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美しきスキッパーに帆をゆだねて、名作の海へ出かけよう
美しきスキッパーに帆をゆだねて、名作の海へ出かけよう 先日ダニエル・ホープというヴァイオリニストに取材をする機会があった。彼は面白い話をしてくれた。それはヨーゼフ・ヨアヒムのこと。もちろん、あのブラームスの親 友で名ヴァイオリニストのヨアヒムである。ホープがヨアヒムの事跡を研究していたら、ある人が、ヨアヒムの現役時代に行ったリサイタルの演奏曲目リストを提供してく れた。そのリストを見てホープは驚く。当然のことながら古典的な作品(バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン)も入っているが、そのリストのほぼ 90%はヨアヒムの同時 代の作曲家の書いた、いわば「現代音楽」だったと言うのだ。 「ブラームスも当然、現代音楽だったんだけどね」とホープはいたずらっ子のような笑顔を作る。そしてその「現代 音楽」のほとんどは消えてしまい、今では演奏されることなく忘れ去られたと言う。 それが歴史の洗礼、と言うものだろう、と私は思う。しかし同時に、その消えてしまった作品の中に、いま現在聴いても私たちの心を掴む作品がきっとあるに違いない、と 思った。消えてしまった作品、あるいは何らかの理由によって演奏されなくなってしまた作品について、私たちはもっと関心を持って良いはずだ。 吉田恭子が紀尾井ホールで行ってきた自主リサイタルには、そうした過去への旅のヒントがたくさん隠されていた。今回のリサイタルの曲目を見ても、その印象を強くす る。オイストラフ編曲によるシューベルト=リストの「ウィーンの夜会」は楽譜が絶版になっているために、すでに一般的な演奏曲目からは外れているらしい。ベートーヴェ ンの「クロイツェル・ソナタ」の作曲時のエピソードは皆さんご存知だろう。初演を行ったジョージ・ブリッジタワーの名前は、この作品に冠されることは無かった。しかし、 ブリッジタワーがこの傑作の創作時にベートーヴェンにインスピレーションを与えたのは間違いないと思う。ラヴェル「ツィガーヌ」に関しても同じことが言える。ラヴェル に大きなインスピレーションを与えたハンガリー出身の女性奏者の名前を覚えている方はどれほど居るだろうか(ちなみに、ヨアヒムと彼女は親戚関係にある)。 吉田の知的な探究心、そして発掘した作品を演奏する時の真に音楽的な姿勢。それはもう言葉を重ねる必要もないだろう。私たちは彼女の案内する音楽の船に乗り、一夜、 歴史の流れに身を任せる。そこにはどんな風景が見えてくるか。ワクワクしないほうが無理、というものだ。 片桐 卓也(音楽ライター) もうすぐ逢える。 吉田 恭子 Kyoko YOSHIDA, Violin 東京生まれ。桐朋学園大学音楽学部を卒業後、文化庁芸術家海外派遣研修生として、英国ギルドホール音楽院、さらに米国マン ハッタン音楽院へ留学。巨匠アーロン・ロザンドに師事。世界各国の音楽祭に参加。ニューヨークを拠点に多岐にわたる演奏活 動を行い、数々の賞を受賞。 「研ぎ澄まされた感性や情感を楽器を通して偽りなく表現できるヴァイオリニスト」と絶賛される。 2001年、コロンビアミュージックエンタテインメントより2枚同時発売によるCDデビュー。また2002年「メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲&ツゴイネルワイゼン」 、2004年「ノスタルジア」 、2006年「祈り∼Preghiera」 、2007年「PASSION∼華麗なる ポロネーズ」 をワーナーミュージック・ジャパンよりリリース。 「このゆかしい余情を堪えて響く音色は、 それ自体が貴重なものだ」 と音楽専門誌にて高く評価された。2008年にアルバム「グランド・ワルツ」を、また2009年9月には通算8作目となるニューアル バム「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲&瞑想曲集」をヤマハエーアンドアールよりリリース。これまでにアーロン・ロザン ド、江藤俊哉、滝沢達也各氏に師事。全国各地でリサイタルを行う他、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本 フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者が 中心となるオーケストラ「マスター・プレイヤーズ・ウィーン」等と共演し、指揮者、共演者からも厚い信頼を寄せられている。 雑誌や新聞、テレビやラジオ等メディアの出演も大変多く、最近では NHK「つながるテレビ@ヒューマン」 、NHK「カラヤ ン生誕 100 年記念・11 時間特別番組」 、テレビ朝日「題名のない音楽界 21」 「徹子の部屋」 、テレビ東京「みゅーじん / 音遊人」 、 テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」等、番組パーソナリティやコメンテーターとして出演。また NHK「地球ウォーカー」で はテーマ曲を担当、G8 北海道洞翁湖サミットでは環境庁エコオピニオンとして登場し、様々な活動で広く親しまれている。 その他、映像とのコラボレーションによる「いわさきちひろと吉田恭子の世界」 、日本ユニセフ協会「オードリー・ヘップバーン 子供基金コンサート」 、環境雑誌「ソトコト」等の活動を通じ、子供達と自然・エコロジー・音楽・チャリティーに対する積極的な取 り組みを行っており反響を呼んでいる。2003年から、地域社会の活性化と福祉の精神を目的に、全国の小中学生等をクラシッ クの世界へ道案内する巡回教育プログラム「ふれあいコンサート」シリーズをスタートさせ、これまでに約300公演、7万人以上 が参加している。積極的な活動と功績が認められ、平成20年度「関西経済と心の会・奨励賞」を受賞。2011年より開催のYEKア カデミー「第1回若い芽のアンサンブルIN軽井沢」実行委員長。オフィシャル・ホームページ http://www.kyokoyoshida.com 白石 光隆 Mitsutaka SHIRAISHI, Piano 1989年に東京藝術大学大学院を修了後、ジュリアード音楽院へ進む。1994年第63回日本音楽コンクール声楽部門において、優れた日本歌曲の演 奏に贈られる木下賞(共演)受賞。CD「レグルス回路」は山野楽器1998年度アカデミー賞(現代曲部門)を受賞、またベートーヴェン作品109と、これ に触発された矢代秋雄作品を主軸とした「109」 、 「大指揮者のピアノ曲」 、 「作曲家ムラヴィンスキー」他、いずれも好評である。キングインターナショ ナルとのベートーヴェン・ピアノソナタシリーズの収録を開始し、2006年8月に3大ソナタを収めたアルバム第1弾を、2007年9月には第2弾をリ リース。2009年8月に発表した「ピアノによるルロイ・アンダーソン」はアンダーソン遺族より賞讃を受ける。また、2007年2月にリリースした「成田 為三ピアノ曲全集」 (世界初録音)は平成19年度(第62回)文化庁芸術祭レコード部門優秀賞を受賞し、各方面から高い評価を得る。 現在、東京藝術大学ピアノ科及びお茶の水女子大学文教育学部非常勤講師。 憂いに満ちた艶やかなヴァイオリンの世界、 心躍るチャーミングなワルツ 広上淳一とアンサンブル金沢との共演による コンチェルト第 2 弾! チェイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲&瞑想曲集 吉田恭子 (ヴァイオリン) 白石光隆 (ピアノ) [録音]2008年5月7∼9日 彩の国さいたま芸術劇場 QACR-30001 税込¥2,500 シベリウス / ワルツ チャイコフスキー / 感傷的なワルツ プロコフィエフ / グランド・ワルツ ラヴェル / 高雅にして感傷的なワルツ ドビュッシー / レントより遅く∼ワルツ リスト/ラフォンのロマンス「船乗り」による 協奏的大二重奏曲 ホイベルガー / 真夜中の鐘 他全 10 曲 吉田恭子 (ヴァイオリン) 広上淳一 (指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢 [録音]2009年5月26、27日 石川県立音楽堂コンサートホール QACR-30005 税込¥2,800 チャイコフスキー /ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品 35 グラズノフ / 瞑想曲 作品 32 マスネ / タイスの瞑想曲 ■交通アクセス 地下鉄栄駅 ⑫ 番出口より東へ徒歩 4 分 お 車 でご 来 場 の 方 へ ホール併設立体駐車場をご利用下さい 近隣車上荒らしが多発しています。 当駐車場は過去、事件・事故は皆無です。 ●係員常駐 安心安全 ●24 時間営業 ●長時間割引あり 高さ制限:1.55m(セルシオクラス入庫可) 基本料金 30 分 250 円 6 時間まで 1,500 円打切 12 時間まで 2,500 円打切 24 時間まで 4,000 円打切 ホール入口 モスバーガー 駐車場入口 名古屋市中区栄 4-5-14 〒460-0008 TEL:052(265)1715 FAX:052(265)1716 E-mail [email protected] URL www.munetsuguhall.com 宗次ホールチケットセンター 営業時間:10:00∼18:00 年中無休 (年末年始、施設メンテナンス日を除く)