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後継者育成のポイント - デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン
後継者育成のポイント: デール・カーネギー白書 著者: ウィリアム・ ロスウェル博士( SPHR) ペンシルバニア州立大学 ペンシルバニア州ユニバーシティ・ パーク ほとんどの管理者は、才能ある人材を見つけるのが難しいことを知っ ています。管理者が現在の従業員を入れ替えるようとすると、同等レ ベルの人材を社外から採用するには現在の従業員を維持するよりはる かにコストがかかることが分かるでしょう。後継者育成とは、組織の 人材パイプラインを満たし豊富な人材を内部で築くことです。組織が すでに持っている能力を最大限に生かして最高の可能性に発展させる ことなのです。 しかし後継者育成は、交代要員育成やタレントマネジメントや後継者 管理とはどう違うのでしょうか?後継者育成プログラムに不可欠な要 素をまとめるモデルは何でしょうか?デール・カーネギーのこの白書 はこれらの問いを取り上げ、交代要員育成や後継者育成を容易にする ための簡単なツールを紹介します。 Copyright © 2008 Dale Carnegie & Associates, Inc. 290 Motor Parkway Hauppauge, NY 11788 All rights reserved. Printed in the U.S.A. The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 1 後継者育成は、交代要員育成やタレントマネジメ ントや後継者管理とはどう違うか? この章では後継者育成が交代要員育成やタレントマネジメントや後継者管 理とどう違うかを取り上げます。これらの用語は混同されやすいため、的 確な定義があることが重要です。 交代要員育成 交代要員育成は組織内、しばしば同じ部署内にいる個人を特定し、現在の 従業員の交代要員として最適な人材を確保することです。交代要員育成に は2通りの方法があります。 洞察 … 交代要員育成は組織内 、多くの場合同じ部署 内にいる個人を特定し 、現在の従業員の交代 要員として最適な人材 を確保すること 短期型交代要員育成は、主要担当者が病欠や休暇中でも業務を滞らせるこ となく正しい判断をする方法です。担当者が一時的に席にいないからとい うだけで業務を止めるわけにはいきません。また、短期型交代要員育成で は、必要な時に一時的な要員が使えるようにクロストレーニングを奨励し ています。このようなクロストレーニングは人材開発の一手段でもありま す。 長期型交代要員は、主要担当者の一人や複数が亡くなったり、定年を迎え たり、突然退職したり、長期にわたって職務に着けないなどの悲劇に見舞 われた際にどうするべきかに対処する方法です。また、組織のリーダーが 世界の一部地域で大きくなりつつある問題の人質事件に巻き込まれた時に も対処できる方法です。 交代要員の育成は包括的なリスクマネジメントプログラムにおいて重要な 部分であることは間違いありません。データ・財源・設備・施設の損失に 備えた計画だけでは不十分で、組織のリーダーは人材の損失についても計 画を立てなければなりません。世界の関心としてテロが浮上して以来、こ れは特に重要です。考えてみてください、世界貿易センターのツインタワ ーがテロに襲われた時、様々な企業の副社長172人が一瞬にして命を落と しました。組織のリーダーの多くは、オクラホマ州での爆撃のように、テ ロによって組織の本部機能が崩壊されることや、飛行機事故によって大勢 の人材をなくすことや、テロリストが「汚れた」原子爆弾を投じた場合に 街全体がなくなってしまうことを認識しています。本部機能と上級役員を 一度に失った組織はその危機を乗り越えることができるのでしょうか? Page 2 The Nuts and Bolts of Succession Planning デール・カーネギ ーの視点… 後継者育成と同様、交 代要員の育成を始める 良いきっかけは仕事の 実績についての意義深 い職務明細です。デー ル・カーネギーは成果 に基づいた職務明細を 作成する手助けとなる ようなツールを提供し ます。 交代要員育成は大抵、次のような前提のもとで実施されています。 • 現職者の「バックアップ要員」を特定することを目標とする • 組織が内外から最高の適任者を探している間、「バックアップ要員」 は直属の上司の仕事を担当する準備ができていたり、「見せかけの」 能力が得意だったりする可能性がある • バックアップ要員はまず部署内で特定され、他部門や組織外からの候 補者は二次的な扱い • 組織改編によって主要ポジションの数や種類が変わる可能性があるに も関わらず、現行の組織体制が維持される 交代要員の育成は、後継者育成やタレントマネジメントを初めて導入する 際に合わせて導入すると良いでしょう。交代要員の育成の事例を作ること がそれほど大変ではことがその理由の1つ目にあげられます。疑い深い管 理者でさえその必要性を受け入れます。また、組織内にいる人材について 管理者間での会話のきっかけにもなります。さらに、交代要員の育成によ って、交代要員をどのように特定、交代すべきか、また従業員が「準備を 完了」するために必要な職務中の開発戦略とは何かなど、従業員が上司の 代わりを務める「準備を完了」するための要件についての疑問も次々と生 じてくることでしょう。 洞察 … 交代要員の育成は、後 継者育成やタレントマ ネジメントを初めて導 入する際に合わせて導 入するのが良いでしょ う。 The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 3 後継者育成とは? 後継者育成とは、「重大な経営ポジションを特定する手段であり、プロジ ェクトマネージャーや監督者レベルに始まり組織で最高の役職まで拡大し ていくもの」です (Carter, 1986,pp. 13– 14)。交代要員育成とよく混同 されますが、後継者育成はある特定の役職や部署部門に焦点を合わせるの ではなく、より広く捉えたものであるため、交代要員の育成を超越してい ます(Rothwell, 2005)。上級役員の交代に関連付けられることが多いもの の、実はそれよりも広範囲で組織図上のどの役職にも範囲を広げられます 。また、後継者は組織図の中でレベル別で判断されるという点でも交代要 員育成とは異なります。各レベルの下にタレントプールが特定され、そこ にいる従業員が組織図上で次のレベルに昇進するための能力を8割達成し ていることが一般的な目標です。残りの2割はより高い責任が求められる レベルに昇進した際に教育されます。 後継者育成は大抵、次のような前提のもとで実施されています。 洞察 … 上級役員の交代に関連 付けられることが多い ものの、実はそれより も広範囲で組織図上の どのポジションにまで も範囲を広げられます 。 • 昇進を目指し、教育を望んでいる多数の人によって構成されるタレン トプールを特定することがゴール • 未来は過去と同じとは限らず、将来各レベルで必要とされる能力は異 なる可能性があるため過去のリーダーの「クローン化」は適切でない • 開発は、職務外のトレーニング経験よりもむしろ職務中に行なわれる 後継者育成では大抵、組織の体制が維持されるものという前提があります 。しかしタレントプールは十分な柔軟性を提供するため、組織改編は豊富 な人材育成に対して重大な問題を引き起こすことはありません。 タレントプールに関係するのは、いわゆる促進プールです。促進プールは 、より高い責任が求められる職務のために通常より早いペースで開発され る従業員集団を言います。促進プールは、一度の定年退職者数が多い場合 や有能な人材が長期にわたって失われる場合に特に有効です(Byham, 2002)。簡単な例を挙げれば、製造会社ではエンジニアは重要な人材です 。製造会社で多数のエンジニアが数年のうちに定年退職することが見込ま れていれば、その会社は促進プールにいる人材を採用・開発・訓練させる ことになります。 洞察… 後継者育成では大抵、 組織の体制が維持され るものという前提があ る。しかしタレントプ ールは十分な柔軟性を 提供するため、組織改 編は豊富な人材育成に 対して重大な問題を引 き起こすことはありま せん。 I洞察… 促進プールは、より高 い責任が求められる職 務のために通常より早 いペースで開発される 従業員集団を言います 。 Page 4 The Nuts and Bolts of Succession Planning 後継者育成は内部での従業員開発に焦点を合わせるため、能力強化のた めにトレーニング、現場での開発、そしてその他経験により多くの時間 と注目をかけることが必要です。同時に、組織リーダーは内部の職務募 集制度をよく見直して、従業員が責任を増すような適切な応募を確実に 行なわなければなりません。また、組織リーダーは、時給から月給に変 わる従業員の残業がなくなることなど、昇進に伴うデメリットがないか を確認しなければなりません。トップダウン後継者育成を統合し、管理 者がキャリアプランニングを用いて未来のリーダーを特定し、従業員が 自分のキャリアゴールを伝えられるようにすることも取り組みの一つで す(Rothwell, Jackson, Knight, Lindholm, 2005)。 The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 5 後継者管理とは? 後継者管理とは、より高い責任を持つてるよう従業員を育てるための管 理者の日常的な役割です。バックアップに焦点を合わせた交代要員育成 の範囲を超え、将来に向けて働く従業員を内部で開発することに焦点を 合わせた事業継承計画の範囲も越えます。その目標は、直属の上司によ る日々の指導・監督を通じて従業員の最大能力を高めることです。ほと んど全ての開発が職務中に発生するため、上司の監督・支持・フィード バックという役割は非常に重要です。人事部門担当者は従業員とは日常 的に接触するわけではないため、人事部門がこの役割を負うことはでき ません。 タレントマネジメントとは? 別のデール・カーネギー白書にもある通り、タレントマネジメントとは 、採用を通じて最高の人材を得、その人材を保持するために計画立った アプローチを用い、内部で最高の人材を開発することです。そのため、 募集・採用・開発・保持の取り組みを統合したものです。交代要員育成 や後継者育成の範囲をはるかに超えています。タレントマネジメントに ついては、それに関する白書をご覧ください。 洞察 … 後継者管理とは、従業 員をより高い責任性へ と準備するための管理 者の日常的な役割です 。 デール・カーネギ ーの視点 … デール・カーネギーは 後継者管理を成功に導 く鍵である、人間関係 をより効果的にする方 法や従業員とのリーダ ーシップアプローチに 関するトレーニングを 提供します。 洞察 … タレントマネジメント とは、採用を通じて最 高の人材を惹きつけ、 その人材を保持するた めに計画立ったアプロ ーチを用い、内部で最 高の人材を開発するこ とです。 . Page 6 The Nuts and Bolts of Succession Planning 後継者育成プログラムに不可欠な要素をまとめる モデルは何か? 優れた後継者育成プログラムはどれでも、その構成要素を全て統合させる ロードマップを軸に作られており、組織内の既存従業員の内部開発を強調 しています (Rothwell, 2005a)。図3は後継者育成ロードマップの例を示し ています。その後にロードマップの段階的解説が付けられています。 図3:効果的な後継者育成のためのロードマップ Step1: コミットメントを得る Step7: プログラム結果を評価する Step2:現在の仕事と人材を 分析する Step6: 人を開発する Step3: 実績を評価する Step5: 可能性を評価する Step4: 将来的に必要となる仕事と人 材を分析する 出店: Adapted from Rothwell, W. (2005). Effectivesuccessionplanning:Ensuringleadershipcontinuity andbuildingtalentfromwithin. 3rd ed. New York: Amacom. The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 7 Step1:コミットメントを得る 全てのレベルにいる管理者や従業員が後継者育成プログラムの必要性を 理解していなければ後継者育成プログラムは成功しません。同時に、役 員、管理者、上司、従業員はプログラムにおける自分の役割を認識して いなければなりません。 Step2:現在の仕事と人材を分析する 後継者を育成するには、管理者はどのような仕事が行なわれていて、ど のような人材がそれを上手くこなすかを把握している必要があります。 このステップには、適材適所を判断するために、職務明細の最新情報、 職務の明確な実績や責任、そして能力モデルが必要です。 Step3:実績を評価する ステップ3は、実績管理、つまり時間をかけて実績を計画・管理・評価 する過程を指します。このステップは、各個人が仕事への責任を課せら れ、能力を示すことが求められるため、効果的な後継者育成プログラム では大切なステップです。ただ単に実績管理システムを行なうだけでは 不十分で、達成が見込まれる成果や期待される能力・姿勢の尺度となる ものでなければなりません。 Step4:将来的に必要となる仕事と人材を分析する 未来は必ずしも過去と同じようにはなりません。このステップでは、意 思決定者が組織の戦略目標を達成するために必要な仕事や能力をそれら の戦略目標に合わせていく作業を行います。組織の未来に向けた要求事 項を各レベル・職務・職能に合わせて下げなければなりません。その成 果は、将来に見込まれる職務明細や能力モデルとなることでしょう。 Page 8 The Nuts and Bolts of Succession Planning 洞察 … ただ単に実績管理シス テムを行なうだけでは 不十分で、達成が見込 まれる成果や期待され る能力・姿勢の尺度と なるものでなければな りません。 Step5:可能性を評価する より責任感が求められる立場への昇進可能性は将来的背景に照らし合わ せて考えなければなりません。つまり、昇進したいと願う人は誰でも、 組織が実施している競争的環境が静的ではないために昇進のエスカレー ターに乗ろうとしています。個人が開発されると同時に物事も変わって いるのです。過去に成功した実績があるからと言って将来も成功すると は限りません。むしろ、組織リーダーは従業員が将来、より責任が問わ れるレベルでどのように仕事をするかを判断するための客観的な方法を 見つけなければならないのです。 Step6:人材を開発する ステップ6はステップ4と5の結果を比較しながら開発的ギャップを埋 めていくことに焦点を合わせます。このステップを上手く実行するには 、組織リーダーは各従業員が現在していることと、将来さらに責任を求 められるレベルでしなければならないことのギャップを埋めるために個 別開発プラン(IDP)を立てるべきです。 IDPは学習の為の契約書のようなものです。大抵、従業員個人とその上司 の間で、1年という期間で交渉されます。従業員は責任がさらに求められ るレベルで必要な能力を築く手助けとして様々な資源を特定し使用計画 を立てることが奨励されます。資源とは、組織内のトレーニングや講習 、組織外のセミナーや会議、内部のジョブローテーション経験、またそ の他能力を強化する取り組みなどを言います。 洞察 … デール・カーネギーの 、能力を基礎にした開 発プログラムは、組織 の具体的な能力モデル に合わせた人材トレー ニングを選択できるよ うな仕組みになってい ます。 Step7:プログラム結果を評価する 後継者育成プログラムの結果はどのように評価することができるでしょ うか?この問いへの答えは、ステップ1で設けられた目標に対する測定 プログラムの成功によって得られます。 The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 9 結論 このデール・カーネギー白書は、いくつかの主な質問:①後継者育成は、 交代要員育成やタレントマネジメントや後継者管理とはどう違うか?と② 後継者育成プログラムに不可欠な要素をまとめるモデルは何か?に答える べく作成が始まりました。 本白書が示すように、後継者育成プログラムは内部の豊富な人材の強化に 焦点を合わせています。単なる「バックアップ」の特定に焦点を合わせた 交代要員育成とは異なります。上司による日常的な人材開発に焦点を合わ せた後継者管理とも異なります。最高の人材の募集・採用・開発・維持を 統合したタレントマネジメントとも異なります。 後継者育成プログラムに不可欠な構成要素は、タレントマネジメントプロ グラムとよく似ており、①コミットメントを得ること、②現在の仕事と人 材を分析すること、③実績を評価すること、④将来的に必要となる仕事と 人材を分析すること、⑤可能性を評価すること、⑥人材を開発すること、 ⑦プログラム結果を評価することです(Rothwell, 2005)。 デール・カーネギーは貴社の豊富な人材を強化するための様々な解決策を 提供します。貴社の後継者育成プログラム強化のためにデール・カーネギ ーが何ができるかについてはwww.dalecarnegie.comよりお近くのデール ・カーネギーオフィスにお問い合わせください。 Page 10 The Nuts and Bolts of Succession Planning 洞察 … 後継者育成プログラム に不可欠な構成要素は 、タレントマネジメン トプログラムとよく似 ている次のような項目 です。①コミットメン トを得ること、②現在 の仕事と人材を分析す ること、③実績を評価 すること、④将来的に 必要となる仕事と人材 を分析すること、⑤可 能性を評価すること、 ⑥人を開発すること、 ⑦プログラム結果を評 価することです (Rothwell,2005)。 参考資料および追加情報 Byham, W. (2002). A new look at succession management. IveyBusiness Journal,66(5), 10–12. Carter, N. (1986). Guaranteeing management’s future through succession planning. JournalofInformationSystemsManagement, 3(3), 13–14. Rothwell, W. (2005a). Effectivesuccessionplanning:Ensuringleadership continuityandbuildingtalentfromwithin. 3rd ed. New York: Amacom. Rothwell, W., Jackson, R., Knight, S., Lindholm, J. with Wang, A., & Payne, T. (2005b). Careerplanningandsuccessionmanagement:Developingyour organization’stalent—fortodayandtomorrow. Westport, CT: Greenwood Press/an imprint of Praeger. The Nuts and Bolts of Succession Planning Page 11