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Ⅱ 高齢者サロン等の居場所づくり
Ⅱ Ⅱ 高齢者サロン等の居場所づくり サロン・居場所 −101− 1 「高齢者サロン等の居場所」とは (1)居場所づくりの意義 高齢になっても元気で生きがいを持ち、住み慣れた地域で、自分らしくいきいきと暮らして Ⅱ いくことは、誰もが抱く願いです。そのためには、身近な地域で“人と人とのつながり”を深 めることが大変重要です。何らかの形で地域や近隣の人との接点をもつことで“ふれあい”が 生まれ、周りの人が高齢者の様子を把握することができ、高齢者の安心の確保にもつながりま す。日々のふれあいの積み重ねで、「地域における支え合い」の土壌が培われていきます。 一人暮らしなど高齢者のみの世帯が増加していますが、高齢になると家の中に引きこもりが ちになり、地域で孤立してしまう恐れもあります。それを防ぐためには、地域との“つながり” をつくるために、高齢者をはじめ地域の誰でもが気軽に立ち寄って、お茶を飲んだり食事をし ながらおしゃべりのできる「居場所づくり」を進めることが効果的です。 地域における居場所づくりは、「サロン」「コミュニティ・カフェ」「茶の間・縁側」など、 様々な形で各地で取り組まれています。お茶を飲んだりおしゃべりをするだけでなく、詩や芸 術、手芸などの趣味の活動を行ったり、体操やゲーム、スポーツなどの健康づくりを行うなど、 活動内容は様々です。 居場所づくりは、地域の元気な高齢者が運営に参画している場合も多く、居場所を訪れる高 齢者の孤立防止や介護予防につながることはもとより、高齢者が主体的に運営に参画すること で、高齢者の社会貢献活動の促進や生きがいづくりにもつながるものです。 −102− Ⅱ (2)居場所のタイプ 居場所の形態や活動内容等は多種多様です。 市町村や社会福祉協議会の事業として、公共施設などで実施されているサロンや、市町村等 の助成や委託を受けて住民組織などが公民館や集会所、個人宅などで実施しているサロンもあ ります。これらは、市町村の要綱等に基づく一定の要件に基づいて実施されていますが、それ ぞれ、地域の実情等に応じて工夫しながら運営されています。 また、NPOや住民組織、個人などが独自に実施している居場所もあります。空き店舗を改 修したり、自宅の一部を開放したり、様々な形で取り組まれています。 居場所のタイプは様々ですが、ここでは、全国社会福祉協議会が提唱している「ふれあい・ いきいきサロン」と、さわやか福祉財団が普及する「ふれあいの居場所」を例に、居場所のタ イプを示します。 −103− ① ふれあい・いきいきサロン(全国社会福祉協議会) Ⅱ −104− Ⅱ −105− ② ふれあいの居場所の4つのタイプ(さわやか福祉財団) さわやか福祉財団では、これから「ふれあいの居場所」を始めたい人などに向けて、次の4 つのタイプに分類し、具体的にポイントを整理しています。 Ⅱ NPO法人の茶の間が運営する 「お休み処・お茶処駅前ぽっけ」(茂木町) NPO法人ゆっくりサロンが運営する 「ゆっくりサロン」(那須町) 2 県内の事例紹介 県内では、NPOや住民組織、個人など様々な主体により、多様な居場所づくりの取組が行 われていますが、ここでは、市町村を通じて集めたサロン等の居場所づくりの取組を紹介しま す。 ここで紹介している事例以外にも、地域住民や団体等による居場所が数多くあると思われま す。そうしたインフォーマルサービスも含め、気軽に集える居場所が地域に多数存在すること は、地域における支え合い体制を構築する上で重要です。 −106− (1)取組事例の紹介 ① 足利市高齢者ふれあいサロン(設置主体:足利市) 地域にある身近な居場所 足利市高齢者ふれあいサロン Ⅱ 足利市では、高齢者が家に閉じこもることな く近隣とのふれあいの中で生きがいをもって生 活が送れるようにするため、サロンを開設する 団体や個人に対する助成を行うことにより、地 域における高齢者ふれあいサロンの設置を進め ています。 高齢者の閉じこもり防止と近隣の人々とのふ れあいを目的とした、誰でも参加できる地域の 『たまり場』的なサロンで、現在、足利市内に 195か所あります。(平成24年1月末現在) 気の合う仲間と楽しい時間を過ごす 体操や輪投げなどで、楽しみながら介護予防に取り組む −107− ② 街中サロン「なじみ庵」(設置主体:NPO法人ゆいの里) 那須塩原市では、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活が営めるよう支援するため、高齢 者だけでなく多くの人が集まりやすい中心市街地において、高齢者の能力を活用し、地域住民 との連携により運営する「街中サロン」の設置を支援しています。現在、「なじみ庵(西那須 野駅近く) 」「元気ほん歩(黒磯駅前)」の2か所が設置されています。 Ⅱ 高齢者のみなさんのもったいない力を活かしたまちづり 街中サロン なじみ庵 空き店舗を活用した街中サロン「なじみ庵」 ■お互い様で支え合う街の中の居場所 「なじみ庵」は、地域の高齢者の介護予防と生きがいづくり、空き店舗を活用した市街地の 活性化を目的として、NPO法人ゆいの里が事業主体となり県と那須塩原市の補助を受け、 2005年11月に開所しました。空き店舗を2軒つなぎ、20人が座れる食堂と、多機能に活用でき る工房があります。なじみ庵は、ゆいの里が活動の理念とする皆が助け合って生きていく「相 互扶助」の店舗です。 ■なじみ庵は会員(65歳以上の方)が主役! なじみ庵は、約150名の会員(地域の65歳以上の高齢者)がボランティアとして力を出し合 って運営しています。子どもたちから大人まで、誰もが来ることができ、世代間交流の場にも なっています。高齢者が介護を「受ける」、ケア「される」のではなく、生きがいを見出すこ とができ、家の「縁側」のような自分の居場所として利用されています。 健康マージャン、踊りなどの自主グループ活動 −108− ■なじみ庵の取組の概要 ○営業日 月∼土曜日・午前9時∼午後5時 ○会 員 65歳以上の方 ○会 費 月会費200円+ボランティア保険年額 ○教 室 介護予防と生きがいづくりを兼ね「転ばぬ先の知恵教室」「物忘れ知らず教室」を実施 ○伝習会 しもつかれ、釜のふた饅頭、おはぎ、昔の遊び、切り絵、蛍かご編みなど、高齢者の知恵 や技を若い世代に伝えて世代間交流を図る。 ※なじみ庵行事(教室・相談)は原則無料。材料代等がかかるときは別途提示 ○自主グループ 歌声喫茶、百人一首、折り紙、般若心経、踊り、ハーモニカ、健康マージャンなど、会員 が自発的に内容を決めて活動している。 ○カフェ・レストラン ボランティアの高齢者が作る“お袋の味”地産地消・旬産旬食の「おふくろの味日替わり ランチ(月∼金)」が好評(コーヒー付き 一般:500円 会員:300円) ボランティア高齢者が作るお袋の味日替わりランチ ○レンタルボックス ・地域の方の手作りの作品を展示販売するレンタルボックスを設置。1ヶ月600∼1,800円程 度で借りることができ、高齢者以外も利用することができる。 ・駄菓子屋もあり、菓子を求めて近所の子どもたちも集まってくる。 昔の遊びで世代間交流 −109− Ⅱ ③ 稲葉さんち【設置主体:稲葉さん(個人)】 芳賀町では、高齢者の介護予防運動や趣味活動、レクリエーション、交流を目的として町が 設置している「生きがいサロン」がありますが、その他に、個人が自主的に開設している居場 所があります。 自由に楽しく過ごせる居場所 稲葉さんち Ⅱ ■自宅を開放した居場所 芳賀町にある「稲葉さんち」は、稲葉さんが個人で開設している居場所です。特に名前があ る訳ではありませんが、地域では「稲葉さんち」で通っています。 編み物や小物作り、料理が好きな稲葉さんが、仕事や孫の子育てが終わったのを機に、訪れ る人が気兼ねしないようにと自宅から200m位離れた別宅に居場所を開設しました。 趣味の活動を通して、楽しく交流できる場として、自然と友人や知人が仲間を連れて集まる ようになりました。平成23年度で開設してから13年を迎えますが、稲葉さんの人柄や居場所の 雰囲気に惹かれ、芳賀町の方はもとより近隣市町村や茨城県から通ってくる方もいます。参加 者は、よくしゃべり、よく笑いながら、思い思いの時間を楽しく過ごしています。 別宅を利用して開設している稲葉さんち 稲葉さん ■居心地がよく、自由に楽しく過ごせる居場所 ここでは、特に決まったスケジュールはありません。編み物や裁縫、手芸、料理、絵、おし ゃべりなど、参加者が自由にやりたいことを行って過ごしています。また、季節によって、餅 つきやしもつかれ作りなどのイベント的な活動も行っており、実施日の数日前から参加者に口 頭で話しておくと皆が集まってきます。 稲葉さんは「来るんだったらお昼を食べないできてね、うちで食べてほしいから」と言い、 来る方に分け隔てなく接しています。料理も皆で作ると楽しいし、作った料理を喜んで食べて もらえることが喜びにもつながります。 手芸などの作品は道の駅に展示することもあり、そこから更に人と人とのつながりが広がっ ていきます。 −110− Ⅱ みんなで作る太巻き寿司などの料理の数々 編み物の作品 ■みんなに役割と出番を 居場所は、特にスタッフがいる訳ではありませんが、稲葉さんが古くからの友人である八森 さんの協力を得て運営しています。また、家族の理解と協力も欠かせません。 さらに、参加者が互いに料理や手芸などの得意技を教え合ったり、長く参加している方が食 事の準備や材料提供などを手伝ってくれたりと、参加者自身が居場所の運営に関わるようにな っています。参加者一人ひとりに役割と出番をつくることで、楽しく過ごすだけでなく、やる 気や責任感も生まれてきます。 料理の食材は家にあるものや参加者が持ち寄ったものを使うなどして、あまりお金をかけず に運営しています。 運営する側も多くの人が来てくれて嬉しいし、参加する側も、自由に来たい時に来ることが でき、気兼ねなく居心地よく過ごせること、そして稲葉さんの気さくな人柄が、居場所が長続 きする秘訣と言えるのかも知れません。 ■稲葉さんちの取組の概要 ○開設日 特に決まりがある訳ではなく、稲葉さんが来られない日を除いて毎日9時から 17時頃までオープン ○参加者 参加者の登録などは特に行っていませんが、50人以上の方が入れ替わり立ち替 わり訪れ、1日平均6∼7人くらい、多い時は10人以上。女性が多いが、男性 が来ることもある。 ※手芸の材料費のみ参加者から徴収 自由に楽しく過ごす参加者 皆で食べるとおいしい −111− (2)高齢者サロン等の居場所づくり一覧 Ⅱ −112− Ⅱ −113− Ⅱ −114− Ⅱ −115− Ⅱ −116− Ⅲ 介護支援ボランティア制度 −117− Ⅲ 1 「介護支援ボランティア制度」とは (1)制度の意義 高齢化が急速に進行していますが、地域には元気な高齢者も大勢います。元気な高齢者が、 自ら介護支援に関するボランティア活動に参加することは、活動者本人の健康の保持・増進や 介護予防、生きがいづくりへの効果が期待できます。介護予防を進めることは、介護給付費の 抑制にもつながるものと思われます。 また、地域でのボランティア活動を進めることにより、住民同士のつながりを深めるととも Ⅲ に、地域の活力の向上にも資すると思われます。 ≪東京都稲城市が制度を提案≫ 平成18年度に東京都稲城市が、高齢者による介護支援ボランティア活動を介護保険で評価す る仕組みを創設したいと、国に対して構造改革特区の提案を提出し、それを契機として、厚生 労働省において、ボランティア活動を介護保険制度を活用して支援する仕組みが検討されまし た。 その結果、平成19年5月、介護保険制度上保険料控除を行うことは認められないものの、介 護保険制度における地域支援事業を活用することで、高齢者のボランティア活動の支援を行い、 介護予防に資する取り組みを行う施策の普及・推進が図られることとなりました。 制度を考案して国に提案した東京都稲城市では、平成19年9月から制度を運用しており、全 国でも取り組む自治体が増えつつあります。 (2)制度の仕組み ≪高齢者のボランティア活動を評価してポイントを付与≫ 制度の仕組みとしては、地域でボランティア活動に取り組む高齢者の活動実績を「ポイント」 として評価し、活動した高齢者にポイントを付与します。管理機関(市町村や社会福祉協議会 など)は活動者のポイントを管理し、活動者の申出に応じて、蓄積したポイントを地域で使え る商品券や現金等として参加者に交付します。結果として活動者はポイントを介護保険料にも 充てることができるようになります。 このポイントの使途については、地域の工夫次第で、介護予防に役立つ様々な取り組みなど に広げることも考えられます。地域の活性化にも資するような活用方策も可能となります。 −118− ≪生きがいづくりや地域活性化にもつながる取組を≫ 制度に対しては、「ボランティア活動なのに対価を求めるのはいかがなものか」「ポイント目 当てに活動していると思われるのではないか」といった疑問の声も聞かれることもあります。 しかし、活動に応じてポイントが蓄積されることは、活動を始めるきっかけづくりや継続し て取り組むための励みにもなり、高齢者の社会参加や介護予防の促進に資する制度とも言えま す。また、ポイントを地域の商店等で使える商品券等や地域の特産品と交換できるようにする などの工夫を行うことで、地域の活性化にもつなげることができます。 Ⅲ 2 県内の事例紹介 県内では、平成23年12月末現在で、県内では小山市と日光市が導入しています。 なお、ポイントの付与はありませんが、介護予防サポーターなど、介護予防教室の補助や高齢 者ふれあいサロンの運営などをボランティアで行う地域住民の方を養成・登録する取組も県内の 市町で行われています。 (1)小山市介護ボランティア支援事業 ① 導入の目的 小山市では、65歳以上の元気な市民が、介護予防に資するボランティア活動を通して、高齢 者の地域貢献を奨励し、支援することを目的として、平成22年9月から小山市介護ボランティ ア支援事業をスタートさせました。 −119− ② 基本方針 小山市介護ボランティア支援事業は、次の基本方針に基づき実施されています。 Ⅲ ③ 事業の概要 −120− いきいきふれあい事業でのボランティア活動 Ⅲ 小山市介護ボランティア手帳 −121− (2)日光市介護支援ボランティア制度 ① 導入の目的 元気な高齢者が介護保険施設でボランティア活動を行うことで、本人の健康増進や介護予防 につなげるとともに、生きがいづくりを促進します。また、受入施設にとっては、ボランティ アが訪れることで地域とのつながりが深まり、入所者の生活を豊かにする効果も期待できるこ とから、平成22年8月から制度をスタートさせました。 日光市が事業の実施主体となり、一部を日光市社会福祉協議会に委託して実施しています。 市社会福祉協議会では、ボランティア登録者やボランティア受入れ施設に対する研修を実施す るなど、高齢者によるボランティア活動の促進に向けた支援を行っています。 Ⅲ ② 基本方針 日光市介護支援ボランティア制度は、次の基本方針に基づき実施されています。 ③ 制度の概要 −122− Ⅲ −123− Ⅲ −124− 地 域 支 え 合 い 体 制 づ く り 取 組 事 例 集 地域支え合い体制づくり取組事例集 高齢になっても安心して暮らせる 支え合いのある地域を目指して 発行 平成24年3月 古紙配合率100%再生紙を使用しています 高齢になっても安心して暮らせる 支え合いのある地域を目指して 地域支え合い体制づくり取組事例集 編集/発行 栃木県保健福祉部 高齢対策課(介護保険班) 〒320-8501 宇都宮市塙田1-1-20 TEL 028-623-3148 FAX 028-623-3925 http://www.pref.tochigi.lg.jp/e03/index.html 栃 木 県 栃 木 県