端する共通線信号処理機能 ース管理プロセッサ(RMP : Resource Management (SIG : SIGnaling trunk)には,従来の信号中継局 Processor),呼処理プロセッサ(CLP : CaLl control (STP : Signaling Transfer Point)向けに加えて MMS, Processor) ,共通線信号プロセッサ(CSP : Common RNC,マルチメディア信号処理装置(MPE:Multimedia channel Signaling Proces-sor) )と負荷分散型の疎結合 signaling Processing Equipment)向けがある.各SIGにお とし,サービス比率,規模別に柔軟に対応できるマル いては,今後のサービス追加に伴う信号量増加に対応す チプロセッサ構成としている.また,大容量化に対応 るため,最大 1.5Mbit/s で信号伝達が可能で,さらに するために,ATM 技術を採用して高速化を行い,プロ ATM化することにより効率的な伝送を実現している. 25 MS RNC LMMS TMMS MPS NMSCP Message Transfer [RP−DATA] Send Routing Info For SM Send Routing Info For SM ack MT Forward SMS Paging Paging DCCH設定 Service Request 認証処理 秘匿処理 CP−DATA(PR−DATA) CP−ACK CP−DATA(PR−ACK) CP−ACK MT Forward SMS ACK Message Transfer ack [RP−ACK] Iu区間開放処理 CP:Control Protocol DCCH:Dedicated Control CHannel LMMS:Local Mobile Multimedia switching System MPS:Message Processing System MS:Mobile Station(移動局) MT:Mobile Terminal NMSCP:New Mobile Service Control Point (大容量移動通信サービス制御装置) RNC:Radio Network Controller (無線ネットワーク制御装置) RP:Relay Protocol SM:Short Message SMS:Short Message Service TMMS:Toll Mobile Multimedia switching System 図 9 ショートメッセージ着信(回線交換)シーケンス ・通話路系装置は,大規模な ATM スイッチ部(ATM − SW:ATM−SWitch)を核とし,CS呼/PS呼のトラヒ ・ RNC −LS 間および LS −GS 間は,GTP と呼ばれるトン ック比率変動に応じて CS / PS 特有部が着脱可能な構 ネリングプロトコルを適用することで,IP パケット転 成となっている.また,AAL2 多重分離機能(CMP : 送を実現している.LS,GS のパケット処理機能(PSU CMPosit trunk)は,圧縮音声(適応マルチレート (Packet Subscriber Unit) ,PGU(Packet Gateway Unit) ) (AMR : Adaptive Multi Rate))などを効率的に伝送, は,GTP(GPRS Tunneling Protocol)ユーザ IP パケッ 交換するために使用され,ATM 回線インタフェース トの転送機能,課金,トラヒック収集のためのカウン (ATM−IF : ATM−InterFace)とともに,QoS提供のた ト機能を有している.GS のIP 多重分離機能(IPU :IP めのATM セルレベルの送受信制御機能を有している. mux Unit)は,ユーザ IP パケットを CN 内の ATM − ② 回線(CS)特有部 ・ ATM↔STM(Synchronous Transfer Mode)変換機能 (セル組立・分解(CLAD:CeLl Assembly /Disassembly) ) は,PLMN(Public Land Mobile Network)/ISDN (Integrated Services Digital Network)/公衆交換電話網 (PSTN : Public Switched Telephone Network)や従来 の STM ベースのサービストランク(SVT : SerVice Trunk)とのインターワーク機能を有している. 26 ③ パケット(PS)特有部 SVCリンクに乗せ替える機能を有する. π ソフトウェア構成 MMS におけるソフトウェアの特徴としては,回線交 換/パケット交換統合処理,マルチベンダ対応機能および VLR 機能の実現が挙げられる. ① 回線交換/パケット交換統合処理(図 11) 共通アプリケーションは,大別して回線交換特有機 能,パケット交換特有機能,回線/パケット交換共通 NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 RAN CN STP MMS(LS) HLR MMS(GS) 1.5Mbit/s 52/156Mbit/s ATM−IF 52/156Mbit/s ATM−IF CLAD 156 Mbit/s ATM−IF MPE ATM−IF STM −SW STM−IF ATM−IF CMP STM−IF CMP 156 Mbit/s SIG PLMN/ ISDN/ PSTN SVT 2.8Mbit/s SIG ATM−IF BTS RNC PSU MS PGU IPU SVT STM −SW TST CLAD TST ATM −SW RMP 企業LAN /ISP/ サーバ ATM −SW PHUB CSP ATM−Hub /Router PHUB CLP OMP OMP CLP RMP CSP ALADIN OpS CCC MPS :2重化 :GS特有 :回線特有 :ATM共通線信号リンク :LS特有 :パケット特有 :MS−企業LAN/ISP/サーバ接続(パケット交換) :GS,LS共有 :回線パケット共通 :MS−PLMN/ISDN/PSTN接続(回線交換) ALADIN:ALl Around Docomo INformation systems (顧客管理システム) ATM :Asynchronous Transfer Mode(非同期転送モード) ATM−IF:ATM−InterFace(ATM回線インタフェース) ATM−SW:ATM−SWitch(ATMスイッチ部) BTS:Base Transceiver Station(無線基地局装置) CCC:Customer Call record Collector(MB CDR収集システム) CLAD:CeLl Assembly/Disassembly(セル組立・分解) CLP:CaLl control Processor(呼処理プロセッサ) CMP:CMPosit trunk(多重分離機能) CN:Core Network(コアネットワーク) CSP:Common channel Signaling Processor (共通線信号プロセッサ) GS:Gateway Switch HLR:Home Location Register IPU:IP mux Unit(IP多重分離機能) ISDN:Integrated Services Digital Network LAN:Local Area Network LS:Local Switch MMS:Mobile Multimedia switching System 図 10 MPE:Multimedia signaling Processing Equipment (マルチメディア信号処理装置) MPS:Message Processing System MS:Mobile Station OMP:Operation and Maintenance Processor (保守・運用プロセッサ) OpS:Operation System PGU:Packet Gateway Unit PHUB:Processor HUB(プロセッサ結合機能部) PLMN:Public Land Mobile Network PSTN:Public Switched Telephone Network(公衆交換電話網) PSU:Packet Subscriber Unit RAN:Radio Access Network RMP:Resource Management Processor (リソース管理プロセッサ) RNC:Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) SIG:SIGnaling trunk(共通線信号処理機能) STP:Signaling Transfer Point(信号中継局) SVT:SerVice Trunk(サービストランク) TST:TeSt Trunk MMS(LS, GS)論理ハードウェア構成 27 機能,保守運用機能の 4 つから構成される.本構成に より,ソフトウェア規模を最小限に抑えるとともに機 能追加の容易性を確保している. IMT網両方に帰属している. 本装置(図 12)は,複数のデータベースプロセッサ (DBP : Data Base Processor) ,複数の CSP,1 つの OMP か ② マルチベンダ対応機能 ら構成されており,DBP に加入者データを収容して,呼処 マルチベンダ方式を採用するために,アプリケーシ 理およびデータベースの管理を行っている.DBP では, ョンインタフェース(API : APplication Interface)を PDC の呼処理,PDC 移動パケット通信システム(PDC − 定義しており,全ベンダ共通のアプリケーション部分 P :PDC mobile Packet data communication system)の呼処 と,各ベンダ個別部分とで機能を分離した.拡張 OS 理,IMT の呼処理をすべて受け持っており,各ネットワー (Operating System)は,OS 以下のベンダ間の差分を吸 クからの問い合わせに従った処理が可能となっている. 収するために,ベンダマシンごとに規定されている. 4.3 ③ VLR 機能 ASCP および SMS VLR 機能実現のため,加入者プロファイルを各 CLP ASCP と SMS は高度 IN を構成するノードである.ASCP に分散収容する.各加入者のプロファイルがどの CLP は IMT−2000 の付加サービスの SCF を持つ.SMS はその契 に収容されているかという管理情報は RMP で保持す 約情報を管理し,サービス制御に必要な情報を ASCP に配 るが,収容先 CLP は加入者番号などにより固定的には 備するなどのサービス管理機能(SMF:Service Management 決定されず,各 CLP へ均等に配置される.呼処理はプ Function)を持つ. ロファイル収容 CLP にて実施されるため,HLR ASCP および SMS では,そのソフトウェア構造をサービ (Home Location Register)からのプロファイルダウン スに共通な処理部(プラットフォーム)とサービス依存処 ロード時や収容先 CLP 読み出し時以外,RMP へのプロ 理部に分けることにより,サービス追加変更時の影響の局 セッサ間通信は発生しない. 所化を図り,サービス開発工数の削減と迅速なサービス提 供を可能にしている(図 13).ASCP と SMS のサービス依 4.2 NMSCP 存処理部を,各々 SLP(Service Logic Program),MLP NMSCP は,HLR 機能を保持するノードであり,PDC か (Management Logic Program)と呼ぶ. ら IMT への同番移行を可能とするために,PDC 網および 共通アプリケーション 回線交換特有機能 パケット交換特有機能 回線/パケット交換 共通機能 保守運用 機能 API A社拡張OS B社拡張OS A社基本OS B社基本OS A社ハード B社ハード API:APplication Interface OS:Operating System 図 11 28 ソフトウェア構成概念 NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 CSP CSP CSP HUB OMP DBP DK DBP DK DK CSP:Common channel Signaling Processor (共通線信号プロセッサ) DBP:Data Base Processor DK:DisK (磁気ディスク記憶装置) OMP:Operation and Maintenance Processor (保守・運用プロセッサ) 図 12 NMSCP 装置構成 SLP (サービス依存処理部) MLP (サービス依存処理部) サービス制御プラットフォーム (サービス共通処理部) サービス管理プラットフォーム (サービス共通処理部) 基本OS(IROS)/共通プラットフォーム OS(UNIX)/ミドルウェア _ ASCP ` SMS ASCP:Advanced Service Control Point(高度サービス制御ノード) IROS:Interface for Realtime Operating Systems MLP:Management Logic Program OS:Operating System SLP:Service Logic Program SMS:Service Management System 図 13 4.4 ASCP / SMS 装置構成 MPS MPS は,ショートメッセージサービスにおけるサービス センタ機能を提供するシステムである.MPS は,移動機な どのSME(Short Message Entity)から送信されたショート メッセージを受信し,指定された宛先 SME に対して当該メ Frequency)信号入力によるショートメッセージ転送,留 守番電話サービスメッセージ件数通知などを提供する. MPS のシステム構成図を図 14 に示す. 5. あとがき ッセージを配信する機能を有する.また,配信に失敗したメ 本稿では,世界に先駆けてサービスを開始したドコモの ッセージを一時的に保管し,これを再送する機能を有する. IMT−2000 における CN の構成と,その実現技術の概要につ ショートメッセージ利用サービスとしては,IMT 移動機 いて述べた.今後の IMT−2000 の世界的な普及は疑う余地 からのショートメッセージ転送,DTMF(Dual Tone Multi がなく,グローバルローミングの実現やワールドワイドで 29 MPS MPU#0 DAU#0 Disk DAU#0 Disk MPU#1 SW−HUB#0 SW−HUB#1 ルータ#0 HUB#0 HUB#0 ルータ#0 ルータ#1 HUB#1 HUB#1 ルータ#1 OPCへ MIS/moperaへ HUB#0 HUB#1 ルータ#0 ルータ#1 GMMSへ DAU:Disk Array Unit GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System MIS:Mobile Information Storages System(移動通信情報蓄積システム) mopera:Mobile OPEration Radio Assistant MPS:Message Processing System MPU:Message Processing Unit OPC:OPeration Center(オペレーションセンタ) 図 14 MPS システム構成図 のマルチメディアサービスの提供など,利用者の利便性向 [2] 弓場,ほか:”IMT−2000 ネットワーク方式概要” ,本誌,Vol.6, No.4,pp.8−13,Jan.1999. 上とIMT−2000 の技術発展が期待できる. [3] 中村,ほか:”IMT−2000 におけるパケット通信方式概要” ,本誌, 文 献 [1] 尾上,ほか:“IMT − 2000 サービス特集∏ Vol.9,No.2,pp.19−26,Jul.2001. 30 Vol.6,No.4,pp.24−31,Jan.1999. 技術概要”,本誌, [4] 石野,ほか:”ATM 技術その 3,ATM のサービス品質とトラヒッ ク制御” ,本誌,Vol.7,No.1,pp.48−53,Apr.1999. NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 9 No.3 用 語 一 覧 3GPP : 3rd Generation Partnership Project AAL : ATM Adaptation Layer ACM : Address Complete Message ALADIN : ALl Around Docomo INformation systems(顧客管理システム) AMR : Adaptive Multi Rate(適応マルチレート) ANM : ANswer Message API : Application Program Interface APN : Access Point Name(接続ポイント名) ARF : Access link Relay Function ASCP : Advanced Service Control Point(高度サービス制御ノード) ATM−IF : ATM−InterFace(ATM 回線インタフェース) ATM−SVC : ATM−Switched Virtual Channel ATM−SW : ATM−SWitch(ATM スイッチ部) ATM : Asynchronous Transfer Mode(非同期転送モード) BTS : Base Transceiver Station(無線基地局装置) CAMEL : Customized Application for Mobile network Enhanced Logic CAP : CAMEL Application Part CCC : Customer Call record Collector(MB CDR 収集システム) CLAD : CeLl Assembly/Disassembly(セル組立・分解) CLP : CaLl control Processor(呼処理プロセッサ) CM : Connection Management CMP : CMPosit trunk(多重分離機能) CN : Core Network(コアネットワーク) CP : Control Protocol CPG : Call ProGress CPT : ComPletion Tone CS : Circuit Switched CSI : CAMEL Subscription Information CSP : Common channel Signaling Processor(共通線信号プロセッサ) D−CSI : Dialed service CSI DAU : Disk Array Unit DBP : Data Base Processor DCCH : Dedicated Control CHannel DK : DisK(磁気ディスク記憶装置) DNS : Domain Name System DP : Detection Point DTMF : Dual Tone Multi Frequency GMMS : Gateway Mobile Multimedia switching System GRIMM : Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange GS : Gateway Switch GSM : Global System for Mobile communications GTP : GPRS Tunneling Protocol HLR : Home Location Register IAA : IAM Acknowledgment message IAM : Initial Address Message IMT−2000 : International Mobile Telecommunications−2000 (次世代移動通信) IN : Intelligent Network INAP : IN Application Protocol IP : Internet Protocol IPU : IP mux Unit(IP 多重分離機能) IROS : Interface for Realtime Operating Systems ISDN : Integrated Services Digital Network ITU−T : International Telecommunication Union−Telecommunication standardization sector(国際電気通信連合・電気通信標準化部門) LAN : Local Area Network LMMS : Local Mobile Multimedia switching System LS : Local Switch MAP : Mobile Application Part(移動管理用信号) MIS : Mobile Information Storages System(移動通信情報蓄積システム) MLP : Management Logic Program MMS : Mobile Multimedia switching System MO : Mobile Originated mopera : Mobile OPEration Radio Assistant MPE : Multimedia signaling Processing Equipment (マルチメディア信号処理装置) MPS : Message Processing System MPU : Message Processing Unit MS : Mobile Station(移動局) MSRN : Mobile Station Roaming Number MT : Mobile Terminal N−CSI : Network service CSI NMSCP : New Mobile Service Control Point (大容量移動通信サービス制御装置) OMP : Operation and Maintenance Processor(保守・運用プロセッサ) OPC : OPeration Center(オペレーションセンタ) OpS : Operation System OS : Operating System PDC : Personal Digital Cellular(ディジタル自動車電話方式) PDC−P : PDC mobile Packet data communication system (PDC 移動パケット通信システム) PDP : Packet Data Protocol PGU : Packet Gateway Unit PHUB : Processor HUB(プロセッサ結合機能部) PLMN : Public Land Mobile Network PPP : Point to Point Protocol PS : Packet Switched PSTN : Public Switched Telephone Network(公衆交換電話網) PSU : Packet Subscriber Unit QoS : Quality of Service(サービス品質) RAB : Radio Access Bearer RAN : Radio Access Network RBT : Ring Back Tone RMP : Resource Management Processor(リソース管理プロセッサ) RNC : Radio Network Controller(無線ネットワーク制御装置) RP : Relay Protocol SCCP : Signalling Connection Control Part SCE : Service Creation Environment SCF : Service Control Function(サービス制御機能) SIG : SIGnaling trunk(共通線信号処理機能) SLP : Service Logic Program SM : Short Message SME : Short Message Entity SMF : Service Management Function(サービス管理機能) SMS : Service Management System SMS : Short Message Service SSF : Service Switching Function(サービス交換機能) STM : Synchronous Transfer Mode STP : Signaling Transfer Point(信号中継局) SVT : SerVice Trunk(サービストランク) T−CSI : Terminating CSI TMMS : Toll Mobile Multimedia switching System TMUI : Temporary Mobile User Identity TST : TeSt Trunk VLR : Visitor Location Register VP : Virtual Path(仮想パス) 31