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ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)
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ブタ肝臓ミクロゾームのDCPA分解酵素の精製と若干の
性質
木村, 貴生 / 児玉, 治 / 赤塚, 尹巳
茨城大学農学部学術報告(39): 13-20
1991-11
http://hdl.handle.net/10109/4868
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します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。
お問合せ先
茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
ブタ肝臓ミクロゾームのDCPA分解酵素の精製と若干の性質
木村貴生・児玉 治・赤塚サ巳
緒
言
トした。この摩砕液をガーゼ濾過し,濾液を12,000xg,
20分間遠心分離し,その上澄みをIO5,000xg,60分
除草剤DCPA(3,4一ジクロロブPピオンアニリド)
間遠心分離した。この105,000xg沈殿物を50mMホ
はイネーヒエ間の選択性除草剤として広く使用され,
ウ酸緩衝液(pH8.0)に懸濁してミクnゾーム品分と
その選択性の発現はイネに特異的に存在するDCPA
した。
DCPAの不活性化に起因することが知られている1》。
4.トリトンX−100によるDCPA分解酵素の可溶化
ミクロゾームは50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)で
一方,動物体内においてもアミダーゼ,エステラー
10mg/mlの濃度に調整し,一定量のトリトンX−
ゼの存在が報告されている。中でもとくに豚肝臓ミ
10◎を添加し,4℃で約12時間撹絆した後,105,000xg,
クmゾームの非特異的エステラーゼとして知られて
60分間遠心し,その上澄みを分取した。
分解酵素であるアリルアシルアミダーゼ1による
いるカルボキシルエステラーゼについては,Krisch
5.バイオビーズSM−2によるトリトンX−1 OOの除去
やMainらのグループによって可溶化・精製され,そ
前処理としてバイオビーズSM−2は0.05%トリ
の性質は詳細に研究されてきたz3}。しかし,ほ乳動
トンX−100溶液申で30分間撹搾後,ガラスフィル
物においてはDCPA代謝の酵素レベルでの研究はな
ターで濾引し蒸留水で十分洗浄して使用した。トリ
されていないのが現況である。.
トンX 一 100による可溶化上澄み液に対して,前処理
筆者らは豚肝臓ミクロゾーム二分にDCPA分解酵
したバイオビーズSM−2を20%(w/v)になるよ
素活性を見いだしトリトンX−1◎0による可溶化後,
うに加え,4℃で1時間以上撹搾し,ガラスフィルター
バイオビーズSM−2によりトリトンX−100を除去し,
で濾過し,濾液は微細粒子を除くために,30,000xg,
ゲル濾過およびヒドロキシルアパタイトカラムクm
マトグラフ4一により精製し,本酵素の若干の性質
30分間遠心分離した。
を明らかにした。
6.タンパク質の定量
Lowry法4)によって測定した。標準物質として牛
なお,本報告で対象とした酵素はカルボキシルエス
塩清アルブミンを使用した。
テラーゼ[EC.3.1.1.1]に属すると考えられる。
試料および方法
7.酵棄活性の測定法
a)DCPAを基質とする場合
酵素反応により遊離する3,4一ジクロロアニリンを
1.試料
児玉・赤塚の方法5}を一部改変して定量した。すなわ
屠殺直後のブタ肝臓を使用した。なお,この試料は
ち,DOPA基質緩衝液はDCPA8.7mgをエタノール
コアミ畜産より恵与された。
1m1に溶解後,0.05Mホウ酸緩衝液(pH8.0)を加え
2.試薬
100m1とした。このDCPA基質緩衝液O.4m1に酵素
バイオif 一ズSM−2はBIO−RAD Laboratories,
液◎.1m1を加えて,37℃一定時間反応させ,0.2N−
セファデックスG−200はPharmacial Chemicals,
ヒドロキシルアパタイトはBDH:Chemicals Ltd.よ
ρ一ジメチルシンナムアルデヒドのエタノール溶液2m1
りそれぞれ購入し実験に使用した。アルコールデヒ
を加え,10分間放置後540nmにおける吸光度を測定
HCI溶液0.5m1を加えて反応を停止した後,0.05%
ドロゲナーゼはBoeringer Mannheim,カタラーゼ,
し,3,4一ジクロロアニリンを定量した。1分間に
ヘモグロビン,卵アルブミンはSigma Chemical
Companyよりそれぞれ購入した。なおチトクロムC
1μmoleの3,4一ジクロロアニリンを遊離する酵素量
を1単位とした。
は日研化学より恵与された。
b)エチルn一ブチレートを基質とする場合
3.ミクmゾームの調製
豚肝臓を細断し,冷却したlmMEDTAおよび0.25M
酵素反応によって生成するブチル酸を以下の方法に
ショ糖を含むO.01Mホウ酸緩衝液(pH:8.0)で十分
を蒸留水に溶解し10◎mlにした溶液65ml,0.IMホ
洗浄し血液を除去した後,同緩衝液中でホモジネー
ウ酸緩衝液(pH8.0)30ml,エチルn一ブチレート
より定量した。墓質溶液は,クレゾールレッド6mg
13 一
茨大農学術報告 第39号 (1991>
0.3mlおよび蒸留水100mlを混合し,0.脳一HC1で
pH8.0に調製した後,蒸留水で300mlにし調製した。
実 験 結 果
匪.DCPA分解酵棄の細胞内局在性
Fig.1に豚肝臓の細胞内各溜分におけるDCPA分
この基質溶液3.Om1に酵素液0.02mlを加え,25℃で
反応させ,自記分光光度計を用いて578nmの吸光度
の経時変化を測定し,1分間に1Pt moleのブチル酸
を遊離する酵素量を1単位とした。
解活性の分布パターンを示した。この分布パターン
から,DCPA分解酵素活性がミクロゾームに局在し
c)ρ一ニトロフェニル酢酸を基質とする場合
酵素反応によって生成するρ一ニトraフェノールを
ていることを確認した。また,エチルn一ブチレート,
ρ一ニトロフェニル酢酸を基質とした場合の分解活性
以下の方法により定量した。0.1Mホウ酸緩衝液
の分布パターンもDCPAを基質とした場合の分解活
(pB:8.0)3.Omlに酵素液O.02mlおよびO.05Mρ一
性のそれとほぼ同様であった。
ニトロフェニル酢酸のアセトン溶液0.03mlを加えて,
躍豊
25℃で反応させ,自記分光光度計を用いて400nmの
盤
吸光度の経時変化を測定した。1分間に1μmoleの
リルアミドゲルおよび0.1Mトリスーホウ酸緩衝液
(pB:8.3)を泳動用緩衝液として使用し,濃縮用ゲル
および試料用ゲルを省き,試料にショ糖を加えて,20
%溶液(w/v)として分離用ゲルに添加し,4℃で
チューブ当り3mAの定電流でチューブ2本を泳動し
た後,1本のゲルはアミドブラック10Bで染色した。
もう1本のゲルはカミソリを用いて2.5mmの長さに
切り,ゲル切片を試験管に入れ0.05Mホウ酸緩衝液
臥
︽暫\遠野羅贈盈轟凝選罵購書
8.ディスク灘気泳動
Davisの方法6}を一部改変して行った。7.5%アク
露 鴫
p一ニトUフェノールを遊離する酵素量を1単位とした。
繭壷
騒
as
(pH:8.3)O.5mlを加え,摩砕・撹零し,一逮夜放置
し,この抽出液の酸素活性を測定した。
9.分子量の推定
窪◎ 縄。 ㊨◎ 総。 唱◎◎
a)ゲル濾過法
腕⑭瞼量1囎翫醜露醜。⑪舗紬戯s《%》
Andrewsの方法7》に準じて酵素タンパク質の分子
量を推定した。標準タンパク質としてアルコールデ
Fig. 1 Subcellular Distribution of DCPA
Hydrolyzing Enzyme Activity in Pig Mver.
ヒドロゲナーゼ(分子量:150,000),ヘモグロビン
N, Mt, L, Ms, and S represent nuclear,
mi亀ocho箆d盛ar,圭ysozo孤a1, microsomal and
(分子量:64,500),チトクロムC(分子量:13,000)
solubie. fractions, respectively.
を使用した。アルコールデヒドロゲナー・一 tf活性は
Valleeの方法8)より測定し溶出位置を求め,ヘモグ
2.トリトンX−100によるDCPA分解酵素の可溶化
DCPA分解酵素がミクロゾームに局在しているこ
mビンとチトクロムCの溶出位置は410nmの吸光度
よりそれぞれの溶出位置を求めた。
とから,トリトンX−100による可溶化の条件を検
b) SDS−PAGE法
討した。Fig.2に示したように, DCPA分解酵素活
Shapir◎の方法9)により行った。試料のSDS処理
性はトリトンX−100の濃度が0.1%以上でほぼ100
は10%2一メルカプトエタノールおよび10%SDS
%可溶化した。しかし,高濃度のトリトンX−100に
を予め調製し,それぞれ試料の1/IO量を加え,一
よりミクロゾームを処理すると著しい活性の減少が
晩放置して行った。標準タンパク質としてカタラー
認められた。そこで,トリトンX−100による可溶
ゼ(サブユニット分子量:60,000),卵アルブミン(分
化後バイオビーズSM−2によるトリトンX−100の
子量:45,000)およびチトクu一ムC(分子量:13,
除去を試みた。1.O%トリトンXIOO溶液にバイオビー
000)を使用した。
ズSM−2を加えると,トリトンX−100の濃度を0.
OO 1%まで下げることができた。トリトンX−100に
よる可溶化後,バイオビーズSM−2処理によるトリ
14
木村ら:ブタ肝臓ミクロゾームのDCPA分解酵素の精製と若千の性質
トンX−100の除去により,バイオビーズSM−2未
処理の可溶性画分のDCPA分解活性に比べ,約150
%活性が増加しトリトンX−100による阻害の影響
3.DCPA分解酵素の精製
を除くことができた。
ロフェニル酢酸を同時に分解する酵素の精製法を検
前述した可溶化の条件にもとずいて,豚肝臓ミクロ
ゾームからDCPA,エチルn一ブチレート, p一ニト
討した。最初にO.05Mホウ酸緩衝液(pH8.0)に懸
100
$oo
濁したミクロゾーム溶液(10mg/m1)に,トリトン
書
X−100をO.1%になるように加え,4℃に約12時間
go
go
撹嘱した後,10S,OOOxg,60分間遠心分離した。得
濫
鐙婁
翁㊧o
られた可溶性画分にバイオビーズSM−2を20%(w
釦欝
/v)になるように加え,4℃で12時間撹搾後,ガラ
言
スフィルターで濾過し,濾液を30,000xg,30分間遠
.皇
璽
謹曝◎
醗
翫◎
轟◎駕
心分離した。この上澄みを限外濾過(メンブラン:UM
鰻
璽
−10)により濃縮し,0.05Mホウ酸緩衝液(pB:8.0)
で平衡化したセファデックスG−200によるゲル濾
識◎’雛
過を行った。その活性画分をO.02Mリン酸緩衝液
e
(pH6.8)で平衡化したヒドロキシルアパタイトカラ
◎ 02 0鳶 《》蔦 ◎.8 豊◎
ムに吸着させ同緩衝液でカラムを洗浄後,0。1Mの同
c◎聡。鯵醜蟹誌懸◎餐騒豊《:麟》《一璽◎◎《%》
緩衝液の連続濃度勾配により溶出を行った。次に活
Fig.2 Solubilization a磁王nactivaion of DCPA
Hydro王yzing Enzyme Activity by Triton X
−100。
ぐ
性画分を限外濾過により濃縮しセファデックスG−
The enzyme activity of T亘ton X−1◎O−
限外濾過により濃縮後,ヒドロキシルアパタイトカ
treated microsomal fractioll and soltIbi蓋zed
ラムによる再クロマトグラフィーを行い,そのクロ
⑩醗/翻》
蝿◎静歪
診 3
ま
30
50
60
oe一;
0
5◎繕
’
画
羅◎
ア◎
80
Fr鶴恥臨晦繭⑭ぽ《乳8翻/驚蘭漉)
Fig. 3 Hydroxylapatite Column Chromatography (ff) of DCPA Hydrolyzing Enzyme of the Active
Fraction from Sephadex G−200 Gel Filtration (ff).
The sample was applied on a colum (1.5 x 26cm) equlibrated with 2mM Na2KPO4−KH2PO4 buffer (pH6.8)
and elution was performed with a linear gradient of 2 一 100mM Na2HPO4−KH2PO4 buffer (pH6.8).
一 15 一
σ離職盤\窃£奮董臨
黛◎
’
蝿ゆ86魂窯
ptpt
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角饗︸
釧一 ’
’ 騨朔臨
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豊 艦
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墨
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ゆ ハ ま
?轟診嗣︾囎慧讐塁◎も幽焉醐麗三一⑳豊◎隔騒霧隠
⑳⋮む盈曇鰭暫墓罵薗一目⑳回診趨置£盈鍾
fraction were measured.
200による再クロマトグラフィーを行い,活性画分を
茨大農学箭報告 第39号 (1991)
叢二日rasξ}
A顛iごas轡
Ao騨記y⑳押回4(}()>
畿セ1蝋》(riOl)誠54◎〉
Table 1. Purification of DCPA Kydrolyzing
盈 (無.
2β 1が5?晦 毒
Enzyme from Pig Liver
’“…
㍑郵纏「隅一
@’”“「’一調卿’巳覧” 凸’N’試㌧tt’V’t
Specific
Step
Protein Activity activity Yield
(mg) (units)
(1箆鷲澄i亀S (%)
/mg)
Liver
13512.2
homogenate
20.2
1.5
100
9.7
9.8
48
1e.6
32.9
53
15.1
53.5
75
臨画㌔ 94・1
跳∼ i
;““t.ttrvwv−J“t” ’tko. −a一一一ttttt一一th一一一t“httt
9.7
IOO.O
47
Fig. 4 Polyacrylamide Gel Electrophoresis of
Hyd「o K子蜘e 4α3
5.7
142.5
28
Purified DCPA Hydrolyzing Enzyme and
Measurement of Activity in Eluates from
1野a憾G}2◎C2&7
8.5
297.6
42
溜「oxylapa旗e・&5
5.7
307.5
28
Microsome 99e.O
So1ubihzed
323.2
fraction
Bio−Beads SM−2
281.3
trea乞斑ellt
Gel Segments.
Electrophoresis was conducted at 3 mA per
tube (5 x 7e mm) at 4℃. Enzyne activities
against ethyl n 一 butylate, p 一 nitrophenylacetate
and DCPA were measured after e}ectrophoresis.
マトグラムをFig.3に示した。 DCPA分解活性, p一
藻
300
ニトロフェニル酢酸分解活性,エチルn一ブチレート
Cytoctwogne C
豊脚
分解活性のいずれの溶出パターンも一致した。Table
1に精製の結果をまとめて示した。比活性は約200倍
増加し収率は28%であった。精製したDCPA分解酵
素のディスク電気泳動の結果をFig。4に示した。本
1蹴
晦繍
賦要説轟幽《鞠盈囎
鷲誌騨総麟
↓輔騨
c⑳瞼紬騰
酵素タンパク質はディスク電気泳動的に単一バンド
盤髄
を示した。DCPA,エチル㍑一ブチレート,ρ一ニト
mフェニル酢酸のいずれの分解活性もタンパク質バ
璽 釜 轟 蔭翻雑 盤◎$◎
ンドと一致した。
翼壁ぴ
鰹.響t
4.分子量の推定
Fig, 5 Estimation of Molecular Weight of DCPA
ffydrolyzing Enzyme by Gel Filtration on
分子量既知の標準タンパク質とともにセファデック
Sephadex G 一一 200.
スG−200によるゲル濾過法で分子量の測定を行っ
た結果をFig.5に示した。本酵素の分子量はFig。5
に示したように,カタラーゼの近傍に溶出したこと
The enzy魚e a脆d s宅andar(i pro亀ein so1磁i◎箆s
were applied to the column (2.2 x 80 cm)
eqgliibrated with O.05M borate buffer(pH 8.0)and
elution was performed with the same buffer.
ンドはカタラーゼのサブユニットとほぼ同一の移動
度を示したことから,本酵素サブユニットの分子量
鴫鵬麟
翼
璽
Fig.6に示したように,本酵素のSDS−PAGEバ
&
から,約20万と推定された。
罵》c鵬贈翻⑬1輝鵬
醗醒》醜聖
《)謡置畳$鍵
幽門翻麹鵬蜘
趨
は約6万と推定された。
麟磯
5.至適pH
罵
酵素活性に及ぼすpHの影響を調べた結果をFig.
灘謹
7にまとめた。活性発現の最適pHは8.0付近であった。
鞠慧蜘旛⑪鵬繕。
囑
6.各種試薬の影響
酵素活性に及ぼす各種試薬の影響を,37℃,10分
⑪。黛 ⑪。轟 ◎蕊 甑総
麟⑳勧素望》
間プレインキュベートした後の残存活性により調べ,
その結果をTable。2に示した,本酵素はDFPによっ
て顕著な阻害が認められたが他の試薬による顕著な
Fig. 6 EstimatioR of the SRbgRit Molecular
阻害は認められなかった。
Electrophorsis was conducted at 3 mA per tgbe
(5x 70 mm).
Weight of DCPA Hydrolyzing ERzyme by
SDS 一 PAGE.
一 16 一
木村ら:ブタ肝臓ミクロゾームのDCPA:分解酵素の精製と若干の性質
Table 2. Effect of Various Reagents on Activity
喰◎◎
of DCPA Hydrolyzing Enzyme
Reagents
Remaining activity(%)
︵メ︺凱魁︾鵠0︽①︾鵠鯉⑳蟷
80 釦、
None (control)
100
Ethylence diamine tetraacetate
101
(EDTA)
L−Cysteine
1O1
一Ch1oromercuribenzoic acid
ぞPCMB)
103
N−Ethylmaleirnide (NEM)
99
?6iFSOpgrOPylphosphofluoridate
Phenylmethanesulfonylfluoride
(PMSF)
o
96
67
SKF 525一一A
ISvlixture of DCPA hydrolyzing enzyme and indicated
6 7 8 9 雪0
reagents were pretnctibated for 10 min at 37℃. Final
cencentration of each reagent was O.1 mM.
幽鋪
Fig. 7 Effect of pH on the Activity of DCPA
Hydrolyzing Enzyme.
Table 3. Effect of Various Pesticides on Activity
7.各種農薬の影響
DCPA分解活性に対する各種農薬の影響を,未処
of DCPA Hydrolyzing Enzyme
None (control)
は,カーバメート殺虫剤セビン,有機リン殺虫剤ス
DCMrU
ミオキソン,有機リン殺菌剤IBPにより顕著な阻害
が認められた。
Sev温
Azodrin
8.基雛特異性
N2ssol
精製過程ではすべてDCPA,エチルn一ブチレート,
工Sopro亀hiolane
p一ニトロフェニル酢酸を基質として用いたが,その
Tetrame乞】窪rin
他のDCPA類緑化合物の農薬について,本酵素によ
Sgmioxon
る分解活性を調べ,その結果をTable 4に示した。酸
M3践hion
Papthion
アミド系除草剤のCMMP(solan)を16%分解した
IBP (KitaziR P)
が,カーバメイト系除草剤のC1−IPC, MCC(swep)
Remain血g activity(%)
1
0
8
02
56
◎
0
9
640240
09
9
6
Pesticides
理酵素活性を100としてTable 3に示した。本酵素
Mix£ure of DCPA hydrolyzing enzyme and indicated
pesticides were preincubated ior IC min at 37℃.
Final concentration of each pesticide was O.1 mM.
等のN−C結合の分解はきわめて微弱であった。ま
た,殺虫剤マラチオン,パプチオン,テトラメスリ
ン,殺菌剤イソプロチオランのカルボキシルエステ
ルも本酵素により加水分解されることが認められた。
Table 4. Action of DCPA KydrolyziRg Enzyme
on Some Pesticides
9.精製酵棄および市販力ルボキシルエステラーゼと
のディスク電気泳勤パターンの比較
Substrate
本酵素は,DCPA,エチルre 一ブチレート,ρ一ニ
トロフェニル酢酸のいずれをも分解することから,エ
ステラー一一一 tf,アミダーゼ両活性を共に有する酵素で,
その他の酵素的諸性質も:Krischらが報告したカルボキ
シルエステラーぜ)ときわめて類似した酵素である。
王)CPA
Cmo (solan)
Re}ative activity(%)
100
16
C1一憩C
3
MCC (swep)
1
,h§u譲懲Sl欝欝aぎ。麗皇曇器ぎe暮。盆1,二二d愚
すでに,豚肝臓ミクWゾームからKrischの方法10》
O.1 mM. Relative activity was caluculated with activity
against DCPA taken as loo.
にしたがって精製されたカルボキシルエステラーゼが
Sigma社より市販されている。そこで,本酵素と市販
一 17 一
茨大農学術報告 第39号 (1991)
カルボキシルエステラーゼとのディスク電気泳動パ
ゼの結果とほぼ一致しており,したがって本酵素と
ターンの比較を行い,その結果をFig.8に示した。市販
カルボキシルエステラーゼどは酵素化学的性質にお
カルボキシルエステラーゼはKrischらが報告したよ
いてきわめて類似した酵素であると考えられる。し
うに単一バンドを示さず4本のバンドが認められたが,
かしながら,さきにKrischら2)はカルボキシルエス
本酵素は単一バンドを示し,また市販カルボキシル
テラーゼの分子多様性について,サブユニットは基
エステラーゼのいずれのバンドとも一致しなかった。
質特異性の異なるA,B2種類からなり,カルボキシ
ルエステラーゼはこの2種類のサブユニットが,AAA,
AAB, ABB, BBBの4種類の会合状態を形成して,
ディスク電気泳動的にもカルボキシルエステラーゼ
が4本のタンパク質バンドを示し,それぞれのバンド
も活性を示すことを報告している。しかし本酵素の
場合にはデdスク電気泳動においても単一バンドを
示し,活性もこのバンド以外には見いだされず,分
子多様性を示唆する結果は得られなかった。本酵素
とKrischの方法によって精製された市販のカルボキ
シルエステラーゼ(Sigma野望)とを同じ条件下で
A
c
B
ディスク電気泳動による移動度を比較してみると,カ
ルボキシルエステラーゼはKrischらの報告2)通り4
Fig. 8 Polyacrylamide Gel Electrophoresis of
P慧豆fied DCPA Hydrolyzi頁g E葺zyme a鍛d
本のバンドが見いだされたのに対して,本酵素は単
Carboxylesterase Obtained from Sigma.
一バンドであった。このように,分子多様性の点に
Gel co難ce蹴ra宝io箆was 7.5%and
おいて,従来の報告と異なる結果が生じたのは,可
electrophorsis was conducted at 3 mA per tube.
A:purified DCPA kydroiyzing enzyme, B:
carboxylesterase obtained from Sigma, C:mixture
ofAa纂dB。
溶化法の違いを反映していると考えられる。すなわ
ち従来の精製過程では可溶化に熱処理や有機溶媒処
察
考
理などを行ったのに対し,本法ではトリトンX−100
による可溶化と可溶化後の迅速なトリトンX−100の
除去というきわめて穏やかな可溶化の手法を用いた。
多くの研究者によって,豚肝臓のミクロゾームから
このような精製過程の違いがサブユニットの会合状
カルボキシルエステラー一一 tfが分離・精製され,アミ
態の変化を引き起こしたと考えられる。したがって
ド,エステル化合物に広い基質特異性を示すことが
本酵素とカルボキシルエステラー一一 tfの違いはサブユ
報告されている。しかし,豚肝臓ミクロゾームにお
三ットの会合状態の違いであると考えられる。しか
いて,芳香族アミド,脂肪族エステル,芳香族エス
し生体内において本酵素がどのような構造をとって
テルがすべて同一の酵素によって加水分離をうける
いるかは不明であり今後の検討すべき課題であろう。
旨
のかどうかについては不明であった。本実験におい
要
て,可溶化・精製の全過程にわたり,DCPA,エチル
re・一ブチレート, p一ニトロフェニル酢酸に対して同
1。ブタ肝臓ミクロゾーム時分より除草剤DCPAの酸
じ挙動を示し,ディスク電気泳動においてもge 一バ
アミド結合を加水分解するDCPA分解酵素をトリト
ンドにすべての分解活性が認められたことから,豚
ンX−100による可溶化後,トリトンX−100をバ
肝臓ミクmゾームにおいて,芳香族アミド,脂肪族
エステル,芳香族エステルを加水分離する酵素は唯
イオビーズSM−2に吸着させ取り除き,セファデッ
一つであると考えられる。本酵素はアミド結合,エ
イトカラムクロマトグラフィーにより精製した。精
ステル結合を含む有機合成剤に作用し,これらの結
製酵素はディスク電気泳動的に均一であり,比活性
クスG−200によるゲル濾過,ヒドロキシルアパタ
合を開卜することが明らかとなり,本酵素が生体異
は約200倍増加し,収率は28%であった。
物の解毒代謝に重要な役割を果たしていることが示
2.DCPA分解酵素の分子量はゲル濾過法により求め
唆された。本実験において分離・精製されたDCPA
た結果,約200,000でありサブユニットの分子量は
分解酵素の至適pH,基質特異性,各種試薬の影響な
約60,000であることから,本酵素は多量体を形成し
どの結果は報告されているカルボキシルエステラー
ていると考えられる。
18 一
木村ら:ブタ肝臓ミクロゾーームのDCPA分解酵素の精製と若干の性質
3.本酵素の至適pH:は8.0付近でDFP,セビン,ス
」. Biol. Chem., 255, 7161 (1980)
ミオキソン,IBPにより著しい阻害を受けた。本酵素
4) O. H. Lowry, N. 」. Rosebrough, A. L. Farr
は芳香族アミドであるDCPAばかりでなく脂肪族エ
and R. J. Randall:J. BioL Chem., 193, 265
ステルであるエチルn一ブチレート,芳香族エステル
(1951)
であるp一ニトロフェニル酢酸を加水分解し,アミ
ダーゼ活性およびエステラーゼ活性を示し,本酵素
5)児玉治,赤塚鋒巳:茨城大学農学部学術報告,22,
はカルボキシルエステラーゼ[EC.3.1.1.1]に属する
6) B. J. Vavis:Ann. IVew York Acad. Sci., 121,
49 (1974)
406 (1946)
と考えられる。
引 用 文献
1)赤塚歩巳:農薬科学,1,55(1973)
2) W. Junge and K. Krisch:Eur. 」. Biochem.,
43, 379 (1974)
3) S. K. Miller, A. R. Main aRd R. S. Rush:
7) P. Andrews:Biochetn. J., 91, 222 (1963)
8) B. L. Vallee and F. L. Hoch: Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 41, 327 (1955)
9) A. L. Shapiro:Biochein. Biophys. Res. Comm.,
26, 517 (1967)
10) K. Krisch:Biechem. Z., 337, 531 (1963)
一 19 一一一
木村ら:ブタ肝臓ミクロゾームのDCPA分解酵紫の精製と若干の牲質
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TAKAe KIMuRA, OsAMu KoDAMA, rrADma AKATsuKA
DCPA hydrolyzing enzyme was solubiiized by Triton X−100 from the microsemal fraction
prepared from pig liver. After removement of Triton X−10e from soltsbilized fraction by
Bio−Beads SM−2 treatment, solgbilized DCPA hydrolyzing enzyme wa$ purified by Sephadex
G−2◎◎gel filtra雛on a難d co1穏鶏獄chr◎】離a重ography◎箆hydr◎xylapatite. The fi鍛al preparatio簸
was homogenous in polyacrylamide gel electrophoresis at pH 8.3 and purified approximatelY
200 一fold in a 28 % yield. The molecular weight of the enzyme was estimated to be approximately
200,000 by gel fi1tration and the weight of the subunite eRzyme was determiRed to be 60,
OOO by SDS−PAGE. These resttlts suggested that the enzyme may be homooligomeric enzyme.
The eRzyme was inhibited by DFP. Among the pesticides tested, carbamate pesticides such
as Sevin and organophosphorus pesticides such as Sumioxon・and IBP completely inhibited
the enzyme activities. The enzyme hydrolyzed noy only DCPA but also ethyl n−butyrate and
p−nitrophenyl acetate. Therefore, this enzyme may belong to carboxylesterase [EC.3.1.1.1].
一 20 一
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