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ニッケル・水素電池技術の現状 1`)..

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ニッケル・水素電池技術の現状 1`)..
水素エネルギーシステム
Vo1
.1
8
. No.1,1993
特集
ニッケル・水素電池技術の現状
横浜{主1
'
)
.
.大学 L学 部
エネルギー L学 教 主
太U
J 健
.
r
m
1. は じ め に
:
のq
lは ポ ー タ プ ル 機 掠 へ の 要 求 が 高 ま っ
パソコン、ピデオ、ウオークマン、 11
ている。 1C、 半 導 体 1
等の急速な進歩に反し、電源である電池は、鉛蓄電池、ニ
ッケル・カドミウム蓄電池といった、百年以上前に開発されたものが基本であっ
たO 現在使用されている携帯用電子機器の性能は電池が支配していると言っても
過言ではない。しかし、近年、ニッケル・水素電池、水素化物電池あるいは水素
¥同 る よ う に な っ て き た 。 い ず れ も 同 じ 電 池 で
電池と呼ばれる新型電池が市場に H
あるが、パソコン、携帯電話、さらには携i
i
fピ デ オ 、 シ ェ ー パ 一 等 の 電 池 Eして
f
f
身の回りで見られるようになり、 年
つてきている O 久しぶりに登場した新!日二次電池は急速に世の中に出@りつつあ
るO
こ の ニ ッ ケ ル ・ 水 素 電 池 に つ い て は 本 誌 で も か つ て 岩 倉 の 解 説 1) が あ る が 、 本
稿ではその後の発展、現在の技術の状況を中心にして解説することにするの
2. ニ ッ デ ル ・ 水 素 電 池 と は
日曜活物質にオキシ水酸化ニッケル、負極活物質に水素を用いるア
この電池は 1
ルカリ蓄電池で、ニッケル・カドミウム蓄電池のカドミウム;概を水素慨に置き換
えたものである O エ ネ ル ギ ー 密 度 を 高 く と れ る こ と か ら 、 当 初 は 宇 宙 開 発 用 の 二
fガ ス の 形 で 利 用 さ れ て い る O
次電池として用いられていた O この際の水素は高 J
この水素の貯蔵をガスではなく、水素吸蔵金属を利用して金属水素化物の形に
したものが民生用に出回ってきたニッケル・水素電池であり、水素化物電池ある
いは単に水素電池、 M H電 池 と 呼 ば れ る こ と も あ る O こ こ で は こ れ か ら の 発 展 性
を考えて、ニッケル・水素電池の中でも水素吸蔵合金を水素貯蔵のために利用す
る型の水素化物電池についてのみ角午説することにする O
電 池 の 基 本 構 造 は NiOOH/KOH/MHと 書 け る 。 こ こ で 起 こ る 反 応 は 次 の 通 り で あ
るO
放電
Ni(OH)2 +OH充電
守
正4
重 :NiOOH+H20 +e
- +
:
:
!
負極
全反応:
放電
M H+OJr +
:
:
! M +H20 +e
充電
放電
NiOOH+M H i
=
! Ni(OH)2 +M
充電
-2-
水素ヱネルギーシステム
Vol
.1
8,N
o
.
l, 1993
特集
との電池は r
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守i
で利Jll
きれているニッケル・水素;立池の水素ガスの代わりに金属
水素化物を川いる Eころに特徴がある円水素ガスを J
1
fいるニッケ lレ・水素電池は
米間で開発が i
sめられたが、水素化物を月i
いる民 '
J
:
.!IJの電地はわが同の三洋電機、
也、東芝が r
j1J
L
、になって実fII化を進めてきたものである。
松下電J
3. ニ ッ グ ル ・ 水 素 電 池 用 の 水 素 吸 蔵 合 金
水素 i
吸蔵合金は l
i
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主的に水素の l
投蔵、政 1
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"を行えるので水素の貯蔵媒休として
1
i
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1されている n ニッケル-水素電池の開発において最も甫:,r.'~.のおかれたのは、
電池に適した水素吸蔵合金の開発であず)た c
関 lには、オランダの P
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社において磁性材料開発中に見つ
けだされた、代表的な水素吸蔵合
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2
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金である L
aNi亡の水素吸蔵量と
力の関係を示す])。通常の水素
目 1
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o
O
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化物には、この凶で示されるよう
弓
向
。 O(
に、水素化物左金属が共存するこ
出
2
0C
とによる、組成に対して圧力の一
械 2
定なプラトー領域が存在するの水
暴
言
素化物の用途に適した圧力は合金
ト
種 0
.
5
の組成を工夫することにより比較
的容易に達成できる。この圧力は
0
.
2
合 金 の 種 類 に よ り 大 き く 変 化 L、
0,1
0
0
.
5
また温度が高くなると顕著に大き
くなる O この祖度依存は電池に用
金属一原子当りの水素原子数
いる場合に注意しなければいけな
い点であり、電池性能の温度依存
性については、電極反応速度、電
図 1
. LaNi5組 成 と 平 衡 水 素 圧 1)
解質の電導性の他、この平衡圧が
変化することを考慮する必要がある O
水素吸蔵合金を可逆水素電極として利用しようという考えは、 1
9
7
0年に J
u
s
t
iら
がチタンーニッケル系合金について報告した 2)のが始まりで、具体的な二次電池
への応用に関しては、 1
9
7
3年、 1
9
7
4年頃の、希土類系についての E
a
r
lら 3)あるい
u
t
j
a
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rら 5)の報告が初めの頃のものと
はEweら 4)の報告、チタン系については G
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品
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円
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言える O しかし、本格的なニッケル・水素電池に関する報告は 1
985年以降であり、
それも技術的にはわが国のメーカーが主体となって研究が進められてきた電池で
ある o
水素吸蔵合金には希土類系 (
L
a
N
i5など)、鉄ーチタン系、マグネシウムーニッ
ケル系など多くの種類がある O これをアルカリ蓄電池に用いるには、電解質に濃
厚アルカリを用いるので、耐アルカリ性があるとともに、使用温度範囲で平衡水
素 圧 が 1気 圧 よ り 若 干 小 き い こ と が 望 ま し い 。 こ の 平 衡 水 素 圧 が 1気圧より大き
いと、水素化物の自己解離が起こり易く、自己放電につながり、充電の際には水
素発生反応が起こり易くなり、充電効率が低下する O また、 1気 圧 よ り か な り 小
さいと、水素の供給が不十分となり、電池反応、がスムースに進行せず、電池出力
が充分に採れないことになる O
もう一つ、水素吸蔵合令の利用に当たって注意しなければならない点に、水素
3-
水素エネルギーシステム
Vol
.18,No.l, 1993
特集
の吸蔵、脱離の繰り返しによる合金の微粉化がある。特に;二次電池で繰り返し使
用し、サイクル寿命をイf/Iば す に は 、 こ の 問 題 を 山 J日する必要があったり、1初は、
銅を利用した水素I
政蔵合金のマイクロカプセル化などが考えられたが、現在では、
合金の組成を制御して、水素のi
投蔵、脱離の過程で合金の体積変化を最小にする
ことにより微粉化を紡ぐ工夫がなされている。
このため多くの水素吸蔵合金の中でこれまでは希¥--類系 (AB 5型 、 こ こ で A は
吸熱反応になる金属を示す。)、
水素化物生成反応が発熱反応になる金属、 Bは l
W
) が 水 素 電 池 に Lに 検 討 さ れ
チタン合金系 (AB型)、ラーベス十1I系 (AB2J
て き た 。 表 1には電池 J
f
tの水素 I
皮蔵合金をこれらに分けて示す。
m
表 1 ニッケルー水素電池に用いられている水素吸蔵合金
電池用合金
合 金
AB/A2B型(チタン系)
Ti
Ni
T~Ni-T剖 i (
V
,
CrZ
r
,Mn.Co,
Cu,
Fe
などでNiを部分置換)
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AB5現(希土類系)
LaNi
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MmNL
(Mm: ミうシュメタル)
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MmN~5CoO.7Ahg
MmO_8SZr,。♂ i1.0A~.8 V0
.
2
合金の組成はたいへん複雑になっているが、理想的な平衡水素託、耐久性を確
保 す る た め に は 、 こ の 厳 密 な 組 成 を 維 持 す る こ と が 大 切 で あ る O これらの中で、
どの合金が今後の中心になるか明らかではないが、当初に、また現在市販されて
い る も の は 希 土 類 金 属 の 混 合 物 で あ る ミ ッ シ ュ メ タ ル M m (これはライターの発火
石 ) の 合 金 MmNi5を 基 本 に し た も の で あ る 。 こ れ に 適 当 置 の Mnを添加すること
は平衡水素庄の低下に効果があり、 Coの 添 加 は 椴 粉 化 を 防 止 し て 耐 久 性 の 向 上 に
効 果 が あ る と さ れ て い る 6)O 今 後 は イ よ り 大 容 量 化 を ね ら っ て 、 ラ ー ベ ス 相 系 も
注目きれている O
4. ニ ッ ケ ル ・ 水 素 電 池 の 構 造
a. 構造
現在市販されているニッケル・水素電池としては、小型のボタン型のもの、単
3 型を中心にした p~ 筒型のもの、より大型の角型のものと多岐にわたっている O
-4
水素エネルギーシステム
特集
:
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.18, No.l, 199:
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. 電池の密閉化
小型移動用電源としては電池の密閉化は欠かぜない技術である。そのために、
過充電、過放電に対する対策は重要である O ニッケル・水素電池においてもこの
ためにニッケル・カドミウム電池と同様に負極活物質を正極活物質より多量:に
い る 方 法 が と ら れ て い る O すなわち、負極活物質が多量に存在すれば、過充電時、
過放電時にはガス発生は正極でのみ起る
1/402 十 1/2H20 +e
過充電
OH
過放電
H 0 +e
- →
2
→
O
1/2H2 +OH
この充電時に i
E極 で 発 生 す る 酸 素 ガ ス を 負 極 活 物 質 の 水 素 と 反 応 き せ て 消 費 し て
二昇を抑える。このようにして電池の内圧の上昇を抑え
水に戻し、電池の内圧の i
ることができる O ただし、水素吸蔵合金の充電効率が低い場合には水素発牛.が起
こり、この水素ガスの吸収効率が悪いため電池内庄の上昇の原国となることがあ
る
。 過放電時には正極で水素が発生する O これは通常は負極上で酸化されて水に
戻るが急速な放電を行ったときには酸化反応が追いつかず、水素による内庄の上
昇が起ることになる O これら発生ガスの消費反応を円滑に進めるために咲セパレ
f
t
iに機水性を持たせるり j 等 の 処
ーターのガス透過性を良くするとともに、負概表 i
理をして生成ガスのスムースな吸収を促す工夫がなされている O
このようにニッケル@水素電池には過充電や過放電に対してユニークな保護機
-5-
水素エネルギーシステム
Vo1
.18,No.1,1993
特集
能が備わっているの特に、過欣電n
寺のガス i
吸収反応は水素電池特有なものであり、
多数の電池を直列に積層して使用する電気臼動車などのJlj途には有利な電池と百
える。
c.急速充電
二次電池として、容易に充電が IH 来るこ左は大切なことであるの従来は R'~ 1
0
1時
間かけて穏やかに充電 Lていたのであるが、より知時間の充電が要望されるよう
になり、最近では lO'~15 分で充電が終 f するような急速充電がlH来るようになっ
てきた O こ の よ う な 急 速 充 電 を 、 過 充 電 の 影 響 を 少 な く し て 行 う に は 、 充 電 終 期
の確実な確認方法が重要となる。図 3には充電の際の電 J
E、温度の変化を示す 7)
。
電
7
二 二 一 一 「 ム
dT/dt検出 ~~i
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.
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圧
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電池電圧
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.
:
130 I又
電池温度
。
I
(C)
2
0
時間 (
h
)
図 3. ニ ッ グ ル ・ 水 素 電 池 の 急 速 充 電 に お け る 電 圧 、 温 度 の 変 化 7 )
定電流での充電終期jに な る と 酸 素 発 生 が 起 こ り 易 く な り 、 電 極 過 電 庄 が 上 昇 、 充
電電圧も高くなる O しかし、酸素が発生し、負極で消費されるようになる左、こ
の発熱反応により温度が上がり、電池の内部抵抗が減少して、電圧が減少する O
これが充電終期に電圧のピ}クが現われる理由であり、ニッケル・カドミウム電
池の急速充電の際には充電終期を決めるのにこの性質が利用されている。ニッケ
ル・水素電池でも同様な挙動が現われるが、ニッケル・カドミウム電池ほど顕著
ではない O 特 に 、 充 電 温 度 が 高 い と 電 圧 の ピ ー ク の 確 認 は 困 難 に な る o 従って、
ニッケル・水素電池では急速充電の終期を確認するのに、電圧変動と温度変化の
両方を捉える方法が併用されている。
5. ニ ッ ケ ル ・ 水 素 電 池 の 特 徴
このようにして商用化の始まったニッケル・水素電池の特徴は、既にいくつか
の点については示しているが、次の通りとなろう o
-6-
水素エネノi
ノ
ギ システム
Vo1
.1
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993
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J
a. ニ ッ ケ ル ・ 水 素 電 池 の 存 ;
i
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水素電池の最もiI:[Jされている特徴は、その存置の大きいことにある。表 2に
B
J
J密度を示すの
はいくつかの二次電池について、電車:効卒、容積効率、 I
表 2 二次電池の重量効率、容積効率、出力密度
重量効率(Wh
/
k
g
)
電池系
容積効率(Wh
/dm3)
エネルギー出力 (W/kg)
理論
現状
理部
f
i
l
l
司
現状
30-~40
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5
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1
0
0
7
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0
1
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0
35~45
2
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Pb/Pb0
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Cd/NiOOH
M州 1Fi
現状
1
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放電電流: O
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温度
:20t
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出
制
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放電容量 ImAh
関 4. ニ ッ グ ル ・ 水 素 電 池 と ニ ッ ケ ル ・ カ ト ミ ウ ム 電 池 の 放 電 特 性
-7-
水素エネノレギーシステム
Vol
.l8,No.l,1993
特集
この中で、ニッケル・水素電池までは市販されているものであるが、ナトリウム・
硫黄電池、リチウム電池は関発中のものである O ニッケル・カドミウム電池と比
較すると重量効章、体積効率ともに優れており、小型軽量の二次電池として臼的
にかなったものと言える O
図 4には単 3サ イ ズ の 電 池 の 放 電 特 性 を ニ ッ ケ ル ・ カ ド ミ ウ ム 電 池 と 比 較 し て
示す 8)O ニッケル・カドミウム電池の J1S規 格 品 ( 容 量 500mAh) と比較する
と通常のニッケル・水素電池でも 2倍 以 上 の 容 量 を 持 つ が 、 最 近 開 発 さ れ た ラ ー
ベス相合金を用いるものは 1300mAh以-上の容量を持つようになってきた O ニッケ
ル・カドミウム電池の容量も最近の技術では 1000mAh程度までのびてきているが、
ニッケル・水素電池の容量の伸びの方が大きい。今後開発が進めば、さらに高い
容量のものが出てくると思われる O
b
. 資源、環境問題
資 源 的 に み る と 、 世 界 中 の 埋 蔵 量 で 比 較 し て 、 チ タ ン は 2億 t,ニッケルあるい
は希土類金属は 5000万 t程度であるが、カドミウムは 50万 tしかない。ニッケル・
水素電池材料の資源問題はニッケル・カドミウム電池に比べて少ないと言える O
特に、電力貯蔵、電気自動車と大型で大量の利用が期待されている方面には資源
量の差が決定的となる o
鉛、カドミウムは危険物質に指定されており、その廃棄には現状よりもっと注
意すべきである O こ の 環 境 問 題 に 関 連 し て 、 欧 州 で は カ ド ミ ウ ム に 関 す る 規 制 が
実施されようとしており、ニッケル・カドミウム電池は使用できなくなりつつあ
るO このような情勢の中で実現したニッケル・水素電池の意義は大きい。
c.出力密度
水素は電気化学的に最も活性な物質であり、水素吸蔵合金への水素の吸蔵、脱
離反応、は可逆的に容易に進行する O ま た 、 母 材 は 金 属 で あ る の で 、 炭 素 等 に 比 較
しでも電導性が良い。電解質としても電導性の優れているアルカリを用いている O
これらの要因により、大きな電流を用いる高率放電、低温特性がニッケル・カド
ミウム電池に比べて優れたものになっている O リチウムを用いる二次電池は、重
量効率、容積効率ともに格段に大きいが、電解質に水溶液が利用できず、電導性
の悪い有機電解質、あるいは高分子国体電解質に頼らざるを得ない。低負荷の放
電にはこれでよいが、高率放電ではこの内部抵抗の大きさが大きく影響を与える
ことになる。
d. サ イ ク ル 寿 命
さらに、二次電池として見た場合、サイクル寿命も重要な因子である o ニッケ
ル・水素電池では、ききに示した電池反応において、放電時には正極でオキシ水
I
I
I
)が水酸化ニッケル (
I
I
)に 還 元 さ れ 、 負 極 で は 水 素 化 物 中 の 水 素 原
酸化ニッケル(
子が酸化されて水になる O 充電時ではこの逆反応が起る O これらの電池反応の特
徴は、鉛蓄電池、ニッケ J
レ・カドミウム電池のように港解ー析出反応を伴ってお
らず、水素原子、あるいはプロトンの図相内侵入反応で進行することにある O こ
のため電池のサイクル寿命に大きな影響を及ぼすデンドライトの生成がなく、電
池内に水素化物をかなりの密度で充填することが可能となっている o
-8-
水素エネルギ
システム
Vo1
.1
8, No.l
. 1993
特集
e.用途と問題点
ニッケ l
レ・水素電池はニッケ l
レ・カドミウム電池と公称電圧は 1
. 2Vで同じ
であり、サイズさえ合わせれば、現在二次電池として最大の生産個数を生み出し
ているニッケル・カドミウム電池と容易に置き換えることができる O
欠点としては、水素吸蔵合金の微粉化の問題が解決した今日、あまり大きなも
のは見当らないのしいて挙げるならば、水素化物の解離による向己放電の点があ
ろう O 特に、水素化物の王子衡水素庄の温度依存性に関連して、この水素圧が温度
の 上 昇 に よ っ て 指 数 関 数 的 に 増 大 す る こ と が 問 題 と な る O 従って、高温になると
自 己 放 電 が 大 き く な り 、 充 電 効 率 も 低 ト し 、 サ イ ク ル 寿 命 も 小 き く な る O ニッケ
ル・カドミウム電池に較べて高温に弱い電池と言える O 携帯用、あるいは移動用
の電源として考えるとその用途は常温付近が多いはずである O 高温用には、合金
の設計を改めれば済むはずで、現状では常温に使用を限定したものの開発がより
進められるべきと考える。
6. お わ り に
ニッケル・カドミウム電池に較べて高い容量、大きいサイクル寿命を実現した
ニッケル・水素電池は開発当初の目的は達成したと言える O 現在の最も大きい問
題点は価格である O 同 ヒ サ イ ズ の ニ ッ ケ ル ・ カ ド ミ ウ ム 電 池 と 比 較 し て 、 電 池 容
量が 2 0 %増 大 す る が 、 価 格 は 2倍となっている O この価格については、今後の
l:t産量の推移、生産方式の検討により、大幅に低下する可能性もある o
ニッケル・水素電池はその開発の歴史が新しい。他の二次電池に比較して、高
いエネルギー密度を持つこと、サイクル寿命を含めて長期信頼性の高いことを
用して今後利用がますます進められそうである O 特に、高いエネルギー出力密度
は電気自動車用等の大型二次電池に魅力的である O
水素吸蔵合金、金属水素化物は比較的新しい材料である O 水素貯蔵用に、ヒー
トポンプ用にと研究が進められてきたが、民生用に実用化したものは、このニッ
ケ ル ・ 水 素 電 池 が 初 め て で あ る C 水素吸蔵合金はかなりの種類が報告されており、
その性質も幅が広い。この幅広い性質を生かして、種々の用途に向けた水素電地
の開発も望まれる O 例 え ば 、 常 温 に 限 ら ず 、 高 温 で も 同 様 な 傾 向 を 示 す 水 素 吸 蔵
合金もある O 電 解 質 も 溶 融 塩 を 用 い れ ば か な り の 高 温 電 気 化 学 シ ス テ ム が 構 成 可
能であり、 l000tで 動 く 水 素 電 池 が 実 現 で き る か も し れ な い o 今 後 の 展 開 が 大 い
に期待されるところである O
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