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8.救急活動の実施状況 (1)救急出動件数の推移 平成 23 年における

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8.救急活動の実施状況 (1)救急出動件数の推移 平成 23 年における
8.救急活動の実施状況
(1)救急出動件数の推移
(単位:件)
年
平成 18 年
合計
事
故
種
別
内
訳
平成 19 年
平成 20 年
平成 21 年
平成 22 年
平成 23 年
20,415
20,275
19,908
20,315
21,733
22,221
火災
119
139
120
117
150
120
自然
1
0
0
1
1
0
水難
13
14
9
11
13
14
交通
3,137
3,005
2,809
2,995
2,971
2,926
労災
148
132
138
94
148
129
運動
126
125
117
110
133
135
一般
2,257
2,369
2,409
2,504
2,622
2,887
加害
168
170
171
138
154
142
自損
321
334
400
347
355
359
急病
11,967
11,857
11,741
11,889
12,915
13,392
転院
2,088
2,055
1,935
2,041
2,183
2,032
70
75
59
68
88
85
その他
(注)消防局警防課にて作成されたものである。
(単位:件)
25,000
合計
火災
20,000
自然
水難
15,000
交通
労災
運動
10,000
一般
加害
5,000
自損
急病
転院
0
その他
平成 23 年における松山市救急出動件数は 22,221 件であり、1 日に約 60 件、すな
わち 23 分 39 秒に 1 回の割合で救急車が出動したことになる。救急出動件数は、平成
18 年から平成 20 年までは減少傾向で推移していたが、平成 22 年以降は増加傾向で
推移している。前年比で救急出動件数は 488 件増加しているが、そのうち 477 件は「急
病」の増加であり、これが救急出動件数増加の主因である。
平成 23 年における事故種別では、急病、交通事故、一般負傷の順となっており、
この 3 種別だけで全体の約 86%を占めている。
79
一方、全国レベルでの救急出動件数の推移(平成 23 年版消防白書より抜粋)は下
表のとおりであり、救急出動件数は全国的にみても増加傾向にあり、事故種別のトッ
プはやはり急病であることがうかがえる。
その他の平成 23 年松山市救急出動データを平成 23 年版消防年報から要約すると、
以下のとおりである。
・ 事故種別出動件数割合は、急病(60.3%)、交通事故(13.2%)、一般負傷(13.0%)、
転院搬送(9.1%)である。
・月別救急出動件数は 8 月が最も多く、急病による月別救急件数も同様である。
・曜日別救急出動件数は土曜日が最も多いが、他曜日と特筆するほどの差はない。
・時間帯別救急出動件数は 8 時から 22 時の時間帯で全体の 7 割超を占めている。
・過去 10 年間でみると、救急出動件数は 197,570 件であるため、1 日に約 54 件、
すなわち 26 分 36 秒に 1 回の割合で救急車が出動したことになる。
(2)救急搬送人員数の推移
(単位:人)
年
平成 18 年
搬送人員数
平成 20 年
平成 21 年
平成 22 年
平成 23 年
19,267
19,187
18,652
18,921
20,189
20,522
11,796
11,398
10,914
11,430
11,902
12,357
中等症
5,230
5,594
5,707
5,448
6,005
5,938
重症
2,010
1,996
1,824
1,816
2,030
1,936
死亡
223
191
203
220
249
286
8
8
4
7
3
5
軽症
傷
病
別
内
訳
平成 19 年
その他
(注)1.各年の消防年報により監査人が作成したものである。
2.軽症とは、傷病の程度が入院加療を必要としないものである。
3.中等症とは、傷病の程度が入院を必要するもので重症に至らないものである。
4.重症とは、傷病の程度が 3 週間以上の入院加療を必要するものである。
5.死亡とは、初診時において死亡が確認されたものである。
80
(単位:人)
25,000
合計
20,000
軽症
15,000
中等症
10,000
重症
5,000
死亡
0
その他
平成 23 年における松山市救急搬送人員数は 20,522 人であり、市民 25 人に 1 人が
救急車を利用したことになる。救急搬送人員数は、平成 20 年までは減少傾向で推移
していたが、平成 21 年以降は増加傾向で推移している。前年比で救急搬送人員数は
333 人増加しているが、「軽症」が 455 件増加しており、これが救急搬送人員数増加
の主因である。
平成 23 年における傷病程度別搬送人員割合は、軽症が 60.2%、中等症が 28.9%、
重症が 9.4%、死亡が 1.4%となっている。平成 23 年版消防白書による全国ベースの
統計値では軽症 50.4%、中等症 38.4%、重症 9.6%、死亡 1.5%であり、松山市は軽
症の傷病者が占める割合が多く、中等症の傷病者の占める割合が少ない傾向にある。
その他の平成 23 年松山市救急出動データを平成 23 年版消防年報から要約すると、
以下のとおりである。
・平成 23 年における年齢別搬送人員割合は、高齢者(満 65 歳以上の者)が 48.4%、
成人(満 18 歳以上満 65 歳未満の者)が 43.5%、少年(満 7 歳以上満 18 歳未満
の者)が 4.0%、乳幼児(生後 29 日以上満 7 歳未満の者)が 4.0%、新生児(生
後 28 日以内の者)が 0.1%となっている。平成 23 年版消防白書による全国ベー
スの統計値では高齢者 51.0%、成人 39.9%、少年 3.8%、乳幼児 5.0%、新生児
0.3%であり、松山市は、成人の搬送割合が比較的高く、高齢者の搬送割合はやや
低い傾向にある。
81
(3)救急車台数の推移
(単位:台)
年度
常時
出場用
平成 18 年度
平成 19 年度
平成 20 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
高規格救急車
7
7
8
9
10
10
普通救急車
5
6
6
5
4
4
高規格救急車
2
3
3
3
3
3
普通救急車
0
0
0
0
0
0
14
16
17
17
17
17
非常用
合計
(注)1.各年度の台数は 4 月 1 日時点のものである。
2.消防局警防課にて作成されたものである。
(単位:台)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
常時出場用
非常用
合計
平成 20 年度の久谷救急出張所新設に伴い高規格救急車を配備してからは、常時出
場用としての普通救急車について高規格救急車(救急救命士が活動するための構造に
なっている救急車)への入替が順次進んでいるが、車両総数としては 17 台のままで
推移している。
救急車台数及び救急出動件数に係る選定自治体との比較結果は、次のとおりである。
自治体名
松山市
宇都宮市
長崎市
倉敷市
大分市
金沢市
高松市
高知市
徳島市
514,808
512,470
511,179
506,177
475,788
461,873
480,981
337,871
262,919
239.98
330.71
215.9
259.99
243.55
190.69
232.95
132.62
139.24
17
17
16
19
16
10
18
13
10
1万人当たり救急車台数(台)
0.33
0.33
0.31
0.38
0.34
0.22
0.37
0.38
0.38
可住地 100 ㎢当たり救急車台数(台)
7.08
5.14
7.41
7.31
6.57
5.24
7.73
9.80
7.18
22,221
19,951
22,234
19,590
15,954
15,612
21,798
16,298
10,597
432
389
435
387
335
338
453
482
403
可住地 100 ㎢当たり救急出動件数(件)
9,260
6,033
10,298
7,535
6,551
8,187
9,357
12,289
7,611
救急車 1 台当たり救急出動件数(件)
1,307
1,174
1,390
1,031
997
1,561
1,211
1,254
1,060
人口(人)
可住地面積(㎢)
救急車(台)
平成 23 年救急出動件数(件)
1万人当たり救急出動件数(件)
(注)1.数値については、各市消防年報から監査人が調査したものである。
2.長崎市、倉敷市及び高松市は、広域消防によりいずれも隣接する 2 町の消防業務
を受託しているため、人口及び可住地面積には受託自治体分も含めている。
82
松山市における人口 1 人当たり救急車台数及び可住地 100 ㎢当たり救急車台数はそ
れぞれ 0.33 台、7.08 台であり、比較都市平均値 0.34 台、7.05 件とほぼ同じである
ため、救急車所有台数のレベルは中庸と考えられる。可住地面積からみると、高知市
は救急車台数が充実していることがわかる。
人口 1 人当たり救急出動件数及び可住地 100 ㎢当たり救急出動件数は、それぞれ
432 件、9,260 件であり、比較都市平均値 403 件、8,483 件を上回っており、高知市、
長崎市、高松市に次いで多い。
救急車 1 台当たり救急出動件数は 1,307 件であり、比較都市平均値 1,210 件を上回
っており、金沢市、長崎市に次いで多い。
以上の考察より、松山市は、救急出動頻度は高めであるが、救急車の配置台数はさ
ほど多くないため、救急車 1 台当たりの稼働数が比較都市の平均レベルよりやや多い
状況にあることがうかがえる。
(4)現場到着所要時間及び収容所要時間の推移
年
現場到着所要時間
収容所要時間
平成 18 年
平成 19 年
平成 20 年
平成 21 年
平成 22 年
平成 23 年
6 分 55 秒
7 分 13 秒
7 分 14 秒
7 分 21 秒
7 分 42 秒
7 分 39 秒
25 分 36 秒
25 分 48 秒
26 分 42 秒
27 分 00 秒
28 分 06 秒
28 分 24 秒
18 分 41 秒
18 分 35 秒
19 分 28 秒
19 分 39 秒
20 分 24 秒
20 分 45 秒
差引:
現場到着から病院収容までの時間
(注)1.現場到着から病院収容までの時間は監査人による計算である。その他は、消防局
警防課にて作成されたものである。
2.現場到着時間とは、119 番通報から現場到着までに要した時間である。
3.収容所要時間とは、119 番通報から病院に収容するまでに要した時間である。
この推移をみる限りでは、現場到着時間及び収容所要時間は増加傾向にあることが
わかる。
消防局警防課によると、主な増加要因としては、救急出動件数の増加、高齢者の搬
送増加及び平成 21 年 10 月から島嶼部を担当する消防救急艇「はやぶさ」の運行開始
等が挙げられる。高齢者の搬送においては、急病の場合には症状が不明確であること
が多く病院選定に必要な傷病者観察のために、また、転倒負傷等の怪我の場合には現
場での止血・骨折固定等の応急処置のために時間を要することが考えられる。
83
平成 23 年における現場到着時間をより詳細にみると、次のとおりである。
(単位:件)
現場到着
3分以上 5分以上 10分以上
3分未満
20分以上
5分未満 10分未満 20分未満
事故種別
合計
急
平均現場
到着時間
病
185
1,684
9,785
1,557
181
13,392
7分42秒
交
通
事
故
32
405
2,141
330
18
2,926
7分20秒
一
般
負
傷
35
359
2,092
354
47
2,887
7分53秒
他
61
641
1,936
296
82
3,016
7分32秒
計
313
3,089
15,954
2,537
328
22,221
7分39秒
構成比(%)
1.4
13.9
71.8
11.4
1.5
100.0
-
平成22年(%)
1.4
13.6
71.5
12.0
1.5
100.0
7分42秒
そ
の
合
(平成 23 年版
消防年報から抜粋)
松山市の現場到着までの所要時間は、10 分未満が 19,356 件(87.1%)となってい
る。一方、平成 23 年版消防白書による全国ベースの統計値は下図のとおりだが、10
分未満の割合が 75.6%となっており、全国的にみると松山市の現場到着までの所要
時間は短く、迅速な救急出動体制が整備・運用されているものと考えられる。
84
平成 23 年における収容所要時間をより詳細にみると、次のとおりである。
(単位:件)
収容所要
10分以上 20分以上 30分以上 60分以上
10分未満
20分未満 30分未満 60分未満 120分未満
事故種別
急
120分以
上
合計
平均収容
時間
病
8
1,590
6,239
4,190
229
4
12,260 28分36秒
交
通
事
故
2
417
1,473
878
30
0
2,800 27分30秒
一
般
負
傷
1
308
1,296
1,047
65
0
2,717 29分42秒
他
6
645
1,287
721
85
1
2,745 27分18秒
計
17
2,960
10,295
6,836
409
5
20,522 28分24秒
構成比(%)
0.1
14.4
50.2
33.3
2.0
0.0
100.0
平成22年(%)
0.1
14.8
50.7
32.5
1.8
0.1
100.0 28分06秒
そ
合
の
(平成 23 年版
消防年報から抜粋)
傷病者を病院へ収容するまでの所要時間は、30 分未満が 13,272 件(64.7%) と
なっている。一方、平成 23 年版消防白書による全国ベースの統計値は下図のとおり
だが、30 分未満の割合が 37.9%となっており、現場到着時間と同様に、全国的にみ
ると松山市の病院収容までの所要時間は短く、迅速な救急出動体制が整備・運用され
ているものと考えられる。
85
-
(5)救急隊員による応急処置等の実施状況
救急隊は、消防学校で救急(救急現場に駆けつけ傷病者に対して適切な処置を行い
速やかに救急車で病院へ搬送すること)に関する専門的な教育(最低 135 時間)を受
けた隊員が従事し、松山市においては各署所に専任で配置されている。
救急隊員の資格は、下表のとおり 3 種類あり、隊員の所持している資格により実施
できる応急処置の範囲が定められている。
資格の種類
救急Ⅰ課程修了
者
救急Ⅱ課程修了
者及び救急標準
課程修了者
救急救命士
内容
消防学校において 135 時間以上の教育を受
けた者をいう。
応急処置の範囲
・用手法による気道確保
・胸骨圧迫心マッサージ
・呼気吹き込み法による人工呼吸
・圧迫止血
・骨折の固定
・ハイムリック法および背部叩打法による異
物の除去
・体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観
察
・必要な体位の維持、安静の維持、保温
・口腔内の吸引
・経口エアウエイによる気道確保
・バックマスクによる人工呼吸
・酸素吸入器による酸素投与
救急Ⅰ課程の資格を有するもので、消防学 ・救急Ⅰ課程修了者が実施できる応急処置
校において、さらに 115 時間以上の教育を ・聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取
受けた者が「救急Ⅱ課程修了者」である。 ・血圧計の使用による血圧の測定
平成 3 年の救急救命士法施行に伴い、従来 ・心電図の使用による心拍動の観察および心
の救急隊員の持っていた資格、すなわち受
電図伝送
けた教育だけでは足りないと思われる部分 ・鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物
を補完するために設定されたものである。
の除去
最近では最初からⅠ・Ⅱ課程を合わせて「標 ・経鼻エアウエイによる気道の確保
準課程」としていて、それぞれを単独で取 ・パルスオキシメータによる血中酸素飽和度
得すると言うスタンスではなくなってい
の測定
る。
・ショック・パンツの使用による血圧の保
「救急標準課程修了者」とは、消防学校に
持および下肢の固定
おいて、250 時間 (Ⅰ課程の 135 時間+Ⅱ ・自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧
課程の 115 時間=250 時間)以上の教育を受
迫心マッサージの施行
けた者をいう。
・特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持
救急Ⅱ課程若しくは救急標準課程の資格を ・救急Ⅱ課程修了者および救急標準課程修了
有するものが、5 年または 2,000 時間以上
者が実施できる応急処置
救急業務に従事した後、厚生労働省が指定 ・精神科領域の処置
する学校(救急救命士養成所)において 835 ・小児科領域の処置
時間以上の教育(救急救命士養成課程研修) ・産婦人科領域の処置
を受け、厚生労働省が実施する救急救命士 ・半自動式除細動器による除細動
国家試験に合格した者をいう。なお、救急 ・厚生労働大臣の指定する薬剤(乳酸加リン
救命士国家試験の受験資格は指定された専
ゲル液)を用いた静脈路確保のための輸液
門学校や大学での履修によっても充足され ・厚生大臣の指定する器具(食道閉鎖式エア
るため、救急救命士の資格を有して消防職
ウェイおよびラリンゲアルマスク)による
員として採用されることも珍しくない。
気道確保(ただし、静脈路確保のための輸
液、器具による気道確保については、 心
肺機能停止状態の患者に対するものであ
って、医師の指示がなければ 行うことは
できない)
86
平成 23 年において松山市救急隊員が実施した応急処置は、下表のとおりである。
事故種別
応急処置
一般負傷
その他
合計
2,603
2,562
2,650
19,797
止血
38
131
217
54
440
固定
41
557
271
93
962
人工呼吸
34
2
6
10
52
心マッサージ
13
2
6
2
23
6
0
2
1
9
354
8
53
50
465
71
0
10
8
89
酸素吸入
2,219
95
120
846
3,280
気道確保
544
26
64
89
723
対象人員
うち自動
心肺蘇生
Ⅱ
交通事故
11,982
応急処置
Ⅱ
急病
うち自動
Ⅱ
うち経鼻エアウェイ
54
1
6
5
66
Ⅱ
うち喉頭鏡・鉗子等
24
0
9
1
34
救
うちラリンゲアルマスク等
134
2
21
13
170
救
気管挿管
35
1
15
6
57
保温
624
54
100
125
903
被覆
86
886
783
191
1,946
18
1
0
0
19
0
0
0
0
0
Ⅱ 除細動
47
0
3
6
56
救 静脈路確保
84
0
21
11
116
救 薬剤投与
17
0
9
7
33
Ⅱ 血圧測定
11,101
2,437
2,257
2,407
18,202
1,376
181
146
180
1,883
11,480
2,491
2,373
2,541
18,885
Ⅱ 心電図
3,014
88
136
516
3,754
その他
5,270
363
464
727
6,824
合計
36,360
7,322
7,029
7,855
58,566
拡大された応急処置等
27,461
5,202
5,008
5,702
43,373
317
3
69
43
432
Ⅱ 在宅療法継続
Ⅱ ショックパンツ
Ⅱ 聴診器
Ⅱ 血中酸素飽和度の測定
(うち救命処置)
(注)1.
「Ⅱ」とは、救急Ⅱ課程修了者及び救急標準課程修了者が実施可能な処置。
2.
「救」とは、救急救命士が医師の指示により実施可能な救命処置。
3.平成 23 年版 消防年報より抜粋。
4.応急処置の内容は次表のとおりである。
87
止血
止血帯、包帯等による止血処置
固定
副子等による固定又は安静保持
人工呼吸
口移し又は器具等による人工呼吸
心臓マッサージ
胸骨圧迫心マッサージ
心肺蘇生
心肺蘇生法
酸素吸入
酸素吸入器による酸素吸入
気道確保
気道の確保のための処置並びに口腔内の清拭及び吸引の処置
経鼻エアウェイ・喉頭鏡・鉗子等による異物除去、
救急救命士法に基づき重度傷病者に対して行う救急
救命処置のうち、ラリンゲアルマスク等を使用して
の気道確保については、内数として記載
保温
傷病者の傷病状況から体温を保持する必要がある場合に行う保温
処置
被覆
創傷をガーゼ等で被覆し、包帯をする創面保護
在宅療法継続
在宅療法継続中の傷病者に対しその療法維持のために行った必要
な処置(安全確保等に留意し観察等を行ったことも含む)及び在
宅療法に異常があった場合に行った応急処置
ショックパンツ
ショックパンツを使用した血圧保持の処置
(骨折肢の固定を含む)
除細動
重度の傷病者に対して行う自動体外式除細動器(AEDを含む)によ
る除細動
静脈路確保
救急救命士法に基づき重度傷病者に対して行う救急救命処置のう
ち、静脈路確保のための輸液
血圧測定
血圧計を使用しての血圧測定
薬剤投与
救急救命士法に基づき重度の傷病者に対して行う救急救命処置の
うち、アドレナリンを用いた薬剤の投与
聴診器
聴診器を使用しての心音、呼吸音等の聴取
血中酸素飽和度の測定
血中酸素飽和度測定器を使用しての血中酸素飽和度の測定
心電図
心電計を使用しての心電図の測定
気管挿管
気道確保のための処置で救急救命士が行った気管挿管処置
その他
上記以外の応急処置
88
かつては、日本の法制度上は、救急隊員は医師ではないため医療行為を行うことは
できず傷病者を病院まで搬送するだけで、救急搬送時の医療行為は一切禁止されてい
たが、現制度下では、高度化する救急需要に応えるため、総務省消防庁はすべての救
急隊に救急救命士が少なくとも 1 人は配置されることを目標として掲げている。平成
23 年版消防白書によれば、平成 23 年 4 月 1 日現在、救急救命士を運用している消防
本部は全国 798 本部のうち 797 本部(99.9%)、救急救命士を運用している救急隊は
全国 4,927 隊のうち 4,648 隊(94.3%)となっている。
平成 24 年 4 月 1 日現在、松山市救急隊員 108 名のうち、下表のとおり救急救命士
が 63 名(現場活動者 58 名)確保されており、既存隊員からの養成及び救急救命士資
格取得者の採用により、救急救命士数を着実に増やしている。消防局総務課によれば、
今後も毎年 3 名を既存隊員から養成する計画であるとのことである。
所属
救急救命士数
1名
0名
2名
0名
7名
5名
4名
6名
8名
2名
4名
6名
3名
10 名
5名
63 名
総務課
予防課
警防課
通信指令課
中央消防署
中央消防署城北支署
中央消防署北条支署
東消防署
東消防署城東支署
東消防署湯山救急出張所
南消防署
南消防署東部支署
南消防署久谷救急出張所
西消防署
西消防署西部支署
合計
(注)消防局総務課にて作成されたものである。
89
(6)転送の状況
転送とは、一つの医療機関で収容されなかったため、他の医療機関へ搬送すること
をいう。重症の傷病者においては転送回数が多くなると生死に影響を与えることにも
なりかねないため、救急業務の重要な指標の一つである。
平成 23 年における事故種別・転送回数別搬送人員数は、次のとおりである。
事故種別
急病
交通事故
一般負傷
その他
合計
転送回数
転送なし
12,221
2,797
2,707
2,743
20,468
1 回
39
3
10
2
54
2 回
0
0
0
0
0
3回以上
0
0
0
0
0
12,260
2,800
2,717
2,745
20,522
合計
(注)1.「転送なし」でも、搬送前に実施する病院問合せ(救急受入要請)が複数回発
生していることがある。
2.
「平成 23 年版 消防年報」から抜粋。
上表を見る限りでは、「転送あり」は 54 件と全体の 0.3%未満で、傷病者の転送
回数は最高でも 1 回である。
さらに、
「転送あり」を事故種別転送理由ごとに細分化してみると、次のとおりで
ある。
転送理由
区分 事故種別
救
急
医
療
機
関
そ
の
他
の
医
療
機
関
合
計
ベッド
満床
医師
不在
専門外
手術中
処置
困難
理由
不明
その他
合計
急病
1
1
0
0
16
0
5
23
交通事故
0
0
0
0
3
0
0
3
一般負傷
1
0
0
0
2
0
2
5
その他
0
0
0
0
2
0
0
2
計
2
1
0
0
23
0
7
33
急病
0
0
1
0
13
0
2
16
交通事故
0
0
0
0
0
0
0
0
一般負傷
0
1
0
0
3
0
1
5
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
計
0
1
1
0
16
0
3
21
急病
1
1
1
0
29
0
7
39
交通事故
0
0
0
0
3
0
0
3
一般負傷
1
1
0
0
5
0
3
10
その他
0
0
0
0
2
0
0
2
計
2
2
1
0
39
0
10
54
(平成 23 年版
消防年報から抜粋)
全体の約 7 割が「処置困難」というやむを得ない理由である。「ベッド満床」、「専
門外」、「医師不在」及び「その他」が若干数発生しているため、当該搬送に関する
救急活動報告書を閲覧してみたところ、次のとおりであり、傷病程度や転送に至った
経緯等を聴取してみると救急隊の対応が不適切と思われるものは発見されなかった。
90
転送理
由種別
事故
種別
急病
ベッド
満床
一般
負傷
一般
負傷
傷病
(傷病程度)
心肺停止
(重篤)
臀部打撲血
腫
(中等症)
顔頭顎打撲
血腫
(軽症)
覚知
現場出発
第 1 選定
病院到着
第 2 選定
病院到着
07 時 44 分
08 時 00 分
08 時 16 分
09 時 03 分
15 時 09 分
15 時 26 分
15 時 31 分
16 時 12 分
12 時 34 分
12 時 52 分
15 時 58 分
13 時 23 分
専門外
医師
不在
急病
統合失調症
(軽症)
21 時 37 分
22 時 37 分
22 時 43 分
22 時 55 分
急病
心肺停止(死
亡)
12 時 11 分
12 時 23 分
12 時 25 分
12 時 36 分
急病
心筋梗塞
(重篤)
17 時 22 分
17 時 28 分
17 時 51 分
18 時 21 分
急病
脳出血
(重症)
06 時 36 分
06 時 44 分
06 時 55 分
08 時 34 分
急病
悪心、嘔吐等
(軽症)
08 時 19 分
08 時 37 分
08 時 59 分
09 時 34 分
09 時 18 分
09 時 26 分
09 時 44 分
10 時 19 分
08 時 47 分
09 時 11 分
09 時 24 分
09 時 35 分
急病
一般
負傷
心筋梗塞
(重篤)
大腿骨頸部
骨折
(重症)
その他
急病
脳梗塞
(重症)
09 時 59 分
10 時 30 分
10 時 49 分
12 時 06 分
急病
腹水
(重症)
13 時 00 分
13 時 07 分
13 時 27 分
14 時 05 分
急病
精神疾患
(中等症)
11 時 13 分
11 時 29 分
11 時 37 分
12 時 27 分
一般
負傷
下肢打撲血
腫(軽症)
02 時 17 分
02 時 44 分
03 時 16 分
03 時 34 分
一般
負傷
下肢打撲血
腫(軽症)
02 時 17 分
02 時 44 分
03 時 16 分
03 時 34 分
91
転送に至った経緯等
第 1 選定病院で応急処置後心拍再開
したが、ベッド満床で入院できない
だけでなく、医師の判断で高次救急
対応を要したため。
第 1 選定病院で応急処置のうえ医師
より入院が必要と診断されたが、ベ
ッド満床であったため。
妊娠中の傷病者の掛り付け病院(第 1
選定)では対応できない頭部検査を
医師の判断で要したため。
精神科専門病院(結果として第 2 選
定)の医師から内科的異状の確認を
まず別の救急病院(第 1 選定病院)
で行うよう指導されたため。なお、
薬服用後身体の震えが出現した精神
疾患既往の傷病者が搬送を頑なに拒
否し、収容に時間を要した。
出動時は意識障害の傷病者の掛り付
け病院(家族により事前に連絡済)
へ搬送中に心肺停止し、これに対応
できる医師が第 1 選定病院には不在
で、救急隊の判断で高次救急対応を
要したため。
第 1 選定病院で応急処置後心拍再開、
医師の判断で高次救急対応を要した
ため。
第 1 選定病院で応急処置後、医師の
判断で掛り付け病院への転送を要し
たため。
傷病者がパニック障害及び妊娠中で
あるため、医師の判断で掛り付け病
院での継続治療を要したため。
第 1 選定病院で応急処置後、医師の
判断で高次救急対応を要したため。
傷病者の掛り付け病院(家族による
第 1 選定)で応急処置後、医師の判
断で高次救急対応を要したため。
離島救急事案のため救急消防艇が出
動し、第 2 選定病院へ搬送。第 1 選
定病院で応急処置後、医師の判断で
高次救急対応を要したため。
第 1 選定病院で応急処置後、医師の
判断で高次救急対応を要したため。
傷病者の掛り付け病院(家族により
事前に連絡済)で診察及び医療処置
を受け、医師の判断で専門科での入
院治療を要したため。
だんじりが倒れ 3 名負傷。うち 2 名
については、第 1 選定病院では混雑
のため診療等は受けず、救急隊の判
断で他の二次救急病院を選定したた
め。
また、転送はしていなくても、世間でいわれている「たらい回し(病院の傷病者受
入不能または困難)」により結果として収容時間が遅延するケースも考えられること
から、搬送案件ごとの病院連絡回数についても考察してみることにし、消防局警防課
から平成 23 年搬送実績データを下表のとおり入手した。
病院連絡回数
0
1
2
3
4
5
6
7
8
合
件数
構成比
3
18,864
1,167
190
47
18
2
3
1
20,295
計
0.0%
92.9%
5.8%
0.9%
0.2%
0.1%
0.0%
0.0%
0.0%
100.0%
上表によれば、全体の 98.7%は 2 回以内の連絡で搬送先が決定している。
病院連絡回数が 6 回以上の救急活動報告書(6 件)を閲覧してみたところ、次のと
おりであり、重症者はおらず、収容所要時間も特筆するほど長いものはなかった。
病院連
絡回数
事故
種別
傷病
(傷病程度)
覚知
現場出発
病院到着
収容所要
時間
急病
発熱
(軽症)
12 時 45 分
13 時 01 分
13 時 14 分
00 時 29 分
急病
悪心、嘔吐
等(軽症)
13 時 15 分
13 時 49 分
13 時 51 分
00 時 36 分
急病
鎮静薬睡眠
薬中毒
(軽症)
22 時 03 分
23 時 10 分
23 時 15 分
01 時 12 分
急病
全身衰弱
(軽症)
20 時 15 分
21 時 05 分
21 時 15 分
01 時 00 分
急病
めまい
(軽症)
21 時 27 分
21 時 46 分
22 時 06 分
00 時 39 分
急病
発熱
(中等症)
19 時 20 分
20 時 37 分
20 時 43 分
01 時 23 分
6回
7回
8回
92
連絡回数が多かった理由等
休診時間帯につき医師不在等で
病院側の収容不能回答が相次
ぐ。
救急医療機関には小児科がな
く、病院連絡に時間を要した。
救急医療機関 2 病院に連絡した
が、両病院とも混雑しており、
いったん収容拒否されたが、粘
り強く交渉した。
救急医療機関 2 病院に連絡した
が、両病院とも処置困難等で収
容不能との回答があり、21 時よ
り診療開始する松山市急患医療
センターを選定した。
高齢者の患者であり、ベッド満
床等で病院側の収容不能との回
答が相次いだため。
救急医療機関 2 病院に連絡した
が、両病院ともベッド満床でい
ったん収容拒否されたが、粘り
強く交渉した。
(7)メディカルコントロール体制構築の状況
平成 23 年版消防白書は、救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上
させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、メディカル
コントロール体制を充実していく必要があるとしている。
メディカルコントロール体制とは、「消防機関と医療機関との連携によって、救急
隊が現場からいつでも迅速に医師に指示・指導・助言を要請することができ、実施し
た救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証が行われるとと
もに、その結果が再教育に活用され、救急救命士の資格取得後の再教育として医療機
関において定期的に病院実習が行われる体制」のことをいう。
松山市に関しては、消防機関と医療機関の協議の場である中予地域メディカルコン
トロール協議会が、中予地域におけるメディカルコントロール体制の構築を推進し、
救命率の向上等救急業務の更なる高度化を図るために平成 15 年 6 月に設置され、症
例検討会、救急医療機関関係者との意見交換会を開催し「顔の見える関係」を構築し
ている。
また、松山市におけるメディカルコントロール体制の構築を含めた病院前救護体制
の充実・強化及び救命措置の質的維持向上を図ることを目的として、愛媛県との間で
平成 24 年 3 月に「救急隊員の病院実習」及び「救急自動車への医師の同乗」に関す
る覚書を締結し、6 月 1 日より愛媛県立中央病院において四国で初めてとなる「派遣
型救急ワークステーション」の運用を開始している。「派遣型救急ワークステーショ
ン」は、平日の 9 時から 17 時まで救急車 1 台及び救急隊員 3 名を同病院に派遣し、
平常時には救急隊員が病院実習に従事して救命処置の質の向上に努め、救急出動時に
は必要に応じ医師が救急車に同乗し現場に急行するものである。
93
(8)救急需要増大への対応と緊急度判定(トリアージ)の状況
平成 23 年版消防白書によれば、救急車の救急出動件数は年々増加し、平成 22 年中
は過去最高の 5,463,682 件に達し、平成 16 年以降 7 年連続で 5 百万件を超え、10 年
前の平成 12 年と比較して約 31%増加しているが、救急隊数は約 8%の増加にとどま
っており、救急搬送時間も遅延傾向にあるという。もし、緊急性のない救急活動が長
時間となっている場合に、別の緊急性の高い救急事案が発生すれば、救命に支障をき
たすことも予想される。
総務省消防庁では、平成 23 年 3 月に「救急車利用マニュアル」を作成し全国の消
防機関に配布するとともに総務省消防庁ホームページにも掲題する等、これまでも救
急車の適正利用の普及啓発に努めてきたが、平成 22 年度に行った下表将来推計によ
ると、高齢化の進展等により、救急需要は今後ますます増大する(2030 年までには 6
百万件を超える)可能性が高く、また、核家族化や高齢者世帯の増加等に伴い、病気
や怪我について相談できる相手がいない、移動手段がない等の理由で救急要請するケ
ースが増加することが示されており、救急搬送時間の遅延を防ぐための更なる対策の
必要性が唱えられている。
このような状況を踏まえ、総務省消防庁では、我が国における緊急度の判定基準の
導入状況は、家庭、電話相談、消防指令、救急現場、医療機関等の各段階で差がある
ため、標準化が必要であること、そして、関係者間及び社会全体で緊急度判定に関す
るコンセンサスを得る必要があることを課題として捉え、平成 23 年度において「社
会全体で共有する緊急度判定(トリアージ)体系のあり方検討会」を発足させ、平成
24 年 3 月には同検討会報告書が公表された。
94
当該報告書では、消防機関の行う救急業務内の緊急度判定プロトコル(=「手順」
または「基準」)、すなわち 119 番通報プロトコル・現場搬送プロトコルの策定だけ
ではなく、その前段階で家庭自己判断プロトコル及び電話相談プロトコルを策定し、
住民自らが病気や怪我等の症状から緊急度判定を実施し、救急要請、通常診察時間内
受診、自宅での経過観察等の対応を選択するための支援ツールを提供することで、
「急
ぐべきは急ぎ、待つべきは待つ」「救急医療は緊急対応を要する患者のためにある」
という緊急度判定の基本的な考え方が、社会全体で共有されるよう推進し、これらの
取組から、住民のための医療を医療関係者が支える、そして、住民も地域の救急医療
を支えるという「協働」の意識を醸成し、限られた医療資源を有効に利活用し、さら
なる救命率の向上を期待するものとしている。
ただし、今回の報告では、本来、緊急度判定プロトコルは、救急搬送データ及び医
療データに基づき策定することが望ましいものの、現段階においてはそれらのデータ
が不十分であることから、緊急度判定プロトコル(Ver.0)として、国内、諸外国の
既存緊急判定プロトコルを参考に策定するという条件が付されており、平成 24 年度
において総務省消防庁が特定の地域(堺市消防局・田辺市消防本部・横浜市消防局)
で試行的運用を行い、その実証検証結果を受けて全国の消防本部で使用可能な Ver.1
への改定が行われることが前提となっている。
下図は、当該報告書で示された「緊急度判定(トリアージ)における段階と緊急度
判定・運用体制の想定図」である。
95
段階とは前述の 4 種類のプロトコルであるが、緊急度は高い順に、「緊急(赤)」、
「準緊急(黄)」、「低緊急(緑)」及び「非緊急(白)」の 4 類型に分けられてお
りそれぞれの定義が示されている。
現下の緊急度判定実施状況はどうかというと、平成 24 年 10 月に報道された毎日新
聞山形支局調査によれば、全 47 都道府県庁所在地の消防本部に緊急度判定について
同年 9 月中旬にアンケートを実施した結果、回答は 44 本部からあり、119 番通報時
に緊急度判定を実施していると回答したのは約 3 分の 2 にあたる 29 本部であったが、
そのうち 13 本部では統一運用している判定基準がないということである。ちなみに、
松山市は、「119 番通報時及び現場搬送時のいずれにおいても緊急度判定は行ってい
るが、119 番通報時については統一運用している判定基準がない。」と回答している。
本アンケートの実施は、平成 23 年 11 月に体調不良で自ら 119 番通報した山形大の
男子学生に通信員が自力受診を要請、その 9 日後に 1 人暮らしの自宅アパートから男
子学生が遺体で見つかったため、遺族が市に損害賠償を求め提訴し、平成 24 年 10 月
に山形地方裁判所で裁判が開始されたことが契機となっているようであり、山形市は
係争中を理由に半分以上回答しなかったが、既に山形市が通信員の聞き取り項目を定
めた簡易な通報受理票以外に基準なく判定していたことが分かっていると報道され
ている。少し横道にそれるが、本アンケートで全国の消防本部が救急要請とかけ離れ
た「不要不急の 119 番」に頭を悩ませている実態が改めて浮き彫りになっていること
にも言及しておきたい。
過去に悪質だった不要不急の 119 番事例として多かった回答は、次のとおりである。
・同じ人物による複数回の 119 番(8 本部)
・通院目的(タクシー代わり)(4 本部)
このほか報道されていた悪質な 119 番事例としての回答は、次のとおりである。
・同じ人から 1 日百数十件の通報(O市)
・寂しいからと虚偽の通報を 4 カ月に 160 回繰り返した女性(W市)
・病院に来たら診察まで時間がかかると言われ、病院の駐車場から救急要請(T市)
・通報で現場に着くとテレビリモコンを拾ってほしいと言われた(T市)
・ストーブに灯油を入れてほしいと通報があった(F市)
【意見⑦】
総務省消防庁が取り組んでいる緊急度判定の基準や仕組み作りには期待の声が複
数の自治体から上がっている一方で、「基準があるのが理想だが、作ることが難しい
うえ、基準自体に縛られてしまう問題点もある。」といった懸念を示す自治体もある
ことが報道されている。松山市に 119 番通報時において統一運用された判定基準がな
いことの是非を判断することは容易ではないが、消防庁の取組み状況を参考にしなが
ら継続して検討すべき救急業務上のテーマだと考える。
96
9.消防相互応援協定等の状況
(1)消防組織法第 39 条関係
消防組織法第 39 条において、市町村は、必要に応じ消防に関し相互に応援するよ
うに努めなければならず、消防の相互の応援に関して協定することができると規定さ
れている。
平成 24 年 4 月 1 日現在における松山市の同法第 39 条関係相互応援協定等の締結状
況は下表のとおりである。なお、相手先の名称は締結当時の名称であり、その効力自
体に問題はない。
名
称
締結年月日
内
容
相
手
先
中予地区広域消防相互応援協定
松山地区新広域市町村圏区域内における
H 2. 8. 1 大規模火災、その他特殊災害の発生した
場合における消防相互応援について
2市、9町、4村
3消防事務組合
水ヶ峠トンネル消防相互応援協定
・覚書
H 8.11. 1
国道 317 号水ヶ峠トンネル及びその周辺
における消防相互応援について
玉川町
今治地区事務組合
松山自動車道消防相互応援協定
・覚書
松山自動車道及びその施設における消防
H 8.11. 1
相互応援について
伊予市、砥部町
重信町、川内町
伊豫消防等事務組合
東温消防等事務組合
えひめこどもの城に係る消防相互応
援協定・覚書
H10.11. 1
えひめこどもの城及びその周辺における
消防相互応援について
砥部町
伊豫消防等事務組合
愛媛県消防広域相互応援協定
大規模な自然災害、火災及び集団救急救
H18. 3. 1 助事故等が発生した場合における消防相
互応援について
県 下 各 市 町 村
県下各消防事務組合
愛媛県火災調査相互応援に関する申
し合わせ
H22. 2.10
三坂道路に係る消防相互応援に関す
る覚書
H24. 3. 1 三坂道路における消防相互応援について
(平成 23 年版
火災原因調査及び損害調査の相互応援に
ついて
県下各消防本部
久万高原町消防本部
伊豫消防等事務組合
消防年報から抜粋)
(2)その他の協定・申し合わせ等
平成 24 年 4 月 1 日現在、松山市消防局における同法第 39 条関係以外の協定等の主
な締結状況は次のとおりである。
97
名
称
緊急事態における消防と警察の相互
応援協定
締結年月日
内
容
相
手
先
S30. 8.15
消防組織法の規定に基づき緊急の事態
における消防と警察の相互援助協定
愛媛県公安委員会
災害対策基本法に基づく通信設備の
優先利用等に関する協定
S38. 9.10
災害対策基本法第 57 条に規定する通信
設備の優先利用等、同法第 79 条の規定
に基づく警察通信設備の優先利用につ
いて
愛媛県警察本部
消防業務協定
S44. 6. 1
松山市の沿岸港湾及び河川における船
舶火災について
松山海上保安部
化学消火薬剤等の管理に関する協定
S48. 3. 6
石油コンビナート災害に対処するため
に県が備蓄する消火薬剤等の資機材の
管理委嘱等について
愛媛県
火薬類取締法令に基づく通報等の協
定
S55. 2.13
火薬類取締法令に定める市町村長及び
公安委員会の行う通報等について
愛媛県公安委員会
ガス漏れ及び爆発事故防止対策
に関する申し合わせ
S56. 3. 5
松山市において多量のガス漏れ事故に
よる爆発事故防止対策について
四国瓦斯株式会社
松山市公営企業局
まつちかタウン漏えい同軸ケーブル
使用に関する申し合わせ
S56. 8. 1
まつちかタウン内で火災等の災害が発
生した場合等の無線通信補助設備の共
同使用について
四国管区警察局
愛媛県通信部
ガス漏れ及び爆発事故防止策に関す
S56. 9.18
る申し合わせ書に基づく覚書
ガス遮断装置の操作、維持管理等について
四国瓦斯株式会社
松山支店
模写電送装置の設置に関する協定
S60. 1. 4
ファックスを利用した石手川ダムに関
する情報の連絡について
建設省四国地方建設
局松山工事事務所
災害時における建設機械の応援出動
に関する協定
S61. 4.24
火災、又は風水害等の災害の発生による
建設機械の応援出動について
愛媛県建設業協会
松山支部
災害時における建設機械の応援出動
に関する協定・覚書
S61. 9.26
火災、又は風水害等の災害の発生による
建設機械の応援出動・協定書に基づく応
援出動車両及び作業修了報告について
全国クレーン建設業
協会愛媛支部
愛媛県クレーン建設
業協会
災害時の医療救護活動についての
協定・実施細目
H 6. 1.19
松山市内において、局地的かつ短時間に
多数の傷病者が発生した場合の医療救
護活動について
社団法人
松山市医師会
救急救命処置に関する協定
H 6. 4. 1
救急救命士法第 44 条第1項の規定に基
づく救急救命士の実施する救急救命処置
について
松山市医師会
水ヶ峠トンネル無線局に関する覚書
H 8. 3.18
国道 317 号の水ヶ峠トンネルの無線局に
ついて
愛媛県今治地方局
今治地区事務組合
飲料水兼用型耐震性貯水槽に関する協定
H 8. 4. 1
飲料水兼用型耐震性貯水槽の運用について
松山市公営企業局
道路災害における現地合同調整本部
の運営等に関する申し合わせ
H 8.11.25
道路災害が発生した場合の現地合同調
整本部の運営等について
四国地方建設局ほか
松山自動車道(川内~伊予)におけ
る救急業務等に関する覚書
H 8.12.24
松山自動車道における救急業務及び消
防活動等について
地震等災害時の相互応援に関する協定
H 9. 8.24
地震等による災害時の相互応援について
98
東温消防・伊予消防
日本道路公団四国支
社
国際特別都市建設連
盟に加盟する市町
別府市外 11 市町
名
称
締結年月日
内
容
相
手
先
救急救命士の就業前教育に関する協定 H10. 5.21
救急救命士の医療機関において行う就
業前教育実習について
H15. 4.22 改訂
愛媛県立中央病院
松山空港及びその周辺における消火
救難活動に関する協定
H10.10. 1
松山空港及びその周辺における消火救
難活動について
松山空港事務所
粟井坂トンネル及び大谷トンネルの
防災設備に関する覚書
H11. 2.15
一般国道 196 号粟井坂トンネル及び大谷
トンネルの防災設備について
四国地方建設局
松山工事事務所
弁天山トンネル及び岩子山トンネルの
防災設備に関する覚書
H11. 2.15
弁天山・岩子山トンネルの防災設備につ
いて
松山地方局
水ヶ峠トンネルの防災設備に関する覚書
H11. 3.25
国道 317 号の水ヶ峠トンネルの防災設備
について
今治地方局
松山空港事務所と松山市消防局との
直通電話運用に関する申し合わせ
H13. 9.14
松山市消防局と松山空港事務所との直
通電話の運用について
H20.11.10 改訂
大阪航空局松山空港
事務所
愛媛県緊急雇用創出基金補助事業
小規模雑居ビル等指導事業実施に係
わる覚書
H14. 4. 1
愛媛県緊急雇用創出基金補助事業による小
規模雑居ビル等指導事業実施について
財団法人愛媛県消防
設備保守協会
鉄道災害時の安全対策に関する覚書
H15. 6. 1
鉄道災害時における安全対策について
伊予鉄道㈱
鉄道災害時の安全対策に関する覚書
H15. 6.16
鉄道災害時における安全対策について
四国旅客鉄道㈱
救急救命士の病院実習に関する協定
H16. 4. 1
救急救命士の医療機関において行う病
院実習について
松山赤十字病院
松山市民病院
救急救命士の病院実習に関する協定
H16. 4.23
救急救命士の医療機関において行う病
院実習について
愛媛県立中央病院
火災調査協力員に関する協定
H16. 6. 1
火災原因調査にかかる火災調査協力員
の協力について
独立行政法人
消防研究所
NPO日本レスキュー支援協会との覚書
H16. 8. 2
簡易型位置情報通報装置からの電子メ
ール119番通報の受信について
NPO 日本レスキュー
支援協会
緊急時における人員、消火資機材等
の搬送に関する協定等
H16.12.28
離島災害時における人員及び消火用資
機材等の搬送について(毎年更新)
(株)ごごしま
北条漁協
中島漁協
中島三和漁協
中島汽船株式会社
(有)新喜峰
救急救命用心電図病院受信システム
の設置に関する覚書
H17. 1. 1
北条病院における救急救命用心電図病
院受信システムの設置について
北条病院
平成電電株式会社の運営するメタル
線加入電話サービスからの119番
接続に関する覚書
H17. 1.18
緊急通報を対象とする電気通信役務に
係る緊急通報の受信について
平成電電株式会社
松山西郵便局職員の消防団への入団
等に関する覚書
H17. 2.24
松山西郵便局職員の松山市消防団への
入団等について
松山西郵便局
99
名
称
締結年月日
内
容
相
手
先
携帯電話等からの 119 番通報転送に
関する協定
H17.10. 1
携帯電話等からの 119 番通報転送に関す
ることについて
今治市消防本部
携帯電話等からの 119 番通報転送に
関する協定
H17.10. 3
携帯電話等からの 119 番通報転送に関す
ることについて
東温市消防本部
携帯電話等からの 119 番通報転送に
関する協定
H17.10. 4
携帯電話等からの 119 番通報転送に関す
ることについて
久万高原町消防本部
携帯電話等からの 119 番通報転送に
関する協定
H17.10. 6
携帯電話等からの 119 番通報転送に関す
ることについて
伊予消防等事務組合
消防本部
愛媛県消防防災ヘリコプターの支援に
H18. 3. 1
関する協定
県 下 市 町 村 における消防防災ヘリコ
プターの応援について
愛媛県県下各市町村
県下各消防事務組合
大規模災害に際しての愛媛県下代表
消防機関松山市消防局と陸上自衛隊
第 14 特科隊の相互協力に関する協
定
H18. 6.14
大規模災害に際し、
代表消防機関と第 14
特科隊がその任務を遂行するため、相互
の連絡調整並びに消防職員等の被災地
等への迅速な移動に係る協力について
陸上自衛隊
第 14 特科隊
ネッツトヨタ瀬戸内株式会社社員の
消防団への入団等に関する覚書
H18.11.14
ネッツトヨタ瀬戸内株式会社の社員の
松山市消防団への入団等について
ネッツトヨタ瀬戸内
株式会社
郵便事業株式会社松山西支店社員の
消防団への入団等に関する覚書
H19.10. 1
郵便事業㈱松山西支店社員の消防団へ
の入団等について
郵便事業㈱
松山西支店
確認書(携帯電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
H21.11. 9
携帯電話から消防機関への 119 番通報の
接続について
KDDI 株式会社、
株式会社エヌ・テ
ィ・ティ・ドコモ、
ソフトバンクモバイ
ル株式会社、
イー・モバイル株式
会社
確認書(IP電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
H21.11. 9
IP 電話(KDDI 株式会社)から消防機関
への 119 番通報の接続について
KDDI 株式会社
確認書(IP電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
IP 電話(エヌ・ティ・ティ・コミュニケ
H21. 11. 9 ーションズ株式会社)から消防機関への
119 番通報の接続について
エヌ・ティ・ティ・
コミュニケーション
ズ株式会社
確認書(IP電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
IP 電話(ソフトバンクテレコム株式会
H21. 11. 9 社)から消防機関への 119 番通報の接続
について
ソフトバンクテレコ
ム株式会社
確認書(IP電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
H21. 11. 9
IP 電話(株式会社 STNet)から消防機関
への 119 番通報の接続について
株式会社 STNet
確認書(IP電話等からの119番
緊急通報に係る位置情報通知システ
ムの導入に伴う)
H21. 11. 9
IP 電話及び直収電話
(西日本電信電話株
式会社)から消防機関への 119 番通報の
接続について
西日本電信電話株式
会社
株式会社フジ社員の消防団への入団
等に関する覚書
H21.11.16
株式会社フジ社員の松山市消防団への
入団等について
株式会社フジ
100
名
称
締結年月日
内
容
相
手
先
愛媛県立中央病院ドクターカーに関
わる相互応援協定
H22. 3. 8
愛媛県立中央病院ドクターカー運行要
領等について
愛媛県公営企業管理
者
PHS からの119番緊急通報に係る
位置情報通知システムの導入に伴う
「確認書」の締結について
H23. 4.17
PHS から消防機関への 119 番通報の接続
について
株式会社ウィルコム
派遣型救急ワークステーションの設
置に関する覚書
H24. 3.21
派遣型救急ワークステーションの設置
について
愛媛県
(平成 23 年版
消防年報から抜粋)
101
Ⅱ.各論
1.歳入
(1)概況
(ⅰ)歳入の内訳
平成 21 年度から平成 23 年度の本市消防費に充当した特定財源の歳入費目の内
訳は、下表のとおりである。
款
使用料及び手数料
項
使用料
手数料
国庫負担金
目
消防使用料
消防手数料
消防費国庫負担金
国庫支出金
国庫補助金
消防費国庫補助金
国庫委託金
消防費委託金
県支出金
県補助金
消防費県補助金
寄附金
寄附金
消防費寄附金
諸収入
雑入
消防費雑入
市債
市債
消防債
節
災害対策使用料
常備消防手数料
常備消防費国庫負担金
常備消防費国庫補助金
消防施設費国庫補助金
災害対策費国庫補助金
常備消防費委託金
非常備消防費県補助金
消防施設費県補助金
災害対策費県補助金
常備消防費寄附金
常備消防費雑入
非常備消防費雑入
消防施設費雑入
災害対策費雑入
消防施設債
(ⅱ)歳入の手続
歳入の手続については、
「松山市財務会計規則 第 3 章
収入」及び「会計事
務の手引」に規定されており、一般的な歳入の手続は以下のとおりである。
① 歳入を徴収するときは、法令又は契約に違反していないか、所属年度、会計、
歳入科目及び金額に誤りがないか、納入者、納付期限、納付場所が適正であ
るか調査し、徴収の決定を行う。この一連の行為を調定という。
② 歳入が調定された時は、調定書により会計管理者に通知するとともに、納入
通知書(又は納付書、払込書)を納入者に対して送付する。
③ 本市では納付の方法として、現金による納付、口座振替による納付、証券に
よる納付を用いており、指定金融機関等又は出納員等が収納する。
④ 指定金融機関等又は出納員等が収納したときは、領収書を納入者に交付する。
102
(ⅲ)歳入の経年推移
歳入の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。詳細については、款ごとに内
容を検討する。
(単位:千円)
款
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
使用料及び手数料
29,608
17,814
19,273
国庫支出金
51,739
48,646
56,787
県支出金
59,928
63,764
55,786
寄附金
-
-
500
諸収入
51,919
50,736
62,372
302,000
117,500
68,700
495,194
298,460
263,418
市債
合計
(2)使用料及び手数料
(ⅰ)使用料
使用料は、すべて災害対策使用料であり、その内容は安岡避難地多目的グラン
ドの使用料収入である。同グランドは、平常時には市民のスポーツ利用等の多目
的な憩いの場として、また災害時には市民の一時的避難場所として利用している。
使用料の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
災害対策使用料
平成 22 年度
485
平成 23 年度
493
平成 23 年度においては、利用者数の微減により減収となっている。
使用料の金額は「松山市安岡避難地条例」に基づいて算定されている。
103
388
松山市安岡避難地条例(抜粋)
(目 的 及 び 設 置 )
第 1 条
市 民 の 災 害 時 に お け る 安 全 を 守 り ,災 害 時 以 外 に あ っ て は ,多
目 的 な 憩 い の 場 と し て の 利 用 に 供 す る た め ,地 方 自 治 法 ( 昭 和 2 2 年 法 律
第 6 7 号 ) 第 2 4 4 条 の 2 第 1 項 の 規 定 に 基 づ き ,本 市 に 松 山 市 安 岡 避 難 地
(以 下 「 避 難 地 」 と い う 。 )を 設 置 す る 。
別 表 (第 5 条 関 係 )
区分
使用単位
使用料
一般
多目的グラウンド
2 時間までごとにつき
照明設備
30 分 ま で ご と に つ き
備考
学生
500 円
250 円
500 円
「 学 生 」 と は ,小 学 生 , 中 学 生 , 高 校 生 そ の 他 こ れ ら に 準 じ る 者
をいう。
(ⅱ)手数料
<1>概要
手数料は、すべて常備消防手数料であり、その内容は危険物の貯蔵取扱いに
係る許認可事務等に伴う手数料収入である。
手数料の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
常備消防手数料
平成 22 年度
29,123
平成 23 年度
17,321
18,884
直近 3 年度の審査及び検査対象件数は下表のとおりである。
(単位:千円)
平成 21 年度
件数
一般申請
特定屋外タンク
金額
平成 22 年度
件数
金額
平成 23 年度
件数
金額
623
8,923
698
8,651
673
8,744
37
20,200
21
8,670
24
10,140
平成 23 年度においては、平成 22 年度と比較して一般申請件数は減少したも
のの、手数料単価の高い審査及び検査が多かったことから増収となっている。
なお、手数料の金額は「松山市消防手数料条例」に基づいて算定されている。
平成 21 年度において特定屋外タンクの審査及び検査件数が多くなっている
が、これは法令の改正により平成 21 年 12 月までに屋外タンクの耐震性強化が
求められたことに伴う駆け込み需要があったためである。
104
松山市消防手数料条例(抜粋)
(手数料の種別及び金額)
第2条
市長は、次の各号に掲げる手数料を、それぞれ当該各号に定める額によって
徴収する。
(1)消防法(昭和 23 年法律第 186 号)に関する手数料
別表 1 に定める額
(2)石油コンビナート等災害防止法(昭和 50 年法律 84 号)に関する手数料
別表 2 に定める額
(3)火薬類取締法(昭和 25 年法律第 149 号)に関する手数料
別表 3 に定め
る額
(4)松山市火災予防条例(昭和 37 年条例第 18 号)に関する手数料
別表 4
に定める額
(納付の時期)
第3条
手数料は、申請の際に納付しなければならない。
(還付)
第4条
既納の手数料は、還付しない。
(減免)
第5条
市長は、特に必要があると認めるときは、手数料を減額し、又は納付を免除
することができる。
<2>手数料に係る経理処理の検証
手数料について、平成 23 年度の「歳入簿」より任意に 3 件をサンプルとし
て抽出し、
「起案文書」
「完成検査済証」
「危険物(貯蔵所)完成検査申請書」
「危
険物製造所等審査書」
「許可書」
「危険物(貯蔵所)変更許可申請書」等の関連
書類・証憑を閲覧し、手数料が所定の手続きに従い受領されていることを確認
した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
年月日
H23. 6.29
常備
消防費
H23. 7.15
H23. 6.29
内容
債務者
危険物関係手数料:
コスモ松山石油㈱
特定屋外タンク貯蔵所変更許可
松山工場
危険物関係手数料:
コスモ松山石油㈱
完成検査前検査(溶接部)
松山工場
危険物関係手数料:
コスモ松山石油㈱
変更許可(屋外タンク貯蔵所)
松山工場
105
収納額
495,000
315,000
19,500
(3)国庫支出金
(ⅰ)国庫負担金
<1>概要
国庫負担金は、法令によって当該地方公共団体又は地方公共団体の機関に実
施を義務づけられた事務のうち、その事務の性格としては地方公共団体の利害
に関係のある事務であるが、その事務の経費の全部又は一部が効率的な事務実
施の要請、沿革的要素又は技術的要素等の理由により財源配分の際に国に留保
されるものとみなされ、したがって現実の事務実施に際してはその部分が財源
として交付される必要があるものである(
「地方公共団体 歳入歳出科目解説」
より)。
国庫負担金の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
常備消防費国庫負担金
平成 22 年度
-
平成 23 年度
-
3,635
平成 23 年度の国庫負担金の内容は、東日本大震災に伴い、岩手県釜石市に
隊員 21 名を緊急消防援助隊として派遣し、その活動負担金を総務省消防庁よ
り受領したものである。
(消防組織法第 49 条第 1 項)
<2>国庫負担金に係る経理処理の検証
平成 23 年度の国庫負担金について、
「起案文書」
「確定通知書」
「調定書」
「収
納済通知書」
「請求書」
「緊急消防援助隊活動負担金交付要綱」等の関連書類・
証憑を閲覧し、負担金が所定の手続きに従い受領されていることを確認した。
(参考)負担金の対象経費となるもの

手当(特殊勤務手当・時間外勤務手当・管理職特別勤務手当・夜間勤務手
当・休日勤務手当)

旅費(鉄道費・航空賃・日当・宿泊費・食卓料)

緊急消防援助隊の施設に係る修繕料・役務費(点検費・運搬費等)

上記施設が使用により滅失した場合における代替施設の購入費

緊急消防援助隊の活動のために要した燃料費・消耗品費・賃借料・その他
の物件費
106
(ⅱ)国庫補助金
<1>概要
国庫補助金は、国庫支出金のうち国庫負担金又は委託金を除いた部分で、そ
の事務が法令によって義務づけられていると否とにかかわらず、国と地方公共
団体相互の財源配分にあっては地方税又は地方交付税の一般財源をもって負
担するべき性格を有する事務に対し、奨励的ないし財政援助的な意味をもって
交付される補助金である(「地方公共団体 歳入歳出科目解説」より)
。
国庫補助金の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費国庫補助金
159
286
219
消防施設費国庫補助金
36,050
-
24,620
災害対策費国庫補助金
4,049
35,566
28,313
<2>平成 23 年度における常備消防費国庫補助金の主な内容
① 住宅防火推進事業
219,000 円
住宅課が実施する公営住宅建設事業に対する社会資本整備総合交付金で、松
山市の「地域住宅計画」に基づき、住宅政策に必要な事業として住宅防火に係
る事業が対象となるものであり、事業費の約 45%が交付される。主な内容は、
防災パンフレットやチラシの製作、独居高齢者世帯への防災訪問等である。
(参考)社会資本整備総合交付金
地方公共団体等が行う社会資本の整備その他の取組を総合的に支援することによ
り、交通の安全の確保とその円滑化、経済基盤の強化、生活環境の保全、都市環境
の改善及び国土の保全と開発並びに住生活の安定の確保及び向上を図ることを目的
としている。
整備計画は、活力創出基盤整備(道路、港湾)、水の安全・安心基盤整備(治水、
下水道、海岸)、市街地整備(都市公園、市街地、広域連携等)、地域住宅支援(住
宅、住環境整備)の 4 分野に分けて計画を策定するもの。
107
<3>平成 23 年度における消防施設費国庫補助金の主な内容
① 緊急消防援助隊設備整備費補助事業
24,620,000 円
救助工作車Ⅱ型及び救助用資機材の更新のための補助金であり、本市におけ
る消防活動はもとより、広域災害・特殊災害が発生した他都市等へ直ちに出動
体制をとる必要のある緊急消防援助隊としての災害救援体制を充実させ更な
る消防力の強化を図ることを目的とする。
(参考)緊急消防援助隊設備整備費補助事業
消防組織法第 49 条第 2 項に基づき、
緊急消防援助隊施設整備に要する経費のうち、
予算の範囲内において国が補助するもの。補助率については、緊急消防援助隊に関
する政令第 6 条第 2 項の規定により、
「国が行う補助は、予算の範囲内で基準額の 2
分の 1」と定められている。
<4>平成 23 年度における災害対策費国庫補助金の主な内容
① 松山市デジタル防災行政無線整備事業等 26,205,000 円
デジタル防災行政無線システムを構築し、緊急地震速報や津波警報などの緊
急情報を、住民に正確かつ迅速に伝達し、市民の生命・財産を災害から守るこ
とを目的とする。
② 避難所誘導標識改修
1,608,000 円
災害時に被災者が安全かつ速やかに避難できるよう、市が避難場所に指定し
ている小・中・高等学校、幼稚園、保育所及び公民館に「災害時避難場所」と
明示した標識を設置する。
<5>国庫補助金に係る経理処理の検証
国庫補助金について、平成 23 年度の「歳入簿」より 10,000 千円以上のもの
を抽出し、
「起案文書」
「補助金確定通知書」「調定書」「納入通知書兼領収書」
等の関連書類・証憑を閲覧し、国庫補助金が所定の手続きに従い受領されてい
ることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
消防
施設費
災害
対策費
年月日
H24. 3.12
内容
平成 23 年度緊急消防援助
隊設備整備費補助金
債務者
収納額
愛媛県会計管理者
24,620,000
官署支出官
26,205,000
平成 23 年度社会資本整備
H24. 3.28 総合交付金(都市防災総合
推進事業)
108
(ⅲ)国庫委託金
<1>概要
国庫委託金は、法令によって地方公共団体に義務づけられた事務であるが、
本来的に国が直接国費でもって実施すべき事務を執行の便宜上地方公共団体
に委託して行わせるものであるため、もっぱら国の利害に関する事務として、
施行に必要な経費の全額を委託の都度交付される性質の国庫支出金である
(
「地方公共団体 歳入歳出科目解説」より)。
国庫委託金の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
常備消防費委託金
平成 21 年度
11,482
平成 22 年度
12,795
平成 23 年度
-
平成 21 年度及び平成 22 年度の国庫委託金の内容は、「火災原因調査の高度
化に資する手法の開発」に係る委託金であり、平成 22 年度において終了して
いる(実施年:平成 20 年度~平成 22 年度)。これに伴い機材を購入しており、
詳細は「4.物品管理(2)備品購入費の推移」(185 ページ)を参照のこと。
109
(4)県支出金
(ⅰ)概要
県支出金は、直近 3 年度はすべて県補助金で構成されている。県補助金は、消
防局が実施する事業に対して、県が交付する補助金である。
県補助金の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
非常備消防費県補助金
平成 22 年度
平成 23 年度
-
358
-
消防施設費県補助金
54,783
54,796
54,786
災害対策費県補助金
5,145
8,610
1,000
(ⅱ)平成 23 年度における消防施設費県補助金の主な内容
① 石油貯蔵施設立地対策等交付金
50,386,000 円
老朽化した小型動力ポンプ付水槽車(南消防署)及び高規格救急自動車(城
東支署)を更新し、石油コンビナート火災のほか多種多様な災害における消防
体制の総合的な充実強化を図る。
(参考)石油貯蔵施設立地対策等交付金
石油貯蔵施設の立地を促進するため、立地市町村等に対し公共施設等整備に充て
るための交付金を設けることによって、施設立地に伴う財政負担を軽減し、併せて
地域経済の発展及び福祉向上を図ることを目的として創設された交付金。石油貯蔵
施設立地対策等交付金規則により限度額が設けられており、各自治体の石油等貯蔵
量により毎年度決定される。
② 電源立地地域対策交付金 4,400,000 円
減水地域を管轄する消防団(伊台分団)の小型動力ポンプ付積載車を更新し
た。
(参考)電源立地地域対策交付金
発電所受入地域の施設整備や福祉向上を図る目的で創設された交付金(定額補
助)
。本市では、石手川ダムに係る湯山発電所の水力発電施設が対象となる。
(ⅲ)平成 23 年度における災害対策費県補助金の主な内容
① 新ふるさとづくり総合支援事業費(防災士養成事業)
1,000,000 円
NPO 法人日本防災士機構の提唱する「防災士」の資格取得費用に対する補助
金で、対象者は市内の自主防災組織からの推薦者で、資格取得後は地域の防災
活動のリーダーとして活躍することを目的とする。
(総事業費の 2 分の 1 以内、
限度額 100 万円)
110
(参考)新ふるさとづくり総合支援事業費
市町や民間団体等が、自らの創意工夫により地域課題を解決できる環境を整える
ため、地域の一体的かつ自立的発展を図る地域づくり事業等に要する経費の一部を
助成する制度。
(ⅳ)県補助金に係る経理処理の検証
県補助金について、平成 23 年度の「歳入簿」より 10,000 千円以上のものを抽
出し、「起案文書」
「交付金支払請求書」「交付対象事業評価報告書」等の関連書
類・証憑を閲覧し、県補助金が所定の手続きに従い受領されていることを確認し
た。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
消防
施設費
年月日
H24. 5.18
内容
債務者
平成 23 年度石油貯蔵施設
立地対策等交付金
収納額
愛媛県会計管理者
50,386,000
(5)寄附金
寄附金は消防施設整備等に対するものであり、直近 3 年度の推移は下表のとおり
である。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
常備消防費寄附金
平成 22 年度
-
平成 23 年度
-
500
平成 23 年度の寄附金は松山共済協同組合から受領したものである。詳細は「5.
公有財産管理(7)行政財産の目的外使用許可」
(208 ページ)を参照のこと。
111
(6)諸収入
(ⅰ)概要
諸収入の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費雑入
10,499
11,425
12,181
非常備消防費雑入
33,936
35,527
49,333
86
1,565
-
7,399
2,218
857
消防施設費雑入(注)
災害対策費雑入
(注)平成 22 年度の消防施設費雑入は、
「愛媛県デジタル消防救急無線基本設計推進協議会
負担金」に係るものである。
(ⅱ)平成 23 年度における常備消防費雑入の主な内容
① 派遣職員人件費 7,977,025 円
消防学校等への愛媛県派遣職員の人件費であり、「職員の派遣に関する協定
書」に基づき所要額が納付されている。
② 高速自動車国道の救急業務支弁金 1,777,140 円
以下の 5 項目を算定根拠として支弁額を決定している。
1.救急隊一隊を維持するために要する経費(基礎数値)
2.人口区分に応じた高速道路平均出動割合
3.救急出動回数による割増率
4.特殊事情(インターチェンジの形態に応じた係数)
5.支弁対象日数
③ 消防救急艇はやぶさ浮遊物接触事故に伴う船舶保険
1,522,500 円
消防救急艇については、船舶及び船主責任保険に加入しており、平成 23 年
10 月 15 日に発生した浮遊物との接触事故に伴い、保険会社へ保険金請求した
ものである。
(ⅲ)平成 23 年度における非常備消防費雑入の主な内容
① 消防団員退職報償金
45,597,000 円
「消防組織法」第 25 条(非常勤消防団員に対する退職報償金)及び「松山
市非常勤消防団員に係る退職報償金の支給に関する条例」に基づき、退職する
消防団員に対して支払われる退職報償金について、消防団員等公務災害補償等
共済基金より受領したものである。
112
(ⅳ)平成 23 年度における災害対策費雑入の主な内容
① コミュニティ助成事業 600,000 円
「松山市女性防火クラブ連合会」が心肺蘇生法を習得するための救命講習を
充実するために、AED トレーニングシステム及びクラブ員が着用する法被を購
入した際に、㈶自治総合センターより助成金として受領したものである。
② 水防センター電気・水道料金
218,668 円
国土交通省が整備する重信川河川防災ステーション内において、平常時には
市民のコミュニティスペースや研修の場として、災害時には備蓄倉庫・水防倉
庫・消防団待機所としての機能を有する「水防センター」の維持管理に伴う助
成金である。
(ⅴ)諸収入に係る経理処理の検証
諸収入について、平成 23 年度の「歳入簿」より任意に 5 件をサンプルとして
抽出し、「調定書」
「収納済通知書」
「納付書兼領収書」「請求書」等の関連書類・
証憑を閲覧し、諸収入が所定の手続きに従い受領されていることを確認した。
また、消防団員退職報償金の総額 45,597,000 円について、
「調定書」及び「退
職報償金支払決定通知書」と照合し、所定の手続きに従い受領されていることを
確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
常備
消防費
非常備
消防費
災害
対策費
年月日
H24. 5. 1
H23.12.21
H24. 2.29
H24. 4.26
H23. 6. 1
内容
債務者
平成 23 年度派遣職員人件費
(10 月~3 月分)
愛媛県
4,017,766
消防救急艇はやぶさ浮遊物接触
東京海上日動火災保険㈱
事故に伴う船舶保険金
西日本船舶営業部
消防団員安全装備品整備等助成
消防団員等公務災害補償
事業助成金
等共済基金
平成 23 年度コミュニティ助成事
財団法人
自治総合セン
業(地域防災組織育成助成事業) ター
松山市水防センター電気料金
国土交通省四国地方整備
(4 月分)
局
113
収納額
松山河川国道事務所
1,522,500
870,000
600,000
16,941
(7)市債
(ⅰ)概要
市債は、対象となる事業の予算総額のうち補助金等で充当できない金額に対し
て消防債を起債したものである。
市債の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
市債名
防災基盤整
備事業債
辺地対策
事業債
合併特例
事業債
内容
消防救急無線デジ
タル化
消防団ポンプ蔵置
所耐震化
その他
(車両購入費)
その他
(車両購入費)
松山市デジタル防
災行政無線整備事
業等
北条分団消防ポン
プ蔵置所耐震化
城北支署大規模改
修・増築及び北部備
蓄倉庫建設等
その他
(車両購入費)
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
-
-
9,100
-
-
15,000
18,000
17,200
3,300
17,600
-
4,400
-
4,800
36,900
-
50,150
-
240,300
-
-
26,100
45,350
-
(ⅱ)平成 23 年度における防災基盤整備事業債の主な内容
引受者
社団法人
全国市有物件災害共済会
借入金額
27,400,000 円
使途
①
消防救急無線デジタル化事業
9,100,000 円
平成 15 年 10 月に電波法関係審査基準が改正され、消防救急ア
ナログ無線の使用期限が平成 28 年 5 月 31 日までとされたことに
伴い、消防救急無線のデジタル化の整備を進めるもの。
②
消防団ポンプ蔵置所耐震化事業(三津浜・味酒分団) 15,000,000 円
地域の消防防災の要である消防団のポンプ蔵置所(消防団車両
車庫・消防団員待機室)の内、昭和 56 年以前に建築された旧耐震
基準に基づく施設について耐震安全性が確保できていないため、
建て替え等の整備を行い消防防災力の確保を図る。
③
非常備消防用車両機械購入事業
3,300,000 円
消防団車両の老朽化に伴う更新であり、小型動力ポンプ付軽積
載車を購入したもの。
114
(ⅲ)平成 23 年度における辺地対策事業債の主な内容
引受者
財務省
借入金額
4,400,000 円
使途
非常備消防用車両機械購入事業
離島で消防署がなく消防職員の現場到着までに時間を要するこ
とから、初期活動においては消防団による消火活動が主となって
おり、今回、小型動力ポンプ付軽積載車を更新することにより消
防力の充実強化を図る。平成 23 年度は中島東分団(小浜)で使用
している小型動力ポンプ付軽積載車の老朽化が著しいため更新を
行う。
(ⅳ)平成 23 年度における合併特例事業債の主な内容
本市では、災害時における市民への同報系情報伝達システムとして、平成 17 年
の合併後、旧市町域ごとに構築された 3 系統のシステムにより運用を行っている。
旧北条市域はアナログ防災行政無線を使用しているが、老朽化による障害等が多
発している。また、同設備は昭和時代に整備されたものであり、交換部品の調達が
困難になりつつあることから、更新整備する必要がある。
旧松山市域には同報系防災行政無線がなく、消防無線を使用した自動式サイレン
制御装置(拡声装置付)により情報提供を行っているが、電波法の改正に伴い、現
行消防無線波の更新が平成 28 年 5 月末以降許可されないため、新たに防災行政無
線を整備する必要がある。また、J-ALERT との接続ができない状況で、手動での起
動・情報提供を行っていることから、自動起動できる防災行政無線を整備する必要
がある。
さらに、旧 3 市町域のシステムは互換性がないため、今後統一化を見据えて整備
を進めていく必要がある。
(以上「平成 23 年度 旧合併特例事業起債計画書」より)
以上により、平成 23 年度から工事に着工しており、これに係る財源として社会
資本整備総合交付金を活用し、残余に合併特例事業債を充てている。
(ⅴ)市債に係る経理処理の検証
平成 23 年度の市債について全件、
「調定書」
「収納済通知書」
「起債計画書」等の
関連書類・証憑を閲覧し、起債が所定の手続きに従っていることを確認した。
115
2.人件費
(1)概況
当報告書における人件費とは、決算統計上の性質別分類項目とは異なり、消防職
員に係る人件費として、給料、職員手当、報酬、賃金及び共済費、消防団員に係る
人件費として、報酬、退職報償費、退職報償負担金、公務災害補償負担金、福祉共
済制度負担金及び災害補償費を対象とする。
消防職員に係る人件費は常備消防費に、消防団員に係る人件費は非常備消防費と
して計上される。松山市で常備消防費及び非常備消防費に計上される人件費は、消
防費全体の 8 割近くを占める主要な費目となっている。ここでは、人件費に係る経
理処理の妥当性及び人員配置の妥当性の観点から、調査を実施した。
下表は、消防費における人件費、消防職員数、消防団員数、出動件数をもとに、
人件費の概況をまとめたものである。
項目
消防費(決算額)
うち常備消防費
うち人件費(常備)
うち非常備消防費
うち人件費(非常備)
人件費合計(常備+非常備)
消防職員数
消防団員数
出動件数
うち火災出動件数
うち救急出動件数
うち救助出動件数
人件費(常備)/消防費(=③/①)
人件費(常備)/常備消防費(=③/②)
常備
人件費(常備)/消防職員数(=③/⑦)
人件費(常備)/出動件数(=③/⑨)
人件費(非常備)/消防費(=⑤/①)
非常備 人件費(非常備)/非常備消防費(=⑤/④)
人件費(非常備)/消防団員数(=⑤/⑧)
人件費合計/消防費(=⑥/①)
合計
人件費合計/出動件数(=⑥/⑨)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
単位 平成21年度 平成22年度 平成23年度
千円
4,849,157 4,577,011 4,681,661
千円
3,805,602 3,807,364 3,834,486
千円
3,465,933 3,472,054 3,499,726
千円
250,324
272,053
339,119
千円
214,486
234,932
299,801
千円
3,680,419 3,706,986 3,799,527
人
457
454
456
人
2,248
2,311
2,335
件
20,648
22,089
22,521
件
185
219
161
件
20,315
21,733
22,221
件
148
137
139
%
71%
76%
75%
%
91%
91%
91%
千円
7,584
7,648
7,675
千円
168
157
155
%
4%
5%
6%
%
86%
86%
88%
千円
95
102
128
%
76%
81%
81%
千円
178
168
169
(注)1.金額は決算額である。
2.人件費(常備)は、給料、職員手当、報酬、賃金及び共済費としている。
3.人件費(非常備)は、報酬、報償費、退職報償負担金、公務災害補償負担金、
福祉共済制度負担金及び災害補償費としている。
4.消防職員数及び消防団員数は、各年度における 4 月 1 日現在の実員である。
5.火災出動件数、救急出動件数及び救助出動件数は暦年ベースである。
上表で直近3年間の概況をみる。なお、人件費の経年比較については、後述する。
116
(ⅰ)消防費に対する人件費の比率
消防職員に係る常備人件費の消防費全体に対する比率は 71%~76%、常備消防
費に対する比率は 91%と高い数値となっている。また消防団員に係る非常備人件
費の消防費全体に対する比率は 4%~6%であるものの、非常備人件費の非常備消
防費に対する比率は 86%~88%となっており、非常備消防費においても人件費は
非常に高い割合を占める。さらに、常備消防費及び非常備消防費を合算した全体
でみると人件費は消防費の 80%程度を占めており、人件費は消防費のうちの最も
重要な費目であることがわかる。
(ⅱ)1人当たり人件費
平成 23 年度の消防職員一人当たりの(常備)人件費は 7,675 千円であり、直
近 3 年間で大きな変動はない。一方、消防団員一人当たりの(非常備)人件費は
128 千円であるが、平成 22 年度と比べると大きく増加している。これは、主とし
て、東日本大震災の発生に伴い消防団員等公務災害補償負担金の追加掛金支払が
あり、公務災害補償負担金が 55,883 千円増加したことによる。
(ⅲ)出動 1 件当たり人件費
常備人件費を火災・救急・救助を含めた全出動件数で除した出動 1 件当たりの
人件費は 160 千円前後となっている。また、常備人件費及び非常備人件費を合算
した人件費合計額を全出動件数で除した出動 1 件当たりの人件費は 170 千円前後
となっている。
117
(2)常備消防に係る人件費
(ⅰ)人件費の経年比較及び内容
常備消防に係る人件費の直近 3 年間の推移は、下表のとおりである。常備消防
に係る人件費は大きく、給料、職員手当、報酬、賃金、共済費の節に区分される。
常備人件費の推移
(単位:千円)
前年度比増減額
区分
平成21年度
平成22年度
平成23年度 平成21年度と
平成22年度
平成22年度と
平成23年度
① 給料
1,743,401
1,732,328
1,744,732
△ 11,073
12,404
② 職員手当
1,143,568
1,113,292
1,105,564
△ 30,276
△ 7,727
③ 報酬
22,274
31,315
36,806
9,041
5,491
④ 賃金
12,007
11,210
11,503
△ 797
293
544,683
583,909
601,121
39,226
17,212
3,465,933
3,472,054
3,499,726
6,121
27,672
⑤ 共済費
常備人件費 合計
なお、職員手当については、下表でさらに細かく区分したうえで、内容と推移
の説明を行う。
職員手当内訳の推移
職員手当内訳
(単位:千円)
平成21年度
平成22年度
前年度比増減額
平成23年度 平成21年度と 平成22年度と
平成22年度
平成23年度
1
管理職手当
19,350
19,208
18,753
△ 142
△ 455
2
特殊勤務手当
16,282
17,359
17,802
1,077
443
3
扶養手当
86,943
89,245
89,771
2,302
526
4
地域手当
1,207
562
715
△ 645
153
5
時間外勤務手当
171,812
179,363
166,838
7,550
△ 12,525
6
休日勤務手当
150,506
143,487
143,839
△ 7,018
352
7
夜間勤務手当
38,892
39,218
39,488
326
269
8
管理職特別勤務手当
-
6
-
6
△ 6
9
期末手当
434,787
410,092
411,701
△ 24,695
1,609
10 勤勉手当
223,789
214,751
216,656
△ 9,038
1,906
1,143,568
1,113,292
1,105,564
△ 30,276
△ 7,727
職員手当 合計
① 給料
消防職員及び再任用職員の給与である。職員数が各々平成 21 年度 457 名、
平成 22 年度 454 名、平成 23 年度 456 名と変動しているため、それに連動して
平成 22 年度では減少、平成 23 年度では増加となっている。なお、再任用職員
はフルタイム勤務である場合は定数内にカウントされるが、平成 24 年 4 月 1
日現在、再任用職員はいない。
118
② 職員手当
消防職員の諸手当である。松山市の職員手当には、管理職手当、特殊勤務手
当、扶養手当、地域手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、時間外勤務手
当、休日勤務手当、夜間勤務手当、宿日直手当、管理職特別勤務手当、初任給
調整手当、期末手当、勤勉手当及び退職手当がある。消防職員については、上
記のうち、単身赴任手当、宿日直手当、初任給調整手当は発生していない。な
お、住居手当,通勤手当及び退職手当については、消防費ではなく、松山市の
別の款別費目である総務費として計上されているため、表には含まれていない。
時間外勤務手当については、平成 22 年度は前年度比で 7,550 千円増加し、
平成 23 年度は前年度比で 12,525 千円減少している。この理由は、火災出動件
数が平成 22 年度は前年度比で 18%増加、平成 23 年度は前年度比で 26%減少
しているためと考えられる。特に夜間の休憩時間(時間外)中の出動は、時間
外勤務手当の対象となるため、出動回数の多寡は勤務手当の増減に影響する。
また、平成 22 年度は、平成 23 年 2 月に全国救急隊員シンポジウムが松山市で
開催されたことが、時間外勤務手当の増加に繋がった。
休日勤務手当については、消防署員の場合、祝日・年末年始の休日に勤務し
た場合及び祝日が週休日と重なった直後の勤務日を対象に支払われるが、カレ
ンダー上の休日の並びにより影響を受ける。平成 21 年度は 9 月の敬老の日と
秋分の日の間の日が「国民の祝日に関する法律(祝日法)」に基づく「国民の
休日」となり、他の年度より休日が 1 日多かったことによって、平成 22 年度
は前年度比で 7,018 千円減少している。
期末手当は、松山市の方針として平成 21 年度は 2.75 月分であった支給割合
を、平成 22 年度には 2.60 月分に減額したことにより、平成 22 年度は前年度
比で 24,695 千円減少している。
勤勉手当は、人事考課の結果及び勤務の状況に応じて年 2 回に分けて支給さ
れるものであるが、松山市の方針として平成 21 年度は 1.40 月分であった支給
割合を、平成 22 年度には 1.35 月分に減額したことにより、平成 22 年度は前
年度比で 9,038 千円減少している。
119
③ 報酬
報酬には主に、指導監や産業医など特別職の報酬、嘱託職員の報酬、消防艇
操船員の報酬が含まれている。平成 23 年度では、自衛隊OBが防災指導監、
民間事業会社OBが予防指導監として特別職についており、専門的知識や経験
を持った人材を即戦力として活用している。また、嘱託職員については、松山
市職員OB1 名が火災原因調査、消防職員OB2 名が事務補助としてフルタイ
ムで勤務している。消防艇操船員については、船長 4 名、甲板員 2 名が勤務し
ており、就労時間は正規の消防職員の 10 分の 9 となっている。平成 22 年度は
事務補助の嘱託職員及び消防艇操船員の増員により前年度比で 9,041 千円増加
し、平成 23 年度は事務補助の嘱託職員は減員したものの消防艇操船員の増員
により前年度比で 5,491 千円増加している。
④ 賃金
消防職員の事務補助として、必要に応じ臨時職員を採用しているが、3 年間
で大きな変動はない。
⑤ 共済費
共済費は、主として愛媛県市町村職員共済組合への負担金であり、これには
年金や一時金等に対応する長期給付に係る負担金と療養費等に対応する短期
給付に係る負担金とがある。共済費が年々増加している理由は、地方公務員共
済組合連合会において、少なくとも 5 年ごとに行われる財政再計算結果(直近
では平成 21 年に実施)に基づいて、長期給付に係る負担金率が毎年引き上げ
られていることや、共済組合が短期給付の状況等を勘案し、定款で定める負担
金率を毎年引き上げているためである。平成 22 年度は特に長期給付の中の追
加費用の負担率が大幅に引き上げられたことにより、前年度比で 39,226 千円
の増加となった。
120
(ⅱ)消防職員給与等支払いに係る経理処理の検証
<1>監査手続
① 給与支給額の検証
消防職員の給与支給について、平成 23 年度の給与明細表(給与計算システ
ムからの出力帳票)の合計額が決算額と合致しているか検討した。ただし、住
居手当と通勤手当については、消防費ではなく、松山市の別の款別費目である
総務費として計上されているため、対象としていない。
② 給与支給対象人数の検証
平成 23 年 4 月度の給与支給対象人数である給与明細表の人員数と、消防年
報における平成 23 年 4 月 1 日時点の人員数との整合性を検討した。また、毎
月の給与明細表の人員数と消防局で把握している人員数との整合性を検討し
た。
<2>監査結果
① 給与支給額の検証
給料については、平成 23 年 11 月より消防局より市長部局へ所属変更となっ
た危機管理担当職員 8 名分の給与が給与明細表では計算されていないが、予算
上消防費とされていたため、決算額には含まれていること、及び再任用職員の
給与計算は給与明細表で行われていないが決算額に含まれていることを加味
すると、給与明細表の合計額と決算額は合致した。特殊勤務手当、時間外勤務
手当、休日勤務手当及び夜間勤務手当については、手当の対象となる勤務が発
生した月の翌月に給与明細表で計算され支給されるが、決算上は発生月に計上
されるため、計上のタイミングにずれが発生する。このずれに加え、給与と同
様に危機管理担当職員と再任用職員の給与を加味すると、特殊勤務手当、時間
外勤務手当、休日勤務手当及び夜間勤務手当についても給与明細表の合計額と
決算額は合致した。扶養手当及び管理職手当も危機管理担当職員の給与を加味
すると合致した。地域手当についても、合致した。
② 給与支給対象人数の検証
県への派遣職員については給与明細表で計算し支給されるため、給与支給対
象人数に含まれる。一方消防年報上は、県への派遣職員は含まれていない。こ
のため、県への派遣職員の人員数を加味したところ、平成 23 年 4 月度の給与
支給対象人数である給与明細表の人員数と、消防年報における平成 23 年 4 月 1
日時点の人員数は整合した。県への派遣職員の給与は、決算上、常備消防費と
して人件費に計上され、県が負担する人件費は歳入として別途計上される。ま
た、毎月の給与明細表の人員数と消防局で把握している人員数についても、県
への派遣職員を加味すると整合した。
121
(ⅲ)給与計算に係る経理処理の検証
<1>監査手続
消防職員の給与計算について、<1>で検証した給与明細表上の平成 23 年 6
月に支給対象者から任意に 10 名分をサンプルとして抽出し、給与計算が適切
に行われているか検討した。
<2>監査結果
具体的な給与計算の内容と監査手続及び監査結果は、以下のとおりである。
なお、給与計算について影響はないが、各項目に関連する指摘及び意見につ
いてもあわせて記載する。
① 給料
松山市職員の給料については、
「行政職給料表」
、
「特殊行政職給料表」、
「消
防職給料表」
、
「医療職給料表(1)」
、
「医療職給料表(2)」
、
「医療職給料表
(3)
」の 6 つの給料表があり、消防職員には「消防職給料表」が適用され
ている。「消防の組織は、緊急時の部隊活動等に必要な上命下服を明示し組
織の統一性を確保するため、階級制度がある。行政職給料表を適用した場合、
各階級に一定の割合の人数が必要となるという特徴を持つ消防組織におい
ては、階級制度を維持しつつ、給料の水準を適正に保つということが難しい。
このため消防職員の給料については、その職務の危険度及び勤務の態様の特
殊性等を踏まえ、一般職員と異なる特別給料表を適用することとされている。
(昭和 26 年国家消防庁管理局長通知)」と、平成 23 年版消防白書で記載さ
れているとおり、松山市でも消防職員には行政職給料表と異なる特別給料表
が適用されている。なお、市長部局から消防局への出向者(主事)について
は、
「行政職給料表」が適用されている。平成 23 年 4 月 1 日現在の職員の初
任給の状況は、下表のとおりである。
区分
一般行政職
消防職
大学卒
高校卒
大学卒
高校卒
(注)松山市HP「平成 23 年度
初任給(円)
172,200
140,100
187,200
154,800
人事行政の運営等の状況の公表」より抜粋。
初任給については大学卒、高校卒ともに、消防職が一般行政職を 15,000
円程度上回っている。これは、消防職が危険な現場での業務に携わり、かつ
24 時間の勤務体制を強いられる特性を考慮していると考えられる。
122
また、職員の平均年齢、給与月額の状況、職員の経験年数別平均給料月額
は、次のとおりである。
(単位:円)
区分
平均年齢
平均給料月額
平均給与月額
松山市
41.1歳
328,328
412,585
一般
行政職 中核市平均
42.6歳
335,481
433,347
松山市
38.1歳
314,859
396,245
消防職
中核市平均
40.1歳
318,666
419,699
(注) 1.「平均年齢」は、10 進法で標記している。
2.「平均給料月額」とは、平成 23 年 4 月 1 日現在における職員の基本給の
平均である。
3.「平均給与月額」とは、給料月額と毎月支払われる扶養手当、地域手当、
住居手当、時間外勤務手当などの、すべての諸手当を合計したものであ
り、地方公務員給与実態調査において明らかにされているものである。
4.松山市HP「平成 23 年度 松山市の給与・定数管理等」より抜粋。
平均給料月額及び平均給与月額ともに一般行政職の数値が消防職を上回
っているが、これは平均年齢が一般行政職の方が高くなっているためと考え
られる。
(単位:円)
区分
経験年数 10 年 経験年数 15 年 経験年数 20 年
大学卒
257,914
316,870
361,865
一般行政職
高校卒
211,300
267,040
305,113
大学卒
283,643
338,317
365,700
消防職
高校卒
233,500
290,100
323,286
(注) 1.平成 23 年 4 月 1 日現在における数値である。
2.松山市HP「平成 23 年度 松山市の給与・定数管理等」より抜粋。
経験年数が同じであれば、やはり消防職の平均給料月額が一般行政職のそ
れを上回っており、初任給のみでなくそれ以降の給料についても、消防職が
一般行政職を上回っていることが分かる。ただし、その乖離の幅は経験年数
とともに縮小している。これは、経験年数の増加とともに 24 時間の勤務体制
に従事する職員も減り、危険な現場での職務に従事することも少なくなると
考えられることから、合理的であると考える。
123
消防職員の勤務体制は、交替制勤務と毎日勤務に分かれており、交替制勤
務は二交替制勤務と三交替制勤務に分かれている。消防署(署長等は除く。)
の職員は二交替制勤務、通信指令課(課長は除く。
)の職員は三交替制勤務、
それ以外の職員は毎日勤務となっている。
二交替制とは、職員が 2 部に分かれて、1 日交替で 24 時間勤務(1 当務)
をするものである。勤務サイクルは 4 週間を 1 サイクルとして、その間に 8
日間の週休日を割り振るものである。
(二交替制勤務例)
日
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
曜日
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
勤務
当
非
当
非
当
非
週
週
当
非
当
非
週
週
種別
務
番
務
番
務
番
休
休
務
番
務
番
休
休
三交替制とは、職員が 3 部に分かれて、1 日交替で 24 時間勤務(1 当務)
をするものである。勤務サイクルは 3 週間を 1 サイクルとして、その間に 6
日間の週休日を割り振るものである。
(三交替制勤務例)
日
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
曜日
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
勤務
当
非
週
当
非
週
当
非
週
当
非
日
当
非
種別
務
番
休
務
番
休
務
番
休
務
番
勤
務
番
毎日勤務は常時日勤であり、一般行政職と同様の勤務体制である。
124
【当務(消防署)】
2時間勤務
8:30
12:00
13:00
17:15
休憩
勤務
勤務
3:30
18:00
休憩
22:00
6:00 6:45 8:30
休憩
休 憩
4:15
1:45
4:00
7時間45分勤務
7時間45分勤務
夜間勤務(2時間)
A
B
C
D
【当務(通信指令課)】
3時間勤務
8:30
12:00
13:00
休憩
勤務
17:15
勤務
3:30
18:00
休憩
4:15
21:00
3:00
7時間45分勤務
6:00 6:45 8:30
休 憩
休憩
1:45
7時間45分勤務
【日勤(通信指令課、毎日勤務者)】
8:30
12:00
勤務
13:00
休憩
3:30
17:15
勤務
4:15
7時間45分勤務
給料は、月の初日から末日までを計算期間とし、当月 21 日(その日が休日、
日曜日又は土曜日に当たるときは、その日前においてその日に最も近い休日、
日曜日又は土曜日でない日)に支給することとなっている。
給料に係る監査手続として、抽出した 10 名の給料について「消防職給料表」
と照合した。
「松山市職員給与条例の一部を改正する条例」により現給保障及
び減額改定対象となっている職員を除き、給料は消防職給料表と合致した。
現給保障及び減額改定対象となっている職員についても、各条例に応じた給
料となっていることを確認できた。また、抽出した全ての消防職員について、
「出勤簿」にて就業の事実を確認した。
125
② 職員手当
消防職員の手当としては、管理職手当、特殊勤務手当、扶養手当、地域手
当、住居手当、通勤手当、時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当、
管理職特別勤務手当、期末手当及び勤勉手当がある。
各職員手当の概要は下表のとおりである。時間外勤務手当、休日勤務手当、
夜間勤務手当については、月の初日から末日までを計算期間とし支払は翌月
となる。
【職員手当概要】
名称
管理職手当
特殊勤務手当
扶養手当
地域手当
松山市職員給与条例における規定内容等
管理又は監督の地位にある職員の職務の特殊性に基づき、給料月額の 25%を上限
に支給される。
管理職手当を受けることのできる職員は下記のとおり。
(1) 部長及び担当部長(これに相当する職のものを含む。)
(2) 消防局長
(3) 企画官(これに相当する職のものを含む。
)
(4) 課長(これに相当する職のものを含む。)
(5) 支所長(これに相当する職のものを含む。
)
(6) その他特に必要と認める職
消防署に勤務する職員においては、異常な自然現象により重大な災害が発生し、
又は発生する恐れのある現場などにおいて行う作業に従事した場合等に「災害応急
作業等手当」として、支給される。具体的には下記のとおりである。
① 異常な自然現象により重大な災害が発生し、又は発生するおそれのある現場
で行う応急作業、巡回監視、調査等の業務に従事した場合(日額730円以内)
② 消防署に勤務する職員が火災等の災害出動業務及び救急業務に従事した場合
(1回200円)
③ はしご車等を使用して高所・その他危険性の高い現場で業務に従事した場合
(日額220円)
④ 消防職員で救急救命士の資格を有するものが救急業務等に従事した場合(日
額250円)
扶養親族のある職員に対して支給される。支給額は下記のとおりである。
① 配偶者(月額 13,000 円)
② 配偶者以外の扶養親族(月額 6,500 円)
③ 配偶者のない職員の扶養親族のうち 1 人(月額 11,000 円)
なお、満 15 歳に達する日後の最初の年度初めから満 22 歳に達する日以降の最初
の年度末までの子一人につき、月額 5,000 円が加算される。
当該地域における民間の賃金水準を基礎とし、当該地域における物価等を考慮し
て市長が定める地域に在勤する職員に支給する。当該地域に近接する地域のうち民
間の賃金水準及び物価等に関する事情が当該地域に準じる地域に所在する公署で市
長が定めるものに在勤する職員についても、同様とする。
地域手当の月額は、給料、扶養手当及び管理職手当の月額の合計額に 100 分の 18
を超えない範囲内で前項の市長が定める地域及び公署ごとに市長が定める割合を乗
じて得た額とする。
また、地域手当が支給されていた職員が異動した場合に、異動直後に在勤する地
域に係る地域手当の支給割合が異動前の支給割合に達しない場合、異動前の地域手
当が異動後 1 年間は 100%、異動後 1 年超 2 年未満の期間は 80%が支給される。
126
名称
住居手当
通勤手当
時間外勤務手
当
休日勤務手当
夜間勤務手当
管理職特別勤
務手当
期末手当
勤勉手当
松山市職員給与条例における規定内容等
〈借家居住者〉
①家賃 23,000 円以下 家賃額-12,000 円
②家賃 23,000 円超 55,000 円未満
(家賃額-23,000 円)/2+11,000 円
③家賃 55,000 円以上 27,000 円(支給限度額)
〈持家居住者〉
4,500 円
通勤のため、交通機関等を利用している職員又は自動車等を使用している職員等
に支給
〈交通機関使用者〉
最長 6 カ月の定期券等の価額に相当する額を一括支給
(1 箇月当たりの支給限度額 55,000 円)
〈交通用具使用者〉
片道 1 ㎞以上 3 ㎞未満
2,300 円
~
片道 40 ㎞以上
20,900 円
時間外勤務 1 時間に対して、1 時間当たりの給与額に下記の区分に応じそれぞれ
100 分の 125 から 100 分の 150 までの範囲内で市長が規則で定める割合(その勤務
が午後 10 時から翌日の午前 5 時までの間である場合は,その割合に 100 分の 25 を
加算した割合)を乗じた額
① 正規の勤務時間が割り振られた日における勤務
100 分の 125
② ①以外の勤務
100 分の 150
祝日法による休日等及び年末年始の休日において正規の勤務時間中に勤務した時
間に対して、1時間当たりの給与額に 100 分の 135 を乗じた額
正規の勤務時間として午後 10 時から午前 5 時までの間に勤務した時間に対して、
1時間当たりの給与額に 100 分の 25 を乗じて得た額
管理職手当を支給される職員が臨時又は緊急の必要その他の公務の運営の必要に
より週休日又は休日等に勤務した場合に支給。
勤務1回につき 4,000 円~12,000 円を超えない範囲内において支給。ただし、6
時間を超える場合は加算。
期末手当は、6 月 1 日及び 12 月 1 日にそれぞれ在職する職員に対して支給する。
期末手当の額は、期末手当基礎額に、6 月に支給する場合においては 100 分の
122.5、12 月に支給する場合においては 100 分の 137.5 を乗じて得た額とする。期
末手当基礎額とは、給料、扶養手当及び地域手当の月額合計並びに役職加算額であ
る。
勤勉手当は、6 月 1 日及び 12 月 1 日にそれぞれ在職する職員に対し、その者の基
準日(6 月 1 日及び 12 月 1 日)以前における直近の人事考課の結果及び基準日以前
6 箇月以内の期間における勤務の状況に応じて支給する。
勤勉手当の額は、勤勉手当基礎額に市長が規則で定める割合を乗じて得た額とす
る。勤勉手当基礎額は、給料及び地域手当の月額合計並びに役職加算額である。
127
抽出したサンプル 10 名についての監査手続及び監査結果は以下のとおり
である。
(ア) 管理職手当
該当者 1 名について、管理職手当について、「管理職手当決定通知書(市
長発令)
」と照合し、合致していることを確認した。
(イ) 特殊勤務手当
特殊勤務手当については、毎年度当初に総務部人事課長の支給許可を受け
たうえで、「特殊勤務命令報告書」に基づき支給される。具体的な支給手続
きは、出動した際の小隊毎の「活動報告書」に基づき、小隊長等が「特殊勤
務命令報告書」を作成し、署長・副署長の承認を得て、支給される。
該当者 5 名について、
「活動報告書」及び「特殊勤務命令報告書」に所属
長の承認があることを確認するとともに、各勤務時間または出動回数の計算
と手当金額の計算が正しいことを確認した。また、「特殊勤務命令報告書」
上の勤務は出勤簿と整合していた。
(ウ) 扶養手当
扶養手当については、職員本人からの「扶養親族認定申請書」に基づいて
支給される。申請の手続きは、総務課人事担当が証明書類等の確認等を通し
て合理性を確認した後、総務課長の決裁を受けて、松山市の給与システムに
登録する。登録されたデータは、入力元データに基づいて入力チェックされ
るとともに、登録または変更すべきデータ一覧を作成し、網羅的に入力され
ているかのチェックが行われている。
該当者 7 名について、それぞれの帳票を閲覧し、適切に計算、支給されて
いることを確認したが、抽出したサンプルのうち 1 名の「扶養親族認定申請
書」において、本人の失念により、扶養手当の要件を欠く事実が発生してか
ら申請までに 40 日経過しているケース(平成 23 年度事実発生)と 50 日経
過しているケース(平成 20 年度事実発生)が見受けられた。この結果、扶
養手当を各々1 カ月分及び 2 カ月分遡って修正している。
【指摘⑦】
松山市職員給与条例第 18 条において、職員は扶養手当に係る事実の異動
があった場合、直ちに届け出ることとされているため、消防局においては
総務課長通知により常日頃から注意喚起も行われている。しかしながら、
本人の失念により、修正の必要がある事例も発生していることから、職員
に対する更なる注意喚起が求められる。
128
(エ) 住居手当
住居手当については、職員本人からの「住居届」の提出と所属長の確認を
必要とする。総務課担当者は、住民票、持ち家の場合は登記簿謄本、賃貸の
場合は契約書等を確認した上で、条例に照らして住居手当金額の計算を行い、
住居手当の金額と支給の開始時期等を記載する。総務課長の決裁を受けて給
与システムに登録される。登録されたデータは、入力元データに基づいて入
力チェックされるとともに、登録または変更すべきデータ一覧を作成し、網
羅的に入力されているかのチェックが行われている。
該当者 10 名について、それぞれの帳票を閲覧し、適切に計算、支給され
ていることを確認した。なお、抽出したサンプルのうち 1 名の平成 23 年 5
月分の住宅手当のシステム登録が給与支給に間に合わず、6 月に 2 か月分支
給されていた。
(オ) 通勤手当
通勤手当については、職員本人からの「通勤届」の提出と所属長の確認を
必要とする。総務課担当者は、都市政策課発行の松山市地図等についてキル
ビメーター等を用いて、または、インターネット上の地図等について電子的
方法を用いて通勤距離を別途確認し、距離と通勤手当の金額を計算したうえ
で、支給決定額と支給の開始日を記載する。総務課長の決裁を受けて給与シ
ステムに登録される。登録されたデータは、入力元データに基づいて入力チ
ェックされるとともに、登録または変更すべきデータ一覧を作成し、網羅的
に入力されているかのチェックが行われている。
該当者 10 名について、それぞれの帳票を確認し、適切に計算、支給され
ていることを確認した。
129
(カ) 地域手当
地域手当は、松山市以外の地域で勤務する場合に、当該地域の賃金や物価
水準を勘案して支給されることとされており、条例では上記の場合に加え、
例えば松山市から東京事務所へ人事異動(派遣)となり地域手当の支給を受
けていた職員が、派遣を解かれ地域手当の無い松山市へ人事異動(復帰)し
た後にも 2 年間支給されるように規定されている。
地域手当の本来の目的は、松山市以外の地域で勤務する場合で、当該地域
の賃金や物価水準が松山市を上回る場合に補填として支給されるものと理
解するが、松山市に人事異動(復帰)した後にも 2 年間支給される。この点
については、国家公務員制度においても同様に地域手当としての支給が行わ
れており、「諸手当質疑応答集」にも「円滑な異動及び適切な人材配置を確
保するため、その職員が受けていた地域手当の支給を一定期間保障すること
が適当と考えられるところであり、このような事情を考慮して、異動保障の
制度が設けられている。
」との解説がある。
該当者 1 名について、東京での勤務の事実を確認し、松山市へ人事異動と
なってから 2 年以内であること及び支給金額が正しいことを確認した。
(キ) 時間外勤務手当、休日勤務手当及び夜間勤務手当
時間外勤務手当、休日勤務手当及び夜間勤務手当については「時間外・休
日等勤務命令書」にて、所属長の命令に基づき勤務し、実際の勤務時間数を
小隊長等が承認する。これに基づき各消防署の庶務が勤務時間をチェック、
集計し、所属長の決裁を受けたうえで、総務管理システムに実績入力され、
各手当が支給される。
該当者 9 名について、所属長の決裁があることを確認するとともに、各勤
務時間の計算と手当金額の計算が正しいことを確認した。
130
休日勤務手当及び夜間勤務手当が正規の勤務時間であるのに対して、時間
外勤務手当は正規の勤務時間以外の時間に勤務した場合の手当であるため、
時間外手当は業務の効率化や適正な配分によって削減できる余地があるも
のと考えられることから、時間外勤務手当を以下のとおり分析した。
まず、職員 1 人当たり平均支給年額であるが、下表のとおりである。松山
市職員全体の数値は、松山市HPで公表されている「平成 23 年度 松山市
の給与・定員管理等」に記載された平成 22 年度決算の数値によっている。
消防局の平均支給年額は、平成 23 年 4 月から平成 24 年 3 月に支給されたも
ので計算している。
(千円)
職員 1 人当たり平均支給年額
松山市全職員
335 千円
うち消防職員
354 千円
上表のとおり、松山市全職員と消防職員の職員 1 人当たり平均支給年額は
大きな乖離はない。
次に、個人別の平成 23 年 4 月から平成 24 年 3 月に支給した給与データよ
り、時間外勤務手当が月額 20 万円超のケースを抽出し、該当職員の年間の時
間外勤務手当を集計し、分析した。
この結果、該当職員は 12 名存在し、該当職員 1 人当たりの時間外勤務手当
支給年額は、1,078 千円から 2,285 千円であり、上表の 1 人当たり平均支給
年額を大きく上回っている。該当職員の所属部署は、防災対策課が 7 名、総
務課人事担当が 2 名、総務課企画財務担当が 2 名、警防課が 1 名である。
防災対策課は、平成 23 年 3 月に東日本大震災の災害支援業務やその後の防
災活動の増加により、時間外勤務が一時的に多い月が発生した。なお、防災
対策課は平成 23 年 11 月に市長部局に移管し、総合政策部危機管理担当部長
付となった。
総務課人事担当では、毎年 4 月の人事異動にかかる業務が 3 月に発生し、
一時的に時間外勤務が増加する。業務が集中する時期は限定的であり増員等
の必要はないとのことである。
総務課企画財務担当では、9 月、10 月に時間外勤務が増加しているが、9
月は市議会における答弁書の取りまとめ部署であること、10 月は平成 23 年
度に限り松山で全国消防長会役員会が開催された事による準備業務が発生し
たこと及び決算書作成の取りまとめ部署であることによるものである。業務
が集中する時期は限定的であり増員等の必要はないとのことである。
警防課では、東日本大震災を受けて、緊急消防援助隊の派遣準備業務が発
生し、一時的に時間外勤務が増加した。特殊な事情によるものであり増員等
の必要はないと考える。
131
さらに、各課における業務量の偏りがないかを検討するために、毎日勤務
である総務課、予防課及び警防課の 3 課について、平成 23 年度における年間
時間外勤務時間を集計した。なお、週休日の振替勤務を行った時間について
は課内で吸収できていると考え、集計から控除している。また、時間外勤務
手当が発生する職員の人員数で除した 1 人当たり時間外勤務時間(振替勤務
時間を除く)も計算した。
人員
年間時間外勤務時間
課
(人)
(時間)
総務課
12
4,956
予防課
12
2,616
警防課
9
3,216
1 人当たり時間外勤務時間
(時間)
413
218
357
予防課では 1 人当たり時間外勤務時間が年間で 218 時間であるのに対し、
総務課では 413 時間と課によって大きな差がある。
より詳細にみると、平成 23 年度における当該 3 課の課別月別の時間外勤務
時間は次のとおりであった。なお、集計の都合上、振替勤務時間(年間 780
時間)及び休日勤務時間(年間 72 時間)も月別時間に含まれている。
【課別月別時間外勤務時間】
(単位:時間)
課
人員 4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
2月
3月
年度
総務課 12人
430
432
481
468
308
570
528
435
308
468
376
539
5,343
予防課 12人
231
212
168
206
211
196
308
235
210
272
233
222
2,704
警防課 9人
296
266
287
328
318
331
390
226
184
328
321
318
3,593
合計(注)
957
910
936 1,002
837 1,097 1,226
896
702 1,068
930 1,079 11,640
(注) 年度=時間外勤務時間(10,788時間)+振替勤務時間(780時間)+休日勤務時間(72時間)である。
(単位:時間)
600
500
400
総務課
300
予防課
警防課
200
100
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
上表及びグラフより、時間外勤務時間の月ごとの波は 3 課において同様で
あるが、ほぼ全ての月において総務課の時間外勤務時間が他の課を超えてい
る。
132
以上の考察から、総務課については、常時、他の部署と比較し業務量が多
いのではないかと推測される。総務課については人員を増員するなどの対応
も検討の余地があると考える。
【意見⑧】
消防局 3 課(総務課、予防課及び警防課)の 1 人当たり時間外勤務時間
を分析したところ、総務課が相対的に多くなっている。業務の適正配分も
しくは人員の適正配置により、時間外勤務を削減する余地があると考えら
れる。
(ク) 管理職特別勤務手当
管理職特別勤務手当については、平成 22 年度において、東日本大震災発
生に伴う緊急消防援助隊の派遣により 6 千円発生した。
(ケ) 期末手当
期末手当については、
「松山市職員給与条例」により、平成 23 年度は 6 月
と 12 月合計で期末手当基礎額(給料、扶養手当及び地域手当の月額合計並
びに役職加算額)の 2.60 カ月分を支給することとされており、そのうち 6
月には 1.225 カ月分が支給される。
なお、役職加算額とは、給料及び地域手当の月額合計に職階に応じた一定
率(上限 20%)を乗じた金額である。ただし、地域手当のうち、松山市から
他地域に転勤し松山市へ帰任した後の金額は期末手当の基礎額に含めない。
該当者 10 名に係る平成 23 年 6 月支給分について、期末手当が条例及び規
則に基づいて適切に計算、支給されていることを確認した。
(コ) 勤勉手当
勤勉手当については、「松山市職員給与条例」により、それぞれの職員の
直近の人事考課の結果と基準日(6 月の勤勉手当においては 6 月 1 日、12 月
の勤勉手当においては 12 月 1 日)以前 6 カ月以内の勤務状況に応じて金額
が決定され、支給される。具体的には、勤勉手当基礎額(給料及び地域手当
の月額合計並びに役職加算額)に成績率を乗じて計算される。成績率は、職
員の監督者による勤務評価に基づき任命権者が定める。
該当者 10 名に係る平成 23 年 6 月支給分について、勤勉手当が条例及び規
則、成績率に基づいて適切に計算、支給されていることを確認した。
133
また、職員(再任用職員は除く)の勤勉手当の支給総額の上限は、6 月支
給及び 12 月支給のそれぞれの勤勉手当について、各職員の基準額に 0.675
を乗じて得た金額の総額とされている。
勤勉手当は職員ごとに成績率が異なることから、必ずしも支給総額が上限
内に収まるとは考えられないため、上限のコントロールの方法を質問した。
担当者の説明によれば、
『
「期末手当及び勤勉手当の支給等に関する規則」で
は、評価が中程度の職員(「勤務成績が良好な職員及び基準日以前における
直近の人事考課の結果がない職員」
)の成績率を 100 分の 64.5 としており、
中程度の職員の成績率を支給割合の上限率より 0.03 低く設定している。ま
た、中程度よりプラスの考課とする職員数を全職員の 3 割以内にすることと
されている。これで、勤勉手当の支給総額の上限を超えないようにコントロ
ールできると想定されている。
』とのことであった。
そこで、実際に消防職員の平成 23 年度の勤勉手当の支給割合の実績率が
どのようになっているのか検討した。その結果、消防職員の平成 23 年度の 6
月と 12 月の勤勉手当の支給割合実績率はそれぞれ 0.660 と 0.673 であり、
双方とも上限の 0.675 を下回っていることを確認した。
なお、成績率については、
「期末手当及び勤勉手当の支給等に関する規則」
では、中程度の評価は 0.645 であるのに対し、上限を 1.35 として様々な評
価を可能にしている。しかし、実際の運用は、プラス評価の職員の成績率は、
平成 23 年度の場合、6 月、12 月ともに 0.765 と全て一律となっている。こ
れは松山市全職員も同様である。
【意見⑨】
勤務成績を幅広く評価できる規則があるものの、実際の運用は硬直的で
あり、プラス評価については一律の評価率となっている。職員の貢献度に
応じた柔軟な成績率の設定を行うことにより、さらに職員のモチベーショ
ン向上が期待できるのではないかと考える。
③ 控除項目
該当者 10 名に係る平成 23 年 6 月給与及び 6 月期末手当・勤勉手当から控
除された項目(源泉所得税・住民税、共済掛金等)について、根拠資料と照
合し、控除項目の金額が妥当であることを確認した。
④ 給与支給額
該当者 10 名に係る平成 23 年 6 月給与及び 6 月期末手当・勤勉手当につい
て、給与及び各手当の合計から控除項目の合計額を控除した金額が適切に計
算されていること、また、各職員に適切に支払われていることを確認した。
134
(ⅳ)退職金計算に係る経理処理の検証
<1>監査手続
退職金の計算は松山市の退職金計算システムにて自動で計算され、「退職金
手当計算書」として出力される。
消防職員の退職金計算について、平成 23 年度に退職した 20 名から任意に 2
名分をサンプルとして抽出し、退職金計算が適切に行われているか検討した。
具体的には、
「任免簿」にて退職日、退職時の職名(昇格後)を確認した。
「退
職金手当計算書」上の計算過程が正しく、退職金が適切に計算されていること
を検討した。控除項目については、根拠資料と照合した。退職金の支給につい
ては、松山市退職者全体の「支出負担行為兼支出命令書」、
「口座振替指令書」
等で確認した。
<2>監査結果
抽出した平成 23 年度支給退職金 2 名分については、適切に計算されていた。
135
(ⅴ)人員配置について
<1>概要
Ⅰ.総論において、
「消防職員の配置状況」
、
「消防職員数の推移」、
「消防職員の
年齢別内訳」
、
「消防職員の他自治体との比較」及び「消防職員の整備指針との比
較」を掲げたが、ここでは、さらに将来の適正な人員配置の観点から、直間比率
分析、年齢別構成分析を行い、女性職員の活用について検討する。
<2>他市との比較による直間比率分析
消防局のうち、災害出動や救急出動に直接携わる部門を直接部門、それ以外の
本部及び管理部門を間接部門とし、間接人員比率等を他の中核都市と比較し、下
表にまとめた。
内容
NO
単位
①
消防局長等(正監・監)
人
②
総務課
人
③ 消防本部 予防課(危険物保安課、防災課)
人
④ (間接部門) 警防課
人
⑤
通信指令課
人
⑥
(間接部門)計
人
⑦
消防署職員(下記⑧以外)
人
消防署
⑧
平成24年4月入所職員
人
(直接部門)
⑨
(直接部門)計
人
⑩ 消防職員合計
人
⑪ 人口
人
⑫ 間接人員比率 (⑥/⑩)
%
⑬ 間接人員比率(⑤通信指令課を除く) (⑥-⑤/⑩) %
⑭ 消防職員(間接部門)1人当たりの人口(⑪/⑥)
人
⑮ 消防職員(直接部門)1人当たりの人口(⑪/⑨)
人
⑯ 消防職員一人当たりの人口 (⑪/⑩)
人
松山市
3
17
13
11
20
64
365
18
383
447
514,808
14.3%
9.8%
8,044
1,344
1,152
(平成24年4月1日現在)
宇都宮市 長崎市 倉敷市 大分市 金沢市 高松市 高知市 徳島市
2
3
3
2
4
3
5
2
21
9
15
14
16
18
7
12
12
21
22
14
12
20
14
10
15
10
8
13
15
9
19
10
22
21
20
21
19
25
22
17
72
64
68
64
66
75
67
51
375
410
379
396
327
377
264
193
10
25
17
10
17
19
12
9
385
435
396
406
344
396
276
202
457
499
464
470
410
471
343
253
512,470 511,179 506,177 475,788 461,873 480,981 337,871 262,919
15.8%
12.8%
14.7%
13.6%
16.1%
15.9%
19.5%
20.2%
10.9%
8.6%
10.3%
9.1%
11.5%
10.6%
13.1%
13.4%
7,118
7,987
7,444
7,434
6,998
6,413
5,043
5,155
1,331
1,175
1,278
1,172
1,343
1,215
1,224
1,302
1,121
1,024
1,091
1,012
1,127
1,021
985
1,039
上表の情報は各市の平成 23 年版消防年報と各市への調査により入手し、消防
年報の情報を下記のように一部調整した。
他機関への出向者や派遣職員、非常勤職員及び臨時職員は含まない。再任用職
員は含むが、松山市消防局においては平成 24 年 4 月 1 日現在、再任用職員は不
在である。倉敷市では、通信指令課が独立しておらず警防課がその業務を担って
いるが、警防課のうち通信指令業務を担う 20 名を警防課から控除し、通信指令
課として表示した。高松市の消防防災課は、松山市における警防課と同様の任務
を担っているため、警防課と表示している。平成 24 年 4 月 1 日採用の職員につ
いては、採用年度の半年間は消防学校に入校することとなっており、これらの所
属は、長崎市と倉敷市においては各消防署付であるが、その他の市については総
務課付である。半年間の入校後は通常消防署勤務となり直接部門に該当するため、
各市において採用職員を抽出し直接部門として再集計している。なお、人口は、
消防受託のある市においては、消防受託町の人口を含んでいる。
上表でみると、
松山市の間接人員比率⑫は 14.3%であり、
比較都市平均値 16.1%
より若干低い。また、通信指令課を間接部門から除いた間接人員比率⑬も 9.8%
であり、比較都市平均値 11.0%より若干低い。消防職員(間接部門)1 人当たり
136
の人口⑭は 8,044 人であり、比較都市平均値の 6,699 人より 20%程度多く、最も
多い。ただし、間接人員比率は、間接部門の人員数のみならず直接部門の人員数
に影響されるため、直接部門の人員を比較都市と比較してみたところ、消防職員
(直接部門)1 人当たりの人口⑮は 1,344 人であり、比較都市平均値 1,255 人よ
り 7%多く、最も多い。
以上の考察から、松山市消防職員は、職員 1 人当たりの人口で捉えると、間接
部門においても直接部門においても比較都市の中で最も多くの住民に奉仕して
いるといえる。また、直接部門が過剰ではない状態で間接人員比率が比較都市平
均値より低くなっており、松山市消防局の間接部門は管理業務や事務業務を効率
的に行っていることがうかがえる。
137
<3>年齢別構成分析
消防職員の年齢別構成の推移は、下表のとおりである。
年齢
18~19歳
20~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
合計
平均年齢
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
歳
平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4
3
2
3
4
4
3
1%
1%
0%
1%
1%
1%
1%
103
104
114
118
116
124
122
23%
23%
25%
26%
26%
27%
28%
167
165
169
168
166
152
144
38%
37%
37%
37%
37%
33%
32%
69
73
79
84
92
101
121
16%
16%
17%
18%
20%
22%
27%
100
101
90
84
76
75
57
23%
23%
20%
18%
17%
16%
13%
443
446
454
457
454
456
447
38.0
38.2
37.9
37.6
38.0
37.7
37.1
(注)各年の消防年報により監査人が作成したものである。
平成 24 年 4 月 1 日時点においては、50 歳代の職員割合が 13%であるのに対
し、40 歳代が 27%、30 歳代が 32%、20 歳代が 28%と 50 歳未満の年齢層が多い
ことがわかる。
40 歳代は、平成 2 年度の週休二日制導入に伴う定数増加により当時の採用人
数(22 名)を増やしたこと等が影響している。30 歳代は、平成 5 年度の西署
新設に伴う定数増加により当時の採用人数(48 名)を大幅に増やしたこと等が
影響している。20 歳代は、団塊世代の退職に伴う近年の採用人数増加により多
くなっている。すなわち、定数増加や退職者が発生した場合には、定数確保の
ため一時的に採用人数を増加することによって、年齢構成に偏りが生じた。ま
た、一度偏りが生じると、その世代が退職した時に同数の採用を行うため、偏
りの波は一定の周期で永遠に継続して発生する。
将来も実員数に増減はなく退職者がでればその人数だけ 20 歳代の採用を行
うという単純な仮定を便宜上設けると、10 年後はそれぞれ 30 歳代が 28%、40
歳代が 32%、50 歳代が 27%となることが想定され、その結果、40 歳代と 50
歳代の合計が 59%を占めることとなる。同様に、20 年後を想定した場合も、40
歳代と 50 歳代の合計が 60%を占めることとなる。現状、40 歳代と 50 歳代の合
計が 40%であるのと比べると、かなり高齢化が進み、しかもその状態が長期間
に及ぶことになる。消防職員の職場環境は 24 時間即応体制や火災、救助、救
急現場での作業等体力を要する現場も多いことから、消防職員の高齢化は深刻
である。また、上命下服(上意下達)を明示し組織の統一性を確保するために
厳格な階級制度がある消防局については、職員の年齢が分散していることが望
ましい。消防局では、年齢の偏りに対する対応策として、中期的な採用を心が
け、また上級職採用の年齢要件を 22 歳~32 歳に広げているとのことである。
138
<4>女性職員の活用
松山市では平成 6 年度より女性職員の採用を開始した。平成 18 年度から平
成 23 年度までの女性比率は下表のとおりである。
職員合計
うち
女性職員
人数
人数
割合
平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
443
446
454
457
454
456
447
8
8
10
12
12
13
14
1.8%
1.8%
2.2%
2.6%
2.6%
2.9%
3.1%
上表によると、平成 18 年度以降、女性職員の人数及び全消防職員に対する
人員割合は確実に増加している。平成 23 年版消防白書によると、平成 23 年 4
月 1 日現在の全国における消防職員数 159,354 名のうち女性消防職員は 3,806
名で、その割合は 2.4%であるが、松山市では消防職員数 447 名のうち女性消
防職員数は 14 名で、その割合は 3.1%と全国平均値を上回っている。
平成 6 年度以降の年度別女性職員採用人数(そのうち、平成 24 年 4 月 1 日
現在で在職している者及び平成 24 年 4 月 1 日現在までに退職した者の人数を
含む。)は、下表のとおりである。
採用年度
平成6年度
平成7年度
平成8~15年度
平成16年度
平成17年度
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
合計
採用人数
2
2
0
1
4
2
0
2
2
1
1
1
18
在職人数
退職人数
(H24.4)
1
1
1
1
0
0
0
1
4
0
1
1
0
0
2
0
2
0
1
0
1
0
1
0
14
4
女性職員の採用については、平成 6 年に労働基準法の一部が改正され、女性
の深夜業務への従事制限が解除されたことにより、平成 6 年度から女性職員の
採用が開始された。しかし、平成 8 年度以降平成 15 年度まで女性職員の採用
実績は無くなっていたが、平成 16 年 2 月 6 日付け消防消第 32 号通知をきっか
けに、平成 16 年度より採用が再開している。同通知では、主に次の 3 点が示
されている。
139
① 採用における平等な受験機会を提供すること。受験者を募集する時点において、
男女別の採用予定人数を示すことは適当でないこと。
② 労働基準法第 64 条の 3 第 2 項及びこれに基づく厚生労働省令(女子労働基準
規則)において、重量物を取り扱う業務、有毒ガスを発散する場所における業
務等が、女性の妊娠又は出産に係る機能に有害であるとして、女性一般の就業
が制限されているが、この就業制限を理由として、警防業務・職域のすべてか
ら排除することは適当でなく、職域制限について合理的に解し、女性消防職員
の職域の拡大が図られるよう、積極的な取組が求められること。
③ 女性消防職員の就業に必要な施設等(例えば、女性用の仮眠室、女性トイレ等)
について、採用の動向・推移を考慮の上、計画的な整備を図ることが望ましい
こと。
松山市においても、平成 16 年度より募集要項に男女の区別が行われなくな
り、実際に女性職員の採用実績も復活している。女性職員も基本的に男性職員
と同様、消防、救急等警防業務に携わり、交替制勤務も行っている。また、女
性消防職員の採用に伴い、女性用仮眠室や女性用トイレ等を設置している。女
性職員の声を伺ったところ、松山市消防局の設備は他市に比べて恵まれている
と感じており、施設の整備状況は良好であると考える。
平成 24 年 4 月 1 日現在、平成 6 年度からの採用人数は 18 名で、そのうち 4
名が退職し、14 名が在籍している。また、在職者の平均勤務年数は 6.1 年、退
職者の平均勤務年数は 1.6 年である。退職者の平均勤務年数は短い一方、在職
者については平成 6 年度、平成 7 年度に採用された職員も含まれていること、
平成 16 年度以降に採用された多くの女性職員が在籍していることから、女性
職員の定着度合いは良好と考える。
140
次に、女性消防職員の配置状況をみるために、前掲した<松山市の消防職員
の配置状況>を再掲する。
(単位:名)
区分
局
合計
長
1
正監
監
司令長
司令
司令補
士長
副士長
士
1
企画官
2
消
総務課
35
(3)
3
2
4
2
6
防
予防課
13
(1)
1
2
4
3
2
局
警防課
11
2
2
3
3
1
通信指令課
20
(2)
1
3
3
8
4
(2)
1
計
82
(6)
2
7
9
14
16
13
(4)
20
(2)
署
51
(2)
1
1
2
15
21
5
(1)
城北支署
21
(2)
3
3
10
3
(1)
2
(1)
北条支署
32
3
6
15
8
(1)
7
(2)
(1)
本
中
央
署
本
2
1
計
104
(4)
1
1
8
24
46
署
52
(1)
1
1
(1)
(1)
(2)
6
17
18
(1)
1
(1)
3
15
12
14
6
東
城東支署
36
4
6
11
12
3
署
湯山出張所
10
1
2
1
3
3
本
計
98
署
51
南
東部支署
22
署
久谷出張所
10
本
西
署
計
83
署
60
(1)
20
(2)
80
(3)
447
(14)
西部支署
計
合
(1)
計
1
1
1
8
23
24
29
12
1
1
4
13
18
8
6
3
4
6
4
5
2
1
2
3
2
1
1
9
18
26
15
13
1
1
2
20
17
12
7
3
4
7
(1)
(1)
3
(1)
3
(1)
1
1
5
24
24
(1)
15
(1)
10
(1)
6
11
39
103
136
(2)
89
(6)
62
(6)
(注)1.派遣出向職員等(8 名)は、含まない。
2.
( )内は女性消防職員数。
3.
「平成 23 年版 消防年報」から抜粋。
配置部署別、階級別の表示であるが、女性職員数は括弧内の数値である。な
お、総務課のうち 1 名は消防学校に入校しており、平成 24 年 10 月より中央署
の消防業務に従事している。女性職員 14 名のうち、従事内容ごとの人数は、
消防局においては、総務課が 2 名、予防課が 1 名、通信指令課が 2 名、消防学
校入校が 1 名、各消防署では、消防業務が 1 名、救急業務が 4 名、事務業務が
3 名である。勤務体制については、総務課、予防課、消防学校、消防署事務の
7 名が毎日勤務、通信指令課、消防業務、救急業務の 7 名が交替制勤務である。
141
女性職員については、妊娠、出産で一時的に通常勤務が困難な時期に直面す
る場合があり、消防局の業務は特に交替制勤務であることや消防・救急のよう
に身体への負担が大きい任務を負うこと等から、特に配慮が必要である。松山
市においては、交替制勤務である通信指令課、消防業務、救急業務に従事する
女性職員の妊娠、出産の場合は、女性職員本人の希望に基づいて、毎日勤務へ
の異動等の配慮を行っている。実際、出産後の女性職員はすべて毎日勤務とな
っている。松山市消防局が現場復帰の道を選択肢として認めていないわけでは
ないため、育児等個々の家庭の事情により、今のところ毎日勤務を希望する職
員が多いものと考えられる。
救急業務等の現場業務に経験を積んだ女性職員が配置されることは、一般的
に市民(特に女性)からの要望が多いと考えられるところであり、また、女性
職員の中にも救急救命士の資格保有者がおりその資格を有効に活用するため
にも、出産した後に交替制勤務の職種へ復帰する女性職員が現れることを期待
したい。
女性職員の階級別状況をみると、平成 24 年 4 月 1 日現在の女性職員で最も
上位の階級は消防士長であり、女性職員は消防士長以下、消防副士長、消防士
として業務に従事している。消防士長とは初級幹部であり、主任を務める。消
防副士長及び消防士は担当員を務める。現在、初級幹部である消防士長まで順
調に昇任している女性職員もおり、男女別に職員の年齢と階級を表示している
資料からも女性職員と男性職員に大きな相違はないとみられる。
142
(3)非常備消防に係る人件費
非常備消防に係る人件費としてここで取り扱うのは、報酬(消防団員報酬)と報
償費のうち退職報償費を取り扱う。退職報償負担金、公務災害補償負担金、福祉共
済制度負担金及び災害補償費は、後述する「3.その他の支出及び契約事務」で取
扱う。
非常備消防に係る人件費の直近 3 年間の推移は、下表のとおりである。
区分
平成21年度
① 報酬
② 退職報償費
③ その他支出
非常備人件費 合計
127,187
29,657
57,642
214,486
平成22年度
150,499
31,964
52,468
234,932
平成23年度
140,941
45,782
113,077
299,801
(単位:千円)
前年度比増減額
平成21年度と 平成22年度と
平成22年度
平成23年度
23,313
△ 9,558
2,307
13,818
△ 5,174
60,609
20,446
64,869
① 報酬
報酬の直近 3 年間の推移は、下表のとおりである。
区分
報酬
(単位:千円)
前年度比増減額
平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成21年度と 平成22年度と
平成22年度
平成23年度
127,187
150,499
140,941
23,313
△ 9,558
消防団員の報酬は、年報酬、出動報酬、海上消防活動報酬、自動車ポンプ管
理報酬、ポンプ管理報酬がある。
年報酬は、団員の階級に応じて年度ごとに支給される報酬である。機能別団
員のうち、郵政消防団員については、年報酬の受け取りを辞退されている。
出動報酬は、火災、水災等の防御活動のために出動した者のほか、訓練、挙
式、会議及び警備のために出動した者に費用弁償として支給される報酬である。
海上消防活動報酬は、島嶼部の海上における活動のために出動した者に出動
報酬とは別に支給される報酬である。
自動車ポンプ管理報酬とは消防自動車管理責任者に、ポンプ管理報酬とは手
引動力ポンプ管理責任者及び可搬動力ポンプ管理責任者に支給される報酬で
ある。
年報酬は 9 月と 3 月の 2 期に分割して支給されるが、その他の報酬は、毎月
支給されている。消防団の出動報酬、年報酬、退職報償金については、全て消
防団員本人の金融機関口座に振り込まれる。なお、報酬金額は条例に基づいて
満額支給されている。
143
報酬の推移を分析するために、報酬をさらに内容別に区分したものが下表で
ある。
区分
年報酬
出動報酬
自動車ポンプ管理報酬・
ポンプ管理報酬
海上消防活動報酬
報酬 合計
団員数(名)
消防出動件数(件)
(単位:千円)
前年度比増減額
平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成21年度と 平成22年度と
平成22年度
平成23年度
66,215
67,435
67,763
1,219
328
52,397
73,719
64,603
21,322
△ 9,116
8,575
8,575
8,575
-
-
-
127,187
2,248
185
770
150,499
2,311
219
-
140,941
2,335
161
770
23,313
63
34
-
△ 9,558
24
△ 58
上表をみると、
年報酬は団員数の増加に応じて、
平成 22 年度は前年度比 1,219
千円増加し、平成 23 年度は前年度比 328 千円増加している。
出動報酬は出動件数の増減に応じて、平成 22 年度は前年度比 21,322 千円増
加し、平成 23 年度は前年度比 9,116 千円減少している。出動件数の増減幅と
出動報酬の変動幅に乖離はあるが、これは、出動報酬には訓練等の出動も含ま
れ、また火災出動についても火災規模等の状況により、件数以外の要因で出動
人数が増減し出動報酬に影響を与えるためである。
自動車ポンプ管理報酬・ポンプ管理報酬は、ポンプの台数に変更がないため、
変動していない。
海上消防活動報酬は、該当する活動が発生した場合のみ支給されるため、平
成 22 年度のみの発生となっている。
次に、年報酬について他自治体との比較を行った。その結果が、下表である。
なお、金沢市については、消防年報に該当の情報がなかったため省略している。
年報酬 年額(円)
人員数(名)
部長以上
割合
団長
副団長 分団長 副分団長 部長
班長
団員 部長以上 その他 合計
松山市(注1)
169,500 107,500 84,800
54,700 43,000 32,700 26,500
235 2,110 2,345 (%)
10%
長崎市(注2)
82,500 69,000 50,500
45,500 38,000 37,000 36,500
425 2,364 2,789
15%
宇都宮市(注3,4) 185,000 117,000 85,000
61,000 56,000 41,000 38,000
321 1,791 2,112
15%
倉敷市(注5)
140,000 96,000 68,000
57,000 46,000 36,000 32,000
200 1,797 1,997
10%
大分市(注6)
189,800 134,000 65,300
45,800 36,600 28,500 26,700
280 1,966 2,246
12%
高松市
151,900 88,000 63,200
36,000 29,700 27,500 25,500
266 1,231 1,497
18%
高知市
139,000 93,000 66,000
39,500 32,500 31,500 30,500
147
669
816
18%
徳島市
100,000 86,000 66,000
43,000 34,000 33,000 32,000
113
535
648
17%
比較都市平均値
141,171 97,571 66,286
46,829 38,971 33,500 31,600
250 1,479 1,729
14%
(注)1.松山市の機能別団員は、8,800円以内で市長が定める額
郵政消防団員(時間外勤務の場合のみ)4,400円、大学生防災サポーター4,400円、事業所消防団員8,800円
2.長崎市においては部長と班長の間に副部長の階級があり、年報酬は37,500円
3.宇都宮市においては部長と班長の間に副部長の階級があり、年報酬は46,000円
4.宇都宮市においては機関員が存在し、年報酬は1,200円
5.倉敷市においては副団長と分団長の間に本部長の階級があり、年報酬は79,000円
6.大分市においては副団長と分団長の間に本部付分団長の階級があり、年報酬は88,200円
144
この比較によると、松山市の年報酬は、団長から部長までは比較都市平均値
より高く、班長・団員については比較都市平均値より低い。各階級の職務は都
市によりその範囲が異なり、消防団の単位当たり規模も様々であることから、
消防団員全体のうち団長から部長までの人員割合を算定すると、松山市は 10%
であるのに対して、比較都市平均値は 14%である。つまり、比較都市に比べて
消防団員全体に占める部長以上の団員数の割合が小さいためその職務負担が
大きいことから、部長以上の年報酬が比較都市よりも高いと考えられる。
また、「東日本大震災を踏まえた大規模災害時における消防団活動のあり方
等に関する検討会報告書」
(以下、
「消防団活動のあり方検討会報告書」という。)
によると、
平成 23 年度の年報酬の全国平均は、団長が 119,854 円、団員が 23,356
円とされており、松山市の方が、団長は 50 千円ほど高く、団員は 3 千円ほど
高い。
なお、地方交付税算入額は、団長が 82,500 円、団員が 36,500 円となってい
る。ただし、実際の地方交付税交付金額は、松山市の収入等により変動し、使
途は松山市全体の市政により決定されることから、あくまでも参考程度として
捉えるべきものである。
さらに、年報酬以外の報酬について、他自治体と比較を行った結果が下表で
ある。消防年報から情報収集できた都市のみ比較している。
出動報酬
松山市
長崎市
高松市
高知市
徳島市
4時間未満 3,000円
4時間以上 3,300円
災害、防御 4時間以内 5,700円、4時間超 11,400円
儀式・訓練等 5,700円
4時間以上火災水防 2,800円
4時間未満火災訓練等 2,400円
災害・警戒 5,800円
その他 3,700円
火災 3,500円
水防 3,500円
海上消防 自動車ポンプ ポンプ
活動報酬
管理報酬
管理報酬
5,000円
5,400円
3,900円
-
-
-
-
6,950円
3,050円
-
-
-
-
-
-
上表によると、5 都市の報酬金額は様々であり参考程度の比較となる。出動
報酬については、松山市は高松市についで低額である。一方、他市が災害と訓
練を区分して報酬金額を変えているのに対して、松山市では出動の内容に関わ
らず、時間の長短のみにより報酬金額を変えている。
【意見⑩】
出動について、災害や水防等にかかる出動は訓練等にかかる出動と比較し
て、精神的、肉体的負担に加え、負傷等のリスクも高まる。出動報酬につい
ては、これらを勘案して、災害等の出動報酬は訓練等の出動報酬と区分して、
報酬金額を設定されるのが合理的ではないかと考える。
145
② 退職報償費
退職報償費の直近 3 年間の推移は、下表のとおりである。
(単位:千円)
前年度比増減額
平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成21年度と 平成22年度と
平成22年度
平成23年度
29,657
31,964
45,782
2,307
13,818
区分
退職報償費
消防組織法(昭和 22 年法律第 226 号)第 25 条の規定に基づき、非常勤の消
防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で
定めるところにより退職報償金を支給することとされている。実務的には、
「消
防団員等公務災害補償等共済基金」(以下、「消防基金」という。)に加入し、
全団員にかかる退職報償負担金を支払い、歳出として計上する。団員が退団し
た時には、階級と勤務年数により消防基金で定められた退職報償金を支給し退
職報償費として歳出に計上した後、消防基金からの同額の支給を歳入として計
上する。なお、退職報償金の計算は、消防基金から支給されたソフトウエアで
自動計算している。前述のとおり、退職報償負担金は「3.その他の支出及び
契約事務」で取り扱う。退職報償金の金額は、市町村の条例により定められて
いる。
具体的な退職報償金支給額表は下表である。
階級
団長
副団長
分団長
副分団長
部長及び班長
団員
5年以上
10年以上
10年未満 15年未満
189,000
294,000
179,000
279,000
169,000
268,000
164,000
253,000
154,000
233,000
144,000
214,000
(単位:円)
勤務年数
15年以上 20年以上 25年以上 30年以上
20年未満 25年未満 30年未満
409,000
544,000
729,000 929,000
379,000
484,000
659,000 859,000
363,000
463,000
609,000 799,000
338,000
428,000
574,000 759,000
308,000
388,000
514,000 684,000
284,000
359,000
469,000 639,000
退職報償費の推移をみると、平成 22 年度は前年度比で 2,307 千円増加し、
平成 23 年度は前年度比で 13,818 千円増加している。退団員数が平成 21 年度
119 名、平成 22 年度 132 名、平成 23 年度 194 名と、平成 22 年度は前年度比で
13 名増加、平成 23 年度は前年度比で 62 名増加となっていることから、退職者
の増加により退職報償費の増加に繋がっているものと考える。
平成 21 年度から 3 年間の退職者の階級別勤務年数別の状況(消防年報)の
一部を集約したものが、下表である。
年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
3年合計
5年未満
38
47
66
151
5年以上 10年以上
10年未満 15年未満
11
14
18
14
37
19
66
47
(単位:名)
勤務年数
平均
15年以上 20年以上 25年以上 30年以上 退職人数 勤務年数
20年未満 25年未満 30年未満
15
18
15
8
119
14.4年
13
15
11
14
132
13.5年
20
12
21
19
194
12.5年
48
45
47
41
445
-
146
退職人数の増加を勤務年数で見てみると、
「5 年未満」と「5 年以上 10 年未
満」の区分が大きく増加している。ただし、
「5 年未満」については、大学生消
防団員が多数含まれており、平成 23 年度には大学生消防団員が 47 名含まれて
いる。それ以外の「5 年未満」勤務の退職団員と「5 年以上 10 年未満」勤務の
退職者の多くの階級は団員であり、短期間の消防団所属の後の退団である。
次に、消防分団別の入退団状況を検討した。その結果、平成 23 年度に 10 名
以上退団している分団は、A分団の 10 名とB分団の 14 名であった。
両分団の入退団状況は、下表のとおりである。
分団名
A分団
B分団
(単位:名)
平成23年4月1日 平成23年度 平成23年度 平成24年3月31日 平成24年4月1日 平成24年4月1日
現在
入団
退団
現在
入団
現在
130
1
10
121
13
134
38
5
14
29
0
29
A分団については、平成 23 年度に 1 名入団し 10 名退団しているものの、平
成 24 年 4 月 1 日付で 13 名入団しており、平成 24 年 4 月 1 日現在では平成 23
年 4 月 1 日現在と比較して、結果的に増員となっているため、分団の活動に支
障はないと考える。
一方、B分団については、平成 23 年度中に 5 名入団し、14 名退団したこと
から、平成 24 年 4 月 1 日現在では 29 名となっている。38 名から 9 名減少し
29 名となると、保有する 3 台の消防車両 1 台当たり、概ね 13 名から 4 名減少
した 9 名程度での活動となるため、万一、大規模な災害が発生した場合におけ
る活動人員としては少ないものと考えられる。なお、平成 24 年 12 月 1 日現在
では、B分団は 5 名増加した 34 名となっており、さらに地元分団で団員確保
に努めている最中であると伺っている。
147
(ⅰ)報酬計算及び支給に係る経理処理の検証
<1>監査手続
消防団員の報酬について、41 分団から任意に第 5 方面隊桑原分団をサンプル
として抽出し、適切に計算がなされ支給されているか検討した。
<2>監査結果
抽出したサンプルについて、消防団員の報酬は適切に計算され支給されてい
た。具体的な報酬の監査手続と監査結果は以下のとおりである。
① 年報酬
年報酬は、9 月と 3 月に分割して支給される。9 月の年報酬の支払いが適切
かどうか検討した。
9 月の年報酬に係る「支出負担行為兼支出命令書」と「消防団員年報酬(9
月分)支給総括表」を入手し、支給人数と支給金額が整合していることを確認
した。
そのうえで、第 5 方面隊の桑原分団について、「消防団員報酬支給表」と同
分団の階級別団員数の実態が整合していることを確認した。また、同分団の「支
払状況明細書(個人別)
」と「消防団員報酬支給表」、
「消防団員年報酬(9 月期
分)支払総括表」を入手し、支給人数と支給金額が整合していることを確認し
た。
② 自動車ポンプ管理報酬・ポンプ管理報酬
自動車ポンプ管理報酬及びポンプ管理報酬(以下、「ポンプ管理報酬等」と
いう。)は、9 月と 3 月に分割して支給される。9 月のポンプ管理報酬等の支払
いが適切かどうか検討した。
9 月のポンプ管理報酬等に係る「支出負担行為兼支出命令書」と「ポンプ管
理報酬支払先一覧表」を入手し、報酬金額の整合していることを確認した。ま
た、「ポンプ管理報酬支払先一覧表」の(ポンプ)自動車及びポンプの台数が
消防年報の台数と整合していることを確認するとともに、ポンプ管理報酬等が
ポンプ自動車及びポンプの台数に条例に則った自動車ポンプ管理報酬及びポ
ンプ管理報酬の単価を乗じた金額となっていることを確認した。
そのうえで、第 5 方面隊の桑原分団について、桑原分団の自動車ポンプ管理
者に対する自動車ポンプ管理報酬が適切に計算され支給されていることを確
認した。
148
③ 出動報酬
6 月の出動報酬の支払いが適切かどうか検討した。
平成 23 年 6 月度の出動集計表について、各分団から提出される「消防団員
出動人員報告書」全件と照合し、整合していることを確認した。また、出動集
計表の計算チェックを行い、平成 23 年 6 月度の出動集計表が正確に作成され
ていることを確認した。さらに、6 月度の出動報酬に係る「支出負担行為兼支
出命令書」を入手し、6 月度の出動集計表の出動件数合計に出動時間別の出動
報酬単価をそれぞれ乗じた金額が出動報酬として計算され、支給されているこ
とを確認した。
そのうえで、第 5 方面隊桑原分団における 6 月度の出動について、同分団の
「出動状況明細書(個人別)」と「消防団員出動人員報告書」、6 月度の出動集
計表を入手し、出動件数と支給金額が整合していることを確認した。また、同
分団の各団員について 6 月度の出動報酬が適切計算され、支給されていること
を確認した。
149
(ⅱ)退職報償金計算に係る経理処理の検証
<1>監査手続
消防団員の退職報償金の計算について、平成 23 年度に退職した団員より、
任意に副団長 4 名と分団長 1 名をサンプルとして抽出し、適切に計算がなされ
支給されているか検討した。
<2>監査結果
抽出した 5 名の退職報償金についてシステム帳票「個人別調書」を入手し、
記載されている請求額(退職報償金額)が、「松山市非常勤消防団員に係る退
職報償金の支給に関する条例」に則り、退職時の階級と勤務年数に基づいて適
切に計算されていることを確認した。また、「個人別調書」で計算された退職
報償金に係る「支出負担行為兼支出命令書」を確認した。さらに、退職団員か
らの「請求書」に基づいて、退職報償金が指定された振込口座に支払われてい
ることを確認した。
抽出した消防団員の退職報償金について、適切に計算され支給されていた。
150
(ⅲ)その他消防団に関連する状況等について
<1>概況
松山市では、全国的に消防団員が減少する中で、増加する自然災害等の大規
模災害に備えた郵政消防団員、大学生消防団員、事業所消防団員、島嶼部の消
防団員の高齢化に備えた島嶼部女性消防団員といった機能別消防団員や女性
分団の設置、定年の撤廃等、様々に新しい取り組みを行っている。これらの取
り組みにより、直近 3 年間の消防団員数は増加しており、高く評価できる。な
お、機能別消防団員については全国初の試みであり、同様の制度を取り入れる
他都市も出てきている。
<2>消防団員の処遇
松山市消防団員の処遇については、前述の報酬や退職報償金のほかに、下記
の①公務災害補償制度と、②福祉共済制度がある。なお、消防団員の資格取得
にかかる制度は特に設けられていない。
① 公務災害補償制度
消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で
定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しな
ければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休
業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度
が設けられ、消防基金と消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結してい
る。
② 福祉共済制度
日本消防協会が運営する福利厚生事業であり、公務内・外に関係なく、一
律の掛金で入会することにより、消防団員等が死亡又は障害を受けた場合、
その家族の生活を守る等、本人もしくはその家族に対し見舞金等が支払われ
ることで、消防団員等の福祉の増進を図っている。
<3>消防団員の装備
消防団員の装備について、「消防団活動のあり方検討会報告書」では、東日
本大震災の教訓をもとに、「まずは、団員の生命・身体を保護するため安全靴
に代表される基本装備の点検・整備が必要である。また、安全管理上、情報の
収集・伝達が特に重要であり、無線等双方向の通信機器の整備を進める必要が
ある。」と述べられているが、松山市の消防団では、安全靴は既に全団員に配
布されており、無線機は分団ごとに活動を行うため、分団長と消防車に配備さ
れている。また、消防庁から告示されている「消防団の装備の基準」に記載さ
れている装備については、松山市の消防団では配備しているとのことであり、
問題ない。
151
<4>消防団員に対する研修制度
「消防団活動のあり方検討会報告書」では、「無線や資機材などの装備は、
それを使いこなすための教育訓練が前提となる。消防団員の教育訓練について
は、消防学校の教育訓練の基準に基づき消防学校等により行われることとされ
ており、その充実が望まれる。
」とある。松山市においては、平成 23 年度に消
防団員に対して下表の研修を行っている。
研修内容
水防工法演習
規律・中継・無線訓練
ポンプ操法訓練
松山市総合防災訓練
各種防災訓練
幹部・新任団員教育訓練会
上級救命講習・応急手当指導員講習
自動二輪車教育訓練会
古典梯子訓練
救急・手話講習
女性消防団員・大学生防災サポーター研修会
参加延人数
46
3,486
3,296
192
235
241
122
14
378
539
161
ポンプ操法や無線訓練など、装備を使いこなすための訓練も実施され、多数
の消防団員が参加している。
研修への参加は、訓練出動として出動報酬が支給される。火災出動も含めた
出動状況を分団別にまとめたものが次ページの表である。
団本部と女性分団の 1 人当たりの訓練等の出動回数は、それぞれ 38 回と 22
回と他の分団と比較して、飛びぬけて多い。他の分団(機能別消防団員を除く)
については、1 人当たり訓練等の出動回数は 4 回から 13 回と様々である。機能
別消防団員の 1 人当たり訓練等の出動回数は、1 回から 3 回である。全消防団
の 1 人当たり訓練等の出動回数の平均は 8 回である。これは、3 か月に 2 回ほ
どの訓練ではあるが、消防団員は非常勤であり、本業をもたれたうえで活動さ
れていることから、現状の訓練回数でもやむを得ないと考える。
152
分団名
団本部
堀江
潮見
和気
久枝
三津浜
高浜
宮前
興居島
垣生
味生
生石
余土
雄郡
新玉
味酒
清水
石井
城東
素鵞
桑原
久米
小野
浮穴
荏原
坂本
湯山
五明
伊台
道後
北条
正岡
難波
浅海
立岩
河野
粟井
中島東
中島西
中島神和
中島睦野
ネッツ
味酒
フジ
大学生
団本部
郵政
女性団員
合計
団員数
訓練出動 火災出動 出動合計
(平成23年4月1日) (延人数) (延人数) (延人数)
12
52
45
45
38
30
40
32
72
44
40
45
47
22
32
19
23
54
32
36
40
55
69
40
52
60
71
29
45
38
83
50
61
45
58
63
51
130
122
107
54
10
9
106
31
96
2,335
460
488
230
430
154
206
466
399
652
192
219
398
432
281
297
110
121
365
347
329
238
502
539
388
305
235
397
161
499
229
682
235
292
339
429
401
350
1,064
769
689
411
20
28
247
37
2,125
18,187
120
99
18
149
77
55
56
111
54
45
168
106
55
26
22
59
30
93
164
75
155
147
66
36
145
105
58
7
43
29
25
0
84
45
0
0
0
124
90
52
17
6
0
0
0
0
2,816
153
580
587
248
579
231
261
522
510
706
237
387
504
487
307
319
169
151
458
511
404
393
649
605
424
450
340
455
168
542
258
707
235
376
384
429
401
350
1,188
859
741
428
26
28
247
37
2,125
21,003
一人当たり 一人当たり 一人当たり
出動のうち
出動回数
出動回数
出動回数
火災出動割合
(訓練)
(火災)
(合計)
38
10
48
21%
9
2
11
17%
5
0
6
7%
10
3
13
26%
4
2
6
33%
7
2
9
21%
12
1
13
11%
12
3
16
22%
9
1
10
8%
4
1
5
19%
5
4
10
43%
9
2
11
21%
9
1
10
11%
13
1
14
8%
9
1
10
7%
6
3
9
35%
5
1
7
20%
7
2
8
20%
11
5
16
32%
9
2
11
19%
6
4
10
39%
9
3
12
23%
8
1
9
11%
10
1
11
8%
6
3
9
32%
4
2
6
31%
6
1
6
13%
6
0
6
4%
11
1
12
8%
6
1
7
11%
8
0
9
4%
5
0
5
0%
5
1
6
22%
8
1
9
12%
7
0
7
0%
6
0
6
0%
7
0
7
0%
8
1
9
10%
6
1
7
10%
6
0
7
7%
8
0
8
4%
2
1
3
23%
3
0
3
0%
2
0
2
0%
1
0
1
0%
22
0
22
0%
8
1
9
13%
<5>出動報酬が発生していない団員
出動報酬の支給等のために、システムにて消防団員の活動状況を集計するこ
とはできるものの、実際にそれらを集計して各団員の活動状況を管理している
わけではない。そこで、監査人が平成 23 年度中に出動報酬が発生していない
団員の有無を調査したものが、下表である。
(単位:名)
分団名
団員数
年度中 平成23年度 平成23年度
(H23.4.1) 入団者数 出動報酬
出動報酬
差引
対象者
受給者
①
②
③=①+②
④
⑤=③-④
基本団員
機
能
別
団
員
比率
⑤÷③
2,179
79
2,258
2,174
84
3.7%
事業所消防団員
19
3
22
19
3
13.6%
大学生消防団員
106
13
119
67
52
43.7%
31
5
36
25
11
30.6%
156
21
177
111
66
37.3%
2,335
100
2,435
2,285
150
6.2%
郵政消防団員
計
団員合計
出動報酬支給対象基本団員 2,258 名のうち 84 名は平成 23 年度中に出動報酬
が発生していない団員であり、その比率は 3.7%であるが、基本団員は非公式の
会議や地域行事における警戒業務等の出動報酬が発生しない活動も行ってお
り、消防団活動に全く参加していないとは必ずしも言い切れない。
一方、出動報酬支給対象機能別団員 177 名のうち 66 名は平成 23 年度中に出
動報酬が発生していない団員であり、その比率は 37.3%である。高い数値を示
しているが、機能別団員は大規模災害時に活動することが主な任務とされてい
ることやその年報酬額は低廉またはゼロであることを考慮すると、やむを得な
いと思われる。
【意見⑪】
出動報酬支給対象基本団員 2,258 名のうち 84 名は平成 23 年度中に出動報
酬が発生していない団員であり、その比率は 3.7%であるが、基本団員は非公
式の会議や地域行事における警戒業務等の出動報酬が発生しない活動も行っ
ており、消防団活動に全く参加していないとは必ずしも言い切れない。
しかしながら、年報酬や装備が支給されていることから、まずは実態を把
握し、消防団活動に長期にわたって参加していない消防団員がいれば対応策
を検討する必要があると考える。
154
<6>赤バイ隊
松山市では、平成 14 年 4 月から赤バイ隊を編成している。赤バイ隊は、バ
イクを移動手段とする団本部所管の組織であり、現在、消防団から希望者を募
り、26 名で 5 台の赤バイ隊を編成している。
本来の目的は、二輪車特有の高い機動力が必要とされる山林火災等や震災等
の災害現場で活躍することであるが、実際には安全面の確保が困難であり活躍
機会が少なく、現状の活動は、防火・防災を呼び掛けるための広報活動が主で
ある。
<7>大学生消防団員の卒業後の消防団との関わり
消防局が作成した資料『「大学生防災サポーター」の消防団入団に関する経
緯と役割』では、大学生団員の設置の目的は、「…青年層にある大学生が、大
規模災害時の防災活動のサポート役として一翼を担うことにより、消防団員の
負担を軽減し、最前線の消防団活動を充実させるとともに、大学生自身が消防
や地域防災に興味や関心を持ち、卒業後は基本団員として地域消防団への入団
や、将来の防災の担い手となることも期待するものである。
」とある。
<8>消防分団の収支について
消防分団は資金を保有していないため、資金収支については管理の必要がな
い。
155
3.その他の支出及び契約事務
(1)概況
(ⅰ)概要
本市消防局に係る歳出の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
なお、人件費(給料・共済費・職員手当・賃金・報酬)及び備品購入費等(公
有財産購入費・備品購入費)については、「2.人件費」、「4.物品管理」及び
「5.公有財産管理」にて検証しているため、ここでは取り扱わない(以下同様)
。
(単位:千円)
節
平成 21 年度
委託料
平成 22 年度
平成 23 年度
153,011
151,682
139,885
795
997
1,810
18
36
27
工事請負費
243,675
94,949
114,623
災害補償費
3,664
1,830
2,900
使用料
27,421
24,836
23,766
需用費
220,479
242,160
272,699
負担金
149,652
135,338
192,854
報償費
30,309
32,825
46,431
役務費
46,494
50,514
44,920
8,650
10,138
7,963
原材料費
公課費
旅費
また、平成 23 年度の事業別決算額及び各事業の内容は下表のとおりである。
ただし、事業別決算額には、人件費及び備品購入費等を含めて記載している。
事業名
金額(千円)
事業内容
消防組織法第 25 条(非常勤消防団員に対する退職報
消防団員退職報償
事務
89,961
償金)及び松山市非常勤消防団員に係る退職報償金
の支給に関する条例に定められた退職報償金の支払
い。
消防局全般に作用する統括的管理事業であり、消防
消防局管理事務
79,685 車両用燃料や仮眠用寝具使用料、非常勤職員報酬な
ど。
156
事業名
金額(千円)
事業内容
デジタル防災行政無線システムを構築し、緊急地震
速報や津波警報などの緊急情報を住民に正確かつ迅
速に伝達し、市民の生命・財産を災害から守ること
松山市デジタル防
災行政無線整備事
65,782
業
を目的とする。

平成 22 年度は整備に係る基本計画及び実施設
計の委託業務を実施し、平成 23 年度から施設の
整備工事に着手する。

整備期間:平成 23 年~25 年
消防組織法第 24 条(非常勤消防団員に対する公務災
害補償)、消防法第 36 条の 3(災害補償)及び消防
消防団員等公務災
害補償事務
団員等公務災害補償条例に基づき、消防団員並びに
65,211 一般の消防作業等従事者が、消防防災業務等で負傷
した場合の損害補償を実施し、被災者又はその遺族
の生活の安定と福祉向上を図ることを目的とする。
※平成 23 年度は東日本大震災による追加掛金あり。
市民からの災害通報を受けて、消防隊・救急隊へ迅
速・的確な出動命令を行なうほか、災害・救急事案
の情報収集を効率的に行うことで、限られた消防力
通信指令業務
61,206
を最大限に発揮して、市民の生命・身体・財産を災
害等から保護することを目的とする。119番通報
に関する全般業務であり、主に適切な出動命令を行
うために必要な消防通信指令管制システム等の保守
点検に係る委託料である。
消防活動を実施する上で必要不可欠である消防水利
を設置するとともに、老朽化して危険性のある水利
消防水利整備事業
46,892
施設を撤去及び改修して維持管理することにより、
市民の安全確保を図る。主な歳出は、消防水利設置
及び維持管理に必要な設置工事負担金、維持管理負
担金である。
157
事業名
金額(千円)
事業内容
消防救急艇を常時運行可能な状態に維持管理するこ
とにより、島嶼部有人 9 島や沿岸域において、迅速
かつ的確な消防救急対応の実施を図る。(平成 21
消防救急艇維持管
理業務
43,131
年 10 月から本格運用を開始)
主な内容は、非常勤職員の報酬、保険料や消防救急
艇運行及び消防活動に係る燃料費と消耗品費のほ
か、年 2 回の定期ドック、年間を通じての点検整備
に係る修繕料である。
災害用備蓄物資整
備事業
情報通信施設機器
保全事業
地震等の大規模災害発生時に、被災者に対して食料
40,500 や飲料水、日用品、毛布等の物資を速やかに供給す
るため、必要物資を備蓄配備することを目的とする。
情報通信施設及び機器の維持管理等保全事業であ
32,516 る。平成 23 年度の主な内容は、車両動態位置管理装
置 FOMA 切替改修委託料である。
消防組織法第 16 条第 2 項(消防職員の服制に関する
事項)及び松山市消防吏員の服制に関する規程に基
職員被服貸与事務
31,098 づき、現場被服及び制服等を貸与することで、消防
現場活動隊員の安全性を確保するとともに、消防職
員としての服務規律向上を図る。
消防施設の改修事業である。平成 23 年度は地上デジ
消防施設営繕事業
28,257
タル放送完全移行に伴い、消防庁舎の影響による受
信障害(ビル陰)が解消され、既設のテレビ共同視
聴配線設備が不要となり撤去費用が生じた。
局・中央署維持管
理業務
21,384 消防局・中央消防署の維持管理経費である。
消防車両機械等の維持整備を実施し、常時運行可能
な状態にすることにより、迅速・的確な消防活動の
消防車両機械維持
整備業務
18,379
実施を図る。
主な内容は、消防車両の法定点検や車両資機材の修
理経費のほか、タイヤ、バッテリー等の消耗品費で
ある。
防災行政無線を維持管理して市民が災害に対して迅
防災無線管理業務
17,728 速な行動が取れるよう、情報伝達体制を充実強化し、
災害に強い都市づくりを行なうことを目的とする。
158
事業名
金額(千円)
事業内容
災害対策(警戒)本部等における被害情報の共有や、
防災情報管理業務
13,615 処理の迅速化並びに気象情報等の収集、伝達を目的
とする。
消防団ポンプ蔵置所は現在、市内に 112 ヶ所あり、
この内、昭和 56 年以前に建築された旧耐震基準に基
消防団ポンプ蔵置
所耐震化事業
づく施設は 39 ヶ所で、さらにこの内 20 ヶ所は 2 階
13,137 建のコンクリートブロック造のため耐震安全性が確
保されていない施設であることから、これら施設の
統廃合や新耐震基準を満たすポンプ蔵置所を建設す
る。(10 年計画)
西署維持管理業務
12,098 西署の維持管理経費である。
急病人や交通事故で怪我をした人を緊急に医療機関
などへ運ぶとともに、必要に応じて的確な応急処置
救急業務
11,975 を施す。
主な内容は、救急活動に必要な消耗品の購入、車載
携帯電話使用料、資機材保守点検の委託料である。
消防団員被服貸与
事務
消防団員が規律を維持し、消防団活動をするために
11,426 必要な被服を貸与し、消防団員の安全確保を図ると
ともに、団員の士気高揚を図る。
救急救命士を含む救急隊員が行う現場観察・判断・
処置及び病院選定など、救急活動の質を高め救命率
の向上を図る。
新型インフルエンザ発生時に対する搬送体制の充実
を図る。(感染拡大防止資器材等の購入)
歳出内訳としては、高度な救命処置に必要な資機材
メディカルコント
ロール体制充実事
業
の購入、救急隊員の資質向上に係る各研修への出席
10,688 負担金が主なものとなる。
※「救急業務の高度化の推進について」(H13/7/4
付け消防救第 204 号)
①消防機関と救急医療機関との更なる連携強化
②救急救命士に対する指示体制及び救急隊員に対す
る指導・助言体制の充実
③救急活動の事後検証体制の充実
④救急隊員の教育研修体制の充実
159
事業名
金額(千円)
事業内容
平成 15 年 10 月に電波法関係審査基準が改正され、
消防救急アナログ無線の使用期限が平成 28 年 5 月
31 日までとされた。これに伴い、愛媛県及び県内 14
消防救急無線デジ
タル化事業
10,200
消防(局)本部において、消防救急デジタル無線へ
の移行整備に向けた協議を行い、国の財政支援を受
け本市単独での整備方針のもと、市域内での通信整
備を構築するとともに、県全域で通信可能な消防救
急デジタル無線ネットワークの整備を目的とする。
法に基づき、危険物の貯蔵取扱いについての許認可
危険物規制事務
10,106 事務等を行う。主な内容は、特定屋外タンクの審査
委託料である。
消防業務を遂行する上で必要な資格を取得させる事
職員資格取得事務
10,091 業である。また救急業務の高度化を図るため救急救
命士を養成することを目的とする。
(注)1.主に事業別決済額 10 百万円以上のものを表示している。
2.事業別決済額の大半を人件費又は備品購入費等で占めているものは表示して
いない。
(ⅱ)支出の手続
支出の手続については、
「松山市財務会計規則 第 4 章
支出」及び「会計事
務の手引」に規定されており、一般的な支出の手続は以下のとおりである。
① 債権者の請求により支出負担行為を行う場合、法令その他に違反していない
か、歳出予算又は配当予算を超過していないか、予算の目的に反していない
か調査するとともに、支出負担行為書及び添付書類により財政課に合議する。
② 支出しようとするときは、支出命令書及び添付書類を会計事務局を経由し、
会計管理者に支出を命令する。
③ 会計管理者は支出命令を受けたときは、支出負担行為に係る債務が確定して
いることを確認した後、支払いの決定を行う。
④ 会計管理者は支出の承認をしたものについて、直接払い、納付書払い、隔地
払い、口座振替払い等の方法により支払う。
(ⅲ)契約事務
契約事務については、地方自治法、地方自治法施行令及び松山市契約規則等が
適用される。本市では、一般競争入札、指名競争入札及び随意契約の方法により
契約を締結する。
160
<1>一般競争入札
一般競争入札とは、公告により入札に参加する資格を有する者に周知し、多
数の申込み者の競争によって市に最も有利な条件をもって申込みをした者と
契約を締結する方法であり、その手続は以下のとおりである。
① 市長は、以下に掲げる事項を公告する。
・入札に付する事項
・入札に参加する者に必要な資格に関する事項
・契約条項を示す場所
・入札執行の場所及び日時
・入札保証金に関する事項
・入札の無効に関する事項
・その他入札に関し必要な事項
② 入札者は、入札書に必要な事項を記入し、記名押印の上これを封筒に入れ
て、入札執行の日時に指定の場所に提出する。
③ 市長は、入札に付する事項の価格の総額又は単価について予定価格を定め、
予定価格書を作成し封書する。
④ 入札者は、その見積る契約金額の一定金額以上を入札保証金として納付す
る。ただし、代替担保の提供、納付の減免措置がある。
⑤ 市長は、落札者の決定をしたときは、その旨を落札者に通知する。
⑥ 落札者は、上記通知を受けた日から 7 日以内に契約を締結する。
⑦ 契約書を作成し、契約者は契約金額の一定金額以上を契約保証金として納
付する。ただし、代替担保の提供、納付の減免措置がある。
<2>指名競争入札
指名競争入札とは、相手方の能力・技術・信用・実績等をもとに入札に参加
することを通知により指名し、入札の方法により競争させ相手方を決定して契
約を締結する方法であり、その手続は以下のとおりである。
① 市長は、入札に参加する者を 3 人以上指名し、以下に掲げる事項を指名通
知書又は指名入札通知書により通知する。
・入札に付する事項
・契約条項を示す場所
・入札執行の場所及び日時
・入札保証金に関する事項
・入札の無効に関する事項
・その他入札に関し必要な事項
② 以降は、<1>一般競争入札と同様のため、記載は省略する。
161
<3>随意契約
随意契約とは、競争入札の方法によらないで、地方公共団体が任意の相手方
と契約を締結する方法であり、その手続は以下のとおりである。
① 地方自治法施行令第 167 条の 2 によれば、随意契約によることができる場
合として以下のとおり掲げられている。
地方自治法第 167 条の 2(一部加筆修正)
一
売買、賃借、請負その他の契約でその予定価格が普通地方公共団体の規則
で定める額を超えないものをするとき。
二
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、
修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でそ
の性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
三
障害者支援施設等において製作された物品の買入れ契約や役務の提供を受
ける契約等を普通地方公共団体の規則で定める手続により締結するとき。
四
新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者から新商品として生産
する物品を普通地方公共団体の規則で定める手続により、買い入れる契約を
するとき。
五
緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
六
競争入札に付することが不利と認められるとき。
七
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込のある
とき。
八
競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないと
き。
九
落札者が契約を締結しないとき。
② 松山市契約規則第 27 条によれば、原則として下表の金額の範囲内で随意契
約を行うことができる。
(1)工事又は製造の請負
1,300,000 円
(2)財産の買入れ
800,000 円
(3)物件の借入れ
400,000 円
(4)財産の売払い
300,000 円
(5)物件の貸付け
300,000 円
(6)前各号に掲げるもの以外のもの
500,000 円
③ 市長は、原則として予定価格書を作成し、2 人以上の者に見積書を提出さ
せなければならない。ただし、予定価格の総額が②に掲げる契約の種類に
応じた金額以下のものについては、予定価格書の作成を省略することがで
きる。
④ 市長は、落札者の決定をしたときは、その旨を落札者に通知する。
⑤ 落札者は、上記通知を受けた日から 7 日以内に契約を締結する。
162
⑥ 契約書を作成し、契約者は契約金額の一定金額以上を契約保証金として納
付する。ただし、代替担保の提供、納付の減免措置がある。なお、契約金
額が②に掲げる契約の種類に応じた金額以下のときには、契約書の作成を
省略できる。
(2)予実分析
平成 23 年度における予算実績比較は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
繰越額
残額
執行率
常備消防費
349,342
332,115
-
17,227
95.1%
非常備消防費
211,975
198,016
4,925
9,034
93.4%
消防施設費
678,383
137,902
537,726
2,755
20.3%
災害対策費
472,559
179,844
204,513
88,202
38.1%
1,712,259
847,877
747,164
117,217
49.5%
総計
(注)上表には、人件費及び備品購入費等は含めていない。
(ⅰ)繰越額の内容は以下のとおりである。
<1>非常備消防費
① 消防団消防活動支援業務 4,925 千円(全額消耗品費)
国の平成 23 年度第 3 次補正予算において「消防団安全対策設備整備補助金」
が設定されたことに基づき、平成 24 年 3 月に補正予算を組んだが、時期的に
平成 23 年度中の事業完了が困難なため、全額繰り越している。
<2>消防施設費
① 消防救急無線デジタル化事業 483,111 千円(内訳/旅費:430 千円、役務費:
547 千円、委託料:10,340 千円、工事請負費:471,794 千円)
消防救急アナログ無線の使用期限が迫っていることに伴い、消防救急無線の
デジタル化に向けた無線ネットワークの整備業務であり、平成 26 年度までの
継続事業としている。国の財政支援措置を受けるために平成 23 年度中に予算
化しておく必要があったことから、平成 24 年 3 月議会にて補正予算を組んで
おり、全額繰り越している。
② 消防団ポンプ蔵置所耐震化事業 40,615 千円(内訳/工事請負費:37,780 千円、
委託料:2,782 千円、使用料:30 千円、需用費:23 千円)
三津浜分団及び味酒分団の消防ポンプ蔵置所において、新耐震基準に準拠し
た耐震化工事について、主体工事の一般競争入札が 3 度不調に終わったことに
より、契約締結までに時間を要したことから、翌期繰越となった。
163
③ 消防施設震災対策事業 14,000 千円(内訳/全額工事請負費)
東日本大震災を受けた緊急対策の一環として国から消防施設の耐震対策の
調査が要望され、本市では平成 23 年 5 月に「海水利用型消防水利システム」
を要望する旨を決定し、平成 23 年 9 月議会にて補正予算を計上した。具体的
には西消防署に車両車庫を整備することを目的としているが、その工期は複数
年かかる見込みであることから、継続費としている。しかし、地盤調査の結果、
地盤が軟弱であったことやその後の詳細設計に時間を要したこと等から、当初
予定していたほど工事が進捗しなかったため、平成 23 年度分の予算について
翌期以降に逓次繰越となっている。
(参考)逓次繰越
継続費の場合に、その年度ごとの予算について、何らかの事情でその年度内に支出を
完了することができない経費について、特別に、翌年度以降に繰り越して使用するこ
とができるもの。繰越明許費と異なり、その事業の実施期間内であれば、最終年度ま
で何年でも繰り越せる。
<3>災害対策費
① 松山市デジタル防災行政無線整備事業 204,513 千円
デジタル防災行政無線システムの構築事業であり、平成 23 年度から平成 25
年度にかけた継続事業である。平成 23 年 12 月に国から津波防災地域づくりの
基本指針が提示されたのを受け、整備内容の協議に時間を要したことから、本
年度分の工事について、翌期に繰り越している。
(ⅱ)残額の主な内容は以下のとおりである。
<1>常備消防費
電話使用料等の通信運搬費の減少等が主な要因であり、特筆すべき要因は見
当たらなかった。
<2>非常備消防費
退職者の見込減により退職報償金(報償費)の残額 5,595 千円が生じている。
<3>消防施設費
消防救急無線デジタル化整備工事において指名競争入札により委託契約を
締結しているが、入札減額により残額 1,604 千円が生じている。
<4>災害対策費
松山市デジタル防災行政無線整備事業における工事請負契約において、入札
減額により残額 74,377 千円が生じている。
164
(3)委託料
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、委託料は以下のように規定されている。
13 委託料
市の事務、事業、調査、試験、研究の委託に要する経費で、公法上の契約と私法上の
契約とがある。
1.公法上の委託契約には、地方自治法第 252 条の 14 の規定による地方公共団体相互
間の事務委託、あるいは歳入の徴収委託又は収納の委託、支払事務の委託、公の施
設の管理の委託がある。
例えば、
証券の取り立ての再委託(令 157)
歳入の徴収又は収納委託(令 158)
支出事務の委託(令 165 の 3)
公の施設の管理委託(法 244 の 2(3)
)
事務の委託(法 252 の 14)
2.私法上の委託契約は、市が直接実施するよりも他の者に委託して実施させるほうが
効率的であるもの、すなわち、特殊の技術、設備等を必要とする、あるいは高度の
専門的な知識を必要とする事務事業、調査、研究についての委託がある。
例えば、試験委託料、研究委託料、種苗改善委託料、統計調査委託料、映画製作
委託料、測量委託料及び設計委託料等。
<1>経年比較
委託料の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
平成 22 年度
平成 23 年度
91,567
74,823
79,028
279
264
491
消防施設費
34,778
8,999
32,305 ①
災害対策費
26,387
67,597
28,061 ②
153,011
151,682
非常備消防費
合計
139,885
上表のとおり、
平成 23 年度の委託料は前年度比で 11,797 千円減少している。
主な増減内容は以下のとおりである。
① 消防施設費(前年度比 23,307 千円増加)
内容は「情報通信施設機器保全事業」における情報通信設備の維持管理
費であるが、平成 22 年度は設備更新がほとんどなかった。平成 23 年度の
内容は主に車両動態位置管理装置 FOMA 切替改修委託料である。
165
② 災害対策費(前年比 39,535 千円減少)
平成 22 年度は「防災マップ配布事業」が 32,693 千円発生していた。
<2>予実比較
平成 23 年度における委託料の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
常備消防費
実績額
執行率
81,210
79,028
97.3%
518
491
94.7%
消防施設費
47,492
32,305
68.0%
災害対策費
30,556
28,061
91.8%
159,777
139,885
87.6%
非常備消防費
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲19,892 千円(執行率 87.6%)である。なか
でも消防施設費は予算比▲15,187 千円(執行率 68.0%)であり、この主たる要
因は、
「消防救急無線デジタル化事業」の翌期繰越である。
(ⅱ)平成 23 年度の事業別委託料の内容
平成 23 年度の事業別委託料は下表のとおりである。
(単位:千円)
事業名
通信指令業務
情報通信施設機
器保全事業
消防救急無線デ
ジタル化事業
危険物規制事務
その他
合計
常備消防費
非常備消防費
消防施設費
災害対策費
合計
39,288
―
―
―
39,288
―
―
17,850
―
17,850
―
―
10,196
―
10,196
9,474
―
―
―
9,474
30,266
491
4,260
28,061
63,078
79,028
491
32,305
28,061
139,885
(注)10,000 千円未満の事業については「その他」でまとめている。危険物規制事務は人
件費等を考慮すると 10,000 千円超となるため独立掲記している。
166
<1>通信指令業務
通信指令業務の平成 23 年度における委託内容は下表のとおりである。
委託内容
消防無線中継設備保守委託
通信指令管制システム通信機器
保守委託
通信指令管制システム情報機器
保守委託
高所監視カメラ保守委託
衛星地球局装置保守委託
画像伝送システム保守委託
自動式サイレン保守委託
合計
金額(円)
12,130,230
委託先
日本電気㈱松山支店
9,803,850
日本電気㈱松山支店
9,643,200
日本電気㈱松山支店
2,217,600
2,104,200
1,772,400
1,616,580
39,288,060
日本電気㈱松山支店
日本電気㈱松山支店
㈱日立国際電気 四国支社
日本電気㈱松山支店
上表のとおり、委託内容は消防通信指令管制システム等に係る保守業務であ
り、委託先は日本電気㈱及び㈱日立国際電気に限られている。両社はいずれも
システム・機器等の納入業者であり随意契約で委託契約が締結されている。こ
れは、納入業者の有する専門的知識が当該保守業務を実施する上で必要不可欠
であること、及び、ソフトウェア著作権の関係で納入業者との契約が最も費用
対効果が高いことに起因している。
<2>情報通信施設機器保全事業
内容は、車両動態位置管理装置 FOMA 切替改修業務の委託であり、随意契約
により日本電気㈱と委託契約を締結している。同装置は従来から日本電気㈱が
納品しており、納入業者の専門的知識、ソフトウェア著作権の関係から、同社
と契約するに至っている。
<3>消防救急無線デジタル化事業
内容は、消防救急アナログ無線の使用期限が迫っていることに伴い、消防救
急無線のデジタル化に向けて無線ネットワークを整備する工事に係る実施設
計業務の委託である。無線に関する専門的知識が必要なため、市登録業者から
実績・業務実施体制を考慮して委託先を決定する指名競争入札により日本工営
㈱が落札した。落札額は 10,195,500 円であるが、平成 22 年度に作成した「愛
媛県消防救急デジタル無線システム基本設計報告書」で概算額 12,800,000 円
と算出されており、妥当な金額と考える。
<4>危険物規制事務
消防法、石油コンビナート等災害防止法、火薬類取締法、松山市火災予防条
例に基づく危険物の貯蔵取扱いについての許認可事務等である。
タンク容量 1 千 Kℓ以上 1 万 Kℓ未満の特定屋外タンクの内部開放点検は 10~
167
13 年の周期で実施される。また、タンク容量 1 千 Kℓ未満の屋外タンクの法定
点検(消防法)は 1 年に 1 回以上である(内部開放点検は法定義務なし)。
タンク容量 1 千 Kℓ以上の特定屋外タンク貯蔵所については、危険物保安技術
協会へ随意契約により委託契約を締結しており、
委託内容は以下の 3 点である。

特定屋外タンク貯蔵所の設置又は変更の許可に係る審査

特定屋外タンク貯蔵所の基礎・地盤検査及び溶接部検査に係る審査

タンク容量 1 万 Kℓ以上の特定屋外タンク貯蔵所の保安検査(周期 8 年)に
係る審査
危険物保安技術協会は、消防法に基づく総務大臣認可法人であり、屋外タン
ク貯蔵所に係る審査に必要な土木、機械、化学等に関する専門的知識及び技術
を有する我が国唯一の専門的審査機関である。
(委託実績)
 平成 21 年度
件数 38 件 18,422,500 円
 平成 22 年度
件数 22 件
8,121,750 円
 平成 23 年度
件数 25 件
9,474,000 円
(ⅲ)委託料の支払いに係る経理処理の検証
委託料の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 5 件をサンプルとして抽出し、
「契約方法決定書」
「支出
負担行為書(又は支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る
関連書類・証憑を閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確
認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
消防
施設費
常備
消防費
災害
対策費
常備
消防費
事業名
情報通信施設
機器保全事業
通信指令業務
松山市デジタ
ル防災行政無
線整備事業
通信指令業務
危険物規制事
務
内容
支払先
車両動態位置管理装置FO
MA切替改修委託料
通信指令管制システム情報
機器保守委託料(2 回目)
松山市防災行政無線(デジ
タル固定系)システム整備
工事施工監理
通信指令管制システム情報
機器保守委託料(1 回目)
特定屋外タンク貯蔵所審
査委託料(コスモ♯36)
168
日本電気㈱
松山支店
日本電気㈱
松山支店
日本工営㈱
愛媛営業所
日本電気㈱
松山支店
危険物保安技
術協会
支払日
支出命令額
H24. 4.27
17,850,000
H24. 4.27
9,002,700
H24. 4.27
5,880,000
H23.10.20
640,500
H23.12.20
441,500
(4)工事請負費
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、工事請負費は以下のように規定されてい
る。
15 工事請負費
1.道路、河川、堤防、溝渠等の築造といった土木工事、工作物、船舶等の建造、そ
の他埋立、建造物の除却、取りこわし等に要する経費である。
当事者の一方(請負人)が、ある仕事を完成することを約し、市がその仕事の結
果に対して報酬を与えることを約することによって成立する契約(民法 632 条)に
より支払われる経費である。
2.市の締結する契約は、地方自治法第 234 条第 1 項により一般競争入札、指名競争
入札、及び随意契約のいずれかの方法により行われる。
<1>経年比較
工事請負費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費
494
235
消防施設費
233,314
80,918
48,531 ①
災害対策費
9,868
13,796
66,092 ②
243,675
94,949
合計
-
114,623
上表のとおり、平成 23 年度の工事請負費は前年度比で 19,674 千円増加して
いる。主な増減内容は以下のとおりである。
① 消防施設費(前年度比 32,387 千円減少)
平成 22 年度は 41,034 千円発生した「消防団ポンプ蔵置所耐震化事業」が、
平成 23 年度においては、主体工事の一般競争入札が 3 度不調となり契約締
結に時間を要し工期が遅れ翌期繰越となった結果、10,500 千円しか発生し
なかったことが主因である。なお、平成 21 年度には「北部消防機能強化事
業」159,498 千円が発生しているため多額となっている。
② 災害対策費(前年度比 52,296 千円増加)
「松山市デジタル防災行政無線整備事業」に係る工事代金前払い 58,400
千円が発生している。
169
<2>予実比較
平成 23 年度における工事請負費の予算と実績の比較結果は下表のとおりで
ある。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
執行率
消防施設費
572,694
48,531
8.5%
災害対策費
348,786
66,092
18.9%
921,480
114,623
12.4%
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲806,857 千円(執行率 12.4%)である。こ
れは、
「消防救急無線デジタル化事業」において、国の平成 23 年度第 3 次補正
予算に基づき予算を補正したが、翌期へ全額繰越したことが主因である。
(ⅱ)工事請負費の支払いに係る経理処理の検証
工事請負費の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から支出命
令額上位 3 件をサンプルとして抽出し、「契約方法決定書」
「支出負担行為書」「支
出命令書」等の支払いに係る関連書類・証憑を閲覧し、所定の手続きに従い支出行
為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
事業名
内容
松山市デジタル
松山市防災行政無線(デジ
防災行政無線整
タル固定系)システム整備
備事業
工事 前払金
消防団ポンプ蔵
三津浜分団消防ポンプ蔵置
消防
置所耐震化事業
所新築主体工事
施設費
消防施設営繕事
西消防署4階体育室天井改
業
修その他工事代金
災害
対策費
支払先
前払金
170
支払日
支出命令額
H23.10.31
58,400,000
朝日建設㈱
H24. 4.16
9,100,000
三森建設㈱
H24. 4.10
5,071,500
㈱日立国際電気
四国支社
(5)使用料
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、使用料は以下のように規定されている。
14 使用料及び賃借料
1.賃貸借契約に基づいて、その対価として支払われる金銭である。
一般的には土地、建物等の不動産、自動車、器械類の動産の借上料、物品の使用
料並びに占用料等である。
例えば、会場借上料、自動車借上料、映画フィルム借上料、有料道路通行料、駐
車場使用料、フェリー使用料、NHK 受信料等。
2.自動車等の使用基準としては、地元協議会、遠隔地で交通機関の少ない所、夜間、
その他緊急を要する場合等である。
<1>経年比較
使用料の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
平成 22 年度
平成 23 年度
15,924
19,742
18,084
非常備消防費
1,223
1,588
1,703
消防施設費
1,523
―
―
災害対策費
8,752
3,506
3,978
27,421
24,836
23,766
合計
上表のとおり、
平成 23 年度の使用料は前年度比で 1,070 千円の減少である。
常備消防費が同 1,658 千円の減少となっているが、その主な要因として、平成
22 年度において全国救急隊員シンポジウムの会場使用料があったため「メディ
カルコントロール体制充実事業」が 4,373 千円減少したこと、平成 23 年度は
消防局電話機の更新にあたってリース契約に切り替えたことなどにより「消防
局管理事務」が 4,081 千円増加したことが挙げられる。
171
<2>予実比較
平成 23 年度における使用料の予算と実績の比較結果は以下のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
常備消防費
執行率
18,967
18,084
95.3%
2,149
1,703
79.3%
消防施設費
30
-
0.0%
災害対策費
4,237
3,978
93.9%
25,382
23,766
93.6%
非常備消防費
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲1,616 千円(執行率 93.6%)である。これ
は、非常備消防費において、緊急船舶を必要とする災害等の発生がなく、緊急
船舶の借上料が発生しなかったことが主たる要因である。
(ⅱ)使用料の支払いに係る経理処理の検証
使用料の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 3 件をサンプルとして抽出し、「支出負担行為書(又は
支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る関連書類・証憑を
閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
事業名
内容
支払先
支払日
消防局管
消防用寝具リース料(10
四国医療サービス㈱
理事務
月分)
愛媛基準寝具事業所
行道山中
消防局行道山無線中継基
常備
継所維持
地用地に係る土地賃貸借
消防費
管理業務
契約
防火対象
消防業務系システムの機
NECキャピタルソリ
物規制事
器等の賃貸借料 10 月分
ューション㈱
務
(長期継続契約)
店
下音地山林組合
172
四国支
支出命令額
H23.11.21
909,414
H24. 3.30
400,000
H23.11.15
112,980
(6)需用費
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、需用費は以下のように規定されている。
11 需用費
市の行政事務執行上必要とされる物品(備品、原材料に含まれないもの)の購入取得
及び修理等に要する経費で、その効用が比較的に短期間に費消される性質のもので、こ
れには消耗品費、燃料費、食糧費、印刷製本費、光熱水費、修繕料、賄材料費、飼料費、
医薬材料費が含まれる。
<1>経年比較
需用費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
平成 22 年度
平成 23 年度
153,190
158,902
非常備消防費
29,278
27,352
32,322
消防施設費
23,485
39,584
14,336 ②
災害対策費
14,526
16,321
51,389 ③
220,479
242,160
合計
174,652 ①
272,699
上表のとおり、
平成 23 年度の需要費は前年度比で 30,539 千円増加している。
主な増減内容は以下のとおりである。
① 常備消防費(前年度比 15,750 千円増加)
主たる増加要因は、職員被服貸与事務 3,161 千円、消防車両機械維持整
備事業 2,694 千円、通信指令業務 2,567 千円、消防局管理事務 2,343 千円
である。
② 消防施設費(前年度比 25,249 千円減少)
主たる減少要因は、常備消防用車両機械購入事業 29,208 千円である。
③ 災害対策費(前年度比 35,068 千円増加)
主たる増加要因は、災害用備蓄物資整備事業 32,654 千円である。
173
<2>経年比較(細節別)
需用費(細節別)の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
細節
平成 21 年度
印刷製本費
平成 22 年度
平成 23 年度
3,813
8,027
光熱水費
46,240
48,649
49,638
修繕料
28,565
54,288
35,584 ②
112,566
96,135
139,797 ③
食糧費
1,381
1,600
燃料費
27,914
33,461
220,479
242,160
消耗品費
合計
10,114 ①
1,451
36,116 ④
272,699
① 印刷製本費
平成 22 年度に地域防災計画事業(災害対策費)2,873 千円が発生してい
る。平成 23 年度に松山市消防団 IC い~カード機能付団員証(非常備消防
費)4,078 千円が発生している。
② 修繕料
平成 22 年度に常備消防用車両機械購入事業(消防施設費)28,991 千円
が発生している。
③ 消耗品費
平成 23 年度に災害用毛布(災害対策費)23,648 千円、非常用保存食等
(災害対策費)5,985 千円が発生している。
④ 燃料費
消防車両台数に大きな変動はないが、近年、自動車ガソリン及び灯油の
単価がいずれも上昇していることから、燃料費の総額も増加傾向にある。
(参考)
(単位:円)
平成 21 年 3 月末
平成 22 年 3 月末
平成 23 年 3 月末
112
130
147
1,333
1,406
1,638
自動車ガソリン(1ℓ)
灯油(18ℓ)
(出典)総務省
統計局・政策統括官(統計基準担当)・統計研修所
※自動車ガソリン、灯油いずれも東京都区部小売価格である。
174
<3>予実比較
平成 23 年度における需用費の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:円)
区分
予算現額
常備消防費
実績額
執行率
181,989
174,652
96.0%
非常備消防費
39,681
32,322
81.5%
消防施設費
14,406
14,336
99.5%
災害対策費
53,269
51,389
96.5%
289,346
272,699
94.2%
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲16,647 千円(執行率 94.2%)である。これ
は、非常備消防費において、大規模災害等がなく消耗品費や食糧費の費消が少
なかったことが主たる要因である。
(ⅱ)需用費の支払いに係る経理処理の検証
需用費の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 3 件をサンプルとして抽出し、
「起案文書」
「支出負担行
為書(又は支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る関連書
類・証憑を閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
細節名
事業名
災害
災害用備蓄物
対策費
資整備事業
メディカルコ
消耗品費
常備
消防費
ントロール体
制充実事業
職員被服貸与
事務
内容
支払先
災害時用毛布(パ
㈱フジ
ック入)
フジグラン松山
9,200 枚
外商松山営業所
感染防止衣
アイワク産業㈱
1,800 枚
消防吏員
支払日
支出命令額
H24. 4.16
23,647,680
H24. 4.20
2,060,100
H24. 4.10
937,440
冬活動
服(新採用職員用) 進和被服㈱
36 着
175
(7)負担金
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、負担金は以下のように規定されている。
19 負担金補助及び交付金
1.負担金
(1)法令、契約等に基づいて国や他の地方公共団体等に対して負担しなければなら
ない経費である。
例えば、国直轄事業の負担金、県土木建設事業の負担金の如く法令上の支出
義務のあるものと、市長会、議長会、その他各種協議会または講習会、研修会
等に対するものや市が共催する事業等に対する任意負担金がある。
(2)任意の負担金で内容が不明確な団体等の会員として、その維持運営のための負
担金という名目で会費を支出する場合は、十分検討を加え、その取り扱いに注意
を要する。
<1>経年比較
負担金の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費
23,564
22,766
24,090
非常備消防費
56,928
53,532
112,506
消防施設費
46,492
50,782
41,371
災害対策費
22,668
8,258
14,888
149,652
135,338
192,854
合計
上表のとおり、
平成 23 年度の負担金は前年度比で 57,516 千円増加している。
これは非常備消防費において、「消防団員公務災害補償事務」62,350 千円が発
生していることが主因である。内容は以下のとおりである。
支出先の名称
目的
平成 23 年度
増加内容
消防団員等公務災害補償等共済基金
消防団員等が、公務上の災害を受けた場合、その災害によって生じた損
害を補償し、併せて被災団員等及びその遺族の福祉に関して必要な福祉
事業を行い、被災団員等及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与
すること。
<平成 23 年度追加掛金> 55,882,800 円
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により死亡又は行方不明
となった 253 名の消防団員に対する公務災害補償の確実な実施を確保
するため、市町村が負担する消防団員等公務災害補償等共済基金への掛
金を、今年度に限り団員 1 人当たり 1,900 円から 24,700 円に引き上げ
る政令が平成 23 年 8 月に施行された。これに伴い、差額の 22,800 円×
2,451 名(定数)を、平成 23 年 12 月末日までに支出している。
176
<2>予実比較
平成 23 年度における負担金の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
常備消防費
実績額
執行率
24,946
24,090
96.6%
112,775
112,506
99.8%
消防施設費
41,371
41,371
100.0%
災害対策費
19,045
14,888
78.2%
198,137
192,854
97.3%
非常備消防費
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲5,283 千円である。これは、災害対策費の
うち「自主防災組織充実事業」において、防災士育成に際し愛媛県の事業を活
用したため執行額が減少したこと等が要因である。
(ⅱ)負担金の支払いに係る経理処理の検証
負担金の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 5 件をサンプルとして抽出し、
「支出負担行為書(又は
支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る関連書類・証憑を
閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
非常備
消防費
事業名
消防団員等公務
災害補償事務
消防団員退職報
償事務
内容
支払先
消防団員等公務災害補償
等共済基金
平成 23 年度追加掛金
平成 23 年度
消防団員等公務災害補償
等共済基金掛金
消防
施設費
消防水利整備事
業
消火栓設置工事及び維持
管理負担金
常備
消防費
職員教養研修事
務
災害
対策費
がんばる自主防
災応援事業
第 50 回(平成 23 年度)
初任教育入校負担金
平成 23 年度
がんばる自主防災応援事
業 モデル事業補助金
177
消防団員等公
務災害補償等
共済基金
松山市公営企
業管理者
渡邊 滋夫
愛媛県消防学
校長
中島地区自主
防災連合会
支払日
支出命令額
H23.12.28
55,882,800
H23. 4.28
44,179,200
H23. 6.10
41,030,591
H23. 4.11
5,270,850
H23. 7.29
500,000
(8)報償費
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、報償費は以下のように規定されている。
8
報償費
役務の提供等に対する純粋な謝礼又はいわゆる報償的意味の強い経費である。すなわ
ち、役務の提供や施設の利用などによって受けた利益に対する代償を支出するものであ
る。
1.報償費は1
(1)報償金
報酬に相当するものを除いたものをいう。
利益に対する代償。例えば、講演会等の講師謝礼等。
感謝の意を表するもの。例えば、人命救助者に対する謝礼等。
奨励の意味を持つもの。例えば、有害鳥獣捕獲報償金等。
報償金は、所得税法第 204 条第 1 項第 1 号の報酬又は料金に該当するため源泉徴
収の対象となる。
(2)賞賜金
表彰の意味を持つもの。例えば、善行者を表彰する際に贈与する金一封
等。
(3)買上金
公益上の目的を達成するための有害動物、昆虫等を買い上げる経費。
2.市政の発展のため特に功労のあった人で社会通念上から判断して、その功労が市と
して謝意を表するに足るものである場合は、本節より記念品を給することができる。
<1>経年比較
報償費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
非常備消防費
災害対策費
合計
平成 22 年度
平成 23 年度
191
171
221
29,850
32,175
45,997
268
479
213
30,309
32,825
46,431
上表のとおり、
平成 23 年度の報償費は前年度比で 13,606 千円増加している。
これは非常備消防費のうち「消防団員退職報償費」が退団員の増加により増え
ていることが主因である。(報償金支払い人数/平成 21 年度:81 人、平成 22
年度:85 人、平成 23 年度:126 人)
178
<2>予実比較
平成 23 年度における報償費の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
常備消防費
非常備消防費
225
221
98.2%
51,607
45,997
89.1%
270
213
78.8%
52,102
46,431
89.1%
災害対策費
合計
執行率
上表のとおり、合計額で予算比▲5,671 千円(執行率 89.1%)である。これ
は非常備消防費のうち「消防団員退職報償費」において、実際の退団者数が見
込み退団者数より少なかったことが主因である。
(ⅱ)報償費の支払いに係る経理処理の検証
報償費の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 3 件をサンプルとして抽出し、
「起案文書」
「支出負担行
為書(又は支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る関連書
類・証憑を閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
事業名
内容
支払先
非常備
消防団員退
松山市消防団員退職報償
松山市消防団員退職
消防費
職報償事務
金
報償金支給対象者
支払日
支出命令額
H24. 5.15
33,660,000
H24. 1.13
60,000
H23. 8.15
5,000
「平成 23 年度自主防災レ
災害
自主防災組
ベルアップ研修会」開催に
資金前渡担任者
対策費
織充実事業
伴う司会者及び講師への
上岡
雄地
謝礼
非常備
消防団員退
松山市消防団員退職記念
松山市消防団員退職
消防費
職報償事務
品料
記念品料支給対象者
179
(9)役務費
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、役務費は以下のように規定されている。
12 役務費
市が受けた人的なサービスの提供に対して支出する費用である。
1.通信運搬費
2.保管料
3.広告料
4.手数料
5.筆耕翻訳料
6.火災保険料
7.自動車損害保険料
<1>経年比較
役務費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
平成 22 年度
平成 23 年度
35,920
37,106
29,891
629
2,516
935
消防施設費
1,487
2,149
1,051
災害対策費
8,459
8,743
13,043
46,494
50,514
44,920
非常備消防費
合計
上表のとおり、
平成 23 年度の役務費は前年度比で 5,594 千円減少している。
これは常備消防費の「消防局管理事務」が通信運搬費の抑制により 3,276 千円
減少していることが主因である。
180
<2>予実比較
平成 23 年度における役務費の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
常備消防費
執行率
34,518
29,891
963
935
消防施設費
1,624
1,051
災害対策費
13,905
13,043
93.8%
51,009
44,920
88.1%
非常備消防費
合計
86.6% ①
97.1%
64.8% ②
上表のとおり、合計額で予算比▲6,090 千円(執行率 88.1%)である。主な
要因は以下のとおりである。
① 常備消防費(予算比▲4,627 千円/執行率 86.6%)
通信指令課の発信地表示システムに係る使用料の減少等により残額が発
生している。
② 消防施設費(予算比▲572 千円/執行率 64.8%)
「消防救急無線デジタル化事業」において手数料 540 千円を翌期に繰り
越している。
(ⅱ)役務費の支払いに係る経理処理の検証
役務費の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大
きいものを中心に任意に 3 件をサンプルとして抽出し、
「起案文書」
「支出負担行
為書(又は支出負担行為兼支出命令書)」
「支出命令書」等の支払いに係る関連書
類・証憑を閲覧し、所定の手続きに従い支出行為が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
細節名
保険料
常備
消防費
事業名
内容
消防救急艇維
消防救急艇「はや
持管理業務
ぶさ」船舶保険料
支払先
支払日
支出命令額
東京海上日動火
災保険㈱西日本
H24.2.15
1,190,000
H23.8.15
707,238
H24.4.20
300,000
船舶営業部
発信地表示システ
通信運
搬費
通信指令業務
ムの提供に関する
西日本電信電話
通信運搬費(7 月
㈱愛媛支店
分)
手数料
メディカルコントロール
平成 23 年度救急
体制充実事業
活動事後検証費
181
相引
眞幸ほか
(10)旅費
(ⅰ)概要
松山市「会計事務の手引」によれば、旅費は以下のように規定されている。
9
旅費
公務のために旅行する職員等に対し、旅行に要する費用として支給される金銭給付で
あり、法においては、常勤職員に支給する場合を旅費(法 204(1))、非常勤職員に支
給する場合を費用弁償(法 203(3)
)及び監査執行のため出頭を求められた関係人に支
給する場合等を実費弁償(法 207)とよんでいる。
これら旅行に要する費用は、松山市職員の旅費に関する条例、市議会議員等報酬、期
末手当及び費用弁償条例(第 6 条)及び証人等の実費弁償に関する条例(第 3 条)に基
づいて支給されるものである。
<1>経年比較
旅費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費
6,603
8,034
5,089
非常備消防費
1,227
1,459
1,141
消防施設費
342
158
308
災害対策費
477
488
1,424
8,650
10,138
7,963
合計
上表のとおり、平成 23 年度の旅費は前年度比で 2,175 千円減少している。
これは常備消防費において、東日本大震災により予定されていた会議が中止と
なったことに伴い、それに関連する旅費が発生しなかったことが主因である。
182
<2>予実比較
平成 23 年度における旅費の予算と実績の比較結果は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
予算現額
実績額
執行率
常備消防費
6,416
5,089
79.3%
非常備消防費
1,361
1,141
83.8%
消防施設費
765
308
40.2%
災害対策費
1,616
1,424
88.1%
10,159
7,963
78.4%
合計
上表のとおり、合計額で予算比▲2,196 千円減少(執行率 78.4%)である。
これは、常備消防費において、東日本大震災により、予定されていた会議が中
止となったことに伴い、それに関連する旅費が執行されなかったことが主因で
ある。
(ⅱ)旅費の支払いに係る経理処理の検証
旅費の支払いについて、平成 23 年度の「事業別予算差引簿」から金額の大き
いものを中心に任意に 3 件をサンプルとして抽出し、「支出負担行為兼支出命令
書」等の支払いに係る関連書類・証憑を閲覧し、所定の手続きに基づき支出行為
が行われていることを確認した。
抽出したサンプルは下表のとおりである。
(単位:円)
区分
細節名
事業名
メディカルコントロール
常備
普通
消防費
旅費
非常備
市内
消防費
旅費
体制充実事業
内容
支払日
支出命令額
平成 23 年度救急救命
士薬剤投与追加講習
松岡
博志ほか
H23.6.01
592,350
笠原
康弘ほか
H23.4.01
334,600
H24.4.20
323,160
(広島市)出席用務
職員資格取得
救急救命東京研修所
事務
第 40 期研修入所用務
消防出初式
支払先
消防団員市内旅費(出
初式)
消防団員市内旅
費(船舶)支給対
象者
183
(11)その他
原材料費、災害補償費及び公課費については、その発生額が僅少であることから、
経年比較のみ実施する。
(ⅰ)原材料費
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
常備消防費
32
234
1,033
非常備消防費
59
58
59
704
704
717
795
997
1,810
災害対策費
合計
内容はネジ・ボルト・土のう袋等の雑資材であり、平成 23 年度は救助訓練用
施設(救助大会等にも使用する)を西消防署に仮設したことに伴い、常備消防費
が増加している。
(ⅱ)災害補償費
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
非常備消防費
平成 23 年度
3,664
1,830
2,861
―
―
38
3,664
1,830
2,900
災害対策費
合計
平成 22 年度
内容は、災害療養補償費・休業補償費等の支払いである。災害対策費は防火防
災訓練時に生じた療養補償費である。
(ⅲ)公課費
(単位:千円)
区分
平成 21 年度
常備消防費
合計
平成 22 年度
平成 23 年度
18
36
27
18
36
27
平成 23 年度の内容は、救急救命士免許申請に伴う登録免許税である。経年比
較で特記すべき事項はない。
184
4.物品管理
(1)物品の定義
物品とは、地方自治法第 239 条において普通地方公共団体の所有に属する動産で次
の各号に掲げるもの以外のもの及び普通地方公共団体が使用するために保管する動
産(政令で定める動産を除く。
)をいう。
一
現金(現金に代えて納付される証券を含む)
二
公有財産に属するもの
三
基金に属するもの
上記の地方自治法の定義を受け、市では物品の適正な管理を行うため、財務会計規
則第 334 条第 1 項において物品を次のように分類している。
① 備品②消耗品③動物④原材料⑤生産品⑥借用物品
また、同規則第 334 条第 2 項において、取得価格 1 件 1,000 千円以上の物品につい
ては重要物品とすると規定している。
当報告書においては、物品のうち消防局にて保管がある①の備品について調査を実
施した。備品以外の物品については、消防局全体での台帳作成は求められておらず、
金額的重要性も乏しいためその検討については省略した。
(2)備品購入費の推移
備品購入費の直近 3 年度の推移は下表のとおりである。
(単位:千円)
区分
平成21年度 平成22年度 平成23年度
常備消防費
12,167
13,023
2,644
非常備消防費
779
162
消防施設費
238,835
163,992
179,347
災害対策費
3,002
13,030
2,750
合計
254,003
190,825
184,903
上表で 3 年間の推移をみたところ、常備消防費は平成 23 年度に減少となった。こ
れは、平成 20 年度から平成 22 年度にかけて国から委託された原因調査の高度化事業
(注)に要する機材を購入していたが、平成 23 年度には国からの委託を受けなかっ
たため機材の購入がなく減少したものである。
185
(注)原因調査の高度化事業
火災調査室において下記の機材を導入している。
エックス線透過検査装置
エックス線透過検査装置とは、対象物にエックス線を
照射し、分解することなく内部の状況を観察する装置。
エックス線透過検査装置を使い、火災現場から回収し
た電化製品や焼損しもろくなった物、溶融固着した物品
などにエックス線を照射し、火災原因に起因する重要な
部分を破壊することなく内部観察を実施し、その映像を
写真で保存する。
デジタルマイクロスコープ
デジタルマイクロスコープとは、顕微鏡カメラで撮影
した対象物をモニター画面に写し出し観察する装置。
火災現場から回収した電化製品などの制御基板や配線
などについて、肉眼では確認できない部分を拡大して観
察し、その映像を写真として保存する。
赤外線サーモグラフィー
赤外線サーモグラフィーとは、対象物から出ている熱
(赤外線放射エネルギー)を検出し、色画像として表し
温度分布を画像表示する装置。
火災の燃焼実験を行った際、火源及び周辺温度を測定
し、発火に至るまでのメカニズムの解明などに役立てて
いる。
ガスクロマトグラフ質量分析
計
ガスクロマトグラフ質量分析計とは、有機化合物の定
性・定量分析を行う分析装置。
火災現場における油分の存在は、火災原因や延焼拡大
要因になる可能性があるため、火災現場で存在の有無を
確認することは重要となる。火災現場から焼損物を採取
し、ガスクロマトグラフ質量分析計で油分の有無につい
て確認している。
なお、備品購入費のうち区分としては消防施設費がその大半を占めており、その推
移は下表のとおりである。
(単位:千円)
事業名
常備消防用車両機械購入事業
救急装備高度化事業
非常備消防用車両機械購入事業
高度救助隊整備事業
その他
消防施設費合計
平成21年度 平成22年度 平成23年度
84,322
114,747
134,072
61,353
29,572
29,830
31,994
17,622
14,448
54,772
6,394
2,051
997
238,835
163,992
179,347
186
救急装備高度化事業は高規格救急自動車の購入費用が主となっており、全体として
車両購入費用が大勢を占めていることがわかる。なお、平成 21 年度で終了している
高度救助隊整備事業は平成 21 年度においては特殊災害資機材車、緊急消防援助隊用
支援資機材等の購入を行った。
【特殊災害資機材車】
187
【緊急消防援助隊用支援資機材】
<資機材各種>
<検知資機材>
特殊災害時の要救助者の救助にあわせて、各資機材を使用して隊員の防護や物質の
検知、要救助者の除染を行うもの。
<BASE-X 全景>
<除染の様子>
要救助者の体に付着した生物剤や化学剤を、シャワーによって洗い流すためのフレ
ーム式除染テントである。1 つのテントで複数の除染を行うために、テントの内部は
3 つに仕切られ、汚染された水が外部に流れ出さない構造になっている。
(注)上記写真には高度救助隊整備事業以外で購入した物品も含まれている。
188
(3)備品の購入手続
備品を含む物品の購入手続には、その都度、購入する物品、納入業者、購入単価等
の内容を決める「総価契約」と呼ばれる方法と、年間を通じて反復した購入がある場
合にあらかじめ購入する物品、納入業者、購入単価を決めておく「単価契約」と呼ば
れる方法がある。
(ⅰ)総価契約による取得手続
総価契約による取得手続は次のとおりである。
①
所管課にて購入を希望する物品について支出負担行為伺(物品)を作成し所
管課長の承認を得る。その後、支出負担行為伺(物品)が契約課に提出され、
契約課の承認を得ることで購入が決定する。
② 契約課は、契約者の決定方法が指名競争入札(財産の買入れは予定価格が 80
万円を超える場合。)となる場合は契約方法決定書を作成し総務部契約管理担
当部長の承認を得る。
③ 締結された契約については、契約課が支出負担行為書を作成し職務権限規則※
に基づき承認を得る。
※職務権限規則において専決者は次のように定められている。
300 万円未満は所管課長
300 万円以上は各部の企画官
④ 物品検査員※及び受領員は納入された物品と契約決定通知書(契約課より納入
業者に発行された発注書に相当する書類)を照合し、契約決定通知書に検収印
を押す。重要物品については、契約課が検収を実施する。
※物品検査員
各所管課で任命された検収担当者のことであり、担当者の氏名は契約課への届を要す
る。
⑤ 備品に該当する物品については納入を受けた所管課の担当者が備品台帳への
登録を行う。登録後、財務会計システムから出力される物品出納通知書に所管
課長の承認を得る。
⑥ 納入業者は検収印の押された契約決定通知書と請求書を契約課に提出し、これ
らの書類にて契約課は物品の納入と検収が行われたことを確かめる。
⑦ 契約課は請求書を所管課に送付する。所管課の担当者は請求書に基づき支払を
行うための支出命令書を作成し、所管課長の承認を得て支払手続を行う。
189
平成 23 年度に取得した公有財産及び物品について、平成 23 年度備品台帳から任意
に下記 7 件をサンプルとして抽出し、関連書類(支出負担行為支出命令決議書等の決
裁文書、契約書、請求書、納品書及び添付資料)と突合し、準拠性について検討した。
その結果、準拠性について指摘すべき事項はないが、車両購入にあたり「落札決定
額」を「予定価格」で割った落札率が消防車両・救急自動車について、85~95%と高
い水準にあることが判明した。
(単位:円)
No
部署
1 総務課
2 総務課
3 北条支署
4
5
6
7
城東支署
南消防署
西消防署
西消防署
名称/金額等
入札数
小型動力ポンプ付積載車 小型動力ポンプ付軽積載車 2台
空気呼吸器用ボンベ30MPa
(4.7L)
高規格救急自動車
小型動力ポンプ付水槽車
救助工作車Ⅱ型
呼吸器外装型化学防護服
予定価格
(税抜)
落札決定額
(税抜)
落札率
6社
6社
5,468,400
8,990,100
5,200,000
8,562,000
95%
95%
8社
2,964,150
2,781,500
94%
2社
6社
6社
6社
29,361,885
34,776,000
89,071,500
2,683,941
25,080,000
33,000,000
84,200,000
1,565,000
85%
95%
95%
58%
標準販売価格をもつ一般的な家庭用自動車等と異なり、消防関係車両は各市町村の
仕様にあわせた改造車両の性質が強い。そのため、落札率が高い水準で推移するため
には、予定価格が高い精度で積算されていることが必要となる。
松山市の契約課によれば「消防車両の予定価格算出にあたっては、事前に入札参加
予定業者に上代見積(定価見積)の提示を各業者にもとめている。」とのことであり、
この上代見積及び過去の購入実績をもとに予定価格を決定しているため、入札時にお
ける落札決定額は予定価格を僅かに下回る水準を維持できている。
なお、上代見積を依頼する業者と入札参加予定業者は同一であるため、消防車両に
ついて、過去 5 年間の会社別の購入履歴を消防局より入手した。
190
平成 19 年度から平成 23 年度までの消防車両購入履歴(6 社)
年度
19
20
21
22
23
購入先
D社
F社
F社
F社
F社
F社
C社
B社
C社
D社
A社
C社
C社
C社
C社
C社
C社
C社
C社
D社
E社
E社
D社
F社
A社
A社
A社
A社
A社
A社
A社
D社
D社
F社
F社
F社
C社
D社
F社
B社
C社
C社
C社
契約金額(円)
6,478,500
87,570,000
8,237,250
8,226,750
4,137,000
4,137,000
32,739,000
21,892,500
3,221,400
7,087,500
86,205,000
4,347,000
4,410,000
4,410,000
4,410,000
4,410,000
4,410,000
3,423,000
3,423,000
22,050,000
33,253,500
3,218,540
7,381,500
49,875,000
5,439,000
5,407,500
4,389,000
4,389,000
4,410,000
4,410,000
22,428,000
40,950,000
7,633,500
6,489,000
6,489,000
4,609,500
41,317,500
47,775,000
88,410,000
34,650,000
5,460,000
4,536,000
4,452,000
所属
中央消防署
南消防署
余土分団
荏原分団
難波分団
難波分団
南消防署
南消防署
高浜分団
南消防署
中央消防署
興居島分団
北条分団
立岩分団
河野分団
粟井分団
粟井分団
中島神和分団
中島神和分団
西消防署
東消防署
消防局
東消防署
中央消防署
正岡分団
中島東分団
堀江分団
坂本分団
中島神和分団
中島睦野分団
南消防署
東消防署
西消防署
難波分団
粟井分団
湯山分団
中央消防署
中央消防署
西消防署
南消防署
伊台分団
中島東分団
小野分団
車両名
指揮車
救助工作車
全自動型小型動力ポンプ付積載車
全自動型小型動力ポンプ付積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
水槽付消防ポンプ自動車Ⅱ型
消防ポンプ自動車CD-Ⅰ型
軽積載車
指揮車
救助工作車Ⅲ型
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
軽積載車
軽積載車
消防ポンプ自動車CD-Ⅰ型
小型動力ポンプ付水槽車
広報・人員搬送車
指揮車
特殊災害資機材車
小型動力ポンプ付積載車
小型動力ポンプ付積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
消防ポンプ自動車CD-Ⅰ型
水槽付消防ポンプ自動車Ⅰ-A型
指揮車
小型動力ポンプ付積載車(救助資機材搭載)
小型動力ポンプ付積載車(救助資機材搭載)
小型動力ポンプ付軽積載車
水槽付消防ポンプ自動車Ⅰ-A型
消防ポンプ自動車CD-Ⅰ型(救助資機材積載型)
救助工作車
小型動力ポンプ付水槽車
小型動力ポンプ付積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
小型動力ポンプ付軽積載車
上記の表を購入先ごとにまとめると下表のとおりである。
購入先
A社
B社
C社
D社
E社
F社
合計
契約金額合計 購入台数合計
(円)
(台)
137,077,500
8
56,542,500
2
124,968,900
14
139,356,000
7
36,472,040
2
268,180,500
10
762,597,440
43
191
登録年月日
H19. 8.30
H19.12.26
H20. 1.28
H20. 1.28
H20. 1.29
H20. 1.29
H20. 2.18
H20. 2.22
H20. 3.24
H20.10. 8
H20.12. 4
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H20.12. 5
H21. 1.19
H21. 2.25
H21. 7.17
H21. 9.25
H21.11.11
H22. 1.12
H22. 1.12
H22. 1.12
H22. 1.12
H22. 1.12
H22. 1.12
H22. 2.18
H22. 2.24
H22. 9.29
H23. 2. 7
H23. 2. 7
H23. 2. 7
H23. 2.24
H23. 3.16
H23.12.19
H24. 2.28
H24. 3.22
H24. 3.22
H24. 3.22
F社は、1台あたりの単価が高額な救助工作車等の特殊車の購入が 3 台あったため、
契約金額合計が突出している。C社は、契約金額合計はさほどではないが、1台あた
りの単価が低額な小型動力ポンプ付軽積載車等の購入台数が多いため、購入台数合計
は 14 台と最も多くなっている。
なお、入札参加予定業者は松山市内に本社・支店/工場等を有している業者に限定
している。この点に関しては、市内の中小企業の育成及び振興等の観点から市内に事
業所が設置されている会社に限定しているが、6 社あることで競合性は十分確保でき
ていると契約課では考えている。
(ⅱ)単価契約の購入による取得手続
単価契約による取得手続は次のとおりである。
① 所管課は購入を希望する物品について支出負担行為書、契約決定通知書を作成
し課長の承認を得る。契約課は、所管課からの契約決定通知書を集約して業者
に手渡す。
② 物品検査員及び受領員は納入された物品と契約決定通知書を照合し、契約決定
通知書に検収印を押す。納入業者は所管課に請求書を送付する。
③ 備品に該当する物品については、納入を受けた所管課の担当者は備品台帳への
登録を行う。登録後財務会計システムから出力される物品出納通知書に所管課
長の承認を得る。
④ 所管課の担当者は請求書に基づいて支出命令書を作成し、所管課長の承認を得
て支払手続を行う。
なお、消防局独自での単価契約はないため、監査手続は実施していない。
(4)備品の処分手続
備品の処分手続とは、備品が毀損等により使用できなくなった場合、使用する必
要が無くなった場合に廃棄または売却を行う手続である。
① 所管課にて、廃棄・売却もしくは他部署等での再利用の可能性を検討し、廃棄・
売却する場合は該当する備品を物品台帳から削除する。削除後、売却物品払出
通知書(売却処分の場合)、不用品廃棄処分調書(廃棄処分の場合)が財務会
計システムから出力される。
② 売却物品払出通知書、不用品廃棄処分調書は所管課長の承認後、契約課長の承
認を得て、会計事務局へ提出される。
③ 売却の場合は各所管課が手続を実施する。
(車両売却は契約課で実施する。)
④ 廃棄の場合は契約課が廃棄対象備品を処分する。
192
平成 23 年度に処分した備品について、重要物品である車両から任意に下記 3 件
をサンプルとして抽出し、関連書類(廃車伺いの起案文書及び添付資料)と整合し
ていることを確認した。
No
1
2
区分
重要物品
重要物品
物品番号
02006870
00104514
3
重要物品
00104444
摘要
指令車(ニッサンセドリック)
特殊用途自動車
救助工作自動車
救急自動車 (1 階車庫)高規格救急車(ニッサ
ンパラメディック)
内容
廃棄
売却
譲与
(5)備品の保管換手続
備品の保管換手続とは、ある部署で使用されていた備品を別の部署で使用するた
めに備品の異動を行う手続であり、財務会計規則第 353 条では、保管換を行おうと
する出納員等は、課長の承認を得てその旨を会計管理者に通知するように定められ
ている。
① 異動元となる所管課において保管換をする備品、異動先の所管課を物品台帳に
登録する。登録後、物品出納通知書(所属変更・払)、物品出納通知書(所属
変更・受)が財務会計システムから出力される。
② 異動元の所管課の課長は物品出納通知書(所属変更・払)に保管換の承認をす
る。
③ 保管換となる備品については現物に併せて承認済の物品出納通知書(所属変
更・払)とともに物品出納通知書(所属変更・受)が異動先へ送られ、異動先
の所管課長は物品出納通知書(所属変更・受)を承認の上それぞれを会計事務
局へ提出する。
④ 物品出納通知書(所属変更・払)、物品出納通知書(所属変更・受)は会計事
務局長の決裁※を得る。
※会計管理者の補助組織設置規則第1条にて、会計管理者の権限に属する事務及び市
長の権限に属する事務の一部を処理させる組織として会計事務局が設置されており、
保管換は同規則第 5 条により会計事務局長の専決事項とされている。
平成 23 年度の物品出納通知書から任意に下記 3 件をサンプルとして抽出し、備
品一覧の登録と整合していることを確認した。
No
物品番号
1
02006878
2
10215469
3
02006727
摘要
救急自動車 救急車(ニッサン パラメ
ディック2WD)
照明機器 ファイヤーバルカンLED
防爆モデル
無線機(車載用 10W)
193
払出所属
受入所属
警防課
北条支署
警防課
東消防署
北条支署
通信指令課
(6)備品のたな卸し手続
松山市財務会計規則第 367 条において、
「毎年度 3 月 31 日現在において、その保
管に係る物品のたな卸しを行い、その保管する物品の内(中略)備品の現在高につ
いて、物品台帳を作成し、5 月 31 日までに会計管理者に報告しなければならない。」
こととされている。また、備品たな卸し要領は、たな卸しの目的を「実際の現物と
帳簿とを照合し、差異が生じた場合には、その原因を追及するとともに、帳簿と現
物が一致するよう検品する手続をいう。たな卸しは、多くの人手と時間を要する作
業であるが、正しい資産把握をするために不可欠な作業である。」と規定している。
平成 23 年度末を基準日として実施されたたな卸し結果報告関連帳票(
「備品たな
卸報告書」
、修正した物品台帳、
「不明品(登録未処理)調査票」及び「たな卸確認
表」
)を閲覧し、たな卸しが規則等に準拠して実施されているか検討した。
「備品たな卸報告書」上、総務課で管轄している各消防団ポンプ蔵置所の備品の
たな卸しについては平成 24 年 5 月 21 日から 24 日に実施した旨記載されていたが、
市内一円に 112 箇所点在するポンプ蔵置所のたな卸しを限られた総務課の要員によ
って 4 日間でどのように実施したのか質問したところ、
『当該期間に総務課員が現
物確認を行ったわけではなく、秋に消防団員が作成した「備品検査台帳」に基づい
て、総務課員が年度末を基準日とするたな卸し結果報告関連帳票として作成してい
る。』とのことであった。
「備品検査台帳」を閲覧したところ、実施基準日や実施日
は記載されておらず、物品番号よりも大きな管理単位である物品コード(例:防火
衣)ごとにカウント数量が記載されていた。また、各消防団ポンプ蔵置所の備品に
関しては、物品台帳の修正は発生していなかった。
別の基準日で作成された「備品検査台帳」に基づいて総務課員が帳簿(年度末時
点の物品台帳)と照合しても、年度末までに取得、処分、保管換等が発生している
ため、差異が生じる場合に原因追及にかえって手間を要することが想定される。ま
た、備品たな卸し要領は物品番号ごとにリストアップされている「たな卸確認表」
にそれぞれ現物確認のチェックマークを入れるよう規定しているが、物品コード単
位での合計数量しか記載されていない「備品検査台帳」から「たな卸確認表」に転
記する際に、差異が生じる場合には具体的にどの資産を消防団員が現物確認したの
か特定できないことも想定される。前述のたな卸しの目的に照らし合わせると、こ
のようなたな卸し方法については、見直しの余地があると考える。
【指摘⑧】
消防団ポンプ蔵置所の備品たな卸しは、実施基準日が 3 月 31 日ではないため、
財務会計規則第 367 条に準拠しておらず、「備品たな卸し要領」における「たな
卸確認表」を使用していない。規則等に従い、3 月 31 日を実施基準日とし、ま
た、
「たな卸確認表」を使用するべきである。
194
(7)現物確認
また、平成 23 年度のたな卸確認表から、消防活動の中心である消防局のうち小型
の重要物品を保有する予防課と運用車両数が最も多く船舶も保管する西消防署を
サンプルとして抽出し、現場を視察するとともに現物の実在性を確認した。
【たな卸確認表から現物を確認-現物の実在性を確認】
所管
番号
予防課
西消防署
10189450
10189446
10217860
103921 ~
103930
104415
104436
104509
10000554
10016727
10044290
10064998
10140979
10146545
10181378
10181838
10183845
10183846
10183848
10208512
10210182
10210363
10225342
104419
104450
104503
品名
規格
その他測定機器
その他測定機器
その他測定機器
㈱ハイロックス KH-7700
赤外線サーモグラフィ
ガスクロマトグラフ質量分析装置
酸素呼吸器
車載陽圧型
特殊用途自動車
特殊用途自動車
梯子付消防自動車
特殊用途自動車
化学消防自動車
高所放水自動車
消防ポンプ自動車
救急自動車
特殊用途自動車
消防ポンプ自動車
救急自動車
小型船舶
その他運搬車
通信指令装置
画像探索機
特殊用途自動車
その他映像関連機器
救助工作自動車
特殊用途自動車
化学消防自動車
水槽付消防自動車
水槽車
原液搬送車
40m 級梯子車
災害用資機材軽積載車
大型化学消防車
22m 級放水車
水槽付消防ポンプ自動車Ⅱ型
高規格救急自動車
署本部車
消防ポンプ自動車 CD-Ⅰ型
高規格救急自動車
消防救急艇
電動アシスト付多機能搬送者
救急車用車両動態監視システム
簡易画像探索機
指揮車 トヨタアルファード
熱画像直視装置
救助工作車Ⅱ型
小型動力ポンプ付水槽車
化学消防車
水槽付消防ポンプ自動車Ⅱ型
ドレ-ゲル BG-4
取得価格
(円)
6,900,000
2,980,000
8,800,000
@520,000
×10 本
24,070,000
28,000,000
142,550,000
1,510,000
66,500,000
81,900,000
30,550,000
26,580,000
1,380,362
21,000,000
32,800,000
182,800,000
1,550,000
2,960,000
2,550,000
7,270,000
3,190,000
84,200,000
26,480,000
39,800,000
26,500,000
受入年月日
H21.11.26
H22. 3.30
H23. 1. 7
H 9.12. 8
H 8. 3.26
H14. 3.20
H 9. 2.17
H14. 7. 4
H15. 3. 3
H16. 2.13
H17. 1.14
H19. 2.28
H19. 6.22
H21. 1.21
H21. 2.17
H21. 3.26
H21. 3.26
H21. 3.26
H22.12.21
H22.10. 5
H23. 1.24
H23.12.20
H 9. 3.21
H 4. 3.17
H12. 3.15
【現物からたな卸確認表を確認-たな卸確認表の網羅性を確認】
所管
番号
予防課
10179537
西部支署
104856
品名
その他消防・保安機
器
トレーニング用機器
取得価格
(円)
規格
マイクロフォーカス
査装置
4 階体育室
195
X線透過検
受入年月日
9,100,000
H20.10.15
1,065,000
H 6.12. 8
5.公有財産管理
(1)公有財産の定義
公有財産とは、地方公共団体が所有する財産をいい、地方自治法第 238 条第 1 項
において次に掲げるもの(基金に属するものを除く。)をいう。
一 不動産
二 船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
三 前二号に掲げる不動産及び動産の従物
四 地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
五 特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
六 株券、社債券(特別の法律により設立された法人の発行する債券に表示される
べき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債及び国債その他これらに準ずる権
利
七 出資による権利
八 不動産の信託の受益権
公有財産は、保有目的の観点から下記の区分に分類される。
(ⅰ)行政財産
行政財産とは、行政目的達成のために利用するものであり、以下の公用財産と
公共用財産に分類される。
<1>公用財産
公用財産は、市が事務または事務を執行するために直接使用することを目的
としている財産をいう。市庁舎、消防署、清掃事務所等の敷地や建物が代表的
なものである。
<2>公共用財産
公共用財産は、市民が一般的に共同利用することを本来の目的にする公有財
産をいい、道路、学校、市営住宅、公園等の敷地や建物が代表的なものである。
行政財産は、行政目的の達成のために利用されるべき財産であることから、
これを私法上の関係において運用することが地方自治法第 238 条の 4 において
原則として禁止されている。
(ⅱ)普通財産
普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。普通財産は、直接特定
の行政目的のために供されるものではなく、一般人と同じ立場でこれを保持し、
その管理処分から生じた収益をもって地方公共団体の財源に充てることを主目
的とする財産であることから、これを貸付け、交換し、売り払い、譲与し、もし
くは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することが出来ることとされている。
市が保有している財産の中で、未利用・未稼働である財産もこの普通財産に分類
される。
196
(2)公有財産台帳への登録状況
市は、各所管課で個別に管理している財産台帳を、管財課において電子化された
都市情報システムとして登録し、管財課等で各財産の情報が閲覧可能となるよう整
備している。
都市情報システムにおける登録項目は、下記のとおりである。
(ⅰ)土地
【登録項目 登録項目の内容】

地区コード・本市を 44 の地区に分類したコード

施設敷地 物件の名称

町コード 町のコードナンバー

町コード名 町の名称

所在地番 登記上の地番

公簿地目コード 不動産登記法上の土地の用途による分類

公簿地積 登記上の土地の面積

実測地積 実測ベースの面積

取得年月日 土地を取得した時期

登記年月日 土地を登記した時期

取得価格 土地を取得した時の価格

登記原因 売買や贈与などの登記が必要となる事実

譲渡人住所 譲渡人の住所

譲渡人氏名 譲渡人の氏名

特記事項 備考欄

通知年月日 所管課からの登録の通知時期

原因年月日 通知原因となった事実の発生時期

所属課コード 物件の所管課名

状態コード 状態のコードナンバー

状態コード名 登録が初期のものであるか取得や異動によるものであるか

財産分類コード大 行政財産であるか普通財産であるかの分類区分

財産分類コード中 公用財産であるか公共用財産であるかの分類区分

財産分類コード小 庁舎、学校、公園等の用途区分

財産分類コード細 中央公園、総合公園、下水処理場等の施設単位での区分
197
(ⅱ)建物
【登録項目 登録項目の内容】

地区コード 本市を 44 の地区に分類したコード名

台帳連番 公有財産番号

施設名称 施設の名称

用途コード名 車庫、庁舎など、用途名称

用途名称 車庫、庁舎など、用途名称

構造コード名 木造や鉄筋コンクリートなどの構造名

延床面積 延床面積

所在町コード 公有財産の所在する町名

所在地 登記上の地番

所属課コード 物件を管理している所管課名

状態コード 登録が初期のものであるか取得や異動によるものであるか

財産分類コード大 行政財産か普通財産かの分類区分

財産分類コード中 公用財産か公共用財産かの分類区分

財産分類コード小 庁舎、消防施設等の用途区分

財産分類コード細 清掃施設、下水処理場等の施設単位での区分
(3)市の公有財産の保有状況
平成 23 年度の消防局の行政財産の土地・建物の保有状況は公有財産調書により
調査を実施した。
区分
平成 22 年度末現在高
(㎡)
土地(地積)
建物(延床面積)
38,312.53
25,623.12
増減高
平成 23 年度末現在高
(㎡)
+754.57
▲166.05
39,067.10
25,457.07
上記には、消防局管轄の中央消防署、東消防署、南消防署、西消防署を中心とす
る消防署の施設や、救急出張所や支署の施設が含まれる。また、平成 23 年度にお
いて普通財産とされた建物「北条分団1部ポンプ蔵置所」以外はすべて行政財産で
あり、公共用財産は有していない。
【増減内容】
<土地>

城北支署
▲173.00 ㎡
調査により修正

防災無線中継局用地
+440.00
分類替

防災(移動系)中継局
+121.00
〃

久米分団南久米ポンプ蔵置所 +220.98
所管替、調査登載
他3物件
寄付による増加
+145.59
198
<建物>

味酒分団古町ポンプ蔵置所
▲80.98 ㎡
H24.2 取壊し

石井第 4 水防倉庫
▲33.05
H23.12 取壊し

北条分団1部ポンプ蔵置所
▲33.32
H23.8 用途廃止(普通財産へ)

北条分団4部ポンプ蔵置所
▲18.70
H23.9 取壊し
(4)取得手続
取得手続は、財務会計規則によると以下のとおりである。
①
所管課長は、買入れ、交換、寄付その他によって公有財産を取得しようとする
ときは、あらかじめ当該財産に関して必要な調査を実施する。
②
所管課長は、公有財産を取得しようとするときは、管財課長と協議の上、市長
の決裁を受ける。
③
所管課長は、登記または登録をすることができる公有財産について、取得後遅
滞なく登記または登録を行う。(注:必要な場合以外は建物は登記していない)
④
所管課長は、原則として、登記の必要な財産は登記の完了後、その他の財産に
ついては収受が完了した後にその対価を支払う。
⑤
所管課長は、登記完了後、通知書にて管財課長に通知を行う。
⑥
管財課長は、所管課長から通知書が提出されたときは、直ちに公有財産台帳(土
地建物については都市情報システム、その他の公有財産は紙ベースの台帳)への
記載を行う。所管課長は、管理に属する公有財産について財産台帳(管理する財
産について各課で作成した台帳)を備えつける。
ただし、予定価格 6,000 万円以上の不動産もしくは動産の買入れ(土地につ
いては、1 件 5,000 ㎡以上のものに係るものに限る)については、議会の議決
を必要とする。
(議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条
例第 3 条)
なお、平成 23 年度においては有償による土地・建物の取得は行われていない
ため、監査手続は実施していない。
(注)について
不動産登記法(平成 16 年法律第 123 号)は、不動産の表示の登記については、所有者
等に登記申請を義務付けているが(同法第 47 条等)が、国又は地方公共団体が所有する
土地又は建物についての表示に関する登記の申請義務については、当分の間これを免除
するとの従前の取扱いを継続することとしている(同法附則第9条、不動産登記法の一
部を改正する等の法律(昭和35年法律第14号)附則第5条第1項)
。そのため、地方
公共団体が所有する建物については、表示に関する登記の申請義務が課されていないた
め、表示登記がないとしても違法状態にはない(出典元:国政モニターの声に対する回
答:法務省)
。松山市消防局においてもこの取り扱いに従い、建物の登記は実施していな
い。
199
(5)処分手続
処分手続とは、普通財産の交換、譲与、売払を実施することを指す。処分手続を
行うことができる財産は普通財産に限られるため、不用になった行政財産について
は用途廃止を事前に行い、普通財産としておく必要がある。
建物の公有財産台帳より、平成 23 年度に処分があった 4 件の建物のうち、任意
に下記 1 件をサンプルとして抽出し、管財課への通知、財産台帳の通知書、都市情
報システムにて「処分」登録がなされていることを確かめた。
地区コード
北条
施設敷地
北条分団4部
ポンプ蔵置所
公簿地積
所属課コード
18.70 ㎡
総務課
財産分類
財産分類
コード
コード中
普通財産
普通財産
(補足)平成22年度包括外部監査での指摘事項への対応状況
平成 22 年度の包括外部監査において、土地の公有財産台帳より、施設敷地名に「跡
地」や「旧」といったフレーズが含まれる物件について、一部物件をサンプルとして
抽出し利用状況を調査した結果、消防局に関連して公有財産の処分に係る台帳への反
映漏れが発見されている。
地区コード
味生
施設敷地
味生分団大可賀ポ
ンプ蔵置所跡地
公簿地積
47.27 ㎡
所属課
財産分類
財産分類
コード
コード
コード中
総務課
普通財産
普通財産
味生分団大可賀ポンプ蔵置所跡地については平成 18 年度に対象物を処分し、市の
財産ではなくなっているにもかかわらず都市情報システム上に処分の実態が反映さ
れず、登録されたまま実態と台帳が整合していない状態であった。また、公有財産調
書上も登録されたままであり、処分手続が行われていなかった。
この点について、平成 23 年度の消防施設一覧(都市情報システム)、公有財産調書
を閲覧したところ、状態コードが「処分」として登録されており適切に処理されてお
り改善されたものと判断した。
200
(6)耐震化
市の耐震改修促進については、建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下、
「耐
震促進法」という。) 第 5 条第 7 項及び「愛媛県耐震改修促進計画」に基づいて「松
山市耐震改修促進計画 (以下、
「市計画」という。)」が定められている。
建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための施策として「市計画」では、
耐震促進法第 6 条の規定による用途・規模等に該当する建築物で、昭和 56 年 5 月
31 日以前に建築確認されたもので、市が管理する施設について、自ら耐震性の確保
に努めることとしている。
そのうち、消防局が管理する施設について、総務課は、耐震改修の必要性があり
耐震改修が可能なものについて、外部コンサルタントに委託して耐震診断を実施し
て、耐震改修工事の候補を決定する。その後、付与された予算に従って、耐震改修
工事を実施している。
(ⅰ)常備消防施設
常備消防施設(消防局分)については、平成 7 年 12 月の「耐震改修促進法」の
施行を受け、建築基準法の耐震基準が強化された昭和 56 年以前に建設された、消
防局・中央消防署(昭和 50 年築)、城北支署(昭和 53 年築)
、城東支署(昭和 40
年築)
、西部支署(昭和 49 年築)の4庁舎について、平成8年度に耐震診断調査を
受けている。
その結果、消防局・中央消防署、城東支署については「地震の振動及び衝撃に対
して、倒壊又は崩壊する危険が高い」又は「~危険がある」と診断されたことから
改修・新築工事を実施した。
施設名
(改築前)
消防局・中央消防署庁舎
最低 Is 値
0.199
保有水
指標
平耐力 q
0.41
地震の振動及び衝撃に対
S50
して、倒壊又は崩壊する危
H15 耐震
険が高い
改修
地震の振動及び衝撃に対
旧:城東支署
0.488
0.80
して、倒壊又は崩壊する危
険がある
(出典元:松山市消防局提出「常備消防施設の耐震診断について」)
201
建設年度
H14 新築
移転
【耐震改修工事が実施された消防局・中央消防署】
建物外周に耐震補強を行っている。
【新築移転された城東支署】
繁華街に近く、建物が密集した地域に所在する。
また、城北支署、西部支署については、
「~危険性が低い」と診断されたものの、
後に示された「官庁施設の総合耐震計画基準」(平成 8 年 10 月 24 日:建設省営計
発第 100 号通知)
と照らした場合、
防災拠点としての耐震性能が下回っていたこと、
老朽化が進んでいたことから改修・新築工事を実施した。
施設名
(改築前)
城北支署
最低 Is 値
保有水
指標
平耐力 q
地震の振動及び衝撃に対し
0.940
0.83
て、倒壊又は崩壊する危険
が低い
建設年度
S53
H22 増改築
地震の振動及び衝撃に対し
旧:西部支署
1.216
0.96
て、倒壊又は崩壊する危険
が低い
202
H17 建替新築
【増改築された城北支署】
城北支署の全景
防災備蓄倉庫
地震災害用瓦礫訓練施設
平成 22 年 3 月に庁舎を新築。大規模災害に備え、北部地区の防災拠点として、防災備蓄倉庫を有し
ている。また、地震災害現場を想定した訓練施設も併設している。
所在地:愛媛県松山市馬木町 2227
【新築移転された西部支署】
鉄筋コンクリート 2 階建ての庁舎と防災備蓄倉庫を有している。
所在地:愛媛県松山市富久町 277
203
(ⅱ)非常備消防施設
非常備消防施設(消防団分)については、平成 23 年度に「消防団ポンプ蔵置
所耐震化事業計画」が策定されている。
消防団ポンプ蔵置所 112箇所
H23.4.1現在
旧耐震基準施設39箇所
2階建22箇所は
耐震安全性が保たれていない
新耐震基準施設
平屋建
17箇所
S56年建築基準法改正後
建設された施設 73箇所
昭和 56 年建築基準法改正後建設された施設 73 箇所は新耐震基準施設であるため、
耐震改修の必要性が乏しいものと判断された。旧耐震基準施設は 39 箇所あるが、
構造上の問題からまずは 2 階建て 22 箇所について耐震安全性が保たれていないと
判断し、順次建て替えを計画した。この建て替えにあたっては、概ね 10 年計画で
平成 31 年までに下記①~④を考慮しながら完了する計画となっている。
① 長期にわたる計画のため、施設規模は概ね 80 ㎡を目安とし、コスト削減を図
るとともに、鉄骨造についても検討する。
② 財源は原則、防災対策事業債とするが、補助金等の充当が可能なものについて
は優先する。
③ 建設用地の長期利用が確実であるもの、かつ、地域住民からの要望の高いもの
を優先する。
④ 統合を行えるものについては優先して実施し、コスト削減を図る。
計画年度
対
象
計画年度
対
象
H23 年度
三津浜
味酒
H28 年度
西長戸
古三津
長師
H24 年度
和気
清水
H29 年度
窪野
南江戸※2
津吉
現時点で統合の可能性があるもの
*1 高浜蔵置所との統合を検討中
*2 南江戸と新玉の統合を検討中
*3 道後との統合を検討
204
H25 年度
港山※1
井門
H30 年度
北斎院
正円寺
新玉※2
H26 年度
福角
山西
H31 年度
出口
立花
祝谷※3
H27 年度
東垣生
南高井
建替実施前の「味酒分団古町ポンプ蔵置所(愛媛県松山市)
」
平成 24 年 5 月 16 日完成「味酒分団消防ポンプ蔵置所(愛媛県松山市)
」-建築にあたっては鉄骨造
でコスト削減が図られている。
205
平成 24 年 11 月現在、2 箇所について改築工事が完了しているが、2 箇所が工事
中、
残り 18 箇所については予算手当が完了次第順次取り掛かる予定となっている。
【意見⑫】
消防局の耐震改修対応状況について、常備消防施設(消防本部・各支署)につ
いては、耐震診断及び改修は完了しているが、非常備消防施設(消防団詰所・ポ
ンプ蔵置所)については、一部耐震化が未了であり、南海トラフによる地震想定
を踏まえると、他の公共施設とのバランスを考慮する必要はあるものの、できる
だけ早急に耐震化を完了することが望ましい。
(7)行政財産の目的外使用許可
行政財産とは、地方自治法によれば、地方公共団体において公用又は公共用に供
し、又は供することと決定した財産のことをいい、行政目的で使用されるため、原
則として、貸付、交換、売却等の行為が禁止されている。
しかし、財務会計規則では次の各号のいずれかに該当する場合については、その
用途又は目的を妨げないと認める場合で、かつ、当該使用が市の事務、事業と密接
な関連を持ちもしくはその円滑な執行に寄与するものまたは公益上必要な場合に
限り行政財産の目的外使用を行うことができるものとされている。
① 職員、学生、病院における入院患者等当該行政財産を利用する者のため、当
該行政財産に食堂、理髪所、売店等の厚生施設を設置する場合
② 公の学術調査研究、公の政策等の普及宣伝その他公共目的のために行われる
講演会、研究会その他市民の集会等の用に短期間使用させる場合
③ 当該行政財産を運送事業、水道事業、電気事業又はガス事業その他公益事業
の用に供することがやむを得ないと認められる場合
④ 災害その他の緊急事態の発生により、当該行政財産を応急施設として極めて
短期間使用させる場合
⑤ 国又は他の地方公共団体その他公共的団体において公用又は公共用に供す
るため特に必要と認められる場合
⑥ 前各号に定めるもののほか、市長が特に必要と認める場合
現在、松山市消防局では計 14 件の目的外使用物件があるが、その全物件につい
て平成 23 年度において、
「行政財産使用許可申請書」によって目的外使用および使
用料減免の申請を許可しているか、上記財務会計規則のどの条項に該当するかを次
ページの表において検討した。
206
申請者名
場所
面積(数量)
開始日
終了日
目的
使 用 料 (円 )
該当条項
申請者名
場所
面積(数量)
開始日
終了日
目的
使 用 料 (円 )
該当条項
申請者名
場所
面積(数量)
開始日
終了日
目的
使 用 料 (円 )
該当条項
申請者名
場所
面積(数量)
開始日
終了日
目的
使 用 料 (円 )
該当条項
申請者名
場所
面積(数量)
開始日
終了日
目的
使 用 料 (円 )
該当条項
独立行政法人
防災科学技術研究所
独立行政法人
防災科学技術研究所
㈱ STNet
消防局・中央消防署
庁舎内
メタルケーブル1条 121m
10.89㎡
10.89㎡
光 ケーブル1 条 121m
H23. 4. 1
H23. 4. 1
H23. 4. 1
H24. 3.31
H24. 3.31
H24. 3.31
地震観測用観測機器設
地震観測用観測機器設
第 1種 電 気 通 信 事 業 用 通
置のため
置のため
信線設置のため
23,104
11,936
免除
⑤
⑤
③
西部支署敷地の一部
国土交通省国土地理院
西部支署敷地の一部
H23. 4. 1
H24. 3.31
基準点測量表設置のた
め
免除
⑤
愛媛県
消防桟橋施設
H23. 4. 1
H24. 3.31
漁業取締船係留のため
免除
⑤
㈱愛媛CATV
西消防署 アンテナマ
スト
敷地内地下配管・庁舎
内配管
北条支署敷地の一部
松山共済協同組合
松山市職員生活協同組合
消防局・中央消防署
消防局・中央消防署
庁 舎 3階
庁 舎 2階 外 10カ 所
45.00㎡
H23. 4. 1
H23. 4. 1
H24. 3.31
H24. 3.31
火災共済事業事務局設
自動販売機設置のため
置のため
免除
免除
⑥
①
四国コカ・コーラボト
特定非営利活動法人
リ ン グ (株 )
日本ケアドッグ協会
南久米消防ポンプ蔵置
城北支署
所の敷地の一部
震災対応訓練施設
0.87㎡
H23.11. 1
H23.11. 1
H24. 3.31
H24. 3.31
災害救救助犬訓練のた
自動販売機設置のため
め
1,142
免除
④
③
郵便事業㈱
北梅本消防ポンプ蔵置
所の敷地の一部
吉木地区
吉木消防ポンプ蔵置所
の敷地の一部
0.09㎡
H23.11.15
H23. 4. 1
H23.11. 1
H24. 3.31
H24. 3.31
H24. 3.31
エリアワンセグ実証実
郵便差出箱(ポスト)
地上デジタル放送共聴
験のため
の設置のため
設備のため
287
800
免除
③
③
③
坂本地区自主防災組織
荏原地区自主防災組織
連合会
連合会
出口消防ポンプ蔵置所
東方消防ポンプ蔵置所
の一部
の敷地の一部
3.5㎡
3.5㎡
H23. 4. 1
H23. 4. 1
H24. 3.31
H24. 3.31
防火倉庫設置のため
防火倉庫設置のため
免除
免除
③
③
207
消防局に対して便益が提供されない 5 件については、一定の積算基礎に単価とな
る係数を乗じて算定した使用料を収受している。ただし、使用料は全体で年間 37
千円程度であるため算出基礎の詳細検討は省略した。(積算基礎の例:土地:固定
資産評価額に一定の係数を乗じて算出する。配管:長さに対する係数を乗じる。)
また、他 9 件については、
「松山市行政財産の使用料徴収条例」第 5 条に基づき、
国及び地方公共団体によって使用される、もしくは市長が特に必要と認める財産と
して使用料が免除されている。
ただし、松山共済協同組合へ火災共済事業事務局設置を目的として使用料が免除
されている点については、消防局に対する便益が不明確であったため追加の検討を
実施した。
当組合は消防火災共済を販売する組合組織で、松山市および消防局との直接的な
人的関係や出資等の資本的関係はなく、昭和 30 年代に不足していた消防費用を賄
うことを副次的な目的として設立され、理事長は代々松山市長が就任し、主に消防
団員が契約獲得活動を行ってきた。
昭和 31 年から平成 15 年まで通算して当組合の余剰金から 60,200 千円の寄付金、
43,865 千円相当の現物寄付を消防局が受け取って消防基金の設置もしくは寄付さ
れた現物を消防活動に利用してきた経緯がある。
しかし、平成 16 年以降は当組合の財政状況の悪化により寄付が途絶える傾向に
あり、平成 23 年度に一度 500 千円受け入れたのみである。仮に現在利用されてい
る消防局・中央消防署庁舎3階の一部屋 45 平方メートルについて使用料を収受す
る場合には年間 230 千円と見積もられており、寄付がなかった 7 年間では 1,610 千
円程度の賃料を受けることができたといえる。そのため、免除した使用料とバラン
スを欠いている状況が継続している。
【意見⑬】
松山共済協同組合へ火災共済事業事務局設置を目的として使用料が免除されて
いる点については、消防局の事務、事業と密接な関連を持ちもしくはその円滑な執
行に寄与するものまたは公益上必要な場合に該当するか将来的には議論の余地が
あると考える。
208
(8)現場往査
松山消防局管轄内で最大の面積を有する松山西消防署と隣接する訓練用地につ
いて、監査人が現場を視察し、土地については不動産登記簿謄本と突合した。
区分
名称
所在地
筆数
面積(㎡)
謄本
公用財産
西消防署
三津三丁目 283-1
6
5,678.47
合致
消防施設
消防訓練用地
三津三丁目 283-1
3
3,806.27
合致
(出典元:公有財産調書)
現場視察の結果、西消防署の南側に位置する消防訓練用地はサッカーグラウンド
半面程度の大きさを有しているが、常設の訓練設備等は設置されていないため、往
査時には空き地の状態となっていた。夏に実施される消防救助技術大会練習のため
一時的に仮設の足場を組んで高所訓練を行う以外は、パイロンを並べた車両運転訓
練、ホース延長訓練等を非定期的に実施しているが、日常的な利用は認められない
ことから、未利用財産に該当しないか追加的に検討した。
この訓練用地は西消防署用地と一括して平成 5 年 3 月に松山土地開発公社を経由
して 11 億 9,031 万円(1 坪あたり約 41 万円)で取得している。これは、昭和 61 年
に整備された松山南消防署の 1,838 ㎡と比較してもかなり大規模な用地購入である。
このような広大な訓練用地を取得した経緯としては、平成 4 年 12 月定例会の松
山市議会議事録(12 月 9 日分)によると、当時の消防施設には訓練用地がなく、訓
練に際して学校等の広場を借用して実施していたため広大な訓練用地を西消防署
建設と同時に取得して総合的な消防の教育訓練の場として広く活用することを目
的としていたものである。
また、上記土地については港湾に近く大規模災害時には本州等からの応援部隊の
野営地として活用することも期待される。
なお、管財課は、当用地については取得時の経緯に合致した利用状況にあり未利
用財産に該当しないものとの見解を示している。
209
6.情報システム
ICT(情報通信技術)を利用した情報システムは、様々な組織と分野において利
用されており、現在の消防組織においても無視できない存在となっている。消防活動
に必要なデータをいかに広範囲にかつ正確に、しかもできるだけスピーディに集め、
これにより有効なデータに編集し、消防活動に活かせるかが重要な要件となってくる。
(1)監査対象
消防局を含む松山市の情報システムの管理体制は大きく次の二つに分類される。

電子行政課と情報システムの所管部署が、役割を分担し管理を行う体制

情報システムの所管部署が独自で管理を行う体制
後者の消防局の所管部署が独自で管理を行うシステムは下記の 3 つである。
① 消防通信指令管制システム
② 画像伝送システム
③ 消防業務支援システム(注)
(注)③で取り扱う業務範囲
【防火対象物管理】
消防同意事務、防火対象物関連情報管理、予防査察事務、防火管理者講習会開催事
務、防火管理者管理事務、汎用帳票の出力、消防法改正への対応
【危険物管理】
危険物施設許可事務、危険物施設管理事務、危険物施設立入検査事務、届出関係処
理事務、手数料関係処理事務、帳票の出力
【消防団員管理】
消防団員管理、消防団員報酬等の管理、消防防災現況調査
【その他】
消防通信指令管制システム支援、システム運用に必要なバージョンアップソフトの
取り込み等
②の画像伝送システムは通信手段の補足的な位置付けであり、③の消防業務支援
システムは入力源泉もしくは処理結果を紙ベースで保管しているため、ワープロ・
表計算機能に近いものとなっている。したがって、監査の主眼は①の消防通信指令
管制システムを対象とする。
また、消防通信指令管制システムは個人情報や職務上重要な機密情報を保持する
ものではなく、迅速・円滑な指令発動の実施が維持されることが重要であるため、
検討分野は「情報セキュリティ対策基準」の基本的な枠組みに記載された機密性・
完全性・可用性のうち、完全性・可用性に焦点を当てることとする。
210
現在の消防通信指令管制システムは、平成 15 年 4 月 1 日から運用開始され、災害等
の通報があったときに、災害場所の決定、災害内容に応じた車両等の選別及びそれらへ
の出動指令を迅速・的確に行い、市民の生命・身体・財産を災害等から保護することを
目的として整備されている。
システムの主な概要については以下のとおりである。

指令台
災害、火災、救急等の 119 番通報を受ける装置で、各署所に対する出動指令をか
け、消防車・救急車に対する無線連絡、関係機関等への業務連絡など通信系諸機能
を持つもの。

地図検索装置
指令台に対応して設けられたもので、災害地点の地図を表示させる。この情報が
車両動態位置管理装置へ送出され、災害現場の特定に活用される。
211

100 インチ大型プロジェクター
50 インチ画面が 8 面あり、100 インチ設定にすれば 2 画面で映像を見ることがで
きる。表示内容は、災害・救急事案・地図・車両動態・気象情報・医療情報などが
ある。

車両動態表示盤
出動中・出動可能・業務出向などの車両の動態を表示するもので、通信指令室や
各署所に設置されている。

119 番着信表示盤、各種情報表示盤
119 番着信表示盤は画像左半面で、電話局名、着信、話中、保留の表示がされる。
各種情報表示盤は画像右半面で、月日時分の表示、火災・救急・その他災害件数、
119 番着信件数の表示、気象情報の表示、救急病院の表示などがある。

指令音声合成装置
212
(2)情報システムに関する規則類
消防通信指令管制システムについては、松山市が定めた「情報セキュリティ基本
方針」
「情報セキュリティ対策基準」が適用される。
情報セキュリティポリシーの構成(松山市HPより)
文書名
情
報
セ
キ
ュ
リ
テ
ィ
ポ
リ
シ
ー
情報セキュリティ基本方針
内容
情報セキュリティ対策に関する統一的かつ基
本的な方針
情報セキュリティ基本方針を実行に移すため
情報セキュリティ対策基準
のすべてのネットワーク及び情報システムに
共通の情報セキュリティ対策の基準
ネットワーク及び情報システムごとに定める
情報セキュリティ実施手順
情報セキュリティ対策基準に基づいた具体的
な実施手順
なお、消防局においては、上記情報セキュリティ実施手順として「松山市消防局
通信指令管制システム等情報セキュリティ実施手順」が定められている。
(3)情報資源のたな卸
上記の「情報セキュリティ対策基準」に従い、消防局において「システム等情報
資産分類表」が作成されている。この分類表においては、システム別に 76 個のフ
ァイルが抽出されており、全てにわたって「機密性分類」
「完全性分類」
「可用性分
類」
「セキュリティの有無」が記載されている。
機密性分類
「公開」
・・・・第三者に開示・提供可能な情報
「組織外秘」・・・・職員に開示・提供可能な情報
「秘密」
・・・・特定の関係者又は部署内のみに開示・提供可能な情報
「極秘」
・・・・所定の関係者のみに開示・提供可能な情報
(注)運用管理責任者の承諾を得た場合に限り公開できるものとする。
完全性分類
「低」
「中」
「高」
可用性分類
「低」
「中」
「高」
・・・・情報の内容を変更された場合,消防業務等への影響は少ない。
・・・・情報の内容を変更された場合,消防業務等への影響は大きい。
・・・・情報の内容を変更された場合,消防業務等への影響は深刻かつ重大。
・・・・1 日の情報資産利用停止が許容される。
・・・・1 時間の情報資産利用停止が許容される。
・・・・1 年 365 日,1 日 24 時間のうち,0.1%の情報資産利用停止が許容さ
れる。
213
「システム等情報資産分類表」の査閲を行い、各ファイルのリスク分類の妥当性
を検討したところ、76 個のファイルのうち、完全性が「高」のファイルが 64 個、
可用性が「高」のファイルが 63 個と全体のファイルに占める割合が相当に高いが、
リスク分類を行っただけにとどまっており、情報資産の分類に応じた取り扱いが定
められていない。
【指摘⑨】
「システム等情報資産分類表」において、
「情報セキュリティ対策基準」第3章
2(2)に従い、ネットワーク運用管理者及び情報セキュリティ管理者は,情報
資産のリスク分類に応じて,その管理の方法について具体的に定めるべきである。
(4)パスワード管理
消防通信指令管制システムは消防本部においてはセキュリティドアによって区
画されておりパスワードの入力がないと入室できない。そのパスワードについては
適宜定期的(人事異動時)に変更されている。
セキュリティドアによる区画については、権限者が開けたドアを無権限者がすぐ
後ろを尾行して侵入するリスクがあるが、消防本部は入口の守衛による入所者管理
も実施することで、消防局関係者でない完全な無権限者が侵入することが防止され
ている。
(5)物理的セキュリティ管理
松山市が定めた「情報セキュリティ対策基準」に従って「松山市消防局通信指令
管制システム等情報セキュリティ実施手順」が定められており、セキュリティ区画
への入退室者に対し、
「入退室記録簿」を記入させている。
サーバーのラックは床にビスで固定され、機器類はサーバーにバンド固定されて
いる。サーバー室内に消火器が設置されているが、一般の消火器であるため、火災
時に使用した場合、電気設備にショートが生じて以後の利用が不可能となるおそれ
がある。
【意見⑭】
設置されている消火器は、火災時にサーバー類を汚損するおそれがあるため、
今後電気設備に適した二酸化炭素消火器設置の要否を検討されたい。
214
(6)論理的セキュリティ管理
消防通信指令管制システム等は基本的にインターネット等外部接続を行ってい
ない。したがって、アンチウィルスソフト、ファイヤーウォール等の一般的な論理
的セキュリティは設置していない。
ただし、保守障害対応にあたって遠隔操作が必要な場合が生じるため、一時的に
外部接続スイッチによってネット環境へ接続される。接続記録は「外部通信アクセ
ス管理表」に毎回記載され、不必要な接続がないことを確かめている。
平成 23 年度の「外部通信アクセス管理表」を閲覧した結果、導入当初の平成1
7年度においてはスイッチの切り忘れが生じていた形跡が散見されたが、その後は
業務手順が浸透したことで適切に切断と管理表の記入が実施されている。
スイッチ操作による外部接続のため、接続ログとの突合により管理表の網羅性を
確保できないが、サーバー室への入室に必要な鍵はセキュリティ区画への入退室者
管理が実施されていることで補完されている。
(7)業務継続計画
「業務継続計画」とは、大規模な災害、事故、事件等(以下、
「災害・事故」とい
う。)で庁舎、職員等に相当の被害を受けても、重要業務をなるべく中断させず、
中断してもできるだけ早急に(あるいは、許容される時間内に)復旧させるために
策定するものである。消防局が平常時に提供しているサービスが長期間停止した場
合、市民生活や経済活動に大きな支障を生じる。
また、災害・事故の発生時は、たとえ庁舎、職員等に相当な被害が発生しても、
市民の救助・救援の責任ある担い手として、災害応急対応、災害復旧の業務を実施
しなければならない。このため、災害・事故時においても消防局の重要業務を実施・
継続できるような周到な備えが不可欠である。
そこで、災害・事故時の重要業務の実施・継続を行う基盤を整えるべく、松山市に
おいては平成 24 年 5 月に「ICT部門の業務継続計画」を策定している。ただし、
この計画は松山市の電子行政課が所管するシステムだけを対象として作成された
ものであるため、平成 24 年 7 月に電子行政課は各部局に対し、独自管理を行うシ
ステムについて「ICT部門の業務継続計画」を策定して具体化するように通知を
行っている。しかしながら、消防局においては現時点では未着手となっている。
【意見⑮】
消防局の業務の実施・継続には、その業務を支える情報システムやネットワーク
等の稼働を安定的に確保することの重要性は高い。また、情報システムやネットワ
ーク等は、あらかじめ対策を講じておかないと、災害・事故の発生後から対策を始
めるのでは、稼動できないことはもとより、早期復旧も困難であるという特性を持
つ。したがって、現時点で電子行政課が作成した「ICT部門の業務継続計画」を
参考に消防局でも同様の計画を作成することが必要である。
215
なお、現時点では緊急時における代替事務処理方法として、「ICT部門の業務
継続計画」ほど詳細ではないものの、「松山市消防局通信指令管制システム等情報
セキュリティ実施手順」第 14 条が定められており、報告・連絡・調査・分析・対
応・復旧等を行うものとされている。
また、上記実施手順には記載されていないが、災害等により電源喪失が生じた場
合、消防局及び中央消防署において 10 分間はUPS(無停電電源装置)により電
源が確保され、その間に消防局の自家発電に切り替えが行われることが予定されて
いる。
加えて、消防通信指令管制システムは、固定電話 20 件・携帯電話 8 件までを上
限に受電するよう制限されており、問合せの集中・大量処理データの発生による過
負荷によるシステムダウンは想定していない。
仮に、システムダウンが生じた場合においても固定電話・内線電話・無線の 3 種
類の代替通信方法を用いた訓練を行っているため、処理時間に若干の追加が生じる
ものの通信指令課から各署所・部隊等への連絡が完全に途絶えることはないと予定
している。
(8)保守契約等の概要
消防通信指令管制システムは平成 15 年度に請負金額 6 億 3 千万円で構築工事が
行われ、その後通信機器・情報機器に分けて保守契約を締結して、定期保守を行っ
ている。保守料の金額については、業者から提示された作業項目ごとに工数や単価
を積み上げた見積り根拠に基づいて毎期更新されており下表のとおり、年々減少傾
向にある。
しかし、消防局において予定工数と実績工数との比較分析を行っていないため、
契約更新時に業者から提示された見積り工数の妥当性が検証できていない。
通信指令管制システム通信機器保守委託
委託契約料(税込)
平成 23 年度
9,803,850 円
平成 22 年度
9,803,850 円
平成 21 年度
10,376,100 円
平成 20 年度
10,143,000 円
平成 19 年度
10,500,000 円
平成 18 年度
10,500,000 円
平成 17 年度
13,599,600 円
平成 16 年度
13,599,600 円
216
通信指令管制システム情報機器保守委託
委託契約料(税込)
平成 23 年度
9,643,200 円
平成 22 年度
8,635,200 円
平成 21 年度
9,093,000 円
平成 20 年度
9,019,500 円
平成 19 年度
9,010,500 円
平成 18 年度
11,928,000 円
平成 17 年度
13,156,500 円
平成 16 年度
13,156,500 円
【意見⑯】
消防局において見積工数と実績工数の比較分析を実施し、見積工数の妥当性や作
業効率、次回以降の見積工数の算定のための参考資料等として活用することが望ま
れる。
(9)情報セキュリティに関する取組み
情報セキュリティに関する取組みとして、電子行政課による松山市役所全部署を
対象にした「情報セキュリティに関する取組状況調査」と外部業者への委託による
「情報セキュリティ共同監査」が実施されている。
(ⅰ)「情報セキュリティに関する取組状況調査」
個人情報等の外部流出を防ぐため、平成 23 年度 10 月から実施しているデータ
の外部持ち出し時のセキュリティ強化の運用状況について確認を行うもの。全部
署において、「外部媒体管理台帳」「外部媒体貸出簿」「データ持出管理台帳」の
作成、外部メールの発信時には、所属長等へ同報メールの送信を実施している。
また、情報セキュリティの維持向上を目的に全職員に「情報セキュリティチェ
ックシート」による意識調査を実施している。
(ⅱ)「情報セキュリティ共同監査」
松山市の情報セキュリティポリシーに基づき実施している情報資産にかかる
運用管理について、第三者による客観的かつ専門的な立場から、委託業者と電子
行政課が基準等に準拠して適切に運用されているか等について点検・評価を行い、
松山市の情報セキュリティ対策の向上を図ることを目的としている。
時間的・人的資源の制約により、各年度において、年間で 4 部署程度の監査に
とどまるため、現時点では消防局への監査は実施されていないが、今後 5~6 年
以内に実施される見込みとなっている。
217
7.消防関連団体
(1)概要
松山市消防局では、愛媛県や全国の消防局との連携し火災等の災害に対する調査
や情報交換等を行うために、関連団体に加盟している。また、松山市内における自
主的な防火の取組を促進するため、または、幼少年の火災予防の意識を啓発するた
めに組成された団体に対する協力及び支援を行っている。消防局と関連団体の関係
について、詳細は後述するが、消防局関係者の役員就任や補助金の支給等がある。
具体的な松山市消防局の消防関連団体は、以下の 8 団体である。
① 愛媛県消防長会
② 一般財団法人全国消防協会愛媛県支部
③ 松山市防火連絡協議会
④ 中予地域メディカルコントロール協議会
⑤ 幼少年消防クラブ(幼年消防クラブ及び少年消防クラブ)
⑥ 女性防火クラブ連合会
⑦ 自主防災組織
(2)消防関連団体の活動
各消防関連団体の活動は以下のとおりである。
① 愛媛県消防長会
当該団体は、「会員相互の融和協調を図るとともに、情報交換して消防制度
並びに技術の総合的研究を行い、もって自治体消防の健全な発展に寄与するこ
と」を目的としている。
愛媛県の消防本部の消防長で構成され、14 消防本部の消防長 14 名である。
従来より、松山市消防局長が会長職を務める。具体的な事業は、消防情報の交
換、消防制度の改善、消防財政の確立、予防行政及び警防技術の改善、消防機
械及び技術の総合的研究等である。平成 21 年 4 月には、当会内に愛媛県消防
長会住宅用火災警報器設置推進連絡会を設置している。
松山市からは年会費として 10 千円が支出されている。
② 一般財団法人全国消防協会愛媛県支部
当該団体は、「火災、その他の災害の防除に関する調査、研究を行ない、防
災思想の普及広報を積極的に推進するとともに、関係機関及び関係団体と緊密
に協力し、市町村における防災体制の強化促進、大規模災害に対する市町村の
消防応援の支援を図り、かつ災害現場に挺身する者の援護育成を行ない、防災
諸活動の近代化、科学化を促進し、もって住民生活の安全と産業発展の保全に
資し、社会公共の福祉を増進すること」を目的としている。
愛媛県の消防本部の職員で構成され、14 消防本部の職員約 1,800 名である。
218
従来より、松山市消防局長が支部長職を務める。
具体的な事業は、防災思想の普及広報、防災図書・印刷物の刊行配布、防災
に関する研究会等の開催、防火管理技術・救急及び救助技術・防災関連技術の
指導啓発と防災機械器具の海外紹介、被災消防職員等の援護、会員(構成員)
の福利厚生の推進、会員の各種教養・練成、関係行政機関、消防関係団体との
連絡・協力等である。
③ 松山市防火連絡協議会
当該団体は、昭和 40 年に設置され、
「防火に対する取り組みを通じ、消防体
制の充実を図ること」を目的としている。
防火に対する取り組みに賛同した市内の事業所及び個人で構成され、平成 24
年 4 月 1 日現在、事業所としては 745 事業所が加入している。
具体的な事業は、視察研修・防火管理研修・普通救命講習等の実施、資格取
得補助事業、防火啓蒙事業、防火や防災に関する情報提供、防災ポスター表彰
事業、被災地支援事業、訓練・研修用DVD貸出事業等である。
④ 中予地域メディカルコントロール協議会
当該団体は、平成 15 年に設置され、
「中予地域におけるメディカルコントロ
ール体制の構築を推進し、救命率の向上等、救急業務の更なる高度化を図るこ
と」を目的としており、以下の 4 つの機関の関係者で構成される。

郡市医師会:郡市医師会が推薦する者

救急医療機関:救急医療機関が推薦する者

消防機関:消防長の職にある者

行政機関:県地方局県民生活課長及び市保健所長の職にある者
救急医療機関である県立中央病院救命救急センター長が会長を務める。
当団体は中予の協議会であるが、県及び全国レベルの協議会も設置されてい
る。具体的な活動は、医療機関・消防・行政を含めて、救急救命士の知識・向
上のために協力体制を構築し、救急現場で、適切に医療行為が行われているか
の検証を行う。
松山市からは、負担金 100 千円が支出されている。
⑤ 幼少年消防クラブ(幼年消防クラブ及び少年消防クラブ)
幼年消防クラブは、昭和 55 年に結成され、
「何にでも興味を持ちはじめた幼
年期の子供たちに、火の大切さや火の取り扱いを間違えたときの恐ろしさを教
えるなどすることにより、火遊びによる火災の防止や、火災予防の意識啓発を
図ること」を目的としている。平成 24 年 4 月 1 日現在、107 園 12,454 名の園
児で構成されている。
219
また、少年消防クラブは、昭和 52 年に結成され、
「少年のころから、正しい
火災予防の知識を身につけ、学校や各家庭からの火災の減少を図ること」を目
的としている。平成 24 年 4 月 1 日現在、44 校 652 名の生徒で構成されている。
松山市からは、「幼少年消防クラブ育成事務」として、両団体あわせて 289
千円支出している。
⑥ 女性防火クラブ連合会
当該団体は、昭和 55 年に結成され、
「日ごろの家庭における防火・防災意識
の普及啓発を推進すること」を目的としている。平成 24 年 4 月 1 日現在、36
地区 93,589 名で構成されている。
松山市からは、運営補助金として、1,750 千円支出している。
⑦ 自主防災組織
当該団体は、平成 7 年に阪神淡路大震災を機に災害対策基本法第 8 条に基づ
いて結成され、「地域に住む住民が平常時からお互いに協力し合い『自分たち
のまちは自分たちで守る』を合言葉に結成して防災活動を展開すること」を目
的としている。また、その目的の充実強化を図るために市内 41 地区連合会の
結成及び平成 20 年度にはその連合会の代表者 2 名が一堂に会する「松山市自
主防災組織ネットワーク会議」を設立して、市内の全域の地域防災力の強化に
努めている。
平成 24 年 4 月 1 日現在、766 組織 225,861 世帯で構成されており、
松山市の組織結成率は、100.0%である。
さらに、松山市は自主防災組織の核となる防災リーダー育成のため、平成 17
年度から自主防災組織の推薦を条件として、当時全国初の取り組みとして資格
取得費用を全額公費負担とした。これにより、松山市の防災士は平成 24 年 12
月時点で 1,550 名に達しており、自治体別では全国一の数値を誇っている。
松山市からは、
「がんばる自主防災応援事業」として、平成 23 年度において
5,753 千円支出している。
220
(3)関連団体の資金管理
一部の関連団体(①②③④⑥)の資金は、消防局の担当者が管理している。公金
管理マニュアルに基づき、毎月末には全ての現金を預金口座に預け入れることとし、
四半期ごとに消防局企画官が出納簿及び通帳等の確認と残高チェックを行ってい
る。また、現金及び通帳は担当者の机・金庫等に施錠した状態で保管され、銀行印
は担当者の上長により別の金庫等に施錠した状態で保管されている。
そこで、当該関連団体について、資金管理状況の妥当性を検討した。
出納簿及び通帳を閲覧した結果、平成 24 年 3 月 31 日時点において、出納簿残高
と通帳残高は一致していた。また、消防局内の各保管場所に赴き、現金及び通帳、
銀行印がそれぞれ別の職員により区分保管されている状況を実際に確認した。
221
第3章
監査の総括
松山市の消防機関は、常備消防機関(消防局及び11署所)と非常備消防機関(消防団)
から構成され、その施設及び人員を活用することに加え、自主防災組織をはじめとする
消防関連団体と連携し、火災の予防、警戒及び鎮圧、救急業務、人命の救助等に従事し、
災害等から市民の生命、身体及び財産を守っている。また、被災地への緊急消防援助隊
の派遣、国際消防救助隊(IRT)への登録、他市町村との間における消防相互応援等その
活動範囲は管轄地域だけにとどまらない。
消防事業は必要不可欠な社会インフラとして市政において優先順位の高い事業と考え
られるが、南海地震が近い将来発生すると予測される中、松山市も他の市町村と同様に
今後も厳しい財政運営を余儀なくされる見通しであり、単に関係法令・規則等に準拠し
て事務処理が遂行されるだけでなく、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効果的
かつ効率的に配分し十分な消防力を確保できるかがこれまで以上に問われている。
このような観点から松山市消防事業の監査を行った結果、評価に値すると考えられる主
な事項は、以下のとおりであった。
テーマ分類
消防職員
女性職員の活
用
消防団
消防水利
消防費
火災件数及び
出火率
概要
松山市消防職員は、職員1人当たりの人口で捉えると、間接部門において
も直接部門においても、比較都市8市の中で最も多くの住民に奉仕している
といえる。また、直接部門が過剰ではない状態で間接人員比率が比較都市平
均値より低くなっており、松山市消防局の間接部門は管理業務や事務業務を
効率的に行っていることがうかがえる。
平成24年4月1日現在、松山市消防職員数447名のうち女性消防職員数は14
名で、その割合は3.1%と全国平均値2.4%を上回っている。
また、平成6年度からの採用人数は18名で、そのうち4名が退職しているが、
退職者の平均勤務年数は短い一方、在職者については平成6年度、平成7年度
に採用された職員も含まれていること、平成16年度以降に採用された多くの
女性職員が在籍していることから、女性職員の定着度合いは良好と考える。
地域防災力の中核となる消防団員の確保という重要課題に対し、全国的に
みても先進的な取り組みを含め、以下のような消防団強化策を多角的かつ継
続的に講じており、消防団員数を着実に増加させている。
・女性消防団員制度の採用
・機能別消防団員制度(郵政消防団員、大学生消防団員、事業所消防団員、
島嶼部女性消防団員)の採用
・消防団協力事業所表示制度の採用
・島嶼部・山間部における団員定年制度の特例措置の設置
・「まつやま・だん団プロジェクト」(消防団員応援事業)の実施
平成24年10月、東日本大震災の教訓を踏まえ、過去において幾度となく水
不足に直面した経験のある松山市の消防力を強化するため、総務省消防庁か
ら貸与を受けた「海水利用型消防水利システム」を西消防署に配備している。
松山市人口1人当たりの経常的な消防費予算(平成24年度)は、比較都市
平均値を下回っており、ローコストで消防行政を運営していることがうかが
える。
松山市における過去6年間の火災件数及び出火率推移をみると、いずれも
減少傾向にある。
222
参照
ページ
136ページ
137ページ
139ページ
140ページ
18ページ
26ページ
41ページ
45ページ
46ページ
47ページ
一方、今後、改善あるいは将来に向けて検討を要すると考えられる主な事項は、以下の
とおりであった。
テーマ分類
消防団
火災予防査察
(防火対象物)
火災予防査察
(危険物施設)
概要
島嶼部や山間部の過疎地域においては、都市部に比べると、消防活動にお
いて消防団が重要な役割を果たしており、その存続を可能とするための方策
について事前検討を十分に行うことが必要と考える。特に全人口が400人程
度しかいない中島睦野地区については、近隣の中島東分団との統合も将来的
な視野に入れるとともに、数少ない若年層の団員加入割合上昇に向けた更な
る入団促進強化を検討することが望まれる。
また、本監査のためのデータ集計により、平成23年度出動報酬支給対象基
本団員2,258名のうち84名は出動報酬が発生していない団員であることがわ
かった。基本団員は非公式の会議や地域行事における警戒業務等の出動報酬
が発生しない活動も行っており、これらの団員が消防団活動に全く参加して
いないとは必ずしも言い切れない。しかしながら、年報酬や装備が支給され
ていることから、まずは実態を把握し、消防団活動に長期にわたって参加し
ていない消防団員がいれば対応策を検討する必要があると考える。
平成24年3月31日現在、消防法違反となっている防火対象物(防火管理者
制度違反は3,972事業所中998事業所、消防用設備等点検報告制度違反は
13,954棟中4,465棟、防火対象物定期点検報告制度違反は521棟中301棟)が
存在しており、査察時及び査察後の指導強化等により更なる違反物件数の削
減が期待されるところである。しかしながら、火災予防違反処理規程事務処
理要綱に定める違反処理基準に基づいて違反処理を発動すべき事実が発生
していても、過去においてそれを行った実績はない。予防課として関係者の
自主性を尊重する方針のもと粘り強い指導で最大限の努力をしていること
は理解できるが、相手方が長期間対応しないケースも実際にあるとのことで
あり、違反処理基準の運用レベルや体制等を再検討し、悪質な事案に関して
は強い姿勢で違反処理にも踏み込んでいくべきものと考える。
また、本監査のためのデータ集計により、火災予防査察規程に定める査察
サイクル内で実施されていない防火対象物が一部存在していることがわか
った。査察サイクルについては、法令に定めがなく、各消防本部が実状に応
じて独自に定めるものであるため、この状況をもって、直ちに安全性に問題
があるとは言い切れないが、毎年「年度査察実施計画」作成前にサイクル内
未査察物件の抽出作業を行い、抽出された未査察物件を査察対象として査察
実施計画に反映させることが必要である。
本監査のためのデータ集計により、火災予防査察規程に定める査察サイク
ル内で実施されていない危険物施設が一部存在していることがわかった。防
火対象物と同様に、査察サイクルについては、法令に定めがなく、各消防本
部が実状に応じて独自に定めるものであるため、この状況をもって、直ちに
安全性に問題があるとは言い切れないが、毎年「年度査察実施計画」作成前
にサイクル内未査察物件の抽出作業を行い、抽出された未査察物件を査察対
象として査察実施計画に反映させることが必要である。
なお、サイクル内未査察物件の抽出にあたっては、正確かつ迅速に、消防
業務支援システムから危険物施設ごとの直近査察日データをひも付きで出
力できるよう、同システムに機能改善を加えることが望ましい。
223
参照
ページ
32ページ
154ページ
51ページ
~
63ページ
72ページ
テーマ分類
備品管理
救急業務
概要
参照
ページ
たな卸しは、現物の実在性や稼働状況について正確に把握をすることを目
的に実施される必要不可欠な事務手続である。
消防団ポンプ蔵置所の備品たな卸しについては、その実施基準日や使用帳 194ページ
票様式が財務会計規則等に準拠していないため、今後見直しを行うことが必
要と考える。
平成23年版消防白書に記載されている将来推計によると、高齢化の進展等
により、救急需要は今後ますます増大する可能性が高く、また、核家族化や
高齢者世帯の増加等に伴い、病気や怪我について相談できる相手がいない、
移動手段がない等の理由で救急要請するケースが増加することが示されて
おり、救急搬送時間の遅延を防ぐための更なる対策の必要性が唱えられてい
る。このような状況を踏まえ、総務省消防庁が緊急度判定(トリアージ)の
基準や仕組み作りに取り組んでいるが、平成24年度において特定の地域(堺
94ページ
市消防局・田辺市消防本部・横浜市消防局)で試行的運用を行い、その実証
~
検証結果を踏まえ見直しが行われる予定であり、現時点では、社会全体で受
96ページ
け入れられる実務的な判定基準にまで確立していない。
松山市も救急出動件数及び収容所要時間は年々増加傾向にあり、厳しい財
政運営を迫られる中、救急隊や救急車の増設に伴う消防費の増加はできれば
避けたいところである。よって、緊急度判定(トリアージ)については、総
務省消防庁の取組み状況を参考にしながら継続して検討すべき重要なテー
マであると考える。
このほかにも事務手続等の面で課題が発見されており、参考までに、次ページに指摘及
び意見の一覧表を記載しておく。
本報告が、松山市消防事業の直接的な改善を促すだけではなく、これを閲覧した市民の
消防事業に対する理解が深まることで、消防団への入団促進、消防法違反防火対象物件
数の削減、救急車の適正利用等に幾分でもプラスの影響を与えることができたならば、
包括外部監査人としてこのうえない喜びである。
224
<参考>
【指摘】
番号
参照
ページ
概要
①
消防団員定年基準に定める年齢制限への抵触
31ページ
②
火災予防査察規程に定める査察サイクル内で実施されていない防火対象物
61ページ
③
火災予防査察規程に定める報告書様式への抵触
63ページ
④
火災予防違反処理規程事務処理要綱に定める違反処理基準への抵触
63ページ
*
⑤
火災予防査察規程に定める査察サイクル内で実施されていない危険物施設
72ページ
*
⑥
火災予防違反処理規程に定める違反処理経過簿の未作成
72ページ
⑦
扶養親族認定申請書の提出遅延
128ページ
⑧
消防団ポンプ蔵置所の備品たな卸し方法に係る不備
194ページ
⑨
リスク分類に応じた情報資産の管理方法のルール未整備
214ページ
*
*
【意見】
番号
参照
ページ
概要
①
中島睦野地区における消防団存続方策の検討
32ページ
*
②
消防職員数維持及び消防団員数拡大への継続的取組み
35ページ
③
防火管理者制度違反物件数の更なる削減
52ページ
*
④
消防用設備等点検報告制度違反物件数の更なる削減
54ページ
*
⑤
防火対象物定期点検報告制度違反物件数の更なる削減
55ページ
*
⑥
防火対象物査察サイクル特例規定の適用要件の明確化及び適用結果の文書化
61ページ
⑦
救急業務における緊急度判定(トリアージ)の継続的な検討
96ページ
⑧
業務または人員の適正配分に関する検討
133ページ
⑨
職員人事考課における柔軟な成績率の運用
134ページ
⑩
消防団員に対する出動報酬体系の細分化
145ページ
⑪
消防団活動に長期にわたって参加していない団員の把握
154ページ
⑫
耐震化未了非常備消防施設(消防団ポンプ蔵置所等)の早期完了
206ページ
⑬
使用料の免除に関する要件充足の検討
208ページ
⑭
セキュリティ区画における二酸化炭素消火器設置の検討
214ページ
⑮
業務継続計画の整備
215ページ
⑯
保守契約に係る見積工数と実績工数の比較分析の実施
217ページ
*
*
(注)
「*」を付したものについては、改善あるいは将来に向けて検討を要すると考えられる
主な事項として、223 ページ及び 224 ページにおいて言及している。
以
225
上
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