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COSMOmeso リリース -概要と応用事例のご紹介
新製品情報 Flory--Huggins ソフトウェア g nsパラメータ作成 メ トウェア 8月にCOSMOlogic 社新製品COSMOmeso がリリースされました。COSMOmeso は、メソスケールシ ミュレーションに用いられるFlory-Hugginsのχパラメータや散逸粒子動力学(DPD)計算の相互作用パ ラメータを作成するためのソフトウェアです。本稿ではCOSMOmesoの概要と応用事例をご紹介します。 新 製 品 COSMOmeso は、信 頼 性 の 高 い χ パ ラ COSMOmesoの概要 高分子同士や高分子―低分子の相溶性や溶融状 態のマクロ構造を検討するため、Flory-Huggins 理論やDPDシミュレーションが用いられます。こ メータを容易に作成できるように考案されまし た。COSMOmeso では、量子化学計算で得られる 各ビーズの表面電荷情報から、混合状態における れらの方法では、複数の原子で構成されるユニッ ビーズの化学ポテンシャル(μ bead)を算出し、 ト(ビーズ)のつなぎ合わせで高分子や低分子を μ bead か ら χ パ ラ メ ー タ を 導 出 し ま す。ま た、 表し、相互作用評価においてはビーズ間の相互作 Grootらが提案した方法[1,2]により、χパラメータ 用パラメータ(Flory-Hugginsのχパラメータ) が用いられます。パラメータは、ビーズの種類や その組み合わせに応じて必要ですが、既知のパラ メータは少なく、以前よりパラメータ不足が問題 とされてきました。また、パラメータ作成には多 くの計算や試行が必要で、容易ではありません。 からDPDの∆aパラメータを算出することもできま す。 入力データとして、高分子のモノマーや溶媒の 構造情報(座標情報)を与えることで、図2の手順 でパラメータを簡単に作成することができます。 応用事例: 応用事例 用事例:Nafionと Nafionと水の相互作用パラ 相互 相互作用 用パラ メータの ータの作成 Nafion1200(図3)と水の相互作用パラメータの 算出にCOSMOmesoを用いた事例を紹介します。 Nafion1200は、燃料電池の電解質膜として用い ら れ る 高 分 子 材 料 で す。ビ ー ズ モ デ ル で は、 Nafionを図3のように3つのビーズで、水5分子を1 つのビーズで表します。系中では、静電的相互作 用やvan dar Waals相互作用が生じるため、パラ メータ作成が難しいと考えられています。相互作 図 1 ビーズ定義の画面イメージ。直方体に 囲まれた部分構造が各ビーズを示す。 ファイルから構造情報をインポートし、ビーズを定義 ビーズ内およびビーズ間の配座異性体の構造を 自動発生し、MOPAC7で構造最適化を実施 用パラメータは、図2の手順に従って約5時間で得 られ、すでに報告されているパラメータと比較す ると、定量的な一致が見られました。また、得ら れたパラメータを用いたDPDシミュレーション も、報告された溶融状態のマクロ構造とよく一致 しました(詳細は本誌p.12を参照)。 MOPAC7 で 得られたエネルギーに 基づき重要な 配座を抽出 量子化学計算を用いて構造最適化を行い、ビーズ の表面電荷情報を取得 各ビーズの表面電荷情報を用いて、COSMOtherm でビーズの化学ポテンシャル(μbead)を算出 μbeadからFlory-Hugginsのχや∆aパラメータを算出 図 2 4 相互作用パラメータ作成の手順 | 菱化システム ニュースレター | 第16巻 第4号 図 3 Nafionの構造式。ビーズモデルでは 赤、青、緑の3つの部分に分割。 [1] C. M. Wijmans, B. Smit, R. D. Groot, J. Chem. Phys., 2001, 114, 7644. 20 [2] R. D. Groot, P. B. Warren, J. Chem. Phys., 1997, 107, 4423. 技術情報 マルチスケールシミュレータ シミュ タ Chemistry Unified Language Interface (CULGI)は、マルチスケールシミュレーションの実現を目的 として設計された計算科学統合ライブラリです。CULGIは、高分子・界面活性剤・生体膜・コロイド・ 超分子など、ソフトマターの研究に最適なツールです。本稿では、燃料電池の電解質膜として使用される 高分子材料のNafionと水の混合系のDPDシミュレーションの事例を報告します。 DPDモデル と相互作用パラメータ DPDモデルと 相互作用パラメータ Nafion の再現 afion膜中の 中の水のチャネル構造 チャネル構造の DPDは、バネ・ビーズモデルに基づく動力学シ 本 DPD シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は、数 密 度 が 3、 ミュレーションです。このモデルでは、粗視化と Nafionと水の体積分率が80:20になるように、40 いう概念が導入され、例えば高分子のモノマー数 × 40 × 40 の 3 次 元 周 期 境 界 条 件 セ ル の 中 に、 個分を1つのビーズとして表します。本事例では、 Nafion 鎖 を 5,120 本、水 分 子 の ビ ー ズ モ デ ル を 図1のように、Nafion1本鎖を30個のビーズで、 38,400個分用意しています。図2は、時間刻み幅∆t 水分子5個分を1つのビーズで粗視化しています。 を0.05としたときの、初期構造(左)と10,000ス DPDシミュレーションにおいて粗視化された テ ッ プ 後 の 構 造(右)の 水 分 子 の 密 度 分 布 を ビーズは、隣り合うビーズ間がバネで結ばれてい volume表示で示したもので、実験で観測される ることに加え、すべてのビーズ間にソフトな反発 Nafion膜中の水のチャネル構造が確認できます。 力が働いているとします。実際の計算では、この 反発力の大きさを表す相互作用パラメータが必要 と な り ま す。こ こ で は、COSMOlogic 社 製 品 の COSMOmeso で算出された相互作用パラメータを 用いています(詳細は本誌p.4を参照)。 図 2 (左)初期構造, (右)10,000ステップ後の構造 このように、DPDによる粗視化レベルの高さと CULGIの高速なDPDエンジンを用いることによ り、ミクロ相分離というメソスケールの現象を非 常に短時間(PCで1時間程度)のシミュレーショ 図 1 本事例で使用したNafionと水のDPDモデル 科学技術システム事業部 計算科学部 〒104-0033 東京都中央区新川1-28-38 東京ダイヤビル3号館3階 TEL : FAX : E-mail : URL : 122 03-3553-9206 03-3553-9207 [email protected] http://www.rsi.co.jp/ | 菱化システム ニュースレター | 第16巻 ンで再現することができます。 ◆ 弊社 Webサイト には、取り扱い製品、最 新のニュース、お客様向け サポート情報、電子媒体でのニュースレター、他のサイトへのリンクな どを掲載しております。 ◆ 弊社取り扱い製品のカタログ、資料のご請求、お問い合わせについては 左記までご連絡ください。 ◆ 本ニュースレターは、弊社取り扱い製品をご購入いただきましたサイト の担当者にお送りしています。その他に発送のご希望がございましたら 弊社までご連絡ください。 記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。 RSIニュースレター 発行人 後藤 純一 発行所 株式会社菱化システム Vol. 16, No. 4, 2009 2009 年 10月 1日 発行 Copyright © 2009 Ryoka Systems Inc. 第4号