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微動・地震観測に基づく深部地盤のモデル化 -柏崎
25 原子力土木構造物の耐震裕度評価 微動・地震観測に基づく深部地盤のモデル化 -柏崎刈羽原子力発電所を対象とした微動アレイ観測の適用性- 背 景 2007 年新潟県中越沖地震の際に、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所で得られた強震記録の特徴の一つ として、発電所周辺における地震基盤から解放基盤面までの増幅特性ならびに不整形性による増幅特性の影 響が指摘されている。こうした状況から、他の原子力発電所においても、地震基盤に至るまでの深部地下構 造を調査する必要性が生じており、その調査手法の一つとして微動アレイ観測が注目を集めている。 目 的 柏崎刈羽原子力発電所での深部地盤の速度構造モデル化における微動アレイ観測の適用性を明らかにす る。 主な成果 1. 柏崎刈羽原子力発電所における深部 S 波速度構造の推定と空間的な地下構造の変化の把握 微動アレイ観測により推定された地震基盤の深さは約 3.8 km、速度構造の境界深さは、既往の反射法探 査や近傍の地質ボーリングの結果と調和的であった。また、深さ 1 km 程度の地下構造の空間変化の把握を 目的とした微動アレイ観測からは、南側と北側で実施された PS 検層結果に基づく理論位相速度とほぼ一致 した位相速度が観測され、サイト内の地下構造の空間変化を把握できる可能性を示した。 2. 観測点配置に制約がある場合の SPAC 法注 1)の拡張とその適用性 発電所建屋等の存在により正三角形配置という SPAC 法の観測条件を満たすことが難しい場合にも適用で きる SPAC 法の拡張を提案し、今回の微動アレイ観測データに対して適用した結果、F-K 法注 2)とほぼ一致し た位相速度が得られることを明らかにした。 3. 速度が漸増する構造に対する逆解析手法の提案とその適用性 PS 検層結果にみられる漸増構造に対する位相速度の逆解析の適用性について、従来の層構造を仮定した 場合では、漸増区間の平均速度や地質構造境界といった特徴は捉えられるが、速度が漸増する特徴は表現で きない。その一方で、漸増構造を仮定した逆解析方法を新たに提案し、同データに適用した結果、深さ方向 に漸増する特徴を模擬した構造が得られることを示した。 今後の展開 地震観測記録によるレシーバー関数注 3)などを活用し、より詳細な深部 S 波速度構造のモデル化を試みる。 主担当者 地球工学研究所 地震工学領域 主任研究員 佐藤 浩章 関連報告書 (報告書名の後に記載されているアルファベットと数字は、電力中央研究所報告の報告書番号です) ・微動・地震観測に基づく深部地盤のモデル化-柏崎刈羽原子力発電所を対象とした微動アレイ観測の 適用性-〔N09013〕 注1) 注2) 注3) 微動アレイ観測から位相速度を推定する解析法の一つで、実際の解析に適用するための条件として、観測点が中心点に対し て同心円状かつ、円周上に 3 個以上(正三角形が最小)の等間隔に設置される必要がある 微動のアレイ観測から位相速度を推定する解析法の一つ。観測点の配置について制約が少ない 地表の地震観測記録から震源の影響を取り除くことによって得られる観測点直下の地下構造を反映した観測量 「地球工学研究所・環境科学研究所 研究概要 -2009 年度研究成果-」 ©CRIEPI 2010 25 2.5 0 0 222 1 (上部寺泊層)1.7km/s 899 (西山層) 0.75km/s (椎谷層)1.2km/s 西山層 椎谷層 上部寺泊層 下部寺泊層 Depth (km) (下部寺泊層)1.9km/s 1 0.5 2579 七谷層 グリーンタフ 3 2 1.5 1634 2 Sアレ イ PS検層(S孔簡略化) (七谷層・グリーンタフ) 2.6km/s 0 0 0.5 1 1.5 Nア レ イ PS検層(N孔簡略化) 2 1.5 1 0.5 0 2 0 メインアレイ 6 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 S-wave velocity (km/s) FK法 拡張SPAC法 2 0.2 0.4 椎 谷 0.6 0.8 寺 泊 1.5 1 1 0.5 PS検層(N孔) Nアレイ逆解析モデル (層構造仮定) Nアレイ逆解析モデル (漸増構造仮定) 1.2 0 0.5 2 西山 以降 Depth(km) 3 0 1.5 0 図 1 推定された深部地盤構造と近傍の地質構造 微動アレイ観測(上図)によって推定された S 波 速度構造と近傍のボーリング地点(下高町-1) の地質構造と概ね対応する。 2.5 1 図 2 微動アレイ観測による位相速度と PS 検層結果の比較 サイトの南側と北側で実施した微動アレイ観測による 位相速度が、サイト南北でそれぞれ実施された深さ 1 km 程度の PS 検層結果による理論位相速度とよく一致す る。 (基盤) 5 0.5 Frequency (Hz) Frequency (Hz) 4 Phase velocity (km/s) Phase velocity (km/s) 下高町-1 の地質構造 Phase velocity (km/s) 2.5 1 1.5 2 Frequency (Hz) 図 3 F-K 法と SPAC 法による位相速度の比較 F-K 法(●)による位相速度と方位平均を用 いない SPAC 法による位相速度(○ )はほぼ 一致している。 「地球工学研究所・環境科学研究所 0 0.5 1 1.5 2 S-wave velocity(km/s) 図 4 PS 検層結果と逆解析結果の比較 層構造を仮定した結果(破線)は漸増区間の平 均速度や地質構造境界といった特徴を捉え、漸 増構造を仮定した結果(実線)は、PS 検層に よる漸増成分の特徴を表現できている。 研究概要 -2009 年度研究成果-」 ©CRIEPI 2010