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f
rom
NTT東日本
「タイムライン連携システム」による地域医療
連携への取り組み
NTT東日本は,これまで地域中核病院,診療所,家庭とそれぞれのフィールドで医療・ヘルスケアビジネスに取り組んできま
したが,そのノウハウを結集させ,さまざまな医療機関で情報をスムーズに共有できる地域医療連携基盤「タイムライン連携シ
ステム」を開発し,2011年6月より運用トライアルを開始しました.本システムは,異なる医療機関における患者ごとの医療
情報を時系列で把握でき,より正確でスムーズな情報共有と質の高い医療提供が可能になるとともに,BCP(Business
Continuity Plan)対策にも有効です.
地域医療連携におけるICT活用の重要性
サポートするツールとして利用され,診療情報の共有がス
ムーズに行われました.またこれまで社内病院の医療情報
少子高齢化社会が進行する中,医療・介護を取り巻く分
野では生活習慣病の増加,医療資源の偏在といった問題が
システムを構築してきた経験から,そのノウハウを中規模
から大規模の他病院にも展開しています.
顕在化しています.その問題を解決するには,1つの医療機
タイムライン連携システムとは,前述のように家庭,診
関がすべての医療を提供するのではなく,それぞれの機関
療所,病院とNTT東日本がそれぞれのフィールドで取り組
が持つ特性を活かして役割分担することで,患者の病気の
んできたノウハウを結集させた,新しい地域医療連携基盤
早期発見・早期治療を行うことが大切です.
です.診療所や病院といったさまざまな医療機関における
このような地域医療連携の実現に向けてICT活用に対する
スムーズな医療情報の共有を可能とします.NTT東日本は
期待が高まっており,厚生労働省が地域医療再生基金を設
2010年度より,社会医療法人財団慈泉会相澤病院と日本
置し,各地のICTを活用した地域医療連携を推進しています.
大学医学部根東義明教授の協力のもと,タイムライン連携
2010年と2011年にNTTグループが健康医療クラウド
システムの開発を行ってきました.2011年6月10日より
(図1)をテーマに出展した「国際モダンホスピタルショウ」
地域の中核病院である相澤病院と長野県松本市内の8診療所
では,多くのお客さまがNTTグループブースに来場され,
の協力をいただき,運用トライアルを開始しています.
関心の高さがうかがえました.
タイムライン連携システムの特徴
NTT東日本の医療・ヘルスケアビジネス
への取り組み
タイムライン連携システムでは,地域中核病院と連携先
の診療所の間をフレッツ光を用いたVPN(Virtual Private
そのような社会情勢の中,NTT東日本としてはこれまで
医療・ヘルスケアビジネスに積極的に取り組んできました.
2008年には岩手県遠野市,2010年には宮城県栗原市に
「遠隔健康相談システム」を導入しました.特に遠野市では
医療情報連携基盤
データセンタ
実施6カ月後に,体重,BMI,最高血圧,最低血圧,歩数の
すべての測定データで数値が改善され,その効果が注目を
集めました.2009年にはNTT-MEより診療所向け電子カ
審査
支払機関
自治体
次世代ネットワーク(NGN)
健康医療クラウド=NGN×データセンタ×医療情報連携基盤
ルテサービス「Future Clinic 21ワープ」の提供を開始し
ました.このサービスはASP(Application Service
Provider)型の電子カルテサービスであるため,ネット
ワークを介したサービス利用と,データセンタにおける
デ ータバックアップを実現しています.その特徴から,
2011年3月11日の東日本大震災で被災した宮城県気仙沼
市において,避難所での巡回診療を担当する医療救護班を
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NTT技術ジャーナル 2011.12
地域中核病院
診療所
家庭
図1 NTT グループによる健康医療クラウド
Network)サービス「フレッツ・VPN ワイド」で接続し,
・参照したい項目を,ドラッグ&ドロップで簡単に選択,
データセンタ側でどの医療情報がどの医療機関で管理され
保存することができ,疾病ごとに管理したい項目だけ
ているかという所在情報を管理しています(図2).
を見やすく並び替えることができます.これにより,
本システムでは各医療機関でメーカやベンダが異なる電
投与している薬剤がいつからなのか,過去の検査はい
子カルテに蓄積された医療情報を結合し,1つの画面に時系
つ実施されたのか,これまで飲んだ薬剤は何かなど,
列で表示することにより,患者ごとの過去の医療情報を視
従来の電子カルテでは検索でしか確認できなかった情
覚的に表現します.この時系列表示の機能をタイムライン
報について,時間軸をベースに表示することが可能と
ビューアといいます(図3).医療機関の医師は,一覧で表
なります.
示された過去の診療行為とそれに伴う患者の病態変化を,
・上記のとおり並び替えた任意の表示項目をボタンとし
経時的かつ正確に把握することができ,それらを踏まえた
て登録できます.これにより,複数の患者の医療情報
治療計画の作成,さらには症例研究へと活用することがで
も同一の項目で素早く表示することができ,特定の疾
きます.
病患者の診療計画を立てるのに役立ちます.
以下に本システムの主な特徴を整理します.
・タイムラインビューアはもともと前述のFuture Clinic
(1) タイムラインビューア
21ワープで採用されていた機能ですが,タイムライン
・「分・時間単位」「日単位」「月単位」「年単位」など自
連携システムでは連携先の医療機関の医療情報が表示
在にズームイン・ズームアウトができ,瞬時に全体を
されるよう追加されています.
俯瞰したり,気になる範囲の詳細を把握したりするこ
(2) 患者ID連携機能
とができます(図4).
・医療機関ごとに異なる患者コード(患者ID)を関連付
データセンタ
タイムライン
連携サーバ
医療情報連携基盤
ID連携・認証連携(SAML2.0準拠)
・各医療機関で異なる患者IDの紐付け
・利用者(医師等)のシングルサインオン
アクセス制御
情報流通(ID-WSF2.0準拠)
・ログイン者単位で参照できる患者情報を制御
・ログイン者単位で参照できる項目を制御
・認証結果情報を用いた情報流通
・通信路における暗号化・署名
運用管理
・マスタ情報(組織や資格など)の一括管理
・統一フォーマットのログデータ出力
フレッツVPN等
タイムラインビューア
病 院
診療所
データ参照
データ参照
連携用
データ送信
A社製
電子カルテ
サーバ
・施設ごとに管理されている患者情報を
一元的に表示することが可能
・過去カルテの素早い参照が可能
・経過の把握が容易
・必要な情報の整理が自由に可能
連携用
データ送信
B社製
電子カルテ
サーバ
図2 タイムライン連携システムの構成イメージ
NTT技術ジャーナル 2011.12
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NTT東日本
連携先施設名
表示する時間の範囲を設定
病名
投薬
検査結果
A病院の検査結果データ
B診療所の検査結果データ
図3 タイムラインビューアの連携画面イメージ
けます.これにより,連携先の医療機関どうしにおい
て患者単位で医療情報を管理することが可能になり,
対策という側面においても有効です.
このたびの東日本大震災を機に企業のBCP対策への関心
医師どうしや医療機関どうしで容易に,かつ綿密に情
が高まっていますが,災害発生時に負傷者対応等の重要な
報共有を行えるようになります.
役割を担う医療機関においては,BCP対策は特に重要なも
(3) ベンダフリー
のとなります.
・電子カルテメーカやベンダに依存しないオープンな環
境として,SS-MIX
*1
に準拠しています.日本では医
本システムでは安全性・信頼性の高いNTT東日本のデー
タセンタの活用により各種ガイドライン
*4
に準拠したプラ
療情報の共有に関して電子カルテのフォーマットが統
イベートクラウド構成をとることができます.医療情報を
一されておらず,共有できる仕組みがまだ整っていな
遠隔地にバックアップすることで,震災直後でもバック
いのが現状です.本システムでは各医療機関で個別に
アップされた患者の電子カルテデータの参照が可能になる
蓄積されてきた医療情報のデータでも,そのまま活用
できる気軽さがあります.
*1
(4) セキュアな認証・開示制御
・N T T 研 究 所 に て 開 発 し た 医 療 情 報 連 携 基 盤
(SAML2.0
*2
,ID-WSF2.0 *3準拠)の採用により,
高セキュリティな連携環境を実現することが可能です.
タイムライン連携システムによる
BCP対策
以上のようなタイムライン連携システムの特徴は,BCP
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*2
NTT技術ジャーナル 2011.12
*3
*4
SS-MIX:厚生労働省電子的診療情報交換推進事業のもと開発された標
準規格.
SAML2.0:標準化団体である「OASIS」により策定された複数サイトに
おける認証手続きを一度に集約するシングルサインオンの仕組みや,各
サイトの認証情報を連携する仕組み,ユーザ情報の安全な交換の仕組み
について規定.
ID-WSF2.0:ユーザ認証技術の標準化団体「Liberty Alliance Project」に
より策定された,サイト間でユーザの属性情報を安全に交換する方法を
定めた国際標準規格のプロトコル.
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.1版(平成22年
2月 厚生労働省)
,ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全
管理に関するガイドライン(平成22年12月 総務省)
,医療情報を受託
管理する情報処理事業者向けガイドライン(平成20年7月 経済産業
省)
.
診療記録が時間軸上に一覧表示され,時間幅を自在にズームイン・ズームアウトができ,患者の
臨床経過を一目瞭然に把握することができます
月単位表示
年単位表示
1年
長期にわたる臨床経過を
ズームアウト
日単位表示
1日
1カ月
気になる個所を
ズームイン
さらにズームインして
日々の詳細な診療内容を
確認できます
図4 タイムラインビューアのズームイン・ズームアウトイメージ
と期待されています.
なります.また患者側としては診療所から病院まで連続し
てより良い医療を受診することができるようになり,重複
今後の展開
検査の解消にもつながります.結果として,診療時間の短
縮や医療費負担の軽減という効果ももたらすと考えられ
NTT東日本と相澤病院は今回の運用トライアル開始に合
ます.
わせて協定を締結し,今後のタイムライン連携システムに
NTT東日本は,タイムライン連携システムにより医療・
関する改善,連携医療機関の拡大等に向けて協力すること
介護を取り巻く分野の問題を解決し,日本の地域医療の発
としました.
展に役立てることを目指しています.
またNTT東日本は,NTT東日本関東病院をはじめとする
社内病院に本システムを展開していくとともに,各地域に
おいても中核病院をはじめとした導入事例を増やすべく,
努めていきます.2012年3月末を予定している運用トラ
イアルの終了後は,実運用として4病院,94診療所,16
薬局へと拡大する予定です.医療機関のBCP対策の1つと
しても展開を図っていきたいと考えています.
今後,本システムが各地域の医療機関に導入されていく
◆問い合わせ先
NTT東日本
ビジネス&オフィス事業推進本部
新世代ビジネス営業部
医療・ヘルスケアビジネス担当
TEL 03-6803-9004
FAX 03-5781-5313
E-mail med-nw ml.bch.east.ntt.co.jp
ことにより,医療機関では患者の既往歴や過去の診療内容
等について,異なる医療機関の電子カルテに蓄積された情
報であっても,国内で初めて連続する時系列上に結合して
表示し,治療方針の確認をしながら診療することが可能と
NTT技術ジャーナル 2011.12
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