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本文PDF - J
解
説
コ ンク リー ト構 成 則 の研 究 動 向 と課 題
前
川
宏
一 ・*1・ 長 谷 川
俊
昭*2
概 要 本 稿 は,コ ン ク リー ト構 造物 の有 限要 素 解 析 な どで 必 要 と され る連 続 体 コ ンク リー トお よ び鉄 筋 コ ン ク リー ト
の構 成 則(応 カ ーひず み 関係)に 関す る研 究 動 向 と今 後 の 課 題 につ いて 解 説 した もの で あ る。 こ こで は,骨 材 最 大 寸 法 の
数 倍 の コ ン トロ ール ボ リュー ム 内 で 空 間 的 に平 均 化 され た応 力 と ひず み の 関 係 と して 定 義 さ れ る連 続 体 コ ン ク リー トの 構
成 則 の う ち,塑 性 論 的 ア プ ロー チ,損 傷理 論,塑 性 ・損 傷 の 組 合 せ 理 論,微 細 構 造 に 立脚 した モ デ ル につ いて 述 べ た 。 分
散 ひ び わ れ を 有 す る30∼50cm四
方 の コ ン トロ ー ル ボ リュ ー ム に 関 す る 鉄 筋 コ ン ク リー ト構 成 則 は,ひ び わ れ の 密 度 や
本 数,鉄 筋 比 な どの 影 響 要 因 が 相 互 に 関 連 を も って変 動 す る た め,見 か け上,ひ び わ れ の 分 散性 に は強 く依 存 しな い こ と
を説 明 した。 鉄 筋 が 交 差 す る1本 の ひ び わ れ を対 象 とす る鉄 筋 コ ン ク リー ト離 散 ひ び わ れ 構 成則 は,鉄 筋 の 構 成 則 とひ び
わ れ面 の応 力 伝 達 構 成 則 を 組 み 合 わ せ た もの で あ り,単 独 で は表 現 され な い経 路 依 有牲 を 記 述 す る こ と が で き る。 今 後 は
構 成 則 の論 理 の 明快 さ と精 度 や 適 用 範 囲 の バ ラ ンス を と り,部 材 レベ ルか ら構 成 モ デ ル と解 析 手 法 を系 統 的 に検 証 して い
く段 階 に き て い る。
キ ー ワ ー ド:構 成 則,有 限要 素 解 析,塑 性,損 傷,微 細構 造,鉄 筋 コ ンク リー ト,分 散 ひ び わ れ,離 散 ひ び われ
この 時期 の果 実 で あ る。 コ ンク リー ト基 礎 物性 の 解 明 と
1.は
じめ に
一 構 成 則 研 究 の 背景 一
作 用 応 力 に対 す る材 料 安 全 率 の 評 価 等 が 主 た る研 究 上 の
有 限要 素 法 等 の 実用 化 に よ り,複 雑 な 応 力 状 態 と場 所
視 点 で あ った 。多 くの研 究 者 に よ る多 軸 応 力 下 の 破 壊 包
ご とに 異 な る材 料 非 線 形 性 を,構 造 解 析 にお いて 合 理 的
絡 線 は,関 連流 れ則 に もとつ く塑 性 関 数 と して 弾 塑 性 構
に 扱 う こ と が 可 能 とな っ た 。 任 意 の 構 造 形 態,荷
重様
成 則 の 枠 組 み に取 り入 れ られ10)'11),構 造 解 析 に貢 献 す
式,境 界 条 件 に 対 応 可 能 な 「
一 般 化 」 の土 俵 が 形 成 され
る道 を た ど った 。 塑性 理 論 自体 はす で に確 立 され た 概 念
た こ と で,さ ま ざま な 工 学 領 域 に 数 値 解 析/力 学 が 浸 透
と して の地 位 を 占め て お り,Pragerに
よ って 摩 擦 材 料
した の は敢 え て 説 明 を 待 た な い 。 こ こで構 成 則 に 関す る
へ の 応 用 も示 され た 。 塑性 理 論 で は本 質 的 に表 現 で きな
研 究 が担 う使 命 は,「 一 般 化 さ れ た 鉄 筋 コ ン ク リー ト構
い コ ン ク リー トの 非 線 形 挙 動 が あ る に して も,コ
造 解 析 法 を 実 現 す る こ と」 とい え よ う。
リー ト非 線 形 構 造 解 析 の 展 開 に 果 た した役 割 は大 き い。
機 械 工 学 分 野 で 塑 性 論 が 弾 塑 性 マ ト リクス の 陽 な形 で
有 限 要 素 法 に 組 み 入 れ られ43),有
限 要 素 法 に よ る非 線
形 解 析 に 方 向 付 け が 与 え られ た の が1968年
ぼ 同 時 期 に,早
で ある。ほ
くもRasid33),Cervenka8)'9)ら
ひ び わ れ モ デ ル の 考 え 方 とRC板
は分 散
構 造の非線 形有 限要
素 解 析 を世 に 出 して い る 。Scordelisら25)は
そ の後 今 日に至 る まで,コ
ンク
ン ク リー トの非 線 形 挙 動 を よ
り正 確 かつ 合 理 的 に説 明 す る,コ ン ク リー トと い う複 合
材 料 に特 化 し た構 成 則 の研 究 が 進 め ら れ た 。 本 稿2章
は,こ の 内容 に 関す る もの で あ る。
一方 ,鉄 筋 コ ンク リー トは,ひ び わ れ の 発 生 ・成 長 が
弾性解析に
留 ま りな が ら も,離 散 ひ び わ れ の 概 念 でRCは
りの せ
ん 断 問 題 に 取 り組 ん だ 。鉄 筋 コ ンク リー トの 非 線 形 性 を
定 量 的 に 表 現 し,精 度 と一 般 性 を高 め,か つ 構 成 式 の 形
で 数 値 解 析 に 反 映 させ る こ とが,一 般 化 構 造 解 析 法 へ 向
か う 階 段 を登 る う え で 大 き な 工 学 的 意 義 を もつ こ と と
な った 。
沿 革 の 概 要 を 図 一1に 示 す 。 有 限要 素 解 析 以 前 に も,
コ ンク リー トの 多 軸 強 度 に 関 す る貴 重 な研 究 が行 わ れ て
い る2)・35)。
有 名 なKupferの
*1ま
二 軸 応 力 載 荷 実 験15)も,
えかわ ・こういち/東 京大 学助教授
工学部 総合 試
験所(正 会員)
*2は せがわ ・としあき/清 水建設㈱技術研究所 研究員
(正会員)
Vo1.32,
No.5,
1994.5
図 一1 コ ンク リー ト構 成 則 と非 線 形 解 析 の 沿 革
13
安 定 して 進 行 す る状 態 で使 用 され る構 造 で あ るた め,ひ
る もの で あ るが,記 述 対 象 とす る応 力 とひず み が,ど の
び わ れ が 部材 断面 を貫 通 して形 成 され た 後 の 安 定 領 域 が
大 き さ の材 料 寸 法(コ
主 た る研 究 対 象 とな る。1本 の コ ンク リー ト中 の ひ び わ
定 義 さ れ て い る の か を 明 確 に して お くこ とが 肝 要 で あ
れ,お よ び交 差 鉄 筋 と の相 互 作 用 は,鉄 筋 コ ン ク リー ト
る 。 図 一2に 解 析 対 象 と,応 力/ひ ず み を 規定 す る最 小 材
ン トロ ール ボ リュー ム)に 対 して
の 構 造 解 析 に不 可 欠 で あ り,応 力 開放/伝 達 の 機 構 と構
成 則 に よ る記 述 が研 究 の対 象 とな った 。 また,鉄 筋 に よ
る ひ び わ れ進 展 の安 定 化 と分 散 か ら,複 数 の ひ び わ れ を
含 む コ ン ク リー トの空 間平 均 化 され た 挙 動 を 構 成 則 で記
述 す る 努 力 が,過 去10年
に わ た り続 け られ て き た27)'28)。
これ らは鉄 筋 コ ンク リー トの構 成 則 と して,連 続 体 コ ン
ク リー トの構 成 則 と一 応 区別 して 扱 う こ と と した 。本 稿
3章 は これ に言 及 す る。
無 筋 に近 い コ ンク リー ト構 造 で は,ひ び わ れ が局 所 化
し,限 られ た少 数 本 の ひび わ れ が 全 体 挙 動 を 支配 す る 。
ひ び わ れ 発 生 か ら貫 通/形 成 に至 る過 程 の 非 線 形 性 が,
構 成 則 で記 述 す べ き事 項 とな る。 コ ン ク リー トに 巨視 的
な ひ び わ れが 形 成 され る さ い に,部 材 寸 法 に対 して無 視
で き な い体 積 を有 す る過 渡 領 域 が 形 成 され る。 そ の た
め,破 壊 靱 性 値 の み で は現 象 を 一 意 的 に確 定 で き な い。
過 渡 領 域 の 変 形 と応 力 伝 達 を コ ン ク リー ト構 成 則 と して
規 定 す る こ とで,破 壊 エ ネ ル ギ ー と過 渡領 域 の二 者 が解
析 の 中で 自然 に取 り入 れ られ る 方 法 が採 用 さ れ る よ う に
な っ た。 ひび わ れ 過 渡 領 域 の 構 成則 は,本 協 会 ・破 壊 力
学 研 究 委 員 会 報 告26)に 詳 しい の で,本 稿 で は 割愛 す る。
2.連
続 体 コ ン ク リ ー トの 構 成 則
構 成 則 は材 料 に 発 生 す る 応力 とひず み の 関係 を 規 定 す
The State-of-the-Art
図 一2 対 象 構 造 と構 成 則 を 定 義 す る と き の コ ン トロー ル
ボ リュ ーム
on Constitutive
By Koichi Maekawa
and Toshiaki
Laws
of Concrete
Hasegawa
Concrete Journal, Vol. 32, No. 5, pp. 13-22 , May 1994
Synopsis
The present paper reviews researches on constitutive laws (stress -strain relations) for
concrete continuum and reinforced concrete , which are necessary in numerical
structural analysis,
such as finite element method. Among constitutive laws for concrete continuum that are described in
a control volume with size of several times of maximum aggregate size , plasticity models, damage
models, combined models of the both and micro-structure-based
models are summarized . It is
explained that constitutive laws for reinforced concrete derived for a control volume of 30-50 cm
square concrete element with distributed
cracks are independent of crack density and crack number
owing to the trade-off mechanisms
among those effects . A constitutive model for a reinforced concrete discrete crack, that is derived by combining constitutive models for both reinforcement
and
crack interface,
deals with a single crack crossing reinforcement
and predicts path dependency
which can not be described by each of the models. Future tasks are to develop well-balanced
consti tutive laws among theoretical clearness, accuracy and application limit and to verify systematically
them and the analytical methods from the level of structural members .
Keywords : constitutive law , finite element analysis,
plasticity,
damage,
micro-structure
, reinforced concrete, smeared crack, discrete crack
14
コ ン ク リー ト工 学
料 寸 法 を 併 記 した 。 理 想 連 続 体 で は ひ ず み/応 力 が 規 定
す る こ とか ら明 白 で あ る 。塑 性 流 れ の 方 向が 詳 細 に検 討
さ れ る体 積 は無 限小 で あ る。
され,ま
た,流 れ 方 向 の定 式 化 を 目 的 と した 実 験18)'41)
も1980年
代 に始 ま って い る。 鋼 材 の 塑 性 構 成 則 とは 異
しか し,コ ンク リー トや粒 状 体 ・固液 混 相 流 な どは,
構 成 粒 子 以 下 に コ ン トロ ール ボ リュ ー ムを 設 定 す る こ と
な り,流 れ 則 を与 え る塑 性 ポ テ ンシ ャル と塑 性 の 進 展 を
は現 実 的 で な い 。 た と え ば コ ンク リー トに圧 縮 応 力 が 作
規 定 す る荷 重 関数 に 関連 性 を与 え な い 立 場 が,研 究 動 向
用 す る場 合,粗 骨 材 に発 生 す る局 所 ひず み と粗 骨 材 間 に
と して 一般 的 で あ った。
存 在 す る モ ル タ ル ひず み は大 き く異 な る こ とが 知 られ て
荷 重 関数 と硬 化 則 に よ る塑 性 進 展 の 規 定 方 法 に も改 良
ン トロ ール ボ リュ ーム 内で の平 均
が 加 え られ て き た 。 特 に,圧 縮/引 張 軟 化 を 塑 性 理 論 の
応 力 と平 均 ひず み を 用 い て,「 場 所 ご とに 異 な らな い 構
枠 組 み で 表 現 す る た め に,後 出の 損 傷 の 概 念 を 基 に 非 線
成 則 」 が成 立 す る の な らば,こ れ を 構 造 解 析 の 最 小 寸 法
形 性 の 進展 に従 って荷 重 関数 を(応 力 値 に対 して 非 比 例
とす る こ とが で き る。 骨 材 最 大 寸 法 の 数 倍 を コ ン トロー
的 に)縮
ル ボ リュ ー ム に設 定 し,そ の 中で 平 均 され た ひず み と応
た32)'42)。時期 を 同 じ く して 構 成 則 の検 証 と改 良 に つ な
力 関係 を規 定 す る構 成 則 を,連 続 体 コ ン ク リー トの 構 成
が る よ う な,2軸
則 と 呼 ぶ こ とにす る。
る。 塑 性理 論 と現 実 の コ ンク リー トとの 差 を 明 らか に し
い る 。 した が って,コ
過 去 の 構 成 則 研 究 で は,(1)応 カ ー平 均 ひず み 関係 を 直
退 さ せ る な ど,改 良 ・工 夫 が 加 え られ て き
・3軸 載 荷 実 験13)'36)も報 告 さ れ て い
よ う と した 載荷 経 路 が意 識 的 に選 別 され て い る点 は興 味
式 に 当 て は め る方 法,(2)コ ン トロ ー ル ボ リ ュー ム
深 い 。 実 験 が理 論 を支 え,理 論 研 究 が 新 た な 実 験 の 動 機
内 で微 視 的 に起 こ って い る挙 動 を,空 間平 均 化 され た 現
付 けを 与 え る。 構 成 則研 究 の分 野 で は,理 論 研 究 が 先 行
象 と して 捉 え,数 式 等 に 代 表 さ せ る方 法,お
す る傾 向 は 強 く,実 験 と理 論,基 礎 と応 用 が 両 輪 の ご と
接,数
よ び(3)コ
ン トロー ル ボ リ ュー ム 内 の微 視 的構 造 を幾 何 学 的 に も規
く回 る こ とが,最 終 目標 到達 に は不 可 欠 で あ る。
定 して,非 均 質材 料 の平 均 化 さ れ た構 成 則 を 導 出す る方
関連 流 れ 則 とひ ず み硬 化則 とい った,簡 単 な 定 式 化 の
法 に 大 別 され る(図 一1参 照)。 亜 弾 性 モデ ル,非 線 形 弾
み で 弾 塑 性 構 成 則 は 鋼材 に対 して相 当 の成 功 を収 め た反
性 モ デ ル,等 価1軸
面,コ
に換 算 さ れ た 直 交 異 方 性 モ デ ル 等,
(ー)に
属 す る構 成 則12)は,狭
い範 囲 の 適 用 に 対 して 良 好
ンク リー ト弾 塑性 構 成 則 は相 対 的 に は複 雑な 定 式
化 とな った 。 複 雑 な 非 線 形 性 も扱 わ れ る よ う に な っ た反
な 精 度 を 与 え る こ とが 容 易 な反 面,一 般 化 則 を得 る 目的
面,現
か ら は限 界 が あ る。 物 理 的 イ メ ー ジを構 成 則 で規 定 し,
る。 変 形 が 増 大 す る につ れ,除 荷 時 の 剛性 が低 下 す る事
構 成 式 で表 現 す る(2)∼(3)のア プ ロー チ が 過 去10年
実 は,残 留 変 形 の 進 展 で す べ て の 非線 形性 を表 現 す る塑
の研
性 論 の枠 組 み で は説 明 で きな い 。 い くつ か の塑 性 構 成 則
究 動 向 で あ った とい え る。
2.1塑
実 と矛 盾 す る挙 動 も新 た に追 加 さ れ る こ と とな
で は 引 張軟 化 域 に到 達 した 場 合,引 張 りに 直交 す る方 向
性 論 的 ア プ ロー チ
留 す べ り変
の圧 縮 剛性 が 急 速 に低 下 す る予 測 を与 え る た め に,構 造
形)に 求 め,流 れ 則 と硬 化 則 の 二 者 で 塑性 変 形 を記 述 す
解 析 に用 い る と不 都 合 を きた す モ デ ル もい くつ か が知 ら
る(図 一3参 照)。 コ ン ク リー トに 対 す る 塑性 論 の 限界 を
れ て い る 。 ひ び わ れ と い った 方 向 性 の 強 い 非 線 形 現 象
明確 に し,そ れ を 拡 張 す る こ と が 研 究 の 一 つ の 流 れ と
と,比 較 的方 向性 の 少 な い圧 縮 非 線 形 特 性 を,荷 重 関数
塑 性 理 論 は 材 料 非 線 形 の 主 因 を 塑 性(残
な っ た こ と は 自然 で あ ろ う。
塑 性 流 れ の方 向が 破 壊 包 絡 線 に直 交 しな い こ とは,完
全 静 水 圧 状 態 に置 か れ た コ ンク リー トで も非 線 形 性 を呈
と硬 化 則 で 同 じよ う に表 現 す る段 階 で,鋼 材 の 場 合 に な
い 難 しさ が あ る 。
2.2損
傷理論
損 傷 理論 の基 本 は,載 荷 経 路 に従 って 連 続 体 の 弾 性 剛
性 を 低 減 さ せ る もの で あ り,除 荷 は原 点 指 向 型 の 履 歴 を
図 一3 塑 性 理 論 に よ る コ ン ク リー ト非 線形 性 の表 現
Vol.32,
No.5,
1994.5
図 一4 損 傷 理 論 に よ る コ ン ク リー ト非 線形 性 の表 現
15
呈 す る16)'21)'22)'34)(図
一4参 照)。 こ れ は,材 料 内 部 の欠
と損 傷(微 細 構 造 の 破 壊)の 二 者 に求 め,そ の 組 合 せ と
損 が進 展 成 長 し,応 力 に抵 抗 す る有 効 体 積 が 欠 損 減 少 す
して構 成 則 を記 述 す る方 法 が 弾 塑 性 破 壊(損 傷)理 論 で
る,と イ メ ー ジす る こ と もで き る。 また,内 部 の 欠 損 ・
あ る 。Bazantら
欠 陥 が 吸収 す る変 形 が 非 弾 性 ひず み と理 解 して よ い 。損
量 化 し,全 ひず み履 歴 か ら損 傷 に伴 う応 力 の 低 下 を 規 定
傷理 論 で は,微 視 的 な欠 損 や そ の 進 展 は,コ
は応 力 履 歴 か ら塑 性 ひ ず み の 進 展 を 定
ン トロー ル
す る方 法 を採 用 した3)。 そ の 後,引 張 ひ び わ れ 破 壊 の み
ボ リ ュー ム 内 で平 均 的 に分 散 して い る こ とを 前 提 と して
に損 傷 概 念 を導 入 し,圧 縮 挙 動 を 塑 性 理 論 で 表 現 す る構
い る 。 こ の点 は塑 性 理 論 と 同 じで あ る。 損 傷 の 概 念 は,
成 則 が 提案 さ れ,さ
微 細 な ひ び わ れ の進 展(す な わ ち応 力 を 伝 達 で き る体 積
に 対 して 適 用 が 試 み られ て き た1)'17)'20)'44)。
塑性理論 で
の減 少)に
論 理 的 に カバ ー で き な か った挙 動(除 荷 時 の 剛 性 が 経 路
関連 す る非 線 形 性 を 表 現 す る うえ で 理 解 しや
らに圧 縮 領 域 お よび 圧 縮 一引 張 領 域
す く,コ ンク リー トの 引張 破 壊 の モ デ ル 化,ま た,圧 縮
に 依 存 す る)と,損
傷 理 論 で 取 り扱 え な か っ た 非 線 形
非 線 形 性 に対 して も適 用 され て い る。
(残 留 塑 性 変 形)を
と も に補 完 して お り,載 荷 ・除荷 ・
こ こで念 頭 に置 くべ き点 と して,損 傷 の 概 念 は,も
と
もと弾 性 挙 動 の低 下 を 表 現 す るた め に,残 留 変 形 とそ れ
再 載荷 挙 動 を合 理 的 に構 成 式 に表 現 で き る点 が 特 徴 で あ
る。
に 関与 す る非 線 形 性 を 表 現 す る こ とが 難 しい 。単 調 載 荷
図 一5は コ ンク リー トの 塑 性 と損 傷 の 挙 動 を 示 す 実 験
に 限定 し,除 荷 ・再 載 荷 を 構 成 則 で 扱 わ な い 場 合 は この
結 果 を,概 念 に もとづ き整 理 した もの で あ る。 応 力 と弾
限 りで は な いが,繰 返 し載 荷 や 急 激 な 主 応 力 軸 の 回転 が
性 ひ ず み の せ ん 断成 分 を代 表 す る2次 不 変 量 の 間 には,
起 こ る と い っ た,経 路 依 存 性 が 重 要 な 場 合 は 注意 が必 要
明 らか に 損 傷 効 果 が 現 れ て い る。3軸 拘 束 の小 さ い 履 歴
で あ る。 これ に対 して,い
を 受 け た コ ンク リー トほ ど,い ち じる しい 弾 性 剛 性 係 数
った ん 進 展 した微 細 ひ び わ れ
面 での ミス フ ィ ッ トを 考 慮 す る等 の工 夫 を加 え る こと に
の 低 下 を 見 る の で あ る19)'20)。これ は,主
よ って,損 傷 モデ ル の 概 念 の 延 長 か ら残 留(塑 性)ひ ず
ひ び わ れ密 度 の増 加 や局 部 座 屈 に よ って,せ ん 断 モ ー ド
と して 微 視 的
み も与 え るモ デ ル が 開 発 され て き た 。 これ らは純 粋 な損
の 弾性 挙 動 が,力 学 的 に劣 化 を きた した 結 果 で あ る。 ま
傷 理 論 と い う よ りも,塑 性 ・損 傷 を一 緒 に含 め た非 弾 性
た,せ ん 断弾 性 ひず み エ ネル ギ ーを 保 存 で き る有 効 体 積
ひず み モ デ ル と理 解 し た ほ うが 分 か りや す い 場 合 も あ
が損 傷 とと もに減 少 した と も解 釈 で き る。
る。
2.3塑
と ころ が,応 力 と弾 性 ひず み の 静 水 圧 成 分 を 代 表 す る
性 ・損 傷 の 組 合 せ 理論
コ ンク リー トの 非 線 形 性 の根 源 を,塑 性(残 留 変 形)
第1不 変 量 間の 関係 は,履 歴 の いか ん に 関 わ らず,ほ ぼ
一 定 で あ る。 い か に 「幾 何 学 的な 損 傷 」 が 導 入 され よ う
図 一5 コ ン ク リー トの 非線 形 性 に現 れ る塑 性 と損 傷
16
コ ンク リー ト工 学
と も,静 水 圧 応 答 に対 して は 「力 学 的 に損 傷 」 しな い こ
性 に もば らつ きが あ る こ とな どを,直 接 かつ 自然 に数 値
とを意 味す る。 こ れ は,幾 何 学 的 な 欠 損 の い か ん に 関 わ
解 析 に取 り入 れ る こ と が で き る 枠 組 み を 与 え る 。 さ ら
らず,全 体 積 が等 方 弾 性 ひず み エ ネ ル ギ ー を保 存 で き る
に,コ
と い う,至 極 当然 と思 わ れ る結 果 を 与 え て い る 。
分 散 か ら局 所 化 に向 か う問 題 に対 して,合 理 的な 解 を 与
塑 性 理 論 で は塑 性 ひず み の 予 測 に応 力 値 が 用 い ら れ
る。 しか し,弾 性 剛 性 が 損 傷 ・変 化 す る 材料 に対 して,
ン トロ ール ボ リュー ム 内 の欠 損 の空 間 的配 置 が,
え る こ とが 期 待 され る。
マ イ ク ロ プ レー ン モ デ ル は,コ
ン トロー ル ボ リ ュー
塑 性 変 形 の 予 測 に応 力 を 用 い る こ とは,物 理 的整 合 性 を
ム の 巨視 的 な応 力 負 担 の シス テ ム を,空
欠 くこ と にな る。 塑 性 が 起 こ る領 域 は損 傷 を免 れ て い る
る微 小 面 上 に発 生 す る面 応 力 の集 合 で 与 え る 。2次 元 か
間 的 に分 布 す
有 効 体 積 で あ り,こ こ に作 用 す る有 効 な 応力 は,全 応 力
ら3次
と一 致 しな いか らで あ る。 有 効 体 積 に作 用す る応 力 に比
れ4)・7)'14)'31),特
に 軟 化 領 域 の 表 現 に力 点 が 置 か れ た(図
一6参 照)
。 複 雑 な 多 軸 応 力 下 の挙 動 を,そ れ ぞれ の マ イ
例 す るパ ラ メ ー タ と して 弾 性 ひ ず み を採 用す る考 えか た
元 応力 状 態 に至 る まで段 階 的 に改 良が加 え ら
は,ま ず 二 次 元 応 力 下 に対 して 応 用 され,そ の 後,3次
ク ロ プ レー ンに作 用 す る 応カ ーひ ず み 関 係 の 集 合 と して
元 応 力 下 に拡 張 され て きた17)・20)・38)。
表 現 す るた め,プ
塑 性 ひず み と弾 性 ひ ず み の2次
不 変 量(せ ん 断 モ ー
ロ グ ラム 化 が容 易 で構 成 式 が 単 純 な 点
が工 学 的特 徴 の 一 つ で あ った 。履 歴 依 存 性 を考 慮 す る場
ド)の 間 に は,図 一5に 示 す よ うな 一 意 的 関 係 が 見 い 出
合,相 対 的 に多 大 な 記 憶領域 を計 算 上 必 要 とす るが,こ
され る。 見 掛 けの 応 力 ひず み 関 係 が 軟化 領 域 に は い って
れ は今 日の 問 題 で は な い 。 た だ し,高 非 線 形 領 域 で の 見
も,常 に弾 性 ひず み の2次 不 変 量 は増 加 す る,す なわ ち
掛 け の ボ ア ソ ン比 とせ ん 断膨 張 が 現 実 か ら乖 離 す る た
塑 性 理 論 の ひず み 硬 化 則 の 概 念 を,塑 性 ひず み と弾 性 ひ
め,微 小 面 上 の せ ん 断 摩擦 応 力 の考 慮,微 小 面 上 の 応 力
ず み(有 効 応 力)関 係 に展 開 す る こ とが で き る こ と も意
ひず み 関 係 に,マ イ ク ロプ レー ン間 の相 互 依 存 性 を 考 慮
味 して い る。 複 雑 に見 え る3軸 応 力(拘 束)下
す る こ と等 の 改 良 が加 え られ て き た14)。
の コ ンク
リー トの 挙 動 も,塑 性 と損 傷 の 組 合 せ で 単純 化 で き る。
土 質 ・地 盤 ・粒 状 体 とは異 な り,コ ンク リー トの 非 線
塑 性 挙 動 は常 に硬 化 を 呈 し,弾 性 挙 動 に お い て は損 傷 に
形 性 は,除 荷 と再 載 荷 時 で は か な り性 状 を異 にす る。 こ
よ る軟 化 が 同時 に進 行 す る こ とで,見 掛 け の応 力 ひず み
れ は モ ル タ ル/ペ ー ス トに な る ほ ど緩 和 さ れ る 。 骨 材 と
関係 が 決 定 す る と した の が,弾 塑 性 破 壊 型 の構 成 則 で あ
い う弾 性 体 と,ペ ー ス ト硬 化 体 とい う塑 性 を呈 す る材 料
る。
の 混 成 比 の 違 い が マ ク ロな 挙 動 に影 響 を与 えて い る こ と
コ ンク リー トの 非 線 形 性 を 塑 性 ・破 壊 に 求 め る考 え か
は 明 白で あ る。 微 細 構 造 に 立 脚 した構 成 モ デル が 説 明す
た の背 景 に は,弾 性 成 分 が 有 す る時 間依 存性 は小 さ く,
べ き格 好 の 対 象 で あ る。 構 成 材料 の 受 け もつ 応 力 と局 所
塑 性 と損 傷 の 進 展 に時 間依 存 性 が 強 く現 れ る こ とが念 頭
変 形 を 明確 に 意 識 した モ デ ル 化 は,古
に置 か れ て い る39)。
Voigtの
2.4微
細 構 造 に立 脚 した モ デ ル 化 の 試 み
コ ン ク リー トの 微 細 組 織 を 陽 に モ デ ル 化 す る 構 成 則
くはMaxwellや
バ ネ ーダ ッ シ ュポ ッ トの ク リー プ 構 成 則 に見 ら
れ,膨 張 コ ン ク リー トの 構 成 則 に も応用 の 幅 を広 げ た。
構 成 材 料 の 力 学 的 特 性の ば らつ き を統 計 的 に規 定 し,載
ンク リー トが複 合 材 料 で あ る こ と,微 細 構 造 の 欠
荷 履 歴 に伴 う コ ン トロー ル ボ リュー ム 内 の 内部 応 力 の不
損 進 行 が コ ン トロ ール ボ リュ ー ムの 平 均 的 な 非 線 形性 に
均 一 性 を考 慮 して,除 荷 ・再 載 荷 時 の複 雑 な経 路 依 存牲
影 響 を与 え る こ と,コ
と,コ ンク リー トの 巨視 的 な 時 間依 存性 の両 者 を説 明す
は,コ
ン トロ ール ボ リュー ム 内 の材 料 特
図 一6 微 視 的構 造 と マ イ ク ロ プ レー ン
Vol.32,
No.5,
1994.5
17
る試 み も報 告 され て い る37)。
厳 密 な 論 理 を 与 え る もの と して期 待 され る。 な お,本 節
以 上 は微 細 構 造 内の 欠 損 や 材 料 非 線 形 性 に対 して,コ
ン トロ ー ル ボ リュ ー ム 内で の 均 一 性 を 仮 定 して い る 。非
局所 理 論 で は,局 所 点 の 応 力 の 評 価 に,そ の 点 の ひず み
とそ れ 以外 の情 報,た
とえ ば ひず み 勾 配,そ の 点 を 中心
の 内容 に 関す る詳 細 は,参 考文 献 を参 照 され た い26)。
3.鉄
筋 コ ン ク リ ー トの 構 成 則
連 続 体 コ ンク リー トの 硬 化 段 階 で は,コ
ン トロ ー ル ボ
とす る領 域 の重 み付 き平 均 ひず み,微 視 的 回 転 変 形(せ
リュ ー ム 内部 の 微 視 的 損 傷 の 個 々を 考 慮 しな くて も,構
ん 断 場 の 材 料 構 成 粒 子 の 回 転 慣 性 は極 め て 小 さ い た め
造 物 中 の場 所 や 対 象 とす る寸 法 に関 係 な く,構 成 則 は工
に,一 般 に は無 視 さ れ る)等 を用 い る5)。 局 所 の応 力 ひ
学 的 に成 立 した。 しか し,軟 化 領 域 で は コ ン トロ ー ル ボ
ず み 関 係 が,荷 重状 態 や構 造 物 の 境 界 条 件 等 に よ って 異
リ ュー ム 内 の微 視 的損 傷 の 分 散 性 が 崩 れ,見 掛 け の現 象
な る こ とを 意 味 す る 。 これ は,破 壊 の 進 展 に伴 うエ ネ ル
が コ ン トロ ー ル ボ リュ ー ムの 体 積 に関 係 す る。 そ こで,
ギ ー消 費 と変 形 の局 所 化 の解 析 結 果 が,有 限 要 素 寸 法 に
構 成 則 の成 立 限界 の拡 張 が 図 られ て きた の で あ る 。
対 して 収 束 す る こ とを主 眼 と して い る。 非 局 所 化 を 考 え
分散 ひ び わ れ の概 念 に立 脚 した鉄 筋 コ ン ク リー ト(以
る領 域 の 体 積 は,例 え ば粗 骨 材 寸 法 の 数 倍 等 で 事 前 に 規
下RC)構
定 され る。
ロー ル ボ リュ ー ム の体 積 と損 傷 の 密 度 に 関 して,RC構
欠 陥 の 分 散 状 態 を 直接 的 に規 定 し,個 々の 欠 陥 の 進 展
成 則 で も,同 様 の 命 題,す
成 則 は 成 立 す る の か?」
な わ ち 「コ ン ト
が 存 在 す る。 この 命 題 はRC
則 と相 互 の 干 渉 を モ デ ル化 の 出発 点 と し,マ ク ロな 構 成
構 成 則 の根 幹 に 関係 す る が,過 去,系 統 的 に議 論 され る
則 を理 論 的 に導 出 す る方 法 も提 案 さ れ て い る24)。 弾 性
こ とが 少 な か った の で,本 章 で触 れ て お きた い 。 な お,
体 中 の 微 細 欠 陥 の 集 合 が 対 象 で,岩 盤 地 盤 材 料,セ
ラ
こ こで は コ ン トロー ル ボ リュ ー ムの 最 小 寸 法 は,そ の 領
ミ ック ス等 へ の 応 用 が 活発 で あ る 。堀 井 らは,個 々の 欠
域 内 に分 散 した 巨視 的 ひ び わ れ を有 す る30∼50cm四
損 の 進 展 に 関 す る欠 損 相 互 の 依 存 性 を 個 別 に 評 価 した
方 と して い る。
後,こ れ を 空 間 平 均 した相 互作 用 応 力 場 を構 成 則 の 中で
3.1ひ
導 出 して い る30)。 した が っ て 非 局 所 理 論 で あ り,損 傷
連 続 体 コ ン ク リー トの構 成 則 が微 細 ひび わ れ 等 に関 わ
び わ れ 密 度 の非 依 存 性
理 論 で も あ る。 た だ し,破 壊 ・変 形 が局 所 化 す る領 域 寸
る 内部 損 傷 と,セ メ ン ト硬 化 体 の塑 性 に よ って 支 配 され
法 も,自 然 な 形 で 解 析 され る 点 が本 質 的 で あ る。 主 と し
た と 同様 に,RC構
成 則 は 巨視 的 ひ び わ れ を有 す る コ ン
て 岩 盤 を 対 象 と し,コ ン ク リー トの持 つ 塑 性 と複 合 シ ス
ク リー トと鉄 筋 の 弾 塑性 に よ って支 配 され る。 結 論 か ら
テ ム は ま だ対 象 外 だ が,圧 縮 荷 重 下 の局 所 化 に対 す る,
言 え ば,「 鉄 筋 比0.1-0.2%以
上 の2方 向 配 筋 で,普 通
図 一7 鉄筋 コ ン ク リー ト構 成 則 成 立 の 背 景
18
コ ン ク リー ト工 学
強 度 コ ン ク リー トを用 い る場 合,2次
元RC構
成則 は コ
RC構
造 が再 現 性 の高 い優 れ た部 材 で あ る理 由 の一 つ で
ン トロー ル ボ リ ュー ム の寸 法 に依 存 す る こ とな く,一 意
あ る。 た だ し,RC構
的 に 成 立 す る 」,す な わ ち構 成 則 は"成 立"す
挙 動 の特 性 が,シ
る と して
よ い 。 換 言 す れ ば,「 コ ン トロ ー ル ボ リ ュー ム 内 に存 在
成 則 成 立 に は 上 記 の 個 々の 微 視 的
ス テ ム と して 連 成 した 所 産 で あ る た
め,常 に成 立 す る訳 で はな い 。 た とえ ば,高 強 度 コ ンク
す る 巨視 的 ひ び われ の密 度 に関 係 な く,平 均 ひ ず み の履
リー トの よ うな ひび わ れ せ ん 断 面 が平 坦 な場 合 は,上 記
歴 に対 して 平 均 応 力 が 一 意 的 に確 定 す る」,す な わ ち一
の相 殺 関係 が 成 立 しな い 。 ひ び わ れ の分 散 が期 待 で きな
様 ひず み場 で は,構 成 則 に寸 法 の 効 果 が 現 れ な い こと に
い よ うな低 鉄 筋 比,あ
ほ か な らな い 。 こ の 事 実 は 構 造 解 析 に お い て 都 合 が 良
で も同様 で あ る。
い。 巨視 的 ひ びわ れ 個 々を 構 造 解 析 で 確 定 す る必 要 が な
いか らで あ る。
図 一7は,RC構
るい は 付着 の期 待 で きな い補 強 材
鉄 筋 コ ンク リー トの 構 成 則 が存 在 す る こ と は構 造 解 析
に と って 都 合 の 良 い こ とだ が,な か ば無 批 判 に,か つ 暗
成 則 の構 成,ひ
伴 う ひ びわ れ 局 所 変 形,お
びわれ 間隔の違 いに
よび 巨視 的 応力 ひず み 関係 に
黙 の常 識 の よ う に も受 け 入 れ られ て き た き らい が あ る。
こ こ で,RC構
成 則 成 立 に は,い
くつ か の幸 運 と成 立 要
つ いて ま とめ た もの で あ る。 同 じ平 均 ひず み が導 入 され
件 が 付 記 され て い る こ とを忘 れて はな らな い。 以 上 の 基
たRC板
盤 に 立 って,分 散 ひ び わ れ モ デ ル のRC構
に,異 な る密 度 で 断 面 貫 通 ひ び わ れ が 導 入 さ
成 則 に関す
れ て い る場 合 を 想 定 して み よ う29)。高 密 度 に ひ び わ れ
る研 究 が 進 め られ て き た 。 そ の詳 細 は参 考 文 献 に譲 りた
が 導 入 され た 板 で は,個 々 の ひ び わ れ 幅 とず れの 両 者 は
い27)・28)。
共 に小 さ く,ひ び わ れ 密 度 に ほ ぼ反 比 例 す る。 ず れ に対
3.2RC離
す るせ ん 断 剛 性 は ひ び わ れ 幅 に ほ ぼ反 比 例 して増 加 す る
一 方 ,ず れ 自体 もひ び わ れ 幅 に 比例 して減 少 す るの で,
鉄 筋 が 交 差 す る1本 の離 散 ひ び わ れ に対 して,RC板
の 構 成 則 が 規 定 で き る有 限体 積 を 構 造 中 に規 定 で き な い
結 局 両 者 は相 殺 して ひ び わ れ の密 度 や本 数 は コ ン トロ ー
場 合 が あ る。 た とえ ば 部 材 間 接 合 部,打 継 ぎ部,3次
ル ボ リュ ー ム のせ ん 断 に 関す る平 均 応カ ー平 均 ひ ず み 関
応 力 分 布 に 関 連 す る局 所 変 形 を2次 元 解 析 で 代 表 す る場
係 に は 現 れ て こな い 。
合 等 で あ る。 こ の と き,RC分
ひ び わ れ 密 度 の 増 加(ひ び わ れ 間 隔 の減 少)は,ひ
び
散 ひ びわ れ
合 わ せ て,RC離
元
散 ひび わ れ 構 成 則 と組 み
散 ひび わ れ 構 成 則 が 用 い られ る(図 一2
わ れ 平 行 方 向 の平 均 圧 縮 応 カ ー圧 縮 ひず み 関 係 の 剛 性 を
参 照)。RC橋
低 下 させ る。 同 時 に ひ び わ れ 幅 の減 少 は この 剛性 を 逆 に
変 形(フ ー チ ング か らの鉄 筋 の 抜 け 出 し とせ ん 断 ず れ)
増 加 させ る。 ひ び わ れ 直交 方 向 の平 均 ひず み が 同 じで あ
の 全 体 変 形 に 占め る 割合 が,鉄 筋 詳 細 や 構 造 寸 法 に よ っ
れ ば 幾 何 学 的 条 件 か ら,ひ び わ れ密 度 の増 加 と ひび わ れ
て 変 化 す る構 造 で,こ の構 成 則 が 重 要 とな る。
幅 は 反 比 例 す るた め,ひ び わ れ密 度 と 幅 の両 者 の 効 果 が
脚 の よ う に,フ ー チ ン グ と本 体 間 の 局 所
基 本 的 に は,交 差 鉄 筋 の ひ びわ れ 位 置 で の 構 成則 と,
相 殺 す る。 この た め に,ひ び わ れ に平 行 方 向の 平 均 応 カ
ー平 均 ひず み は
,ひ び わ れ の 空 間 的配 置 に は ほ ぼ 依 存 し
ひ び わ れ(接 合)面
な い こ とが 実 験 的 に確 認 さ れ て い る。
成 則 が 形 成 さ れ る6)'23)。こ こ で は,接 合 面 で の 平 均 ひ
鉄 筋 一 コ ン ク リー ト間 の付 着 機 構 か ら,ひ びわ れ に直
の応 力 伝 達 構 成 則 を,両 者 の相 互作
用 を 考 慮 して 組 み合 わせ る こ とで,RC離
散 ひ び わ れ構
び わ れ 幅 ・せ ん 断ず れ ・回転 角 に対 して,軸 力 ・せ ん 断
交 方 向 に 平 均 引 張 応 力 が 伝 達 され る(Tension-stiff-
力 ・曲 げ モ ー メ ン トが対 応 す る。 構 造 解 析 で接 合 要 素 の
ness)。 同 一 平 均 ひず み に対 して ひ び わ れ 密 度 が 高 い こ
長 さを短 くす れ ば,回 転 角 とモ ー メ ン トの 自由度 が 削 除
とは,ひ び わ れ 間 に存 在 す る連 続 体 コ ンク リー トに 対 し
され る 。
て,鉄 筋 か らの応 力 伝 達 が良 好 で あ る こ とを 意 味 す る。
RC離
散 ひ び わ れ 構 成 則 と して の 複 雑 な 経 路 依 存 性
しか し,ひ び わ れ本 数 が多 い た め に,ひ び わ れ 近 傍 で の
は,鉄 筋付 着 と応 力 伝 達 挙 動 の 経 路 依 存性 の組 合 せ と な
付着 劣化 が大 き くな り,ひ びわ れ 間隔 が 小 さい た あ に 付
る 。 図 一8は,接
着 長 さ 自体 も減少 す る。 そ の結 果,ひ び わ れ 直 交 方 向 の
RC離
平 均 引 張 応 カ ーひず み 関係 に は,ひ び われ 密 度 や鉄 筋 比
振 り載 荷 で は,再 載 荷 曲線 が 過 去 最大 の変 形 ・荷 重 点 に
の影 響 が ほ とん ど現 れ な くな る。 同 様 に,RC板
合 要 素1本
で 形 成 さ れ る短 柱 の 挙 動 と
散 ひ び わ れ 構 成 則 に よ る予 測 結 果 で あ る23)。片
中の鉄
到達 す る の に対 して,交 番 載 荷 で は再 載 荷 曲線 は過 去 最
筋 の 平 均 応 カ ー平 均 ひず み 関 係 が,降 伏 以 後 も含 め て ひ
大 の応 力 点 を下 回 る こ とが 分 か る 。 これ は部 材 実 験 で よ
び わ れ密 度 に影 響 さ れ な い こ とが 示 され て い る。
く観察 され る 挙 動 で あ る。 ポ イ ン トは,鉄 筋 一付 着 モ デ
以 上 の とお り,ひ び われ の 局 所 挙 動 を 支 配 す る複数 の
要 因 同 士 が 相 互 に 関連 を も って変 動 す る結 果,RC構
成
ル ・ひ び われ 面 で の 応 力 伝 達 モ デ ル に,繰 返 し載 荷 に伴
う材 料 劣 化 が 考 慮 され て いな くて も,RCシ
ステム と し
則 が コ ン トロ ー ル ボ リ ュ ー ム 内 で 成 立 す る の で あ る 。
て の靱 性 が見 掛 け上,低 下 す る履 歴 が 出 て くる こ とで あ
RC構
る23)。
Vo1.32,
成 則 が ひ び わ れ 密 度 に ほ ぼ 依 存 し な い こ と は,
No.5,
1994.5
19
【実 験 】
CaseC
【
解析】
CaseA
CaseB
図 一8 鉄 筋 コ ン ク リー ト接合 境 界 の構 成 則23)
異 な る材 料 の履 歴 依 存 性 が 複 数 組 み 合 わ さ る と,材 料
断 され る精 度 と適 用 範 囲 で,適 切 なバ ラ ンスが 与 え られ
と して の繰 返 し劣 化 が 与 え られ ず と も,シ ス テ ム と して
るべ き時 期 に来 て い る と思 わ れ る 。 そ の た め に,構 成 則
「
劣 化/損 傷 」 す る こ とは,RC板
RCはRとCで
要 素 に も見 られ る。
研 究 の 延 長 に,多 様 な 構 造機 能 を評 価 す る構 造 解 析 技 術
そ れ ぞ れ 厳 密 に モ デ ル 化 す る こ と の意
を見 据 え,部 材 レベ ル か ら構 成 モ デ ル と解 析 手 法 を 系 統
的 に再 度,検 証 す る こ とが 今 日要 求 さ れ て い る。 構 成 則
義 が こ こに あ る。
4.ま
と
の研 究 自体 は,コ ン ク リー ト工 学 の研 究 の 中 で完 結 した
一 領 域 を な す ほ ど の もの で は決 して な く,「 一 般 化 され
め
以 上 は,お よ そ 過 去10年
の研 究 動 向 につ いて 述 べ た
もの で あ り,そ の す べ て を 網 羅 で き た もの で な い こ と
た構 造 解 析 手 法 の 確 立 」 を 目指 した研 究 の 中 に こそ,位
置づ け られ な けれ ばな らな い と考 え て い る 。
を お 断 り して お く。
構 成 則 を 計 算 モ デ ル に書 き下 した段 階で の 精 度 と適 用
参
範 囲 は,構 成 則 の 規 定 す る材 料 イ メ ー ジ が,い か に現 実
の コ ン ク リー トに 近 い もの か,に 依 存 す る こ と は言 う ま
1)
で もな い。 た だ し,精 度 と適用 性 の 向上 を構 成 式 の レベ
ルで 追 求 す る あ ま り,個 々の構 成則 が持 つ 本 来 の 特 徴 が
薄 れ る危 険性 も事 実 存 在 す る。 た とえ ば,あ る構 成 則 の
2)
概 念 か ら,あ る種 の 実 験 結 果 が うま く予測 さ れ て は論 理
的 に矛 盾 す る と い った 事 項 まで も,数 式上 の 操作 で適 合
させ て しま う,と い った こ とは 研 究 の 歴 史 の 中 に散 見 さ
3)
れ る。 設 計 や 解 析 に お い て モ デ ル 化 の 単 純 さ ・明 快 さ
と,精 度 ・適 用 範 囲 との 良 好 な るバ ラ ンス を とる こと が
4)
必 要 で あ る。
検 証 に耐 え う る実 験 結 果 を 取 捨 選 択 す る こ とが,ま た
一・
方 で不 可 欠 で あ る
。 構 成 則 に関 す る実 験 の 中 に は,境
5)
界 条 件 や 応力 状 態 が,単 に試 験 実 施 上 の 簡 易 さ等 か ら決
定 され て い る もの も少 な くな い。 そ の 結 果,あ
る条 件 に
実 験 結 果 が集 中 し,広 く構成 則 の 適 用 性 とそ の 範 囲 を 明
示 す るに 足 る デ ー タ が収 集 さ れ な い と い う現 実 もあ る の
で あ る。 論理 の 明快 さ と構 造 解 析 へ の応 用 の 観 点 か ら判
20
6)
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43)
44)
Voyiadjis,
G.Z. and Abu—Lebdeh, T.M. : Damage model for concrete using bounding
surface
concept, J. Eng. Mech., ASCE, Vol. 119, No. 9,
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Willam, K., Hurlbut, B. and Sture, S. : Experimental, constitutive and computational
aspects of
concrete failure, Seminar on finite element analysis of reinforced concrete structures,
Vol. 1, JCIC 9 E, JCI, Tokyo, pp. 149-171, 1985
Wu, Z.S. and Tanabe, T. : A hardening-softening
model of concrete subjected to compressive loading, J. Struct. Eng., AIJ, pp. 153-162, 1990
Yamada,
Y., Ishimura,
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Plastic stress-strain
matrix and its application for
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Yazdani, S. and Schreyer, H.L. : Combined plasticity and damage mechanics model for plain concrete, J. Eng. Mech., ASCE, Vol. 116, No. 7, pp.
1435-1450, 1990
《お 知 ら せ 》
国際シンポジウム
材 料 と構 造 物 の破 壊 力 学 と長寿 命 化
最近 の進歩一
日
主 催:同
シ ンポ ジ ウム 運 営委 員 会
協 賛:日
本 コ ン ク リー ト工 学 協 会 ほか
時:1994年7月29日(金)9:30∼17:00
会
場:東
定
員:100名(申
聴
講
京 大 学 山 上 会 館(文
料:2万
円(資
参 加 申 込:7月19日
問 合
先:東
料 代 を 含 む)
ま で に,「 氏 名,勤
京大学工学部
〒113東
京 区本 郷7-3-1)
込 順)
務 先,同
所 在 地 ・電 話 番 号 ・Fax.」
シス テ ム量 子 工 学 科
京 都 文 京 区 本 郷7丁
矢川教授室気付
を 明 記 の 上,下
記 宛 に 申 し込 む 。
「国 際 シ ン ポ ジ ウ ム 係 」
目3番1号
Tel.(03)3812-2111内6993/Fax.(03)5684-3265
プ ロ グ ラ ム:
(工)材
料 と 構 造 物 の 破 損 と そ の 防 止:最
(2♪ 破 壊 力 学 と 寿 命 評 価:確
新 の計 算 力 学 手 法
率 論 的 ア プ ロー チ
(3)コ
ン ク リ ー ト構 造 の 設 計 と 破 壊 力 学
(互)コ
ン ク リ ー トの 破 壊 力 学:メ
矢川
壊 力 学 的 ア プ ロ ーチ
堀井
ラ ミ ッ ク ス/金 属 接 合 材 の 特 異 応 力 場 の 弾 塑 性 有 限 要 素 解 析
小林
(ヱ)ク
リー プ と熱 サ イ クル 荷 重 下 の 金 属基 複 合 材 の寿 命
田谷
22
リノイ大学)
秀 之 (東京大学)
M.F.Kanninen(サ
(登)セ
・一 ジァエ科大学)
元 基( 東京大学)
N.M.Hawkins(イ
カ ニ ズ ム か ら設 計 の 応 用 ま で
(ε♪ 高 分 子 材 料 の ク ラ ッ ク 緩 成 長 予 測:破
S・N・Atluri(ジ
ゥス ゥェス ト研 究所)
英 男 (東京工業大学)
稔 (ワシン トン大学)
コ ン ク リー ト工 学
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