...

【見出し】 藤原聖也在アルジェリア日本国大使「我々の目的は,アフリカの

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

【見出し】 藤原聖也在アルジェリア日本国大使「我々の目的は,アフリカの
【見出し】
藤原聖也在アルジェリア日本国大使「我々の目的は,アフリカの持続可能な
発展に貢献することである」
【小見出し】
先8月27日及び28日にケニアにてTICADⅥが開催された。この機会
を捉え,藤原聖也在アルジェリア日本国大使に日本のアフリカ戦略及び日本の
協力の展望を聞いた。
【要約】
1 1993年から開始したTICADはアフリカの将来を考える主要なフォ
ーラムの1つであるが,8月27,28日にケニアで開催されたTICADⅥ
は初めてのアフリカでの開催となった。開催地を移行した理由如何。
2010年よりAUが共催者として加わったが,これはアフリカ側からの要
望であった。ケニアが選ばれたのは,アフリカ側の選択である。10000人
以上が参加し,アフリカ53か国(30程度の首脳級)の参加を得て,大成功
に終わった。同様に非常に重要なのが,日本企業のCEOの非常に強いプレゼ
ンスであり,70以上のCEOが今回の会議に参加した。
2 TICADⅥは日アフリカ関係における分岐点となっている。TICAD
Ⅵでは,民間部門を開放するとともに,日本のアフリカに対する政策の変化が
見られるが,大使の意見如何。
TICADは1993年から開始され,長い歴史を有する。最初はODAが
中心であり,日本は保健,教育及び人材育成で十分に高いレベルの援助を維持
してきた。しかし,アフリカの将来にとって重要なのは,多くの経験,ノウハ
ウ及び技術を有する民間の参加であり,技術の移転が特に重要である。
3 それはアフリカ大陸からの要求であると思うが如何。
今回のTICADは,日本の民間企業の積極的な参加によって新たな価値が
付加された。アフリカ大陸に関心を抱く民間企業及びCEOの参加を得たこと
で満足している。かつて日本企業は意思決定の遅さやリスクをとらないことで
批判されてきたが,それは完全に変わったことが証明された。
4 2015年の対アフリカ貿易の数値を確認する限り,日本とアフリカの貿
易額は240億ドル程度にとどまっているのに対し,中国とアフリカの貿易額
は1790億ドルまで達している。政治的な意思とこの実際の数値とのギャッ
プをどのように説明できるのか。
日アフリカ間では多くの貿易が行われているが,日本以上に貿易を行ってい
る国があることも事実である。しかし,貿易量のみで比較することが適切だと
は考えていない。各国が各々の戦略及び理念を有している。他国が実施してい
ることにコメントするつもりはないが,日本は安倍総理が述べた3つの目的,
すなわち質の高い,強靭な,安定したアフリカという理念及び日本企業の高い
技術によって,我々はアフリカの発展に貢献していきたい。
5 アフリカの日本に対する期待は大きく,メサヘル大臣がナイロビで発言し
たように,
「アフリカは活発な経済市場となり,単に原料や貿易市場,消費の貯
蔵庫としての役割として認識されることを避けたい」と考えている。日本はこ
れらの期待に応えることができるか。
まさにこれこそが我々の伝えたいメッセージである。その意味でメサヘル大
臣の発言は重要である。アフリカは我々の商品を売る,買うといった貿易のた
めの単なる市場ではない。我々が発展させていきたいのは,むしろ日本企業の
より積極的な参加を得た投資である。その地で製品を作ることも,技術を移転
することもできる。また重要なのは,アフリカに拠点を構えれば日本企業が短
期的にも,中長期的にも人材育成及び製造業の発展に貢献できるということで
ある。アフリカのいくつかの国では,トヨタの生み出した「カイゼン」という
理念に基づき,日本企業が製造形態を伝えた。ノウハウの共有及び経験の共有
を通じてこの理念を定めた国もある。これが,我々がアフリカの産業化及び経
済多角化に貢献するために将来発展させていきたいことである。
6 日本は今後3年間でアフリカに300億ドル(270億ユーロ)を投資す
ると発表し,そのうち100億ドルがインフラに使用されることから,多額の
投資となるが,日本政府が期待する見返り如何。
日本企業の参加は日本企業自身にとっても有益だが,アフリカの持続可能な
発展にとっても有益である。また,アフリカが繁栄し続ければ,国際社会にと
って有益である。3年間で300億ドルの投資は,野心的な目標だが,日本は
約束を守る国である。TICADには厳格なフォローアップシステムがあり,
定期的に評価し,問題があれば修正する。300億ドルのうち,100億ドル
はインフラに充てられる予定であり,これもまた日本の貢献の強い特徴の一つ
である。持続的な経済成長のみならず輸送及び産業のためにはインフラを発展
させなければならない。もう一つの柱は,人材育成である。前回TICADか
らご存知のように,日本はアフリカの経済分野のリーダーを育成するために「A
BEイニシアティブ」を始めた。既に1000人のアフリカ人を育成しており,
6人はアルジェリア人である。将来もこのイニシアティブを発展させていきた
い。
7 援助国と被援助国といった開発援助の伝統的なモデルは時代遅れである。
TICADは代替的な関係性を提示できるのか。
援助国と被援助国というパートナーシップは過ぎ去った。しかし,政府が開
発援助を通じて基礎的なニーズ(教育,保健及び人材育成)に応える役割はま
だある。これらの基礎分野以外では,他のアクター,特に民間企業の参加が重
要である。先ほど言及した3年で300億ドルのコミットメントは,まさに新
しい経済モデル,つまりこれまで開発援助により築いてきた経済モデル以外の
将来への発展モデルを示すものである。
8 なぜ日本はアフリカに対し新たな協力のアプローチを採ることができるの
か。
今がまさにその時だからである。アフリカは最も活発な大陸である。常に4,
5%の経済成長を平均的に記録し,今年は5%を越えるかもしれない。人口も
毎年増加しており,アフリカは未来の大陸である。しかし,同時に平和と安定,
石油及び原材料価格の下落といった課題にも直面している。日本はこれらの課
題を解決するため,常にアフリカの傍にいる。安倍総理は,日本企業も含めた,
日アフリカ官民経済フォーラムの三年ごとの常設を提案した。
9 日本のコミットメントは,日本が障壁を越えられるものとして,また,実
現可能は目標として捉えているということを意味するのか。
そう言うにはおそらく少し早いであろう。しかし,我々は楽観的でそうなる
ように多くの機会があるであろう。ただ,日本だけでなく,アフリカ各国も原
動力とならなければならない。日本は常にオーナーシップを重視している。決
定し,開始するのはアフリカ各国でなければならない。日本はそれに寄り添う。
TICADは単なる日アフリカのサミットではなく,アフリカの開発のために
全てのパートナーに開かれている。
10 日本だけで無く,中国やトルコ,インド等の国々もアフリカとの間で国
際フォーラムを開催しているが,このようにパートナー国が多様化することは
良いことなのか。あるいは,日本側の努力や熱意を下げてしまう危険はないの
か。
各国にそれぞれ長所短所があるため,それは良いことと考えている。重要な
のは協調し,経験を共有することである。アフリカの発展に多くの国及びアク
ターが関心を抱き,ある種の競争のような形となっているが,それは良いこと
である。ただ協調が必要なだけで,それこそが,日本が1993年のTICA
D以降行おうとしていることである。日本は全てのアフリカ及び国際社会のパ
ートナー及びドナーを招待した。当初,多くの国がアフリカ大陸に興味を示さ
なかったが,今日,状況は完全に変化した。
11
安倍総理が述べたように,アフリカは21世紀の世界経済の成長におけ
る原動力であるかもしれないが,これは希望的観測ではないか。
我々はアフリカのことを信頼しているし,アフリカ,日本そして世界の経済
成長に貢献していきたい。
12 アフリカと日本の地理的距離は,日本の新しい協力についての戦略を実
施する上で障壁とはなるとは考えないのか。
情報技術の発展により地理的距離は問題でない。しかし,今日の日アフリカ
関係に満足しているわけではない。より強化しなければならない。TICAD
Ⅵにより,日アフリカ関係に新たなページが開かれることになるだろう。極め
て重要なのは人材交流である。これからの三年間で人材交流はより強化され,
そこでの人間関係が将来への投資となる。
13 アルジェリアとの二国間関係では,どのような見立てをしているのか。
日本の技術による質の高いインフラに関するいくつかの開発プロジェクトが
存在し,JICAが既にアルジェリアにおけるインフラ開発プロジェクト(電
気,淡水化,港湾を含む運輸等)に関する調査を実施している。将来,いくつ
かの質の高いインフラ開発プロジェクトを具体化させていきたい。同様により
多くの研修生を日本に送り込みたい。このイニシアティブを通じて,将来の日
アルジェリア関係において,より多くの人材交流,より多くの投資及びより多
くの経済政治関係が築かれていることを願う。
14 アルジェリアは多くの国と戦略対話を実施してきたが日本はそのような
計画はあるのか。
既に日アルジェリア間で政策協議は存在するが,閣僚級での戦略対話を導入
したい。イナメナス事件後,治安・テロ対策対話を導入した。
15 最後に一言。
近い将来,アルジェリアにより多くの日本企業が進出し,アルジェリア企業
に技術が移転することを願う。日本のこのような政策によりウィンウィン,そ
して相互補完的な関係を築くことができる。アルジェリア着任後,日本とアル
ジェリアには多くの共通点があることに気付いた。アルジェリアで勤務した日
本のビジネスマンは良い思い出を持ち,アルジェリアのことが大好きである。
彼らはアルジェリアへの投資の機会を窺っている。我々は2008年以降開催
されていない日アルジェリア経済合同委員会を開催したいと考えている。二国
間関係を再度活発にする良い方法であろう。
Fly UP