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明日の医療経営を考える TEAM APPROACH No.5 すべて読む
▲
海外情報
マルコム・ボルドリッジ賞にみる経営品質改善の指標
従業員の満足度が病院経営を支える
多摩大学医療リスクマネジメントセンター 教授 真野
俊樹
優れた品質の経営に対して贈られる米国のマルコム・ボルドリッジ賞(以下 MB 賞)。医療部門においても同賞への挑戦を
通じ経営革新が図られている。従業員満足、患者満足の視点から診療実績向上へ−その経営改善活動の指標を紹介する。
従業員満足なくして顧客満足はない
で使っている。
「情報、知識、報奨、権限を従業員に提供する」ことを奨励する上
で必要な環境がすべて整っている権限委譲型の組織が、サービス業では望ましい。
医療のようなサービス財の場合には、事前にその評価が難しく、かつ
従業員満足度 UP のキーワード 2 ● モチベーション
消費の瞬間が短いという特徴がある。さらに、一定ではない。
サービスの特性である「同時性」は、サービス提供者と顧客の間の境
界線があいまいなことを意味する。特に心理的にサービス提供者と顧客
が密接に関係しあう。両者はしばしば共同作業を行い、
お互いを観察し、
相互作用を起こす。たとえば、患者さんから感謝されれば、サービスを
提供している側にも伝わり、それがモチベーションになる。これはわれ
われ医療従事者が比較的感じていることではなかろうか。
逆に、不満を覚えている、やる気のない、あるいはフラストレーション
を感じている従業員は、そうした感情を顧客との相互作用において相手
に伝えてしまう。疲れているときにはいいサービスもできないというこ
とになる。
従業員満足なくして顧客満足はないといわれるゆえんである。
そこで、サービスが提供される場所での人と人との出会いが、極めて
モチベーションという言葉は動機付け、と訳されるが、欲求の裏返しと言っても
いい。このモチベーションという言葉は、ラテン語の movere に由来している。字
から想像されるように、これは、move の派生語である。目標がなければ、ひとは
それに向かって動こうとはしない。会社でも必ず目標設定をする。目標がなければ、
モチベーションは起こらないことになる。
ランドルフ・ネッセという社会心理学者は希望の社会心理学という考え方を提唱
した。彼は、
「希望(hope)という感情は、努力が報われると感じる時に生じる。絶
望(despair)は、努力してもしなくても同じだと感じる時に生じる」と規定した
(R.
Nesse“The Evolution of hope and despair”Social Resarch 1999 summer)
。
自分が行っている努力が、将来、何らかの形で評価されることが、
「やる気」につな
がる感情を呼び起こし、前向きに生きるエネルギーを供給するというのだ。一方、
努力しても無駄になる、
努力してもしなくても同じと感じれば、人々は物事に取り
組むための「やる気」をなくしてしまう。
従業員満足度が経営のかぎ
重要になる。要するに、サービスを提供するカウンターパーソンの役割
が極めて重要になると言ってもいい。この出会いの瞬間を、サービスエ
人が価値を生む時代になると、あるいはサービス業が中心になってく
ンカウンターと言う。
れば、専門性の高い社員や外部資源を使いこなしたり、従業員満足なく
「真実の瞬間」という言葉がある。これは、
顧客が企業の提供するサー
しては、高い価値や良いサービスを提供することができない。これを
ビスに接する場合の時間のことで、
「闘牛士と傷ついた牛が、今まさに
図1に示すように、サービス・プロフィットチェーンとして構造化する
向かい合って、牛に細身の剣で最後の一刺しを与える瞬間」とたとえら
学者もいる。日本で社会経済生産性本部の行っている日本経営品質賞
れる。サービス提供企業が顧客にサービスを提供して、顧客をとりこに
(米国で言うMB 賞)で表彰された会社をみても、従業員満足をその4つ
し、
その顧客を会社の熱心なファンにすることのできる瞬間と言えよう。
これは、この考え方で経営危機を脱したスカンジナビア航空の経営者、
ヤン・カールソンが有名にした言葉である。
の柱の一つに据えている(図2)
。
米国の医療の質向上に寄与する MB 賞
エール大学のブルーム教授は期待理論、すなわち個人の動機づけには
ここで、米国で医療の質向上活動に一役を買っている MB 賞につい
努力すれば得られる報酬への期待、努力が報酬につながる確率、報酬の
て簡単にまとめておきたい。1980 年代、日本経済は絶好調で、日本の
主観的な魅力、の 3 つの要素があると述べている。本項では、いかに従
経営がもてはやされた。書籍では『ジャパン・アズ・ナンバー1』など
業員満足をあげるかを、米国の病院の例もみながら考えてみよう。
が上梓された時代である。それに対して、アメリカは双子の赤字に苦し
よく聞く言葉にエンパワーメントとかモチベーションがある。
従業員満足度 UP のキーワード 1 ● エンパワーメント
エンパワーメント(Empowerment)とは一般的には、個人や集団が自らの生活
への自律を獲得し、組織、社会、構造に影響を与えるようになることであると定義
されている。WHO のオタワ憲章では、エンパワーメントを「人々や組織、コミュ
ニティが自分達の生活への統御を獲得する過程である」
としている。このエンパワー
メントという概念は 20 世紀を代表するブラジルの教育思想家であるパウロ・フレ
イレの提唱により用いられるようになり、中南米を始めとした世界の先住民運動や
女性運動、あるいは広義の市民運動などの場面で用いられ、実践されるようになっ
た概念で、元来は社会学のものである。しかし、経営学では権限の委譲という意味
図 2 ■<目指す方向>パフォーマンスエクセレンスの追求
基本理念
顧客本位
社会との調和
独自能力
社員重視
※経営品質評議会資料
①顧客本位…価値の基準を売り上げや利益
ではなく、顧客からの評価におく。
②独自能力…他組織と同じことをよりうま
く行うのではなく、他組 織とは異なる見
方、
考え方、
方法による価値実現を目指す。
③社員重視…一人一人の尊厳を守り、社員
の独創性と知識創造による企業・組織目
標の達成が重要。
④社会との調和…企業・組織は社会の一員
であるとの考え方に基づいて、社会に貢
献する、
社 会価値と調和することを目指す。
図 1 ■サービス・プロフィット・チェーン
社内サービス提供
システムの質
従業員満足
従業員の維持
従業員の生産性
社外サービス
の価値
顧客満足
顧客
ロイヤルティ
従業員の維持
従業員の生産性
※出典 /J・L・ ヘスケット、T・O ・ ジョーンズ、G・W・ ラブマン、W・ アールサッサー Jr.、L・A・ シュレンジンガー: サービス・プロフィット・
チェーンの実践法−顧客満足と社員満足が生む高収益体質 . ハーバード・ビジネス・レビュー . ダイヤモンド社 . 1994 年 7 月号より転載 2
元気な病院
Overseas Imformation
んでいた。80 年代前半の経済活動の大幅な落ち込みの原因分析と根幹
SSM ヘルスケア
における、BSC
カード。このよう
に 、毎 月 の 状 況
をグラフで貼り
出している
的な対策の確立に国を挙げて取り組んだ。そして、日本の強さは品質に
あると結論された。そこで 87 年のレーガン政権下、競争力強化のため
に法制度を整備し、
MB 賞の設立を決定した。88 年から MB 賞のスター
トとなったのである。著名な受賞企業としてはボーイング、テキサスイ
ンストルメンツ、ゼロックスなどがあり、大統領自らが授賞の表彰を行
うことでも知られている。また、MB 賞に限らず、シックスシグマ(生
産プロセスを改善するために開発された手法)などもこの頃に誕生して
いる。
さらに、社会的に大きな問題となっていた病院や学校といった公的
なサービスを行うところの経営分野でもMB賞を対象とすべく 94 年か
らパイロットプランがスタートしている。95 年には、46 の医療機関と
19 学校が審査に応募し、評価とフィードバックが行われた。そして、
2000 年度からは「教育」と「ヘルスケア(医療・福祉)
」の2部門が新
設されたのである。
一方、日本では財団法人の社会経済生産性本部が日本版MB賞とし
て、日本経営品質賞を設立し、1996 年からスタートした。毎年 12 月に
受賞企業が発表される。第1回目の受賞企業はNEC半導体事業グルー
プだった。その後の受賞者はアサヒビール、
千葉夷隅ゴルフクラブなど、
必ずしも有名企業ばかりではない。97 年 3 月 26 日、地方自治体として
板橋区役所が経営品質賞を設置。また、県レベルでは、千葉県、新潟県、
福井県が持っている。
MB賞も経営品質賞も、考え方の特徴は 4 つある。
まずは、
「顧客本位」
。これは、価値の基準を売り上げや利益ではなく、
顧客からの評価におくもの。次に「独自機能」である。他組織と同じこ
とをよりうまく行うのではなく、他組織とは異なる見方、考え方、方法
による価値実現を目指すことを評価している。3つめは、
「社員重視」
。
一人一人の尊厳を守り、社員の独創性と知識創造による企業・組織目標
の達成を重要視している。最後の4つめが、
「社会との調和」だ。企業・
組織は社会の一員であるとの考え方に基づいて、社会に貢献する、社会
価値と調和することを目指している。
外部の目にさらされる病院
医療機関が高い評価を受けるエッセンスとしては、チーム医療が行わ
れていること、看護師が活用されていること、組織の方向性を同じにす
ること、プロジェクトチームの活用、といったものがあげられる。
米国の医療機関で MB 賞を最初に受賞した SSM ヘルスケア(写真)
では、
多くの施設でばらばらであったミッションを単純化して統合した。
そのときに多くの従業員の意見をもとに Through our exceptional
health care services, we reveal the healing presence of God(私
たちの優れたサービスは、神の治療の存在を示しているものです)とい
う方針を作り上げたという。神様という言葉が出てくるのが日本人には
馴染みにくいが、米国では非営利病院の多くは宗教系の病院である。こ
のように、理念を明確化し、社員のモチベーションを高め、さらにエン
パワーメントによって、高いモチベーションや従業員満足を患者満足に
変えていくのである。
手法としては、BSC を使用している。ここでは、視点として①治療
でのほかにはない成果、②患者・③従業員・④契約医師のほかにはない
SSM ヘルスケア
シングホームを経営し、総ベッド数 5321、ボランテア 5100 名、契約
医師は 5000 人(勤務が2200 人)
、従業員は 23000 人、収入が約 2400
億円、経常利益が約 80 億円 、平均在院日数が 4 日という巨大組織であ
る。在宅医療、慢性期医療も行っている。
MB賞受賞病院での従業員へのマネジメント
MB 賞の考え方の反対に位置するコンセプトとしては、①支配統制・
管理、②手段の目的化、③部分最適、④短期的視点、⑤すべてに対応す
る、⑥当事者意識の不足、⑦固定的な考え方といったことである。支配
統制・管理とは、
「上の人が決め、下の人は指示されたとおりに実施し、
上の人がその成果を評価する」というマネジメントのことである。上の
人があらゆる知識を持ち、判断力、行動力すべてにおいて、下の人を上
回るということを前提にしたマネジメントである。
こうした管理は、官僚制などの組織体制を構築している組織によく見
られる。官僚制は、環境が変わらず、目的が明確な場合、非常に有効に
機能する。しかしながら、環境が変わる中では、現場の状況を上が理解
するまでに時間がかかり、柔軟に対応できない。また上の人間に知識や
能力の限界がある場合、組織全体の能力が極端に低くなるという状態を
起こしてしまう。
この対極にあるマネジメント、すなわち MB 賞の目標とするマネジ
メントは自律かつ自立した組織を目標にしたものだ。著名な経営学者の
ドラッカーは、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメント
に変えることを可能にすることが上級職の役割と説く。
このようなマネジメントを行うことで、MB 賞を受賞した病院では、
表にあるように、従業員満足度、ひいては看護師充足度、さらには患者
満足度も高めることに成功しているのである。
表 ■ MB賞受賞病院の活動成果(Robert Wood Johnson Univ.Hospital Hamilton)
99
うっ血性心不全死亡率
心筋梗塞死亡率
脳卒中死亡率
肺炎死亡率
8(4)
3(6)
7.5(10)
5(11)
10(9)
7(16)
6(7)
9(14)
99
03
入院患者満足度
70
92
救急患者満足度
87
90
外来患者満足度
(%)
03
60
92
99
03
従業員満足度
70(90)
90(90)
看護師維持率
95(82)
96(88)
看護師充足率
80
90
( )内は Quadramed
Clinical Performance
System で信頼のある
病院からのデータをリス
ク調整した期待値
ベンチマーク先データと
して 90%
( )内はベンチマーキン
グデータ
・ED市場シェアは4年間で倍増、心臓疾患では1.5 倍、外科では1.8倍、産科は1.3倍
・オペレイティングマージンは 2000、2001年は1999 年の3倍になったが、人材確
保、育成、医療の質の向上のために投資し、2003 年には 1999 年以下に抑えた
※上記データはクエスト会議でのアプリケーションサマリの図表から読み取り数値化したもの
※ NEC 総研水町氏資料を改変
成果、⑤財務のほかにはない成果を挙げている。BSC は全従業員への
参考文献
徹底がキーになるが、SSM ではポスターを全部署で張り出すなど有効
●水町浩之:医療経営品質―世界的な経営革新の基準ボルドリッジ賞に学ぶ
に使用していた。余談ではあるが、病院側は、この方針に自信を持って
いた。ところが、MB賞の審査員が、
「ところで、
『優れた』をどうやっ
て定義するのか」と質問した。残念ながら、病院当事者は、その場で答
えられなかったそうである。
「優れた」を簡単に言い表すのは難しい。
なお、この SSM ヘルスケアはアメリカの中部のミズーリ州、オクラ
ホマ州、ウイスコンシン州、イリノイ州で 20 の急性期病院、3つのナー
●米国
2007
病院マネジメント先端事情調査団 報告書 . 社会経済生産性本部 . 2008, 2007
. 社会経済生産性本部 .
●真野俊樹:医師・看護師確保のカギを握る病院長の経営スキル―4つの経営資源の充実から“医療
従事者満足度”を向上させる 医療経営白書 . 日本医療企画 . 2007
真野 俊樹(まの・としき)
●1987年名古屋大学医学部卒業。医師、
医学博士、
経済学博士、
日本内科学会専門医。
臨床医を経て、
95 年米国コーネル大学医学部研究員。00 年英国レスター大学大学
院でMBA取得。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。04 年
京都大学博士(経済)取得。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師、
大和総研主任研究員、大和証券 SMBC シニアアナリストを経て現職。
マルコム・ボルドリッジ賞にみる経営品質改善の指標
3
T E A M A P PROACH
明日の病院経営を考える
2008 Autumn No.4
海外情報
Overseas Information
可視化 さ れる自院の強み・
「職員満足
病院 経 営
調査・分析 マルコム・ボルドリッジ賞にみる経営品質改善の指標
従業員の満足度が
病院経営を支える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
特集
元気な病院
「職員満足度」で差がつく、これからの病院経営
病院が提供する医療の質は、
「職員
の質によって決まる」といっても
過言ではない。職員の質を高める
ことが、病院経営の最重要課題だ
といわれる所以である。では、いか
に職員の質を高めるか。そのため
には、まず自院を、職員を客観的に
把握することから始めなければな
可視化される自院の強み・弱み、
職員のモチベーション
らない。
「職員満足度調査」の実際
を紹介する。
「職員満足度調査」を
病院経営に生かす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
職員満足度調査の意義
Case Study Report 1
「職員満足度の調査結果は、他の病院と比
医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 ( 兵庫県・赤穂市 )
収益は職員と地域のために還元。
財務諸表の開示で、
職員の“やる気 ”
と
“ 満足”
を引き出す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
Case Study Report 2
医療法人 清和会 長田病院 ( 福岡県・柳川市 )
病院に合った教育制度を構築し
働きがいのある職場、
管理職のレベルアップを目指す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
較することによって、その病院の強みと弱み、
職員のモチベーションの状況が極めてはっ
きりとした形で可視化されます」
職員満足度調査
(以下、
調査)
は、
病院のマネ
ジメントに非常に有効であると、株式会社
ケアレビュー代表取締役の加藤良平氏。
職員の声に関する考察も非常に重要で、
自
由記述の内容を分析すると、その病院で提供
される医療の質を、ほぼ正確に見極めること
ができるという。
また、病院経営の問題点に
ついても、解決のための糸口が見つかるケー
「職員満足度」
調査用紙サンプル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
スも少なくないようだ。
しかし、調査を実施し、病院経営に生かす
には、経営者もそれなりの『覚悟』が求めら
れる。
職員の声を聞く以上は、多くの要望や
期待に応えるだけの責任が発生するからだ。
彼らの声を無視することは、調査を行うこ
と自体を無意味なものにするだけでなく、
TEAM A P P R O A C H
2008年 秋号 通巻4号
●発 行 日 2008年9月
●発 行 人 玉井 伸正
●発 行 所 第一三共株式会社
●制 作 メディカルクオール株式会社
●協 力 株式会社メディワイズ
●デザイン マグラー デザイン スタジオ
●印 刷 株式会社誠文堂
4
病院の評価を高める
かえって職員のモチベーションを下げること
にもなりかねない。
「調査結果をふまえ、経営幹部が議論を通
して職員に『適切なメッセージ』を発信する
ことができた病院は、その後の経営と職員
Investigation
Investigation of
of Employeesatisfaction
Employeesatisfaction
・ 弱み、
職員のモチベーション
株式会社ケアレビュー 代表取締役
分類
処 遇
方法、
分析結果の傾向を見てみる。
組織制度
と、加藤氏はいう。
以下、同社の測定・分析
モチベー
ション
コミュニ
ケーション
との信頼関係が大きく改善することにつな
1)
勤続への意欲 :あなたは、今の職場で
2)
職場推奨意向 : あなたは、あなたの
病院を職場として知人に勧めますか?
満足・不満足の要因を探るには、フレーム
(表)を使って情報分析を行う。
一般企業では
あなたは、病院の理念・使命・目標などを理解していますか
あなたの病院は、理念や使命に沿った活動をしていると思いますか
社会性の重視度
あなたの病院は、病院に対する風評を重視していると思いますか
能力との適合度
あなたは、今の仕事が自分の能力に合っていると思いますか
仕事のやりがい
あなたは、今の仕事にやりがいを感じていますか
適正な評価
あなたの病院では、仕事の成果が正当に評価されていると思いますか
上司への信頼
職場の雰囲気
あなたは、あなたの上司を信頼できますか
部門間の連携
自由に提案ができ、
みんなが協力し合うなど、
職場の雰囲気は良いと思いますか
他部門との連携はスムーズですか
能力開発
評価方法の理解
あなたの病院は、あなたの能力開発を支援してくれますか
成果がどのように評価されるか理解していますか
あなたは、
何を期待され、
福利厚生
あなたは、現在の福利厚生制度に満足ですか
あなたは、現在の報酬に満足ですか
あなたの上司は、仕事の成果に対してフィードバックをしてくれますか
あなたの病院では、職員に重要な情報を知らせていますか
働きやすい環境
精神的な不安
あなたは、職務遂行に相応しい環境を与えられていますか
あなたは、過度に精神的不安を感じることなく仕事ができていますか
私生活への配慮
安全面への配慮
あなたの病院は、職員の安全に配慮していると思いますか
組織構造
権限の付与状況
指示系統の明確さ
あなたは、職務遂行に必要な権限を与えられていますか
あなたは、複数の上司から指示を受けて困ることがありますか
職務達成感
地域からの評価
患者からの評価
あなたの仕事は、地域社会から評価されていると思いますか
あなたの仕事は、患者さんから評価されていると思いますか
医療の質
自己利用の意向
病院としての推奨意向
あなたは患者として、あなたの病院を利用したいと思いますか
あなたの病院を患者さんや知人にすすめますか
情報共有
あなたの病院は、あなたの私生活に配慮してくれますか
図1■重要度分析
高 重要度 低
これからも働きたいと思いますか?
社会性
満足度』
と呼んでいる。
職場としての推奨意向
経営理念の理解
病院の活動姿勢
フィードバック
職員への情報提供
具体的な測定方法
ては、以下の2項目を最重要と考え、
『総合
設問内容
あなたは、今の職場でこれからも働きたいと思いますか
あなたは、あなたの病院を職場として知人に勧めますか
報酬
職場環境
職員満足度を総合的に判断する設問とし
設問名
勤続への意欲
経営方針
加藤良平
がっています」
項 目
総合評価
勤 務意 欲
度調査」を
に生かす
表■職員満足度調査の設問・分析フレーム
「勤務意欲」や「組織制度」についての意識を
[重点改善分野]
高重要度―低満足度
早急な改善が必要
[重点維持分野]
高重要度―高満足度
高い満足度を維持
[将来改善分野]
低重要度―低満足度
改善が必要だが後回し
[現状維持分野]
低重要度―高満足度
当面、対応は不要
低 満足度 高
知ることで十分だが、病院の場合は「職務達
成感」
や
「医療の質」
といった
「社会性」
につい
ても、病院としてのメリットはない」
「個人
●満足度水準の把握
ての意識を把握することも重要となる。
評価は行わないので、
自由に意見を寄せて欲
職員アンケートは、患者アンケートなどに
総設問数は30問程度が限度だ。設問が
しい」といったスタンスを明確に示し、調査
比べて圧倒的に不満が表出しやすい。
した
それ以上になると、回答者の負担が大きく、
への信頼を確保することが重要である。
がって、絶対値だけで満足度を判断するの
回答内容の信頼性も低下してしまう。
調査
一般企業では、社員にパソコンで回答させ
は困難なので、
他病院との相対的な比較が望
設計時に、適度な分量にとどめることが望ま
るケースが増えているが、病院の場合は個々
ましい。
しい。
人専用パソコン等のインフラが整っていな
親しい複数の病院が協力して、一斉調査
また、調査結果を経営改善に活用するには、
いケースが多く、調査用紙を配布・回収する
を行い、比較検討する方法もあるが、信頼で
選択式のアンケートだけでなく、自由記述を
方法が中心となっている。
きる第三者機関を利用すれば、簡便にベン
できるだけ多く集めることが必須である。
なお、アンケート回収箱へ自由投函しても
チマーク分析が可能となる。
特に重要だと思われる項目は、選択肢の直後
らう場合は、回答率が80 ~ 90%にとどまる
●重要因子の把握
に、
不満足の理由や経営への要望事項を具体
傾向にある。
所属部署ごとに回収責任者を
調査結果を活用するためには、職員が何
的に記載してもらう欄を設けることが効果
決め、できるだけ全職員からのアンケート
を「重要だ」と考えているのかを把握するこ
的だ。
回収を目指して欲しい。
とも必要だ。
●調査方法
また、調査をできるだけ意義のあるものに
具体的には、総合評価を目的変数として、
職員の本音を拾うには無記名とするのが
するためには、医師を調査に巻き込むこと
各設問との間での相関分析を行い、各項目の
良いが、組織やセグメントごとに課題を把握
も重要である。
他職種に比べて、経営目線
影響度の強さを測定する方法がおすすめだ。
するため、
性別・年齢・職種・勤続年数・所属部
に近い建設的な意見や、現場のリーダー
このデータを2次元のチャート上にプロット
署等の属性選択欄を設けて記入してもらう
としての立場からの提言も多く見られて
することにより、各課題への対応の優先度が
ことも必要だ。
その際に、
「書いた人を特定し
いる。
判定できる
(図1)
。
「職員満足度調査」を病院経営に生かす
5
図2■勤続意欲 病院利用意向
《勤続意欲》
分析結果の傾向
《病院利用意向》
(%)
あなたは今の職場でこれからも働き続けたいと思いますか?
設)
を見てみる。
9
あまり
思わない
■ 視点1 勤続意欲
(図2)
非常に
そう思う
まったく
思わない
まったく
思わない
同社が行った、
2007年度の調査結果
(40施
5
6
非常にそう思う
あまり
思わない
21
13
20
勤続意欲のある職員は45%にとどまり、半
数以上の職員に離職の懸念がある。
(%)
あなたは患者としてこの病院を利用したいと思いますか?
ややそう思う
32
ややそう思う
全国的な傾向として、病院のスタッフは
24
どちらとも言えない
「医療」
や
「患者」
に対する思いは強いが、所属
どちらとも言えない
33
37
する組織へのロイヤルティ(忠誠心)が極め
て低い。
ちなみに、最も勤続意欲が高い病
院は 63%、最も低い病院は 2 4%と大き
な開きがある。
前者では優秀な人材ほどモチ
職場の先輩職員が行うことが多いため、経営
この傾向は、小病院ではさらに強く伺われ、
ベーションが高いのに対して、後者では優秀
者の知らないところでモチベーションの低
病院間の満足度格差は非常に大きい。
満足度
な人材から離職していくという悪循環が発生
下が伝染している可能性があるので注意が
の低い病院は、人材リスクが経営リスクに直
しているように推測され、確保すべき人材の
必要だ。
結する可能性も高いとして、一考してみる必
質に関しては数字以上に二極化が進んでい
■ 視点5 病院規模別満足度
(図4)
要がある。
る可能性も指摘できる。
全体の傾向としては、
中病院の職員満足度
■ 視点6 重要度分析
(図5)
■ 視点2 病院利用意向
(図2)
は比較的高く、大病院と小病院の満足度が低
各病院の平均的ポートフォリオで、総合的
自分の病院を利用したいと考える職員は
い。
また、病院の規模が小さいほど、満足度の
な満足度と他の項目との関係を見てみよう。
37%にとどまり、
60%以上の職員が、自分の
ばらつきが大きくなる。
例えば同じ中病院の
「仕事のやりがい」
「病院としての推奨意
病院を利用することに躊躇している。
規模であっても、非常に満足度の高い病院と
向」
「自己利用の意向」はともに重要度が高く、
患者満足度調査結果よりも病院間の差が
一方で不満の声が多い病院が、
両極に存在す
相互の関連性も強い。
仕事にやりがいがある
はっきりと表れる傾向にあるが、内部事情を
る傾向が見られる。
職員ほど、帰属する病院に対し高いロイヤル
よく知る職員が下した評価であり、各病院の
大病院の病院間の職員満足度の格差が小
ティをもっていることが推察される。
『医療の質』を測る上で極めて注目すべき指
さいのは、人員配置や運営方法に病院間で違
また、
「精神的な不安」
や
「評価方法の適正
標である。
特に、院内で患者のプライバシー
いが少なく、職場環境が均質化されているた
さ」に対しては、不満が強く、重要度も高い。
保護に関するルールが徹底されていないこ
めだと考えられる。
最優先で改善策を検討すべき事項と考えら
とへの批判的なコメントも数多く見られるの
また、中規模の病院の評価が高いのは、病
れる。
一方で
「報酬」
や
「福利厚生」
への満足度
で、
注意が必要だ。
院組織のマネジメントサイズとしての適正
は低いものの、重要度はそれほど高くないこ
規模を反映している可能性が高い。
ただし、
とも伺える。
ただ単に報酬を引き上げても職
セグメント別分析
(図3)
を見てみよう。
先にも述べたように病院間の職員満足度格
員の総合的な満足度が高まるわけではない。
■ 視点3 職種別満足度
差は大病院よりも大きく、マネジメント能力
■ 視点7 医療の質と職員満足度
(図6)
医師の満足度が最も高く、看護師の満足度
の優劣によって、
大きく影響を受けている。
同社の調査では、
「自己利用の意向」
と
「病
が最も低い。
メディア等では勤務医の危機が
ささやかれているが、現場では看護師のモチ
ベーションのほうが危機的状況にある。
現場
における医師と看護師の権限の違いや、使命
感の強さの違いによって差が出ている結果
と考えられる。
■ 視点4 勤務年数別満足度
図4■病院規模別満足度
《総合満足度》
得点
(100 点満点 )
70
60
50
新入職員のモチベーションは比較的高い
が、
2年目~ 10年目くらいまでの満足度が低
52.3
54.8
70
60
50
45.6
40
《職場推奨意向》
61.5
59.2
49.3
38.0
43.5
37.2
32.0
小病院
30
中病院
30
47.3
40
大病院
最高得点 平均得点 最低得点
56.1
43.6
38.8
30
小病院
元気な病院
46.0
50
69.5
63.1
中病院
6
51.3
大病院
えられる。
また、新入職員の教育指導は同じ
58.2
55.9
小病院
手不足のしわ寄せが及んでいるためだと考
45.1
70
55.3
49.8
69.7
62.8
60
中病院
高い。
構造的に、現場の働き盛りの職員に人
53.5
大病院
い。
また、
年齢や役職が上がるほど、
満足度は
40
65.6
《勤続への意欲》
大病院 : 職員数 400 名以上 中病院 : 職員数 200 ∼ 400 名 小病院 : 職員数 200 名未満
Investigation of Employeesatisfaction
図3■属性別職員満足度
■ 最も満足度が高い ■ 最も満足度が低い
《職種別》
0
20
40
《性別》
60
66.2
看護師
56.9
その他
58.7
20
40
女 性
60
幹 部
Jr. 層
一 般
80 (%)
0
《年齢別》
20
26-35 歳
65.1
36-45 歳
59.0
46-55 歳
40
60
48.8
50.8
56.1
62.1
56 歳以上
52.5
67.4
0
20
常 勤
40
80 (%)
60
53.0
非常勤
53.1
25 歳以下
74.8
Mgr.層
60
59.7
《役職別》
0
55
80 (%)
61.0
0
《勤務年数別》
20
1 年未満
3 年未満
5 年未満
10 年未満
20 年未満
20 年以上
40
80 (%)
60
55.8
医療の質
低
56.9
事 務
50
男 性
50.7
コ・メディカル
45
(%)
70
《勤務形態別》
65 (%)
職員満足度は低いが、
病院としての評価は
高い病院群
高
医 師
80 (%)
図6■医療の質と職員満足度
55
職員満足度は高いが、
病院としての評価が
低い病院群
51.2
51.5
40
40 52.2
58.2
55 70 低 職員満足度 高
67.1
院としての推奨意向」
を
「医療の質」
と定義し、 〈自由記述の例〉
●対策の実施・職員への説明
職員満足度との関係性も分析している。
それ
調査を行っても、具体的な対策を講じなけ
によると、職員満足度は低くても病院として
の評価が高かったり、
一方でその逆もあるが、
「医療の質」
と
「職員満足度」
は、ある程度の相
関が認められる。
臨床成績や医療安全などのア
ウトカムと職員満足度との間にも、
何らかの関
係があると考えるのが自然だ。
分析結果を病院経営に生かす
●対策の立案
課題は病院ごと、職場ごとに異なっている。
調査結果を踏まえ、経営者が真剣に考えるこ
とが、重要だ。
外部のコンサルタントが考え
るようなプランを安直に導入しても、職員の
満足度が高まるとは限らない。
まず自院で優
先的に取り組む課題は何か、
どのように取り
組むか、経営者としての意志をはっきりさせ
る必要がある。
その際、職員が書いた自由記述が役に立つ。
すぐに採用できるような建設的な提案など、
改善に向けての貴重なヒントが満載である。
・診療科長などの管理職は相変わらず大学
人事に頼っている→任期制、選挙制など
業績やビジョン、病院への貢献度により
流動化すべき。
・看護師はこの病院しか知らない人が大半
であり、他院への出向、人事交流を活発
にし、広い視野を身につけるべき。
・服装は自由にして欲しい。小児科なので
真っ白の白衣は着たくない(子供がます
ますこわがる)
。
・自分の成果や、結果を上の者が評価して
いるが、部下が上司を評価することもし
た方が良いと思う。そうでなければ病院
の体質も絶対に改善されないと思うし、
患者様と一番近くで接しているのは下の
者だってことを理解して欲しい。
・他の部署の看護も勉強してみたい。定期
的に異動があれば全職員の適材箇所に本
人も気付けるのではと思う。
・年休の買取の検討。
(年休を取りたくて
も少人数部署は取れない)
・コスト意識が無い。エレベーターは使い
放題(上りは3階以上、下りは4階以上
など、使用の取り決めが必要なのでは)
。
緊急改善分野
重点維持分野
仕事のやりがい
精神的な不安
評価方法の適正さ
45
働きやすい環境
職場の雰囲気 上司への信頼
安全面への配慮
能力との適合度
能力開発
病院の活動姿勢
フィードバック
部門間の連携
私生活への配慮
評価方法の理解
報酬
福利厚生
職員への情報提供
地域からの評価
権限の付与状況
経営理念の理解
患者からの評価
社会性の重視度
指示系統の明確さ
25
30 55 80
低 満足度 高
高
重要度
低
病院としての推奨意向
自己利用の意向
将来改善分野
まうことになる。
経営者は調査結果の概略と
ともに、調査を踏まえたメッセージ(調査結
果の感想、直ちに着手したい対策、何年後ま
でに計画的に検討する事項など)を発信する
ことが大切だ。
フィードバックすることは、職
員との信頼関係が高まるきっかけにもなる。
●継続的な実施
対策の実施により、職員満足度を高めるこ
とができたかどうか、適当な時期にモニタリ
ングすることが重要である。
できれば毎年調
査時期を決めて継続的に調査を実施し、職員
満足度をアップさせるように、PDCAサイ
クルを回すことが望まれる。
最後に、第三者機関に調査・分析を依頼す
るメリットをあげておく。
・無記名かつ外部委託することにより、職員
が本音を書きやすい。
・他病院との比較
(ベンチマーク)
分析により、
客観的な測定が可能になる。
図5■重要度分析の実際
65
れば、職員のモチベーションを低下させてし
・院内での手間をかけずに、
実施できる。
「職員満足度」
調査用紙サンプル
(P20 参照)
の著作権は「株式会社ケアレビュー」にあり
ますが、
商 用 利 用以 外であれば、貴院で、
そのままご活用いただくことができます。
●調査内容について、自院分析、他院との
ベンチマーク分析を希望される場合等、
お問い合わせは
http://www.carereview.co.jp まで
現状維持分野
「職員満足度調査」を病院経営に生かす
7
1
Case Study Report
医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 ( 兵庫県・赤穂市 )
収益は職員と地域のために還元。
財務諸表の開示で、
職員の
“やる気”
と
“満足”
を引き出す
Check Point
元気な病院になるためのポイント
●目標達成によるインセンティブ
●医師の情意評価は、
医師の現場をよく
知る看護師が行う
医療レベル、ニーズともに高く、地域では頼りがいのある病院として認知されている
●部門間の垣根のない環境が、
職員満足
度を高める
赤穂中央病院。
しかし、経営的には赤字であった。
現理事長の古城資久氏は、就任を機
●収益は、
職員と地域のために還元する
に徹底的に原因究明を行う。出た結論は、
「医療行為には問題がない。ガラス張りの
財務管理と人材の育成・適正評価による経営刷新」であった。
同院は 2001年、病院
経営の礎である職員の「やる気」と「満足」を引き出すため、職員への財務諸表の
開示に踏み切った。
赤穂中央病院は、職員のモチベーション
「会議の日時は決まっています。
にもかか
職員考課による
モチベーションのアップ
アップ・育成のためのスケールとして、人事
わらず直前になって、
『仕事がありますか
考課制度の導入を決定した。
ら』
『患者さんがいるので』
、と一人抜け、二
経営改善は、経営陣だけでできるもので
「人事考課制度を導入するためのプロジェ
人抜け。
私も現場の仕事をやりながら、プロ
はない。
職員の協力なくしては、ありえない。
クトはスタート時、
10 人以上いました。私
ジェクトに参加していましたから、
『冗談じゃ
職員の協力を得るためには、
まず職員のモチ
はコ・メディカルの代表でしかありませんで
ない!』
という気持ちになりました」
ベーションを高めること。
そして育成する
した。
でも、もうすぐスタートというころに
山本氏は、院内で一番多くスタッフを抱え
こと。
残っていたのは、理事長と私だけ。
理事長は
る看護部の部長、現在は副院長でもある山内
前提として、現在の病院の財政事情を
決定役で、実作業は私です。
うまくいくわけ
春代氏にプロジェクトにはいってもらうこと
理解・共有する必要があった。そのうえ
はない、
と思っていました」
で、
なんとか制度のスタートをきる。
で職務のスキルアップや成果を数値や人事
経営管理部部長の山本美和子氏は、当時
「最初は手作業で
で公正に評価する。
の病院職員の体質を振り返り、
苦笑する。
すから、間 違いも
あります。
間違えは、
すぐに修正しますが、
短期間で担当する患者さんが急増するわけで
試行錯誤の連続で
もありません。当然、定額報酬のほうが働き
した」
やすいといった声もありました。
経営管理部部長
幸いにも 1 回目の給与がでると、それまでのよ
山本美和子 氏
うな反発の声はなくなりました。年功序列的な
院長
長尾俊彦
私は、医師の一人ひとりと対話に努めました。
氏 地域も、私たちをきちんと
評価してくれています
最近では、数多く
の病院が同様の人
事考課制度を導入
給与体系では、仕事に比べ法外にもらってい
したいと相談にくるという。
た医師もいましたが、そういった医師は人事考
「なかには、
『スタートさせたいが、医師
課で正当だと判断された給与にさがりましたの
部門にどう適応させれば良いか、うまくい
で、そうした情報も大半の職員には、
「自分た
ちが、病院のためにしっかりとやっていれば、
かない』といった悩みも打ち明けられます。
そんなとき私は、
思い切って、
『えい、
やっ』
経営状態を公表し、業績と連動させる形で
きちんと評価してくれる」と、モチベーション
の人事考課制度の導入は当初、私も不安でし
を高めることにつながったようです。
た。職員が一丸となって、経営改善に協力して
私たちは、医療従事者として、地域に貢献
くれるのか、自分は医療現場のトップとして、
していきます。いかなる救急の患者さんも断り
山本氏は職員を考課することにパーフェ
理事長の思いを現場につなぐ、架け橋となれ
ません。領域のはっきりしない患者さんも、当
るのか、と。
院では普通に受け入れます。地域は、当院を
クトな制度などない、
と考えている。
私がまず取り組んだのは、若い医師に新制
必要としてくれています。私たちは、患者さん
度を理 解してもらうことでした。医局のロー
に恵まれました。院内の人事考課だけでなく、
テーションで来てくれている医師には、1 年程
地域も私たちをきちんと評価してくれているこ
度で実績をあげることは難しいことです。また、
とに、感謝しています。
でやらないと、スタートできませんよと、ア
ドバイスします」
だからこそ、制度導入の目的を職員がしっ
かりと理解し、共有して、自分たちにとって
プラスになる制度として機能できるよう、
部門を超え、職員同士の協力体制を作ること
が大切だという。
8
元気な病院
Case Study Report 1
・能力判定試験は、2ヶ所に設定する(3→4・6→7) 3→4は能力確認試験、
6→7はマネジメント教育修了が要件
・課長以上の役職並びに7等級以上の職員は、時間外手当の対象外とする ・初任格付けは各学校を基準的に卒業した年齢で張り付ける ・代行職は当該役職とみなす(→:代行職)
・昇格年数の○内数字は滞留年数を示す ・理論とは各等級職能を○内数字で獲得したいという期待滞留年数
表 1 ■職能職務資格等級フレーム
職能資格等級
層
等
級
資格呼称
46
−
26
②
L
リーダー
25
③
24
②
3
22
③
22
②
2
20
②
1
18
②
4
一般職能
各部門の改革活動
<上級指導監督・上級判断業務>
・基礎的管理能力を有し、小単位組織(担当範囲)
の
統括と指導監督により判断業務を遂行できる
・永年の経験と熟練によって行う上級判断業務を遂
行できる
<中級指導監督・中級判断業務>
・自らも判断業務を遂行し、後輩を指導できる
・永年の経験と熟練によって行う中級判断業務を遂
行できる
<初級指導監督・初級判断業務>
・自らも判断業務を遂行し、熟練を要する業務を遂
行すると共に一般職員をリードできる
30
∞
修士卒
大卒
<複雑定型・熟練業務>
・概略的指示により、経験と熟練によって行う複雑
定型業務を遂行できる
20
②
24
⑥
短大卒
専門卒
<一般定型業務>
・一般的指示、または定められた基準に従い多少の
経験によって行う一般定型業務を遂行できる
18
②
18
⑥
専門1卒
高卒
<補助・単純定型業務>
・具体的指示、または定められた手順に従って補助
及び単純定型業務を遂行できる
図3■経営指針書内容の個人へのおとしこみ
図2■理事長経営指針
トップダウン
法人全部門の改革活動
全部門が目標を
1つにした改革
両輪として位置付ける
時間短縮
材料削減
質の向上
<管理指導・専門業務>
・管理能力を有し、中・小単位組織の統括と企画立
案業務を遂行できる
・永年の深い経験と熟練によって行う高度な判断業
務を遂行できる
博士卒
図1■改革活動
ボトムアップ
医長
28
④
<上級管理指導・熟練専門業務>
・高度な管理能力を有し、大・中単位組織の統括と
企画立案業務を遂行できる
・永年の深い経験と熟練によって行う高度な複雑判
断業務を遂行できる
部長
TL
5 チーム
リーダー
主任
−
3ヶ月
技師長
薬局長
32
④
婦長
SC
6 セクション
チーフ
課長
−
3ヶ月
医長
指導監督職能
36
⑤
定義
<管理統括・高度熟練専門業務>
・高度な経営能力を有し、大単位組織を統括できる
・永年の深い経験と熟練によって行う極めて高度な
複雑判断業務を遂行できる
看護部長
−
3ヶ月
AM
7 アシスタント
マネージャー
専門職
(Dr)
管理職
事務部長
41
⑤
最長
部長
M
マネージャー
最短
施設長
管理職能
8
理論
対応役職
副院長
院長
GM
9 ゼネラル
マネージャー
初任格付
昇格年令
法人理念『すべては患者様のために』
我が病院のCore Mission
『病気を早く、快適に、適正価格で治す』
我が法人の将来展望
『地域密着型医療』
『 地域包括型医療』
細かく戦術を展開
経営指向からテーマを設定
( )
現場が困っているか
否かは関係ない
「人事考課制度」
は、教育の体系、
能力開発、モラルアップの制度
理事長経営指針
各部門の経営目標
各個人の目標
(人事考課制度のチャレンジ目標とする)
人口動態
周辺の医療事情
患者様の意識変化
目標ベクトルの集束化
資格等級フレーム」
(表1)で、
9等級に分けら
その時々の周辺の医療事情等が総合的に検
れている。
職員は、能力に応じて、等級分けさ
討・分析され、理念等に添う形で細かく戦術
れ、上の級へのステップアップが期待され
展開されている
(図2)
。
指針はまず、各部門に
同院では
「人事考課制度」
を、
(1)
教育の体
る。
各部門、個々人の目標はBSCによって具
開示され、各部門が具体的な目標設定を行う
系、
(2)
能力開発、
(3)
モラルアップも含めた
体化され、管理されるが、その根幹をなすの
が、意見があれば提言し、全職員が認識を同
職員育成のための制度、と位置づけている。
は理事長が年度ごとに提示する経営指針で
じくしていることを前提として、必要に応じ
したがって、
評価は、
トップダウンの目標に対
あり、その指針をもとに作成した「経営指針
て修正され、
部門ごとの数値目標が決まる。
してだけでなく、ボトムアップの目標と併せ
書」
が、
3月中旬に全職員を一堂に会した席で
各部門の目標に沿って、スタッフの個人目
てなされる
(図1)
。
配られる。
標に具体的に落とし込まれ(図3)
、
PDCAサ
教育体系のベースとなるのが「職能職務
経営指針という理事長のトップダウンは、
イクルで目標達成を図っていく。
医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 9
皆が共通の認識に立って
目標の達成に努める
目標設定にあたっては、
目標面接が行われ
る。
目標は個人のスキルアップや該当等級に
おける未達成課題など、部門長と細かく確認
をし、決定していく。
決定した具体的な目標
は、いきいきカード(職種によって異なる.表
2・3)
に記入し、
職能要件等を考慮しながら半
期ごとに達成度が評価される。
山内氏は、面接時の、理事長の目標チェッ
クは綿密だと信頼している。
「理 事 長 が 毎 年
掲げる経営指針に
表2■いきいきカード(チャレンジカード)
《医師・外科》〜情意目標のみ〜
<情意目標>
項 目
評 価
回診を定期的に行い、患者様の状態をよく把握している。
S・A・B・C・D
医療従事者や看護師が困らないように、わかりやすく診療や治療方針、家族への
ムンテラ内容をカルテに記載している。
S・A・B・C・D
緊急時や主治医不在時の診察を頼まれた場合には、快く対応している。
S・A・B・C・D
患者様や家族にムンテラをし、信頼関係を図っている。
S・A・B・C・D
看護師や介護員に対し、チーム医療の一員として、相手を尊重した態度や言葉使
いをしている。
S・A・B・C・D
経営管理も考慮して業務を行っている。
S・A・B・C・D
S:非常に良い A:良い B:普通 C:努力が必要 D:非常に悪い そっているかどうか、
各部門の設定した
目標はしっかりと
副院長 看護部長
山内春代 氏
の質が判断できるのではないでしょうか。
制度導入に反論した医師ほど
成果をあげている
丁寧に読みます。
いろいろな不満を、職場の仲間なり管理者
『この目標は、前にも
に伝えられる環境が組織にあるのかどうか、
ありましたね』
『こん
不満の解消に、一緒に取り組んでくれる仲間
しかし、制度がスタートした当初から、現
なことを、目標にあ
がいるかどうか。
そうした環境づくりが、私
場の理解が得られていたわけではない。
げてどうするの』
、
といった具合に、すべてを
たちの課題でしょう。
職員にはベストではな
「人事考課制度を導入するにあたって、医
チェックします。
経営指針として、理事長が
く、常にベターを目指すこと、コミュニケー
師には何度も説明をしました。
他の職種より
して欲しいと考えていることが目標になっ
ションが大切なことを、理解してもらうよう
も、
回数は多かったですし、
とにかくいろいろ
ていなければ、
指示をします」
に努めています」
な意見・疑問がでました。
でも、すごく反論し
とはいっても、理事長は現場の意見もしっ
そのかわり、必要があれば山内氏も山本氏
た医師のほうが、制度の導入後、しっかりと
かり聞く。
も、
本気で理事長と話し合いをする。
成果をあげています。
結果論ですが、それに
「どの部門であっても、たとえ若い責任者
「昨年度の例ですが、急性期の病床の稼働率
よって月々の給与も、
グンとあがっています」
であっても、
『理事長、
この数字の達成は無理
が96%に落ちました。
理事長は『稼働率の
医師については、半期ごとの年俸制にした
です。
根拠はこうです』と、納得できる説明が
アップを図れ』
という。
『どうやって、
稼働率を
ことで、やる気になれば短期間で実を伴う
できれば、
『ああ、
そうか』
と、
柔軟に聞き入れ
上げるというのですか』と私がいうと、理事
評価がなされることも良かったのではない
てくれます」
長は
『98%にすれば4億円増えるじゃないか』
。
か、
と経営管理部部長の山本氏。
しかし、半期ごとの目標設定であり、次年
度となれば、
まったく新しい経営指針が理事
『誰が、
98%にするのですか』
。
私たちは、課長等にやらせないといけない
現在は他職種でも、
同院の評価方法は好意
的に受け止められている。
看護部課長の山本
長から提示される。
多少の混乱は毎回ある
立場です。
であれば、いくらトップダウンで
にしても、今では現場も上司を信頼し、皆が
あっても、ただ
『はい、
はい』
と、聞いて伝える
「課長同士で話す
同じ方向を向いて目標達成に努めるまでに
だけではすみません。
必要に応じて、進言は
機会も多いのです
なった。
山内氏は、これも人事考課のおかげ
しないといけない」
が、
『次はこんなこ
だという。
しかし適正評価がなされたとし
4億円の増収について山内氏は、看護師の
とにチャレンジし
ても、
職員満足を100%にするのは、
無理だと
配置の見直しを提言し、認められたことで、
たい』
『ここは、この
も思っている。
現場に
「目標」
として
「達成」
を促した。
ように改善しない
美穂氏も、
その一人である。
「十人十色ですし、誰にでも何かしら不満
「一個人ではなく、全ての職員の喜びに
はあるものです。不満があるからこそ、
つながることであれば、私たちはそのことを
向上心も生まれるのではないでしょうか。
現場に理解してもらい、自主的に実践して
職員満足度にしても、確かに高いほうがいい
いけるよう、
そのための環境を整えます。
長職になって、そうした会話が自然とでき
看護部課長
山本美穂 氏
といけない』などと、
気がつくと建設的な
話をしています。
課
でしょう。
でも、不満部分が改善のきっかけ
それが当たり前だと思っています。
成果が
ていることに満足しています。
今では、病院
になる。
病院であれば、職員の不満としっか
あがれば、
理事長は必ず職員にフィードバック
が成り立たなければ、私も成り立たないと
り向き合う病院であるのかどうかで、病院
してくれますから」
実感していますが、経営的な視点、課の責任
10
元気な病院
Case Study Report 1
表3■いきいきカード(チャレンジカード) 《一般職能層》〜情意考課のみ〜
<情意考課>
評価度
チェック項目(意欲・態度)
自己
評価度
チェック項目(意欲・態度)
上司
自己
一次 二次 三次
①法人の経営理念と方針に基づき行動
しているか
①必要な知識・技術を常に習得しよう
としたか
②上司の指示・命令・就業規則に定めら
れた規律・規定を守ったか
②常に問題意識をもち、気付いた事は
実行に移したか
③髪の色・髪型・服装・態度・言葉使い
は良かったか(積極的な挨拶)
③所属部門の運営マニュアルに従って
仕事に取り組んだか
積極性
規律性
④部下・上司という関係は適切であった
か
一次 二次 三次
④担当する仕事の拡大を常に心掛け、
仕事に取り組んだか
⑤先輩と進んで討議をするなど、仕事に
深みをもたせる努力をしたか
⑥常にコスト意識をもち(エレベーター・
駐車場・エアコン・電話・電燈)設備、
物品の使用管理は適正であったか
⑥難しい仕事でもファイトを燃やし
チャレンジしたか
①患者様に対しては常に優しく親切に
誠意を持って接したか
①自分勝手な言動・行動をすることは
なかったか
②与えられた仕事の責任を自覚し、最
後までやりとげたか
②周囲と調和するように心掛けたか
③仕事の遅れ、不完全が予想される時、
事前に援助を求めたか
③他の人の仕事を自発的に手伝ったか
協調性
責任性
⑤日常業務で報告・連絡・相談に留意し、
正確に実行したか
④指示されたことをメモをとるなどして
忘れることはなかったか
面接での意見・
相違点(要点)
上司
仕事・職場に
ついての意見
④部署での経費節減に協力したか
健康状態
⑤仕事の進捗状況や出来映えを常に確
認したか
資格等級レベル記号……C:チャレンジ L:レベル U:アンダー 達成度評価度記号……+:期待以上 ±:期待どおり −:期待を下回った
者としての視点をもてるようになったから
だと思っています。
やる気のある人が
頭角を現すことのできる組織
薬剤部門が大きくなるためには、コストを
削減する。
削減するためには経営に参画し、
経営的発想で考え、実践することだと理解し
スタッフとは仕事の話をよくします。
今ど
ういった仕事をしているか、問題を抱え込ん
同院に入職して
ました。
でいないか、折に触れて聞くようにしてい
3年目で、部門長の
例えば、
1000万円のコスト削減ができれば、
ます。
おかげで課の仕事について、すべての
辞令を受けた薬剤
その分を機器や人材確保に回せるわけ
過程が把握できるようになりました。
経営的
部課長の西岡崇浩
ですから。
こうした発想は、今では当たり
な視点ということでは、少しずつですが病院
氏は、自らの変化を
前だと思っています。
規模で考えられるようになってきています」
語ってくれた。
265 床の病院で、薬剤師は19人います。
「大半の病院では
移行する際、その手続きも事務職でなく看護
西岡崇浩 氏
他院では、そんなに採用できないでしょう。
考えられないことで
当院の薬剤部は現在、単独で黒字にできて
部門、
リハビリテーション部門が行っている。
しょう。
普通なら、
10年目で主任になれるか
います。
すごく忙しいのですが、楽しく仕事
同院では、急性期の患者が慢性期医療に
薬剤部課長
どうか。
一般的には、
20年、
30年勤めて、課
をしています。
職場に不満をもって辞めて
ムレスなケア意識も育っています」
長クラスになれれば、
『良かったね』
といった
いく人も、
まず、
いませんね。
病院規模での発想は、
決して経営的視点だ
ところでしょう。
当院は、やったことがすべて評価されます。
けでない。
地域で頼られる病院であり続ける
課長になった当初は、抵抗もありました。
やる気のある人が頭角を表すことのできる
「医療従事者として、患者さんに対するシー
ための視点、患者を思う視点でもなくては
医療にかかわりたくて当院に入ったわけで
病院です。
今では、コストや原価計算できる
ならない。
同院の医療従事者としては当然の
すから。
何で経理的なことまでやらないと
ことが、薬剤師である私の武器になって
ことだと、
副院長の山内氏が言葉を添えた。
いけないか、単純にそう思いました。
でも、
いますね」
医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 11
「各部門で考えるのではなく、全体として
考えて、将来的にもプラスになるのであれ
ば、地域に還元できるのであれば、やりま
しょうというのが当院の姿勢ですかね」
それは各部門(表 4・5・6)
だけでなく、
個人に対しても徹底している、と山本経営
管理部部長は語る。
表4■ 薬剤部 経営計画(一部抜粋)
(2008.4 〜 2009.3)
戦略目標
医(療の質の向上 ︵
) 患者様満足向上︶
業務プロセス
患者の視点
ポジティブな評価を
病院・個人の改善に結びつける
●医薬品による医療過誤の防止
●医薬品安全管理業務の推進
●外来お薬待ち時間の現状維持
●化学療法調剤待ち時間の短縮
●報道対策
成果尺度
100%
施 行
〃
●お薬待ち時間
●指示∼払出し時間
●過誤件数の減少
●随時対応、1週間以内に行う
15分以内
30分以内
調剤過誤0
100%
としての数字ではありますが、絶対評価と
いうわけではありません」
評価については、理事長自身の悩むとこ
ろでもあるという。
「当院は B を基準とした評価ですから、
医(療の質の向上 ︵
) 患者様満足向上︶
業務プロセス 患者の視点
です。各課によって条件が違います。結果
●フィルムレス運用
●実施検査数
一般・CT・MRI・PET・
echoでの実施
●マンモグラフィデジタル化による
施設認定取得
●デジタル化
●施設認定取得
A判定
●接遇(患者、職員間)の向上
●クレーム数
クレーム0
●インシデント対策
●インシデントに関する意識の向上
全スタッフ
戦略目標
をし、病院・個人の改善に結びつくように
心がけています」
)
するといった、あくまでポジティブな評価
医(療の質の向上
業務プロセス
按配することによって、次への意欲を刺激
目標値
表6■ リハビリテーション部 経営計画(一部抜粋)
法はどうあれ、単純に評価すれば数値の
もあります。結果に対して多少、理事長が
成果尺度
●フィルムレス運用の拡大
すべて B なら 100 点。でも、点数評価の方
変化に応じて、給与も大きく変化する場合
年1回以上
年1回
表5■ 放射線部 経営計画(一部抜粋)
戦略目標
「評価は数値化されますが、あくまで参考
目標値
●インシデント報告率
●再発防止案作成
●是正案作成
●院内研修
●マニュアル改訂
●病院からの訪問リハビリへの対応
●急性期リハビリの充実
●言語集団療法の実施
●クリティカルパスへの関与
●小児リハビリの受け入れ
●在宅復帰率の向上
●病棟訓練の充実
●病棟との連携の充実
●リハビリ・カンファレンス体制の確立
●地域連携パスへの関与
成果尺度
●月件数
●月入院新患数
●実施頻度
●リハビリ導入件数
●受け入れ総人数
●自宅復帰率
●病棟訓練実施率
●リハビリ計画書作成
●カンファレンス実施
目標値
月3件
100件
週1回
新規2件
年10名
60%
100%
100%
100%
・地域連携パス導入
部門によって、甘い評価、厳しい評価と、
どうしてもばらつきがでてくるという。
良いものなのか、よくわかりませんでした。
は難しい。そこで 3 年目から現場で医師を
「管理者の性格などもありますから、均質
運用しながら、必要に応じて改善をしてい
一番良く知る看護部門に評価してもらう
に評価するよう指導するというのは不可能
きました。医師の情意評価を看護師が行う
ことにしました」
だと思っています。制度を完璧なものにす
ようになったのも、そのひとつです。
医師は 80%が個人目標の評価、20%
ることはできないでしょう。評価するのも、
個人の評価を給与や賞与に反映させる
が看護師による情意評価で総合評価され
されるのも、人間ですから」
重要な役を担当させていただいています。
ている。
医師については、山本部長が、その他の
時期によってはすごく忙しいのですが、やり
「情意目標の項目(P.10表2・P.11表3)を
部門は、部門間の調整も含め経営情報課・
がいはあります」
見てもらってもわかるように、患者さんの
人事担当の高谷温美氏が一人でやっている。
本来は臨床検査技師である高谷氏。人事
ことを本気で考えれば、どの項目も評価
「多くの人の目がはいると、判断しにくく
業務は一からのスタートだが、数字に強い
が高くなる方がいいでしょう。
今では納得
なりますし、均質化
こともプラスに働き、今ではすっかり頼られ
してもらっていますし、医師だけではなく、
が保証できなくなり
る存在になっている。
全職員が努力しています。
また、私たちは
看護師による、医師の情意評価
医療の現場を良く知るからできる
これは全職員にオープンになっていること
職員も増えて作業は
医師に関しては、育成という視点でみた
はありません
(笑)
」
かなり大変のようだ。
場合、情意については課題も多く、山本部長
チーム医療をやるものとしては当然の
ただ、必要があれば、
はその評価に頭を痛めもした。
ことではあるが、垣根を無くし、
『すべては、
ますので」
高谷氏は法人全体
を見ているため、最
理事長に対しても、情意評価をしています。
近は事業所も増え、
経営情報課 人事担当
高谷温美 氏
ですが、理事長は理念に関しては S 評価
ですが、他ではD評価もあります。
さじ加減
他の部門の評価を参考として添え、部門に
「理事長は、外来と当宿しかしていません。
患者さまのために』という理念に向かって、
再評価を依頼する場合もあるという。
いくら周辺情報を集めても、間接評価にし
トップをはじめ個々人、各部門のスキルアッ
「スタートした当時は、この制度が本当に
かなりません。しかも、正確に評価するの
プに努めるというのが、
同院の姿勢である。
12
元気な病院
Case Study Report 1
主任以上は臨時賞与を
手放しでは喜ばない
図4■表彰推薦申込書
推薦者
部署・チーム・職員名
不必要な垣根は作らない。だから幹部
賞内容
職員には、財務諸表もオープンにする。各
部門の目標達成度もオープンにする。部門
によって条件が違うなか、また半期ごとに
目標設定するので、単純に前期比、あるい
放射線課技師
区分
■ 理事長賞
■ 医療の質向上賞
■ 社会貢献賞
■ 顧客満足賞
■ 職員
■ チーム
■ 部署
推薦した最もポイントとなる点
角野 満 氏
は前年同期比を判断できるわけではない。
従来のものと比べ優れている内容
しかし、法人全体では、今の制度になっ
の患者さんの役に立つならと、
て以降、経営的には上昇気流に乗って
購入しました。同じエリアに
いるという。職員の賃金体系は、医師が
ある他院にもなく、PETを必要
半期ごとの年俸制で、総合職と技能職は
とする場合は、姫路市までいかなければな
月例賃金+賞与である。収益は必ず地域
らないといった地域事情も考慮しての判断
と職員にフィードバックするという理事長の
でした」
方針で、収益に応じて臨時賞与も用意され
放射線課の責任者、角野満氏が当時を振
ている。
り返る。
「職員は業績があがれば、配当があるとい
表7■職員表彰
●部署・チーム・個人で表彰
表 彰
理事長賞
報賞金(円)
100,000
医療の質向上賞
50,000
「確かに最新機器は使いたい。でも、課の
社会貢献賞
50,000
うことを知っています。全職員のモチベー
責任者としては、月に何件の稼動があって
顧客満足賞
50,000
ションアップになっているのは確かですが、
何年でペイできるといった計算もしなけれ
臨時賞与をもらっても、主任以上は手放し
ばなりません。反対はしましたが、他院が
には喜びません」
10 年スパンで買う機器も、当院なら 5 ~ 6
ることにつながっている。
山本部長は制度がスタートしたころの臨
年のスパンで買えますから、理事長のいう
リハビリテーションの責任者である、理
時賞与は、一人 2 万円くらいで、皆が喜ん
ように地域に必要な器材ということで納得
学療法士の細田佳代氏が、課としての、そ
でいたという。では、なぜか。
できています。
して自らのモチベーションを保つ方法を教
「職員は、当院の財務状況を逐一知ってい
いざ購入されると、なかなか PET に触
えてくれた。
ます。資金のストックがもっとあった方が良
れる時間がない。技師としてはもどかしい
「仕事の充実度は 100%、満足というこ
いことも知っています。ですから、少しでも
ところですが、私が課全体の管理をしてい
とでは 80%ですか。忙しい、自分の時間が
今後のために資金を蓄えることを希望する
かないといけないという、使命感には燃え
なかなかもてない、というのが理由ですが、
のです。
ています」
仕事に目標をもち、到達できたときの達成
『15 万円もいりません。2 ~ 3 万円なら喜
んでもらいます。あとは今後のために蓄え
ておいてください』と。
「職員は苦労しても
なかなか集まらない」
そういっても、
理事長はOKしませんから、
感はたまりません。課全員で喜び、わっと
遊んで、また切り替えて、皆と課の新たな
目標に向かいます。それで、20%の不満は
解消できているのかもしれません」
看護師などは、必要な研修でも、当院に経費
理事長の口癖は、
「患者は苦労すれば集ま
職員の努力がきちんと評価されている
を請求しないで、その臨時賞与を当ててい
るだろうが、職員は苦労してもなかなか集
病院は、元気だ。
るくらいです」
まらない」
。
同院は、経営状態が良くなっていくに従っ
病院経営のどん底から、這い上がってきた
て、収益の半分は臨時賞与等も含め職員に
理事長のいう職員とは、同じ目標に向かっ
還元し、残りの半分は新しい機器の購入な
て歩める仲間のこと、同士のことである。
ど、患者に満足してもらうために活用して
仲間であるがゆえ、
いるのだという。
同士の頑張りは、推
病院基本データ
「2 年前、PET を購入したのですが、赤字
薦(図4)し、表彰す
が出るのはわかっていました。実際、今、
る
(表7)
ことで公に
■名称/医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 ■所在地
/兵庫県赤穂市惣門町 52-6 ■開院/ 1962 年 2 月
年間で 5000 万円の赤字を出しています。
する。推薦者も、表
現場は新しい機器を使いたいものですが、
彰される仲間をた
放射線科でも反対したくらいです。それを
理事長は、患者さんのため、地域医療、がん
理学療法士
細田佳代 氏
たえる職員も、モチ
ベーションを高め
■職員数/400 名 ■病床数/265 床 ■診療科目
/内科、
神経内科、
循環器科 ( 心臓血管外科)
、
外科
(呼吸
器科)
、大腸肛門科、整形外科、泌尿器科、小児科
(アレ
ルギー科)
、脳神経外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、産婦人科、
眼科、放射線科、麻酔科、
リハビリテーション科、東洋医
学療法科、
歯科口腔外科
医療法人 伯鳳会 赤穂中央病院 13
2
Case Study Report
医療法人 清和会 長田病院 ( 福岡県・柳川市 )
病院に合った教育制度を構築し
働きがいのある職場、
管理職のレベルアップを目指す
「トータル人事制度」を確立し、職員の教育を制度化することで、地域住民への全人的
なケアを目指す長田病院。個人のスキルアップがきちんと評価され、質の高い医療、
サービスの提供を実現することが、結果として職員満足につながる、と同院は考えて
Check Point
元気な病院になるためのポイント
●病院の風土を前提とした制度をつくり
あげていく
●「トータル人事制度」は人材育成が目的
●クリニカルラダーを職能・職務資格
等級フレームにリンク
●プレッシャーを感じずにチャレンジで
きる複線型人事制度
いる。看護師のクリニカルラダー(臨床看護実践能力習熟段階)についても、職能・職
務資格等級フレームとリンクさせ、
評価の徹底を図っている。
アドボカシー医療を
全職員に定着させたい
よ。
あんな先生は、
なかなかおらん」
より一歩も二歩も先をゆく、全人的なケアに
地元の声である。
柳川の地で長く、内科
つながる医療を、今後は提供していける
疾患を診てきた同院。
地域住民の中で培わ
病院でありたいと考えています」
内科専門病院として長田病院は、急性期
れた
“信頼”
が、
今日の長田病院を育てている。
組織を変えて行くには、教育を必要と
から慢性期まで、シームレスな医療を提供
組織がある程度の規模になれば、当然
する。
教育は、まず現状を把握して初めて
できる体制を整えている。
のこととしてマネジメントの良し悪しが、
内容が具体化する。新制度導入にあたり、
「当院は中小規模の病院ですから、
小回り
病院の質を決める。2003年、同院は増床
同院では改めて、職員や経営の現状を見直
がききます。
その特性を生かして、
在宅看護
にともなう病院移転を機に、
「これからも
した
(表1)
。
や介護面にも連携ネットを構築し、地域の
地元で必要とされる“日本唯一の内科専門
患者さん、あるいは家族に対して全人的な
病院”
」
を目指した。
ケアを心がけています」
「私たちは
“アドボカシー(=支持・理解・
木下院長は、
地域にかかわる姿勢を、
全職
擁護)医療”といっていますが、患者さんや
員に定着させたいと考えている。
家族を支援する、また代弁者となる医療を
2006年以来、新卒入職者の離職率はゼロ
「今の理事長のお父さん、
いい先生やった
目指しています。現在提供している医療
(図1)をキープし、全体の離職率も07年は、
に応えることはできない、という思いがあり
ました。
「院外に責任者を求めるのは辞めよう。招
聘された側も、する側も、互いに不幸になる」
そうした理事長の決断で、新制度導入の準
備が始まりました。
院長
まずは組織を生かす制度づくりと、その運営
職員、
一人ひとりの
強みを生かした病院づくり
表1■「トータル人事制度」導入前の状況
■ 職員
・職員が、自院の提供する医療内容について、
理解が不足している
・職員の能力に、明らかな差がある
・患者さんや職員同士で、気配りがたりない
社会性が欠如している
■ 経営
した。
・理念や基本方針はあっても、具体的な経営目
標にできていない。目標へと具体化する過程
も明快ではない
人材育成こそが、最重要課題。
そのための人事考課
最初に看護部長が決まりました。実は看護
■ 賃金
人事考課制度導入の一番の目的は、人材育
続いて、事務部長、人事課長が決まりました。
・年功給
・基本給が低く、手当ての割合いの高い賃金体系
・基本給に連動した賞与
成です。
結果的には、3 人ともが看護師でした。期待
以前は慣例的に、外部に各部門の責任者を
以上に、力を発揮してくれています。
■ 職員満足
求めていました。しかし、病院が現在の地に
スタート時は人材発掘でしたが、スタート
移転し、いままで以上に内科専門病院として
後は、人材育成が私たちの一番の仕事だと
・職種によって、処遇が違うことへの不満
・昇進に明確な基準がないことへの不満
・頑張っても、頑張らなくても、処遇が同じこと
への不満
貢献することを考えたとき、いかなる部門で
思ってやっています。人を育てるのは非常に
あっても、医療の現場の日常を知らないのは、
難しいのですが、組織である以上、最重要課題
■ 教育
結果として職員、患者さんのニーズに的確
だと自覚しています。
木下正治
14
元気な病院
氏 を任せる要の人材発掘作業からスタートしま
部長も、それまでは外部招聘だったのです。
・経年的教育(集合教育)
・院外教育は近郊が主
・予算化されていない
Case Study Report 2
表2■経営指針書(2006.7∼ 2007.6)
図1■離職状況
重点項目
(%)
50
40
40
42
離職率
新卒離職率
30
20
17.3
17
1
7.3
3
17.3
17 3
80
8.0
0
2003
戦略目標
①外来システムの見直し
2004
2005
2006
(年)
2007(年
成果尺度
目標数値
●MRI件数
月125件
(1日5件)
立ち上げ
●画像診断部門
改 正
基準人数
ませんが、
不満が減
法人看護部長
武藤節子 氏
財務の視点
測することはでき
学習と成長
職員の満足度を推
︵教育︶
「離職率だけで、
●MRI稼動
●業務の効率化
●人員配置再編
●委員会の再編
●看護師の確保と育成
●組織図
●看護師人員
①安全で安心の医療の提供
●事故件数減少
●苦情の減少
●喜びの声の増加
各部門設定
〃
〃
②法人内外との連携強化
●公開講座開催件数
●ボランティアの受け入れ
年2回以上
年5件以上
③医療の質の向上
●パス大会の開催
開 催
①学会・研究会発表
●院内研究発表会
●院外発表回数
開 催
各部門設定
●院内研究
●学会発表
●論文発表
①医業収入の確保
②コスト削減
●各部門設定
●各部門設定
各部門設定
各部門設定
●各部門設定
●各部門設定
10.0%と減少傾向
を示している。
(一部抜粋)
実施項目
②戦略的な委員会の見直し
③看護体制7:1を目指す
10.0
︵CSの向上︶
顧客の視点
10
15.4
︵医療の質の向上︶
業務プロセス
40
1. 看護体制 7:1を目指す 2. 業務の効率化 3. CS(患者・職員満足度)の向上
●安全教育の充実
●マニュアルの見直し
●環境の整備
●メンタルヘルスケア
●公開講座開催
●ボランティア受け入れ体制構築
●法人内連携
●広報活動の強化
●各職種連動したパスの作成、
見直し
●専門特化
●救急対応の強化
れば、
離職率の数値
も低く維持できる
のではないでしょうか。
掘することが、職員のプロ意識を刺激する。
指針(表2)として具体化させ、ベースとな
私たちは、
離職者が減少傾向にあること、
院長のいう「アドボカシー医療の提供」に、
る職能・職務資格等級フレーム
(1 ~ 9等級)
新卒入職者の離職がこの 3 年、ゼロ推移
医療に関わるプロとしての関心が徐々に
によって、
等級に応じた目標を設定し、
クリ
していることを喜んでいます。
高まっていった。
アしていくというものだ。
特に入社して1 ~ 2年は、大変重要な時期
です。この時期に、当院の理念や風土に
しっかり馴染み、自らスキルアップして
業務に誇りをもてるとき
プロは満足できるもの
もらいたいと願っています」
同院は、個人への「期待像」を具体的に提
示し、
個人は
「期待像」
を指標として、
目標を
設定する。
また、
個人目標がクリアできるよ
うに目標面接を行い、
目標達成を支援する。
法人看護部長の武藤節子氏は、離職率の
「病院に限らないことでしょうが、
プロと
そして、
達成度に応じた考課で、
個人に評価
減少を、制度の導入前に見直した職員や経
いうものは業務に誇りをもてるとき、満足
を還元していく。
営の状況が、年を追うごとに徐々に改善さ
できるのではないでしょうか。
私たちの業
れてきた結果でもあるという。
務は、患者さんに満足していただける医療
同院が病院改革の骨格として、たどり着
行為、
そこに付随するサービスの提供です。
いた結論は、
「職員、一人ひとりの強みを生
それは支援であり、患者さんの代弁者であ
かした病院づくり」
であった。
るということでもありますが、プロである
地域に貢献する病院としては、医師こそ
その第一歩として、
人事異動に着手した。
以上、そのためのスキルアップは当然のこ
がまず手本となる規律性、責任性、協調性、
病院改革推進の要として、法人看護部長
と、
欠かせません。
(P.16表3)
積極性
を示そうと、
個人目標では、
が院内より初めて昇進。
また事務部長、
人事
プロとしての向上心、
提供する業務の質、
情意目標も重要視されている。
課長が看護師から職種転換する。
提供する環境、
提供した結果、
それらに満足
「等級自体は、職種に関係ありません。
さらには、業務推進の評価の高い師長を
できるような、
してもらえるような、
病院自
理念があり、
年度の経営指針があり、
目標が
地域医療連携室長に。
糖尿病の個別指導を
体のスキルアップが、新体制の意図すると
等級に応じて、一人ひとりに具体化されて
行うため、日本糖尿病療養指導士を外来に
ころでした」
いきます」
配属。
また、
地域住民の信頼を得ている看護
職員のスキルアップが、
「職員」
、
「患者」
、
昇格、昇進は、職能・職務資格制度に則っ
師をフロアリーダーに、若手急性期病棟の
「社会」
満足を上昇スパイラルさせる原動力
医師の目標の中では
情意目標も重要視されている
て決定される。
その場合、コンピテンシー
師長を老健(介護老人保健施設)師長へと
になると、
木下院長は考える。
異動した。
そんな同院が導入した制度は、
「トータル
アセスメントを実施していると、武藤氏は、
個々人の実績、能力を見直し、人材を発
人事制度」である。毎年、経営理念を経営
適性を判断することの大切さを強調する。
(=
「行動特性」
や
「業務の遂行能力」
)
などで
医療法人 清和会 長田病院
15
表3■チャレンジカード 《医師》
〜情意目標のみ〜
※同じ行動で 2 回以上の注意を受けたとき、マイナスとする
<情意目標>
評価基準
±
−
上期
自己評価
下期
自己評価
上司評価
1. 法人の理念・方針・
就業規則の遵守
病院の理念・方針・就業規則を医療
チームの指導的立場として遵守して
いる。
病院の理念・方針・就業規則を
時折守らないことがあった。
±・−
±・−
±・−
2. 診療の開始
予定どおりに診察を開始し、遅れる
ことはなかった。
診療時間に遅れることがあった。
±・−
±・−
±・−
3. 救急医療への参加
救急隊到着前に救急室にて待機し、
待たせることなく対応した。時間が
間に合わなかったときは、他の医師
に依頼し、対応も迅速にできた。
救急隊が到着してから、救急処置
室に行き、待たせることがあった。
±・−
±・−
±・−
要
内 容
素
+
規律
要性
素
責任性
4. カルテの記載
カルテ・サマリー・診断書・主治医意見書
等の書類は、もれなく記載され、その内容
はわかりやすく他職種にも理解できる。
カルテ・サマリー・診断書・主治医
意見書等の書類は、もれなく記載さ
れていた。
カルテ・サマリー・診断書・主
治医意見書等の書類の記載は、
漏れがあり指摘を受けた。
+・±・− +・±・− +・±・−
5. 指示の出し方
指示の出し方は適切で、過剰で査定がくる
こともなかった。
指示の出し方は適切で、患者の状態
をよく見ていた。
指示の出し方にムラがあり、院
長の追加指示があった。
+・±・− +・±・− +・±・−
6. 回診の実地
一日一回以上患者の所に足を運び、重症患
者の所へは何度も足を運び、家族の声かけ
も行っていた。
どの患者にも一日一回は足を運び、 回診は重症患者に集中し、慢性
患者・家族の質問に良く答えていた。 期に入った患者の回診は除いて
いた。
+・±・− +・±・− +・±・−
7. インフォームド・
コンセント
常にインフォームド・コンセントを行い、
患者・家族に信頼が得られ、カルテにはそ
の内容は誰が見てもわかるように記載され
ていた。
診療方針・方法についてはその都度
ムンテラを行い、十分なインフォー
ムド・コンセントを行っていた。
患者や家族から催促や問い合わ
せがきてからムンテラを行うこ
とがあり、インフォームド・コ
ンセントも十分ではなかった。
+・±・− +・±・− +・±・−
報告・連絡・相談を密に行い、院長不在時
でも方針に沿った形で診察を行っていた。
報告・連絡・相談を状況に応じて院
長に行い、方針の食い違いはなかっ
た。
診療方針・方法・患者の状況に
ついて院長への報告が遅れたり
看護師に代行依頼したため、方
針の食い違いが生じた。
+・±・− +・±・− +・±・−
緊急呼び出しに対応し、休日は一回、必ず
連絡を入れ、患者の容態確認をしていた。
時間外・休日の呼び出しにも問題な
く対応。また、不在時の事前連絡も
されていた。
時間外・休日などの緊急呼び出
しに応じないことがあり、不在 +・±・− +・±・− +・±・−
時の事前連絡もしていなかった。
8. 報告・連絡・相談
9. 時間外・休日など
の 呼び出し
用法・用量に従った薬剤の使用や検査など
適切に行い、レセプトチェックや症状詳記
10. 病名記載と
レセプトチェック など不備な点を査定のないように医事に指
導していた。
病名の記載は十分で、レセプトチェック 病名記載・レセプトチェックは
や症状詳記も行っていた。
不十分で、同じ項目での査定が
あった。
他医師の援助要請に速やかに協力した。診
療内容を批判することなく、カバーやフォ
ローができた。
他医師の援助・要請に協力した。他
医師の診療内容を批判することはな
かった。
自分の仕事が優先となり援助要
請に協力しないこともあった。
また他医師の批判をした。
看護師・診療技術部の意見や提案にも耳を
12. 看護師・コメディ
傾け、チームリーダーとして指導・援助を
カルとの連携
進んで行った。
看護師・診療技術部の提案に耳を傾
け、チームワークに配慮した。
看護師・診療技術部と摩擦を生
じることがあった。
院内行事には 8 割参加した。
院内行事はほとんど参加しな
かった。
毎回参加し遅刻するときは事前に連
絡していた。
遅刻・不参加することがあった。
11. 他医師との連携
協調性
13. 院内行事への参加
院内行事はすべて参加した。
14. 運営会議・医局会 毎回遅刻せず参加し、積極的に意見を述べ
た。
参加
積極性
15. 改善・提案
医療事故防止や、仕事の効率を考え、医療 医療事故防止や仕事の効率のための
の質の向上・経営改善のための提案を行い、 改善提案を行っていた。
自ら進んで実行した。
改善提案を行ったことはない。
看護師・診療技術部に臨床事例など
を取り上げ、進んで指導を行ってい
た。
看護師・診療技術部に指導をし
ていない。
看護師・診療技術部に臨床事例などを取り
16. 看護師・コメディ
上げ、進んで指導を行ったり、学会レポー
カル への指導
ト指導を行っていた。
適性を見極めることは、
本人のため、
病院のため
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
+・±・− +・±・− +・±・−
います」
はいたが、
「やってみなければわからない」
野口氏は、自らも
というのが大方の意見だった。
「私たちが良
研鑽し、
「トータル
くなる制度ですよね」
という声もあり、
野口
自院が一人ひとりの適性を見極めること
人事制度」を統括す
氏は改めて制度の推進に心を砕く。
も、
本人のため、
自院のためだと法人事務部
る事務部門のトッ
「制度がプラスに働くかどうかは、
活用す
長の野口寿美代氏。
新制度導入時には、同
プとして、院内各部
る職員が
『自分のプラスになる』
ということ
院の訪問看護を立ち上げ、訪問看護ステー
門を訪れては、現場
への
“気づき”
があるかどうかで決まると思
法人事務部長
ションを軌道に乗せた
「達成志向性」
が高く
野口寿美代 氏
スタッフとの対話
います。
ですから、
制度を推進する私たちの
評価され、
事務部長に抜擢されている。
を重ね、
制度への理解徹底を図っていく。
一番の仕事は、
“気づかせる”
こと。
それがで
2002 年 9 月下旬、理事長からの要請が
一般職員の等級は、
1 ~ 3等級となって
きれば、あとは職員が自主的にプラス思考
あり、
3日後には異動、
現職に。
いるが、導入時は学歴、年齢、経験を加味し
で制度を活用していけます。
「躊躇する間もありません。
事務長として
て、
一番優位な条件で格付けをし、
役職を除
またトータル人事制度は、管理職育成の
の研修は、全日本病院協会の事務長研修を
く 40 歳以上の職員は 4 等級、一般職員は
制度でもあります。
管理職が育たなければ、
受講しました。
そのとき参加していた他院
3等級を上限としてスタートしている。
現場スタッフの掌握はできません。
管理職
の事務長仲間が、今の自分を支えてくれて
しかし、それでも納得できないスタッフ
に、自ら成長していくという自覚を促すこ
16
元気な病院
Case Study Report 2
とも、
私たちの重要な仕事です」
病院にはなりません。
制度が導入されると
基準を明確にすることで、
一人ひとりが、
いうとき、
何度も説明会を開きました。
導入
「自分は何をすればよいか」
、目標や行動に
の意図は人材育成にあるということを話し
ました。
職員を伸ばす制度なのだと。
「当院の制度は加点主義です。
良い医療を
当時、管理者のほとんどは、外部研修を
すれば評価もついてくると思っています。
通して、制度の目的を理解していきます。
今では常に目標が念頭にあります。
半期サ
そうなると、私たちも少し気持ちが楽に
イクルで目標設定し、進捗状況をチェック
なりました。
管理者も私たちと一緒に、
現場
する。
達成度を常に確認するという作業は、
に対して、
『自分たちが、病院が、良くなる
建設的で有意義だと思っています」
ための制度だ』ということを部下に伝える
●全員共通
項 目
看護師
人材 准看護師
紹介 放射線技師
2007.12∼ 2008.5
点数
10点 継続6ヶ月以上で加点
が認めた場合
シンポジスト
パネリスト
4点
演題発表
発表
2点 演者に限る
4点 筆頭者で法人の名前が
院内講師
役職者を除く
(主任以上)
学術的・専門的研修を
1時間以上行った場合
0.5点
載った場合
役回りになってくれたからです」
あっても、職員同士
管理職に、
「自分たちの役割は、部下の育
が「競い合う」とい
成にある」
という共通認識ができていく。
うことではないと、
「目標を明確にすることで、
『頑張る』と
呼吸器内科医長の
いうことが、
やりやすくなりました。
以前も、
樋口英一氏はいう。
上司による教育の一環として、到達目標と
医師は常勤が11名、
いうのはありましたが、
具体的に
『この時期
非常勤を合わせて
までに、このレベルに達しなさい』という
急な当直・日直・居残り 1点
明確なものではあり
院内教育
1点
この規模であれば、医師の目標を診療科
ませんでしたから」
講演会・座長
1点
別にするのではなく、医局として、こうあ
臨床検査技師の平
るべきだという経営指針書に沿った目標
川五月氏は、今では
を立て、まずはそれぞれの医師の役割分
ステップアップして
担を決めていくのだという。
いくということが、
樋口英一 氏
も27名。
「地域連携パスを整備するのは、この
医師とこの医師。呼吸器のチーム医療で
臨床検査技師
平川五月 氏
あるといった役割分担を決めて、それを
ベースに個人目標を設定していきます」
患者に接するということでは、他職種と
(但し新人オリエンテーシ
ョン・伝達講習は除く)
当日の急な当直の交替 0.3点
公開セミナーの座長
0.5点
清和会主催の
研究メンバー全員
0.2点
●医師
治験症例登録
学術的専門による講義
を行った場合
CRC規定
医師紹介
10点 勤続6ヶ月以上
その他法人が認めたもの
(但し加点検討用紙をもって申請のこと)
1点単価=10,000 円で賞与に反映
(明細に別覧にて支給の掲載を行う)
自分の仕事の中に、
組み込まれている
という。
リーダーをやり、パスにかかわるのは私で
演者に限る
論文掲載
加点主義では
呼吸器内科医長
備 考
2 点 正式な依頼があり法人
院外講師
学 会発 表
具体化することができるようになっていく。
表4■加点項目
はいう。
年度の目標設定
急な当直、
院内教育など、
様々な加点項目も整備
連携しながら、スムーズな治療をしたい、
とは別に、学会発表、
急な当直、院内教育、
法人本部 人事課長
あるいは人材紹介
職種を超えた協力体制を作りたい、と樋口
個人の良いところを伸ばし、組織のプラ
氏は語る。
スにする加点主義は、組織の風土も活性化
「職種間の壁をつくらないように、
できる
する。
常にポジィティブな組織運営を考え、
営に協力することなど、個人が自分に対し
だけ話し合えるような雰囲気づくりを心が
個人が意欲的にスキルアップ、成長できる
ても組織に対しても、ポジティブに努力す
けています。
院内の催し物にも積極的に参
ように目標を具体化することが、当然のこ
ることについては、別途評価するという加
加するようにしています」
ととなる。
点項目
(表4)
が整備されている。
地域医療ということでは、急性期から慢
個人の成果が、部門の目標達成を促し、
人事考課を給与や賞与に反映させる作業
性期まで、
トータルな患者ケアの質向上が、
部門の目標が達成されることで、組織とし
は、人事課長の野田悦子氏が中心となって
同院の大きな目標だという。
ての年度目標が達成さる。その加点・評
行っている。本来は看護師である。人事を
価が、給与・賞与、
昇進等として個人に還元
担当するにあたっては、しっかりと勉強を
されていく。
させてもらったという野田氏も、自由裁量
「当院は、自分たちが提案したことを
は魅力だという。
自由裁量で目標展開していける組織です。
「当然、責任はついてきますが、当院は決
病院の目標が明確になったことで、情意
非常にきつい面もありますが、自分たちで
めたら早い。
一気に決めた方向に舵がきら
目標等の指導もしやすくなったと、ともに
PDCAサイクルを回しています」
れますから、
いつも走っている感じです。
新制度を軌道にのせた、
武藤氏はいう。
一旦、
火がついたら、
素早くやり遂げてし
でも、目標に向かって走るわけですから、
「病院が良くならなければ、
地域に役立つ
まう。
それが同院の強みでもある、
と武藤氏
モチベーションは高いですよ」
病院が良くならなければ
地域に役立つ病院にはなれない
野田悦子 氏
など、個人の特性を
伸ばすこと、組織運
医療法人 清和会 長田病院
17
職能・職務資格等級フレームに
クリニカルラダーをリンク
が、三分割された。
看護師も、昇格必要条件をクリアするこ
「レベルⅠ、Ⅱは、一人前の看護師にな
とで、
ステップアップしていくことになる。
るための重要な過程です。最初が肝心で、
しかし、昇格していったとしても、皆が指
看護師が段階的に臨床能力を高めていく
この時期にしっかりとした教育を受けさせ
導・管理者としての才能を開花するわけで
ためのシステム、クリニカルラダーは多く
てあげられるかが、その病院の看護の質を
はない。
の病院で導入されている。梯子をのぼる
決めるといってもいいでしょう」
そこで同院が導入しているのが、複線型
ようにレベルⅠからⅣまでを、規定年数も
看護部門の委員会組織として、看護部門
の人事制度だ。全人的ケアを目指した医療
加味しながらレベルアップしていくとい
委員会のもと、看護教育委員会が設置され
の提供を心がける同院では、病院職員に
うもの。
ている。
対しても、全人的な視点から、一人ひとり
同院のクリニカルラダーは、トータル人
「クリニカルラダーのレベルⅡでは、プ
が個人の強みを生かし、より良く働ける
事制度のベースとなる職能・職務資格等級
リセプター準備教育、プリセプター教育を
よう、サポートをしている。
フレームにリンクされている。
行っています。看護教育委員会は、外部
「等級フレームは、全職員にあてはまる
研修で、そのための看護教育スキルを学び
ものです。当然、看護師のスキルアップが
ます。レベルⅢになると、看護実習の臨
反映されたものでなくては、現場が混乱す
床指導者養成研修などを受講しています。
るでしょう。私たちが、トータル人事制度
看護部門の管理者は、看護管理研修で管
「適材適所ということですね。こちらが
を考える場合、単に既成の良いものを導入
理者の役割を十分に身につけてきますの
期待しても、本人がその能力を発揮できな
する、ということではなく、
当院にふさわしい
で、それを部門に落としていきます」
い場合もあります。たとえば管理職にチャ
制度にしていく努力をしました。
外部研修には、同院が年間 1 万 5000 円
レンジした職員が、専門職としてスキル
『運用がきつくならないように』とか、
チャレンジチャンスの
複線型人事制度
を補助している(役職者は 2 万円)
。また、
アップしていくほうがいいと判断する場合
『これはメリットがあるが、こちらはデメ
人事研修、看護管理者研修、あるいは病院
もあります。個人の能力を生かすために、
リットだ』とか、自分たちの組織の風土に
の将来に必要だと判断された研修は、枠外
病院の多岐にわたる職務、管理職に積極的
合うように改善していきました。外部のコ
として支援される。
にアプローチできる環境を整えようという
ンサルタントのアドバイスもいただきまし
看護師は 1 年目の新人教育(レベルⅠ)か
のが、複線型人事制度です。公募性・任期
たが、当院の管理職の意見も聞いて判断し
らスタートし、スキルアップが図られる。
性ですので、任期の中で、どれだけ能力を
ています」
院内教育としては毎年度、4 月、5 月、7 月、
発揮できるか、そのポジションでの役割を
等級フレームの滞留年数と、クリニカル
10 月に集合教育が実施され、基本的な臨
どれだけ果たせるか、自らを試せるチャン
ラダーで要求されるレベルごとの年数を調
床技術や心肺蘇生といったことを学習して
スだと思います。
整するため、クリニカルラダーのレベルⅡ
いく(表 5)
。
任期を設けることで、本人はそれほど
「CS キラリ賞」
点数で評価できない「いいところ」も
見逃さず、お互いにたたえ合う
「トータル人事制度」は、加点主義を
ベースに、一人ひとりの良い面、スキル
アップを評価していく。しかし、決して
点数だけでは評価できない「誠意」
「善意」
「努力」
、あるいは「気配り」
「思いやり」
といった組織の質を左右する、職員の
気質・姿勢についても同院は、大切にし
ている。
職員間であったり、患者に対してで
あったり、
「誠意」や「気配り」を目に
した職員が、規定の投票箱にその事実を
カードに書いて投票する。カードは年に
3 回、集計され、職員投票で「CS キラリ
賞」を決定する。毎回、100 通前後が投
票されている。
受賞者には、
当人が好きなもの
(予算内)
を事前に、当人に気づかれないようにリ
18
元気な病院
サーチして、賞品としてプレゼントする。
投票されたカードは、書かれた本人に
渡される。当然、本人のモチベーションの
アップにつながる。
それ以上に、点数だけでは評価できな
い気質や姿勢にも、
「褒
める」
「感謝する」
「学
ぶ」といった姿勢をもっ
て、見逃さないように
しよう、自分も見習お
うという賞である。同
じ風土で働く仲間とし
ての絆が強まっている
と、木下院長。
「CS キラリ賞」受賞者は、病院の入口、
出入りする誰もが目にする場所などに、
パネルで紹介されている。
ボードには「投票によって
選 ば れ た『 あ な た に 一 番
の 病 院 』を目指す、職員の
顔です」
と、CS キラリ賞の
受賞者が紹介されている。
Case Study Report 2
プレッシャーを感じることなく、どちらか
目指すのは“日本唯一の内科専門病院”
。
といえば、
『やってみよう』というチャレ
職員一人ひとりの強みを生かす病院改革
ンジ精神で臨むスタッフが多いですね。自分
で、同院は確かな成果を積み上げている。
には向いていないと役を降りても、決して
同院は今年 9 月、外部委託による 3 回
恥ずかしいことではありません」
目の職員満足度調査を実施する。
病院基本データ
■名称/医療法人 清和会 長田病院 ■所在地/福
岡県柳川市下宮永町 523 -1 ■開院/1985 年 3 月 ■職員数/242 名 ■病床数/182 床 ■診療科目
武藤氏らは、伸び伸びとした有機的な
/内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病
組織にしていくことこそ、理念を実現する
内科、リハビリテーション科、胃腸内科、肝臓内科、アレ
最短コースだと自覚している。
ルギー科、
人工透析内科、
放射線科
表5■新人看護師 集合教育
自己評価
・ オリエンテーションを受け、病棟の特殊性を理解
し、患者の傾向を知る。
プリセプ
ター評価
OJT
集合教育
・ 病棟内オリエンテーション・患者紹介
対象疾患・対象患者・看護体制
看護部理念・病棟目標・委員会活動。 各種マニュアルの説明
電話の応対(名前を名乗る)・
ナースコールの取り扱い
非常時の避難誘導(消火器)
日勤業務の流れの説明
・ 看護記録・熱型表の記入の指導。
(看護記録マニュアル参照)
4月
・入院患者の受け入れ
(アナムネ聴取)
の流れがわかる。
・ 患者基礎情報の取り方
5月
・ 入院患者の受け入れ(アナムネ聴取)ができる。
・ カルテの作り方、記入の仕方
・ チームの一員として日勤業務が円滑にできる。
・ 入院オーダシステム
・ 患者の情報収集の方法がわかる。
・ 日勤業務の流れがわかる。
・ 看護記録、熱型表の記入の仕方がわかる。
・ 業務内受け持ちNsの役割業務がわかる。
・ 日勤業務が指導の下でできる。
(処方・注射・検査・ 食事)
・ 個人受け持ち患者の看護計画を立て実践できる。
( / )湯布院研修・
新人オリエンテーション
( / )1ヶ月フォローアップ研修
①輸液管理(実践)
シリンジポンプ・輸液ポンプ
②看護倫理・身体拘束について
(グループワーク)
③座談会(リアリティショック予防)
( / )心肺蘇生について
(全体研修委員会)
・ 緊急時、急変時指導を受け流れがわかる。
・ 受け持ち患者の看護問題を挙げ、看護診断・ 7月
看護目標・看護計画立案の指導。
( / )3ヶ月フォローアップ研修
・ 検査・処置業務について指導
①挿管
・ 日曜祭日の業務について指導
②心電図(講義)
・ 重症患者の全身状態の観察ポイントの指導
③検体の採取と取り扱い
(意識レベル、IN、OUTなど)
(院内検体測定器の取り扱い方)
④エコグラム
・ QQカートの点検
・ 受け持ち患者の看護計画の展開ができる。
・ 看護計画の評価、修正
10月
・ 受け持ち患者の看護計画にそってケアが実践できる。
・ 看護サマリー
( / )6ヶ月フォローアップ研修
・ 検査・処置業務が指導を受けながら一人でできる。
・ 検査業務が一人でできる。
・ 重症患者のケアができる。
・ 夜勤業務前の心構えと夜間業務の流れがわかる。
・ 緊急時、急変時、看護ケアが指導を受けてできる。
・ リーダー業務がある程度、一人でできる。
・ 患者、家族に適切な対応ができる(急変時の
対応)
・ 指導の下で夜勤業務ができる。
・ 退院時オーダーシステム
・ 夜勤看護師の役割が理解できる。
・ 退院要約(退院、転棟、転院の準備)
・ 夜勤業務ができる。
・ A・Bの夜勤業務の手順の説明
・ 自己を振り返り、できない所を明確にし修正する。
・ 夜勤業務手順に沿って業務・指導を行う
・ カンファレンスには積極的にかかわり、意見を述
べることができる。
・ カンファレンスの目的
①緊急外来の対応について
ポータブルレントゲンについて
1)
2)外来カルテの出し方
3)麻薬・疼痛看護
4)グループワーク・発表
・ 病棟全体の状況にあわせ、必要な行動がとれる。
・ 一症例をケースレポートとしてまとめ、発表できる。
・自己を評価し、二年目に向けての目標を上げ、ステッ
プアップできる。
・ チェックリストの最終チェックを行い、自信のない
部分や未経験リストを実施する。
・ 自分の課題をレポートにまとめる。
・ ケースレポートのまとめ方の指導。
3月
( / )ケースレポート発表
( / )課題レポート
医療法人 清和会 長田病院
19
●ご利用にあたって
「病院職員アンケート調査」の著作権は「株式会社ケアレビュー」にあります。
商用利用以外の使用について、許諾を得ていますが、あくまで貴院職員の現状を知り、経営改善を図る目的で
ご活用ください。調査内容について、自院分析、他院とのベンチマーク分析を希望される場合等、お問い合わせは
http://www.carereview.co.jp まで、お願いいたします。
SAMPLE
病院職員アンケート調査
職員の皆さまへ
このアンケートは、職員の皆さまの仕事や職場への満足度や意欲、問題意識などを把握し、
より質の高い医療を提供するための組織運営や職場環境を整備するために実施するものです。
本アンケートの分析は、専門調査会社である株式会社ケアレビューに外部委託します。院内
の職員が回答内容を閲覧することはなく、筆跡などから本人が特定される心配もありませんの
で、職場では言いづらいような内容であっても正直にありのままを安心して記入してください。
回答後は、添付の封筒に封入して、○月○日までに所属長に提出してください。
(または、各部署に設置するアンケート回収箱に投函してください。)
皆さまのご協力を宜しくお願い致します。
院 長 このアンケート調査に関する問合せ窓口
○○○○
○○ - ○○ - ○○○○
◆該当する番号を○で囲んでください。
◆この欄の情報は個人を特定するために使用することはありません。
性 別
1.男
年 齢
1.25歳以下
職 種
1.医師・歯科医師
所属部門
2.女
雇用形態
2.26~35歳
3.36~45歳
2.看護師
1.常勤
4.46~55歳
3.コメディカル
4.事務
2.非常勤・パート・嘱託
5.56歳以上
5.○○○
1.第1病棟
2.第2病棟
3.第3病棟
4.第4病棟
5.第5病棟
6.第6病棟
7.第7病棟
8.第8病棟
9.第9病棟
10.外来
11.薬剤部門
12.栄養部門
13.リハビリ部門
14.放射線部門
15.臨床検査部門
16.事務部門
役 職
1.経営幹部(副院長以上)
2.マネージャー層(診療科長・師長・課長以上)
3.ジュニア層(医局員・主任・係長以上)
4.一般
当院での
1.1年未満
2.1年以上3年未満
勤続年数
5.10年以上20年未満
6. 20年以上
20
元気な病院
3.3年以上5年未満
4.5年以上10年未満
SAMPLE
以下の設問について、もっともよくあて
はまる回答を1つ選んで、該当する番号
『1, 2, 3, …』を○で囲んでください。
7. あ
なたが、「別の職場に変わりたい」と思う原因
は何ですか?(設問 6. で「4」、「5」を選んだ方
のみお答えください)
職場について
1. あ
なたは、今の仕事が自分の能力に合っている
と思いますか?
8. あ
なたの病院では、あなたの能力開発を支援し
てくれますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に合っている
ある程度合っている
どちらとも言えない
あまり合っていない
まったく合っていない
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分な支援がある
ある程度支援がある
どちらとも言えない
あまり支援がない
ほとんど支援がない
2. あ
なたは、職務遂行に必要な権限を与えられて
いますか?
9. あ
なたの上司は、仕事の成果に対してフィード
バックをしてくれますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分に与えられている
ある程度与えられている
どちらとも言えない
あまり与えられていない
ほとんど与えられていない
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分なフィードバックがある
ある程度フィードバックがある
どちらとも言えない
あまりフィードバックがない
ほとんどフィードバックがない
3. あ
なたは、病院の理念・使命・目標などを理解
していますか?
10.あ なたは、何を期待され、成果がどのように評
価されるか理解していますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分に理解している
ある程度理解している
どちらとも言えない
あまり理解していない
ほとんど理解していない
4. あ
なたの病院は、理念や使命に沿った活動をし
ていると思いますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
活動している
ある程度活動している
どちらとも言えない
あまり活動できていない
活動できていない
5. あ
なたは、今の仕事にやりがいを感じています
か?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分に理解している
ある程度理解している
どちらとも言えない
あまり理解していない
ほとんど理解していない
11.あなたは、あなたの上司を信頼できますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に信頼できる
ある程度信頼できる
どちらとも言えない
あまり信頼できない
ほとんど信頼できない
12.あ なたの上司のどんな点が信頼できませんか?
(設問 11. で「4」、「5」を選んだ方のみお答えく
ださい)
非常に感じている
ある程度感じている
どちらとも言えない
あまり感じていない
ほとんど感じていない
6. あ
なたは、今の職場でこれからも働きたいと思
いますか?
13.あ なたは、複数の上司から指示を受けて困るこ
とがありますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
これからも今の職場で働きたい
どちらかと言うと今の職場で働きたい
どちらとも言えない
どちらかと言うと別の職場に変わりたい
別の職場に変わりたい
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
困ることはない
あまり困ることはない
どちらとも言えない
たまに困ることがある
頻繁に困ることがある
病院職員アンケート調査
21
SAMPLE
14.あ なたの病院では、職員に重要な情報を知らせ
ていますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分に知らせている
ある程度知らせている
どちらとも言えない
あまり知らせていない
ほとんど知らせていない
15.あ なたは、職務遂行に相応しい環境を与えられ
ていますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常にスムーズである
ある程度スムーズである
どちらとも言えない
あまりスムーズではない
スムーズではない
22.ど の部門と、連携がとりづらいですか?(設問
21. で「3」、
「4」を選んだ方のみお答えください)
十分に与えられている
ある程度与えられている
どちらとも言えない
あまり与えられていない
ほとんど与えられていない
16.あ なたは、過度に精神的不安を感じることなく
仕事ができていますか?
21.他部門との連携はスムーズですか?
不安を感じることはほとんどない
あまり不安を感じることはない
どちらとも言えない
ある程度不安を感じることがある
非常に不安を感じることがある
17.あ なたが「精神的不安」を感じる原因は何です
か?(設問 16. で「4」、「5」を選んだ方のみお
答えください)
23.あなたは、現在の福利厚生制度に満足ですか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に満足である
ある程度満足である
どちらとも言えない
あまり満足ではない
満足ではない
24.あなたは、現在の報酬に満足していますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に満足である
ある程度満足である
どちらとも言えない
あまり満足ではない
満足ではない
25.あ なたの病院では、仕事の成果が正当に評価さ
れていると思いますか?
18.あ なたの病院は、あなたの私生活に配慮してく
れますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分な配慮がある
ある程度配慮がある
どちらとも言えない
あまり配慮がない
ほとんど配慮がない
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
正当に評価されている
ある程度正当に評価されている
どちらとも言えない
あまり正当に評価されていない
正当に評価されていない
26.評 価が正当ではないと感じる理由は何ですか?
(設問 25. で「4」、「5」を選んだ方のみお答えく
ださい)
19.あ なたの病院は、職員の安全に配慮していると
思いますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
十分な配慮がある
ある程度配慮がある
どちらとも言えない
あまり配慮がない
ほとんど配慮がない
20.自 由に提案ができ、みんなが協力し合うなど、
職場の雰囲気は良いと思いますか?
22
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に雰囲気が良い
ある程度雰囲気は良い
どちらとも言えない
あまり雰囲気は良くない
非常に雰囲気が悪い
元気な病院
院外からの評価について
27.あ なたの仕事は、地域社会から評価されている
と思いますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に評価されている
ある程度評価されている
どちらとも言えない
あまり評価されていない
ほとんど評価されていない
SAMPLE
SAMPLE
28.あ なたの仕事は、患者さんから評価されている
と思いますか?
31.あ なたは、あなたの病院を「病院として」患者
さんや知人にすすめますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に評価されている
ある程度評価されている
どちらとも言えない
あまり評価されていない
ほとんど評価されていない
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
自信をもってすすめる
ある程度はすすめる
どちらとも言えない
あまりすすめられない
絶対にすすめたくない
29.あ なたの病院は、病院に対する評判を重視して
いると思いますか?
32.あ なたは、あなたの病院を「職場として」知人
にすすめますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
非常に重視している
ある程度重視している
どちらとも言えない
あまり重視していない
ほとんど重視していない
病院に対する評価について
30.あ なたは患者として、あなたの病院を利用した
いと思いますか?
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
⒈
⒉
⒊
⒋
⒌
自信をもってすすめる
ある程度はすすめる
どちらとも言えない
あまりすすめられない
絶対にすすめない
33.あ なたの病院をすすめたくない理由は何です
か?(設問 32. で「4」、「5」を選んだ方のみお
答えください)
ぜひ利用したい
おそらく利用すると思う
どちらとも言えない
おそらく利用しないと思う
絶対に利用したくない
以下の設問に文章でお答えください
1. あなたの病院の、すばらしいと思う点をあげてください。
2. あなたの視点から、あなたの病院の改善したい点や気になる点をあげてください。
ご協力ありがとうございました。
添付の封筒に封入し、各病院からの指示に従ってご提出をお願いします。
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病院職員アンケート調査
23
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